JP2021183660A - リグニンの洗浄方法および分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 アルカリ蒸解する工程から排出される黒液から、リグニン含有物を経済的に分離する方法を提供する。【解決手段】 木材をアルカリ蒸解する工程から排出される黒液に、二酸化炭素を添加してpH7〜9に調整し得られたリグニン沈殿物を、酸で処理する前に予め洗浄することにより、リグニン懸濁液のpH調整に大量の酸を必要とせず、また使用後の酸廃液やリグニンの洗浄排水の処理費用が不要な、アルカリ蒸解する工程から排出される黒液から、リグニン含有物を経済的に分離する方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、木材チップをアルカリ蒸解する工程から排出される黒液より溶解しているリグニンを経済的に分離する方法に関する。
近年、石油の代替としてリグニンを原料として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等に変換して利用することが検討されている。リグニンは木材中に多量に存在するが、抽出するためには酸、アルカリ、あるいは有機溶媒を使用する化学処理、粉砕等の機械的処理が必要である。例えば、サルファイト蒸解法では、酸性亜硫酸塩と亜硫酸の混液を加えて、130〜145℃で蒸煮し木材中のリグニンをリグニンスルホン酸塩として溶出させ(例えば、特許文献1)、クラフト蒸解法では、苛性ソーダ(NaOH)と硫化ソーダ(NaS)を主成分とする薬品を加えて、150〜170℃程度で蒸解して、クラフトリグニンとして溶出させる。これらの蒸解法とは別に、苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を加えてリグニンを溶出することが検討されている(特許文献2)。
また、抽出されたリグニンを効率よく分離することも重要である。例えば、クラフト蒸解法等で得られる黒液を酸性化してリグニンを沈殿させて脱水し、リグニン濾過ケーキを洗浄してリグニンを得ることが開示されている(特許文献3)。
特開2001−89986号公報 特開2014−208803号公報 特表2008−513549号公報
しかしながら、特許文献3の黒液からリグニンを分離する方法では、リグニン懸濁液のpH調整に大量の酸を必要とし、また使用後の酸廃液やリグニンの洗浄排水の処理費用が必要であった。
本発明の課題は、アルカリ蒸解する工程から排出される黒液からリグニンを経済的に分離する方法である。
本発明者らはこれらの目的を達成するために検討を重ねた結果、木材をアルカリ蒸解する工程から排出される黒液に二酸化炭素を添加してpH7〜9に調整し、得られたリグニン沈殿物を、酸で処理する前に予め洗浄し、リグニン含有物を得ることにより、上記目的が達成されることを見出した。
すなわち本発明は下記の(1)〜(6)の発明を提供するものである。
(1)下記(a)〜(e)の工程を含むことを特徴とする、リグニン含有物の製造方法。
(a)木材チップをアルカリ蒸解する工程から排出される黒液に二酸化炭素を添加してpHを10以下に調整し、沈殿物1を生成する工程
(b)生成した沈殿物1を脱水して分取する工程
(c)分取した沈殿物1を洗浄する工程
(d)洗浄した沈殿物1を水に懸濁し、懸濁液を得た後、懸濁液に酸を添加してpHを1〜9に調整し、沈殿物2を生成する工程
(e)生成した沈殿物2を脱水・洗浄して分取し、リグニン含有物を得る工程
(2)上記工程(a)のアルカリ蒸解が、ソーダ蒸解であることを特徴とする、(1)に記載のリグニン含有物の製造方法。
(3)上記工程(a)のアルカリ蒸解が、クラフト蒸解であることを特徴とする、(1)に記載のリグニン含有物の製造方法。
(4)上記工程(c)において、酸性水溶液を使用して洗浄する工程を含む、(1)〜(3)に記載のリグニン含有物の製造方法。
(5)上記酸性水溶液が、炭酸水である、(4)に記載のリグニン含有物の製造方法。
(6)上記、工程(a)において、二酸化炭素を加圧して添加することを特徴とする、(1)〜(5)に記載のリグニン含有物の製造方法
本発明によれば、アルカリ蒸解する工程から排出される黒液からリグニン含有物を経済的に分離することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、特に規定がない限り、数値範囲について「AA〜BB」という記載は、「AA以上、BB以下」であることを示す(ここで、「AA」および「BB」は任意の数値を示す)。
<アルカリ蒸解>
原料の木材としては、広葉樹、針葉樹のいずれも使用できる。広葉樹としては、ブナ、シナ、シラカバ、ポプラ、ユーカリ、アカシア、ナラ、イタヤカエデ、センノキ、ニレ、キリ、ホオノキ、ヤナギ、セン、ウバメガシ、コナラ、クヌギ、トチノキ、ケヤキ、ミズメ、ミズキ、アオダモ等が例示される。針葉樹としては、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、ネズコ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、ヒノキ、イチイ、イヌガヤ、トウヒ、イエローシーダー(ベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファー(ベイマツ)、シトカスプルース(ベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンヘムロック、タマラック等が例示される。
木材チップは、蒸解液と共に蒸解釜へ投入され、アルカリ蒸解に供する。また、1ベッセル液相型、1ベッセル気相/液相型、2ベッセル液相/気相型、2ベッセル液相型などの蒸解型式なども特に限定はない。すなわち、本願のアルカリ性水溶液を含浸し、これを保持する工程は、従来の蒸解液の浸透処理を目的とした装置や部位とは別個に設置してもよい。好ましくは、蒸解を終えた未晒パルプは蒸解液を抽出後、ディフュージョンウォッシャーなどの洗浄装置で洗浄する。洗浄後の未晒パルプのカッパー価は、7〜30にすることが好ましく、9〜25としてもよい。一つの態様において洗浄後の未晒パルプのカッパー価は、7〜20であり、9〜15としてもよい。
アルカリ蒸解は、木材チップを蒸解液とともに耐圧性容器に入れて行うことができるが、容器の形状や大きさは特に制限されない。木材チップと蒸解液の液比は、例えば、1.0〜40L/kgとすることができ、1.5〜30L/kgが好ましく、2.0〜30L/kgがさらに好ましい。また別の態様において、木材チップと薬液の液比は、例えば、1.0〜5.0L/kgとすることができ、1.5〜4.5L/kgが好ましく、2.0〜4.0L/kgがさらに好ましい。
また、本発明のアルカリ蒸解においては、苛性ソーダ(NaOH)、硫化ナトリウム(NaS)の他に種々の蒸解助剤を併用することもできる。例えば、絶乾チップ当たり0.01〜5質量%のキノン化合物を含むアルカリ性蒸解液を蒸解釜に添加してもよい。キノン化合物の添加量が0.01質量%未満であると黒液中に抽出されるリグニンの抽出量が十分ではない。また、キノン化合物の添加量が5質量%を超えてもさらなるリグニンの抽出量の向上が認められない。
使用されるキノン化合物はいわゆる公知の蒸解助剤としてのキノン化合物、ヒドロキノン化合物又はこれらの前駆体であり、これらから選ばれた少なくとも1種の化合物を使用することができる。これらの化合物としては、例えば、アントラキノン、ジヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロアントラキノン)、テトラヒドロアントラキノン(例えば、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノン)、メチルアントラキノン(例えば、1−メチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン)、メチルジヒドロアントラキノン(例えば、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラキノン)、メチルテトラヒドロアントラキノン(例えば、1−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、2−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン)等のキノン化合物であり、アントラヒドロキノン(一般に、9,10−ジヒドロキシアントラセン)、メチルアントラヒドロキノン(例えば、2−メチルアントラヒドロキノン)、ジヒドロアントラヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン)又はそのアルカリ金属塩等(例えば、アントラヒドロキノンのジナトリウム塩、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩)等のヒドロキノン化合物であり、アントロン、アントラノール、メチルアントロン、メチルアントラノール等の前駆体が挙げられる。これら前駆体は蒸解条件下ではキノン化合物又はヒドロキノン化合物に変換する可能性を有している。
蒸解液は、対絶乾木材チップ質量当たりの活性アルカリ添加率(AA)を8〜55質量%とすることができ、8〜20質量%とすることが好ましい。活性アルカリ添加率が8質量%未満であるとリグニンやヘミルロースの除去が不十分となり、55質量%を超えると収率の低下や品質の低下が起こる。ここで活性アルカリ添加率とは、NaOH、NaSの添加率をNaOの添加率として換算したもので、NaOHの添加率に0.775を乗じることでNaOの添加率に換算できる。ソーダ蒸解の場合は硫化度を0とする。クラフト蒸解の場合は、硫化度は15〜40%の範囲が好ましい。
アルカリ蒸解は、120〜180℃の温度範囲で行うことが好ましく、140〜170℃がより好ましい。温度が低すぎると脱リグニン(カッパー価の低下)が不十分である一方、温度が高すぎるとセルロースの重合度(粘度)が低下する。また、本発明における蒸解時間とは、蒸解温度が最高温度に達してから温度が下降し始めるまでの時間であるが、蒸解時間は、60分以上600分以下が好ましく、120分以上360分以下がさらに好ましい。蒸解時間が60分未満ではパルプ化が進行せず、600分を超えるとパルプ生産効率が悪化するために好ましくない。
また、本発明におけるアルカリ蒸解は、Hファクター(Hf)を指標として、処理温度及び処理時間を設定することができる。Hファクターとは、蒸解過程で反応系に与えられた熱の総量を表す目安であり、下記の式によって表わされる。Hファクターは、チップと水が混ざった時点から蒸解終了時点まで時間積分することで算出する。Hファクターとしては、250〜6000が好ましい。
Hf=∫exp(43.20−16113/T)dt
本発明においては、蒸解後得られた未漂白(未晒)パルプは、必要に応じて、種々の処理に供することができる。例えば、クラフト蒸解後に得られた未漂白パルプに対して、漂白処理を行うことができる。
<木材チップをアルカリ蒸解する工程から排出される黒液に二酸化炭素を添加してpHを10以下に調整し、沈殿物1を生成する工程(工程a)>
アルカリ蒸解後に得られる黒液に二酸化炭素を添加して、黒液のpHを10以下として懸濁液とすることにより、黒液中に溶解しているリグニンを不溶物として沈殿させることが可能となる。この工程は2回以上繰り返して行ってもよい。黒液のpHは1〜9としてもよく、4〜9に調整してもよい。上記沈殿の生成具合と、二酸化炭素の使用量の経済面からpHは7〜9がより好ましい。黒液のpHが10を超える範囲では、リグニンの不溶物が十分に生成しない。なお、黒液はpHを調整する前に、エバポレーターなどを用いて濃縮することができ、固形分は10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上50質量%であることがより好ましい。
黒液のpHを10以下に調整する際の温度は室温〜100℃が好ましい。温度が100℃を超えるとリグニンが縮合するので、リグニンの分離が困難になる。
また、前述のpHを10以下に調整する工程で二酸化炭素を添加する場合、処理温度としては、特に限定されないが、40〜80℃程度が好ましい。二酸化炭素を加える方法は特に限定されないが、大気圧下で吹き込む方法、あるいは密閉容器中で二酸化炭素を吹き込んで加圧する方法がある。加圧する場合の好ましい圧力は、0.1〜1.0MPa、好ましくは0.4〜0.8MPaである。加圧することにより、二酸化炭素の溶解率を高め、黒液の到達pHを下げる効果が得られる。二酸化炭素としては、純粋な二酸化炭素ガスでもよいが、焼却炉、ボイラーなどから排出される燃焼排ガス、石灰焼成工程などから発生する二酸化炭素を含むガスを用いることもできる。
また、必要に応じて凝集剤を添加して、リグニンの沈殿を促進させてもよい。凝集剤としては、硫酸バンド、塩化アルミ、ポリ塩化アルミ、ポリアミン、DADMAC、メラミン酸コロイド、ジンアンジアジド等が挙げられる。
黒液に二酸化炭素を添加して、黒液のpHを10以下に調整することによって、リグニンを含有するケーキ状の沈殿物1が得られる。
<生成した沈殿物1を脱水して分取する工程(工程b)>
工程b)では、生成した沈殿物1を脱水し分取する。沈殿物1を脱水するための装置としては、フィルタープレス、ドラムプレス、遠心脱水装置、吸引濾過装置等を使用することができる。なお、フィルタープレス装置で脱水する際には、用いるフィルタークロスの透気度が0.5cm/cm/secを超え60cm/cm/sec未満であることが好ましい。フィルタークロスの透気度が0.5cm/cm/sec以下であると、脱水の際に目詰まりを起こす。また、透気度が60cm/cm/sec以上であると、クロス上にリグニンが保持されない。
<分取した沈殿物1を洗浄する工程(工程c)>
工程c)では分取した沈殿物1を洗浄する。洗浄は、工業用水、水道水等の水で構わないが、炭酸水を使用することがより好ましい。炭酸水で洗浄することで、後述する工程d)で使用する酸の量を削減することができ、経済的である。使用する炭酸水はpH3.5〜6が好ましく、pH3.5〜4.5がより好ましい。洗浄後の沈殿物1は脱水しても良い。脱水に用いる装置は工程b)で使用したものを任意に用いて良い。
<洗浄した沈殿物1を懸濁し、懸濁液を得た後、懸濁液に酸を添加してpHを1〜9に調整し、沈殿物2を生成する工程(工程d)>
工程d)では、洗浄した沈殿物1を水に懸濁し、懸濁液を得る。懸濁する水は純水でも良いが、工業用水、水道水等でも構わない。また、沈殿物1は、予め酸を加えて調製した酸性溶液に懸濁してもよい。酸性溶液を調製するのに使用する酸は無機酸、有機酸いずれでもよい。無機酸としては、硫酸、亜硫酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、炭酸等が挙げられ、硫酸が好ましい。また、二酸化塩素発生装置から排出される残留酸を使用してもよい。有機酸としては、酢酸、乳酸、蓚酸、クエン酸、ギ酸等が挙げられる。懸濁液の固形分濃度は特に問わないが、好ましい固形分濃度は10質量%〜20質量%である。
得られた懸濁液に酸を添加し、pHを1〜9に調整する。使用する酸は無機酸でも有機酸でもよい。無機酸としては、硫酸、亜硫酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、炭酸等が挙げられ、硫酸が好ましい。また、二酸化塩素発生装置から排出される残留酸を使用してもよい。有機酸としては、酢酸、乳酸、蓚酸、クエン酸、ギ酸等が挙げられる。
pHを1〜9に調整することで、上記懸濁液中のリグニンが不溶化し、沈殿物2が生成する。沈殿物2を効率よく生成するための、好ましいpHは1〜7、より好ましいpHは1〜5、さらにより好ましいpHは1〜3である。
<生成した沈殿物2を脱水・洗浄して分取し、リグニン含有物を得る工程(工程e)>
工程e)では、工程d)で得られたケーキ状の沈殿物2を脱水及び洗浄し、リグニン含有物を得る工程である。洗浄は洗浄ろ液の電気伝導度が0.5S/m以下になるまで行うことが望ましい。リグニン沈殿物を脱水・洗浄するための装置としては、工程c)と同様にフィルタープレス、ドラムプレス、遠心脱水装置、吸引濾過装置等を使用することができる。沈殿物2の洗浄に使用される水は工程c)で洗浄に使用する水と同様の水でよい。なお、洗浄水のpHは6以上が好ましく、pH6〜8としてもよい。
洗浄した沈殿物2(リグニン含有物)は、工程c)と同様に脱水しても良い。また、リグニン含有物は、脱水後、乾燥しても良い。乾燥後の固形分濃度は特に問わないが、好ましい固形分濃度は65質量%〜99質量%である。乾燥する方法としては、送風乾燥、真空乾燥等が挙げられる。
収率は次の式により計算した。
収率=洗浄した沈殿物2の重量(g)×固形分濃度(質量%)/100/工程aの黒液使用量(kg)
得られたリグニン含有物に有機溶媒を添加して溶解させ、不純物である不溶物を分離することによって、リグニンを精製することもできる。添加する有機溶媒としては、糖類の非溶媒または貧溶媒であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−メトキシルエタノール、ブタノールなどを含むアルコール類、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどを含むエーテル類、アセトンやメチルエチルケトンなどを含むケトン類、アセトニトリルなどを含むニトリル類、ピリジンなどを含むアミン類、ホルムアミドなどを含むアミド類、酢酸エチル、酢酸メチルなどを含むエステル類、ヘキサンなどを含む脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等を含む芳香族炭化水素などのうち、一種類または複数を混合したもの、若しくは一種類または複数を混合し、水を加えたものを用いることができる。特に、アセトンが好ましい。懸濁液中の不溶物を固液分離する方法としては、フィルタープレス、ドラムプレス、遠心脱水装置、吸引濾過装等を使用することができる。
本発明で得られるリグニンは、熱硬化性樹脂、分散剤、接着剤として利用できる。また、さらに低分子化することによりフェノール樹脂原料やエポキシ樹脂原料として利用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において%は特に断らない限り質量%を示す。
〔実施例1〕
<炭酸リグニンケーキの作成>
針葉樹のソーダAQ蒸解黒液200mlをビーカーに入れ、80℃に保温、攪拌しながら大気圧下で二酸化炭素を70分(40ml/min)吹き込んだ。その後、80℃で1時間攪拌を続け沈殿物1を生成した(工程a)後、ろ過により脱水し、炭酸リグニンケーキ(沈殿物1)を得た(工程b)。
<炭酸リグニンケーキの洗浄>
上記炭酸リグニンケーキに対し、炭酸水(pH3.8)を0.5L加え、洗浄、ろ過した(工程c)。
<リスラリー>
炭酸リグニンケーキをビーカーに移し、固形分濃度が15質量%となるように純水を加え、攪拌して均質なスラリーとした。
<硫酸処理>
50℃に保温しながら上記スラリーのpHが2になるまで攪拌しながら8N硫酸を添加した。その後50℃で1時間攪拌を続け、沈殿物2を生成した(工程d)。
<リグニンケーキ洗浄>
上記スラリーをブフナー漏斗でろ過し、得られたリグニンケーキ(沈殿物2)に50℃の温水100mlを加え、ろ過した。ろ液の電気伝導率が0.5S/m以下になるまでろ過、洗浄を繰り返し、リグニン含有物を得た(工程e)。
<リグニンケーキの乾燥>
得られたリグニン含有物を50℃の送風乾燥機で乾燥した(固形分濃度:95質量%)。
〔実施例2〕
<炭酸リグニンケーキの作成>
針葉樹のクラフト蒸解黒液3kgをビーカーに入れ、60℃に保温、攪拌しながら大気圧下で二酸化炭素を40分間(600ml/min)吹き込んだ。その後、80℃で1時間攪拌を続け沈殿物1を生成した(工程a)後、ろ過により脱水し、炭酸リグニンケーキ(沈殿物1)を得た(工程b)。
<炭酸リグニンケーキの洗浄>
上記炭酸リグニンケーキに対し、炭酸水(pH3.8)を0.5L加え、洗浄、ろ過した(工程c)。
<リスラリー>
炭酸リグニンケーキをビーカーに移し、固形分濃度が15質量%となるように純水を加え、攪拌して均質なスラリーとした。
<硫酸処理>
50℃に保温しながら上記スラリーのpHが2になるまで攪拌しながら8N硫酸を添加した。その後50℃で1時間攪拌を続け、沈殿物2を生成した(工程d)。
<リグニンケーキ洗浄>
上記スラリーをブフナー漏斗でろ過し、得られたリグニンケーキ(沈殿物2)に50℃の温水100mlを加え、ろ過した。ろ液の電気伝導率が0.2S/m以下になるまでろ過、洗浄を繰り返し、リグニン含有物を得た(工程e)。
<リグニンケーキの乾燥>
得られたリグニン含有物を50℃の送風乾燥機で乾燥した(固形分濃度:95質量%)。
〔実施例3〕
工程a)の炭酸リグニンケーキの作成を加圧容器で行い、0.8MPaで二酸化炭素を添加した以外は、実施例1と同様にしてリグニン含有物を得た(固形分濃度:92質量%)。
〔比較例1〕
炭酸リグニンケーキを作成したのち、工程c)を行わずにリスラリーし、硫酸処理を行った以外、実施例1と同様にしてリグニン含有物を得た(固形分濃度:93質量%)。
〔比較例2〕
炭酸リグニンケーキを作成したのち、工程c)を行わずにリスラリーし、硫酸処理を行った以外、実施例2と同様にしてリグニン含有物を得た(固形分濃度:94質量%)。
〔比較例3〕
炭酸リグニンケーキを作成したのち、工程c)を行わずにリスラリーし、硫酸処理を行った以外、実施例3と同様にしてリグニン含有物を得た(固形分濃度:95質量%)。
結果を以下に記す。表1にある通り、炭酸リグニンケーキ洗浄を行った実施例においては、8N硫酸の使用量および、洗浄水量を大幅に低減しながら、収率を損なうことなくNaが不検出となる純度の高い完成リグニンを得ることができた。Naの定量は蛍光X線分析法(島津製作所EDX800)にて定量した。
Figure 2021183660

Claims (6)

  1. 下記(a)〜(e)の工程を含むことを特徴とする、リグニン含有物の製造方法。
    (a)木材チップをアルカリ蒸解する工程から排出される黒液に二酸化炭素を添加してpHを10以下に調整し、沈殿物1を生成する工程
    (b)生成した沈殿物1を脱水して分取する工程
    (c)分取した沈殿物1を洗浄する工程
    (d)洗浄した沈殿物1を水に懸濁し、懸濁液を得た後、懸濁液に酸を添加してpHを1〜9に調整し、沈殿物2を生成する工程
    (e)生成した沈殿物2を脱水・洗浄して分取し、リグニン含有物を得る工程
  2. 上記工程(a)のアルカリ蒸解が、ソーダ蒸解であることを特徴とする、請求項1に記載のリグニン含有物の製造方法。
  3. 上記工程(a)のアルカリ蒸解が、クラフト蒸解であることを特徴とする、請求項1に記載のリグニン含有物の製造方法。
  4. 上記工程(c)において、酸性水溶液を使用して洗浄する工程を含む、請求項1〜3に記載のリグニン含有物の製造方法。
  5. 上記酸性水溶液が、炭酸水である、請求項4に記載のリグニン含有物の製造方法。
  6. 上記、工程(a)において、二酸化炭素を加圧して添加することを特徴とする、請求項1〜5に記載のリグニン含有物の製造方法
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023194866A1 (en) * 2022-04-04 2023-10-12 Stora Enso Oyj Method for purifying lignin
WO2023194867A1 (en) * 2022-04-04 2023-10-12 Stora Enso Oyj Method for producing carbon from lignin

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