以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
図1及び図2に示されるように、アクチュエータ装置1は、ミラー2と、磁界発生部3と、枠部4と、支持部5と、可動部6と、一対の第2連結部7と、一対の第1連結部8と、を備えている。アクチュエータ装置1は、互いに直交する第1軸線X1及び第2軸線X2のそれぞれの周りにミラー2を揺動させるMEMSデバイスとして構成されている。このようなアクチュエータ装置1は、例えば光通信用光スイッチ又は光スキャナ等に用いられる。
ミラー2は、金属膜により構成された光反射膜である。ミラー2は、平面視において(少なくとも支持部5、可動部6及び一対の第1連結部8が配置される平面と直交する方向から見た場合に)円形状を呈している。ミラー2を構成する金属材料は、例えばアルミニウム(Al)、アルミニウム系合金、金(Au)、銀(Ag)、銀系合金等である。
磁界発生部3は、矩形状の平板であり、一対の主面を有している。磁界発生部3は、支持部5に設けられたコイル11及び可動部6に設けられたコイル12(コイル11,12については後述する)に磁界を作用させる。磁界発生部3は、例えば永久磁石等により構成されている。磁界発生部3における磁極の配列は、例えばハルバッハ配列である。
枠部4は、平面視において矩形状を呈する平板状の枠体である。枠部4は、磁界発生部3の一方の主面上に配置されている。枠部4は、一対の第2連結部7を介して、支持部5、可動部6及びミラー2等を支持している。各第2連結部7は、支持部5が第2軸線X2周りに揺動可能となるように、第2軸線X2上において支持部5を枠部4に連結している。つまり、各第2連結部7は、トーションバーとして機能する。各第2連結部7は、強度の向上及び捩りばね定数の調整の容易化のために、平面視において蛇行形状を呈している。より具体的には、各第2連結部7は、第2軸線X2方向に延在し、第1軸線X1方向に並んで配置された複数の直線状部分7aと、複数の直線状部分7aの両端を交互に連結する複数の折り返し部分7bと、を有している。複数の折り返し部分7bは、直線状に延在する折り返し部分と、R状に湾曲して延在する折り返し部分とを含んでいる。
支持部5は、例えば平面視において矩形状を呈する平板状の枠体であり、枠部4の内側に位置している。支持部5は、磁界発生部3の一方の主面と対向し且つ磁界発生部3の一方の主面から離間するように配置されている。支持部5は、一対の第1連結部8を介して、可動部6及びミラー2等を支持している。各第1連結部8は、可動部6が第1軸線X1周りに揺動可能となるように、第1軸線X1上において可動部6を支持部5に連結している。つまり、各第1連結部8は、トーションバーとして機能する。各第1連結部8は、例えば平面視において略矩形状を呈する平板状の部材であり、第1軸線X1に沿って直線状に延在している。
可動部6は、フレームFと配置部9とを有し、支持部5の内側に位置している。フレームFは、平面視において矩形状を呈する平板状の枠体であり、第1連結部8に接続されている。配置部9は、平面視において円形状を呈する平板であり、フレームFの内側に配置され、フレームFに接続されている。可動部6は、磁界発生部3の一方の主面と対向し且つ磁界発生部3の一方の主面から離間するように配置されている。ミラー2は、配置部9上に配置されている。つまり、ミラー2は、可動部6に設けられている。枠部4、支持部5、可動部6、一対の第2連結部7及び一対の第1連結部8は、例えばシリコン(Si)等の半導体材料により一体に形成されている。なお、図2に示される例では、フレームFと配置部9との間に隙間が形成されているが、フレームFと配置部9とは、互いの間に隙間が形成されないように一続きに設けられてもよい。
アクチュエータ装置1は、図2に示されるように、支持部5に設けられたコイル11と、可動部6に設けられたコイル12と、を更に備えている。コイル11は支持部5に埋設されており、コイル12は可動部6に埋設されている。各コイル11,12は、例えば銅(Cu)等の金属材料により構成されている。なお、図2では、理解を容易にするために各配線が実線で示されているが、コイル11,12等の各配線は、実際には後述する絶縁層51、絶縁層52及び/又は絶縁層53によって覆われている。
コイル11は、平面視においてスパイラル状に複数周回巻回されている。コイル11の内側端部には、配線14aの一端が電気的に接続されている。コイル11の外側端部には、配線14bの一端が電気的に接続されている。各配線14a,14bは、後述する第2金属材料からなる。各配線14a,14bは、一方の第2連結部7上に設けられ、支持部5から枠部4に至っている。配線14aの他端は、支持部5に設けられた電極15aと電気的に接続されており、配線14bの他端は、支持部5に設けられた電極15bと電気的に接続されている。各電極15a,15bは、制御回路等と電気的に接続される。配線14aは、コイル11の上方を通るようにコイル11と立体的に交差している。
コイル12は、平面視においてスパイラル状に複数周回巻回されている。コイル12の内側端部には、配線16aの一端が電気的に接続されている。コイル12の外側端部には、配線16bの一端が電気的に接続されている。各配線16a,16bは、一対の第1連結部8、支持部5及び他方の第2連結部7上に設けられ、可動部6から枠部4に至っている。配線16aの他端は、支持部5に設けられた電極17aと電気的に接続されており、配線16bの他端は、支持部5に設けられた電極17bと電気的に接続されている。各電極17a,17bは、制御回路等と電気的に接続される。配線16aは、コイル12の上方を通るようにコイル12と立体的に交差している。
各配線16a,16bは、各第1連結部8上に設けられた第1配線21と、支持部5上及び可動部6上のそれぞれに設けられた第2配線31A,31Bと、を有している。
第1配線21は、第1金属材料からなる。第1配線21は、支持部5、第1連結部8及び可動部6上にわたって設けられている。第1配線21は、第1部分22と、第2部分23と、第3部分24と、を有している。第1部分22は、支持部5、第1連結部8及び可動部6上において第1軸線X1に沿って延在している。第2部分23は、支持部5上において第1部分22の支持部5側の端部から他方の第2連結部7側に延在している。第3部分24は、可動部6上において第1部分22の可動部6側の端部から一方の第2連結部7側に延在している。第1部分22の延在方向と第2部分23の延在方向とは互いに直交しており、第1部分22の延在方向と第3部分24の延在方向とは互いに直交している。第1配線21は、支持部5上の端部において第2配線31Aと電気的に接続されている。第1配線21は、可動部6上の端部において第2配線31Bと電気的に接続されている。
第2配線31A,31Bは、第2金属材料からなる。第2配線31Aの一端は、第1配線21と電気的に接続されている。第2配線31Aの他端は、電極17aと電気的に接続されている。第2配線31Aの一端には、他の部分よりも拡幅された拡幅部32Aが設けられている。第2配線31Aは、拡幅部32Aにおいて第1配線21と電気的に接続されている。第2配線31Bの一端は、第1配線21と電気的に接続されている。第2配線31Bの他端は、コイル12と電気的に接続されている。第2配線31Bの一端には、他の部分よりも拡幅された拡幅部32Bが設けられている。第2配線31Bは、拡幅部32Bにおいて第1配線21と電気的に接続されている。
第1配線21を構成する第1金属材料のビッカース硬さは、50HV以上である。ビッカース硬さは、JIS Z2244:2009に規定された試験方法によって測定される。第1金属材料は、例えばタングステン(W)、チタン(Ti)、ニッケル、モリブデン(Mo)、アルミニウム合金、タングステン合金、チタン合金、ニッケル合金及びステンレス鋼の少なくとも1つである。アルミニウム合金としては、例えばジュラルミン等が挙げられる。ステンレス鋼は、鉄(Fe)を50%以上、クロム(Cr)を10.5%以上含む合金である。合金のビッカース硬さはその構成材料に応じて変化する。第1金属材料が合金である場合、第1金属材料としては、ビッカース硬さが50HV以上となるように構成された合金が用いられる。第1金属材料がニッケル、チタン、タングステン、ジュラルミンである場合、第1金属材料のビッカース硬さは、それぞれ、96HV,120HV,100HV〜350HV,115HV〜128HVである。第1金属材料のビッカース硬さは、500HV以下であってよい。
第2配線31A,31Bを構成する第2金属材料のビッカース硬さは、50HVよりも小さい。すなわち、第2金属材料のビッカース硬さは、第1金属材料のビッカース硬さよりも小さい。換言すれば、第1金属材料のビッカース硬さは、第2金属材料のビッカース硬さよりも大きい。第2金属材料は、例えばアルミニウム、銅、アルミニウム−銅合金、アルミニウム−シリコン−銅合金、アルミニウム−シリコン−チタン合金、アルミニウム−シリコン合金又はアルミニウム−チタン合金である。第2金属材料が合金である場合、第2金属材料としては、ビッカース硬さが50HVよりも小さくなるように構成された合金が用いられる。第2金属材料がアルミニウム、銅である場合、第2金属材料のビッカース硬さは、それぞれ、25HV,46HVである。第2配線31Aを構成する金属材料と第2配線31Bを構成する金属材料とは互いに異なっていてもよい。第2金属材料の比抵抗は、第1金属材料の比抵抗よりも小さくてもよい。換言すれば、第1金属材料の比抵抗は、第2金属材料の比抵抗よりも大きくてもよい。なお、金属材料においては、ビッカース硬さが小さいほど、比抵抗が小さくなる傾向がある。
本実施形態では、各第2連結部7上に設けられた配線(以下、第3配線という)を構成する金属材料の比抵抗は、第1金属材料の比抵抗よりも小さい。第3配線は、配線14a,14bにおける第2連結部7上に位置する部分、及び第2配線31A,31Bにおける第2連結部7上に位置する部分である。上述した比抵抗の関係が満たされる金属材料の組み合わせとしては、例えば、第3配線を構成する金属材料がアルミニウム、銅、アルミニウム−銅合金、アルミニウム−シリコン−銅合金、アルミニウム−シリコン−チタン合金、アルミニウム−シリコン合金又はアルミニウム−チタン合金であり、第1金属材料がタングステン、チタン、ニッケル、モリブデン、アルミニウム合金、タングステン合金、チタン合金、ニッケル合金及びステンレス鋼の少なくとも1つである組み合わせが挙げられる。なお、本実施形態では、第3配線が第2配線31A,31Bの一部として構成されているが、第3配線が第2配線31A,31Bとは別体に構成され、第2配線31A,31Bと電気的に接続されてもよい。この場合、第3配線を構成する金属材料と第2配線31A,31Bを構成する金属材料とは互いに異なっていてもよい。また、本実施形態では、第3配線が配線14a,14bの一部として構成されているが、第3配線が配線14a,14bとは別体に構成され、配線14a,14bと電気的に接続されてもよい。この場合、第3配線を構成する金属材料と配線14a,14bを構成する金属材料とは互いに異なっていてもよい。
図3〜図5に示されるように、アクチュエータ装置1は、絶縁層51,52,53を更に備えている。各絶縁層51,52,53は、例えば二酸化シリコン(SiO2)又は窒化シリコン(SiN)からなる。絶縁層51は、枠部4、支持部5、可動部6、一対の第2連結部7及び一対の第1連結部8の表面に設けられている。絶縁層52,53は、可動部6上の絶縁層51上に設けられている。
図3に示されるように、第1配線21の第1部分22は、第1連結部8の平坦な表面8a上に設けられている。すなわち、第1部分22(第1配線21)は、第1連結部8の表面8a上に載置されている。第1配線21は、表面8a上に設けられたシード層25と、シード層25上に設けられた第1本体部26と、を有している。すなわち、シード層25は、第1連結部8と第1本体部26との間に設けられている。この例では、シード層25及び第1本体部26の双方が上述した第1金属材料からなる。例えば、シード層25がチタンからなり、第1本体部26がタングステンからなる。第1本体部26は、第1配線21において主に電流を流すための部分であり、断面積が最も大きい部分である。第1本体部26は、第1連結部8の表面8aに沿った方向から見て、第1配線21の他の部分よりも第1連結部8から遠い側に位置する。シード層25は、シリコンからなる第1連結部8に対する第1本体部26の密着性を向上させる機能を有している。第1本体部26は、ニッケル、モリブデン、アルミニウム合金、タングステン合金、チタン合金、ニッケル合金又はステンレス鋼により構成されてもよい。シード層25が省略され、第1本体部26が表面8a上に直接に設けられてもよい。この場合、第1本体部26は、タングステン、チタン、ニッケル、モリブデン、アルミニウム合金、タングステン合金、チタン合金、ニッケル合金又はステンレス鋼により構成されてもよい。
第1部分22における第1本体部26は、第1連結部8と向かい合う第1表面27と、第1表面27以外の第2表面28と、を有している。第1表面27は、シード層25を介して第1連結部8と向かい合っており、第1表面27の全体にわたって平坦に形成されている。第2表面28は、第1部分22の延在方向(第1軸線X1と平行な方向)に垂直な断面(図3に示される断面)において、第2表面28の全体にわたって曲率が連続した形状を有している。換言すれば、当該断面において、第2表面28上には、曲率が不連続な点が存在していない。曲率が不連続な点とは、例えば尖った角部(鋭角、直角、鈍角のいずれの場合も含む)の頂点である。第2表面28は、当該断面において、表面8aと平行に延在する平坦な平坦部分28aと、平坦部分28aの両端部に連続し、第1連結部8の反対側に向けて凸となるように湾曲した一対の湾曲部分28bと、を有している。ここで、平坦部分28a(直線部分)の曲率は値0とみなすことができ、平坦部分28aと湾曲部分28bとの境界においても曲率は連続している。第2表面28は、当該断面において、第1連結部8側に向けて凸となるように湾曲した部分を有しておらず、全体として第1連結部8の反対側に向いた凸状を呈している。第2表面28は、湾曲部分28bにおいて第1表面27と交差している。第2表面28は、当該断面において、鋭角(90度よりも小さい角度)をなすように第1表面27と交差している。第2表面28と第1表面27とがなす角度θは、例えば約45度以下である。ここで、角度θは、第2表面28と第1表面27とがなす内側の角の角度である。本実施形態のように第2表面28が第1表面27との交差部分において湾曲している場合、角度θは、第2表面28の当該交差部分における接線と第1表面27とがなす角の角度である。
第1部分22におけるシード層25は、第2表面28に連なる表面25aを有している。表面25aは、例えば第1連結部8の表面8aに対して略垂直に延在している。表面25aと表面8aとがなす角度(表面25aと表面8aとがなす内側の角の角度)は、約45度〜約90度であってもよい。このように表面25aと表面8aとがなす角の角度が比較的大きい場合、当該角度が小さい場合と比べて、エッチングにより表面25aの第1連結部8側の端部を滑らかに形成し易くなる。これにより、シード層25に応力集中が生じることを抑制することができる。
絶縁層51は、第1配線21上に乗り上げるように設けられている。第1連結部8の表面8aには、第1配線21と接触するように、第1配線21との対向領域の全体にわたって拡散層8bが形成されている。拡散層8bは、支持部5、可動部6及び第1連結部8にわたって形成されている。拡散層8bは、例えば、n型のシリコン基板の表面にp型の不純物が拡散されることにより形成された拡散領域、又はp型のシリコン基板の表面にn型の不純物が拡散されることにより形成された拡散領域である。
第1配線21の第2部分23及び第3部分24についても、第1部分22と同一の層構成及び断面形状を有している。すなわち、第2部分23における第1本体部26の上面(支持部5と向かい合う表面以外の表面)についても、第2部分23の延在方向(第2軸線X2と平行な方向)に垂直な断面において、上面の全体にわたって曲率が連続した形状を有している。第3部分24における第1本体部26の上面(可動部6と向かい合う表面以外の表面)についても、第3部分24の延在方向(第2軸線X2と平行な方向)に垂直な断面において、上面の全体にわたって曲率が連続した形状を有している。このように、「第1配線21の延在方向に垂直な断面」とは、互いに異なる方向に延在する複数の部分を第1配線21が有している場合、各部分における延在方向に垂直な断面を意味する。この例では、第1配線21は、延在方向に沿って一様な断面形状を有している。
図6は、試作された第1配線の断面を示す顕微鏡写真である。このような断面形状の第1配線21は、フォトリソグラフィ、ドライエッチング又はウェットエッチング等により形成することができる。例えば、フォトリソグラフィを用いる場合、グレースケールマスクの使用、又はフォトレジストのベークにより、3次元的に丸みを帯びたレジストパターンを形成することができる。このレジストパターンをシリコン基板に転写することにより、所望の配線形状を得ることができる。
図4に示されるように、第2配線31Aは、絶縁層51の内部に設けられている。すなわち、第2配線31Aは、絶縁層51を介して支持部5上及び第2連結部7上に設けられている。第2配線31Aは、例えば断面矩形状に形成されている。
図5に示されるように、可動部6には、コイル12に対応する形状を呈する溝部55が設けられている。溝部55の内面には、絶縁層51が設けられている。溝部55内の絶縁層51上には、シード層56が設けられている。シード層56は、例えば窒化チタンからなる。コイル12は、絶縁層51及びシード層56を介して溝部55内に配置されている。コイル12は、例えばダマシン法によって溝部55内に例えば銅等の金属材料を埋め込むことにより形成される。絶縁層52は、溝部55内に配置されたコイル12を覆うように設けられている。第2配線31Bは、例えば第2配線31Aと同一の断面形状を有し、絶縁層52上に設けられている。すなわち、第2配線31Bは、絶縁層51,52を介して可動部6上に設けられている。第2配線31Bは、コイル12の内側端部を露出させるように絶縁層52に設けられた開口を介して、コイル12と電気的に接続されている。第2配線31B上には、絶縁層53が設けられている。
コイル12の形成過程において、コイル12における絶縁層52側の表面とシード層56との境界に沿って溝部13が形成される。絶縁層52は、可動部6の反対側の表面において溝部13と対応する位置に、溝部52aを有している。溝部52aは、絶縁層52の形成時に絶縁層52の一部が溝部13内に入り込むことにより形成される。絶縁層53は、可動部6の反対側の表面において溝部52aと対応する位置に、溝部53aを有している。溝部53aは、絶縁層53の形成時に絶縁層53の一部が溝部52a内に入り込むことにより形成される。
アクチュエータ装置1では、コイル11に電流が流れると、磁界発生部3で生じる磁界により、コイル11内を流れる電子に所定の方向にローレンツ力が生じる。これにより、コイル11は所定の方向に力を受ける。このため、コイル11に流れる電流の向き又は大きさ等を制御することで、支持部5を第2軸線X2周りに揺動させることができる。同様に、コイル12に流れる電流の向き又は大きさ等を制御することで、可動部6を第1軸線X1周りに揺動させることができる。よって、コイル11及びコイル12の電流の向き又は大きさ等をそれぞれ制御することにより、互いに直交する第1軸線X1及び第2軸線X2それぞれの周りにミラー2を揺動させることができる。また、可動部6の共振周波数に対応する周波数の電流をコイル12に流すことで、可動部6を共振周波数レベルで高速に揺動させることもできる。この場合、内側(ミラー2に近い側)に配置された第1連結部8の方が、外側に配置された第2連結部7よりも高速で揺動される。
以上説明したアクチュエータ装置1では、第1連結部8上に設けられた第1配線21が、ビッカース硬さが50HV以上の第1金属材料からなる第1本体部26を有している。これにより、第1配線21の全体が拡散層によって構成される場合と比べて第1配線21の低抵抗化が図られると共に、ビッカース硬さが50HVよりも小さい金属材料によって第1配線21の全体が構成される場合と比べて金属疲労の抑制が図られる。更に、第1本体部26の第2表面28が、第1配線21の延在方向に垂直な断面において、第2表面28の全体にわたって曲率が連続した形状を有している。これにより、第2表面28に曲率が不連続な点が存在しないため、応力集中の発生が抑制され、その結果、第1配線21に脆性破壊が生じるのを抑制することができる。
ここで、図7(a)〜図7(c)及び図8を参照しつつ、第1配線21の第2表面28に曲率が不連続な点が存在しないことの優位性について更に説明する。図7(a)〜図7(c)に示される第1〜第3比較例では、第1連結部8に対応する連結部108上に、第1配線21に対応する配線121が設けられている。連結部108及び配線121上には、絶縁層51に対応する絶縁層151が設けられている。第1〜第3比較例のいずれにおいても、配線121の上面(連結部108と向かい合う表面以外の表面)128に曲率が不連続な点P1〜P3が存在している。点P1〜P3は、尖った角部の頂点である。点P1〜P3は、平坦部分同士の接続点、又は平坦部分と湾曲部分との接続点に形成されている。曲率が不連続な点は、湾曲部分同士の接続点に形成される場合もある。図8は、試作された第3比較例の配線の断面を示す顕微鏡写真である。このような断面形状の配線121は、例えば実施形態の第1配線21と同様の方法により形成される。
第1〜第3比較例のように配線121の上面128に曲率が不連続な点P1〜P3が存在している場合、アクチュエータ装置の製造過程等において上面128に欠け、傷等が発生し易く、それらが発生した位置において応力集中が生じるおそれがある。すなわち、例えば配線形成のためのエッチング中、又は製造工程におけるハンドリング中などに、点P1〜P3に対して外力が加わることにより、当該部分に欠け、傷等が発生する場合がある。この場合、可動部の揺動時に、欠け、傷等が発生した部分に応力が集中することにより、脆性破壊が生じるおそれがある。これに対して、アクチュエータ装置1では、第1配線21の第2表面28が全体にわたって曲率が連続した形状を有しているため、そのような応力集中の発生を抑制することができる。
したがって、アクチュエータ装置1によれば、第1連結部8上に設けられた第1配線21の低抵抗化、及び金属疲労の抑制を図りつつも、信頼性を高めることができる。なお、仮に第1配線21がコイル12のように溝部内に埋め込まれたダマシン配線により構成されている場合、次のような不利益がある。まず、一般にダマシン配線の材料としては銅が用いられるが、銅のビッカース硬さは50HVよりも小さいため、配線に金属疲労が生じ易い。このため、塑性変形によるバネ定数の非線形化、ヒステリシス挙動、加工硬化等による制御性の低下、特性の経時変化等が生じるおそれがある。また、ダマシン配線では溝部内に角部が形成されており、溝部内の表面に曲率が不連続な点が複数存在するため、応力集中が生じ易い。
アクチュエータ装置1では、第2表面28が、第1配線21の延在方向に垂直な断面において、第1連結部8の反対側に向けて凸となるように湾曲した湾曲部分28bを有している。これにより、第1配線21に脆性破壊が生じるのを抑制しつつ、第1配線21の断面積を確保して、第1配線21の一層の低抵抗化を図ることができる。すなわち、アクチュエータ装置1では、例えば、湾曲部分28bが仮に第1連結部8側に向けて凸となるように湾曲している場合と比べて、第1配線21の断面積が大きい。
アクチュエータ装置1では、第2表面28が、第1配線21の延在方向に垂直な断面において、鋭角をなすように第1表面27と交差している。これにより、第2表面28と第1表面27との交差部分における応力集中を抑制することができ、信頼性を一層高めることができる。
アクチュエータ装置1では、不純物が拡散された拡散層8bが、第1配線21と接触するように第1連結部8に形成されている。これにより、拡散層8bが第1配線21の一部として機能するため、第1配線21の更なる低抵抗化を図ることができる。
アクチュエータ装置1では、第1本体部26が、タングステン、チタン、ニッケル、モリブデン、アルミニウム合金、タングステン合金、チタン合金、ニッケル合金及びステンレス鋼の少なくとも1つからなる。これにより、第1連結部8上に設けられた第1配線21の低抵抗化、及び金属疲労の抑制を図りつつも、信頼性を高めることができるとの上記作用効果が好適に得られる。
アクチュエータ装置1では、第1配線21が、第1連結部8と第1本体部26との間に設けられたシード層25を更に有している。これにより、第1連結部8に対する第1本体部26の密着性を向上することができる。
アクチュエータ装置1では、シード層25が、ビッカース硬さが50HV以上の金属材料からなる。これにより、シード層25に金属疲労及び脆性破壊が生じるのを抑制することができる。
アクチュエータ装置1では、支持部5上に設けられた第2配線31Aが、ビッカース硬さが50HVよりも小さい第2金属材料からなる。これにより、例えば第2金属材料として比抵抗が低い材料を用いることで、支持部5上に設けられた第2配線31Aを低抵抗化することができる。
アクチュエータ装置1では、可動部6にミラー2が設けられている。これにより、ミラー2を第1軸線X1周りに揺動させて、光の走査等に利用することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。
第1配線21は、図9(a)及び図9(b)に示される第1及び第2変形例のように構成されてもよい。第1及び第2変形例では、拡散層8bが形成されておらず、第1連結部8上に絶縁層57が設けられている。第1配線21は、絶縁層57上に設けられている。すなわち、第1配線21は、絶縁層57を介して第1連結部8上に設けられている。第1本体部26の第1表面27は、シード層25及び絶縁層57を介して第1連結部8と向かい合っている。第1変形例及び第2変形例のいずれにおいても、第1本体部26の第2表面28は、第1配線21の延在方向に垂直な断面において、第2表面28の全体にわたって曲率が連続した形状を有している。第1変形例では、第2表面28と第1表面27とがなす角度θは、例えば約45度〜約90度である。第2変形例では、第2表面28は、当該断面において、平坦部分28a及び湾曲部分28bに加えて、第1連結部8側に向けて凸となるように湾曲した湾曲部分28cを更に有している。第2変形例では、第2表面28と第1連結部8とがなす角度θは、例えば約45度以下である。このような第1及び第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、第1連結部8上に設けられた第1配線21の低抵抗化、及び金属疲労の抑制を図りつつも、信頼性を高めることができる。
上記実施形態と第1及び第2変形例とを比べると、上記実施形態では、第2表面28と第1表面27とのなす角度θが第1変形例の場合よりも小さい。これにより、第1変形例と比べて、第2表面28と第1表面27との交差部分における応力集中を一層抑制することができる。また、上記実施形態では、第2表面28と第1表面27との交差部分まで湾曲部分28bが延在しているため、第1本体部26の高さが同一であると仮定すると、第2変形例に比べて、湾曲部分28bが形成された領域が広い。これにより、第1配線21の断面積を大きくすることができ、低抵抗化を図ることができる。一方、第1変形例と第2変形例とを比べると、第1変形例では、角度θが第2変形例よりも大きいため、第2変形例と比べて、第1配線21の断面積を大きくすることができ、低抵抗化を図ることができる。これに対して、第2変形例では、角度θが第1変形例よりも小さいため、第1変形例と比べて、第2表面28と第1表面27との交差部分における応力集中を抑制することができる。更に、第2変形例では、湾曲部分28b,29cを有するため、応力を分散させることができる。
図10に示される第3変形例のように、アクチュエータ装置1がバリア層41を更に備えてもよい。第3変形例では、第1本体部26がアルミニウム合金、タングステン合金、チタン合金、ニッケル合金又はステンレス鋼からなり、第1本体部26に拡散係数が高い金属材料(例えば亜鉛(Zn)、銅)が含まれている。当該金属材料の拡散を抑制するために、絶縁層57上にバリア層41が設けられ、バリア層41上に第1配線21が設けられている。すなわち、バリア層41は、第1連結部8と第1配線21との間に設けられている。バリア層41は、ビッカース硬さが50HV以上の金属材料又は絶縁材料からなる。バリア層41を構成する材料は、例えばチタン、窒化チタン又はタングステンである。この例では、バリア層41は、絶縁層57上に設けられた第1層42と、第1層42上に設けられた第2層43と、を有している。例えば、第1層42はチタンからなり、第2層43は窒化チタン(TiN)又はタングステンからなる。第2層43が主にバリア機能を奏する層である。このような第3変形例によっても、上記実施形態と同様に、第1連結部8上に設けられた第1配線21の低抵抗化、及び金属疲労の抑制を図りつつも、信頼性を高めることができる。また、第1本体部26に含まれる金属材料の第1連結部8への拡散を抑制することができる。更に、バリア層41に金属疲労及び脆性破壊が生じるのを抑制することができる。なお、第1層42が省略され、第2層43が絶縁層57上に直接に設けられてもよい。
図11に示される第4変形例のようにシード層25が形成されてもよい。第4変形例では、第1配線21の延在方向(第1軸線X1と平行な方向)に垂直な断面(図11に示される断面)において、第1配線21の第2表面28とシード層25の表面25aとの境界部分における曲率は、連続している。表面25aは、当該断面において、表面25aの全体にわたって曲率が連続した形状を有している。すなわち、第1配線21において、第1本体部26の第2表面28及びシード層25の表面25aは、当該断面において、第2表面28及び表面25aの全体にわたって曲率が連続した形状を有している。表面25aは、当該断面において、鋭角をなすように第1連結部8と交差している。表面25aと第1連結部8とがなす角度(表面25aと第1連結部8とがなす内側の角の角度)は、例えば約45度以下である。このような第4変形例によっても、上記実施形態と同様に、第1連結部8上に設けられた第1配線21の低抵抗化、及び金属疲労の抑制を図りつつも、信頼性を高めることができる。また、第2表面28と表面25aとの境界部分における応力集中を抑制することができ、信頼性をより一層高めることができる。
上記実施形態において、各第2連結部7上に設けられた配線(以下、第3配線という)が、第1配線21と同様に構成されてもよい。この場合、第3配線は、例えば、配線14a,14bにおける第2連結部7上に位置する部分、及び第2配線31A,31Bにおける第2連結部7上に位置する部分として構成され、配線14a,14b又は第2配線31A,31Bと電気的に接続される。第3配線は、ビッカース硬さが50HV以上の金属材料からなる第2本体部を有する。第3配線を構成する金属材料としては、第1金属材料として挙げられた材料を用いることができる。第3配線の第2本体部は、第2連結部7と向かい合う第3表面と、第3表面以外の第4表面と、を含む。第4表面は、第3配線の延在方向に垂直な断面において、第4表面の全体にわたって曲率が連続した形状を有する。このような変形例によれば、第2連結部7上に設けられた第3配線についても、低抵抗化及び金属疲労の抑制を図りつつも、信頼性を高めることができる。なお、第3配線においても、第1配線21と同様に、「第3配線の延在方向に垂直な断面」とは、互いに異なる方向に延在する複数の部分を第3配線が有する場合、各部分における延在方向に垂直な断面を意味する。例えば、直線状部分7a上の第3配線の延在方向は、当該直線状部分7aに沿った方向である。直線状の折り返し部分7b上の第3配線の延在方向は、当該折り返し部分7bに沿った方向である。R状に湾曲した折り返し部分7b上の第3配線の延在方向は、当該折り返し部分7bに沿った方向(周方向)である。
アクチュエータ装置1は、ミラー2以外を駆動するものであってもよい。ミラー2の形状は、円形状に限られない。ミラー2は、例えば矩形状、菱形状又は楕円形状等を呈していてもよい。上記実施形態では、ミラー2の揺動(駆動)は、電磁力によって行われているが、例えば圧電素子によって行われてもよい。この場合、コイル11,12に代えて、圧電素子に電圧を印加するための配線が設けられる。磁界発生部3は省略されてもよい。第1軸線X1と第2軸線X2とは、直交していなくてもよく、互いに交差していればよい。アクチュエータ装置1は、第1軸線X1の周りのみに揺動させるものであってもよい。この場合、枠部4及び第2連結部7は省略されてもよく、制御回路等との電気的な接続のための電極は支持部5に設けられてもよい。
第1配線21が第2部分23及び第3部分24を有さず、第1配線21の全体が直線状に形成されてもよい。第2表面28は、平坦部分28aを有していなくてもよく、例えば全体にわたって湾曲した形状を有していてもよい。各第2連結部7は、直線状に形成されてもよい。シード層25は、ビッカース硬さが50HVよりも小さい金属材料からなっていてもよい。第1本体部26の第2表面28とシード層25の表面25aとは、第1部分22の延在方向に垂直な断面において、互いの境界部分における曲率が連続していなくてもよい。第3配線についても、第1配線21と同様に、第2連結部7に設けられたシード層と、当該シード層上に設けられた第2本体部と、を有していてもよい。この場合、少なくとも第2本体部が、第1配線21の第1本体部26を構成する金属材料よりも比抵抗が小さい金属材料、及び/又はビッカース硬さが50HV以上の金属材料からなっていてもよい。