以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
[抵抗器の説明]
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る抵抗器1の斜視図である。図2は、第1実施形態に係る抵抗器1を回路基板への実装面側から見た斜視図である。
抵抗器1は、抵抗体10と、第1電極体11(電極)と、第2電極体12(電極)とを備え、第1電極体11と抵抗体10と第2電極体12とが、この順に接合されたものである。抵抗器1は、図1には示されていない回路基板等に実装される。例えば、抵抗器1は、回路基板のランドパターン上に形成された一対の電極の上に配置される。本実施形態では、抵抗器1は、電流検出用抵抗器(シャント抵抗器)として用いられる。
なお、本実施形態では、第1電極体11と第2電極体12が並ぶ方向(抵抗器1の長手方向)をX方向(第1電極体11側を+X方向、第2電極体12側を−X方向)とし、抵抗器1の幅方向をY方向(図1の紙面手前側を+Y方向、図1の紙面奥側を−Y方向)とし、抵抗器1の厚み方向をZ方向(回路基板に向かう方向を−Z方向、回路基板から離れる方向を+Z方向)とし、X方向、Y方向、Z方向は互いに直交するものとする。また、抵抗器1の実装面とは、回路基板に抵抗器1を実装する際に抵抗器1が回路基板に対向する面を意味し、第1電極体11、抵抗体10、第2電極体12の回路基板に対向する面を含む。
本実施形態においては、抵抗体10は、直方体(又は立方体)形状に形成されている。
また、抵抗体10は、大電流を精度よく検出する観点から、比抵抗が小さく、且つ抵抗温度係数(TCR)が小さい抵抗体材料であることが好ましい。一例として、銅・マンガン・ニッケル系合金、銅・マンガン・スズ系合金、ニッケル・クロム系合金、銅・ニッケル系合金等を使用することができる。
第1電極体11は、抵抗体10に接合する胴体部21と、胴体部21と一体に形成され回路基板側に延びる脚部22とを備える。また、第2電極体12は、抵抗体10に接合する胴体部31と、胴体部31と一体に形成され回路基板側に延びる脚部32と、を備える。
第1電極体11(胴体部21、脚部22)及び第2電極体12(胴体部31、脚部32)は、安定した検出精度を確保する観点から、電気伝導性及び熱伝導性の良好な導電性材料であることが好ましい。一例として、第1電極体11及び第2電極体12として、銅、銅系合金等を使用することができる。銅の中では、無酸素銅(C1020)を使用することが好ましい。第1電極体11と第2電極体12とは、互いに同一のものを使用できる。
第1電極体11における胴体部21は、抵抗体10の+X方向の端面と略同形状の端面を有し、この端面において抵抗体10の+X方向の端面と突き合わされた態様で接合している。胴体部21と抵抗体10との接合部13では、抵抗体10と胴体部21との境界に段差がなく平坦であり、抵抗体10と胴体部21とは滑らかに連続している。すなわち、接合部13の表面は、抵抗体10と胴体部21との境界全周に亘って平坦(段差がない状態)に形成されている。
第2電極体12における胴体部31は、抵抗体10の−X方向の端面と略同形状の端面を有し、この端面において抵抗体10の−X方向の端面と突き合わされた態様で接合している。胴体部31と抵抗体10との接合部14では、抵抗体10と胴体部31との境界に段差がなく平坦であり、抵抗体10と胴体部31とは滑らかに連続している。すなわち、接合部14の表面は、抵抗体10と胴体部31との境界全周に亘って平坦(段差がない状態)に形成されている。
脚部22は、抵抗器1の実装面、即ち胴体部21の回路基板に対向する面から−Z方向に向けて延出した部材である。脚部22は、胴体部21よりもX方向の長さが短くなっているが、+X方向の側面は胴体部21の+X方向の側面と同一平面を形成している。
脚部32は、抵抗器1の実装面、即ち胴体部31の回路基板に対向する面から−Z方向に向けて延出した部材である。脚部32は、胴体部31よりもX方向の長さが短くなっているが、−X方向の側面は胴体部31の−X方向の側面と同一平面を形成している。
本実施形態において、抵抗体10と第1電極体11との接合部13における接合面、及び抵抗体10と第2電極体12との接合部14における接合面の各々は、互いにクラッド接合(固相接合)にて接合している。すなわち、接合面の各々は、抵抗体10と第1電極体11の金属原子が互いに拡散した拡散接合面、抵抗体10と第2電極体12の金属原子が互いに拡散した拡散接合面、となっている。
抵抗器1は、脚部22及び脚部32が回路基板側に突出するように回路基板上に実装されることにより、抵抗体10を回路基板から浮かせた状態で回路基板に実装される。
胴体部21は、脚部22のX方向の長さ分よりも−X方向側に突出した突出部211を含み、突出部211が抵抗体10に接合している。同様に、胴体部31は、脚部32のX方向の長さ分よりも+X方向側に突出した突出部311を含み、突出部311が抵抗体10に接合している。
第1電極体11及び第2電極体12には、スリット4がそれぞれ形成されている。第1電極体11に形成されたスリット4は、胴体部21の厚み方向の中央部であって+X軸側の側面において、−X軸方向(第1電極体11と第2電極体12を結ぶ方向)である抵抗体10に向かう方向を深さとし、胴体部21の+Y軸側の側面及び−Y軸側の側面を連通して形成されている。
第2電極体12に形成されたスリット4は、胴体部31の厚み方向の中央部であって−X軸側の側面において、+X軸方向(第1電極体11と第2電極体12を結ぶ方向)である抵抗体10に向かう方向を深さとし、胴体部31の+Y軸側の側面及び−Y軸側の側面を連通して形成されている。
第1電極体11に形成されたスリット4と、第2電極体12に形成されたスリット4は、厚み方向(Z軸方向)の位置が同じで、Z軸方向の幅及びX軸方向の深さが同じであることが好適である。またスリット4は、図において、胴体部21,31の±Y軸側の側面に連通するように形成されているが、いずれか一方の側面のみに連通する、又は両側面に連通しない形状にしてもよい。
また、スリット4は切欠き部や凹状の段差部を形成するものであればよく、断面形状が矩形や円形などいずれの形状であってもよい。
スリット4は、後述の製造工程により個片化したのち、電子ビーム等を用いて形成することができる。この場合、上記のようにスリット4を胴体部21,31の±Y軸側の側面に連通しない形状にすることが可能である。
なお、スリット4の深さを小さく設計する場合には、後述の製造工程において同時に形成することも可能である。この場合、スリット4は、胴体部21,31の±Y軸側の側面に必ず連通する形状となる。
抵抗器1の長手方向(X方向)の長さL(図1参照)を一定としたとき、突出部211のX方向の長さL1(胴体部21の長さ、図1参照)、又は突出部311のX方向の長さL2(胴体部31のX方向の長さ、図1参照)を任意に調整し、抵抗体10のX方向の長さL0(図1参照)をL0=L−(L1+L2)として調整することができる。したがって、抵抗器1の寸法(L)を変更することなく、また脚部22,32の形状を変更することなく、抵抗器1の抵抗値を任意に調整することができる。又は、抵抗器1の寸法(L)を変更することなく、突出部211,311の突出量を大きくしても、脚部22と脚部32との距離を確保することができるため、ランドパターン間距離を確保しつつ、抵抗器1の設計自由度を高くすることができる。
ここで、抵抗体10の長手方向(X方向)における抵抗体10の長さL0と、第1電極体11のX方向の長さL1と、第2電極体12のX方向の長さL2の比は、任意に設定することができる。ただし、TCR(抵抗温度係数[ppm/℃])の増加を抑制しつつ、抵抗値を小さくする観点から、L1:L0:L2=1:2:1、若しくは1:2:1近傍であることが好ましい。
更に、放熱性を高めるとともに、抵抗値を小さくする観点から、抵抗器1の長さL(=L1+L0+L2)に対する抵抗体10の長さL0の比率は、50%以下であることが好ましい。
スリット4の深さについては、例えば抵抗体10に入り込まない範囲で任意に設計することができる。またスリット4の厚み方向の位置及び幅もある程度任意に設計できる。ただし、スリット4の厚み方向の位置が−Z軸方向に移動しすぎると抵抗器1全体の抵抗値が上昇し、消費電力が上昇するおそれがある。逆に+Z軸方向に移動しすぎると胴体部21,31の上部(ワイヤを取り付ける部分)がスリット4の加工の際に破断するおそれがある。したがって、スリット4の厚み方向の位置は、胴体部21,31の厚み方向の中央付近が望ましい。また、スリット4の幅も、加工時間等を考慮すると細い方が望ましい。
本実施形態において、抵抗器1は、表面に、筋状凹凸15(図1の拡大図、図2の拡大図参照)を有する。本実施形態においては、筋状凹凸15は、抵抗器1の+Y方向に対向する側面、及び−Y方向に対向する側面以外の側面においてY方向に沿って延びるように形成されている。
筋状凹凸15の凹部と凸部による表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で約0.2〜0.3μmとすることができる。
本実施形態においては、高密度回路基板に適合させる観点から、X方向における抵抗器1の長さLが、3.2mm以下、Y方向における抵抗器1の長さ(幅)Wが1.6mm以下(製品規格3216サイズ)とすることができる。よって、本実施形態の抵抗器1のサイズとしては、製品規格2012サイズ(L:2,0mm、W:1.2mm)、製品規格1608サイズ(L:1.6mm,W:0.8mm)、製品規格1005サイズ(L:1.0mm、W:0.5mm)にも適用可能である。本実施形態の抵抗器1の長さLは、後述する製造方法における取り扱い性、例えば抵抗器1の基となる抵抗器母材100(図4参照)の破断防止の観点から、上記の製品規格1005サイズ以上のサイズとすることができる。
本実施形態においては、抵抗器1の抵抗値は、小型且つ低抵抗を実現する観点から上記のいずれのサイズにおいても2mΩ以下となるように調整可能であり、例えば0.5mΩ以下となるように調整可能である。ここでの低抵抗とは、一般的な抵抗器(例えば、上記の特開2002−57009号公報のタイプの抵抗器)の寸法から想定される抵抗値よりも低い抵抗値を含む概念である。
本実施形態において、抵抗器1のY方向に延びる縁辺である角部分Pは、いずれも面取り形状を有している。本実施形態では、角部分Pの曲率半径は、R=0.1mm以下であることが好ましい。
<抵抗器1のモデルとTCRの解析結果>
図3Aは、第1実施形態の抵抗器1のモデルの斜視図である。図3Bは、第1実施形態の抵抗器1のモデルにおいてスリット4の深さ及び電位の検出位置を変化させた場合のTCR特性を示すグラフである。
図3Aに示す抵抗器1のモデルは、図1,2に示す抵抗器1と同様であり、各構成要素についても同一も符号を付するものとする。図3Aは、抵抗器1のモデルを回路基板5のモデルに配置し、半田6のモデルを用いて抵抗器1を回路基板5に実装した実装モデルとなっている。抵抗器1のX軸方向の寸法は、全体で2mmとし、抵抗体10が1mm、第1電極体11及び第2電極体12が0.5mmに設定している。
上記の実装モデルにおいて、回路基板5側から第1電極体11、抵抗体10、第2電極体12に所定の電流を印加し、このときの第1電極体11の上面(実装面の反対面)の電位の検出位置、及び第2電極体12の上面の電位の検出位置による両検出位置間の電位差をシミュレーションにより算出した。
そして、当該電位差を印加した電流で除算することにより抵抗値を算出した。さらに、印加する電流値を増加させることで抵抗器1の温度を上昇させ、その時の電位差及び抵抗値を算出し、温度上昇前の抵抗値と温度上昇後の抵抗値の差分と温度上昇量に基づき、最終的に抵抗器1のTCRを算出した。
TCR特性の算出の際には、スリット4の深さ、及び電位の検出位置(ワイヤーの取り付け位置)を入力パラメータとしており、図3Bにおいて、TCR特性をこの2つのパラメータに基づく曲線として表している。
スリット4の深さは、0mm(すなわち、スリット4無)、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mmに設定した。
第1電極体11に設定された電位の検出位置は、第1電極体11の+X軸側の端部を原点(0mm)として抵抗体10に向かう方向(−X軸方向)に原点(0mm)から0.5mmの範囲で連続的に変化させた。
第2電極体12に設定される電位の検出位置は、第2電極体12の−X軸側の端部を原点(0mm)として抵抗体10に向かう方向(+X軸方向)に原点(0mm)から0.5mmの範囲で連続的に変化させた。
第1電極体11に設定された電位の検出位置と第2電極体12に設定された電位の検出位置は同一の関係を維持させながら変化させた。
まずスリット4が無い場合、すなわちスリット4の深さが0mmの場合のTCR特性を検討する。この場合、電位の検出位置が原点(0mm)のときにTCRが正の値であっても最も高い値となっているが、電位の検出位置を抵抗体10側に移動させるとTCRが単調に減少する。このとき、電位の検出位置が0.45mm付近でTCRが0になり、その後も負の値に転じつつも単調減少していく。
また、TCR特性は原点から遠ざかるとTCRを示す曲線の傾きが増加する傾向がある。これは電極(第1電極体11、第2電極体12)の上面において、抵抗体10に近づくほど電流密度が増加し電位分布(等電位線)も密になっていくことに起因する。
ここで、電位の検出位置は、電位差を測定する検出器に電気的に接続するボンディングワイヤーを実際に取り付ける位置に相当する。原点(0mm)となる位置は、第1電極体11及び第2電極体12の端部(角部)であり、ワイヤーを取り付けるのは困難である。また、0.5mmとなる位置は、第1電極体11と抵抗体10との境界(接合部13)、及び第2電極体12と抵抗体10との境界(接合部14)となる。この位置にワイヤーを取り付けることは可能であるが、ワイヤーが抵抗体10に接触するので、正確な電位差を測定することが困難となる。よって、実際には、電位の検出位置が例えば0.05mmから0.45mmとなる範囲内にワイヤーを取り付けることになる。
上記のように、電位の検出位置が0.45mm付近のところでTCRは0となるが、この位置を狙ってワイヤーを取り付ける場合、位置精度が±0.05mmとすると、TCRは−0.9[ppm/K]±25[ppm/K]の範囲でバラつきが発生する。
また、電位の検出位置が0.2mmから0.3mmの範囲は、ワイヤーを取り付けやすい位置であるが、TCRは高い値を維持している。よって、この範囲にワイヤーを取り付けても抵抗器1のTCRは大きな値を維持している。また、上記の範囲ではTCR特性は単調減少しつつその傾きも大きい。よって、抵抗器1に接続された電流検出用のセンサにおいて、この範囲にワイヤーを取り付ける際の位置ずれは、それがそのままTCRのバラつきとして顕著に表れることになる。
一方、スリット4の深さを0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mmと深くした場合でも、原点(0mm)から離れるほど単調減少するTCR特性の傾向に変化はない。しかし、原点(0mm)における値がスリット4を深くするほど低くなるとともに、上記の単調減少の際の傾きも小さくなることがわかる。これは、スリット4を深くしていくほど、抵抗器1に印加された電流のうち第1電極体11の上面、及び第2電極体12の上面に流れる成分が減少していき、電位分布(等電位線)が疎となる領域が増加することに起因する。
スリット4の深さが0mm、0.1mmのとき、電位の検出位置が0.0mmのときからTCRは単調に減少している。一方、スリット4の深さが0.2mmのとき、電位の検出位置が0.0mmから0.1mm程度の範囲においてTCRはほとんど変化しておらず、平坦化していることがわかる。したがって、電位の検出位置が0.0mmから0.1mmとなる範囲において、ワイヤーを所定の誤差範囲(例えば±0.05mm)で取り付けたとしても電流検出用のセンサから見た取り付け誤差に起因するTCRのバラつきは抑制される。
また、スリット4の深さが0.3mmのとき、電位の検出位置が0.0mmから0.25mm程度の範囲においてTCRはほとんど変化しておらず、平坦化していることがわかる。したがって、電位の検出位置が0.0mmから0.25mmとなる範囲において、ワイヤーを所定の誤差範囲(例えば±0.05mm)で取り付けたとしても電流検出用のセンサから見た取り付け誤差に起因するTCRのバラつきは抑制される。
また、電位の検出位置が0.22mm程度の位置でTCRが0になっている。またTCRが0となる付近のTCR特性も平坦性をほぼ維持しており、TCR特性を示す曲線の傾きもスリット4の深さが0の場合のTCR特性が示す曲線の傾きよりも十分に小さくなっている。
以上より、スリット4の深さを0.3mmとし、ワイヤーの取り付け位置を第1電極体11の端部(角部)から0.22mmの位置、第2電極体12の端部(角部)から0.22mm位置を中心として取り付ける(ワイヤーの打ち込みの位置精度は±0.05mm)ことにより、TCRは0[ppm/K]±4.5[ppm/K]となり、TCRが低く非常に好適な特性が得られる。つまり、電位の検出位置(ワイヤーの取り付け位置)が左右の電極上で多少のズレが生じても、そのズレの影響をほぼ受けず、電位のバラつきの小さい特性が得られる。
上記のシミュレーションにおいて、スリット4は抵抗体10にまで及んではいない。これにより第1実施形態の抵抗器1では、抵抗値をほとんど変化させることなく、TCRを最適化可能であることがわかる。
なお、スリット4の深さを0.4mmとした場合に、TCRが全体的に負の値となっているのは、抵抗体10から第1電極体11に向かう電流の経路、及び抵抗体10から第2電極体12に電流が向かう経路に対し、スリット4がボトルネックを形成していることに起因する。
ただし、電位の検出位置が0.0mmから0.30mm程度の範囲においてTCRはほとんど変化しておらず、平坦化していることがわかる。したがって、電位の検出位置が0.0mmから0.30mmとなる範囲において、ワイヤーを所定の誤差範囲(例えば±0.05mm)で取り付けたとしても電流検出用のセンサから見た取り付け誤差に起因するTCRのバラつきは抑制される。
<第1実施形態の効果>
次に、第1実施形態の作用効果について説明する。
第1実施形態の抵抗器1によれば、抵抗体10と、抵抗体10に接続された一対の電極(第1電極体11、第2電極体12)と、を備えた抵抗器1において、一対の電極(第1電極体11、第2電極体12)を互いに結ぶ方向(X軸方向)に対向する面(−X軸側の面、+X軸側の面)の少なくとも一方において抵抗器1の厚み方向(Z軸方向)の途中にスリット4が形成されている。
上記構成により、スリット4を形成することで抵抗値をほとんど変化させることなく、抵抗器1上面における電位の検出位置のズレに起因するTCRの変化を抑制することができる。より詳細には、ワイヤーの取り付け可能な位置におけるTCR特性の均一性を高め、且つTCRの絶対値を低減可能となる。
すなわち、スリット4を形成することで、電流検出用のセンサに接続したワイヤーを取り付け可能な領域(胴体部21,31の上部)において、ワイヤーの取り付け誤差範囲においてTCR特性が比較的平坦となる領域を形成することができ、当該領域の長さはスリット4の深さに応じて調整することができる。したがって、電位の検出位置(ワイヤーの取り付け位置)の左右のズレが影響することなく、電流検出用のセンサから見た抵抗器1のTCRのバラつきを効果的に抑制することができる。
特に、スリット4の深さを適切に調節(例えば図3での0.3mm)することにより、ワイヤーの取り付け誤差範囲におけるTCR特性の平坦性を維持するとともにTCRの絶対値がゼロとなる位置を形成することが可能である。したがって、電位の検出位置(ワイヤーの取り付け位置)の左右のズレが影響することなく、電流検出用のセンサから見た抵抗器1のTCRのバラつきのみならず、TCRの絶対値を効果的に抑制することができ、TCRを良好に保つことが可能となる。
第1実施形態の抵抗器1において、スリット4は、一対の電極(第1電極体11、第2電極体12)を互いに結ぶ方向(X軸方向)に対して平行に形成されている。これにより、スリット4を容易に形成することができる。
第1実施形態の抵抗器1において、スリット4は、一対の電極を互いに結ぶ方向(X軸方向)に対向する面(−X軸側の面、+X軸側の面)の両方に形成されている。これにより、TCRをさらに良好に保つことができる。
第1実施形態の抵抗器1において、スリット4は、抵抗器1の幅方向(Y軸方向)に対向する面に連通している。幅方向(Y軸方向)とは、第1電極体11と第2電極体12とを互いに結ぶ方向(X軸方向)と抵抗器1の厚み方向(Z軸方向)に交差(直交)する方向である。これにより、抵抗器1の幅方向(Y軸方向)のTCRの偏差を低減することで、TCRをさらに良好に保つことができる。
第1実施形態の抵抗器1において、抵抗体10の端面と、電極(第1電極体11、第2電極体12)の端面とが、突き合わせて接合され、スリット4は、電極(第1電極体11、第2電極体12)に形成されている。
これにより、抵抗体10の端面と電極(第1電極体11、第2電極体12)の端面とを突き合せた構造の抵抗器1であって、TCRを良好に保つことが可能となる。
本実施形態の抵抗器1において、一対の電極(第1電極体11、第2電極体12)を互いに結ぶ方向の長さが3.2mm以下である。前記のように第1電極体11、抵抗体10、第2電極体12のX軸方向の長さの割合がL1:L0:L2=1:2:1である場合、第1電極体11、第2電極体12の長さは0.8mmとなる。このように第1電極体11及び第2電極体12の寸法が小さくなるとTCR特性を示す曲線(図3B参照)は短い範囲で大きく変化する。しかし、本実施形態のように、スリット4を形成することで、ワイヤーの取り付けの誤差範囲におけるTCRの平坦性を維持し、且つTCRの絶対値をゼロとする位置を形成することができる。したがって、抵抗体10の端面と電極(第1電極体11、第2電極体12)の端面とを突き合せた構造であって、長手方向の寸法が3.2mm以下の抵抗器1であっても、TCRを良好に保つことが可能となる。
その他、第1実施形態の抵抗器1は以下のような作用効果を奏する。
第1実施形態の抵抗器1によれば、抵抗体10と、抵抗体10に接続された一対の電極(第1電極体11、第2電極体12)と、を備えた抵抗器1であって、抵抗体10の端面と、電極の端面(第1電極体11、第2電極体12)とが、突き合わせて接合され、電極(第1電極体11、第2電極体12)は、胴体部21,31と胴体部21,31から実装面に突出した脚部22,32と、を含み、抵抗器1の長辺の長さは、3.2mm以下である。
上記構成により、抵抗体10と抵抗体10に接続された一対の電極(第1電極体11、第2電極体12)により胴体部21,31から実装面に突出した脚部22,32が構成され、検出端子からの引き出しが脚部22,32間で行えるため、小型の抵抗器1が実現できる。また、抵抗体10の両端に電極(第1電極体11、第2電極体12)が接合された形態であり、抵抗体10の(X方向の)寸法は抵抗器1の(X方向の)寸法よりも小さくなるので、抵抗体10の下面に一対の電極を接合したタイプの抵抗器よりも低抵抗な抵抗器1を実現できる。以上より、小型化(長辺寸法3.2mm以下、3216サイズ以下)を実現しつつ従来にはないさらなる低抵抗(2mΩ以下)を実現可能な抵抗器1となる。
なお、抵抗体と電極体とを例えば電子ビームにより溶接して形成された抵抗器であれば、このサイズでは抵抗値に当該溶接によるビードの影響を考慮する必要があるが、本実施形態に係る抵抗器1は、後述のように、抵抗体10と第1電極体11、及び抵抗体10と第2電極体12とがそれぞれ拡散接合により接合可能であるため、このように小型に設計しても抵抗値等の特性を安定させることができる。
本実施形態において、抵抗器1の実装面のうち、抵抗体10と胴体部21,31との境界部位(接合部13,14)は平坦である。電子ビームなどの溶接による溶接ビードを有していないことにより、抵抗体10と胴体部21,31との境界が明確になり、良否判断を容易に行うことができる。また、抵抗器1をシャント抵抗器として用いた場合、抵抗体10と胴体部21,31との境界(接合部13,14)で段差が生じることにより発生する電流の検出精度の低下を抑制できる。さらに、抵抗値、熱特性の安定性を向上させることができる。
本実施形態において、抵抗体10と胴体部21,31とは固相接合により接合されている。これにより、抵抗体10と第1電極体11、及び抵抗体10と第2電極体12とが互いに強固に接合されるため、良好な電気的特性が得られる。また、抵抗器1では、抵抗体10と第1電極体11、及び抵抗体10と第2電極体12との接合には例えば電子ビームによる溶接が用いられていないため、接合部13,14には溶接ビード(凹凸形状の溶接痕)がない。したがって、抵抗器1の表面にワイヤーボンディング等を施す場合にボンディング性を損なうことがない。
本実施形態において、胴体部21,31は、脚部22,32の長さ(X方向)分よりも抵抗体側に突出した突出部211,311を有する。これにより、抵抗器1の長手方向(X方向)の長さLを一定としたとき、突出部211のX方向の長さL1(胴体部21のX方向の長さ)、又は突出部311のX方向の長さL2(胴体部31のX方向の長さ)を任意に調整し、抵抗体10のX方向の長さL0をL0=L−(L1+L2)として調整することができる。したがって、脚部22,32の形状を変更することなく、抵抗器1の抵抗値を任意に調整することができる。
本実施形態において、抵抗器1の抵抗体10及び電極(第1電極体11、第2電極体12)の並び方向(X方向)における脚部22,32の実装面側の端部は、面取り形状となっている。
従来の抵抗器では、面取りされていない角部分において電流密度が大となり、エレクトロマイグレーションと呼ばれる現象が発生したり、同様にして角部分に熱応力が集中したりすることにより、抵抗器の欠損が発生しやすくなっていた。また、このエレクトロマイグレーションは、回路サイズが微小化するにつれて無視できない影響を及ぼすため、抵抗器が小型になるほど、エレクトロマイグレーションが顕著化することが懸念されていた。
これに対して、抵抗器1は、角部分Pが面取りされていることにより、角部分Pにおける電流密度の偏りが緩和される。これにより、エレクトロマイグレーションの発生を抑制することができる。また、同様にして、熱応力集中が緩和できるため、ヒートサイクル耐性を向上することができる。
本実施形態において、抵抗器1の抵抗体10及び電極(第1電極体11、第2電極体12)の並び方向(X方向)及び抵抗器1の実装方向に垂直な方向(Z方向)を幅方向(Y方向)とし、抵抗体10の表面、及び/又は、電極(第1電極体11、第2電極体12)の表面には幅方向(Y方向)に沿って延びる筋状の凹凸面(筋状凹凸15)が形成されている。これにより、抵抗器1の表面積を大きくして放熱性を高めることができ、また電極(第1電極体11、第2電極体12)に形成した場合は抵抗器1を回路基板に固定する半田の接合強度を高めることができる。
本実施形態において、抵抗体10は、直方体(又は立方体)に形成されている。抵抗体10が直方体(又は直方体)であると、抵抗体10の端面と略同形状に形成され、抵抗体10の端面に接合された第1電極体11及び第2電極体12から抵抗体10を流れる電流の経路が直線的になるため抵抗値を安定にすることができる。また、抵抗器1では、抵抗体10が第1電極体11と第2電極体12の間に接合されているため、抵抗体10の体積を必要最小限にして抵抗値を調整することが可能である。
<抵抗器1の製造方法の説明>
図4は、本実施形態の抵抗器1の製造方法を説明する模式図である。
本実施形態の抵抗器1の製造方法は、材料を準備する工程(a)と、材料を接合する工程(b)と、形状を加工する工程(c)と、個々の抵抗器1に切断(個片化)する工程(d)と、レーザを用いて抵抗器1の抵抗値を調整する工程(e)とを備える。
材料を準備する工程(a)では、抵抗体10の母材となる抵抗体母材10Aと、第1電極体11の母材である電極体母材11Aと、第2電極体12の母材である電極体母材12Aを準備する。抵抗体母材10Aと、電極体母材11A,12Aは平角状の長尺の線材である。本実施形態では、抵抗器1のサイズ、抵抗値及び加工性の観点から、抵抗体母材10A(抵抗体10)の材料として銅・マンガン・スズ系合金、又は銅・マンガン・ニッケル合金を使用し、電極体母材11A,12A(第1電極体11、第2電極体12)の材料として無酸素銅(C1020)を使用することが好ましい。
材料を接合する工程(b)では、電極体母材11Aと抵抗体母材10Aと電極体母材12Aとを、この順で重ね、重ね方向に圧力を加えて接合して抵抗器母材100を形成する。
すなわち、工程(b)では、いわゆる異種金属材料間におけるクラッド接合(固相接合)が行われる。クラッド接合された電極体母材11Aと抵抗体母材10Aとの接合面、及び電極体母材12Aと抵抗体母材10Aとの接合面は、双方の金属原子が互いに拡散した拡散接合面となっている。
これにより、従来のような、電子ビームによる溶接を行うことなく、抵抗体母材10Aと電極体母材11Aとの接合面、及び抵抗体母材10Aと電極体母材12Aとの接合面を互いに強固に接合することができる。また、抵抗体母材10A(抵抗体10)と電極体母材11A(第1電極体11)との接合面及び抵抗体母材10A(抵抗体10)と電極体母材12A(第2電極体12)との接合面において、良好な電気的特性が得られる。
図5は、図4に示す工程(c)に用いられるダイス300を引き抜き方向Fの上流側から見た正面図である。図6は、図5のB−B線断面図であって、本実施形態の抵抗器1の製造方法における形状を加工する工程を説明する模式図である。
本実施形態では、工程(c)において、ダイス300が用いられる。工程(c)では、クラッド接合によって得られた抵抗器母材100をダイス300に通過させる。本実施形態の抵抗器1を製造するにあたっては、一例として、図5に示すダイス300を用いることができる。
ダイス300には、開口部301が形成されている。開口部301は、抵抗器母材100が挿入可能な寸法に設定された入口開口302と、抵抗器母材100の外形寸法よりも小さい寸法に設定された出口開口303と、入口開口302から出口開口303に向けてテーパ状に形成された挿通部304とを有する。本実施形態においては、開口部301は、角部分が面取り形状に加工された矩形に形成されている。
このような形状のダイス300に抵抗器母材100を通過させることにより、抵抗器母材100を全方向から圧縮変形させることができる。これにより抵抗器母材100の断面形状はダイス300(出口開口303)の外形に倣った形状となる。
また、本実施形態では、工程(c)において、抵抗器母材100をダイス300に通過させる際、抵抗器母材100をつかみ具400によって引き抜く、引き抜き工法が適用される。
工程(c)では、開口部301のサイズを異ならせた複数のダイス300を用意して、これら複数のダイス300を段階的に通過させる引き抜き加工を施してもよい。
また、工程(c)では、ダイス300の開口部301の形状を変更することにより、第1実施形態乃至第11実施形態の抵抗器1を製造することができる。
抵抗器1を製造するにあたっては、一例として、開口部301(入口開口302、出口開口303)の一の辺における一部に、開口中央に向けて矩形に突出した形状の突出部300aを有するダイス300を適用する。抵抗器母材100には、矩形形状の出口開口303に設けられた突出形状により、引き抜き方向Fに連続する矩形溝105が形成される。
抵抗器母材100を個々に切断した際に、この矩形溝105は、抵抗体10と第1電極体11の胴体部21と脚部22、第2電極体12の胴体部31と脚部32によって囲まれる凹部を構成する。
図4に戻り、工程(c)に続く工程(d)では、設計されたY方向の長さWになるように、抵抗器母材100から抵抗器1を切り出す。
以上の工程を経ることにより、抵抗器母材100から個片の抵抗器1を得ることができる。個片となった抵抗器1において電子ビーム等によりスリット4を形成することでTCRの良好な抵抗器1を実現できる。なお、スリット4の深さを小さく設計する場合は、スリット4の外径に倣った突出部をダイス300の挿通部304に形成し、上記の工程で抵抗器1の外径を形成すると同時にスリット4を形成してもよい。
さらに、工程(e)では、レーザ照射により抵抗体10のトリミングを行って抵抗器1の抵抗値を所望の抵抗値に設定する。なお、図1、図2に示す、角部分Pはダイス300の開口部301の形状に倣って形成され、筋状凹凸15は抵抗器母材100がダイス300の内壁(出口開口303)に圧接した状態で摺動するときに抵抗器母材100の長さ方向に形成される筋状の摺動痕である。
<第1実施形態に係る抵抗器1の製造方法の効果>
次に、第1実施形態の抵抗器1の製造方法の作用効果について説明する。
第1実施形態に係る抵抗器1の製造方法(以下、本製造方法と称す)によれば、電極体母材11Aと抵抗体母材10Aと電極体母材12Aとを並列に重ねて圧力を加えて、クラッド接合(固相接合)により一体化した構造(すなわち並接クラッド構造)の抵抗器母材100(抵抗器1)が得られる。これにより、例えば、電子ビームによる溶接等を用いること無く、抵抗体母材10A(抵抗体10)と電極体母材11A(第1電極体11)の接合強度、及び抵抗体母材10A(抵抗体10)と電極体母材12A(第2電極体12)の接合強度を高めることができる。
また、本製造方法によれば、抵抗器母材100をダイス300に通して全方向から圧縮することにより、抵抗器母材100の外形状を成型することができる。このため、抵抗器母材100が形成された後は、工程(d)を経るだけで個別の抵抗器1を製造できる。したがって、抵抗器1の製造によって生じる個体差を抑えることができる。また、これに加えて、抵抗器母材100をダイス300に通すことにより、抵抗体10と第1電極体11との接合強度、及び抵抗体10と第2電極体12との接合強度を更に高めることができる。
抵抗器母材100を全方向から圧縮する方法としては、例えば、抵抗器母材100が方形であれば、抵抗器母材100を厚み方向(Z)から加圧する一対のローラによって第一段の圧接を施して、その後、幅方向(Y)から加圧する一対のローラによって第二段の圧接を施す方法がある。
しかし、この方法では、第一段の圧接工程において、抵抗器母材100は、厚み方向(Z)に圧縮されるものの、幅方向(Y)には膨張してしまう。また、続く第二段の圧接工程において、抵抗器母材100は、幅方向(Y)に圧縮されるものの、厚み方向(Z)には膨張してしまう。この結果、寸法精度が低下し、個々の抵抗器のばらつきや抵抗器への電力印加時の温度分布のばらつき等が大きくなってしまう。
これに対して、本製造方法によれば、抵抗器母材100をダイス300に通過させる引き抜き工程を行うことにより、抵抗器母材100を長さ方向(X)及び厚み方向(Z)に一様に圧縮できる。
このため、ローラを用いて一方向からの圧縮と他方向からの圧縮とを繰り返すことで得られた抵抗器母材に比べて、抵抗器母材100は、電気的に有利な接合界面が形成されると考えられる。したがって、完成品としての抵抗器1の特性差を抑えることができる。
本製造方法では、特に、開口部301の異なる複数のダイス300を段階的に用いて、抵抗器母材100のサイズを段階的に小さくなるように圧縮成型することにより、抵抗器母材100やダイス300への負荷を低減しつつ、抵抗器母材100を長さ方向X及び厚み方向(Z)に一様に圧縮できる。これにより、完成品としての抵抗器1の特性のバラツキを抑えることができる。
また、本製造方法では、抵抗器母材100をダイス300に通す工程(c)において、引き抜き工程が適用されることにより、押し出し工法に比べて完成品の精度が高められる。この製造方法を用いることにより、抵抗器1としての特性の安定化を実現できる。
特に、ダイス300の開口部301の、少なくとも出口開口303は曲線により連続して形成されている。これにより、抵抗器母材100が開口を通過する際に掛かる応力を緩和することができ、抵抗器母材100やダイス300への負荷を低減することができる。これにより、完成品としての抵抗器1の特性のバラツキを抑えることができる。
これに加え、少なくとも出口開口303は曲線により連続して形成されているので、ダイス300を通過して得られた抵抗器1の角部分P(縁辺)は面取りされることになる。これにより、角部分Pにおいて抵抗器1に生じるエレクトロマイグレーションを抑制することができる。また、抵抗器1のヒートサイクル耐性を高めることができる。
また、本製造方法によれば、第1電極体11と抵抗体10と第2電極体12とが互いに拡散接合(固相接合)により接合されているため、電子ビームなどの溶接による溶接ビードがない。従来の電子ビームなどの溶接による接合では、抵抗器が小型化されるにつれて溶接ビードが抵抗値特性に無視できない影響を与えることがあった。しかし、本実施形態に係る製造方法によって得られた抵抗器1には、その懸念がない。
このように、本製造方法は、抵抗体母材10A及び電極体母材11A,12Aをクラッド接合(固相接合)して得られる抵抗器母材100をダイス300に通して成型するため、例えば電子ビームによる溶接を用いなくとも材料間の接合強度を高めることが可能であり、高い寸法精度を確保することができるため、小型の抵抗器1の製造に好適である。
また、本製造方法において、形状を加工する工程(c)の前段に、クラッド接合された抵抗器母材100のサイズをダイス300に挿通可能なサイズに調整する工程が含まれていてもよい。
<第2実施形態>
図7Aは、第2実施形態の抵抗器1Aの正面図である。図7Bは、第2実施形態の抵抗器1Aにおいてスリット4の深さ及び電位の検出位置を変化させた場合のTCR特性を示すグラフである。
図7Aに示す抵抗器1Aは、矩形(直方体)の抵抗体10の下面(実装面)に第1電極体11、及び第2電極体12が接合した形状を有している。第1電極体11は、抵抗体10の長手方向(X方向)であって下面の一方(+X軸側)の端部に配置されている。第2電極体12は、抵抗体10の長手方向(X軸方向)であって下面の他方(−X軸方向)の端部に配置されている。
スリット4は、抵抗体10の−X軸側の側面、及び+X軸方向の側面において抵抗体10の厚み方向(Z軸方向)の中央部にそれぞれ形成されている。
抵抗体10の+X軸側の側面に形成されたスリット4は、Y軸方向を長手方向とし、−X軸方向を深さ方向とし、抵抗体10の+Y軸側の側面及び−Y軸側の側面に連通するように形成されており、第1電極体11の真上となる位置に配置される。
抵抗体10の−X軸側の側面に形成されたスリット4は、Y軸方向を長手方向とし、+X軸方向を深さ方向とし、抵抗体10の+Y軸側の側面及び−Y軸側の側面に連通するように形成されており、第2電極体12の真上となる位置に配置される。
第2実施形態の抵抗器1Aにおいても、第1実施形態と同様に、電位の検出位置及びスリットの深さをパラメータとして抵抗器1AのTCRを算出した。
ここで、抵抗体10の長手方向(X軸方向)の長さを2mmに設定し、第1電極体11及び第2電極体12のX軸方向の長さを0.5mmに設定した。また、スリット4の深さを0(スリット4無)、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.45mmに設定した。
電位の検出位置は、抵抗体10の上面の+X軸側の端部であってY軸方向の中央部と、−X軸側の端部であってY軸方向の中央部と、をそれぞれ原点(0mm)とし、抵抗体10の長手方向(X軸方向)の中央部に向かう方向に0.5mmまでそれぞれ連続的に変化させた。2つの電位の検出位置の変化量は互いに同一となるように変化させた。
第2実施形態の抵抗器1Aにおいても、電位の検出位置は、ボンディングワイヤーの取り付け位置となるが、電位の検出位置は、第1電極体11及び第2電極体12の真上となる範囲に収まっている。この範囲においては回路基板から印加される電流の密度が小さく、電位分布(等電位線)も疎に分布するため、この範囲でワイヤーの取り付け位置を変化させたとしても検出される電位差の変化は小さい。
図7Bに示すように、スリット4の深さが0(スリット4無)の場合、TCR特性は、原点(0mm)において最も高い値を有するが、0.5mm側に移動するにつれて単調に減少する曲線を描く。
一方、スリット4の深さを0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.45mmと深くしていくほど、TCRは全体的に低くなって0[ppm/K]に近づいていく。これは、第1実施形態と同様にスリット4を深くするほど、抵抗体10の上面であって第1電極体11と第2電極体12の真上となる範囲において、外部から印加された電流の密度が低減され、電位分布(等電位線)も疎になっていくことに起因する。
第2実施形態では、スリット4が抵抗体10においてX軸方向において第1電極体11と第2電極体12の間に及ぶことがない限り、抵抗器1の抵抗値はほとんど変化しない。したがって、第2実施形態においても、抵抗値をほとんど変化させることなく、TCRを最適化可能であることがわかる。
<第2実施形態の効果>
第2実施形態の抵抗器1Aによれば、一対の電極(第1電極体11、第2電極体12)の一方(例えば第1電極体11)は、抵抗体10の一面(下面、実装面)であって抵抗体10の長手方向(X軸方向)の一端(例えば+X軸方向の端部)に配置され、一対の電極(第1電極体11、第2電極体12)の他方(例えば第2電極体12)は、抵抗体10の一面(下面、実装面)であって抵抗体10の長手方向(X軸方向)の他端(例えば−X軸方向の端部)に配置され、スリット4は、抵抗体10に形成されている。
上記構成により、第1実施形態と同様に、スリット4を形成することで抵抗値をほとんど変化させることなくTCRが最適化可能となるので、抵抗器1のTCR及びそのバラつきを効果的に抑制することができ、小型化及び低抵抗化しつつもTCRを良好に保つことが可能となる。また、抵抗体10と電極(第1電極体11、第2電極体12)を重ね合わせた構造の抵抗器1Aであっても、小型化及び低抵抗化しつつTCRを良好に保つことが可能となる。
以上、第1実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。例えば、第1実施形態では抵抗器母材100をダイス300に通して個片化した抵抗器1について説明したが、ダイス300を通すことなく抵抗体と電極体とをクラッド接合した抵抗器や、プレス加工により成型された抵抗器にも適用できる。
また、第1実施形態において、スリット4を左右対称に形成しているが、第1電極体11及び第2電極体12のいずれか一方のみに形成してもよい。同様に、第2実施形態でも、スリット4を左右対称に形成しているが、いずれか一方のみ形成する形態でもよい。
また、第2実施形態の抵抗器1Aは、回路基板に実装するものであるが、回路基板と一体で形成されていてもよい。例えば、回路基板から表面のみが露出している抵抗器に第2実施形態のようにスリットを形成してもよい。