JP2021178770A - 球状シリカ粉末 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、誘電正接が低い球状シリカ粉末を提供することにある。【解決手段】25℃から30℃/minの条件で1000℃まで昇温した際に、500℃〜1000℃における脱離する水分子数が0.01mmol/g以下であり、比表面積が1〜30m2/gである球状シリカ粉末。【選択図】なし

Description

本発明は、低い誘電正接を有する球状シリカ粉末に関する。
近年、通信分野における情報通信量の増加に伴い、電子機器や通信機器等において高周波数帯の活用が広がっている。高周波は、広帯域性、直進性、透過性等の特徴があり、特に、周波数が10以上であるGHz帯の使用が盛んに行われている。例えば、自動車分野において、衝突防止目的で搭載されるミリ波レーダー、準ミリ波レーダーにおいては、それぞれ76〜79GHz、24GHzの高周波数が使用されており、今後更なる普及が進んでいくことが予想される。
高周波帯の適用に伴い、回路信号の伝送損失が大きくなる問題が生じている。伝送損失は、大別して、配線の表皮効果による導体損失と、基板等の電気電子部品を構成する絶縁体の誘電体材質の特性による誘電体損失からなる。誘電体損失は、周波数の1乗、絶縁体の誘電率の1/2乗および誘電正接の1乗に比例するため、高周波帯用のデバイスに用いられる材料に関して、誘電率および誘電正接が共に低いことが求められている。
絶縁体材料に用いられるポリマー材料は、一般に誘電率が低いが、誘電正接は高いものが多い。一方、セラミックス材料はその逆の特性を持つものが多く、両特性を両立させるために、セラミックスフィラー充填ポリマー材料が検討されている(例えば特許文献1)。
GHz帯のセラミックス材料の誘電特性は、例えば、非特許文献1等により知られているが、いずれも焼結された基板としての特性である。シリカ(SiO)は、誘電率が小さく(3.7)、品質係数指標Qf(誘電正接の逆数と測定周波数を掛けた値)が約12万であり、低誘電率かつ誘電正接を有するフィラーの材料として有望である。また、樹脂中での配合を容易にするためには、フィラー形状が球形に近い程好ましいが、球状シリカは容易に合成可能であり(例えば特許文献2)、既に多くの用途で使用されている。そのため、高周波帯の誘電体デバイス等においても広く用いられることが期待される。
しかしながら、球状シリカの粒子の表面には、吸着水やシラノール基といった極性官能基等が多く存在し、特に、誘電正接が焼結された基板としての特性よりも悪化するという問題点がある。
フィラー粒子の表面の吸着水や極性官能基の低減方法としては、例えば、非特許文献2で、シランカップリング剤により表面処理する方法が検討されているが、1〜10MHzでは誘電正接はほとんど低減しておらず、ミリ波帯の効果は明記されていない。
特開2014−24916号公報 特開昭58−138740号公報
International Materials Reviews vol.60 No.70 Supplementary data (2015)。 IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation Vol. 17、No. 6 (2010)。
本発明は、誘電正接が低い球状シリカ粉末を提供することにある。
(1)25℃から30℃/minの条件で1000℃まで昇温した際に、500℃〜1000℃における脱離する水分子数が0.01mmol/g以下であり、比表面積が1〜30m/gであることを特徴とする球状シリカ粉末。
(2)表面処理する前の球状シリカ粉末において、拡散反射FT−IR法にて測定したシリカ粉末の波数3735cm−1〜3755cm−1のピーク強度をA、波数3660cm−1〜3680cm−1のピーク強度をBとしたとき、B/Aが3.0以下であることを特徴とする(1)に記載の球状シリカ粉末。
(3)不活性雰囲気下で高温加熱処理されている、あるいは還元的な反応場で高温加熱処理されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の球状シリカ粉末。
(4) 平均円形度が0.85以上であることを特徴とする(1)〜(3)にいずれか一項に記載の球状シリカ粉末。
(5) 表面処理剤で表面処理されていることを特徴とする(1)〜(4)いずれか一項に記載の球状シリカ粉末。
(6)樹脂中に配合して使用されることを特徴とする、(1)〜(5)いずれか一項に記載の球状シリカ粉末。
本発明によれば、樹脂材料、例えば基板等の誘電正接を低くすることが可能な球状シリカ粉末を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明のシリカ粉末は、25℃から30℃/minの条件で1000℃まで昇温した際に、500℃〜1000℃における脱離する水分子数が0.01mmol/g以下である。脱離水分量は、例えば、昇温脱離ガス分析装置(TDS)を用いて測定することが可能であり、25℃から30℃/minで昇温し、得られるマスクロマトグラム(m/z=18)の500℃〜1000℃範囲における面積値から、HO脱離分子数を算出する。脱離分子数は、好ましくは0.008mmol/g以下であり、下限値は特に規定されないが、現実的には0.0001mmol/g以上である。
本発明のシリカ粉末は、表面処理する前の球状シリカ粉末において、拡散反射FT−IR法にて測定したシリカ粉末の波数3735cm−1〜3755cm−1のピーク強度をA、波数3660cm−1〜3680cm−1のピーク強度をBとしたとき、B/Aが3.0以下である。一般に、波数3735cm−1〜3755cm−1のピークは孤立シラノール基、波数3660cm−1〜3680cm−1のピークは水素結合シラノール基であることが知られている。本発明では、水素結合性シラノール基強度に着目し、B/Aが3.0以下の時、樹脂組成物の誘電正接を十分に低下させることができる。
本発明の球状シリカ粉末は、比表面積が1〜30m/gである。比表面積が30m/gより大きくなると樹脂中での配合が困難になり、1m/g未満であると誘電正接低減処理効果が小さくなる。
本発明の球状シリカ粉末は、平均円形度が0.85以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.90以上である。平均円形度が0.85未満であると、樹脂と混合した際に、粘度の増加や流動性の低下が生じる可能性があり、加工性や充填性が悪くなる場合がある。
本発明の球状シリカ粉末の密度は、1.8〜2.4g/cmであることが望ましい。密度が1.8より小さくなると、粒子内に多く空隙を含むこととなり、樹脂中での混練が難しくなる。密度が2.4より大きくなると、シリカの結晶構造にα−石英やクリストバライト等を含むこととなり、例えば、熱膨張率が大きくなる等、物性への影響が懸念される場合がある。
本発明の原料シリカ粉末としては、平均円形度が0.85以上、比表面積が1〜30m/gの球状シリカ粉末であれば、好適に使用することができる。原料の球状シリカ粉末の製造方法としては、例えば、融点以上の温度の高温域を通過させ球状化させる粉末溶融法が挙げられる。
本発明の球状シリカ粉末は、原料シリカ粉末を不活性雰囲気下で粉体を流動させながら高温加熱処理あるいは還元的な反応場である電気炉により加熱処理することによって製造することができる。温度および時間は、25℃〜1000℃まで30℃/minの条件で昇温した際に、500℃〜1000℃における脱離する水分子数が0.01mmol/g以下であれば良く、原料シリカ粉末の比表面積によっても異なるが、例えば、窒素あるいはアルゴン雰囲気下で700〜1000℃、1〜24時間、ロータリーキルン内にて粉体を流動させながら処理し、炉内にて自然放冷すればよい。還元的な反応場である電気炉とは、例えば、炉材がカーボンであるカーボン炉、炉材がカーボン以外の場合は、数%水素を添加した雰囲気で焼成することである。200℃以下に冷却後、真空乾燥器内で乾燥させ、その後、防湿アルミ袋にて回収することにより製造することができる。
上記の製造方法により、比表面積といった粉体特性を変化させずに、球状シリカ粒子の表面の吸着水および極性官能基を低減させることができる。製造後においても、例えば、1ヵ月の間高湿度下、例えば40℃−90%RH環境下に保存しても、球状シリカの誘電正接の増加に影響するほど粒子の表面の吸着水および極性官能基量が変化しないことが期待できる。
製造方法において、所望の比表面積および平均粒子径が得られるように粉末を分級する工程を備えてもよい。加熱温度が1000℃以下であれば、加熱前後にて比表面積および平均粒子径は変化しないことから、分級する工程は加熱前に実施し、所望の比表面積および平均粒子径に調整の後、加熱処理をすることが望ましい。
得られた粉末は、表面処理剤によって表面処理をすることで、さらに表面極性基を低減させ、誘電正接を低減させることができる。また、樹脂界面との馴染みや密着性の改善も期待できる。表面処理剤は、添加する樹脂種との相性が良いものや表面処理後に極性官能基が残存しにくいものが良く、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン、アクリロキシトリメトキシシラン等のアクリルシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン等が例示される。アミノシランやアクリルシランのように極性官能基を多く有する処理剤の添加量は、可能な限り少ない方が好ましく、例えば、球状シリカ粉末100質量部に対して1質量部以下である。表面処理の後に、再度、防湿アルミ袋にて回収することが望ましい。
本発明の球状シリカ粉末に含まれるNa、Li又はK等のアルカリ金属類、及びFe等の金属元素の不純物は、誘電正接低減の観点からできる限り少ない方が好ましい。その他不純物も可能な限り低減させた方が良い。
本発明の誘電正接を低減した球状シリカ粉末の保存方法としては、JIS Z 0208−1976の条件B(温度40℃−相対湿度90%)の透湿度が0.1(g/m・24h)以下の防湿袋、例えば防湿アルミ袋やPET/AL/PEラミネート袋を用いて保存するのが好ましい。
本発明の球状シリカ粉末と、比表面積や平均粒子径、組成が異なる他の粉末と配合・混合することにより、混合粉末を得ることができる。混合粉末とすることにより、樹脂に配合した場合の誘電率、誘電正接、熱膨張係数、熱伝導率、充填率等をより容易に調整することができる。
本発明の球状シリカ粉末及び混合粉末は、例えば、樹脂中に配合して使用される。本発明で使用される樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂等が挙げられる。
本発明の球状シリカ粉末及び混合粉末は、特に高周波用の基板材料や絶縁材料に用いる場合、本用途に用いられる公知の低誘電樹脂に配合して用いることができる。具体的には以下の樹脂中に配合し、必要に応じて架橋、硬化させて使用される。このような樹脂としては、例えば炭化水素系エラストマー、ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエン系樹脂から選ばれる一種以上を使用できる。この中では、炭化水素系エラストマー又はポリフェニレンエーテルが好ましい。球状シリカ粉末及び混合粉末とこれら樹脂の質量比は任意であるが、好ましくは5:95〜80:20の範囲、さらに好ましくは5:95〜70:30の範囲である。
<炭化水素系エラストマー>
炭化水素系エラストマーの中では、共役ジエン系重合体が好ましい。共役ジエン系重合体の中では、1,2−ポリブタジエンが好ましい。好適に用いることができる炭化水素系エラストマーは、数平均分子量は1000以上、好ましくは1万以上であってよい。炭化水素系エラストマーの例としては、エチレン系やプロピレン系のエラストマー、共役ジエン系重合体や芳香族ビニル化合物−共役ジエン系のブロック共重合体またはランダム共重合体、およびこれらの水素化物(水添物)から選ばれる単数または複数のエラストマーが挙げられる。エチレン系エラストマーとしては、エチレン−オクテン共重合体やエチレン−1−ヘキセン共重合体等のエチレン-αオレフィン共重合体、EPR、EPDMが挙げられる。プロピレン系エラストマーとしては、アタクティックポリプロピレン、低立体規則性のポリプロピレン、プロピレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン−αオレフィン共重合体が挙げられる。
<共役ジエン系重合体>
共役ジエン系重合体としては、ポリブタジエンや1,2−ポリブタジエンが挙げられる。芳香族ビニル化合物−共役ジエン系のブロック共重合体またはランダム共重合体、およびこれらの水素化物(水添物)としては、SBS、SIS、SEBS、SEPS、SEEPS、SEEBS等が例示できる。好適に用いることができる1,2−ポリブタジエンは、例えば、JSR株式会社の製品として入手できるほか、日本曹達株式会社から、液状ポリブタジエン:製品名B−1000、2000、3000の製品名で入手できる。また、好適に用いることができる1,2−ポリブタジエン構造を含む共重合体としては、TOTAL CRAY VALLEY社の「Ricon100」が例示できる。
<ポリフェニレンエーテル>
ポリフェニレンエーテルとしては、市販の公知のポリフェニレンエーテルを用いることができる。ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は任意であり、配合物の成形加工性を考慮すると数平均分子量は好ましくは1万以下、最も好ましくは5000以下である。また数平均分子量は好ましくは500以上であってよい。また、配合物の硬化を目的とした添加の場合、分子末端が変性されていることが好ましく、及び/または、一分子内に複数の官能基を有していることが好ましい。官能基としては、アリル基、ビニル基、エポキシ基等が挙げられる。官能基としては、ラジカル重合性の官能基が好ましい。ラジカル重合性の官能基としては、ビニル基が好ましい。ビニル基としては、(メタ)アクリル基や芳香族ビニル基が好ましい。さらに分子鎖の両末端がラジカル重合性の官能基で変性されている二官能性ポリフェニレンエーテルが特に好ましい。このようなポリフェニレンエーテルとしてはSABIC社のNoryl(商標)SA9000や三菱ガス化学社製二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(OPE−2St)を用いることができる。
<芳香族ポリエン系樹脂>
芳香族ポリエン系樹脂とは、日鉄ケミカル&マテリアル社製、ジビニルベンゼン系反応性多分岐共重合体(PDV)を包含する。このようなPDVは、例えば文献「多官能芳香族ビニル共重合体の合成とそれを用いた新規IPN型低誘電損失材料の開発」(川辺正直他、エレクトロニクス実装学会誌 p125、Vol.12 No.2(2009))に記載されている。また芳香族ポリエン系樹脂としては、上述した芳香族ポリエン単量体を主構成単位とする芳香族ポリエン重合体樹脂も挙げられる。
本発明の球状シリカ粉末及び混合粉末はこれら樹脂と共に、以下の架橋材や硬化剤を用い架橋、硬化させて使用することができる。架橋材としては、各種のマレイミド類、ビスマレイミド類、無水マレイン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アクリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。本発明に使用可能なマレイミド類、ビスマレイミド類は例えば国際公開2016/114287号に記載されており、例えば大和化成工業株式会社から購入できる。これらマレイミド基含有化合物は、有機溶媒への溶解性、高周波特性、導体との高接着性、プリプレグの成形性等の観点から、ポリアミノビスマレイミド化合物として用いてもよい。ポリアミノビスマレイミド化合物は、例えば、末端に2個のマレイミド基を有する化合物と分子中に2個の一級アミノ基を有する芳香族ジアミン化合物とをマイケル付加反応させることにより得られる。少量の添加で高い架橋効率を得ようとする場合、二官能基以上の多官能基を有する架橋材の使用が好ましく、ビスマレイミド類、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが例示できる。架橋材の量は、前記樹脂100質量部に対し、0.1〜30質量部、好ましくは0.1〜10質量部の範囲であってよい。
<硬化剤>
用いられる硬化剤としては、従来芳香族ポリエン、芳香族ビニル化合物の重合、又は硬化に使用できる公知の硬化剤を用いてよい。このような硬化剤には、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤が例示できるが、好ましくはラジカル重合開始剤を用いることができる。好ましくは、有機過酸化物系(パーオキサイド)、アゾ系重合開始剤等であり、用途、条件に応じて自由に選択できる。有機過酸化物が掲載されたカタログは日油ホームページ、例えば
https://www.nof.co.jp/business/chemical/product01a.html
https://www.nof.co.jp/business/chemical/product01b.html
https://www.nof.co.jp/business/chemical/product01c.html
からダウンロ−ド可能である。また有機過酸化物は和光純薬社や東京化成工業社のカタログ等にも記載されている。本発明に用いられる硬化剤はこれらの会社より入手できる。また公知の光、紫外線、放射線を用いる光重合開始剤を硬化剤として用いることも出来る。光重合開始剤を用いる硬化剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、または光アニオン重合開始剤が挙げられる。このような光重合開始剤は例えば東京化成工業株式会社から入手できる。さらに、放射線あるいは電子線そのものによる硬化も可能である。また、硬化剤を含まず、含まれる原料の熱重合による架橋、硬化を行うことも可能である。硬化剤の使用量に特に制限はないが、一般的には前記樹脂100質量部(硬化剤及び溶剤を除くことが好ましい)に対し、0.01〜10質量部が好ましい。過酸化物系(パーオキサイド)、アゾ系重合開始剤等の硬化剤を用いる場合には、その半減期を考慮し、適切な温度、時間で硬化処理を行う。この場合の条件は、硬化剤に合わせて任意であるが、一般的には50℃から180℃程度の温度範囲が適当である。
本発明の球状シリカ粉末及び混合粉末を、特に高周波用の基板材料や絶縁材料に用いる場合に用いる前記各種樹脂、架橋材、及び/または硬化剤などの組成物及びその硬化物については、例えば以下の特許に記載されている。特開平8―208856号公報、特開2017―75270号公報、特開2009−167268号公報、特開2011ー68713号公報、特開2018ー131519号公報、特表2016−534549号公報、特開2017ー57352号公報、WO2016―175325号国際公開パンフレット、WO2016―175326号国際公開パンフレット。
樹脂中における球状シリカ粉末及び混合粉末の割合は、目標とする誘電率や誘電正接等の物性に応じて適宜選択される。例えば、樹脂の使用量は、球状シリカ粉末100質量部に対して、10〜10000質量部の範囲で適宜選択される。樹脂の密度を1.2g/cmとすると、樹脂の体積比率は1.8〜94.3%の範囲で適宜選択される。
本実施形態の球状シリカ粉末を樹脂中に配合することにより、粉末配合後の樹脂シートの誘電正接を低くすることができる。また、本実施形態の球状シリカ粉末を配合した樹脂シートは、低粘度であるため流動性がよく、成形性に優れている。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[原料シリカ粉末1]
球状シリカ(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.3m/g)を加熱処理せずにそのまま、後述の実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、原料シリカ粉末1の樹脂シートの誘電正接は、樹脂にポリエチレン(PE)を使用した場合は8.0×10−4、ポリプロピレン(PP)を使用した場合は6.1×10−4であった。
[原料シリカ粉末2]
球状シリカ(デンカ社製:SFP−30M、比表面積6.0m/g)を加熱処理せずにそのまま、後述の実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、原料シリカ粉末2の樹脂シート(PE)の誘電正接は、1.4×10−3であった。
[実施例1]
原料シリカとして、原料シリカ粉末1(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.3m/g)を50g、石英ガラス製円筒容器に入れ、円筒容器をムライト製のロータリーキルン内に充填し、窒素雰囲気にてロータリーキルン内温度900℃にて2時間加熱処理した。加熱処理後、炉内が200℃以下になるまで冷却し、真空乾燥機(120℃−133Pa未満環境下)にて24時間乾燥させた。各種評価の直前までアルミパック(PET/AL/PEラミネート袋:生産日本社製)のスタンドパック内で保存した。評価結果を表2に示す。なお、樹脂シート(PE)の誘電正接は、4.7×10−4であった。
[実施例2、3]
加熱処理温度と時間を表2の通りにした以外は、実施例1と同様に加熱処理および評価を行った。評価結果を表2に示す。
[実施例4]
原料シリカとして、原料シリカ粉末1(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.3m/g)を50g、石英ガラス製円筒容器に入れ、円筒容器をムライト製のロータリーキルン内に充填し、窒素雰囲気にてロータリーキルン内温度900℃にて2時間加熱処理した。加熱処理後、炉内が200℃以下になるまで冷却し、真空乾燥機(120℃−133Pa未満環境下)にて24時間乾燥させた。回収した試料100質量部に対して、表面処理剤として、ヘキサメチルジシラザン(信越シリコーン社製、SZ−31;HMDS)を1質量部添加した。添加した粉末をResodyn社製振動式ミキサーにて混合し、真空乾燥機(120℃−133Pa未満環境下)にて24時間乾燥させ、各種評価の直前まで実施例1と同様にアルミパック内で保存した。評価は、実施例1と同様に行った。評価結果を表2に示す。
[実施例5]
表面処理剤として、ビニルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM−1003;ビニル)とした以外は実施例4と同様に加熱処理および評価を行った。評価結果を表2に示す。
[実施例6]
原料シリカを原料シリカ粉末2(デンカ社製:SFP−30M、比表面積6.0m/g)とした以外は、実施例1と同様に加熱処理および評価を行った。評価結果を表2に示す。
[実施例7]
誘電特性の評価時にポリプロピレン粉末を使用した以外は、実施例1と同様に加熱処理および評価を行った。評価結果を表2に示す。
[実施例8]
原料シリカとして、原料シリカ粉末1(デンカ社製:FB−5D、比表面積2.3m/g)を50g、アルミナ坩堝入れ、富士電波工業製ハイマルチ(カーボン炉)、窒素雰囲気にて電気炉内温度1000℃−4時間加熱処理した。加熱処理後、炉内が200℃以下になるまで冷却し、真空乾燥機(120℃−133Pa未満環境下)にて24時間乾燥させた。各種評価の直前までアルミパック(PET/AL/PEラミネート袋:生産日本社製)のスタンドパック内で保存した。評価結果を表2に示す。
[実施例9]
原料シリカを原料シリカ粉末2(デンカ社製:SFP−30M、比表面積6.0m/g)とし加熱温度と雰囲気を表2の通りにした以外は、実施例8と同様に加熱処理および評価を行った。評価結果を表2に示す。
[実施例10]
加熱処理温度と時間と雰囲気を表2の通りにした以外は、実施例9と同様に加熱処理および評価を行った。評価結果を表2に示す。
[比較例1〜4]
加熱処理温度、時間、原料シリカ粉末、雰囲気を表3の通りにした以外は、実施例1と同様に加熱処理および評価を行った。評価結果を表3に示す。
各試料の特性を、以下の方法で評価した。各評価結果を表1〜3に示す。
[平均円形度]
粉末をカーボンテープで試料台に固定後、オスミウムコーティングを行い、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7001F SHL)で撮影した倍率500〜50000倍、解像度1280×1024ピクセルの画像をパソコンに取り込んだ。この画像を、画像解析装置(日本ローパー社製、Image−Pro Premier Ver.9.3)を使用し、粒子(粉末粒子)の投影面積(S)と粒子の投影周囲長(L)を算出してから、下記の式(1)より円形度を算出した。原料シリカがFB−5Dの場合1〜10μm、原料シリカSFP−30Mの場合、0.2〜1μmの任意の粒子200個について円形度を算出し、その平均値を平均円形度とした。
円形度=4πS/L ・・・式(1)
[密度]
粉末1.2gを測定用試料セルに入れ、乾式密度計(島津製作所社製「アキュピックII1340」)を用い、気体(ヘリウム)置換法により測定した。
[比表面積]
測定用セルに試料を1g充填し、Mountech社製 Macsorb HM model−1201全自動比表面積系測定装置(BET一点法)により比表面積を測定した。測定前の脱気条件は、200℃−10分とした。吸着ガスは窒素とした。
[B/A]
B(水素結合性シラノール基)とA(孤立シラノール基)の積分強度比は、フーリエ変換型赤外分光光度計(PerkinElmer社製Frontier型赤外分光装置)を用いて、大気雰囲気下で拡散反射法による測定(分解能8.0cm−1、積算回数32回)を行い、得られた拡散反射スペクトルから、3800−2875cm−1の間にベースラインを引き、3735cm−1〜3755cm−1の孤立シラノール基ピーク強度、3660cm−1〜3680cm−1の水素結合性シラノール基ピーク強度をそれぞれ算出し、そのピーク強度比を求めた。
[脱離水分量]
昇温脱離ガス分析装置(電子科学製 EMD−WA1000S/W;TDS)を用い、上部熱電対の温度において、25℃から30℃/minで1000℃まで大気雰囲気下で昇温し、得られたマスクロマトグラム(m/z=18)の500℃〜1000℃範囲における面積値から、HO脱離分子数を算出した。石英試料皿に、カーボンシート、試料粉末(10mg)、カーボンシートの順で載せた状態で、測定を行った。
[誘電特性の評価]
加熱処理後の球状シリカ粉末の充填量が40体積%になるように、球状シリカ粉末及び、ポリエチレン(PE)粉末(住友精化社製フローセンUF−20S)またはポリプロピレン(PP)粉末(住友精化社製フローブレンQB200)を計量し、Resodyn社製振動式ミキサーにて混合した(加速度60g, 処理時間2分)。得られた混合粉末を所定体積分(厚さが0.3 mmになるように)計量し、直径3cmの金枠内に入れ、熱プレス機(井元製作所社製「IMC−1674−A型」)にてPEの場合、140℃, 10MPa, 15分、PPの場合、190℃, 10MPa, 60分にてシート化し評価試料とした。評価試料のシートの厚さは0.3mmであり、形状やサイズは測定器に搭載できれば、評価結果に影響しないが、1.5cm角である。
誘電特性の測定は、36GHz空洞共振器(サムテック社製)をベクトルネットワークアナライザ(85107、キーサイトテクノロジー社製)に接続し、試料(1.5cm角、厚さ0.3mm)を共振器に設けられた直径10mmの穴をふさぐようセットし、共振周波数(f0)、無負荷Q値(Qu)を測定した。測定ごとにサンプルを回転させ、同様に測定を5回繰り返し、得られたf0、Quの平均をとって測定値とした。f0より誘電率、Quより誘電正接を解析ソフト(サムテック社製ソフトウェア)にて算出した。測定温度は20℃、湿度は60%RHであった。
また、原料球状シリカ粉末1および2を樹脂に配合して測定した樹脂シートの誘電正接をa、実施例および比較例の球状シリカ粉末を樹脂に配合して測定した樹脂シートの誘電正接をbとし、式(2)から樹脂シート自体の誘電正接の低減率(%)を求めた。
樹脂シート自体の誘電正接の低減率(%)={1−(b/a)}×100 ・・・式(2)
Figure 2021178770
Figure 2021178770
Figure 2021178770
実施例1〜10の球状シリカ粉末を含有する樹脂シートは、比較例1〜4の球状シリカ粉末を含有する樹脂シートと比較して、誘電正接がより低く抑えられるという結果になった。
本発明の球状シリカ粉末は、樹脂材料に充填した場合に、従来の球状シリカと比較して基材の誘電正接を低くすることができるフィラーとして利用可能である。

Claims (6)

  1. 25℃から30℃/minの条件で1000℃まで昇温した際に、500℃〜1000℃における脱離する水分子数が0.01mmol/g以下であり、比表面積が1〜30m/gであることを特徴とする球状シリカ粉末。
  2. 表面処理する前の球状シリカ粉末において、拡散反射FT−IR法にて測定したシリカ粉末の波数3735cm−1〜3755cm−1のピーク強度をA、波数3660cm−1〜3680cm−1のピーク強度をBとしたとき、B/Aが3.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の球状シリカ粉末。
  3. 不活性雰囲気下で高温加熱処理されている、あるいは還元的な反応場で高温加熱処理されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の球状シリカ粉末。
  4. 平均円形度が0.85以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3にいずれか一項に記載の球状シリカ粉末。
  5. 表面処理剤で表面処理されていることを特徴とする請求項1〜請求項4いずれか一項に記載の球状シリカ粉末。
  6. 樹脂中に配合して使用されることを特徴とする、請求項1〜請求項5いずれか一項に記載の球状シリカ粉末。



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