以下、図面を参照して本発明の画像処理装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置1について詳細に説明する。図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成図である。
インクジェット印刷装置1は、コンピュータから出力された画像データまたは原稿読取装置から出力された画像データに基づいて、印刷用紙に対してインクを吐出して印刷処理を行う。インクジェット印刷装置1は、図1に示すように、画像処理部10、ヘッド駆動制御部20、インクジェットヘッド部30、搬送部40および制御部50を備えている。
画像処理部10は、コンピュータまたは原稿読取装置から出力された画像データを受け付け、その画像データに対して種々の処理を施す。本実施形態においては、画像処理部10が、本発明の画像処理装置の一実施形態に相当する。画像処理部10は、CPU(Central Processing Unit)および半導体メモリなどを備える。なお、画像処理部10のCPUおよび半導体メモリは、後述する制御部50と共通であってもよいし、別個に設けるようにしてもよい。
画像処理部10は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶された画像処理プログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって、後述する各部の処理を行う。
画像処理部10は、図2に示すように、画像データ受付部11、色変換部12、カラーモード情報取得部13、用紙種類情報取得部14、K成分インク量情報算出部15、明度算出部16および印刷データ生成部17を備えている。
画像データ受付部11は、コンピュータまたは原稿読取装置から出力されたRGB形式の画像データを受け付け、色変換部12に出力する。
色変換部12は、RGB形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する。
カラーモード情報取得部13は、画像データに基づいてカラー印刷を行うか白黒印刷を行うかを示すカラーモード情報を取得する。カラーモード情報は、コンピュータから出力された上記画像データを含む印刷ジョブに設定された情報を取得するようにしてもよいし、インクジェット印刷装置1に設けられた操作パネル(図示省略)においてユーザによって設定入力された情報を取得するようにしてもよい。または、CMYK形式の画像データに含まれる色成分に基づいて、自動認識して取得するようにしてもよい。
用紙種類情報取得部14は、画像データに基づく印刷処理が施される印刷用紙の種類の情報を取得する。本実施形態においては、インクの滲み度合いが異なる複数種類の印刷用紙の情報を取得する。具体的には、たとえば普通紙の情報とマット紙の情報を取得する。普通紙とマット紙では、普通紙の方がマット紙よりもインクの滲み度合いが大きい。すなわち、マット紙は、インクの滲み度合いが閾値以下の印刷用紙であり、普通紙は、インクの滲み度合いが閾値よりも大きい印刷用紙である。なお、本実施形態においては、マット紙と普通紙の情報を取得するようにしたが、これに限らず、インクの滲み度合いが閾値以下の印刷用紙の種類としてマット紙以外の印刷用紙の情報を取得するようにしてもよい。また、インクの滲み度合いが閾値よりも大きい印刷用紙として普通紙以外の印刷用紙の情報を取得するようにしてもよい。
K成分インク量情報算出部15は、CMYK形式の画像データのうちのK成分の画像データに基づいて、K成分のインク量情報を算出する。なお、本実施形態では、K成分の画像データを構成する全ての画素値の合計をK成分のインク量情報として算出する。
明度算出部16は、CMYK形式の画像データのうちのC成分、M成分およびY成分の画像データに基づいて、K成分以外の色成分の明度を算出する。本実施形態の明度算出部16は、たとえば画像データを構成する各画素のC成分、M成分およびY成分をLab変換し、そのL値を算出する。そして、明度算出部16は、各画素のL値の平均値を明度として算出する。
印刷データ生成部17は、CMYK形式の画像データに基づいて、インクジェット印刷用の印刷データを生成するとともに、印刷画像の濃度ムラを抑制する濃度ムラ抑制処理を行う。具体的には、本実施形態の印刷データ生成部17は、C成分、M成分、Y成分およびK成分のそれぞれの画像データに対してハーフトーン処理を施すことによって、印刷データとして各色のインクドロップデータを生成する。ハーフトーン処理としては、たとえばディザ法を用いたディザマスク処理を行うことができるが、これに限らず、誤差拡散法によるハーフトーン処理を行うようにしてもよい。なお、インクドロップデータとは、印刷画像の1つのドットを形成するためにインクジェットヘッドの1つのノズルから吐出されるインクドロップの数を規定したデータである。
また、本実施形態の印刷データ生成部17は、ハーフトーン処理を行う際、印刷画像の濃度ムラを抑制する濃度ムラ抑制処理を行う。本実施形態の濃度ムラ抑制処理とは、上述した風紋ムラを抑制する処理である。
そして、本実施形態の印刷データ生成部17は、風紋ムラの抑制度合いが異なる複数種類の濃度ムラ抑制処理を切り替えて行うことが可能であり、上述したカラーモード情報および用紙種類情報に基いて、これらの濃度ムラ抑制処理を切り替える。具体的には、本実施形態の印刷データ生成部17は、風紋ムラの抑制度合いが異なる3種類の濃度ムラ抑制処理と、濃度ムラ抑制処理を行わず、通常のハーフトーン処理のみを行う処理とを切り替える。本実施形態では、風紋ムラの抑制度合いが最も大きい濃度ムラ抑制処理を第1の濃度ムラ抑制処理とし、風紋ムラの抑制度合いが2番目に大きい濃度ムラ抑制処理を第2の濃度ムラ抑制処理とし、風紋ムラの抑制度合いが最も小さい濃度ムラ抑制処理を第3の濃度ムラ抑制処理とする。
そして、本実施形態の印刷データ生成部17は、カラーモード情報(カラー印刷か白黒印刷)と用紙種類情報(普通紙かマット紙)の組み合わせに応じて、濃度ムラ抑制処理を切り替える。
ここで、上述したようにカラーモード情報(カラー印刷か白黒印刷)と用紙種類情報(普通紙かマット紙)の組み合わせに応じて、濃度ムラ抑制処理を切り替える理由について説明する。まず、濃度ムラ抑制処理を行わず、通常のハーフトーン処理のみを行った場合の各組み合わせに対応する風紋ムラの評価結果を下表1に示す。なお、下表1に示す風紋ムラの評価結果「A」は、風紋ムラが目立たないことを意味し、評価結果「B」は、風紋ムラがそれほど目立たないことを意味し、評価結果「C」は、風紋ムラが目立つことを意味する。すなわち、評価結果A、BおよびCの順で風紋ムラが目立たないを意味する。
表1に示すように、印刷用紙の種類が普通紙の場合、普通紙は滲みの度合い大きいので、インクの着弾位置のずれによってスジ状に現れる風紋ムラは目立たず、評価結果「A」である。一方で、印刷用紙の種類がマット紙の場合、マット紙は普通紙と比較すると滲みの度合が小さいので、普通紙と比較すると風紋ムラが目立つ。特に、白黒印刷の方がカラー印刷よりも濃淡差が大きいので風紋ムラが目立つ。したがって、風紋ムラの評価結果としては、マット紙およびカラー印刷の場合は、評価結果「B」であり、マット紙および白黒印刷の場合は、評価結果「C」である。
これに対し、たとえば表1に示すどの組み合わせの場合にも、上述した第1の濃度ムラ抑制処理を行えば、風紋ムラは目立たなくなるが、この場合、第1の濃度ムラ抑制処理の処理時間だけでデータ処理時間を要するため、印刷処理速度が低下してしまう。特に、マット紙の場合は、高解像度な印刷を行うことが多いので、要求される印刷処理速度が遅いが、普通紙の場合は、マット紙ほど高解像度な印刷ではないので、要求される印刷処理速度が速い。
表2に、各組み合わせで第1の濃度ムラ抑制処理を行った場合における要求される印刷処理速度の達成度合いの評価結果を示す。なお、下表2に示す印刷処理速度の評価結果「A」は、要求される印刷処理速度を十分に達成できることを意味し、評価結果「B」は、要求される印刷処理速度を達成できることを意味し、評価結果「C」は、要求される印刷処理速度を十分に達成できないこと意味する。
表2に示すように、印刷用紙の種類が普通紙の場合、マット紙と比較すると、要求される印刷処理速度が高速であるので、評価結果「C」である。一方で、印刷用紙の種類がマット紙の場合、普通紙と比較すると、要求される印刷処理速度は低速であるので、評価結果は「B」または「A」である。カラー印刷と白黒印刷とを比較した場合、カラー印刷の方が第1の濃度ムラ抑制処理の処理時間が長くなるので、評価結果「B」であり、白黒印刷の場合は、評価結果「C」である。
表1と表2の評価結果から、本実施形態では、風紋ムラと印刷処理速度の両方の評価結果が「A」となるように、表3に示すように濃度ムラ抑制処理を切り替える。
表3に示すように、印刷データ生成部17は、用紙種類情報が普通紙である場合には、カラーモード情報に関わらず、風紋ムラは目立たないので、濃度ムラ抑制処理を行うことなく、通常のハーフトーン処理のみを行う。これにより、データ処理速度を早くすることができるので、要求される印刷処理速度を十分に達成することができる。
一方、印刷データ生成部17は、たとえば用紙種類情報がマット紙であり、カラーモード情報が白黒印刷である場合には、最も風紋ムラが目立つので、第1の濃度ムラ抑制処理を行う。
また、印刷データ生成部17は、用紙種類情報がマット紙であり、カラーモード情報がカラー印刷である場合には、K成分のインク量情報およびK成分以外の色成分の明度に応じて、第2の濃度ムラ抑制処理または第3の濃度ムラ抑制処理を行う。
なお、第1〜第3の濃度ムラ抑制処理の内容、並びに第2の濃度ムラ抑制処理および第3の濃度ムラ抑制処理の切り替えについては、後で詳述する。
また、画像処理部10は、上述した処理に限らず、その他にガンマ補正処理やエッジ強調処理などの種々の公知な画像処理を行う。
ヘッド駆動制御部20は、印刷データ生成部17で生成された各色のインクドロップデータに基づいて、インクジェットヘッド部30を駆動させて各色のインクジェットヘッドの各ノズルからインクを吐出させる。
インクジェットヘッド部30は、C、M、YおよびKの各色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドを備えている。各インクジェットヘッドは、上述したとおり各色のドロップデータに基づいてヘッド駆動制御部20によって制御されてインクを印刷媒体に対して吐出し、印刷媒体上に画像を形成する。
搬送部40は、印刷媒体をインクジェットヘッド部30まで搬送する搬送機構を備える。
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)および半導体メモリなどを備え、インクジェット印刷装置1全体を制御する。制御部50は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶された制御プログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御するものである。
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1の処理の流れについて、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは第1〜第3の濃度ムラ抑制処理の切り替えを中心に説明する。
まず、コンピュータなどから出力された印刷ジョブが、インクジェット印刷装置1に入力され、画像データ受付部11によって印刷ジョブに含まれるRGB形式の画像データが受け付けられる(S10)。
また、印刷ジョブに設定されたカラーモード情報が、カラーモード情報取得部13によって取得されるとともに、印刷ジョブに設定された用紙種類情報が、用紙種類情報取得部14によって取得される(S12)。
そして、画像データ受付部11によって受け付けられたRGB形式の画像データは、色変換部12に入力され、CMYK形式の画像データに変換される(S14)。
次いで、印刷データ生成部17は、入力されたCMYK形式の画像データに対して、ハーフトーン処理を施して各色のインクドロップデータを生成するが、この際、カラーモード情報および用紙種類情報に基いて、濃度ムラ抑制処理を切り替える。
具体的には、印刷データ生成部17は、カラーモード情報が、カラー印刷か白黒印刷かを判定し(S16)、白黒印刷である場合には(S16,白黒)、用紙種類情報が、普通紙かマット紙かを判定する(S18)。そして、印刷データ生成部17は、用紙種類情報がマット紙である場合には(S18,マット紙)、CMYK形式の画像データに対して、第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理を施して(S20)、各色のインクドロップデータを生成する。
一方、印刷データ生成部17は、用紙種類情報が普通紙である場合には(S18,普通紙)、濃度ムラ抑制処理を行わず、CMYK形式の画像データに対して通常のハーフトーン処理を施して(S22)、各色のインクドロップデータを生成する。
また、印刷データ生成部17は、カラーモード情報が、カラー印刷である場合には(S16,カラー)、用紙種類情報が、普通紙かマット紙かを判定する(S24)。そして、印刷データ生成部17は、用紙種類情報が普通紙である場合には(S24,普通紙)、濃度ムラ抑制処理を行わず、CMYK形式の画像データに対して通常のハーフトーン処理を施して(S22)、各色のインクドロップデータを生成する。
一方、印刷データ生成部17において用紙種類情報がマット紙であると判定された場合には(S24,マット紙)、K成分インク量情報算出部15において、CMYK形式の画像データのうちのK成分の画像データに基づいてK成分のインク量情報が算出される(S26)。また、明度算出部16において、CMYK形式の画像データのうちのC成分、M成分およびY成分の画像データに基づいてK成分以外の色成分の明度が算出される(S26)。
そして、印刷データ生成部17は、K成分のインク量情報とK成分以外の明度に基づいて、予め設定されたテーブルを参照し(S28)、濃度ムラ抑制処理を切り替える。下表4は、上記テーブルの一例を示す。
表4に示すように、印刷データ生成部17は、たとえばK成分のインク量情報が80〜100である場合には、濃度ムラ抑制処理は行わず、CMYK形式の画像データに対して通常のハーフトーン処理を施して(S22)、各色のインクドロップデータを生成する。この場合、K成分のインク量情報が大きいので、マット紙であっても滲み度合いが大きく風紋ムラが目立たないため、明度の大きさ(0〜100)に関わらず、濃度ムラ抑制処理を行わない。
また、印刷データ生成部17は、たとえばK成分のインク量情報が40〜80であり、K成分以外の明度が0〜50である場合にも、濃度ムラ抑制処理は行わず、CMYK形式の画像データに対して通常のハーフトーン処理を施して(S22)、各色のインクドロップデータを生成する。この場合、K成分のインク量情報が小さいが、K成分以外の明度が低い。すなわち、K成分以外の明度が低い場合には、K成分以外の色成分のインク量が多い傾向にあるためインクの滲み度合が大きく、かつ濃淡差も小さい傾向にあるので、風紋ムラが目立たない。したがって、この場合、濃度ムラ抑制処理を行わない。
また、印刷データ生成部17は、たとえばK成分のインク量情報が40〜80であり、K成分以外の明度が50〜80である場合には、第3の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理を施して(S30)、各色のインクドロップデータを生成する。この場合、K成分のインク量情報が小さく、かつK成分以外の明度がある程度高い。すなわち、K成分以外の明度がある程度高い場合には、K成分以外の色成分のインク量が少なくなる傾向にあり、インクの滲み度合いもそれ程大きくないため、風紋ムラがある程度目立つ。したがって、この場合、第3の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理を行う。
また、印刷データ生成部17は、たとえばK成分のインク量情報が40〜80であり、K成分以外の明度が80〜100である場合には、第2の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理を施して(S32)、各色のインクドロップデータを生成する。この場合、K成分のインク量情報が小さく、かつK成分以外の明度が高い。すなわち、K成分以外の明度が高い場合には、K成分以外の色成分のインク量も少なくなる傾向にあり、インクの滲み度合いも小さいため、風紋ムラが目立つ。したがって、この場合、第2の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理を行う。
なお、上表4に示すインク量情報とK成分以外の色成分の明度の組み合わせに対応する濃度ムラ抑制処理は一例であって、これに限られない。要するに、インク量情報が小さい風紋ムラが目立つ傾向にあり、K成分以外の色成分の明度が小さいほど風紋ムラが目立つ傾向にあるので、インク量情報およびK成分以外の色成分が小さいほど、風紋ムラの抑制度合いが大きい濃度ムラ抑制処理を施すことが好ましい。
このように、K成分のインク量情報とK成分以外の色成分の明度の組み合わせに応じて濃度ムラ抑制処理を切り替えることによって、インクの滲み度合いに応じた濃度ムラ抑制処理の切り替えを行うことができ、より適切に風紋ムラを抑制することができる。
そして、上述したように所定のハーフトーン処理が施されて生成された各色のインクドロップデータは、印刷データ生成部17からヘッド駆動制御部20に出力される。
ヘッド駆動制御部20は、入力された各色のインクドロップデータに基づいてインクジェットヘッド部30を駆動させて各色のインクジェットヘッドの各ノズルからインクを吐出させて印刷画像を形成する(S34)。
本実施形態のインクジェット印刷装置1によれば、カラー印刷を行うか白黒印刷を行うかを示すカラーモード情報を取得するとともに、印刷用紙の種類の情報を取得し、その取得したカラーモード情報および用紙種類情報に基いて、濃度ムラ抑制処理を切り替えるようにしたので、風紋ムラを抑制して画質を維持しつつ、要求される印刷処理速度を達成することができる。
また、本実施形態のインクジェット印刷装置1によれば、用紙種類情報として、滲みが閾値以下の印刷用紙を示す情報が受け付けられた場合に濃度ムラ抑制処理を施すようにしたので、風紋ムラの発生に影響するインクの滲みの度合いによって濃度ムラ抑制処理を切り替えることができる。
なお、上述したとおり、本実施形態では、カラーモード情報に基いて、カラー印刷か白黒印刷かを判定し、その判定結果に応じて濃度ムラ抑制処理を切り替えているが、画像データが単色のカラーである場合には、白黒印刷の場合と同様に処理を行うものとする。単色のカラーである場合、白黒印刷と同様に、フルカラーのカラー印刷と比較するとインク量が少なく、風紋ムラの発生の仕方は白黒印刷に近いからである。
次に、本実施形態の印刷データ生成部17で行われる通常のハーフトーン処理、および第1〜第3の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理について説明する。
まず、通常のハーフトーン処理について説明する。本実施形態の通常のハーフトーン処理は、既存のハーフトーン処理と同様であるので、詳細な説明は省略するが、図4を参照しながら、その概念を説明する。なお、ここでは、各画素に吐出されるインクの最大ドロップ数が3ドロップの場合について説明するが、実際の最大ドロップ数は、5ドロップまたは7ドロップなどである。また、ここで説明する既存のハーフトーン処理はディザ法を用いたハーフトーン処理であり、4×4のディザマトリクスを用いたハーフトーン処理である。
図4(1)〜(49)は、画像データ内の所定の4×4の画素に対してハーフトーン処理を施した結果を示す図であり、印字濃度が最低濃度(ゼロ)から最大濃度まで変化する場合におけるハーフトーン処理結果を示している。括弧内の番号が増加するにつれて印字濃度が1段階ずつ増加する。図4(1)〜(49)の各図の1つのマス目が1画素を示している。
図4(1)〜(17)は、印刷濃度がゼロから17段階目まで変化する場合のハーフトーン処理結果を示している。図4(1)〜(17)に示すように、印刷濃度がゼロから17段階目まで変化する場合には、印刷濃度が1段階上がるごとに、インクのドロップ数「1」を示す「1」のデータが、ディザマトリクスの各ディザ閾値の分布にしたがって1つずつ追加される。そして、印刷濃度が17段階の場合には、全ての画素が「1」のデータとなる。
次いで、図4(18)〜(33)に示すように、印刷濃度が18段階から33段階までは、全ての画素が「1」のデータの状態から、印刷濃度が1段階上がるごとに、インクのドロップ数「2」を示す「2」のデータが、ディザマトリクスの各ディザ閾値の分布にしたがって1つずつ追加される。そして、印刷濃度が33段階の場合には、全ての画素が「2」のデータとなる。
次いで、図4(34)〜(49)に示すように、印刷濃度が34段階から49段階までは、全ての画素が「2」のデータの状態から、印刷濃度が1段階上がるごとに、インクのドロップ数「3」を示す「3」のデータが、ディザマトリクスの各ディザ閾値の分布にしたがって1つずつ追加される。そして、印刷濃度が49段階の場合には、全ての画素が「3」のデータとなる。すなわち、全ての画素が最大値(最大ドロップ数)となる。
上述したように、既存のハーフトーン処理の場合、印刷濃度が17段階の時点で全ての画素が0以外のデータとなり、印刷濃度が18段階以降は、「2」または「3」のデータが順次追加される。すなわち、印刷濃度が17段階以降は、画素と画素の間にゼロ値が含まれないことになるので、常に印字ドット密度が高い状態であるため、上述したインク吐出による自己気流が発生しやすい状態であり、風紋ムラを抑制する効果はない。しかしながら、後述する第1〜第3の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理と比較すると、演算が簡略な処理であるため、演算処理速度が高速である。
なお、4ドロップ以降の4以上のデータについても、上記と同様にして印字濃度が1段階上がる毎に1つずつ追加される。
以上が、ディザマトリクスを用いた通常のハーフトーン処理の説明である。
次に、第3の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理について説明する。
第3の濃度ムラ抑制処理は、上述したように濃度ムラの抑制度合いが最も小さい濃度ムラ抑制処理であるが、本実施形態では、第3の濃度ムラ抑制処理として、いわゆる1ドロップレス処理を行う。1ドロップレス処理は、最小ドロップである1ドロップのデータがインクドロップデータに含まれないようにする処理である。本実施形態では、上述した通常のハーフトーン処理を施す際に、K成分のインクドロップデータのみに1ドロップレス処理を行う。このようにK成分のインクドロップデータのみに1ドロップレス処理を施すのは、K成分が最も風紋ムラに影響を及ぼすとともに、データ処理速度を高速化するためである。
1ドロップレス処理の方法としては、たとえば単にインクドロップデータに含まれる1ドロップのインクドロップデータを「0」にすることによって、1ドロップのインクドロップデータを削除するようにすればよい。また、これに限らず、たとえば図5に示すように、所定の画素のインクドロップデータが、1ドロップのインクドロップデータである場合、その1つの画素のインクドロップデータを、「0」と「2」の2画素のインクドロップデータに変換することによって、1ドロップのインクドロップデータを削除するようにしてもよい。なお、図5に示す1つの四角が1つの画素を示し、1つの四角内の数値が、インクドロップデータのドロップ数を示している。
上述したように「1」のインクドロップデータを「0」と「2」の2画素のインクドロップデータに変換することによって、インク液滴の量が少なく、着弾ずれを起こしやすい1ドロップのインクデータを削除することができるので、風紋ムラを抑制することができる。また、実質的に同等の濃度を維持することができる。なお、1ドロップレス処理の方法としては、上述した方法に限らず、その他の公知な方法を用いることができる。
以上が、第3の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理の説明である。
次に、第2の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理について説明する。
第2の濃度ムラ抑制処理は、上述したように濃度ムラの抑制度合いが、第1の濃度ムラ抑制処理の次に大きい濃度ムラ抑制処理であるが、本実施形態では、第2の濃度ムラ抑制処理として、いわゆる2ドロップレス処理を行う。2ドロップレス処理は、1ドロップと2ドロップのデータがインクドロップデータに含まれないようにする処理である。本実施形態では、上述した通常のハーフトーン処理を施す際に、K成分のインクドロップデータのみに2ドロップレス処理を行う。
2ドロップレス処理の方法としては、たとえば単にインクドロップデータに含まれる1ドロップおよび2ドロップのインクドロップデータを「0」にすることによって、1ドロップおよび2ドロップのインクドロップデータを削除するようにすればよい。また、これに限らず、1ドロップレス処理と同様に、所定の画素のインクドロップデータが、1ドロップのインクドロップデータである場合、その1つの画素のインクドロップデータを、「0」と「2」の2画素のインクドロップデータに変換することによって、1ドロップのインクドロップデータを削除し、さらに2ドロップのインクドロップデータを、「0」と「3」の2画素のインクドロップデータに変換することによって、2ドロップのインクドロップデータを削除するようにしてもよい。
上述したように「1」と「2」のインクドロップデータを「0」と「3」の2画素のインクドロップデータに変換することによって、インク液滴の量が少なく、着弾ずれを起こしやすい1ドロップと2ドロップのインクデータを削除することができるので、第3の濃度ムラ抑制処理よりも風紋ムラをさらに抑制することができる。また、実質的に同等の濃度を維持することができる。なお、2ドロップレス処理の方法としては、上述した方法に限らず、その他の公知な方法を用いることができる。
以上が、第2の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理の説明である。
上述したようにカラーモード情報として、カラー印刷を示す情報が受け付けられ、かつ用紙種類情報として、マット紙が受け付けられた場合には、K成分にのみ1ドロップレス処理または2ドロップレス処理を含むハーフトーン処理を行うようにしたので、後述する第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理より簡易な処理で風紋ムラを抑制することができ、データ処理速度を上げることができるので、要求される印刷処理速度を十分に達成することができる。
次に、第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理について説明する。
第1の濃度ムラ抑制処理は、上述したように濃度ムラの抑制度合いが、最も大きい濃度ムラ抑制処理である。まず、第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理の概念について、図6を参照しながら説明する。なお、ここでも、各画素に吐出されるインクの最大ドロップ数が3ドロップの場合について説明するが、実際の最大ドロップ数は、5ドロップまたは7ドロップなどである。また、ここで説明する第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理も4×4のディザマトリクスを用いたハーフトーン処理である。
図6(1)〜(37)は、画像データ内の所定の4×4の画素に対して、第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理を施した結果を示す図であり、印刷濃度が最低濃度(ゼロ)から最大濃度まで変化する場合におけるハーフトーン処理結果を示している。括弧内の番号が増加するにつれて印刷濃度が1段階ずつ増加する。なお、ここでは、説明を分かりやすくするため、4×4の画素は全て同じ濃度であることを想定している。
第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理では、まず、印刷濃度の増加に応じて、インクドロップ数「1」を順次追加するが、ゼロ値が残った状態で「1」のデータの追加を停止する。すなわちゼロ値の画素の数が所定の画素数となった段階で「1」のデータの追加を停止する。
次いで、印刷濃度の増加に応じて、「2」のデータを順次追加するが、この際、「1」のデータを配置した際の配置ルールと同じルールで配置する。そして、ゼロ値が残った状態で「2」のデータの追加を停止する。さらに、印刷濃度の増加に応じて、「3」のデータを順次追加するが、この際、「2」のデータを配置した際の配置ルールと同じルールで配置する。そして、印刷濃度が最大濃度となるまでは、ゼロ値が残った状態とし、印刷濃度が最大濃度の時点で全ての画素が最大値(「3」のデータ)となるようにする。以下、図6を参照しながら、より具体的に説明する。
図6(1)〜(9)は、印刷濃度がゼロから9段階目まで変化する場合のハーフトーン処理結果を示している。図6(1)〜(9)に示すように、印刷濃度がゼロから9段階目まで変化する場合には、濃度が1段階上がるごとに、インクのドロップ数「1」を示す「1」のデータが、ディザマトリクスの各ディザ閾値の分布にしたがって1つずつ追加される。そして、上述したようにゼロ値を残した状態で「1」のデータの追加を停止するが、ここでは印刷濃度が9段階の時点で「1」のデータの追加を停止している。「1」のデータの追加を停止する印刷濃度については、9段階に限らず、風紋ムラを抑制できる段階に設定される。
次に、図6(10)〜(21)に示すように、印刷濃度が10段階から21段階までは、「1」または「0」のデータが「2」のデータに置き換えられる。
まず、図6(10)〜(17)に示すように、印刷濃度が10段階から17段階までは、たとえば印刷濃度がゼロから9段階まで変化する場合の「0」のデータの配置ルールと同じ配置ルールが用いられて「1」のデータが「2」のデータに置き換えられる。これにより、9段階のゼロ値の数を維持した状態で「1」のデータを「2」のデータに置き換えることができる。したがって、風紋ムラの抑制効果を維持した状態とすることができるとともに、印刷濃度階調を滑らかにすることができるのでトーンジャンプを抑制することができる。トーンジャンプとは、本来滑らかなグラデーション部分の階調が急激に変化して縞模様のようにみえる現象である。
次に、図6(18)〜(21)に示すように、印刷濃度が18段階から21段階までは、ディザマトリクスの各ディザ閾値の分布にしたがって、「0」のデータが「2」のデータに置き換えられる。そして、第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理では、上述したようにゼロ値を残した状態で「2」のデータの追加を停止するが、ここでは印刷濃度が21段階の時点で「2」のデータの追加を停止している。「2」のデータの追加を停止する印刷濃度については、21段階に限らず、風紋ムラを抑制できる段階に設定される。
なお、「2」のデータの追加を停止した時点におけるゼロ値の数は、上述した「1」のデータの追加を停止した時点におけるゼロ値の数よりも少なくすることができる。これは、インクドロップ数が増加するほどインク液滴のサイズが大きくなることによって、印刷面においてインクドット間の隙間が小さい、あるいは重なっているため、気流の影響を受けて着弾位置がずれても、風紋ムラを生じにくいからである。
そして、このように「2」のデータの追加を停止した時点におけるゼロ値の数を、「1」のデータの追加を停止した時点におけるゼロ値の数よりも少なくすることによって、すなわち多値化データが大きくなるほど、多値化データ全体に含まれるゼロ値の割合が減少するようにハーフトーン処理を施すことによって、印刷濃度階調を増加させることができ、印刷画像の画質を向上させることができる。
次いで、図6(22)〜(37)に示すように、印刷濃度が22段階から37段階までは、「2」または「0」のデータが「3」のデータに置き換えられる。
まず、図6(22)〜(33)に示すように、印刷濃度が22段階から33段階までは、21段階の「2」のデータを維持した状態から、たとえば印刷濃度が10段階から21段階まで変化する場合の「2」のデータの配置ルールと同じ配置ルールが用いられて「2」のデータが「3」のデータに置き換えられる。これにより、21段階のゼロ値の数を維持した状態で「2」のデータを「3」のデータに置き換えることができる。したがって、風紋ムラの抑制効果を維持した状態とすることができるとともに、印刷濃度階調を滑らかにすることができるのでトーンジャンプを抑制することができる。
次に、図6(34)〜(37)に示すように、印刷濃度が34段階から37段階までは、ディザマトリクスの各ディザ閾値の分布にしたがって、「0」のデータが「3」のデータに置き換えられる。そして、印刷濃度が最大濃度となるまでは、ゼロ値が残った状態とし、印刷濃度が最大濃度の時点で全ての画素が最大値(「3」のデータ)となるようにする。
図6(1)〜(37)に示すように、本実施形態の印刷データ生成部17は、第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理を行う際、画像データを構成する全ての画素が最大値に変換される場合(図6(37)の場合)を除き、必ずゼロ値を含むようにハーフトーン処理を施す。これにより、既存のハーフトーン処理よりも印字ドット密度が低い状態とすることができるため、上述したインク吐出による自己気流を発生を抑制することができ、風紋ムラを抑制することができる。なお、第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理が、1ドロップレス処理を含むハーフトーン処理および1ドロップレス処理を含むハーフトーン処理よりも風紋ムラの抑制効果があることは実験で確認している。
また、図6(1)〜(9)に示したように、「0」のデータを「1」のデータに変換する際、「1」のデータの画素に「0」のデータの画素を隣接させるとともに、「1」のデータの画素が上下左右方向に2画素以上連続しないようにすることが好ましい。ただし、「0」のデータと「1」のデータの配置については、画像データの各画素の濃度に依存する。そこで、たとえばハーフトーン処理において、ディザマトリクスを用いて画像データの各画素を「0」および「1」のデータに変換した後、「1」のデータが上下方向または左右方向に2画素以上連続する部分を検出し、その検出した部分の「1」のデータを「0」のデータに変換する処理をさらに行うことによって、「1」のデータの画素が上下左右方向に2画素以上連続しないようにしてもよい。これにより、画像データに依存することなく、印字ドット密度が低い状態を維持することができる。
次に、第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理の演算処理の概略について、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、図7に示すフローチャートの処理は、S46のインクドロップデータの具体的な演算処理を除いては、上述した通常のハーフトーン処理も同様である。
まず、印刷データ生成部17は、画像データを構成する画素のy座標をy=0に設定し(S40)、x座標をx=0に設定する(S42)。なお、画像データを構成する画素のx座標およびy座標はゼロが初期値である。
そして、S40およびS42で設定したx座標およびy座標の位置の画素の濃度データdata[x][y]と、そのx座標およびy座標の位置に対応するディザマトリクスDthのディザ閾値dthを取得する(S44)。ディザマトリクスDthにおけるディザ閾値dthの位置は、たとえばdata[x][y]のx座標をディザマトリクスDhのx方向のサイズで除算した余りと、y座標をディザマトリクスのy方向のサイズで除算した余りを算出することによって求められる。なお、ディザマトリクスDthおよびディザ閾値dthについては、後で詳述する。
そして、印刷データ生成部17は、S44で求めた濃度データdata[x][y]とディザ閾値dthを用いて演算処理を実行することによって、濃度データdata[x][y]に対応するインクドロップデータを算出する(S46)。なお、ここでの具体的な演算処理については、後で詳述する。
次いで、印刷データ生成部17は、x座標を1インクリメントし(S48)、そのxの値が、画像データのx方向のサイズ(x_size)よりも小さい場合には(S50,YES)、S44〜S48の処理を繰り返して行う。
そして、印刷データ生成部17は、S50において、x≧x_sizeである場合には(S50,NO)、y座標を1インクリメントし(S52)、そのyの値が、画像データのy方向のサイズ(y_size)よりも小さい場合には(S54,YES)、S42〜S52の処理を繰り返して行う。
そして、印刷データ生成部17は、S54において、y≧y_sizeとなった時点で(S54,NO)、処理を終了する。これにより、画像データを構成する全ての画素について、インクドロップデータを求めることができる。
次に、第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理における図7のS56の演算処理について具体的に説明する。ここでは、画像データの各画素の濃度データを0〜255とし、図6で示したように、ハーフトーン処理を施すことによって0〜3のインクドロップデータに変換するものとする。
まず、第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理において用いられる濃度閾値ThとディザマトリクスDthについて説明する。本実施形態においては、図8に示すように、0〜255の濃度範囲を3つの範囲に区分する。その区分の境界の値を濃度閾値Th[0]、Th[1]、Th[2]、Th[3]とする。Th[0]=0であり、Th[3]=255である。Th[1]は、ハーフトーン処理によって「1」のデータを追加する印刷濃度範囲を決定する値であり、図6で示す0段階から9段階までの印刷濃度範囲を決定する値である。すなわち、「1」のデータの追加を停止する印刷濃度である。たとえばTh[1]=30が設定される。Th[1]を大きくした場合には、「1」のデータの密度が高くなり、すなわち印字ドット密度が高くなり風紋ムラを生じ、Th[1]が小さくした場合には、風紋ムラは生じなくなるが、小さいドットが少なくなり、粒状感が大きくなるので、Th[1]は、実験などによって風紋ムラと粒状感のバランスの取れた値に設定する。
Th[2]は、ハーフトーン処理によって「2」のデータを追加する印刷濃度範囲を決定する値であり、図6で示す10段階から21段階までの印刷濃度範囲を決定する値である。すなわち、「2」のデータの追加を停止する印刷濃度である。たとえばTh[2]=110が設定される。Th[2]についても、Th[1]と同様に、実験などによって風紋ムラと粒状感のバランスの取れた値に設定する。
そして、本実施形態では、Th[0]〜Th[1]を濃度範囲指標m=0とし、Th[1]〜Th[2]を濃度範囲指標m=1とし、Th[2]〜Th[3]を濃度範囲指標m=2とする。濃度範囲指標m=0〜2については、後の具体的な演算処理の説明で使用する。
次に、本実施形態では、画像データの3つの濃度範囲に応じて、3つのディザマトリクスDth[1]、Dth[2]およびDth[3]を用いてハーフトーン処理を行う。
ディザマトリクスDth[1]は、第1の濃度範囲0〜105の画像データをハーフトーン処理によって「0」または「1」のデータに変換するディザマトリクスである。ディザマトリクスDth[1]は、ブルーノイズマスクからなるディザマトリクスを第1の濃度範囲0〜105の濃度値で正規化することによって取得される。たとえばブルーノイズマスクからなるディザマトリクスの1つの閾値をdthとし、ディザマトリクスDth[1]の対応する1つの閾値をdth[1]とした場合、下式によって算出される。なお、本実施形態では、ブルーノイズマスクからなるディザマトリクスを用いるようにしたが、網点型のディザマトリクスを用いるようにしてもよい。
dth[1]=(第1の正規化値×dth)/256
また、上式の第1の正規化値は、ドットが密になる速度を制御する値である。たとえば第1の正規化値を256とすると、dthが10、100の場合、dth[1]は10、100となるが、第1の正規化を128とすると、dth[1]は5、50と閾値が小さくなり、より印字されやすくなる。つまり、これは、第1の正規化値が小さいほど密になる速度が速くなることを意味する。本実施形態においては、第1の正規化値として105を設定する。
ディザマトリクスDth[2]は、第2の濃度範囲30〜135の画像データをハーフトーン処理によって「2」のデータに変換するディザマトリクスである。ディザマトリクスDth[2]は、ブルーノイズマスクからなるディザマトリクスを第2の濃度範囲30〜135の濃度値で正規化することによって取得される。たとえばブルーノイズマスクからなるディザマトリクスの1つの閾値をdthとし、ディザマトリクスDth[2]の対応する1つの閾値をdth[2]とした場合、下式によって算出される。なお、第2の正規化値の意味は、第1の正規化値と同様であり、本実施形態においては、第2の正規化値として105を設定する。
dth[2]=(第2の正規化値×dth)/256
ディザマトリクスDth[3]は、第3の濃度範囲105〜255の画像データをハーフトーン処理によって「3」のデータに変換するディザマトリクスである。ディザマトリクスDth[3]は、ブルーノイズマスクからなるディザマトリクスを第2の濃度範囲105〜255の濃度値で正規化することによって取得される。たとえばブルーノイズマスクからなるディザマトリクスの1つの閾値をdthとし、ディザマトリクスDth[3]の対応する1つの閾値をdth[3]とした場合、下式によって算出される。なお、第3の正規化値の意味は、第1の正規化値と同様であり、本実施形態では、第3の正規化値=255−Th[2]とする。このような値とすることによって、濃度データが255の時に「3」のインクドロップのベタデータとすることができる。
dth[3]=(第3の正規化値×dth)/256
また、図8では、「0」と「1」のインクドロップデータに変換される領域(0,1ドロップ領域)と、「0」、「1」および「2」のインクドロップデータに変換される領域(0,1,2ドロップ領域)と、「0」と「2」のインクドロップデータに変換される領域(0,2ドロップ領域)と、「0」、「2」および「3」のインクドロップデータに変換される領域(0,2,3ドロップ領域)と、「0」と「3」のインクドロップデータに変換される領域(0,3ドロップ領域)とを示している。
次に、上述した濃度閾値Th[0]〜Th[3]およびディザマトリクスDth[1]〜[3]を用いたハーフトーン処理について、図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、印刷データ生成部17は、画像データを構成する所定の画素の濃度データを取得し、その濃度データdataが、上述した濃度範囲指標m=0〜2のどれに属するか否かを決定する(S60)。具体的には、Th[m]≦data<Th[m+1]を満たすmを決定する。
次いで、印刷データ生成部17は、上述したdth[1]〜dth[3]を算出する(S62)。
そして、S13で決定したmの値がゼロである場合には(S64,YES)、その画素の濃度データdataと、その画素に対応する位置のディザマトリクスDth[1]のディザ閾値dth[1]と比較し、data>dth[1]である場合には(S66,YES)、その画素のインクドロップデータを「1」とする(S68)。
一方、data≦dth[1]である場合には(S66,NO)、その画素のインクドロップデータを「0」とする(S70)。
また、印刷データ生成部17は、S64で決定したmの値がゼロでない場合には(S64,NO)、その画素の濃度データdataからTh[m]を減算した値(data―Th[m])と、その画素に対応する位置のディザマトリクスDth[m+1]のディザ閾値dth[m+1]と比較する(S72)。なお、data―Th[m]は、画素の濃度データをTh[m]を基準とする入力データとするため演算である。
そして、印刷データ生成部17は、その入力データが、dth[m+1]よりも大きい場合には(S72,YES)、その画素のインクドロップデータをm+1とする(S74)。
具体的には、印刷データ生成部17は、たとえばmが1である場合には、data−Th[1]とdth[2]を比較する。そして、data−Th[1]がdth[2]よりも大きい場合には、その画素のインクドロップデータを2とする。これにより、図6(10)〜(21)に示す「2」のデータが配置される。
一方、S72において、data―Th[m]≦dth[m+1]である場合には(S72,NO)、上記画素に対応する位置のディザマトリクスD[m]のディザ閾値dth[m]と、Th[m]−Th[m−1]とを比較する(S76)。
ここで、Th[m]−Th[m−1]は、たとえばm=1のときTh[1]−Th[0]となり、図6(1)〜(9)に示すように「1」のデータを追加し始めてから停止するまでの濃度区間を示す。そして、図6(10)〜(17)に示すように、「2」のデータは、「1」のデータの位置と同じ場所に配置する必要があるが、これは、S72の条件に基づいて「2」のデータを配置することで実現する。
しかしながら、S72の条件を満たしていない場合、Th[1]時点の濃度を保持する必要がある。したがって、S72において「2」のデータが配置されなかった場合には、Th[1]時点で「1」のデータが配置された場所には、「1」のデータを配置する必要がある。
そこで、S72において「2」のデータが配置されなかった場合、S76の比較式で、「1」のデータ用のディザ閾値dh[1]が、「1」のデータの追加を停止した濃度より小さい場合に、「1」のデータを配置する(S78)。これは、ディザ閾値dh[1]が、Th[1]−Th「0」よりも小さい場合には、その位置には、既に「1」のデータが配置されていることを示すからである。
一方、S76の比較式で、dth[m]≧Th[m]−Th[m−1]である場合には、上記画素のインクドロップデータを0とする(S80)。
これにより、画像データの画素の濃度データがm=1の濃度区間である場合には、「0」、「1」または「2」のデータに変換することができる。すなわち、「0」のデータを混在させつつ、印刷濃度変化を滑らかにすることができる。
なお、上記説明では、m=1の場合について説明したが、m=2の場合もS72およびS76の比較式に基づく処理を行うことによって、m=2の濃度区間の濃度データを「0」、「2」または「3」のデータに変換することができる。すなわち、「0」のデータを混在させつつ、印刷濃度変化を滑らかにすることができる。
以上が、第1の濃度ムラ抑制処理を含むハーフトーン処理の説明である。
本発明の画像処理装置に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
上記本発明の画像処理装置において、印刷データ生成部は、用紙種類情報として、滲みが閾値以下の印刷用紙を示す情報が受け付けられた場合に濃度ムラ抑制処理を施すことができる。
また、上記本発明の画像処理装置において、印刷データ生成部は、カラーモード情報として、カラー印刷を示す情報が受け付けられ、かつ用紙種類情報として、滲みが閾値以下の印刷用紙を示す情報が受け付けられた場合に、K成分の印刷データに最小ドロップの印刷データが含まれないようにする濃度ムラ抑制処理を行うことができる。
また、上記本発明の画像処理装置においては、画像データに基づいて、K成分のインク量情報を算出するK成分インク量情報算出部と、画像データに基づいて、K成分以外の色成分の明度を算出する明度算出部とを備えることができ、印刷データ生成部は、K成分のインク量情報および色成分の明度に基いて、濃度ムラ抑制処理を切り替えることができる。