JP2021177455A - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】捲回電極体内部への非水電解液の浸透性が好適に向上された非水電解液二次電池を提供すること。【解決手段】ここで開示されるリチウムイオン二次電池100は、捲回電極体20と、非水電解液と、該捲回電極体を収容する電池ケース10とを備える。捲回電極体20の正極集電箔積層部35および負極集電箔積層部45の少なくともいずれか一方において、2つのR部(21c,21d)のうち少なくとも1つのR部に、前記非水電解液の浸入経路が周囲よりも拡張された電解液浸入拡張経路が形成されていることを特徴とする。【選択図】図4

Description

本発明は、非水電解液二次電池に関する。詳しくは、扁平型捲回電極体と、非水電解液と、該捲回電極体を収容する電池ケースとを備える非水電解液二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池(リチウムイオン電池ともいう。)等の非水電解液二次電池は、既存の電池に比べて軽量かつエネルギー密度が高いことから、車両搭載用の高出力電源、或いはパソコンおよび携帯端末の電源として好ましく利用されている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両の駆動用高出力電源として好ましく用いられている。
この種の二次電池は、例えば、電極体と非水電解液とが、電池ケースに収容された構造を有している。そして、上記電極体は、典型的には、正極集電箔上に正極活物質層が形成されたシート状の正極(以下、「正極シート」という場合がある。)と、負極集電箔上に負極活物質層が形成された負極(以下、「負極シート」という場合がある。)とが、セパレータを介在させつつ相互に複数重なり合った正負極積層構造を有する。上記正負極積層構造を有する電極体の典型例として、長尺な正極シートと、同じく長尺な負極シートとを、セパレータを間に介在させつつ複数重ね合わせて長尺方向に捲回し、扁平に成形したいわゆる捲回電極体が挙げられる。
かかる構造の二次電池を製造する際には、捲回電極体を収容した電池ケースの内部を減圧した後で、ケース内に非水電解液を注液する。そして、電池ケースが開放された状態を所定時間保持して電極体の内部(正極と負極との極間)に非水電解液を浸透させた後に、電池ケースを密閉する。かかる二次電池の製造において、当該水電解液の浸透量を調節する技術が従来から種々提案されている。かかる技術の一例として、下記特許文献1が挙げられる。
特開2016−091870号公報
ところで、上述の製造工程において、電極体内への非水電解液の浸透性が低いと、負圧のままの領域が電極体内に残り、ケース密閉後も電極体内へ非水電解液が浸透し続けるため、電極体と電池ケースとの間の空間が負圧になりやすい。このような二次電池では、充放電に伴って正極や負極が膨張した際に、電極体が外方へ膨らむことが難しいため、正極と負極との極間が潰れやすい。この結果、正極と負極との極間に浸透していた非水電解液が電極体の外部へ漏出し、ハイレート特性が低下するおそれがある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、捲回電極体内部への非水電解液の浸透性が好適に向上された非水電解液二次電池を提供することである。
上記目的を実現するべく、ここで開示される非水電解液二次電池は、長尺な正極集電箔上に正極活物質層が形成されたシート状の正極と、長尺な負極集電箔上に負極活物質層が形成されたシート状の負極とが、セパレータを介在させつつ捲回されて扁平状に形成された捲回電極体と、非水電解液と、該捲回電極体を収容する電池ケースとを備える非水電解液二次電池を提供する。上記捲回電極体は、捲回軸に直交する断面の長手方向の中央部分に存在する、表面が扁平な扁平部と、上記断面の長手方向の上記扁平部を挟んだ両端部に存在する、表面が曲面な2つのR部とを有する。また、上記捲回電極体の捲回軸方向における一方の端部には、上記正極活物質層が形成されていない正極集電箔露出部分が上記負極からはみ出た状態で積層された正極集電箔積層部が存在し、且つ、他方には、上記負極活物質層が形成されていない負極集電箔露出部分が上記正極からはみ出た状態で積層された負極集電箔積層部が存在する。そして、ここで開示される非水電解液二次電池は、上記正極集電箔積層部および上記負極集電箔積層部の少なくともいずれか一方において、2つのR部のうち少なくとも1つのR部に、上記非水電解液の浸入経路が周囲よりも拡張された電解液浸入拡張経路が形成されていることを特徴とする。
上述したような電解液浸入拡張経路では、その周囲よりも非水電解液の浸透性が好適に向上されるため、全体として捲回電極体内部への非水電解液の浸透性が好適に向上し得る。
一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の外形と内部構成を模式的に示す正面の断面図である。 一実施形態に係る捲回電極体を模式的に示す斜視図である。 図1におけるIII−III線断面図である。 一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の正極集電箔積層部の側面の一例を模式的に示す断面図である。 一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の正極集電箔積層部の側面の他の一例を模式的に示す模式的な断面図である。 一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の正極集電箔積層部の側面の他の一例を模式的に示す模式的な断面図である。 電解液注入後の経過時間と、電解液面の高さとの関係を示すグラフである。
以下、ここで開示される非水電解液二次電池の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づいて把握され得る。すなわち、ここで開示される技術は、本明細書に明示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施できる。なお、以下の実施形態は、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。また、本明細書にて示す図面では、同じ作用を奏する部材・部位に同じ符号を付して説明している。さらに、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、本明細書および特許請求の範囲において、所定の数値範囲をA〜B(A、Bは任意の数値)と記すときは、A以上B以下の意味である。したがって、Aを上回り且つBを下回る場合を包含する。
本明細書において「非水電解液二次電池」とは、電解質として非水系の電解液を用いた繰り返し充放電可能な電池一般をいう。かかる非水電解液二次電池の典型例として、リチウムイオン二次電池が挙げられる。このリチウムイオン二次電池は、電解質イオン(電荷担体)としてリチウム(Li)イオンを利用し、正極と負極との間をリチウムイオンが移動することによって充放電を行う二次電池である。また、本明細書において「活物質」とは、電荷担体を可逆的に吸蔵・放出する材料をいう。
なお、下記実施形態では、非水電解液二次電池としてリチウムイオン二次電池を用いているが、ここに開示される技術は、リチウムイオン二次電池に限定されず、他の非水電解液二次電池(例えばニッケル水素電池など)に適用することもできる。
図1に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平状の捲回電極体20と電解液(図示せず)とが電池ケース(すなわち外装容器)10に収容されることにより構築される。図1に示す電池ケース10は、内部空間を有した角形の容器である。また、電池ケース10の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。電池ケース10の蓋体12には、外部接続用の外部正極端子38および外部負極端子48と、電池ケース10の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁14と、電解液を注液するための注入口(図示せず)とが設けられている。外部端子38,48の一部は、ケース内部で正極集電端子37,負極集電端子47にそれぞれ接続されている。
捲回電極体20は、図2に示すように、正極シート30と、負極シート40とが、2枚のセパレータ50を介して重ね合わされ、捲回軸WLを中心に長尺方向に捲回された形態を有する。正極シート30は、長尺な正極集電箔32の片面または両面(ここでは両面)に長尺方向に沿って正極活物質層34が形成されてなる。また、負極シート40は、長尺な負極集電箔42の片面または両面(ここでは両面)に長尺方向に沿って負極活物質層44が形成されてなる。そして、この捲回電極体20の捲回軸方向の中央部には、正極活物質層34と負極活物質層44とが積層され、充放電反応の主な場となるコア部20aが形成されている。
また、捲回電極体20では、捲回軸方向における一方の端部に、正極活物質層34が形成されていない正極集電箔露出部分36が負極40からはみ出た状態で積層された正極集電箔積層部35が存在する。また、捲回電極体20では、その捲回軸方向における他方の端部に、負極活物質層44が形成されていない負極集電箔露出部分46が正極30からはみ出た状態で積層された負極集電箔積層部45が存在する。そして、かかる集電箔積層部を束ね(以下、「集箔」ともいう。)、対応する極の上記集電端子37,47の一部を配置し、超音波溶接等の溶接手段により接合することで正負極それぞれの集電構造が形成される。
図3は、図1におけるIII−III線断面図である。図3に示すように、捲回電極体20のコア部20aにおける捲回軸に直交する断面では、電池ケース10の上面(すなわち、蓋体12)に対向する上部R部21aと、電池ケース10の底面に対向する下部R部21bと、上部R部21a,下部R部21bに挟まれた扁平部22とが存在している。そして、上部R部21aおよび下部21bは、それぞれ曲面(湾曲した面)を有し、扁平部22は扁平面を有する(上部R部21a,下部21bに関しては、図2も参照されたい)。
図4〜図6は、リチウムイオン二次電池100の正極集電箔積層部の側面の一例を模式的に示す断面図である。なお、図4〜図6では、正極集電箔積層部における構造を示しているが、負極集電箔積層部においても同様な構造を使用し得る。
集電箔積層部の上部R部21cは、集電箔積層部に存在し、電池ケース10の上面(すなわち、蓋体12)に対向するR部を表している。また、集電箔積層部の下部R部21dは、集電箔積層部に存在し、電池ケース10の底面に対向するR部を表している。これらの集電箔積層部の上部R部21cと下部R部21dは、正極集電箔積層部35および負極集電箔積層部45の各々に形成されている。すなわち、捲回電極体20には、図2に示すように、集電箔積層部の上部R部21cが2つと、集電箔積層部の下部R部21dが2つ存在する。
本実施形態に係る捲回電極体20は、上記4つのR部のうち少なくとも1つのR部に、非水電解液の浸入経路が周囲よりも拡張された電解液浸入拡張経路が形成されていることを特徴とする。かかる電解液浸入拡張経路としては、例えば、図1に示す負極集電箔積層部45の上部R部21cに形成された切り込みO(かかる切り込みは、正極集電箔積層部35に形成されていてもよい)、図4に示す正極集電箔積層部の上部R部21cを構成する各集電箔を径方向に沿って裁断する切り込みP、図5に示す正極集電箔積層部の上部R部21cの一部を切除した切り欠きQ、図6に示す正極集電箔積層部の上部R部21cを貫通する貫通孔S等が挙げられる。上述したような電解液浸入拡張経路においては、その周囲よりも応力が緩和されているため、その周囲よりも非水電解液の浸入量が好適に向上し、全体として捲回電極体20への非水電解液の浸透性が好適に向上する。また、2箇所以上のR部に電解液浸入拡張経路を形成する場合、電解液浸入拡張経路の組み合わせは多様であり得る。例えば、2箇所のR部に電解液浸入拡張経路を形成する場合、2箇所とも切り込みであってもよく、切り込みと切り欠きであってもよい。上記切り込み・切り欠きはメス等で形成することが可能であり、上記貫通孔は、キリ等で形成することができる。そして、上記電解液浸入拡張経路の形成は、集電端子の溶接前後のいずれで実施してもよいが、例えば、後述する集電箔のしわの抑制等を考慮すると、集電端子の溶接前に形成する場合が好ましい。
なお、上記電解液浸入拡張経路の寸法は、当該経路の形状、電極体の寸法に応じて適宜調整されていることが好ましく、ここで開示される技術を限定するものではない。また、上記電解液浸入拡張経路は、コア部20aまで及ぶことが無ければ所望の寸法で形成され得る。例えば、図1中の切り込みOを形成する場合、負極集電箔積層部45に形成されることが好ましい。また、例えば、図4中の切り込みPを形成する場合は、捲回電極体20の端部から捲回軸に沿って形成されることが好ましい。そして、例えば、図5中の切り欠きQを形成する場合は、捲回電極体20の正極集電箔積層部35に形成されることが好ましい。さらに、例えば、図6中の貫通孔Sを形成する場合は、正極集電箔積層部35に形成されることが好ましい。
なお、電解液浸入拡張経路が捲回電極体20の集電箔積層部の上部R部21cに存在する場合、該電解液浸入拡張経路が電解液注入孔から注液された非水電解液と接触し易いため、捲回電極体20への非水電解液の浸透性がより好適に向上され得る。そして、上記電解液浸入拡張経路が捲回電極体20の集電箔積層部の下部R部21dに存在する場合、ハイレート充放電等により捲回電極体20の内部から放出されて電池ケース10の下部に溜まった非水電解液が、該捲回電極体内部に効率的に戻り得るため好ましい。さらに、上記電解液浸入拡張経路が捲回電極体20の集電箔積層部の上部R部21cおよび集電箔積層部の下部R部21dの両方に存在する場合、上記効果が両立され得るためより好ましい。
また、正極シート30および負極シート40には、従来のリチウムイオン二次電池に用いられているものと同様のものを特に制限なく使用することができる。典型的な一態様を以下に示す。
正極シート30を構成する正極集電箔32としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。そして、正極活物質層34に含まれる正極活物質としては、例えばリチウム遷移金属酸化物(例、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiCoO、LiFeO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等)、リチウム遷移金属リン酸化合物(例、LiFePO等)等が挙げられる。正極活物質層34は、活物質以外の成分、例えば導電材やバインダ等を含み得る。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(例、グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
負極シート40を構成する負極集電箔42としては、例えば銅箔等が挙げられる。そして、負極活物質層44に含まれる負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。なかでも、黒鉛が好ましい。黒鉛は、天然黒鉛であっても人工黒鉛であってもよく、非晶質炭素材料で被覆されていてもよい。負極活物質層44は、活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
セパレータ50としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン製の多孔性シート(フィルム)が好適に使用され得る。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ50の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
ここで開示されるリチウムイオン二次電池が具備する電解液は、通常、非水系溶媒、および支持塩を含有する。非水系溶媒は、リチウムイオン二次電池用電解液の非水系溶媒として用いられている従来公知のものを使用することができ、その具体例としては、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等が挙げられる。なかでも、カーボネート類が好ましい。カーボネート類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、支持塩は、リチウムイオン二次電池用電解液の支持塩として用いられている従来公知のものを使用することができ、その具体例としては、LiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiTFSI)等が挙げられる。電解液中の支持塩の濃度は、特に制限はないが、例えば、0.5mol/L以上5mol/L以下であり、好ましくは0.7mol/L以上2.5mol/L以下であり、より好ましくは0.7mol/L以上1.5mol/L以下である。
上記電解液は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例としては、ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等が挙げられる。
なお、上記電解液の調整方法は、従来公知の方法でよく、また、かかる電解液は、従来公知の方法に従い、リチウムイオン二次電池に用いることができる。さらに、ここで開示されるリチウムイオン二次電池は、従来公知の方法により製造することができるため、製造手順の詳細な説明は割愛する。
以下、ここで開示される技術に関する実施例を説明するが、ここで開示される技術をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
1.サンプルの作製
本実施例では、4種類のリチウムイオン二次電池(サンプル1〜4)を用いた。以下、各サンプルについて説明する。
(1)サンプル1の作製
[正極]
正極活物質としてリチウム遷移金属酸化物(NCM:LiNi1/3Co1/3Mn1/3)と、導電材としてアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これら材料の重量比がNCM:AB:PVdF=91:6:3となるよう秤量し、固形分濃度(NV)がおよそ50重量%となるようにN−メチルピロリドン(NMP)を加えて混練することで、正極活物質層形成用スラリーを調製した。かかるスラリーを、正極集電箔として帯状のアルミニウム箔の両面の、長手方向の一方の端部から帯状に塗布し、乾燥することで、正極活物質層を備える正極シートを作製した。なお、正極シートの長手方向の他方の端部には、正極活物質層の形成されていない集電箔露出部が設定されている。そして、これを圧延プレスすることで、正極を得た。
[負極]
負極活物質として黒鉛(C)と、バインダとしてスチレンブタジエンラバー(SBR)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これらの重量比がC:SBR:CMC=98:1:1となるように秤量し、イオン交換水を加えて混練することで、負極活物質層形成用スラリーを調製した。かかるスラリーを、負極集電箔として帯状の銅箔の両面の、長手方向の一方の端部から帯状に塗布し、乾燥することにより、負極活物質層を備える負極シートを作製した。なお、負極シートの長手方向の他方の端部には、負極活物質層の形成されていない集電箔露出部が設定されている。そして、これを圧延プレスすることで、負極を得た。
[セパレータ]
セパレータとしては、ポリエチレン(PE)の両面をポリプロピレン(PP)で挟んだ形態の3層構造(PP/PE/PP)の帯状の微多孔質シートを用いた。
上記のとおり作製した正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、断面が長円形となるように捲回した。この時、負極活物質層が幅方向で正極活物質層を覆うとともに、正極集電箔の露出部と負極集電箔の露出部とが幅方向で異なる側で突出するように、正極と負極とを配置させた。またセパレータは、正負極の活物質層を絶縁するように配置した。そして、かかる捲回体を常温(25℃)にて平板プレスし、扁平形状に成形することで、捲回電極体を得た。
次に、上記のとおり作製した捲回電極体をガラス製の透明ケースの内部に収容することにより電池組立体を構築した。かかる電池組立体のケース内を減圧処理した後、ケース内部の底面から55mm程度の高さまで非水電解液が到達するように非水電解液を注液した。そして、注液口を封止してケースを密閉することによって、評価試験用のリチウムイオン二次電池(サンプル1)を構築した。なお、非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:4:3の体積比で含む混合溶媒に支持塩LiPFを約1mol/Lの濃度で含有させたものを使用した。
(2)サンプル2の作製
サンプル2は、捲回電極体の正負極集電箔積層部の両方の上部R部を構成する各集電箔をメスにより径方向に沿って5mm裁断した点を除いて、サンプル1と同様な方法により作製した。
(3)サンプル3の作製
サンプル3は、捲回電極体の正負極集電箔積層部の両方の上部R部の端部から幅3mmの箇所に、キリにより貫通孔を形成した点を除いて、サンプル1と同様な方法により作製した。
(4)サンプル4の作製
サンプル4は、捲回電極体の正負極集電箔積層部の両方の下部R部を構成する各集電箔をメスにより径方向に沿って5mm裁断した点を除いて、サンプル1と同様な方法により作製した。
2.非水電解液の浸透性評価
本実施例では、上記のとおり作製した各サンプルにおける非水電解液の浸透性を評価した。具体的には、上述したように、ガラス製の透明ケースに55mm程度の高さまで非水電解液を注液した後に、当該非水電解液の液面が低下しなくなるまで、目視により各サンプルの液面高さを観察し続けた。各サンプルにおける時間経過に伴う液面高さの推移を図7のグラフに示した。
図7に示すように、サンプル1では、注液から400秒を経過したあたりから液面高さが低下する(すなわち、電極体内部に非水電解液が浸透する)速度が大きく低下することが確認された。一方、サンプル2〜4では、注液から400秒を経過した後も電極体内部に非水電解液が浸透し続け、注液から600秒後の液面高さがサンプル1と比較して顕著に低くなった。以上より、ここで開示される非水電解液二次電池によると、電解液の浸透性が好適に向上することが分かる。
また、例えば、サンプル2に係る捲回電極体については、以下の効果も期待される。すなわち、従来の捲回電極体では、集電端子を溶接する際に該捲回電極体の集電箔積層部のR部に応力がかかることにより、集電箔にしわが生じることがあった。しかしながら、サンプル2のように捲回電極体の集電箔積層部の上部R部に切り込みを設けた場合、かかる切り込みに沿って広げた集電部に端子を溶接することで、該R部にかかる応力が緩和されるため、集電箔にしわが生じにくくなる。これにより、電解液の浸透性が向上することが期待される。
以上、本発明を詳細に説明したが、上述の説明は例示にすぎない。すなわち、ここで開示される技術には上述した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 電池ケース
12 蓋体
14 安全弁
20 捲回電極体
20a コア部
21a 上部R部
21b 下部R部
21c 集電箔積層部の上部R部
21d 集電箔積層部の下部R部
22 扁平部
30 正極シート(正極)
32 正極集電箔
34 正極活物質層
35 正極集電箔積層部
36 正極集電箔露出部分
37 正極集電端子
38 外部正極端子
40 負極シート(負極)
42 負極集電箔
44 負極活物質層
45 負極集電箔積層部
46 負極集電箔露出部分
47 負極集電端子
48 外部負極端子
50 セパレータ
100 リチウムイオン二次電池
WL 捲回軸
O 切り込み
P 切り込み
Q 切り欠き
S 貫通孔

Claims (1)

  1. 長尺な正極集電箔上に正極活物質層が形成されたシート状の正極と、長尺な負極集電箔上に負極活物質層が形成されたシート状の負極とが、セパレータを介在させつつ捲回されて扁平状に形成された捲回電極体と、非水電解液と、該捲回電極体を収容する電池ケースとを備える非水電解液二次電池であって、
    前記捲回電極体は、捲回軸に直交する断面の長手方向の中央部分に存在する、表面が扁平な扁平部と、前記断面の長手方向の前記扁平部を挟んだ両端部に存在する、表面が曲面な2つのR部とを有し、
    前記捲回電極体の捲回軸方向における一方の端部には、前記正極活物質層が形成されていない正極集電箔露出部分が前記負極からはみ出た状態で積層された正極集電箔積層部が存在し、且つ、他方の端部には、前記負極活物質層が形成されていない負極集電箔露出部分が前記正極からはみ出た状態で積層された負極集電箔積層部が存在し、
    ここで、前記正極集電箔積層部および前記負極集電箔積層部の少なくともいずれか一方において、2つのR部のうち少なくとも1つのR部に、前記非水電解液の浸入経路が周囲よりも拡張された電解液浸入拡張経路が形成されていることを特徴とする、非水電解液二次電池。

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