JP2021172865A - めっき部品の製造方法 - Google Patents

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洋之 森田
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Abstract

【課題】塗膜の剥離を抑制できるめっき部品の製造方法を提供する。【解決手段】めっき工程では、基材20の表面にクロムめっき30を形成する。プラズマ処理工程では、クロムめっき30の表面にプラズマ処理を施す。シランカップリング層形成工程では、プラズマ処理が施されたクロムめっき30の表面にシランカップリング剤41を用いて表面処理することでシランカップリング層40を形成する。塗膜形成工程では、シランカップリング層40の表面に塗装することにより、塗膜50を形成する。【選択図】図1

Description

本発明は、めっき部品の製造方法に関する。
特許文献1には、樹脂製の基材と、基材の表面に形成されたクロムめっきと、クロムめっきの表面に形成された塗膜と、塗膜の表面に形成されたトップコート層とを有する車両用のめっき部品が開示されている。塗膜は、着色された塗料により形成されている。トップコート層は透明な塗料により形成されている。
特許文献1に記載のめっき部品においては、トップコート層の形成に先立ち、塗膜にレーザ光が照射されることにより、その一部が除去される。これにより、めっき部品には、クロムめっきの金属光沢を有する模様が現出する。
特開平3−146174号公報
ところで、こうしためっき部品において、クロムめっきと塗膜との密着力が不十分である場合には、めっき部品から塗膜が剥離することがある。
本発明の目的は、塗膜の剥離を抑制できるめっき部品の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するためのめっき部品の製造方法は、基材と、前記基材の表面を覆うクロムめっきと、前記クロムめっきの表面を覆う塗膜と、を有するめっき部品の製造方法であって、前記基材の表面に前記クロムめっきを形成するめっき工程と、前記クロムめっきの表面にプラズマ処理を施すプラズマ処理工程と、前記プラズマ処理が施された前記クロムめっきの表面にシランカップリング剤を用いて表面処理することでシランカップリング層を形成するシランカップリング層形成工程と、前記シランカップリング層の表面に塗装することにより、前記塗膜を形成する塗膜形成工程と、を備える。
本願発明者は、クロムめっきの最表面には酸化膜が点在する一方、同最表面における酸化膜同士の間には金属クロムが露出する部分が存在することを見出した。
同方法によれば、クロムめっきの表面にプラズマ処理が施されることによって、上記金属クロムがクロム水酸化物に化学変化する。そして、クロムめっきの表面にシランカップリング層が形成されることで、シランカップリング剤の水酸基と、上記クロム水酸化物の水酸基とが化学的に結合される。そして、シランカップリング層の表面に塗膜が形成されることで、シランカップリング剤の有機官能基と塗膜とが化学的に結合される。このように、クロムめっきと塗膜とがシランカップリング層を介して結合されるため、クロムめっきに対して塗膜が剥離しにくくなる。したがって、めっき部品における塗膜の剥離を抑制できる。
本発明によれば、めっき部品における塗膜の剥離を抑制できる。
一実施形態におけるエンブレムの断面図。 めっき工程を示す基材の断面図。 プラズマ処理工程を示す基材の断面図。 シランカップリング層形成工程を示す図であって、シランカップリング剤に浸漬された基材を示す断面図。 シランカップリング層形成工程を示す図であって、シランカップリング層が形成された基材の断面図。 塗膜形成工程を示す基材の断面図。 実施例及び比較例におけるクロムめっき層の表面の組成を示す表。 実施例及び比較例におけるクロムめっき層の表面の断面図。 実施例におけるクロムめっき層の表面の断面図。 実施例及び比較例における塗膜の密着強度を示すグラフ。
以下、図1〜図10を参照して、めっき部品の製造方法を車両用のエンブレムの製造方法として具体化した一実施形態について説明する。
各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については実際と異なる場合がある。
図1に示すように、エンブレム10は、基材20と、基材20の表面を覆うクロムめっき30と、クロムめっき30の表面を覆うシランカップリング層40と、シランカップリング層40の表面を覆う塗膜50とを有している。
基材は、例えば、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)樹脂などの樹脂材料である。
図示は省略するが、クロムめっき30は、基材20の表面に形成される下地層と、下地層の表面に形成されるクロムめっき層とを有している。下地層は、例えば、基材の表面に形成される銅めっき層、半光沢ニッケルめっき層、光沢ニッケルめっき層、及びマイクロポーラスニッケルめっき層をこの順で含んでいる。すなわち、クロムめっき層は、マイクロポーラスニッケルめっき層の表面に形成されている。
シランカップリング層40は、例えば、アミノ基及びメトキシ基を有する3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤41を含んで構成されている。
塗膜50は、例えば、ウレタン系の塗料51を含んで構成されている。
次に、エンブレム10の製造方法について説明する。
図2に示すように、まず、基材20に導電性を付与すべく、基材20の表面に無電解めっきを行うことで、基材の表面に銅めっき層を形成する。続いて、銅めっき層の表面に電解めっきを行うことで、半光沢ニッケルめっき層、光沢ニッケルめっき層、及びマイクロポーラスニッケルめっき層をこの順で形成する。これにより、基材20の表面に下地層が形成される。続いて、下地層の表面に電解めっきを行うことで、クロムめっき層を形成する。これにより、基材20の表面にクロムめっき30を形成する(めっき工程)。
図3に示すように、次に、プラズマ処理装置100を用いて、クロムめっき30の表面にプラズマ処理を施す(プラズマ処理工程)。
本実施形態のプラズマ処理装置100は、図示しない一対の電極間に電圧を印加することにより、これら電極間に供給されるプロセスガスにプラズマを発生させる。そして、大気圧雰囲気下において、基材20表面のクロムめっき30に向けてプラズマを照射する。
図4及び図5に示すように、次に、シランカップリング剤41を含む溶液111が貯留された処理槽110に基材20を浸漬させる。このようにして、プラズマ処理が施されたクロムめっき30の表面にシランカップリング剤41を用いて表面処理することでシランカップリング層40を形成する(シランカップリング層形成工程)。
溶液111には、例えば、水や有機溶剤などが含まれている。シランカップリング剤41は、溶液111中で加水分解することで、加水分解基であるメトキシ基が、水酸基に変化する。これにより、シランカップリング剤41の水酸基が、クロムめっき30のクロムめっき層に存在する水酸基と化学的に結合される。
次に、図示は省略するが、基材20を処理槽110から取り出して、基材20を水洗及び乾燥させる。
図6に示すように、次に、シランカップリング層40の表面に塗装する。本実施形態では、塗料51を噴射するスプレーガン120を用いて塗装する。その後、塗料51を所定時間乾燥させることにより、シランカップリング層40の表面に塗膜50を形成する(塗膜形成工程)。これにより、シランカップリング剤41の有機官能基であるアミノ基が、塗料51と化学的に結合される。
次に、図7〜図10を参照して、実施例及び比較例について説明する。
(実施例)
実施例は、本実施形態のめっき部品の製造方法により製造しためっき部品である。
(比較例)
比較例は、本実施形態のめっき部品の製造方法においてプラズマ処理工程を省略して製造しためっき部品である。
本願発明者は、周知のX線光電子分光法(XPS)により、実施例及び比較例におけるクロムめっき30の表面分析を行った。その結果、図7に示すように、クロムめっき30の表面が、金属クロム、クロム酸化物、及びクロム水酸化物により構成されていることを見出した。より詳しくは、図8に示すように、本願発明者は、実施例及び比較例におけるクロムめっき30の最表面には、クロム酸化物及びクロム水酸化物を含む酸化膜30aが点在する一方、同最表面における酸化膜30a同士の間には、金属クロムが露出する露出部30bが存在することを見出した。なお、クロム酸化物は、Crを含んでいる。また、クロム水酸化物は、Cr(OH)及びCrOOHを含んでいる。
図7に示すように、実施例におけるクロムめっき層の表面の組成は、金属クロムが13.4原子%、クロム酸化物が47.0原子%、及びクロム水酸化物が39.6原子%であった。一方、比較例におけるクロムめっき層の表面の組成は、金属クロムが16.5原子%、クロム酸化物が46.6原子%、及びクロム水酸化物が36.9原子%であった。つまり、プラズマ処理工程を施すことによって、クロムめっき層に占める金属クロムの割合が減少するとともに、クロム水酸化物の割合が増大した。
図9に示すように、実施例におけるクロム水酸化物の増大は、プラズマ処理工程を施すことによって露出部30bの一部がクロム水酸化物30cに化学変化したことによるものであると判明した。クロム水酸化物30cは、シランカップリング剤41と化学的に強固に結合するCr(OH)である。
次に、実施例及び比較例に対してプルオフ試験を行った結果について説明する。
プルオフ試験では、まず、試験円筒をめっき部品の塗膜50の表面に接着剤により接着する。そして、試験円筒を引張試験機により所定の引張速度で引っ張り、塗膜50が剥離した際の強度を密着強度として測定する。
また、めっき部品の耐水性について評価すべく、耐水試験の前後における実施例及び比較例の密着強度を求めた。なお、耐水試験では、めっき部品を40℃の水に168時間浸漬させた。
図10に示すように、上記プルオフ試験によって、実施例における密着強度が、比較例における密着強度と比較して、耐水試験前では、約1.3倍高く、耐水試験後では、約2.6倍高いという結果を得た。
以上のことから、クロムめっき30の表面にプラズマ処理が施されることで、露出部30bの一部がクロム水酸化物30cに化学変化して、クロムめっき層に占めるクロム水酸化物30cの割合が増大する。これにより、クロムめっき30の表面において、クロム水酸化物30cとシランカップリング剤41とが化学的に結合する部分の割合が増大する。結果として、クロムめっき30に対するシランカップリング層40の密着強度、ひいては、クロムめっき30に対する塗膜50の密着強度が向上すると考えられる。
本実施形態の作用について説明する。
クロムめっき30の表面にプラズマ処理が施されることによって、クロムめっき30の表面における露出部30bがクロム水酸化物30cに化学変化する。そして、クロムめっき30の表面にシランカップリング層40が形成されることで、シランカップリング剤41の水酸基と、クロム水酸化物30cの水酸基とが化学的に結合される。そして、シランカップリング層40の表面に塗膜50が形成されることで、シランカップリング剤41の有機官能基と塗膜50とが化学的に結合される。このように、クロムめっき30と塗膜50とがシランカップリング層40を介して結合されるため、クロムめっき30に対して塗膜50が剥離しにくくなる。
本実施形態の効果について説明する。
めっき工程では、基材20の表面にクロムめっき30を形成する。プラズマ処理工程では、クロムめっき30の表面にプラズマ処理を施す。シランカップリング層形成工程では、プラズマ処理が施されたクロムめっき30の表面にシランカップリング剤41を用いて表面処理することでシランカップリング層40を形成する。塗膜形成工程では、シランカップリング層40の表面に塗装することにより、塗膜50を形成する。
こうした方法によれば、上述した作用を奏することから、エンブレム10における塗膜50の剥離を抑制できる。
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・基材20は、ABS樹脂に限定されない。他に例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂などの種々の樹脂材料を用いることができる。また、基材20として、金属材料を用いることもできる。
・シランカップリング剤41は、3−アミノプロピルトリメトキシシランに限定されない。クロムめっき30に含まれるクロム水酸化物に結合する加水分解基と、塗料51に結合する有機官能基とを有するものであれば、種々のシランカップリング剤を用いることができる。
・シランカップリング層形成工程では、基材20の溶液111への浸漬に代えて、スプレーガンやコータなどを用いて、溶液111をクロムめっき30の表面に塗布するようにしてもよい。
・本実施形態では、めっき部品の製造方法の一例として車両用のエンブレム10の製造方法を例示したが、同様の方法を、例えば、車両用のラジエータグリルなどの種々のめっき部品に対して適用することも可能である。
10…エンブレム
20…基材
30…クロムめっき
30a…酸化膜
30b…露出部
30c…クロム水酸化物
40…シランカップリング層
41…シランカップリング剤
50…塗膜
51…塗料
100…プラズマ処理装置
110…処理槽
111…溶液
120…スプレーガン

Claims (1)

  1. 基材と、前記基材の表面を覆うクロムめっきと、前記クロムめっきの表面を覆う塗膜と、を有するめっき部品の製造方法であって、
    前記基材の表面に前記クロムめっきを形成するめっき工程と、
    前記クロムめっきの表面にプラズマ処理を施すプラズマ処理工程と、
    前記プラズマ処理が施された前記クロムめっきの表面にシランカップリング剤を用いて表面処理することでシランカップリング層を形成するシランカップリング層形成工程と、
    前記シランカップリング層の表面に塗装することにより、前記塗膜を形成する塗膜形成工程と、を備える、
    めっき部品の製造方法。
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