JP2021172729A - 自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物、その製造方法及び自動車内装部品用成形体 - Google Patents

自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物、その製造方法及び自動車内装部品用成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】耐傷付性に優れるとともに外観不良が低減され、剛性・低温耐衝撃性・引張特性等の機械物性バランスに優れた射出成形体が得られる、自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物及びその製造方法、並びに自動車内装部品用成形体の提供。【解決手段】本発明の自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン重合体からなる連続相と、エチレン・プロピレン共重合体からなるゴム相とを含むポリプロピレン系樹脂(成分A)、エチレン・αオレフィン共重合体(成分B)、及び必要に応じて無機充填剤(成分C)を含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、成分Aの含有割合が90〜99質量%であり、成分Bの含有割合が1〜10質量%であり、成分Cの含有割合が0〜2質量%であり、MFRが25〜50g/10分であり、成分Aを構成するプロピレン重合体及びエチレン・プロピレン共重合体が所定の物性を満たす。【選択図】なし

Description

本発明は、自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物、その製造方法及び自動車内装部品用成形体に関する。
ポリプロピレンは、耐衝撃性、剛性、透明性、耐薬品性、耐熱性等の物性とそのバランスに優れることから、例えば、自動車部品の樹脂材料として使用される(例えば、特許文献1)。また、高い剛性を得るために、15〜30質量%の無機充填剤が混合されたポリプロピレン系樹脂組成物なども開示されている(例えば、特許文献2)。
近年、射出成形技術の向上に伴い、成形体の外面が大面積化するとともに、成形体の形状が複雑化している。例えば、自動車のドアトリムのような大型の射出成形体には、製品強度を高めるために、非意匠面にリブが形成される。通常、リブは成形体の厚さよりも薄く設計されるため、溶融樹脂をリブ形成用の溝に充分に充填することができないといった充填不良が起こることがあった。また、溶融樹脂がキャビティ内に流入する際に、キャビティ内に存在する空気が奥に追いやられてリブ形成用溝内に貯留していく場合がある。貯留された空気は、溝内で圧縮されたまま残ったり、溶融樹脂と金型の内周面との隙間から通り抜けようとしたりするため、得られる成形体表面にはシルバーストリークやシワ等の外観不良が発生する問題があった。この問題を防止するために、金型の形状を工夫することが提案されている(例えば、特許文献3)。
特開平11−216750号公報 特開2015−113363号公報 特開2012−35586号公報
しかし、無機充填剤15〜30質量%といった多量配合をする場合、成形体表面を引っ掻いた際に樹脂基材と無機充填剤との間の剥離・白化を生じやすく、傷が目立ちやすくなるという欠点があった。また、シルバーストリークやシワ等の外観不良を防止するために金型の形状を工夫すると、金型設計の自由度が制限され、所望の形状の成形体を得ることができないことがある。シルバーストリークやシワ等の外観不良について、タッチアップスプレー塗装などにより外観不良修正をすることが可能であるが、作業コストが嵩むことに加え、作業者が溶剤を吸い込み健康を損ねるリスクがあることから、成形体を工業的に大量生産する場合には実用面で問題がある。このため、外観不良の発生が低減された樹脂組成物が求められている。さらに、外観不良の発生を低減するだけでなく、射出成形時に金型内への充填不良を起こさないような高い流動性に加え、剛性・低温耐衝撃性・引張特性等の機械物性バランスが優れていることも求められている。
本発明は、耐傷付性に優れるとともに外観不良が低減され、剛性・低温耐衝撃性・引張特性等の機械物性バランスに優れた射出成形体が得られる、自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物及びその製造方法、並びに自動車内装部品用成形体を提供する。
本発明は、以下の態様を有する。
[1] プロピレン重合体からなる連続相と、エチレン・プロピレン共重合体からなるゴム相とを含むポリプロピレン系樹脂(A)、エチレンと炭素数4〜10のαオレフィンとの共重合体であるエチレン・αオレフィン共重合体(B)、及び必要に応じて無機充填剤(C)を含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有割合が前記(A)〜(C)の総質量に対して90〜99質量%であり、
前記エチレン・αオレフィン共重合体(B)の含有割合が、前記(A)〜(C)の総質量に対して1〜10質量%であり、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物に無機充填剤(C)が含まれる場合、前記無機充填剤(C)の含有割合が前記(A)〜(C)の総質量に対して2質量%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRが25〜50g/10分であり、
前記プロピレン重合体のキシレン不溶分の含有量が、前記プロピレン重合体の総質量に対して、97.5質量%以上であり、
前記プロピレン重合体の重量平均分子量Mと数平均分子量Mとの比率(M/M)が3〜10であり、
前記プロピレン重合体中のエチレン由来単位含有量が、前記プロピレン重合体の総質量に対して0.5質量%以下であり、
前記エチレン・プロピレン共重合体の含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂(A)の総質量に対して25〜35質量%であり、
前記エチレン・プロピレン共重合体中のエチレン由来単位含有量が、前記エチレン・プロピレン共重合体の総質量に対して20〜40質量%であり、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)のキシレン可溶分の、135℃のテトラヒドロナフタレン中での極限粘度が1.5〜4.0dl/gであり、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRが20〜100g/10分である、自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物。
[2] 前記プロピレン重合体の重量平均分子量Mと数平均分子量Mとの比率(M/M)が4〜7である[1]に記載の自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物。
[3] 前記プロピレン重合体と前記エチレン・プロピレン共重合体とは重合によって混合され、前記ポリプロピレン系樹脂は、下記(ア)〜(ウ)の成分を含む触媒を用いて製造された重合混合物である、[1]又は[2]に記載の自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物。
(ア)マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び電子供与体化合物としてのフタレート系化合物を含有する固体触媒
(イ)有機アルミニウム化合物
(ウ)外部電子供与体化合物である有機ケイ素化合物
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法であって、下記(ア)〜(ウ)の成分を含む触媒を用いて、前記プロピレン重合体の存在下で、エチレン単量体及びプロピレン単量体を重合して前記ポリプロピレン系樹脂を得る工程を有する、自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
(ア)マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び電子供与体化合物としてのフタレート系化合物を必須成分として含有する固体触媒
(イ)有機アルミニウム化合物
(ウ)外部電子供与体化合物である有機ケイ素化合物
[5] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形して得られる自動車内装部品用成形体。
[6] 前記自動車内装部品用成形体が、ドアトリム、グローブボックス、コラムカバー、インスツルメントパネル、パッケージトレイ、リアトレイ、ピラーガーニッシュ又はコンソールボックスである、[5]に記載の自動車内装部品用成形体。
[7] 前記自動車内装部品用成形体が、ドアトリムである[6]に記載の自動車内装部品用成形体。
本発明の自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物は、高い流動性を有するために射出成形時に充填不良を起こしにくい。射出成形で得られる自動車内装部品用成形体は耐傷付性に優れるとともに外観に優れる。また、従来の樹脂組成物では外観不良が発生し易かったドアトリムなどの大面積の部品を製造する場合にも、本発明の樹脂組成物は優れた外観の射出成形体を供することができる。さらに、得られた射出成形体は剛性・低温耐衝撃性・引張特性等の機械物性のバランスにも優れる。
<ポリプロピレン系樹脂組成物>
本発明の自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物(以下、「ポリプロピレン系樹脂組成物」と略す。)は、プロピレン重合体からなる連続相と、エチレン・プロピレン共重合体からなるゴム相とを含むポリプロピレン系樹脂(A)(以下、成分(A)ともいう。)、及びエチレン・αオレフィン共重合体(B)(以下、成分(B)ともいう)を含有する。また、無機充填剤(C)(以下、成分(C)ともいう)を含有することもある。
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有割合は、前記成分(A)〜(C)の総質量に対して、90〜99質量%であり、92〜98質量%であることが好ましい。
前記範囲の下限値以上であると、射出成形体の剛性がより高まる。
前記範囲の上限値以下であると、射出成形体の低温耐衝撃性がより高まる。
前記エチレン・αオレフィン共重合体(B)の含有割合は、前記成分(A)〜(C)の総質量に対して1〜10質量%であり、2〜8質量%であることが好ましい。
前記範囲の下限値以上であると、射出成形体の低温耐衝撃性がより高まる。
前記範囲の上限値以下であると、射出成形体の剛性がより高まる。
ポリプロピレン系樹脂組成物には無機充填剤(C)が含まれていてもよい。無機充填剤(C)の種類については後述する。無機充填剤(C)の含有割合は、前記成分(A)〜(C)の総質量に対して2質量%以下であり、1質量%以下が好ましく、無機充填剤(C)が含まれないことがより好ましい。
前記範囲であると、射出成形体の外観を良好にすることができ、耐傷付性を高めることができる。また、射出成形体の軽量性を保つこともできる。
ポリプロピレン系樹脂組成物の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRは、25〜50g/10分であり、28〜45g/10分が好ましく、29〜44g/10分がより好ましい。ここで、前記MFRは後述する測定方法で測定された値である。
前記範囲の下限値以上であると、大面積の部品を製造する際にも射出成形時に溶融流動性不足による成形型内への充填不良を発生させず、特に成形型内の狭い部分や末端部分にも溶融樹脂を到達させることができる。
前記範囲の上限値以下であると、射出成形体の低温耐衝撃性を充分に高めることができる。
[ポリプロピレン系樹脂(A)]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるポリプロピレン系樹脂(A)は、JIS K6921−1で規定される耐衝撃性ポリプロピレンポリマーの一態様であり、プロピレン重合体の連続相と、その連続相の中に分散相として存在するエチレン・プロピレン共重合体のゴム相を含む二つ以上の相で構成される。
ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン重合体とエチレン・プロピレン共重合体とが重合時に混合された混合樹脂であってもよいし、別々に得られたプロピレン重合体とエチレン・プロピレン共重合体とが、溶融混練によって混合された混合樹脂であってもよい。剛性と低温耐衝撃性と引張特性とのバランス(以下「機械物性バランス」ともいう。)に優れるものがより安価で得られることから、プロピレン重合体とエチレン・プロピレン共重合体とが重合時に混合されたもの(重合混合物)であることが好ましい。
重合混合物では、プロピレン重合体とエチレン・プロピレン共重合体とがサブミクロンオーダーで混じり合うことが可能であるため、重合混合物をベースとしたポリプロピレン系樹脂組成物は、優れた機械物性バランスを示す。
一方、別々に得られたプロピレン重合体とエチレン・プロピレン共重合体とを溶融混練して得た単なる機械混合物で同様な均一混合を実現して優れた機械物性バランスを得る場合には、貯蔵・保管・移送・計量・混合・溶融混練等の別工程を経る必要性から製造コストが高くなる。エネルギーコストの観点からも好ましくない。
なお、前記重合混合物と機械混合物とが異なる物性を示す場合があるのは、プロピレン重合体中のエチレン・プロピレン共重合体の分散状態が異なっているためと推測されるが、エチレン・プロピレン共重合体のプロピレン重合体との界面の状態を含めた分子レベルでの分散状態を分析する現実的手段は現状知られていない。
ポリプロピレン系樹脂(A)の製造方法については後で詳しく説明する。
ポリプロピレン系樹脂(A)のキシレン可溶分の極限粘度(以下、「XSIV」ともいう。)は、1.5〜4.0dl/gであり、1.5〜3.5dl/gが好ましく、2.0〜3.0dl/gがより好ましく、2.2〜2.6dl/gがさらに好ましい。
前記範囲の下限値以上であると、射出成形体の低温耐衝撃性をより高めることができる。
前記範囲の上限値以下であると、射出成形体の機械物性バランスをより高めることができる。
ここで、XSIVは、135℃のテトラヒドロナフタレン中での測定値である。キシレン可溶分は、ポリプロピレン系樹脂の試料をo−キシレン中、135℃で溶解させた後、25℃に冷却し、その冷却した溶液を、濾紙を用いて濾過し、濾液を蒸発乾固して得られる成分である。
ポリプロピレン系樹脂(A)を構成するプロピレン重合体の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRは、100g/10分以上であることが好ましい。
前記範囲であると、前記ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRを充分に高めることができる。プロピレン重合体のMFRは、後述する測定方法で測定された値である。
ポリプロピレン系樹脂(A)を構成するプロピレン重合体のキシレン不溶分(以下、「XI」ともいう。)は、97.5質量%であり、98.0質量%であることが好ましい。
前記範囲であると、射出成形体の剛性をより高めることができる。
XIは、プロピレン重合体の試料をo−キシレン中、135℃で溶解させた後、25℃に冷却し、その冷却した溶液を、濾紙を用いて濾過し、濾紙上に残ったものを採取して得られる成分である。XIの量は後述する方法で測定された値である。
ポリプロピレン系樹脂(A)を構成するプロピレン重合体の重量平均分子量Mと数平均分子量Mとの比率(M/M)は、3〜10であり、4〜7が好ましく、4.5〜6.5がより好ましい。
前記範囲の下限値以上であると、射出成形体の外観を良好にすることができる。
前記範囲の上限値以下であると、射出成形体の引張特性をより高めることができる。
ここで、プロピレン重合体の重量平均分子量M及び数平均分子量Mは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した値であり、具体的には後述する方法で測定された値である。
ポリプロピレン系樹脂(A)を構成するプロピレン重合体中のエチレン由来単位含有量(以下、「C2」ともいう。)は、前記プロピレン重合体の総質量に対して0.5質量%以下である。したがって、プロピレン重合体中のプロピレン由来単位含有量は99.5質量%以上である。C2が前記上限値以下であると(すなわち、プロピレン由来単位含有量が前記下限値以上であると)、射出成形体の剛性が高まる。
C2の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
したがって、プロピレン重合体は、プロピレン由来単位のみからなるポリプロピレンホモポリマーであってもよく、99.5質量%以上100質量%未満のプロピレン由来単位と0質量%超0.5質量%以下のエチレン由来単位とからなる共重合体であってもよいが、得られる射出成形体の剛性を高める観点から、C2は0質量%であることが好ましい。
C2は、13C−NMR法によって測定される。
ポリプロピレン系樹脂(A)を構成するエチレン・プロピレン共重合体は、エチレン由来単位とプロピレン由来単位を有する共重合体である。
ポリプロピレン系樹脂(A)を構成するエチレン・プロピレン共重合体中のエチレン由来単位含有量は、前記エチレン・プロピレン共重合体の総質量に対して、20〜40質量%であり、20〜35質量%が好ましく、25〜30質量%がより好ましい。
前記範囲の下限値以上であると、射出成形体の低温耐衝撃性をより高めることができる。
前記範囲の上限値以下であると、射出成形体の引張特性をより高めることができる。
エチレン・プロピレン共重合体中のエチレン由来単位含有量は、13C−NMR法によって測定される。
ポリプロピレン系樹脂(A)の総質量に対する、エチレン・プロピレン共重合体の含有量は、25〜35質量%であり、27〜33質量%がより好ましい。
前記範囲の下限値以上であると、射出成形体の低温耐衝撃性をより高めることができる。
前記範囲の上限値以下であると、ポリプロピレン系樹脂(A)製造時に粉体流動性悪化により生産設備上での流路が閉塞するリスクを低減できるので、ポリプロピレン系樹脂(A)を安定的に連続生産することができる。
ポリプロピレン系樹脂(A)の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRは、20〜100g/10分であり、25〜50g/10分が好ましく、30〜45g/10分がより好ましく、32〜42g/10分がさらに好ましい。ここで、前記MFRは後述する測定方法で測定された値である。
前記範囲の下限値以上であると、大面積の部品を製造する際にも射出成形時に溶融流動性不足による成形型内への充填不良を発生させず、特に成形型内の狭い部分や末端部分にも溶融樹脂を到達させることができる。
前記範囲の上限値以下であると、射出成形体の低温耐衝撃性を充分に高めることができる。
[エチレン・αオレフィン共重合体(B)]
エチレン・αオレフィン共重合体(B)は、エチレンと炭素数4〜10のαオレフィンとの共重合体である。αオレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。
具体的なエチレン・αオレフィン共重合体(B)としては、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・ペンテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、原料としての調達容易性や経済性等を考慮すると、エチレン・ブテン共重合体またはエチレン・オクテン共重合体が好ましい。
エチレン・αオレフィン共重合体(B)のMFRは、190℃、2.16kgの荷重で0.1〜10g/10分であることが好ましく、0.2〜3g/10分であることがより好ましく、0.3〜2g/10分であることがさらに好ましい。
前記範囲であると、射出成形体の機械物性バランスをより向上させることができる。
[無機充填剤(C)]
無機充填剤(C)としては、例えば、タルク、カオリナイト、クレー、バイロフィライト、セリナイト、ウォラストナイト、マイカのような天然珪酸または珪酸塩;含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸のような合成珪酸または珪酸塩;沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのような炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムのような水酸化物;酸化亜鉛、酸化マグネシウムのような酸化物が挙げられる。
また、無機充填剤としては形状の観点から、例えば、以下のものが挙げられる。
含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸のような合成珪酸または珪酸塩のような粉末状充填剤;タルク、カオリナイト、クレー、マイカのような板状充填剤;塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(Processed Mineral Filler)、ゾノトライト、チタン酸カリウム、およびエレスタダイトのようなウィスカー状充填剤;ガラスバルン、フライアッシュバルンのようなバルン状充填剤;ガラスファイバーのような繊維状充填剤。
当該無機充填剤として1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの充填剤の分散性を向上させるため、必要に応じて無機充填剤の表面処理を行ってもよい。本発明に用いる無機充填剤は限定されないが、射出成形においてポリプロピレン結晶の配向を促進することにより機械物性バランスを高める観点から、板状無機充填剤が好ましい。板状無機充填剤としてはタルク、カオリナイト、クレー、マイカ等の公知のものを使用できるが、ポリプロピレン系樹脂との親和性や原料としての調達容易性や経済性等を考慮すると、好ましくはタルク、マイカであり、さらに好ましくはタルクである。
無機充填剤(C)の体積平均粒子径は、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜7μmである。体積平均粒子径が前記範囲内であれば、射出成形体の機械物性バランスが高くなる。前記体積平均粒子径は、レーザ回折法(JIS R1629に基づく)によって体積基準の積算分率における50%径として測定できる。
[その他の成分]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、任意成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリプロピレン系樹脂(A)及びエチレン・αオレフィン共重合体(B)以外の樹脂又はエラストマー、無機充填剤(C)以外の添加剤が含まれてもよい。
無機充填剤(C)以外の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、中和剤、造核剤、耐候剤、顔料(有機または無機)、内部滑剤、外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、可塑剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂組成物が含有してもよい樹脂又はエラストマー又は添加剤は1種のみでもよいし、2種以上でもよい。含有量は公知の量としてよい。
<ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法>
上記ポリプロピレン系樹脂組成物を製造する方法としては、ポリプロピレン系樹脂(A)と、エチレン・αオレフィン共重合体(B)と、任意成分の無機充填剤(C)とを混合した後、溶融混練する方法が挙げられる。
混合方法としては、ヘンシェルミキサー、タンブラーおよびリボンミキサー等の混合機を使用してドライブレンドする方法が挙げられる。
溶融混練方法としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等の混合機を用いて溶融しながら混合する方法が挙げられる。溶融混練する場合の溶融温度は160〜350℃であることが好ましく、170〜260℃であることがより好ましい。溶融混練した後でさらにペレット化してもよい。
[ポリプロピレン系樹脂(A)の製造方法]
ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン重合体とエチレン・プロピレン共重合体とを重合時に混合して得てもよいし、別々に製造されたプロピレン重合体とエチレン・プロピレン共重合体とを溶融混練によって混合して得てもよい。
ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン重合体とエチレン・プロピレン共重合体とが重合時に混合された重合混合物であることが好ましい。
このような重合混合物は、プロピレン重合体の存在下で、エチレン単量体及びプロピレン単量体を重合することにより得られる。この方法では、プロピレン重合体の存在下でエチレン・プロピレン共重合体を生成させることにより、生産性が高くなる上に、プロピレン重合体中のエチレン・プロピレン共重合体の分散性が高くなるため、これを用いて得た射出成形体の機械物性バランスが向上する。
前記重合混合物の製造方法としては、典型的には、多段重合法が用いられる。例えば、二段の重合反応器を備える重合装置の一段目の重合反応器にて、プロピレン単量体及び必要に応じてエチレン単量体を重合してプロピレン重合体を得て、得られたプロピレン重合体を二段目の重合反応器に供給すると共に、この二段目の重合反応器にてエチレン単量体及びプロピレン単量体を重合することで前記重合混合物を得ることができる。
重合条件は、公知の重合条件と同様であってよい。例えば一段目の重合条件としては、プロピレンが液相でモノマー密度と生産性の高いスラリー重合法が挙げられる。二段目の重合条件としては、一般的にプロピレンへの溶解性が高い共重合体の製造が容易な気相重合法が挙げられる。
重合温度は50〜90℃が好ましく、60〜90℃がより好ましく、70〜90℃がさらに好ましい。該重合温度が上記範囲の下限値以上であると、生産性及び得られたポリプロピレンの立体規則性がより優れる。
重合圧力は、液相中で行われる場合には25〜60bar(2.5〜6.0MPa)が好ましく、33〜45bar(3.3〜4.5MPa)がより好ましい。気相中で行われる場合には、5〜30bar(0.5〜3.0MPa)が好ましく、8〜30bar(0.8〜3.0MPa)がより好ましい。
重合(プロピレン単量体の重合、エチレン単量体及びプロピレン単量体等の重合)は、通常、触媒を用いて行われる。重合の際、必要に応じて、分子量の調整のために、水素が添加されてもよい。プロピレン重合体やエチレン・プロピレン共重合体の分子量を調整することで、ポリプロピレン系樹脂のMFR、ひいてはポリプロピレン系樹脂組成物のMFRを調整できる。
一段目の重合反応器での重合の前に、その後の本重合の足がかりとなるポリマー鎖を固体触媒成分に形成させるために、プロピレンの予重合を行ってもよい。予重合は、通常は40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下で行われる。
触媒としては、公知のオレフィン重合触媒を用いることができる。
前記プロピレン重合体の存在下でエチレン単量体及びプロピレン単量体を重合する際の触媒としては、立体特異性チーグラー・ナッタ触媒が好ましく、以下の成分(ア)と成分(イ)と成分(ウ)とを含む触媒(以下、「触媒(X)」ともいう。)が特に好ましい。
(ア)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体化合物としてフタレート系化合物を必須成分として含有する固体触媒。
(イ)有機アルミニウム化合物。
(ウ)外部電子供与体化合物である有機ケイ素化合物。
ポリプロピレン系樹脂(A)は、触媒(X)を用いて、前記プロピレン重合体の存在下で、エチレン単量体及びプロピレン単量体を重合して前記ポリプロピレン系樹脂を得る工程を有する方法で製造することが好ましい。触媒(X)を用いることで、各物性が前記範囲内であるポリプロピレン系樹脂(A)が容易に得られる。
なお、使用する触媒(特に成分(ア)の電子供与体化合物)によって得られるプロピレン重合体の立体規則性の分布は異なり、その違いは結晶化挙動等に影響を与えるが、その関係性についての詳細が明らかになっていない。これを明らかにしようとする場合、分子構造として分子量分布と立体規則性分布を併せて解析する必要があるが、結晶化過程において分子量と立体規則性が異なる成分同士が影響を及ぼし合うため複雑であり、立体規則性の分布が結晶化挙動に及ぼす影響についての解釈をより困難にしている。さらに、実際の射出成形は非常に高速でかつ流動状態にて実施されるので、たとえ高度な解析技術を用いてもその現象を把握することは容易ではない。よって、特定の触媒を用いて得られたポリプロピレン系樹脂組成物において、立体規則性の分布による結晶化挙動の違いを数値等で特定することはおよそ不可能である。
成分(ア)は、例えば、チタン化合物、マグネシウム化合物及び電子供与体化合物を用いて調製される。
成分(ア)に用いられるチタン化合物として、一般式:Ti(OR)4−g(Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4)で表される4価のチタン化合物が好適である。
炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等が挙げられ、ハロゲンとしては、Cl、Br等が挙げられる。
より具体的なチタン化合物としては、TiCl、TiBr、TiIのようなテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(O−C)Cl、Ti(OC)Br、Ti(O−isoC)Brのようなトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O−CCl、Ti(OCBrのようなジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O−CCl、Ti(OCBrなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH、Ti(OC、Ti(O−Cのようなテトラアルコキシチタン等が挙げられる。これらチタン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記チタン化合物の中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物であり、より好ましくはテトラハロゲン化チタンであり、特に好ましくは四塩化チタン(TiCl)である。
成分(ア)に用いられるマグネシウム化合物として、マグネシウム−炭素結合やマグネシウム−水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライド等が挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いることもでき、また、液状であっても固体状であってもよい。さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n−オクトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウムのようなジアルコキシマグネシウム;エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム、フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウム等を挙げることができる。これらマグネシウム化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
成分(ア)に用いられる電子供与体化合物は、フタレート系化合物を必須成分として含有することが好ましい。フタレート系化合物を電子供与体として含む触媒(X)を用いると、プロピレン重合体のM/Mが前記範囲内であるポリプロピレン系樹脂が容易に得られる。
フタレート系化合物としては、例えば、モノエチルフタレート、ジメチルフタレート、メチルエチルフタレート、モノイソブチルフタレート、モノノルマルブチルフタレート、ジエチルフタレート、エチルイソブチルフタレート、エチルノルマルブチルフタレート、ジn−プロピルフタレート、ジイソプロピルフタレート、ジn−ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジn−ヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジn−オクチルフタレート、ジネオペンチルフタレート、ジデシルフタレート、ベンジルブチルフタレート、ジフェニルフタレート等が挙げられる。中でもジイソブチルフタレートが特に好ましい。
フタレート系化合物以外の前記固体触媒中の電子供与体化合物としては、スクシネート系化合物、ジエーテル系化合物等が挙げられる。
スクシネート系化合物は、コハク酸のエステルであってもよく、コハク酸の1位又は2位にアルキル基等の置換基を持つ置換コハク酸のエステルであってもよい。具体例としては、ジエチルスクシネート、ジブチルスクシネート、ジエチルメチルスクシネート、ジエチルジイソプロピルスクシネート、ジアリルエチルスクシネート等が挙げられる。
ジエーテル系化合物としては、例えば、2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−クミル−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−フェニルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(ジフェニルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−ナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−フルオロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−デカヒドロナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−メチル−2−エチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−プロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−プロピル−2−ペンチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−メチル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−メチルシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(p−クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−フェニルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(p−メチルフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジブトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジネオペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン等が挙げられる。
成分(ア)を構成するハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素又はこれらの混合物が挙げられ、特に塩素が好ましい。
成分(イ)の有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム、トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドのようなジアルキルアルミニウムアルコキシド、エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドのようなアルキルアルミニウムセスキアルコキシド、R 2.5Al(OR0.5(R,Rは、各々異なってもよいし同じでもよい炭化水素基である。)で表される平均組成を有する、部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミドのようなジアルキルアルミニウムハロゲニド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドのようなアルキルアルミニウムセスキハロゲニド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドのようなアルキルアルミニウムジハロゲニド等が部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドのようなジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドのようなアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドのような部分的にアルコキシ化及びハロゲン化されたアルキルアルミニウム等が挙げられる。上記成分(イ)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
成分(ウ)の外部電子供与体化合物としては、有機ケイ素化合物が用いられる。
好ましい有機ケイ素化合物として、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo−トリルジメトキシシラン、ビスm−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2−ノルボルナントリメトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサン、メチル(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロペンチル−t−ブトキシジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、t−ブチルプロピルジメトキシシラン、t−ブチル−t−ブトキシジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン−2−イル)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジシクロペンチル−ビス(エチルアミノ)シラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルセク−ブチルジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリン2−イル)ジメトキシシラン、トリ(イソプロペニロキシ)フェニルシラン、i−ブチルi−プロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルi−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルi−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、p−トリルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、t−ブチルプロピルジメトキシシラン、t−ブチルt−ブトキシジメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、i−ブチルセク−ブチルジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリン2−イル)ジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン−2−イル)ジメトキシシラン、トリ(イソプロペニロキシ)フェニルシラン、テキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、i−ブチルi−プロピルジメトキシシラン、シクロペンチルt−ブトキシジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルi−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルi−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、p−トリルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(3、3、3−トリフルオロ−n−プロピル)ジメトキシシラン、ケイ酸エチル等が好ましい。
上記成分(ウ)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機ケイ素化合物は、特にキシレン不溶分の量を本発明で特定する範囲に調整するのに重要な役割を果たす。他の触媒成分が同じ場合、キシレン不溶分の量は、有機ケイ素化合物の種類と量および重合温度に依存するが、適切な有機ケイ素化合物を用いた場合においても、通常ジエーテル系触媒を除き、有機ケイ素化合物の量が特定の値以下になると大きく低下する。このため、重合温度が75℃の場合、有機ケイ素化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比(有機ケイ素化合物/有機アルミニウム)の下限は0.015が好ましく、0.018がより好ましい。当該比の上限は、0.30が好ましく、0.20がより好ましく、0.10がさらに好ましい。
内部電子供与体化合物としてフタレート系化合物を用いる場合は、重合温度を上げるとキシレン不溶分が増加するので、好ましい有機ケイ素化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比(有機ケイ素化合物/有機アルミニウム)の下限および上限が低下する。具体的には、フタレート系化合物を用いて80℃で重合する場合の前記モル比の下限は、0.010が好ましく、0.015がより好ましく、0.018がさらに好ましい。前記モル比の上限は、0.20が好ましく、0.14がより好ましく、0.08がさらに好ましい。
触媒(X)としては、成分(イ)が、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムであり、成分(ウ)が、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン等の有機ケイ素化合物であるものが好ましい。
なお、多段重合法により前記重合混合物を得る方法は上記の方法に限定されず、プロピレン重合体を複数の重合反応器にて重合してもよいし、エチレン・プロピレン共重合体を複数の重合反応器にて重合してもよい。
前記重合混合物を得る方法として、単量体濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いて行う方法も挙げられる。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接合されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。
具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、重合生成物を回収する。この方法では、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的又は部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体及び/又は液体混合物を下降管中に導入する。この重合方法は、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
(エチレン・αオレフィン共重合体(B)の製造方法)
エチレン・αオレフィン共重合体(B)は、重合の際にメタロセン触媒又はハーフメタロセン触媒を用いる公知の方法(例えば、国際公開WO2006/102155号に記載の方法)によって製造することができる。
前記重合の際に、連鎖移動剤(例えば、水素またはジエチル亜鉛)等の公知の分子量自動調整剤を使用してもよい。
<自動車内装部品用成形体>
本発明の自動車内装部品用成形体は、上記のポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形することにより製造できる。
成形温度は一般的には150〜350℃、好ましくは170〜250℃で実施される。成形温度が350℃を超えると、樹脂組成物の劣化及び成形不良の原因となり、150℃より低いと流動性が低下することで金型内への充填不足による外観不良や成形不良が発生する。金型温度については、10〜60℃の範囲で行うことが好ましい。金型温度が60℃を超えると成形体の表面仕上げ度が優れ、剛性に優れた成形体が得られるものの、成形サイクルが長くなり生産性が低下する。逆に、金型温度を10℃より低温に設定すると反りや収縮などが顕著になり、満足な成形体が得られにくくなるばかりか、金型に結露が生じやすくなるために金型腐食を進行させる原因となる。冷却に関わるエネルギーコストの観点からも適さない。
本発明の自動車内装部品用成形体は、製品強度を高めるために、非意匠面にリブが形成されていることが好ましい。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を用いることにより、リブが形成されている場合にも、溶融樹脂をリブ形成用の溝に充分に充填することができるとともに、シルバーストリークやシワの発生を抑制し、外観に優れた成形体となる。具体的には、例えば、乗用車などのドアトリム、グローブボックス、コラムカバー、インスツルメントパネル、パッケージトレイ、リアトレイ、ピラーガーニッシュ、コンソールボックスなど、一般にポリプロピレン系樹脂組成物を用いて射出成形により製造されている自動車内装部品への適用が挙げられる。特に、意匠面の面積が大きいドアトリムへの適用において効果は顕著である。
本発明の自動車内装部品用成形体の曲げ弾性率は、900MPa以上が好ましく、950MPa以上がより好ましく、1000MPa以上がさらにより好ましく、1050MPa以上が特に好ましい。
曲げ弾性率の値が高い程、剛性に優れた自動車内装部品用成形体であるといえる。
本発明の自動車内装部品用成形体の−20℃でのシャルピー衝撃強さは、4.0kJ/m以上が好ましく、5.0kJ/m以上がより好ましく、6.0kJ/m以上がさらに好ましい。
低温でのシャルピー衝撃強さの値が高い程、低温耐衝撃性に優れた自動車内装部品用成形体であるといえる。
自動車内装部品においては、破壊時のモードとして脆性破壊ではなく延性破壊となることが好ましい。すなわち突発的な破壊・破裂により破面等で人体を傷つけるリスクが少ないことが好ましく、安全設計指標として引張破壊呼びひずみ等の引張特性が重視されることがある。本発明の自動車内装部品用成形体の引張破壊呼びひずみは、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、75%以上が特に好ましい。引張破壊呼びひずみの値が高い程、引張特性に優れた自動車内装部品用成形体であるといえる。
以下に実施例及び比較例を示すが、本発明は以下の実施例だけに限定されない。
<共重合体1の作製>
MgCl上にTiClと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5に記載された方法により調製した。
次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの質量比が20、TEAL/DCPMSの質量比が10(上述した有機ケイ素化合物/有機アルミニウムのモル比に換算すると0.05)となるような量で、12℃において24分間接触させた。
得られた触媒(X)を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予重合を行った。
得られた予重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造し、二段目の重合反応器でプロピレン−エチレンコポリマーを製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、水素濃度が、それぞれ80℃、2.24モル%、二段目の反応器では、重合温度、水素濃度、エチレンとプロピレンとの合計に対するエチレンの割合が、それぞれ80℃、1.75モル%、0.21モル比であった。また、コポリマー成分の量が30質量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。以上の方法により、目的の共重合体1を得た。
得られた共重合体1は、連続相を構成するプロピレン重合体である成分(1)とゴム相を構成するエチレン・プロピレン共重合体である成分(2)との重合混合物であり、前述のポリプロピレン系樹脂(A)である。
共重合体1について、成分(1)のMFR、成分(1)のXI、成分(1)のMw/Mn、成分(1)のエチレン由来単位含有量、質量比 成分(2)/[成分(1)+成分(2)]、成分(2)のエチレン由来単位含有量、成分(1)+成分(2)のXSIV、成分(1)+成分(2)のMFRは表1に示すものであった。
ここで、成分(1)はプロピレン重合体であり、成分(2)はエチレン・プロピレン共重合体であり、成分(1)+成分(2)はポリプロピレン系樹脂(A)である。
なお、表1中、フタレート系化合物を成分(ア)として含む触媒(X)を「Pht」と表し、スクシネート系化合物を成分(ア)として含む触媒(X)を「Suc」と表す。
<共重合体2の作製>
成分(2)のエチレン由来単位含有量が42質量%になるように、二段目の反応器でのエチレンとプロピレンとの合計に対するエチレンの割合を0.41モル比に変更した以外は、共重合体1の場合と同様の製造方法にて、成分(1)と成分(2)の重合混合物からなる共重合体2を得た。
共重合体2について、共重合体1の場合と同様に測定した。その測定値を表1に示す。
なお、成分(1)はプロピレン重合体であり、成分(2)はエチレン・プロピレン共重合体であり、成分(1)+成分(2)はポリプロピレン系樹脂(A)である。
<共重合体3の作製>
一段目の反応器での水素濃度を2.00モル%、二段目の反応器での水素濃度、エチレンとプロピレンとの合計に対するエチレンの割合を、それぞれ2.04モル%、0.45モル比に変更した以外は、共重合体1の場合と同様の製造方法にて、成分(1)と成分(2)の重合混合物からなる共重合体3を得た。
共重合体3について、成分(1)のMFR、成分(1)のXI、成分(1)のMw/Mn、成分(1)のエチレン由来単位含有量、質量比 成分(2)/[成分(1)+成分(2)]、成分(2)のエチレン由来単位含有量、成分(1)+成分(2)のXSIV、成分(1)+成分(2)のMFRは表1に示すものであった。
なお、成分(1)はプロピレン重合体であり、成分(2)はエチレン・プロピレン共重合体であり、成分(1)+成分(2)はポリプロピレン系樹脂(A)である。
<共重合体4の作製>
特表2011−500907号の実施例に記載の調製法に従い、固体触媒を以下の手順で調製した。
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiClを0℃において導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl・1.8COH(USP−4,399,054の実施例2に記載の方法にしたがって、ただし10000rpmに代えて3000rpmで運転して製造した)、及び9.1ミリモルのジエチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。温度を100℃に上昇させ、120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、以下の操作を2回繰り返した:250mLの新しいTiClを加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。
上記固体触媒と、TEAL及びDCPMSを、固体触媒に対するTEALの質量比が18であり、TEAL/DCPMSの質量比が10となるような量で、室温において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行った。得られた予重合物を、液相重合反応器と気相重合反応器を直列に備える重合装置の液相重合反応器に導入し、一段目の重合反応器でプロピレンの液相状態にてプロピレン重合体を製造し、二段目の気相重合反応器でエチレン・プロピレン共重合体を製造した。重合の際には、重合温度を80℃とし、重合圧力と触媒の添加量を調整するとともに、成分(2)のエチレン由来単位含有量が所定の量となるように、二段目のエチレン供給量とプロピレン供給量を調整してエチレンとプロピレンとの合計に対するエチレンの割合を0.35モル比とした。また、分子量調整剤として水素を用いて、成分(1)+成分(2)のMFRとXSIVが所定の値となるように、水素濃度を一段目で0.60モル%、二段目で2.45モル%とした。また、質量比として成分(2)/[成分(1)+成分(2)]が所定の量となるように、一段目及び二段目の滞留時間分布を調整した。以上の方法により、目的の共重合体4を得た。
共重合体4について、成分(1)のMFR、成分(1)のXI、成分(1)のMw/Mn、成分(1)のエチレン由来単位含有量、質量比 成分(2)/[成分(1)+成分(2)]、成分(2)のエチレン由来単位含有量、成分(1)+成分(2)のXSIV、成分(1)+成分(2)のMFRは表1に示すものであった。
なお、成分(1)はプロピレン重合体であり、成分(2)はエチレン・プロピレン共重合体であり、成分(1)+成分(2)はポリプロピレン系樹脂(A)である。
<共重合体5の作製>
共重合体4と同じ予重合物を用い、一段目の反応器での水素濃度を1.11モル%、二段目の反応器での水素濃度、エチレンとプロピレンとの合計に対するエチレンの割合を、それぞれ1.75モル%、0.22モル比に変更した以外は、共重合体1の場合と同様の製造方法にて、成分(1)と成分(2)の重合混合物からなる共重合体5を得た。
共重合体5について、成分(1)のMFR、成分(1)のXI、成分(1)のMw/Mn、成分(1)のエチレン由来単位含有量、質量比 成分(2)/[成分(1)+成分(2)]、成分(2)のエチレン由来単位含有量、成分(1)+成分(2)のXSIV、成分(1)+成分(2)のMFRは表1に示すものであった。
なお、成分(1)はプロピレン重合体であり、成分(2)はエチレン・プロピレン共重合体であり、成分(1)+成分(2)はポリプロピレン系樹脂(A)である。
Figure 2021172729
表1の測定結果は下記の測定方法によって測定された値である。
<成分(1)のMFR>
一段目の反応器で重合した成分(1)を採取した試料5gに対し本州化学工業株式会社製H−BHTを0.05g添加し、ドライブランドにより均一化した後、JIS K6921−2に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
<成分(1)のXI>
一段目の反応器で重合した成分(1)を採取した試料2.5gを撹拌しながら135℃において250mLのキシレンに溶解した。20分後、溶液を撹拌しながら25℃に冷却し、次いで30分間静止させた。沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を一定の重量に達するまで真空下80℃において乾燥した。このようにして25℃におけるキシレンに可溶性のポリマーの質量%を計算した。
キシレン不溶分(XI)の量(25℃におけるキシレンに不溶性のポリマーの質量%)は、100−「可溶性のポリマーの質量%」で求められ、ポリマーのアイソタクチック成分の量と考えられる。
<成分(1)のMw/Mn>
上記のようにして採取した成分(1)を試料とし、以下のように、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の測定を行い、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除して分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
装置としてポリマーラボラトリーズ社製PL GPC220を使用し、酸化防止剤を含む1,2,4−トリクロロベンゼンを移動相とし、カラムとして昭和電工株式会社製UT−G(1本)、UT−807(1本)、UT−806M(2本)を直列に接続したものを使用し、検出器として示差屈折率計を使用した。また、成分(1)の試料溶液の溶媒としては移動相と同じものを使用し、1mg/mLの試料濃度で、150℃の温度で振とうさせながら2時間溶解して測定試料を調製した。これにより得た試料溶液500μLをカラムに注入し、流速1.0mL/分、温度145℃、データ取り込み間隔1秒で測定した。カラムの較正には、分子量580〜745万のポリスチレン標準試料(shodex
STANDARD、昭和電工株式会社製)を使用し、三次式近似で行った。Mark−Houwink−Sakuradaの係数は、ポリスチレン標準試料に関しては、K=1.21×10−4、α=0.707、プロピレン重合体に関しては、K=1.37×10−4、α=0.75を使用した。
<共重合体1〜5の総エチレン量、成分(1)のエチレン由来単位含有量>
1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した共重合体1〜5の各試料について、Bruker社製AVANCEIII HD400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、測定温度120℃、フリップ角45度、パルス間隔7秒、試料回転数20Hz、積算回数5000回の条件で13C−NMRのスペクトルを得た。
上記で得られたスペクトルを用いて、Kakugo,Y.Naito,K.Mizunuma and T.Miyatake,Macromolecules,15,1150-1152(1982)の文献に記載された方法により、共重合体1〜5の総エチレン量(質量%)を求めた。
なお、成分(1)を試料として測定する場合、上記方法により得られる総エチレン量(質量%)は、成分(1)のエチレン由来単位含有量(質量%)となる。
<成分(2)のエチレン由来単位含有量>
上記文献に記載された方法で共重合体1〜5の総エチレン量を測定するに際して求めたTββの積分強度の替わりに、下記式で求めた積分強度T’ββを使用した以外は、総エチレン量と同様の方法で計算を行い、成分(2)のエチレン由来単位含有量(質量%)を求めた。
T’ββ=0.98×Sαγ×A/(1−0.98×A)
ここで、A=Sαγ/(Sαγ+Sαδ)であり、上記文献に記載のSαγ及びSαδより算出される。
<質量比 成分(2)/[成分(1)+成分(2)]>
下記式により上記質量比を求めた。
成分(2)/[成分(1)+成分(2)](単位:質量%)=
共重合体1〜5の総エチレン量/(成分(2)中のエチレン由来単位含有量/100)
<成分(1)+成分(2)のXSIV>
以下の方法によって共重合体1〜5のキシレン可溶分を得て、キシレン可溶分の極限粘度(XSIV)を測定した。
共重合体1〜5の各サンプル2.5gを、o−キシレン(溶媒)を250mL入れたフラスコに入れ、ホットプレート及び還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間撹拌し、完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却した。これにより得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の濾液を100mL採取し、アルミニウムカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置して、キシレン可溶分を得た。
極限粘度は、テトラヒドロナフタレン中、135℃において毛細管自動粘度測定装置(SS−780−H1、株式会社柴山科学器械製作所製)を用いて測定した。
<成分(1)+成分(2)のMFR>
共重合体1〜5の試料5gに対し、本州化学工業株式会社製H−BHTを0.05g添加し、ドライブランドにより均一化した後、JIS K6921−2に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
[実施例1〜5、比較例1〜5]
ドアトリム等の自動車内装部品を想定したポリプロピレン系樹脂組成物として、表2に示す組成で、成分(A)〜(C)を配合し、成分(A)〜(C)の総量100質量部に対し、酸化防止剤としてBASF社製B225を0.2質量部、中和剤として協和化学工業株式会社製DHT−4Aを0.05質量部、造核剤として株式会社ADEKA製アデカスタブ NA11を0.1質量部、耐候剤として株式会社ADEKA製アデカスタブLA502XPを0.3質量部、帯電防止剤として花王株式会社製TS−5を0.3質量部、無機顔料(キャボット社製カーボンブラックIP−1000が60質量%、石原産業株式会社製チタンホワイトCR−60が40質量%の混合物)0.5質量部で加え、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌、混合した。
当該混合物を、株式会社JSW製同方向2軸押出機TEX−30αを用いて、シリンダ温度200℃で溶融混練して押出した。ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
このようにして製造したポリプロピレン系樹脂組成物、およびこれらを用いて得た射出成形体について各種物性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2021172729
表2の各成分は次の通りである。
成分(A)は、表1の共重合体1〜5である。
成分(B)は、下記のエチレン・αオレフィン共重合体である。
B−1:三井化学株式会社製、タフマー A−1050S、エチレン・ブテン共重合体、MFR=1.2g/10分
B−2:ダウケミカル社製、エンゲージ 8150、エチレン・オクテン共重合体、MFR=0.5g/10分
成分(C)は、無機充填剤であり、具体的には次のタルクである。
タルク:ネオライト興産株式会社製、ネオタルクUNI05、レーザ回折法によって測定した体積平均粒子径:5μm
他の成分は、次の添加剤である。
酸化防止剤:BASF社製B225
中和剤:協和化学工業株式会社製DHT−4A
造核剤:株式会社ADEKA製アデカスタブNA11
耐候剤:株式会社ADEKA製アデカスタブLA502XP
帯電防止剤:花王株式会社製TS−5
無機顔料:キャボット社製カーボンブラックIP−1000が60質量%、石原産業株式会社製チタンホワイトCR−60が40質量%の混合物
表2の測定結果及び評価結果は下記の方法によって測定及び評価された値である。
<流動性 MFR>
JIS K7210−1に従い、ポリプロピレン系樹脂組成物に対してはJIS K6921−2に基づき温度230℃および荷重2.16kgの条件下で、エチレン・αオレフィン共重合体に対してはJIS K6922−2に基づき、温度190℃および荷重2.16kgの条件下で測定した。
<剛性 曲げ弾性率>
JIS K6921−2に従い、射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT S2000i)を用い、溶融樹脂温度を200℃、金型温度40℃、平均射出速度200mm/秒、保圧時間40秒、全サイクル時間60秒の条件にて、ポリプロピレン樹脂組成物からJIS K7139に規定する多目的試験片(タイプA1)を射出成形し、幅10mm、厚さ4mm、長さ80mmに加工して測定用試験片(タイプB2)を得た。
株式会社島津製作所製精密万能試験機(オートグラフAG−X 10kN)を用い、温度23℃、相対湿度50%、支点間距離64mm、試験速度2mm/分の条件で、タイプB2測定用試験片の曲げ弾性率を測定することでポリプロピレン系樹脂組成物から得られる射出成形体の剛性の指標とした。
<低温耐衝撃性 シャルピー衝撃強さ[−20℃]>
JIS K6921−2に従い、曲げ弾性率測定で用いた試験片と同一の操作で得たタイプA1試験片を用いて測定した。すなわち、JIS K7111−1に従い、株式会社東洋精機製作所製ノッチングツールA−4を用いて幅10mm、厚み4mm、長さ80mmに加工してから幅方向に2mmのノッチを入れ、形状Aの測定用試験片を得た。
当該測定用試験片について、株式会社安田精機製作所製低温槽付き全自動衝撃試験機(No.258−ZA)を用い、温度−20℃の条件でシャルピー衝撃強さ(エッジワイズ打撃、1eA法)を測定した。
<引張特性 引張破壊呼びひずみ>
JIS K6921−2に従い、曲げ弾性率測定で用いた試験片と同一の操作で得たタイプA1試験片を用いて測定した。すなわち、JIS K7161−2に従い、株式会社島津製作所製精密万能試験機(オートグラフAG−X 10kN)を用い、温度23℃、相対湿度50%、試験速度50mm/分の条件で引張破壊呼びひずみを測定した。
<外観>
寸法200mm×400mm×3mmで中央部に開口部(40mmΦ)が施され、片面に強度補強リブ(高さ10mm×厚さ1mm)が形成された鏡面平板成形用金型を、射出成形機(株式会社日本製鋼所製、J220ELIII)に取り付けた。ペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を用い、成形温度230℃、金型温度40℃、射出時間1秒の条件下で射出成形を行った。
自動車内装部品を模した射出成形体の外観評価として、フローマークの目立ちやすさ、開口部付近でのウェルドの目立ちやすさ、強度補強リブが形成された裏面におけるシルバーストリークの目立ちやすさを目視で観察した。評価基準は下記の通りである。
(フローマーク)
「1」: フローマークの発生が無い。
「2」: フローマークの発生程度が僅かで、目立たない。
「3」: フローマークが目立つ。
(ウェルド)
「1」: ウェルドの発生が無い。
「2」: ウェルドの発生程度が僅かで、目立たない。
「3」: ウェルドが目立つ。
(シルバーストリーク)
「1」: シルバーストリークの発生が無い。
「2」: シルバーストリークの発生が少なく、目立たない。
「3」: 必ずシルバーストリークが発生し、目立つ。
(耐傷付性)
外観評価に用いた平板の鏡面平滑部から寸法80mm×80mmを切り出し、傷付性評価用試験片とした。
タングステン鋼針(R=0.1mm)を装着した表面性測定機(新東科学株式会社製HEIDON−14D)で、温度23℃、荷重0.5Nの条件下、長さ50mmの引掻き傷を、射出成形時の流動方向と直行する方向に、速度550mm/分で1mm間隔に20本付けた。平板の傷付き部と通常部の明度差ΔL*を、JIS Z8730に基づき、分光色差計(日本電色工業株式会社製SE2000)により測定した。ΔL*は耐傷付性の指標であり、この値が小さいほど耐傷付性に優れていることを示す。
所定の物性を有するポリプロピレン系樹脂組成物を用いた実施例1〜5の射出成形体は、比較例1〜5と比べて、フローマーク、ウェルド、シルバーストリーク等の発生が抑制され、良好な外観であった。さらに、剛性、低温耐衝撃性、引張特性等の機械物性のバランスにも優れていた。
ポリプロピレン系樹脂(A)におけるエチレン・プロピレン共重合体中のエチレン由来単位含有量が所定の範囲から外れる比較例1の射出成形体は、引張特性が劣っていた。
エチレン・αオレフィン共重合体を含有しない比較例2の射出成形体は、低温耐衝撃性が劣り、シルバーストリークの発生が目立っていた。
ポリプロピレン系樹脂(A)の総質量に対する、エチレン・プロピレン共重合体の含有量が所定の範囲から外れる比較例3〜4の射出成形体は、低温耐衝撃性と引張特性が劣っていた。
成分(A)〜(C)の総質量に対する、タルクの含有量が所定の範囲から外れる比較例5の射出成形体は、外観が著しく劣り、耐傷付性も著しく劣っていた。

Claims (7)

  1. プロピレン重合体からなる連続相と、エチレン・プロピレン共重合体からなるゴム相とを含むポリプロピレン系樹脂(A)、エチレンと炭素数4〜10のαオレフィンとの共重合体であるエチレン・αオレフィン共重合体(B)、及び必要に応じて無機充填剤(C)を含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、
    前記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有割合が前記(A)〜(C)の総質量に対して90〜99質量%であり、
    前記エチレン・αオレフィン共重合体(B)の含有割合が、前記(A)〜(C)の総質量に対して1〜10質量%であり、
    前記ポリプロピレン系樹脂組成物に無機充填剤(C)が含まれる場合、前記無機充填剤(C)の含有割合が前記(A)〜(C)の総質量に対して2質量%以下であり、
    前記ポリプロピレン系樹脂組成物の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRが25〜50g/10分であり、
    前記プロピレン重合体のキシレン不溶分の含有量が、前記プロピレン重合体の総質量に対して、97.5質量%以上であり、
    前記プロピレン重合体の重量平均分子量Mと数平均分子量Mとの比率(M/M)が3〜10であり、
    前記プロピレン重合体中のエチレン由来単位含有量が、前記プロピレン重合体の総質量に対して0.5質量%以下であり、
    前記エチレン・プロピレン共重合体の含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂(A)の総質量に対して25〜35質量%であり、
    前記エチレン・プロピレン共重合体中のエチレン由来単位含有量が、前記エチレン・プロピレン共重合体の総質量に対して20〜40質量%であり、
    前記ポリプロピレン系樹脂(A)のキシレン可溶分の、135℃のテトラヒドロナフタレン中での極限粘度が1.5〜4.0dl/gであり、
    前記ポリプロピレン系樹脂(A)の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRが20〜100g/10分である、
    自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物。
  2. 前記プロピレン重合体の重量平均分子量Mと数平均分子量Mとの比率(M/M)が4〜7である請求項1に記載の自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. 前記プロピレン重合体と前記エチレン・プロピレン共重合体とは重合によって混合され、前記ポリプロピレン系樹脂は、下記(ア)〜(ウ)の成分を含む触媒を用いて製造された重合混合物である、請求項1又は2に記載の自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物。
    (ア)マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び電子供与体化合物としてのフタレート系化合物を含有する固体触媒
    (イ)有機アルミニウム化合物
    (ウ)外部電子供与体化合物である有機ケイ素化合物
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法であって、下記(ア)〜(ウ)の成分を含む触媒を用いて、前記プロピレン重合体の存在下で、エチレン単量体及びプロピレン単量体を重合して前記ポリプロピレン系樹脂を得る工程を有する、自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
    (ア)マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び電子供与体化合物としてのフタレート系化合物を必須成分として含有する固体触媒
    (イ)有機アルミニウム化合物
    (ウ)外部電子供与体化合物である有機ケイ素化合物
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車内装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形して得られる自動車内装部品用成形体。
  6. 前記自動車内装部品用成形体が、ドアトリム、グローブボックス、コラムカバー、インスツルメントパネル、パッケージトレイ、リアトレイ、ピラーガーニッシュ又はコンソールボックスである、請求項5に記載の自動車内装部品用成形体。
  7. 前記自動車内装部品用成形体が、ドアトリムである請求項6に記載の自動車内装部品用成形体。
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