JP2021172089A - 熱溶融転写型インクリボン - Google Patents

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【課題】各種衣料用表示ラベルに対する印字感度や印字の転写性や印字のキレが良好で、衣料用表示ラベル上に形成された印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れ、さらに印字の際の地汚れ現象や高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象の抑制効果に優れた熱溶融転写型インクリボンを提供する。【解決手段】フィルム基材1の一方の面に転写制御層2、インク層3、接着層4を順次積層し設けた熱溶融転写型インクリボン5であって、インク層3が着色剤とニトロセルロースとトルエンスルホンアミド誘導体を含有し、接着層4が熱可塑性樹脂とポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子を含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、衣料の洗濯表示ラベルや品質表示ラベル等の各種衣料用表示ラベルに対して耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れた堅牢な印字を形成する事が可能な熱溶融転写型インクリボンに関する。
一般的に衣料の洗濯表示ラベルや品質表示ラベルといった各種衣料用表示ラベルに対する印字方法としては、溶剤系インクや紫外線硬化インク等を用いた凸版印刷機による印字や、熱溶融転写型インクリボンを用いたサーマルプリンタによる印字等が挙げられる。凸版印刷機による印字が大量生産に向いているのに対して、熱溶融転写型インクリボンを用いたサーマルプリンタによる印字の長所としては、印刷版の作製が不要なので小ロット多品種の製品に対する印刷に向いており、プリンタが小さくて耐久性とメンテナンス性に優れ、さらに印字後の硬化処理や乾燥などが不要で簡便に印字を形成する事が可能であるといった点などが挙げられる。
その反対に、熱溶融転写型インクリボンを用いたサーマルプリンタによる印字の短所としては、印字感度や印字の転写性や印字のキレといった印字品質を向上させるために比較的低軟化点や低融点や低分子量の熱可塑性原料をインク層に選択的に使用すると印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が悪化する傾向があり、逆に印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性を向上させる為に比較的高軟化点や高融点や高分子量の熱可塑性原料をインク層に選択的に使用すると衣料用表示ラベルに対する印字感度や印字の転写性や印字のキレが悪化してしまう傾向があるといった様に、印字感度や印字の転写性や印字のキレといった印字品質と、印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性とがトレードオフの関係になる傾向がある事や、衣料用表示ラベルに対して熱溶融転写型インクリボンが直接面接触して押し付けられながら印字が行われる印字方式である事などが原因で、印字の転写性が被印字媒体である衣料用表示ラベルの表面の平滑性や表面状態などの影響を大きく受けてしまう(印字の転写性が悪化した場合には、印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も悪化する傾向にある)事などが挙げられる。
この様な問題を解決する為に、特許文献1においては、ナイロンやポリエステルなどの織物基材の表面にナイロンを主成分とし表面微多孔を有する表面層を設けた熱転写受像シートにおいて、その表面を非常に平滑にする事によって、樹脂型のサーマルインキを用いたサーマルプリンタによる印字において高精細な画像を形成する事が可能となる事が提案されており、被印字媒体である衣料用表示ラベル(熱転写受像シート)側の改良によって熱溶融転写型インクリボン(樹脂型のサーマルインキ)の印字感度や印字の転写性や印字のキレといった印字品質の不足を補える事が示唆されている。
また特許文献2においては、少なくとも着色剤とニトロセルロースと低溶融粘度物質を含有するインク層を設けた熱転写インクシートとナイロンからなる特定の性状を有した熱転写用受像布を組み合わせて印字を行う事によって、画像濃度を向上させ耐洗濯性や耐ドライクリーニング性などに優れた衣料用ラベルを得る事などが提案されており、特定の熱溶融転写型インクリボン(熱転写インクシート)と特定の衣料用表示ラベル(熱転写用受像布)とを組み合わせる事によって、印字の転写性や印字のキレや印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性を向上させる事が可能となる事が示唆されている。
しかしながら、衣料用表示ラベルの素材に関しては、デザイン性や染色性やコストや肌触りなどの他の要求品質もある為に、印字品質や印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れた特定の性状を有した衣料用ラベルだけを常に使用させる事は現実的に困難である。例えば特許文献1に示されているような受像層(表面層)を設けた衣料用表示ラベルに関しては、適切な熱溶融転写型インクリボンと組み合わせて使用すれば、印字感度や印字の転写性や印字のキレといった印字品質や耐洗濯性や耐ドライクリーニング性が非常に向上する事が分かっているが、一方でこのような衣料用表示ラベルは肌触りなどがあまり良くないという一面を有している。また特許文献2の実施例において用いられるような受像層等を設けていない衣料用表示ラベルは肌触りが良好であり、ナイロン、ポリエステル、アセテート、アクリル等といった様々な糸を使用して作製されている事が示されているが、これらの様々な糸を使用して作製された衣料用表示ラベルに関しても、特定の種類の糸を使用した時や衣料用表示ラベルの表面の平滑性が乏しい時には印字の転写性や印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が悪くなる傾向があり、実質的に特定の熱溶融転写型インクリボンと特定の衣料用表示ラベルを組み合わせて使用した時だけにしか印字の転写性や印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性を向上させる事が出来ない事を示唆している。
この様に、これまでは印字を受像し易くする為の受像層(特許文献1における表面層)を設けた衣料用表示ラベルを用いたり、特定の衣料用表示ラベルと特定の熱溶融転写型インクリボンを組み合わせて用いたりする事によって印字感度や印字の転写性や印字のキレといった印字品質や、印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性などの各種性能の向上を図っており、逆に言うと衣料用表示ラベルが適切に選択出来ない状況下においては、前記各種性能の全ての向上が見込めなかった。
また特許文献2の実施例に示されるような耐熱性樹脂であるニトロセルロースと可塑剤であるオルトトルエンスルホンアミドとを1:1の重量比で組み合わせてバインダー成分にしたインク層を設けた熱溶融転写型インクリボンを用いて各種衣料用表示ラベルに印字を行うと、印字感度や印字の転写性や印字のキレといった印字品質や、印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が全体的に良好になる傾向があるものの、衣料用表示ラベルの糸の材質や表面の平滑性などの組み合わせによっては印字の転写性や印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性がまだ充分でない場合があり、また別の問題として印字の際に衣料用表示ラベルの非印字部分に汚れが発生する現象、所謂「地汚れ」が発生し易いという問題もあった。さらにこの熱溶融転写型インクリボンをリボンコアに巻き付けた状態で高温多湿環境下において環境保存試験を行うと、インク層のブロッキング現象やオルトトルエンスルホンアミドの熱溶融転写型インクリボンの表面へのブリード現象が発生し易い傾向がある事が判明した。
特開平07−232484号公報 特許3594246号公報
本発明はこの様な状況に鑑みてなされたものであり、各種衣料用表示ラベルに対する印字感度や印字の転写性や印字のキレが良好で、衣料用表示ラベル上に形成された印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れていて、さらに印字の際の地汚れ現象や高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象の抑制効果に優れた熱溶融転写型インクリボンを提供する事が本発明の主たる課題である。
これらの課題を解決する為に、本発明者が検討を行った結果、フィルム基材の一方の面に転写制御層、インク層、接着層を順次積層し設けた熱溶融転写型インクリボンであって、インク層が着色剤とニトロセルロースとトルエンスルホンアミド誘導体を含有し、さらにその上層にポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子と熱可塑性樹脂を含有した接着層を設ける事によって、各種衣料用表示ラベルに対する印字感度や印字の転写性や印字のキレといった印字品質を向上させ、さらに耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れた印字を形成する事が可能となる事を見出した。また本発明の熱溶融転写型インクリボンを用いれば、印字の際の地汚れや、高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象を抑制する事が可能となる事も見出した。
さらに発明者が検討を行った結果、接着層に使用する熱可塑性樹脂として、特に塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂又はポリウレタン樹脂の少なくとも一方を使用する事によって、印字のドライクリーニング性においてさらに良好な結果が得られる事を見出した。
さらに発明者が検討を行った結果、接着層中のポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の含有量が0.005g/m以上0.1g/m以下の範囲であれば、印字感度や印字の転写性や印字のキレを維持したまま、印字の際の地汚れや、高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象の抑制がより良好となる事を見出した。同様の理由でポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の平均粒子径が0.5μm以上10.0μ以下の範囲である事が好ましい事も見出した。
さらに発明者が検討を行った結果、インク層はニトロセルロース100質量部に対してトルエンスルホンアミド誘導体を20質量部以上100質量部以下の範囲で含有させることによって、印字感度や印字の転写性や印字のキレや印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性においてより良好な結果が得られる事を見出した。またインク層がニトロセルロースをインク層全体の10質量%以上70質量%以下の範囲で含有することによって、印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性においてより良好な結果が得られる事を見出した。
さらに発明者が検討を行った結果、インク層が含有するトルエンスルホンアミド誘導体として少なくともN−エチル−o−トルエンスルホンアミドとN−エチル−p−トルエンスルホンアミドとを使用する事によって、印字の転写性がより向上し、さらに高温多湿環境下における保存時の可塑剤のブリード現象をより抑制させる事が可能である事を見出した。
本発明の熱溶融転写型インクリボンを用いれば、各種衣料用表示ラベルに対して耐洗濯性や耐ドライクリーニング性に優れた高品質な印字が可能であり、さらに印字の際に地汚れの発生が少なく、高温多湿環境下で保存を行った際のブロッキング現象や可塑剤のブリード現象を抑制する事が可能となる。
本発明の熱溶融転写型インクリボンの実施形態の一例を示す模式的断面図。 本発明の熱溶融転写型インクリボンの実施形態の一例を示す模式的断面図。
本発明における熱溶融転写型インクリボン5は、基本的に図1に示すように、耐熱性を有したフィルム基材1の一方の面に転写制御層2、インク層3、接着層4を順次積層した構造をしている。また図2に示すように、耐熱性や滑性に優れた原料などからなる耐熱滑性層6を他方の面に必要に応じて設けても構わない。
<<熱溶融転写型インクリボンの各構成体>>
次に本発明における熱溶融転写型インクリボンの各構成体についての詳細を下記に示す。
<フィルム基材>
本発明に使用されるフィルム基材としては、ある程度の耐熱性と強度を有するものであれば特に限定される事はなく、従来公知の材料を適宜選択して用いる事が出来る。このような耐熱性を有したフィルム基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等が挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用する事が最も好ましい。フィルム基材の厚みは特に限定はされないが、強度・耐熱性・熱伝導性が適切になるように材料に応じて適宜考慮し、2μm以上12μm以下であれば良いが、熱伝導性が良好であるという理由から3μm以上6μm以下がより好ましい。
<耐熱性滑性層>
本発明の熱溶融転写型インクリボンは、印字の際のサーマルヘッドの熱によって、フィルム基材がサーマルヘッドに融着して破断したり、フィルム基材にシワが発生したり、フィルム基材とサーマルヘッド間の滑り性が悪化した結果印字に不具合が生じるスティッキング現象が発生する事を防止する為に、フィルム基材の一方の面に各種シリコ−ン変性樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂などの公知の各種耐熱性樹脂を主原料とし、その他副原料として各種接着性樹脂や各種架橋剤や各種滑剤や各種有機無機フィラーを適宜混合したものなどからなる耐熱滑性層を必要に応じて設けても構わない。
耐熱滑性層の乾燥後の付着量は特に限定されず、使用状況やプリンタの種類などに応じて0.01g/m2以上0.50g/m以下の範囲から適宜選択して決定すれば良い。耐熱滑性層の乾燥後の付着量が0.01g/m未満になると期待される耐熱性の効果が得られなくなり、逆に耐熱滑性層の乾燥後の付着量が0.5g/m以上になると印字の際の感度が悪化したり、箔落ちなどの問題が発生したりする傾向にある。
<転写制御層>
本発明では、フィルム基材とインク層の間に、フィルム基材とインク層との間の剥離力及び印字のキレ等を制御する為の転写制御層を設ける。転写制御層を構成する原料は、主に各種公知の熱溶融物質及び熱可塑性樹脂等から構成されればよく特に限定はされない。
転写制御層に使用される各種公知の熱溶融物質としては、各種公知のワックスを使用するのが好ましい。ワックスは、加熱時には溶融して粘度が非常に低くなり、インク層のフィルム基材からの離型性を高める効果がある。ワックスの例としては、カルナウバワックス、モンタン酸ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュスワックス、ポリエチレンワックス、ポリオレフィン系ワックス、アミド変性ワックス、フッ素変性ワックス等が挙げられるがこれらに限定されることはない。前記ワックスは単独もしくは複数を混合して使用しても良い。
転写制御層に使用される各種公知の熱可塑性樹脂としては、柔軟で可撓性があり、フィルム基材とインク層の間に適度な接着性を持たせてインク層等の箔落ちを防止する効果や、印字の面状剥離現象などを防いで印字を鮮明にする効果が得られるような樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の例としては、EVA樹脂、EEA樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、変性ポリオレフィン樹脂等が挙げられるがこれに限定されることはない。前記熱可塑性樹脂は単独もしくは複数を混合して使用しても良い。
転写制御層には、その他に必要性に応じ添加剤として、各種公知の界面活性剤やフィラーや滑剤を適宜少量含有させて、塗料粘度や箔切れ性や溶融粘度の改良及び調整を行っても良い。
転写制御層が含有する前記ワックスと前記熱可塑性樹脂との含有比率は特に限定はされないが、質量比で99:1〜70:30の範囲である事が好ましく、97:3〜80:20の範囲である事がより好ましい。転写制御層中の熱可塑性樹脂の含有比率が前記範囲の下限を下回るとフィルム基材とインク層の間の密着性が乏しくなりインク層が箔落ちしたり、印字のキレが悪くなったりする傾向があり、反対に転写制御層中の熱可塑性樹脂の含有比率が前記範囲の上限を超えると、フィルム基材とインク層の間の密着性が高くなりすぎたり、転写制御層の溶融粘度が高くなりすぎる事が原因でインク層の転写が上手く行われず印字感度や印字の転写性が悪化する傾向がある。
転写制御層の融点(DSC法)もしくは軟化点(環球法)は特に限定されないが、60℃以上150℃以下の範囲が好ましく、80℃以上130℃以下の範囲である事がより好ましい。転写制御層の融点(DSC法)または軟化点(環球法)が60℃未満になると、印字画像の耐熱性や耐擦過性や印字のキレが悪化する傾向があり、逆に転写制御層の融点(DSC法)及び軟化点(環球法)が150℃以上になると、印字の際に転写制御層が溶融する為に必要な熱量が多く必要となり、印字感度や印字の転写性が悪化する傾向がある。
転写制御層の乾燥後の付着量は、特に限定はされないが、0.1g/m以上3.0g/mの範囲が好ましく、0.3g/m以上1.5g/m以下の範囲から選択する事がより好ましい。転写制御層の乾燥後の付着量が0.1g/m未満だと充分なインク層との界面で剥離が得られず転写不良が発生し易くなる傾向がある。逆に転写制御層の乾燥後の付着量が3.0g/mを超えると、印字感度が悪化したり、印字における転写制御層の成分が多くなることにより、印字画像の耐擦過性や耐熱性が悪化したりする。
<インク層>
本発明では、転写制御層の上に、カーボンブラックや各種公知の有機・無機顔料や染料などの着色剤と、ニトロセルロースと、トルエンスルホンアミド誘導体とを少なくとも含有するインク層を積層して設ける事を特徴としている。
本発明のインク層の着色剤とバインダー成分の構成比率は特に限定されないが、インク層中の着色剤の含有率はインク層全体の10質量%以上70質量%以下の範囲が好ましく、インク層全体の20質量%以上40質量%以下の範囲がより好ましい。インク層中の着色剤の含有率は、例えばカーボンブラックなどは比較的隠蔽力が強いのでその含有率を少なくても構わないが、カラー顔料などにおいては隠蔽力が弱いものもありその場合にはどうしてもインク層中の着色剤の含有率を多くする必要がある。インク層中の着色剤の含有率が多くなるとその分インク層中のバインダー成分の含有率が減るので、その結果として印字感度や印字の転写性が悪化するだけでなく、印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も悪化する傾向がある。
本発明のインク層はバインダー成分の一つとしてニトロセロースを使用する。ニトロセルロースをインク層のバインダー成分に使用する事によって、印字の耐熱性や耐擦過性や耐薬品性が向上する為、結果的に印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が大きく向上する傾向がある。本発明で使用するニトロセルロースの性状は特に限定はされないが、窒素量が11.5%以上12.2%以下で、JIS K−6703に基づいて測定した粘度(固形分25%)が3.0秒以下のものを使用する事が印字感度や印字のキレの面でより好ましい。
インク層中のニトロセルロースの含有率は、インク層全体の10質量%以上70質量%以下である事が好ましく、20質量%以上60質量%以下である事がより好ましい。インク層中のニトロセルロースの含有率が前記範囲内であれば印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性は良好である。インク層中のニトロセルロースの含有率が前記範囲の下限を下回ると印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が悪化する傾向があり、逆にインク層中のニトロセルロースの含有率が前記範囲の上限を超えると印字感度や印字の転写性や印字のキレが極端に悪化し、その影響で印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も悪化する傾向がある。
本発明のインク層はバインダー成分の一つとしてトルエンスルホンアミド誘導体を使用する。トルエンスルホンアミド誘導体は、所謂可塑剤の機能を有し、上記ニトロセルロース等の樹脂成分の各種性状を改質する効果を有している。本発明のインク層に使用するのに好ましいトルエンスルホンアミド誘導体としては、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−o−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、N−n−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミドなどから少なくとも一つ以上を選択して使用する事が好ましく、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−o−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミドなどから少なくとも一つ以上を選択して使用する事がより好ましく、N−エチル−o−トルエンスルホンアミドとN−エチル−p−トルエンスルホンアミドとの両方を少なくとも使用する事が最も好ましい。発明者が検討を重ねた結果、インク層にトルエンスルホンアミド誘導体として、N−エチル−o−トルエンスルホンアミドとN−エチル−p−トルエンスルホンアミドとの両方を使用すると、熱溶融転写型インクリボンの印字の転写性が向上し、さらに高温多湿環境下における可塑剤のブリード現象を改善させることが可能であるが分かった。なおインク層に使用するトルエンスルホンアミド誘導体におけるN−エチル−o−トルエンスルホンアミドとN−エチル−p−トルエンスルホンアミドとの混合物の好ましい含有率は、トルエンスルホンアミド誘導体全体の50質量%以上100質量%以下の範囲が好ましく、70質量%以上100質量%以下の範囲がより好ましい。またN−エチル−o−トルエンスルホンアミドとN−エチル−p−トルエンスルホンアミドとの混合物中のそれぞれの混合比は特に限定はされないが、質量比でそれぞれ80:20〜20:80の範囲が好ましく、70:30〜30:70の範囲である事がより好ましい。
一方で、トルエンスルホンアミド誘導体をインク層に多量に添加した熱溶融転写型インクリボンを高温多湿環境下において保存すると、接着層やインク層がフィルム基材の背面側(耐熱滑性層側)に移行してしまう所謂ブロッキング現象が発生し易くなったり、熱溶融転写型インクリボンの表面にブリードしたトルエンスルホンアミド誘導体がフィルム基材の背面側(耐熱滑性層側)に移行し易くなったりする傾向があり、その結果として印字の際にガイドロールやサーマルヘッドがインク成分やトルエンスルホンアミド誘導体等によって汚染されて印字不良が発生するといった不具合が発生する事が分かっている。
インク層中のトルエンスルホンアミド誘導体の含有率は、インク層全体の5質量%以上40質量%以下の範囲である事が好ましく、10質量%以上30質量%以下である事がより好ましい。インク層中のトルエンスルホンアミド誘導体の含有率が前記範囲内であれば、印字感度や印字の転写性や印字のキレが良好である。インク層中のトルエンスルホンアミド誘導体の含有率が前記範囲の下限を下回ると印字感度や印字の転写性や印字のキレが悪化し、その影響で印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も悪化する傾向があり、逆にインク層中のトルエンスルホンアミド誘導体の含有率が前記範囲の上限を超えると高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象が発生し易くなり、印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も悪化していく傾向がある。
インク層中のニトロセルロースとトルエンスルホンアミド誘導体との含有量の質量比は、インク層がニトロセルロース100質量部に対してトルエンスルホンアミド誘導体を20質量部以上100質量部以下の範囲で含有する事が好ましく、インク層がニトロセルロース100質量部に対してトルエンスルホンアミド誘導体を25質量部以上66質量部以下の範囲で含有する事がより好ましい。インク層中のニトロセルロースとトルエンスルホンアミド誘導体との含有量の質量比が前記範囲内であれば、印字感度や印字の転写性や印字のキレや印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が良好である。インク層中のトルエンスルホンアミド誘導体の質量比が前記範囲の下限を下回ると印字感度や印字の転写性や印字のキレが悪化し、その影響で印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も悪化していく傾向があり、逆にインク層中のトルエンスルホンアミド誘導体の質量比が前記範囲の上限を超えると印字感度や印字の転写性や印字のキレは悪化しないものの、高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象が発生し易くなり、印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も悪化する傾向がある。
本発明の熱溶融転写型インクリボンのインク層のバインダー成分としては上述したニトロセルロースとトルエンスルホンアミド誘導体とは別に、さらに熱可塑性樹脂を別途含有させてもよい。なおこれ以降のインク層が含有する「熱可塑性樹脂」とは、本発明においてインク層中に必須の成分であるニトロセルロース以外の熱可塑性樹脂の事を指す。インク層のバインダー成分として含有させる熱可塑性樹脂は特に限定はされないが、ポリエステル系樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン・(メタ)アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂などを使用する事が可能であり、さらに熱溶融時に接着性を示す熱可塑性樹脂を使用する事が好ましく、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、スチレン・(メタ)アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂を使用する事がより好ましく、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂を使用する事が最も好ましい。なおインク層のバインダー成分として含有させる上述した各種熱可塑性樹脂は、それぞれ一種を単独で使用しても良いし、一種以上の熱可塑性樹脂を混合して使用しても良い。インク層に上述したような熱可塑性樹脂をさらに添加する事により、印字の衣料用表示ラベルに対する転写性や密着性をより向上させたり、インク層の上層に設ける接着層との密着性を向上させたりする事が可能となり、その結果として印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性をより向上させる事が可能となる。特に接着層とインク層との密着性を向上させるという観点から、インク層が、後述する接着層が含有している熱可塑性樹脂と同じ熱可塑性樹脂を、少なくとも一つ以上さらに含有している事が、前述した効果をより高める事が可能である為により好ましい。
インク層が含有する熱可塑性樹脂の各種熱特性は特に限定はされないが、融点又は軟化点を有する熱可塑性樹脂においては融点又は軟化点が70℃以上180℃以下の範囲である事が好ましく、80℃以上170℃以下である事が好ましい。またガラス転移点(DSC法)を有する熱可塑性樹脂においてはガラス転移点(Tg)が50℃以上110℃以下の範囲である事が好ましく、70℃以上100℃以下の範囲である事がより好ましい。インク層が含有する熱可塑性樹脂の各種熱特性値が前記範囲内であれば、印字感度や印字の転写性や印字のキレや印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性は良好である。インク層が含有する熱可塑性樹脂の各種熱特性値が前記範囲の下限を下回ると、印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が悪化する傾向があり、逆に各種熱特性値が前記範囲の上限を超えると、印字の際のエネルギーが過剰に必要となったりインク層の箔キレ性が悪くなったりする事が原因で、印字感度や印字の転写性や印字のキレが悪化し、その結果として印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も悪化する傾向がある。
インク層が含有する熱可塑性樹脂の数平均分子量(Mn)は特に限定はされないが、8000以上50000以下の範囲が好ましく、15000以上40000以下の範囲がより好ましい。インク層が含有する熱可塑性樹脂の数平均分子量が前記範囲内であれば、印字感度や印字の転写性や印字のキレは良好であり、また印字の耐洗濯性及びクリーニング性が悪化する事もない。インク層が含有する熱可塑性樹脂の数平均分子量が前記範囲の下限を下回ると熱可塑性樹脂自体の耐薬品性が乏しくなるために印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が悪化する傾向があり、逆に熱可塑性樹脂の数平均分子量が前記範囲の上限を超えると、インク層の溶融粘度が高くなる事などが原因で、印字感度や印字の転写性や印字のキレが悪化する傾向がある。
インク層中の前記熱可塑樹脂の含有率は特に限定はされないが、インク層全体の0.5質量%以上20.0質量%以下の範囲である事が好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下の範囲である事がより好ましい。インク層中の熱可塑性樹脂の含有率が前記範囲であれば、表面が平滑でない衣料用表示ラベルに対しての印字の転写性や密着性がより向上し、それに伴い印字の耐洗濯性及びクリーニング性も向上する。インク層中の熱可塑性樹脂の含有率が前記範囲の下限を下回ると、表面が平滑でない衣料用表示ラベルへの印字の転写性や密着性の向上効果が得られない、逆にインク層中の熱可塑性樹脂の含有率が前記範囲の上限を超えると、ニトロセルロースによる印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性の向上効果を打ち消してしまい、結果的に印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が低下していく傾向がある。
本発明のインク層には、添加剤として各種公知の界面活性剤や滑剤や無機フィラー及び有機フィラーやワックス類を適宜必要に応じてインク層に少量添加して、着色剤の分散性、インクの箔切れ性、インク層の耐ブロッキング性、インク層の溶融粘度等の改良及び調整を行っても良い。
本発明のインク層の乾燥後の付着量は特に限定はされず、0.5g/m以上3.0g/m以下の範囲であることが好ましく、0.7g/m以上2.0g/m以下の範囲である事がより好ましい。インク層の乾燥後の付着量が前記範囲の下限値を下回ると充分な印字濃度及び印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が得られない傾向があり、逆に付着量が前記範囲の上限値を超えると印字感度と印字のキレが悪化する傾向がある。
<接着層>
本発明では、インク層の上に、熱可塑性樹脂とポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子とを少なくとも含有する接着層を積層して設ける事を特徴としている。
本発明の熱溶融転写型インクリボンの構成において、例えばインク層の上層に接着層を設けない状態で衣料用表示ラベルに対して印字を行うと、ある特定の材質の衣料用表示ラベルや受像層を設けた様な衣料用表示ラベルに対して優れた印字品質と印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性を示すことがあるが、特に比較的表面が平滑でない衣料用表示ラベルに対して印字を行うと印字が転写し難く、その結果として印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も不充分となる傾向があった。そこで印字の転写性を向上させる為にインク層に添加するトルエンスルホンアミド誘導体のような可塑剤の量を増やしていくと、印字の衣料用表示ラベルに対する転写性はやや改善するものの不充分であり、さらに可塑剤の増量によりインク層自体の耐薬品性や耐熱性が低下する事が原因で印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が低下してしまったり、可塑剤の増量による高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象や可塑剤のブリード現象が悪化したり、印字の際の地汚れが悪化したりする傾向があった。
そこで本発明者が上記問題を解決するために、インク層の上層に接着層をさらに設ける事によって、衣料用表示ラベルに対する印字の転写性を改善しつつ、印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性の改善や、高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象や印字の際の地汚れを抑制する事を試みたが、単純にインク層の上層にワックスや熱可塑性樹脂といった熱溶融性物質を主成分とする一般的な接着層を設けても、印字の転写性は改善するものの、印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性に関しては接着層の配合等によっては低下する事もあり、たとえ印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が改善されたとしても、今度は高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象や印字の際の地汚れが抑制されないといったように根本的な問題解決が出来なかった。
本発明者はこれら上記の問題を解決するために検討を重ねた結果、フィルム基材の一方の面に転写制御層、着色剤とニトロセルロースとトルエンスルホンアミド誘導体を含有したインク層、熱可塑性樹脂とポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子とを少なくとも含有する接着層を順次積層して設ける事によって、各種衣料用表示ラベルに対して印字感度や印字の転写性や印字のキレや印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が良好で、印字の際に地汚れが発生し難く、さらに高温多湿環境下での保存時のブロッキング現象や可塑剤のブリード現象が発生しにくい環境保存性能に優れた熱溶融転写型インクリボンが得られる事を見出した。
本発明の接着層はポリメチルシルセスキオキサン樹脂からなる微粒子を少なくとも含有する。ポリメチルシルセスキオキサン樹脂とは、構造式(CHSiO1.5)nで表される三次元網目状に架橋した構造を持つオルガノポリシロキサン樹脂の一種であり、耐熱性及び耐薬品性及び滑性に優れている。本発明者が接着層の原料を検討した結果、接着層にポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子を使用すると、各種衣料用表示ラベルに対する印字の転写性をほとんど阻害しないので印字感度や印字の転写性がほとんど悪化せず、印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性に関しても悪い影響を及ぼさず、さらに印字の際の地汚れや高温多湿環境下での保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象に関してはその抑制効果が大きい事を見出した。
接着層に使用するポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の平均粒子径は0.5μm以上10.0μm以下の範囲であることが好ましく、1.0μm以上8.0μm以下の範囲であることがより好ましい。ポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の平均粒子径が前記範囲内であれば、印字感度や印字の転写性や印字のキレや印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が低下せず、印字の際の地汚れが発生し難く、高温多湿環境下での保存時にブロッキング現象や可塑剤のブリード現象の抑制にも効果がある。なおポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の平均粒子径が接着層の付着量と構成原料の比重から計算した計算上の接着層の厚み以上である時において、つまりはポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の一部が接着層の表面から突出した状態になった時において、前述したポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子を添加した時の効果が最も明確に発現する。ポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の平均粒子径が前記範囲の下限を下回ると、印字の際の地汚れや高温多湿環境下での保存時におけるブロッキング現象やブリード現象の抑制効果が悪化する傾向にあり、逆に前記範囲の上限を超えると印字感度や印字の転写性や印字のキレといった印字品質が悪化し、その結果として印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も悪化する傾向がある。また本発明に使用するポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の形状は、特に限定されず、球形でも不定形でも構わないが、平均粒子径が影響する性能の安定性の面から球形である事がより好ましい。
接着層中のポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の含有率は特に限定はされないが、接着層全体の1.0質量%以上80.0質量%以下の範囲が好ましく、20.0質量%以上60.0質量%以下の範囲がより好ましい。接着層中のポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の接着層中の含有率が前記範囲内であれば、印字品質や印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が低下せず、印字の際の地汚れが発生し難く、高温多湿環境下での保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象の抑制に効果がある。接着層中のポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の含有量とその効果については、ポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の平均粒子径や接着層の厚みや他の構成原料とのバランスによって変動する為に、必ずしも一意的な傾向を示すわけではないが、接着層中のポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の含有率が少なくなると、印字の際の地汚れや高温多湿環境下での保存時のブロッキング現象やブリード現象の抑制効果が低下する傾向にあり、逆に含有率が多くなると印字感度や印字の転写性や印字のキレといった印字品質が徐々に低下し、その結果として印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も低下する傾向がある。
本発明者が接着層に添加するポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の最適な量を異なる観点でさらに検討した所、ポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の接着層中の含有量が0.005g/m以上0.100g/m以下の範囲である事が好ましく、0.01g/m以上0.05g/m以下の範囲であることがより好ましい事を見出した。ポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の単位面積当たりの接着層中の含有量が前記範囲内であれば、印字感度や印字の転写性や印字のキレといった印字品質や印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が低下せず、さらには印字の際の地汚れや高温多湿環境下での保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象の抑制にも効果がある。ポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の単位面積当たりの接着層中の含有量が前記範囲の下限を下回ると、印字の際の地汚れや高温多湿環境下での保存時のブロッキング現象及びブリード現象の抑制効果が悪化する傾向にあり、逆に前記範囲の上限を超えると印字感度や印字の転写性や印字のキレといった印字品質が悪化し、その結果として印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も悪化する傾向がある。
本発明の接着層はポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の他に少なくとも熱可塑性樹脂を含有している事を特徴としている。接着層に使用される熱可塑性樹脂は主に衣料用表示ラベル等の被印字媒体に対する印字の転写性及び密着性向上の為に添加され、その結果として印字品質や印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性を向上させる効果がある。
接着層に使用される熱可塑性樹脂としては特に限定はされず、例えばポリエステル系樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、スチレン系樹脂、スチレン・(メタ)アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂などを使用する事が可能であり、さらに熱溶融時に接着性を示す熱可塑性樹脂を使用する事が好ましく、ポリエステル系樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、スチレン・(メタ)アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂を使用する事がより好ましく、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂を使用する事が最も好ましい。なお上述した接着層に使用される各種熱可塑性樹脂は、それぞれ一種単独で使用しても良いし、一種以上の熱可塑性樹脂を混合して使用しても良い。特に接着層に使用する熱可塑性樹脂として、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂又はポリウレタン樹脂の少なくとも一方を使用した場合には、衣料用表示ラベル等への印字の転写性や印字のキレや密着性が特に優れているだけでなく、耐薬品性にも優れている為に、特に印字の耐ドライクリーニング性がより向上する傾向がある。
インク層の配合設計において印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性の性能を向上させようとするとインク層中に含まれるニトロセルロースの含有率をある程度多くしなければならないが、そのインク層の上層に接着層を設けない場合には、印字感度や印字の転写性や印字と衣料用表示ラベルとの間の密着性が大幅に悪化してしまい、その結果として印字品質や印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も大幅に悪化してしまう。このようなインク層の配合設計で損なわれた印字感度や印字の転写性や印字と衣料用表示ラベルとの間の密着性を補うためにインク層の上層に接着層を設け、さらに接着層中に熱溶融時に接着性を示すような熱可塑性樹脂を添加する事によって印字感度や印字の転写性や印字と衣料用表示ラベルとの間の密着性を向上させ、その結果として印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性を向上させる事が可能となる。また前述したようにインク層と接着層の密着性を向上させるという観点から、インク層が、接着層が含有する熱可塑性樹脂と同じ熱可塑性樹脂を少なくとも一つ以上さらに含有している事がより好ましく、その事によって前述した効果をより高める事が可能となり、特に耐洗濯性がより向上する傾向がある。
接着層に含有させる熱可塑性樹脂の各種熱特性は特に限定はされないが、融点又は軟化点を有する熱可塑性樹脂においては融点又は軟化点が70℃以上180℃以下の範囲である事が好ましく、80℃以上170℃以下である事が好ましい。またガラス転移点(DSC法)を有する熱可塑性樹脂においてはガラス転移点(Tg)が50℃以上110℃以下の範囲である事が好ましく、70℃以上100℃以下の範囲である事がより好ましい。接着層に含有させる熱可塑性樹脂の各種熱特性値が前記範囲内であれば、印字感度や印字の転写性や衣料用表示ラベルに対する印字の密着性などが良好となり、その結果として印字品質や印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も良好となる。接着層に含有させる熱可塑性樹脂のガラス転移温度が前記範囲の下限を下回ると、高温多湿環境下の保存の際のブロッキング現象や印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が悪化する傾向があり、逆に前記範囲の上限を超えると、印字の際のエネルギーが過剰に必要となったり、接着層塗膜の箔キレ性が悪化したりする事が原因で、印字感度や印字の転写性や印字のキレが悪化し、その結果として印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も悪化する傾向がある。
接着層に含有させる熱可塑性樹脂の数平均分子量(Mn)は、8000以上50000以下の範囲が好ましく、15000以上40000以下の範囲がより好ましい。熱可塑性樹脂の数平均分子量が前記範囲内であれば、印字感度や印字の転写性や印字のキレや印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が良好である。熱可塑性樹脂の数平均分子量が前記範囲の下限を下回ると熱可塑性樹脂自体の耐薬品性が乏しくなるために印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が悪化する傾向があり、逆に熱可塑性樹脂の数平均分子量が前記範囲の上限を超えると、接着層の箔キレ性が悪化したり接着層の溶融粘度が高くなったりする傾向があり、その結果として印字感度や印字の転写性や印字のキレが悪化し、その結果として印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性も悪化する傾向がある。
接着層中の熱可塑性樹脂の含有率は特に限定はされないが、接着層全体の20質量%以上99質量%以下の範囲であることが好ましく、30質量%以上90質量%以下の範囲であることがより好ましく、40質量%以上80質量%以下であることが最も好ましい。接着層中の熱可塑性樹脂の含有率が前記範囲内であれば、印字の転写性や衣料用表示ラベルに対する印字の密着性が向上し、結果的に印字品質や印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性が良好となる。
本発明の接着層には、その他に添加剤として各種公知の界面活性剤や滑剤や無機フィラー及び有機フィラーやワックス類を上述した接着層の有益な性能を損なわない程度において適宜必要に応じて接着層に添加しても良い。
本発明の接着層の乾燥後の付着量は特に限定されないが、0.01g/m以上1.0g/m以下の範囲であることが好ましく、0.03g/m以上0.70g/m以下の範囲であることがより好ましい。接着層の乾燥後の付着量が前記範囲の下限値を下回ると印字の転写性及び衣料用表示ラベルに対する印字の密着性の向上や、印字の際の地汚れの抑制や、高温多湿環境下での保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象の抑制効果等が得られなくなる傾向にあり、前記範囲の上限値を越えると、印字感度や印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性といった性能が悪化する傾向がある。
次に実施例を挙げて本発明について具体的に説明する。
<<熱溶融転写型インクリボンの各層の形成方法について>>
以下に本発明の実施例及び比較例で使用する各熱溶融転写型インクリボンの各層の形成方法について説明する。下記に示す各層に使用する各種塗料の作成方法や塗布方法は一例でありこれに限定されず、各種公知の方法が使用可能である。なお下記に示す各層に使用する各種塗料配合及び表1〜表3に記載の塗料配合の数値は特に記載のない限り質量比率に基づく数値である。
<耐熱滑性層の形成方法>
下記に示す耐熱滑性層用塗料配合に基づいて、各原料を計量後容器に投入したものを撹拌機で均一になるようによく撹拌混合して耐熱滑性層用塗料を作成し、グラビア塗装機を用いて、厚み4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の片面に、乾燥後の付着量が0.2g/mとなるように作製した耐熱滑性層用塗料を塗布及び乾燥し、耐熱滑性層を設けた。本発明の以後の実施例及び比較例には全てこのPETフィルムと耐熱滑性層を用いる。
(耐熱滑性層用塗料配合)
原料成分 質量%
・シリコン変性ポリエステルポリウレタン系樹脂の
メチルエチルケトン:トルエン=1:1混合溶剤溶解液(固形分15質量%)25.0
・メチルエチルケトン 60.0
・トルエン 15.0
<転写制御層の形成方法>
下記に示す転写制御層用塗料配合に基づいて、各原料を計量後容器に投入したものを撹拌機で均一になるようによく撹拌混合して転写制御層用塗料を作成し、グラビア塗装機を用いて、上記フィルム基材の耐熱活性層を設けた面の反対側の面に、乾燥後の付着量が0.8g/mとなるように作製した転写制御層用塗料を塗布及び乾燥して転写制御層を設けた。本発明の以後の実施例及び比較例には全てこの転写制御層を用いる。
(転写制御層用塗料配合)
原料成分 質量%
・ポリエチレンワックス(融点105℃)
のトルエン溶剤分散物(固形分15質量%) 63.3
・EVA樹脂(VA28%、融点70℃)
のトルエン溶解液(固形分10質量%) 5.0
・トルエン 31.7
<インク層の形成方法>
下記に示すインク層用塗料配合に基づいて、各原料を計量後容器に投入したものを撹拌機で均一になるようによく撹拌混合した後に、ビーズミル等によってカーボンを分散してインク層用塗料を作成し、グラビア塗装機を用いて上記転写制御層の上層に、乾燥後の付着量が1.0g/mとなるように作製したインク層用塗料を塗布及び乾燥してインク層を設けた。本発明のその他の実施例及び比較例のインク層は、塗料配合以外は実施例1に使用するインク層と同じ方法・条件で形成され、その塗料配合等の詳細に関しては下記表1〜表3に示す。
(インク層用塗料配合(実施例1に使用))
原料成分 質量%
・工業用ニトロセルロース(固形分70%、湿潤剤としてイソプロパノール
(IPA)を30%含有(ニトロセルロース:IPA=70:30(質量比))、
窒素量11.5〜12.2質量%) 10.7
・N−エチル−o−トルエンスルホンアミドと
N−エチル−p−トルエンスルホンアミドとの混合物
(混合比は質量比で7:3) 3.0
・カーボン 4.5
・トルエン 27.0
・メチルエチルケトン(MEK) 54.8
<接着層の形成方法>
下記に示す接着層用塗料配合に基づいて、各原料を計量後容器に投入したものを撹拌機で均一になるようによく撹拌混合して接着層用塗料を作成し、グラビア塗装機を用いて、上記インク層の上層に、乾燥後の付着量が0.10g/mとなるように作製した接着層用塗料を塗布及び乾燥して接着層を設けた。本発明のその他の実施例及び比較例の接着層は、塗料配合以外は実施例1に使用する接着層と同じ方法・条件で形成され、その塗料配合等の詳細に関しては下記表1〜表3に示す。
(接着層用塗料配合(実施例1に使用))
原料成分 質量%
・ポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子
(平均粒子径:2.0μm) 3.5
・塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂
(Tg:77℃、Mn:36000) 6.5
・トルエン 35.0
・メチルエチルケトン(MEK) 55.0
<<各種評価方法について>>
実施例及び比較例で作成した各種熱溶融転写型インクリボンを用いた各種評価方法について下記に示す。
<印字試験条件>
下記表1〜表3に詳細を記載した実施例及び比較例の各熱溶融転写型インクリボンを用いて下記の条件により印字試験を行った。非印字媒体である衣料用表示ラベルとしては、表面が平滑でポリアミド樹脂を主成分とする受像層が設けられている為に熱溶融転写型インクリボンを用いた印字の転写が比較的し易い受像層を有したナイロン糸を使った平織布(受像層有Ny平織り布)と、表面がやや平滑ではなく受像層も設けられていない為に熱溶融転写型インクリボンを用いた印字の転写がし難いポリエステル糸を使ったサテン生地(PESサテン生地)とを用いた。
プリンタ: CL4NX(株式会社サトー製)
印字解像度: 12dot/mm
印字速度: 4inch/sec
印字エネルギー: 8/10
被印字媒体1: ポリアミド樹脂の受像層を有するナイロン平織布
被印字媒体2: ポリエステルサテン生地(受像層等無し)
<印字感度の評価>
上述した印字試験の条件で印字を各被印字媒体に対して10回行い、その10枚の印字画像を目視で確認し下記に示す条件で評価した。
A・・・印字カスレは全く発生しない。
B・・・印字カスレが一部に僅かながら発生する。
C・・・弱い印字カスレが全面に発生する。
D・・・酷い印字カスレが全面に発生する。
<印字の転写性の評価>
上述した印字試験の条件で印字を各被印字媒体に対して10回行い、その10枚の印字画像を目視で確認し下記に示す条件で評価した。
A・・・印字が全面にしっかり転写しており、ボイドや印字ムラが全く発生しない。
B・・・印字の一部に僅かにボイドや印字ムラが見られる。
C・・・印字の全面にボイドや印字ムラが明確に見られる。
D・・・印字の全面に酷いボイドや印字ムラが見られる、又は印字がほとんど転写していない。
<印字のキレの評価>
上述した印字試験の条件で印字を各被印字媒体に対して10回行い、その10枚の印字画像を目視で確認し下記に示す条件で評価した。
A・・・印字の面状剥離現象又は印字つぶれが全く見られない。
B・・・印字の面状剥離現象又は印字つぶれが極一部に僅かながら見られる。
C・・・印字の面状剥離現象又は印字つぶれが部分的に明確に見られる。
D・・・印字の面状剥離現象又は印字つぶれがほぼ全面で見られる。
ここで面状剥離現象とは、サーマルヘッドから熱を加えられた部分のインク層等の塗膜だけでなく、熱が加えられていない塗膜まで被印字媒体に転写してしまい印字の箔キレが悪くなる現象をいう。また印字つぶれとは、転写した印字の輪郭が本来の印字データよりも太くなってしまったり、印字の輪郭が滲んでしまったりして印字が精細でなくなる現象をいう。
<印字の際の地汚れの評価>
上述した印字試験の条件で印字を各被印字媒体に対して10回行い、その10枚の印字がなされていない部分を目視で確認し下記に示す条件で評価した。
A・・・非印字部の地汚れが全く見られない。
B・・・非印字部の僅かな地汚れが極一部に断続的に見られる。
C・・・非印字部の僅かな地汚れが全面に明確に見られる。
D・・・非印字部の酷い地汚れがほぼ全面で見られる。
<印字の耐洗濯性の評価>
上述した印字試験の条件で印字を行った各被印字媒体を試験片とし、洗濯に対する染色堅牢度試験(JIS L−0844(A−4法))を3回行い、試験後の試験片の変退色と各種添付白布の汚染の程度について評価を行い、その評価結果を元に下記に示す条件で評価した。
A・・・試験片の変退色や添付白布の汚染がほとんどない。
B・・・試験片の変退色や添付白布の汚染が少しあるものの、使用上の問題はない。
C・・・試験片の変退色や添付白布の汚染が明確に見られる。
D・・・試験片の変退色や添付白布の汚染が酷い。
<印字の耐ドライクリーニング性の評価>
上述した印字試験の条件で印字を行った各被印字媒体を試験片とし、ドライクリーニングに対する染色堅牢度試験(JIS L−0860(A−1法))を3回行い、試験後の試験片の変退色と各種添付白布の汚染の程度について評価を行い、その評価結果を元に下記に示す条件で評価した。
A・・・試験片の変退色や添付白布の汚染がほとんどない。
B・・・試験片の変退色や添付白布の汚染が少しあるものの、使用上の問題はない。
C・・・試験片の変退色や添付白布の汚染が明確に見られる。
D・・・試験片の変退色や添付白布の汚染が酷い。
<耐ブロッキング性(環境保存性能)の評価>
耐ブロッキング性の評価には、熱溶融転写型インクリボンの原反を所定のサイズにスリットした物を紙コアに巻付けてロール状に加工したリボンサンプル(巾60mm、長さ300m、インク面内巻)を作成し、そのリボンサンプルを気温40℃湿度80%RHの雰囲気中に48時間保存した後に気温23℃の室温環境下において24時間冷却し、そのリボンサンプルの巻きをほぐした時のブロッキングの状態を目視して以下に示す条件で評価した。
A・・・ブロッキングが全く見られない。
B・・・リボンサンプルの紙コア付近で僅かにブロッキングが見られる。
C・・・リボンサンプルの巻きの途中から紙コア付近までの間で部分的にブロッキングが見られる。
D・・・リボンサンプルの全面にブロッキングが見られる。
<耐可塑剤ブリード性(環境保存性能)の評価>
耐可塑剤ブロッキング性の評価には、熱溶融転写型インクリボンの原反を所定のサイズにスリットした物を紙コアに巻付けてロール状に加工したリボンサンプル(巾60mm、長さ300m、インク面内巻)を作成し、そのリボンサンプルを気温40℃湿度80%RHの雰囲気中に48時間保存した後に、さらに気温23℃の室温環境下において24時間静置冷却した後に、気温23℃の室温環境下において印字を行った際の印字及びプリンタの各所の状態を目視して以下に示す条件で評価した。
A・・・印字及びプリンタの各所に異常は見られなかった。
B・・・耐熱滑性層が接するプリンタのサーマルヘッドやガイドロールに可塑剤の付着が僅かに見られるものの、印字に異常は見られず、使用上の問題はない。
C・・・耐熱滑性層が接するプリンタのサーマルヘッドや耐熱滑性層が接するガイドロールに可塑剤の付着が明確に見られ、それらが原因とみられる印字不良が発生する。
D・・・耐熱滑性層が接するプリンタのサーマルヘッドや耐熱滑性層が接するガイドロールに可塑剤の付着が大量に発生する。
各実施例及び比較例のインク層及び接着層の各塗料配合の詳細と、各実施例及び比較例の熱溶融転写型インクリボンを作成し前述の各種性能評価を行った結果を下記表1〜表3に示す。
Figure 2021172089
Figure 2021172089
Figure 2021172089
※上記表3の比較例4において、印字が被印字媒体にほとんど転写しなかった為に、印字品質と印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性についての評価については実施しなかった。
表1〜表3の結果より、実施例1〜実施例17の熱溶融転写型インクリボンのように、フィルム基材の一方の面に転写制御層、インク層、接着層を順次積層し設け、インク層に着色剤とニトロセルロースとトルエンスルホンアミド誘導体を含有させ、さらにその上層にポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子と熱可塑性樹脂を含有させた接着層を設けたインクリボンを用いると、各種衣料用表示ラベルに対する印字感度や印字の転写性や印字のキレといった印字品質に優れ、形成された印字の耐洗濯性及び耐ドライクリーニング性にも優れていてさらに印字の際の地汚れや、高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象を抑制する事が可能となった。一方で比較例1のように、インク層の上層に接着層を設けないと、印字の際の地汚れが悪く、ポリエステルサテン生地に対する耐洗濯性や耐ドライクリーニング性が悪く、さらに高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象が酷くなった。比較例2のように接着層にポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の代わりにマット剤としてシリカを添加した場合には、比較例1と比較して印字の際の地汚れや高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象に関してはやや改善効果はあるものの、ブリード現象に関してはあまり改善せず、逆に印字の転写性などはより悪化した。また比較例3のように接着層にポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子を全く添加しないと、比較例1と比較して印字の転写性や印字の際の地汚れにやや改善効果があり、耐洗濯性や、耐ドライクリーニング性などに関しては大きい改善効果はあるものの、高温多湿環境下における保存時のブロッキング現象及び可塑剤のブリード現象に関してはあまり改善しなかった。また比較例4のようにインク層にトルエンスルホンアミド誘導体が全く含まれないと、印字が非印字媒体に対してほとんど転写しなくなった。
本発明における熱溶融転写型インクリボンは、洗濯表示ラベルや品質表示ラベルといった衣料用表示ラベルに使用可能なだけでなく、各種合成樹脂製ラベルや各種合成紙ラベルや各種耐水紙ラベルや各種織物基材ラベルに対して、特に耐水性や耐擦過性や耐洗濯性や耐ドライクリーニング性に優れた堅牢な印字を形成する必要がある用途に使用可能である。
1;フィルム基材
2;転写制御層
3;インク層
4;接着層
5;熱溶融転写型インクリボン
6;耐熱滑性層

Claims (8)

  1. フィルム基材の一方の面に転写制御層、インク層、接着層を順次積層し設けた熱溶融転写型インクリボンであって、インク層が着色剤とニトロセルロースとトルエンスルホンアミド誘導体を含有し、接着層が熱可塑性樹脂とポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子を含有する熱溶融転写型インクリボン。
  2. 接着層が含有する熱可塑性樹脂が、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂又はポリウレタン樹脂の少なくとも一方からなる請求項1に記載の熱溶融転写型インクリボン。
  3. ポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の平均粒子径が0.5μm以上10.0μm以下の範囲である請求項1又は請求項2に記載の熱溶融転写型インクリボン。
  4. 接着層中のポリメチルシルセスキオキサン樹脂微粒子の含有量が0.005g/m以上0.100g/m以下の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の熱溶融転写型インクリボン。
  5. インク層がニトロセルロース100質量部に対してトルエンスルホンアミド誘導体を20質量部以上100質量部以下の範囲で含有する請求項1〜4のいずれかに記載の熱溶融転写型インクリボン。
  6. インク層がニトロセルロースをインク層全体の10質量%以上70質量%以下の範囲で含有する請求項1〜5のいずれかに記載の熱溶融転写型インクリボン。
  7. インク層が、接着層が含有している熱可塑性樹脂と同じ熱可塑性樹脂を少なくとも1つ以上さらに含有する請求項1〜6のいずれかに記載の熱溶融転写型インクリボン。
  8. インク層が含有するトルエンスルホンアミド誘導体として、少なくともN−エチル−o−トルエンスルホンアミドとN−エチル−p−トルエンスルホンアミドとを使用する請求項1〜7のいずれかに記載の熱溶融転写型インクリボン。
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