JP2021168662A - 免疫グロブリンの産生増強 - Google Patents

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Abstract

【課題】操作された免疫グロブリン対立遺伝子を含む細胞、トランスジェニック哺乳類及び特にげっ歯類を含めたトランスジェニック動物を提供する。【解決手段】本発明は、免疫グロブリン重鎖遺伝子対立遺伝子排除が障害された遺伝子改変動物であって、細胞1つにつき2つ以上の異なる抗原受容体、及び二重特異性抗原受容体の少なくとも一方を共発現する能力を各々が有するBリンパ球の選択を可能にする。対立遺伝子の変異が対立遺伝子排除を障害するように設計され、二重特異性抗体の単離への利用が見込まれる。【選択図】なし

Description

本発明は、ヒト治療薬の開発用のトランスジェニック動物における二重特異性抗体の産生を含めた、免疫グロブリン分子の産生に関する。
以下の考察では、背景及び序論として特定の論文及び方法について記載する。本明細書に含まれるいかなる事項も、先行技術の「承認」と解釈されてはならない。本出願人は、適切な場合、本明細書に引用される論文及び方法が適用可能な法律の条項に基づく先行技術に該当しないことを実証する権利を明示的に留保する。
様々な病因のヒト疾患の治療に重要な治療用分子クラスとして、モノクローナル抗体が登場している。ヒト並びにほとんどの脊椎動物では、抗体は、2つの同一の重(H)鎖が各々同一の軽(L)鎖と対になった二量体として存在する。各H鎖及びL鎖のN末端は可変ドメイン(それぞれV及びV)からなり、可変ドメインが一緒になってそのユニークな抗原結合特異性を備えたH−L対を提供する。従って、各抗体は2つの同一の抗原結合部位からなり、単一特異性である。
抗体V及びVドメインをコードするエクソンは、生殖細胞系列DNAには存在しない。代わりに、各Vエクソンは、H鎖遺伝子座に存在するランダムに選択されたV、D、及びJ遺伝子の組換えによって生成される;同様に、個々のVエクソンは、軽鎖遺伝子座におけるランダムに選択されたV及びJ遺伝子の染色体再構成によって産生される。ヒトゲノムは、H鎖を発現することのできる対立遺伝子を2つ(各親から1つずつの対立遺伝子)、カッパ(κ)L鎖を発現することのできる対立遺伝子を2つ、及びラムダ(λ)L鎖を発現することのできる対立遺伝子を2つ含有する。H鎖遺伝子座には複数のV、D、及びJ遺伝子があり、並びに両方のL鎖遺伝子座にも複数のV及びJ遺伝子がある。各免疫グロブリン遺伝子座におけるJ遺伝子の下流に、抗体の定常領域をコードする1つ以上のエクソンが存在する。重鎖遺伝子座では、異なる抗体クラス(アイソタイプ)を発現するエクソンもまた存在する。ゲノムに複数の免疫グロブリン対立遺伝子が存在するにも関わらず、各B細胞は、対立遺伝子排除と呼ばれる過程により、1つの機能性重鎖及び1つの機能性軽鎖より多くを同時に発現することができない。
B細胞の発生においては、初めにH鎖遺伝子を含む2つの相同染色体のうちの一方でV(D)J遺伝子組換えが起こる。続いて生じたVエクソンがRNAレベルでスプライシングされ、H鎖の定常領域(C)をコードするエクソンとつながる。ここで、VDJ遺伝子再構成後に形成されたVエクソンがCエクソンとインフレームである場合に限り、完全長H鎖が発現することができるようになる。小胞体(ER)でH鎖ポリペプチドが翻訳されると、それらは膜結合型ホモ二量体を形成し、VpreB及びλ5タンパク質と対になってプレB細胞受容体(プレBCR)複合体を形成する。VpreB及びλ5は一緒になって代替L鎖として働き、正しく折り畳まれたプレBCRのみがERから細胞表面に輸送されることができる。十分な数のプレBCRが細胞表面に到達すると、未だ完全には解明されていない機構によってシグナル伝達カスケードが惹起され、リコンビナーゼ活性化遺伝子(RAG)の酵素が相同染色体上の第2の重鎖対立遺伝子のV、D、及びJ遺伝子の組換えを進めることができなくなる。対照的に、第1の重鎖対立遺伝子から非機能性の重鎖遺伝子が生成された場合、プレBCRが形成されず、ここで第2のH鎖対立遺伝子はVDJ組換えが可能となる。このように、H鎖対立遺伝子排除は細胞表面プレBCRからのシグナル伝達によって媒介される。これを最も良く例証するのがB細胞であり、ここではCμ重鎖膜貫通エクソンの欠損によって重鎖対立遺伝子排除が重度に障害される結果となる(非特許文献1)。
機能性H鎖の産生のためのVDJ遺伝子再構成が成功裏に完了すると、L鎖遺伝子座の1つにおいて同様に秩序立った形でVJ組換えが起こる。ヒト及びマウスの両方において、κL鎖遺伝子座はλL鎖遺伝子座よりも前に再構成する傾向がある。機能性のL鎖が産生されるまでこのVJ再構成が一度に1つのL鎖対立遺伝子で起こり、その後、ここでL鎖ポリペプチドがH鎖ホモ二量体と会合することができるようになる。プレBCRのアセンブリの場合と同様に、各々L鎖と対合するホモ二量体H鎖からなる機能性B細胞受容体(BCR)のみが、形質膜に輸送され、更なるB細胞発生に必要なシグナルを媒介することができる。細胞表面BCRシグナルはまた、RAG発現も事実上オフにし、それ以上のL鎖再構成を阻止する。このように、H鎖及びL鎖の両方の遺伝子座において、対立遺伝子排除の媒介には形質膜上での重鎖発現が必要である。
H鎖及びL鎖遺伝子座における対立遺伝子排除が理由で、各Bリンパ球は単一特異性抗体の産生能しか有しない。しかしながら、治療上、1つの抗体分子につき2つの異なる抗原結合部位を有する人工的に操作された抗体が、幾つもの疾患の治療として有効であることが分かっている。かかる二重特異性抗体の生成は、典型的には、目的とする2つの異なる抗原の各々に対する単一特異性抗体のスクリーニング、同定、及び単離に別々に時間をかけて労力を費やすことを伴う。続いて、二重特異性抗体の片方としての操作される各候補モノクローナル抗体のH鎖及びL鎖をコードする遺伝子がクローニングされ、H鎖間又はH鎖とL鎖との間のヘテロタイプの会合が可能となるように改変される。更なる評価用の二重特異性抗体を得るためには、それらの2つの元のモノクローナル抗体由来の改変H鎖及び/又はL鎖遺伝子を細胞株にトランスフェクトしなければならない。
キタムラ(Kitamura)及びラジェウスキ(Rajewsky)著、ネイチャー(Nature)、第356巻、p.154〜156、1992年
従って、特に薬剤開発の初期段階における、二重特異性抗体のより効率的な産生方法が、未だ満たされていない重要なニーズとなっている。本明細書によって提供される方法及び組成物は、この重要なニーズに応えるものである。
本概要は、以下で詳細な説明に更に記載する概念の幾つかを簡易な形で紹介するために提供される。本概要は、特許請求される主題の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものでなく、また特許請求される主題の範囲を限定するために用いられることを意図するものでもない。特許請求される主題の他の特徴、詳細、有用性、及び利点が、附属の図面に例示され且つ添付の特許請求の範囲に定義される態様を含め、以下の詳細な説明の記載から明らかであろう。
本明細書は、二重特異性抗体の単離方法について記載する。本明細書はまた、そのゲノムに改変された免疫グロブリン対立遺伝子又は他のトランス遺伝子を担持するトランスジェニック哺乳類を含めたトランスジェニック動物についても記載する。対立遺伝子の改変は、VDJ及び/又はVJ再構成後の対立遺伝子排除の正常な機構を妨げる。これらの遺伝子改変動物のB細胞は、2つ以上の抗原結合特異性を有する抗体を産生する能力を獲得する。対立遺伝子排除を抑制して免疫宿主からの二重特異性抗体の産生を促進することが、本発明の新規態様である。
一部の例示的実施形態において、本発明は、正常な対立遺伝子排除過程に作用するように免疫グロブリン対立遺伝子に改変を導入して、インフレームV(D)J再構成が続く他方の免疫グロブリン対立遺伝子のV(D)J再構成を阻止しないようにするものである。B細胞発生中に対立遺伝子排除を媒介するシグナルに干渉することにより、本明細書に記載される発明は、そのB細胞が細胞1つにつき2つ以上の機能性Vドメイン及び/又は2つ以上の機能性Vドメインの発現能を有するように動物のゲノム内容を改変するための方法及び組成物を提供する。
この実施形態の例示的な一態様では、重鎖対立遺伝子排除を抑制するように2つのH鎖対立遺伝子の各々に導入された変異によってプレBCRシグナル伝達が損なわれる。これらの変異はまた、ホモ二量体重鎖形成に不利に働くが、2つの変異重鎖間のヘテロ二量体化には適合するようにも選択される。結果として、2つの変異重鎖対立遺伝子のうちのいずれか一方から単独で発現する重鎖ポリペプチドは、ERにおいて誤って折り畳まれ、従って形質膜に輸送されて対立遺伝子排除及び更なるB細胞発生のシグナルを媒介することはできないものと思われる。このように、プレBCRアセンブリの成功は、両方の変異重鎖対立遺伝子が共発現して相補的なヘテロ二量体を形成するときに限り起こる。重鎖遺伝子座の定常領域もまた、アイソタイプスイッチングの程度が制限されるように改変され得る。個々のB細胞は、一種類の軽鎖のみと対合する2つの異なる重鎖を発現するものと思われるが、宿主のB細胞プールにおいては重鎖及び軽鎖の両方のレパートリーが極めて広範であるものと思われる。
この実施形態の別のバージョンにおいて、重鎖及び/又は軽鎖対立遺伝子の定常領域は、一方の対立遺伝子上のインフレームVDJ又はVJ再構成が対立遺伝子排除に関して無能力になるが、後のB細胞発生段階での発現のために確保しておかれるように改変される。一つの具体的な例では、重鎖遺伝子座における一方の対立遺伝子のJ遺伝子の下流に、生産的にアセンブルされたVDJエクソンからの完全長重鎖の発現を阻止するDNAカセットが挿入される。かかるDNAカセットは、以下のエレメント:スプライスアクセプター、リボソームスキップ配列又は内部リボソーム侵入部位(IRES)、オープンリーディングフレーム、ポリアデニル化シグナル配列、又は終止コドンのうちの1つ以上を含み得る。従って、この対立遺伝子からのインフレームVDJエクソンは対立遺伝子排除を媒介せず、又は更なるB細胞発生を支持しない。しかしながら、第2の対立遺伝子上でインフレームVDJ遺伝子再構成が起こる場合、B細胞はなおも正常に発生することができる。続くサイレンシングされた重鎖対立遺伝子の再活性化のため、挿入されたDNAカセットに隣接するようにCreなどの部位特異的DNAリコンビナーゼ認識配列が導入されてもよい。部位特異的DNAリコンビナーゼが発現すると、ここでDNAカセットは切り出されるか又は逆位になり、それまでサイレンシングされていたVDJエクソンがスプライシングされて下流の他のCエクソンにつながることができ、完全長重鎖発現が可能となる。或いは、DNAカセットは、それが通常のアイソタイプスイッチング機構によって重鎖遺伝子座から切り出され得るような位置に挿入されてもよい。両方の重鎖対立遺伝子の下流定常領域が、アイソタイプスイッチングの程度を制限するように更に改変されてもよく、両方の重鎖が共発現するときヘテロ二量体化に有利に働くか、又は一度に一方の重鎖のみの発現を許容するようにし得る。
代替的実施形態では、この直前に記載したものと類似した戦略を実施してκ又はλ軽鎖遺伝子座における対立遺伝子排除を無能力にしてもよく、ここで個々のB細胞から産生される二重特異性抗体は、2つの異なる軽鎖と対合した重鎖ホモ二量体又はヘテロ二量体からなる。
別の代替的実施形態では、重鎖対立遺伝子包含(allelic inclusion)と類似した戦略を用いて、重鎖のみからなる二重特異性抗体が産生される。実施形態のこのバージョンでは、第1の重鎖定常ドメイン(C1)をコードするエクソンが各対立遺伝子から取り除かれる。両方の重鎖対立遺伝子に、それらが発現するタンパク質が互いのヘテロ二量体化に有利に働き、且つ自己二量体化への適合性が低下するような更なる遺伝子改変が導入されてもよい。或いは、これらの重鎖対立遺伝子に、二重特異性重鎖単独抗体を産生するためC1がない重鎖対立遺伝子を前出の実施形態に記載されるとおり誘導可能な方法で連続的に発現させるような改変が導入されてもよい。
更に別の代替的実施形態では、対立遺伝子排除に必要な1つ以上のシグナル伝達分子が欠損した動物のB細胞による二重特異性抗体産生を可能にするため、免疫グロブリン対立遺伝子が改変される。
二重特異性抗体形成の助けとなる免疫グロブリン対立遺伝子に導入される特定の改変は、対立遺伝子排除に対しては最小限の効果しか及ぼさない。例えば、周知の「ノブ・イントゥ・ホール」変異と類似した改変を含有する重鎖は、容易にヘテロ二量体を形成する;しかしながら、この導入された改変は、各改変重鎖が単独で発現する場合にはホモ二量体形成を完全には抑制しない。一度に1つの免疫グロブリン対立遺伝子のみが再構成するため、最初に再構成された対立遺伝子から発現する重鎖ホモ二量体は対立遺伝子排除の能力を保持し得る。本方法は、プレBCR又はBCRの1つ以上のシグナル伝達成分の欠損によって対立遺伝子排除が損なわれている動物又は細胞のコンテクストにおいてかかる免疫グロブリン対立遺伝子改変を実施し、この改変それ自体は対立遺伝子排除に最小限の影響しか及ぼさない。
従って、一部の実施形態においては、細胞1つにつき2つ以上の異なる抗原受容体及び/又は二重特異性抗原受容体を共発現する能力を各々が有するBリンパ球の選択を可能にする、免疫グロブリン重鎖遺伝子対立遺伝子排除が障害された遺伝子改変動物が提供される。
一部の態様において、遺伝子改変動物の免疫グロブリン重鎖遺伝子の1つ以上の定常領域コード部分の範囲内にあるエクソンが、発生中のBリンパ球においてV(D)J再構成後に対立遺伝子排除が起こらないように変化している。一部の態様において、遺伝子改変動物における免疫グロブリン重鎖遺伝子の変化が、免疫グロブリン重鎖遺伝子の1つ以上の定常領域コード部分における1つ以上のエクソンの発現を誘導可能に不活性化及び/又は活性化することを可能にし;遺伝子改変動物の1つ以上の定常領域エクソンの一部又は全てが、同じ免疫グロブリン重鎖遺伝子における再構成したV(D)J遺伝子セグメントと逆のリーディングフレーム方向に配置され;及び一部の態様において、遺伝子改変動物に、同じ染色体上の再構成したV(D)J遺伝子セグメントからの定常領域エクソンの発現を阻止するDNAカセットが挿入される。
一部の態様は、2つの異なる抗原を同時に注入したとき、又は1つの抗原を注入し、続いて第2の異なる抗原を注入したとき、2つ以上の異なる抗原受容体及び/又は二重特異性抗原受容体を共発現するか又は連続的に発現する能力を各々が有するBリンパ球を生成する遺伝子改変動物を提供する。一部の態様では、Bリンパ球における2つの抗原受容体のヘテロ二量体化が発生又は分化イベントによって可能になるか、又はそれを誘導することができる。
他の態様は、動物の個々のB細胞における2つの再構成した免疫グロブリン重鎖遺伝子が互いに効率的にホモ二量体化しない遺伝子産物を発現する遺伝子改変動物を提供し;及び一部の態様では、2つの異なる重鎖遺伝子産物のホモ二量体化は起こらないか、又はヘテロ二量体化と比べて不利である。
更に他の実施形態は、細胞1つにつき2つ以上の異なる抗原受容体及び/又は二重特異性抗原受容体を共発現する能力を各々が有するBリンパ球の選択を可能にする、免疫グロブリン軽鎖遺伝子対立遺伝子排除が障害された遺伝子改変動物を提供する。一部の態様では、動物の1つ以上の免疫グロブリン軽鎖遺伝子の範囲内にある定常領域コードエクソンが、発生中のBリンパ球においてVJ再構成後に対立遺伝子排除が起こらないように変化している;及び他の態様において、遺伝子改変動物の1つ以上の免疫グロブリン軽鎖遺伝子の変化が、免疫グロブリン重鎖遺伝子の定常領域コード部分の発現を誘導可能に不活性化及び/又は活性化することを可能にする。
他の実施形態は、1つ以上の定常領域エクソンの一部又は全てが、同じ免疫グロブリン軽鎖遺伝子における再構成したVJ遺伝子セグメントと逆のリーディングフレーム方向に配置されている遺伝子改変動物における免疫グロブリン軽鎖遺伝子;同じ染色体上の再構成したVJ遺伝子セグメントからの定常領域エクソンの発現を阻止するDNAカセットが挿入されている遺伝子改変動物における免疫グロブリン軽鎖遺伝子;及び定常領域エクソンが、同じB細胞における両方でなく片方の重鎖対立遺伝子との会合に適合するように改変される遺伝子改変動物における免疫グロブリン軽鎖遺伝子を提供する。
他の実施形態は、遺伝子改変動物に由来する初代B細胞、不死化B細胞、又はハイブリドーマを提供する。
更に他の実施形態は、免疫グロブリン重鎖遺伝子の変化が、重鎖のみからなる二重特異性抗体の産生を可能にする遺伝子改変動物を提供する。
他の実施形態は、遺伝子改変動物の操作された部分からの免疫グロブリン重鎖遺伝子から転写された部分的又は全体的な免疫グロブリンタンパク質;及び遺伝子改変動物の細胞に由来する部分的又は全体的な操作された免疫グロブリンタンパク質を含む。
本発明のこれら及び他の態様、目的及び特徴を以下に更に詳細に記載する。
VDJ組換え前の可変遺伝子セグメントを特徴とする重鎖遺伝子座における2つの典型的な対立遺伝子を示す図。 2つの重鎖対立遺伝子の同時発現による二重特異性抗体産生を可能にする重鎖対立遺伝子に対する改変を示す図。 種々の抗体クラスを発現するエクソンを特徴とする重鎖遺伝子座の定常領域ローカル(locale)を示す図。 連続重鎖発現による二重特異性抗体産生のための重鎖対立遺伝子に対する改変を示す図。 連続重鎖発現による二重特異性抗体産生のための重鎖対立遺伝子に対する代替的改変を示す図。 誘導性の二重特異性抗体産生のための重鎖対立遺伝子に対する改変を示す図。
本明細書において使用する用語は、当業者が理解するとおりの平易な通常の意味を有することが意図される。以下の定義は、読者が本発明を理解するのを助けることを意図しており、具体的に指示されない限り、かかる用語の意味を変えたり、又は他の形で限定したりしようと意図するものではない。
用語「トランス遺伝子」は、本明細書においては、細胞、特に宿主脊椎動物の細胞のゲノムに人工的に挿入されている、又は挿入されようとしている遺伝物質を記載するために用いられる。
「トランスジェニック動物」とは、その細胞の一部に染色体要素又は染色体外要素として存在するか、又はその生殖細胞系列DNAに(即ちその細胞のほとんど又は全てのゲノム配列に)安定に組み込まれた外来性核酸配列を有する非ヒト動物、通常は哺乳類、例えば他の哺乳類も想定されるがげっ歯類、特にマウス又はラットが意味される。
「ベクター」には、自己複製性であるか否かに関わらず、細胞の形質転換、形質導入又はトランスフェクションに使用することのできるプラスミド及びウイルス及び任意のDNA又はRNA分子が含まれる。
「細胞表面」は、細胞の形質膜、即ち、細胞外間隙に最も直接的に露出した、且つ細胞外間隙(細胞間隙を含む)にある細胞及びタンパク質の両方と接触するのに利用可能な細胞の部分を指す。
「二重特異性抗体」は、抗原特異性が互いに異なる2つの物理的に分離可能な抗原結合表面を含むものである。通常の抗体は、構造的に同一の、従って同じ抗原特異性を有する2つの物理的に分離可能な抗原結合表面を有する。二重特異性抗体の好ましいバージョンは、2つの物理的に分離可能な抗原結合表面を備える通常のIgG抗体分子に似ているが、それらの表面は構造的に同一ではなく互いに異なっている。本発明の文脈においては、これらの表面の両方が同じ重鎖タンパク質からなるが、それらが含む軽鎖タンパク質において表面は互いに異なり得る。或いは、2つの表面が同じ軽鎖タンパク質からなるが、それらが含む重鎖タンパク質において表面は互いに異なり得る。
本明細書で使用されるとき、「生産的再構成」は、インフレームで、且つ可変領域ドメイン翻訳が可能なVDJ又はVJ再構成である。重鎖又は軽鎖の可変ドメインは、それが下流の定常領域エクソンとインフレームで発現することができる場合に「機能性」と考えられる。それぞれ生産的VDJ又はVJ再構成から翻訳された重鎖又は軽鎖タンパク質は、それが細胞表面上に発現することができる場合に「機能性」と称される。
本明細書に記載される免疫グロブリン「対立遺伝子」は、可変遺伝子セグメント、イントロンエンハンサー、定常領域遺伝子、及び内因性又は外因性供給源の他の配列を含み得る重鎖又は軽鎖遺伝子座における染色体セグメントを指す。
「対立遺伝子排除」は、げっ歯類又はヒトなどの脊椎動物種におけるB細胞の大部分が、2つの相同常染色体のうちの一方のみに生産的に再構成された重鎖遺伝子を担持するという事実を指す。同様に、軽鎖遺伝子座における対立遺伝子排除も類似のシナリオを指し得る。より一般的な意味では、対立遺伝子排除は、任意の重鎖又は軽鎖遺伝子座における生産的V(D)J再構成が、それぞれ他の重鎖又は軽鎖V(D)J遺伝子セグメントの更なる再構成を阻害するときはいつでも、それらの染色体位置がどこであろうと適用される。例えば、2組以上の重鎖VDJ連鎖群が同じ染色体に挿入される場合、それらの重鎖連鎖群の1つにおける生産的再構成が、他の重鎖連鎖群のいずれかにおける更なるV(D)J再構成も阻止する。同じ原理が軽鎖連鎖群にも適用される。原則的に、この種の「対立遺伝子」排除は、従来の対立遺伝子排除と同じ機構によって起こり得る。
「対立遺伝子包含(allelic inclusion)」は、対立遺伝子排除の喪失、従ってB細胞が2つ以上の機能性重鎖可変ドメイン及び/又は2つ以上の機能性軽鎖可変ドメインを産生する能力を指す。
ゲノム「ローカル(locale)」は、ゲノム、好ましくは遺伝子のうち、1つの特定の機能面と関連付けられる任意の領域である。この用語ローカルは、ここでは免疫グロブリン遺伝子座の一部分を指して用いられる。例えば、それは、V遺伝子セグメントローカル、又はD遺伝子セグメントローカル、又はJ遺伝子セグメントローカル、又はより広義には、V、D及びJ遺伝子セグメントの全てを含む可変ローカルなど、一種の遺伝子セグメントを主として含有する免疫グロブリン遺伝子座の一部分を指すことができる。定常領域ローカルは、定常領域エクソンを含有する免疫グロブリン遺伝子座の一部分である。
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載される技法の実施は、特に指示されない限り、当業者の技能の範囲内にある有機化学、高分子技術、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、及びシーケンシング技術の従来技術及び説明を用い得る。かかる従来技術には、ポリヌクレオチドのポリマーアレイ合成、ハイブリダイゼーション及びライゲーション、並びに標識を使用したハイブリダイゼーションの検出が含まれる。好適な技法の具体的な例示は、本明細書の例を参照することによって入手し得る。しかしながら、他の均等な従来手順もまた、当然ながら用いることができる。かかる従来技術及び説明については、グリーン(Green)ら編、1999年、「ゲノム解析:実験マニュアルシリーズ(Genome Analysis:A Laboratory Manual Series)」(第I〜IV巻);ワイナー(Weiner)、ガブリエル(Gabriel)、スティーブンズ(Stephens)編、2007年、「遺伝的変異:実験マニュアル(Genetic Variation:A Laboratory Manual)」;ディーフェンバッハ(Dieffenbach)、ドベクスラー(Dveksler)編、2003年、「PCRプライマー:実験マニュアル(PCR Primer:A Laboratory Manual)」;ボウテル(Bowtell)及びサムブルック(Sambrook)著、2003年、「分子クローニングからの簡約プロトコル:実験マニュアル(Condensed Protocols from Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」;及びサムブルック(Sambrook)及びラッセル(Russell)著、2002年、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」(全てコールドスプリングハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)発行);ストライヤー、L.(Stryer,L.)著、1995年、「生化学(Biochemistry)」(第4版)W.H.フリーマン(W.H.Freeman)、ニューヨーク州ニューヨーク;レーニンジャー(Lehninger)著、「生化学の原理(Principles of Biochemistry)」第3版、W.H.フリーマン出版社(W.H.Freeman Pub.)、ニューヨーク州ニューヨーク;及びバーグ(Berg)ら著、2002年、「生化学(Biochemistry)」、第5版、W.H.フリーマン出版社(W.H.Freeman Pub.)、ニューヨーク州ニューヨーク;ナジ(Nagy)ら編、2003年、「マウス胚の操作:実験マニュアル(Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual)」(第3版)コールドスプリングハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(これらは全て、本明細書においてあらゆる目的から全体として参照により援用される)などの標準的な実験マニュアルを参照することができる。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、文脈上特に明確に指示されない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」には複数の指示対象が含まれることに留意されたい。従って、例えば「免疫グロブリン(an immunoglobulin)」と言うとき、それは1つ以上のかかる免疫グロブリンを指し、及び「方法(the method)」と言うとき、それは均等なステップ及び当業者に公知の方法を指すなどとなる。
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書において言及される全ての刊行物は、ここに説明する発明との関連において用いられ得る装置、配合及び方法論を説明及び開示する目的から参照によって援用される。
値の範囲が提供される場合、当該範囲の上限と下限との間にある各中間値、及び当該の記載される範囲における任意の他の記載される値又は中間値が本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、その記載される範囲における任意の具体的に除外される限界値を条件として、独立にそのより小さい範囲に含まれ得る。提示される範囲が一方又は両方の限界値を含む場合、それらの含まれる限界値の一方又は両方を除外する範囲もまた本発明に含まれる。
以下の説明では、本発明のより完全な理解を提供するため数多くの具体的な詳細が示される。しかしながら、当業者には、これらの具体的な詳細の1つ以上がなくても本発明を実施し得ることは明らかであろう。他の場合には、本発明が不明瞭になることを避けるため、周知の特徴及び当業者に周知の手順は説明していない。
(発明の概要)
本発明は、動物から二重特異性抗体を迅速に単離するための方法及び組成物を提供する。免疫系に存在するBリンパ球は、通常、対立遺伝子排除と呼ばれる過程により、1つの機能性重鎖及び1つの機能性軽鎖より多くを発現することができない。本発明の特定の実施形態は、発生中のB細胞における免疫グロブリン遺伝子座の1つ以上における対立遺伝子排除が無能力になるような動物のゲノム内容に対する改変を提供する。本明細書に記載される方法は、細胞1つにつき2つ以上の機能性Vドメイン及び/又は2つ以上の機能性Vドメインを発現する能力をB細胞に付与する。
特定の実施形態において、本発明は、正常な対立遺伝子排除過程に作用するように免疫グロブリン対立遺伝子に改変を実施して、一方の対立遺伝子のインフレームV(D)J再構成が他方の対立遺伝子のV(D)J再構成を阻害しないようにするものである。特定の実施形態はまた、トランスジェニック動物から二重特異性抗体を単離する2つの一般的な戦略も実施する。第1の戦略は、2つ以上の目的の抗原による同時免疫レジメンを伴う。第2の戦略は、異なる目的の抗原による連続免疫を伴う。
重鎖及び軽鎖の両方とも再構成後の対立遺伝子排除には細胞表面への重鎖の輸送が必要である。好ましい実施形態において、本発明は、新しく合成された重鎖ポリペプチドが誤って折り畳まれた場合、ERに保持されて対立遺伝子排除を媒介する能力を欠く可能性を利用する。適切なタンパク質の折り畳みの達成には、重鎖のVDJ組換え後−代替軽鎖複合体との必要なVドメイン対合に加えて−重鎖ポリペプチドの二量体化が必要である。IgM及びIgEを除く全てのアイソタイプに関して、重鎖ホモ二量体化は2つのC3ドメイン間の対称なタンパク質相互作用によって開始される。IgM及びIgE重鎖は、そのC4ドメイン間のタンパク質相互作用によってホモ二量体化を開始する。
この実施形態の一態様において、重鎖対立遺伝子はアイソタイプスイッチングの程度を制限するように改変され、両方の対立遺伝子上のC3又はC4二量体化ドメインをコードするエクソンが、ホモ二量体化への適合性は低いが互いに相補的であるためヘテロ二量体化するように改変される。いずれかの対立遺伝子上のインフレームVDJ再構成から単独で発現する重鎖ポリペプチドは正しいタンパク質の折り畳みを不十分にしか達成せず、従って細胞表面に輸送されて対立遺伝子排除を媒介することができない。
−V対合に加え、軽鎖対立遺伝子排除には、誤って折り畳まれ易い重鎖C1ドメインの正しいタンパク質の折り畳みが必要である(例えば、ファイギ(Feige)ら著、モレキュラー・セル(Mol Cell)、第34巻、p.569〜579、2009年を参照のこと)。正しいタンパク質の折り畳みを達成するには、各重鎖C1ドメインが軽鎖の定常領域(Cκ又はCλ)と会合しなければならない。本発明の方法の拡張した態様では、両方の重鎖対立遺伝子のC1ドメインをコードするエクソン並びに軽鎖定常領域ドメインのエクソンに対する遺伝子改変が実施され、各軽鎖が、両方でなく、一方の対立遺伝子のみから発現する重鎖と会合することができるようにされる。
前述のC1改変を伴う又は伴わない、前述のC3改変を有するトランスジェニックマウスが、2つの目的の抗原で同時に免疫される。繰り返し免疫を用いると、両方の抗原を認識するB細胞のクローン性増殖を最大化し得る。免疫レジメンの完了後、標準的なハイブリドーマ又は他の技法を用いて、両方の目的の抗原に対する二重特異性抗体を産生するB細胞が単離される。
この実施形態の別のバージョンでは、トランスジェニックマウスなどのトランスジェニック動物が両方の染色体上に操作されたバージョンの重鎖対立遺伝子を担持しており、ここで改変は重鎖分子の定常ドメインを発現する重鎖ローカルに導入される。操作された対立遺伝子の両方が、B細胞発生中にVDJ再構成を起こして重鎖多様性を作り出す能力を有する。操作された対立遺伝子の一方はまた、プレBCRシグナルを生成することのできる完全長膜貫通重鎖タンパク質の発現能も有する。他方の操作された対立遺伝子は、この点で無能にされている。
この実施形態の一態様において、2つの操作された対立遺伝子は、Cre又はFlpなどの1つ以上の部位特異的リコンビナーゼの認識配列(野生型又は変異型)を担持している。これらの認識部位は、部位特異的組換えがその遺伝子座の定常ドメインコード部分の機能性を変化させるような形で配置される。即ち、対立遺伝子が完全に機能性の重鎖タンパク質の発現能を有する場合、部位特異的組換えによって遺伝子座からこの特性が失われる。同様に、対立遺伝子が完全に機能性の重鎖タンパク質の発現能を有しない場合、部位特異的組換えによって機能性重鎖の発現能力が遺伝子座に付与される。
この直前に要約した部位特異的リコンビナーゼが媒介する変化は、2つの相同染色体上にある重鎖遺伝子座の定常ドメインコード部分におけるDNA断片を欠失させるか又は逆位にすることにより達成される。本発明の特定の実施形態において、一方の染色体上の定常ドメインの完全な機能性の部位特異的リコンビナーゼ依存性の喪失は、同期した、又はほぼ同期した他方の染色体上の完全な機能性の獲得によって達成される。有利な態様では、この部位特異的リコンビナーゼの発現は、Cγ1又はAicda(活性化誘導性デアミナーゼ)など、B細胞活性化の間に誘導される遺伝子由来のプロモーターの制御下にある。
この直前に説明したトランスジェニックマウスは、抗原に特異的な抗体分子を発現するB細胞のクローン性増殖を可能にする抗原で免疫される。それらが担持している重鎖遺伝子改変に起因して、この抗原に特異的な抗体は、2つの重鎖対立遺伝子のうちの一方のみの再構成されたバージョン、即ち、その定常ドメインコード部分における完全な機能性によって定義される対立遺伝子によってコードされる重鎖を含む。他方の対立遺伝子はかかる機能性を欠いており、そのため抗原特異的クローン性増殖に必要なシグナル伝達過程に関与する能力を有する重鎖をコードしない。繰り返し免疫を用いると、クローン性増殖及び抗原特異的抗体多様性を最大化し得る。
免疫レジメンの完了後、部位特異的組換えを誘導すると、一方の染色体から他方の染色体への重鎖定常ドメイン機能性のスイッチが生じる。このスイッチの結果として、免疫に使用した抗原に特異的な抗体の重鎖をコードする対立遺伝子から定常ドメインの完全な機能性が失われる。同時又はその近くで、定常ドメインの完全な機能性が既に失われている対立遺伝子が、ここでこの機能性を獲得する。この機能性のスイッチを通じて、免疫レジメンに使用した抗原に応答したクローン性増殖に関与する細胞が新規重鎖タンパク質の発現を獲得する。
この直前に説明した誘導性部位特異的リコンビナーゼ依存性スイッチの後、マウスが第2の抗原で免疫される。第2の抗原に応答したクローン性増殖は、第2の対立遺伝子によってコードされる重鎖を含む抗体;即ち、誘導性部位特異的リコンビナーゼイベントに起因して定常ドメインの機能性を獲得するものに依存する。最初の場合と同様に、第2の免疫を繰り返してクローン性増殖及び抗原特異的抗体多様性を最大化し得る。
第2の抗原に特異的な抗体を発現するクローン性増殖細胞には、以前第1の抗原に応答したクローン性増殖に関与したものが含まれる。第2のクローン性増殖中、これらの細胞は、第1の抗原に特異性を有する重鎖タンパク質を発現せず、代わりに第2の対立遺伝子から異なる重鎖タンパク質を発現する。それらが発現する、第2の抗原に対する特異性に寄与する重鎖タンパク質は、誘導性部位特異的組換えイベントの結果として定常ドメインの完全な機能性を獲得した重鎖対立遺伝子によってコードされる。
第2の免疫レジメンの完了後、ハイブリドーマ又は他の技法を用いて、第1及び第2の抗原の両方に特異的なB細胞が単離される。第2の部位特異的リコンビナーゼイベントを誘導して、第1の抗原に対する抗原特異性を有する対立遺伝子に完全な機能性を回復してもよい。例えば、第2の部位特異的リコンビナーゼの発現は、タモキシフェン又はドキシサイクリン(doxycyline)によって誘導可能なものなど、誘導可能なシステムの制御下にあってもよい。この改変により、一方が第1の免疫レジメンで使用される抗原に特異的で、他方が第2の免疫レジメンで使用される抗原に特異的な、2つの異なる抗体分子を発現する細胞の能力を評価し得る。
第2の部位特異的組換え後、ここでヘテロ二量体の相補的な半分であるタンパク質又はタンパク質ドメイン(ヘテロダイマライザーと呼ばれる)と共に各重鎖対立遺伝子上のアセンブルされたVDJエクソンが発現する。有利な態様では、ヘテロダイマライザーは変異IgG1対立遺伝子であり、ここでは両方の対立遺伝子のC3ドメインをコードする4番目のエクソンが、互いのヘテロ二量体化を促進してホモ二量体化を抑制するように変異している。或いは、ヘテロダイマライザー対は、c−Fos及びc−Jun(これらは生理学的にヘテロ二量体化してAP−1転写因子を形成する)、ロイシンジッパー、又はヘテロ二量体を形成する同様のタンパク質など、非免疫グロブリン(non−immuloglobulin)タンパク質であってもよい。
本発明の別の実施形態では、対立遺伝子排除が重鎖遺伝子座で障害されるのでなく、むしろ代わりにそれが軽鎖遺伝子座で障害される。本発明のこのバージョンでは、重鎖対立遺伝子排除は正常である。本発明の軽鎖対立遺伝子包含のバージョンは、概念上重鎖対立遺伝子包含のバージョンと同様であり、関連性のある相同軽鎖遺伝子の定常ドメインコード部分における類似の改変を特徴とする。これは、適切に段階分けされた誘導可能な部位特異的組換えステップと組み合わせた同様の二重免疫スキームを用いて利用される。本発明の重鎖対立遺伝子包含のバージョンに関して説明したのと同じように二重特異性B細胞が同定及び/又は単離される。本発明のこの軽鎖対立遺伝子包含のバージョンによれば、2つの軽鎖タンパク質及び1つの重鎖タンパク質を各々が含む二重特異性抗体が得られ、一方、重鎖対立遺伝子包含のバージョンによれば、1つの軽鎖タンパク質及び2つの重鎖を各々が含む二重特異性抗体が得られる。
代替的実施形態では、この直前に重鎖対立遺伝子包含について説明したものと類似した戦略を実施して、重鎖のみからなる二重特異性抗体を産生するB細胞が生成される。この実施形態では、両方の重鎖対立遺伝子から、C1ドメインをコードするエクソンが取り除かれる。各重鎖対立遺伝子から発現するC1がないポリペプチドは、正しいタンパク質の折り畳み並びに細胞表面への輸送に関して軽鎖又は代替軽鎖の存在への依存を例えあったとしても僅かしか呈しないはずである(例えば、ファイギ(Feige)ら著、モレキュラー・セル(Mol Cell)、第34巻、p.569〜579、2009年を参照のこと)。両方の重鎖対立遺伝子の可変遺伝子セグメントが、ラクダ科動物など、一本鎖抗体を天然で発現する動物に由来してもよく、又は軽鎖なしで発現したときのVドメインの熱安定性を改善する改変を有する又は有しない他の動物に由来してもよい。
この実施形態の一つのバージョンでは、重鎖対立遺伝子が、アイソタイプスイッチングの程度を制限するように更に改変され、両方の対立遺伝子上のC3又はC4二量体化ドメインをコードするエクソンが、ホモ二量体化への適合性は低いが互いに相補的であるためヘテロ二量体化するように変異している。いずれかの変異対立遺伝子から単独で発現するC1がない重鎖ポリペプチドは、変異が効率的な重鎖ホモ二量体化を抑制するため、細胞表面に輸送されて対立遺伝子排除を媒介することはないはずである。従って、B細胞発生の成功は、両方の変異重鎖対立遺伝子からのC1がない重鎖の同時発現に依存する。
前述のC1ドメインコードエクソンが欠損した、且つ前述のC3改変を有するトランスジェニックマウスは、2つの目的の抗原で同時に免疫される。繰り返し免疫を用いると、両方の抗原を認識するB細胞のクローン性増殖を最大化し得る。免疫レジメンの完了後、標準的なハイブリドーマ又は他の技法を用いて、両方の目的の抗原に対する二重特異性抗体を産生するB細胞が単離される。
この実施形態の代替的なバージョンでは、C1ドメインがない重鎖の対立遺伝子包含が、前出の実施形態において説明した重鎖対立遺伝子包含スキームと類似の誘導可能な方法で各変異重鎖対立遺伝子を連続的に発現させることによって達成される。重鎖対立遺伝子はまた、一方の対立遺伝子上のインフレームVDJ再構成が対立遺伝子排除に関して無能力となり、且つ後のB細胞発生段階での発現のため確保しておかれるように改変される。これも同様に、一方の重鎖対立遺伝子のオープンリーディングフレームをDNAカセットによるか又は重鎖定常領域をコードする1つ以上のエクソンの逆位によって分断することにより達成される。各変異重鎖対立遺伝子の発現を変化させるため、部位特異的DNA組換えの誘導可能なイベントも同様に導入される。同様のダブル免疫スキームと、続く第2の誘導可能な部位特異的組換えステップを用いると、二重特異性B細胞が得られる。本発明のこの重鎖対立遺伝子包含のバージョンによれば、各々が軽鎖のない重鎖を2つ含む二重特異性抗体が得られる。
他の代替的実施形態では、B細胞による二重特異性抗体産生が可能となるように改変される免疫グロブリン対立遺伝子が、対立遺伝子排除に必要な1つ以上のシグナル伝達分子が欠損している動物に組み入れられる。
特定の場合に、本方法は、二重特異性抗体形成の助けとなるが、対立遺伝子排除には最小限の効果しか及ぼさないように設計される改変を免疫グロブリン遺伝子に導入する。具体的な一態様において、周知の「ノブ・イントゥ・ホール」変異と類似した改変を含む重鎖が、重鎖のC3ドメインをコードするエクソンに導入される(例えば、リッジウェイ(Ridgway)ら著、プロテイン・エンジニアリング(Protein Eng)、第9巻、p.617〜621、1996年を参照のこと)。導入された改変は、改変された重鎖の各々が単独で発現する場合にはホモ二量体形成を完全には抑制しない。一度に1つの免疫グロブリン対立遺伝子のみが再構成するため、最初に再構成された対立遺伝子から発現する重鎖ホモ二量体は対立遺伝子排除の能力を保持していることがあり得る。本発明は、プレBCR又はBCRの1つ以上のシグナル伝達成分の欠損に起因して対立遺伝子排除が損なわれた動物又は細胞にかかる免疫グロブリン対立遺伝子改変を実施するもので、この改変それ自体は対立遺伝子排除に最小限の効果しか及ぼさない。かかる変異体の一例は、E2Aが欠損しているマウス系統である(例えば、ハウザー(Hauser)ら著、ジャーナル・オブ・イムノロジー(Journal of Immunology)、第192巻、p.2460〜2470、2014年を参照のこと)。
前述のC3改変及びプレBCR又はBCRシグナル伝達成分の欠損を有するトランスジェニックマウスが、2つの目的の抗原で同時に免疫される。繰り返し免疫を用いると、両方の抗原を認識するB細胞のクローン性増殖を最大化し得る。免疫レジメンの完了後、標準的なハイブリドーマ又は他の技法を用いて、両方の目的の抗原に対する二重特異性抗体を産生するB細胞が単離される。
図1は、ヒト及びほとんどの脊椎動物に典型的に見られる2つの重鎖対立遺伝子(101及び102)を示す。各重鎖対立遺伝子が、IgMの定常領域をコードするCμエクソン(108)の上流にある複数のV(103)、D(104)、及びJ(105)遺伝子からなる。各染色体上には、J遺伝子と1番目のCエクソンとの間に5’「イントロン」エンハンサー(106)及びスイッチ領域(107)などの調節エレメントもまた存在する。好ましい実施形態において、トランスジェニックマウスのV、D、及びJ遺伝子セグメントは、ヒトコード領域とマウス非コード領域とからなるキメラである。図中の表示される成分は以下のとおりである:重鎖遺伝子座の染色体セグメント(101、102);可変領域遺伝子セグメント(103);D領域遺伝子セグメント(104);J領域遺伝子セグメント(105);重鎖「イントロン」エンハンサー(106);スイッチ領域(107);IgMの定常領域をコードするCμエクソン(108)。
図2は、B細胞を対立遺伝子包含が可能なものにするため本発明が両方の重鎖対立遺伝子(201、202)に実施する改変の例を示す。生殖細胞系列構成下では、各重鎖対立遺伝子が、再構成されていないV(203)、D(204)、及びJ(205)遺伝子と、それに続くIgGアイソタイプをコードする改変Cγエクソン(208及び209)からなる。好ましい実施形態において、トランスジェニックマウスのV、D、及びJ遺伝子セグメントは、ヒトコード領域とマウス非コード領域とからなるキメラである。B細胞発生時、ランダムに選択されたV、D、及びJ遺伝子がアセンブルして(210)、Vエクソン(211、212)を形成する。各重鎖対立遺伝子のC3エクソン内の特定のコドンは、コードされる重鎖が互いとのヘテロ二量体化に適合するように変異している(変異Cγ1など、これらの2つの重鎖対立遺伝子のそのcDNA配列は[配列番号1及び2]として特定される)。加えて、この改変により、いずれかの対立遺伝子が単独で発現した場合に翻訳された重鎖ポリペプチドに誤った折り畳みが生じる。結果的に、両方の対立遺伝子の同時発現により変異重鎖ポリペプチドがヘテロ二量体を形成しない限り、プレBCRは形成されず、形質膜に輸送されて対立遺伝子排除を媒介することができない。この実施形態の拡張したバージョンでは、前述のC3変異と組み合わせて、両方の重鎖対立遺伝子のC1エクソン内の特定のコドンが同様に、各重鎖が異なる軽鎖と対合し得るように改変される。この図は変異IgG重鎖を使用した対立遺伝子排除の抑制並びに重鎖ヘテロ二量体化の促進を例示するが、他のアイソタイプ(即ち、IgM、IgD、又はIgA)も同様に用いられ得る。図中の表示される成分は以下のとおりである:改変重鎖対立遺伝子の染色体セグメント(201、202);可変領域遺伝子セグメント(203);D領域遺伝子セグメント(204);J領域遺伝子セグメント(205);重鎖「イントロン」エンハンサー(206);スイッチ領域(207);IgGの変異定常領域をコードするCγエクソン(208、209);VDJ組換えイベント(210);アセンブルされたVDJエクソン(211、212)。
図3は、げっ歯類に見られる2つの相同染色体上の重鎖遺伝子を示す(典型的なヒト重鎖遺伝子座も非常に類似しているが、より多くの定常領域遺伝子を有する)。この図では、染色体の定常領域ローカルの構造を強調するため、両方の重鎖対立遺伝子(301、302)のV(303)及びD(304)遺伝子を図1と比較して圧縮している(「n」で示される)。好ましい実施形態において、トランスジェニックマウスのV(303)、D(304)、及びJ(305)遺伝子セグメントは、ヒトコード領域とマウス非コード領域とからなるキメラである。IgM及びIgD(308、個々のCエクソンは図示せず)は、B細胞が発現する最初のアイソタイプである。他の抗体クラスをコードするCエクソン(309〜314、個々のエクソンは図示せず)が更に下流に存在する。C57BL/6マウス系統では、これらは、Cγ3(309)、Cγ1(310)、Cγ2b(311)、Cγ2c(312)、Cε(313)、及びCα(314)である。BALB/cなどの特定のマウス系統はCγ2cの代わりにCγ2aを有する。Cδを除き、各抗体クラスの1番目のCエクソンの前にアイソタイプスイッチ領域(307)が存在する。図中の表示される成分は以下のとおりである:重鎖対立遺伝子(301、302);括弧内に示されるV遺伝子、「n」は複数個の遺伝子セグメントを指す(303);括弧内に示されるD遺伝子、「n」は複数個の遺伝子セグメントを指す(304);J遺伝子(305);重鎖「イントロン」エンハンサー(306);スイッチ領域(307);Cμ及びCδ(308、個々のエクソンは図示せず);IgG及び他の抗体クラスのCエクソン(309〜314、個々のエクソンは図示せず)。
図4には、天然のB細胞に見られるであろうとおりの、VDJ再構成が起こって異なるVエクソン(403、404)が産生された後の2つの重鎖対立遺伝子(401、402)を示す。対立遺伝子401上では、Cμ及び/又はCδをコードするエクソン(406)は再構成したVDJエクソン(403)と同じセンス方向(下の矢印)である。対照的に、対立遺伝子402上ではCμ及び/又はCδエクソン(412)はVDJエクソン(404)と逆向き(下の矢印)に存在する。従って、対立遺伝子402は、そのCμ及び/又はCδエクソンがアンチセンス構成であるため完全長重鎖ポリペプチドの発現能を有さず、正常なB細胞発生は対立遺伝子401からの機能性重鎖の発現に依存する。対立遺伝子402における逆位のCμ及び/又はCδエクソン(412)には、2つの逆向きの部位特異的DNA組換え認識配列(409、410)が直ちに隣接している。対立遺伝子401では、これらの2つの部位特異的DNA組換え認識配列(409、410)は、同様に逆向きで、更に離れて:一方(409)がCμ及び/又はCδエクソン(406)の上流に、他方(410)がCγエクソン(408)の下流に配置される。免疫原に対するB細胞応答の間(414)、対立遺伝子401はアイソタイプスイッチングを起こし、それにより下流の部位特異的DNA組換え配列(410)がその上流の対応物(409)の近くにくる。部位特異的DNAリコンビナーゼの発現が誘導されると(415)、生じる組換え部位(416、417)はもはや組換えに関してコンピテントでないため、両方の対立遺伝子上のその認識配列(409、410)が隣接しているDNAセグメントが不可逆的な逆位を起こす。対立遺伝子402はここで完全長重鎖の発現能を有し、一方、対立遺伝子401はそのCエクソンの逆位により不活性化される。第2の抗原の免疫後(418)、対立遺伝子402がアイソタイプスイッチングを起こす。両方の対立遺伝子の逆位可能なDNAセグメントには第2の部位特異的DNAリコンビナーゼ認識配列(411)が更に隣接し、これらはハイブリドーマ生成前又は生成後に導入することができる。間に介在するDNA断片の切り出し後、ここで両方の対立遺伝子上のVDJエクソン(403、404)が、重鎖ヘテロ二量体化に適合するように改変された下流Cエクソン(413)と共に発現することになる。図中の表示される成分は以下のとおりである:重鎖対立遺伝子(401、402);アセンブルされたVDJエクソン(403、404);重鎖「イントロン」エンハンサー(405);初めはアセンブルされたVDJエクソン(403)に対してセンス方向(下の矢印)のCμ及び/又はCδエクソン(406);スイッチ領域(407);スイッチしたアイソタイプのCエクソン(408);最初の部位特異的リコンビナーゼの認識配列(409、この部位の配列は、410と表示される部位と逆向きである);第2の部位特異的リコンビナーゼの認識配列(411);初めはアセンブルされたVDJエクソン(404)に対して逆方向(下の矢印)のCμ及び/又はCδエクソン(412);重鎖ヘテロ二量体化に適合する改変されたエクソン(413);抗原応答と、それに続くアイソタイプスイッチング(414);最初の部位特異的DNAリコンビナーゼ発現(415);部位特異的DNA組換え後の残りのDNA配列(416、417);第2の免疫原に対する抗原応答及びアイソタイプスイッチング(418)。
図5は、連続重鎖発現による二重特異性抗体産生のための重鎖対立遺伝子に対する代替的な改変を示す。天然のB細胞に見られるであろうとおりの、VDJ再構成が起こって異なるVエクソン(503、504)が産生された後の2つの重鎖対立遺伝子(501、502)が示される。対立遺伝子501上には、2つの逆向きの部位特異的DNAリコンビナーゼ認識配列(509、510)が隣接するDNAカセット(512)が、J遺伝子の下流、Cμ及び/又はCδ定常ドメインをコードするエクソン(506)の前に挿入されている。DNAカセット(512)は、アセンブルされたVDJエクソン(503)と逆方向(下の矢印)であり、以下のうちの1つ以上を含む:スプライスアクセプター、リボソームスキップ配列又はIRES、オープンリーディングフレーム、終止コドン、又はポリアデニル化シグナル配列。同様のDNAカセット(514)が対立遺伝子502上の類似のローカルにも挿入されるが、これは再構成したVDJエクソン(504)と同じセンス方向(下の矢印)である。対立遺伝子502は、DNAカセット(514)がVDJエクソン(504)に続くそのオープンリーディングフレームを分断するため、完全長重鎖を発現することができない。対照的に、対立遺伝子501は、逆位のDNAカセットがそのオープンリーディングフレームを分断しないため、完全長重鎖を発現することができる。両方の対立遺伝子とも、IgGエクソンの下流に第2のDNAリコンビナーゼの認識部位(511)がある。同様に両方の対立遺伝子上で、第1のDNAリコンビナーゼの認識部位(509)の上流に第2のDNAリコンビナーゼのための別の部位(511)も挿入されている。B細胞が免疫原に応答するとき(515)、対立遺伝子501はアイソタイプスイッチングを起こす。第1の部位特異的DNAリコンビナーゼの発現が誘導されると(516)、生じる組換え部位(517、518)はもはや組換えに関してコンピテントでないため、両方の対立遺伝子上のDNAカセット(512、514)が不可逆的な逆位を起こす。対立遺伝子502は、ここでDNAカセット(514)が逆方向となり、もはや重鎖オープンリーディングフレームを分断しないため、ここで完全長重鎖の発現能を有するようになる。対照的に、対立遺伝子501のオープンリーディングフレームは、そのVDJエクソン(503)と同じ方向のDNAカセット(512)によって分断される。第2の抗原による免疫後(519)、対立遺伝子502はアイソタイプスイッチングを起こす。ハイブリドーマ生成前又は生成後に第2の部位特異的DNAリコンビナーゼの発現が誘導されると、間に介在するDNA断片(512、514)がここでそのコグネイト認識配列(511)において切り出される。続いて、両方の対立遺伝子上のVDJエクソン(503、504)が、ここで重鎖ヘテロ二量体化のために改変されたCエクソン(513)と共に発現する。図中の表示される成分は以下のとおりである:重鎖対立遺伝子(501、502);アセンブルされたVDJエクソン(503、504);重鎖「イントロン」エンハンサー(505);Cμ及び/又はCδエクソン(506);スイッチ領域(507);スイッチしたアイソタイプのCエクソン(508);最初の部位特異的リコンビナーゼの認識配列(509、この部位の配列は510と表示される部位と逆方向である);第2の部位特異的リコンビナーゼの認識配列(511);初めはVDJエクソン(503)に対して逆方向(下の矢印)のDNAカセット(512);重鎖ヘテロ二量体化に適合する改変されたエクソン(513);初めはVDJエクソン(504)に対してセンス方向(下の矢印)のDNAカセット(514);抗原応答と、それに続くアイソタイプスイッチング(515);第1の部位特異的DNAリコンビナーゼ発現(516);部位特異的DNA組換え後の残りのDNA配列(517、518);第2の免疫原に対する抗原応答及びアイソタイプスイッチング(519)。
図6は、誘導可能な二重特異性抗体産生のための重鎖対立遺伝子に対する改変を示す。生殖細胞系列の構成では、一方の重鎖対立遺伝子(601)が、再構成されていないV(603)、D(604)及びJ(605)遺伝子と、それに続く2つの部位特異的DNAリコンビナーゼ認識配列(609)が隣接しているCμ及び/又はCδエクソン(608)からなる。他方の重鎖対立遺伝子(602)上には、同じ部位特異的DNAリコンビナーゼの2つの認識配列(609)が隣接しているセンス方向(下の矢印)のDNAカセット(610)が、V、D、及びJ遺伝子の下流に挿入されている。好ましい実施形態において、トランスジェニックマウスのV、D、及びJ遺伝子セグメントは、ヒトコード領域とマウス非コード領域とからなるキメラである。DNAカセットは以下のうちの1つ以上を含む:スプライスアクセプター、リボソームスキップ配列又はIRES、オープンリーディングフレーム、終止コドン、又はポリアデニル化シグナル配列。加えて、重鎖対立遺伝子は、ヘテロ二量体化のためCエクソン(611及び612)に対して図2に記載されるもの(図2の208及び209)と同じ改変を含む。VDJ組換えイベント後(614)、対立遺伝子601上のインフレームVエクソン(615)のアセンブリの成功により、完全長重鎖の正常な発現がもたらされる。対照的に、対立遺伝子602上のDNAカセット(610)では、いかなるVDJ再構成(616)の成功によっても完全長重鎖ポリペプチドの発現を可能にすることができない。部位特異的DNAリコンビナーゼ遺伝子の発現後(617)、第1の対立遺伝子(601)上のCエクソン(608)並びに第2の対立遺伝子(602)上のDNAカセット(610)が染色体から切り出される。両方の対立遺伝子上のVDJエクソン(615、616)が、ここで重鎖ヘテロ二量体化の助けとなる改変を含む下流Cエクソンと共に発現することができようになる。図中の表示される成分は以下のとおりである:改変重鎖対立遺伝子(601、602);括弧内に示されるV遺伝子、「n」は複数個の遺伝子セグメントの存在を指す(603);括弧内に示されるD遺伝子、「n」は複数個の遺伝子セグメントの存在を指す(604);J遺伝子(605);重鎖「イントロン」エンハンサー(606);スイッチ領域(607);Cμ及び/又はCδエクソン(608);部位特異的DNAリコンビナーゼ認識配列(609);下の矢印によって指示されるセンス方向のDNAカセット(610);変異Cγ1エクソン(611;612);重鎖3’エンハンサー(613);VDJ組換えイベント(614);アセンブルされたVDJエクソン(615、616);部位特異的DNAリコンビナーゼの活性化(617)。
トランスジェニック細胞ライブラリ
本発明のトランスジェニック細胞を用いることにより、形質細胞の表面上にある目的の抗体を同定するための発現ライブラリ、好ましくは低複雑度のライブラリを作製し得る。従って本発明はまた、形質細胞上に発現する抗原特異的抗体を同定するための、本発明の細胞技術を用いて作製された抗体ライブラリも含む。
トランスジェニック動物
本発明の具体的な態様において、本発明は、操作された重鎖又は軽鎖遺伝子を担持するトランスジェニック動物を提供する。
特定の実施形態において、本発明のトランスジェニック動物はヒト免疫グロブリン領域を更に含む。例えば、内因性マウス免疫グロブリン領域をヒト免疫グロブリン配列に置き換えて、創薬を目的とした部分的又は完全ヒト抗体を作り出すための数多くの方法が開発されている。かかるマウスの例としては、例えば、米国特許第7,145,056号明細書;同第7,064,244号明細書;同第7,041,871号明細書;同第6,673,986号明細書;同第6,596,541号明細書;同第6,570,061号明細書;同第6,162,963号明細書;同第6,130,364号明細書;同第6,091,001号明細書;同第6,023,010号明細書;同第5,593,598号明細書;同第5,877,397号明細書;同第5,874,299号明細書;同第5,814,318号明細書;同第5,789,650号明細書;同第5,661,016号明細書;同第5,612,205号明細書;及び同第5,591,669号明細書に記載されるものが挙げられる。
特に好ましい態様において、本発明のトランスジェニック動物は、ワブル(Wabl)及びキリーン(Killeen)による同時係属出願の米国特許出願公開第2013/0219535号明細書に記載されるとおりのキメラ免疫グロブリンセグメントを含む。かかるトランスジェニック動物は、導入された部分的ヒト免疫グロブリン領域を含むゲノムを有し、この導入された領域は、ヒト可変領域コード配列と、非ヒト脊椎動物の内因性ゲノムをベースとする非コード可変配列とを含む。好ましくは、本発明のトランスジェニック細胞及び動物は、内因性免疫グロブリン領域の一部又は全てが取り除かれているゲノムを有する。
抗体産生における使用
細胞のインビトロ培養は、数多くの治療用バイオテクノロジー製品の生産の基本となっており、タンパク質産物の細胞内産生及び支持培地中への放出を伴う。培養下で成長する細胞からの時間の経過に伴うタンパク質産生の量及び質は、例えば、細胞濃度、細胞周期段階、細胞のタンパク質生合成速度、細胞の生存及び成長を支持するために用いられる培地の条件、及び培養下の細胞の寿命など、幾つもの要因に依存する(例えば、フレネー(Fresney)、「動物細胞の培養(Culture of Animal Cells)」、ワイリー(Wiley)、ブラックウェル(Blackwell)、2010年;及び「医薬及び細胞ベースの治療薬のための細胞培養技術(Cell Culture Technology for Pharmaceutical and Cell−Based Therapies)」、オツターク(Ozturk)及びハ(Ha)編、CRC出版(CRC Press)、2006年を参照のこと)。
本発明は、動物を2つ以上の抗原で同時にチャレンジするか、又は初めに1つの抗原でチャレンジし、次に後にもう1つの抗原でチャレンジする免疫スキームから得られるB細胞の供給源を提供する。いずれの場合にも、個々の動物の抗原特異的抗体力価を増加させるため複数回の免疫が用いられ得る。これらの2つの免疫シリーズの間に、誘導可能な部位特異的組換えステップが含まれる。最後の免疫スキームの後、B細胞が単離され、培養されるか又はハイブリドーマの作成に使用され、又は免疫グロブリン鎖遺伝子のクローニング用RNAの供給源として使用される。B細胞又はそれが含有する抗体鎖は、二重特異的抗原結合特性に関して試験される。ハイブリドーマの場合、これは、ハイブリドーマを直接二重特異性抗体に関してスクリーニングするか、又は一方の種類の抗原に対する特異性に関してスクリーニングし、次にそれらが第2の種類の抗原に対する特異性を付与する追加的な再構成された免疫グロブリン鎖遺伝子を担持しているかどうか、即ちそれらが潜在性の又は発現済みの二重特異性を有するかどうかを更に分析することにより達成される。
(実施例)
以下の例は、当業者に本発明をどのように作製及び使用すればよいかについての完全な開示及び説明を提供するために示され、本発明者らがその発明であると見なすものの範囲を限定することを意図するものでなく、また、以下の実験が実施される唯一全ての実験であることを表明又は含意することを意図するものでもない。当業者は、広義に説明されるとおりの本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態として示されるとおりの本発明に対して数多くの変形例及び/又は改良例を作成し得ることを理解するであろう。従って、本実施形態はあらゆる点で例示的且つ非限定的なものと考えられるべきである。
使用する用語及び数値(例えば、ベクター、量、温度等)に関しては正確を期すように努めているが、幾らかの実験誤差及び偏差は考慮されなければならない。特に指示がない限り、部数は重量部数であり、分子量は重量平均分子量であり、温度はセ氏温度であり、及び圧力は大気圧下又はほぼ大気圧下である。
実施例1.2つ以上の抗原による同時免疫後の二重特異性抗体の単離が可能な操作された重鎖対立遺伝子。アイソタイプスイッチ能力を欠く2つの改変重鎖対立遺伝子(図2に示されるとおり)を担持するトランスジェニックマウスを作成する。両方の対立遺伝子ともVDJ組換えを起こすことができる。好ましい実施形態において、B細胞発生時にIgM重鎖の代わりにIgG1が発現し、しかしIgMを含めた任意の他のアイソタイプを用いてもよい。IgG1のみを発現するB細胞は極めて正常に発生し、免疫時に抗原に応答する(例えば、ワイスマン(Waisman)ら著、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン(Journal of Experimental Medicine)、第204巻、p.747〜758、2007年を参照のこと)。
両方のIgG1対立遺伝子とも、4番目のエクソン(C3ドメインをコードする)が、重鎖ヘテロ二量体の形成を促進し且つホモ二量体化を抑制するように変異している。好ましい方法では、変異は、一方の重鎖対立遺伝子上のD276K、E233K、及びQ234K;及び他方の重鎖対立遺伝子上のK286D、K269D、及びT247Dである(アミノ酸付番はC1の最初のコドンから開始する)。ヒトIgG1重鎖における同様の位置の変異は、ヘテロ二量体化及び細胞株における二重特異性抗体の分泌を促進することが示されている(例えば、グナセカラン(Gunasekaran)ら著、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第285巻、p.19637〜19646、2010年を参照のこと)。
B細胞発生時、変異IgG1重鎖はプレBCRを形成するにはホモ二量体化が不十分であるため、一方の重鎖対立遺伝子のみが再構成されたプロB細胞は発生が阻まれる。従って、対立遺伝子排除を媒介するには不十分なシグナルしか伝達されず、変異Cγ1を発現する第2の重鎖対立遺伝子がVDJ組換え可能になる。B細胞の発生は、両方の変異重鎖が共発現し、且つヘテロ二量体化してプレBCRを形成したときに限り、プロB細胞段階を超えて進行することができる。
最終的に、この好ましい方法のトランスジェニックマウスにおける成熟B細胞は、1つの軽鎖を含む細胞1つにつき2つの機能性重鎖を有することになる。このトランスジェニックマウスは、2つ以上の目的の抗原による同時免疫と、続く標準方法を用いたハイブリドーマの作成に使用し得る。このトランスジェニックマウスに由来するハイブリドーマは、二重特異性抗体の直接単離が可能である。
この実施例1に関する重鎖対立遺伝子の例示的実施形態では、両方の重鎖対立遺伝子(201、202)のV(203)、D(204)、及びJ(205)遺伝子は、ヒトコード配列をマウス調節配列と共に含み、これはワブル(Wabl)及びキリーン(Killeen)による同時係属出願の米国特許出願公開第2013/0219535号明細書に説明されている。野生型マウスに見られる重鎖「イントロン」エンハンサー(206)並びに全ての下流エレメントの配列は、重鎖定常領域遺伝子を含め、LOCUS:NG_005838(1..180,971)に記載される。この実施例1では、全てのアイソタイプのCエクソンを包含する8,608..175,134にわたる配列が両方の重鎖対立遺伝子から欠失し、改変Cγ1エクソンに置き換えられている(図2のエレメント208及び209)。両方のエレメント208及び209のエクソン4は、自己二量体化よりも互いとのヘテロ二量体化に有利に働くように変異している。両方の重鎖対立遺伝子の変異Cγ1 cDNA配列が[配列番号1及び2]として特定され、並びに重鎖対立遺伝子の野生型cDNA配列が[配列番号3]として特定される。
実施例2.連続免疫後の二重特異性抗体の単離が可能な操作された重鎖対立遺伝子
部位特異的DNA組換えによってオン又はオフを切り換えることのできる重鎖対立遺伝子を担持するトランスジェニックマウスを作成する。対立遺伝子の一方は、生産的VDJ再構成後に完全長重鎖の発現能を有するが、他方の対立遺伝子はこの機能性を欠いている。
両方の対立遺伝子が、定常ドメインコードローカルの範囲内に位置する1つ以上の部位特異的リコンビナーゼ認識配列を含有する。これらの部位における部位特異的組換えは両方の対立遺伝子においてDNA断片の逆位を生じさせ、この逆位の結果としてこれらの対立遺伝子における定常ドメイン機能性が変化する。
部位特異的組換えは、当初完全長重鎖タンパク質の発現能を欠いている対立遺伝子にその能力を付与する。対照的に、部位特異的組換えは、当初この能力を有している対立遺伝子からそれを取り除く。
この実施形態の一つのバージョンを図4に示し、ここでは関連性のある部位特異的組換え配列に409及び410を付し、及び定常ドメインコードエクソンを406及び412と表示している。定常ドメインコードエクソンの転写方向は表示がある構成要素のすぐ下に矢印で示している。
図4は、VDJ再構成が起こってVエクソン(403及び404)が生成された後の構成になった2つの対立遺伝子が示される。しかしながら、図4に示される対立遺伝子のVDJ再構成は、いずれかの対立遺伝子に非生産的な遺伝子セグメント連結をもたらす可能性もある。同様に、この過程はまた、いずれかの対立遺伝子に生産的再構成をもたらす可能性もある。B細胞は対立遺伝子401から完全長重鎖分子を発現する場合に限り骨髄におけるその発生を完了し、これは、対立遺伝子402が生産的なVDJ組換えを起こすことができたとしても、それはCμ及び/又はCδエクソンの全て又は一部が逆方向であるため完全長重鎖を発現できないことが理由である。
図4に示される対立遺伝子を担持するマウスにおいて発生する末梢B細胞は、対立遺伝子401に由来する重鎖を含むB細胞抗原受容体(膜貫通型又は分泌型)を発現する。これらのB細胞抗原受容体の軽鎖は、それらの軽鎖遺伝子座のうちの一方における正常な独立したVJ再構成に由来する。
図4に示される対立遺伝子を担持するマウスを免疫すると、免疫原に特異的な抗体を発現するB細胞のクローン性増殖が生じる。決定的なことに、この場合もまた、これらの抗体は対立遺伝子401に由来する重鎖だけを含む。繰り返し免疫により、通常のマウスで起こるものと同様のクローン性増殖、体細胞超変異、及びアイソタイプスイッチングの増強がもたらされる(図4に414として示す)。
Bリンパ球を含めた複数の細胞型で特定の部位特異的DNAリコンビナーゼの誘導性発現が可能なトランスジェニックマウス系が存在し、又はそれが可能となるように容易に操作することができる。本方法の更に別の実施形態において、図4に示される変異対立遺伝子401及び402を担持するトランスジェニックマウスは、タモキシフェン誘導性システムなどの誘導性部位特異的リコンビナーゼシステムを更に有する。免疫に使用した抗原に対して実証可能な抗体応答を示した免疫マウスにおいて、関連性のある部位特異的リコンビナーゼの発現を生じさせる。
部位特異的DNAリコンビナーゼの発現後(図4の415)、両方の対立遺伝子において、誘導されたDNAリコンビナーゼの部位が隣接する染色体セグメントが逆位を起こす。結果として生じる特徴は、対立遺伝子401上の完全長重鎖の発現能の喪失である。同時に、対立遺伝子402が完全長重鎖の発現能を獲得する。
免疫に応答してクローン性増殖を起こしたB細胞の一部で対立遺伝子402が生産的に再構成される。かかる第2の対立遺伝子の生産的再構成の頻度は、典型的には通常の場合よりもはるかに高く、なぜならこの対立遺伝子はB細胞発生時に完全長重鎖を発現せず、しかしそれにも関わらずVDJ再構成を起こす能力は有するためである。
図4に示される新たに活性化された対立遺伝子402を担持するマウスを免疫すると、免疫に使用した抗原に特異的なB細胞抗原受容体を発現するB細胞のクローン性増殖が生じる。これらのB細胞抗原受容体(膜貫通型又は分泌型)は、対立遺伝子402に由来する重鎖だけを含む。繰り返し免疫により、通常のマウスで起こるものと同様のクローン性増殖、体細胞超変異、及びアイソタイプスイッチングの増強がもたらされる。
2回目の免疫に使用した抗原に特異的なB細胞には、一部に第1の抗原に応答したクローン性増殖を起こさなかったものが含まれる。かかるB細胞は、これらの免疫の両方で使用した抗原の認識能を有する二重特異性抗体の望ましい供給源ではない。
しかしながら、第2の抗原に特異的なB細胞のある割合は、第1の抗原に応答したクローン性増殖に関与した。これらのB細胞は、それらの再構成された重鎖遺伝子のうちの一方が第1の免疫原に対する特異性を有し、他方の再構成された重鎖遺伝子が第2の免疫原に対する特異性を有するため、明らかな二重特異性抗体源である。いずれの場合にも、個々のB細胞は1つの軽鎖タンパク質を両方の重鎖タンパク質と対にしている。
ハイブリドーマ又は他のクローニング技術を利用して、第2の免疫抗原に特異性を有するB細胞を回収し得る。次にこれらのB細胞を分析して、それらが第1の免疫抗原に対する特異性を付与する再構成した重鎖遺伝子もまた担持しているかどうかを決定する。
実施例3.連続免疫後の二重特異性抗体の単離が可能な代替的な操作された重鎖対立遺伝子。ここに説明する方法は実施例2に説明するものと極めて良く似ている。部位特異的DNAリコンビナーゼシステムによってオン又はオフを切り換えることのできる2つの重鎖免疫グロブリン対立遺伝子を担持するようにトランスジェニックマウスを操作する。2つの対立遺伝子は、実施例2に説明するものと同様の連続免疫スキーム向けに設計し、結果的にそれらの定常ドメインローカルにおける概して同種の機能性を特徴とする。これらの対立遺伝子が異なる点は、所望の種類の二重特異性B細胞を単離する際の効率を改善するように設計されたエレメントを含むことである。
この実施形態は図5に示す。2つの操作された重鎖対立遺伝子のうちの一方(対立遺伝子501)には、重鎖エンハンサー(505)より後ろ、但しCμエクソン(506)の前のスイッチ領域(507)より前に、2つの部位特異的DNAリコンビナーゼ認識配列(509及び510)が隣接するDNAカセット(512)が挿入されており、従って重鎖エンハンサー(505)はアイソタイプスイッチング後もゲノムに残る。第2の重鎖対立遺伝子(対立遺伝子502)にも類似した位置に同様のエレメントが、但し逆向き(下の矢印)に挿入される。これらのDNAカセットは、アセンブルされたVDJエクソンと同じ転写方向で整列しているとき重鎖エクソンのオープンリーディングフレームを分断するように設計される。
一実施形態において、対立遺伝子501は、Vエクソンから逆向きに整列したネズミ科動物インテグリンβ−7(Itgb7)遺伝子のエクソン15及び16からなる。Itgb7エクソンは両方ともスプライスアクセプターを含む。加えて、Itgb7エクソン15は終止コドンを有し、一方Itgb7エクソン16は終止コドン並びにポリアデニル化配列シグナルを含む。逆の転写方向のため、このDNAカセットは対立遺伝子501上のインフレームVDJ組換えからの重鎖発現に干渉しない。
好ましい構成では、対立遺伝子502における挿入されたDNAカセットは、VDJ組換えからのインフレームVエクソンのアセンブリに成功したB細胞に生存、機能性、又は選択上の利点を提供する遺伝子由来のオープンリーディングフレームからなる。かかる遺伝子の例は、抗アポトーシスB細胞リンパ腫−2(Bcl2)である。有利な遺伝子のオープンリーディングフレームは、重鎖mRNAと同じ転写方向に整列する。この遺伝子がVエクソンとの融合タンパク質として発現することができないように、スプライスアクセプターと有利な遺伝子のオープンリーディングフレームとの間にピコルナウイルス由来の2Aペプチドなどのリボソームスキップ配列が配置される。2Aペプチドはまた、有利な遺伝子がインフレームVエクソンのアセンブリに成功したBリンパ球においてのみ発現し、生産的VDJ再構成を欠くB細胞では発現しないことも確実にする。
一例示的実施形態において、両方の重鎖対立遺伝子(501、502)上のアセンブルされたVDJ遺伝子(503、504)は、ヒトコード配列をマウス調節配列と共に含む個々の遺伝子セグメントに由来し、これについてはワブル(Wabl)及びキリーン(Killeen)による同時係属出願の米国特許出願公開第2013/0219535号明細書に説明されている。下流にある全ての内因性配列は、重鎖定常領域遺伝子を含め、LOCUS:NG_005838(1..180,971)に記載されている。Itgb7及びBcl2 DNAカセット(それぞれエレメント512及び514)の配列は[配列番号4及び5]として特定され、この遺伝子座の約178,000位、重鎖「イントロン」エンハンサーと1番目のエクソンCμエクソンのスイッチ領域との間に挿入される。この実施形態において、第1の部位特異的DNAリコンビナーゼの認識配列(エレメント509及び510)はlox66及びlox71である(例えば、オーベルドエルファー(Oberdoerffer)ら著、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res)、第31巻、p.e140、2003年を参照のこと)。またこの実施形態において、第2の部位特異的DNAリコンビナーゼの認識配列(エレメント511)は、Flp酵素によって使用されるものである(例えば、マックロード(McLeod)ら著、モレキュラー・セル・バイオロジー(Mol Cell Biol)、第6巻、p.3357〜3367、1986年を参照のこと)。この実施形態において、ヘテロ二量体(各重鎖対立遺伝子上のエレメント513)は、自己二量体化よりも互いとのヘテロ二量体化に有利に働くように設計された変異Cγ1である。両方の重鎖対立遺伝子の変異Cγ1 cDNA配列が[配列番号1及び2]として特定される。
実施例2にあるとおり、最初の免疫後、逆位のItgb7カセットは重鎖遺伝子座の転写活性に何ら効果を及ぼさないため、対立遺伝子501は通常どおり抗原に応答することができる。第2のDNAカセットは対立遺伝子502の重鎖オープンリーディングフレームを分断するため、免疫原に対する特異性は最初の免疫後の対立遺伝子502からは選択されない。
部位特異的DNAリコンビナーゼが発現すると(516)、両方の重鎖対立遺伝子上のDNAカセットが逆位になる。ここで対立遺伝子501におけるItgb7遺伝子カセットのオープンリーディングフレームが重鎖mRNAと同じ転写方向になる。事実上、Itgb7遺伝子の終止コドン及びポリアデニル化シグナル配列が、対立遺伝子501からの完全長重鎖の発現を阻止する。
対照的に、対立遺伝子502はここで、挿入された有利な遺伝子のオープンリーディングフレームがもはや重鎖mRNAと同じ向きでないため、完全長重鎖を発現することができるようになる。続いて対立遺伝子502は2回目の免疫において免疫原に応答することができる。
ハイブリドーマ又は他のクローニング技術を利用して、第2の免疫抗原に特異性を有するB細胞を回収し得る。次にこれらのB細胞を分析して、それらが第1の免疫抗原に対する特異性を付与する再構成した重鎖遺伝子もまた担持しているかどうかを決定することができる。
実施例4.2つ以上の抗原による同時免疫後に二重特異性抗体の単離が可能な代替的操作された重鎖対立遺伝子。この実施例4のスキームは図6に示され、これは実施例1並びに実施例3の両方のエレメントを一部含む。アイソタイプスイッチ能力を欠く2つの改変重鎖対立遺伝子を担持するようにトランスジェニックマウスを通常の方法で操作する。一方の重鎖対立遺伝子(図6の601)では、Cμ及び/又はCδ重鎖エクソンに、直接向けられた部位特異的リコンビナーゼ認識配列が隣接する。更に下流に、[配列番号1及び2]として特定されるとおりの2つの重鎖対立遺伝子の変異Cγ1 cDNA配列など、図2及び実施例3で対立遺伝子201に関して説明したとおりの重鎖間ヘテロ二量体化のためのC3変異を含むCγ1エクソンがある。対立遺伝子601は、アセンブルされたVエクソンから転写されるそのオープンリーディングフレームが部位特異的DNAリコンビナーゼ認識配列によって途切れていないため、通常のB細胞発生を支持することができる。第2の重鎖対立遺伝子(図6の602)では、直接向けられた同じ部位特異的DNAリコンビナーゼの認識配列(609)が隣接するDNAカセット(610)がJ遺伝子(605)の下流に挿入される。従って、DNAカセット(610)はそのオープンリーディングフレームを分断するように設計されているため、対立遺伝子602上のインフレームVDJアセンブリは完全長重鎖を発現する能力を失っている。これらのエレメントの更に下流に、対立遺伝子601によってコードされる変異IgG1重鎖とのヘテロタイプな会合のための相補的なC3変異を含むCγ1エクソンがある。
実施例3にあるとおりの好ましい構成では、対立遺伝子602における挿入されたDNAカセットは、VDJ組換えからのインフレームVエクソンのアセンブリに成功したB細胞に生存、機能性、又は選択上の利点を提供する遺伝子由来のオープンリーディングフレームを含む。このDNAカセットはまた、有利な遺伝子のオープンリーディングフレームの前にスプライスアクセプター及び2Aペプチド配列も含む。重要なことに、2Aペプチドはまた、有利な遺伝子がインフレームVエクソンのアセンブリに成功したBリンパ球においてのみ発現し、生産的VDJ再構成を欠くB細胞では発現しないことも確実にする。
部位特異的DNAリコンビナーゼの発現が導入されると、部位特異的DNAリコンビナーゼ認識配列が隣接した間に介在するDNAセグメントが両方の重鎖対立遺伝子から切り出される。続いて、ここで両方の重鎖が完全長重鎖発現に関してコンピテントになる。実施例1で説明したとおり、これらの2つの変異IgG1重鎖は細胞表面発現及び分泌に関して互いに相互依存している。成熟B細胞の生存にはBCRの細胞表面発現もまた必要であるため(例えば、ラム(Lam)ら著、セル(Cell)、第90巻、p.1073〜1083、1997年を参照のこと)、いずれかの変異重鎖対立遺伝子単独の発現はB細胞死をもたらす可能性が高い。
実施例1にあるとおり、この例のトランスジェニックマウスの成熟B細胞は、1つの軽鎖を含む細胞1つにつき2つの機能性重鎖を有する。続いてこのトランスジェニックマウスを2つ以上の目的の抗原による同時免疫に使用し得る。標準方法を用いて二重特異性抗体を有するハイブリドーマを作成する。
例えば例示的実施形態において、ワブル(Wabl)及びキリーン(Killeen)による同時係属出願の米国特許出願公開第2013/0219535号明細書に記載されるとおり、両方の重鎖対立遺伝子(601、602)のV(603)、D(604)、及びJ(605)遺伝子がヒトコード配列をマウス調節配列と共に含む。重鎖「イントロン」エンハンサー(606)並びに全ての下流エレメントの配列は、野生型マウスに見られる重鎖定常領域遺伝子を含め、LOCUS:NG_005838(1..180,971)に記載されている。対立遺伝子601では、全ての下流アイソタイプのCδ及びCエクソンを包含する8,608..168,728にわたる配列が欠失している。加えて、対立遺伝子601のCμエクソン(遺伝子座の171230..175134)には、2つの直接向けられた標準loxP部位が隣接する。対立遺伝子602では、全てのアイソタイプのCエクソンを包含する遺伝子座の8,608..175,134にわたる配列が欠失している。2つの直接向けられたloxP部位が隣接するItgb7 DNAカセットが、遺伝子座の約178,000位に挿入されている。両方の対立遺伝子上の3’loxP部位の下流に、改変Cγ1エクソン(エレメント611、612)の配列がある。両方のエレメント611及び612のエクソン4が、自己二量体化よりも互いとのヘテロ二量体化に有利に働くように変異している。両方の重鎖対立遺伝子の変異Cγ1 cDNA配列が[配列番号1及び2]として特定される。
上記は単に本発明の原理を例示するに過ぎない。本発明の原理を具体化する且つその趣旨及び範囲内に含まれる様々な変形例を考案することが、本明細書に明示的に説明又は図示されていなくても当業者には可能であることが理解されるであろう。更に、本明細書に記載される全ての例及び条件付きの文言は、主に、本発明の原理及び本発明者らによって当該技術分野の促進に寄与される概念を読者が理解する際に助けとなるように意図され、かかる具体的に記載される例及び条件に限定されないものと解釈されなければならない。更に、本発明の原理、態様、及び実施形態並びにそれらの具体的な例を記載する本明細書における全ての記述が、それらの構造及び機能の両方の均等物を包含するように意図される。加えて、かかる均等物が、現在公知の均等物及び将来開発される均等物の両方、即ち構造に関わらず同じ機能を果たす開発される任意の要素を含むように意図される。従って、本発明の範囲が本明細書に図示及び記載される例示的実施形態に限定されることは意図されない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は添付の特許請求の範囲によって具体化される。以下の特許請求の範囲においては、用語「手段(means)」を使用しない限り、そこに記載されるいかなる特徴又は要素も、米国特許法第112条第6パラグラフに規定されるミーンズ・プラス・ファンクションの限定と解釈されてはならない。
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下に記載する。
[項1]
免疫グロブリン重鎖遺伝子対立遺伝子排除が障害された遺伝子改変動物であって、
細胞1つにつき2つ以上の異なる抗原受容体、及び二重特異性抗原受容体の少なくとも一方を共発現する能力を各々が有するBリンパ球の選択を可能にする、遺伝子改変動物。
[項2]
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子の1つ以上の定常領域コード部分の範囲内にあるエクソンが、発生中のBリンパ球においてV(D)J再構成後に対立遺伝子排除が起こらないように変化している、項1に記載の遺伝子改変動物。
[項3]
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子の変化が、前記免疫グロブリン重鎖遺伝子の1つ以上の定常領域コード部分における1つ以上のエクソンの発現の誘導可能な不活性化及び活性化の少なくとも一方を可能にする、項1に記載の遺伝子改変動物。
[項4]
1つ以上の定常領域エクソンの一部又は全てが、同じ免疫グロブリン重鎖遺伝子における再構成したV(D)J遺伝子セグメントと逆のリーディングフレーム方向に配置されている、項1に記載の遺伝子改変動物の免疫グロブリン重鎖遺伝子。
[項5]
同じ染色体上の再構成したV(D)J遺伝子セグメントからの定常領域エクソンの発現を阻止するDNAカセットが挿入されている、項1に記載の遺伝子改変動物の免疫グロブリン重鎖遺伝子。
[項6]
2つの異なる抗原を同時に注入したとき、又は1つの抗原を注入し、続いて第2の異なる抗原を注入したとき、2つ以上の異なる抗原受容体及び二重特異性抗原受容体の少なくとも一方を共発現するか又は連続的に発現する能力を各々が有するBリンパ球を生成する、項1に記載の遺伝子改変動物。
[項7]
前記2つの抗原受容体のヘテロ二量体化が発生又は分化イベントによって可能になるか、又はそれを誘導することができる、項6に記載の遺伝子改変動物のB細胞。
[項8]
前記動物の個々のB細胞における2つの再構成した免疫グロブリン重鎖遺伝子が、互いに効率的にホモ二量体化しない遺伝子産物を発現する、項1に記載の遺伝子改変動物。
[項9]
前記2つの異なる重鎖遺伝子産物のホモ二量体化が起こらないか、又はヘテロ二量体化と比べて不利である、項8に記載の遺伝子改変動物のB細胞。
[項10]
免疫グロブリン軽鎖遺伝子対立遺伝子排除が障害された遺伝子改変動物であって、
細胞1つにつき2つ以上の異なる抗原受容体、及び二重特異性抗原受容体の少なくとも一方を共発現する能力を各々が有するBリンパ球の選択を可能にする、遺伝子改変動物。
[項11]
前記動物の1つ以上の免疫グロブリン軽鎖遺伝子の範囲内にある定常領域コードエクソンが、発生中のBリンパ球においてVJ再構成後に対立遺伝子排除が起こらないように変化している、項10に記載の遺伝子改変動物。
[項12]
前記遺伝子改変動物の1つ以上の免疫グロブリン軽鎖遺伝子の変化が、免疫グロブリン重鎖遺伝子の定常領域コード部分の発現の誘導可能な不活性化及び活性化の少なく一方を可能にする、項10に記載の遺伝子改変動物。
[項13]
1つ以上の定常領域エクソンの一部又は全てが、同じ免疫グロブリン軽鎖遺伝子における再構成したVJ遺伝子セグメントと逆のリーディングフレーム方向に配置されている、項10に記載の遺伝子改変動物における免疫グロブリン軽鎖遺伝子。
[項14]
同じ染色体上の前記再構成したVJ遺伝子セグメントからの定常領域エクソンの発現を阻止するDNAカセットが挿入されている、項10に記載の遺伝子改変動物における免疫グロブリン軽鎖遺伝子。
[項15]
定常領域エクソンが、同じ細胞における両方でなく片方の重鎖対立遺伝子との会合に適合するように改変される、項10に記載の遺伝子改変動物における免疫グロブリン軽鎖遺伝子。
[項16]
2つの異なる抗原を同時に注入したとき、又は1つの抗原を注入し、続いて第2の異なる抗体を注入したとき、細胞1つにつき2つ以上の異なる抗原受容体、及び二重特異性抗原受容体の少なくとも一方を共発現するか又は連続的に発現する能力を各々が有するBリンパ球を生成する、項10に記載の遺伝子改変動物。
[項17]
項10に記載の遺伝子改変動物に由来する初代B細胞、不死化B細胞、又はハイブリドーマ。
[項18]
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子の変化が、重鎖のみからなる二重特異性抗体の産生を可能にする、項1に記載の遺伝子改変動物。
[項19]
項4又は5に記載の免疫グロブリン重鎖遺伝子又は項13〜15のいずれか一項に記載の免疫グロブリン軽鎖遺伝子から転写される部分的又は全体的な免疫グロブリンタンパク質。
[項20]
項7、9及び17のいずれか一項に記載の細胞に由来する部分的又は全体的な免疫グロブリンタンパク質。

Claims (4)

  1. 遺伝子改変げっ歯類細胞であって、
    第1免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含む第1重鎖対立遺伝子と、第2免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含む第2重鎖対立遺伝子とを含み、
    各対立遺伝子の前記第1及び第2免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、再構成されていないV、D、及びJ遺伝子セグメントと、それに続く変異型C3ドメインを含むCエクソンとを含み、
    前記第1重鎖対立遺伝子の前記変異型C3ドメインがD276K、E233K、及びQ234を含み、
    前記第2重鎖対立遺伝子の前記変異型C3ドメインがK286D、K269D、及びT247Dを含む、遺伝子改変げっ歯類細胞。
  2. 前記げっ歯類細胞が、マウス細胞又はラット細胞である、請求項1に記載の遺伝子改変げっ歯類細胞。
  3. 配列番号1及び2に示される変異Cγ1を含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含む、請求項1に記載の遺伝子改変げっ歯類細胞。
  4. 前記V、D、及びJ遺伝子セグメントが、ヒトコード領域及びマウス非コード領域を含む、請求項1に記載の遺伝子改変げっ歯類細胞。
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