JP2021167256A - 低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法 - Google Patents

低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 低Mg濃度の高純度塩化コバルトを低コストで製造する方法を提供する。【解決手段】 Mg等の不純物を含む粗塩化コバルト水溶液を浄液処理することで高純度塩化コバルト水溶液を製造する高純度塩化コバルト水溶液の製造方法であって、該浄液処理を行う浄液工程と、該高純度塩化コバルト水溶液の一部を用いて電解採取により電気コバルトを生成する電解工程と、該電解採取の際に排出される電解廃液から炭酸コバルトを生成する反応工程と、該炭酸コバルトを含むスラリーをpH調整剤として該浄液工程に送液する送液工程と、該送液に用いた配管の洗浄液に該高純度塩化コバルト水溶液を使用すると共に使用済みの該洗浄液を該浄液工程に繰り返す洗浄工程とからなる。【選択図】 図2

Description

本発明は、Mn等の不純物を含む粗塩化コバルト水溶液から低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液を低コストで製造する方法に関する。
湿式法によるニッケル製錬の一方法として、塩素浸出電解採取法が知られている。この湿式製錬法は、ニッケル硫化物を主成分とする原料の粉砕物を塩化物水溶液と混合し、得られたスラリーに塩素ガスを吹き込むことによりニッケルが浸出されたニッケル浸出液を生成する。このニッケル浸出液は、ニッケル(Ni)のほか、銅(Cu)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、コバルト(Co)などの不純物を含むため、セメンテーション工程や脱鉄工程などの工程でこれら不純物を除去して粗塩化ニッケル水溶液を生成し、更にコバルト溶媒抽出工程で、残余の不純物を除去する。このようにして得た高純度の塩化ニッケル水溶液を電解法で処理することよって、カソード上にニッケルを電着させる。これにより、電気ニッケルを生産することができる。
上記の塩素浸出電解採取法によるニッケル製錬では、コバルト溶媒抽出工程において粗塩化コバルト水溶液が回収される。この粗塩化コバルト水溶液に対して、例えば特許文献1に開示されているように脱マンガン工程、脱銅工程、脱亜鉛工程などの浄液工程で不純物を除去することで、高純度の塩化コバルト水溶液が得られる。この高純度の塩化コバルト水溶液を電解工程において電解法で処理することによって、カソード上にコバルトを電着させる。これにより、副産物としての電気コバルトを生産することができる。
上記の電気コバルトの生成を行う電解槽では、該電解槽内のコバルト濃度を所定の範囲に保つため、例えばCo濃度65〜85g/Lの高純度の塩化コバルト水溶液がコバルト電解給液として供給されるが、コバルトがカソードに電着してコバルトの濃度が低下するので、例えばCo濃度55〜75g/Lのコバルト電解廃液が電解槽から排出される。
このように、電解採取法による電気コバルトの生産においては、コバルト電解廃液のコバルト濃度が低下するので、蒸発濃縮装置によってコバルト電解廃液を濃縮し、コバルト電解給液の一部として電解槽に繰り返すことが行われる。また、浄液工程において、中和剤として炭酸コバルトが使われる場合、コバルト電解廃液の一部をこの炭酸コバルト製造のための原料として用いることができる。すなわち、コバルト電解廃液には、電解槽内の所定の濃度以下のコバルトが含まれているため、これを再利用するため、炭酸コバルト製造工程において該コバルト電解廃液の少なくとも一部を処理し、得られた炭酸コバルトを含むスラリーを固液分離することで、炭酸コバルトを濃厚スラリーの形態で回収することが行われている。
ところで、上記の塩化コバルト水溶液の電解法による処理では、コバルト電解給液中のMgはカソードに電着しないため、コバルト電解廃液中に残留する。また、上記の通り、コバルト電解廃液は濃縮され、コバルト電解給液の一部として電解槽に繰り返されるため、コバルト電解給液中のMgはコバルト電解廃液中に徐々に濃縮して行く。また、上記の電解廃液中に残留したMgは、上記のコバルト電解廃液中のCoの回収を目的とした炭酸コバルト製造工程において、一部はろ液側に抜けるが、大部分は炭酸コバルトスラリー中に分配されるので、上記したように該炭酸コバルトスラリーを中和剤としてコバルト電解工程の上流工程に繰り返して使用する場合は、粗塩化コバルト水溶液からコバルトの回収を行う上記プロセス(浄液工程)の系内に徐々に蓄積していく。その結果、上記電解槽に供給される高純度塩化コバルト水溶液中のMg濃度が上昇する。この高純度塩化コバルト水溶液は、電池材料用原料として一部が使用されることがあり、この場合は、使用先の工場で製造した電池材料中のMg含有率が上昇し、電池の性能に悪影響を及ぼすことが懸念される。
そこで、例えば特許文献2には、Mg濃度が上昇した電解廃液を、電解工程の上流工程のコバルト溶媒抽出工程の洗浄段の洗浄液として繰り返すものと、上記炭酸コバルト製造工程の原料として使用するものと、該炭酸コバルト製造工程で生成した炭酸コバルトのレパルプ用として使用するものと、コバルト電解給液用として蒸発濃縮するものとに分配する技術が開示されている。これにより上記系内のMgが払い出されてMgの濃縮を抑えることができるので、低Mg濃度で高純度の塩化コバルト水溶液を得ることができると記載されている。
特開2015−203134号公報 特開2020−019664号公報
しかしながら、上記の特許文献2の方法では、コバルト電解廃液の一部を浄液工程の上流の溶媒抽出工程に繰り返すので、その分だけ余分に該溶媒抽出工程以降の処理に負荷がかかり、その対策のため繰り返し処理のコストが高くなる、また電気コバルト生産能力を圧迫するという問題を抱えていた。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、不純物としてMgを含む粗塩化コバルト水溶液から低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液を低コストで製造することが可能な、低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の問題を解決するため、浄液工程の上流の溶媒抽出工程に電解廃液を繰り返すことなく低Mg濃度で高純度の塩化コバルト水溶液を製造する方法について鋭意研究を重ねた結果、コバルト電解廃液から生成した炭酸コバルトスラリーの送液配管の閉塞防止を目的として使用していた配管洗浄用のコバルト電解廃液をMg濃度の低い高純度塩化コバルト水溶液に変更することで上記系内のMg濃度の上昇を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法は、粗塩化コバルト水溶液を浄液処理することで高純度塩化コバルト水溶液を製造する高純度塩化コバルト水溶液の製造方法であって、前記浄液処理を行う浄液工程と、前記高純度塩化コバルト水溶液の一部を用いて電解採取により電気コバルトを生成する電解工程と、該電解採取の際に排出される電解廃液から炭酸コバルトを生成する反応工程と、該炭酸コバルトを含むスラリーをpH調整剤として前記浄液工程に送液する送液工程と、該送液に用いた配管の洗浄液に前記高純度塩化コバルト水溶液を使用すると共に使用済みの該洗浄液を前記浄液工程に繰り返す洗浄工程とからなることを特徴とする。
本発明によれば、不純物としてMgを含む粗塩化コバルト水溶液から低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液を低コストで製造することが可能になる。
本発明の実施形態に係る高純度塩化コバルト水溶液の製造方法を示すブロックフロー図である。 図1の炭酸コバルト製造工程を好適に実施することが可能な炭酸コバルト製造装置の模式的な設備フロー図である。 図2の制御装置10の実行手順を示すフローチャートの一具体例である。 図2の炭酸コバルト製造装置の代替例を示す模式的な設備フロー図である。 本発明の実施例で製造した高純度塩化コバルト水溶液中のMg濃度の経時変化を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る高純度塩化コバルト水溶液の製造方法について図1のブロックフロー図を参照しながら説明する。この図1に示す高純度塩化コバルトの製造方法は、塩素浸出電解採取法によるニッケルの湿式製錬プロセスに組み込まれており、塩素浸出処理によりニッケルと共に浸出されたコバルトを電気コバルトの形態で回収するプロセスである。この高純度塩化コバルト水溶液の製造方法は、2種類の原料を用いており、それらのうちの第1の原料であるコバルト及びマグネシウムを含有する粗塩化ニッケル水溶液は電気ニッケルの製造プロセスで生成され、第2の原料である含マグネシウム塩化コバルト水溶液は硫酸ニッケルの製造プロセスで生成される。従って、先ずこれら2つの上流プロセスについて簡単に説明し、その後、本発明の実施形態の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法について説明する。
1.電気ニッケルの製造プロセス
電気ニッケルの製造プロセスでは、先ず、原料のニッケル・コバルト混合硫化物(MS又はミックスサルファイドとも称する)及びニッケルマットを塩素浸出して塩素浸出液を得る。ニッケル・コバルト混合硫化物の化学組成は、一般的にNiが50〜60質量%、Coが4〜6質量%、Sが30〜34質量%(いずれも乾燥物基準)であり、不純物としてMg、Fe、Cu、Znなどを含んでいる。一方、ニッケルマットの化学組成は、一般的にNiが74〜80質量%、Coが約1質量%、Cuが0.1〜0.4質量%、Feが0.1〜0.7質量%、Sが18〜23質量%(いずれも乾燥物基準)であり、更に不純物としてFe、Cu、Znなどを含んでいる。
これらを原料にして得られる塩素浸出液は、主成分が塩化ニッケル溶液であり、不純物としてコバルトのほか、鉄、銅、鉛、マンガン、亜鉛、マグネシウム等を含んでいる。この塩素浸出液は、セメンテーション工程及び脱鉄工程で順次処理される。セメンテーション工程では、原料のニッケルマットスラリー及びニッケル・コバルト混合硫化物スラリーと上記塩素浸出液との混合により該塩素浸出液中の銅が還元されてセメンテーション残渣となることで銅の除去が行われる。脱鉄工程では上記セメンテーション工程で脱銅された塩化ニッケル水溶液に酸化剤及び中和剤を加えて鉄澱物を生成することで脱鉄を行う。このようにして銅及び鉄が除去されることで、前述した第1の原料としてのコバルト及びマグネシウムを含有する粗塩化ニッケル水溶液が得られる。
2.硫酸ニッケルの製造プロセス
硫酸ニッケルの製造プロセスでは、先ず、原料のニッケルマット又はニッケル・コバルト混合硫化物を加圧浸出して浸出液を得る。この加圧浸出により、ニッケルマットやニッケル・コバルト混合硫化物に含まれるニッケル、コバルト、及び不純物が浸出され、粗硫酸ニッケル水溶液が得られる。上記の加圧浸出の条件は、例えば圧力1.8〜2.0MPaG、温度140〜180℃である。この加圧浸出で得られる加圧浸出液は主成分が硫酸ニッケル水溶液であり、不純物としてコバルトのほか、鉄、銅、鉛、マンガン、亜鉛、マグネシウム等を含んでいる。
上記加圧浸出液としての粗硫酸ニッケル水溶液は、脱鉄工程を経て酸性抽出剤による溶媒抽出工程で処理され、該粗硫酸ニッケル水溶液に含まれる不純物が除去される。上記酸性抽出剤としては、ジ−(2−エチルヘキシル)ホスホン酸(通称D2EHPA)や、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル(製品名PC−88A)などの燐酸エステル系酸性抽出剤が用いられる。この酸性抽出剤による溶媒抽出工程は、抽出段、洗浄段、交換段、ニッケル回収段、コバルト回収段、及び逆抽出段から一般的に構成される。
上記酸性抽出剤を用いた溶媒抽出では、抽出反応に水素イオンが関与するため、pHによって抽出率が変化する。抽出率は金属によって異なり、Fe>Zn>Cu>Mn>Co>Ca>Mg>Niの順に抽出されやすい。すなわち、Feが最も抽出され易く、Niが最も抽出されにくい。そこで、有機相の流れに従って抽出段、洗浄段、交換段、ニッケル回収段、コバルト回収段、及び逆抽出段の順に段階的にpHを下げていくことにより、これら複数種類の金属をそれぞれの段で別々に分離回収することができる。
この酸性抽出剤で抽出されたコバルトは、コバルト回収段にて塩酸水溶液で逆抽出された後、脱亜鉛工程で処理されることで、前述した第2の原料としてのマグネシウムを含有する塩化コバルト水溶液となる。上記したように、マグネシウムの抽出のされやすさは、ニッケルとコバルトの中間に位置するため、脱鉄工程を経て酸性抽出剤による溶媒抽出工程で処理される硫酸ニッケル水溶液に含まれるマグネシウムの大部分についても、コバルト回収段にて塩酸水溶液で逆抽出されるので、脱亜鉛工程を経た後の塩化コバルト水溶液に含まれることになる。このマグネシウムを含有する塩化コバルト水溶液は、例えばCo濃度が70〜85g/L程度、Mg濃度が0.1〜0.7g/L程度になる。
3.高純度塩化コバルト水溶液及び電気コバルトの製造方法
次に、本発明の実施形態の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法について図1を参照しながら説明する。この図1に示す本発明の実施形態の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法は、溶媒抽出工程S1、脱マンガン工程S2、脱銅工程S3、脱亜鉛工程S4、電解工程S5、蒸発濃縮工程S6、及び炭酸コバルト製造工程S7で構成されており、脱亜鉛工程S4で得た高純度塩化コバルト水溶液を電解採取法の電解給液として電解工程S5に供給することにより、製品として電気コバルトを製造している。上記の高純度塩化コバルト水溶液は、一部が抜き取られてリチウムイオン二次電池の正極材料の原料として用いられる。なお、図1において「[]」の内側に記載されている元素は、各溶液に含まれ得る代表的な元素を例示したものであり、これらが必ず記載通りに含まれていることを意味するわけではない。以下、これら工程の各々について説明する。
(1)溶媒抽出工程S1
溶媒抽出工程S1は、抽出始液としての前述した第1の原料である粗塩化ニッケル水溶液に対して抽出処理を行うことにより、ニッケルとコバルトとを分離する工程である。この溶媒抽出工程S1は、抽出段S11、洗浄段S12、及び逆抽出段S13から構成されており、それらの各々では、例えば複数のミキサー・セトラー装置を直列に接続して有機相と水相とを互いに向流に流す方式の向流多段方式が好適に用いられる。この場合、ミキサー・セトラー装置の数は、抽出始液の組成、抽出剤の種類、抽出装置等によって適宜定められる。
この溶媒抽出工程S1では抽出剤にアミン系抽出剤を使用する。このアミン系抽出剤の種類については特に制約はないが、反応性の高さや水に対する溶解度の低さの点から3級アミン系抽出剤が好ましく、取り扱いやすさや価格等を考慮すると、例えば、TNOA(Tri−n−octylamine)やTIOA(Tri−i−octylamine)がより好ましい。この抽出剤を希釈して抽出用の有機溶媒を調製するための希釈剤としては、水に対する溶解度の低さや良好な油水分離性の点から芳香族炭化水素が好ましい。この希釈剤を抽出剤と混合して有機相(有機溶媒)を調製する際、有機相としての好適な粘度を確保するために抽出剤の濃度を10〜40体積%にするのが好ましい。
上記のTNOAやTIOA等の3級アミンは、下記式1に示すように塩酸が付加することで活性化し、その結果、下記式2に例示するように金属クロロ錯イオンの抽出能力が発現する。これにより、ニッケルとコバルトの分離特性に優れた抽出剤となる。なお、式1及び式2中の「:」は、窒素原子の非共有電子対を表す。
[式1]
N:+HCl→RN:HCl
[式2]
2RN:HCl+CoCl 2−→(RN:H)CoCl+2Cl
上記式2に示す反応から分かるように、抽出段S11では金属元素のクロロ錯イオンとアミンとが反応して金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミンが生成される。従ってCo、Cu、Zn、Fe等のクロロ錯イオンを形成する金属種が有機相中に抽出され、クロロ錯イオンを形成しないニッケルやマグネシウムは抽出残液に残留する。これによりNi及びMgがそれ以外の金属元素から分離される。
上記抽出段S11から抜き出された抽出後有機は、次に後段の洗浄段S12に移送される。この洗浄段S12では、該抽出後有機に洗浄液を混合することで、前段の抽出段S11において分離しきれず微細な水滴の形態のエントレインメントとして抽出後有機相中に懸濁する主にニッケルからなる不純物が除去される。この洗浄段S12の洗浄液には、純度の高い塩化コバルト水溶液である逆抽出液を用いるのが好ましい。すなわち、純度の高い塩化コバルト水溶液で有機相を洗浄することによって、抽出段S11からエントレインメントとして持ち込まれる該有機相中の塩化ニッケル水溶液としてのニッケルと、塩化コバルト水溶液からなる洗浄液中のコバルトとが置換され、これにより有機相のニッケル濃度を低下させることができる。
上記洗浄段S12で洗浄された洗浄後有機は、次に後段の逆抽出段S13に移送される。この逆抽出段S13では、洗浄済みの有機相である洗浄後有機に弱酸性水溶液を混合することにより、上記式2の逆反応である下記式3に従ってコバルトのクロロ錯イオンを担持したアミンが逆抽出処理される。これにより、コバルトは有機相から水相中に移動する。
[式3]
(RN:H)CoCl→2RN:HCl+CoCl
上記したように、溶媒抽出工程S1では、金属のクロロ錯イオンの生成のしやすさに基づき、塩化ニッケル水溶液からコバルト等を分離し、塩化コバルト水溶液を得ている。一般的には溶媒抽出工程S1の抽出始液であるコバルト及びマグネシウムを含有する塩化ニッケル水溶液は、塩化物イオン濃度が200〜250g/Lと高濃度であり、Co、Cu、Zn、Feは安定したクロロ錯イオンを形成している。この抽出始液を上記溶媒抽出工程S1で処理することによって、安定したクロロ錯イオンを形成するCo、Cu、Zn、Feを抽出することができる。一方、逆抽出段S13からの水相中の塩化物イオン濃度は100g/L以下にまで低減される。そこで、コバルトのクロロ錯イオンは逆抽出段S13の水相中の塩化物イオン濃度が低濃度の領域では不安定となり、塩化コバルトとなって水相中に逆抽出される。ただし、銅、亜鉛、鉄のクロロ錯イオンは該逆抽出段S13の水相中の塩化物イオン濃度が低濃度の領域において安定であるため、それらのほとんどは有機相中に留まる。
前述したようにマグネシウムはアミン系抽出剤に抽出されないので、上記の逆抽出段S13から水相側として抜き出される逆抽出液としての粗塩化コバルト水溶液には、マグネシウムは含まれていない。しかしながら、この粗塩化コバルト水溶液には微量のMn、Cu、Zn、Cd等の不純物が含まれている。そのため、以下に示すような脱マンガン工程S2、脱銅工程S3、及び脱亜鉛工程S4で構成される浄液工程でこれら不純物の除去処理が行われる。
(2)脱マンガン工程S2
脱マンガン工程S2は、マンガン、銅、亜鉛を含有する上記粗塩化コバルト水溶液に、硫酸ニッケルの製造プロセスから供給される前述した第2の原料であるマグネシウムを含有する塩化コバルト水溶液を混合し、これにより得られる混合水溶液に酸化剤を添加すると共に炭酸コバルトスラリーを添加してpHを1.4〜3.0に調整することにより、マンガンの酸化物からなる沈澱物を生成させ、これを固液分離により除去してマンガンが除去された脱Mn塩化コバルト水溶液を得る工程である。
すなわち、塩化コバルト水溶液中のマンガンは、酸化剤による高酸化性雰囲気下での反応により酸化物からなる沈澱物を生成するため、塩化コバルト水溶液から分離除去することができる。この高酸化性雰囲気下での酸化物の生成反応は、例えば酸化剤として塩素ガスを用いた場合は下記式4により表すことができる。
[式4]
Mn2++Cl+2CoCO→MnO+2Cl+2Co2++2CO
この生成反応は、pHが1.4未満ではマンガンの除去が不十分となり、3.0を超えるとマンガンの沈澱に伴うコバルトの共沈澱量が増加する。また、酸化還元電位(ORP)は800〜1050mV(Ag/AgCl電極基準)に調整する。上記酸化還元電位が800mV未満では水溶液中のマンガンの除去が不十分となり、逆に酸化還元電位が1050mVを超えてもさらなるマンガンの除去効果は得られないため経済的でない。上記酸化還元電位は、酸化剤の添加量によって調整することができる。使用する酸化剤としては、特に限定されるものではないが、酸化還元電位を800mV以上に維持することができ、アルカリ金属等による新たな不純物汚染の恐れがなく、しかも安価であることから塩素ガスが好適に用いられる。
この脱マンガン工程S2で処理する粗塩化コバルト水溶液は、pH1.4未満の強酸性水溶液であるため、炭酸コバルトスラリーを適量添加することで上記のpHの範囲内となるように調整する。このようにpH調整に炭酸コバルトを用いることで他の不純物金属元素の混入を避けることができる。また、炭酸コバルトを後述する炭酸コバルト製造工程S7において作製することにより、ニッケル湿式製錬プロセスに組み込まれているコバルト回収プロセス系内からマグネシウムの一部をろ液として抜き出すことも可能になる。
(3)脱銅工程S3
脱銅工程S3は、上記脱マンガン工程S2で得られたマンガンが除去された脱Mn塩化コバルト水溶液に硫化剤を添加すると共に、炭酸コバルトスラリーを添加してpHを1.3〜2.0に調整することにより、塩化コバルト水溶液から銅の硫化物からなる沈澱物を生成させ、これを固液分離により除去してマンガン及び銅が除去された脱Cu塩化コバルト水溶液を得る工程である。すなわち、塩化コバルト水溶液中の銅は、下記化学式5に従って硫化銅の沈澱物を生成して、水溶液中から除去される。
[式5]
CuCl+HS→CuS+2HCl
この生成反応では、pHが1.3未満では、水溶液中の銅の除去が不十分となると共に、生成する硫化物沈澱のろ過性が悪化する。逆にpHが2.0を超えると、銅の除去に伴うコバルト共沈澱量が増加する。また、塩化コバルト水溶液の酸化還元電位(ORP)を−100〜−50mV(Ag/AgCl電極基準)に調整する。酸化還元電位が−50mVを超えると水溶液中の銅の除去が不十分となり、逆に酸化還元電位が−100mV未満ではコバルトの共沈殿量が増加する。
上記酸化還元電位は、硫化剤の添加量によって調整することができる。硫化剤としては、特に限定されるものではないが、硫化水素、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム等を用いることができ、これらの中ではアルカリ金属等による新たな不純物汚染の恐れがない点で硫化水素ガスが好ましい。また、上記pHは、硫化剤として硫化水素や水硫化ナトリウムを用いる場合は、その硫化剤の添加量とpH調整剤としての炭酸コバルトスラリーの添加量とによって調整することができる。上記のように、pH調整剤として炭酸コバルトスラリーを用いることで、他の不純物金属元素の混入を避けることができる。この炭酸コバルトスラリーは、前述したように、炭酸コバルト製造工程S7においてマグネシウムの一部をろ過側に抜き出しながら作製することができる。
(4)脱亜鉛工程S4
脱亜鉛工程S4は、上記脱銅工程S3で得られたマンガン及び銅が除去された塩化コバルト水溶液を弱塩基性陰イオン交換樹脂に接触させることによって、該塩化コバルト水溶液中の亜鉛を吸着除去し、これにより高純度塩化コバルト水溶液を得る工程である。すなわち、塩化コバルト水溶液中の亜鉛は、下記式6に従って弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着されることにより、塩化コバルト水溶液中から除去される。
[式6]
ZnCl 2−+2R(CH)N:H−Cl
→(R(CH)N:H)ZnCl+2Cl
(式中のRは樹脂の基材(母体)を表し、「:」は窒素原子の非共有電子対を表す。)
この脱亜鉛工程S4で得た高純度塩化コバルト水溶液は、後段の電解工程S5に電解給液として連続的に供給される。また、後述するように、一部が配管洗浄用の洗浄液として使用される。更に、この高純度塩化コバルト水溶液は、一部をリチウムイオン二次電池の正極材の製造工程に移送してリチウムイオン二次電池の正極材の原料として用いてもよい。このリチウムイオン二次電池の正極材の製造工程では、高純度塩化コバルト水溶液と硫酸ニッケル水溶液とを所定の比率で混合し、更にアルミン酸ソーダを添加してアルミニウム比率を調整し、中和剤を添加することによりNi−Co−Alの混合水酸化物を生成する。その後、Ni−Co−Alの混合水酸化物を乾燥し、水酸化リチウムと混合して焙焼することにより、リチウムイオン二次電池の正極材が完成する。
脱亜鉛工程S4において弱塩基性陰イオン交換樹脂に供給する塩化コバルト水溶液は、上記脱銅工程S3で処理された後の塩化コバルト水溶液であるから、そのpHは1.3〜2.0であり、塩化物イオン濃度は100g/L以下である。前述の通り、このように塩化物イオン濃度が低い場合、塩化コバルト水溶液中のCu、Zn、Fe等はクロロ錯イオンを形成するが、Coはクロロ錯イオンを形成しない。
上記した低い塩化物イオン濃度では、陰イオン交換樹脂に対するコバルトの分配係数はほぼゼロであるが、亜鉛クロロ錯イオンの分配係数は1000程度である。従って、亜鉛を含有する塩化コバルト水溶液を弱塩基性陰イオン交換樹脂に接触させることによって、塩化コバルト水溶液中の亜鉛を選択的に吸着除去することができる。この脱亜鉛工程S4において用いる弱塩基性イオン交換樹脂としては特に限定されるものではないが、例えばオルガノ株式会社製の弱塩基性陰イオン交換樹脂「IRA96SB(商品名)」を好適に使用することができる。
なお、この脱亜鉛工程S4に用いる亜鉛吸着装置は一般的なものでよく、例えばカラム方式の充填塔を用いることができる。充填塔の場合は、塔内充填部の流速分布が流れ方向に垂直な断面全体に亘ってほぼ均一になるような給液方法が好ましく、一般的には塔底から給液する方式よりも塔頂から給液する方式が好ましいが、これは使用する装置の構造等によって異なる場合がある。
(5)電解工程S5
電解工程S5は、上記脱亜鉛工程S4で得られた高純度塩化コバルト水溶液の少なくとも一部から電解採取法により電気コバルトを生成する工程である。その際、副生成物として塩素ガス及び電解廃液が排出される。この電解廃液は、後述する炭酸コバルト製造工程S7において、炭酸コバルトの生成用の原料、及び該生成した炭酸コバルトのレパルプ用水溶液として一部が使用され、残りは蒸発濃縮後、電解給液として繰り返される。
この電解工程S5では、先ず種板電解により母板に薄くコバルトを電着させて種板を製造し、その電着した種板を剥ぎ取って加工することでカソードを作製する。このカソードの加工は、具体的には剥ぎ取った種板の4辺を切断等によりトリミングし、その上辺部2ヶ所に湾曲させた吊手リボンの両端部を取り付ける。この吊手リボンの内側に挿通させた導電及び支持の役割を担うクロスビームを、電解槽の対向する両壁部に架け渡すことで、該カソードを電解槽内に垂下させることができる。
上記電解槽内には1枚ずつ交互に並べた上記カソード群と不溶性電極のアノード群とが浸漬するように電解液が満たされており、この状態でこれらカソード群及びアノード群にコマーシャル電解用の直流電流を流すことによって各カソード上に電気コバルトを電着させることができる。その際、アノード表面からは電気分解によって塩素ガスが発生するので、アノードは隔膜に隔てられたアノードボックス内に収められており、このアノードボックスから塩素ガスが吸引排出される。なお、上記アノードには、チタン板に酸化ルテニウムがコーティングされたものを用いることができる。
上記の電解工程S5での電解条件の一具体例を挙げると、アノード及びカソードは、各々の寸法が約1.0m×約0.8mであり、それらの電解槽1槽当たりの枚数はカソードが52枚及びアノードが53枚であり、電流密度は270A/mであり、通電時間は種板電解が約1日、コマーシャル電解が7〜10日である。この電解槽に高純度塩化コバルト水溶液を含む電解給液が連続的に供給され、その供給量は電解槽1槽当たり35〜45L/分である。
(6)蒸発濃縮工程S6
上記電解工程S5では、カソードの表面にコバルトが電着するので、電解給液のコバルト濃度に対して電解廃液のコバルト濃度は低下する。そこで、蒸発濃縮工程S6では、上記電解工程S5から排出される電解廃液のうち、上記電解工程S5の電解給液として繰り返されるものに対してそのコバルト濃度を一定に保つために蒸発濃縮処理を行う。蒸発濃縮装置としては一般的な真空蒸発濃縮装置を使用することができるが、低pHかつ高塩化物イオン濃度水溶液を取り扱うため、その接液部は耐腐食性の材質を用いるのが好ましい。
(7)炭酸コバルト製造工程S7
炭酸コバルト製造工程S7は、上記電解工程S5から排出される電解廃液の一部から炭酸化反応により炭酸コバルトを生成し、これを固液分離により回収した後に電解廃液でレパルプして炭酸コバルトスラリーを製造する工程である。この炭酸コバルト製造工程S7では、炭酸化剤として入手が容易で比較的低コストの炭酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
また、炭酸化反応時はpHを6.5〜7.5とすることが好ましい。このpHが6.5未満では上記固液分離により得られる液相中のコバルト濃度が増加するため、そのまま排水処理工程で処理するとコバルトのロスになる。逆にこのpHが7.5を超えると水酸化物が生成し、上記固液分離の分離性が悪化する。上記の炭酸化反応で生成した炭酸コバルトを含むスラリーは、固液分離により液相分を除去した後、電解廃液でレパルプすることによりコバルトと比較して炭酸塩を生成しにくいマグネシウムを該液相側に排出することができる。上記の固液分離に用いる装置には特に限定がなく、フィルタープレス等のろ過器やシックナー等の重力沈降分離装置を使用してもよいが、デカンターと称される連続式の遠心分離装置が好ましい。
ところで、上記の電解工程S5では、電解給液に含まれるマグネシウムは電着しないので、マグネシウムはニッケル製錬プロセスに組み込まれたコバルト回収プロセスの系内に徐々に蓄積していく。その結果、上記の脱亜鉛工程S4で得られる高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度が徐々に上昇し、前述したように、該高純度塩化コバルト水溶液を原料として生成されるリチウムイオン二次電池の正極材の品質に悪影響を及ぼすことがあった。
そこで、本発明の実施形態の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法においては、上記の炭酸コバルトスラリーの送液配管の洗浄液に、従来用いていた電解廃液に代えて、Mg濃度の低い高純度塩化コバルト水溶液を用いている。これにより、コバルト回収プロセスの系内でのマグネシウムの蓄積を抑えることができるので、低マグネシウム濃度の高純度塩化コバルト水溶液を効率よく製造することができる。この炭酸コバルトスラリーの送液配管の洗浄について、上記炭酸コバルト製造工程S7を好適に実施できる炭酸コバルト製造装置の具体例を示す図2を参照しながら具体的に説明する。
この図2に示す炭酸コバルト製造装置は、上記電解工程S5の電解採取を行う電解槽から排出される電解廃液の一部及び希釈水を混合した後、得られた混合液にソーダ灰(無水炭酸ナトリウム)を添加することで炭酸コバルトの生成を行う炭酸コバルト反応槽1と、該炭酸コバルト反応槽1の底部から抜き出される上記炭酸コバルトを含む希薄な炭酸コバルトスラリーを後段の機器に送液するために昇圧する第1スラリーポンプ2と、該第1スラリーポンプ2によって送液される上記希薄炭酸コバルトスラリーを固液分離する固液分離装置3と、該固液分離装置3から抜き出される炭酸コバルト濃縮スラリーを上記電解廃液の一部でレパルプすることで所定濃度の炭酸コバルトレパルプスラリーの調製を行う炭酸コバルト貯槽4と、該炭酸コバルト貯槽4の底部から抜き出される上記炭酸コバルトレパルプスラリーを後段の機器に送液するために昇圧する第2スラリーポンプ5と、該第2スラリーポンプ5によって送液される炭酸コバルトレパルプスラリーを一時的に貯留するバッファータンクの役割を担う炭酸コバルト中継槽6と、該炭酸コバルト中継槽6の底部から抜き出される上記炭酸コバルトレパルプスラリーをその供給先に送液するために昇圧する第3スラリーポンプ7とから主に構成される。なお、上記の固液分離装置3では、フィルタープレス等のろ過器や、重力沈降により濃縮スラリーを清澄液から分離する方式のシックナーを用いてもよいが、回転筒とその内部に同芯軸状に収納されたスクリューコンベアとが互いに異なる回転速度で回転することで連続的に固液分離を行うデカンターと称される遠心分離装置を用いることが好ましい。
上記の炭酸コバルト製造装置においては、炭酸コバルト貯槽4から炭酸コバルト中継槽6に至る上記 炭酸コバルトレパルプスラリーの送液用のレパルプスラリー送液配管8のうち、第2スラリーポンプ5の吸込側に、上記脱亜鉛工程S4で処理された高純度塩化コバルト水溶液の一部を抜き出して送液する高純度塩化コバルト水溶液供給配管9が接続している。そして、これらレパルプスラリー送液配管8及び高純度塩化コバルト水溶液供給配管9には、それらの合流点より上流側にそれぞれ自動バルブ8a及び9aが設けられている。これら自動バルブ8a、9aの開閉は、制御装置10によって制御される。
かかる構成により、炭酸コバルト貯槽4で調製された炭酸コバルトレパルプスラリーを、自動バルブ8aが開状態にあるレパルプスラリー送液配管8を介して炭酸コバルト中継槽6に送液した後(この時、自動バルブ9aは閉状態にある)、上記自動バルブ8a、9aの開閉を切り替えることで、該レパルプスラリー送液配管8内の残液を高純度塩化コバルト水溶液で押し流して洗浄することができる。この洗浄液は、上記レパルプスラリー送液配管8内の残液と共に炭酸コバルト中継槽6に一旦回収された後、脱マンガン工程S2や脱銅工程S3に繰り返される。
これにより、該レパルプスラリー送液配管8内の炭酸コバルトによる閉塞を防止することができるうえ、炭酸コバルト中継槽6に回収される上記残液及び洗浄液は、該洗浄液に電解廃液を用いる場合に比べてマグネシウム濃度を低く抑えることができるので、結果的に従来に比べて低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液を製造することが可能になる。また、従来の方法のように電解廃液の一部を上流工程の溶媒抽出工程S1に繰り返さないので、該溶媒抽出工程S1以降の浄液工程の処理コストが増加しない。また、電気コバルト生産能力を圧迫するという問題も生じず、処理装置の高負荷運転に対処するために処理装置の処理能力を高める必要がないので、より低コストで高純度塩化コバルト液を製造することが可能となる。
上記の高純度塩化コバルト水溶液を用いたレパルプスラリー送液配管8の洗浄方法について、制御装置10で実行されるアルゴリズムのフローチャートを示す図3を参照しながら具体的に説明する。先ず混合工程71では、炭酸コバルト反応槽1において、電解工程S5の電解採取を行う電解槽から排出される塩化コバルト水溶液、すなわち電解廃液及び希釈水を混合する。次に反応工程S72では、上記混合工程S71で得た混合液にソーダ灰(無水炭酸ナトリウム)を添加して炭酸コバルトを生成する。次に固液分離工程S73では、上記反応工程S72で生成した炭酸コバルトを含む希薄な炭酸コバルトスラリーを固液分離装置3に導入して固液分離を行う。次にレパルプ工程S74では、炭酸コバルト貯槽4において、上記固液分離工程S73で液相分を除去することで得られる炭酸コバルト濃縮スラリーを上記電解廃液の一部でレパルプする。次に送液工程S75では、上記レパルプ工程S74で調製した炭酸コバルトレパルプスラリーをレパルプスラリー送液配管8を介して炭酸コバルト中継槽6に送液する。次に洗浄工程S76では、レパルプスラリー送液配管8中に残留している炭酸コバルトレパルプスラリーの残液による配管閉塞を防ぐため、上記脱亜鉛工程S4で生成した低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液を洗浄液として該レパルプスラリー送液配管8に流して配管洗浄を行う。上記のレパルプスラリー送液配管8内の残液は、上記洗浄液と共に炭酸コバルト中継槽6に回収され、最終的に前述した脱マンガン工程S2や脱銅工程S3にpH調整剤として繰り返される。これにより、コバルトの回収率を下げることなく従来よりも低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液を製造することができる。
上記の送液工程S75及び洗浄工程S76のタイミングについては特に限定はないが、例えば炭酸コバルト中継槽6から脱Mn工程S2や脱Cu工程S3に炭酸コバルトレパルプスラリーが供給されることで該炭酸コバルト中継槽6に設けたレベル計からレベル低の信号が制御装置10に出力されると、制御装置10は炭酸コバルト貯槽4の底部の自動バルブ8aに開信号を出力する。これにより、炭酸コバルト貯槽4から炭酸コバルト中継槽6にレパルプスラリー送液配管8を介して炭酸コバルトレパルプスラリーが送液される。
そして、炭酸コバルト中継槽6のレベルが所定のレベルに達してレベル計から制御装置10にレベル高の信号が出力されると、制御装置10は炭酸コバルト貯槽4の底部の自動バルブ8aに閉信号を出力すると共に高純度塩化コバルト水溶液供給配管9の自動バルブ9aに開信号を出力する。予め設定された時間が経過するまでこの状態が維持され、これにより高純度塩化コバルト水溶液がレパルプスラリー送液配管8に送液され、該配管8内に残留する炭酸コバルトレパルプスラリーが押し流される。制御装置10は、上記の予め設定された時間が経過すると、高純度塩化コバルト水溶液供給配管9の自動バルブ9aに閉信号を出力する。これにより、レパルプスラリー送液配管8の洗浄が完了する。
上記したレパルプスラリー送液配管8の洗浄方法では、洗浄液として脱亜鉛工程S4で生成した低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液のみを用いるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、該高純度塩化コバルト水溶液と電解廃液との混合液を洗浄液に用いてもよい。これにより、より一層コストを抑えることが可能になる。なぜなら、高純度塩化コバルト水溶液は、Co電解採取の電解給液として主に使用されるうえ、リチウムイオン二次電池用の原料としても出荷することができるからである。
上記の高純度塩化コバルト水溶液と電解廃液との混合液を洗浄液に用いる一実施形態について具体的に説明すると、図4に示すように、上記の脱亜鉛工程S4で生成した高純度塩化コバルト水溶液のMg濃度及び上記電解工程S5の電解採取を行う電解槽から排出される電解廃液のMg濃度をそれぞれ測定する濃度測定装置11、12を設置し、これら濃度測定装置11、12の測定値を制御装置10に入力する。更に、上記高純度塩化コバルト水溶液供給配管9に、上記電解廃液の炭酸コバルト貯槽4への供給配管から分岐した電解廃液分岐配管13を接続する。そして、これら高純度塩化コバルト水溶液供給配管9及び電解廃液分岐配管13には、それらの合流点の上流側に流量計とコントロールバルブとからなる流量制御系14、15をそれぞれ備え、これら流量制御系14、15の流量設定値を制御装置10によって制御する。
これら流量制御系14、15の流量設定値の制御装置10による制御の方法としては、例えば濃度測定装置11、12においてそれぞれ定期的又は連続的に測定している高純度塩化コバルト水溶液及び電解廃液のMg濃度に基づいて、系内にMgが蓄積しない条件を満たす洗浄液の高純度塩化コバルト水溶液及び電解廃液の流量比率を演算する。そして、上記レパルプスラリー送液配管8の洗浄に必要な洗浄液の流量に上記流量比率をかけることで求めた各々の設定流量値を流量制御系14、15に出力すればよい。これにより、高純度塩化コバルト水溶液のMg濃度が原料比率の変化などの理由により低くなったときに、洗浄液として用いる高純度塩化コバルト水溶液の一部を電解廃液に適宜代替させることができるので、系内にMgが蓄積するのを抑制しながらより低いコストで効率的に高純度塩化コバルト水溶液を製造することが可能になる。なお、具体的な実施形態については、図4に示した上記方法には限定されず、高純度塩化コバルト水溶液及び電解廃液のMg濃度に基づいて、洗浄液を高純度塩化コバルト水溶液又は電解廃液に切り替えられるような装置構成及び方法としても良い。
原料としての粗塩化ニッケル水溶液及び含Mg塩化コバルト水溶液に対して、図1に示すブロックフローに沿って処理を行って高純度塩化コバルト水溶液を製造した。その際、炭酸コバルト製造工程S7では、図2に示すような装置を採用し、その炭酸コバルトのレパルプスラリー送液配管8の洗浄液を、電解廃液から高純度塩化コバルト水溶液に切り替えたときの高純度塩化コバルト水溶液中のMg濃度の変化を、約1年間に亘って測定した。
具体的には、測定開始から1日目から87日目までは、炭酸コバルトのレパルプスラリー送液配管8の洗浄液に電解廃液を用いると共に、コバルト電解廃液の一部を浄液工程の上流の溶媒抽出工程S1に繰り返す比較例の操業を行うことで、系内に蓄積したマグネシウムを抜き出した。このとき、コバルト電解廃液の繰り返し量は、平均で1日当り35mであった。
次に、測定開始から88日目以降は、コバルト電解廃液の一部を浄液工程の上流の溶媒抽出工程S1に繰り返すことを中止し、炭酸コバルトのレパルプスラリー送液配管8の洗浄液に電解廃液に代えて高純度塩化コバルト水溶液を用いる実施例の操業を行った。この実施例の操業では、炭酸コバルトのレパルプスラリーを、1日当たり20〜25回の頻度で1.2mずつ送液すると共に、この送液後は毎回0.12mの高純度塩化コバルト水溶液で洗浄を行った。
その結果、測定開始から88日目以降は脱亜鉛工程S4で生成される高純度塩化コバルト中のMg濃度がやや上昇したものの、管理目標値である0.1g/L前後で安定的に推移した。なお、実施例では、比較例に比べて処理コストを約9%削減することができた。このように、本発明の要件を満たす高純度塩化コバルト水溶液の製造方法により、脱マンガン工程S2から炭酸コバルト製造工程S7までのコバルトの回収を行うプロセスの系内におけるMgの蓄積を抑えることができ、高純度塩化コバルトを低コストで製造することが確認できた。
S1 溶媒抽出工程
S2 脱マンガン工程
S3 脱銅工程
S4 脱亜鉛工程
S5 電解工程
S6 蒸発濃縮工程
S7 炭酸コバルト製造工程
S11 抽出段
S12 洗浄段
S13 逆抽出段
S71 混合工程
S72 反応工程
S73 固液分離工程
S74 レパルプ工程
S75 送液工程
S76 洗浄工程
1 炭酸コバルト反応槽
2 第1スラリーポンプ
3 固液分離装置
4 炭酸コバルト貯槽
5 第2スラリーポンプ
6 炭酸コバルト中継槽
7 第3スラリーポンプ
8 レパルプスラリー送液配管
8a、9a 自動バルブ
9 高純度塩化コバルト水溶液供給配管
10 制御装置
11、12 濃度測定装置
13 電解廃液分岐配管
14、15 流量制御系

Claims (2)

  1. 粗塩化コバルト水溶液を浄液処理することで高純度塩化コバルト水溶液を製造する高純度塩化コバルト水溶液の製造方法であって、前記浄液処理を行う浄液工程と、前記高純度塩化コバルト水溶液の一部を用いて電解採取により電気コバルトを生成する電解工程と、該電解採取の際に排出される電解廃液から炭酸コバルトを生成する反応工程と、該炭酸コバルトを含むスラリーをpH調整剤として前記浄液工程に送液する送液工程と、該送液に用いた配管の洗浄液に前記高純度塩化コバルト水溶液を使用すると共に使用済みの該洗浄液を前記浄液工程に繰り返す洗浄工程とからなることを特徴とする低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法。
  2. 前記高純度塩化コバルト水溶液のMg濃度の測定結果に基づいて、前記洗浄液に使用する前記高純度塩化コバルト水溶液の一部を前記電解廃液で代替させることを特徴とする、請求項1に記載の低Mg濃度の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法。
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