JP2023066461A - 低マグネシウム濃度の塩化コバルト水溶液の製造方法 - Google Patents

低マグネシウム濃度の塩化コバルト水溶液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 マグネシウムを選択的に除去して低マグネシウム濃度で且つ高純度の塩化コバルト水溶液を製造することが可能な方法を提供する。【解決手段】 浄液処理された高純度塩化コバルト水溶液を電解処理する電解槽から排出されるマグネシウムを含んだ電解廃液に対して、ソーダ灰水溶液の添加量を調整することでpH6.0~7.0の範囲内で炭酸化処理を施し、これによりマグネシウムの固体側への分配を抑制しながら炭酸コバルトを生成し、得られた炭酸コバルトを含むスラリーを好ましくはスクリューデカンターで固液分離することで回収される固体側を上記浄液処理に繰り返す。【選択図】 図5

Description

本発明は、低マグネシウム濃度の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法に関する。
湿式によるニッケル製錬方法として、塩素浸出電解採取法が知られている。この製錬方法は、ニッケル硫化物を主成分とする原料の粉砕物に塩化物溶液を加えてスラリーを調製した後、このスラリーに塩素ガスを吹き込んでニッケルを浸出させ、得られたニッケルを含む浸出液をニッケル電解工程で電解採取することによって、カソード上にニッケルが電着した形態の電気ニッケルを製造する方法である。上記の浸出液には、ニッケルのほか、銅、鉄、及びコバルトなどの不純物が含まれるため、上記ニッケル電解工程の前にセメンテーション工程、脱鉄工程、コバルト溶媒抽出工程等で処理することでこれら不純物の除去を行なっている。
上記のニッケルの湿式製錬方法では、コバルト溶媒抽出工程において副産物としてコバルトを回収することができる。例えば特許文献1には、ニッケルの湿式製錬方法に含まれるコバルト溶媒抽出工程で副生される粗塩化コバルト水溶液に対して、脱マンガン工程、脱銅工程及び脱亜鉛工程からなる浄液処理工程で処理することによって高純度の塩化コバルト水溶液を生成する技術が開示されている。この高純度塩化コバルト水溶液をコバルト電解工程で処理することによって、カソード上にコバルトが電着した形態の電気コバルトを製造することができる。
上記コバルト電解工程においては、例えばコバルト濃度65~85g/L程度の高純度塩化コバルト水溶液が電解槽に供給されるが、コバルトはカソードに電着することで徐々に消費されるので、電解槽から排出される電解廃液は、上記の高純度塩化コバルト水溶液よりもコバルト濃度が10g/L程度低くなり、例えばコバルト濃度55~75g/L程度で電解槽から排出される。
このように、電解廃液は電解槽に供給される高純度塩化コバルト水溶液に比べてコバルト濃度が低くなるものの、コバルトを含んでいる。そのため、電解廃液は、一部が濃縮装置に送られ、ここでコバルト濃度を高めた上で、高純度塩化コバルト水溶液と混合して電解槽に繰返され、残部がコバルト電解工程の後工程の炭酸コバルト製造工程においてコバルトを回収する処理が施される。この炭酸コバルト製造工程は、上記電解廃液に炭酸化剤を添加して炭酸化処理する工程と、該炭酸化処理で生成した炭酸コバルトを含むスラリーを固液分離し、固液分離で得られた固体側を電解廃液でレパルプすることで、該炭酸コバルトを高濃度スラリーとして回収する工程とからなり、このようにして回収された炭酸コバルトは、コバルト電解工程よりも上流の粗塩化コバルト水溶液の浄液処理工程等において中和剤として利用される。
特開2020-019664号公報
上記のコバルト電解工程で処理される高純度塩化コバルト水溶液は、不純物として極微量のマグネシウムを含んでおり、このマグネシウムはコバルト電解工程の条件では電着しないため、上記の電解廃液中に残存する。電解廃液中に残存したマグネシウムは、一部が上記の炭酸コバルト製造工程において炭酸コバルトを含んだ高濃度スラリー側へ分配されるため、中和剤としてコバルト電解工程よりも上流の浄液処理工程に繰り返されると、該浄液処理系内で徐々にマグネシウムが蓄積し、これに伴いコバルト電解工程の処理対象の高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度も上昇する。この高純度塩化コバルト水溶液は、一部がそのまま電池材料の原料として使用されるため、高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度が上昇すると、電池材料工場で製造される電池材料中のマグネシウム濃度も上昇し、その電池材料を用いた電池製品の性能に悪影響を及ぼすことが懸念される。
その対策として、上記の特許文献1には、マグネシウム濃度の高い電解廃液の供給先を、炭酸コバルトの生成原料用のものと、生成した炭酸コバルトのレパルプ用のものと、電解給液用として蒸発濃縮させるものとに加えて、上流の塩化コバルト溶媒抽出工程の洗浄段に用いる洗浄液として繰り返すものにも分配することで、浄液処理系内にマグネシウムが蓄積するのを防ぐ技術が示されている。しかしながら、この技術では、上流工程に繰り返す電解廃液に含まれるコバルトの処理のためにより多くの処理コストがかかるため、結果的に高純度塩化コバルト水溶液の製造コストが高くなる。
また、上記の炭酸コバルトを含んだ高濃度スラリーの送液配管は閉塞することがあるため、この閉塞防止のために使用する洗浄液を、従来のマグネシウム濃度の高い電解廃液からマグネシウム濃度の低い高純度塩化コバルト水溶液に変更する技術が提案されている。これによりマグネシウムが洗浄液に伴って上流工程に繰り返される量が減少するので、結果的にコバルトの浄液処理のコストを削減できるうえ、浄液処理系内のマグネシウムの蓄積を抑えることも可能になる。
しかしながら、この技術はマグネシウムを選択的に除去するものではないため、浄液処理系内のマグネシウム濃度は、浄液処理工程で処理される粗塩化コバルト水溶液から持ち込まれるマグネシウム量と炭酸コバルト製造工程から払出されるマグネシウム量との平衡関係から定まる。そのため、特許文献1の技術に比べて高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度を低下させる程度には大幅な制限を受ける。また、原料ロットの変更等により高マグネシウム濃度の原料が導入されることがあり、この場合は浄液処理工程で処理される粗塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度が上昇するが、粗塩化コバルト水溶液から持ち込まれるマグネシウム量と炭酸コバルト製造工程から払出されるマグネシウム量とがバランスするまでは、浄液処理系内にマグネシウムが蓄積することになり、結果として、高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度が上昇してしまう。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、マグネシウムを選択的に除去して低マグネシウム濃度で且つ高純度の塩化コバルト水溶液を製造することが可能な方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、粗塩化コバルト水溶液の浄液処理系内に入ったマグネシウムの払出先の1つである炭酸コバルト製造工程に着目し、その操業条件を調整することで、炭酸コバルトを含むスラリーを固液分離することで得た固体側に比べて液体側により多くマグネシウムを分配させることができ、よって該粗塩化コバルト水溶液の浄液処理系内を循環するマグネシウムの量を削減して、低マグネシウム濃度の高純度塩化コバルト水溶液を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の低マグネシウム濃度の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法は、浄液処理された高純度塩化コバルト水溶液を電解処理する電解槽から排出されるマグネシウムを含んだ電解廃液に対して、ソーダ灰水溶液の添加量を調整することでpH6.0~7.0の範囲内で炭酸化処理を施し、これによりマグネシウムの固体側への分配を抑制しながら炭酸コバルトを生成し、得られた炭酸コバルトを含むスラリーを固液分離することで回収される固体側を前記浄液処理に繰り返すことを特徴とする。
本発明によれば、電解廃液からマグネシウムを選択的に除去することができるので、低マグネシウム濃度の高純度塩化コバルト水溶液を比較的低コストで製造することができるうえ、高マグネシウム濃度の被処理液が系内に導入される場合であっても安定的に低マグネシウム濃度の高純度塩化コバルト水溶液を製造することが可能になる。
本発明の実施形態に係る高純度塩化コバルト水溶液の製造方法を示すブロックフロー図である。 図1の炭酸コバルト製造工程が好適に実施される炭酸コバルト製造装置の一具体例のフロー図である。 図2の炭酸コバルト製造装置に含まれる炭酸コバルト反応槽の一具体例の縦断面図である。 ビーカー試験で実施した炭酸化処理時のpHと、該炭酸化処理で生成した炭酸コバルトを含むスラリーを固液分離して得た液体側のマグネシウム濃度及びコバルト濃度との関係を示すグラフである。 本発明の実施例の製造方法を適用する前後の高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度の推移を示すグラフである。 本発明の実施例の製造方法を適用して製造した高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度を、比較例1~3の製造方法を適用して製造した高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度と比較したグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る高純度塩化コバルト水溶液の製造方法について図1のブロックフロー図を参照しながら説明する。この図1に示す高純度塩化コバルト水溶液の製造方法は、塩素浸出電解採取法によるニッケルの湿式製錬方法に組み込まれており、塩素浸出処理によりニッケルと共に浸出された副産物のコバルトは、図1のブロックフローに沿って処理されることで、中間製品としての高純度塩化コバルト水溶液を経て最終的に電気コバルトの形態で回収されるか、あるいは高純度塩化コバルト水溶液がそのまま電池材料の原料として使用される。
上記の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法では2種類の原料を用いており、それらのうちの第1の原料であるコバルト及びマグネシウムを含有する粗塩化ニッケル水溶液は電気ニッケルの製造プロセスで生成され、第2の原料である含マグネシウム塩化コバルト水溶液は硫酸ニッケルの製造プロセスで生成される。従って、先ずこれら2つの上流プロセスについて簡単に説明し、その後、本発明の実施形態の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法について説明する。
1.電気ニッケルの製造プロセス
電気ニッケルの製造プロセスでは、先ず、原料のニッケル・コバルト混合硫化物(MS又はミックスサルファイドとも称する)及びニッケルマットを塩素浸出して塩素浸出液を得る。ニッケル・コバルト混合硫化物の化学組成は、一般的にニッケル(Ni)が50~60質量%、コバルト(Co)が4~6質量%、硫黄(S)が30~34質量%(いずれも乾燥物基準)であり、不純物としてマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)などを含んでいる。一方、ニッケルマットの化学組成は、一般的にニッケルが74~80質量%、コバルトが約1質量%、銅が0.1~0.4質量%、鉄が0.1~0.7質量%、硫黄が18~23質量%(いずれも乾燥物基準)であり、更に不純物として鉄、銅、亜鉛などを含んでいる。
これらを原料にして得られる塩素浸出液は、主成分が塩化ニッケル水溶液であり、不純物としてコバルトのほか、鉄、銅、鉛、マンガン、亜鉛、マグネシウム等を含んでいる。この塩素浸出液は、セメンテーション工程及び脱鉄工程で順次処理される。セメンテーション工程では、原料のニッケルマットスラリー及びニッケル・コバルト混合硫化物スラリーと上記塩素浸出液との混合により該塩素浸出液中の銅が還元されてセメンテーション残渣となることで銅の除去が行なわれる。脱鉄工程では上記セメンテーション工程で脱銅された塩化ニッケル水溶液に酸化剤及び中和剤を加えて鉄澱物を生成することで脱鉄を行なう。このようにして銅及び鉄が除去されることで、前述した第1の原料としてのコバルト及びマグネシウムを含有する粗塩化ニッケル水溶液が得られる。
2.硫酸ニッケルの製造プロセス
硫酸ニッケルの製造プロセスでは、先ず、原料のニッケルマット又はニッケル・コバルト混合硫化物を加圧浸出して浸出液を得る。この加圧浸出により、ニッケルマットやニッケル・コバルト混合硫化物に含まれるニッケル、コバルト、及び不純物が浸出され、粗硫酸ニッケル水溶液が得られる。上記の加圧浸出の条件は、例えば圧力1.8~2.0MPaG、温度140~180℃である。この加圧浸出で得られる加圧浸出液は主成分が硫酸ニッケル水溶液であり、不純物としてコバルトのほか、鉄、銅、鉛、マンガン、亜鉛、マグネシウム等を含んでいる。
上記加圧浸出液としての粗硫酸ニッケル水溶液は、脱鉄工程を経て酸性抽出剤による溶媒抽出工程で処理され、該粗硫酸ニッケル水溶液に含まれる不純物が除去される。上記酸性抽出剤としては、ジ-(2-エチルヘキシル)ホスホン酸(通称D2EHPA)や、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル(製品名PC-88A)などの燐酸エステル系酸性抽出剤が用いられる。この酸性抽出剤による溶媒抽出工程は、抽出段、洗浄段、交換段、ニッケル回収段、コバルト回収段、及び逆抽出段から一般的に構成される。
上記酸性抽出剤を用いた溶媒抽出では、抽出反応に水素イオンが関与するため、pHによって抽出率が変化する。抽出率は金属によって異なり、Fe>Zn>Cu>Mn>Co>Ca>Mg>Niの順に抽出されやすい。すなわち、Feが最も抽出され易く、Niが最も抽出されにくい。そこで、有機相の流れに従って抽出段、洗浄段、交換段、ニッケル回収段、コバルト回収段、及び逆抽出段の順に段階的にpHを下げていくことにより、これら複数種類の金属をそれぞれの段で別々に分離回収することができる。
この酸性抽出剤で抽出されたコバルトは、コバルト回収段にて塩酸水溶液で逆抽出された後、脱亜鉛工程で処理されることで、前述した第2の原料としての含マグネシウム塩化コバルト水溶液となる。上記したように、マグネシウムの抽出のされやすさは、ニッケルとコバルトの中間に位置するため、脱鉄工程を経て酸性抽出剤による溶媒抽出工程で処理される硫酸ニッケル水溶液に含まれるマグネシウムの大部分についても、コバルト回収段にて塩酸水溶液で逆抽出されるので、脱亜鉛工程を経た後の塩化コバルト水溶液に含まれることになる。この含マグネシウム塩化コバルト水溶液は、例えばCo濃度が70~85g/L程度、Mg濃度が0.1~0.7g/L程度になる。
3.高純度塩化コバルト水溶液及び電気コバルトの製造方法
次に、本発明の実施形態の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法について図1を参照しながら説明する。この図1に示す本発明の実施形態の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法は、溶媒抽出工程S1、脱マンガン工程S2、脱銅工程S3、脱亜鉛工程S4、電解工程S5、蒸発濃縮工程S6、及び炭酸コバルト製造工程S7で構成されており、脱亜鉛工程S4で得た高純度塩化コバルト水溶液を電解採取法の電解給液として電解工程S5に供給することにより、製品として電気コバルトを製造している。上記の高純度塩化コバルト水溶液は、一部が抜き取られてリチウムイオン二次電池の正極材料の原料として用いられる。なお、図1において「[]」の内側に記載されている元素は、各溶液に含まれ得る代表的な元素を例示したものであり、これらが必ず記載通りに含まれていることを意味するわけではない。以下、これら工程の各々について説明する。
(1)溶媒抽出工程S1
溶媒抽出工程S1は、抽出始液としての前述した第1の原料である粗塩化ニッケル水溶液に対して抽出処理を行なうことにより、ニッケルとコバルトとを分離する工程である。この溶媒抽出工程S1は、抽出段S11、洗浄段S12、及び逆抽出段S13から構成されており、それらの各々では、例えば複数のミキサー・セトラー装置を直列に接続して有機相と水相とを互いに向流に流す方式の向流多段方式が好適に用いられる。この場合、ミキサー・セトラー装置の数は、抽出始液の組成、抽出剤の種類、抽出装置等によって適宜定められる。
この溶媒抽出工程S1では抽出剤にアミン系抽出剤を使用する。このアミン系抽出剤の種類については特に制約はないが、反応性の高さや水に対する溶解度の低さの点から3級アミン系抽出剤が好ましく、取り扱いやすさや価格等を考慮すると、例えば、TNOA(Tri-n-octylamine)やTIOA(Tri-i-octylamine)がより好ましい。この抽出剤を希釈して抽出用の有機溶媒を調製するための希釈剤としては、水に対する溶解度の低さや良好な油水分離性の点から芳香族炭化水素が好ましい。この希釈剤を抽出剤と混合して有機相(有機溶媒)を調製する際、有機相としての好適な粘度を確保するために抽出剤の濃度を10~40体積%にするのが好ましい。
上記のTNOAやTIOA等の3級アミンは、下記式1に示すように塩酸が付加することで活性化し、その結果、下記式2に例示するように金属クロロ錯イオンの抽出能力が発現する。これにより、ニッケルとコバルトの分離特性に優れた抽出剤となる。なお、式1及び式2中の「:」は、窒素原子の非共有電子対を表す。
[式1]
N:+HCl→RN:HCl
[式2]
2RN:HCl+CoCl 2-→(RN:H)CoCl+2Cl
上記式2に示す反応から分かるように、抽出段S11では金属元素のクロロ錯イオンとアミンとが反応して金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミンが生成される。従ってコバルト、銅、亜鉛、鉄等のクロロ錯イオンを形成する金属種が有機相中に抽出され、クロロ錯イオンを形成しないニッケルやマグネシウムは抽出残液に残留する。これによりニッケル及びマグネシウムがそれ以外の金属元素から分離される。
上記抽出段S11から抜き出された抽出後有機は、次に後段の洗浄段S12に移送される。この洗浄段S12では、該抽出後有機に洗浄液を混合することで、前段の抽出段S11において分離しきれず微細な水滴の形態のエントレインメントとして抽出後有機相中に懸濁する主にニッケルからなる不純物が除去される。この洗浄段S12の洗浄液には、純度の高い塩化コバルト水溶液である逆抽出液を用いるのが好ましい。すなわち、純度の高い塩化コバルト水溶液で有機相を洗浄することによって、抽出段S11からエントレインメントとして持ち込まれる該有機相中の塩化ニッケル水溶液としてのニッケルと、塩化コバルト水溶液からなる洗浄液中のコバルトとが置換され、これにより有機相のニッケル濃度を低下させることができる。
上記洗浄段S12で洗浄された洗浄後有機は、次に後段の逆抽出段S13に移送される。この逆抽出段S13では、洗浄済みの有機相である洗浄後有機に弱酸性水溶液を混合することにより、上記式2の逆反応である下記式3に従ってコバルトのクロロ錯イオンを担持したアミンが逆抽出処理される。これにより、コバルトは有機相から水相中に移動する。
[式3]
(RN:H)CoCl→2RN:HCl+CoCl
上記したように、溶媒抽出工程S1では、金属のクロロ錯イオンの生成のしやすさに基づき、塩化ニッケル水溶液からコバルト等を分離し、塩化コバルト水溶液を得ている。一般的には溶媒抽出工程S1の抽出始液であるコバルト及びマグネシウムを含有する塩化ニッケル水溶液は、塩化物イオン濃度が200~250g/Lと高濃度であり、コバルト、銅、亜鉛、鉄は安定したクロロ錯イオンを形成している。この抽出始液を上記溶媒抽出工程S1で処理することによって、安定したクロロ錯イオンを形成するコバルト、銅、亜鉛、鉄を抽出することができる。一方、逆抽出段S13からの水相中の塩化物イオン濃度は100g/L以下にまで低減される。そこで、コバルトのクロロ錯イオンは逆抽出段S13の水相中の塩化物イオン濃度が低濃度の領域では不安定となり、塩化コバルトとなって水相中に逆抽出される。ただし、銅、亜鉛、鉄のクロロ錯イオンは該逆抽出段S13の水相中の塩化物イオン濃度が低濃度の領域において安定であるため、それらのほとんどは有機相中に留まる。
前述したようにマグネシウムはアミン系抽出剤に抽出されないので、上記の逆抽出段S13から水相側として抜き出される逆抽出液としての粗塩化コバルト水溶液には、マグネシウムは含まれていない。しかしながら、この粗塩化コバルト水溶液には微量のマンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)等の不純物が含まれている。そのため、以下に示すような脱マンガン工程S2、脱銅工程S3、及び脱亜鉛工程S4で構成される浄液工程でこれら不純物の除去処理が行なわれる。
(2)脱マンガン工程S2
脱マンガン工程S2は、マンガン、銅、亜鉛を含有する上記粗塩化コバルト水溶液に、硫酸ニッケルの製造プロセスから供給される前述した第2の原料である含マグネシウム塩化コバルト水溶液を混合し、これにより得られる混合水溶液に酸化剤を添加すると共に炭酸コバルトスラリーを添加してpHを1.4~3.0に調整することにより、マンガンの酸化物からなる沈澱物を生成させ、これを固液分離により除去してマンガンが除去された脱Mn塩化コバルト水溶液を得る工程である。
すなわち、塩化コバルト水溶液中のマンガンは、酸化剤による高酸化性雰囲気下での反応により酸化物からなる沈澱物を生成するため、塩化コバルト水溶液から分離除去することができる。この高酸化性雰囲気下での酸化物の生成反応は、例えば酸化剤として塩素ガスを用いた場合は下記式4により表すことができる。
[式4]
Mn2++Cl+2CoCO→MnO+2Cl+2Co2++2CO
この生成反応は、pHが1.4未満ではマンガンの除去が不十分となり、3.0を超えるとマンガンの沈澱に伴うコバルトの共沈澱量が増加する。また、酸化還元電位(ORP)は800~1050mV(Ag/AgCl電極基準)に調整する。上記酸化還元電位が800mV未満では水溶液中のマンガンの除去が不十分となり、逆に酸化還元電位が1050mVを超えてもさらなるマンガンの除去効果は得られないため経済的でない。上記酸化還元電位は、酸化剤の添加量によって調整することができる。使用する酸化剤としては、特に限定されるものではないが、酸化還元電位を800mV以上に維持することができ、アルカリ金属等による新たな不純物汚染の恐れがなく、しかも安価であることから塩素ガスが好適に用いられる。
この脱マンガン工程S2で処理する粗塩化コバルト水溶液は、pH1.4未満の強酸性水溶液であるため、炭酸コバルトスラリーを適量添加することで上記のpHの範囲内となるように調整する。このようにpH調整に炭酸コバルトを用いることで他の不純物金属元素の混入を避けることができる。また、炭酸コバルトを後述する炭酸コバルト製造工程S7において作製することにより、ニッケル湿式製錬プロセスに組み込まれているコバルト回収プロセス系内からマグネシウムの一部を濾液として抜き出すことも可能になる。
(3)脱銅工程S3
脱銅工程S3は、上記脱マンガン工程S2で得られたマンガンが除去された脱Mn塩化コバルト水溶液に硫化剤を添加すると共に、炭酸コバルトスラリーを添加してpHを1.3~2.0に調整することにより、塩化コバルト水溶液から銅の硫化物からなる沈澱物を生成させ、これを固液分離により除去してマンガン及び銅が除去された脱Cu塩化コバルト水溶液を得る工程である。すなわち、塩化コバルト水溶液中の銅は、下記化学式5に従って硫化銅の沈澱物を生成して、水溶液中から除去される。
[式5]
CuCl+HS→CuS+2HCl
この生成反応では、pHが1.3未満では、水溶液中の銅の除去が不十分となると共に、生成する硫化物沈澱の濾過性が悪化する。逆にpHが2.0を超えると、銅の除去に伴うコバルト共沈澱量が増加する。また、塩化コバルト水溶液の酸化還元電位(ORP)を-100~-50mV(Ag/AgCl電極基準)に調整する。酸化還元電位が-50mVを超えると水溶液中の銅の除去が不十分となり、逆に酸化還元電位が-100mV未満ではコバルトの共沈殿量が増加する。
上記酸化還元電位は、硫化剤の添加量によって調整することができる。硫化剤としては、特に限定されるものではないが、硫化水素、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム等を用いることができ、これらの中ではアルカリ金属等による新たな不純物汚染の恐れがない点で硫化水素ガスが好ましい。また、上記pHは、硫化剤として硫化水素や水硫化ナトリウムを用いる場合は、その硫化剤の添加量とpH調整剤としての炭酸コバルトスラリーの添加量とによって調整することができる。上記のように、pH調整剤として炭酸コバルトスラリーを用いることで、他の不純物金属元素の混入を避けることができる。この炭酸コバルトスラリーは、前述したように、炭酸コバルト製造工程S7においてマグネシウムの一部を濾過側に抜き出しながら作製することができる。
(4)脱亜鉛工程S4
脱亜鉛工程S4は、上記脱銅工程S3で得られたマンガン及び銅が除去された塩化コバルト水溶液を弱塩基性陰イオン交換樹脂に接触させることによって、該塩化コバルト水溶液中の亜鉛を吸着除去し、これにより高純度塩化コバルト水溶液を得る工程である。すなわち、塩化コバルト水溶液中の亜鉛は、下記式6に従って弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着されることにより、塩化コバルト水溶液中から除去される。
[式6]
ZnCl 2-+2R(CH)N:H-Cl
→(R(CH)N:H)ZnCl+2Cl
(式中のRは樹脂の基材(母体)を表し、「:」は窒素原子の非共有電子対を表す。)
この脱亜鉛工程S4で得た高純度塩化コバルト水溶液は、後段の電解工程S5に電解給液として連続的に供給される。この高純度塩化コバルト水溶液は、一部をリチウムイオン二次電池の正極材の製造工程に移送してリチウムイオン二次電池の正極材の原料として用いてもよい。このリチウムイオン二次電池の正極材の製造工程では、高純度塩化コバルト水溶液と硫酸ニッケル水溶液とを所定の比率で混合し、更にアルミン酸ソーダを添加してアルミニウム比率を調整し、中和剤を添加することによりNi-Co-Alの混合水酸化物を生成する。その後、Ni-Co-Alの混合水酸化物を乾燥し、水酸化リチウムと混合して焙焼することにより、リチウムイオン二次電池の正極材が完成する。
脱亜鉛工程S4において弱塩基性陰イオン交換樹脂に供給する塩化コバルト水溶液は、上記脱銅工程S3で処理された後の塩化コバルト水溶液であるから、そのpHは1.3~2.0であり、塩化物イオン濃度は100g/L以下である。前述の通り、このように塩化物イオン濃度が低い場合、塩化コバルト水溶液中の銅、亜鉛、鉄等はクロロ錯イオンを形成するが、コバルトはクロロ錯イオンを形成しない。
上記した低い塩化物イオン濃度では、陰イオン交換樹脂に対するコバルトの分配係数はほぼゼロであるが、亜鉛クロロ錯イオンの分配係数は1000程度である。従って、亜鉛を含有する塩化コバルト水溶液を弱塩基性陰イオン交換樹脂に接触させることによって、塩化コバルト水溶液中の亜鉛を選択的に吸着除去することができる。この脱亜鉛工程S4において用いる弱塩基性イオン交換樹脂としては特に限定されるものではないが、例えばオルガノ株式会社製の弱塩基性陰イオン交換樹脂「IRA96SB(商品名)」を好適に使用することができる。
なお、この脱亜鉛工程S4に用いる亜鉛吸着装置は一般的なものでよく、例えばカラム方式の充填塔を用いることができる。充填塔の場合は、塔内充填部の流速分布が流れ方向に垂直な断面全体に亘ってほぼ均一になるような給液方法が好ましく、一般的には塔底から給液する方式よりも塔頂から給液する方式が好ましいが、これは使用する装置の構造等によって異なる場合がある。
(5)電解工程S5
電解工程S5は、上記脱亜鉛工程S4で得られた高純度塩化コバルト水溶液の少なくとも一部から電解採取法により電気コバルトを生成する工程である。その際、副生成物として塩素ガス及び電解廃液が排出される。この電解廃液は、後述する炭酸コバルト製造工程S7において、炭酸コバルトの生成用の原料、及び該生成した炭酸コバルトのレパルプ用水溶液として一部が使用され、残りは後述する蒸発濃縮工程S6において、蒸発濃縮した後、電解給液として繰り返される。
この電解工程S5では、先ず種板電解により母板に薄くコバルトを電着させて種板を製造し、その電着した種板を剥ぎ取って加工することでカソードを作製する。このカソードの加工は、具体的には剥ぎ取った種板の4辺を切断等によりトリミングし、その上辺部2ヶ所に湾曲させた吊手リボンの両端部を取り付ける。この吊手リボンの内側に挿通させた導電及び支持の役割を担うクロスビームを、電解槽の対向する両壁部に架け渡すことで、該カソードを電解槽内に垂下させることができる。
上記電解槽内には1枚ずつ交互に並べた上記カソード群と不溶性電極のアノード群とが浸漬するように電解液が満たされており、この状態でこれらカソード群及びアノード群にコマーシャル電解用の直流電流を流すことによって各カソード上に電気コバルトを電着させることができる。その際、アノード表面からは電気分解によって塩素ガスが発生するので、アノードは隔膜に隔てられたアノードボックス内に収められており、このアノードボックスから塩素ガスが吸引排出される。なお、上記アノードには、チタン板に酸化ルテニウムがコーティングされたものを用いることができる。
上記の電解工程S5での電解条件の一具体例を挙げると、アノード及びカソードは、各々の寸法が約1.0m×約0.8mであり、それらの電解槽1槽当たりの枚数はカソードが52枚及びアノードが53枚であり、電流密度は270A/mであり、通電時間は種板電解が約1日、コマーシャル電解が7~10日である。この電解槽に高純度塩化コバルト水溶液を含む電解給液が連続的に供給され、その供給量は電解槽1槽当たり35~45L/分である。
(6)蒸発濃縮工程S6
上記電解工程S5では、カソードの表面にコバルトが電着するので、電解給液のコバルト濃度に対して電解廃液のコバルト濃度は低下する。そこで、蒸発濃縮工程S6では、上記電解工程S5から排出される電解廃液のうち、上記電解工程S5の電解給液として繰り返されるものに対してそのコバルト濃度を一定に保つために蒸発濃縮処理を行なう。蒸発濃縮装置としては一般的な真空蒸発濃縮装置を使用することができるが、低pHかつ高塩化物イオン濃度水溶液を取り扱うため、その接液部は耐腐食性の材質を用いるのが好ましい。
(7)炭酸コバルト製造工程S7
炭酸コバルト製造工程S7は、上記電解工程S5から排出される電解廃液のうちの一部に対して希釈水により体積基準で好ましくは1.1~1.5倍程度に希釈した後、濃度100~350g/L程度のソーダ灰水溶液(炭酸ナトリウム水溶液)からなる炭酸化剤を添加することで炭酸化処理を施し、これにより生成される炭酸コバルトを含むスラリーをスクリューデカンター等の固液分離手段に導入して液体側を分離除去し、これにより固体側に回収される高濃度スラリー又は湿潤ケーキの形態の炭酸コバルトを電解廃液でレパルプして炭酸コバルトスラリーを製造する工程である。
上記の炭酸コバルトスラリーは、例えば脱マンガン工程や脱銅工程に繰り返されて中和剤又はpH調整剤として粗塩化コバルト水溶液の浄液処理に使用される。これにより、湿式製錬プロセスの水バランスを維持することも可能になる。なお、固液分離手段から排出される液体側には微量のコバルトが含まれるが、該液体側を薄液中和工程(図1には図示せず)に送液し、ここで水酸化ナトリウム水溶液及び塩素ガスを用いてpH7.0程度、ORP650mV以上(Ag/AgCl電極基準)で中和処理することで、コバルトを水酸化コバルトとして析出させ、これを例えばフィルタープレス等の濾過装置を用いて回収する。回収された水酸化コバルトは、硫酸ニッケル製造工程の原料処理工程において溶解処理される。よって、貴重なコバルト資源をロスすることは無い。また、薄液中和工程から産出される濾液については、排水処理後、放流される。
本発明の実施形態の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法においては、上記のように炭酸化処理の対象となる電解廃液に対して、ソーダ灰水溶液の添加量を調整することでpH6.0~7.0の範囲内で、より好ましくはpH6.2~6.4の範囲内で炭酸化処理を施す。これにより、マグネシウムが炭酸塩として沈澱するのを抑制しながら選択的に炭酸コバルトを炭酸塩として沈澱させることができ、つまり処理液中に残存するマグネシウムの量を増やすことができる。
具体的には、ビーカー試験結果に基づいて実操業プラントに適用した結果、適用前は浄液処理後の高純度塩化コバルト水溶液中のマグネシウム濃度は0.1g/L程度で推移していたが、適用後は0.07~0.08g/L程度までマグネシウム濃度を低減することができた。上記の炭酸化処理時のpHが6.0未満では、上記の固液分離により得られる液体側のコバルト濃度が増加するため、薄液中和工程で処理すると、回収された水酸化コバルトが原料処理工程に繰り返されるため、コバルトの処理コストが増加する。また、薄液中和工程から産出される濾液に随伴するコバルトが増える恐れもあり、コバルトのロスが増える可能性がある。逆にこのpHが7.0を超えるとコバルトの水酸化物が生成し、上記固液分離の分離性が悪化する。また、炭酸塩として沈澱するマグネシウム量が増加するため、高純度塩化コバルト水溶液の製造プロセス系内から抜き出されるマグネシウム量が減少する。
上記の炭酸コバルト製造工程S7は、例えば図2に示すような炭酸コバルト製造装置を用いて行なうことができる。すなわち、この図2に示す炭酸コバルト製造装置は、電解工程S5の電解採取を行なう電解槽から排出される電解廃液の一部に対して希釈水及びソーダ灰(無水炭酸ナトリウム)水溶液を混合して炭酸コバルトを生成する炭酸コバルト反応槽1と、該炭酸コバルト反応槽1の底部から抜き出される炭酸化反応後スラリーを昇圧する第1スラリーポンプ2と、該昇圧された炭酸化反応後スラリーを固液分離する固液分離装置3と、該固液分離装置3での液体側の分離除去により固体側に回収される炭酸コバルトの濃縮スラリー又は湿潤ケーキを上記電解廃液でレパルプすることで、所定のスラリー濃度を有する炭酸コバルトスラリーを調製するレパルプ槽4と、該レパルプ槽4の底部から抜き出される上記炭酸コバルトスラリーを昇圧する第2スラリーポンプ5と、該昇圧された炭酸コバルトスラリーを一時的に貯留する炭酸コバルト中継槽6と、該炭酸コバルト中継槽6の底部から抜き出される上記炭酸コバルトスラリーを昇圧する第3スラリーポンプ7とから主に構成される。
なお、上記の固液分離装置3には、フィルタープレス等の濾過器や、重力沈降により濃縮スラリーを清澄液から分離する方式のシックナーを用いてもよいが、回転筒とその内部に同芯軸状に収納されたスクリューコンベアとが互いに異なる回転速度で回転することで連続的に固液分離を行なうスクリューデカンターと称される遠心分離装置を用いることが好ましい。また、炭酸化処理時の処理液のpH調整は、炭酸コバルト反応槽1に設けたpH計の測定値が所定のpH値となるように、分散制御システム(DCS)等の制御装置8によって、炭酸コバルト反応槽1へのソーダ灰水溶液の供給ラインに設けたバルブ等によって添加量を制御するのが好ましい。
上記の炭酸コバルト反応槽1内の混合液へのソーダ灰水溶液の添加は、例えば図3に示すように、ソーダ灰水溶液の供給ライン10の先端部にマニホールド11を取り付けることで、複数個の供給口を介して行なうのが好ましい。これにより、炭酸コバルト反応槽1内において、局所的に発生するソーダ灰の高濃度領域の体積が減少するので、局所的なpHの上昇、すなわち炭酸マグネシウムの過剰な析出を抑制することができる。これら複数個の供給口の各々の先端部には、必要に応じてシャワーノズル12を取り付けても構わない。この場合は、ソーダ灰水溶液をより均一に炭酸コバルト反応槽1内に分散させることができるので、上記のマグネシウムの析出をより効果的に抑制することができる。
以上説明したように、本発明の実施形態の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法は、ソーダ灰水溶液の添加量の調整により所定のpH条件下で炭酸コバルトを生成するので、該炭酸コバルトを含むスラリーを固液分離することで得られる液体側のコバルト量を抑えつつ、固体側に対する該液体側のマグネシウムの分配比率を高めることができる。すなわち、コバルト電解工程よりも上流に繰り返される炭酸コバルトスラリーからマグネシウムを選択的に除去することができるので、粗塩化コバルト水溶液の浄液処理系内にマグネシウムが蓄積するのを抑制できる。次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
[参考例]
高純度塩化コバルト水溶液から電気コバルトを生成する実操業の電解槽から電解廃液を採取し、これを複数のビーカーに小分けして各々0.2倍の工業用水で希釈した。更に、150g/Lのソーダ灰水溶液をビーカー毎に添加量を変えて添加することで、それぞれ異なるpH条件下で炭酸化処理を行なって炭酸コバルトを生成させた。このようにして生成した炭酸コバルトを含むスラリーを濾過することで得た濾液中のマグネシウム濃度及びコバルト濃度をICP発光分光分析法により測定した。その測定値を、横軸を炭酸化処理時のpHとするグラフにプロットした結果を図4に示す。
この図4の結果から、濾液中のコバルト濃度は炭酸化処理時のpHが6.3以下になると指数関数的に上昇するのに対して、濾液中のマグネシウム濃度はpHの低下と共に一次関数的に上昇しており、pHの調整によりマグネシウムを選択的に分離除去できることが分かる。特に、pHが6.0~7.0の範囲においては、液体側のコバルト濃度を抑えつつ、マグネシウム濃度を0.1~0.2g/L程度まで高くできることが分かる。また、上記のようにコバルトが液体側に残存し始めるpHの臨界点が6.3程度であることを考慮すると、液体側にできるだけマグネシウムのみを多く残存させながら炭酸コバルトを生成するには、pH6.2~6.4の範囲内で炭酸化処理を行なうのが好ましいことが分かる。
[実施例]
図1に示すブロックフローに沿って生成した電解廃液に対して、図2に示すような炭酸コバルト製造装置を用いて炭酸コバルトを製造した。その際、10月16日以前はソーダ灰水溶液を過剰量添加して炭酸化処理時のpH調整は行わず(pH測定値は7.03~7.58)、10月17日以降はソーダ灰水溶液の添加量を調整することでpH6.0~7.0の範囲内で炭酸化処理を施した。生成した炭酸コバルトを含むスラリーは、スクリューデカンターに導入して液体側を分離除去した後、電解廃液でレパルプして浄液処理工程としての脱マンガン工程及び脱銅工程に繰り返してpH調整剤として使用した。その結果、図5に示すように、高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度は、10月16日以前は0.1g/L前後で推移していたのに対して、10月17日以降は0.07~0.08g/L程度まで低下した。
[比較例1]
上記の実施例と同様に生成した電解廃液に対して、図2に示すような炭酸コバルト製造装置を用いて炭酸コバルトレパルプスラリーを生成したが、上記実施例のpH調整法に代えて、スクリューデカンターから排出される液体側の着色具合に基づいてコバルト濃度を推定し、これにより炭酸化処理時のpH調整を行った。その結果、高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度は、図6に示すように0.13~0.19g/Lで推移した。このように実施例に比べてマグネシウム濃度が高くなった理由としては、液体側が着色を呈したときに炭酸化処理時のpH値を高める方向に過剰に操作したため、pHが過剰に上昇して本来は析出しないはずのマグネシウムが析出して炭酸コバルトと共に浄液処理系に繰り返されたためと考えられる。
[比較例2]
上記の実施例と同様に生成した電解廃液に対して、上記実施例のpH調整法に代えて、図1の一点鎖線で示すように、電解工程から排出される電解廃液を上流の塩化コバルト溶媒抽出工程の洗浄段に用いる洗浄液として繰り返すことで系内からマグネシウムを除去した(特許文献1に記載の方法)。電解廃液の繰り返し量は、浄液処理系で処理される合計コバルト量に対するコバルト量比で15.3%になった。その結果、高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度は、図6に示すように0.045~0.075g/Lで推移した。このように、比較例2の製造方法では実施例に比べて高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度を低くすることができたが、図1における洗浄終液は粗塩化ニッケル水溶液(抽出始液)として繰り返されるため、浄液処理系で処理される合計コバルト量が増加し、溶媒抽出工程S1から脱亜鉛工程S4までの運転コスト、資材コストを増加させることとなった。
[比較例3]
上記の実施例と同様に生成した電解廃液に対して、上記実施例のpH調整法に代えて、炭酸コバルトスラリー送液配管の閉塞防止のために使用する洗浄液を電解廃液から高純度塩化コバルト水溶液に変更することで浄液処理系内のマグネシウム量を減らすことを試みた(本明細書の段落0009に記載の方法)。その結果、高純度塩化コバルト水溶液のマグネシウム濃度は、図6に示すように0.1~0.13g/Lで推移した。
以上の結果より、本発明の低マグネシウム濃度の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法によれば、低マグネシウム濃度の高純度塩化コバルト水溶液を比較的低コストで製造できることが分かった。
S1 溶媒抽出工程
S2 脱マンガン工程
S3 脱銅工程
S4 脱亜鉛工程
S5 電解工程
S6 蒸発濃縮工程
S7 炭酸コバルト製造工程
S11 抽出段
S12 洗浄段
S13 逆抽出段
1 炭酸コバルト反応槽
2 第1スラリーポンプ
3 固液分離装置
4 レパルプ槽
5 第2スラリーポンプ
6 炭酸コバルト中継槽
7 第3スラリーポンプ
8 制御装置
10 供給ライン
11 マニホールド
12 シャワーノズル

Claims (3)

  1. 浄液処理された高純度塩化コバルト水溶液を電解処理する電解槽から排出されるマグネシウムを含んだ電解廃液に対して、ソーダ灰水溶液の添加量を調整することでpH6.0~7.0の範囲内で炭酸化処理を施し、これによりマグネシウムの固体側への分配を抑制しながら炭酸コバルトを生成し、得られた炭酸コバルトを含むスラリーを固液分離することで回収される固体側を前記浄液処理に繰り返すことを特徴とする低マグネシウム濃度の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法。
  2. 前記ソーダ灰水溶液を複数の供給口を介して前記電解廃液に添加することを特徴とする、請求項1に記載の低マグネシウム濃度の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法。
  3. 前記複数の供給口の各々に取り付けられたシャワーノズルによって、前記ソーダ灰水溶液を分散させて電解廃液に添加することを特徴とする、請求項2に記載の低マグネシウム濃度の高純度塩化コバルト水溶液の製造方法。
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