本出願は、2018年10月5日に日本国に特許出願された特願2018−190428の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
従来、無線通信などの技術分野において、複数の送信アンテナから送信する送信波のビームを形成する技術(ビームフォーミング)が知られている。ビームフォーミングによれば、複数の送信アンテナから送信される送信波のビームを所定の方向に形成することで、例えば電波の到達距離を伸ばすことができる。複数の送信アンテナから送信される送信波のビームを形成する際に、当該ビームを所定の方向に正確に向けることができれば、周囲に存在する物体との間の距離などの測定精度(検出精度)の向上に資する。物体の検出精度を向上させる技術の一例として、例えば特許文献1は、受信アレーアンテナを用いた物体の方位角を推定する際に、サイドロープ及びグレーティングローブによる誤推定を抑制することを提案している。本開示の目的は、物体の検出精度を向上させる電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムを提供することにある。一実施形態によれば、物体の検出精度を向上させる電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムを提供することができる。以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の物体を検出することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、移動体の例として乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、自動運転自動車、バス、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、ドローン、ロボット、及び歩行者など、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。一実施形態に係る電子機器は、センサ部及び物体の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサ部の周囲に存在する物体を検出し、センサ部と当該物体との間の距離などを測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、センサ部及び物体の双方が静止していても、センサ部と物体との間の距離などを測定することができる。
まず、一実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサを、移動体に設置した例を示している。
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。また、図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)しているものとする。電子機器1の具体的な構成については後述する。センサ5は、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。また、センサ5は、電子機器1に含まれる制御部10(図2)の少なくとも一部など、他の機能部の少なくともいずれかを、適宜含んでもよい。図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
図1に示すように、移動体100には、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、センサ5が移動体100に設置される位置は、図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、図1に示すようなセンサ5を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このようなセンサ5の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。
センサ5は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の物体(例えば図1に示す物体200)が存在する場合、センサ5から送信された送信波の少なくとも一部は、当該物体によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えばセンサ5の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該物体を検出することができる。
送信アンテナを備えるセンサ5は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、センサ5は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係るセンサ5は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の物体200を検出することができる。例えば、図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器1は、所定の物体200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。
ここで、物体200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、物体200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、マンホール、障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、物体200は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、物体200は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。本開示において、電子機器1が検出する物体200には、無生物の他に、人及び動物などの生物も含む。本開示の電子機器1が検出する物体200は、レーダ技術により検知される、人、物、及び動物などを含む物標を含む。
移動体100の前方に設置されたセンサ5は、例えば移動体100の前方に送信波のビームを形成することができる(ビームフォーミング)。この時、電子機器1は、複数の送信アンテナから送信されるそれぞれの送信波の位相が移動体100の前方向(Y軸正方向)において揃うように、各送信波の位相を制御する。このようにして、複数の送信波は、移動体100の前方向(Y軸正方向)において強め合い、電波のビームを形成する。上述のように、ビームフォーミングの技術を採用することで、送信波によって検出される所定の物体との間の距離の測定などの精度が向上し得る。さらに、ビームフォーミングによれば、送信波の到達距離を伸ばすこともできる。
また、電子機器1は、複数のアンテナから送信される送信波の位相を適切に制御することで、送信波のビームの方向を変えることができる。電子機器1は、送信波の位相を適宜変更することで、各種の方向に、送信アンテナ40から送信される送信波のビームを向けることができる。このように、電子機器1は、所定の物体200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。ビームフォーミングによれば、送信波の放射方向を制御して、所定の物体に対する角度を測定する精度を向上することができる。
図2は、一実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の構成について説明する。
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5及び制御部10を備えている。図2に示す電子機器1において、1つのセンサ5が、1つの制御部10に接続されている。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10及びセンサ5は、それぞれ任意の数とすることができる。例えば、一実施形態に係る電子機器1において、1つの制御部10に、複数のセンサ5が接続されていてもよい。図2においては、例えば制御部10に複数接続可能なセンサ5の代表例として、1つのセンサ5のみについて、より詳細に示してある。
一実施形態に係る電子機器1は、信号生成部22、周波数シンセサイザ24、送信制御部30、パワーアンプ36A及び36B、並びに送信アンテナ40A及び40Bを備えてよい。上述のセンサ5は、少なくとも送信アンテナ40A及び40Bを備えるものとしてよい。また、センサ5は、制御部10、送信制御部30、並びにパワーアンプ36A及び36Bなどの少なくともいずれかのような、他の機能部を含んでもよい。なお、図1及び図2に示す例においては、センサ5と制御部10とは別個の機能部として示してあるが、センサ5に制御部10の全部又は一部が含まれても良い。また、センサ5に含まれる部材は図2に示される例に限定されず、図2に示す部材のうちの任意の部材をセンサ5から外してもよい。ここで、送信アンテナ40A及び送信アンテナ40B、受信アンテナ50A及び受信アンテナ50B、並びに、パワーアンプ36A及びパワーアンプ36Bがセンサ5として、1つの筐体に収められてもよい。本開示では、送信アンテナを2つ、受信アンテナを2つとして説明する。しかしながら、一実施形態において、送信アンテナ、受信アンテナの数は任意の複数とすることができる。
図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ40A及び40Bを備えている。以下、一実施形態に係る電子機器1において、送信アンテナ40Aと送信アンテナ40Bとを区別しない場合、単に「送信アンテナ40」と総称する。また、図2に示す電子機器1は、他の機能部も2つ備える場合がある(例えばパワーアンプ36A及び36Bなど)。このような他の機能部についても、同種の複数の機能部を特に区別しない場合、A及びBのような記号を省略することにより、当該機能部を総称することがある。
さらに、一実施形態に係る電子機器1は、受信アンテナ50A及び50B、LNA52A及び52B、ミキサ54A及び54B、IF部56A及び56B、AD変換部58A及び58B、距離推定部62、角度推定部64、並びに相対速度推定部66を備えてよい。以下、これらのような機能部についても、同種の複数の機能部を特に区別しない場合、A及びBのような記号を省略することにより、当該機能部を総称することがある。上述のセンサ5は、受信アンテナ50A及び50Bを備えるものとしてもよい。また、センサ5は、LNA52A及び52Bなどのような、他の機能部を含んでもよい。
一実施形態に係る電子機器1が備える制御部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。制御部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。制御部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、制御部10は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。
図2に示すように、制御部10は、記憶部12、検出範囲決定部14、及び周波数選定部16を含んで構成してもよい。検出範囲決定部14及び周波数選定部16は、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。
記憶部12は、制御部10において実行されるプログラム、及び、制御部10において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、記憶部12は、制御部10のワークメモリとして機能してよい。記憶部12は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。また、例えば、記憶部12は、本実施形態に係る電子機器1に挿入されたメモリカードのような記憶媒体としてもよい。また、記憶部12は、上述のように、制御部10として用いられるCPUの内部メモリであってもよい。
検出範囲決定部14は、送信アンテナ40から送信する送信波T及び受信アンテナ50から受信する反射波Rによって物体を検出する範囲を決定する。一実施形態において、検出範囲決定部14は、距離推定部62及び角度推定部64の少なくとも一方による推定に基づいて、物体検出範囲を決定してもよい。検出範囲決定部14による物体検出範囲の決定については、さらに後述する。検出範囲決定部14は、決定した物体検出範囲を、周波数選定部16に通知してもよい。
周波数選定部16は、送信アンテナ40から送信する送信波Tの周波数を決定する。一実施形態において、周波数選定部16は、例えば検出に使用可能な周波数帯域として用意された所定の周波数帯域において、送信波Tを送信する所定の帯域部分を選定する。また、一実施形態において、周波数選定部16は、検出範囲決定部14によって決定された検出範囲に基づいて、送信波Tを送信する所定の帯域部分を選定してもよい。このような、周波数選定部16による所定の帯域部分の選定については、さらに後述する。周波数選定部16は、選定した周波数を、周波数シンセサイザ24に通知してもよい。この場合、周波数シンセサイザ24は、周波数選定部16によって選定された所定の周波数帯の周波数まで、送信波Tの周波数を上昇させることができる。
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信制御部30を制御することができる。この場合、制御部10は、記憶部12に記憶された各種情報に基づいて、送信制御部30を制御してよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、信号生成部22に信号の生成を指示したり、信号生成部22が信号を生成するように制御したりしてもよい。
移動体100が自動車である場合、例えばCAN(Controller Area Network)のような通信インタフェースを用いて、ECU(Electronic Control Unit)間における通信を行うことができる。この場合、制御部10は、ECU(例えば移動体制御部70)などから、移動体100の制御情報を入手することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、入手した制御情報などに基づいて、送信波の送信モードを決定してよい。ここで、送信波の送信モードとは、例えば、ビームフォーミングを行う動作モード(BFモード)又はビームフォーミングを行わない動作モード(通常モード)のいずれかとしてよい。さらに、送信波の送信モードとは、上述のそれぞれのモードにおける各種の設定としてもよい。例えば、送信波の送信モードとは、上述のそれぞれのモードにおいて送信波を送信する送信アンテナの数(アンテナの本数)を規定するものとしてもよい。また、例えば、送信波の送信モードとは、例えばビームフォーミングの有無及び/又はビームフォーミングの角度などを規定するものとしてもよい。ここで、ビームフォーミングの角度とは、ビームフォーミングを行う場合に、移動体100において送信アンテナ40が設置された箇所(位置)に対してビームの利得を増大させるための角度としてよい。
上述の送信モードが決定されると、制御部10は、当該送信モードにおける設定情報を、送信制御部30に供給する。ここで、送信モードにおける設定情報は、例えば、当該送信モードにおいて送信波を送信する送信アンテナの数の情報を含んでもよい。また、送信モードにおける設定情報は、例えば、当該送信モードにおいて送信アンテナが送信波を送信するパワーの情報などを含んでもよい。また、送信モードにおける設定情報は、ビームフォーミングを行う場合に複数の送信アンテナ40から送信するそれぞれの送信波の位相の情報などを含んでもよい。
このような動作のために、例えば、各種の送信モードと、当該送信モードにおける動作に必要な設定情報とを関連付けたものを、例えばテーブルなどとして予め記憶部12に記憶してもよい。また、例えば、ある送信モードにおいてビームフォーミングを行う際の送信波の位相情報を、移動体100において送信アンテナ40が設置された箇所(位置)及び設置角度などに関連付けて、記憶部12に記憶してもよい。このような場合、制御部10は、送信モードが決定すると、決定した送信モードに対応する設定情報を記憶部12から読み出して、当該設定情報を送信制御部30に供給することができる。
送信アンテナ40から送信する送信波Tの届く距離を変化させたい場合、例えば送信波Tの送信電力を調整して、送信アンテナ40の利得及び/又はビームフォーミングの利得を変化させてもよい。この場合、送信アンテナ40が送信する送信波Tの送信電力と、送信アンテナ40の利得及び/又はビームフォーミングの利得とを関連付けて、記憶部12に記憶しておいてもよい。
また、上述のような各種の送信モードと、当該送信モードに対応する設定情報とは、各種の条件に基づいて、適宜生成されるものであってもよい。このような場合、制御部10は、送信モードが決定すると、決定した送信モードに対応する設定情報が記憶部12に記憶されていなくても、当該設定情報を送信制御部30に供給することができる。
信号生成部22は、制御部10の制御により、送信アンテナ40から送信波Tとして送信される信号(送信信号)を生成する。信号生成部22は、送信信号を生成する際に、例えば制御部10による制御に基づいて、送信信号の周波数を割り当てる。例えば、信号生成部22は、制御部10から周波数情報を受け取ることにより、例えば77〜81GHzのような周波数帯域の所定の周波数の信号を生成する。信号生成部22は、例えば電圧制御発振器(VCO)のような機能部を含んで構成してよい。なお、本開示において、a,bを任意の数として、aGHz〜bGHzは、aGHz以上、bGHz未満を意味する。なお、本開示において、a,bを任意の数として、aGHz〜bGHzは、aGHzより大きく、bGHz以下を意味するとしてもよい。
信号生成部22は、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。以下説明する各機能部も、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、可能な場合には、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。
一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部22は、例えばチャープ信号のような送信信号を生成してよい。特に、信号生成部22は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号生成部22は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号生成部22は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号生成部22が生成する信号は、例えば制御部10において予め設定されていてもよい。また、信号生成部22が生成する信号は、例えば記憶部12に予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号生成部22によって生成された信号は、周波数シンセサイザ24に供給される。
周波数シンセサイザ24は、信号生成部22が生成した信号の周波数を、所定の周波数帯の周波数まで上昇させる。周波数シンセサイザ24は、送信アンテナ40から送信する送信波Tの周波数として選択された周波数まで、信号生成部22が生成した信号の周波数を上昇させてよい。送信アンテナ40から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば制御部10によって設定されてもよい。一実施形態において、周波数シンセサイザ24は、信号生成部22が生成した信号の周波数を、周波数選定部16によって選定された周波数まで上昇させてもよい。また、送信アンテナ40から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば記憶部12に記憶されていてもよい。周波数シンセサイザ24によって周波数が上昇された信号は、送信制御部30及びミキサ54に供給される。
送信制御部30は、周波数シンセサイザ24から供給された送信信号を、複数の送信アンテナ40の少なくとも1つから送信波Tとして送信するための制御を行う。図2に示すように、送信制御部30は、位相制御部32及びパワー制御部34を含んで構成されてよい。また、図2に示すように、送信制御部30は、制御部10による制御に基づいて、送信アンテナ40から送信波Tとして送信するための制御を行ってよい。制御部10が送信制御部30を制御するために必要な各種情報は、記憶部12に記憶してよい。
位相制御部32は、周波数シンセサイザ24から供給された送信信号の位相を制御する。具体的には、位相制御部32は、制御部10による制御に基づいて、周波数シンセサイザ24から供給された信号の位相を適宜早めたり遅らせたりすることにより、送信信号の位相を調整してよい。この場合、位相制御部32は、複数の送信アンテナ40から送信されるそれぞれの送信波Tの経路差に基づいて、それぞれの送信信号の位相を調整してよい。位相制御部32がそれぞれの送信信号の位相を適宜調整することにより、複数の送信アンテナ40から送信される送信波Tは、所定の方向において強め合ってビームを形成する(ビームフォーミング)。
例えば通常モードでビームフォーミングを行わずに送信波Tを送信する場合、位相制御部32は、送信アンテナ40から送信波Tとして送信する送信信号の位相を制御しなくてもよい。また、例えばBFモードで送信波Tのビームフォーミングを行う場合、位相制御部32は、ビームフォーミングの方向に応じて、複数の送信アンテナ40から送信波Tとして送信する複数の送信信号の位相を、それぞれ制御してよい。この場合、ビームフォーミングの方向と、複数の送信アンテナ40がそれぞれ送信する送信信号の制御すべき位相量との相関関係は、例えば記憶部12に記憶しておいてよい。位相制御部32によって位相制御された信号は、パワーアンプ36に供給される。
パワー制御部34は、図2に示すように、それぞれ対応するパワーアンプ36に接続される。パワー制御部34は、パワー制御部34に接続されたパワーアンプ36によるパワーの増幅を制御する。パワー制御部34は、パワーアンプ36を制御することで、パワーアンプ36に接続された送信アンテナ40から送信される送信波Tの送信パワーを制御する。例えば、パワー制御部34は、パワー制御部34に接続されたパワーアンプ36の送信パワーのオンとオフとを切り替えることができる。すなわち、パワー制御部34は、パワーアンプ36に接続された送信アンテナ40から送信波Tを送信するか否かを切り替えることができる。
例えば、パワー制御部34Aは、送信アンテナ40Aから送信される送信波Tの送信パワーのオンとオフとを切り替えることができる。また、パワー制御部34Bは、送信アンテナ40Bから送信される送信波Tの送信パワーのオンとオフとを切り替えることができる。したがって、電子機器1は、パワー制御部34A及びパワー制御部34Bの双方による制御に基づいて、送信アンテナ40A及び/又は送信アンテナ40Bから送信波Tが送信されるようにするか否かを、それぞれ任意に制御することができる。また、パワー制御部34は、パワー制御部34に接続されたパワーアンプ36の送信パワーを適宜調整可能としてもよい。このように、パワー制御部34は、例えば送信モードにおける設定に基づいて、複数の送信アンテナ40のうちいくつの送信アンテナ40から送信波Tを送信するかを規定することができる。パワー制御部34による制御に必要な各種の情報は、例えば記憶部12に記憶してよい。例えば、記憶部12は、パワー制御部34による制御と、対応する送信アンテナ40から送信される送信波Tの送信パワーとの相関関係を記憶してもよい。また、記憶部12は、前述のような相関関係を、各種の送信モードについて記憶してもよい。
一実施形態に係る電子機器1は、送信制御部30における位相制御部32及び/又はパワー制御部34による制御に基づいて、複数の送信アンテナ40の少なくとも1つから送信する送信波Tの送信態様を、種々設定することができる。具体的には、一実施形態に係る電子機器1は、ビームフォーミングを行うか否か、及び/又は、ビームフォーミングを行う場合におけるビームの方向などを、種々設定することができる。この場合、例えば記憶部12は、送信波Tの種々の送信態様に対応する位相制御部32及び/又はパワー制御部34の制御情報を記憶してよい。制御部10は、記憶部12から送信波Tの種々の送信態様に対応する制御情報を読み出すことにより、位相制御部32及び/又はパワー制御部34による送信波Tの制御を行うことができる。例えば、電子機器1が上述の通常モードで動作する(例えばビームフォーミングを行わない)場合、パワー制御部34は、各送信アンテナ40のアンテナ放射利得に応じて、送信波Tを送信する際の電力を制御する。また、例えば電子機器1が上述のBFモードで動作する(ビームフォーミングを行う)場合、位相制御部32は、複数の送信アンテナ40のうち使用する送信アンテナから送信する送信信号の位相を適宜変更する。一実施形態において、複数の送信アンテナ40から送信される送信波Tのビームフォーミングを行う際、ビームの数及び/又はビームの形状などは、位相制御部32及びパワー制御部34による制御に基づいて、各種のものとすることができる。
パワーアンプ36は、位相制御部32から供給された送信信号のパワーを、パワー制御部34による制御に基づいて増幅させる。送信信号のパワーを増幅させる技術自体は既に知られているため、より詳細な説明は省略する。パワーアンプ36は、送信アンテナ40に接続される。
送信アンテナ40は、パワーアンプ36によって増幅された送信信号を、送信波Tとして出力(送信)する。上述のように、センサ5は、例えば送信アンテナ40A及び送信アンテナ40Bのように、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。送信アンテナ40は、既知のレーダ技術に用いられる送信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、複数の送信アンテナ40から送信波Tとして、例えばチャープ信号のような送信信号を送信することができる。ここで、電子機器1を構成する各機能部のうちの少なくとも1つは、1つの筐体において容易に開けることができない構造の筐体に収められてもよい。例えば送信アンテナ40A及び送信アンテナ40B、受信アンテナ50A及び受信アンテナ50B、並びにパワーアンプ36A及びパワーアンプ36Bが1つの筐体に収められて、かつ、この筐体が容易に開けられない構造にしてもよい。さらに、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、送信アンテナ40は、例えばレーダカバーのような部材を介して、移動体100の外部に送信波Tを送信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で送信アンテナ40を覆うことにより、送信アンテナ40が外部との接触により破損したり不具合が発生したりするリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある(以下、同じ)。
図2に示す電子機器1は、送信アンテナ40A及び送信アンテナ40Bのように2つの送信アンテナ40を備え、この2つの送信アンテナ40によって送信波Tを送信する。したがって、図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ40から送信波Tを送信するのに必要な機能部も、それぞれ2つずつ含んで構成される。具体的には、送信制御部30は、位相制御部32A及び位相制御部32Bのように2つの位相制御部32を含んで構成される。また、送信制御部30は、パワー制御部34A及びパワー制御部34Bのように2つのパワー制御部34を含んで構成される。さらに、図2に示す電子機器1は、パワーアンプ36A及びパワーアンプ36Bのように2つのパワーアンプ36を含んで構成される。
図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ40を備えているが、一実施形態に係る電子機器1が備える送信アンテナ40の数は、例えば3つ以上のように、任意の複数としてよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1は、複数の送信アンテナ40と同じ数のパワーアンプ36を備えてよい。また、この場合、一実施形態に係る電子機器1は、複数の送信アンテナ40と同じ数の位相制御部32及びパワー制御部34を備えてよい。
受信アンテナ50は、反射波Rを受信する。反射波Rは、送信波Tが所定の物体200に反射したものである。受信アンテナ50は、例えば受信アンテナ50A及び受信アンテナ50Bのように、複数のアンテナを含んで構成してよい。受信アンテナ50は、既知のレーダ技術に用いられる受信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。受信アンテナ50は、LNA52に接続される。受信アンテナ50によって受信された反射波Rに基づく受信信号は、LNA52に供給される。
一実施形態に係る電子機器1は、複数の受信アンテナ50から、例えばチャープ信号のような送信信号として送信された送信波Tが所定の物体200によって反射された反射波Rを受信することができる。ここで、たとえば複数の受信アンテナ50のような電子機器1を構成する少なくとも1つの機能部は、1つの筐体において容易に開けることができない構造の筐体に収められてもよい。センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、受信アンテナ50は、例えばレーダカバーのような部材を介して、移動体100の外部から反射波Rを受信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で受信アンテナ50を覆うことにより、受信アンテナ50が外部との接触により破損又は不具合が発生するリスクを低減することができる。
また、センサ5には、例えば全ての送信アンテナ40及び全ての受信アンテナ50を含めてよい。さらに、受信アンテナ50が送信アンテナ40の近くに設置される場合、これらをまとめて1つのセンサ5に含めて構成してもよい。すなわち、1つのセンサ5には、例えば少なくとも1つの送信アンテナ40及び少なくとも1つの受信アンテナ50を含めてもよい。例えば、1つのセンサ5は、複数の送信アンテナ40及び複数の受信アンテナ50を含んでもよい。このような場合、例えば1つのレーダカバーのような部材で、1つのレーダセンサを覆うようにしてもよい。
LNA52は、受信アンテナ50によって受信された反射波Rに基づく受信信号を低ノイズで増幅する。LNA52は、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)としてよく、受信アンテナ50から供給された受信信号を低雑音で増幅する。LNA52によって増幅された受信信号は、ミキサ54に供給される。
ミキサ54は、LNA52から供給されるRF周波数の受信信号を、周波数シンセサイザ24から供給される送信信号に混合する(掛け合わせる)ことにより、ビート信号を生成する。ミキサ54によって混合されたビート信号は、IF部56に供給される。
IF部56は、ミキサ54から供給されるビート信号に周波数変換を行うことにより、ビート信号の周波数を中間周波数(IF(Intermediate Frequency)周波数)まで低下させる。IF部56によって周波数を低下させたビート信号は、AD変換部58に供給される。
AD変換部58は、IF部56から供給されたアナログのビート信号をデジタル化する。AD変換部58は、任意のアナログ−デジタル変換回路(Analog to Digital Converter(ADC))で構成してよい。AD変換部58によってデジタル化されたビート信号は、受信アンテナ50が1つの場合は距離推定部62に、受信アンテナ50が複数の場合は距離推定部62及び角度推定部64の両方に供給される。
距離推定部62は、AD変換部58から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との間の距離を推定する。距離推定部62は、例えばFFT処理部を含んでよい。この場合、FFT処理部は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。FFT処理部は、AD変換部58によってデジタル化されたビート信号に対してFFT処理を行う。例えば、距離推定部62は、AD変換部58から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。距離推定部62は、FFT処理によって得られた結果においてピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の物体200があると判断してもよい。距離推定部62によって推定された距離の情報は、例えば制御部10に供給されてよい。
角度推定部64は、AD変換部58から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100から物体200に向く方向(すなわち反射波Rが受信アンテナ50に到来する方向)を推定する。角度推定部64も、距離推定部62と同様に、例えばFFT処理部を含んでよい。上述のように、距離推定部62は、AD変換部58から供給された複素信号にFFT処理を行い、FFT処理の結果得られたピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の物体200があると判断してよい。この場合、角度推定部64は、所定の物体200からの反射波Rを複数の受信アンテナ50によって受信した結果に基づいて、反射波Rが受信アンテナ50に到来した方向(すなわち物体200から受信アンテナ50に向く方向)を推定してよい。ここで、角度推定部64によって推定される、反射波Rが受信アンテナ50に到来した方向は、物体200から受信アンテナ50に向く方向としてよい。角度推定部64によって推定された方向(到来方向又は到来角)の情報は、例えば制御部10に供給されてよい。
相対速度推定部66は、ビート信号に基づいて、物体200と移動体100との相対速度を推定する。
一般的に、ビート信号にFFT処理を行うことにより、周波数スペクトルを得ることができる。この周波数スペクトルから、上述のFFT処理部は、送信アンテナ40から送信される送信波Tのビームの範囲内に所定の物体200が存在するか否かを推定することができる。すなわち、FFT処理部は、FFT処理されたビート信号に基づいて、送信アンテナ40を備えるセンサ5が発するビームの範囲内に所定の物体200が存在するか否かを推定することができる。また、FFT処理部は、FFT処理されたビート信号に基づいて、所定の物体200が存在する場合に、送信アンテナ40を備えるセンサ5と物体200との距離を推定することもできる。さらに、FFT処理部は、FFT処理されたビート信号に基づいて、所定の物体200が存在する場合に、送信アンテナ40を備えるセンサ5と物体200との位置関係も推定することもできる。距離推定部62、角度推定部64、及び相対速度推定部66においては、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))以外のフーリエ変換が行われるとしてもよい。
このように、一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tとして送信される信号、及び反射波Rとして受信される信号から得られるビート信号に基づいて、物体200と移動体100との間の距離を測定(推定)してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、ビート信号に基づいて、物体200と移動体100との位置関係(例えば物体200から反射波Rが移動体100に到来する到来角)を測定(推定)してよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、ビート信号に基づいて、物体200と移動体100との相対速度を測定(推定)してもよい。また、制御部10は、距離推定部62から供給される距離の情報、及び/又は角度推定部64から供給される方向(角度)の情報などから、各種の演算、推定、及び制御などを行ってもよい。例えば79GHz帯などのようなミリ波レーダを利用して取得したビート信号に基づいて、反射波が反射した所定の物体までの距離及び/又は方向などを推定する技術そのものは知られているため、より詳細な説明は省略する。
図2に示す電子機器1は、受信アンテナ50A及び受信アンテナ50Bのように2つの受信アンテナ50を備え、この2つの受信アンテナ50によって反射波Rを受信する。したがって、図2に示す電子機器1は、2つの受信アンテナ50から反射波Rを受信するのに必要な機能部も、それぞれ2つずつ含んで構成される。具体的には、電子機器1は、LNA52と、ミキサ54と、IF部56と、AD変換部58とを、それぞれ2つずつ含んで構成される。
図2に示す電子機器1は、2つの受信アンテナ50を備えているが、一実施形態に係る電子機器1が備える受信アンテナ50の数は、任意の複数としてよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1は、上述した2つずつ含まれる機能部を、それぞれ複数の受信アンテナ50と同じ数だけ備えてよい。
以下、一実施形態に係る電子機器1の動作において送信される送信波及び受信される受信波について説明する。
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz〜81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。
本開示の電子機器1が送信する送信信号は、チャープ信号であってよい。チャープ信号は、時間の経過とともに周波数が連続的に変化する信号である。チャープ信号は、周波数変調連続波(FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave))ともいう。チャープ信号の周波数の変化は、増加又は減少であってよく、或いは増加と減少との組合せであってもよい。チャープ信号には、周波数が時間に応じて線形で変化する線形チャープ信号、或いは周波数が時間に応じて指数関数的に変化する指数チャープ信号等が含まれてもよい。送信信号がチャープ信号である場合、それぞれの動作モードにおけるチャープ信号を生成するための情報として、開始周波数、終了波数、及び継続時間等のパラメータが、動作モードに関する情報として記憶部12に記憶されてもよい。
一方、信号生成部22が生成する信号は、FMCW方式の信号に限定されない。信号生成部22が生成する信号は、例えば、パルス方式、パルス圧縮方式(スペクトラム拡散方式)、又は周波CW(Continuous Wave)方式など、各種の方式の信号としてもよい。ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz〜81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、このような実施形態について説明する。
本開示で利用されるFMCWレーダレーダ方式は、通常より短い周期でチャープ信号を送信するFCM方式(Fast-Chirp Modulation)を含むとしてもよい。信号生成部22が生成する信号は、FM−CW方式の信号に限定されない。信号生成部22が生成する信号は、FM−CW方式以外の各種の方式の信号としてもよい。記憶部12に記憶される送信信号列は、これら各種の方式によって異なるものとしてよい。例えば、上述のFM−CW方式のレーダ信号の場合、時間サンプルごとに周波数が増加する信号及び減少する信号を使用してよい。上述の各種の方式は、公知の技術を適宜適用することができるため、より詳細な説明は省略する。
上述のように、複数の送信アンテナ40から送信する電波のビームを形成(ビームフォーミング)することにより、所定の方向の送信波を強め合うことができる。このようにすれば、電子機器1は、電子機器1を搭載した移動体100と物体200との間の距離、及び/又は、物体200の方向などを測定する精度を向上させることができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、FMCWレーダのように周波数が時間の経過に伴って変化する電波を送信波としつつ、このような送信波によって、必要に応じてビームフォーミングを行う。
次に、一実施形態に係る電子機器1が複数の受信アンテナ50から反射波Rを受信する態様について説明する。
図3は、電子機器1が受信する受信波の一例について説明する図である。以下、図3に示すように、複数の受信アンテナ50として、受信アンテナ50A及び受信アンテナ50Bの2つが配置される場合について説明する。しかしながら、一実施形態において、任意の複数の受信アンテナ50を配置してもよい。
一実施形態に係る電子機器1は、図3に示すように複数の受信アンテナ50を備えることにより、物体の方向を推定(測定)することができる。具体的には、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナ40から送信された送信波Tが物体によって反射された反射波Rを、複数の受信アンテナ50によって受信する。そして、一実施形態に係る電子機器1は、複数の受信アンテナ50が受信した複数の反射波Rの経路差Dに基づいて、送信波Tを反射した物体の方向を推定する。
図3に示すように、一実施形態において、複数の受信アンテナ50が配置される方向(X軸方向)に垂直な方向(Y軸方向)を基準方向とする。また、図3に示すように、一実施形態において、前述の基準方向(Y軸方向)に平行な直線と、反射波Rが受信アンテナ50に入射する方向に対応する直線がなす角を、入射角θとする。
図3に示すように、電子機器1において、受信アンテナ50Aと受信アンテナ50Bとは、間隔Wだけ離間して配置されている。以下、このように配置した複数の受信アンテナ50によって、図3に示す方向α(入射角30°)からの電波(反射波R)を受信する場合を想定して説明する。すなわち、以下、受信アンテナ50A及び受信アンテナ50Bにおいて、Y軸正方向を基準として30°右側の方向から方向αに向かう反射波Rを受信する場合について説明する。
図3に示す受信アンテナ50Aと受信アンテナ50Bとの間隔Wは、送信波の波長をλとして、λ/2であるものとする。ここでは、周波数が77GHzから81GHzまで帯域の中心周波数である79GHzで送信された電波の反射波Rを、複数の受信アンテナ50から受信する場合について検討する。この場合、光速をc=3.0×108[m/s]として、反射波の波長λ(=c/f=3.0×108[m/s]/79×109)は、3.7975[mm]となる。したがって、受信アンテナ50Aと受信アンテナ50Bとの間隔W=λ/2は、1.8987[mm]となる。
このように、間隔W=1.8987[mm]だけ離間して配置した2つの受信アンテナ50が方向αからそれぞれ受信する反射波Rには、経路差が生じる。図3に示すように、受信アンテナ50Aが方向αから受信する受信波を、反射波Raと記し、受信アンテナ50Bが方向αから受信する受信波を、反射波Rbと記す。また、本開示において、反射波Raと反射波Rbとを特に区別しない場合、単に「反射波R」と総称する。図3に示すような場合、反射波Raの経路は、反射波Rbの経路よりも、経路差Dだけ長くなる。
図3に示すように、方向αから受信する反射波Raと反射波Rbとの経路差Dは、受信アンテナ50の間隔Wを用いて、W・sin30°と表すことができる。したがって、経路差D=W/2は、0.9494[mm]となる。また、この経路差D=W/2は、波長λを用いると、W=λ/2であるから、経路差D=λ/4と表すことができる。この式から、経路差Dは、波長λの1/4すなわち90°(π/2)の位相に相当することが分かる。したがって、送信波Tの周波数が79GHzの場合、受信アンテナ50Aが受信する反射波Ra(入射角30°)と、受信アンテナ50Bが受信する反射波Rb(入射角30°)とは、90°(π/2)の位相差を有することになる。また、図3に示すように、受信アンテナ50Aが受信する反射波Ra(入射角30°)の位相は、受信アンテナ50Bが受信する反射波Rbの位相よりも、90°(π/2)だけ遅れている。逆に、図3からは、反射波Raの位相が反射波Rbの位相よりも90°(π/2)だけ遅れる場合、送信波Tを反射した物体の方向は、基準方向から右側(時計回り)に30°の角度にあると推定できる。
次に、反射波Rの入射角θが大きくなる場合について検討する。図4は、電子機器1が受信する受信波の他の例について説明する図である。
図4に示すように、方向α’(入射角90°)からの電波(反射波R)を受信する場合を想定して説明する。すなわち、以下、受信アンテナ50A及び受信アンテナ50Bにおいて、Y軸正方向を基準として90°右側の方向つまりほぼ真横から方向α’に向かう反射波Rを受信する場合について説明する。
図4に示す受信アンテナ50Aと受信アンテナ50Bとの間隔Wは、図3と同じ1.8987[mm]とする。ここで、前述の状況と同様に79GHzで送信された電波の反射波Rを、複数の受信アンテナ50から受信する場合について検討する。
図4に示す状況においても、図3に示した状況と同様に、間隔Wだけ離間して配置した2つの受信アンテナ50が方向α’からそれぞれ受信する反射波Rには、経路差が生じる。図4においても、受信アンテナ50Aが方向α’から受信する受信波を、反射波Raと記し、受信アンテナ50Bが方向α’から受信する受信波を、反射波Rbと記す。図4に示すような場合も、反射波Raの経路は、反射波Rbの経路よりも、経路差Dだけ長くなる。
図4に示すように、方向α’から受信する反射波Raと反射波Rbとの経路差Dは、受信アンテナ50の間隔Wを用いて、W・sin90°と表すことができる。したがって、経路差D=Wは、1.8988[mm]となる。また、この経路差D(=W)は、波長λを用いると、W=λ/2であるから、経路差D=λ/2と表すことができる。この式から、経路差Dは、波長λの1/2すなわち180°(π)の位相に相当することが分かる。したがって、送信波Tの周波数が79GHzの場合、受信アンテナ50Aが受信する反射波Ra(入射角90°)と、受信アンテナ50Bが受信する反射波Rb(入射角90°)とは、180°(π)の位相差を有することになる。また、図4に示すように、受信アンテナ50Aが受信する反射波Ra(入射角90°)の位相は、受信アンテナ50Bが受信する反射波Rbの位相よりも、180°(π)だけ遅れている。逆に、図4からは、反射波Raの位相が反射波Rbの位相よりも180°(π)だけ遅れる場合、送信波Tを反射した物体の方向は、基準方向から右側(時計回り)に90°の角度にあると推定できる。このようにして、反射波Raと反射波Rbとの位相差に基づいて、送信波Tを反射した物体の種々の方向を推定することができる。
次に、図3及び図4に示す状況において、送信波Tの周波数が高くなる場合について検討する。
まず、図3に示す状況において、周波数が77GHzから81GHzまで帯域の最大の周波数である81GHzで送信された電波の反射波Rを、複数の受信アンテナ50から受信する場合について検討する。この場合、反射波の波長λ(=c/f=3.0×108[m/s]/81×109)は、3.7037[mm]となる。また、受信アンテナ50Aと受信アンテナ50Bとの間隔は、前述の状況と同じW=1.8987[mm]とする。この場合、図3に示す経路差Dは、1.8987×sin(30°)となる。したがって、受信アンテナ50Aが受信する反射波Raと、受信アンテナ50Bが受信する反射波Rbとの位相差は、(1.8987[mm]/3.7037[mm])×360°×sin(30°)=92.28°となる。すなわち、送信波Tの周波数が81GHzの場合、受信アンテナ50Aが受信する反射波Ra(入射角30°)の位相は、受信アンテナ50Bが受信する反射波Rb(入射角30°)の位相よりも、92.28°だけ遅れる。このように、送信波Tの周波数が高くなると、複数の反射波Rの位相差が大きくなることが分かる。
次に、図4に示す状況において、周波数が77GHzから81GHzまで帯域の最大の周波数である81GHzで送信された電波の反射波Rを、複数の受信アンテナ50から受信する場合について検討する。この場合、反射波の波長λ(=c/f=3.0×108[m/s]/81×109)は、3.7037[mm]となる。また、受信アンテナ50Aと受信アンテナ50Bとの間隔は、前述の状況と同じW=1.8987[mm]とする。この場合、図4に示す経路差D(=W)は、1.8987×sin(90°)となる。したがって、受信アンテナ50Aが受信する反射波Raと、受信アンテナ50Bが受信する反射波Rbとの位相差は、(1.8987[mm]/3.7037[mm])×360°×sin(90°)=184.55°となる。すなわち、送信波Tの周波数が81GHzの場合、受信アンテナ50Aが受信する反射波Ra(入射角90°)の位相は、受信アンテナ50Bが受信する反射波Rb(入射角90°)の位相よりも、184.55°だけ遅れる。このように、入射角θが大きくなる状況において、送信波Tの周波数が高くなると、複数の受信アンテナ50が受信する反射波Raの位相差が180°を超えることがある。
しかしながら、複数の受信アンテナ50が受信する反射波Raの位相差が180°を超える場合、送信波Tを反射する物体の検出において不都合が生じることがある。例えば、上述のように反射波Raの位相が反射波Rbの位相よりも184.55°遅れる場合、反射波Raの位相が反射波Rbの位相よりも175.45°(=360°−184.55°)進んでいる場合と区別することが不可能になる。例えばレーダで物体を検出する場合に行う通常の処理のように、位相差を−180°から+180°までと規定する場合、上述の位相差は184.55°遅れているのではなく、175.45°進んでいると判定される。この場合、図4に示すように、受信アンテナ50は入射角θ=90°付近から(すなわち受信アンテナ50Bの右方から)反射波Rを受信しても、入射角θ=−90°付近から(すなわち受信アンテナ50Aの左方から)反射波Rを受信したと判定される。このように、複数の受信アンテナ50が受信する反射波Raの位相差が180°を超えると、送信波Tを反射する物体が精度良く検出されないおそれがある。
一方、図3に示したように、受信アンテナ50が入射角θ=30°付近から反射波Rを受信しても、複数の受信アンテナ50が受信する反射波Rの位相差(92.28°程度)が180°を超えることはない。このため、入射角θが比較的大きくならない状況においては、前述のような不都合は生じない。ここで、入射角θが比較的大きいと判断する角度は、例えば80°以上の角度のような、90°付近よりも高くなる角度としてよい。
以上説明したように、入射角θが大きくなる状況において、送信波Tの周波数が高くなると、複数の受信アンテナ50が受信する反射波Raの位相差が180°を超えて不都合が生じることがある。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、入射角θが大きくなる状況において、送信波Tの周波数が高くならないように制御する。
上述した例においては、周波数が77GHzから81GHzまで帯域の中心周波数である79GHzで送信された電波の反射波Rを、複数の受信アンテナ50から受信する場合について検討した。ここで、上述のような不都合を回避するために、例えば、送信波Tの送信に使用可能な周波数の上限である81GHzの波長を基準に、アンテナ間隔W(=λ/2)を設定してしまうという方策も考えられる。
しかしながら、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域を全て利用する場合、77GHzから81GHzまでの周波数全域を使用することになる。この場合、77GHzから81GHzまでの周波数における位相差を平均すると、中央の79GHzにおける位相差となる。このため、複数の受信アンテナ50で受信した反射波Rの位相差は、周波数の中心である79GHzにおける位相差で代表されることになる。したがって、上述のような回避策によると、アンテナ間隔Wは81GHzの周波数を基準とし、反射波Rの位相差は79GHzの周波数を基準とすることになる。このようにすると、両者の整合性は失われることとなり、物体検出の特性が劣化する要因になり得る。物体の検出においては、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域全体を利用して、特性を最も引き出すことができるようにアンテナ間隔W(=λ/2)を設定することが望ましい。このため、アンテナ間隔Wは、通常、77GHzから81GHzまでの中心周波数である79GHzの波長を基準にして決定される。
次に、いくつかの実施形態に係る電子機器1の動作について説明する。
図5は、一実施形態に他係る電子機器1が送信する送信波の周波数帯域の例を説明する図である。図5において、横軸は周波数f[GHz]を表し、縦軸は送信波Tの送信電力P[W]を表す。図5に示すように、以下説明する実施形態に係る電子機器1は、77GHzから81GHzまでの周波数帯域を、送信波Tの送信に使用可能なものとする。すなわち、以下説明する実施形態に係る電子機器1は、送信波Tを送信する際に77GHzから81GHzまでの周波数帯域を割り当てて、送信アンテナ40から送信することができる。また、図5に示すように、送信波Tの送信に使用可能な77GHzから81GHzまでの周波数帯域において、中心周波数は79GHzである。
(第1実施形態)
上述のように、一実施形態に係る電子機器1は、入射角θが大きくなる状況において、送信波Tの周波数が高くならないように制御する。そこで、第1実施形態に係る電子機器1は、反射波Rを受信する際の入射角θが所定の角度以上に大きくならない場合、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域において比較的高い帯域部分の周波数を使用して送信波Tを送信する。一方、第1実施形態に係る電子機器1は、反射波Rを受信する際の入射角θが所定の角度以上に大きくなる場合、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域において比較的低い帯域部分の周波数を使用して送信波Tを送信する。ここで、比較的高い帯域部分の周波数とは、例えば送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域における中心周波数よりも高い周波数としてよい。また、比較的低い帯域部分の周波数とは、例えば送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域における中心周波数よりも低い周波数としてよい。以下、第1実施形態に係る電子機器1の動作について、さらに説明する。
図6は、第1実施形態に係るセンサを移動体に配置する例を説明する図である。電子機器1が複数のセンサ5を備える場合、図6に示すように、移動体100の複数の箇所にセンサ5を設置してもよい。
図6に示す例において、移動体100の左前部分にはセンサ5aが配置され、移動体100の右前部分にはセンサ5bが配置され、移動体100の右後部分にはセンサ5cが配置され、移動体100の左後部分にはセンサ5dが配置されている。また、図6に示すように、センサ5cは、検出範囲S1又は検出範囲S2において物体を検出することができる。図6において、検出範囲S1又は検出範囲S2は模式的に示してある。
センサ5cが検出範囲S1において物体を検出する場合、電子機器1は、送信アンテナ40が送信する送信波Tが検出範囲S1に含まれるようにしてよい。また、センサ5cが検出範囲S1において物体を検出する場合、電子機器1は、受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角が検出範囲S1に含まれるようにしてよい。同様に、センサ5cが検出範囲S2において物体を検出する場合、電子機器1は、送信アンテナ40が送信する送信波Tが検出範囲S2に含まれるようにしてよい。また、センサ5cが検出範囲S2において物体を検出する場合、電子機器1は、受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角が検出範囲S2に含まれるようにしてよい。
また、センサ5a、センサ5b、及び/又はセンサ5cからも、それぞれ送信波Tが送信されてよいが、説明の簡略化のため省略してある。以下、1つのセンサ5cのみについて説明する。以下、第1実施形態に係る電子機器1において、例えばセンサ5a、センサ5b、センサ5c、及びセンサ5dのような複数のセンサを区別しない場合、単に「センサ5」と総称する。
一実施形態に係る電子機器1は、複数のセンサ5を個別に制御することができる。例えば、電子機器1は、複数のセンサ5のオン/オフを、それぞれ独立に制御してよい。また、例えば、電子機器1は、複数のセンサ5から送信される送信波のビーム幅及び送信波の到達距離の少なくとも一方を、それぞれ独立に制御してよい。また、例えば、電子機器1は、複数のセンサ5の動作モード(例えば、通常モード/BFモード)を、それぞれ独立に制御してよい。また、例えば、電子機器1は、複数のセンサ5から送信される送信波のビームフォーミングの方向を、それぞれ独立に制御してよい。一実施形態に係る電子機器1は、複数のセンサ5から送信される送信波のビーム幅及び送信波の到達距離などを適切に制御することにより、図6に示す移動体100のほぼ全周囲において、物体の存在の有無などを検出することができる。
図6に示すように、センサ5cにおいて複数の受信アンテナ50が配列される方向に垂直な方向を基準方向Dnとする。図6に示す基準方向Dnは、図3に示した基準方向(図3に示すY軸方向)に対応するものとしてよい。
第1実施形態に係る電子機器1は、例えば検出範囲S1のように受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角θ1が比較的大きくなる場合、送信波Tを送信する周波数を、使用可能な周波数帯域において比較的低い帯域部分から選定する。ここで、入射角θ1が比較的大きくなる場合とは、入射角θ1が所定の角度以上になる場合としてよい。また、所定の角度とは、例えば80°とするなど、図3及び図4において説明した位相の進み/遅れの区別がつかなくなるような閾値に基づく角度を、適宜設定してよい。
この場合、電子機器1は、例えば図7に示すように、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域77GHzから81GHzまでにおいて、比較的低い帯域部分fr1の周波数を使用して送信波Tを送信してよい。図7は、第1実施形態に他係る電子機器1が送信する送信波の周波数帯域の例を説明する図である。図6と同様に、図7においても、横軸は周波数f[GHz]を表し、縦軸は送信波Tの送信電力P[W]を表す。ここで、比較的低い帯域部分とは、例えば図7に示す帯域部分fr1(77GHzから78GHzまで)のように、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域77GHzから81GHzまでにおいて例えば中心周波数の79GHzより低い帯域部分としてよい。また、比較的低い帯域部分とは、例えば中心周波数の79GHzよりも中心周波数が低い帯域部分としてもよい。つまり、この場合、帯域部分fr1の中心周波数が、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域(77GHzから81GHzまで)の中心周波数79GHzよりも低くなるようにしてもよい。
また、第1実施形態に係る電子機器1は、例えば検出範囲S2のように受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角θ2が比較的小さくなる場合、送信波Tを送信する周波数を、使用可能な周波数帯域において比較的高い帯域部分から選定する。ここで、入射角θ2が比較的小さくなる場合とは、入射角θ2が所定の角度より小さくなる場合としてよい。また、所定の角度とは、上述の場合と同様に、例えば80°とするなど、図3及び図4において説明した位相の進み/遅れの区別がつかなくなるような閾値に基づく角度を、適宜設定してよい。
この場合、電子機器1は、例えば図7に示すように、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域77GHzから81GHzまでにおいて、比較的高い帯域部分fr2の周波数を使用して送信波Tを送信してよい。ここで、比較的高い帯域部分とは、例えば図7に示す帯域部分fr2(80GHzから81GHzまで)のように、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域77GHzから81GHzまでにおいて例えば中心周波数の79GHzより高い帯域部分としてよい。また、比較的高い帯域部分とは、例えば中心周波数の79GHzよりも中心周波数が高い帯域部分としてもよい。つまり、この場合、帯域部分fr2の中心周波数が、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域(77GHzから81GHzまで)の中心周波数79GHzよりも高くなるようにしてもよい。
さらに、比較的高い帯域部分とは、帯域部分fr1よりも周波数が高い帯域部分としてもよい。この場合、図7に示す帯域部分fr2のように、帯域部分fr1に周波数が重ならないようにしてもよい。また、比較的高い帯域部分とは、例えば帯域部分fr1の中心周波数よりも中心周波数が高い帯域部分としてもよい。つまり、この場合、帯域部分fr2の中心周波数が、帯域部分fr1の中心周波数よりも高くなるようにしてもよい。また、この場合、帯域部分fr2と帯域部分fr1とは、部分的に重なりを有していてもよい。
第1実施形態に係る電子機器1は、入射角θが所定の角度以上になる場合、送信波Tの周波数が高くならないように制御する。第1実施形態に係る電子機器1によれば、入射角θが大きくなる状況において、送信波Tの周波数が高くなることは回避される。このため、第1実施形態に係る電子機器1によれば、位相の進み/遅れの区別がつかなくなるという不都合は回避され、物体の検出精度を向上させることができる。
図6に示す例において、検出範囲S2の対称軸の方向は、基準方向Dnと同じ方向にしてある。しかしながら、検出範囲S2の対称軸の方向は、基準方向Dnと異なる方向にしてもよい。例えば、複数の送信アンテナ40から送信される送信波の位相の少なくとも1つを制御することにより、ビームの方向を変化させることができる。したがって、検出範囲S2の向きは、センサ5cを中心として変化させることができる。第1実施形態において、検出範囲S2の向きは、受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角θの大きさが所定の角度以上にならない程度であれば、任意の向きとしてよい。同様に、図6に示す例において、検出範囲S1の対称軸の方向も、基準方向Dnと異なる方向にしてもよい。
図8は、第1実施形態に係る電子機器1の動作を説明するフローチャートである。図8に示す動作は、例えば電子機器1が移動体100などの周囲に存在する物体200などの検出を開始する時点で開始してよい。すなわち、図8に示す動作は、電子機器1のセンサ5を用いて物体の検出を行う際に開始してよい。
図8に示す動作が開始すると、制御部10の検出範囲決定部14は、送信波T及び反射波Rによって物体を検出する範囲を決定する(ステップS11)。ステップS11においては、検出範囲決定部14は、例えば図6に示したセンサ5cによる検出範囲を、検出範囲S1にするか検出範囲S2にするかを決定してもよい。
ステップS11において、検出範囲決定部14は、例えばデフォルトで規定されている範囲を、検出範囲として決定してもよい。また、ステップS11において、検出範囲決定部14は、例えば以前のフレームの送信波Tによって検出された物体の位置に基づいて、検出範囲を決定してもよい。この場合、検出範囲決定部14は、距離推定部62、角度推定部64、及び相対速度推定部66の少なくともいずれかによる物体の検出結果に基づいて、検出範囲を決定してもよい。
ステップS11において検出範囲が決定されたら、制御部10は、反射波Rの入射角θが所定の角度以上になるか否か判定する(ステップS12)。ステップS12において、所定の角度とは、上述のように、例えば80°とするなど、図3及び図4において説明した位相の進み/遅れの区別がつかなくなるような閾値に基づく角度を、適宜設定してよい。すなわち、ステップS12において、反射波Rの入射角θが所定の角度以上になると、図3及び図4において説明した位相の進み/遅れの区別がつかなくなるような角度を設定してよい。
ステップS12において反射波Rの入射角θが所定の角度以上になると判定された場合、周波数選定部16は、所定の周波数帯域において、所定の周波数より低い第1帯域部分の周波数を選定する(ステップ13)。ここで、所定の周波数帯域とは、上述したように、検出に使用可能な周波数帯域(例えば77GHzから81GHzまで)としてよい。また、所定の周波数より低い第1帯域部分とは、例えば図7に示した帯域部分fr1としてよい。また、所定の周波数とは、例えば図5に示した中心周波数(79GHz)としてもよい。また、ステップ13において、制御部10は、選定された周波数を使用して、送信波Tを送信アンテナ40から送信する。
一方、ステップS12において反射波Rの入射角θが所定の角度より小さくなると判定された場合、周波数選定部16は、所定の周波数帯域において、所定の周波数より高い第2帯域部分の周波数を選定する(ステップ14)。ここで、所定の周波数帯域とは、上述したように、検出に使用可能な周波数帯域(例えば77GHzから81GHzまで)としてよい。また、所定の周波数より高い第2帯域部分とは、例えば図7に示した帯域部分fr2としてよい。また、所定の周波数とは、例えば図5に示した中心周波数(79GHz)としてもよい。また、ステップ14においても、制御部10は、選定された周波数を使用して、送信波Tを送信アンテナ40から送信する。
ステップS13又はステップS14において送信波Tが送信されたら、電子機器1は、複数の受信アンテナ50から反射波Rを受信する(ステップS15)。ステップS15において反射波Rが受信されたら、電子機器1は、例えば物体200のような電子機器1(又は移動体100)の周囲に存在する物体を検出する(ステップS16)。ステップS16において、制御部10は、距離推定部62、角度推定部64、及び相対速度推定部66の少なくともいずれかによる推定結果に基づいて、物体の存在を検出してもよい。
ステップS16における物体の検出は、公知のミリ波レーダによる技術を用いて種々のアルゴリズムなどに基づいて行うことができるため、より詳細な説明は省略する。また、図8に示すステップS16の後、制御部10は、再びステップS11の処理を開始してもよい。
このように、第1実施形態において、制御部10は、送信波Tとして送信される送信信号及び反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体を検出する。また、制御部10は、受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角θに応じて、送信波Tを所定の周波数帯域(例えば検出に使用可能な周波数帯域)において送信する帯域部分を決定する。ここで、入射角θとは、反射波Rが受信アンテナ50に入射する方向に対応する直線が、複数の受信アンテナ50が配置される方向の垂線となす角としてもよい。
また、第1実施形態において、制御部10は、入射角θが所定の角度以上になる場合、送信波Tを送信する帯域部分の周波数が、所定の周波数帯域において所定の周波数以下になるようにしてもよい。また、第1実施形態において、制御部10は、入射角θが所定の第1角度以上になる場合、送信波Tを送信する帯域部分の周波数が、所定の周波数帯域の中心周波数より低くなるようにしてもよい。
また、第1実施形態において、制御部10は、入射角θが第1角度以上になる場合、送信波Tを送信する帯域部分の中心周波数が、所定の周波数帯域の中心周波数より低くなるようにしてもよい。また、第1実施形態において、制御部10は、入射角θが第1角度より小さくなる場合、送信波Tを送信する帯域部分の中心周波数が、所定の周波数帯域の中心周波数以上になるようにしてもよい。
第1実施形態に係る電子機器1によれば、入射角θが大きくなる状況において、送信波Tの周波数が低く制御される。このため、第1実施形態に係る電子機器1によれば、位相の進み/遅れの区別がつかなくなるという不都合は回避され、送信波Tを反射する物体が精度良く検出される。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る電子機器1について説明する。
上述した第1実施形態では、受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角θに応じて、使用可能な周波数帯域において送信波Tを送信する帯域部分を2つに区分した(図6及び図7参照)。
これに対し、第2実施形態に係る電子機器1は、図9及び図10に示すように、受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角θに応じて、使用可能な周波数帯域において送信波Tを送信する帯域部分を3つに区分する。以下、第1実施形態と同一又は類似になる説明は、適宜、簡略化又は省略する。
図9は、第2実施形態に係るセンサを移動体に配置する例を説明する図である。図9において、1つのセンサ5eのみについて説明し、他のセンサ5については、説明の簡略化のため省略してある。
図9に示す例において、移動体100の後部中央には、センサ5eが配置されている。また、図9に示すように、センサ5eは、検出範囲S1、検出範囲S2、又は検出範囲S3において物体を検出することができる。図9において、検出範囲S1、検出範囲S2、及び検出範囲S3は模式的に示してある。
センサ5eが検出範囲S1、検出範囲S2、又は検出範囲S3において物体を検出する場合、電子機器1は、送信アンテナ40が送信する送信波Tが、それぞれ検出範囲S1、検出範囲S2、又は検出範囲S3に含まれるようにしてよい。また、センサ5eが検出範囲S1、検出範囲S2、又は検出範囲S3において物体を検出する場合、電子機器1は、受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角が、それぞれ検出範囲S1、検出範囲S2、又は検出範囲S3に含まれるようにしてよい。
図9に示すように、センサ5eにおいて複数の受信アンテナ50が配列される方向に垂直な方向を基準方向Dnとする。図9に示す基準方向Dnは、図3に示した基準方向(図3に示すY軸方向)に対応するものとしてよい。
第2実施形態に係る電子機器1は、例えば検出範囲S1のように受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角θ1が比較的大きくなる場合、送信波Tを送信する周波数を、使用可能な周波数帯域において比較的低い帯域部分から選定する。ここで、入射角θ1が比較的大きくなる場合とは、入射角θ1が第1角度以上になる場合としてよい。また、第1角度とは、例えば80°とするなど、図3及び図4において説明した位相の進み/遅れの区別がつかなくなるような閾値に基づく角度を、適宜設定してよい。
この場合、電子機器1は、例えば図10に示すように、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域において、比較的低い帯域部分fr1の周波数を使用して送信波Tを送信してよい。図10は、第2実施形態に他係る電子機器1が送信する送信波の周波数帯域の例を説明する図である。ここで、比較的低い帯域部分fr1は、上述した第1実施形態と同様としてよい。
また、例えば検出範囲S2のように受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角θ2が、第1角度よりも小さい第2角度以上になるとする。この場合、第2実施形態に係る電子機器1は、送信波Tを送信する周波数を、使用可能な周波数帯域において周波数が第1帯域部分以上になる第2帯域部分から選定する。ここで、第2角度とは、上述の第1角度よりも小さな任意の角度(例えば20°など)としてよい。
この場合、電子機器1は、例えば図10に示すように、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域において、周波数が第1帯域よりも高い第2帯域部分fr2の周波数を使用して送信波Tを送信してよい。ここで、第2帯域部分とは、例えば図10に示す帯域部分fr2(78.5GHzから79.5GHzまで)のように、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域において例えば中心周波数の79GHz周辺の帯域部分としてよい。また、第2帯域部分fr2とは、例えば第1帯域部分の中心周波数よりも中心周波数が高い帯域部分としてもよい。つまり、この場合、帯域部分fr2の中心周波数が、第1帯域部分の中心周波数77.5GHzよりも高くなるようにしてもよい。
また、例えば検出範囲S3のように受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角θ3が、第2角度より小さくなるとする。この場合、第2実施形態に係る電子機器1は、送信波Tを送信する周波数を、使用可能な周波数帯域において周波数が第2帯域部分以上になる第3帯域部分から選定する。
この場合、電子機器1は、例えば図10に示すように、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域において、周波数が第2帯域よりも高い第3帯域部分fr3の周波数を使用して送信波Tを送信してよい。ここで、第3帯域部分とは、例えば図10に示す帯域部分fr3(80GHzから81GHzまで)のように、送信波Tの送信に使用可能な周波数帯域において例えば最大の周波数81GHz周辺の帯域部分としてよい。また、第3帯域部分fr3とは、例えば第1帯域部分の中心周波数よりも中心周波数が高い帯域部分としてもよい。また、第3帯域部分fr3とは、例えば第2帯域部分の中心周波数よりも中心周波数が高い帯域部分としてもよい。つまり、これら場合、帯域部分fr3の中心周波数が、第1帯域部分の中心周波数及び/又は第2帯域部分の中心周波数よりも高くなるようにしてもよい。
図10に示すように、第1帯域部分fr1と、第2帯域部分fr2と、第3帯域部分fr3とは、それぞれ重なりを有さない帯域部分としてもよい。また、第1帯域部分fr1と、第2帯域部分fr2と、第3帯域部分fr3とは、それぞれ、少なくとも部分的な重なりを有する帯域部分としてもよい。
第2実施形態に係る電子機器1は、入射角θが第1角度以上になる場合、送信波Tの周波数が高くならないように制御する。第2実施形態に係る電子機器1によれば、入射角θが大きくなる状況において、送信波Tの周波数が高くなることは回避される。このため、第2実施形態に係る電子機器1によっても、位相の進み/遅れの区別がつかなくなるという不都合は回避され、物体の検出精度を向上させることができる。
図11は、第2実施形態に係る電子機器1の動作を説明するフローチャートである。以下、図8に示した動作と異なる点を主に説明し、図8に示した動作と同じ又は類似になる説明は、適宜、簡略化又は省略する。
図11に示す動作が開始して、ステップS11において検出範囲が決定されると、制御部10は、反射波Rの入射角θが第1角度以上になるか否か判定する(ステップS21)。ここで、第1角度とは、図8に示すステップS12における所定の角度と同じとしてもよいし、異なるものとしてもよい。第1角度とは、例えば80°などのような、図3及び図4において説明した位相の進み/遅れの区別がつかなくなるような閾値に基づく角度を、適宜設定してよい。
ステップS21において反射波Rの入射角θが所定の角度以上になると判定された場合、図8に示すステップS13以降と同様の動作としてよい。この場合、周波数選定部16は、例えば図10に示す帯域部分fr1における周波数(77GHzから78GHzまで)を選定してよい。
一方、ステップS21において反射波Rの入射角θが所定の角度より小さくなると判定された場合、制御部10は、反射波Rの入射角θが第2角度以上になるか否か判定する(ステップS22)。ここで、第2角度とは、例えば、20°などのような、上述の第1角度よりも小さい角度としてよい。
ステップS22において反射波Rの入射角θが第2角度以上になると判定された場合、図8に示すステップS14以降と同様の動作としてよい。この場合、周波数選定部16は、例えば図10に示す帯域部分fr2における周波数(78.5GHzから79.5GHzまで)を選定してよい。
一方、ステップS22において反射波Rの入射角θが第2角度より小さくなると判定された場合、周波数選定部16は、周波数が第2帯域部分以上になる第3帯域部分における周波数で送信波Tを送信する(ステップS23)。この場合、周波数選定部16は、例えば図10に示す帯域部分fr3における周波数(80GHzから81GHzまで)を選定してよい。
ステップS23の後は、図8に示すステップS15以降と同様の動作としてよい。また、図11に示すステップS16の後、制御部10は、再びステップS11の処理を開始してもよい。
このように、第2実施形態において、制御部10は、入射角θが第1角度より小さい第2角度よりも小さくなる場合、例えば送信波Tを送信する帯域部分の中心周波数が、所定の周波数帯域の中心周波数より高い所定の周波数以上になるようにしてもよい。
第2実施形態に係る電子機器1によっても、入射角θが大きくなる状況において、送信波Tの周波数が低く制御される。このため、第2実施形態に係る電子機器1によれば、位相の進み/遅れの区別がつかなくなるという不都合は回避され、送信波Tを反射する物体が精度良く検出される。また、第2実施形態に係る電子機器1によれば、図9に示したように、センサ5の検出用途及び/又は検出対象などに応じて、検出範囲を適応的に変化させることができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る電子機器1について説明する。
第3実施形態に係る電子機器1は、上述した第1実施形態に係る電子機器1において、反射波Rの入射角θと比較される所定の角度を、可変に制御する。第1実施形態では、図8に示すステップS12おいて、反射波Rの入射角θと比較される所定の角度は、適宜設定されるものとした。一方、第3実施形態において、反射波Rの入射角θと比較される所定の角度は、物体の検出結果に基づいて設定されるようにする。
図12は、第3実施形態に係るセンサを移動体に配置する例を説明する図である。図12においても、図6と同様に、1つのセンサ5cのみについて説明する。
図12に示すように、例えば移動体の周囲において物体200が存在する場合、センサ5cは検出範囲S2において物体を検出することができる。この場合、センサ5cの受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角θは、比較的小さくなる(大きな角度ではない)。したがって、検出範囲S2において物体を検出している場合、図3及び図4において説明した位相の進み/遅れの区別がつかなくなるような事態は生じない。
しかしながら、例えば、時間の経過に伴って、図12に示す物体200が、物体200’の位置まで移動したとする。この場合、センサ5cは検出範囲S1において物体を検出することができる。そして、センサ5cの受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角θは、比較的大きくなる。すると、上述のような位相の進み/遅れの区別がつかなくなるという事態が生じ得る。
そこで、第3実施形態では、例えば移動し得る物体の位置に基づいて、受信アンテナ50が反射波Rを受信する際の入射角θが所定の角度以上なる(又はなり得る)場合、送信波Tを送信する帯域部分の周波数が所定の周波数以下になるようにしてもよい。例えば、図12に示す物体200’を検出する際に、送信波Tを送信する周波数が、図7に示した帯域部分fr1におけるような周波数であれば、上述した位相の進み/遅れの区別がつかなくなるという事態は生じない。一方、図12に示す物体200’を検出する際に、送信波Tを送信する周波数が、図7に示した帯域部分fr2における周波数であると、上述した位相の進み/遅れの区別がつかなくなるという事態が生じ得る。このため、第3実施形態では、図12に示す物体200’を検出する際に、送信波Tを送信する周波数が、図7に示した帯域部分fr2における周波数である場合、帯域部分fr1におけるような周波数に変更する。以後、物体200(物体200’)の移動に追従して、送信波Tを送信する周波数の帯域部分を、適宜変更してもよい。
図13は、第3実施形態に係る電子機器1の動作を説明するフローチャートである。図13に示す第3実施形態に係る電子機器1の動作は、図8に示した動作においてステップS12を変更するものである。したがって、以下、図8に示した動作と異なる点を主に説明し、図8に示した動作と同じ又は類似になる説明は、適宜、簡略化又は省略する。
図13に示す動作が開始して、ステップS11において検出範囲が決定されると、制御部10は、既に検出された物体の位置が所定の角度以上になるか否か判定する(ステップS31)。図13に示す動作を開始した直後のステップS31においては、まだ物体が検出されていないことも想定される。このような場合、ステップS14に進み、周波数選定部16は、例えば図7に示す帯域部分fr2における周波数のような、比較的高い周波数で送信波Tを送信してよい。
ステップS14の後は、図8に示すステップS15以降と同様の動作としてよい。また、図13に示すステップS16の後、制御部10は、再びステップS11の処理を開始してよい。
再びステップS11おいて検出範囲が決定されると、制御部10は、ステップS16において検出された物体の位置が所定の角度以上になるか否か判定する(ステップS31)。ここで、所定の角度とは、図8に示すステップS12と同様に、例えば80°とするなど、図3及び図4において説明した位相の進み/遅れの区別がつかなくなるような閾値に基づく角度を、適宜設定してよい。また、ステップS31において、例えば図12に示す基準方向Dnを基準として、センサ5cから物体200に向かう角度が所定の角度以上になるか否か判定してよい。
ステップS31において物体の位置が所定の角度以上になると判定された場合、図8に示すステップS13以降と同様の動作としてよい。この場合、周波数選定部16は、例えば図7に示す帯域部分fr1における周波数(77GHzから78GHzまで)を選定してよい。
一方、ステップS31において物体の位置が所定の角度より小さくなると判定された場合、図8に示すステップS14以降と同様の動作としてよい。この場合、周波数選定部16は、例えば図7に示す帯域部分fr2における周波数(80GHzから81GHzまで)を選定してよい。
第3実施形態に係る電子機器1は、図13に示す動作を繰り返すことにより、例えば物体200が移動していても、物体200の移動に応じて、送信波Tを送信する周波数の帯域部分を動的に変更することができる。
このように、第3実施形態において、制御部10は、検出された物体の位置に基づいて、送信波Tを所定の周波数帯域において送信する帯域部分を決定してもよい。また、第3実施形態において、制御部10は、検出された物体の位置に応じて、送信波Tを所定の周波数帯域において送信する帯域部分を動的に可変にしてもよい。
第3実施形態に係る電子機器1によっても、物体の位置の角度が大きくなるにつれて、すなわち入射角θが大きくなる状況において、送信波Tの周波数が低く制御される。このため、第3実施形態に係る電子機器1によれば、位相の進み/遅れの区別がつかなくなるという不都合は回避され、送信波Tを反射する物体が精度良く検出される。また、第3実施形態に係る電子機器1によれば、図12に示したように、移動する物体200(物体200’)の位置に応じて、送信波Tを送信する周波数の帯域部分を動的に変化させることができる。
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
上述した実施形態の変形例として、例えば、図3及び図4において説明した位相の進み/遅れの区別がつかなくなる閾値に基づく角度を予め求めてもよい。そして、入射角θが求めた角度以上になる場合、電子機器1は、送信波Tを送信する帯域部分周波数が、例えば図7に示す帯域部分fr1における周波数のように、比較的低い周波数になるようにしてもよい。
例えば、図5に示した例では、使用可能周波数帯域を77から81GHzまでの周波数とし、中心周波数をf=79[GHz]とした。ここで、使用可能な周波数帯域の中心周波数をf[GHz]とすると、一般的に、受信アンテナ50の間隔Wは、その周波数fの波長λの1/2とされる。このため、間隔Wは、W=λ/2と表すことができる。また、光速cは、c=f・λと表すことができる。以上から、受信アンテナ50の間隔Wは、W=c/2fと表すことができる。この場合、入射角θの方向から受信アンテナ50Aと受信アンテナ50Bにそれぞれ入射する反射波Rの経路差Dは、D=W・sinθすなわちD=(c/2f)・sinθと表すことができる。
ここで、使用する周波数をf[GHz]とする場合を想定する。ただし、f<f’とし、例えばf’=81GHzとしてよい。この周波数f’の波長λ’は、λ’=c/f’となる。入射角θを制限する際には、経路差Dに起因する位相差がλ’の半分以下(180°以下)となる必要がある。これらの関係から、反射波Rの経路差Dは、D=W・sinθ>λ’/2=c/2f’と表すことができる。したがって、sinθ>c/2Wf’という関係が成立する。また、この式を、Wを用いずに使用可能周波数帯域の中心周波数fを用いて表すと、sinθ>f/f’となる。したがって、周波数f’を使用した場合に、入射角θを越えるような角度から反射波を受信する場合、送信波Tを送信する周波数の帯域部分を変更してよい。
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御プログラムとして実施してもよい。
上述の実施形態においては、送信アンテナ40及び受信アンテナ50ともに2つであるものとして説明したが、一実施形態において、送信アンテナ40及び受信アンテナ50は任意の複数としてもよい。送信アンテナ40及び受信アンテナ50を3本以上とする場合、複数の送信アンテナ40及び複数の受信アンテナ50のうち1つを基準アンテナとしてもよい。この場合、当該基準アンテナが送信する送信波と、その他の送信アンテナ40が送信する送信波との所定の方向における経路差Dに応じて、送信アンテナ40が送信する送信波の位相を制御してビームフォーミングを行ってもよい。
一実施形態に係る電子機器1は、最小の構成としては、例えば制御部10のみを備えるものとしてよい。一方、一実施形態に係る電子機器1は、制御部10の他に、図2に示すような、信号生成部22、周波数シンセサイザ24、送信制御部30、パワーアンプ36、及び送信アンテナ40の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、制御部10の他に、上述の機能部に代えて、又は上述の機能部とともに、受信アンテナ50、LNA52、ミキサ54、IF部56、AD変換部58、距離推定部62、角度推定部64、相対速度推定部66の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、種々の構成態様とすることができる。また、一実施形態に係る電子機器1が移動体100に搭載される場合、例えば上述の各機能部の少なくともいずれかは、移動体100内部などの適当な場所に設置されてよい。一方、一実施形態においては、例えば送信アンテナ40及び受信アンテナ50の少なくともいずれかは、移動体100の外部に設置されてもよい。