JP2021164636A - セメント凍結乾燥物、及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】専用の硬化液を使用しないで、顆粒状又はブロック状の組成物及び水のみで使用できるハンドリング性がさらに改善された、生体骨補強治療用として好適に用いられるリン酸カルシウムセメントを提供する。【解決手段】リン酸カルシウム系セメント材料と硬化剤とを含み、水を添加することにより硬化反応が進行する、高強度硬化体の形成が可能なセメント凍結乾燥物。【選択図】なし

Description

本発明は、口腔外科を含む医科の分野で生体骨補強治療に用いられ、高強度硬化体の形成が可能なセメント凍結乾燥物及びその製造方法に関する。
口腔外科を含む医科の分野で生体骨補強治療に用いられる生体骨補強治療用の骨充填材として、リン酸カルシウム系セメント粉剤とこのセメント粉剤と反応を起こす硬化液とを混練して得られる自己硬化型のリン酸カルシウムセメントが挙げられる(特許文献1〜3を参照)。このリン酸カルシウムセメントは、流動性のあるペースト状又は粘土状であり、複雑形状の骨欠損部や骨折部等の患部にも柔軟に対応できるというメリットを有している。
このようなリン酸カルシウムセメントは、術場でセメント粉剤と硬化液とを所定の比率で混合及び混練し、混練物が硬化する前に、シリンジ等で注入又は手で練って患部に補填して使用する。
しかしながら、このようなセメント粉剤と硬化液とを混練して用いるリン酸カルシウムセメントは、セメント粉剤を専用治具に充填する際に粉が舞いやすいといった問題や、セメント粉剤に加えて専用の硬化液を準備しなければならないといった煩雑さがあり、ハンドリング性がさらに改善されたリン酸カルシウムセメントの開発が望まれている。
特許第4111418号公報 特許第4111419号公報 特許第4134299号公報
従って、本発明の目的は、専用の硬化液を使用しないで、顆粒状又はブロック状の組成物及び水のみで使用できるハンドリング性がさらに改善された、生体骨補強治療用として好適に用いられるセメントを提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、リン酸カルシウム系セメント材料と、前記セメント材料と反応を起こす硬化剤を含む水溶液との混練物を凍結乾燥して得られる凍結乾燥物に、水のみを添加することで、従来と同等のセメント骨充填材が得られることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明のリン酸カルシウムセメント凍結乾燥物(以下、単に「セメント凍結乾燥物」ともいう)は、
リン酸カルシウム系セメント材料と硬化剤とを含み、水を添加することにより硬化反応が進行する、高強度硬化体の形成が可能なセメント凍結乾燥物である。以下、「リン酸カルシウム系セメント材料」を単に「セメント材料」ともいう。
前記リン酸カルシウム系セメント材料は、
(a)α型第三リン酸カルシウム単体、
(b)第四リン酸カルシウム単体、
(c)α型第三リン酸カルシウムと第四リン酸カルシウムとの混合物、
(d)α型第三リン酸カルシウムと第二リン酸カルシウム及び/又は第一リン酸カルシウムとの混合物、
(e)第四リン酸カルシウムと第二リン酸カルシウム及び/又は第一リン酸カルシウムとの混合物、又は
(f)α型第三リン酸カルシウムと第四リン酸カルシウムと第二リン酸カルシウム及び/又は第一リン酸カルシウムとの混合物
からなるセメント材料であるのが好ましい。
前記セメント材料は、さらにリン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、又はピロリン酸ナトリウムを含むのが好ましい。
前記セメント材料は、さらに水酸アパタイトを含むのが好ましい。
前記硬化剤は、
コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、ポリアクリル酸、及びそれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種、
コンドロイチン硫酸ナトリウム及び/又は乳酸ナトリウム、並びに
酸化防止剤
を含むのが好ましい。
前記酸化防止剤は亜硫酸水素ナトリウムであるのが好ましい。
本発明のセメント凍結乾燥物は、50〜80質量%のα型第三リン酸カルシウム、10〜25質量%の第四リン酸カルシウム、2〜10質量%の第二リン酸カルシウム、2〜10質量%の水酸アパタイト、0.05〜0.5質量%のリン酸マグネシウム、0.5〜10質量%のコンドロイチン硫酸ナトリウム、2〜15質量%のコハク酸二ナトリウム無水物、及び0.05〜1.0質量%の亜硫酸水素ナトリウムを含んでいてもよい。
他の一実施形態において、発明のセメント凍結乾燥物は、58〜73質量%のα型第三リン酸カルシウム、15〜20質量%の第四リン酸カルシウム、4〜5質量%の第二リン酸カルシウム、4〜5質量%の水酸アパタイト、0.1〜0.2質量%のリン酸マグネシウム、1〜2質量%のコンドロイチン硫酸ナトリウム、5〜7質量%のコハク酸二ナトリウム無水物、及び0.1〜0.2質量%の亜硫酸水素ナトリウムを含んでいてもよい。
本発明のセメント凍結乾燥物は、粉末状、顆粒状、又は多孔質のブロック状であるのが好ましい。
前記セメント凍結乾燥物の含水量は0.2質量%以下であるのが好ましい。
本発明の方法は、上記セメント凍結乾燥物を製造する方法であって、
前記セメント材料と、前記セメント材料と反応を起こす前記硬化剤と水とを混練し、得られた混練物を凍結乾燥することを特徴とする。
前記凍結乾燥の温度は-1℃以下であるのが好ましく、
混練した後、60分以内に冷却を開始するのが好ましい。
前記混練時に添加する水の量は、前記セメント材料と前記硬化剤との合計に対して0〜200質量%であるのが好ましい。前記水の量は、5〜150質量%であるのがより好ましい。前記水の量は、10〜100質量%であるのがより好ましく、15〜75質量%であるのがさらに好ましく、20〜50質量%であるのが最も好ましい。
上記セメント凍結乾燥物の製造方法は、前記リン酸カルシウム系セメント材料と前記硬化剤との合計に対して、前記混練時に添加する水の量を調節して、前記セメント凍結乾燥物の針入度を調節することを特徴とするセメント凍結乾燥物の製造方法であってもよい。
上記セメント凍結乾燥物の製造方法は、
(a)前記セメント凍結乾燥物の針入度を高めるために、前記リン酸カルシウム系セメント材料と前記硬化剤との合計に対して前記混練時に添加する水の量を減らす、又は
(b)前記セメント凍結乾燥物の針入度を下げるために、前記リン酸カルシウム系セメント材料と前記硬化剤との合計に対して前記混練時に添加する水の量を増やす
ことを特徴とするセメント凍結乾燥物の製造方法であってもよい。
他の一実施形態において、前記セメント材料は56〜84質量%のα型第三リン酸カルシウム、14〜30質量%の第四リン酸カルシウム、3.0〜8.0質量%の第二リン酸カルシウム3.0〜8.0質量%の水酸アパタイト、及び0.08〜0.24質量%のリン酸マグネシウムを含有し、
前記硬化剤は4.0〜7.5質量%のコンドロイチン硫酸ナトリウム、13〜30質量%のコハク酸二ナトリウム無水物、及び0.15〜0.6質量%の亜硫酸水素ナトリウムを含有していてもよい。
さらに別の一実施形態において、前記セメント材料は62〜78質量%のα型第三リン酸カルシウム、18〜23質量%の第四リン酸カルシウム、4.5〜5.5質量%の第二リン酸カルシウム、4.5〜5.5質量%の水酸アパタイト、及び0.13〜0.18質量%のリン酸マグネシウムを含有し、
前記硬化剤は5.0〜6.0質量%のコンドロイチン硫酸ナトリウム、20〜25質量%のコハク酸二ナトリウム無水物、及び0.2〜0.4質量%の亜硫酸水素ナトリウムを含有するのが好ましい。
[1] セメント凍結乾燥物
本発明のセメント凍結乾燥物は、セメント材料と、前記セメント材料と反応を起こす硬化剤を含む水溶液との混練物を凍結乾燥して得られる。すなわち、本発明のセメント凍結乾燥物は、セメント材料と硬化剤とを含む組成物である。本発明のセメント凍結乾燥物は、水を添加することにより硬化反応が進行し、高強度硬化体の形成が可能であり、生体骨補強治療用として好適に用いられる。
(1) セメント材料
セメント材料としては、
(i)α型第三リン酸カルシウム単体、
(ii)第四リン酸カルシウム単体、
(iii)α型第三リン酸カルシウムと第四リン酸カルシウムとの混合物、
(iv)α型第三リン酸カルシウムと第二リン酸カルシウム及び/又は第一リン酸カルシウムとの混合物、
(v)第四リン酸カルシウムと第二リン酸カルシウム及び/又は第一リン酸カルシウムとの混合物、及び
(vi)α型第三リン酸カルシウムと第四リン酸カルシウムと第二リン酸カルシウム及び/又は第一リン酸カルシウムとの混合物
からなるセメント材料から選ばれるものが好ましい。
これらのセメント材料のうち、第二リン酸カルシウムとα型第三リン酸カルシウムとを使用する場合、第二リン酸カルシウム及びα型第三リン酸カルシウムの一部と水とをあらかじめ反応させて、水和反応生成物として添加してもよい。このように第二リン酸カルシウムとα型第三リン酸カルシウムとの水和反応生成物として添加することにより、硬化体の強度を一段と向上させることができる。
前記セメント材料には、さらに水酸アパタイトを含んでいてもよい。水酸アパタイトは前記セメント材料の一部を置き換えて添加する。水酸アパタイトは、セメント材料が硬化反応により生成する化合物であり、骨材粒子として作用し、硬化体の強度をさらに高めることができると考えられている。水酸アパタイトの含有量は、前記セメント材料と水酸アパタイトとの合計を100質量%としたとき7.0質量%以下が好ましく、4.5〜5.5質量%がより好ましい。
これらのセメント材料は、上記のリン酸カルシウム化合物に加えて、リン酸カルシウムセメントを使用する際に、ペーストの流動性を向上させて気泡の巻き込みを抑制する目的で、リン酸マグネシウムが含まれていてもよい。またリン酸マグネシウムの代わりに硫酸マグネシウム又はピロリン酸ナトリウムを使用することもできる。
生体骨補強治療用として好適に用いられる代表的なセメント材料としては以下の表1に示す基本組成のものが挙げられる。前述したように、これらの基本組成に、さらに水酸アパタイトが含有してもよい。なお表1に示す含有量は、セメント材料の合計に対する質量%で示したものである。本発明はこれらの例に限定されるものではない。
Figure 2021164636

注(1) リン酸マグネシウムの代わりに硫酸マグネシウム又はピロリン酸ナトリウムを使用してもよい。
(2) 第二リン酸カルシウムとα型第三リン酸カルシウムとの水和反応生成物
(a)第二リン酸カルシウム[組成1〜4]
第二リン酸カルシウムは、セメント凍結乾燥物を使用する際、ペースト状又は粘土状にしたリン酸カルシウムセメントの硬化体への凝結を促進する作用がある。第二リン酸カルシウムの含有量は、組成1では3〜25質量%、好ましくは6〜20質量%であり、組成2では5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%であり、組成3及び4では3〜10質量%、好ましくは4〜8質量%である。各組成1〜4において、第二リン酸カルシウムの含有量が下限値未満では所望の凝結促進作用を確保することができず、一方その含有量が上限値を越えると、硬化時間が短くなりすぎて作業性の低下が避けられなくなる。
(b)第四リン酸カルシウム[組成2〜4]
第四リン酸カルシウムには、硬化体が生体骨へ再生する吸収置換性を促進する作用がある。第四リン酸カルシウムの含有量は、組成2ではリン酸マグネシウム(硫酸マグネシウム又はピロリン酸ナトリウムでもよい)及び第二リン酸カルシウムの残部であり、組成3及び4では10〜25質量%、好ましくは12〜20質量%である。各組成2〜4において、第四リン酸カルシウムの含有量が下限値未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有量が上限値を越えると硬化体の強度が低下するようになる。
(c)第二リン酸カルシウムとα型第三リン酸カルシウムの水和反応生成物[組成4]
第二リン酸カルシウムとα型第三リン酸カルシウムの水和反応生成物(以下、単に水和反応生成物という場合もある。)には、硬化体の強度を一段と向上させる作用がある。組成4において、水和反応生成物の含有量は2〜10質量%であり、好ましくは3〜6質量%である。水和反応生成物の含有量が2質量%未満では所望の強度向上効果が得られず、一方その含有量が10質量%を越えるとペーストの流動性が低下し作業性が損なわれるようになる。
(d)リン酸マグネシウム[組成1〜4]
リン酸マグネシウムには、セメント凍結乾燥物を使用する際、ペースト状にしたリン酸カルシウムセメントの流動性を向上させ、気泡の巻き込みを著しく抑制して、緻密な硬化体の形成を可能にし、硬化体の強度向上に寄与する作用がある。この作用を十分に発揮させるためには、リン酸カルシウムセメントの製造に際して、リン酸マグネシウムを構成成分である第二リン酸カルシウムと予め混練した状態で、残りの構成成分である第四リン酸カルシウム、α型第三リン酸カルシウム、水和反応生成物等を配合する必要がある。
リン酸マグネシウムの含有量は、組成1では0.03〜1.5質量%、好ましくは0.1〜1.0質量%であり、組成2では0.03〜2.0質量%、好ましくは0.3〜1.5質量%であり、組成3及び4では0.03〜0.5質量%、好ましくは0.1〜0.3質量%である。各組成1〜4において、リン酸マグネシウムの含有量が下限値未満では前記作用に所望の効果が得られず、一方その含有量が上限値を越えると硬化体の硬化に要する時間が伸びる傾向が現われるようになる。なおリン酸マグネシウムの代わりに硫酸マグネシウム又はピロリン酸ナトリウムを同量で置き換えて使用してもよい。
(2) 硬化剤
硬化剤としては、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、ポリアクリル酸、及びそれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種を含むのが好ましい。特に、セメント材料とキレートを形成する化合物を含むのが好ましい。硬化剤の含有量は、リン酸カルシウムセメント100質量部に対して、1〜10質量部であるのが好ましく、2〜8質量部であるのがより好ましい。
(3)その他の添加剤
本発明のセメント凍結乾燥物には、さらに増粘剤としてコンドロイチン硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等の化合物を含有することができる。増粘剤の含有量は、リン酸カルシウムセメント100質量部に対して、1〜5質量部であるのが好ましく、1〜3質量部であるのがより好ましい。また酸化防止剤として亜硫酸水素ナトリウムを含有してもよい。酸化防止剤の含有量は用途・目的によって適宜調節する。
[2]セメント凍結乾燥物の性状
本発明のセメント凍結乾燥物は、水と混合及び混練することにより、流動性のあるペースト状又は粘土状とすることができる。セメント凍結乾燥物は、どのような形状であってもよいが、粉末状、顆粒状、又は多孔質のブロック状であるのがハンドリング性の観点から好ましい。
セメント凍結乾燥物は、保存性の観点からできるだけ含水量が少ないことが好ましい。セメント凍結乾燥物の含水量1質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以下であるのがより好ましい。
[3]セメント凍結乾燥物の製造方法
本発明のセメント凍結乾燥物は、前記セメント材料と、前記セメント材料と反応を起こす前記硬化剤と、水とを混練し、得られた混練物を凍結乾燥することによって製造する。
(1) セメント材料の作製
リン酸カルシウムセメントは、リン酸マグネシウム及び第二リン酸カルシウムを所定の割合で混合し、混練機で30分間混練し、この混練粉末と、α型第三リン酸カルシウム及び/又は第四リン酸カルシウムと、必要に応じて水和反応生成物とを所定の割合で混合することにより製造する。
(2)硬化剤水溶液の調整
硬化剤の水溶液は、水に、(a)硬化剤(例えば、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、ポリアクリル酸、及びそれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種)、(b)増粘剤(例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウム及び/又は乳酸ナトリウム)、並びに必要に応じて(c)亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤を添加して調節する。
(3)セメント凍結乾燥物の製造
得られたリン酸カルシウムセメントと、硬化剤水溶液とを混合し、さらに水を適宜加えて十分に攪拌し、得られたリン酸カルシウムセメント及び硬化剤等を含む分散液を、例えば、-20℃以下で凍らせ、1〜3日間放置し、得られた凍結物を凍結乾燥機にて3日以上乾燥させることにより、セメント凍結乾燥物を製造する。
凍結乾燥の温度は-1〜-60℃であるのが好ましい。前記凍結乾燥の温度は、より好ましくは-2〜-50℃であり、さらに好ましくは-3〜-40℃であり、さらにより好ましくは-4〜-30℃であり、最も好ましくは-5〜-20℃である。凍結乾燥の温度は、凍結状態が保てる温度であればよいが、上記好ましい温度範囲内であることによって、凍結乾燥に要する時間をより短縮することができる。
リン酸カルシウムセメントと、硬化剤水溶液とを混合すると、リン酸カルシウムセメントの硬化反応が開始するため、混練後の分散液は硬化反応が進行する前に、速やかに冷却して反応の進行を抑制するようにする必要がある。従って、混練後、60分以内に冷却を開始するのが好ましい。つまり、冷却を開始するまで常温環境下に置かれる時間は、60分以内であることが好ましい。この時間は、より好ましくは45分以内であり、さらに好ましくは30分以内であり、さらに好ましくは20分以内であり、最も好ましくは10分以内である。また、上記冷却によって到達する温度(冷却温度)は、乾燥に要する時間を短くするという観点がある前記凍結乾燥の温度とは異なり、氷の成長を速めるために、より低い温度であってもよい。上記冷却温度は、好ましくは-2℃以下であり、より好ましくは-10℃以下であり、さらにより好ましくは-20℃以下であり、最も好ましくは-30℃以下である。
一方で、リン酸カルシウムセメントと、硬化剤とを含む分散液を調整後、冷却温度に冷却するまでの時間を調節することにより、得られたセメント凍結乾燥物を生体骨補強治療用ペーストとして使用する際に、その硬化時間を調節することができる。例えば、冷却温度に冷却するまでの時間を短くすれば、硬化時間を長くすることができ、逆に、冷却温度に冷却するまでの時間を長くすれば、硬化時間を短くすることができる。硬化時間を短くする観点においては、冷却温度に到達するまでの時間は、より好ましくは5分以上、さらに好ましくは7分以上、さらに好ましくは12分以上、さらにより好ましくは25分以上、最も好ましくは35分以上であってもよい。
混練時に添加する水の量を調節することによって得られるセメント凍結乾燥物の性状を調節することができる。水が少ないとセメント凍結乾燥物の硬度が高くなり、水が少ないと硬度が低くなる。水の量は、セメント材料と硬化剤との合計に対して0〜200質量%であるのが好ましく、20〜100質量%であるのがより好ましい。なお、硬化剤に適量の水が含まれていて、解凍するのみで硬化が可能である場合には、前記混練時に添加する水の量は0質量%であってもよい。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
(A) セメント材料の製造
(1)α型第三リン酸カルシウムの製造
90モルの水酸化カルシウムを8Lの水に懸濁させ、この懸濁液に60.08モルのリン酸を水で希釈してなる40質量%リン酸水溶液を攪拌しながらゆっくり滴下し、滴下終了後、室温(25℃)で1日間放置し、ついで乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥した。引き続いてこの乾燥物を1400℃で3時間保持して焼成した。得られた焼成生成物を粉砕し、200μmの篩を通してα型第三リン酸カルシウムを得た。
(2)第四リン酸カルシウムの製造
66.66モルの水酸化カルシウムを6Lの水に懸濁させ、この懸濁液に33.68モルのリン酸を水で希釈してなるリン酸水溶液を攪拌しながらゆっくり滴下し、滴下終了後、室温(25℃)に1日間放置し、ついて乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥した。引き続いてこの乾燥物を900℃で2時間保持して仮焼結し、得られた仮焼結体を均一に粉砕し、さらに1400℃で4時間保持して焼成した。得られた焼成生成物を粉砕し、150μmの篩を通すことで第四リン酸カルシウムの含有割合が90.5%で、残りが実質的に不可避不純物としての水酸アパタイトからなる第四リン酸カルシウム混合生成物を得た。実施例では、このようにして得られた第四リン酸カルシウム混合生成物を第四リン酸カルシウムとして使用した。
(3)リン酸カルシウムセメントの製造
市販のリン酸マグネシウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)及び第二リン酸カルシウム(純正化学株式会社製)を表2に示す割合(質量比)で混合し、混練機で30分間混練した。この混練粉末と、上記(1)で調整したα型第三リン酸カルシウムと、上記(2)で調整した第四リン酸カルシウムとを表2に示す割合で混合し、リン酸カルシウムセメントを製造した。
Figure 2021164636
注(1) 90.5質量%の第四リン酸カルシウムと、9.5質量%の水酸アパタイトとからなる混合物
(B)硬化剤水溶液の調整
適量の水を攪拌しながら、コハク酸二ナトリウム六水和物、コンドロイチン硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムを、コハク酸二ナトリウム無水物12.972 g/mL、コンドロイチン硫酸ナトリウム5.405 g/mL、及び亜硫酸水素ナトリウム0.3 g/mLになるように添加して硬化剤溶液を調整した。
(C)セメント凍結乾燥物の製造
上記(A)で得られたリン酸カルシウムセメント12gと、上記(B)で得られた硬化剤水溶液3.8 mLとを混合し、さらに水を4 mL加えて十分に撹拌し、リン酸カルシウムセメント及び硬化剤等を含む分散液を得た。得られた分散液を、速やかに冷凍庫(-20℃)で凍らせ、1日そのまま放置した。得られた凍結物を凍結乾燥機にて3日以上乾燥させ、本発明のセメント凍結乾燥物(試料1)を得た。
リン酸カルシウムセメント及び硬化剤等を含む分散液を作製後、凍結を開始するまでの時間(分散液を作製した後、冷凍庫に入れるまでの時間)を、10分、20分、30分及び40分と変更した以外試料1と同様にして、それぞれ試料2〜5のセメント凍結乾燥物を得た。
室温24±1℃において、得られた試料1〜5の各セメント凍結乾燥物12.7 gに水を3.16 mL加えて1分間練和した5種のペーストを用いて、以下に示す方法により、稠度及び硬化時間の測定を行った。結果を表3に示す。
<稠度の測定>
前記ペースト1.00±0.02 gをガラス板上にとり、その上から質量120±1 gのガラス板を静かに水平に置き、広がったペーストの直径(長径と短径の平均値)の値を稠度とした。
<硬化時間の測定>
硬化時間の測定はJIS T6602「歯科用リン酸亜鉛セメント」にほぼ準拠して行った。前記ペーストを内径約10 mm、厚さ約3 mmの型枠に充填し、練和開始から2分経過後に37±1℃、湿度95〜100%の密閉容器に入れて養生し、直径2 mm、質量300 gのビカー針の圧痕が付かなくなるまでの時間を測定した。練和開始からこの時間までを硬化時間とした。。
Figure 2021164636
実施例2
実施例1で作製したリン酸カルシウムセメント及び硬化剤水溶液と、水とを表4に示す比率(質量比)で混合した以外、実施例1の試料1と同様にして試料21〜試料24のセメント凍結乾燥物を作製した。これらのセメント凍結乾燥物の針入度を、針入度試験機PNR12(Anton Pear社)を用いて測定した。結果を表4に示す。
Figure 2021164636
表4から、混練時に添加する水の量が多くなる(混練物の固形分濃度が低くなる)に従って、得られたセメント凍結乾燥物を用いて作製したセメント凍結乾燥物の針入度が大きくなる、すなわちセメント凍結乾燥物の硬度が低下することがわかった。従って、混練時に添加する水の量を調節することによって、得られるセメント凍結乾燥物の針入度(硬度)を調節できることがわかった。製品そのもののハンドリングの観点においては、小さい針入度を有するセメント凍結乾燥物は、輸送時や把持時等に崩れにくくなるが、大きい針入度を有するセメント凍結乾燥物は、扱い方によっては、崩れたり、欠けたりする可能性があるといえる。一方で、ユーザーが使用する際のハンドリングの観点においては、小さい針入度を有するセメント凍結乾燥物は、水を加えても溶けにくく、力を加えないと崩しにくいものとなるが、大きい針入度を有するセメント凍結乾燥物は、水をかけた際に溶けやすく、簡単にペーストにすることができる。上記方法によれば、用途やユーザーの要望に応じて、適切な針入度(硬度)を有するセメント凍結乾燥物を作製することが可能となる。
実施例3
実施例1で作製したリン酸カルシウムセメント及び硬化剤水溶液と、水とを表5に示す比率(質量比)で混合した以外、実施例1の試料1と同様にして試料31〜試料33のセメント凍結乾燥物を作製した。これらのセメント凍結乾燥物を用いて、実施例1と同様にしてペーストを作製し、各ペーストの硬化時間を実施例1と同様にして測定した。結果を表5に示す。
Figure 2021164636
表5から、混練物の固形分濃度を変えず、硬化剤水溶液の添加量を大きくしていった場合、得られたセメント凍結乾燥物を用いて作製したペーストの硬化時間が短くなることがわかった。

Claims (8)

  1. リン酸カルシウム系セメント材料と硬化剤とを含み、水を添加することにより硬化反応が進行する、高強度硬化体の形成が可能なセメント凍結乾燥物。
  2. 請求項1に記載のセメント凍結乾燥物において、
    前記セメント凍結乾燥物の含水量が1質量%以下であることを特徴とするセメント凍結乾燥物。
  3. 請求項1又は2に記載のセメント凍結乾燥物において、
    前記リン酸カルシウム系セメント材料が、
    (a)α型第三リン酸カルシウム単体、
    (b)第四リン酸カルシウム単体、
    (c)α型第三リン酸カルシウムと第四リン酸カルシウムとの混合物、
    (d)α型第三リン酸カルシウムと第二リン酸カルシウム及び/又は第一リン酸カルシウムとの混合物、
    (e)第四リン酸カルシウムと第二リン酸カルシウム及び/又は第一リン酸カルシウムとの混合物、又は
    (f)α型第三リン酸カルシウムと第四リン酸カルシウムと第二リン酸カルシウム及び/又は第一リン酸カルシウムとの混合物
    からなるセメント材料であることを特徴とするセメント凍結乾燥物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のセメント凍結乾燥物において、
    前記セメント凍結乾燥物が、粉末状、顆粒状、又は多孔質のブロック状であることを特徴とするセメント凍結乾燥物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のセメント凍結乾燥物を製造する方法であって、
    前記リン酸カルシウム系セメント材料と、前記セメント材料と反応を起こす前記硬化剤と水とを混練し、得られた混練物を凍結乾燥することを特徴とするセメント凍結乾燥物の製造方法。
  6. 請求項5に記載のセメント凍結乾燥物の製造方法において、
    前記凍結乾燥の温度が-1℃以下であり、
    混練した後、60分以内に冷却を開始することを特徴とするセメント凍結乾燥物の製造方法。
  7. 請求項5又は6に記載のセメント凍結乾燥物の製造方法において、
    前記混練時に添加する水の量が、前記リン酸カルシウム系セメント材料と前記硬化剤との合計に対して0〜200質量%であることを特徴とするセメント凍結乾燥物の製造方法。
  8. 請求項5又は6に記載のセメント凍結乾燥物の製造方法において、
    前記リン酸カルシウム系セメント材料と前記硬化剤との合計に対して前記混練時に添加する水の量を調節して、前記セメント凍結乾燥物の針入度を調節することを特徴とするセメント凍結乾燥物の製造方法。
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