JP2021163611A - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】内部抵抗の上昇が抑制され、内部抵抗を測定する方法により充電状態や劣化状態を正確に判定することが可能であることに加えて、成層化が抑制された鉛蓄電池を提供する。【解決手段】鉛蓄電池は、二酸化鉛を含有する正極活物質を有する正極板10と、金属鉛を含有する負極活物質を有する負極板20とが、セパレータ30を介して複数枚交互に積層された極板群1を備える。この極板群1は電解液に浸漬されてセルを構成している。化成後の正極板10の平面度が4.0mm以下である。極板群が挿入されるセル室の極板群の積層方向において対向する二つの内壁の間の幅Zと、第一の内壁に設けられた第一リブの最大突出寸法Xと、第一の内壁と対向する第二の内壁に設けられた第二リブの最大突出寸法Yが、12.5≦Z/(X+Y)≦21.0の関係を満たす。【選択図】図1

Description

本発明は鉛蓄電池に関する。
近年の自動車市場では、燃費の向上や排出ガスの低減を目的とした、充電制御システムやアイドリングストップシステムを搭載した車両(以下、これらの車両を「充電制御車」、「アイドリングストップ車」と記すこともある)が主流となっている。これらの車両においては、車両側で鉛蓄電池の充電状態や劣化状態を判定し、その結果に基づいて、鉛蓄電池の充放電やエンジンのアイドリングストップを制御するようになっている。
しかしながら、充電制御システムやアイドリングストップシステムを使用した場合には、鉛蓄電池に大きな負荷がかかるため、鉛蓄電池が短寿命化する傾向があった。例えば、いずれのシステムにおいても鉛蓄電池の充放電が頻繁に繰り返されるため、活物質の軟化や脱落が発生して早期に容量低下が生じるおそれがあった。また、アイドリングストップ車では、満充電に満たない部分充電状態で運用される機会が多く、鉛蓄電池の充電状態が低下しやすいので、鉛蓄電池の充電受入性が不十分だと、不動態化した硫酸鉛が極板の表面に蓄積するサルフェーションが進行し、内部抵抗の上昇と早期の容量低下が生じるおそれもあった。特に、電池の上下で電解液の比重差が生じる成層化は、サルフェーションを助長しやすい。
成層化の発生と解消の仕組みは、次の様に説明できる。一般的な鉛蓄電池は、充電時に正極板及び負極板から比重の高い硫酸(濃硫酸)が電解液(希硫酸)中へと放出される。極板から放出された濃硫酸は、比重差によって下部へと沈降し、電解液の下部の比重が高い成層化状態に至る。しかしながら、充電がさらに進行し過充電状態になると、極板間電圧が正極板及び負極板のガス発生過電圧を超えるため、電解液が電気分解されてガスが発生し始める。そして、電解液中に放出されたガスが浮力によって上昇し、電解液外へ向かう作用により、電解液には下方から上方へ向かう対流が生じる。その結果、電解液中を沈降しようとする濃硫酸が対流によって攪拌され、成層化が解消される。
前述の通り、アイドリングストップ車は部分充電状態で運用されるため、正極板及び負極板からガスが発生しにくく、上記の攪拌効果が得られにくいため、成層化が解消されず短寿命化しやすい。
このような事情から、第一に、充電制御車やアイドリングストップ車に用いられる鉛蓄電池は、高い耐久性と充電受入性に加えて、充電状態や劣化状態を判定する際の正確性が求められた。鉛蓄電池の充電状態や劣化状態を判定する手法として、鉛蓄電池の内部抵抗を測定する方法が知られている。しかしながら、鉛蓄電池の内部抵抗は、充電状態、劣化状態以外の様々な要因で上昇する場合があるため、充電状態や劣化状態の正確な判定は容易ではなかった。
また、第二に、充電制御車やアイドリングストップ車に用いられる鉛蓄電池の耐久性を高める上では、部分充電状態においても、極板から発生する僅かなガスが十分な対流を発生し、電解液が攪拌され、成層化が抑制されることが好ましい。
特開2017−92001号公報
本発明は、内部抵抗の上昇が抑制され、内部抵抗を測定する方法により充電状態や劣化状態を正確に判定することが可能であることに加えて、成層化が抑制された、寿命特性に優れた鉛蓄電池を提供することを課題とする。
本発明の一態様に係る鉛蓄電池は、二酸化鉛を含有する正極活物質を有する正極板と、金属鉛を含有する負極活物質を有する負極板とが、セパレータを介して複数枚交互に積層された極板群を備え、極板群が電槽内に区画されたセル室に電解液に浸漬した状態で収納されてセルを構成し、化成後の正極板の平面度が4.0mm以下であり、極板群が挿入されるセル室は、少なくとも極板群の積層方向において対向する第一内壁と第二内壁を有し、第一内壁には少なくとも1本の第一リブが突設され、第二内壁には少なくとも1本の第二リブが突設され、第一リブと第二リブはそれぞれ極板群の表面に当接し、第一及び第二内壁の間の最大幅Zと、第一リブの最大突出寸法Xと、第二リブの最大突出寸法Yが、12.5≦Z/(X+Y)≦21.0の関係を満たすことを要旨とする。
本発明に係る鉛蓄電池は、内部抵抗の上昇が抑制され、内部抵抗を測定する方法により充電状態や劣化状態を正確に判定することが可能であることに加えて、優れた寿命特性を有する。
本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の構造を説明する部分断面図である。 極板の平面度の測定方法を説明する図である。 正極活物質の厚塗り度の差による湾曲の発生を模式的に示した正極板の図である。
本発明の一実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
本発明者が鋭意検討した結果、鉛蓄電池の内部抵抗の上昇及び寿命特性の低下に関して新たな知見が見出されたので、以下に詳細に説明する。
鉛蓄電池においては、正極板と負極板とがセパレータを介して複数枚交互に積層された極板群が、所定の群圧が負荷された状態で電槽内に収容されている。このとき、極板群の極板間には、充放電反応に必要な電解液の拡散流路やガスの排出流路が必要であるため、ベース面にリブを設けたリブ付きセパレータを極板間に介在させて、電解液の拡散流路やガスの排出流路となる隙間を確保する手法が一般的である。
しかしながら、このようなリブ付きセパレータを用いた場合でも、内部抵抗が上昇したまま維持され、下がりにくい場合があった。このような内部抵抗が高止まりした鉛蓄電池について本発明者が調査した結果、極板群を構成する極板が湾曲しており、湾曲した極板の縁部にガスの気泡が引っかかり、極板に付着した状態となっていることが判明した。そして、ガスの気泡が極板に付着した結果、ガスが極板群内に閉じ込められて滞留し、活物質と電解液との接触面積(すなわち、反応が生じる部分の面積)が減少するため、鉛蓄電池の内部抵抗が上昇することが判明した。
また、隣接する極板間の距離が湾曲により小さくなるため、ガスが極板間に閉じこめられやすくなり、極板群の外部に出にくいことも分かった。
さらに、極板が湾曲していても内部抵抗が高止まりしない鉛蓄電池が存在することも分かった。この事実から、極板の湾曲の大きさや湾曲の形状によっては、極板群内にガスが滞留しにくい場合があるということが分かった。
極板が湾曲する原因は、本発明者の検討により、以下の通りであることが判明した。基板の表面に活物質からなる活物質層を形成し極板を製造する際には、基板の両板面に同一厚さの活物質層を形成しようとするが、両板面に同一厚さの活物質層を形成することは容易ではなく、異なる厚さの活物質層が形成されてしまうこともある。例えば、図3の例であれば、極板100の基板101の右側の板面101aに形成された活物質層102Aの厚さよりも、左側の板面101bに形成された活物質層102Bの厚さの方が大きい。
このように基板101の両板面101a、101bに形成された活物質層102A、102Bの厚さが異なると、図3に示すように、化成によって極板100が湾曲して、略椀状に変形する。そして、図3に示すように、活物質層102Bの厚さが大きい方の板面101bが凸面となり、活物質層102Aの厚さが小さい方の板面101aが凹面となるように、極板100が湾曲する。
これに加えて、極板の湾曲等によってガスが極板群内に閉じ込められたり、あるいは放電容量を稼ぐために活物質量を増やし、セル室の内寸ギリギリまで極板群の体積を大きくすることで、セル室の内壁と極板群の間にガスが滞留したりすると、電解液を攪拌する対流が生じず、成層化が助長されることが分かった。
そこで、本発明者が鋭意検討した結果、湾曲した極板群が挿入されるセル室の内壁間の幅と、内壁に設けられたリブの高さとの比率が、所定の条件において、鉛蓄電池の成層化抑制とサイクル特性に影響を及ぼすことが分かった。
本発明において活物質の密度は特に限定されないが、放電容量に影響するパラメータであり、これも鉛蓄電池の用途に応じて任意に決定してよい。例えば、鉛蓄電池がアイドリングストップ車用である場合は、正極活物質の密度は3.9g/cm3以上4.5g/cm3以下であることが好ましく、負極活物質の密度は3.9g/cm3以上4.1g/cm3以下であることが好ましい。
以上の検討結果から、本発明者は、極板の湾曲を抑えれば、化成、充放電等による内部抵抗の上昇が抑制され、内部抵抗を測定する方法により充電状態や劣化状態を正確に判定することが可能な鉛蓄電池が得られることを見出し、さらに、セル室の内壁間の最大幅と、内壁に設けられたリブの最大高さとの比率を改良することで、電解液の成層化が抑制され、サイクル特性に優れた鉛蓄電池が得られるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池は、二酸化鉛を含有する正極活物質を有する正極板と、金属鉛を含有する負極活物質を有する負極板とが、セパレータを介して複数枚交互に積層された極板群を備え、極板群が電解液に浸漬されてセルを構成し、化成後の正極板の平面度が4.0mm以下であり、極板群が挿入されるセル室は、少なくとも極板群の積層方向において対向する第一内壁と第二内壁を有し、第一内壁には少なくとも1本の第一リブが突設され、第二内壁には少なくとも1本の第二リブが突設され、第一リブと第二リブはそれぞれ極板群の表面に当接し、第一及び第二内壁の間の最大幅Zと、第一リブの最大突出寸法Xと、第二リブの最大突出寸法Yが、12.5≦Z/(X+Y)≦21.0の関係を満たすことを特徴とするものである。極板群内の全ての正極板の平面度は4.0mm以下であることが好ましい。
なお、正極板と負極板とでは、化成時に正極板の方が湾曲しやすい。このことから、本発明の目的を達成するためには、正極板の平面度を小さく制御することが重要となる。
本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の構造について、図1を参照しながら、さらに詳細に説明する。本実施形態に係る鉛蓄電池は、正極板10と負極板20とがリブ付きセパレータ30を介して複数枚交互に積層された極板群1を備えている。この極板群1は、その積層方向が水平方向に沿うように(すなわち、正極板10及び負極板20の板面が鉛直方向に沿うように)、図示しない電解液とともに電槽41内に収容され、電槽41内で電解液に浸漬されている。すなわち、本実施形態に係る鉛蓄電池は、極板群1と、極板群1を浸漬した電解液と、を有している。
正極板10は、例えば、鉛合金からなる板状格子体の開口部に、二酸化鉛を含有する正極活物質を充填しつつ、鉛合金からなる板状格子体の両板面に、二酸化鉛を含有する正極活物質からなる活物質層を形成したものである。負極板20は、例えば、鉛合金からなる板状格子体の開口部に、金属鉛を含有する負極活物質を充填しつつ、鉛合金からなる板状格子体の両板面に、金属鉛を含有する負極活物質からなる活物質層を形成したものである。正極板10、負極板20の基板である板状格子体は、鋳造法、打ち抜き法、エキスパンド方式で製造することができる。リブ付きセパレータ30は、例えば、樹脂、ガラス等からなる多孔質の膜状体である。
正極板10及び負極板20の上端部には、それぞれ集電耳11、21が形成されており、各正極板10の集電耳11は正極ストラップ13で連結され、各負極板20の集電耳21は負極ストラップ23で連結されている。そして、正極ストラップ13は正極端子15の一端に接続され、負極ストラップ23は負極端子25の一端に接続されており、正極端子15の他端及び負極端子25の他端が、電槽41の開口部を閉塞する蓋43を貫通して、電槽41と蓋43からなる鉛蓄電池のケース体の外部に露出している。
このような構造を有する本実施形態に係る鉛蓄電池において、化成後の正極板10の平面度は4.0mm以下とされている。平面度の数値が小さいほど正極板10は平らであり、ガスの気泡が正極板10の表面に付着しにくい。化成後の正極板10の平面度が4.0mm以下であれば、ガスは極板群1の外部に排出されやすくなるので、鉛蓄電池の内部抵抗の上昇が抑制され、内部抵抗を測定する方法により充電状態や劣化状態を正確に判定することが可能となる。
化成後の正極板10の平面度を4.0mm以下とする方法は特に限定されるものではなく、化成による湾曲を抑える方法により鉛蓄電池を製造してもよいし、化成により湾曲した正極板10を矯正して平面度を4.0mm以下としてもよい。
前述したように、正極板の両板面に形成した活物質層の厚さが異なると、化成時に正極板に湾曲が生じるので、両板面に略同一厚さの活物質層が形成された正極板を化成に供すれば、湾曲を抑えて平面度を4.0mm以下とすることができる。
両板面に同一厚さの活物質層を形成する方法としては、例えば、以下の2つの方法を挙げることができる。第一の方法は、厚さの異なる活物質層が両板面に形成された正極板を、負極板及びセパレータと積層する前に、正極板の厚さの大きい方の活物質層を削って、厚さの小さい方の活物質層と厚さを一致させる方法である。
正極板の両板面に同時に活物質層を形成しようとすると、同一厚さの活物質層を形成することが難しくなるので、第二の方法は、正極活物質のペーストを板状格子体の開口部に片面ずつ充填して活物質層を形成することにより、同一厚さの活物質層を形成する方法である。
ただし、化成後の正極板10の平面度が0.5mm未満の場合は、ガスが極板群1の外部に排出されやすくなるものの、極板群1を電槽41内に収容した際に電槽41の内壁面により極板群1に負荷される群圧が不十分となるおそれがある。その結果、正極活物質の軟化や脱落が生じやすくなり、鉛蓄電池の性能や寿命が低下する場合がある。よって、化成後の正極板10の平面度は0.5mm以上とすることが好ましい。
正極板の平面度は、JIS B0419:1991に規定された方法によって測定することができる。すなわち、図2に示すように、基台の平面上に、正極板の板面と基台の平面とが略平行をなすように、且つ、湾曲した正極板の凸面を上方に向けて正極板を載置して、湾曲した正極板の凸面の頂点(基台の平面から最も離れた部分)と基台の平面との間の距離hを測定する。そして、この距離hから正極板の厚さを差し引いた値を平面度とする。
なお、従来の鉛蓄電池においても極板は湾曲しており、平面度が4.0mm以下の極板を有する鉛蓄電池は確認されていなかった。例えば特許文献1の図面には、湾曲していない平らな極板が描画されているが、便宜上、平らに描画されているのであって、実際には極板は平らではなく湾曲していた。また、極板の湾曲によってガスが極板群の内部に閉じ込められ内部抵抗が上昇するという知見は、当業者においても全く知られていなかった。
また、上記のような構造を有する本実施形態に係る鉛蓄電池において、二酸化鉛を含有する正極活物質を有する正極板と、金属鉛を含有する負極活物質を有する負極板とが、セパレータを介して複数枚交互に積層された極板群を備え、極板群が挿入されるセル室は、少なくとも極板群の積層方向において対向する第一内壁と第二内壁を有し、第一内壁には少なくとも1本の第一リブが突設され、第二内壁には少なくとも1本の第二リブが突設され、第一リブと第二リブはそれぞれ極板群の表面に当接し、第一及び第二内壁の間の最大幅Zと、第一リブの最大突出寸法Xと、第二リブの最大突出寸法Yが、12.5≦Z/(X+Y)≦21.0の関係を満たす。これにより、極板群の積層方向における両端に十分な液空間が確保され、極板から発生したガスによる電解液の攪拌効果が得られるため、充電制御車やアイドリングストップ車に使用しても、電解液の成層化を抑制でき、優れた寿命特性の鉛蓄電池が得られる。
以上のように、本実施形態に係る鉛蓄電池は、化成、定電圧充電等による内部抵抗の上昇が生じにくく、充電後の内部抵抗の低下も早い。また、本実施形態に係る鉛蓄電池は、優れた寿命特性を有する。さらに、本実施形態に係る鉛蓄電池は、優れた耐久性と高い充電受入性(充電効率が高く短時間で充電可能)も有している。よって、本実施形態に係る鉛蓄電池は、充電制御車、アイドリングストップ車のような充電制御を行う車両に搭載され且つ主に部分充電状態で用いられる鉛蓄電池として好適である。なお、部分充電状態とは、充電状態が例えば70%超過100%未満の状態である。
また、本実施形態に係る鉛蓄電池は、車両の内燃機関を起動する電源としての用途のみならず、電動自動車、電動フォークリフト、電動バス、電動バイク、電動スクータ、小型電動モペッド、ゴルフ用カート、電気機関車等の動力電源や補機用予備(バックアップ)電源としても使用可能である。さらに、本実施形態に係る鉛蓄電池は、照明用電源、予備電源としても使用可能である。あるいは、太陽光発電、風力発電等により発電された電気エネルギーの蓄電装置としても使用可能である。
なお、本実施形態に係る鉛蓄電池においては、化成後の負極板の平面度は特に限定されるものではないが、化成後の正極板と同様に平面度は小さくてもよく、例えば4.0mm以下としてもよい。また、化成後の正極板の平面度と化成後の負極板の平面度は、同一であってもよいし異なっていてもよいが、異なっている方が好ましい。例えば、正極板の平面度に対する負極板の平面度の比を、極板群内において平均で50%以上80%以下とすれば、極板群内にガスが滞留しにくく、極板群からのガスの排出が生じやすい。
以下に、本実施形態に係る鉛蓄電池について、さらに詳細に説明する。
〔セル室の内壁間の距離とリブ高さの関係について〕
前述したように、本実施形態に係る鉛蓄電池においては、極板群が挿入されるセル室が、少なくとも極板群の積層方向において対向する第一内壁と第二内壁を有し、第一内壁には少なくとも1本の第一リブが突設され、第二内壁には少なくとも1本の第二リブが突設され、第一リブと第二リブはそれぞれ極板群の表面に当接し、第一及び第二内壁の間の最大幅Zと、第一リブの最大突出寸法Xと、第二リブの最大突出寸法Yが、12.5≦Z/(X+Y)≦21.0の関係を満たす。このような構成であれば、電極から発生したガスの滞留を防ぎ電解液の攪拌を促すので、電解液の成層化が抑制され、優れた寿命特性を発揮する鉛蓄電池が得られる。
電槽のセル室の極板群の積層方向において対向する第一、第二の内壁間の幅と、第一、第二の内壁にそれぞれ設けられた第一、第二リブの高さの関係が、サイクル特性に影響する理由は定かではないが、次のように考えられる。
極板群が挿入されるセル室の極板群の積層方向において対向する二つの内壁の間の最大幅Zと、第一内壁に設けられた第一リブの最大突出寸法Xと、第一内壁と対向する第二内壁に設けられた第二リブの最大突出寸法Yの関係であるZ/(X+Y)の値が21.0を超えるほど大きい場合、つまり、セル室の極板群の積層方向の最大幅Zに対して、第一リブおよび第二リブの最大突出高さの合計値(X+Y)の割合が極端に小さい場合、極板群とセル室の第一内壁及び第二内壁との間の距離が小さくなって、両者の間に形成される液空間が小さくなり、十分な液空間が確保されない状態になる。
そのため、正極板および負極板、特に極板群の積層端に存在する極板から発生したガスが、極板群の中から外に放出された場合、このガスが狭い液空間中に滞留しやすくなる。そのため、電解液の攪拌が起こりにくく、濃硫酸の沈降による成層化が生じやすくなる。
一方、Z/(X+Y)の値が小さい、つまり、セル室の極板群の積層方向の最大幅Zに対して、第一リブおよび第二リブの突出高さの合計値(X+Y)の割合が大きいほど、極板群とセル室の第一内壁及び第二内壁との間の距離が大きくなって、両者の間に形成される液空間が大きくなり、十分な液空間が確保された状態になる。
そのため、正極板および負極板、特に極板群の積層端に存在する極板から発生したガスが、極板群の中から外に放出された場合でも、液空間中にガスが滞留することなく、随時、電解液内を上昇して、セル室の上方空間へと放出される。よって、ガスの排出に伴う電解液の対流が起き、沈降しようとする濃硫酸の攪拌効果が十分に得られるため、成層化が抑制される。
なお、第一リブの最大突出寸法Xと第二リブの最大突出寸法Yは、積層体の端板からのガス抜けを両側で均等にし、より効果的な電解液の攪拌効果を得るために、等しくすることが好ましい。
上述のように、Z/(X+Y)の値が小さいほど電解液の攪拌効果は高いが、Z/(X+Y)が12.5未満であると、電池性能が著しく低下する可能性がある。これに関して以下に説明する。
Z/(X+Y)の値を小さくする設計を実施する方法としては、例えば、既存製品の寸法Zを変えずに第一リブおよび第二リブの合計突出寸法(X+Y)を大きくする方法や、寸法Zを既存製品より小さくして合計突出寸法(X+Y)は一般的な値にする方法がある。
既存製品の寸法Zを変えずに第一リブおよび第二リブの合計突出寸法(X+Y)を大きくする方法では、極板群の端板の両側(セル室の第一、第二内壁面との間)に十分な液空間が確保されるが、既存製品と同じ構成の極板群を用いた場合、Z/(X+Y)が12.5未満と極端に小さくなると、極板群が過剰に圧迫された状態になる可能性がある。これに伴い、正極板と負極板との間の液スペースが減少し、正負極間に存在する電解液量が減少し、正負極間の充放電効率が低下して、電池容量が低下するなどの電池性能の低下を招く可能性がある。
また、既存製品の寸法Zを変えずに第一リブおよび第二リブの合計突出寸法(X+Y)を大きくする方法で、極板群が過剰に圧迫された状態にならないようにするために、既存製品よりも極板群を構成する正極板および負極板の枚数を少なくした場合、Z/(X+Y)が12.5未満と極端に小さくなると、既存製品よりも鉛蓄電池の体積当たりの電池容量が大幅に低下する。
また、寸法Zを既存製品より小さくして合計突出寸法(X+Y)は一般的な値にする方法では、Z/(X+Y)が12.5未満と極端に小さくなると、寸法Zに対応させて既存製品よりも極板群を構成する正極板および負極板の枚数を少なくした場合に、セル室当たりの電池容量が既存製品よりも大幅に低下する。
〔正極板の湾曲の形状について〕
前述したように、正極板の湾曲の形状によっては、極板群内にガスが滞留しにくい場合があり、化成後の正極板が湾曲していても内部抵抗が高止まりしない鉛蓄電池が存在する。例えば、湾曲した正極板の凸面の頂点が、鉛蓄電池内に配されている状態の正極板の鉛直方向中央よりも下方側部分に位置するような湾曲形状であれば、ガスの気泡の出口となる鉛直方向中央よりも上方側部分の湾曲度合いは小さいと言えるので、ガスは極板群内に滞留しにくい。
すなわち、ガスの気泡が極板群から外部に排出される際の出口となる部分である、正極板の鉛直方向中央よりも上方側部分の湾曲度合いが小さければ、ガスは極板群内に滞留しにくく排出されやすいので、鉛蓄電池の内部抵抗の上昇が抑制される。よって、化成後の正極板のうち、鉛直方向中央よりも上方側部分の平面度が4.0mm以下であれば、鉛蓄電池の内部抵抗の上昇が抑制されるという効果が奏される。
〔電解液について〕
電解液の組成は特に限定されるものではなく、一般的な鉛蓄電池に使用される電解液を問題なく適用することができるが、平面度が大きい極板を使用した鉛蓄電池において、電解液にアルミニウムイオンを添加した場合は、平面度が大きくなることによって極板間にガスが溜まり、内部抵抗が上昇するため、アルミニウムイオンの添加効果が小さくなることが分かった。鉛蓄電池の充電受入性を優れたものとするためには、電解液にアルミニウムが含有されていることが好ましく、電解液中のアルミニウムイオンの含有量は0.01モル/L以上とすることが好ましい。アルミ二ウムイオンの濃度が0.01モル/L未満では、十分な添加効果が得られない。ただし、電解液中のアルミニウムイオンの含有量が高いと、電解液の抵抗及び粘度が上昇し、ガスが極板群から外部に排出されにくくなるため、電解液中のアルミニウムイオンの含有量は0.3モル/L以下とすることが好ましい。
また、電解液はナトリウムイオンを含有していてもよい。ただし、電解液中のナトリウムイオンの存在は有害であり、多量に存在するとアルミニウムイオン等による充電率改善効果を阻害するため、電解液中のナトリウムイオンの濃度は、0.002モル/L以上0.05モル/L以下であることが好ましい。
なお、電解液中のアルミニウムイオン及びナトリウムイオンの含有量の測定方法は特に限定されないが、例えばICP発光分析装置を用いて測定することができる。
〔満充電状態における正極活物質中の鉄の含有量について〕
鉛蓄電池の満充電状態(例えば化成後)における正極活物質中に含有される鉄の含有量は、特に限定されるものではないが、3.5ppm以上20ppm以下であることが好ましい。正極活物質中に鉄が含有されていると、正極板上でガスが発生しやすくなる。そして、発生したガスが電解液中を上昇することにより、電解液が攪拌され、成層化が抑制される。鉛蓄電池の満充電状態における正極活物質中に含有される鉄の含有量が上記の範囲内であれば、正極板上で発生するガスの量が電解液の攪拌に対して好適な量となるので、電解液がより抑制されることとなる。
鉛蓄電池の満充電状態における正極活物質中の鉄の含有量が3.5ppm未満であると、正極板上で発生するガスの量が少なくなるため、電解液が十分に攪拌されず、電解液の成層化を抑制する効果が得られない。他方、鉛蓄電池の製造工程において鉄やステンレス製の製造装置が多く使用されるが、当業者においては、鉄の混入は電解液の電気分解促進による早期減少(減液とも呼ぶ)を招くと考えられ、これらの装置に由来する鉄の混入物の除去に多額の費用を投じてきた。本発明によれば、正極活物質中の鉄の含有量を3.5ppm以上20ppm以下の範囲で許容するので、前記鉄の混入物の除去にかかるコストを削減できる。
一方、鉛蓄電池の満充電状態における正極活物質中の鉄の含有量が20ppm超過であると、電解液の電気分解が促進され、正極板上で発生する酸素ガス等のガスの量が多くなるため、電解液の減液が多くなって鉛蓄電池が短寿命化するとともに、鉛蓄電池の内部抵抗が上昇するおそれがある。さらに、自己放電が促進されるため、電圧の降下量が大きくなるおそれがある。
なお、鉛蓄電池内に存在する鉄は、充電時には正極へ、放電時には負極へと、電解液を介して移動を繰り返す(シャトル効果)ので、鉄によるガス発生効果は正極に限定されるものではなく、負極においても生じる。そのため、セパレータが袋状である場合は、正極板及び負極板のいずれを袋状セパレータ内に収容する構成であっても、同様の電解液攪拌効果が期待できるので、鉛蓄電池の設計の自由度が高まる。
また、正極活物質中に含まれる銅も、鉄と同様に、正極板上でのガスを発生させ、電解液を攪拌し、成層化を防止または解消する効果を得られる。正極活物質中の銅の含有量は、特に限定されるものではないが、0.5ppm以上20ppm以下であることが好ましい。
〔極板群に負荷される群圧について〕
前述したように、極板群を電槽内に収容した際には電槽の内壁面により極板群に群圧が負荷されるが、群圧が不十分であると、正極活物質の軟化や脱落が生じやすくなり、鉛蓄電池の性能や寿命が低下する場合がある。一方、群圧が高すぎると、正極活物質中にガスが滞留して、鉛蓄電池の内部抵抗が上昇するおそれがある。よって、極板群に負荷される群圧は10kPa以下とすることが好ましい。
〔正極活物質が含有する二酸化鉛について〕
二酸化鉛には、斜方晶系であるα相(α−二酸化鉛)と、正方晶系のβ相(β−二酸化鉛)がある。正極活物質が含有するα−二酸化鉛の質量αとβ−二酸化鉛の質量βの比率α/(α+β)は、20%以上40%以下であることが好ましい。このような構成であれば、電解液の成層化が生じにくいので、鉛蓄電池の寿命が向上するという効果が奏される。
α−二酸化鉛は、多孔性に乏しく比表面積が小さいため放電能力が小さいが、結晶の崩壊が極めて徐々に進行するため軟化速度が小さい。一方、β−二酸化鉛は、多孔性に富み比表面積が大きいため放電能力が大きい反面、結晶の崩壊が速く進み軟化速度が大きい。よって、鉛蓄電池の長寿命化と優れた放電能力との両立のためには、正極活物質が含有するα−二酸化鉛の質量αとβ−二酸化鉛の質量βの比率α/(α+β)が20%以上40%以下となるように、正極活物質内にα−二酸化鉛とβ−二酸化鉛が分散していることが好ましい。
α−二酸化鉛の質量αとβ−二酸化鉛の質量βの比率α/(α+β)が20%より小さいと、鉛蓄電池の寿命が不十分となるおそれがある。一方、α−二酸化鉛の質量αとβ−二酸化鉛の質量βの比率α/(α+β)が40%より大きいと、鉛蓄電池の容量が低下するおそれがある。
なお、正極活物質の活物質層の厚さとは、正極板の表面と、これに対向する正極基板の板面との間の距離であり、すなわち、正極板の表面に直交する仮想直線のうち、正極板の表面から正極基板の板面までの部分の長さである。正極板の表面は、段差、屈曲、湾曲等がマクロスケール(数十μm〜数mm程度)においては実質的に存在しない一つの平坦な平面である。正極活物質の活物質層の厚さは、正極板の表面と正極基板の板面との間の距離を1箇所測定して得た値でもよいし、正極板の表面と正極基板の板面との間の距離を複数箇所測定して得た値の平均値でもよい。
例えば、正極基板として板状格子体を用いた場合には、正極板の表面と、板状格子体の格子網目を形成する縦横の格子骨の表面とが対向するので、正極板の表面と格子骨の表面との間の距離を測定して、その測定値を正極活物質の活物質層の厚さとすればよい。また、板状格子体において格子骨は複数並んでいるので、複数の格子骨において、正極板の表面と格子骨の表面との間の距離を測定し、それら測定値の平均値を正極活物質の活物質層の厚さとしてもよい。
また、板状格子体の格子骨の断面形状(格子骨の長手方向に直交する平面で切断した場合の断面の形状)は、基本的には矩形であるので、正極板の表面とこれに対向する格子骨の表面とは平行をなす。ただし、エキスパンド方式で製造した板状格子体では、製造過程で板状格子体に捩れや歪みが生じる場合がある。板状格子体に捩れや歪みが生じた場合には、格子骨の表面が正極板の表面に対して傾斜するか又は曲面状となるため、正極板の表面とこれに対向する格子骨の表面とは非平行となる。このような場合には、正極板の表面と格子骨の表面との間の距離は測定箇所によって大きく異なるので、各格子骨において、格子骨の表面と正極板の表面との最短距離を測定し、それらの測定値の平均値を正極活物質の活物質層の厚さとするとよい。
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
(A)鉛蓄電池の性能に対する正極板の平面度、及びセル室の内壁間の距離とリブ高さの関係の影響についての検討
まず、Pb−Ca系又はPb−Ca−Sn系の鉛合金からなる板状格子体を鋳造し、該板状格子体の所定の位置に集電耳を形成した。次に、一酸化鉛を主成分とする鉛粉を水と希硫酸で混練し、さらに必要に応じて添加剤を混合し練り合わせて、正極活物質のペーストを製造した。同様に、一酸化鉛を主成分とする鉛粉を水と希硫酸で混練し、さらに必要に応じて添加剤を混合し練り合わせて、負極活物質のペーストを製造した。
そして、正極活物質のペーストを板状格子体に充填した後に、熟成及び乾燥を行い、化成前の正極板を作成した。同様に、負極活物質のペーストを板状格子体に充填した後に、熟成及び乾燥を行い、化成前の負極板を作成した。
上記のようにして作製した化成前の正極板と負極板とを、平板状のベース面と、ベース面の面方向に対し直行する方向に突出する襞状のリブとを有する多孔質の合成樹脂からなるリブ付きセパレータを介在させつつ交互に複数枚積層して、極板群を作製した。この極板群を電槽内に収納し、各正極板の集電耳を正極ストラップで連結し、各負極板の集電耳を負極ストラップで連結した。そして、正極ストラップは正極極柱の一端に接続し、負極ストラップは負極極柱の一端に接続した。なお、電槽は、セルを収容するセル室を複数有しているが、セル室1個当たりのアッパーレベル(最高液面線)以下の部分の容積は570cm3である。
さらに、蓋で電槽の開口部を閉塞した。正極極柱と負極極柱は、それぞれ蓋にインサート成形したブッシングに貫通させ、正極極柱の他端と負極極柱の他端を鉛蓄電池の外部に露出させた状態で溶接し、正極端子と負極端子を形成した。蓋に形成された注液口から、比重1.23の希硫酸と必要に応じて添加剤を含む電解液を電槽のアッパーレベルまで注入し、注液口を栓体により封口して、電槽化成を行い、鉛蓄電池を得た。電解液の注入から化成のための通電開始までの時間(すなわちソーキング時間)は30分間、化成のための電気量は230%とした。このとき、注入した電解液の量はセル1個当たり(すなわちセル室1個当たり)375cm3であった。なお、化成後の電解液の比重は1.28であった。
なお、後の解体調査のため、各ロットの鉛蓄電池は複数個作製し、同じロットの鉛蓄電池であれば、同一の構造と電池特性を有するものと見なした。
電池サイズはM−42とし、極板群を構成する正極板の枚数を6枚、負極板の枚数を7枚とした。正極板と負極板は連続製法により作製した。化成後の正極板の平面度は、化成前の正極板の両板面に形成された正極活物質の活物質層の厚塗り度比を変更することで調整した。ただし、化成後の正極板の平面度を調整する方法は、前述の厚塗り度比を変更する方法に限定されるものではなく、他の方法を用いても差し支えない。化成後の正極板の平面度の測定方法については、後に詳述する。
また、極板群が挿入されるセル室の極板群の積層方向において対向する二つの内壁の間の最大幅Zと、第一内壁に設けられた第一リブの最大突出寸法Xと、第一内壁と対向する第二内壁に設けられた第二リブの最大突出寸法Yの関係であるZ/(X+Y)の値は11.0〜22.5とした。また、Z=30mmの値は変えずに、X+Yの値を変えることで、Z/(X+Y)の値を変化させた。この際、XとYは同じ値になるように設計した。
リブ付きセパレータの総厚さは、0.70mmであり、ベース面の厚さは0.25mm、リブ高さは0.45mmとした。正極板が有する正極活物質の密度は、4.2g/cm3である。負極板が有する負極活物質の密度は、4.0g/cm3である。正極活物質中に含まれる鉄の含有量は3.5ppmとした。正極活物質が含有するα−二酸化鉛の質量αとβ−二酸化鉛の質量βの比率α/(α+β)は、20%である。電解液は、硫酸アルミニウムを0.1モル/Lの濃度で含有するものを使用した。
次に、作製した鉛蓄電池に対して初充電を行った後に、エージングを48時間施した。そして、鉛蓄電池の内部抵抗を測定した。この内部抵抗測定値を、「初期値」とした。
続いて、エージング後の満充電状態の鉛蓄電池に対して定電圧充電を行い、定電圧充電終了直後の内部抵抗を測定した。この内部抵抗測定値を、「充電直後の値」とした。定電圧充電の条件は、最大電流100A、制御電圧14.0V、充電時間10分間である(この鉛蓄電池は、5時間率容量(定格容量)を32Ahとする)。
定電圧充電が終了したら1時間静置し、静置後の内部抵抗を測定した。この内部抵抗測定値を、「静置後の値」とした。
正極板の平面度は、以下のようにして測定した。まず、化成後の鉛蓄電池を解体し、正極板を無作為に複数枚取り出した。取り出した正極板は、正極板が変形しないように注意を払い、流水に晒した状態で4時間保つことで、表面に付着した硫酸を水洗した後、60℃の乾燥機にて120分間乾燥させた。そして、マイクロメータを用いて、正極板の複数箇所において厚さを測定し、その平均値を正極板の厚さとする。次に、図2に示すように、基台の平面上に、正極板の板面と基台の平面とが略平行をなすように、且つ、湾曲した正極板の凸面を上方に向けて正極板を載置し、ハイトゲージを用いて、湾曲した正極板の凸面の頂点と基台の平面との間の距離hを測定する。そして、この距離hから正極板の厚さを差し引いた値を平面度とする。
次に、同じ鉛蓄電池を用いて、正極板の平面度と、セル室の内壁間の距離とリブ高さの関係が、鉛蓄電池の寿命特性に及ぼす影響について検討した。
鉛蓄電池の寿命特性については、以下の方法により電解液の成層化(すなわち電解液の上部と下部の比重差)と電池寿命について評価した。
電解液の成層化と電池寿命については、欧州規格(EN規格)のEN 50342−6:2015に記載の17.5%DOD寿命試験により評価した。すなわち、下記の(1)、(2)、(3)の操作を複数サイクル繰り返し、電圧が10Vになったら寿命に達したと判定し、それまで行ったサイクル数を電池寿命とするとともに、電解液の上部と下部での比重の差を測定した。
(1)充電状態(SOC)を50%に調整する。具体的には電流4In(A)で2.5時間放電する。
(2)放電深度(DOD)17.5%の充放電を85回繰り返す。具体的には、制限電圧14.4Vで、電流7In(A)で2400秒間定電圧充電後、電流7In(A)で1800秒放電する。
(3)満充電にして20HR容量試験を実施する。容量試験終了後、再び満充電を実施する。容量試験終了後、制限電圧16.0Vで、電流5In(A)で24時間定電圧充電を実施する。なお、「In」は20HR電流を意味し、M−42(20HR容量:40Ah)の場合、2Aである。
これらの結果をまとめて表1に示す。内部抵抗の初期値、充電直後の値、静置後の値を用いて、内部抵抗の上昇率を算出した。初期値に対する充電直後の値の上昇率は、([充電直後の値]−[初期値])/[初期値]により算出し、初期値に対する静置後の値の上昇率は、([静置後の値]−[初期値])/[初期値]により算出した。
そして、初期値に対する充電直後の値の上昇率が10%以下であるという条件Aと、初期値に対する静置後の値の上昇率が5%以下であるか又は充電直後の値の上昇率に対して静置後の値の上昇率が4%以上低い値であるという条件Bと、初期値が5.8mΩ未満であるという条件Cとを全て満たす場合は、内部抵抗の上昇が顕著に抑制されていると判定し、表1においては○印で示した。
条件Aと条件Bのいずれか一方の条件のみおよび条件Cを満たす場合は、内部抵抗の上昇が十分に抑制されているものの、顕著に抑制されているとまでは言えないと判定し、表1においては△印で示した。条件Aと条件Bのいずれも満たさない場合は、内部抵抗の上昇の抑制が若干不十分又は全く不十分であると判定し、表1においては×印で示した。加えて、条件Aと条件Bを満たした場合でも、条件Cを満たさない場合は、性能の最低基準に満たないものと判定し、表1においては×印で示してある。
寿命特性の評価結果については、電池寿命が800サイクル以上であるという条件Dと、電解液の成層化(電解液の上部と下部での比重の差)が0.03以下であるという条件Eとを両方満たす場合は、鉛蓄電池の性能が顕著に優れていると判定し、表1においては○印で示した。条件Dと条件Eのいずれか一方の条件のみを満たす場合は、鉛蓄電池の性能が十分に優れているものの、顕著に優れているとまでは言えないと判定し、表1においては△印で示した。条件Dと条件Eのいずれも満たさない場合は、鉛蓄電池の性能が若干不十分又は全く不十分であると判定し、表1においては×印で示した。
総合判定については、内部抵抗上昇率、寿命特性が全て○印の判定であった場合は、表1の総合判定は○印を示してある。内部抵抗上昇率又は寿命特性のいずれかが×印の判定であった場合は、表1の総合判定は×印を示してある。
Figure 2021163611
表1に示す結果から、正極板の平面度が4.0mm以下である実施例101〜115は、内部抵抗の上昇が顕著に抑制されていることが分かる。
これに対して、正極板の平面度が5.0mmである比較例111〜115は、初期値に対する充電直後の値の上昇率が高いことが分かる。また、初期値に対する静置後の値の上昇率も高いことから、内部抵抗の低下速度が遅いことが分かる。Z/(X+Y)の値が12.5未満である比較例102、104、106、108、110、115は、寿命特性が優れているものの、X+Yの値が大きい(すなわち第一リブと第二リブの高さが大きい)ため、極板群の端板が過度な圧迫を受け、極板から発生したガスが極板間から液中に排出されにくくなり、内部抵抗が高止まりする結果となったと推定される。
また、表1に示す評価結果から、Z/(X+Y)の値が21.0以下である実施例101〜115、比較例102、104、106、108、110、112〜115は、Z/(X+Y)の値が21.0超過である比較例101、103、105、107、109、111に対して優れた寿命特性を有することが分かる。比較例101、103、105、107、109、111のサイクル数が少ない原因としては、Z/(X+Y)の値を21.0超過の大きい値としたことで、極板群とセル室内壁の間の空間が狭く、極板から発生したガスが極板群とセル室内壁の間から液中へ排出されにくく、電解液の対流が不十分となり、成層化が解消されずサルフェーションが進行したことに因ると考えられる。実際に、試験後に解体を行ったところ、短寿命となった鉛蓄電池の負極板表面には、不動態化した硫酸鉛の白色の結晶が目視で確認できた。
表1に示す総合評価結果から、化成後の正極板の平面度が4.0mm以下であり、極板群が挿入されるセル室の極板群の積層方向において対向する二つの内壁の間の最大幅Zと、第一内壁に設けられた第一リブの最大突出寸法Xと、第一内壁と対向する第二内壁に設けられた第二リブの最大突出寸法Yの関係であるZ/(X+Y)の値が12.5以上21.0以下であると、内部抵抗の上昇が十分に抑制されるとともに、優れたサイクル特性が確保されることが分かる。
(B)鉛蓄電池の性能に対する正極活物質中の鉄の含有量の影響についての検討
次に、正極活物質中に含有される鉄が、鉛蓄電池のサイクル特性に及ぼす影響について検討した。鉛蓄電池の構成及び製造方法については、Z/(X+Y)の値が17.0に固定され、満充電状態の正極活物質中の鉄の含有量が異なる点を除いて、特に断りがない限り、上記(A)の検討の場合と同様である。
電解液としては、所定量の鉄を含有する硫酸を用いた。この電解液は、工業硫酸に硫酸第一鉄を添加することによって調整した。
なお、各実施例、比較例において、化成後の正極活物質及び電解液中の鉄の含有量については、化成後の鉛蓄電池を解体し、無作為に選択した正極板から分離した正極活物質と電解液から、それぞれ公知の方法により試料を調整し、高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP:島津製作所ICPS−7500)により定量分析した。
電解液中の鉄の含有量と、化成終了後の正極活物質中に含有される鉄の含有量を、表2に示す。化成後の電解液の比重は、いずれも1.28である。なお、鉄は、充電時には正極へ、放電時には負極へと、電解液を介して移動するので、化成前の電解液に含有される鉄は、化成後(満充電状態)では正極へ移動している。よって、化成前の電解液中の鉄の含有量と、満充電状態における正極活物質中に含有される鉄の含有量とは、ほぼ同一の値となる。表に示す通り、各実施例、比較例の鉛蓄電池において、正極活物質中に含まれる鉄の含有量は1.0ppm〜22ppmであった。
また、電解液の成層化と電池寿命については、上記(A)の検討と同様の試験を行った。
評価結果を表2示す。電池寿命が800サイクル以上であるという条件Dと、電解液の成層化(電解液の上部と下部での比重の差)が0.03以下であるという条件Eとを両方満たす場合は、鉛蓄電池の性能が顕著に優れていると判定し、表2の寿命特性判定においては○印で示した。また、電池寿命が1000サイクル以上であるという条件Fと、成層化が0.01以下であるという条件Gとを両方満たす場合は、鉛蓄電池の性能が特に顕著に優れていると判定し、表2の寿命特性判定においては◎印で示した。
また、表2の総合判定について、内部抵抗判定が○印であり寿命特性判定が◎印であるものは、鉛蓄電池の総合性能が特に顕著に優れていると判定し、表2においては◎印で示した。内部抵抗判定と寿命特性判定が両方○印のものと、内部抵抗判定が△印であり寿命特性判定が◎印であるものは、鉛蓄電池の総合性能が十分に優れているものと判定し、表2においては○印で示した。
Figure 2021163611
表2に示す評価結果から、正極活物質中の鉄の含有量が3.5ppm以上20ppm以下であると、内部抵抗の上昇が十分に抑制されているとともに内部抵抗の低下速度が速いことが分かる。また、鉛蓄電池の電池寿命が優れており、且つ、電解液の成層化が生じにくいことが分かる。
1 極板群
10 正極板
20 負極板
30 セパレータ

Claims (5)

  1. 二酸化鉛を含有する正極活物質を有する正極板と、金属鉛を含有する負極活物質を有する負極板とが、セパレータを介して複数枚交互に積層された極板群を備え、前記極板群が電解液に浸漬されてセルを構成し、
    化成後の前記正極板の平面度が4.0mm以下であり、
    極板群が挿入されるセル室の極板群の積層方向において対向する二つの内壁の間の幅Zと、第一の内壁に設けられた第一リブの最大突出寸法Xと、第一の内壁と対向する第二の内壁に設けられた第二リブの最大突出寸法Yが、12.5≦Z/(X+Y)≦21.0の関係を満たすことを特徴とする鉛蓄電池。
  2. 満充電状態における前記正極活物質中の鉄の含有量が3.5ppm以上20.0ppm以下である請求項1に記載の鉛蓄電池。
  3. 前記正極活物質の密度が3.9g/cm3以上4.5g/cm3以下であり、前記負極活物質の密度が3.9g/cm3以上4.1g/cm3以下である請求項1又は請求項2に記載の鉛蓄電池。
  4. 前記電解液のアルミニウムイオンの含有量が0.01モル/L以上0.3モル/L以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
  5. 前記極板群に負荷された群圧が10kPa以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
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