以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本出願において、「蛍光」は、励起光を照射することにより生じる発光(広義の蛍光)を意味する。特に、本出願における「蛍光」は、励起光(励起のための光)を止めてから発光が持続する寿命が短い(ほぼ無い)蛍光(狭義の蛍光)と、寿命が長く残光する燐光とのいずれをも含むものとする。
<1.第1実施形態>
<紙葉類処理装置の概要>
図1は、紙葉類処理装置10の外観を示す斜視図であり、図2は、紙葉類処理装置10の概略構成を示すブロック図である。ここでは、紙葉類処理装置10として、紙幣処理装置、より詳細には、テーブル上に設置して利用する小型の紙幣処理装置を例示する。また、ここでは紙葉類として主に紙幣を例示するが、これに限定されず、紙葉類は、商品券、小切手、有価証券、および/またはその他のカード状媒体等であってもよい。
紙葉類処理装置10は、紙葉類の識別処理(具体的には、紙葉類の種類、真偽、および/または汚れ等に関する識別処理)を行う紙葉類識別装置20(図2参照)を備える。紙葉類識別装置20は、紙葉類処理装置10の筐体19の内部に配置(内蔵)されている。紙葉類識別装置20は、後に詳述するように紙葉類の汚れに関する判定処理をも行う装置であり、汚れ判定装置とも称される。
また、紙葉類処理装置10は、図1に示されるように、操作部13と表示部15とホッパ11と複数(ここでは2つ)のリジェクト部12と複数(ここでは4つ)のスタッカ部16とを備えている。
操作部13は、複数のボタン等を備えて構成される。操作部13は、当該複数のボタン等を用いてオペレータからの指示を入力するための操作入力部である。表示部15は、液晶ディスプレイ等を備えて構成される。表示部15には、紙葉類の識別計数結果および各スタッカ部16の集積状況等の情報が表示される。
紙葉類処理装置10においては、複数の紙葉類の分類処理(整理処理とも称される)等が行われる。まず、ホッパ11には、処理対象の複数の紙葉類が積層状態で載置される。その後、ホッパ11から1枚ずつ繰り出された紙葉類が筐体19内部の紙葉類識別装置20へと搬送され、複数の紙葉類に対して紙葉類識別装置20による識別処理が順次に施される。そして、当該複数の紙葉類は、紙葉類識別装置20の識別結果等に基づいて分類される。具体的には、当該複数の紙葉類は、それぞれ、複数のリジェクト部12と複数のスタッカ部16とを含む複数の排出部(収容部とも称される)のうち紙葉類識別装置20の識別結果等に応じた排出部に排出される。この結果、当該複数の紙葉類は、当該複数の排出部にて分類された状態で収容される。
たとえば、ホッパ11から筐体19内に繰り出された紙葉類が偽券等のリジェクト紙幣であると判定される場合、当該リジェクト紙幣がリジェクト部12に排出される。また、複数のスタッカ部16においては、紙葉類識別装置20により真券であると判定された紙葉類(紙幣等)が、その種類(紙幣の場合は金種)および/またはその汚れに関する判定結果(識別結果とも称する)等に基づいて、分類されて集積される。詳細には、「汚れている」と判定された紙幣が、4つのスタッカ部16のうち一のスタッカ部16に収容され、「汚れていない」と判定された紙幣が、他の3つのスタッカ部16に金種毎に分類されて収容される。あるいは、紙葉類の汚れ度合い(および金種等)に基づいて、各紙葉類が複数のスタッカ部16に分類されて収容されてもよい。
ただし、これに限定されず、偽券又は真偽不確定券と判断された紙葉類は、リジェクト部12に返却されてもよいし、いずれかのスタッカ部16に収容されてもよい。また、「汚れている」と判定された紙葉類(真券等)が、2つのリジェクト部12の一方(あるいは双方)に排出されてもよい。
また、図2に示されるように、紙葉類処理装置10は、搬送部30および制御部40をも備えている。
搬送部30は、紙葉類を搬送するための搬送ローラ、および当該搬送ローラを駆動する駆動機構(駆動源および駆動力伝達機構)等を備えて構成される。
制御部40は、汚れ判定装置20の制御部70(後述)と同様、CPU(Central Processing Unit)等を備えるコンピュータシステムとして構成される。なお、紙葉類処理装置10の制御部40は、汚れ判定装置20の制御部70と区別するため、本体制御部あるいは全体制御部とも称される。
制御部40は、そのCPUにおいて、後述する記憶部60(あるいは記憶部60とは別に設けられた記憶部)内に格納されている所定のソフトウエアプログラムを実行することによって、各種の処理部を実現する。具体的には、図2に示すように、制御部40は、当該ソフトウエアプログラムの実行により、操作制御部41と表示制御部42と搬送制御部43とを含む各種の処理部を実現する。操作制御部41は、操作部13における操作入力処理等を制御する処理部であり、表示制御部42は、表示部15における表示処理等を制御する処理部である。また、搬送制御部43は、搬送部30による紙葉類の搬送等を制御する処理部である。たとえば、搬送制御部43は、搬送部30の駆動機構等を利用して、紙葉類の搬送処理(汚れ判定装置20への搬送処理、汚れ判定装置20内での搬送処理、および汚れ判定装置20による判定結果に基づく分類処理(分類搬送処理)等)を制御する。
<紙葉類識別装置(汚れ判定装置)20の概要>
つぎに、汚れ判定装置20の概略構成について説明する。
図2に示されるように、汚れ判定装置20は、ラインセンサユニット50と記憶部60と制御部(コントローラとも称する)70とを備えている。また、汚れ判定装置20は、当該汚れ判定装置20内において紙葉類を搬送するための搬送ローラをも備えている。汚れ判定装置20内の当該搬送ローラは、上述の搬送制御部43、および搬送部30の駆動機構等によって駆動される。なお、これに限定されず、汚れ判定装置20内の当該搬送ローラは、制御部70内の搬送制御部(不図示)等によって駆動されてもよい。
ラインセンサユニット50は、搬送部30によって搬送されてくる紙葉類に関する画像を取得する。
汚れ判定装置20は、ラインセンサユニット50として、紙葉類の上面(詳細には、上面の画像)を読み取るための上部ユニット50aと、紙葉類の下面(詳細には、下面の画像)を読み取るための下部ユニット50bとの双方を備えている。これにより、汚れ判定装置20は、紙葉類(紙幣等)の両面を同時に読み取ることが可能である。なお、これに限定されず、汚れ判定装置20は、紙葉類(紙幣等)の片面のみを読み取るように構成されてもよい。
記憶部60は、各種の半導体メモリ(RAMおよびROM)等を備えて構成される。記憶部60は、揮発性の記憶装置(たとえば、一時記憶用の半導体メモリ(RAM等))、および不揮発性の記憶装置(たとえば、不揮発性メモリ(ROM等)、ハードディスク)を備えて構成される。
制御部70は、汚れ判定装置20に内蔵され、汚れ判定装置20を制御する制御装置(コントローラとも称する)である。制御部70は、汚れ判定装置20(紙葉類識別装置20)を制御する処理部であることから、汚れ判定制御部あるいは識別制御部とも称される。
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)(マイクロプロセッサあるいはハードウエアプロセッサなどとも称される)等を備えるコンピュータシステムとして構成される。制御部70は、CPUにおいて、記憶部60内に格納されている所定のソフトウエアプログラム(以下、単にプログラムとも称する)を実行することによって、各種の処理部を実現する。なお、当該プログラム(詳細にはプログラムモジュール群)は、USBメモリなどの可搬性の記録媒体に記録され、当該記録媒体から読み出されて汚れ判定装置20にインストールされるようにしてもよい。あるいは、当該プログラムは、通信ネットワーク等を経由してダウンロードされて汚れ判定装置20にインストールされるようにしてもよい。
具体的には、図2に示すように、制御部70は、当該プログラムの実行により、光源制御部71と画像データ生成部72と判定部73とを含む各種の処理部を実現する。
光源制御部71は、発光部52(図3参照)の各光源の点灯および消灯等を制御する処理部である。
画像データ生成部72は、受光部55(図3参照)で受光された光の受光強度等に基づき、紙葉類の画像データを生成する処理部である。画像データ生成部72は、可視光源からの光のうち紙葉類で反射した反射光の受光強度に基づき、紙葉類の画像データ(可視光画像データ等)を生成する。また、画像データ生成部72は、励起光照射用の光源(たとえばUV光源)からの励起光の照射に応じて紙葉類にて発生し受光部55で受光される蛍光の受光強度に基づき、紙葉類の画像データ(蛍光画像データとも称する)を生成する。
たとえば、可視光源の照射に応じて可視光画像データを生成する処理と、励起光の照射に応じて蛍光画像データを生成する処理とが、紙葉類(紙幣90(図3参照)等)内の各走査ラインごとに交互に繰り返される。詳細には、紙葉類が搬送方向(副走査方向)に搬送されつつ、これら2種類の処理が複数の走査ラインについて繰り返される。換言すれば、2種類のライン状画像を交互に取得する処理が繰り返される。これにより、紙葉類の2次元状領域に関する2種類の画像データ(可視光画像データおよび蛍光画像データ)がほぼ同時に生成される。なお、可視光画像データは、たとえば、赤外光画像データを含むデータとして生成される。ただし、これに限定されず、可視光画像データは、赤外光画像データを含まないデータとして生成されてもよい。また、可視光画像データとは別個のデータとして、赤外光画像データが独立して生成されてもよい。
判定部73は、紙葉類の汚れに関する判定処理を実行する処理部である。判定部73は、後に詳述するように、紙葉類内の或る領域C1(後述)から発生した蛍光の受光強度(蛍光画像データ等)に基づき、紙葉類の汚れに関して判定する。
<汚れ判定装置20の詳細構成>
図3は、汚れ判定装置20の概略構成を模式的に示す縦断面図である。図3は、紙幣90の搬送面(水平面)に垂直な断面(且つ搬送方向に沿った断面)で汚れ判定装置20を切断し、当該断面を当該断面に垂直な方向(側方)から見た概略図である。紙幣90は、処理対象の紙葉類の一例である。
図3に示されるように、上部ユニット50aの筐体51の下面と下部ユニット50bの筐体51の上面との間に、数mm程度(たとえば1mm〜3mm)の間隙(ギャップ)39が設けられている。紙幣90は、当該間隙39を通過して搬送方向(図の左右方向)に移動する。
各ラインセンサユニット50(上部ユニット50aおよび下部ユニット50b)は、それぞれ、発光部52と集光レンズ53と受光部55と基板57とを筐体51内に備える。上部ユニット50aと下部ユニット50bとは同様の構成を備える。下部ユニット50bは、上部ユニット50aを上下反転させた構成を有し、上部ユニット50aよりも搬送方向の上流側(あるいは下流側)に配置される。
発光部52は、可視光を発する白色光源と、励起光を発するUV光源(紫外光源)とを備える。白色光源は、可視光の波長域(400nm〜700nm)の光を発する光源である。白色光源は、可視光の波長域(400nm〜700nm)の光のみを発するものであってもよく、赤外光の波長域(700nm〜1000nm)の光をも発するものであってもよい。ここでは、可視光の波長域と赤外光の波長域との双方の波長域の光を発する白色光源を採用する。また、UV光源は、紫外光の波長域(10nm〜400nm(たとえば、300nm〜400nm))の光を発する光源である。ここでは、紙幣90(紙葉類)にて蛍光を発生させるために励起光を紙幣90に照射する光源として、紫外光(UV光)を照射するUV光源を例示する。換言すれば、当該励起光として紫外光を例示する。
白色光源とUV光源(紫外光源)とはそれぞれ別のタイミングで点灯され得る。たとえば、可視光に関する画像データを取得する際には白色光源が点灯され、蛍光に関する画像データを取得する際にはUV光源が点灯される。より詳細には、紙幣90内の各走査ラインごとに、白色光源とUV光源とが微小時間間隔で交番点灯される。このような動作が複数の走査ライン(主走査ライン)について繰り返されることによって、紙幣90の可視光画像データと当該紙幣90の蛍光画像データとがほぼ同時に生成される。ただし、これに限定されず、たとえば、可視光源のみを常に点灯しつつ紙幣90を副走査方向に搬送することによって、可視光画像データが取得されてもよい。また、UV光源(紫外光源)のみを常に点灯しつつ紙幣90を副走査方向に搬送することによって、蛍光画像データが取得されてもよい。
発光部52は、水平方向(詳細には、図3の紙面に垂直な方向)に直線状に伸延して配置される。詳細には、発光部52は、その伸延方向における両端部(あるいは一方端部)に配置された光源(LED等)と当該光源からの光を導く直線状の導光体とを備えて構成される。発光部52において光源から導光体に導かれた光は、当該導光体の伸延方向における各位置(各水平位置)から紙幣90の搬送路に向けて出射される。詳細には、当該光は、発光部52の伸延方向に垂直な平面内(図3の紙面内)において所定方向(図3における黒矢印の方向)への指向性を有する状態で、紙幣90の搬送面における所定の線状領域へと進行する。
図4に示されるように、発光部52は、紙幣の幅(搬送面において搬送方向に垂直な方向の長さ)より大きな範囲に亘って伸延するように配置される。なお、図4は、上部ユニット50aを下方から見た図である。図4では、受光部55および基板57等の図示を省略している。
受光部55は、1次元状(ライン状)に伸延するラインセンサ(受光素子群)などを備えて構成される。受光部55は、基板57(図3)に固定されている。受光部55も、発光部52と同様に、図3の紙面に垂直な方向に直線状に伸延して配置される。受光部55は、発光部52に対して略平行に設けられる。
ラインセンサは、複数(たとえば1600個)の画素単位ユニットがライン状に配列されて構成される。画素単位ユニットは、4つの受光素子56B,56R,56G,56I(図5参照)を有している。図5は、画素単位ユニット内の構成等を示す概略図である。
当該4つの受光素子56B,56R,56G,56Iは、それぞれ、特定の波長域のみを透過させるバンドパスフィルタを有している。これにより、各受光素子56B,56R,56G,56Iは、それぞれ、対応する特定波長域の光を受光する。
受光素子56Bは、青色の光(概ね400nm〜500nmの波長域の光)を透過するバンドパスフィルタ54Bを有しており、青色の光を受光する。受光素子56Gは、緑色の光(概ね500nm〜600nmの波長域の光)を透過するバンドパスフィルタ54Gを有しており、緑色の光を受光する。受光素子56Rは、赤色の光(概ね600nm〜700nmの波長域の光)を透過するバンドパスフィルタ54Rを有しており、赤色の光を受光する。また、受光素子56Iは、赤外光(概ね700nm〜1000nmの波長域の光)を透過するバンドパスフィルタ54Iを有しており、赤外光(IR光)を受光する。
なお、受光素子56Rは、赤色光と赤外光との双方を透過するバンドパスフィルタによって、赤色の光(概ね600nm〜700nmの波長域の光)と赤外光(概ね700nm〜1000nmの波長域の光)との双方を受光してもよい。また、図5では、4つの受光素子56B,56R,56G,56Iが縦横2個ずつ(格子状に)配置されているが、これに限定されない。たとえば、4つの受光素子56B,56R,56G,56Iは、搬送方向に沿って一列に配置されてもよく、あるいは、搬送方向に垂直な方向に沿って一列に配置されてもよい。
発光部52から白色光源による光が発せられる場合、当該光は、透明樹脂(あるいは透明ガラス等)で構成された透光部58(図2)を透過し、紙幣90で反射された後、集光レンズ53で集光され、受光部55で受光される。詳細には、受光部55の受光素子56B,56R,56G,56Iは、それぞれ、特定の波長域の光を受光する。そして、各受光素子での受光強度(受光量)に応じた値が、その画素単位ユニットの画素値(詳細には、色成分(波長域別成分)ごとの画素値)として、受光部55から出力される。換言すれば、或る画素単位ユニット内の受光素子56B,56R,56G,56Iからの各出力値(色成分ごとの画素値)は、紙幣90内の対応位置からの反射光の受光強度(詳細には、波長域別の受光強度)の検出値(測定値)として取得される。
また、上述のように、発光部52からは白色光源ではなくUV光源による光を発することもできる。UV光源は、紫外光(UV光)を照射する光源である。当該紫外光(UV光)が励起光として紙葉類に照射されると、当該紙葉類から蛍光が発生する。
発光部52からUV光源による光が発せられる場合、当該光(UV光)は、透明樹脂(あるいは透明ガラス等)で構成された透光部58を透過し、紙幣90に到達する。そして、UV光は、紙幣90の表面(ひょうめん)にて蛍光に変化する。すなわち、紙幣90の表面から蛍光が発生する。当該蛍光は、集光レンズ53で集光され、受光部55で受光される。詳細には、受光部55の受光素子56B,56R,56G,56Iは、それぞれ、特定の波長域の光を受光する。そして、各受光素子での受光強度(受光量)に応じた値が、その画素単位ユニットの画素値(詳細には、色成分ごとの画素値)として、受光部55から出力される。換言すれば、或る画素単位ユニット内の受光素子56B,56R,56G,56Iからの各出力値(色成分ごとの画素値)は、紙幣90内の対応位置からの「蛍光」の受光強度(詳細には、波長域別の受光強度)の検出値(測定値)として取得される。
また、ラインセンサは、主走査方向(搬送方向に垂直な方向)に沿って一次元状(ライン状)に配置された複数の画素単位ユニットの画素値(詳細には、色成分ごとの画素値)をほぼ同時に取得する。換言すれば、ラインセンサは、紙幣90内のライン状領域の画像(詳細には、複数の色成分のそれぞれに関する各ライン状画像)を微小時間内に取得する。そして、紙幣90が副走査方向(搬送方向)に搬送されつつ、同様のライン状領域の画像取得処理が繰り返される。これによって、紙幣90の2次元状領域に関する画像(2次元カラー画像)が取得される。
詳細には、白色光源からの光が紙幣90に照射される場合、ラインセンサは、紙幣90の2次元状領域内の各位置からの反射光の受光強度(画素値)を色成分(波長域別成分)ごとに取得する。換言すれば、可視光照射に応じた2次元カラー画像(紙幣90における反射光の2次元カラー画像)が取得される。
また、UV光源(励起用光源)からの光(励起光)が紙幣90に照射される場合、ラインセンサは、紙幣90の2次元状領域内の各位置からの「蛍光」の受光強度(画素値)を色成分(波長域別成分)ごとに取得する。換言すれば、励起光照射に応じた2次元カラー画像(紙幣90における「蛍光」の2次元カラー画像)が取得される。
<紙幣90>
つぎに、紙幣90について説明する。
図6は、紙幣90を可視光源で照明して撮影した画像(可視光画像)に関する情報を示す図である。図6の上段の画像は、紙幣90を可視光源で照明して撮影した画像である。また、図6の下段のグラフは、紙幣90の可視光画像内の1本のラインL1上の各位置での画素値を示している。詳細には、図6の下段のグラフ(曲線Lr,Lg,Lb)は、紙幣90上の或る主走査ラインL1内の各位置における画素値(受光強度分布)を波長域成分(赤色(R)波長域成分,緑色(G)波長域成分,青色(B)波長域成分)ごとに示している。図6において、R波長域成分は実線の曲線Lrで、G波長域成分は破線の曲線Lgで、B波長域成分は一点鎖線の曲線Lbでそれぞれ示されている。なお、図示の簡略化等のため、図6等は、細部等を捨象して示されている。
図6の上段に示されるように、紙幣90は、透かし領域91と肖像衣服領域92と印影領域93とを有している。各領域91,92,93は、それぞれ、紙幣90内の所定の位置に配置されている。
透かし領域91は、透かし模様が配置された領域であり、紙幣90の略中央部に設けられている。透かし領域91は、見た目では大まかに白色の領域であり、白色領域あるいは淡色領域とも称される。図6の下段に示されるように、透かし領域91における各成分値(R,G,B)は、それぞれ、紙幣90内の他の領域(たとえば肖像衣服領域92)における各成分値(R,G,B)よりも大きい。
肖像衣服領域92は、透かし領域91よりも右側に設けられている。肖像衣服領域92は、所定の人物の肖像画のうち衣服が描かれている領域である。肖像衣服領域92は、見た目では大まかに黒っぽい領域(濃色)の領域であり、黒色領域あるいは濃色領域とも称される。
印影領域93は、透かし領域91よりも左側に設けられている。印影領域93は、所定の印鑑(たとえば、日本銀行総裁の印鑑)の印影が描かれている領域である。印影領域93は、見た目では大まかに赤色の領域であり、赤色領域とも称される。
また、印影領域93には、偽造防止等のため、特定色の蛍光インクが塗布されている。印影領域93に対して励起光(UV光)を照射すると、印影領域93は例えば赤色(あるいはオレンジ色等)に発光する。ここでは、紙幣90内においては、印影領域93のみに対して蛍光インクが塗布されているものとする。換言すれば、紙幣90内において、印影領域93以外の領域には、蛍光インクは元来は塗布されていない。ただし、これに限定されず、紙幣90内において、蛍光インクが元来塗布されている領域として、印影領域93以外の領域が存在してもよい。
なお、汚れ判定装置20の制御部70(判定部73等)は、透かし領域91、肖像衣服領域92および印影領域93の各位置を、記憶部60内に予め格納された紙幣仕様データ等に基づいて特定することが可能である。紙幣仕様データには、紙幣の種類(金種)ごとに、当該各領域91,92,93の位置および大きさ等が記録されている。紙幣90に関する、蛍光画像データ(および/または可視光画像データ)と紙幣仕様データとに基づき、紙幣90内における各領域91,92,93の位置等が特定され得る。
<汚れに関する判定処理>
さて、上述したように、可視光源からの光のうち紙葉類での反射光を利用して汚れ度合いを判定する技術(比較例に係る技術とも称する)においては、微妙な程度の汚れの有無等を判定することが困難である。
たとえば、可視光源を光源とする場合、全く新しい紙幣(官封券等)からの反射光と、唾液などの体液、および/または手垢等が付着することによって若干汚れた紙幣(見た目には綺麗な紙幣)からの反射光との強度差は小さい。具体的には、前者の紙幣(官封券等)と後者の紙幣(見た目には綺麗な紙幣)とのいずれもが、図6の下段と同様の受光強度分布(換言すれば、同程度の受光強度)を示すことが多い。そのため、比較例に係る技術では、前者の紙幣と後者の紙幣とを汚れ度合いによって正確に区別することは困難である。
ここにおいて、見た目には綺麗な紙幣であっても、唾液などの体液、および/または手垢等が付着することによって実際には若干汚れている紙幣は、官封券よりも大きな蛍光反応を生じる。このような事情に本願発明者は着目した。以下、図7〜図10を参照して、当該事情について詳細に説明する。
図7〜図10は、紙幣90に励起光を照射して発生した蛍光に関する情報を示す図である。図7〜図10の各図の下段の画像は、紙幣90に対する励起光(UV光)の照射に応じて発生した蛍光の画像である。また、当該各図の上段のグラフ(曲線Lr,Lg,Lb)は、紙幣90上の或る主走査ラインL1内の各位置における画素値(受光強度分布)を波長域成分(R波長域成分,G波長域成分,B波長域成分)ごとに示している。R波長域成分は実線の曲線Lrで、G波長域成分は破線の曲線Lgで、B波長域成分は一点鎖線の曲線Lbでそれぞれ示されている。なお、図示の簡略化等のため、これらの図も、細部等を捨象して示されている。
図7〜図10は、互いに異なる市場流通期間(換言すれば、汚れの程度)を有する紙幣90の蛍光反応等を示している。図7は、全く新しい紙幣(官封券等)90(90Aとも称する)の蛍光反応を示す図である。図8は、若干の期間に亘って市場に流通した紙幣90(90Bとも称する)の蛍光反応を示す図である。図8の紙幣90Bは、図7の紙幣90Aよりも若干汚れている。図9は、より長い期間に亘って市場に流通した紙幣90(90Cとも称する)の蛍光反応を示す図である。図9の紙幣90Cは、図8の紙幣90Bよりも汚れている。図10は、さらに長い期間に亘って市場に流通した紙幣90(90Dとも称する)の蛍光反応を示す図である。図10の紙幣90Dは、図9の紙幣90Cよりも汚れている。
このように、図7の紙幣90Aから図10の紙幣90Dへと変遷するにつれてその汚れの度合いが徐々に増大していく。ただし、これらのうち最も汚れの度合いが大きい紙幣90D(図10)でも、見た目には十分に綺麗である。図10の紙幣90Dを可視光源で撮影した画像と全く新しい紙幣90A(官封券等)を可視光源で撮影した画像との両者を比較しても、当該両者の相違は殆ど無い。
ここにおいて、図7から図10に示すように、市場での紙幣90の使用期間の経過等に伴って徐々に汚れ度合いが大きくなるにつれて、紙幣90からの蛍光の受光強度は徐々に大きくなっていく。
図7の下段に示されるように、図7の紙幣90Aは、(その一部の領域93以外では)蛍光反応をほとんど有さず、紙幣90Aの蛍光画像は全体的に暗い画像である。一方、図8の紙幣90Bの蛍光画像は、紙幣90A(図7)の蛍光画像よりも若干明るい。これは、紙幣90Bにて蛍光反応が生じ、当該蛍光反応による蛍光が検出されているからである。さらに、図9の紙幣90Cでは、より大きな蛍光反応が生じ、図10の紙幣90Dではさらに大きな蛍光反応が生じている。これに伴い、紙幣90D(図10)の蛍光画像は、紙幣90A(図7)、紙幣90B(図8)、紙幣90C(図9)の各蛍光画像よりも明るい画像として取得される。
たとえば、透かし領域91および肖像衣服領域92からの蛍光の受光強度は、紙幣90全体の汚れ度合いの増大に伴って徐々に大きくなっていく。
ただし、元来は蛍光インクが塗布されていた印影領域93は、他の領域とは異なる変化傾向を示す。具体的には、印影領域93においては、元来塗布されていた蛍光インクが、紙幣90の市場流通期間の経過等に伴って徐々に損耗していく。その結果、印影領域93からの蛍光の受光強度は、市場での紙幣90の流通期間の経過等に伴って徐々に低下していく。
逆に言えば、紙幣90内の領域であって蛍光インクが元来は塗布されていない領域(「蛍光インク非塗布領域」とも称する)からの蛍光の受光強度は、徐々に大きくなる。より具体的には、印影領域93以外の領域(たとえば、透かし領域91および/または肖像衣服領域92等)からの蛍光の受光強度は、流通期間の長大化(ひいては汚れの増大)に伴って、徐々に大きくなる。
そこで、このような事情を考慮して、この実施形態では、紙幣90内の一の蛍光インク非塗布領域C1(たとえば透かし領域91)からの蛍光の受光強度V1に基づき、汚れに関する判定処理が制御部70等によって実行される。
具体的には、当該判定処理に先立って、蛍光を発生させるための励起光(ここではUV光)が紙幣90に照射され、当該紙幣90にて発生した蛍光が受光部55によって受光される。そして、紙幣90に関する蛍光の画像データが制御部70によって生成(取得)される(ステップS1(図22参照))。さらに、制御部70は、蛍光の画像データに基づき、紙幣90内の蛍光インク非塗布領域C1(透かし領域91等)からの蛍光の受光強度V1を算出(取得)する(ステップS2)。そして、制御部70は、当該受光強度V1に基づき、汚れに関する当該判定処理を実行する(ステップS3)。また、当該判定処理における判定結果が制御部(識別制御部)70から本体制御部40へと出力される(ステップS4)。そして、本体制御部40は、当該判定結果に基づく分類処理を実行する。具体的には、本体制御部40は、各紙幣90を各判定結果等に応じた排出部(リジェクト部12およびスタッカ部16等)にそれぞれ排出する。なお、図22は、汚れ判定装置20の制御部70における処理を示すフローチャートである。
ここにおいて、紙幣90内の蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光の受光強度V1は、たとえば、透かし領域91の全領域(2次元的(面的)な拡がりを有する全領域)に亘る複数の位置における蛍光の受光強度の平均値(あるいは最大値)として算出されればよい。ただし、これに限定されず、たとえば、透かし領域91の一部の領域(2次元状領域あるいは1次元状領域)内の複数の位置での蛍光の受光強度の平均値(あるいは最大値)として受光強度V1が算出されてもよい。また、紙幣90内の各位置での蛍光の受光強度としては、たとえば、当該蛍光の複数の波長域別成分のうちの一の波長域成分(たとえば、緑色の波長域成分)のみに関する受光強度が用いられればよい。ただし、これに限定されず、たとえば、当該蛍光の複数の波長域別成分に関する受光強度の平均値(換言すれば、グレースケール画像の各画素値)が、紙幣90内の各位置での蛍光の受光強度として用いられてもよい。
制御部70(判定部73)は、透かし領域91からの蛍光の受光強度V1を汚れに関する指標値として利用する。たとえば、判定部73は、受光強度V1の値(自体)を、汚れ度合いを表す指標値として用いる。より詳細には、判定部73は、受光強度V1が大きいほど紙幣90の汚れ度合いが大きい、と判定する。ここでは更に、受光強度V1に基づき、紙幣90の汚れ度合いが複数の段階に分けて判定される(図11参照)。図11は、汚れ度合いに関する分類例を示す図である。
たとえば、図11に示されるように、受光強度V1が閾値TH1未満の場合には、汚れ度合いがレベルE4である(「非常に綺麗」(全く汚れていない))と判定される。また、受光強度V1が閾値TH1以上且つ閾値TH2未満(ただし、TH2>TH1)の場合には、汚れ度合いがレベルE3である(「綺麗」(ほぼ汚れていない))と判定される。また、受光強度V1が閾値TH2以上且つ閾値TH3未満(ただし、TH3>TH2)の場合には、汚れ度合いがレベルE2であると判定される。さらに、受光強度V1が閾値TH3以上の場合には、汚れ度合いがレベルE1である(「かなり汚れている」(許容できない汚れが存在する状態である))と判定される。各紙幣90の汚れは、最も大きな汚れ度合いを有するレベルE1から、最も小さな汚れ度合いを有するレベルE4までの複数の段階(4つの段階)のいずれかに類別される。なお、レベルE2は、レベルE1とレベルE3との間の汚れ度合いを示している。レベルE2は、たとえば、「若干汚れている」(或る程度の汚れが存在する状態である)ことを示すレベルである。ただし、これに限定されず、レベルE2は、「まだ綺麗」(まだ汚れていない状態)との意義を示すレベルであってもよい。
なお、ここでは汚れ度合いを4段階に類別しているが、これに限定されず、各紙幣90の汚れは、より少数の段階(2段階〜3段階)、あるいは、より多数の段階(5段階〜)の度合いのいずれかに類別されるようにしてもよい。
以上のような態様によれば、汚れ判定装置20は、紙幣90内の蛍光インク非塗布領域C1(蛍光インクが元来は塗布されていない領域)からの蛍光の受光強度V1に基づき、紙幣90(紙葉類)の汚れに関して判定する。したがって、紙幣90の汚れに関する高精度の判定を実現することが可能である。特に、可視光源からの光の紙葉類での反射光を利用して汚れ度合いを判定する従来技術に比べて、紙葉類(紙幣90)の汚れに関する高精度の判定を実現することが可能である。
なお、上記実施形態においては、透かし領域91からの蛍光の受光強度V1が大きいほど、紙幣90の汚れ度合いが大きい、と判定されている。すなわち、汚れ判定装置20は、紙幣90の汚れ度合いを判定することにより、紙幣90の汚れに関して判定している。換言すれば、紙幣90の汚れ度合いを判定する処理が、紙幣90の汚れに関する判定処理の一例として行われている。
しかしながら、これに限定されず、紙葉類の汚れの有無を判定する処理(「紙葉類が汚れている」か否かを判定する処理)が、紙幣90の汚れに関する判定処理として実行されてもよい。具体的には、受光強度V1と所定の閾値との大小関係に基づいて、汚れ(詳細には、所定程度よりも大きな汚れ)の有無が判定されてもよい。詳細には、当該受光強度V1が所定の基準値よりも大きい場合には紙幣90は「汚れている」(所定程度よりも汚れている)と判定され、当該受光強度V1が当該所定の基準値よりも小さい場合には紙幣90は「汚れていない」と判定されてもよい。当該所定の基準値としては、たとえば、閾値TH3(あるいは閾値TH2)が用いられればよい。このように、汚れ判定装置20は、紙幣90が汚れているか否かを判定することにより、紙幣90の汚れに関して判定してもよい。
また、ここでは、蛍光インク非塗布領域C1として、透かし領域91を主に例示したが、これに限定されない。蛍光インク非塗布領域C1は、たとえば、紙幣90の人物の顔面皮膚領域、紙幣90の肖像衣服領域92、紙幣90の辺縁領域、紙幣90の背景領域など、その他の領域であってもよい。あるいは、蛍光インク非塗布領域C1は、紙幣あるいはその他の紙葉類内の「無模様の領域」であってもよい。なお、蛍光インク非塗布領域C1は、透かし領域91(あるいは無模様の領域)などの淡色領域であることが好ましい。透かし領域91などの淡色領域は、肖像衣服領域92などの濃色領域よりも、汚れに起因する蛍光が検出され易い領域である(後述)からである。
<2.第2実施形態>
上記第1実施形態では、紙幣90内の一の蛍光インク非塗布領域C1(たとえば透かし領域91)における受光強度V1のみに基づいて、紙幣90の汚れに関する判定処理が行われているが、これに限定されない。たとえば、紙幣90内の一の蛍光インク非塗布領域C1における受光強度V1のみならず、紙幣90内の他の蛍光インク非塗布領域C2(領域C1とは異なる領域)における受光強度V2にも基づいて、紙幣90の汚れに関する判定処理が行われてもよい。受光強度V2を用いた正規化を行うことにより、紙幣90の汚れに関して更に高精度の判定を実現することが可能である。第2実施形態では、このような態様について説明する。後述するように、蛍光インク非塗布領域C2は、蛍光インク非塗布領域C1よりも汚れが検出されにくいと推定される領域(肖像衣服領域92等)である。
受光強度V1としては、第1実施形態と同様に、たとえば、透かし領域91の全部あるいは一部の領域内の複数の位置における受光強度の平均値(あるいは最大値)が用いられればよい。また、受光強度V2としては、たとえば、肖像衣服領域92の全部あるいは一部の領域内の複数の位置における受光強度の平均値(あるいは最大値)が用いられればよい。
また、紙幣90内の各位置での蛍光の受光強度としては、当該蛍光の複数の波長域別成分のうちの一の波長域成分(たとえば、緑色の波長域成分)のみに関する受光強度が用いられればよい。
たとえば、蛍光インク非塗布領域C1(透かし領域91)の各位置に関しては、励起光の照射に応じた蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光のうち、緑色波長域の蛍光の受光強度が、受光強度V1として算出されればよい。さらに、蛍光インク非塗布領域C2(肖像衣服領域92)の各位置に関しても、励起光の照射に応じた蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光のうち、同じ緑色波長域の蛍光の受光強度が、受光強度V2として算出されればよい。
ただし、これに限定されず、蛍光インク非塗布領域C2の各位置に関しては、蛍光インク非塗布領域C1とは互いに異なる波長域(たとえば、青色波長域(、赤色波長域あるいは赤外波長域))の蛍光の受光強度が受光強度V2として算出されてもよい。あるいは、紙幣90内の各位置における蛍光の複数の波長域別成分に関する受光強度の平均値(換言すれば、グレースケール画像の各画素値)が、紙幣90内の各位置での蛍光の受光強度として用いられてもよい。
この第2実施形態においては、複数の領域における複数の受光強度V1,V2の相対的な関係(差異D2)に基づいて、紙葉類の汚れに関する判定が行われる。したがって、単一の受光強度V1の絶対的な値に基づいて汚れに関する判定が行われる場合に比べて、各汚れ判定装置の個体差の影響、光源の劣化の影響、および温度消光現象の影響を抑制することが可能である。
さて、図7〜図10を再び参照する。上述のように、紙幣90の市場流通期間の増大(ひいては紙幣90の全体における汚れの増大)に応じて、紙幣90内における、印影領域93以外の領域(透かし領域91および肖像衣服領域92等)の蛍光反応は徐々に大きくなる。
また、図7〜図10を参照すると判るように、蛍光反応の増大の程度(詳細には、蛍光の受光強度の増大の程度)は、領域ごとに互いに相違する。図7と図10とを比較すると判るように、たとえば、透かし領域91からの蛍光の受光強度V1の増大の程度は、肖像衣服領域92からの蛍光の受光強度V2の増大の程度よりも大きい。
肖像衣服領域92は、見た目では、大まかに黒っぽい領域(濃色)の領域(黒色領域あるいは濃色領域)である。このような黒色領域(あるいは濃色領域)における蛍光反応の増大の程度は、透かし領域91などの白色領域(あるいは淡色領域)における蛍光反応の増大の程度に比べて小さい。換言すれば、肖像衣服領域92は、蛍光反応によっては汚れが検出されにくい領域である。これは、蛍光発生のために照射された励起光(UV光)のうちの一部の光が黒色部分で吸収され易いことなどに起因して、肖像衣服領域92では蛍光の発生量が低減しているものと推測される。このように、肖像衣服領域92は、透かし領域91よりも汚れが検出されにくい領域であると推定される。換言すれば、透かし領域91と肖像衣服領域92とで、汚れの検出され易さが互いに異なっている。
このような事情等に起因して、図7〜図10に示されるように、紙幣90の市場流通期間の増大(ひいては汚れの増大)に伴って、受光強度V1と受光強度V2との差異D2が徐々に大きくなる(図12も参照)。なお、図12は、汚れの増大に応じて差異D2が増大する様子を簡略化して示す概念図である。図12の左側には紙幣90Aに関する受光強度が示されており、図12の右側には紙幣90Dに関する受光強度が示されている。
具体的には、まず、図7の紙幣90A(図20の左側も参照)では、透かし領域91における受光強度V1と肖像衣服領域92における受光強度V2との差異D2は小さい。その後、市場流通期間の増大等に応じて当該差異は徐々に増大する。その結果、たとえば、図10の紙幣90Dでは、受光強度V1と受光強度V2との差異D2が、図7の紙幣90Aに比べて増大している(図12の右側も参照)。このように、紙幣90の汚れの増大に応じて差異D2が増大する。
このような事情を考慮し、この第2実施形態では、蛍光インク非塗布領域C1(透かし領域91)における受光強度V1と、蛍光インク非塗布領域C2(肖像衣服領域92)における受光強度V2との差異D2に着目する。そして、当該差異D2に基づいて、紙幣90の汚れに関する判定処理(汚れ度合いを判定する処理等)が行われる。具体的には、差異D2が大きいほど紙幣90の汚れ度合いが大きいと判定される。
ここでは、受光強度V1と受光強度V2との当該差異D2として、まず受光強度V1,V2の比α(=V1/V2)を例示する。この比αに基づいて紙葉類の汚れ度合いが判定される。換言すれば、比αが、汚れ度合いを表す指標値として用いられる。詳細には、比αが大きいほど、紙幣90の汚れ度合いが大きい、と判定される。
ここでは更に、差異D2に基づき、紙幣90の汚れ度合いが複数の段階に分けて判定される。
たとえば、比αが閾値H1未満の場合には、紙幣90の汚れ度合いがレベルE4であると判定される。また、比αが閾値H1以上且つ閾値H2未満(ただし、H2>H1)の場合には、紙幣90の汚れ度合いがレベルE3であると判定される。また、比αが閾値H2以上且つ閾値H3未満(ただし、H3>H2)の場合には、紙幣90の汚れ度合いがレベルE2であると判定される。さらに、比αが閾値H3以上の場合には、紙幣90の汚れ度合いがレベルE1であると判定される。なお、レベルE4が最も低い汚れ度合いを表し、レベルE1が最も高い汚れ度合いを表す。
ただし、これに限定されず、比αに基づいて紙葉類の汚れの有無を判定する処理が実行されてもよい。具体的には、比αと所定の基準値との大小関係に基づいて、汚れの有無が判定されてもよい。詳細には、比αが所定の基準値(たとえば、閾値H3あるいは閾値H2)よりも大きい場合には紙幣90は「汚れている」(所定程度以上に汚れている)と判定され、比αが当該所定の基準値よりも小さい場合には紙幣90は「汚れていない」と判定されてもよい。
以上のような態様によれば、第1実施形態と同様に、蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光の受光強度V1に基づいて、紙幣90(紙葉類)の汚れに関する判定処理が行われる。したがって、紙幣90の汚れに関する高精度の判定を実現することが可能である。
また、特に、受光強度V1のみならず、蛍光インク非塗布領域C2からの蛍光の受光強度V2にも基づき、紙幣90(紙葉類)の汚れに関する判定処理が行われている。詳細には、受光強度V1と受光強度V2との差異D2(より詳細には比α)に基づいて、紙幣90(紙葉類)の汚れに関する判定処理が行われている。受光強度V1,V2の差異D2は、(受光強度V1と)基準としての受光強度V2(基準受光強度)との比較結果であり、受光強度V1自体に比べて正規化されている。換言すれば、受光強度V1は、受光強度V2を用いて正規化されている。また、蛍光インク非塗布領域C2は、蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光の受光強度V1を正規化するための基準領域である、とも表現される。
このような判定処理によれば、紙幣90の汚れに関して更に高精度の判定を実現することが可能である。より詳細には、たとえば、汚れ判定装置の個体差の影響を抑制することが可能である。また、光源の劣化の影響を抑制することが可能である。さらに、蛍光の温度消光現象の影響を抑制することが可能である。以下、このような利点について詳細に説明する。
まず、基準となる汚れ判定装置における判定内容について説明する。たとえば、図7の紙幣90Aに関して受光強度V2が「5」であり且つ受光強度V1が「10」であるとし、図10の紙幣90Dに関して受光強度V2が「10」であり且つ受光強度V1が「30」であるとする(図12も参照)。なお、上述のように、受光強度V1は透かし領域91からの蛍光の受光強度(たとえば緑色波長域の受光強度)であり、受光強度V2は肖像衣服領域92からの蛍光の受光強度(たとえば緑色波長域の受光強度)である。
仮に第1実施形態において閾値TH3が「28」に設定される場合、受光強度V1(「30」)は閾値TH3(「28」)よりも大きいことに基づいて、汚れ度合いはレベルE1であると正確に判定される。
しかしながら、汚れ判定装置の個体差に起因して受光強度(V1,V2等)が変動することがある。たとえば、基準となる汚れ判定装置に対して、全般的に若干低めの受光強度を検出する汚れ判定装置が存在し得る。あるいは、逆に、基準となる装置に対して、全般的に若干高めの受光強度を検出する汚れ判定装置が存在し得る。
同様に、光源が劣化すると、発光強度の減少に伴い受光強度も減少する。すなわち、光源の劣化に起因して受光強度が変動することもある。
さらに、蛍光の温度消光現象に起因して、受光強度が変動することもある。蛍光の温度消光現象は、蛍光物質(蛍光インク等)の温度上昇に伴って受光強度Vが減少する(蛍光の発光量が減少する)現象である。なお、逆に、蛍光物質(蛍光インク等)の温度が下降すると受光強度Vが増大する。このように、蛍光物質の温度変化に伴って、受光強度Vが変化し得る。
仮に第1実施形態のように、1つの領域C1の受光強度V1のみに基づく判定が行われる場合には、各汚れ判定装置の個体差の影響等を受ける可能性がある。その場合、適切な閾値を設定することが比較的困難であり、汚れに関する誤判定が生じ得る。
たとえば、汚れ判定装置の個体差の影響等に起因して、図10の紙幣90D(図12の右側も参照)に関して、受光強度V2が「9」に低下し且つ受光強度V1が「27」に低下した状況を想定する(図13の右側も参照)。
このような状況においては、受光強度V1(「27」)は閾値TH3(「28」)よりも小さい。そのため、汚れ度合いは、レベルE1であると正確には判定されず、レベルE2(あるいはE3等)であると誤判定され得る。すなわち、各汚れ判定装置の個体差等の影響を受けて誤判定が生じ得る。また、この場合、第1実施形態に係る判定処理では、受光強度V1(「27」)が次の2種類の装置のいずれによるものかを区別することが困難である。具体的には、標準装置による検出結果であるのか、あるいは、標準装置とは異なる検出レベルを有する装置(標準装置との間に有意の個体差を有する装置)による検出結果であるのかを区別することが困難である。
これに対して、第2実施形態においては、受光強度V1と受光強度V2との差異D2が考慮される。具体的には、受光強度V1と受光強度V2との比αが考慮される。
たとえば、標準装置による蛍光検出が行われる場合(温度消光現象の影響等を受けていない場合)には、図7の紙幣90Aに関する比αは「2」(=10/5)であり、図10の紙幣90Dに関する比αは「3」(=30/10)である(図12も参照)。
一方、非標準装置による蛍光検出が行われる場合(温度消光現象等が発生する場合)、蛍光インク非塗布領域C1における受光強度V1と蛍光インク非塗布領域C2における受光強度V2との双方が変化する。仮に、装置の個体差(あるいは温度消光現象)等に起因して受光強度V1と受光強度V2とが同じ割合で減少し、上述のように、紙幣90D(図10)に関して、受光強度V1が「27」になり且つ受光強度V2が「9」になったとする。このとき、紙幣90Dに関する比αは「3」(=27/9)である。装置の個体差が存在しても(温度消光現象等が発生しても)、比αはほとんど変化しない。同様に、図7の紙幣90Aに関する比αは「2」(=8/4)であり、比αはほとんど変化しない。このように比αは、正規化された指標値として機能する。それ故、適切な閾値THαが第1実施形態よりも容易に設定され得る。例えば、閾値THαは、「2」と「3」との間の適宜の値、たとえば「2.4」に設定される。この場合、図10の紙幣90Dに関する比α(=「3」)が当該閾値THα(=「2.4」)以上であることに基づいて、「汚れている」と適切に判定される。
以上のように、受光強度V1,V2の双方(具体的には、受光強度V1,V2の比α)を用いることによれば、受光強度V1のみで判定する場合よりも、装置の個体差の影響が軽減される。詳細には、受光強度V2をも用いて正規化された指標値である比αを用いることによって、装置の個体差の影響が軽減される。したがって、より正確に、汚れに関する判定処理を実行することが可能である。また、受光強度に関する低下は、光源の劣化および/または温度消光現象等によっても、同様に招来される。受光強度V1,V2の比αを用いることによれば、これらの要因に起因する影響も、受光強度V1のみで判定する場合よりも、同様に低減され得る。
また、上記実施形態においては、受光強度V1と受光強度V2との差異D2は、受光強度V1と受光強度V2との比αとして求められているが、これに限定されない。受光強度V1と受光強度V2との差異D2は、受光強度V1と受光強度V2との差分ΔV2(=V1−V2)として求められてもよい。そして、差分ΔV2に基づいて紙葉類の汚れ度合いを判定する処理が実行されればよい。詳細には、当該差分ΔV2が大きいほど、紙幣90の汚れ度合いが大きいと判定されればよい。
たとえば、差分ΔV2が閾値TH21未満の場合には、紙幣90の汚れ度合いがレベルE4であると判定される。また、差分ΔV2が閾値TH21以上且つ閾値TH22未満(ただし、TH22>TH21)の場合には、紙幣90の汚れ度合いがレベルE3であると判定される。また、差分ΔV2が閾値TH22以上且つ閾値TH23未満(ただし、TH23>TH22)の場合には、紙幣90の汚れ度合いがレベルE2であると判定される。さらに、差分ΔV2が閾値TH23以上の場合には、紙幣90の汚れ度合いがレベルE1と判定される。なお、レベルE4が最も低い汚れ度合いを表し、レベルE1が最も高い汚れ度合いを表す。
このような判定手法においても、各汚れ判定装置の個体差の影響、光源の劣化の影響、および温度消光現象の影響を抑制することが可能である。
たとえば、互いに異なる汚れ度合いを有する2種類の紙幣90(90D、90F)を想定する。一方は、汚れている紙幣90Dであり、他方は、紙幣90Dよりも汚れていない紙幣90Fである。また、紙幣90Dに関する受光強度V1,V2は、標準装置による検出結果であり、紙幣90Fに関する受光強度V1,V2は、標準装置とは異なる検出レベルを有する装置(標準装置よりも全般的に高めに受光強度を検出する装置)による検出結果である。紙幣90Dに関する受光強度V1,V2は、温度消光現象の影響等を有しない状態での検出結果であり、紙幣90Fに関する受光強度V1,V2は、温度消光現象の影響等を有する状態での検出結果であるとも表現される。
このような状況において、紙幣90Dに関して取得された受光強度V1と紙幣90Fに関して取得された受光強度V1とが同じ値になる場合がある。ただし、この場合、紙幣90Dに関して取得された差分ΔV2の方が、紙幣90Fに関して取得された差分ΔV2よりも大きくなる。また、当該差分ΔV2は実際の汚れ度合いを反映して大きくなる。詳細には、実際の汚れ度合いが大きいほど差分ΔV2も大きくなる。したがって、単純に受光強度V1のみに基づいて汚れに関する判定を行う場合よりも、実際の汚れ度合いをより正確に判定することが可能である。
図13は、これらの2つの紙幣90F,90Dに関する検出結果を簡略化して示す概念図である。図13の左側には紙幣90Fに関する受光強度が示されており、図13の右側には紙幣90Dに関する受光強度が示されている。
図13に示されるように、紙幣90D,90Fの双方に関して値「27」の受光強度V1が検出される場合であっても、2つの紙幣90D,90Fに関する受光強度V2の値は、互いに相違する。たとえば、紙幣90Dに関する受光強度V2は値「9」であり、紙幣90Fに関する受光強度V2は値「13」である。そして、紙幣90Dに関する差分ΔV2は「18」であり、紙幣90Fに関する差分ΔV2は「14」である。このように、差分ΔV2は実際の汚れ度合いを反映して大きくなる。この場合、閾値TH23を適宜の値(たとえば「16」)に設定することによって、紙幣90Dの汚れ度合いをレベルE1として正確に判定することが可能である。このように、受光強度V2をも用いて正規化された指標値である差分ΔV2を用いることによって、装置の個体差の影響等が軽減される。
なお、ここでは、差分ΔV2に基づいて紙幣90の汚れ度合いが判定されているが、これに限定されず、差分ΔV2に基づいて紙幣90の汚れの有無が判定されてもよい。換言すれば、受光強度V1と受光強度V2との差異D2が所定程度よりも大きい場合、紙幣90が汚れていると判定されてもよい。詳細には、差分ΔV2と所定の閾値(たとえば、TH23あるいはTH22)との大小関係に基づいて、汚れの有無が判定されてもよい。具体的には、当該差分ΔV2が所定の基準値よりも大きい場合には紙幣90は「汚れている」(所定程度以上に汚れている)と判定され、当該差分ΔV2が当該所定の基準値よりも小さい場合には紙幣90は「汚れていない」と判定されてもよい。当該所定の基準値としては、たとえば、閾値TH23(あるいは閾値TH22)が用いられればよい。
以上のように、受光強度V1,V2(詳細にはその差分ΔV2)を用いることによれば、受光強度V1のみで判定する場合よりも、温度消光現象の影響、光源の劣化の影響、および/または装置の個体差の影響等が軽減される。したがって、汚れに関する判定処理を更に正確に実行することが可能である。
<3.第3実施形態>
第3実施形態は、第2実施形態の変形例である。以下では、第2実施形態との相違点を中心に説明する。
上記第2実施形態では、「紙幣90内」の蛍光インク非塗布領域C2(肖像衣服領域92)における受光強度V2にも基づいて、紙幣90の汚れに関する判定処理が行われている。しかしながら、これに限定されず、「紙幣90外」の蛍光インク非塗布領域C2における受光強度V2にも基づいて、紙幣90の汚れに関する判定処理が行われてもよい。第3実施形態では、このような態様について説明する。以下では、「紙幣90外」の蛍光インク非塗布領域C2として、汚れ判定装置20のラインセンサユニット50内の板状の部材(板状部材とも称する)59に設けられた領域C23(図14参照)を例示する。
図14および図15は、第3実施形態に係るラインセンサユニット50を示す図である。
図14等に示されるように、上部ユニット50a用の部材59と下部ユニット50b用の部材59とが設けられている。上部ユニット50a用の部材59は、間隙39を挟んで上部ユニット50aの集光レンズ53に対向する位置、詳細には下部ユニット50bの上面に設けられている。また、下部ユニット50b用の部材59は、間隙39を挟んで下部ユニット50bの集光レンズ53に対向する位置、詳細には上部ユニット50aの下面に設けられている。
図15に示すように、受光部55は、紙幣90の搬送方向に垂直な方向において、紙幣90の長さ(幅)よりも大きな長さを有する状態で配置されている。部材59は、受光部55の伸延方向における一端付近にて、紙幣90の通過部分よりも外側において集光レンズ53および受光部55に対向する位置に設けられる。領域C23は、このような部材59の表面(ひょうめん)に設けられる(図14も参照)。なお、図14は、紙幣90の搬送方向に垂直な方向における部材59の存在位置でラインセンサユニット50を切断した縦断面図である。
発光部52も、受光部55と同様に、紙幣90の搬送方向に垂直な方向において、紙幣90の長さ(幅)よりも大きな長さを有する。発光部52からの光(特に励起光(UV光))は、紙幣90に対してのみならず領域C23に対しても照射される。そして、発光部52からの励起光の照射に応じて領域C23で発生した蛍光の受光強度V2が、受光部55によって検出される。
領域C23は、蛍光インクが元来は塗布されておらず元来は蛍光反応を有しない領域である。領域C23は、たとえば、非蛍光のインクが塗布された領域、あるいは非蛍光の樹脂等の表面領域などとして形成され、「非蛍光領域」とも称される。なお、領域C23の色は、黒色であることが好ましいが、これに限定されず、白色でもよくその他の色でもよい。
領域C23はラインセンサユニット50内部に設けられており、領域C23に対しては人間の手垢等が付着しにくい。領域C23は、紙幣90内の蛍光インク非塗布領域C2よりも汚れ発生の可能性が低い領域である。したがって、領域C23は、その蛍光反応の経時変化の程度(蛍光の受光強度の経時変化(増大)の程度)が紙幣90内の蛍光インク非塗布領域C1(透かし領域91等)よりも小さな領域である。
この第3実施形態でも、第2実施形態と同様の判定処理等が行われる。ただし、発光部52からの励起光の照射に応じて領域C23で発生した蛍光の受光強度V2を用いる点で第2実施形態と相違する。このような態様によっても、第2実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
また、第3実施形態においては、汚れ判定装置20内の部材59に設けられた領域C23からの蛍光の受光強度V2に基づいて、紙葉類(紙幣90)の汚れに関する判定処理が行われている。したがって、紙葉類の汚れに関する更に高精度の判定を実現することが可能である。
より詳細には、上述のように、紙幣90の外部且つ汚れ判定装置20の内部の領域C23は、紙幣90内の蛍光インク非塗布領域C2よりも汚れ発生の可能性が低い領域である。特に、領域C23は、紙幣90内の領域とは異なり、人の手などによって触れられる機会を殆ど有しない領域である。それ故、領域C23の蛍光反応は殆ど増大せず一定である。したがって、領域C23からの蛍光の受光強度V2は、受光強度の正規化における基準として非常に良好に機能する。換言すれば、領域C23は、蛍光の受光強度に関する基準領域(詳細には、非蛍光の基準領域)として非常に良好に機能する。このような領域C23からの蛍光の受光強度V2をも用いて紙葉類の汚れに関する判定処理が行われるので、紙葉類の汚れに関する更に高精度の判定を実現することが可能である。
また、温度消光減少の影響を抑制するためには、部材59の温度と紙幣90の温度とが同程度になるように管理されることが好ましい。たとえば、処理対象の紙幣90と紙葉類処理装置10との双方を処理前において同じ室内にて一定時間に亘って放置することなどによって、部材59と紙幣90とが同程度の温度を有する状況が形成されればよい。
なお、上記実施形態では、領域C23が受光部55に対向する位置に設けられているが、これに限定されない。たとえば、領域C23は、受光センサの読取範囲(当該領域C23からの蛍光を受光部55が受光可能な範囲)内の他の位置に設けられてもよい。より詳細には、領域C23は、上述の位置(図14および図15等)よりも搬送方向における下流側あるいは上流側に若干ずれた位置等に設けられてもよい。
<4.第4実施形態>
第4実施形態および第5実施形態は、第2実施形態および第3実施形態の変形例である。以下では、第2実施形態等との相違点を中心に説明する。
上記第2実施形態および第3実施形態においては、蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光の受光強度V1と、蛍光インク非塗布領域C2からの蛍光の受光強度V2とに基づいて、汚れに関する判定が行われている。
一方、第4実施形態および第5実施形態においては、蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光の受光強度V1と、「蛍光反応基準領域C3」(次述)からの蛍光の受光強度V3とに基づいて、汚れに関する判定が行われる態様について説明する。
ここで、「蛍光反応基準領域C3」は、元来は一定程度の蛍光反応を示す基準領域である。第4実施形態では、紙幣90内の蛍光反応基準領域C3(領域C1とは異なる領域)を例示し、第5実施形態では、紙幣90外の蛍光反応基準領域C3を例示する。
第4実施形態においては、蛍光反応基準領域C3として印影領域93を例示する。
上述のように、印影領域93は、元来は蛍光インク(たとえば赤色の蛍光インク)が塗布されていた領域であり、元来は一定程度の蛍光反応を示す基準領域である。たとえば、図7の紙幣90A内の印影領域93においては所定程度よりも大きな蛍光反応が検出される。図7では、紙幣90A内の印影領域93からの蛍光の受光強度V3は、紙幣90A内の透かし領域91からの蛍光の受光強度V1よりも(所定程度以上に)大きいこと、などが示されている。特に、印影領域93からの蛍光の赤色波長域成分は他の領域(透かし領域91等)からの蛍光の赤色波長域成分(および緑色波長域成分等)よりも非常に大きいこと、などが示されている。
また、印影領域93においては、元来塗布されていた蛍光インクが、紙幣90の市場流通期間の経過等に伴って徐々に損耗していく。その結果、印影領域93からの蛍光の受光強度V3(特に赤色波長域成分)は、市場での紙幣90の流通期間の経過等に伴って徐々に低下していく(図7〜図10参照)。
一方、上述のように、透かし領域91などの蛍光インク非塗布領域C1においては、紙幣90の市場流通期間の経過等に伴い、人間の手垢等の付着によって汚れの度合いが徐々に大きくなる傾向が存在する。
すなわち、紙幣90の市場流通期間の経過等に伴って、蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光の受光強度V1は徐々に増大し、逆に、蛍光反応基準領域C3からの蛍光の受光強度V3は徐々に減少する。詳細には、受光強度V3よりも小さかった受光強度V1が徐々に増大し、受光強度V1よりも大きかった受光強度V3が徐々に減少する。この結果、紙幣90の市場流通期間の経過等に伴って、受光強度V1との受光強度V3との差異D3は徐々に小さくなる(図16参照)。図16は、紙幣90の市場流通期間の経過等に伴って、差異D3が減少していく様子を示す概念図である。図16の左側には紙幣90Aに関する受光強度が示されており、図16の右側には紙幣90Dに関する受光強度が示されている。
なお、蛍光反応基準領域C3(印影領域93)からの蛍光の受光強度V3はほとんど変化(低減)しないこともある。ただし、この場合でも、蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光の受光強度V1の増大に伴って、受光強度V1との受光強度V3との差異D3は徐々に小さくなる。
上述のような性質を利用し、第4実施形態に係る汚れ判定装置20は、受光強度V1との受光強度V3との差異D3に基づいて、紙幣90の汚れに関して判定する。具体的には、汚れ判定装置20は、差異D3に基づいて紙幣90の汚れ度合いを判定する。詳細には、差異D3が小さいほど紙幣90の汚れ度合いが大きいと判定される。より詳細には、差異D3(詳細には、値βあるいは値ΔV3)と1又は複数の閾値との大小関係に基づき、紙幣90の汚れ度合いが複数の段階(たとえば、レベルE1〜E4)に分けて判定される。
ただし、これに限定されず、紙幣90の汚れの有無(紙幣90が汚れているか否か)が、差異D3に基づいて判定されてもよい。詳細には、受光強度V1と受光強度V3との差異D3が所定程度よりも小さい場合、紙幣90が汚れている、と判定されてもよい。
ここにおいて、受光強度V1と受光強度V3との差異D3は、たとえば、受光強度V1と受光強度V3との差分ΔV3であってもよく、受光強度V1と受光強度V3との比βなどであってもよい。詳細には、差分ΔV3は、受光強度V3から受光強度V1を差し引いた差分値(ΔV3=V3−V1)であり、比βは、受光強度V1に対する受光強度V3の比の値(β=V3/V1)である。このように、たとえば、値βあるいは値ΔV3が、汚れ度合いを表す指標値として用いられればよい。
以上のような態様によれば、第1実施形態〜第3実施形態と同様に、蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光の受光強度V1に基づいて、紙幣90(紙葉類)の汚れに関する判定処理が行われている。したがって、紙幣90の汚れに関する高精度の判定を実現することが可能である。
また、特に、受光強度V1のみならず、同じ紙幣90内の別の領域(蛍光反応基準領域C3)からの蛍光の受光強度V3にも基づき、紙幣90(紙葉類)の汚れに関する判定処理が行われている。詳細には、受光強度V1と受光強度V3との差異D3に基づいて、紙幣90(紙葉類)の汚れに関する判定処理が行われる。受光強度V1,V3の差異D3は、(受光強度V1と)基準としての受光強度V3(基準受光強度)との比較結果であり、受光強度V1自体に比べて正規化されている。換言すれば、受光強度V1は、受光強度V3を用いて正規化されている。また、蛍光反応基準領域C3は、蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光の受光強度V1を正規化するための基準領域である。
なお、受光強度V3が経時的にほぼ変化しない場合には、受光強度V3および蛍光反応基準領域C3は正規化のための基準として特に有効に機能する。また、受光強度V3が経時的に減少していく場合であっても、受光強度V3は、受光強度V1の検出領域(蛍光インク非塗布領域C1)と同じ紙幣90内の蛍光反応基準領域C3からの蛍光の受光強度である。したがって、受光強度V3および蛍光反応基準領域C3は正規化のための基準として有効に機能する。
このような判定処理によれば、受光強度V1のみを用いて判定する場合よりも、紙幣90の汚れに関して更に高精度の判定を実現することが可能である。より詳細には、たとえば、汚れ判定装置の個体差の影響を抑制することが可能であり、光源の劣化の影響を抑制することが可能である。また、蛍光の温度消光現象の影響を抑制することも可能である。
さらに、この実施形態においては、紙幣90全体の汚れ度合いの増大に伴って、受光強度V3が徐々に減少し且つ受光強度V1が徐々に増大する。詳細には、受光強度V1よりも大きかった受光強度V3が徐々に減少し、受光強度V3よりも小さかった受光強度V1が徐々に増大する。このように受光強度V1と受光強度V3とが逆向きに変化する。この場合、受光強度V1と受光強度V3との差異D3は、一般的に差異D2よりも大きく変化する。したがって、第2実施形態に比べて、紙幣90の汚れの変化を感度良く把握することが可能である。
なお、受光強度V3は、たとえば、印影領域93の全領域(2次元的(面的)な拡がりを有する全領域)に亘る複数の位置における受光強度の平均値(あるいは最大値)として算出されればよい。ただし、これに限定されず、たとえば、印影領域93の一部の領域(2次元状領域あるいは1次元状領域)内の複数の位置での受光強度の平均値(あるいは最大値)として受光強度V3が算出されてもよい。
また、紙幣90内の各位置での蛍光の受光強度としては、たとえば、蛍光の複数の波長域別成分のうちの一の波長域成分(たとえば、緑色の波長域成分、あるいは赤色の波長域成分)のみに関する受光強度が用いられる。
より詳細には、蛍光インク非塗布領域C1に関しては緑色波長域の蛍光の受光強度(図7等の曲線Lg参照)が受光強度V1として算出され、蛍光反応基準領域C3に関しては赤色波長域の蛍光の受光強度(図7等の曲線Lr参照)が受光強度V2として算出される。換言すれば、励起光の照射に応じた蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光のうち緑色の特定波長域の蛍光の受光強度V1と、励起光の照射に応じた蛍光反応基準領域C3からの蛍光のうち赤色の特定波長域の蛍光の受光強度V3とが用いられる。このように各領域C1,C3に関して、それぞれ適した互いに異なる特定波長域の蛍光の受光強度が求められることが好ましい。これによれば、蛍光インク非塗布領域C1と蛍光反応基準領域C3とで互いに異なる波長域の蛍光の受光強度が検出されるので、領域ごとの特徴的な波長域の蛍光を考慮し、紙葉類の汚れに関する更に高精度の判定を実現することが可能である。
ただし、これに限定されず、各領域C1,C3に関して、蛍光の同じ特定波長域(たとえば、いずれも赤色の特定波長域(あるいは、いずれも緑色の特定波長域))の受光強度がそれぞれ受光強度V1,V3として用いられてもよい。この場合、蛍光反応基準領域C3にて経時的に減少していく特定波長域成分が用いられればよい。たとえば、赤色の蛍光インクが元来塗布されていた蛍光反応基準領域C3(印影領域93)においては、上述のように、赤色波長域成分が経時的に減少していく。この場合には、領域C3からの蛍光のうち赤色波長域の蛍光の受光強度V3と、領域C1からの蛍光のうち赤色波長域の蛍光の受光強度V1とが用いられればよい。同様に、蛍光反応基準領域C3にて緑色の蛍光インクが元来塗布されていた場合には、領域C3からの蛍光のうち緑色波長域の蛍光の受光強度V3と領域C1からの蛍光のうち緑色波長域の蛍光の受光強度V1とが用いられればよい。
あるいは、紙幣90内の各位置での蛍光の受光強度として、当該蛍光の複数の波長域別成分に関する受光強度の平均値(換言すれば、グレースケール画像の各画素値)が用いられてもよい。
また、上記実施形態においては、紙幣90内において、蛍光インクが元来塗布されている領域として、印影領域93のみが存在しているが、これに限定されない。たとえば、上述のように、蛍光インクが元来塗布されている領域として、印影領域93以外の他の領域が存在してもよい。その場合、当該他の領域が蛍光反応基準領域C3として利用されてもよく、あるいは印影領域93が蛍光反応基準領域C3として利用されてもよい。
<5.第5実施形態>
第5実施形態は、第4実施形態の変形例である。以下では、第4実施形態との相違点を中心に説明する。
上記第4実施形態では、「紙幣90内」の蛍光反応基準領域C3(具体的には、印影領域93)における受光強度V3にも基づいて、紙幣90の汚れに関する判定処理が行われている。しかしながら、これに限定されず、「紙幣90外」の蛍光反応基準領域C3における受光強度V3にも基づいて、紙幣90の汚れに関する判定処理が行われてもよい。第5実施形態では、このような態様について説明する。以下では、「紙幣90外」の蛍光反応基準領域C3として、ラインセンサユニット50の蛍光板59B内の蛍光領域C35(図17および図18参照)を例示する。
蛍光板59Bは、蛍光物質が塗布等された板状の部材であり、元来は一定程度の蛍光反応を示す部材である。蛍光領域C35は、蛍光板59B内の全部または一部の表面(ひょうめん)に設けられた領域であり、元来、一定程度の蛍光反応を示す基準領域である。すなわち、蛍光領域C35は、蛍光反応基準領域C3の一つである。
たとえば、蛍光領域C35は、励起光の照射に応じて特定波長域の蛍光(たとえば、赤色の蛍光、緑色の蛍光、あるいは青色の蛍光等)を発する領域である。なお、蛍光領域C35は、損耗を避けることが可能な場所に設けられることが好ましい。ここでは、蛍光領域C35は、蛍光板59Bの表面(ひょうめん)に設けられているが、これに限定されず、蛍光領域C35は、蛍光板59B以外の部材の表面(ひょうめん)において蛍光インクが塗布された領域等であってもよい。
蛍光領域C35は、第3実施形態に係る領域C23と同様の位置に設けられればよい。ただし、図18においては、蛍光領域C35は、受光部55の伸延方向において領域C23(図15参照)とは反対側の端部付近に設けられている。これに限定されず、蛍光領域C35は、受光部55の伸延方向において領域C23と同じ側の端部付近に設けられてもよい。
図17および図18に示されるように、発光部52からの光は、紙幣90に対してのみならず蛍光領域C35に対しても照射され得る。図18に示されるように、受光部55は、紙幣90の搬送方向に垂直な方向において、紙幣90の長さ(幅)よりも大きな長さを有する状態で配置されている。領域C35は、受光部55の伸延方向における一端付近にて、当該受光部55に対向するように配置されており、紙幣90の通過部分よりも外側に設けられている。
このような領域C35に対しても、紙幣90と同様に励起光(UV光)が照射され、領域C35で発生した蛍光の受光強度V3が受光部55によって検出される。
第5実施形態では、発光部52からの励起光の照射に応じて領域C35で発生した蛍光の受光強度V3を用いて、第4実施形態と同様の判定処理等が行われる。これによっても、第4実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
特に、第5実施形態においては、汚れ判定装置内の部材59に設けられた蛍光領域C35からの蛍光の受光強度に基づいて、紙幣90(紙葉類)の汚れに関する判定処理が行われている。したがって、紙葉類の汚れに関する更に高精度の判定を実現することが可能である。より詳細には、蛍光領域C35は、汚れ判定装置20内部に存在する領域であり、紙幣90内の蛍光反応基準領域C3よりも損耗の発生可能性が低い領域である。それ故、蛍光領域C35からの蛍光の受光強度V3は、受光強度の正規化における基準として非常に良好に機能する。換言すれば、蛍光領域C35は、蛍光の受光強度に関する基準領域(詳細には、一定程度の蛍光反応を示す基準領域)として非常に良好に機能する。このような蛍光領域C35からの蛍光の受光強度V3をも用いて紙葉類の汚れに関する判定処理が行われるので、紙葉類の汚れに関する更に高精度の判定を実現することが可能である。
また、紙幣90の外部の蛍光領域C35からの蛍光の受光強度V3を利用することによれば、紙幣90内(励起光照射面内)に蛍光インクが塗布されていない場合でも、紙幣90の汚れに関する判定を高精度に実現することが可能である。
なお、上記実施形態では、蛍光領域C35が受光部55に対向する位置に設けられているが、これに限定されない。たとえば、蛍光領域C35は、受光センサの読取範囲(当該蛍光領域C35からの蛍光を受光部55が受光可能な範囲)内の他の位置に設けられてもよい。より詳細には、蛍光領域C35は、上述の位置(図17および図18等)よりも搬送方向における下流側あるいは上流側に若干ずれた位置等に設けられてもよい。
<6.第6実施形態>
上記第1実施形態においては、蛍光インク非塗布領域C1(透かし領域91等)の受光強度V1に関する1つの指標値に基づいて、紙幣90の汚れに関する判定処理が行われているが、これに限定されない。受光強度V1に関する波長域別の2つの指標値(波長域別の受光強度)に基づいて、紙幣90の汚れに関する判定処理が行われてもよい。例えば、蛍光インク非塗布領域C1に関する或る波長域の蛍光の受光強度V11と、同じ領域C1に関する別の波長域の蛍光の受光強度V12との差異D6に基づいて、紙幣90の汚れに関する判定処理が行われてもよい。第6実施形態では、このような態様について説明する。
図7〜図10に示されるように、紙幣90の市場流通期間の増大(ひいては汚れの増大)に伴って、蛍光インク非塗布領域C1(たとえば透かし領域91)に関して受光強度V11と受光強度V12との差異D6が徐々に大きくなる。
図7の紙幣90Aでは、透かし領域91における緑色波長域の蛍光の受光強度V11(曲線Lg参照)と当該透かし領域91における赤色波長域の蛍光の受光強度V12(曲線Lr参照)との差異D6は小さい(図19も参照)。図19は、汚れの増大に応じて差異D6が増大する様子を簡略化して示す概念図である。なお、図19では、透かし領域91からの蛍光のうち2つの波長域の蛍光の受光強度V11,V12が、図示の都合上、左右方向において異なる位置に示されている。当該2つの受光強度V11,V12は、実際には、透かし領域91内の同じ位置からの蛍光の受光強度であることが好ましい。ただし、これに限定されず、当該2つの受光強度V11,V12は、透かし領域91内の互いに異なる位置からの蛍光の受光強度であってもよい。
その後、市場流通期間の増大等に応じて当該差異D6は徐々に増大する。その結果、たとえば、図10の紙幣90Dでは、透かし領域91における、受光強度V11(曲線Lg参照)と受光強度V12(曲線Lr参照)との当該差異D6が、図7の紙幣90Aに比べて増大している(図19も参照)。すなわち、蛍光の受光強度の増大の程度は、波長域成分ごとに互いに相違する。詳細には、透かし領域91における緑色波長域の蛍光の受光強度V11の増大の程度は、当該透かし領域91における赤色波長域の蛍光の受光強度V12の増大の程度よりも大きい。
このような性質を利用し、第6実施形態に係る汚れ判定装置20は、受光強度V11との受光強度V12との差異D6が大きいほど紙幣90の汚れ度合いが大きい、と判定する。ただし、これに限定されず、受光強度V11と受光強度V12との差異D6が所定程度よりも大きい場合、紙幣90が汚れている、と判定されてもよい。
ここにおいて、受光強度V11と受光強度V12との差異D6は、たとえば、受光強度V11と受光強度V12との比γである。当該比γは、たとえば、受光強度V12に対する受光強度V11の比の値(γ=V11/V12)である。そして、比γが大きいほど紙幣90の汚れ度合いが大きいと判定される。より詳細には、比γと1又は複数の閾値との大小関係に基づいて、紙幣90の汚れ度合いが複数の段階に分類される。あるいは、比γと所定の基準値との大小関係に基づいて、紙幣90の汚れの有無(紙幣90が汚れているか否か)が判定されてもよい。
また、受光強度V11と受光強度V12との差異D6は、たとえば、受光強度V11と受光強度V12との差分ΔV6であってもよい。差分ΔV6は、たとえば、受光強度V11から受光強度V12を差し引いた差分値(ΔV6=V11−V12)である。そして、差分ΔV6が大きいほど紙幣90の汚れ度合いが大きいと判定される。詳細には、差分ΔV6と1又は複数の閾値との大小関係に基づいて、紙幣90の汚れ度合いが複数の段階に分類される。あるいは、差分ΔV6と所定の基準値との大小関係に基づいて、紙幣90の汚れの有無が判定されてもよい。
なお、受光強度V11,V12は、たとえば、透かし領域91の全領域(2次元的(面的)な拡がりを有する全領域)に亘る複数の位置における受光強度の平均値(あるいは最大値)として算出されればよい。ただし、これに限定されず、たとえば、透かし領域91の一部の領域(2次元状領域あるいは1次元状領域)内の複数の位置での受光強度の平均値(あるいは最大値)として受光強度V1,V12が算出されてもよい。
以上のように第6実施形態においては、他の実施形態と同様に、蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光の受光強度V1に基づいて、紙幣90(紙葉類)の汚れに関する判定処理が行われている。したがって、上述の比較例に係る技術に比べて、紙幣90の汚れに関する高精度の判定を実現することが可能である。
特に上記第6実施形態の判定処理においては、透かし領域91からの蛍光のうち一の特定波長域の光の受光強度V11と、透かし領域91からの蛍光のうち別の波長域の光の受光強度V12とが用いられている。詳細には、受光強度V11と受光強度V12との差異D6が用いられている。換言すれば、受光強度V11が(同じ紙幣90且つ同じ領域91からの)受光強度V12を用いて正規化されている。これによれば、単一の受光強度V11のみを用いて判定する場合よりも、紙幣90の汚れに関して更に高精度の判定を実現することが可能である。具体的には、受光強度V11のみで判定する場合よりも、装置の個体差に起因する影響が軽減され得る。また、光源の劣化および/または温度消光現象の影響も同様に軽減され得る。
<7.第7実施形態>
第7実施形態は、第6実施形態等の変形例である。次述するように、第6実施形態の思想と第2実施形態(あるいは第3実施形態)の思想とを組み合わせてもよい。
第7実施形態の判定処理においては、一の蛍光インク非塗布領域C1(透かし領域91等)に関する受光強度V11,V12のみならず、別の蛍光インク非塗布領域C1(肖像衣服領域92等)に関する受光強度V21,V22(後述)もが考慮される。すなわち、第7実施形態では、第2および第3実施形態等と同様に、蛍光インク非塗布領域C1以外の蛍光インク非塗布領域C2(肖像衣服領域92等)に関する受光強度もが考慮される。以下、このような態様について説明する。
図7〜図10に示されるように、紙幣90の市場流通期間の増大(ひいては汚れの増大)に伴って、蛍光インク非塗布領域C1(たとえば透かし領域91)に関して受光強度V11と受光強度V12との差異D71が徐々に大きくなる(図20も参照)。なお、図20は、汚れの増大に応じて差異D71,D72(後述)等が変化する様子を簡略化して示す概念図である。
まず、図7の紙幣90A(図20の左側も参照)では、透かし領域91における緑色波長域の蛍光の受光強度V11(曲線Lg参照)と当該透かし領域91における赤色波長域の蛍光の受光強度V12(曲線Lr参照)との差異D71は小さい。その後、市場流通期間の増大等に応じて当該差異は徐々に増大する。その結果、たとえば、図10の紙幣90Dでは、受光強度V11(曲線Lg参照)と受光強度V12(曲線Lr参照)との差異D71が、図7の紙幣90Aに比べて増大している(図20の右側も参照)。
また、同様に、紙幣90の市場流通期間の増大(ひいては汚れの増大)に伴って、別の蛍光インク非塗布領域C2(たとえば肖像衣服領域92)に関しても受光強度V21と受光強度V22との差異D72が徐々に増大する(図20も参照)。受光強度V21は、肖像衣服領域92における緑色波長域の蛍光の受光強度(曲線Lg参照)であり、受光強度V22は、肖像衣服領域92における赤色波長域の蛍光の受光強度(曲線Lr参照)である。
このように、紙幣90の汚れの増大に応じて、差異D71は増大し且つ差異D72も増大する。換言すれば、各領域C1,C2からの蛍光の受光強度(たとえば複数の波長域に関する受光強度の平均値)が大きくなるほど、各領域C1,C2において緑色波長域の受光強度と赤色波長域の受光強度との差異が大きくなる。
ただし、緑色波長域の受光強度と赤色波長域の受光強度との差異の増大の程度は、透かし領域91と肖像衣服領域92とで互いに異なっている。具体的には、透かし領域91からの蛍光の2つの波長域成分の差異D71の増大の程度は、肖像衣服領域92からの蛍光の当該2つの波長域成分の差異D72の増大の程度よりも大きくなる。すなわち、透かし領域91に関する差異D71は、肖像衣服領域92に関する差異D72よりも大きく増大する。換言すれば、紙幣90の汚れの増大に応じて、差異D71と差異D72との差異D7が増大する。
このような性質を利用し、第7実施形態に係る汚れ判定装置20は、差異D71と差異D72との差異D7が大きいほど紙幣90の汚れ度合いが大きい、と判定する。ただし、これに限定されず、差異D7が所定程度よりも大きい場合、紙幣90が汚れている、と判定されてもよい。
ここにおいて、たとえば、差異D71は受光強度V11と受光強度V12との比γ71であり且つ差異D72は受光強度V21と受光強度V22との比γ72である。より詳細には、比γ71は、受光強度V12に対する受光強度V11の比の値(γ71=V11/V12)であり、且つ比γ72は、受光強度V22に対する受光強度V21の比の値(γ72=V21/V22)である。また、差異D7は、比γ71と比γ72との比γ7であり、より詳細には、比γ72に対する比γ71の比の値(γ7=γ71/γ72)である。
あるいは、差異D71は受光強度V11と受光強度V12との差分ΔV71であり且つ差異D72は受光強度V21と受光強度V22との差分ΔV72であってもよい。より詳細には、差分ΔV71は、受光強度V11から受光強度V12を差し引いた差分(ΔV71=V11−V12)であり、且つ差分ΔV72は、受光強度V21から受光強度V22を差し引いた差分(ΔV72=V21−V22)であってもよい。また、差異D7は、差分ΔV71と差分ΔV72との差分ΔV7であってもよい。より詳細には、差分ΔV7は、差分ΔV71から差分ΔV72を差し引いた値(ΔV7=ΔV71−ΔV72)であってもよい。
なお、受光強度V11,V12は、第6実施形態と同様に算出されればよい。また、受光強度V21,V22も同様である。たとえば、受光強度V21,V22は、肖像衣服領域92の全領域(2次元的(面的)な拡がりを有する全領域)に亘る複数の位置における受光強度の平均値(あるいは最大値)として算出されればよい。ただし、これに限定されず、肖像衣服領域92の一部の領域(2次元状領域あるいは1次元状領域)内の複数の位置での受光強度の平均値(あるいは最大値)として受光強度V21,V22が算出されてもよい。
以上のように第7実施形態においては、他の実施形態と同様に、蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光の受光強度V1に基づいて、紙幣90(紙葉類)の汚れに関する判定処理が行われている。したがって、上述の比較例に係る技術に比べて、紙幣90の汚れに関する高精度の判定を実現することが可能である。
特に、第7実施形態の判定処理においては、透かし領域91からの蛍光のうち2種類の特定波長域の光の受光強度V11,V12と、肖像衣服領域92からの蛍光のうち2種類の特定波長域の光の受光強度V21,V22とが用いられている。詳細には、差異D71と差異D72との差異D7が用いられている。差異D71は、受光強度V11を受光強度V12によって正規化した差異であり、差異D72は、受光強度V21を、受光強度V22を用いて正規化した差異である。そして、差異D7は、差異D71を差異D72によって正規化した差異である。
このような判定処理によれば、透かし領域91からの単一の受光強度V1(たとえばV11)のみで判定する場合よりも、紙幣90の汚れに関して更に高精度の判定を実現することが可能である。また、領域91,92からの各単一の受光強度V1,V2のみ(たとえばV11,V21のみ)で判定する場合よりも、紙幣90の汚れに関して更に高精度の判定を実現することが可能である。具体的には、装置の個体差に起因する影響、光源の劣化の影響、および/または温度消光現象の影響が軽減され得る。
なお、上記実施形態では、第2実施形態と同様に肖像衣服領域92からの蛍光の受光強度V2が利用されているが、これに代えて、第3実施形態と同様に、領域C23からの蛍光の受光強度V2が利用されてもよい。
<8.第8実施形態>
第8実施形態は、第6実施形態等の変形例である。次述するように、第6実施形態の思想と第4実施形態(あるいは第5実施形態)の思想とを組み合わせてもよい。
第8実施形態においては、蛍光インク非塗布領域C1(透かし領域91)に関する受光強度V11,V12のみならず、蛍光反応基準領域C3(印影領域93)に関する受光強度V31,V32(後述)にも基づいて紙幣90の汚れに関する判定が行われる。すなわち、第8実施形態では、第4および第5実施形態等と同様に、蛍光反応基準領域C3(印影領域93等)に関する受光強度もが考慮される。以下、このような態様について説明する。
図7〜図10および図21を参照する。紙幣90の市場流通期間の増大(ひいては汚れの増大)に伴って、蛍光インク非塗布領域C1(透かし領域91)に関しては、差異D81が徐々に大きくなる。たとえば、差異D81は、透かし領域91における、受光強度V11(曲線Lg参照)と受光強度V12(曲線Lr参照)との差異である。換言すれば、差異D81は、透かし領域91における緑色波長域の蛍光の受光強度V11と当該透かし領域91における赤色波長域の蛍光の受光強度V12との差異である。なお、図21は、汚れの増大に応じて差異D81,D83(後述)等が変化する様子を簡略化して示す概念図である。
一方、蛍光反応基準領域C3(印影領域93)に関しては、紙幣90の市場流通期間の増大(ひいては汚れの増大)に伴って、差異D83が徐々に小さくなる(図21も参照)。たとえば、差異D83は、印影領域93における、受光強度V31(曲線Lg参照)と受光強度V32(曲線Lr参照)との差異である。換言すれば、差異D83は、印影領域93における緑色波長域の蛍光の受光強度V31と当該印影領域93における赤色波長域の蛍光の受光強度V32との差異である。
詳細には、図7の紙幣90Aでは、差異D83は差異D81よりも非常に大きい。その後、市場流通期間の増大等に応じて、差異D83は徐々に減少するとともに差異D81は徐々に増大する。その結果、図21にも示されるように、紙幣90D(図10)における差異D83は、紙幣90Dにおける差異D81に近づく。
このように、紙幣90の汚れの増大に応じて、差異D81よりも大きかった差異D83が徐々に減少し、差異D83よりも小さかった差異D81が徐々に増大する。換言すれば、差異D81と差異D83との差異D8は減少する。
このような性質を利用し、第8実施形態に係る汚れ判定装置20は、差異D81と差異D83との差異D8が小さいほど紙幣90の汚れ度合いが大きい、と判定する。ただし、これに限定されず、差異D8が所定程度よりも小さい場合、紙幣90が汚れている、と判定されてもよい。
ここにおいて、たとえば、差異D81は受光強度V11と受光強度V12との比γ81であり且つ差異D83は受光強度V31と受光強度V32との比γ83である。より詳細には、比γ81は、受光強度V12に対する受光強度V11の比の値(γ81=V11/V12)であり、且つ比γ83は、受光強度V32に対する受光強度V31の比の値(γ83=V31/V32)である。また、差異D8は、比γ81と比γ83の比γ8であり、より詳細には、比γ81に対する比γ83の比の値(γ8=γ83/γ81)である。
あるいは、差異D81は受光強度V11と受光強度V12との差分ΔV81であり且つ差異D83は受光強度V31と受光強度V32との差分ΔV83であってもよい。より詳細には、差分ΔV81は、受光強度V11から受光強度V12を差し引いた値(ΔV81=V11−V12)であり、且つ差分ΔV83は、受光強度V31から受光強度V32を差し引いた値(ΔV83=V31−V32)であってもよい。また、差異D8は、差分ΔV81と差分ΔV83との差分であってもよい。より詳細には、差異D8は、差分ΔV83から差分ΔV81を差し引いた差分ΔV8(ΔV8=ΔV83−ΔV81)であってもよい。
なお、受光強度V11,V12は、第6実施形態と同様に算出されればよい。また、受光強度V31,V32も同様である。たとえば、受光強度V31,V32は、印影領域93の全領域(2次元的(面的)な拡がりを有する全領域)に亘る複数の位置における受光強度の平均値(あるいは最大値)として算出されればよい。ただし、これに限定されず、たとえば、印影領域93の一部の領域(2次元状領域あるいは1次元状領域)内の複数の位置での受光強度の平均値(あるいは最大値)として受光強度V31,V32が算出されてもよい。
以上のように第8実施形態においては、他の実施形態と同様に、蛍光インク非塗布領域C1からの蛍光の受光強度V1に基づいて、紙幣90(紙葉類)の汚れに関する判定処理が行われている。したがって、上述の比較例に係る技術に比べて、紙幣90の汚れに関する高精度の判定を実現することが可能である。
特に、第8実施形態の判定処理においては、透かし領域91からの蛍光のうち2種類の特定波長域の光の受光強度V11,V12と、印影領域93からの蛍光のうち2種類の特定波長域の光の受光強度V31,V32とが用いられている。詳細には、差異D81と差異D83との差異D8が用いられている。差異D81は、受光強度V11を受光強度V12によって正規化した差異であり、差異D83は、受光強度V31を受光強度V32を用いて正規化した差異である。そして、差異D8は、差異D81を差異D83によって更に正規化した差異である。
このような判定処理によれば、透かし領域91からの単一の受光強度V1(たとえばV11)のみで判定する場合よりも、紙幣90の汚れに関して更に高精度の判定を実現することが可能である。また、領域91,93からの各単一の受光強度V1,V3のみ(たとえば、V11,V31のみ)で判定する場合よりも、紙幣90の汚れに関して更に高精度の判定を実現することが可能である。具体的には、装置の個体差に起因する影響、光源の劣化の影響、および/または温度消光現象の影響が軽減され得る。
また、紙幣90の市場流通期間の増大(紙幣90全体の汚れ度合いの増大等)に伴って、差異D83が徐々に減少し且つ差異D81が徐々に増大する。詳細には、差異D81よりも大きかった差異D83が徐々に減少し、差異D83よりも小さかった差異D81が徐々に増大する。このように差異D81と差異D83とが逆向きに変化する。この場合、差異D81と差異D83との差異D8は、一般的に差異D7よりも大きく変化する。したがって、第7実施形態に比べて、紙幣90の汚れの変化を感度良く把握することが可能である。
なお、上記実施形態では、第4実施形態と同様に印影領域93からの蛍光の受光強度V3が利用されている。しかしながら、これに代えて、第5実施形態と同様に、蛍光領域C35からの蛍光の受光強度V3が利用されてもよい。
<9.その他>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
たとえば、上記各実施形態に係る思想を適宜組み合わせてもよい。たとえば、第2実施形態と第4実施形態とを組み合わせて、差異D2と差異D3との双方が考慮されてもよい。より具体的には、差異D2が所定の基準よりも大きく且つ差異D3が所定の基準よりも小さいときに、「汚れている」と判定されてもよい。なお、同様に、第3実施形態と第5実施形態とを組み合わせてもよく、第7実施形態と第8実施形態とを組み合わせてもよい。複数の種類の差異に基づく判定処理によれば、判定精度をさらに向上させることが可能である。
また、上記各実施形態においては、「差分」と「比」との一方に基づいて汚れが判定されているが、これに限定されず、「差分」と「比」との双方に基づいて汚れが判定されてもよい。より詳細には、差分に関する条件と比に関する条件との双方が成立したときに、「汚れている」と判定されてもよい。あるいは、差分に関する条件と比に関する条件との少なくとも一方が成立したときに、「汚れている」と判定されてもよい。
また、上記各実施形態において、紙幣90の汚れ度合いが判定されるとともに紙幣90が汚れているか否かもが判定されるようにしてもよい。たとえば、紙幣90の汚れ度合いがレベルE1であると判定されるときには紙幣90が「汚れている」と更に判定され、紙幣90の汚れ度合いがレベルE2〜E4であると判定されるときには紙幣90が「汚れていない」と更に判定されてもよい。
また、上記各実施形態等においては、白色光源あるいはUV光源からの光が照射され、異なる特定波長域の光を選択的に透過させるバンドパスフィルタを用いて、各受光素子で各特定波長域の光が受光されているが、これに限定されない。
たとえば、白色光源に代えて波長域別の複数の光源(複数の色別光源)を設けるとともに当該複数の光源を交番点灯させることによっても、可視光画像データ(複数の波長域ごとの画像データ(カラー画像データ等))を取得することができる。
具体的には、当該複数の光源を時分割で順次に発光させ、各受光素子が、互いに異なる複数の光源からの光を時分割で順次に受光するようにしてもよい。詳細には、青色光源、緑色光源、赤色光源、赤外光光源の4つの光源が時分割で(微小時間間隔で)順次に発光する。なお、青色光源は、概ね400nm〜500nmの波長域の光を発する光源であり、緑色光源は、概ね500nm〜600nmの波長域の光を発する光源であり、赤色光源は、概ね600nm〜700nmの波長域の光を発する光源である。また、赤外光光源は、概ね700nm〜1000nmの波長域の光を発する光源である。より詳細には、当該4つの光源が各走査ラインに関する1周期の走査時間を4分割した周期(1/4周期)で順次に発光する。そして、バンドパスフィルタを有しない各受光素子が、互いに異なる複数の光源からの光(紙葉類からの反射光)を時分割で順次に受光する。各受光素子は、各色の波長域の光を1/4周期ごとに受光し、走査ライン内の各画素について各色の画素値(受光強度)を検出する。そして、このような動作が複数の走査ラインについて繰り返されることによって、紙幣90に関する可視光画像データが取得される。
あるいは、励起光光源として波長域別の複数の光源(たとえば、互いに異なる波長域のUV光を発する複数のUV光源)が設けられてもよい。そして、当該複数の光源を時分割で順次に発光させ、各受光素子が、互いに異なる複数の光源からの光を時分割で順次に受光するようにしてもよい。このような複数の光源(励起光光源)の交番点灯動作によっても蛍光画像データ(複数の波長域ごとの画像データ(青色蛍光画像データ、緑色蛍光画像データおよび赤色蛍光画像データ等))を取得することが可能である。
より詳細には、互いに異なる波長域を有する複数のUV光源(たとえば、2つ)からの励起光が時分割で順次に紙幣90に照射される。具体的には、当該2つの光源が各走査ラインに関する1周期の走査時間を2分割した周期(1/2周期)で順次に発光する。そして、バンドパスフィルタを有しない各受光素子が、互いに異なる複数のUV光源からの励起光の照射に応じて紙幣90から発生する蛍光を、時分割で順次に受光する。各受光素子は、各波長域の蛍光を1/2周期ごとに受光し、走査ライン内の各画素について2種類の波長域に関する受光強度(波長域ごとの画素値)を検出する。そして、このような動作が複数の走査ラインについて繰り返されることによって、紙幣90の蛍光画像データ(2種類の波長域(たとえば緑色波長域および赤色波長域)に関する蛍光画像データ)が取得される。
また、上記各実施形態等においては、紙葉類を搬送しつつ当該紙葉類に関する2次元画像データが取得されているが、これに限定されない。たとえば、紙葉類を固定台(たとえば机)上の所定の位置に固定して、当該紙葉類に関する2次元画像データが取得されてもよい。より詳細には、静止している紙葉類に対して可視光源からの光が照射され、当該紙葉類からの反射光がカメラ(多数の受光素子が2次元状に配置された受光部を有する撮影部)によって撮影されて可視光画像データ(2次元画像データ)が取得されてもよい。同様に、固定された紙葉類に対して励起光が照射され、当該紙葉類から発生した蛍光が当該カメラによって撮影されて蛍光画像データ(2次元画像データ)が取得されてもよい。