JP2021163040A - 待ち行列台数の算出装置及び算出方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このうち、日本で採用されているMODERATOは、交差点の流入路ごとの負荷率(=(流入交通量+待ち行列台数)/飽和交通流率)に基づいて、スプリット及びサイクル長などの信号制御パラメータを自動生成するシステムである(特許文献1参照)。
一方、平均車頭距離は、車両感知器の感知信号からは導出できないので、従来の遠隔制御では、所定の固定値(例えば8〜10(m/台))が採用されている。
このため、負荷率から算出される信号制御パラメータも不正確となり、却って渋滞や遅れを引き起こす可能性がある。従って、待ち行列台数を正確に算出できる装置及び方法が望まれる。
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の算出装置は、信号制御の対象となる交差点の流入路における車両の待ち行列台数を算出する装置であって、前記流入路における推定渋滞長と、前記流入路における信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間と、前記流入路の飽和交通流率と、前記流入路の信号情報とに基づいて、渋滞中の車両の平均車頭距離を算出する第1算出部と、算出された前記平均車頭距離に基づいて、前記流入路の負荷率の算出に用いられる当該流入路の前記待ち行列台数を算出する第2算出部と、を備える。
この場合、第2算出部が、正確な平均車頭距離に基づいて流入路の待ち行列台数を算出するので、流入路の待ち行列台数を正確に算出することができる。
(3) 具体的には、前記第1算出部は、次の式(9)により前記遅れ時間を算出すればよい。この場合、プローブ車両から収集したプローブ情報を元データとして、平均車頭距離の算出に必要となる遅れ時間を正確に算出することができる。
ただし、dav:信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間(平均値)(秒)
L :交差点間のリンク長(m)
Tt:プローブ車両の平均旅行時間(秒)
Ve:想定速度(例えば規制速度)(km/時)
ただし、H :平均車頭距離(m/台)
dav:信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間(平均値)(秒)
J :推定渋滞長(m)
R :対象交差点の流入路の赤時間(秒)
C :対象交差点のサイクル長(秒)
このようにすれば、既設の複数の車両感知器の感知信号を元データとして、流入路の推定渋滞長を算出することができる。
このようにすれば、飽和交通流率を設定値に固定する場合に比べて、飽和交通流率を正確に算出できる。このため、交通状況の変化に応じて平均車頭距離の値を正確に算出することができる。
ただし、Qin:待ち行列台数(台/秒)
J :推定渋滞長(m)
H :平均車頭距離(m/台)
C :交差点のサイクル長(秒)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
本実施形態の詳細を説明するに当たり、まず、本明細書で用いる用語の定義を行う。
「車両」:道路を通行する車両全般のことをいう。従って、自動車、軽車両及びトロリーバスのほか、自動二輪車も車両に該当する。
本実施形態では、単に「車両」というときは、プローブ情報を送信可能な車載装置を有するプローブ車両と、その車載装置を有しない通常の車両の双方を含む。
車両感知器は、直下を通行する車両を超音波で感知する超音波式車両感知器、インダクタンスの変化で車両を感知する磁気式車両感知器、車両の通行状況を時系列に撮影する画像式車両感知器、或いは、車両と近赤外線による光通信を行う光ビーコン(光学式車両感知器)などよりなる。
「サイクル長」:交通信号機の青(又は赤)開始時刻から次の青(又は赤)開始時刻までの1サイクルの時間のことをいう。なお、日本では、緑色の信号灯色を青と呼ぶことが法令で定められている。
「オフセット」:系統制御又は地域制御において、信号表示のある時点、例えば、主道路青信号の開始時点の当該信号機群に共通な基準時点からのずれ、或いは、隣接交差点間の同一表示開始点のずれのことをいう。前者を絶対オフセット、後者を相対オフセットといい、時間(秒)又は周期の百分率で表す。
「赤時間」:交差点において車両に通行権がない時間帯のことをいう。赤時間の開始時点は、最も早い場合で青灯器の消灯時点、最も遅い場合で黄灯器の消灯時点に設定すればよい。矢印灯器のある交差点の場合は、右折矢印の終了時点であってもよい。
このため、Rが含まれる算出式(例えば、後述の式(10)及び式(11)など)については、Rの代わりに(C−G)を用いてもよい。すなわち、本実施形態の赤時間Rは、サイクル長Cと青時間Gから間接的に算出した値であってもよい。
「リンク」:交差点などのノード間を繋ぐ、上り又は下りの方向を有する道路区間のことをいう。ある交差点から見て、当該交差点に向かって流入する方向のリンクのことを流入リンクといい、ある交差点から見て、当該交差点から流出する方向のリンクのことを流出リンクという。
「リンク旅行時間」:旅行時間の算出単位の道路区間が「リンク」である場合の旅行時間、すなわち、車両が1つのリンクの始端から終端までを通行するのに必要な旅行時間のことをいう。
単位時間当たりの負荷交通量(交通流率)の飽和交通流率に対する比率を、負荷率という。過飽和状態による捌け残り台数が少ないときには、負荷率は需要率と等価である。
「交通需要」:ある交差点又は流入路ごと、或いは交通の方路別を対象として、一定時間内に流入路の停止線へ到着する交通量又は交通流率を交通需要という。
例えば、15分間の交通量が90台の場合、この15分間の交通流率は360(台/時間)又は6(台/分)となる。交通流率は、対象としたある期間に通過した車両の平均車頭時間の逆数である。
逆に、交通需要が交通容量以下の状態で、青表示終了時には信号待ち行列が解消する状態を「非飽和状態」という。過飽和ではないが、需要率が高い状態(例えば0.85以上の状態)を近飽和という。なお、需要率は1未満である。
直進車線の他に右折専用車線又は左折専用車線がある場合など、交通流の動線が異なると飽和交通流率の値は異なる。飽和交通流率の値は、車線幅員や大型車混入率など道路又は交通条件によっても異なる。
「面制御」:面的に広がる道路網に設置された多数の信号機を一括して制御する方式である。路線系統制御を面的に拡大したものである。
このうち、定周期制御は、時間帯に応じて予め信号制御パラメータが設定される方式である。時間帯や曜日(平日、土曜日、日曜日及び祝日)などに応じて予め設定された信号制御パラメータの組み合せ(プログラムと呼ぶ。)の中から1つを選んで実施される。
交通感応制御では、短時間の交通需要の変化に対応して青表示の開始や終了時点を決定し、その結果、青時間長及びサイクル長を変化させる。
交通順応制御は、交通流の変動に対応した高度な系統制御が可能であるため、交通量やその時間変動が大きく、高い交通処理効率が要求される道路に適用される。
プログラム形成制御は、有限個の信号制御パラメータの組み合せを用意せず、車両感知器の情報などに基づいて、即時に信号制御パラメータ又は信号灯色の切り替えタイミングを決定する方式である。
MORERATOは、交差点の流入路ごとの負荷率(=(流入交通量+待ち行列台数)/飽和交通流率)から信号制御パラメータを自動生成するシステムである。
図1は、交通信号制御システム1の全体構成の一例を示す斜視図である。
図2は、交通信号制御システム1に含まれる中央装置2、及びプローブ車両3の車載装置4の内部構成の一例を示すブロック図である。
図1及び図2に示すように、交通信号制御システム1は、交通管制センターの中央装置2、複数のプローブ車両3、プローブ車両3の車載装置4、交差点の流入路に設置された複数の車両感知器5、及び交差点に設置された複数の交通信号制御機6などを備える。
もっとも、中央装置2の交通管制エリアには、中央装置2による遠隔制御の対象ではなく、単独で信号灯色を決定する地点制御(定周期制御など)を行うスタンドアロンの交通信号制御機が含まれていてもよい。
中央装置2は、各交差点Jiの交通信号制御機6とLAN(Local Area Network)を構成している。従って、中央装置2は、各交通信号制御機6との通信が可能であり、各交通信号制御機6は、他の交差点Jiの交通信号制御機6とも通信が可能である。
車両感知器5が計測する感知信号は、当該車両感知器5に繋がる交通信号制御機6が収集する。交通信号制御機6は、収集した感知信号を中央装置2にほぼリアルタイム(例えば0.1〜1.0秒周期)で送信する。
従って、車両感知器5の感知信号は、車両の存在(車両感知)を表すオン信号と、不存在(車両非感知)を表すオフ信号が繰り返されるほぼ矩形波よりなる(図4参照)。
負荷率の算出に必要となる交通指標には、例えば、交差点Jiに流入する車両の交通量、流入路における待ち行列台数及び飽和交通流率などがある。流入路における待ち行列台数は、感知信号を元データとする推定渋滞長から算出される。流入交通量及び推定渋滞長の算出手順(図4)の詳細については、後述する。
従って、車載装置4は、中央装置2宛てのアップリンク情報S1を無線基地局7に無線送信することができる。また、中央装置2は、特定の車載装置4宛てのダウンリンク情報S2を公衆通信網8に送信することができる。
図2に示すように、中央装置2は、サーバコンピュータ10と、サーバコンピュータ10に繋がる複数のデータベース21〜23とを備える。
中央装置2のサーバコンピュータ10は、自装置の交通管制エリアに含まれる交差点Jiの交通信号制御機6を統括的に制御するサーバであり、処理部11、記憶部12及び通信部13を備える。
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)のうちの少なくとも1つの不揮発性メモリ(記録媒体)と、ランダムアクセスメモリ等よりなる揮発性メモリ(記録媒体)とを含む記憶装置である。不揮発性メモリは、リムーバブルであってもよい。
従って、中央装置2のコンピュータプログラム14には、負荷率の算出の元データである流入路の交通量、待ち行列台数及び飽和交通流率の算出、及び、待ち行列台数の算出の元データである流入路における推定渋滞度の算出などを、処理部11のCPUに実行させるためのプログラムも含まれる。
信号制御指令は、新たに生成した信号制御パラメータに対応する、信号灯器の階梯(ステップ)ごとの継続時間の決定に必要な情報を含む指令である。信号制御指令は、例えば遠隔制御の制御周期(例えば1.0〜2.5分)ごとに生成される。
従って、通信部13は、制御周期ごとに処理部11が生成した信号制御パラメータを含む信号制御指令を、遠隔制御の対象である交通信号制御機6に送信する。通信部13は、交通信号制御機6が行った過去の制御内容を表す信号制御実行情報を、各交通信号制御機6から受信する。
従って、通信部13は、無線基地局7からアップリンク情報S1を受信可能であり、自装置で生成したダウンリンク情報S2を無線基地局7に送信可能である。アップリンク情報S1には、車載装置4が送信元のプローブ情報が含まれる。ダウンリンク情報S2には、処理部11が算出したリンク旅行時間などが含まれる。
データベース21〜23には、地図データベース21、プローブデータベース22、及び会員データベース23が含まれる。
「交差点データ」は、国内の交差点に付与された交差点IDと、交差点の位置情報とを対応付けたデータである。「リンクデータ」は、国内の道路に対応して付与された特定リンクのリンクIDに対して、次の情報1)〜4)を対応付けたデータよりなる。
情報2)特定リンクの始点に接続するリンクID
情報3)特定リンクの終点に接続するリンクID
情報4)特定リンクのリンクコスト
具体的には、道路地図データ25は、交差点ごとにノードnが設定され、各ノードn間が逆向きの一対の有向リンクlで繋がった有向グラフよりなる。従って、一方通行の道路の場合は、一方向の有向リンクlのみノードnが接続される。
道路地図データ25には、有効リンクlに含まれる車両感知器5の感知器IDと、車両感知器5の感知地点(例えば、図3の感知地点A〜E)の位置情報も含まれる。
蓄積されるプローブ情報には、少なくとも車両位置とその通過時刻が含まれる。プローブ情報には、車両速度、車両方位、車両の状態情報(停止/走行イベント)などの車両データが含まれていてもよい。プローブ情報のセンシング周期は、プローブ車両3の走行履歴を正確に特定可能な粒度であり、例えば0.1〜1.0秒である。
図2に示すように、車載装置4は、処理部31、記憶部32及び通信部33などを備えるコンピュータ装置よりなる。
処理部31は、記憶部32の不揮発性メモリに格納されたコンピュータプログラム34を読み出し、当該プログラム34に従って各種の情報処理を行うCPUを含む演算処理装置よりなる。
車載装置4のコンピュータプログラム34には、プローブ情報のセンシング及び生成、プローブ車両3の経路探索処理、ナビゲーション装置のディスプレイに探索結果を表示するための画像処理などを処理部31のCPUに実行させるプログラムなどが含まれる。
通信部33は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)の受信機を有する。処理部31は、GNSSの位置情報に基づいて、自車両の現在位置をほぼリアルタイムにモニタリングする。なお、車両の測位は他の方法で行ってもよい。
記憶部32に所定の記録時間(例えば1〜2分)の分だけ車両データが蓄積されると、通信部33は、蓄積された車両データと自車両の識別情報を含むプローブ情報を生成し、生成したプローブ情報を中央装置2宛てにアップリンク送信する。
図3は、流入路に設置される車両感知器5の配置例を示す平面図である。
図3において、交差点Jkは遠隔制御の対象交差点であり、交差点Jk+1は交差点Jkの上流側に隣接する交差点である。
図3の感知地点A〜E及び感知地点Rは、交差点Jkの上流側に設置された車両感知器5による車両の感知地点を示す。
交差点Jkと交差点Jk+1の間の道路区間の推定渋滞長を感知信号から算出する場合には、感知地点Aの他に、停止線から例えば300mの感知地点Bと、停止線から例えば500mの感知地点Cに車両感知器5が設置される。
感知地点Cより上流側の感知地点D,Eの配置間隔は、市街地の場合には例えば250m間隔であり、郊外の場合には例えば500m間隔である。
すなわち、感知地点A〜Eには、当該感知地点A〜Eの待ち行列波及度を車両の平均速度から求めるための、速度閾値V1〜V3(V1<V2<V3)が予め設定される。
例えば、感知地点の平均速度VがV1以下の場合は波及度が1であり、感知地点の平均速度VがV2の場合は波及度が0.5であり、平均速度VがV3以上の場合は波及度が0である。平均速度VがV1からV3の間の場合は、波及度が0〜1まで連続して線形的に変化する値となるように、V2以上とV2以下の範囲でそれぞれ一次関数が定義される。
待ち行列波及度は、V1≦V≦V2の範囲では、1.0から0.5まで線形的に減少する負の傾きを有する平均速度Vの一次関数となる。
待ち行列波及度は、V2≦V≦V3の場合では、0.5から0.0まで線形的に減少する負の傾きを有する平均速度Vの一次関数となる。
交通技術者は、サーバコンピュータ10に接続されたキーボードなどの入力機器を操作することにより、感知地点A〜Eの位置情報と、感知地点A〜Eについて決定した速度閾値V1〜V3の値を、地図データベース21の道路地図データ25に記憶させる。
図4は、車両感知器5の感知信号を元データとして算出される推定渋滞長の算出手順の一例を示すフローチャートである。図4に示すように、推定渋滞長の算出手順には、次の算出処理C1〜C3が含まれる。
図4に示すように、車両感知器5の感知信号は、感知地点A〜Eでの車両感知を表すオン信号と、車両非感知を表すオフ信号とが繰り返されるパルス信号よりなる。
中央装置2の処理部11は、車両感知器5の感知信号から、サイクルと同期した流入路における「交通量」、「占有率」及び「平均速度」を感知地点A〜Eごとに算出する。
ここで、所定期間T0が車両感知器5の下流側の交差点Jkのサイクルと非同期であると、例えば所定期間T0内に2サイクル分の赤時間が含まれるなどが原因で、交通量、占有率及び平均速度の変動が大きくなる。
交通量=(nサイクルの総パルス数/nサイクルの総時間)×所定期間T0
占有率=(nサイクルの総オン時間/nサイクルの総時間)×所定期間T0
平均速度=実効車長/(占有率/交通量)
平均車長は、大型車の混入率等に応じて変動するので、流入路の感知地点A〜Eごとに決定される。例えば、道路に設置した監視カメラ(図示せず)により所定期間内に通過した車種の比率を統計的に算出し、算出した車種の比率から平均車長が決定される。
次に、中央装置2の処理部11は、算出処理C1により算出した平均速度を用いて、感知地点A〜Eごとの待ち行列波及度を算出する。
前述の通り、平均速度のランダムな変動に対応するため、感知地点A〜Eにそれぞれ対応する3つの速度閾値V1〜V3と、速度範囲ごとの待ち行列波及度を規定する一次関数が、予め地図データベース21の道路地図データ25に記録されている。
処理部11は、感知地点Bの平均速度VbがV1<Vb<V2である場合は、速度閾値V1,V2間の待ち行列波及度を規定する一次関数にVbを代入して、当該感知地点Bにおける待ち行列波及度を求める。
処理部11は、感知地点Dの平均速度VdがV3<Vdである場合は、当該感知地点Dにおける待ち行列波及度を0とする。
次に、中央装置2の処理部11は、交差点Jkの上流側の道路区間に含まれる複数の感知地点A〜Eの待ち行列波及度に基づいて、交差点Jkから延伸する推定渋滞長(渋滞末尾から停止線位置までの距離)を算出する。
図5のグラフは、横軸を交差点Jkからの距離とし、縦軸を待ち行列波及度として、感知地点A〜Eの待ち行列波及度の値をプロットした折れ線グラフである。
図5に示すように、中央装置2の処理部11は、待ち行列波及度が0.5(=速度閾値V2に対応する波及度)以上の区間を「渋滞」と判定し、0.5未満の区間を「非渋滞」と判定する。
この場合、判定された末尾位置から交差点Jkの停止線までの距離値が、推定渋滞長の算出値となる。
図6は、中央装置2が実行する遠隔制御(MODERATO)の概要を示すフローチャートである。
図6に示すように、中央装置2が実行する遠隔制御には、次のステップS1〜S4が含まれる。中央装置2の処理部11は、次のステップS1〜S4の各処理を、所定の制御周期(例えば1.0〜2.5分)ごとに繰り返し実行する。
ステップS2:「負荷率の算出」(ステップS2)
ステップS3:「信号制御パラメータの算出」
ステップS4:「信号制御パラメータの反映」
Vin:対象交差点Jkの流入路の交通量(台/秒)(「流入交通量」ともいう。)
Qin:対象交差点Jkの流入路の待ち行列台数(台/秒)
Sf: 対象交差点Jkの流入路の飽和交通流率(台/秒)
交差点Jkの流入路の待ち行列台数Qinは、待ち行列波及度が0.5以上の感知地点A〜Eが観測された場合に、次の式(1)により算出される。
Qin=J/H/C ……(1)
ただし、J:推定渋滞長(m)
H:平均車頭距離(m/台)
C:対象交差点Jkのサイクル長(秒)
平均車頭距離Hは、渋滞中の複数の車両に含まれる、走行方向に隣接する2台の車両の車頭(先端)間距離の平均値を意味する。本実施形態では、式(1)に代入する平均車頭距離Hの値を制御周期ごとに動的に算出するが、その算出方法については後述する。
具体的には、飽和交通流率Sfは、交差点Jkの流入路の青時間(秒)をG、通過台数(台)をq、飽和交通流率の設定値をScとすると、次の式(2)により算出される。
Sf=Max{q/G,Sc} ……(2)
負荷率Lrは、遠隔制御がMODERATOである場合に使用される交通指標であり、1サイクル中に処理できる最大交通量に対する交通需要の比を意味する。
Lr=(Vin+k×Qin)/Sf ……(3)
ただし、k:重み係数(通常は1.0が用いられる。)
ここでは、2つの現示のみを含む十字路交差点のスプリット及びサイクル長を算出する場合を想定する。また、現示の番号を「i」(i=1,2)で表し、各現示iの流入路の方向を「j」(j=1,2)で表す。
Lij=(Vij+Qij)/Sij ……(4)
Lri=Maxj(Lij) ……(5)
Lrt=Lr1+Lr2 ……(6)
λi=Lri/Lrt ……(7)
C=(a1×K+a2)/(1−a3×Lrt) ……(8)
具体的には、中央装置2の処理部11は、算出した信号制御パラメータに基づいて信号制御指令を生成し、生成した信号制御指令を交通信号制御機6に送信する。なお、歩進制御の場合には、処理部11は、算出した信号制御パラメータに基づいて灯器の点灯又は消灯を指令する歩進指令を生成し、生成した歩進指令を交通信号制御機6に送信する。
図7は、推定渋滞長Jと平均車頭距離H0,H1との関係を示す道路平面図である。
図7Aは、推定渋滞長Jが固定値の平均車頭距離H0で並ぶ複数の車両で構成される場合を示し、図7Bは、推定渋滞長Jが実際の平均車頭距離H1(>H0)で並ぶ複数の車両で構成される場合を示す。
ここで、平均車頭距離Hは、車両感知器5の感知信号からは導出できないので、従来の遠隔制御では、式(1)に適用する平均車頭距離Hとして、所定の固定値H0(例えば8〜10(m/台))を採用している。
例えば、図7Bに示すように、実際の平均車頭距離H1>固定値H0である場合は、推定渋滞長Jから算出される待ち行列台数Qin(=J/H/C)の値が実際よりも大きい値となる。
そして、中央装置2の処理部11は、式(10)により算出した平均車頭距離Hの値を式(1)に代入して、待ち行列台数Qinを算出する。従って、流入路の待ち行列台数Qinを正確に算出することができる。
ただし、L :交差点間のリンク長(m)
Tt:プローブ車両の平均旅行時間(秒)
Ve:想定速度(例えば規制速度)(km/時)
ただし、dav:信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間(平均値)(秒)
J :推定渋滞長(m)
R :対象交差点Jkの流入路の赤時間(秒)
C :対象交差点Jkのサイクル長(秒)
第1算出部:感知信号を元データとする推定渋滞長Jと飽和交通流率Sfの値、プローブ情報を元データとする遅れ時間davの値、及び、対象交差点Jkの流入路の赤時間R及びサイクル長Cの値を式(10)に代入し、平均車頭距離Hの値を動的に算出する。
第2算出部:算出した平均車頭距離Hの値を式(1)に代入し、負荷率Lrの算出に必要な待ち行列台数Qinを算出する。
以下、図8及び図9を参照しつつ、式(9)及び式(10)が成立する理由について説明する。図8は、対象交差点Jkを通過する車両の走行軌跡の一例を表すグラフである。
図8において、グラフの横軸は上流側の交差点Jk+1からの距離であり、グラフの縦軸は車両の旅行時間である。ここでは、Jk+1からJkに向かう流入路には、系統制御が行われていないものとする。
そして、複数のプローブ車両3の平均旅行時間Ttには、上記の車両1台当たりの遅れ時間davが含まれると見なすことができる。
dav=Tt−{L/(Ve/3.6)} ……(9)
そして、処理部11は、抽出した複数のプローブ情報の位置及び時刻に基づいて、プローブ車両3の平均旅行時間Ttを算出し、算出したTtを式(9)に代入して遅れ時間davを求める。
また、信号待ち以外の停止時間が特定可能なプローブ情報(例えば、駐車時間を含むプローブ情報)の場合には、その停止時間を考慮して平均旅行時間Ttを算出することが好ましい。
図9に示すように、流入路が過飽和か否かの判定は、R/2<davであるか否かにより行われる。ここでは、過飽和の流入路において、信号2回待ち以上の車両が含まれる過飽和状態のモデルとして、走行と停止のみの単純なモデルを想定する。この場合、2回目以降の信号待ち停止においては、1回当たりの停止時間は赤時間Rと等しくなる。
図9のパターン2は、次回のサイクルで待ち行列が捌けた場合(1サイクル待ち)の交通状況を示す。図9のパターン3は、次々回のサイクルで待ち行列が捌けた場合(2サイクル待ち)の交通状況を示す。
パターン2では、dav=1.5R、Qin=(1−R/C)×Sfとなる。
パターン3では、dav=2.5R、Qin=2×(1−R/C)×Sfとなる。
従って、交差点Jkの流入路が過飽和である場合の、待ち行列台数Qinの算出式は、次の式(11)となる。
Qin={(dav−R/2)/R}×(1−R/C)×Sf ……(11)
H=J/〔{(dav−R/2)/R}×(1−R/C)×Sf×C〕 ……(10)
本実施形態によれば、中央装置2の処理部11が、プローブ情報を元データとする遅れ時間davの値、車両感知器5の感知信号を元データとする推定渋滞長Jの値、流入路の赤時間R及びサイクル長Cの値を用いて平均車頭距離Hを算出するので、平均車頭距離Hを固定値H0とする場合に比べて、交通状況の変化に応じて平均車頭距離Hの値を正確に算出することができる。
従って、遠隔制御に必要な流入路の負荷率Lrを正確に求めることができ、遠隔制御の精度を向上することができる。
上述の実施形態において、待ち行列台数Qinを遠隔制御に使用したが、これを他の目的に活用することにしてもよい。
例えば、交通管制センターでは、各道路単位で、渋滞部と非渋滞部における車両の存在台数を演算し、それらを都道府県単位又は市区町村単位で集計することにより、車両の瞬間存在台数を算出している。
上述の通り、本実施形態では、正確な平均車頭距離Hに基づいて精度の高い待ち行列台数Qinを算出することができる。このため、渋滞部の存在台数(待ち行列台数)の推定精度が向上し、実態に合った瞬間存在台数を交通技術者に提供することが可能となる。
上述の実施形態(変形例を含む。)は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態において、飽和交通流率Sfは設定値のみを採用しもよい。また、飽和交通流率Sfは、ほぼリアルタイムなプローブ車両3の速度情報と位置情報を含むプローブ情報から算出することもできる(特開2009−15817号公報参照)。
2 中央装置(待ち行列台数の算出装置)
3 プローブ車両
4 車載装置
5 車両感知器
6 交通信号制御機
7 無線基地局
8 公衆通信網
9 通信回線
10 サーバコンピュータ
11 処理部(第1算出部、第2算出部)
12 記憶部
13 通信部
14 コンピュータプログラム
15 ルータ
21 地図データベース
22 プローブデータベース
23 会員データベース
25 道路地図データ
31 処理部
32 記憶部
33 通信部
34 コンピュータプログラム
Claims (8)
- 信号制御の対象となる交差点の流入路における車両の待ち行列台数を算出する装置であって、
前記流入路における推定渋滞長と、前記流入路における信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間と、前記流入路の飽和交通流率と、前記流入路の信号情報とに基づいて、渋滞中の車両の平均車頭距離を算出する第1算出部と、
算出された前記平均車頭距離に基づいて、前記流入路の負荷率の算出に用いられる当該流入路の前記待ち行列台数を算出する第2算出部と、を備える待ち行列台数の算出装置。 - 前記第1算出部は、
前記流入路を通行するプローブ車両の平均旅行時間に基づいて、前記遅れ時間を算出する請求項1に記載の待ち行列台数の算出装置。 - 前記第1算出部は、
次の式(9)により前記遅れ時間を算出する請求項1又は請求項2に記載の待ち行列台数の算出装置。
dav=Tt−{L/(Ve/3.6)} ……(9)
ただし、dav:信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間(平均値)(秒)
L :交差点間のリンク長(m)
Tt:プローブ車両の平均旅行時間(秒)
Ve:想定速度(例えば規制速度)(km/時) - 前記第1算出部は、
次の式(10)により前記平均車頭距離を算出する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の待ち行列台数の算出装置。
H=J/〔{(dav−R/2)/R}×(1−R/C)×Sf×C〕 ……(10)
ただし、H :平均車頭距離(m/台)
dav:信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間(平均値)(秒)
J :推定渋滞長(m)
R :対象交差点の流入路の赤時間(秒)
C :対象交差点のサイクル長(秒) - 前記第1算出部は、
前記流入路に配置された複数の車両感知器の感知地点における車両の平均速度と、前記感知地点に設定された待ち行列波及度とに基づいて、前記推定渋滞長を算出する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の待ち行列台数の算出装置。 - 前記第1算出部は、
前記流入路の青時間内に車両感知器の感知地点を通過した車両台数を青時間で割った流率と、飽和交通流率の設定値との比較結果に基づいて、前記飽和交通流率を算出する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の待ち行列台数の算出装置。 - 前記第2算出部は、
次の式(1)により前記待ち行列台数を算出する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の待ち行列台数の算出装置。
Qin=J/H/C ……(1)
ただし、Qin:待ち行列台数(台/秒)
J :推定渋滞長(m)
H :平均車頭距離(m/台)
C :対象交差点のサイクル長(秒) - 信号制御の対象となる交差点の流入路における車両の待ち行列台数を算出する方法であって、
前記流入路における推定渋滞長と、前記流入路における信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間と、前記流入路の飽和交通流率と、前記流入路の信号情報とに基づいて、渋滞中の車両の平均車頭距離を算出する第1ステップと、
算出された前記平均車頭距離に基づいて、前記流入路の負荷率の算出に用いられる当該流入路の前記待ち行列台数を算出する第2ステップと、を含む待ち行列台数の算出方法。
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