JP2021161486A - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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喜一郎 田代
Kiichiro Tashiro
晃人 田畑
Akito Tabata
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Abstract

【課題】熱間圧延後に冷却してから再び加熱する必要がなく、且つ諸特性(十分な加工性、強度、一様伸び特性、靭性および低降伏比)を満足する鋼板を提供する。【解決手段】C:0.08〜0.16質量%、Si:0.25〜0.50質量%、Mn:1.1〜1.6質量%、P:0質量%超0.030質量%以下、S:0質量%超0.003質量%以下、Al:0.020〜0.060質量%、Ti:0.008〜0.020質量%、N:0.0030〜0.0070質量%、Ca:0.0005〜0.0050質量%、および残部:鉄および不可避不純物からなり、フェライトおよびベイナイトの面積分率の和が85%以上であり、且つベイナイトの面積分率が20〜80%であり、前記ベイナイトの硬さが220.0〜380.0HVであり、下記式(1)で表される硬さ分布PHVが5.0HV以下である鋼板。PHV=μ(HV断面平均)−min(HV断面平均) ・・・(1)【選択図】図3

Description

本開示は、鋼板およびその製造方法に関する。
建築、橋梁、貯蔵タンク、ラインパイプなどの鋼構造物に用いられる鋼板には、諸性能(十分な加工性、強度、一様伸び特性、靭性および低降伏比)を満足し、且つ安価に製造できることが求められている。
特許文献1は、硬質相(すなわち焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイトのいずれか1以上)および軟質相(すなわちベイナイトが高温で焼戻された組織であり、セメンタイトの存在しない相)のそれぞれの硬さと、析出物とを制御した、溶接構造用の鋼板を開示している。
特許文献2は、フェライト主体またはベイナイト主体の母相中において、島状マルテンサイトである第2相の面積率および存在位置を制御した、高強度ラインパイプ用の溶接鋼管を開示している。
特開2015−163730号公報 特開2012−31509号公報
しかしながら、特許文献1に記載の鋼板および特許文献2に記載の鋼管は、その製造方法において熱間圧延後に冷却してから、再び加熱する必要があり、製造コストがかかる。
本発明の実施形態は、このような状況を鑑みてなされたものであり、その目的の1つは熱間圧延後に冷却してから再び加熱する必要がなく、且つ諸特性(十分な加工性、強度、一様伸び特性、靭性および低降伏比)を満足する鋼板およびその製造方法を提供することである。
本発明の態様1は、
C :0.08〜0.16質量%、
Si:0.25〜0.50質量%、
Mn:1.1〜1.6質量%、
P :0質量%超0.030質量%以下、
S :0質量%超0.003質量%以下、
Al:0.020〜0.080質量%、
Ti:0.008〜0.020質量%、
N :0.0030〜0.0070質量%、
Ca:0.0005〜0.0050質量%、および
残部:鉄および不可避不純物からなり、
フェライトおよびベイナイトの面積分率の和が85%以上であり、且つ前記ベイナイトの面積分率が20〜80%であり、
前記ベイナイトの硬さが220.0〜380.0HVであり、
下記式(1)で表される硬さ分布PHVが5.0HV以下であり、且つ板厚12mm以上の鋼板である。

HV=μ(HV断面平均)−min(HV断面平均) ・・・(1)

ここで、HV断面平均は、前記鋼板の任意の位置における板厚方向の平均硬さであり、下記式(2)のように算出される。

HV断面平均=(HV表面下1mm×3+HVt/4×(t/2−3)+HV3t/4×(t/2−3)+HV裏面下1mm×3)/t ・・・(2)

上記式(2)中のtは前記鋼板の板厚(mm)であり、HV表面下1mmは前記鋼板の表面下1mmの位置における硬さ(HV)であり、HVt/4は前記鋼板の表面下t/4mmの位置における硬さ(HV)であり、HV3t/4は、前記鋼板の表面下3t/4mmの位置における硬さ(HV)であり、HV裏面下1mmは前記鋼板の裏面下1mmの位置における硬さ(HV)である。
上記式(1)中のμ(HV断面平均)は、前記鋼板の圧延方向および板厚方向とは垂直方向の幅端部50mmを除く任意の190mmの区間において、5mm間隔ごとに測定したHV断面平均の平均値であり、min(HV断面平均)は、前記190mmの区間において、5mm間隔ごとに測定したHV断面平均の最小値である。
本発明の態様2は、
Cu:0質量%超0.50質量%以下、
Ni:0質量%超0.50質量%以下、
Cr:0質量%超0.50質量%以下、
Mo:0質量%超0.50質量%以下、および
V :0質量%超0.10質量%以下
からなる群から選択される一種以上を更に含有する態様1に記載の鋼板である。
本発明の態様3は、
Nb:0質量%超0.030質量%以下、および
B :0質量%超0.002質量%以下
からなる群から選択される一種以上を更に含有する態様1または2に記載の鋼板である。
本発明の態様4は、
態様1〜3のいずれか1つに記載の化学成分組成の鋼を用意する工程と、
圧延終了温度を830℃〜940℃として熱間圧延を行う工程と、
Ar3点(℃)−70℃以上の冷却開始温度から、400℃〜600℃の冷却停止温度まで、平均冷却速度8〜20℃/秒で冷却する工程と、を含み、
下記式(3)で表されるPCRが35以下である態様1〜3のいずれか1つに記載の鋼板の製造方法である。

CR=([C]+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/15+[Nb]+Sol.B×400)×CR700〜500 ・・・(3)

上記式(3)中の[C]、[Mn]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]および[Nb]は、それぞれ、質量%で示したC、Mn、Ni、Cr、Mo、VおよびNbの含有量を示し、CR700〜500は700℃から500℃までの前記鋼板表面における平均冷却速度であり、Sol.Bは下記式(4)で表される。

Sol.B=[B]−([N]−[Ti]/3.4)×10.8/14 ・・・(4)

上記式(4)中の[B]、[N]および[Ti]は、それぞれ、質量%で示したB、NおよびTiの含有量を示す。ただし、上記式(4)の右辺が0未満の場合は、Sol.B=0とする。
本発明の実施形態では、熱間圧延後に冷却してから再び加熱する必要がなく、且つ諸特性(十分な加工性、強度、一様伸び特性、靭性および低降伏比)を満足する鋼板およびその製造方法を提供することが可能である。
図1は、硬さ分布PHVの求める際の、鋼板の硬さ測定位置を示す模式図である。 図2Aは、ある鋼板断面における板厚方向の硬さの変化を模式的に表したものである。 図2Bは、本発明の実施形態に係る板厚方向の平均硬さHV断面平均を算出する方法を説明する図である。 図3は、実施例における、硬さ分布PHVとTS×UELとの関係を示すグラフである。 図4は、実施例における、PCRと硬さ分布PHVとの関係を示すグラフである。
本願発明者らは、熱間圧延後に冷却してから再び加熱する必要がなく、且つ諸特性(十分な加工性、強度、一様伸び特性、靭性および低降伏比)を満足する鋼板を実現するべく、様々な角度から検討した。
その結果、所定の化学成分組成とするとともに、フェライトおよびベイナイトの面積分率の和を85%以上、且つベイナイトの面積分率を20〜80%とし、ベイナイトの硬さを220.0〜380.0HVとし、鋼板表面の圧延方向と直交する方向における硬さ分布PHVを5.0HV以下とすることにより、熱間圧延後に冷却してから再び加熱する必要がなく、且つ諸特性を満足する鋼板を提供できることを見出した。さらに、その鋼板の製造方法において、上記硬さ分布PHVが、化学成分と冷却速度とから導出されるパラメータであるPCRと相関することも同時に見出した。
以下に、本発明の実施形態が規定する各要件の詳細を示す。
<1.化学成分組成>
本発明の実施形態に係る鋼板は、C :0.08〜0.16質量%、Si:0.25〜0.50質量%、Mn:1.1〜1.6質量%、P:0質量%超0.030質量%以下、S:0質量%超0.003質量%以下、Al:0.020〜0.080質量%、Ti:0.008〜0.020質量%、N:0.0030〜0.0070質量%、Ca:0.0005〜0.0050質量%、および残部:鉄および不可避不純物からなる。
以下、各元素について詳述する。
(C:0.08〜0.16質量%)
Cは、鋼板の強度を高める元素である。C含有量が0.08質量%未満であるとベイナイト分率が低下し、必要な強度を確保することが困難になる。よってC含有量は0.08質量%以上とする。好ましくは0.09質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.11質量%以上である。
一方、C含有量が0.16質量%を超えるとHAZ靭性および溶接割れ性が劣化する。よってC含有量は0.16質量%以下とする。C含有量は好ましくは0.155質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下である。
(Si:0.25〜0.50質量%)
Siは脱酸材として、また母材強度向上に有効な元素である。これらの効果を発揮させるために、Siを0.25質量%以上含有させる必要がある。好ましくは0.30質量%以上である。
一方、Si含有量が過剰になると、母材靭性やHAZ靭性、溶接性が劣化する。よってSi含有量は0.50質量%以下とする。好ましくは0.45質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下である。
(Mn:1.1〜1.6質量%)
Mnは、母材および溶接部の強度向上に有効な元素である。これらの効果を発揮させるために、Mnを1.1質量%以上含有させる必要がある。好ましくは1.2質量%以上であり、より好ましくは1.3質量%以上である。
一方、Mn含有量が過剰になると、MnSが生成されて母材靭性やHAZ靭性が劣化する。よってMn含有量は1.6質量%以下とする。好ましくは1.5%質量以下、より好ましくは1.4質量%以下である。
(P:0質量%超0.030質量%以下)
Pは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、P含有量が0.030質量%を超えると母材および/またはHAZ部の靭性劣化が著しい。よってP含有量は0030質量%以下とする。好ましくは0.020質量%以下、より好ましくは0.010質量%以下である。
P含有量の下限は、工業上0質量%にすることは困難であるため、0質量%超とし、0.002質量%以上であり得る。
(S:0質量%超0.003質量%以下)
Sは、多すぎるとMnSを多量に生成して母材および/またはHAZ部の靭性が劣化する。よって、S含有量は0.003質量%以下とする。好ましくは0.002質量%以下である。
S含有量の下限は、工業上0%にすることは困難であり、0質量%超とする。
(Al:0.020〜0.080質量%)
Alは強脱酸元素であり、その効果を発揮させるためには、Al含有量を0.020質量%以上とする必要がある。好ましくは0.025質量%以上である。
一方、Al含有量が過剰になると、Alの酸化物がクラスター状に生成して、母材および/またはHAZの靭性が劣化する。よってAl含有量は0.080質量%以下とする。好ましくは0.060質量%以下であり、より好ましくは0.050質量%以下である。
(Ti:0.008〜0.020質量%)
Tiは、鋼中にTiNとして析出することで、溶接時のHAZ部でのオーステナイト粒の粗大化を防止しかつフェライト変態を促進するため、HAZ部の靭性を向上させるのに有効な元素である。特に大入熱溶接におけるHAZ靭性確保には有効である。これらの効果を発揮させるためには、Tiを0.008質量%以上含有させる必要がある。より好ましくは0.009質量%以上、更に好ましくは0.010質量%以上である。
一方、Ti含有量が過剰になると、固溶TiやTiCが析出して母材とHAZ部の靭性が劣化する。よって、Ti含有量は0.020質量%以下とする。好ましくは0.017質量%以下、より好ましくは0.015質量%以下である。
(N:0.0030〜0.0070質量%)
Nは、鋼組織中にTiNとして析出し、HAZ部のオーステナイト粒の粗大化を抑制し、さらにフェライト変態を促進させて、HAZ部の靭性を向上させる元素である。特に大入熱溶接におけるHAZ靭性確保には有効である。これらの効果を発揮させるためには、Nを0.030質量%以上含有させる必要がある。好ましくは0.0035質量%以上であり、より好ましくは0.0040質量%以上である。
一方、N含有量が過剰になると、固溶Nの存在によりHAZ靭性がかえって劣化する。よって、N含有量は、0.0070質量%以下とする。好ましくは0.0065質量%以下であり、より好ましくは0.0060質量%以下である。
(Ca:0.0005〜0.0050質量%)
Caは、硫化物の形態を制御する作用があり、CaSを形成することによってMnSの形成を抑制する効果がある。この効果を発揮させるためには、Ca含有量を0.0005質量%以上とする必要がある。好ましくは0.0010質量%以上であり、より好ましくは0.0015質量%以上である。
一方、Ca含有量が過剰になると、介在物が粗大化し母材靭性および/またはHAZ靭性が劣化する。よって、Ca含有量は、0.0050質量%以下とする。好ましくは0.0040質量%以下であり、より好ましくは0.0030質量%以下である。
基本成分は上記のとおりであり、好ましい実施形態の1つでは、残部は鉄及び不可避不純物である。不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素の混入が許容される。
なお、例えば、PおよびSのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避不純物であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している元素がある。このため、本明細書において、残部を構成する「不可避不純物」という場合は、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。
さらに、本発明の実施形態に係る鋼板は、必要に応じて以下の任意元素を選択的に含有してよく、含有される成分に応じて鋼板の特性が更に改善される。
(Cu:0質量%超0.50質量%以下、Ni:0質量%超0.50質量%以下、Cr:0質量%超0.50質量%以下、Mo:0質量%超0.50質量%以下、およびV:0質量%超0.10質量%以下からなる群から選択される一種以上)
Cu、NiおよびCrはいずれも、HAZ靭性に大きな悪影響を及ぼすことなく、焼入れ性を向上させて強度を高めるのに有効な元素である。この効果を発揮させるためには、Cuを0質量%超含むことが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、更により好ましくは0.10質量%以上である。NiおよびCrについてもCuと同様である。
一方、Cu含有量が過剰になると靭性が劣化するため、0.50質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.40質量%以下、更に好ましくは0.30質量%以下である。NiおよびCrについてもCuと同様である。
Moは、焼入れ性を向上させるとともに、炭化物を析出しやすい元素であり、強度を高めるのに有効な元素である。これらの効果を発揮させるためには、Mo含有量を0質量%含むことが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、更により好ましくは0.10質量%以上である。
一方で、Mo含有量が過剰になるとHAZ靭性および溶接性が劣化する。よってMo含有量は0.50質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.40質量%以下、更に好ましくは0.30質量%以下である。
Vは、炭化物および/または窒化物を形成して強度の向上に有効な元素であり、この効果を発揮させるためには0質量%超含むことが好ましく、より好ましくは0.003質量%以上、更に好ましくは0.010質量%以上である。
一方、V含有量が過剰になると溶接性と母材靭性が劣化する。よってV含有量は、0.1質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.08質量%以下、更に好ましくは0.06質量%以下である。
(Nb:0質量%超0.030質量%以下、およびB:0質量%超0.002質量%以下からなる群から選択される一種以上)
Nbは、溶接性を劣化させることなく強度と母材靭性を高めるのに有効な元素である。この効果を発揮させるためには、Nb含有量を0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.002質量%以上、更に好ましくは0.010質量%以上、更により好ましくは0.020質量%以上である。
一方、Nb含有量が過剰になると結晶粒が著しく微細化して、低YR特性が困難になり、HAZの靭性も劣化する。よって、Nb含有量は0.030質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.025質量%以下、更に好ましくは0.020質量%以下である。
Bは、焼入れ性を高め、母材および溶接部の強度を高めるとともに、溶接時に、加熱されたHAZ部が冷却する過程でNと結合してBNを析出し、オーステナイト粒内からのフェライト変態を促進するため、HAZ靭性を向上させる。これらの効果を発揮させるためには、B含有量を0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.0002質量%以上、更に好ましくは0.0005質量%以上、更により好ましくは0.0010質量%以上である。
一方で、B含有量が過剰になると、母材とHAZ部の靭性が劣化する他、溶接性の劣化を招く。よって、B含有量は0.002質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.015質量%以下である。
(その他)
本発明の実施形態に係る鋼板の化学成分組成において、炭素当量(Ceq)は0.44以下にすることが好ましい。Ceqが0.44以下とすることにより、溶接性の劣化を抑制でき、好ましくは0.42以下、より好ましくは0.40以下である。
なお、Ceqは下記式(5)のように計算される。

Ceq=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/15 ・・・(5)

上記式(5)中の[C]、[Mn]、[Si]、[Ni]、[Cr]、[Mo]および[V]は、それぞれ、質量%で示したC、Mn、Si、Ni、Cr、MoおよびVの含有量を示す。
<2.金属組織>
本発明の実施形態に係る鋼板は、フェライトおよびベイナイトの面積分率の和が85%以上であり、且つベイナイトの面積分率が20〜80%であり、ベイナイトの硬さが220.0〜380.0HVである。
低降伏比を得るために、フェライトおよびベイナイトの面積分率の和を85%以上とする必要がある。フェライトおよびベイナイト以外の組織としては、パーライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイトを含み得る。フェライトおよびベイナイトの面積分率の和が90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上、最も好ましくは100%、すなわち、鋼板の金属組織がフェライトおよびベイナイトからなることである。
所望の強度と低降伏比を得るために、ベイナイトの面積分率を20〜80%にする必要がある。ベイナイトの面積分率が20%未満であると鋼板の強度が不足し、また降伏比が高くなる。好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上である。
一方、80%を超えると強度が高くなりすぎて加工性が劣化する。好ましくは75%以下、より好ましくは70%以下である。
強度と低降伏比を得るために、上記ベイナイトの硬さが220.0〜380.0HVである必要がある。ベイナイト硬さが220.0HV未満であると、鋼板の強度が不足する。好ましくは230.0HV以上、より好ましくは240.0HV以上である。
一方、ベイナイト硬さが380.0HV超だと、強度が高くなりすぎるおそれがあり、また母材靭性が劣化する。好ましくは360.0HV以下、より好ましくは340.0HV以下である。
<3.硬さ分布>
本発明者らは、十分な一様伸び特性を得るために、板厚方向の平均硬さHV断面平均の分布(すなわち平均値−最小値)を小さくする必要があることを見出した。すなわち、HV断面平均のばらつきが大きいと、HV断面平均の低い部分の変形が支配的となるため、HV断面平均の硬い部分はほとんど伸びることができず、一様伸び特性が低下する。
図1は、硬さ分布PHVの求める際の、鋼板の硬さ測定位置を示す模式図である。図1に示すように、鋼板1の圧延方向Yおよび板厚方向Zと直行するX方向において任意の190mm区間1Bを選択する。区間1Bにおいて、X方向に5mm間隔で、板厚方向の平均硬さHV断面平均を測定する。HV断面平均は後述するように、鋼板1の表面1AからZ方向に1mmの位置D1、t(板厚)/4mmの位置D2、3t/4mmの位置D3およびt−1mmの位置(または裏面から1mmの位置)D4の硬さ(それぞれをHV表面下1mm、HVt/4、HV3t/4およびHV裏面下1mmと称する)を測定することにより求められる。なお、図1において硬さ測定位置は黒丸●で示している。
図2Aは、ある断面における板厚方向の硬さの変化を模式的に表したものである。図2Aに示すように、板厚方向における硬さは、多くの場合、下に凸の曲線状に変化する。
図2Bは、本発明の実施形態に係る板厚方向の平均硬さHV断面平均を算出する方法を説明する図である。本発明の実施形態では、図2Aと図2Bとの間で、下記(ア)〜(エ)の関係が成り立つと仮定している。
(ア)図2Aに示す表面下0〜3mmの領域R1における硬さの積分値(面積S1)は、図2Bに示す表面下1mmの位置硬さHV表面下1mm(すなわち、表面1Aからの板厚方向における位置1mmの線と、一点鎖線で示される硬さの曲線とが交差する点P1における硬さ)×3mmで表される面積(S1’)とほぼ等しい。
(イ)図2Aに示す表面下3mm〜t(板厚)/2mmの領域R2における硬さの積分値(面積S2)は、図2Bに示す表面下t/4mmの位置の硬さHVt/4(すなわち、表面1Aからの板厚方向における位置t/4mmの線と、一点鎖線で示される硬さの曲線とが交差する点P2における硬さ)×(t/2−3)mmの面積S2’とほぼ等しい。
(ウ)図2Aに示す表面下t/2〜t−3mm(または裏面下3mm〜t/2mm)の領域R3における硬さの積分値(面積S3)は、図2Bに示す表面下3t/4mmの位置の硬さHV3t/4(すなわち、表面1Aからの板厚方向における位置3t/4mmの線と、一点鎖線で示される硬さの曲線とが交差する点P3における硬さ)×(t/2−3)mmの面積S3’とほぼ等しい。
(エ)図2Aに示す裏面下0mm〜3mmの領域R4における硬さの積分値(面積S4)は、図2Bに示す裏面下1mmの位置の硬さHV裏面下1mm(すなわち、表面1Aからの板厚方向における位置t−1mmの線と、一点鎖線で示される硬さの曲線とが交差する点P4における硬さ)×3mmの面積S4’とほぼ等しい。
以上より、本発明の実施形態では、板厚方向の平均硬さHV断面平均を、下記式(2)のように算出する。

HV断面平均=(HV表面下1mm×3+HVt/4×(t/2−3)+HV3t/4×(t/2−3)+HV裏面下1mm×3)/t ・・・(2)

なお、図2Aおよび図2Bでは、HV表面下1mm=HV裏面下1mm、およびHVt/4=HV3t/4の場合を例示的に示すが、これらは異なっていてもよい。
上記のようにして求めたHV断面平均において、190mm区間中の平均値μ(HV断面平均)と、最小値min(HV断面平均)を求める。硬さ分布PHVは、平均値μ(HV断面平均)と最小値min(HV断面平均)を用いて、下記式(1)のように算出される。

HV=μ(HV断面平均)−min(HV断面平均) ・・・(1)
本発明者らは、一様伸び特性、特に引張強度(TS)および一様伸び(UEL)の積と、PHVとが相関し、PHVを5.0HV以下とすることにより高いTS×UELの鋼板が得られることを見出した。5.0HV超だと、十分なTS×UELを得ることができない。
本発明の実施形態に係る鋼板は、建築、橋梁、貯蔵タンク、ラインパイプなどの鋼構造物への使用を想定して、板厚を12mm以上とする。好ましくは15mm以上であり、より好ましくは19mm以上である。
本発明の実施形態に係る鋼板は、諸特性(十分な加工性、強度、一様伸び特性、靭性および低降伏比)を満足する。
十分な加工性を示すには、強度が高すぎないことが重要であり、本発明の実施形態に係る鋼板は、降伏強度(YS)500MP以下且つ引張強度(TS)670MPa以下を満たす。好ましくは、YS450MPa以下であり、TS600MPa以下である。
本発明の実施形態に係る鋼板は、高強度であり、具体的には、降伏強度(YS)325MPa以上且つ引張強度(TS)500MPa以上を満たす。好ましくは、YS350MPa以上であり、TS550MPa以上である。
本発明の実施形態に係る鋼板は、十分な一様伸び特性を示し、具体的には、一様伸び(UEL)5%以上、且つTS×UELが4500(MPa・%)以上を満たす。UELは、好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは11%以上である。また、TS×UELは、好ましくは6000MPa・%以上であり、さらに好ましくは7000MPa・%以上である。
本発明の実施形態に係る鋼板は、高靭性であり、具体的には、破面遷移温度(vTrs)−30℃未満を満たす。好ましくは−45℃以下、より好ましくは−55℃以下である。
本発明の実施形態に係る鋼板は、低降伏比であり、具体的には、降伏比(YR)80%以下を満たす。好ましくは、78%以下である。
<4.製造方法>
本発明の実施形態に係る鋼板の製造方法は、圧延終了温度を830℃〜940℃として熱間圧延を行う工程と、Ar3点(℃)−70℃以上の冷却開始温度から400℃〜600℃の冷却停止温度まで、平均冷却速度8〜20℃/秒で冷却する工程と、を含み、後述するPCRが35以下である鋼板の製造方法である。上記のように、本発明の実施形態に係る鋼板を製造するのに、冷却後の再加熱を必要としない。
(熱間圧延を行う工程)
熱間圧延終了時の温度が低いと、組織の異方性が発現し音響異方性を損なう。よって、熱間圧延終了時の温度は830℃以上とし、好ましくは840℃以上、より好ましくは850℃以上である。
一方、結晶粒微細化の観点からは、熱間圧延時の温度は高過ぎない方がよく、熱間圧延終了時の温度を940℃以下とする。好ましくは930℃以下、より好ましくは920℃以下である。
なお、熱間圧延終了時の温度とは、最終の熱間圧延パスの直前の鋼板表面温度を指し、熱電対または放射温度計により測定することができる。
(冷却する工程)
熱間圧延終了後、Ar3点(℃)−70℃以上で冷却を開始する。冷却開始温度をAr3点(℃)−70℃未満とすると、ベイナイト分率が低下するおそれがある。また、冷却開始温度は、圧延終了温度以下とすることが、追加の加熱工程を必要としないため好ましい。
なお、冷却開始温度は、冷却開始した時点(すなわち冷却装置に鋼板を入れる直前)の鋼板表面温度を指し、熱電対または放射温度計により測定することができる。
Ar3点(℃)は熱膨張試験によって測定してもよいし、下記式(6)によって計算してもよい。

Ar3点(℃)=910−310×[C]−80×[Mn]−20×[Cu]−15×[Cr]−55×[Ni]−80×[Mo]−0.35(t−8) ・・・(6)

上記式(6)中の[C]、[Mn]、[Cu]、[Cr]、[Ni]および[Mo]および[V]は、それぞれ、質量%で示したC、Mn、Cu、Cr、NiおよびMoの含有量を示し、tは板厚を示す。
冷却停止温度は400〜600℃とし、冷却開始温度〜冷却停止温度までの平均冷却速度は、8〜20℃/秒とする必要がある。平均冷却速度が8℃/秒未満だと、ベイナイト分率が低下してしまう。好ましくは9℃/秒以上、より好ましくは10℃/秒以上である。
一方、平均冷却速度が20℃/秒超だと、ベイナイト分率が必要以上に高くなってしまう。好ましくは18℃/秒以下、より好ましくは15℃/秒以下である。
なお、冷却停止温度とは冷却終了後に複熱が完了した時点の鋼板表面の温度を意味する。複熱中に表面温度や板厚中心温度は板厚方向平均温度に収斂していくため、冷却完了後に複熱が完了した時点の表面の温度は冷却停止直後の板厚方向平均温度と同義と考えて良い。板厚方向平均温度は、熱電対によって、板厚方向の複数箇所(少なくとも5点)を等間隔に測定して求めてもよいし、鋼板表面温度から熱伝達特性を考慮したシミュレーションにより求めてもよい。平均冷却速度は、冷却開始温度と冷却停止温度の差を冷却に要した時間で除して求めることができる。
冷却開始温度〜冷却停止温度までの平均冷却速度が8〜20℃/秒であっても、冷却停止温度が600℃超だと、ベイナイト変態が進む前に冷却が完了してしまい、ベイナイト分率が低下してしまう。好ましくは580℃以下であり、より好ましくは550℃以下である。
一方、冷却開始温度〜冷却停止温度までの平均冷却速度が8〜20℃/秒であっても、冷却停止温度が400℃未満だと、ベイナイトが著しく硬化する、および/またはより硬いマルテンサイトが析出するなどの問題が生じる。好ましくは430℃以上、より好ましくは450℃以上である。
本発明の実施形態に係る鋼板の製造方法では、下記式(3)で表されるPCRが35以下である必要がある。

CR=([C]+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/15+[Nb]+Sol.B×400)×CR700〜500 ・・・(3)

上記式(3)中の[C]、[Mn]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]および[Nb]は、それぞれ、質量%で示したC、Mn、Ni、Cr、Mo、VおよびNbの含有量を示し、CR700〜500は700℃から500℃までの前記鋼板表面における平均冷却速度であり、Sol.Bは下記式(4)で表される。

Sol.B=[B]−([N]−[Ti]/3.4)×10.8/14 ・・・(4)

上記式(4)中の[B]、[N]および[Ti]は、それぞれ、質量%で示したB、NおよびTiの含有量を示す。ただし、上記式(4)の右辺が0未満の場合は、Sol.B=0とする。
上記冷却する工程における冷却方法は、例えば、水冷とすることができる。
冷却中の鋼板内で冷却速度ばらつきが大きい場合、および冷却停止後の温度偏差が大きい場合に硬さ分布PHVは大きくなる。
鋼板を水冷する際に、冷却水と鋼板の間に蒸気膜が存在している膜沸騰状態と、冷却水と鋼板が直接触れ合う核沸騰状態とが同時に発生すると、特に鋼板表面が700〜500℃の場合に、鋼板表面からの抜熱特性がばらつき、鋼板内の冷却速度ばらつきをもたらす(以下、膜沸騰状態および核沸騰状態が同時に発生した状態を「遷移沸騰状態」と称する)。特に鋼板冷却時の水量が多い場合、冷却水の水圧によって鋼板表面の蒸気膜が破れやすくなり、遷移沸騰状態となる。そのため、鋼板内の冷却速度がばらついたり、冷却停止後の温度偏差が大きくなる結果、硬さ分布PHVが大きくなってしまう。
以上を考慮して、鋼板表面における700〜500℃までの平均冷却速度CR700〜500は、50℃/秒以下にすることが好ましい。より好ましくは40℃/秒以下である。なお、鋼板表面における温度は、熱電対によって測定して求めてもよいし、冷却直前の表面温度、冷却終了後複熱が完了した時点での表面温度および冷却に要した時間から熱伝達率等を考慮してシミュレーションにより求めてもよい。また、CR700〜500は鋼板表面における700℃と500℃の差(200℃)を冷却に要した時間で除することで求めることができる。
また、上記式(3)中の([C]+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/15+[Nb]+Sol.B×400)が大きい場合、硬さにおよぼす冷却速度の影響が敏感となり、鋼板内冷却速度ばらつきが小さい場合でも硬さばらつきが生じやすく、硬さ分布PHVが大きくなってしまう。
上記のように鋼板表面の冷却速度と化学成分を適切に制御することで硬さ分布PHVを制御することができる。具体的には、上記式(3)で表されるPCRを35以下にすることにより、鋼板表面の圧延方向と直交する方向の硬さ分布を小さくすることができる。好ましくは30以下であり、より好ましくは25以下、更に好ましくは23以下、更により好ましくは20以下である。一方で、強度確保の観点からは、PCRを3以上にすることが好ましい。
熱間圧延を行う工程後冷却を開始するまで、および冷却する工程後室温までの冷却は特に制限されず、例えば放冷とすることができる。
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態をより具体的に説明する。本発明の実施形態は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の実施形態の技術的範囲に包含される。
表1の鋼種Aに示す化学成分組成を満たす鋼片(スラブ)を常法により得た。この鋼片を1100℃に加熱し、熱間圧延を行い、圧延終了温度を849℃とした。その後、圧延終了温度から冷却開始温度まで放冷した。それから、冷却開始温度は774℃とし、冷却停止温度は516℃とし、774℃から516℃までの平均冷却速度を9.5℃/秒として水冷を行った。なお、その際の鋼板表面の700〜500℃までの平均冷却速度CR700〜500は17℃/秒とし、上記式(3)および(4)によりPCRは6と算出された。その後516℃から室温まで放冷して、試験No.1の鋼板を得た。板厚は20mmであった。
なお、圧延終了温度は、最終の熱間圧延パスの直前の鋼板表面温度とし、放射温度計を用いて測定した。冷却開始温度は、放射温度計を用いて測定した。冷却停止温度は、放射温度計を用いて冷却終了後複熱が完了した時点での鋼板表面温度を測定することにより求めた。平均冷却速度は、冷却開始温度と冷却停止温度の差を冷却に要した時間で除することで求めた。冷却中(特に700〜500℃の間)の表面温度は、冷却開始温度、冷却停止温度および冷却に要した時間から熱伝達率等を考慮してシミュレーションにより求め、CR700〜500は700℃と500℃の差(200℃)を冷却に要した時間で除することで求めた。
さらに、試験No.1から鋼種および製造条件を表1および表2に示すように変更して試験No.2〜10を得た。表1の化学成分組成において「−」は、意図的に添加していないことを示す。また、表2において、Ar3点(℃)は、上記式(6)に基づいて算出し、試験No.5は冷却せずに室温まで空冷した例のため、冷却開始温度、冷却停止温度および平均冷却速度に該当する値はなく「−」とした。試験No.5のように空冷の場合のCR700〜500は下記式(7)によって算出した。

空冷の場合のCR700〜500 = 12.508×t−0.9797 ・・・(7)

上記式(7)中のtは板厚(mm)を示す。
試験No.6はCR700〜500が100℃/秒を超えたが、用いたシミュレーションでは100/秒を超える冷却速度の定量値を算出できないため、PCRの算出においては、CR700〜500=100として求めた。
表1および表2ならびに後述する表3において、下線を引いた数値は本発明の実施形態の範囲から外れていることを示す。
Figure 2021161486
Figure 2021161486
次に、得られた鋼板の金属組織、ベイナイト硬さ、硬さ分布、降伏強度、引張強度、降伏比、一様伸び、引張強度×一様伸びおよび靭性を評価した。
[金属組織評価]
金属組織の観察は以下のようにして実施した。
(a)鋼板表面の圧延方向とは垂直方向に平行で、且つ鋼板表面に対して垂直な、鋼板表裏面を含む板厚断面を観察できるよう、上記鋼板からサンプルを採取した。
(b)湿式エメリー研磨紙(#150〜#1500)での研磨、又はそれと同等の機能を有する研磨として、例えばダイヤモンドスラリー等の研磨剤を用いた研磨等により、観察面の鏡面仕上を行った。
(c)研磨されたサンプルを、3%ナイタール溶液を用いて腐食し、結晶組織を現出させた。
(d)t(板厚)/4部位の任意の箇所に対して、現出させた組織を400倍の倍率で写真撮影した。撮影した400倍(視野面積150μm×200μm)の写真を用いて、組織分率(フェライト、ベイナイト、パーライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト)を算出した。
[ベイナイト硬さ]
上記腐食されたサンプル中のt/4部位のベイナイト組織に対して、マイクロビッカース硬度計を用いて硬さを測定した。測定荷重は基本5gとし、組織サイズが小さい場合は3gとした。少なくとも5点以上測定し、その平均値を採用した。
[硬さ分布]
上記腐食されたサンプル中の任意の190mm区間において、5mm間隔で、HV表面下1mm、HVt/4、HV3t/4およびHV裏面下1mmを測定し、上記式(2)によりHV断面平均を算出した。さらに、当該190mm区間におけるHV断面平均の平均値μ(HV断面平均)および最小値min(HV断面平均)を求め、上記式(1)により硬さ分布PHVを算出した。
[降伏強度(YS)、引張強度(TS)、一様伸び(UEL)]
t(板厚)/4の部位から、試験片の長手方向が圧延方向と垂直になるように板状引張試験片(JIS 1A号または5号試験片と同じ)を採取して、JIS Z 2241(2011)の要領で引張試験を行い、降伏点(YP)または0.2%YS、TSおよびUELを測定し、また降伏比(YR)およびTS×UELを算出した。
[靭性評価]
t(板厚)/4の部位から、試験片の長手方向が圧延方向と垂直になるようにフルサイズ(10mm×10mm×55mm)のVノッチ試験片を採取して、JIS Z 2242(2005)の要領でシャルピー衝撃試験を行い、破面遷移温度(vTrs)を測定した。なお、各試験温度での結果は、3本の平均値を採用した。
結果を表3に示す。
Figure 2021161486
表1〜3の結果を考察する。
試験No.1〜4は、本発明の実施形態で規定する化学成分組成を満足する鋼種を用いて、本発明の実施形態で規定する製造条件で製造した例である。これらは、本発明で規定する金属組織、ベイナイト硬さおよび硬さ分布を満足し、諸特性(降伏強度325〜500MPa、引張強度500〜670MPa、降伏比80%以下、一様伸び5%以上、TS×UEL4500MPa・%以上および破面遷移温度−30℃未満)を満足した。これに対し、試験No.5〜10は、本発明の実施形態で規定する化学成分組成および/または製造条件を満たさず、上記諸性能のうち少なくとも1つが劣る結果となった。
試験No.5は、室温まで空冷した例であり、平均冷却速度が非常に遅く、8℃/秒未満であったため、フェライトおよびパーライトからなる組織となり、フェライトとベイナイトの面積分率の和が85%未満およびベイナイト面積分率が20%未満となり、引張強度が500MPa未満となった。
試験No.6は、圧延温度〜冷却停止温度までの平均冷却速度が20℃/秒超であったため、ベイナイト面積分率が80%超となり、降伏強度が500MPa超であった。またPCRが35超であったため、硬さ分布PHVが5.0超となりTS×UELが4500MPa・%未満となった。
試験No.7は、冷却停止温度が400℃未満であったため、ベイナイト硬さが380.0HV超となり、引張強度が670MP超であり、また、破面遷移温度−30℃と、靭性が十分ではなかった。
試験No.8は、C含有量が0.08質量%未満であったため、フェライトとベイナイトの面積分率の和が85%未満およびベイナイト面積分率が20%未満となり、引張強度が500MP未満となり、また、降伏比が80%超となった。
試験No.9は、C含有量が0.08質量%未満であったため、フェライトとベイナイトの面積分率の和が85%未満およびベイナイト面積分率が20%未満となり、またNb含有量も過剰であったため、降伏比が80%超となった。
試験No.10は、PCRが35超であったため、硬さ分布PHVが5.0超となりTS×UELが4500MPa・%未満となった。
上記実施例において、硬さ分布PHVとTS×UELとの関係を示すグラフを図3に示す。図3に示すように、PHVとTS×UELとは相関しており、破線の曲線状に変化することがわかる。破線の曲線からPHVを5.0HV以下にすることによりTS×UELを4500MPa・%以上にできることがわかる。
上記実施例において、PCRと硬さ分布PHVとの関係を示すグラフを図4に示す。図4に示すように、PCRとPHVとは相関しており、破線の曲線状に変化することがわかる。破線の曲線から、PCRと35以下にすることによりPHVを5.0HV以上にできることがわかる。
本発明の実施形態に係る鋼板は、諸性能(十分な加工性、強度、一様伸び特性、靭性および低降伏比)を満足し、且つ熱間圧延後に冷却してから再び加熱する必要がないため安価に製造できる。そのため、本発明の実施形態に係る鋼板は、建築、橋梁、貯蔵タンク、ラインパイプなどの鋼構造物に用いられる鋼板として好適である。
1 鋼板
1A 鋼板1の表面
1B 190mm区間
D1 鋼板1の表面1AからZ方向に1mmの位置
D2 鋼板1の表面1AからZ方向にt/4mmの位置
D3 鋼板1の表面1AからZ方向に3t/4mmの位置
D4 鋼板1の表面1AからZ方向にt−1mmの位置
P1 表面下1mmの線と、一点鎖線で示される硬さの曲線とが交差する点
P2 表面下t/4mmの線と、一点鎖線で示される硬さの曲線とが交差する点
P3 表面下3t/4mmの線と、一点鎖線で示される硬さの曲線とが交差する点
P4 表面下t−1mmの線と、一点鎖線で示される硬さの曲線とが交差する点
R1 表面下0〜3mmの領域
R2 表面下3mm〜t(板厚)/2mmの領域
R3 表面下t/2〜t−3mmの領域
R4 裏面下0mm〜3mmの領域
S1 表面下0〜3mmの硬さの積分値
S2 表面下3mm〜t(板厚)/2mmの硬さの積分値
S3 表面下t/2〜t−3mmの硬さの積分値
S4 裏面下0mm〜3mmの硬さの積分値
S1’HV表面下1mm×3mmで表される面積
S2’HVt/4×(t/2−3)mmで表される面積
S3’HV3t/4×(t/2−3)mmで表される面積
S4’HV裏面下1mm×3mmで表される面積
X 圧延方向Yおよび板厚方向Zと直行する方向
Y 圧延方向
Z 板厚方向

Claims (4)

  1. C :0.08〜0.16質量%、
    Si:0.25〜0.50質量%、
    Mn:1.1〜1.6質量%、
    P :0質量%超0.030質量%以下、
    S :0質量%超0.003質量%以下、
    Al:0.020〜0.080質量%、
    Ti:0.008〜0.020質量%、
    N :0.0030〜0.0070質量%、
    Ca:0.0005〜0.0050質量%、および
    残部:鉄および不可避不純物からなり、
    フェライトおよびベイナイトの面積分率の和が85%以上であり、且つ前記ベイナイトの面積分率が20〜80%であり、
    前記ベイナイトの硬さが220.0〜380.0HVであり、
    下記式(1)で表される硬さ分布PHVが5.0HV以下であり、且つ板厚12mm以上の鋼板。

    HV=μ(HV断面平均)−min(HV断面平均) ・・・(1)

    ここで、HV断面平均は、前記鋼板の任意の位置における板厚方向の平均硬さであり、下記式(2)のように算出される。

    HV断面平均=(HV表面下1mm×3+HVt/4×(t/2−3)+HV3t/4×(t/2−3)+HV裏面下1mm×3)/t ・・・(2)

    上記式(2)中のtは前記鋼板の板厚(mm)であり、HV表面下1mmは前記鋼板の表面下1mmの位置における硬さ(HV)であり、HVt/4は前記鋼板の表面下t/4mmの位置における硬さ(HV)であり、HV3t/4は、前記鋼板の表面下3t/4mmの位置における硬さ(HV)であり、HV裏面下1mmは前記鋼板の裏面下1mmの位置における硬さ(HV)である。
    上記式(1)中のμ(HV断面平均)は、前記鋼板の圧延方向および板厚方向とは垂直方向の任意の190mmの区間において、5mm間隔ごとに測定したHV断面平均の平均値であり、min(HV断面平均)は、前記190mmの区間において、5mm間隔ごとに測定したHV断面平均の最小値である。
  2. Cu:0質量%超0.50質量%以下、
    Ni:0質量%超0.50質量%以下、
    Cr:0質量%超0.50質量%以下、
    Mo:0質量%超0.50質量%以下、および
    V :0質量%超0.10質量%以下
    からなる群から選択される一種以上を更に含有する請求項1に記載の鋼板。
  3. Nb:0質量%超0.030質量%以下、および
    B :0質量%超0.002質量%以下
    からなる群から選択される一種以上を更に含有する請求項1または2に記載の鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学成分組成の鋼を用意する工程と、
    圧延終了温度を830℃〜940℃として熱間圧延を行う工程と、
    Ar3点(℃)−70℃以上の冷却開始温度から、400℃〜600℃の冷却停止温度まで、平均冷却速度8〜20℃/秒で冷却する工程と、を含み、
    下記式(3)で表されるPCRが35以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼板の製造方法。

    CR=([C]+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/15+[Nb]+Sol.B×400)×CR700〜500 ・・・(3)

    上記式(3)中の[C]、[Mn]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]および[Nb]は、それぞれ、質量%で示したC、Mn、Ni、Cr、Mo、VおよびNbの含有量を示し、CR700〜500は700℃から500℃までの前記鋼板表面における平均冷却速度であり、Sol.Bは下記式(4)で表される。

    Sol.B=[B]−([N]−[Ti]/3.4)×10.8/14 ・・・(4)

    上記式(4)中の[B]、[N]および[Ti]は、それぞれ、質量%で示したB、NおよびTiの含有量を示す。ただし、上記式(4)の右辺が0未満の場合は、Sol.B=0とする。
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