JP2021160609A - 移動装置 - Google Patents

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JP2021160609A
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敬造 荒木
Keizo Araki
晃 水野
Akira Mizuno
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Equos Research Co Ltd
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Abstract

【課題】移動装置の状態に合わせてロール角を制御する。【解決手段】移動装置は、ボディと、一対の車輪を含むN個の車輪と、一対の車輪に対してボディを幅方向に傾斜させるように構成されている傾斜装置を含む連結装置と、傾斜装置を駆動するように構成されている傾斜駆動装置と、旋回の目標方向と旋回の目標程度とを示す旋回目標情報を取得するように構成されている旋回目標情報取得装置と、傾斜駆動装置を制御するように構成されている制御装置と、を備えている。制御装置は、旋回目標情報が旋回を示す場合に、傾斜駆動装置を制御することによって、ボディを旋回の内側に傾斜させるように構成されている。制御装置は、移動装置の特定の2つの状態の間で、ボディの幅方向のロール角の大きさと、傾斜駆動装置の駆動力の大きさと、の少なくとも1つが異なるように、傾斜駆動装置を制御するように構成されている。【選択図】 図1

Description

本明細書は、車輪を備える移動装置に関する。
車輪を備える種々の移動装置が利用されている。例えば、車体と車輪とを備える車両が利用されている。また、旋回時に旋回の内側に傾斜する車両が提案されている。
特開2016−222024号公報
移動装置の状態は、種々の状態であり得る。例えば、速度は、種々に変化し得る。移動装置の状態に合わせて移動装置のボディのロール角を制御する点については、十分な工夫がなされていないのが実情であった。
本明細書は、移動装置の状態に合わせてロール角を制御する技術を開示する。
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
移動装置であって、
ボディと、
1以上の前輪と1以上の後輪とを含むN個(Nは3以上の整数)の車輪であって、前記N個の車輪は前記移動装置の幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪を含み、前記N個の車輪は前記幅方向に回動可能な1以上の回動輪を含む、前記N個の車輪と、
前記一対の車輪と前記ボディとを連結している連結装置であって、前記連結装置は前記一対の車輪に対して前記ボディを前記幅方向に傾斜させるように構成されている傾斜装置を含む、前記連結装置と、
前記傾斜装置を駆動するように構成されている傾斜駆動装置と、
旋回の目標方向と旋回の目標程度とを示す旋回目標情報を取得するように構成されている旋回目標情報取得装置と、
前記傾斜駆動装置を制御するように構成されている制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記旋回目標情報が旋回を示す場合に、前記傾斜駆動装置を制御することによって、前記ボディを前記旋回の内側に傾斜させるように構成されており、
前記制御装置は、前記移動装置の特定の2つの状態の間で、前記ボディの前記幅方向のロール角の大きさと、前記傾斜駆動装置の駆動力の大きさと、の少なくとも1つが異なるように、前記傾斜駆動装置を制御するように構成されており、
前記特定の2つの状態の間では、前記移動装置の加速度の大きさと、前記目標程度と、前記1以上の回動輪に関連する前記移動装置の状態と、の少なくとも1つが互いに異なっている、
移動装置。
この構成によれば、制御装置は、移動装置の状態に合わせてロール角を制御できる。
[適用例2]
適用例1に記載の移動装置であって、
前記特定の2つの状態は、
前記加速度の大きさがゼロよりも大きいことを示す小変化状態と、
前記加速度の大きさが前記小変化状態の前記加速度の前記大きさよりも大きいことを示す大変化状態と、
の組み合わせを含み、
前記制御装置は、前記大変化状態では、前記小変化状態と比べて、前記ロール角の前記大きさと前記駆動力の前記大きさとの少なくとも一方が大きくなるように、前記傾斜駆動装置を制御するように構成されている、
移動装置。
この構成によれば、大きい加速度の大きさを示す大変化状態では、小さい加速度の大きさを示す小変化状態と比べて、移動装置は、大きいロール角、または、傾斜駆動装置の大きい駆動力で、移動できる。
[適用例3]
適用例2に記載の移動装置であって、
前記移動装置の速度を測定するように構成されている速度測定装置を備え、
前記目標方向と前記目標程度とのそれぞれが一定である状態を、一定目標状態と呼び、
前記制御装置は、前記一定目標状態において、前記速度測定装置によって測定された速度である測定速度が第1基準速度以下である場合に、前記測定速度が小さいほど前記ロール角の前記大きさを低減するように構成されており、
前記ロール角の前記大きさがゼロよりも大きい第1ロール角大きさであり、かつ、前記速度が第1基準速度以上の第1速度であり、かつ、前記目標方向と前記目標程度とのそれぞれが一定である状態を、第1開始状態と呼び、
前記小変化状態と前記大変化状態との組み合わせは、第1小変化状態と第1大変化状態との第1組み合わせを含み、
前記第1小変化状態は、前記第1開始状態から、ゼロよりも大きい大きさを有する一定の第1加速度での減速によって、前記速度が前記第1基準速度よりも遅い第2速度に変化した状態を示し、
前記第1大変化状態は、前記第1開始状態から、前記第1加速度の大きさよりも大きい大きさを有する一定の第2加速度での減速によって、前記速度が前記第2速度に変化した状態を示し、
前記制御装置は、前記第1大変化状態での前記ロール角の大きさが、前記第1小変化状態での前記ロール角の大きさよりも大きくなるように、前記傾斜駆動装置を制御するように構成されている、
制御装置。
この構成によれば、第1大変化状態では、第1小変化状態と比べて、移動装置は、大きい大きさのロール角で移動できる。
[適用例4]
適用例3に記載の移動装置であって、
前記加速度と相関を有する加速度指標値を取得するように構成されている加速度指標値取得装置を備え、
前記制御装置は、
前記測定速度と前記旋回目標情報を用いて前記ロール角の目標値である目標ロール角を決定する処理と、
前記ロール角と前記目標ロール角との間の差を用いるフィードバック制御により、前記傾斜駆動装置を制御する処理と、
を実行するように構成されており、
前記目標ロール角を決定する前記処理は、前記目標方向と前記目標程度とのそれぞれが一定である状態において、前記測定速度が前記第1基準速度以下である場合に、前記測定速度が小さいほど前記目標ロール角の大きさを小さな値に調整する処理を含み、
前記フィードバック制御は、比例ゲインを用いる比例制御と、微分ゲインを用いる微分制御と、積分ゲインを用いる積分制御と、のうちの1以上の制御を含み、
前記制御装置は、前記加速度指標値が減速を示す場合に、前記加速度指標値によって示される前記加速度の大きさの少なくとも一部の範囲で、前記フィードバック制御に含まれる前記1以上の制御のうちの少なくとも1つの制御に対応付けられるゲインを、前記加速度指標値によって示される前記加速度の大きさが大きいほど、小さい値に調整するように、構成されている、
移動措置。
この構成によれば、第1大変化状態では、第1小変化状態と比べて、ゲインが小さいので、制御装置は、ロール角の急な低減を抑制できる。
[適用例5]
適用例3に記載の移動装置であって、
前記加速度と相関を有する加速度指標値を取得するように構成されている加速度指標値取得装置を備え、
前記速度測定装置は、前記測定速度に含まれる高周波成分を時定数に従って減衰させるように構成されているローパスフィルタを含み、
前記制御装置は、前記加速度指標値が減速を示す場合に、前記加速度指標値によって示される前記加速度の大きさの少なくとも一部の範囲で、前記加速度指標値によって示される前記加速度の大きさが大きいほど、前記ローパスフィルタの前記時定数を大きな値に調整するように、構成されている、
移動装置。
この構成によれば、加速度指標値によって示される加速度の大きさが大きい場合には、時定数が大きいので、移動装置の速度の低減に対する測定速度の低減が遅延する。従って、制御装置は、第1大変化状態では、第1小変化状態と比べて、測定速度の低減を遅らせることができる。これにより、制御装置は、第1大変化状態では、第1小変化状態と比べて、ロール角の大きさの低減を遅らせることができる。
[適用例6]
適用例3に記載の移動装置であって、
前記加速度と相関を有する加速度指標値を取得するように構成されている加速度指標値取得装置を備え、
前記制御装置は、
前記測定速度と前記加速度指標値と前記旋回目標情報とを用いて前記ロール角の目標値である目標ロール角を決定する処理と、
前記ロール角を前記目標ロール角に近づける前記駆動力を前記傾斜駆動装置に生成させる処理と、
を実行するように構成されており、
前記目標ロール角を決定する処理は、前記測定速度と前記目標方向と前記目標程度とのそれぞれが一定である状態において、前記測定速度が前記第1基準速度以下である場合に、前記加速度指標値によって示される前記加速度の大きさが大きいほど、前記目標ロール角の大きさを大きな値に調整する処理を含む、
移動装置。
この構成によれば、加速度指標値によって示される加速度の大きさが大きいほど、目標ロール角が大きいので、制御装置は、第1大変化状態では、第1小変化状態と比べて、ロール角の大きさの低減を抑制できる。
[適用例7]
適用例3から6のいずれかに記載の移動装置であって、
前記制御装置は、前記移動装置の状態が前記第1大変化状態になった後、1以上の復帰条件のうちのいずれかが満たされる場合に、前記ロール角の前記大きさを低減するように構成されている、
移動装置。
この構成によれば、制御装置は、第1大変化状態の後、復帰条件が満たされる場合に、ロール角の大きさを低減できる。
[適用例8]
適用例7に記載の移動装置であって、
減速度の目標大きさを示す減速目標情報を取得するように構成されている減速目標情報取得装置を備え、
前記1以上の復帰条件は、
前記移動装置が停止してから基準時間が経過することを要件として含む第1復帰条件と、
前記移動装置が加速することを要件として含む第2復帰条件と、
前記減速度の前記目標大きさが低減することを要件として含む第3復帰条件と、
を含む、移動装置。
この構成によれば、制御装置は、第1大変化状態の後、適切に、ロール角の大きさを低減できる。
[適用例9]
適用例8に記載の移動装置であって、
前記移動装置のヨー角速度を測定するように構成されているヨー角速度測定装置を備え、
前記第1復帰条件は、前記ヨー角速度の大きさが閾値以下であることを、要件として含む、移動装置。
この構成によれば、移動装置は、ヨー角速度が閾値以下である場合に、ロール角の大きさを低減できる。
[適用例10]
適用例2から9のいずれかに記載の移動装置であって、
前記加速度と相関を有する加速度指標値を取得するように構成されている加速度指標値取得装置を備え、
前記小変化状態と前記大変化状態との組み合わせは、第2小変化状態と第2大変化状態との第2組み合わせを含み、
前記第2小変化状態は、前記加速度指標値によって示される第3加速度であってゼロよりも大きい一定の前記第3加速度での加速によって、特定の開始状態から前記速度が増大している状態であり、
前記第2大変化状態は、前記加速度指標値によって示される第4加速度であって前記第3加速度よりも大きい一定の前記第4加速度での加速によって、前記特定の開始状態から前記速度が増大している状態であり、
前記制御装置は、前記第2大変化状態での前記駆動力の前記大きさが、前記第2小変化状態での前記駆動力の前記大きさよりも大きくなるように、前記傾斜駆動装置を制御するように構成されている、
制御装置。
この構成によれば、移動装置は、移動装置が大きい加速度で加速する場合に、傾斜駆動装置の駆動力が大きいので、ロール角の制御の遅れを抑制できる。
[適用例11]
適用例1から10のいずれかに記載の移動装置であって、
前記制御装置は、前記旋回目標情報を用いて、前記1以上の回動輪の方向の目標を示す目標回動方向を決定するように構成されており、
前記目標回動方向と速度との組み合わせに対応付けられた前記ロール角の前記大きさであって、前記ボディに作用する遠心力と重力とが釣り合う状態の前記ロール角の前記大きさを、釣合ロール角大きさと呼び、
前記特定の2つの状態は、
前記速度が第2基準速度よりも遅い第3速度であり、かつ、前記旋回の前記目標程度が基準程度よりも小さい第1程度であることを示す第1旋回状態と、
前記速度が前記第3速度であり、かつ、前記旋回の前記目標程度が前記基準程度よりも大きい第2程度であることを示す第2旋回状態と、
の組み合わせを含み、
前記制御装置は、
前記第1旋回状態では、前記ロール角の前記大きさを前記釣合ロール角大きさに近づけ、
前記第2旋回状態では、前記ロール角の前記大きさを前記釣合ロール角大きさよりも大きい値に近づける、
ように構成されている、移動装置。
この構成によれば、速度が第2基準速度よりも遅い第3速度であり、かつ、目標程度が基準程度よりも大きい第2程度である場合に、ロール角の大きさが釣合ロール角大きさよりも大きい値に近づくので、移動装置は、適切に旋回できる。
[適用例12]
適用例1から11のいずれかに記載の移動装置であって、
前記1以上の回動輪を前記幅方向に回動可能に支持する回動輪支持装置と、
前記1以上の回動輪を前記幅方向に回動させる回動トルクを生成するように構成されている操舵駆動装置と、
を備え、
前記特定の2つの状態は、
前記操舵駆動装置の状態が予め決められた不具合状態であることを示す第1装置状態と、
前記操舵駆動装置の前記状態が前記不具合状態ではないことを示す第2装置状態と、
の組み合わせを含み、
前記制御装置は、速度と前記目標方向と前記目標程度とのそれぞれが一定である状態で、前記速度の少なくとも一部の範囲内で、前記移動装置が前記第1装置状態で旋回する第1の場合には、前記移動装置が前記第2装置状態で旋回する第2の場合と比べて、前記ロール角の前記大きさが大きくなるように、前記傾斜駆動装置を制御するように構成されている、
移動装置。
この構成によれば、操舵駆動装置の状態が不具合状態である場合に、ロール角の大きさが大きいので、移動装置は、適切に旋回できる。
なお、本明細書に開示の技術は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、移動装置、車両、移動装置の制御装置、車両の制御装置、移動装置の制御方法、車両の制御方法、等の態様で実現することができる。
(A)−(C)は、車両10を示す説明図である。 車両10を示す説明図である。 (A)−(D)は、車両10の簡略化された背面図である。 旋回時の力のバランスの説明図である。 車輪角Awと旋回半径Rとの簡略化された関係を示す説明図である。 車両10の制御に関する構成を示すブロック図である。 リーンモータ650の制御処理の例を示すフローチャートである。 リーンモータ650の制御処理の例を示すフローチャートである。 加速度Acと微分ゲインGdとの対応関係の例を示すグラフである。 (A)は、速度Vと入力角AIとの組み合わせと目標ロール角Artとの対応関係の例を示すグラフである。(B)は、ロール角Arの変化の例を示すグラフである。 (A)、(B)は、車両10の動作例を示すグラフである。 操舵モータ550の制御処理の例を示すフローチャートである。 車両10aの制御に関する構成を示すブロック図である。 リーンモータ650の制御処理の例を示すフローチャートである。 加速度Acと時定数Tfとの対応関係の例を示すグラフである。 (A)、(B)は、車両10aの動作例を示すグラフである。 (A)は、速度Vと入力角AIとの組み合わせと目標ロール角Artとの対応関係の別の例を示すグラフである。(B)は、1つの入力角に対応するグラフである。 (A)は、加速度Acと微分ゲインGdとの対応関係の別の例を示すグラフである。(B)は、制御値CLと加速度Acとの対応関係の例を示すグラフである。 (A)は、入力角AIと目標ロール角Artとの対応関係の別の例を示すグラフである。(B)は、速度Vと入力角AIとの組み合わせと目標ロール角Artとの対応関係の例を示すグラフである。 (A)は、リーンモータ650の制御処理の例を示すフローチャートである。(B)は、第2マップデータMAr2の例を示すグラフである。
A.第1実施例:
A1.車両10の構成:
図1(A)−図1(C)、図2は、移動装置の一実施例である車両10を示す説明図である。図1(A)は、車両10の右側面図を示し、図1(B)は、車両10の上面図を示し、図1(C)は、車両10の下面図を示している。また、図2は、車両10の背面図を示している。これらの図は、水平な地面GL(図1(A))上に配置され、傾斜していない状態の車両10を、示している。各図には、6つの方向DF、DB、DU、DD、DR、DLが示されている。前方向DFは、車両10の前方向(すなわち、前進方向)であり、後方向DBは、前方向DFの反対方向である。上方向DUは、鉛直上方向であり、下方向DDは、鉛直下方向(すなわち、上方向DUの反対方向)である。鉛直下方向は、重力の方向である。右方向DRは、前方向DFに走行する車両10から見た右方向であり、左方向DLは、右方向DRの反対方向である。方向DF、DB、DR、DLは、いずれも、水平な方向である。右と左の方向DR、DLは、前方向DFに垂直である。
本実施例では、車両10は、一人乗り用の小型車両である。車両10(図1(A)、図1(B))は、車体100と、前輪20と、一対の後輪30R、30Lと、を有する三輪車である。前輪20は、回動輪の例であり、車両10の幅方向の中心に配置されている。回動輪は、車両10の幅方向(すなわち、右方向と左方向)に回動可能な車輪である。回動輪の進行方向は、前方向DFから右と左とに回転可能である。左後輪30Lと右後輪30Rとは、駆動輪であり、車両10の幅方向の中心に対して対称に、幅方向に互いに離れて配置されている。車両10が走行する場合、車輪20、30R、30Lは、回転軸20x、30Rx、30Lxを中心に、それぞれ回転する。
車体100(図1)は、本体部110を有している。本体部110は、底部113と、底部113の前方向DF側に接続された前壁部112と、前壁部112の上端から前方向DFに向かって延びる前部111と、底部113の後方向DB側に接続された後壁部114と、後壁部114の上端から後方向DBに向かって延びる後部115と、を有している。本体部110は、例えば、金属製のフレームと、フレームに固定されたパネルと、を有している。
車体100は、さらに、底部113上に固定された座席120と、座席120の前方向DF側に配置されたアクセルペダル170とブレーキペダル180と、底部113に固定された制御装置900とバッテリ800と、前部111に取り付けられたハンドル160と、前部111に固定された前輪支持装置500と、前部111に取り付けられた操舵モータ550と、を有している。図示を省略するが、本体部110には、他の部材(例えば、屋根、前照灯など)が固定され得る。車体100は、本体部110に固定された部材を含んでいる。
ハンドル160は、右方向と左方向とに回転可能な部材である。直進を示す所定の回転位置(直進回転位置と呼ぶ)に対するハンドル160の回転角度(入力角とも呼ぶ)は、旋回の目標方向と旋回の目標程度とを表す旋回目標情報の例である。本実施例では、「入力角=ゼロ」は、直進を示し、「入力角>ゼロ」は、右旋回を示し、「入力角<ゼロ」は、左旋回を示している。入力角の大きさ(すなわち、絶対値)は、旋回の目標程度を示している。運転者は、ハンドル160を操作することによって、旋回目標情報を入力できる。
図1(B)には、前輪20の回転軸20xと方向D20が示されている。図1(B)では、車両10を示すために、前部111の一部の図示が省略されている。車両10が前進する場合、前輪20は、方向D20に向かって進行する(進行方向D20とも呼ぶ)。進行方向D20は、回転軸20xに垂直に前方向DF側に延びる方向である。図1(A)には、前輪20の回動軸27が示されている。車両10の旋回時、方向D20は、回動軸27を中心に、旋回方向へ回動する。
車輪角Aw(図1(B))は、前方向DFを基準とする進行方向D20の角度である。車輪角Awは、車体100の上方向(車体100が鉛直上方向DUに対して傾斜していない場合には、鉛直上方向DUと同じ)に平行な軸まわりの角度を示している。本実施例では、「Aw=ゼロ」は、「D20=DF」を示している。「Aw>ゼロ」は、「旋回方向=右方向DR」を示し、「Aw<ゼロ」は、「旋回方向=左方向DL」を示している。車輪角Awは、前輪20の回動の角度を示している。前輪20が操舵される場合、車輪角Awは、いわゆる操舵角に対応する。
図1(A)中の角度CAは、いわゆるキャスター角である。キャスター角CAは、車体100の上方向(車体100が鉛直上方向DUに対して傾斜していない場合には、鉛直上方向DUと同じ)と、回動軸27に沿って鉛直上方向DU側へ向かう方向と、のなす角度である。本実施例では、キャスター角CAがゼロよりも大きい。
図1(A)、図1(C)中の交点26は、回動軸27と地面GLとの交点である。交点26は、前輪20の地面GLとの接触中心29よりも、前方向DF側に位置している。交点26と接触中心29との間の後方向DBの距離Ltは、トレールと呼ばれる。正のトレールLtは、接触中心29が交点26よりも後方向DB側に位置していることを示している。なお、図1(C)に示すように、前輪20の接触中心29は、前輪20と地面GLとの接触領域28の重心である。接触領域の重心は、接触領域内に質量が均等に分布していると仮定する場合の重心の位置である。他の車輪30R、30Lと地面GLとの接触領域38R、38Lと、接触中心39R、39Lとは、同様に決定される。
図1(A)に示すように、車両10は、車体100の後壁部114の後方向DB側に配置された連結装置600を有している。図2には、車両10のうちの連結装置600を含む一部分の簡略化された背面図が示されている。図2に示すように、2つの後輪30L、30Rと、車体100とは、連結装置600によって連結されている。連結装置600は、リンク機構60と、リンク機構60に固定された駆動モータ660R、660Lと、リンク機構60に取り付けられたリーンモータ650と、リンク機構60の上側の部分である支持部69と車体100の後部115とを接続するサスペンションシステム670と、リンク機構60(図1(C))と車体100の後壁部114とを接続する2本のアーム680と、を備えている。
リンク機構60(図2)は、いわゆる、平行リンクである。リンク機構60は、右方向DRに向かって順番に並ぶ3つの縦リンク部材61L、61C、61Rと、下方向DDに向かって順番に並ぶ2つの横リンク部材61U、61Dと、中縦リンク部材61Cの上部に固定された支持部69と、を有している。水平な地面GL(すなわち、鉛直上方向DUに垂直な地面GL)上で車体100が傾斜せずに直立している場合、縦リンク部材61L、61C、61Rは、鉛直方向に平行であり、横リンク部材61U、61Dは、水平方向に平行である。2つの縦リンク部材61L、61Rと、2つの横リンク部材61U、61Dとは、平行四辺形リンク機構を形成している。中縦リンク部材61Cは、2つの横リンク部材61U、61Dの中央部分を連結している。リンク部材61L、61C、61R、61U、61Dと、支持部69とは、例えば、金属で形成されている。
リンク機構60は、複数のリンク部材を回転可能に連結する軸受を有している。例えば、軸受68Dは、2個のリンク部材61D、61Cを回転可能に連結し、軸受68Uは、2個のリンク部材61U、61Cを回転可能に連結している。説明を省略するが、他の複数のリンク部材も、軸受によって連結されている。軸受の回転軸は、後方向DB側から前方向DF側に向かって延びている(本実施例では、回転軸は、前方向DFに平行である)。互いに連結された2個のリンク部材は、予め決められた角度範囲(例えば、180度未満の範囲)内で、回転軸を中心に相対的に回転可能であってよい。
左縦リンク部材61Lには、左駆動モータ660Lが取り付けられている。左駆動モータ660Lには、左後輪30Lが取り付けられている。また、右縦リンク部材61Rには、右駆動モータ660Rが取り付けられている。660右駆動モータ660Rには、右後輪30Rが取り付けられている。
リーンモータ650は、リンク機構60を駆動するように構成されている駆動装置の例であり、本実施例では、電気モータである。リーンモータ650は、中縦リンク部材61Cと上横リンク部材61Uとに接続されている。リーンモータ650は、上横リンク部材61Uを、中縦リンク部材61Cに対して、回転させる。これにより、車体100は、幅方向(すなわち、右方向、または、左方向)に傾斜する(詳細は、後述)。このように傾斜する運動は、ロール運動とも呼ばれる。なお、リーンモータ650と中縦リンク部材61Cとは、ギヤを介して接続されてよい。また、リーンモータ650と上横リンク部材61Uとは、ギヤを介して接続されてよい。以下、リーンモータ650によって生成されるトルクを、リーンモータトルクとも呼ぶ。リーンモータトルクは、車体100をロールさせる。
図1(A)、図1(C)、図2に示すように、2本のアーム680は、車両10の幅方向に並んで配置されている。2本のアーム680は、前方向DFにおおよそ平行に延びている。アーム680の前方向DF側の端部は、後壁部114に、回転可能に接続されている。また、アーム680の後方向DB側の端部は、中縦リンク部材61Cに回転可能に接続されている。
サスペンションシステム670(図2)は、左サスペンション670Lと右サスペンション670Rと、を有している。本実施例では、サスペンション670L、670Rは、図示しないコイルスプリングとショックアブソーバとを内蔵するテレスコピックタイプのサスペンションである。サスペンション670L、670Rの上方向DU側の端部は、車体100の後部115に、回転可能に接続されている。また、サスペンション670L、670Rの下方向DD側の端部は、リンク機構60の支持部69に、回転可能に接続されている。
2本のアーム680とサスペンションシステム670とは、車体100とリンク機構60との間の相対的な動きを許容する。
前輪支持装置500(図1(A))は、回動軸27を中心に回動可能に前輪20を支持する装置である。前輪支持装置500は、前フォーク517と、軸受568と、を有している。前フォーク517は、回転軸20xを中心に回転可能に前輪20を支持している。前フォーク517は、例えば、コイルスプリングとショックアブソーバとを有するテレスコピックタイプのフォークである。軸受568は、本体部110の前部111と、前フォーク517と、を連結している。軸受568は、回動軸27を中心に、前フォーク517(ひいては、前輪20)を、車体100に対して左右に回転可能に支持している。前フォーク517の回転可能範囲は、予め決められた角度範囲(例えば、180度未満の範囲)であってよい。
操舵モータ550は、電気モータであり、本体部110の前部111と前フォーク517とに接続されている。操舵モータ550は、前フォーク517(ひいては、前輪20)を幅方向(すなわち、右方向と左方向)に回動させるトルクを生成する。このように、操舵モータ550は、前輪20の幅方向の回動を制御するトルクである回動トルクを前輪20に付与するように構成されている。以下、操舵モータ550を、操舵駆動装置550とも呼ぶ。
なお、本実施例では、ハンドル160と前フォーク517とは、機械的には接続されていない。ただし、弾性体(例えば、コイルバネや板バネなどのバネ、ゴムやシリコンなどの樹脂)が、ハンドル160と前フォーク517とを接続してもよい。
図3(A)、図3(B)は、水平な地面GL上の車両10の状態を示す概略図である。図中には、車両10のうちの連結装置600を含む一部分の簡略化された背面図が示されている。図3(A)は、車両10が直立している状態を示し、図3(B)は、車両10が傾斜している状態を示している。図3(A)に示すように、上横リンク部材61Uが中縦リンク部材61Cに対して直交する場合、後輪30L、30Rは、水平な地面GLに対して直立する。そして、車体100を含む車両10の全体は、地面GLに対して、直立する。図中の車体上方向DVUは、車体100の上方向である。車両10が傾斜していない状態では、車体上方向DVUは、上方向DUと同じである。本実施例では、車体100に対して予め決められた上方向が、車体上方向DVUとして用いられる。
図3(B)に示すように、背面図上で、中縦リンク部材61Cが上横リンク部材61Uに対して時計回り方向に回転することによって、車体100に対して相対的に、右後輪30Rが車体上方向DVU側に移動し、左後輪30Lが反対側に移動する。従って、後輪30R、30Lが地面GLに接触した状態で、後輪30L、30R、ひいては、車体100は、地面GLに対して、右方向DR側に傾斜している。図示を省略するが、中縦リンク部材61Cが上横リンク部材61Uに対して反時計回り方向に回転することによって、車体100は、左方向DL側に傾斜する。
図3(B)では、車体上方向DVUは、上方向DUに対して、右方向DR側に傾斜している。以下、前方向DFを向いて車両10を見る場合の、上方向DUと車体上方向DVUとの間の角度を、ロール角Ar、または、傾斜角Arと呼ぶ。ここで、「Ar>ゼロ」は、右方向DR側への傾斜を示し、「Ar<ゼロ」は、左方向DL側への傾斜を示している。車体100のロール角Arは、車体100を有する車両10のロール角Arであるということができる。
図3(B)には、リンク機構60の制御角ACrが示されている。制御角ACrは、上横リンク部材61Uの向きに対する中縦リンク部材61Cの向きの角度を示している。図3(B)の背面図において、「ACr=ゼロ」は、上横リンク部材61Uに対して中縦リンク部材61Cが垂直であることを、示している。「ACr>ゼロ」は、中縦リンク部材61Cが、上横リンク部材61Uに対して、「ACr=ゼロ」の状態から時計回り方向に回転した状態を示している。図示を省略するが、「ACr<ゼロ」は、中縦リンク部材61Cが、上横リンク部材61Uに対して、「ACr=ゼロ」の状態から反時計回り方向に回転した状態を示している。図示するように、車両10が、水平な地面GL(すなわち、鉛直上方向DUに垂直な地面GL)上に位置している場合、制御角ACrは、ロール角Arと、おおよそ同じである。
図3(C)、図3(D)は、図3(A)、図3(B)と同様に、車両10の簡略化された背面図を示している。図3(C)、図3(D)では、地面GLxは、鉛直上方向DUに対して斜めに傾斜している(右側が高く、左側が低い)。図3(C)は、制御角ACrがゼロである状態を示している。この状態では、後輪30R、30Lが、地面GLxに対して直立する。そして、車体上方向DVUは、地面GLxに対して垂直であり、また、鉛直上方向DUに対して左方向DL側に傾斜している。
図3(D)は、ロール角Arがゼロである状態を示している。この状態では、上横リンク部材61Uは、地面GLxにおおよそ平行であり、中縦リンク部材61Cに対して反時計回りの方向に傾斜している。また、後輪30R、30Lは、地面GLに対して傾斜している。
このように、地面GLxが傾斜している場合、車体100のロール角Arは、リンク機構60の制御角ACrと、異なり得る。
リンク機構60は、車体100を車両10の幅方向に傾斜させるように構成されている傾斜装置の例である(傾斜装置60とも呼ぶ)。リーンモータ650は、傾斜装置60を駆動する駆動力(すなわち、リーンモータトルク)を生成するように構成されている傾斜駆動装置の例である(傾斜駆動装置650とも呼ぶ)。傾斜駆動装置650の駆動力は、一対の後輪30R、30Lに対して車体100を幅方向にロールさせる力である。
なお、連結装置600は、リンク機構60の動きを止める図示しないロック機構を有している。ロック機構を作動させることによって、制御角ACrが固定される。例えば、車両10の駐車時に、制御角ACrはゼロに固定される。
図4は、旋回時の力のバランスの説明図である。図中には、旋回方向が右方向である場合の後輪30R、30Lの背面図が示されている。後述するように、旋回方向が右方向である場合、制御装置900(図1(A))は、車輪20、30R、30L(ひいては、車体100)が地面GLに対して右方向DRに傾斜するように、リーンモータ650を制御する場合がある。このように、車両10は、旋回時に旋回の内側に傾斜する。
図4には、車体100の重心100cが示されている。重心100cは、車体100が乗員(可能なら荷物も)を積んだ状態での重心である。
図中の第1力F1は、車体100に作用する遠心力である。第2力F2は、車体100に作用する重力である。以下、車体100に作用する力は、車体100の重心100cに作用することとする。ここで、車体100の質量をM(kg)とし、重力加速度をg(おおよそ、9.8m/s)とし、鉛直方向に対する車両10のロール角をAr(度)とし、旋回時の車両10の速度(車速とも呼ばれる)をV(m/s)とし、旋回半径をR(m)とする。第1力F1と第2力F2とは、以下の式1、式2で表される。
(式1)F1=(M*V)/R
(式2)F2=M*g
ここで、*は、乗算記号(以下、同じ)。
また、図中の力F1bは、第1力F1の、車体上方向DVUに垂直な方向の成分である。力F2bは、第2力F2の、車体上方向DVUに垂直な方向の成分である。力F1bと力F2bとは、以下の式3、式4で表される。
(式3)F1b=F1*cos(Ar)
(式4)F2b=F2*sin(Ar)
ここで、「cos()」は、余弦関数であり、「sin()」は、正弦関数である(以下、同じ)。
力F1bは、車体上方向DVUを左方向DL側に回転させる成分であり、力F2bは、車体上方向DVUを右方向DR側に回転させる成分である。車両10がロール角Ar(さらには、速度Vと旋回半径R)を保ちつつ旋回を続ける場合には、F1bとF2bとの関係は、以下の式5で表される
(式5)F1b=F2b
式5に上記の式1〜式4を代入すると、旋回半径Rは、以下の式6で表される。
(式6)R=V/(g*tan(Ar))
ここで、「tan()」は、正接関数である(以下、同じ)。
式6は、車体100の質量Mに依存せずに、成立する。
図5は、車輪角Awと旋回半径Rとの簡略化された関係を示す説明図である。図中には、下方向DDを向いて見た車輪20、30L、30Rが示されている。ここで、説明を簡略化するために、ロール角Arがゼロであることとする(すなわち、車体上方向DVUは、下方向DDに平行)。図中では、進行方向D20は、右方向DRに回動しており、車両10は、右方向DRに旋回する。図中の前中心Cfは、前輪20の接触中心29である。後中心Cbは、2つの後輪30R、30Lの接触中心39R、39Lの間の中心である。中心Crは、旋回の中心である。車両10の右方向DR側に位置する中心Crは、旋回の中心である。車両10の旋回運動は、車両10の公転運動と、車両10の自転運動と、を含んでいる。中心Crは、公転運動の中心である(公転中心Crとも呼ぶ)。なお、本実施例では、後輪30R、30Lは回動輪ではなく、前輪20が回動輪である。従って、自転中心は、後中心Cbとおおよそ同じである。ホイールベースLhは、前中心Cfと後中心Cbとの間の前方向DFの距離である。図1(A)に示すように、ホイールベースLhは、前輪20の回転軸20xと、後輪30R、30Lの回転軸30Rx、30Lxとの間の前方向DFの距離と同じである。
図5に示すように、前中心Cfと後中心Cbと公転中心Crとは、直角三角形を形成する。点Cbの内角は、90度である。点Crの内角は、車輪角Awと同じである。従って、車輪角Awと旋回半径Rとの関係は、以下の式7で表される。
(式7)Aw=arctan(Lh/R)
ここで「arctan()」は、正接関数の逆関数である(以下、同じ)。
上記の式6、式7は、車両10が、速度Vと旋回半径Rとが変化しない状態で、旋回している場合に成立する関係式である。具体的には、式6、式7は、遠心力に起因する力F1b(図4)と重力に起因する力F2bとが釣り合う静的な状態を示している。式7は、車輪角Awと旋回半径Rとの関係を示す良い近似式として、利用可能である。なお、現実の車両10の動きと、図5の簡略化された動きと、の間には、種々の差異が存在する。例えば、車両に作用する現実の力は、動的に変化する。現実の車輪20、30R、30Lは、地面に対して滑り得る。現実の車輪20、30R、30Lは、地面に対して傾斜し得る。従って、現実の旋回半径は、式7の旋回半径Rと異なり得る。ただし、式7は、車輪角Awと旋回半径Rとの関係を示す良い近似式として、利用可能である。
A2.車両10の制御に関する構成:
図6は、車両10の制御に関する構成を示すブロック図である。車両10は、速度センサ720と、車輪角センサ755と、入力角センサ760と、アクセルペダルセンサ770と、ブレーキペダルセンサ780と、方向センサ790と、制御装置900と、右駆動モータ660Rと、左駆動モータ660Lと、リーンモータ650と、操舵モータ550と、を有している。
速度センサ720は、車両10の速度を検出するセンサである。本実施例では、速度センサ720は、前輪20(図1(A))の中心部分に取り付けられている。速度センサ720は、前輪20の回転速度を検出する。回転速度は、車両10の速度(速度とも呼ぶ)と相関を有している。従って、回転速度を検出するセンサ720は、速度を検出しているということができる。なお、速度センサ720は、他の車輪に取り付けられてよい。速度センサ720は、速度を測定する速度測定装置の例である(速度測定装置720とも呼ぶ)。
車輪角センサ755は、車輪角Aw(図1(B))を検出するセンサである。本実施例では、車輪角センサ755は、本体部110の前部111と前フォーク517とに接続されている。車輪角センサ755は、前輪20の回動軸27に並行な軸まわりの車輪角を検出する(検出角Awxとも呼ぶ)。回動軸27は、車体100とともに、ロールする。また、回動軸27に平行な方向は、車体上方向DVUとは異なり得る。この場合、車体上方向DVUに平行な軸まわりの車輪角Awは、回動軸27に並行な方向と車体上方向DVUとの間の差を用いて検出角Awxを補正することによって、算出される。例えば、車体上方向DVUに対するキャスター角CAがゼロではない場合、近似式「Aw=cos(CA)*Awx」に従って、車輪角Awが算出されてよい。
入力角センサ760は、ハンドル160(図1(A))の向き(すなわち、入力角)を検出するセンサであり、ハンドル160に取り付けられている。入力角センサ760は、入力角AI(旋回目標情報の例)を取得するように構成されている旋回目標情報取得装置の例である。
アクセルペダルセンサ770は、アクセルペダル170(図1(A))に取り付けられており、アクセル操作量Paを検出する。アクセル操作量Paは、加速度の目標の大きさを示す加速目標情報の例である。アクセルペダルセンサ770は、加速目標情報を取得する加速目標情報取得装置の例である。ブレーキペダルセンサ780は、ブレーキペダル180(図1(A))に取り付けられており、ブレーキ操作量Pbを検出する。ブレーキ操作量Pbは、減速度の目標の大きさを示す減速目標情報の例である。ブレーキペダルセンサ780は、減速目標情報を取得する減速目標情報取得装置の例である。
各センサ720、755、760、770、780は、例えば、レゾルバ、または、エンコーダを用いて構成されている。
方向センサ790は、ロール角Arとヨー角速度を測定するセンサである。本実施例では、方向センサ790は、車体100(図1(A))に固定されている(具体的には、後壁部114)。また、本実施例では、方向センサ790は、加速度センサ792と、ジャイロセンサ793と、制御部791と、を含んでいる。加速度センサ792は、任意の方向の加速度を検出するセンサであり、例えば、3軸の加速度センサである。以下、加速度センサ792によって検出される加速度の方向を、検出方向と呼ぶ。車両10が停止している状態では、検出方向は、鉛直下方向DDと同じである。ジャイロセンサ793は、任意の方向の回転軸を中心とする角速度を検出するセンサであり、例えば、3軸の角速度センサである。制御部791は、加速度センサ792からの信号とジャイロセンサ793からの信号と速度センサ720からの信号とを用いて、ロール角Arとヨー角速度とを特定する。制御部791は、例えば、コンピュータを含むデータ処理装置である。
制御部791は、速度センサ720によって測定される速度Vを用いることによって、車両10の加速度を算出する。そして、制御部791は、加速度を用いることによって、車両10の加速度に起因する現実の鉛直下方向DDに対する検出方向のずれを検出する(例えば、検出方向の前方向DFまたは後方向DBのずれが検出される)。また、制御部791は、ジャイロセンサ793によって測定される角速度を用いることによって、車両10の角速度に起因する現実の鉛直下方向DDに対する検出方向のずれを検出する(例えば、検出方向の右方向DRまたは左方向DLのずれが、検出される)。制御部791は、検出されたずれを用いて検出方向を修正することによって、鉛直下方向DDを特定する。このように方向センサ790は、車両10の種々の走行状態において、適切な鉛直下方向DDを特定できる。そして、制御部791は、鉛直下方向DDの反対の鉛直上方向DUを特定し、鉛直上方向DUと予め決められた車体上方向DVUとの間のロール角Arを算出する。このように、方向センサ790と速度センサ720との全体は、重力方向を基準とする車体100の幅方向のロール角Arを測定するように構成されたロール角センサの例である(以下、ロール角センサ730とも呼ぶ)。なお、ロール角センサの構成は、公知の他の種々の構成であってよい。また、制御部791は、ジャイロセンサ793によって測定される角速度から車体上方向DVUに平行な軸を中心とする角速度の成分を特定し、特定した角速度をヨー角速度として採用する。
本明細書では、変数の後ろに付された1個のクォーテーションマーク「’」は、時間に関する1階微分を示している。2個のクォーテーションマーク「’’」は、時間に関する2階微分を示している。例えば、Ay’は、ヨー角Ayの時間に関する一階微分、すなわち、ヨー角速度を示している。
制御装置900は、主制御部910と、駆動装置制御部920と、リーンモータ制御部930と、操舵モータ制御部940と、を有している。制御装置900は、バッテリ800(図1(A))からの電力を用いて動作する。本実施例では、制御部910、920、930、940は、それぞれ、コンピュータを有している。具体的には、制御部910、920、930、940は、プロセッサ910p、920p、930p、940p(例えば、CPU)と、揮発性記憶装置910v、920v、930v、940v(例えば、DRAM)と、不揮発性記憶装置910n、920n、930n、940n(例えば、フラッシュメモリ)と、を有している。不揮発性記憶装置910n、920n、930n、940nには、対応する制御部910、920、930、940の動作のためのプログラム910g、920g、930g、940gが、予め格納されている。プロセッサ910p、920p、930p、940pは、それぞれ、対応するプログラム910g、920g、930g、940gを実行することによって、種々の処理を実行する。また、主制御部910の不揮発性記憶装置910nには、マップデータMAr、MAwが、予め格納されている。操舵モータ制御部940の不揮発性記憶装置940nには、マップデータMp1が、予め格納されている。なお、マップデータMp1は、後述する他の実施例で用いられる。
制御装置900は、種々のセンサ(例えば、センサ720、755、760、770、780、790)からの信号を取得する。主制御部910のプロセッサ910pは、センサから取得された信号によって表される情報を用いて、駆動装置制御部920とリーンモータ制御部930と操舵モータ制御部940とに指示を出力する。
本実施例では、主制御部910は、デジタル信号を処理する。図示を省略するが、制御装置900は、アナログ信号をデジタル信号に変換するコンバータを有している。センサがアナログ信号を出力する場合、センサからのアナログ信号は、コンバータによって、デジタル信号に変換される。
また、制御装置900は、センサからの信号を処理するローパスフィルタを有してよい。ローパスフィルタは、信号に含まれる高周波成分を減衰させる。これにより、ノイズが低減される。
駆動装置制御部920のプロセッサ920pは、主制御部910からの指示に従って、駆動モータ660R、660Lを制御する。リーンモータ制御部930のプロセッサ930pは、主制御部910からの指示に従って、リーンモータ650を制御する。操舵モータ制御部940のプロセッサ940pは、主制御部910からの指示に従って、操舵モータ550を制御する。駆動装置制御部920は、モータ660R、660Lにバッテリ800からの電力をそれぞれ供給する電力制御部920cR、920cLを有している。同様に、リーンモータ制御部930は、リーンモータ650にバッテリ800からの電力を供給する電力制御部930cを有している。操舵モータ制御部940は、操舵モータ550にバッテリ800からの電力を供給する電力制御部940cを有している。電力制御部920cR、920cL、930c、940cは、電気回路(例えば、インバータ回路)を用いて、構成されている。
主制御部910と駆動装置制御部920とは、駆動モータ660R、660Lを制御する駆動制御装置990として機能する。駆動制御装置990は、アクセル操作量Paに適した加速と、ブレーキ操作量Pbに適した減速と、を行うように、駆動モータ660R、660Lを制御する。なお、車両10は、車輪(例えば、後輪30R、30L)の回転速度を減速させる摩擦ブレーキを備えてよい。摩擦ブレーキは、ブレーキペダル180の踏み込みによって、駆動されてよい。
以下、車両10が前進する場合の制御について説明する。
A3.リーンモータの制御:
図7、図8は、リーンモータ650(図6)の制御処理の例を示すフローチャートである。図8は、図7のS542の詳細を示している。本実施例では、ロール角Arを目標ロール角Artに近づけるリーンモータトルクを生成するように、リーンモータ650が制御される。S510では、制御装置900は、センサ720−790から、信号を取得する。そして、主制御部910のプロセッサ910pは、現行の情報、例えば、入力角AIと、ロール角Arと、速度Vと、ヨー角速度Ay’と、ブレーキ操作量Pbを、特定する。
S523では、プロセッサ910p(図6)は、車両10の加速度Acを特定する。加速度Acの特定方法は、任意の方法であってよい。例えば、プロセッサ910pは、速度Vを時間微分することによって、加速度Acを算出する。この場合、制御装置900のうちの加速度Acを算出するように構成されている部分と、速度センサ720と、の全体は、加速度測定装置に相当する(加速度測定装置722とも呼ぶ)。
パラメータの時間微分値の算出方法は、種々の方法であってよい。本実施例では、プロセッサ910pは、現在から予め決められた時間差だけ過去の時点でのパラメータ値を現行のパラメータ値から減算して差分を算出する。そして、プロセッサ910pは、差分を時間差で除算することによって得られる値を、パラメータの時間微分値として採用する。
なお、プロセッサ910pは、方向センサ790に含まれる加速度センサ792によって測定される加速度を示す加速度情報を、取得してよい(加速度センサ792は、加速度測定装置の例である)。ここで、プロセッサ910pは、前方向DFの加速度を採用してよい。なお、加速度測定装置の構成は、公知の他の種々の構成であってよい。
S525では、プロセッサ910pは、加速度Acを用いてゲインを調整するする。後述するように、本実施例では、プロセッサ910pは、ロール角Arと目標ロール角との間の差を用いるフィードバック制御によって、リーンモータ650を制御するための制御値CLを決定する。本実施例では、フィードバック制御は、いわゆる比例制御と微分制御と積分制御とを含んでいる。比例制御は、差と比例ゲインとを用いる制御であり、微分制御は、差の微分値と微分ゲインとを用いる制御であり、積分制御は、差の積分値と積分ゲインとを用いる制御である。本実施例では、プロセッサ910pは、微分ゲインを、加速度Acを用いて調整する。
図9は、加速度Acと微分ゲインGdとの対応関係の例を示すグラフである。横軸は、加速度Acを示し、縦軸は、微分ゲインGdを示している。図示するように、加速度Acがゼロ以下(すなわち、減速)の場合、加速度Acの大きさが大きいほど、微分ゲインGdは小さい。この理由については、後述する。なお、加速度Acがゼロである場合、微分ゲインGdは、基準値Gd0である。そして、加速度Acがゼロ以上(すなわち、加速)の場合、微分ゲインGdは、基準値Gd0で一定である。基準値Gd0は、目標ロール角Artの変化に対するロール角Arの変化の遅れが小さくなるように、予め実験的に決められている。なお、加速度Acに基づいて微分ゲインGdを調整する方法は、任意の方法であってよい。例えば、プロセッサ910pは、予め決められた関数に従って、加速度Acに対応付けられた微分ゲインGdを決定してよい。
S542(図7)では、プロセッサ910pは、車両10の状態を特定する。図8は、状態の特定処理の例を示すフローチャートである。後述するように、制御装置900は、図7、図8の処理を繰り返し実行する。車両10の起動時には、プロセッサ910pは、S610で、状態フラグFLをゼロに初期化する(以下、単に、フラグFLとも呼ぶ)。フラグFLは、車両10の状態を示している。本実施例では、車両10の状態は、通常状態(FL=0)と、低速減速状態(FL=1)と、減速後の停止状態(FL=2)とから、選択される。プロセッサ910pは、フラグFLの値を記憶装置(例えば、揮発性記憶装置910v)に格納し、図8の処理の終了後も、フラグFLの値を保持する。後述する他のステップでフラグFLが設定される場合も、同様である。
S615では、プロセッサ910pは、Ac>ゼロ(すなわち、加速)か否かを判断する。判断結果がYesである場合、プロセッサ910pは、S677で、フラグFLをゼロに設定し、図8の処理を終了する。
加速度Acがゼロ以下である場合(S615:No)、S617で、プロセッサ910pは、「ブレーキ操作量Pbの変化量dPb<ゼロ」が満たされるか否かを判断する。この条件は、ブレーキ操作量Pbが減少したことを示している。この条件が満たされる場合(S617:Yes)、プロセッサ910pは、S677で、フラグFLをゼロに設定し、図8の処理を終了する。
S617の判断結果がNoである場合、S620で、プロセッサ910pは、「V<Vt、かつ、Ac<ゼロ」が満たされるか否かを判断する。本実施例では、基準速度Vtは、予め決められている(例えば、時速10km以上、時速30km以下)。S620の条件は、「低速、かつ、減速」を示している。この条件が満たされる場合(S620:Yes)、S672で、プロセッサ910pは、フラグFLを1に設定し、図8の処理を終了する。
S620の判断結果がNoである場合、S625で、プロセッサ910pは、FL=ゼロか否かを判断する。FL=ゼロである場合(S625:Yes)、プロセッサ910pは、フラグFLをゼロに維持し(S677)、図8の処理を終了する。
FLがゼロではない場合(S625:No)、S630で、プロセッサ910pは、FL=2か否かを判断する。FL=1の場合、S630の判断結果は、Noである。この場合、S640で、プロセッサ910pは、停止条件が満たされるか否かを判断する。停止条件は、車両10の状態が、予め決められた停止状態であることを示す条件である。停止条件は、例えば、「V=ゼロ」であってよい。また、停止条件は、速度Vが、ゼロよりも大きい停止閾値以下であることであってよい(停止閾値は、例えば、時速3km以下)。このように、停止状態は、速度Vが十分に小さい状態を含んでよい。
停止条件が満たされない場合(S640:No)、プロセッサ910pは、フラグFLを1に維持し、図8の処理を終了する。
停止条件が満たされる場合(S640:Yes)、S675で、プロセッサ910pは、フラグFLを2に設定する。S682では、プロセッサ910pは、停止条件が満たされてからの経過時間Teの測定を開始する。そして、プロセッサ910pは、図8の処理を終了する。
フラグFLが2に設定された後に、再び、図8の処理が実行され得る。そして、処理は、S630に進行し得る。この場合、S630の判断結果は、Yesである。
S635で、プロセッサ910pは、第1復帰条件が満たされるか否かを判断する。第1復帰条件は、車両10の状態を停止状態から通常状態へ変更するための条件である。本実施例では、復帰状態は、経過時間Teが基準時間Tet以上であり、かつ、ヨー角速度Ay’の大きさが閾値Ay’t以下であることである。基準時間Tetは、例えば、1秒以上、10秒以下であってよい。ヨー角速度Ay’の条件は、車両10がスピンしていないことを示している。
復帰条件が満たされない場合(S635:No)、プロセッサ910pは、フラグFLを2に維持し、図8の処理を終了する。復帰条件が満たされる場合(S635:Yes)、プロセッサ910pは、S677で、フラグFLをゼロに設定し、図8の処理を終了する。
図8の処理、ひいては、図7のS542が終了した場合、S545で、プロセッサ910pは、フラグFLが2であるか否か、すなわち、車両10の状態が停止状態であるか否かを判断する。
S545の判断結果がNoである場合、S582で、プロセッサ910pは、速度Vと入力角AIを用いて、目標ロール角Artを決定する。速度Vと入力角AIとの組み合わせと目標ロール角Artとの対応関係は、マップデータMAr(図6)によって、予め決められている。プロセッサ910pは、マップデータMArを参照して、速度Vと入力角AIとの組み合わせに対応付けられた目標ロール角Artを採用する。
図10(A)は、速度Vと入力角AIとの組み合わせと目標ロール角Artとの対応関係の例を示すグラフである。横軸は、速度Vを示し、縦軸は、目標ロール角Artを示している。図中には、第1基準速度Vtと、最大速度Vxとが、示されている(ゼロ<Vt<Vx)。最大速度Vxは、車両10に許容された最大速度である。
図中には、6個のグラフArt0−Art5が示されている。これらのグラフArt0−Art5は、それぞれ、入力角AIが一定である状態(一定目標状態とも呼ぶ)における対応関係を示している。一定目標状態は、入力角AIによって示される旋回の目標方向と目標程度とのそれぞれが一定である状態である。6個のグラフArt0−Art5には、入力角AIの6個の値AI0−AI5が、それぞれ対応している。ゼロ番の値AI0はゼロであり、AI0<AI1<AI2<AI3<AI4<AI5である。第5値AI5は、入力角AIの大きさの許容範囲の最大値である。最大ロール角Armは、ロール角Arの大きさの許容範囲の最大値である。入力角AIがゼロである場合(AI=AI0)、目標ロール角Art0は、速度Vに拘わらず、ゼロである。
一定目標状態において、V<Vtの場合、目標ロール角Artは、速度Vが大きいほど大きい。この理由は、以下の通りである。釣合状態(図4)では、上記式6に示すように、速度Vの増大によって、旋回半径Rが増大し得る。ここで、式6に示すように、旋回半径Rは、tan(Ar)に反比例する。一定目標状態において、速度Vの増大に応じて目標ロール角Art(すなわち、ロール角Ar)が増大する場合、旋回半径Rの増大が抑制される。逆に、一定目標状態において、速度Vの低減に応じて目標ロール角Art(すなわち、ロール角Ar)が低減する場合、旋回半径Rの低減が抑制される。このように、一定目標状態において、速度Vの変化に起因する旋回半径Rの変化は抑制される。
本実施例では、V<Vtの場合、目標ロール角Artは、速度Vの変化に対して直線的に変化する。ただし、速度Vと目標ロール角Artとの対応関係は、他の関係であってよい。例えば、目標ロール角Artは、速度Vの変化に対して曲線を描くように変化してもよい。目標ロール角Artを速度Vの関数で表す場合に、その関数は、速度Vのべき乗(例えば、Vの2乗)を含んでよい。
一定目標状態において、速度Vが第1基準速度Vt以上である場合、目標ロール角Artは、速度Vに拘わらず一定である。従って、ロール角Arの過度の増大は抑制される。なお、入力角AIの大きさが第5値AI5(すなわち、最大値)である場合、目標ロール角Artの大きさは、最大ロール角Armである。
また、速度Vに拘わらず、目標ロール角Artは、入力角AIが大きいほど、大きい。図4で説明した遠心力と重力とが釣り合う状態(釣合状態とも呼ぶ)では、上記式6に示すように、傾斜角Arの大きさが大きいほど、旋回半径Rは小さい。従って、入力角AIがより大きい場合に、車両10は、より小さい旋回半径Rで旋回できる。
本実施例では、速度Vが一定である場合、目標ロール角Artは、入力角AIに比例する。目標ロール角Artと入力角AIとの対応関係は、比例関係とは異なる他の関係であってよい。例えば、目標ロール角Artは、入力角AIの変化に対して曲線を描くように変化してもよい。目標ロール角Artを入力角AIの関数で表す場合に、その関数は、入力角AIのべき乗(例えば、AIの2乗)を含んでよい。
なお、図10(A)は、入力角AIがゼロ以上である場合の対応関係を示している。図示を省略するが、AI<ゼロの場合、目標ロール角Artは負値に設定される。このように、目標ロール角Artは、車体100を旋回の内側に傾斜させる。そして、入力角AIの絶対値と速度Vとの組み合わせと目標ロール角Artの絶対値との対応関係は、「AI<ゼロ」の場合と「AI>ゼロ」の場合との間で、共通である。また、目標ロール角Artは、他のパラメータV、AIの変化に対して連続的に変化する(すなわち、目標ロール角Artは、パラメータV、AIの変化に対して滑らかに変化する)。なお、第1基準速度Vtは、例えば、時速10km以上、時速30km以下であってよい。
S584(図7)では、プロセッサ910pは、目標ロール角Artから現行のロール角Arを減算することによって、ロール角差dArを算出する。
S586では、プロセッサ910pは、ロール角差dArを用いて、制御値CLを決定する。そして、プロセッサ910pは、決定した制御値CLを示すデータを、リーンモータ制御部930に供給する。制御値CLは、リーンモータ650によって出力されるリーンモータトルクを制御するための値である。本実施例では、制御値CLは、リーンモータ650に供給すべき電流の向きと大きさとを示している。制御値の絶対値は、電流の大きさ(すなわち、トルクの大きさ)を示している。制御値の正負の符号は、電流の向き(すなわち、トルクの方向)を示している(例えば、正は右ロールを示し、負は左ロールを示す)。このように、制御値CLは、リーンモータトルクを示している。
本実施例では、プロセッサ910pは、ロール角差dArを用いるPID制御によって、制御値CLを決定する。PID制御の方法は、公知の種々の方法であってよい。なお、S525で説明したように、微分ゲインGdは、加速度Acを用いて調整される。比例ゲインと積分ゲインとのそれぞれは、予め決められている。ただし、プロセッサ910pは、比例ゲインを、他のパラメータ(例えば、速度V)を用いて、調整してよい。積分ゲインについても、同様である。
S590では、リーンモータ制御部930のプロセッサ930pは、制御値CLを示すデータを、電力制御部930cに供給する。電力制御部930cは、制御値CLに従って、リーンモータ650に供給される電力を制御する。リーンモータ650は、供給された電力に応じて、リーンモータトルクを出力する。S590の後、図7の処理が終了する。
車両10の状態が停止状態である場合(S545:Yes)、S547で、プロセッサ910pは、現行のロール角Arを維持する指示を、リーンモータ制御部930に供給する。リーンモータ制御部930のプロセッサ930pは、指示に従って、リンク機構60(図3(B))が動かないように、すなわち、制御角ACrが変化しないように、リーンモータ650を制御する。これに代えて、S547では、プロセッサ910pは、目標ロール角Artを現行にロール角Arに設定してよい。そして、S547に続いて、S584−S590の処理が実行されてよい。S547の後、図7の処理は、終了する。
制御装置900は、図7の処理を繰り返し実行する。車両10の状態が停止状態とは異なる場合、制御装置900は、車両10の状態に適したリーンモータトルクを出力するように、リーンモータ650を制御し続ける。リーンモータ650は、ロール角Arを目標ロール角Artに近づけるリーンモータトルクを出力する。車両10の状態が停止状態(FL=2)になった場合、図8で説明したように、復帰条件が満たされるまで、制御装置900は、現行のロール角Arを維持する。
図11(A)、図11(B)は、車両10の動作例を示すグラフである。これらのグラフは、入力角AIが一定である状態で、車両10が減速して停止する場合を示している。各図には、上から下に向かって並ぶ4個のグラフを示している。共通の横軸は、時間Tを示している。縦軸は、上から順に、「速度V」、「加速度Ac」、「微分ゲインGd」、「ロール角Arと目標ロール角Art」を示している。図11(A)は、加速度の大きさ(すなわち、絶対値)が小さい場合を示し、図11(B)は、加速度の大きさが大きい場合を示している。
図11(A)に示すように、第1タイミングT1から第2タイミングT2までは、車両10は、第1速度V1で走行している(第1速度V1は、第1基準速度Vtよりも速い)。第2タイミングT2で、運転者は、ブレーキペダル180(図1(A))を踏み込む。これにより、加速度Acがゼロから第1加速度Acaに低下する(加速度Acの大きさはゼロから増大する)。第2タイミングT2から第4タイミングT4までの期間では、車両10は、一定の第1加速度Acaで、減速する。速度Vは、第1速度V1からゼロに低下する。第4タイミングT4で、車両10は、停止する(V=ゼロ)。
図中の第3タイミングT3は、速度Vが第1基準速度Vtになるタイミングである。図10(A)に示すように、速度Vが第1基準速度Vt以下である場合に、速度Vの低減に応じて、目標ロール角Artは低減する。図11(A)の4番目のグラフによって示されるように、第1タイミングT1から第3タイミングT3までの期間では、目標ロール角Artは、第1ロール角Ar1で一定である。第3タイミングT3から第4タイミングT4までの期間では、目標ロール角Artは、第1ロール角Ar1からゼロに低下する。
第2タイミングT2で、加速度Acがゼロから第1加速度Acaに低下するので、微分ゲインGdは、基準値Gd0から第1ゲインGdaに低下する。第2タイミングT2から第4タイミングT4までの期間では、微分ゲインGdは、第1ゲインGdaである。なお、第1加速度Acaの大きさが小さいので、微分ゲインGdの減少量は、小さい。第1ゲインGdaは、基準値Gd0と、おおよそ同じである。この結果、目標ロール角Artの変化に対するロール角Arの変化の遅れは、小さい。ロール角Arは、目標ロール角Artとおおよそ同じである。
図11(A)のグラフの最下部には、状態フラグFLの値が示されている。速度Vが第1基準速度Vt以上であるT1からT3までの期間は、FL=ゼロである。速度Vが第1基準速度Vtから低減するT3からT4までの期間は、FL=1である。車両10が停止するT4に続く期間は、FL=2である。
図11(B)の例でも、図11(A)の例と同様に、第2タイミングT2で、運転者は、ブレーキペダル180(図1(A))を踏み込む。図11(A)の例と比べて、踏み込み量は、大きい。従って、加速度Acは、第1加速度Acaよりも小さい第2加速度Acbに低下する(第2加速度Acbの大きさは、第1加速度Acaの大きさよりも、大きい)。第2タイミングT2から第6タイミングT6までの期間では、車両10は、一定の第2加速度Acbで、減速する。速度Vは、第1速度V1からゼロに低下する。第6タイミングT6で、車両10は、停止する(V=ゼロ)。
図中の第5タイミングT5は、速度Vが第1基準速度Vtになるタイミングである。第1タイミングT1から第5タイミングT5までの期間では、目標ロール角Artは、第1ロール角Ar1で一定である。第3タイミングT3から第6タイミングT6までの期間では、目標ロール角Artは、第1ロール角Ar1からゼロに低下する。
第2タイミングT2で、加速度Acがゼロから第2加速度Acbに低下するので、微分ゲインGdは、基準値Gd0から第2ゲインGdbに低下する。第2タイミングT2から第6タイミングT6までの期間では、微分ゲインGdは、第2ゲインGdbである。なお、第2加速度Acbの大きさは、第1加速度Acaの大きさと比べて、大きいので、微分ゲインGdの減少量も、大きい。第2ゲインGdbは、第1ゲインGdaと比べて、小さい。この結果、目標ロール角Artの変化に対して、ロール角Arの変化は遅れる。図11(B)に示すように、第6タイミングT6では、目標ロール角Artはゼロであるが、ロール角Arは、ゼロよりも大きい第2ロール角Ar2である。
図11(B)の例で、目標ロール角Artの変化に対して、ロール角Arの変化が遅れないと仮定する。この場合、T5からT6までの短い期間内で、車両10の減速中に、ロール角Arは、第1ロール角Ar1からゼロまで急に変化する。減速中にロール角Arの大きさが急に小さくなる場合、車両10の安定性が低下し得る。本実施例では、そのような不具合は、抑制される。
図11(B)のグラフの最下部には、状態フラグFLの値が示されている。速度Vが第1基準速度Vt以上であるT1からT5までの期間は、FL=ゼロである。速度Vが第1基準速度Vtから低減するT5からT6までの期間は、FL=1である。図7のS542、図8で説明したように、車両10が減速して停止する場合(T6)、車両10の状態は、停止状態(FL=2)であると判断される。この場合、S635(図8)の復帰条件が満たされるまでは、現行のロール角Arが維持される(S547(図7))。図11(B)の例では、第6タイミングT6から第7タイミングT7までの期間が、FL=2である。第7タイミングT7は、第6タイミングT6から基準時間Tet(S635(図8))が経過した時間である。第7タイミングT7で、復帰条件が満たされる場合(S635:Yes)、状態フラグFLはゼロに設定される(S677)。ロール角Arは、図7のS582−S590の処理によって、目標ロール角Art(図11(B)の例では、ゼロ)に近づけられる。
また、図11(A)、図11(B)には、第2速度V2が示されている。第2速度V2は、第1基準速度Vtよりも遅い範囲から選択された速度である。図11(A)のタイミングTt1は、速度Vが第2速度V2になるタイミングである。第1注目ロール角Ar2aは、このタイミングTt1でのロール角Arである。図11(B)のタイミングTt2は、速度Vが第2速度V2になるタイミングである。第2注目ロール角Ar2bは、このタイミングTt2でのロール角Arである。上述したように、図11(B)の例では、図11(A)の例と比べて、目標ロール角Artの変化に対して、ロール角Arの変化が遅れている。従って、同じ第2速度V2において、第1注目ロール角Ar2aは、第2注目ロール角Ar2bよりも小さい。
図10(B)は、第2加速度Acbのように大きい大きさを有する加速度で、車両10が減速する場合の、ロール角Arの変化の例を示すグラフである。図中には、図11(A)と同じ目標ロール角Artのグラフが、点線で示されている。実線のグラフArv1−Arv5は、ロール角Arの変化を示している。ここで、入力角AIが一定である一定目標状態で、速度Vが、第1基準速度Vtよりも速い速度からゼロまで低減することとしている。5個のグラフArv1−Arv5には、入力角AIの5個の値AI1−AI5が、それぞれ対応している。第1基準速度Vtからゼロまで速度Vが低減する場合、図11(B)の例と同様に、目標ロール角Artの変化に対するロール角Arの変化が遅れる。従って、ロール角Arの大きさは、目標ロール角Artの大きさよりも大きい値であり得る。加速度の大きさが大きいほど、ロール角Arの変化の遅れは、大きい。従って、速度Vが低減する場合、加速度の大きさが大きいほど、ロール角Arは、大きい値に維持されやすい。加速度の大きさが小さい場合には、ロール角Arは、目標ロール角Artと同じ値に維持され得る。このようなロール角Arの変化は、種々の入力角AIで、生じ得る。
以上のように、図11(A)、図11(B)は、車両10が第1速度V1から減速して停止する場合の車両10の状態の変化を示している。図11(A)、図11(B)の間では、加速度Acの大きさが異なっている。注目ロール角Ar2a、Ar2bは、速度Vが第2速度V2まで減速した状態でのロール角Arである。加速度の大きさが大きい場合の第2注目ロール角Ar2bは、加速度の大きさが小さい場合の第1注目ロール角Ar2aよりも大きい。このように、加速度の大きさが大きい場合には、車両10は、大きいロール角Arで移動できる。
また、車両10は、速度Vを測定する速度センサ720(図6)を備えている。制御装置900は、速度センサ720によって測定された測定速度を用いて、車両10を制御する。本実施例では、測定速度は、実際の車両10の速度Vと、おおよそ同じである。以下、測定速度を、測定速度Vとも呼ぶ。
また、制御装置900は、図7の処理を実行することによって、ロール角Arを制御する。図10(A)に示すように、制御装置900は、入力角AIが一定である一定目標状態において、測定速度Vが第1基準速度Vt以下である場合に、測定速度Vが小さいほどロール角Arの大きさを低減する。
そして、図11(A)、図11(B)の例では、減速の開始の第2タイミングT2における車両10の状態は、以下の通りである。ロール角Arは、ゼロより大きい大きさを有する第1ロール角Ar1である。速度Vは、第1基準速度Vt以上の第1速度V1である。入力角AIは、一定である。以下、このような状態を、第1開始状態とも呼ぶ。
図11(A)の例では、第1開始状態から、一定の第1加速度Acaでの減速によって、速度Vが第1基準速度Vtよりも遅い第2速度V2に変化する。速度Vが第2速度V2であるタイミングTt1での車両10の状態を、第1小変化状態とも呼ぶ。第1加速度Acaは、ゼロよりも大きい大きさを有している。図11(B)の例では、第1開始状態から、一定の第2加速度Acbでの減速によって、速度Vが第1基準速度Vtよりも遅い第2速度V2に変化する。速度Vが第2速度V2であるタイミングTt2での車両10の状態を、第1大変化状態とも呼ぶ。第2加速度Acbは、第1加速度Acaの大きさよりも大きい大きさを有している。
図11(A)の第1小変化状態(Tt1)では、ロール角Arは、第1注目ロール角Ar2aであり、図11(B)の第1大変化状態(Tt2)では、ロール角Arは、第2注目ロール角Ar2bである。第2注目ロール角Ar2bの大きさは、第1注目ロール角Ar2aの大きさよりも、大きい。このように、第1大変化状態(Tt2)では、第1小変化状態(Tt1)と比べて、車両10は、大きいロール角Arで旋回できる。これにより、車両10が減速している最中に、ロール角Arの大きさの急な低減が抑制されるので、車両10の安定性の低下を抑制できる。
また、図7に示すように、制御装置900は、加速度Acを特定し(S523)、目標ロール角Artを決定し(S582)、ロール角Arと目標ロール角Artとの間の差を用いるフィードバック制御により制御値CLを決定し(S584−S586)、制御値CLに基づいてリーンモータ650を制御する(S590)。このように、制御装置900は、フィードバック制御により、リーンモータ650を制御する。本実施例では、このフィードバック制御は、比例ゲインを用いる比例制御と、微分ゲインを用いる微分制御と、積分ゲインを用いる積分制御とを含んでいる。S525、図9で説明したように、制御装置900は、加速度Acが減速を示す場合、微分ゲインGdを、加速度Acの大きさが大きいほど、小さくする。また、図10(A)に示すように、目標ロール角Artを決定する処理は、入力角AIが一定である状態において、測定速度Vが第1基準速度Vt以下である場合に、測定速度Vが小さいほど目標ロール角Artを小さくする処理を含む。以上により、加速度Acが減速を示す場合には、加速度Acの大きさが大きいほど、微分ゲインGdが小さい。従って、制御装置900は、ロール角Arの急な低減を抑制できる。
また、第1大変化状態(例えば、図11(B)のタイミングTt2の状態)では、ロール角Arの大きさは、目標ロール角Artの大きさよりも大きい値であり得る。図7、図8で説明したように、制御装置900は、車両10の状態が第1大変化状態になった後、状態フラグFLがゼロになるための条件である1以上の復帰条件のうちのいずれかが満たされる場合に、ロール角Arの大きさを目標ロール角Artに合わせて低減する。本実施例では、図8に示すように、車両10が停止してから基準時間Tetが経過することを要件として含む第1復帰条件(S635)と、車両10が加速することを要件として含む第2復帰条件(S615)と、減速度の目標の大きさが低減することを要件として含む第3復帰条件(S617)と、が用いられる。
第1復帰条件が満たされる場合、車両10が停止した後に十分な時間が経過している。第2復帰条件、または、第3復帰条件が満たされる場合、運転者は、減速せずに走行することを希望している。いずれの場合も、車両10の状態は、減速中と比べて、安定していると推定される。従って、ロール角Arの大きさの低減(例えば、傾斜状態から直立状態への車体100の状態の変化)は、安定した状態で、行われる。
また、S635(図8)で説明したように、第1復帰条件は、ヨー角速度Ay’の大きさが閾値Ay’t以下であることを、要件として含む。車両10は、地面上で滑り得る。車両10が滑る場合、車両10はスピンし得る。この場合、ヨー角速度Ay’の大きさが大きくなる。ヨー角速度Ay’の条件は、車両10がスピンしていないことを示している。閾値Ay’tは、第1復帰条件が満たされる場合に、ロール角Arを安全に変化できるように、予め実験的に決定されてよい。
なお、復帰条件は、図8の条件に限らず、他の種々の条件であってよい。例えば、第2復帰条件(S615)は、第1復帰条件(S635)と同様に、ヨー角速度Ay’の条件を要件として含んでよい。第3復帰条件(S617)は、ヨー角速度Ay’の条件を要件として含んでよい。第1復帰条件から、ヨー角速度Ay’の条件が省略されてもよい。3個の復帰条件のうちの1以上の条件が、省略されてよい。
A4.操舵モータの制御:
図12は、操舵モータ550の制御処理の例を示すフローチャートである。S210では、制御装置900(図6)は、センサ720−790から、信号を取得する。そして、主制御部910のプロセッサ910pは、現行の情報、具体的には、入力角AIと、車輪角Awと、速度Vと、を、特定する。
S222では、プロセッサ910pは、速度Vと入力角AIとを用いて、目標車輪角Awtを決定する。目標車輪角Awtは、車輪角Awの目標値であり、前輪20の方向D20の目標である目標回動方向を示している。速度Vと入力角AIとの組み合わせと目標車輪角Awtとの対応関係は、マップデータMAw(図6)によって、予め決められている。プロセッサ910pは、マップデータMAwを参照して、速度Vと入力角AIとの組み合わせに対応付けられた目標車輪角Awtを特定する。本実施例では、入力角AIの絶対値が大きいほど、目標車輪角Awtの絶対値が大きい。また、目標車輪角Awtによって示される旋回方向(右、または、左)は、入力角AIによって特定される旋回方向と同じである。また、目標車輪角Awtは、目標ロール角Art(図10(A))と釣り合う車輪角とのズレが過度に大きくならないように、速度Vに応じて変化してよい。
S224では、プロセッサ910pは、目標車輪角Awtから現行の車輪角Awを減算することによって、車輪角差dAwを算出する。S226では、プロセッサ910pは、車輪角差dAwを用いて、制御値Cwを決定する。本実施例では、プロセッサ910pは、車輪角差dAwを用いるPID制御によって、制御値Cwを決定する。このような制御値Cwは、車輪角Awを目標車輪角Awtに近づける回動トルクを示している。
なお、プロセッサ910pは、速度Vが大きいほど、PID制御のそれぞれのゲインを小さくしてよい。すなわち、速度Vが大きいほど、操舵モータ550のトルクが小さくてよい。この理由は、以下の通りである。本実施例では、前輪支持装置500(図1(A))が車体100に固定されているので、車体100がロールする場合、前輪20の回動軸27も、車体100とともにロールする。この場合、いわゆるジャイロモーメント、キャンバスラストなどの種々のメカニズムによって、回動トルクが前輪20に作用する。このような回動トルクにより、前輪20の進行方向D20は、ロール角Arの変化に続いて、自然に、ロール角Arの変化の方向へ回動可能である。また、本実施例では、トレールLt(図1(A))は、ゼロよりも大きい。従って、進行方向D20(ひいては、車輪角Aw)は、自然に、車両10の進行方向と同じになる。従って、速度Vが大きい場合には、操舵モータ550のトルクは小さくてよい。
S270では、プロセッサ910pは、制御値Cwを示すデータを、操舵モータ制御部940に供給する。操舵モータ制御部940のプロセッサ940pは、制御値Cwを示すデータを、電力制御部940cに供給する。電力制御部940cは、制御値Cwに従って、操舵モータ550に供給される電力を制御する。操舵モータ550は、供給された電力に応じて、回動トルクを出力する。そして、図12の処理が終了する。制御装置900は、図12の処理を繰り返し実行する。これにより、制御装置900は、車両10の状態に適した回動トルクを出力するように、操舵モータ550を制御し続ける。
B.第2実施例:
図13は、車両10aの制御に関する構成を示すブロック図である。図中には、図6の実施例と異なる部分のみが示されており、共通部分の図示は省略されている。図6の実施例との差異は、可変ローパスフィルタ950が追加されている点だけである(単に、ローパスフィルタ950とも呼ぶ)。図示を省略するが、車両10aの制御装置900aの他の部分の構成は、図6の対応する部分の構成と同じである。また、車両10aの他の部分の構成は、図1(A)等の車両10の対応する部分の構成と、同じである。
ローパスフィルタ950は、速度センサ720によって測定された速度Vに含まれる高周波成分を時定数Tfに従って減衰させる。ローパスフィルタ950は、速度Vに含まれるノイズを低減できる。速度センサ720とローパスフィルタ950との全体は、ノイズの少ない速度を測定する速度測定装置の例である(速度測定装置725とも呼ぶ)。以下、速度測定装置725によって測定される速度を、測定速度Vfとも呼ぶ。
ローパスフィルタ950としては、例えば、1次のローパスフィルタが用いられる。時定数Tfが大きいほど、カットオフ周波数が低くなる。また、ローパスフィルタ950に入力される値が変化する場合、時定数Tfが大きいほど、ローパスフィルタ950から出力される値の変化が遅くなる。
本実施例では、時定数Tfは、可変である。このようなローパスフィルタ950構成は、種々の構成であってよい。例えば、速度センサ720がアナログ信号を出力する場合、ローパスフィルタ950は、アナログ信号に含まれる高周波成分を減衰させるアナログ回路を含んでよい。アナログ回路は、例えば、1個の抵抗器と1個のキャパシタで構成されるRCフィルタであってよい。この場合、時定数Tfは、抵抗器の抵抗値とキャパシタの静電容量との積で表される。抵抗値と静電容量の少なくとも一方が変化することで、時定数Tfは変化する。ローパスフィルタ950から出力されるアナログ信号は、上記のコンバータによって、デジタル信号に変換されてよい。速度センサ720がデジタル信号を出力する場合、ローパスフィルタ950は、デジタル信号によって表される情報に含まれる高周波成分を減衰させるデジタル回路を含んでよい。デジタル回路は、時定数Tfを用いる演算を行う回路を含んでよい。デジタル回路によって用いられる時定数Tfは、容易に調整され得る。
図14は、リーンモータ650(図6)の制御処理の例を示すフローチャートである。図7の処理との差異は、S525がS525aに置換され、S582がS582aに置換されている点だけである。図示を省略するが、制御処理の他の部分は、図7の対応する部分の処理と同じである(説明を省略する)。
S525aでは、プロセッサ910p(図6)は、加速度Acを用いて時定数Tfを調整する。図15は、加速度Acと時定数Tfとの対応関係の例を示すグラフである。横軸は、加速度Acを示し、縦軸は時定数Tfを示している。図示するように、加速度Acがゼロ以下(すなわち、減速)の場合、加速度Acの大きさが大きいほど、時定数Tfは大きい。この理由については、後述する。なお、加速度Acがゼロである場合、時定数Tfは、基準値Tf0である。そして、加速度Acがゼロ以上(すなわち、加速)の場合、時定数Tfは、基準値Tf0で一定である。基準値Tf0は、速度Vの変化に対する測定速度Vfの変化の遅れが小さくなるように、予め実験的に決められている。なお、加速度Acに基づいて時定数Tfを調整する方法は、任意の方法であってよい。例えば、プロセッサ910pは、予め決められた関数に従って、加速度Acに対応付けられた時定数Tfを決定してよい。
S582aでは、プロセッサ910pは、プロセッサ910pは、測定速度Vfと入力角AIを用いて、目標ロール角Artを決定する。図7のS582との差異は、速度Vの代わりに測定速度Vfが用いられる点だけである。プロセッサ910pは、図7の実施例と同様に、マップデータMAr(図6)を参照して、測定速度Vfと入力角AIとの組み合わせに対応付けられた目標ロール角Artを採用する。
制御装置900は、図14の制御処理(図7の一部を含む)を、繰り返し実行する。本実施例では、プロセッサ910pは、微分ゲインGdを、速度Vに拘わらずに、基準値Gd0に維持することとする。また、プロセッサ910pは、速度Vを用いて加速度Acを算出するすることとする。すなわち、速度Vの変化に対する加速度Acの変化の遅れは、抑制されている。
図16(A)、図16(B)は、車両10aの動作例を示すグラフである。これらのグラフは、図11(A)、図11(B)と同様に、入力角AIが一定である状態で、車両10aが減速して停止する場合を示している。図16(A)は、図11(A)と同様に、第1加速度Acaでの減速を示し、図16(B)は、図11(B)と同様に、第2加速度Acbでの減速を示している。なお、3番目のグラフは、「微分ゲインGd」に代えて「時定数Tf」を示している。また、1番目のグラフは、速度Vに加えて、測定速度Vfを示している。2番目、4番目のグラフは、「加速度Ac」、「ロール角Arと目標ロール角Art」を示している。
図16(A)に示される車両10aの状態の変化は、図11(A)に示される車両10の状態の変化と同じである。第2タイミングT2で、加速度Acがゼロから第1加速度Acaに低下するので、時定数Tfは、基準値Tf0から第1時定数Tfaに増大する。T2からT4までの期間では、時定数Tfは、第1時定数Tfaである。第4タイミングT4で、車両10は、停止する(V=ゼロ)。第3タイミングT3は、速度Vが第1基準速度Vtになるタイミングである。
なお、第1加速度Acaの大きさが小さいので、時定数Tfの増大量は、小さい。第1時定数Tfaは、基準値Tf0と、おおよそ同じである。この結果、速度Vの変化に対する測定速度Vfの変化の遅れは、小さい。従って、速度Vの変化に対する目標ロール角Artの変化の遅れは、小さい。この結果、ロール角Arは、速度Vの変化に対して遅れずに、変化する。
図16(B)に示される車両10aの状態の変化は、図11(B)に示される車両10の状態の変化と、同様である。図16(B)の例では、第2タイミングT2で、加速度Acは、ゼロから、第2加速度Acbに低下する。第2タイミングT2で、時定数Tfは、基準値Tf0から第2時定数Tfbに増大する。T2からT6までの期間では、時定数Tfは、第2時定数Tfbである。第6タイミングT6で、車両10は、停止する(V=ゼロ)。第5タイミングT5は、速度Vが第1基準速度Vtになるタイミングである。
なお、第2加速度Acbの大きさは、第1加速度Acaの大きさと比べて、大きいので、時定数Tfの増大量も、大きい。第2時定数Tfbは、第1時定数Tfaと比べて、大きい。この結果、速度Vの変化に対して、測定速度Vfの変化は遅れる。従って、速度Vの変化に対して、目標ロール角Artの変化は、遅れる。この結果、ロール角Arは、速度Vの変化に遅れて、変化する。図16(B)に示すように、第6タイミングT6では、速度Vはゼロであるが、目標ロール角Artは、ゼロよりも大きい第2ロール角Ar2zである。
また、図16(A)、図16(B)には、第2速度V2が示されている。図11(A)で説明したように、第2速度V2は、第1基準速度Vtよりも遅い範囲から選択された速度である。図16(A)のタイミングTt1は、速度Vが第2速度V2になるタイミングである。第1注目ロール角Ar2aは、このタイミングTt1でのロール角Arである(本実施例では、この注目ロール角Ar2aは、図11(A)の注目ロール角Ar2aと同じである)。図11(B)のタイミングTt2は、速度Vが第2速度V2になるタイミングである。第2注目ロール角Ar2cは、このタイミングTt2でのロール角Arである。上述したように、図11(B)の例では、図11(A)の例と比べて、速度Vの変化に対して、ロール角Arの変化が遅れている。従って、同じ第2速度V2において、第1注目ロール角Ar2aは、第2注目ロール角Ar2cよりも小さい。
以上のように、図16(A)、図16(B)の間では、加速度Acの大きさが異なっている。注目ロール角Ar2a、Ar2cは、速度Vが第2速度V2まで減速した状態でのロール角Arである。加速度の大きさが大きい場合の第2注目ロール角Ar2cは、加速度の大きさが小さい場合の第1注目ロール角Ar2aよりも大きい。このように、加速度の大きさが大きい場合には、車両10は、大きいロール角Arで移動できる。
また、図16(A)、図16(B)の例では、減速の開始の第2タイミングT2における車両10の状態は、図11(A)、図11(B)で説明した第1開始状態である。図16(A)の例では、第1開始状態から、一定の第1加速度Acaでの減速によって、速度Vが第1基準速度Vtよりも遅い第2速度V2に変化する。速度Vが第2速度V2であるタイミングTt1での車両10の状態を、第1小変化状態とも呼ぶ。図16(B)の例では、第1開始状態から、一定の第2加速度Acbでの減速によって、速度Vが第1基準速度Vtよりも遅い第2速度V2に変化する。速度Vが第2速度V2であるタイミングTt2での車両10の状態を、第1大変化状態とも呼ぶ。
第1大変化状態(Tt2、図16(B))での第2注目ロール角Ar2cの大きさは、第1小変化状態(Tt1、図16(A))での第1注目ロール角Ar2aの大きさよりも、大きい。このように、車両10aは、加速度Acの大きさが大きい場合には、大きいロール角Arで旋回できる。これにより、車両10aが減速している最中に、ロール角Arの大きさの急な低減が抑制されるので、車両10aの安定性の低下を抑制できる。
また、図13に示すように、速度測定装置725は、ローパスフィルタ950を含んでいる。制御装置900aは、加速度Acを特定する(S523(図7))。また、制御装置900aは、加速度Acが減速を示す場合に、加速度Acの大きさが大きいほど、時定数Tfを大きくする(S525a(図14)、図15)。時定数Tfが大きい場合には、速度Vの低減に対する測定速度Vfの低減が遅延する。また、制御装置900aは、測定速度Vfを用いて、目標ロール角Artを決定する(S582a(図14))。そして、図10(A)に示すように、目標ロール角Artを決定する処理は、入力角AIが一定である状態において、測定速度Vfが第1基準速度Vt以下である場合に、測定速度Vfが小さいほど目標ロール角Artを小さくする処理を含む。以上により、加速度Acが減速を示す場合には、加速度Acの大きさが大きいほど、目標ロール角Artの変化が遅れる。従って、制御装置900は、ロール角Arの急な低減を抑制できる。
C.第3実施例:
図17(A)は、速度Vと入力角AIとの組み合わせと目標ロール角Artとの対応関係の別の例を示すグラフである。横軸は、速度Vを示し、縦軸は、目標ロール角Artを示している。図10(A)の対応関係との差異は、V<Vtの範囲内で、速度Vが一定であり、かつ、入力角AIが一定である場合に、減速を示す加速度Acの大きさが大きいほど、目標ロール角Artの大きさが大きい点である。
図17(B)は、図17(A)のグラフArt0−Art5のうち、1つの入力角AI3に対応するグラフArt3を示している。図示するように、ゼロ以上、基準速度Vt未満の速度Vの範囲内では、目標ロール角Artは、加速度Acの大きさに応じて変化する。1本の実線グラフは、加速度Acの大きさが一定である場合の目標ロール角Artを示している。速度Vが一定である場合(例えば、V=Vb)、加速度Acの大きさが大きいほど、目標ロール角Artの大きさが大きい。V=ゼロの場合も、目標ロール角Artの大きさは、加速度Acの大きさが大きいほど、大きい。加速度Acの大きさと入力角AIとが一定である場合、速度Vが大きいほど、目標ロール角Artは大きい。また、目標ロール角Artは、他のパラメータV、AI、Acの変化に対して連続的に変化する。
図17(A)、図17(B)の対応関係は、図10(A)の対応関係の代わりに、利用可能である。この場合、微分ゲインGd(図9)や時定数Tf(図15)は、加速度Acに拘わらずに、一定であってよい。そして、図7に示すように、制御装置900は、加速度Acを特定し(S523)、測定速度Vと加速度Acと入力角AIとを用いて目標ロール角Artを決定する(S582)。制御装置900は、ロール角Arを目標ロール角Artに近づけるリーンモータトルクをリーンモータ650に生成させる(S584−S590)。図17(A)、図17(B)に示すように、目標ロール角Artを決定する処理は、測定速度VとAIとのそれぞれが一定である状態において、測定速度Vが第1基準速度Vt以下である場合に、加速度Acの大きさが大きいほど、目標ロール角Artの大きさを大きな値に調整する処理を含んでいる。以上により、制御装置900は、図11(B)や図16(B)の実施例と同様に、減速時のロール角Arの急な低減を抑制できる。なお、加速時の目標ロール角Artは、図10(A)の対応関係に従って決定されてよい。
D.第4実施例:
図18(A)は、加速度Acと微分ゲインGdとの対応関係の別の例を示すグラフである。横軸は、加速度Acを示し、縦軸は、微分ゲインGdを示している。図18(B)は、制御値CLと加速度Acとの対応関係の例を示すグラフである。横軸は、加速度Acを示し、縦軸は、制御値CLの大きさ(すなわち、絶対値)を示している。これらの図は、加速度Acがゼロ以上である場合の微分ゲインGdと制御値CLとを、それぞれ示している。各図には、第3加速度Accと第4加速度Acdとが示されている(ゼロ<Acc<Acd)。図18(A)に示すように、加速度Acの大きさが大きいほど、微分ゲインGdは大きい。例えば、Ac=Acdの場合の微分ゲインGddは、Ac=Accの場合の微分ゲインGdcよりも、大きい。図18(B)に示すように、Ac=Acdの状態の制御値CLdの大きさは、Ac=Accの状態の制御値CLcの大きさよりも、大きい。ここで、2つの状態の間では、加速の開始時の車両の状態である開始状態は、同じである。例えば、加速の開始時に、速度Vと、ロール角Arと、ロール角差dArと、入力角AIと、車輪角Awとは、2つの状態に共通である。開始状態が同じである場合、微分ゲインGdが大きいほど、制御値CLの大きさは大きくなり得る。本実施例では、図18(A)に示すように、加速度Acの大きさが大きいほど、微分ゲインGdが大きい。従って、図18(B)に示すように、加速度Acの大きさが大きいほど、制御値CL(ひいては、リーンモータトルク)の大きさは大きくなり得る。
一般的に、車両10が旋回する場合、速度Vが大きいほど、遠心力は大きい。加速度Acが大きい場合には、速度Vの増大によって、遠心力が大きくなる。従って、リーンモータ650が車体100を旋回の内側へロールさせる場合に、ロール角Arの変化は遅れやすい。本実施例では、加速度Acが大きいほど、微分ゲインGdが大きいので、ロール角Arの変化の遅れは、抑制される。
なお、本実施例の微分ゲインGdは、図9の実施例に適用されてよく、また、図13−図15の実施例に適用されてよい。また、図18(A)の対応関係が採用される場合、Ac<ゼロの場合の微分ゲインGdは、加速度Acに拘わらず、基準値Gd0であってよい。この場合、図7のS542、S545、S547が、省略されてよい。
E.第5実施例:
図19(A)は、入力角AIと目標ロール角Artとの対応関係の別の例を示すグラフである。横軸は、入力角AIの大きさ(すなわち、絶対値)を示し、縦軸は、目標ロール角Artの大きさを示している。ここで、速度Vは、第1基準速度Vtよりも小さい速度Vaで一定であることとしている。
図中のロール角Artsは、車体100に作用する遠心力と重力とが釣り合う状態のロール角を示している(釣合ロール角Artsとも呼ぶ)。釣合ロール角Artsは、上記の式6、式7、図4に示すように、速度Vと旋回半径Rとを用いて、表される。また、式7、図5に示すように、旋回半径Rは、車輪角Awを用いて表される。以上により、釣合ロール角Artsは、速度Vと車輪角Awとを用いて、決定される。本実施例では、車輪角Awとしては、目標車輪角Awt(S222、図12)が用いられる。釣合ロール角Artsは、目標車輪角Awtと速度Vとを用いて決定される。
図示するように、入力角AIの大きさが、基準値AIt以下である場合、目標ロール角Artの大きさは、釣合ロール角Artsの大きさと同じである。入力角AIの大きさが基準値AItよりも大きい場合、目標ロール角Artの大きさは、釣合ロール角Artsの大きさよりも大きい。この理由は、以下の通りである。
入力角AIの大きさが大きい場合、小さい旋回半径Rが好ましい。旋回半径Rを小さくするためには、車輪角Awの大きさが大きいことが好ましい。しかし、車輪角Awの許容範囲は、予め決められている。特に、幅方向に並ぶ一対の車輪30R、30L(図1(B))の間の距離が小さい場合、車両10の転倒を抑制するために、車輪角Awの許容範囲が小さくなり得る。
上述したように、本実施例では、前輪支持装置500(図1(A))が車体100に固定されているので、車体100がロールする場合、前輪20の回動軸27も、車体100とともにロールする。この場合、いわゆるジャイロモーメント、キャンバスラストなどの種々のメカニズムによって、前輪20は、旋回方向に向かって旋回できる。また、地面に対して回動軸27が幅方向に傾斜する場合、実質的な車輪角は、実際の車輪角Awと比べて、大きくなり得る。以上により、車体100が旋回の内側に傾斜することによって、旋回半径Rは、小さくなる。このように、入力角AIの大きさが基準値AItより大きい場合、車両10は、小さい旋回半径Rで旋回できる。
図19(B)は、速度Vと入力角AIとの組み合わせと目標ロール角Artとの対応関係の例を示すグラフである。横軸は、速度Vを示し、縦軸は、目標ロール角Artを示している。図19(A)の対応関係は、ゼロより大きく、第1基準速度Vtよりも小さい速度Vの範囲に、適用される。図19(B)の例では、第3値AI3の大きさが、基準値AItと同じであることとしている。第3値AI3(すなわち、基準値AIt)以下の入力角AIに対応付けられたグラフArt0−Art3は、図10(A)のグラフArt0−Art3と、それぞれ同じである。第3値AI3より大きい入力角AIに対応付けられたグラフArt4、Art5については、以下の通りである。点線のグラフは、図10(A)のグラフを示している。図示するように、本実施例では、グラフArt4、Art5の目標ロール角Artは、図10(A)のグラフArt4、Art5の目標ロール角Artと比べて、大きい。このような目標ロール角Artは、釣合ロール角Arts(図19(A))よりも大きい。また、本実施例では、ゼロ以上、第1基準速度Vt以下の範囲では、グラフArt4、Art5は、上に凸の曲線を描いている。そして、速度Vは大きいほど、目標ロール角Artは大きい。V=ゼロの場合、入力角AIに拘わらずに、Art=ゼロである。目標ロール角Artは、他のパラメータV、AIの変化に対して連続的に変化する。
図19(A)、図19(B)の対応関係は、上記の各実施例に適用可能である。制御装置900、900a(図6、図13)は、この対応関係に従って、リーンモータ650を制御してよい。図12のS222では、制御装置900は、入力角AIを用いて、目標車輪角Awtを決定する。釣合ロール角Artsは、この目標車輪角Awtを用いて決定されてよい。そして、図19(A)に示すように、V<Vt、かつ、入力角AIの大きさが第1値AIa(AIa<AIt)である場合には、目標ロール角Artの大きさは、釣合ロール角Artsである。すなわち、制御装置900、900aは、ロール角Arの大きさが釣合ロール角Artsに近づくように、リーンモータ650を制御する。また、V<Vt、かつ、入力角AIの大きさが第2値AIb(AIb>AIt)である場合には、目標ロール角Artの大きさは、釣合ロール角Artsよりも大きい。すなわち、制御装置900、900aは、ロール角Arの大きさが釣合ロール角Artsよりも大きい値に近づくように、リーンモータ650を制御する。従って、入力角AIの大きさが基準値AItより大きい場合、車両10は、小さい旋回半径Rで旋回できる。
なお、図19(A)、図19(B)の対応関係が採用される場合、微分ゲインGdは、加速度Acに拘わらず、一定であってよい。この場合、図7のS542、S545、S547が、省略されてよい。
F.第6実施例:
図20(A)は、リーンモータ650(図6)の制御処理の例を示すフローチャートである。図7の処理との差異は、2点ある。第1の差異は、S510とS523との間に、S512、S514、S516が追加されている点である。第2の差異は、S582が、S582bに置換されている点である。これらの処理は、操舵モータ550に不具合がある場合の処理である。図示を省略するが、制御処理の他の部分は、図7の対応する部分の処理と同じである(説明を省略する)。
S510(図7)の後、S512では、プロセッサ910p(図6)は、操舵モータ550の状態が、予め決められた不具合状態であるか否かを判断する。不具合状態は、操舵モータ550が不具合を有し得る種々の状態であってよい。また、S512の判断方法は、任意の方法であってよい。
本実施例では、不具合状態は、操舵モータ550を流れる電流の大きさが、操舵モータ550に印加されている電圧に予め対応付けられている適正範囲外である状態である。操舵モータ550の電線(例えば、コイル線)が断線している場合、電流の大きさは、電圧に拘わらずに、ゼロであり得る。また、操舵モータ550の電気回路に意図しない短絡が形成されている場合、電流の大きさは、過大であり得る。
操舵モータ制御部940(図6)の電力制御部940cは、電圧計と電流計とを含んでいる(図示省略)。また、電圧と適正範囲との対応関係は、マップデータMp1によって、予め決められている。操舵モータ制御部940のプロセッサ940pは、電流が、マップデータMp1によって電圧に対応付けられた適正範囲外である場合に、主制御部910に、電流の異常を通知する。
主制御部910のプロセッサ910pは、操舵モータ550の状態を示す不具合情報(例えば、不具合フラグデータ)を、不揮発性記憶装置910nに格納する。車両10の出荷時、不具合情報は、操舵モータ550の状態が不具合状態ではないことを示す正常値に初期化される。プロセッサ910pは、操舵モータ制御部940から異常の通知を受けたことに応じて、不具合情報を、操舵モータ550の状態が不具合状態であることを示す異常値に更新する。その後、プロセッサ910pは、ユーザの指示に応じて、不具合情報を、正常値に更新し得る。例えば、操舵モータ550が修理された後に、不具合情報が更新される。
S512(図20(A))では、プロセッサ910pは、不具合フラグを参照して、操舵モータ550の状態が不具合状態であるか否かを判断する。操舵モータ550の状態が不具合状態ではない場合(S512:No)、S514で、プロセッサ910pは、第1マップデータを選択し、S523へ移行する。第1マップデータは、図10(A)の対応関係を示すマップデータMAr(図6)と同じである。
操舵モータ550の状態が不具合状態である場合(S512:Yes)、S516で、プロセッサ910pは、第2マップデータを選択し、S523へ移行する。図20(B)は、第2マップデータMAr2の例を示すグラフである。このグラフは、図10(A)のグラフと同様に、速度Vと入力角AIとの組み合わせと目標ロール角Artとの対応関係を示している。横軸は、速度Vを示し、縦軸は、目標ロール角Artを示している。実線のグラフは、第2マップデータMAr2を示している。点線のグラフは、図10(A)のグラフを示している。図10(A)のグラフとの差異は、速度Vが第1基準速度Vtよりも小さい場合に、図10(A)の同じ条件下の目標ロール角Artと比べて、目標ロール角Artが大きい点である。なお、V<Vtの範囲において、入力角AIが一定である場合、速度Vが大きいほど、目標ロール角Artの大きさは大きい。
S582a(図20(A))では、プロセッサ910pは、S514、または、S516で選択されたマップデータを参照して、目標ロール角Artを決定する。そして、プロセッサ910pは、S584に移行する。
操舵モータ550の状態が不具合状態ではない場合、リーンモータ650の制御は、図7の制御と同じである。操舵モータ550の状態が不具合状態である場合、図20(B)の対応関係に従って、ロール角Arが制御される。V<Vtである場合には、ロール角Arの大きさが大きくなる。従って、操舵モータ550の状態が不具合状態であっても、車両10は、小さい旋回半径Rで旋回できる。
特に、図20(B)の例では、V=ゼロの場合に、目標ロール角Artの大きさは、入力角AIの大きさが大きいほど、大きい。運転者は、V=ゼロの状態で、ハンドル160(図1(A))を操作することによって、車体100を希望の旋回方向へ傾斜させてよい。この場合、車両10が発進すると、直ぐに、車両10は旋回できる。ただし、V=ゼロの場合に、目標ロール角Artは、入力角AIに拘わらずに、ゼロであってもよい。
なお、不具合状態でロール角Arの大きさが大きくなるような速度Vの範囲は、速度Vの全範囲のうちの一部(例えば、ゼロを含む一部の範囲)であってよく、速度Vの全範囲であってもよい。なお、本実施例の制御処理(図20(A)、図20(B))は、上記の各実施例に適用可能である。例えば、本実施例が、図19(A)、図19(B)の実施例に適用される場合、第1マップデータは、図19(B)の対応関係を示す。また、図9、図15のような減速時のゲインの調整は、省略されてよい。この場合、図7のS542、S545、S547が、省略されてよい
G.変形例:
(1)リーンモータ650のフィードバック制御(S586(図7))は、比例制御と微分制御と積分制御から任意に選択された1以上の制御を含んでよい。なお、ロール角差dArを適切に小さくするためには、フィードバック制御が比例制御を含むことが好ましい。
S525(図7)、図9で説明した実施例において、比例ゲインと微分ゲインGdと積分ゲインとから任意に選択された1以上のゲインが、減速時に加速度Acの大きさが大きいほど小さな値に調整されてよい。いずれの場合も、加速度Acが変化する場合にゲインが変化するような加速度Acの範囲は、加速度Acの範囲の全体、または、一部であってよい。例えば、加速度Acの大きさがゼロを含む一部の範囲内である場合には、ゲインは変化せずに、加速度Acの大きさが閾値よりも大きい場合に、ゲインが変化してもよい。
同様に、図18(A)の実施例において、比例ゲインと微分ゲインGdと積分ゲインとから任意に選択された1以上のゲインが、加速時に加速度Acの大きさが大きいほど大きな値に調整されてよい。いずれの場合も、加速度Acが変化する場合に加速度Acに変化するような加速度Acの範囲は、加速度Acの範囲の全体、または、一部であってよい。例えば、加速度Acの大きさがゼロを含む一部の範囲内である場合には、ゲインは変化せずに、加速度Acの大きさが閾値よりも大きい場合に、ゲインが変化してもよい。
(2)図15の実施例において、加速度Acが変化する場合に時定数Tfが変化するような加速度Acの範囲は、加速度Acの範囲の全体、または、一部であってよい。例えば、加速度Acの大きさがゼロを含む一部の範囲内である場合には、時定数Tfは変化せずに、加速度Acの大きさが閾値よりも大きい場合に、時定数Tfが変化してもよい。
(3)目標ロール角Artと他のパラメータとの対応関係は、上記の実施例の対応関係に代えて、他の種々の対応関係であってよい。例えば、図10(A)の例では、入力角AIが一定であり、速度Vが第1基準速度Vtである場合に、目標ロール角Artは、最大ロール角Armよりも小さい値であり得る(例えば、グラフArt1−Art4)。この場合、速度Vが第1基準速度Vtから増大することによって、目標ロール角Artが増大してもよい。第1基準速度Vtは、速度Vが増大する場合に目標ロール角Artが増大するような速度Vの範囲から選択された種々の値であってよい。いずれの場合も、制御装置900、900aは、以下のようにリーンモータ650を制御することが好ましい。すなわち、入力角AIが一定である状態で、速度Vが、第1基準速度Vt以上の第1速度(例えば、第1速度V1(図11(A)))から、第1基準速度Vt以下の第2速度V2に低減すると仮定する。ここで、加速度Acの大きさが大きい場合には、加速度Acの大きさが小さい場合と比べて、ロール角Arの大きさが大きい値に維持されることが好ましい。
(4)上記各実施例において、加速度Acは、加速度と相関を有する加速度指標値の例である。加速度センサ792(図6)と加速度測定装置722とは、加速度指標値取得装置の例である。加速度指標値は、他の種々の値であってよい。例えば、アクセル操作量Paは、加速を示す加速度指標値の例であり、ブレーキ操作量Pbは、減速を示す加速度指標値の例である(アクセルペダルセンサ770とブレーキペダルセンサ780とは、加速度指標値取得装置の例である)。アクセル操作量Paは、例えば、S615(図8)、図18(A)の加速を示す加速度Acの代わりに利用可能である。ブレーキ操作量Pbは、例えば、S617(図8)、図9、図15、図17(A)、図17(B)の減速を示す加速度Acの代わりに利用可能である。
(5)リーンモータ650の制御に用いられる制御値は、上記実施例の制御値CLに加えて、他の成分を示す制御値が用いられてよい。例えば、制御装置900、900aは、複数の制御値の合計値に従って、リーンモータ650を制御してよい。
(6)車両10、10aの制御処理は、上記の処理に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、操舵モータ550の制御は、比例制御と微分制御と積分制御から任意に選択された1以上の制御を含んでよい。また、リーンモータ650、または、操舵モータ550の制御は、フィードフォワード制御を含んでもよい。また、車両10、10aの制御に用いられる対応関係は、種々の対応関係であってよい。対応関係は、車両10、10aが適切に走行できるように、予め実験的に決定されてよい。
(7)幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪(例えば、一対の後輪30R、30L)と、車体100と、を連結する連結装置の構成は、連結装置600(図1(A)−図1(C)、図2)の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、連結装置600のリンク機構60が台に置換されてよい。台には、駆動モータ660R、660Lが固定される。そして、支持部69は、軸受によって、幅方向に回転可能に台に連結される。リーンモータ650は、台に対して、支持部69を、幅方向に回転させる。これにより、車体100は、幅方向にロール可能である。また、図示を省略するが、左スライド装置が、左後輪30Lと車体100とを接続し、右スライド装置が、右後輪30Rと車体100とを接続してもよい。各スライド装置は、車体100に対する車輪の車体上方向DVUの相対位置を変化させることができる。傾斜装置は、このような2個のスライド装置を含んでよい。
一般的には、傾斜装置は、「幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪のうちの1つの車輪または2つの車輪に直接的または間接的に接続された第1部材」と、「車体に直接的または間接的に接続された第2部材」と、「第1部材を第2部材に可動(例えば、回転可能、スライド可能など)に接続する接続装置」を含んでよい。図2の傾斜装置60に関しては、上横リンク部材61Uは、縦リンク部材61R、61Lとモータ660R、660Lを介して車輪30R、30Lに接続された第1部材の例である。中縦リンク部材61Cは、支持部69とサスペンションシステム670とを介して車体100に接続された第2部材の例である。軸受68Uは、第1部材を第2部材に可動に接続する接続装置の例である。
(8)傾斜装置を駆動する駆動力を生成するように構成されている駆動装置の構成は、リーンモータ650(図2)に代えて、種々の装置であってよい。例えば、駆動装置は、傾斜装置を駆動する油圧シリンダと、油圧シリンダに油圧を供給するポンプと、を含んでよい。また、車体100と後輪30R、30Lを接続する上記の右スライド装置と左スライド装置とが油圧シリンダを用いて構成されている場合、駆動装置は、スライド装置に油圧を供給するポンプを含んでよい。
(9)複数の車輪の総数と配置としては、種々の構成を採用可能である。例えば、前輪の総数が2であり、後輪の総数が1であってもよい。前輪の総数が2であり、後輪の総数が2であってもよい。前輪が駆動輪であってよい。回動輪の総数は、1以上の任意の数であってよい。後輪が、回動輪であってよい。
(10)幅方向に回動可能に回動輪(例えば、前輪20(図1(B)))を支持する回動輪支持装置の構成は、前輪支持装置500(図1(A))の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、ハンドル160と前フォーク517とは、機械的に接続されてよい。運転者は、ハンドル160を回転させることによって、直接的に、前輪20を操舵できる。操舵モータ550による回動トルクは、操舵を補助するために、利用される。制御装置900、900aは、操舵モータ550からハンドル160を介して運転者に伝達される回動トルクが、操舵の好ましい方向を示すように、操舵モータ550を制御する。制御装置900、900aは、ハンドル160を持つ運転者の力に逆らって前輪20が大きく動くことがないように、操舵モータ550のトルクを小さい値に設定する。操舵モータ550の制御処理は、上記の各実施例の制御処理と同じであってよい(ただし、操舵モータ550のトルクは、小さいトルクに調整される)。
また、回動輪を回転可能に支持する支持部材は、前フォーク517に代えて、片持ちの部材であってよい。また、支持部材を車体に対して幅方向に回動可能に支持する回動装置は、軸受568に代えて、他の種々の装置であってよい。例えば、回動装置は、車体と支持部材とを連結するリンク機構であってよい。
一般的には、回動輪支持装置は、車体に固定されていることが好ましい。この構成によれば、回動輪の回動軸(例えば、回動軸27(図1(A)))は、車体とともに傾斜する。従って、回動輪の方向(例えば、進行方向D20(図1(B)))は、車体のロール角Arの変化に追随して変化できる。ここで、回動輪支持装置は、K個(Kは1以上の整数)の支持部材を備えてよい。各支持部材は、1以上の回動輪を回転可能に支持してよい。そして、回動輪支持装置は、車体に固定されたK個の回動装置を備えてよい。K個の回動装置は、K個の支持部材を、それぞれ幅方向に回動可能に支持してよい。
(11)回動トルクを生成する操舵駆動装置の構成は、操舵モータ550の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、操舵駆動装置は、ポンプを含み、ポンプからの液圧(例えば、油圧)を用いて回動トルクを生成してよい。
(12)制御装置の構成は、図6、図13の制御装置900、900aの構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、制御装置は、センサから取得される情報に含まれるノイズを低減するノイズフィルタを備えてよい。これにより、車両の制御に対するノイズの影響が、緩和される。ノイズフィルタとしては、例えば、種々のローパスフィルタを採用可能である。また、制御装置は、1つのコンピュータを用いて構成されてもよい。制御装置は、種々の電気回路であってよく、例えば、コンピュータを含む電気回路であってよく、コンピュータを含まない電気回路であってもよい。いずれの場合も、制御値(例えば、制御値CL、Cwなど)を決定する制御値決定処理は、種々の処理であってよい。制御値決定処理は、フィードバック制御(例えば、比例制御と微分制御と積分制御とのうちの少なくとも1つを含む制御)を含んでよく、フィードフォワード制御を含んでよい。
また、上記実施例では、運転者が、車両10、10a(図6、図13)を制御するための種々の指示情報(例えば、入力角AI、アクセル操作量Pa、ブレーキ操作量Pb)を制御装置900、900aに入力する。これに代えて、制御装置は、無線通信によって外部装置から指示情報を取得するように構成された無線装置を含んでよい。このように、移動装置は、遠隔操作される車両であってよい。また、制御装置は、自動操縦を行うように構成されてよい。例えば、制御装置は、図示しないGPS(Global Positioning System)を用いて特定される車両の位置を参照して、予め決められた経路に沿って走行する処理を実行してよい。この場合、制御装置は、車両の位置と経路とを用いて、車両の制御に用いられる種々の情報(例えば、入力角AI、アクセル操作量Pa、ブレーキ操作量Pb)を決定する。
いずれの場合も、制御装置のうちの入力角AIを取得するように構成されている部分は、旋回目標情報取得装置の例である。制御装置のうちの操作量Pa、Pbを取得するように構成されている部分は、加速度指標値取得装置の例である。制御装置のうちのブレーキ操作量Pbを取得するように構成されている部分は、減速目標情報取得装置の例である。
(13)上記各実施例の制御処理は、車両10(図1(A))に代えて、ボディと車輪とを備える種々の移動装置に適用されてよい。例えば、駆動輪を駆動する駆動装置は、電気モータと内燃機関の少なくとも1つを含んでよい。最大定員数は、1人に代えて、2人以上であってよい。上記実施例では、運転者が、車両10、10a(図6、図13)を制御するための種々の指示情報(例えば、図6の入力角AI、アクセル操作量Pa、ブレーキ操作量Pb)を制御装置900、900aに入力する。これに代えて、制御装置は、無線通信によって外部装置から指示情報を取得してよい。このように、移動装置は、遠隔操作される車両であってよい。また、制御装置は、自動操縦を行うように構成されてよい。例えば、制御装置は、図示しないGPS(Global Positioning System)を用いて特定される車両の位置を参照して、予め決められた経路に沿って走行する処理を実行してよい。ここで、移動装置は、人を乗せずに荷物を載せて移動する無人車両であってよい。また、移動装置は、人も荷物も載せずに移動する無人車両であってよい。また、移動装置は、小型の模型自動車であってよい。
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図6の制御装置900の機能を、専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
10、10a…車両、20…前輪、20x…回転軸、26…交点、27…回動軸、28…接触領域、29…接触中心、30L…左後輪、30R…右後輪、30Rx…回転軸、38R…接触領域、39R…接触中心、60…リンク機構(傾斜装置)、61C…中縦リンク部材、61D…横リンク部材、61L…左縦リンク部材、61R…右縦リンク部材、61U…上横リンク部材、68D、68U…軸受、69…支持部、100…車体、100c…重心、110…本体部、111…前部、112…前壁部、113…底部、114…後壁部、115…後部、120…座席、160…ハンドル、170…アクセルペダル、180…ブレーキペダル、500…前輪支持装置、517…前フォーク、550…操舵駆動装置(操舵モータ)、568…軸受、600…連結装置、650…傾斜駆動装置、650…リーンモータ、660L…左駆動モータ、660R…右駆動モータ、670…サスペンションシステム、670L…左サスペンション、670R…右サスペンション、680…アーム、720…速度測定装置(速度センサ)、722…加速度測定装置、725…速度測定装置、730…ロール角センサ、755…車輪角センサ、760…入力角センサ、770…アクセルペダルセンサ、780…ブレーキペダルセンサ、790…方向センサ、791…制御部、792…加速度センサ、793…ジャイロセンサ、800…バッテリ、900、900a…制御装置、910−940p…プロセッサ、910−940v…揮発性記憶装置、910−940n…不揮発性記憶装置、910−940g…プログラム、910…主制御部、920…駆動装置制御部、930…リーンモータ制御部、940…操舵モータ制御部、920cR、920cL、930c、940c…電力制御部、950…可変ローパスフィルタ、990…駆動制御装置

Claims (12)

  1. 移動装置であって、
    ボディと、
    1以上の前輪と1以上の後輪とを含むN個(Nは3以上の整数)の車輪であって、前記N個の車輪は前記移動装置の幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪を含み、前記N個の車輪は前記幅方向に回動可能な1以上の回動輪を含む、前記N個の車輪と、
    前記一対の車輪と前記ボディとを連結している連結装置であって、前記連結装置は前記一対の車輪に対して前記ボディを前記幅方向に傾斜させるように構成されている傾斜装置を含む、前記連結装置と、
    前記傾斜装置を駆動するように構成されている傾斜駆動装置と、
    旋回の目標方向と旋回の目標程度とを示す旋回目標情報を取得するように構成されている旋回目標情報取得装置と、
    前記傾斜駆動装置を制御するように構成されている制御装置と、
    を備え、
    前記制御装置は、前記旋回目標情報が旋回を示す場合に、前記傾斜駆動装置を制御することによって、前記ボディを前記旋回の内側に傾斜させるように構成されており、
    前記制御装置は、前記移動装置の特定の2つの状態の間で、前記ボディの前記幅方向のロール角の大きさと、前記傾斜駆動装置の駆動力の大きさと、の少なくとも1つが異なるように、前記傾斜駆動装置を制御するように構成されており、
    前記特定の2つの状態の間では、前記移動装置の加速度の大きさと、前記目標程度と、前記1以上の回動輪に関連する前記移動装置の状態と、の少なくとも1つが互いに異なっている、
    移動装置。
  2. 請求項1に記載の移動装置であって、
    前記特定の2つの状態は、
    前記加速度の大きさがゼロよりも大きいことを示す小変化状態と、
    前記加速度の大きさが前記小変化状態の前記加速度の前記大きさよりも大きいことを示す大変化状態と、
    の組み合わせを含み、
    前記制御装置は、前記大変化状態では、前記小変化状態と比べて、前記ロール角の前記大きさと前記駆動力の前記大きさとの少なくとも一方が大きくなるように、前記傾斜駆動装置を制御するように構成されている、
    移動装置。
  3. 請求項2に記載の移動装置であって、
    前記移動装置の速度を測定するように構成されている速度測定装置を備え、
    前記目標方向と前記目標程度とのそれぞれが一定である状態を、一定目標状態と呼び、
    前記制御装置は、前記一定目標状態において、前記速度測定装置によって測定された速度である測定速度が第1基準速度以下である場合に、前記測定速度が小さいほど前記ロール角の前記大きさを低減するように構成されており、
    前記ロール角の前記大きさがゼロよりも大きい第1ロール角大きさであり、かつ、前記速度が第1基準速度以上の第1速度であり、かつ、前記目標方向と前記目標程度とのそれぞれが一定である状態を、第1開始状態と呼び、
    前記小変化状態と前記大変化状態との組み合わせは、第1小変化状態と第1大変化状態との第1組み合わせを含み、
    前記第1小変化状態は、前記第1開始状態から、ゼロよりも大きい大きさを有する一定の第1加速度での減速によって、前記速度が前記第1基準速度よりも遅い第2速度に変化した状態を示し、
    前記第1大変化状態は、前記第1開始状態から、前記第1加速度の大きさよりも大きい大きさを有する一定の第2加速度での減速によって、前記速度が前記第2速度に変化した状態を示し、
    前記制御装置は、前記第1大変化状態での前記ロール角の大きさが、前記第1小変化状態での前記ロール角の大きさよりも大きくなるように、前記傾斜駆動装置を制御するように構成されている、
    制御装置。
  4. 請求項3に記載の移動装置であって、
    前記加速度と相関を有する加速度指標値を取得するように構成されている加速度指標値取得装置を備え、
    前記制御装置は、
    前記測定速度と前記旋回目標情報を用いて前記ロール角の目標値である目標ロール角を決定する処理と、
    前記ロール角と前記目標ロール角との間の差を用いるフィードバック制御により、前記傾斜駆動装置を制御する処理と、
    を実行するように構成されており、
    前記目標ロール角を決定する前記処理は、前記目標方向と前記目標程度とのそれぞれが一定である状態において、前記測定速度が前記第1基準速度以下である場合に、前記測定速度が小さいほど前記目標ロール角の大きさを小さな値に調整する処理を含み、
    前記フィードバック制御は、比例ゲインを用いる比例制御と、微分ゲインを用いる微分制御と、積分ゲインを用いる積分制御と、のうちの1以上の制御を含み、
    前記制御装置は、前記加速度指標値が減速を示す場合に、前記加速度指標値によって示される前記加速度の大きさの少なくとも一部の範囲で、前記フィードバック制御に含まれる前記1以上の制御のうちの少なくとも1つの制御に対応付けられるゲインを、前記加速度指標値によって示される前記加速度の大きさが大きいほど、小さい値に調整するように、構成されている、
    移動措置。
  5. 請求項3に記載の移動装置であって、
    前記加速度と相関を有する加速度指標値を取得するように構成されている加速度指標値取得装置を備え、
    前記速度測定装置は、前記測定速度に含まれる高周波成分を時定数に従って減衰させるように構成されているローパスフィルタを含み、
    前記制御装置は、前記加速度指標値が減速を示す場合に、前記加速度指標値によって示される前記加速度の大きさの少なくとも一部の範囲で、前記加速度指標値によって示される前記加速度の大きさが大きいほど、前記ローパスフィルタの前記時定数を大きな値に調整するように、構成されている、
    移動装置。
  6. 請求項3に記載の移動装置であって、
    前記加速度と相関を有する加速度指標値を取得するように構成されている加速度指標値取得装置を備え、
    前記制御装置は、
    前記測定速度と前記加速度指標値と前記旋回目標情報とを用いて前記ロール角の目標値である目標ロール角を決定する処理と、
    前記ロール角を前記目標ロール角に近づける前記駆動力を前記傾斜駆動装置に生成させる処理と、
    を実行するように構成されており、
    前記目標ロール角を決定する処理は、前記測定速度と前記目標方向と前記目標程度とのそれぞれが一定である状態において、前記測定速度が前記第1基準速度以下である場合に、前記加速度指標値によって示される前記加速度の大きさが大きいほど、前記目標ロール角の大きさを大きな値に調整する処理を含む、
    移動装置。
  7. 請求項3から6のいずれかに記載の移動装置であって、
    前記制御装置は、前記移動装置の状態が前記第1大変化状態になった後、1以上の復帰条件のうちのいずれかが満たされる場合に、前記ロール角の前記大きさを低減するように構成されている、
    移動装置。
  8. 請求項7に記載の移動装置であって、
    減速度の目標大きさを示す減速目標情報を取得するように構成されている減速目標情報取得装置を備え、
    前記1以上の復帰条件は、
    前記移動装置が停止してから基準時間が経過することを要件として含む第1復帰条件と、
    前記移動装置が加速することを要件として含む第2復帰条件と、
    前記減速度の前記目標大きさが低減することを要件として含む第3復帰条件と、
    を含む、移動装置。
  9. 請求項8に記載の移動装置であって、
    前記移動装置のヨー角速度を測定するように構成されているヨー角速度測定装置を備え、
    前記第1復帰条件は、前記ヨー角速度の大きさが閾値以下であることを、要件として含む、移動装置。
  10. 請求項2から9のいずれかに記載の移動装置であって、
    前記加速度と相関を有する加速度指標値を取得するように構成されている加速度指標値取得装置を備え、
    前記小変化状態と前記大変化状態との組み合わせは、第2小変化状態と第2大変化状態との第2組み合わせを含み、
    前記第2小変化状態は、前記加速度指標値によって示される第3加速度であってゼロよりも大きい一定の前記第3加速度での加速によって、特定の開始状態から前記速度が増大している状態であり、
    前記第2大変化状態は、前記加速度指標値によって示される第4加速度であって前記第3加速度よりも大きい一定の前記第4加速度での加速によって、前記特定の開始状態から前記速度が増大している状態であり、
    前記制御装置は、前記第2大変化状態での前記駆動力の前記大きさが、前記第2小変化状態での前記駆動力の前記大きさよりも大きくなるように、前記傾斜駆動装置を制御するように構成されている、
    制御装置。
  11. 請求項1から10のいずれかに記載の移動装置であって、
    前記制御装置は、前記旋回目標情報を用いて、前記1以上の回動輪の方向の目標を示す目標回動方向を決定するように構成されており、
    前記目標回動方向と速度との組み合わせに対応付けられた前記ロール角の前記大きさであって、前記ボディに作用する遠心力と重力とが釣り合う状態の前記ロール角の前記大きさを、釣合ロール角大きさと呼び、
    前記特定の2つの状態は、
    前記速度が第2基準速度よりも遅い第3速度であり、かつ、前記旋回の前記目標程度が基準程度よりも小さい第1程度であることを示す第1旋回状態と、
    前記速度が前記第3速度であり、かつ、前記旋回の前記目標程度が前記基準程度よりも大きい第2程度であることを示す第2旋回状態と、
    の組み合わせを含み、
    前記制御装置は、
    前記第1旋回状態では、前記ロール角の前記大きさを前記釣合ロール角大きさに近づけ、
    前記第2旋回状態では、前記ロール角の前記大きさを前記釣合ロール角大きさよりも大きい値に近づける、
    ように構成されている、移動装置。
  12. 請求項1から11のいずれかに記載の移動装置であって、
    前記1以上の回動輪を前記幅方向に回動可能に支持する回動輪支持装置と、
    前記1以上の回動輪を前記幅方向に回動させる回動トルクを生成するように構成されている操舵駆動装置と、
    を備え、
    前記特定の2つの状態は、
    前記操舵駆動装置の状態が予め決められた不具合状態であることを示す第1装置状態と、
    前記操舵駆動装置の前記状態が前記不具合状態ではないことを示す第2装置状態と、
    の組み合わせを含み、
    前記制御装置は、速度と前記目標方向と前記目標程度とのそれぞれが一定である状態で、前記速度の少なくとも一部の範囲内で、前記移動装置が前記第1装置状態で旋回する第1の場合には、前記移動装置が前記第2装置状態で旋回する第2の場合と比べて、前記ロール角の前記大きさが大きくなるように、前記傾斜駆動装置を制御するように構成されている、
    移動装置。
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