JP2021155860A - ボトム衣料 - Google Patents

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和也 矢田
Kazuya Yada
和也 矢田
晴香 大伴
Haruka Otomo
晴香 大伴
久代 佐竹
Hisayo Satake
久代 佐竹
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Abstract

【課題】動作時において動きやすさを阻害することなく、かつ、膝に対する旋回効果の大きいボトム衣料を提供すること。【解決手段】本発明のボトム衣料は、弾性糸を含み、身生地と内生地から構成され、身生地の内側に内生地が重なっており、内生地の少なくとも一部は身生地と接着されていない2重構造が存在するボトム衣料であって、内生地の上端部全長に対する、内生地の身生地と接着していない上端部の割合が30%〜100%であり、かつ、下端部全長に対する、該内生地の身生地と接着していない下端部の割合が30%〜100%であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、ボトム衣料に関する。
従来、臀部の筋肉のサポートや保型性を向上させることを目的として、さまざまなタイプのガードル、ショーツ、ハーフパンツ、タイツ、スパッツ等の検討がなされてきた。例えば、ガードル本体に、本体よりも緊締力の強い部材を部分的に配し、筋肉のサポート効果を高めたガードルが提案されている(以下の特許文献1を参照のこと)。同様にスポーツタイツ、コンプレッションウエアも多数提案されている。
また、日常生活でO脚やX脚のように正しい歩き方ができないと、膝関節に負担がかかり、筋力の低下や、膝痛にもつながる。このようなO脚又はX脚を矯正することを目的とした衣類の検討も多くなされている。例えば、衣服本体と帯状の膝外側サポート部材を有し、膝外側サポート部材を、衣服本体を構成する伸縮性素材より身長方向の伸張率が低い低伸縮性素材で構成することで、O脚やX脚を矯正し膝の痛みを軽減する衣服が提案されている(以下の特許文献2を参照のこと)。
また、内生地と身生地の2重構造を有し、内生地下部を身生地と接着していない、O脚やX脚を矯正するボトム衣料が提案されている(以下の特許文献3を参照のこと)。しかしながら、特許文献3のボトム衣料は、過度のО脚、X脚に対しては、矯正効果が不足していることや、アスリート等の動作範囲が大きい着用者に対しては、多少の動作阻害が感じられるものであった。
特開2004−300619号公報 特開2019−081986号公報 国際公開第2019/124525号
前記した従来技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、動作時において動きやすさを阻害することなく、かつ、膝に対する旋回効果の大きいボトム衣料を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]弾性糸を含み、身生地と内生地から構成され、該身生地の内側に該内生地が重なっており、該内生地の少なくとも一部は該身生地と接着されていない2重構造が存在するボトム衣料であって、
前記内生地の上端部全長に対する、該内生地の前記身生地と接着していない上端部の割合が30%〜100%であり、かつ、該内生地の下端部全長に対する、該内生地の前記身生地と接着していない下端部の割合が30%〜100%であることを特徴とする、ボトム衣料。
[2]前記内生地の上端部全長に対する、該内生地の前記身生地と接着していない上端部の割合が30%〜100%であり、かつ、該内生地の下端部全長に対する、該内生地の前記身生地と接着していない下端部の割合が70%〜100%である、前記[1]に記載のボトム衣料。
[3]前記内生地の少なくとも上端部及び下端部のいずれかが前記身生地に仮接着されている、前記[1]または[2]に記載のボトム衣料。
[4]未着用時において、前記内生地の少なくとも上端部及び下端部のいずれかが前記身生地に仮接着されており、着用後には該仮接着が取り外される、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のボトム衣料。
[5]前記仮接着が仮縫いである、前記[3]または[4]に記載のボトム衣料。
[6]スポーツ衣料である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のボトム衣料。
[7]未着用時において、前記内生地の少なくとも上端部及び下端部のいずれかが前記身生地に仮接着されており、着用後に該仮接着が取り外される、前記[3]〜[6]のいずれかに記載のボトム衣料の着用方法。
本発明のボトム衣料は、動作時において動きやすさを阻害することなく、かつ、膝に対する旋回効果に優れる。
本実施形態のボトム衣料の構造の一例を示す図である。図1中、太実線は縫製により接着されている箇所を示す(以下の図2に同じ)。 本実施形態のボトム衣料の構造の一例を示す図である。 本実施形態のボトム衣料の効果検証を行う際の測定点を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本明細書における「〜」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を上限値、及び下限値として含む意味である。
本発明のボトム衣料は、弾性糸を含み、身生地と内生地から構成され、該身生地の内側に該内生地が重なっており、該内生地の少なくとも一部は該身生地と接着していない2重構造が存在するボトム衣料であって、前記内生地の上端部全長に対する、該内生地の該身生地と接着していない上端部の割合が30%〜100%であり、かつ、該内生地の下端部全長に対する、該内生地の該身生地と接着していない下端部の割合が30%〜100%であることを特徴とする。
本発明のボトム衣料は、弾性糸を含み、身生地と内生地から構成され、該身生地の内側に内生地が重なっており、且つ該内生地と該身生地が特定の未接着部分を有することで、動作時において、内生地が皮膚の伸展に追随し、動作を阻害しないため動き易く、且つ効率的に外旋力又は内旋力を身体に与えることができるため、膝に対する旋回効果が大きい。このため、O脚やX脚への矯正効果が望め、本発明のボトム衣料を着用することで歩行補助効果に優れる。
したがって、本発明のボトム衣料は、スポーツ用ハーフパンツ、スポーツ用タイツ、中高年や高齢者向けパンツなどに好適に適用できる。
特に、本発明のボトム衣料は、スポーツ衣料、すなわち、スポーツ用ボトムであることが好ましい。上述したような効果をより実効あるものとすることができる。
本実施形態のボトム衣料を主として構成する身生地は、非弾性糸を含んでもよい。本実施形態のボトム衣料を主として構成する身生地に使用される非弾性糸に特に制限はなく、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維、塩化ビニル系繊維等の化合繊を用いることができる。化合繊の繊度としては20dtex〜200dtexの繊度とすることが好ましい。
また、非弾性糸は、フィラメント糸又は紡績糸のいずれであってもよい。
フィラメント糸の形態は、原糸(未加工糸)、仮撚加工糸、先染糸などのいずれであってもよく、また、これらの複合糸であってもよい。複合糸は、エア混繊、合撚、カバリング、仮撚混繊等、特に限定されない。フィラメント糸の断面形状は〇、△、十字、W型、M型、C型、I型、ドッグボーン型、中空糸など特に制限はない。
紡績糸の形態は、単独又は混紡されたもの等、いずれであってもよい。混紡方法においても特に限定されないが、ピリングの発生がしにくいMVS方式で得られる紡績糸が好ましい。
非弾性糸にはブライト糸、セミダル糸、フルダル糸等任意に選択できる。
非弾性糸の一部にセルロース繊維を用いてもよい。セルロース繊維も特に限定されず、例えば、キュプラ、レーヨン、竹繊維、綿、モダール、テンセルを使用することができる。
セルロース繊維は、フィラメント糸の形態では、原糸(未加工糸)、仮撚加工糸、先染糸などのいずれであってもよく、上述の複合糸でもよい。また、セルロース繊維が紡績糸の形態では、単独又は混紡されたもの等、いずれであってもよい。
セルロース繊維としては、好ましくはキュプラ繊維である。使用するセルロース繊維の繊度は、フィラメント糸の場合、30dtex〜200dtexのものが好ましく、より好ましくは30dtex〜170dtex、更に好ましくは30dtex〜120dtexである。また、紡績糸の場合、60番〜30番の紡績糸が好ましく、より好ましくは50番〜40番である。セルロース繊維を混用することで、その吸湿性により、着用感に優れ、制電性にも優れ、曲げ柔らかさに優れたボトム衣料を得ることができる。
本実施形態のボトム衣料は、ボトム衣料を構成する身生地には、弾性糸が少なくとも一部に配されている。
本実施形態のボトム衣料の身生地に一部配される弾性糸は、破断伸度100%以上の繊維を指す。弾性糸のポリマーや紡糸方法は特に限定されず、ポリウレタン弾性糸(スパンデックス又はスパンデックス繊維ともいう。)、ポリエーテル・エステル弾性糸、ポリアミド弾性糸、ポリオレフィン弾性糸が挙げられ、例えば、ポリウレタン弾性糸では、乾式紡糸又は溶融紡糸したものが使用できる。また、これらの弾性糸に非弾性糸を被覆し、カバリング状態としたものでもよい。更に天然ゴム、合成ゴム、半合成ゴムからなる糸状である、いわゆるゴム糸などを使用することもできるが、伸縮性に優れ、一般的に広く利用されているポリウレタン弾性糸が好適である。その中でも、ポリウレタンポリマーを構成するジオール成分が側鎖を有することが好ましく、該側鎖がメチル基であることがより好ましく、同一の炭素上にメチル基を2つ有することが更に好ましい。
弾性糸の破断伸度は、生地に良好な伸縮性を持たせるという観点より、400%〜1000%であることが好ましい。上記破断伸度はJIS L1013 8.5.1 引っ張り強さ及び伸び率に記載された方法で測定される値である。
弾性糸は、染色加工時のプレセット工程における通常の処理温度である180℃近辺で伸縮性を損なわないことが好ましい。また、特殊ポリマーや粉体が添加された、高セット性、消臭性、抗菌性、吸湿性、吸水性等の機能性を有する弾性糸も使用可能である。弾性糸の繊度については、10dtex〜700dtex(デシテックス、以下同じ記号を使用する)程度の繊維の使用が可能であり、弾性糸でルーピングを行なう場合は、12dtex〜250dtex程度の弾性糸の使用が好ましく、ラッシェル編機を使用して弾性糸の挿入編成を行なう場合は、70dtex〜700dtexの弾性糸の使用が好ましい。
本実施形態のボトム衣料を主として構成する身生地としては、織物又は編物が用いられ、アイテムにより適宜選択される。伸縮性の観点からは編物が好ましい。
経編の場合は、ラッシェル編機又はトリコット編機により、弾性糸が挿入又はルーピングされている組織が好適に用いられる。ラッシェルの組織では6コースサテン、4コースサテン、6コースチュール、トリコネットなど太いスパンデックス繊維を挿入した組織が好適に用いられ、スパンデックスを2本挿入し、タテヨコに伸びを持つ組織が着用感の点から特に好ましい。トリコットではハーフトリコット、二目編み、アトラス組織などが、伸縮性が良いため好ましい。
丸編の場合は、弾性糸がルーピングされているものが好ましい。
身生地としては、弾性繊維を織り込んだ織物も好適に用いられる。
身生地の目付としては、50〜400g/m2である生地が好適に用いられる。
本実施形態の身生地は、一般消費者向けの製品としてはヨコ方向の50%伸長時の応力が0.3N〜3Nであることが好ましく、より好ましくは0.3N〜2.5N、さらに好ましくは0.5N〜1.5Nである。伸張応力の測定は、テンシロン引張り試験機を使用し、10cmの把持間隔で把持した2.5cm巾の生地を引張速度300mm/分で伸張し、伸張率が50%の応力を読み取る。身生地のヨコ方向の50%伸長時の応力が3N以下である場合には着用時の締め付けが強すぎず、快適である。他方、身生地のヨコ方向の50%伸長時の応力が0.3N以上であれば、着用感を高め、動作時等の体の振動を抑制しやすくなる。また、筋肉量が多いアスリート等向けの製品としては、身生地は、ヨコ方向の50%伸長時の応力が0.3N〜5Nであることが好ましく、より好ましくは0.3N〜4.5N、さらに好ましくは0.5N〜4.0Nである。
また、身生地のタテ方向の50%伸長時の応力は0.3N〜4Nが好ましい。タテ方向の50%伸長時の応力が4N以下であれば、座る、しゃがむなどの動作時の動作追随性が高まる。他方、0.3N以上では、着用感を高め、動作時等の体の振動を抑制しやすくなる。尚、本明細書において、「ヨコ方向」とは、ボトム製品における周囲方向(着用時の人体周囲方向)を指し、「タテ方向」とは、ボトム製品における上下方向(着用時の人体身長方向)を指す。
ガードルやショーツなどのインナーに用いる場合、脚側の裾は、抜き糸で形成されるヘム組織や、切断面の糸のほつれやカールがなく切りっぱなしで使用できるフリーカット組織であることが好ましい。これらを用いることにより、端部に縫製をする必要がないため、端部が厚くなるのを防ぎ、皮膚に当たり、皮膚に跡が残ることを防ぐことができる。また、アウターにラインが響かず審美性に優れる。フリーカット素材としては、例えば、熱融着しやすいタイプのポリウレタンと非弾性繊維との混用素材が好適に用いられ、該非弾性糸としてはナイロンやポリエステルが好適に用いられる。
本実施形態のボトム衣料は、身生地の内側(着用時の人体側)に、内生地が重なった2重構造を有することを特徴としている。
内生地としては、織物又は編物が用いられ、製品により適宜選択されるが、伸縮性の観点からは編物が好ましい。経編の場合は、ラッシェル編機又はトリコット編機により、弾性糸が挿入又はルーピングされている組織が好適に用いられる。ラッシェルの組織では、6コースサテン、4コースサテン、6コースチュール、トリコネットなど、太いスパンデックス繊維を挿入した組織が好適に用いられ、スパンデックスを2本挿入し、タテヨコに伸びを持つ組織が、着用感の点から特に好ましい。ジャカードラッシェルにて、内生地のパネル内で生地の伸張応力に差があってもよい。トリコットの組織では、ハーフトリコット、二目編み、アトラス組織などが、伸縮性が良いため好ましい。丸編の場合は、弾性糸がルーピングされているものが好ましい。織物としては、弾性繊維を織り込んだ織物が好適に用いられる。内生地の目付としては、50〜400g/m2である生地が好適に用いられる。
本実施形態の内生地において、外旋力又は内旋力を効率的に働かせるという観点から、内生地が臀部を覆う面積は、臀部の面積の60%以下であることが望ましい。本明細書中、「臀部」とは、人体の左右の脇側と稜上平面(ウエスト部)から臀溝までの領域のことをいう。内生地が臀部の面積の60%以下であれば、着用時に内生地の伸張バランスに変化が生じやすく、太もも部を外側又は、内側に引き寄せる力が強くなり、効果的であり、50%以下であるとより好ましい。また、臀部を覆う面積が一定以上あると内生地が伸びる際に体に食い込むことがなく、伸長時による着圧も低いため、着用感が良い。このため、内生地は、臀部の少なくとも10%以上を覆うことが好ましい。また、太もも上部を覆う場合は、臀溝から下腿方向に向けて、10cm以内の部分を覆うことが好ましい。
内生地の製品タテ方向の幅は、5cm〜20cmであることが好ましく、より好ましくは、5cm〜18cmである。内生地のタテ方向の幅が5cm以上あれば、身体に対して十分な被覆面積があり、生地が伸長される際の伸張力が身体にかかりやすく、外旋効果もしくは内旋効果が発揮しやすい。他方、内生地のタテ方向の幅が20cm以下であれば、着用時に内生地の伸張バランスに変化が生じやすく、太もも部を外側又は、内側に引き寄せる力が強くなり、外旋効果もしくは内旋効果が発揮しやすい。
本実施形態のボトム衣料は、伸長時の応力が身生地の1.6倍超〜10.0倍の内生地の少なくとも一部を、身生地と接着させずに身生地と重ねること、また、内生地の少なくとも一部が接着していないことによって、着用・静止時には、前部側から臀部側にかけて内生地の伸張バランスが変わることにより、太もも部を外側又は内側に引き寄せる力が生じる。ここで「接着していない」とは、生地同士が縫製やボンディング等の手段により常時密着、固定化されておらず、生地が浮いていることをいう。
また、歩行時には、動きに合わせて内生地がずれて、前部側から臀部側にかけて内生地の伸張バランスが静止時よりも大きく変わることにより、太もも部をさらに外側又は内側に引き寄せる力が生じる。この太もも部を引き寄せる効果により、下腿部への外旋力もしくは内旋力が発生し、足を開くもしくは閉じる力が発生する。この作用により歩幅や歩行スピードの上昇につながると考えられる。また、X脚に対して外旋力を、O脚に対して内旋力を働かせることで、大腿骨の正常な方向への位置矯正が行われ、歩行等の立脚時に足が出しやすくなるため、更に歩幅や歩行スピードの上昇につながると考えられる。
特に、内生地の少なくとも一部が身生地に接着していないことによって、身生地とは独立して(追従せず)常に内生地で足表面を引っ張ることで足を旋回させる効果が得られる。
本実施形態のボトム衣料における好ましい各部材の配置の例を、図1〜図2に示す。
図1においては、腰部から臀部下部を覆うように内生地が配置されている。本生地の配置においては、着用時に内生地の腰部から臀部における伸び量が、臀部下部に対応する部位の生地の伸び量より大きくなることから、内生地が臀部下部方向へ引っ張られることにより、太もも部を外側に引っ張る力(外旋力)が発生することにより、足を外旋させる効果が得られる。
図2においては、太もも付け根部もしくは鼠径部から臀部上部もしくは臀溝〜太腿上部において内生地が配置されている。本生地の配置においては、着用時に背面部に対応する内生地の伸び量より前面部に対応する内生地の伸び量が大きくなることから、内生地が前面側に引っ張られることにより、太もも部を内側に引っ張る力(内旋力)が発生することにより、足を内旋させる効果が得られる。
本実施形態のボトム衣料は、内生地の全面積に対して、該内生地の身生地と接着していない部分の面積率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。前記面積率が70%以上であれば、身生地と内生地が異なる動きをしやすく、脚部の矯正効果が得やすい。
本実施形態のボトム衣料は、接着は内生地のいくつかの端部で行うことができ、例えば、上端部、下端部、脇端部(内生地の左右の端部、クロッチ部との接着部、前面パネル(おなか押さえパネル又はパネルともいう)との接着部を総称して脇端部という。図1参照。)が挙げられる。
特に、本発明のボトム衣料では、内生地の端部のうち、上端部全長に対する、該内生地の身生地と接着していない上端部の割合が30%〜100%であり、かつ、下端部全長に対する、該内生地の身生地と接着していない下端部の割合が30%〜100%(以下、「所定の端部非接着割合」ともいう)である。
これにより、動作時において、内生地が皮膚の伸展に追随し、動作を阻害しないため動き易く、且つ効率的に外旋力又は内旋力を身体に与えることができるため、膝に対する旋回効果が大きくなる。このため、O脚やX脚への矯正効果が望め、本発明のボトム衣料を着用することで歩行補助効果に優れる。
上端部の接着していない割合に関しては、50%〜100%がより好ましく、70%〜100%がさらに好ましい。下端部の接着していない割合に関しても、50%〜100%がより好ましく、70%〜100%がさらに好ましい。
ここで「接着していない」とは、生地同士が縫製やボンディング等の手段により常時密着、固定化されておらず、生地が浮いていることをいう。内生地が前記した所定の端部非接着割合であると、前面側から臀部側もしくは背面部にかけて、内生地の伸張バランスに変化が非常に生じやすく、太もも部を外側又は内側に引き寄せる力が大変強くなるため、好ましい。尚、接着される部分と接着されない部分は連続していても不連続でもよく、また、ウエスト部には、ウエストゴムが設置されていてもよい。
ガードル等で前面におなか押さえパネルが設置される場合には、内生地の脇端はパネルの左右の一部にそれぞれ接着されていることが好ましい。パネルの製品タテ方向の幅は5cm〜20cmが好ましく、内生地が前面パネルの片側に接着され、後ろ中心を通過し、もう一方の側の前面パネルに接着されているのが好ましい。
上記の外旋力を発生させるためには、平置き時のボトム衣料前面において、前記内生地の脇端部の接着部の70%以上が、股部より5cm上の点を通る水平線よりも上部に位置していることが好ましい。股部とは、図1で示すボトム下部における2股に分かれる頂点を示す。図1に示すように、内生地の両端の太実線で示した部分が脇端部の接着部であり、この太実線の70%が前記股部の5cm上の点を通る水平線よりも上部に位置していると、外旋力が発生しやすい。
また、内旋力を発生させるためには、平置き時のボトム衣料前面において、前記内生地の脇端部の接着部の70%以上が、股部より5cm上の点を通る水平線よりも下部に接着していることが好ましい。図2に示すように、内生地の両端の太実線で示した部分が脇端部の接着部であり、この太実線の70%が前記股部の5cm上の点を通る水平線よりも株に位置していると、内旋力が発生しやすい。
内生地の端部が股部上方5cmの領域より上部にある場合は、前面における内生地の伸張は、背面に比べて小さくなり、下部にある場合は、前面における内生地の伸張は、背面に比べて大きくなることから、それぞれ、着用時に外旋力と内旋力が発生することとなる。
接着は、縫製、ボンディング等が可能であるが、生地の伸びを損なわない方法が好ましく、縫製であれば二本針縫や千鳥縫いが好ましく、ボンディングでは幅0.5cm〜1.5cmで接着を行うことが好ましい。ボンディングによる接着は、縫製の場合に比べて接着部の段差が解消されるため、より好ましい。また、内生地にフリーカットの素材を用いることでも、端部の段差が解消されるため、好ましい。
本実施形態のボトム衣料の効果を最大限に発揮するためには、着用状態で内生地にめくれや伸長による位置ずれが生じていないことが望ましい。未着用時のボトムにおいて、少なくとも上端部及び下端部のいずれかが仮接着されていることで、着用時における内生地の位置ずれが起きにくく、着用後に該仮接着を外すことで、位置ずれなく前記した所定の端部非接着割合で内生地を配することが可能となり、効率的に太腿部に対し、外旋力及び内旋力を与えることが可能となり、矯正効果が高くなる。ここで「仮接着」とは、一時的に内生地と身生地とを接着させ、必要に応じて非接着とさせることができる接着のことをいう。仮接着としては、仮縫い、ボタン、線ファスナー、面ファスナー、粘着テープ等による方法が使用可能であるが、仮縫いは着用後に完全に取り除けるため、着用快適性が高く、また本発明の効果が発現しやすいため、好ましい。
本実施形態のボトム衣料の臀部の着圧は、5hPa〜20hPaが好ましく、さらに好ましくは8hPa〜18hPaである。臀部の着圧とは、臀部の周径の最も大きい位置における左右の山の頂点(ヒップトップ)での着圧の左右の平均をいい、Mサイズのボトム衣料ではMサイズの標準体型のマネキンに装着させ、エアパック式着圧計で計測される。また、Lサイズのボトム衣料ではLサイズの標準体型マネキンに装着させ、計測される。臀部の着圧が5hPa以上であれば、着圧が十分大きく、動作時の揺れを抑える効果が高くなり好ましい。他方、臀部の着圧が20hPa以下であれば、圧迫感が軽減でき、着用快適性が高くなる。
アスリート向けボトム衣料は、やや強めの着圧とすることが運動パフォーマンスのサポートの観点から好ましく、臀部の着圧は10hPa〜20hPaが好ましい。また、アスリート向けのボトム衣料の場合、汗処理の観点から身生地または内生地に使用する非弾性糸はポリエステル系繊維が望ましい。
高齢者向けボトム衣料は、やや弱めの着圧で履き易さを高めることが好ましく、臀部の着圧は5hPa〜15hPaが好ましい。臀部の着圧が前記範囲にあることで、履き易さも向上する。
内生地は、ハーフパンツやコンプレッションウエアの脚の部分にも重ねることができ、太ももの揺れ、脹脛の揺れを抑えることができる。
なお、本実施形態のボトム衣料の臀部の着圧は、動作時において上昇しないことが望ましい。動作時に臀部の着圧が上昇しなければ、圧迫感が上昇せず、また生地が皮膚と過度に接着せず、生地の伸びが阻害されず、皮膚進展も阻害されないため、動作感が良好となる。アスリート等のように動作が大きい場合、特に動作を阻害しないことにより、パフォーマンス向上にさらに寄与し、着用感の非常に高いボトム衣料となる。
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。尚、実施例、比較例における伸長応力の測定等は下記により行った。
(1)内生地の上端部全長に対する、内生地の身生地と接着していない上端部の割合、及び、下端部全長に対する、該内生地の身生地と接着していない下端部の割合
ボトム衣料着用時に内生地の上部(腰に近い端部)の端を上端部とし、下部(足首方向に近い端部)の端を下端部とし、上端部の全長をP(cm)、下端部の全長L(cm)とし、身生地と接着している端部の長さを上端部においてはP’(cm)、下端部においてはL’ (cm)とし、次式:
内生地の上端部全長に対する、内生地の身生地と接着していない上端部の割合=(P−P’)/P×100(%)
内生地の下端部全長に対する、内生地の身生地と接着していない下端部の割合=(L−L’)/L×100(%)
で算出した。
(2)着圧変化量
20歳〜40歳の被験者5名にMサイズのボトム衣料を着用させ、左のヒップトップ部(臀部の盛り上がりの頂点、A1とする)、及び、背面における左足の中心線と臀溝との交点から5cm下方の太腿部の位置(A2とする)に、エーエムアイ・テクノ社製着圧測定器AMI−3037−10に接続したエアパックを貼り付けた。静止立位の状態のA1の着圧をK(kPa)、A2の着圧をN(kPa)とし、ボトムを着用させた被験者の10cm前方に高さ18cmの台を設置し、左足の膝を曲げて台の上に脚を置かせた際のA1における着圧をK′(kPa)、A2における着圧をN′(kPa)としたとき、着圧変化量を次式:
A1における着圧変化量={(K/K’)−1}×100(%)
A2における着圧変化量={(N/N’)−1}×100(%)
で算出した。
なお、各被験者において上記測定を3回繰り返し、その平均を求めた。
(3)膝に対する旋回効果(膝角度変化量)
20歳〜40歳の被験者5名にMサイズのボトム衣料を着用させ、静止立位の状態において、図3に示す腸骨点、膝蓋骨中央、外果点に反射マーカーを取り付け、動作解析システム(VINUS3D:株式会社ノビテック製)にて計測を行い、腸骨点、膝蓋骨中央、外果点がなす膝角度(図3で示すΘ:前面から見た膝の内角表す)を測定し、次式にて算出した。
膝角度変化量[°]=(ボトム衣料着用時の腸骨点、膝蓋骨中央、外果点からなす角度)−(未着用時の腸骨点、膝蓋骨中央、外果点からなす角度)
外旋力が働き、膝が外旋される場合は、膝角度変化量は負の値となり、内旋力が働き、膝が内旋される場合は正の値となる。また、膝角度変化量の絶対値が大きいほど、膝に対する旋回効果が大きい。
(4)着用感
全体の動きやすさ、圧迫感について被験者5名で以下の基準で評価し、その平均とした。
<動きやすさ>
5:非常に動きやすい
4:動きやすい
3:どちらともいえない
2:やや動きにくい
1:非常に動きにくい
<圧迫感>
5:非常にきつい
4:ややきつい
3:どちらともいえない
2:やや緩く感じる
1:非常に緩く感じる
[実施例1]
身生地及び内生地用の生地は、シングルトリコット機を用いて、フロント筬に56dtex36フィラメントのポリエステル、バック筬に56dtexのポリウレタン繊維を共にフルセットで通糸し、フロントの組織を1−0/2−3、バックの組織を1−2/1−0で編成し、通常の方法で仕上げた。
前記生地の、編地としての経糸方向を、製品のヨコ方向に配置し、JASPO(日本スポーツ用品工業協会)の男女兼用Mサイズのサイズにて図1のパターンで身生地及び内生地を作製した。また、内生地は、前記生地の、編地としての経糸方向を、製品のタテ方向に配置した。縫製はシーマミシンを用いて実施した。内生地の脇端部はシーマミシンを用いて身生地と縫製し、ボトム衣料を作製した。上端部及び下端部における仮接着については、本縫いミシンにて運針を下げて1インチ間あたり8針の条件において縫製を実施した。なお、着用後は、仮縫い部分は糸切りを実施し、引き抜くことで上端部及び下端部の仮縫いを取り除いた。
着用試験の結果を、以下の表1に示す。
[実施例2]
内生地の上端部及び下端部を仮縫いしない以外は、実施例1と同様にしてボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表1に示す。
[実施例3]
内生地の上端部の全長に対し、25%に対応する部分を等間隔で部分縫いした以外は、実施例2と同様のボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表1に示す。
[実施例4]
内生地の上端部及び下端部の全長に対し、それぞれ25%に対応する部分を等間隔で部分縫いした以外は、実施例2と同様のボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表1に示す。
[実施例5]
内生地の上端部の全長に対し、38%に対応する部分を等間隔で部分縫いした以外は、実施例2と同様のボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表1に示す。
[実施例6]
内生地の上端部の全長に対し、57%に対応する部分を等間隔で部分縫いした以外は、実施例2と同様のボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表1に示す。
[実施例7]
内生地の上端部の全長に対し、57%に対応する部分を等間隔で部分縫い、下端部の全長に対し、35%に対応する部分を等間隔で部分縫い以外は、実施例2と同様のボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表1に示す。
[実施例8]
身生地及び内生地用の生地は、シングルトリコット機を用いて、フロント筬に56dtex36フィラメントのポリエステル、バック筬に56dtexのポリウレタン繊維を共にフルセットで通糸し、フロントの組織を1−0/2−3、バックの組織を1−2/1−0で編成し、通常の方法で仕上げた。
前記生地の、編地としての経糸方向を、製品のヨコ方向に配置し、JASPO(日本スポーツ用品工業協会)の男女兼用Mサイズのサイズにて図2のパターンで身生地及び内生地を作製した。また、内生地は、前記生地の、編地としての経糸方向を、製品のタテ方向に配置した。縫製はシーマミシンを用いて実施した。内生地の脇端部はシーマミシンを用いて身生地と縫製し、ボトム衣料を作製した。上端部及び下端部における仮接着については、本縫いミシンにて運針を下げて1インチ間あたり8針の条件において縫製を実施した。なお、着用後は、仮縫い部分は糸切りを実施し、引き抜くことで上端部及び下端部の仮縫いを取り除いた。
着用試験の結果を、以下の表2に示す。
[実施例9]
内生地の上端部及び下端部を仮縫いしない以外は、実施例8と同様にしてボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表2に示す。
[実施例10]
内生地の上端部の全長に対し、25%に対応する部分を等間隔で部分縫いした以外は、実施例9と同様のボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表2に示す。
[実施例11]
内生地の上端部及び下端部の全長に対し、それぞれ25%に対応する部分を等間隔で部分縫いした以外は、実施例9と同様のボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表2に示す。
[実施例12]
内生地の上端部の全長に対し、39%に対応する部分を等間隔で部分縫いした以外は、実施例9と同様のボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表2に示す。
[実施例13]
内生地の上端部の全長に対し、61%に対応する部分を等間隔で部分縫いした以外は、実施例9と同様のボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表2に示す。
[実施例14]
内生地の上端部の全長に対し、61%に対応する部分を等間隔で部分縫い、下端部の全長に対し、36%に対応する部分を等間隔で部分縫いした以外は、実施例9と同様のボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表2に示す。
[比較例1]
内生地の上端部全長を、シーマミシンを用いて身生地と縫製した以外は、実施例2と同様にしてボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表1に示す。
[比較例2]
内生地の上端部及び下端部全長を、シーマミシンを用いて身生地と縫製した以外は、実施例2と同様にしてボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表1に示す。
[比較例3]
内生地の上端部の全長に対し、81%に対応する部分を等間隔で部分縫いした以外は、実施例2と同様のボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表1に示す。
[比較例4]
内生地の上端部全長を、シーマミシンを用いて身生地と縫製した以外は、実施例8と同様にしてボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表2に示す。
[比較例5]
内生地の上端部及び下端部全長を、シーマミシンを用いて身生地と縫製した以外は、実施例8と同様にしてボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表2に示す。
[比較例6]
内生地の上端部の全長に対し、80%に対応する部分を等間隔で部分縫いした以外は、実施例8と同様のボトム衣料を作製した。
着用試験の結果を、以下の表2に示す。
Figure 2021155860
Figure 2021155860
表1、2から、該内生地の上端全長に対する該内生地の身生地と接着していない端部の割合が30%〜100%及び下端部全長に対する該内生地の身生地と接着していない端部の割合が30%〜100%であることで、膝に対する内旋または外旋の効果が良好に得られている。また、動きやすさ、圧迫感を両立することができる。
したがって、本発明のボトム衣料は、動作時において動きやすさを阻害することなく、かつ、膝に対する旋回効果に優れたものとなる。
さらに、未着用時に、上端部及び下端部のいずれかを仮縫いし、着用後に仮縫いを外すことで、着用時における内生地の位置ずれが起きにくく、効率的に太腿部に対し、外旋力及び内旋力を与えることが可能となり、矯正効果がより高くなる。
本発明のボトム衣料は、身生地の内側に内生地を重ね、該内生地の上端全長に対する該内生地の身生地と接着していない端部の割合及び該内生地の下端全長に対する該内生地の身生地と接着していない端部の割合が所定の範囲にあることで、動作時において、内生地が皮膚の伸展に追随し、動作を阻害しないため動き易く、且つ効率的に外旋力又は内旋力を身体に与えることができるため、膝に対する旋回効果が大きい。このため、O脚やX脚への矯正効果が望め、本発明のボトム衣料を着用することで歩行補助効果に優れる。したがって、本発明のボトム衣料は、スポーツ用ボトムなどに好適に利用可能である。

Claims (7)

  1. 弾性糸を含み、身生地と内生地から構成され、該身生地の内側に該内生地が重なっており、該内生地の少なくとも一部は該身生地と接着されていない2重構造が存在するボトム衣料であって、
    前記内生地の上端部全長に対する、該内生地の前記身生地と接着していない上端部の割合が30%〜100%であり、かつ、該内生地の下端部全長に対する、該内生地の前記身生地と接着していない下端部の割合が30%〜100%であることを特徴とする、ボトム衣料。
  2. 前記内生地の上端部全長に対する、該内生地の前記身生地と接着していない上端部の割合が30%〜100%であり、かつ、該内生地の下端部全長に対する、該内生地の前記身生地と接着していない下端部の割合が70%〜100%である、請求項1に記載のボトム衣料。
  3. 前記内生地の少なくとも上端部及び下端部のいずれかが前記身生地に仮接着されている、請求項1または2に記載のボトム衣料。
  4. 未着用時において、前記内生地の少なくとも上端部及び下端部のいずれかが前記身生地に仮接着されており、着用後には該仮接着が取り外される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のボトム衣料。
  5. 前記仮接着が仮縫いである、請求項3または4に記載のボトム衣料。
  6. スポーツ衣料である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のボトム衣料。
  7. 未着用時において、前記内生地の少なくとも上端部及び下端部のいずれかが前記身生地に仮接着されており、着用後に該仮接着が取り外される、請求項3〜6のいずれか1項に記載のボトム衣料の着用方法。
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