JP2021155609A - 樹脂発泡粒子および樹脂発泡成形体 - Google Patents

樹脂発泡粒子および樹脂発泡成形体 Download PDF

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大地 景山
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皓平 田積
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Abstract

【課題】耐熱性に優れるとともに発泡性に優れた樹脂発泡粒子を提供し、耐熱性と軽量性とに優れた樹脂発泡成形体を提供する。【解決手段】ポリカーボネート系樹脂組成物で構成され、しかも、特定の気泡構造を有する樹脂発泡粒子で樹脂発泡成形体を構成させる。【選択図】 図1

Description

本発明は、樹脂発泡粒子および樹脂発泡成形体に関する。
従来、ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物(ポリカーボネート系樹脂組成物)は、耐熱性、難燃性に優れ、しかも、高い強度を有することから各種の用途において利用されている。
下記特許文献1には、ポリカーボネート系樹脂組成物を発泡させて用いることが記載されており、樹脂発泡粒子や樹脂発泡成形体の原材料としてポリカーボネート系樹脂組成物をとが記載されている。
また、下記特許文献2には、ポリカーボネート樹脂を発泡に適した状態となるように改質することが開示されており、エポキシ基を有する増粘剤を使って良好な発泡性を示す改質ポリカーボネート樹脂を製造することについて開示されている。
特開2019−183099号公報 特許第5182841号公報
ポリカーボネート系樹脂組成物で構成された樹脂発泡粒子や樹脂発泡成形体については、さらなる耐熱性の向上が要望されている。
そこで、本発明は、耐熱性に優れるとともに発泡性に優れた樹脂発泡粒子を提供し、耐熱性と軽量性とに優れた樹脂発泡成形体を提供することを課題としている。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討し、樹脂発泡粒子の気泡密度を特定の範囲とすることで、耐熱性の高いポリカーボネート系樹脂組成物を構成材料としても発泡性に優れた樹脂発泡粒子が得られることを見出し本発明を完成させるに至った。
本発明は、上記課題を解決すべく、
1又は複数のポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート系樹脂組成物で構成された樹脂発泡粒子であって、1.00×10個/cm以上1.50×1010個/cm未満の気泡密度を有し、
前記ポリカーボネート系樹脂組成物の中間点ガラス転移温度(Tmg)が152℃以上である樹脂発泡粒子を提供する。
本発明は、上記課題を解決すべく、
互いに接着されている複数の樹脂発泡粒子で構成された樹脂発泡成形体であって、
前記樹脂発泡粒子が、1又は複数のポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート系樹脂組成物で構成され、
前記樹脂発泡粒子が、1.00×10個/cm以上1.50×1010個/cm未満の気泡密度を有し、
前記ポリカーボネート系樹脂組成物の中間点ガラス転移温度(Tmg)が152℃以上である樹脂発泡成形体を提供する。
本発明によれば、耐熱性に優れるとともに発泡性に優れた樹脂発泡粒子が提供され、耐熱性と軽量性とに優れた樹脂発泡成形体が提供され得る。
一実施形態に係る樹脂発泡成形体を示した概略斜視図。
以下に本発明の実施の形態について説明する。
以下においては、特定のポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート系樹脂組成物によって樹脂発泡粒子や樹脂発泡成形体が構成されている態様を主たる例として本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係るポリカーボネート系樹脂組成物は、樹脂発泡粒子や互いに接着されている複数の樹脂発泡粒子で構成された樹脂発泡成形体の原材料として好適に用いられ得る。
図1は、樹脂発泡成形体の一例を示した概略斜視図であり、図に示されているように該樹脂発泡成形体100は、互いに接着された複数の樹脂発泡粒子10で構成されている。
本実施形態の樹脂発泡成形体100は、接着剤等を介することなく隣り合う樹脂発泡粒子10どうしが熱融着することによって直接的に接着されることによって形成されている。
本実施形態の樹脂発泡成形体100を構成する樹脂発泡粒子10は、1又は複数のポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート系樹脂組成物で構成された樹脂発泡粒子であって、前記ポリカーボネート系樹脂組成物の中間点ガラス転移温度(Tmg)が152℃以上である。
本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物は、温度分散動的粘弾性測定において前記中間点ガラス転移温度(Tmg)よりも50℃高い温度で求められる位相角が50°以下である。
一般的なポリカーボネート樹脂の中間点ガラス転移温度(Tmg)は145℃〜150℃であり、本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物、従来の一般的なポリカーボネート樹脂に比べて耐熱性が高くなっている。
この点に関しては後段において詳述する。
1.樹脂発泡粒子
樹脂発泡粒子は、ポリカーボネート樹脂を基材樹脂としたポリカーボネート系樹脂組成物で構成され、特定の気泡密度Xと平均気泡壁厚とを有する。
発明者等は、気泡密度Xと平均気泡壁厚とを調整することで、本発明の効果がより顕著になることを見出している。
1−1.気泡密度X
気泡密度Xは、1.00×10個/cm以上1.50×1010個/cm未満とすることができる。
気泡密度Xが1.00×10個/cm未満の場合、高倍化が難しくなることがある。
気泡密度Xが1.50×1010個/cm以上の場合、気泡壁厚が小さくなり成形性が悪くなることがある。
好ましい気泡密度Xは2.0×10個/cm以上1.4×1010個/cm未満であり、より好ましい気泡密度Xは3.0×10個/cm〜1.3×1010個/cmである。
ここで、気泡密度Xは、下記式:
気泡密度X=(ρ/D−1)/{(4/3)・π・(C/10000/2)
により算出できる。
式中、Cは平均気泡径(mm)、ρはポリカーボネート系樹脂組成物の密度(kg/m)、Dは樹脂発泡粒子の見掛け密度(kg/m)を意味している。
平均気泡径Cは、5μm〜200μmの範囲であることが好ましい。
より好ましい平均気泡径Cは10μm〜180μmであり、更に好ましい平均気泡径Cは12μm〜150μmである。
ポリカーボネート系樹脂組成物の密度ρ、及び、該ポリカーボネート系樹脂組成物に含有される少なくとも1つのポリカーボネート樹脂の密度は、1.0×10kg/m〜1.4×10kg/mの範囲であることが好ましい。
密度ρが1.0×10kg/m未満の場合、耐熱温度が低下することがある。
密度ρが1.4×10kg/mより大きい場合、耐熱温度が上昇し、発泡成形が困難となることがある。
より好ましい密度ρは1.10×10kg/m〜1.35×10kg/mであり、更に好ましい密度ρは1.15×10kg/m〜1.30×10kg/mである。
樹脂発泡粒子の見掛け密度Dは、20kg/m〜640kg/mの範囲であることが好ましい。
見掛け密度Dが20kg/m未満の場合、気泡膜が薄くなり成形時に気泡膜が破れ、連続気泡の割合が増え、気泡の座屈による樹脂発泡粒子の収縮等が生じることがある。
見掛け密度Dが640kg/mより大きい場合、気泡膜が厚くなり成形性が低下することがある。
より好ましい見掛け密度Dは40kg/m〜400kg/mであり、更に好ましい見掛け密度Dは50kg/m〜300kg/mである。
また、樹脂発泡粒子の嵩密度は、12kg/m〜600kg/mの範囲であることが好ましい。
嵩密度が12kg/m未満の場合、気泡膜が薄くなり成形時に気泡膜が破れ、連続気泡の割合が増え、気泡の座屈による樹脂発泡粒子の収縮等が生じることがある。
嵩密度が600kg/mより大きい場合、気泡膜が厚くなり成形性が低下することがある。
より好ましい嵩密度は24kg/m〜400kg/mであり、更に好ましい嵩密度は30kg/m〜300kg/mである。
1−2.平均気泡壁厚
平均気泡壁厚は、0.4μm〜15μmとすることができる。平均気泡壁厚が0.4μm未満の場合、成型時の成形性、特に融着が悪くなることがある。15μmより大きい場合、高倍化が困難となることがある。好ましい平均気泡壁厚は1μm〜10μmであり、より好ましい平均気泡壁厚は1μm〜8μmである。
1−3.連続気泡率
連続気泡率は、0%〜10%であることが好ましい。連続気泡率が10%より大きい場合、樹脂発泡成形体の成形性が低下することがある
1−4.ガラス転移温度
本実施形態においては、ポリカーボネート系樹脂組成物の中間点ガラス転移温度(Tmg)が152℃以上であるため、樹脂発泡成形体100に対して高い耐熱性を発揮させることができる。
前記ポリカーボネート系樹脂組成物の中間点ガラス転移温度(Tmg)は、153℃以上であることが好ましく、154℃以上であることがより好ましく、155℃以上であることがさらに好ましい。
前記ポリカーボネート系樹脂組成物の中間点ガラス転移温度(Tmg)は、200℃以下とすることができる。
前記中間点ガラス転移温度(Tmg)は、190℃以下であってもよく、180℃以下であってもよく、170℃以下であってもよい。
樹脂発泡粒子10どうしに優れた融着性を発揮させて強度に優れた樹脂発泡成形体100を作製容易にする上において前記ポリカーボネート系樹脂組成物の中間点ガラス転移温度(Tmg)は、165℃以下であることが好ましく、164℃以下であることがより好ましく、163℃以下であることがさらに好ましい。
前記ポリカーボネート系樹脂組成物の補外ガラス転移開始温度(Tig)は、148℃以上であることが好ましく、149℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
前記ポリカーボネート系樹脂組成物の補外ガラス転移開始温度(Tig)は、190℃以下とすることができる。
前記補外ガラス転移開始温度(Tig)は、180℃以下であってもよく、170℃以下であってもよく、160℃以下であってもよい。
ポリカーボネート系樹脂組成物の補外ガラス転移開始温度(Tig)は、156℃以下であることが好ましく、155℃以下であることがより好ましく、154℃以下であることがさらに好ましい。
前記ポリカーボネート系樹脂組成物の補外ガラス転移終了温度(Teg)は、156℃以上であることが好ましく、157℃以上であることがより好ましく、158℃以上であることがさらに好ましい。
前記ポリカーボネート系樹脂組成物の補外ガラス転移終了温度(Teg)は、220℃以下とすることができる。
前記補外ガラス転移終了温度(Teg)は、210℃以下であってもよく、200℃以下であってもよく、190℃以下であってもよい。
ポリカーボネート系樹脂組成物の補外ガラス転移終了温度(Teg)は、170℃以下であることが好ましく、169℃以下であることがより好ましく、168℃以下であることがさらに好ましい。
本実施形態においては、ポリカーボネート系樹脂組成物の補外ガラス転移開始温度(Tig)から補外ガラス転移終了温度(Teg)までの間の温度範囲がある程度広く確保されていることが当該ポリカーボネート系樹脂組成物に良好な発泡性を発揮させる上において好ましい。
前記補外ガラス転移終了温度(Teg)と前記補外ガラス転移開始温度(Tig)との温度差(ΔT=Teg−Tig)は、本実施形態においては、9℃以上である。
前記温度差(ΔT)は、10℃以上であることが好ましい。
前記温度差(ΔT)は、18℃以下であることが好ましく、17℃以下であることがより好ましい。
前記ポリカーボネート系樹脂組成物の補外ガラス転移開始温度(Tig)、中間点ガラス転移温度(Tmg)、及び、補外ガラス転移終了温度(Teg)は、例えば、以下のようにして求めることができる。
(ガラス転移温度の求め方)
ポリカーボネート系樹脂組成物の各ガラス転移温度(Tig,Tmg,Teg)は、JIS K7121:1987、JIS K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定することができる。
但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。
試料をアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう5.5±0.5mg充てん後、アルミニウム製の蓋をする。
次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS−3」示差走査熱量計を用い、窒素ガス流量20mL/minのもと20℃/minの速度で30℃から220℃まで昇温し、10分間保持後速やかに取出し、25±10℃の環境下にて放冷させた後、20℃/minの速度で30℃から220℃まで昇温した時に得られたDSC曲線より、装置付属の解析ソフトを用いて、中間点ガラス転移温度(Tmg)及び補外ガラス転移開始温度(Tig)と補外ガラス転移終了温度(Teg)を算出する。
この時に基準物質としてアルミナを用いる。
中間点ガラス転移温度(Tmg)、補外ガラス転移開始温度(Tig)及び補外ガラス転移終了温度(Teg)は、該規格(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求める。
さらに補外ガラス転移終了温度(Teg)については階段状変化の高温側にピークが現れる場合でも、階段状変化と同様の読み取り方を行う。
前記ポリカーボネート系樹脂組成物は、温度分散動的粘弾性測定において前記中間点ガラス転移温度(Tmg)よりも50℃高い温度(Tmg+50℃)で求められる前記ポリカーボネート系樹脂組成物の位相角が50°以下であることで発泡時において破泡による収縮などが生じ難く独立発泡性に優れ、且つ、高い発泡倍率を有する樹脂発泡粒子の原材料として好適なものとなり得る。
1−5.位相角
前記ポリカーボネート系樹脂組成物は、前記中間点ガラス転移温度(Tmg)よりも高温で、前記補外ガラス転移終了温度(Teg)よりも十分高温な温度条件において易変形性(流動性)を示す方が発泡時における気泡膜の伸展性を良好にする。
また、その一方で前記ポリカーボネート系樹脂組成物は、前記中間点ガラス転移温度(Tmg)よりも高温で、前記補外ガラス転移終了温度(Teg)よりも十分高温な温度条件において一定以上の弾性を発揮する方が気泡膜の破泡を抑制できる。
そのため、前記ポリカーボネート系樹脂組成物は、温度分散動的粘弾性測定で上記のような位相角を示すことが好ましい。
前記位相角は、49°以下であることが好ましく、48°以下であることがより好ましい。
前記位相角は、35°以上であることが好ましく、36°以上であることがより好ましく、37°以上であることがさらに好ましい。
前記位相角は、38°以上であってもよく、39°以上であってもよく、40°以上であってもよい。
なお、前記位相角については、下記のようにして求められる。
(位相角の求め方)
本発明における動的粘弾性測定はAnton Paar製「PHYSICA MCR301」粘弾性測定装置及び「CTD450」温度制御システムにて測定することができる。
まず、樹脂を熱プレス機にて、温度230℃の条件下で直径25mm、厚さ3mmの円盤状試験片を作製する。
次に試験片を測定開始温度300℃に加熱した粘弾性測定装置のプレート上にセットし窒素雰囲気下にて5分間に亘って加熱し溶融させる。
その後、直径25mmのパラレルプレートにて間隔を2mmまで押しつぶし、プレートからはみ出した樹脂を取り除く。
更に測定開始温度300±1℃に達してから5分間加熱後、歪み5%、周波数1Hz、降温速度2℃/分、測定間隔30秒、ノーマルフォース0Nの条件下にて、動的粘弾性測定を行い、300〜150℃の範囲の位相角を測定する。
位相角の測定間隔は、例えば、1℃とすることができる。
中間点ガラス転移温度(Tmg)よりも50℃高い温度が2点の測定点の間に位置する場合、位相角はこの2点での測定値の平均値として求めることができる。
1−6.ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂組成物を上記のようなガラス転移温度(Tig,Tmg,Teg)や位相角を示す状態にする上において、ポリカーボネート系樹脂組成物には、一般的なビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂とともに該ポリカーボネート樹脂よりも高い中間点ガラス転移温度(Tmg)を有する耐熱性ポリカーボネート樹脂をポリカーボネート系樹脂組成物に含有させることが好ましい。
即ち、本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物は、ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂である第1のポリカーボネート樹脂(PC1)と、該第1のポリカーボネート樹脂よりも高い中間点ガラス転移温度(Tmg)を有する耐熱性ポリカーボネート樹脂である第2のポリカーボネート樹脂(PC2)とを含有することが好ましい。
前記第2のポリカーボネート樹脂(PC2:耐熱性ポリカーボネート樹脂)としては、例えば、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を分子構造中に有するものが挙げられる。
Figure 2021155609
ここで式(1)中の「X」、「X」はそれぞれ独立して、置換フェニレン基、又は、非置換フェニレン基の何れかであり、「Y」が、下記式(2)に示す構造を有する2価基である。
Figure 2021155609
尚、式(2)におけるR〜R10は、水素原子、又は、炭素数が1〜4個のアルキル基であり、R〜R10は、互いに共通していても異なっていてもよい。
前記式(1)中の「X」、「X」はそれぞれ非置換フェニレン基であることが好ましい。
前記式(2)は、下記式(2a)であることが好ましい。
Figure 2021155609
即ち、前記第2のポリカーボネート樹脂は、下記式(1a’)に示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)に由来の繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 2021155609
前記第1のポリカーボネート樹脂(PC1)としては、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を分子中に有するものを採用することができる。
Figure 2021155609
ここで式(3)中の「Z」は、例えば、下記一般式(4)で示される有機基である。
Figure 2021155609
式(4)中の「Ph」は、フェニレン基を表している。
該フェニレン基は、o−フェニレン基であっても、m−フェニレン基であっても、p−フェニレン基であってもよい。
前記第2のポリカーボネート樹脂は、下記式(3’)に示す2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)に由来の繰り返し単位を分子構造中に有することが好ましい。
Figure 2021155609
前記第1のポリカーボネート樹脂(PC1)は、実質的に式(3)に示された繰り返し単位のみで構成されていることが好ましい。
第1のポリカーボネート樹脂(PC1)は、直鎖状であっても、分岐構造を有していてもよい。
第1のポリカーボネート樹脂(PC1)は、分岐構造を有していることが好ましい。
第1のポリカーボネート樹脂(PC1)は、主鎖及び側鎖のいずれもが下記(3”)に示す繰り返し単位で構成されていることが好ましい。
Figure 2021155609
即ち、第1のポリカーボネート樹脂(PC1)は、実質的に式(3’)に由来の繰り返し単位のみで構成されていることが好ましく、下記式(3a)(3b)(3c)(3d)で表される構造を有していることが好ましい。
Figure 2021155609
Figure 2021155609
Figure 2021155609
Figure 2021155609
尚、式(3c)及び(3d)における「Q」は、直接的な結合、ヘテロ原子による結合、又は、2価の有機基による結合を意味する。
本実施形態での前記有機基は、例えば、アルキレン、フェニレン、フェニレンオキサイドなどである。
前記第2のポリカーボネート樹脂は、実質的に式(1)に示された繰り返し単位のみで構成されていてもよいが、式(1)に示された繰り返し単位と式(3)に示された繰り返し単位とを含む共重合体であることが好ましい。
前記第2のポリカーボネート樹脂は、下記式(5)で表される共重合体であることが好ましい。
Figure 2021155609
尚、式(5)におけるR11〜R20は、式(2)のR〜R10と同じく、水素原子、又は、炭素数が1〜4個のアルキル基であり、R11〜R20は、互いに共通していても異なっていてもよい。
前記第2のポリカーボネート樹脂(PC2)は、ビスフェノールAに由来の繰り返し単位とビスフェノールTMCに由来の繰り返し単位とで構成されていることが好ましい。
前記第2のポリカーボネート樹脂は、下記式(5a)で表される共重合体であることがより好ましい。
Figure 2021155609
第2のポリカーボネート樹脂(PC2)は、式(5a)におけるビスフェノールTMC由来の繰り返し単位の割合が10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。
言い換えると、第2のポリカーボネート樹脂(PC2)は、式(5a)におけるビスフェノールA由来の繰り返し単位の割合が90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
式(5a)におけるビスフェノールTMC由来の繰り返し単位の割合は、95質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
言い換えると、第2のポリカーボネート樹脂(PC2)は、式(5a)におけるビスフェノールA由来の繰り返し単位の割合が5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。
第1のポリカーボネート樹脂(PC1)は、中間点ガラス転移温度(Tmg)が145℃以上であることが好ましく、146℃以上であることがより好ましく、147℃以上であることがさらに好ましい。
第1のポリカーボネート樹脂(PC1)は、中間点ガラス転移温度(Tmg)が155℃以下であることが好ましく、154℃以下であることがより好ましく、153℃以下であることがさらに好ましい。
第2のポリカーボネート樹脂(PC2)は、中間点ガラス転移温度(Tmg)が155℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、165℃以上であることがさらに好ましく、170℃以上であることが特に好ましい。
第2のポリカーボネート樹脂(PC2)の中間点ガラス転移温度(Tmg)は、180℃以上であってもよく、190℃以上であってもよい。
第2のポリカーボネート樹脂(PC2)は、中間点ガラス転移温度(Tmg)が235℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく、225℃以下であることがさらに好ましい。
第2のポリカーボネート樹脂(PC2)の中間点ガラス転移温度(Tmg2)は、第1のポリカーボネート樹脂(PC1)の中間点ガラス転移温度(Tmg1)との温度差(Tmg2−Tmg1)が5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。
前記温度差(Tmg2−Tmg1)は、20℃以上であることがさらに好ましく、30℃以上であることが特に好ましい。
前記温度差(Tmg2−Tmg1)は、80℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましい。
本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物は、第3、第4のポリカーボネート樹脂を更に含有してもよく、ポリカーボネート系樹脂以外の樹脂を更に含有してもよい。
本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物は、各種の添加剤を更に含有してもよい。
1−7.樹脂発泡粒子の形状
樹脂発泡粒子の形状は特に限定されない。例えば、球状、円柱状等が挙げられる。
このうち、できるだけ球状に近いことが好ましい。
即ち、樹脂発泡粒子の短径と長径との比ができるだけ1に近いことが好ましい。
樹脂発泡粒子は、1mm〜20mmの平均粒子径を有していることが好ましい。
1−8.樹脂発泡粒子の製造方法
樹脂発泡粒子は、非発泡状態の樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得、発泡性粒子を発泡させることにより得ることができる。
1−8−1.発泡性粒子の製造
発泡性粒子は、ポリカーボネート系樹脂組成物製の樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより得ることができる。
樹脂粒子は、公知の方法により得ることができる。
例えば、ポリカーボネート系樹脂を、必要に応じて他の添加剤と共に、押出機中で溶融混練して押出すことでストランドを得、得られたストランドを、空気中でカット、水中でカット、加熱しつつカットすることで、造粒する方法が挙げられる。
樹脂粒子には、市販の樹脂粒子を使用してもよい。
樹脂粒子には、必要に応じて、樹脂以外に他の添加剤が含まれていてもよい。
他の添加剤としては、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、充填剤、着色剤、耐候剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、防曇剤、香料等が挙げられる。
尚、前記樹脂発泡粒子や前記樹脂発泡成形体にポリカーボネート樹脂に由来する特性を顕著に発揮させる上において、前記ポリカーボネート系樹脂組成物に含まれる全ての樹脂に占めるポリカーボネート樹脂の割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。
ポリカーボネート系樹脂組成物に含まれる樹脂は、実質的にポリカーボネート樹脂のみであることが好ましい。
ポリカーボネート系樹脂組成物に占めるポリカーボネート樹脂の割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
次に、樹脂粒子に含浸される発泡剤としては、既知の揮発性発泡剤や無機発泡剤を使用できる。
揮発性発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素や、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族アルコール等が挙げられる。
無機発泡剤としては、炭酸ガス、窒素ガス、エアー(空気)、不活性ガス(ヘリウム、アルゴン等)等が挙げられる。
これら発泡剤は2種以上併用してもよい。
これら発泡剤のうち、無機発泡剤が好ましく、炭酸ガスがより好ましい。
発泡剤の含有量(含浸量)は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、3質量部〜15質量部であることが好ましい。
発泡剤の含有量が3質量部未満であると、発泡力が低くなり、良好に発泡させ難いことがある。
含有量が15質量部を超えると、可塑化効果が大きくなり、発泡時に収縮が起こりやすく、生産性が悪くなると共に、安定して所望の発泡倍数を得難くなることがある。
より好ましい発泡剤の含有量は、3質量部〜12質量部である。
含浸方法としては、樹脂粒子を水系分散媒に分散し、撹拌させながら発泡剤を圧入することで含浸させる湿式含浸法や、密閉可能な容器に樹脂粒子を投入し、発泡剤を圧入して含浸させる実質的に水を使用しない乾式含浸法(気相含浸法)等が挙げられる。
特に水を使用せずに含浸できる乾式含浸法が好ましい。
樹脂粒子に発泡剤を含浸させる際の含浸圧、含浸時間及び含浸温度は特に限定されない。
含浸を効率的に行い、より一層良好な樹脂発泡粒子及び樹脂発泡成形体を得る観点からは、含浸圧は0.5MPa〜10MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
1MPa〜4.5MPa(ゲージ圧)であることがより好ましい。
含浸時間は、0.5時間〜200時間であることが好ましい。
0.5時間未満の場合、発泡剤の樹脂粒子への含浸量が低下するため、十分な発泡力が得られ難いことがある。
200時間より長い場合、生産性が低下することがある。より好ましい含浸時間は、1時間〜100時間である。
含浸温度は、0℃〜60℃であることが好ましい。
0℃未満の場合、発泡剤の樹脂への溶解性は高まり、必要以上に発泡剤が含浸される。
また、発泡剤の樹脂中での拡散性は低下する。
よって、所望の時間内に十分な発泡力(1次発泡力)が得られ難いことがある。
60℃より高い場合、発泡剤の樹脂への溶解性は低下し、発泡剤の含浸量が低下する。
また、発泡剤の樹脂中での拡散性は高まる。
よって、所望の時間内に十分な発泡力(1次発泡力)が得られ難いことがある。
より好ましい含浸温度は、5℃〜50℃である。
含浸物には、結合防止剤(合着防止剤)、帯電防止剤、展着剤等の表面処理剤を添加してもよい。
上記結合防止剤は、発泡工程において、樹脂発泡粒子同士の合着を防止する役割を果たす。
ここで、合着とは、複数の樹脂発泡粒子が合一して一体化することをいう。
上記結合防止剤の具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
上記帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。
上記展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコーンオイル等が挙げられる。
1−8−2.樹脂発泡粒子の製造
発泡性粒子を発泡させて樹脂発泡粒子(1次発泡粒子)を得る方法としては、発泡性粒子を熱風、オイルのような熱媒、スチーム(水蒸気)等により加熱して発泡させる方法がある。
安定的に製造する為には、スチームが好ましい。
発泡時の発泡機には密閉耐圧の発泡容器を使用することが好ましい。
また、スチームの圧力は0.10MPa〜0.80MPa(ゲージ圧)であることが好ましく、0.25MPa〜0.45MPa(ゲージ圧)であることがより好ましい。
発泡時間は所望の発泡倍数を得るのに必要な時間であればよい。
好ましい発泡時間は、5秒〜180秒である。
180秒を超えると樹脂発泡粒子の収縮が始まることがあり、そのような樹脂発泡粒子からは良好な物性の樹脂発泡成形体が得られないことがある。
上記結合防止剤は成形前に除去してもよい。
除去方法としては、水、塩酸等の酸性水溶液を用いて洗浄することが好ましい。
1−8−3.気泡密度X及び平均気泡壁厚の調整
上記樹脂発泡粒子の製造工程のうち、含浸条件(含浸圧、含浸時間、含浸温度)、1次発泡条件(発泡圧、発泡時間)を調整することで気泡密度X及び平均気泡壁厚を大きく又は小さくすることができる。
2.樹脂発泡成形体
樹脂発泡成形体は、ポリカーボネート系樹脂を基材樹脂とし、特定の気泡密度Xと平均気泡壁厚とを有する。また、樹脂発泡成形体は、複数の樹脂発泡粒子から構成される。
2−1.気泡密度X
気泡密度Xは、樹脂発泡成形体を構成する樹脂発泡粒子から算出される。
気泡密度Xは、上記樹脂発泡粒子と同様、下記式:

気泡密度X=(ρ/D−1)/{(4/3)・π・(C/10000/2)

から算出できる。ここで、Dは、樹脂発泡成形体の見掛け密度である。
気泡密度Xは、1.00×10個/cm以上1.50×1010個/cm未満とすることができる。
気泡密度Xを特定の範囲とした理由は、上記樹脂発泡粒子の理由と同様である。
気泡密度Xの好ましい範囲及びより好ましい範囲は、上記樹脂発泡粒子のそれぞれの範囲と同様である。
更に、平均気泡径C及びポリカーボネート系樹脂組成物の密度ρの好ましい範囲、その範囲とした理由、より好ましい範囲、更に好ましい範囲は、上記樹脂発泡粒子のそれぞれと同様である。
樹脂発泡成形体の見掛け密度Dは、12kg/m〜600kg/mの範囲であることが好ましい。
見掛け密度Dが12kg/m未満の場合、気泡膜が薄くなり成形時に気泡膜が破れ、連続気泡の割合が増え、成形体としての強度劣化に繋がることがある。
見掛け密度Dが600kg/mより大きい場合、気泡膜が厚くなり成形性が低下する事がある。
より好ましい見掛け密度Dは24kg/m〜400kg/mであり、更に好ましい見掛け密度Dは30kg/m〜300kg/mである。
2−2.平均気泡壁厚
樹脂発泡成形体での平均気泡壁厚は、0.4μm〜15μmとすることができる。
平均気泡壁厚を特定の範囲とした理由は、上記樹脂発泡粒子の理由と同様である。
平均気泡壁厚の好ましい範囲及びより好ましい範囲は、上記樹脂発泡粒子のそれぞれの範囲と同様である。
2−3.連続気泡率
連続気泡率は、0%〜50%であることが好ましい。
50%より大きい場合、機械的強度が低下することがある。
より好ましい連続気泡率は0%〜10%である。
2−4.ポリカーボネート樹脂
ポリカーボネート樹脂は、上記樹脂発泡粒子と同じポリカーボネート樹脂を使用できる。
2−5.樹脂発泡成形体の用途
樹脂発泡成形体は、特に限定されず、用途に応じて種々の形状をとり得る。
例えば、樹脂発泡成形体は、建材(土木関係、住宅関係等)、自動車、航空機、鉄道車輛、船舶等の輸送機器の部品、風車、ヘルメット等の構造部材、梱包材、複合部材としてのFRPの芯材等の用途に応じて種々の形状をとり得る。
自動車の部品としては、例えば、エンジン付近に用いられる部品、外装材等が挙げられる。
その自動車の部品としては、例えば、フロアパネル、ルーフ、ボンネット、フェンダー、アンダーカバー、ホイール、ステアリングホイール、コンテナ(筐体)、フードパネル、サスペンションアーム、バンパー、サンバイザー、トランクリッド、ラゲッジボックス、シート、ドア、カウル等の部品が挙げられる。
2−6.樹脂発泡成形体の製造方法
樹脂発泡成形体は、例えば、上記樹脂発泡粒子の気泡を押し広げる力を付与させ、次いでこの樹脂発
泡粒子を成形工程に付すことで得ることができる。
樹脂発泡成形体を作製する前に、樹脂発泡粒子内に発泡剤を含浸させ発泡力(2次発泡力)を付
与することが好ましい。
含浸方法としては、樹脂発泡粒子を水系に分散し、撹拌させながら発泡剤を圧入することで
含浸させる湿式含浸法や、密閉可能な容器に樹脂発泡粒子を投入し、発泡剤を圧入して含浸さ
せる実質的に水を使用しない乾式含浸法(気相含浸法)等が挙げられる。特に水を使用せずに含浸できる乾式含浸法が好ましい。樹脂発泡粒子に発泡剤を含浸させる際の含浸圧、含浸
時間及び含浸温度は特に限定されない。
使用する発泡剤は、樹脂発泡粒子製造時の発泡剤を使用できる。その中でも、無機発泡剤を
使用することが好ましい。特に、窒素ガス、エアー、不活性ガス(ヘリウム、アルゴン)、及び炭酸ガスから1つを使用すること又は2つ以上を併用することが好ましい。
内圧を付与するための圧力は、樹脂発泡粒子がつぶれてしまわない程度の圧力でかつ発泡力
を付与できる範囲であることが望ましい。そのような圧力は、0.1MPa〜4MPa(ゲージ圧)であることが好ましく、0.3MPa〜3MPa(ゲージ圧)であることがより好ましい。このように樹脂発泡粒子に発泡剤を含浸することを内圧付与とする。
含浸時間は、0.5時間〜200時間であることが好ましい。0.5時間未満の場合、発泡剤の発泡粒子への含浸量が少なすぎて、成形時に必要な2次発泡力が得られ難いことがある。200時間より長い場合、生産性が低下することがある。より好ましい含浸時間は、1時間〜100時間である。
含浸温度は、0℃〜60℃であることが好ましい。0℃未満の場合、所望の時間内に十分な2次発泡力が得られ難いことがある。60℃より高い場合、所望の時間内に十分な2次発泡力が得られ難いことがある。より好ましい含浸温度は、5℃〜50℃である。
内圧付与した樹脂発泡粒子を含浸時の容器から取り出し、発泡成形機の成形金型内に形成された成形空間に供給した後、加熱媒体を導入することで、所望の樹脂発泡成形体に型内成形できる。
発泡成形機としては、ポリスチレン系樹脂製の樹脂発泡粒子から樹脂発泡成形体を製造する際に用いられるEPS成形機やポリプロピレン系樹脂製の樹脂発泡粒子から樹脂発泡成形体を製造する際に用いられる高圧仕様の成形機等を用いることができる。
加熱媒体は、加熱時間が長くなると樹脂発泡粒子に収縮や融着不良が生じることがあるため、短時間に高エネルギーを与えうる加熱媒体が望まれるから、そのような加熱媒体としては水蒸気が好適である。
水蒸気の圧力は、0.2MPa〜1.0MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
また、加熱時間は、10秒〜90秒であることが好ましく、20秒〜80秒であることがより好ましい。
なお、気泡密度X及び平均気泡壁厚の調整は、上記特定の気泡密度X及び平均気泡壁厚を有する樹脂発泡粒子を使用すること以外に、樹脂発泡成形体の製造工程のうち、含浸条件(含浸温度、含浸時間、含浸圧)、1次発泡条件(発泡圧、発泡時間)を調整することで気泡密度X及び平均気泡壁厚を大きく又は小さくすることができる。
2−7.強化複合体
樹脂発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化させて強化複合体として用いてもよい。
樹脂発泡成形体が発泡シートである場合、樹脂発泡成形体の両面に積層一体化されている必要はなく、樹脂発泡成形体の両面のうち少なくとも一方の面に表皮材が積層一体化されていればよい。
表皮材の積層は、強化複合体の用途に応じて決定すればよい。
なかでも、強化複合体の表面硬度や機械的強度を考慮すると、樹脂発泡成形体の厚み方向における両面のそれぞれに表皮材が積層一体化されていることが好ましい。
表皮材としては、特に限定されず、繊維強化プラスチック、金属シート、合成樹脂フィルム等が挙げられる。
このうち、繊維強化プラスチックが好ましい。
繊維強化プラスチックを表皮材とする強化複合体を繊維強化複合体と称する。
繊維強化プラスチックを構成している強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維等の無機繊維;ステンレス繊維、スチール繊維等の金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維等の有機繊維;ボロン繊維が挙げられる。
強化繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。
これらの強化繊維は、軽量であるにも関わらず優れた機械的物性を有している。
強化繊維は、所望の形状に加工された強化繊維基材として用いられることが好ましい。
強化繊維基材としては、強化繊維を用いてなる織物、編物、不織布、及び強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材等が挙げられる。
織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織等が挙げられる。
また、糸としては、ポリアミド樹脂糸、ポリエステル樹脂糸等の合成樹脂糸、及びガラス繊維糸のようなステッチ糸が挙げられる。
強化繊維基材は、一枚の強化繊維基材のみを積層せずに用いてもよく、複数枚の強化繊維基材を積層して積層強化繊維基材として用いてもよい。複数枚の強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材としては、(1)一種のみの強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(2)複数種の強化繊維基材を用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(3)強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた強化繊維基材同士を糸で一体化(縫合)してなる積層強化繊維基材等が用いられる。
繊維強化プラスチックは強化繊維に合成樹脂が含浸されてなるものである。
含浸させた合成樹脂によって強化繊維同士を結着一体化させている。
強化繊維に合成樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、(1)強化繊維を合成樹脂中に浸漬する方法、(2)強化繊維に合成樹脂を塗布する方法等が挙げられる。
強化繊維に含浸させる合成樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれも用いることができ、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。強化繊維に含浸させる熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂等が挙げられ、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤等の添加剤が含有されていてもよい。
なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
また、強化繊維に含浸させる熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、サルファイド系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、樹脂発泡成形体との接着性又は繊維強化プラスチックを構成している強化繊維同士の接着性に優れていることから、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましい。
なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物同士の重合体又は共重合体であって直鎖構造を有する重合体や、エポキシ化合物と、このエポキシ化合物と重合し得る単量体との共重合体であって直鎖構造を有する共重合体が挙げられる。具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。
なお、熱可塑性エポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、ジオールとジイソシアネートとを重合させて得られる直鎖構造を有する重合体が挙げられる。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。
ジオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。
ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
繊維強化プラスチック中における合成樹脂の含有量は、20質量%〜70質量%が好ましい。
含有量が20質量%未満の場合、強化繊維同士の結着性や繊維強化プラスチックと樹脂発泡成形体との接着性が不十分となり、繊維強化プラスチックの機械的物性や繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上できないことがある。
70質量%より多い場合、繊維強化プラスチックの機械的物性が低下して、繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上できないことがある。
含有量は30質量%〜60質量%がより好ましい。
繊維強化プラスチックの厚みは、0.02mm〜2mmが好ましく、0.05mm〜1mmがより好ましい。厚みがこの範囲内である繊維強化プラスチックは、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
繊維強化プラスチックの目付は、50g/m〜4000g/mが好ましく、100g/m〜1000g/mがより好ましい。目付がこの範囲内である繊維強化プラスチックは、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
次に、強化複合体の製造方法を説明する。
樹脂発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化させて強化複合体を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、(1)樹脂発泡成形体の表面に接着剤を介して表皮材を積層一体化する方法、(2)樹脂発泡成形体の表面に、強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸されてなる繊維強化プラスチック形成材を積層し、強化繊維中に含浸させた熱可塑性樹脂をバインダーとして樹脂発泡成形体の表面に繊維強化プラスチック形成材を繊維強化プラスチックとして積層一体化する方法、(3)樹脂発泡成形体の表面に、強化繊維に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸された繊維強化プラスチック形成材を積層し、強化繊維中に含浸させた熱硬化性樹脂をバインダーとして、熱硬化性樹脂を硬化させて形成された繊維強化プラスチックを樹脂発泡成形体の表面に積層一体化する方法、(4)樹脂発泡成形体の表面に、加熱されて軟化状態の表皮材を配設し、樹脂発泡成形体の表面に表皮材を押圧させることによって表皮材を必要に応じて樹脂発泡成形体の表面に沿って変形させながら樹脂発泡成形体の表面に積層一体化させる方法、(5)繊維強化プラスチックの成形で一般的に適用される方法等が挙げられる。
樹脂発泡成形体は高温環境下における耐荷重性のような機械的物性に優れている観点では、上記(4)の方法も好適に用いることができる。
繊維強化プラスチックの成形で用いられる方法としては、例えば、オートクレーブ法、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、PCM(Prepreg Compression Molding)法、RTM(Resin Transfer Molding)法、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法等が挙げられる。
このようにして得られた繊維強化複合体は、耐熱性、機械的強度及び軽量性に優れている。そのため、自動車、航空機、鉄道車輛、船舶等の輸送機器分野、家電分野、情報端末分野、家具の分野等の広範な用途に用いることができる。
例えば、繊維強化複合体は、輸送機器の部品、及び、輸送機器の本体を構成する構造部品を含めた輸送機器構成用部品(特に自動車の部品)、風車翼、ロボットアーム、ヘルメット用緩衝材、農産箱、保温保冷容器等の輸送容器、産業用ヘリコプターのローターブレード、部品梱包材として好適に用いることができる。
繊維強化複合体から構成される自動車の部品としては、例えば、フロアパネル、ルーフ、ボンネット、フェンダー、アンダーカバー、ホイール、ステアリングホイール、コンテナ(筐体)、フードパネル、サスペンションアーム、バンパー、サンバイザー、トランクリッド、ラゲッジボックス、シート、ドア、カウル等の部品が挙げられる。
尚、本実施形態において作製される樹脂発泡粒子や樹脂発泡成形体は、このような用途以外にも利用可能である。
また、本実施形態における記載はあくまで例示的なものであり本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは
ない。
まず参考例として中間点ガラス転移温度(Tmg)が152℃未満のポリカーボネート系樹脂組成物によって樹脂発泡粒子や樹脂発泡成形体を作製した、各種物性を下記の測定法で測定した。
[ポリカーボネート系樹脂組成物の密度]
ポリカーボネート系樹脂組成物の密度はISO1183−1:2004、もしくは、ASTM D−792に規定した方法で測定した。
[発泡剤含浸量]
発泡剤含浸量は下記の式により算出した値とした。
発泡剤含浸量(質量%)=
(含浸取り出し直後の質量−含浸前の質量)/含浸前の質量×100(%)
[平均粒子径]
平均粒子径はD50で表現される値とした。
具体的には、ロータップ型篩振とう機(飯田製作所社製)を用いて、篩目開き26.5mm、22.4mm、19.0mm、16.0mm、13.2mm、11.20mm、9.50mm、8.80mm、6.70mm、5.66mm、4.76mm、4.00mm、3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mm、0.425mm、0.355mm、0.300mm、0.250mm、0.212mm及び0.180mmのJIS標準篩(JIS Z8801−1:2006)で試料約25gを10分間分級し、篩網上の試料質量を測定した。得られた結果から累積質量分布曲線を作成し、累積質量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径とした。
[樹脂発泡粒子の平均気泡径]
1次発泡によって得られた樹脂発泡粒子を抜き取った樹脂発泡粒子の中心部で略二分割した断面の中心部を、走査電子顕微鏡を用いて200倍〜1200倍に拡大して撮影した。
撮影した画像をA4用紙上に印刷した。
樹脂発泡粒子断面画像に、縦方向及び横方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描き、極端に気泡径が大きい気泡がある場合にはその気泡は避けて任意の直線を各方向3本ずつ描いた。
なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合には、この気泡も数に加えた。
縦方向、横方向の各方向の3本の任意の直線について数えた気泡数を相加平均し、気泡数とした。
気泡数を数えた画像倍率とこの気泡数から気泡の平均弦長tを次式により算出した。
平均弦長t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)
画像倍率は画像上のスケールバーをミツトヨ社製「デジマチックキャリパ」にて1/100mmまで計測し、次式により求めた。
画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)
そして次式により気泡径を算出した。
平均気泡径C(μm)=(t/0.616)×1000
[樹脂発泡成形体の平均気泡径]
縦400mm×横300mm×厚さ30mmの成形体中央部から縦50mm×横50mm×厚さ30mmを切り出し、切り出した成形体片の厚み方向断面を、走査電子顕微鏡を用いて200倍〜1200倍に拡大して撮影した。
撮影した画像をA4用紙上に印刷した。
樹脂発泡粒子断面画像に、縦方向及び横方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描き、極端に気泡径が大きい気泡がある場合にはその気泡は避けて任意の直線を各方向3本ずつ描いた。
なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合には、この気泡も数に加えた。縦方向、横方向の各方向の3本の任意の直線について数えた気泡数を相加平均し、気泡数とした。
気泡数を数えた画像倍率とこの気泡数から気泡の平均弦長tを次式により算出した。
平均弦長t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)
画像倍率は画像上のスケールバーをミツトヨ社製「デジマチックキャリパ」にて1/100mmまで計測し、次式により求めた。
画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)
そして次式により平均気泡径を算出した。
平均気泡径C(μm)=(t/0.616)×1000
[樹脂発泡粒子の嵩密度]
樹脂発泡粒子約1000cmを、メスシリンダー内に1000cmの目盛りまで充填した。
なお、メスシリンダーを水平方向から目視し、樹脂発泡粒子が1つでも1000cmの目盛りに達していれば、その時点で樹脂発泡粒子のメスシリンダー内への充填を終了した。
次に、メスシリンダー内に充填した樹脂発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をWgとした。そして、下記式により樹脂発泡粒子の嵩密度を求めた。
嵩密度(kg/m)=(W/1000)/〔1000×(0.01)
嵩倍数は嵩密度の逆数にポリカーボネート系樹脂組成物の密度(kg/m)を積算した値とした。
[樹脂発泡粒子の見掛け密度]
樹脂発泡粒子約25cmの質量A(g)を測定した。
続いて、蓋を閉じた状態で入れた樹脂発泡粒子がこぼれることのない金網製の空容器を水中に浸漬し、水中に浸漬した状態における金網製の空容器の質量B(g)を測定した。 次に、この金網製の容器内に前記樹脂発泡粒子を全量入れた上で、この金網製の容器を水中に浸漬し、容器を数回振って、容器と樹脂発泡粒子に付着した気泡を除去後、水中に浸漬した状態における金網製の容器とこの金網製容器に入れた樹脂発泡粒子の全量とを併せた質量C(g)を測定した。
そして、下記式により樹脂発泡粒子の見掛け密度D(kg/m)を算出した。
D=A/(A+(B−C))×1000
見掛け倍数は見掛け密度の逆数にポリカーボネート系樹脂組成物の密度(kg/m)を積算した値とした。
[樹脂発泡成形体の密度]
樹脂発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75mm×300mm×30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により樹脂発泡成形体の見掛け密度(kg/m)を求めた。
見掛け倍数は見掛け密度の逆数にポリカーボネート系樹脂組成物の密度(kg/m)を積算した値とした。
[樹脂発泡粒子の連続気泡率]
東京サイエンス社製「空気比較式比重計1000型」の試料カップを準備し、この試料カップの80%程度を満たす量の樹脂発泡粒子の全質量A(g)を測定した。
前記樹脂発泡粒子全体の体積B(cm)を、空気比較式比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定し、標準球(大28.96cm 小8.58cm)にて補正を行った。
続いて、蓋を閉じた状態で入れた樹脂発泡粒子がこぼれることのない金網製の空容器を水中に浸漬し、水中に浸漬した状態における金網製の空容器の質量C(g)を測定した。
次に、この金網製の容器内に前記樹脂発泡粒子を全量入れた上で、この金網製の容器を水中に浸漬し、容器を数回振って、容器と樹脂発泡粒子に付着した気泡を除去後、水中に浸漬した状態における金網製の容器とこの金網製容器に入れた樹脂発泡粒子の全量とを併せた質量D(g)を測定した。
そして、下記式により樹脂発泡粒子の見掛け体積E(cm)を算出した。
この見掛け体積E(cm)と前記樹脂発泡粒子全体の体積B(cm)とに基づいて下記式により樹脂発泡粒子の連続気泡率を算出した。
E=A+(C−D)
連続気泡率(%)=100×(E−B)/E
[樹脂発泡成形体の連続気泡率]
樹脂発泡成形体を6面とも成形面表皮を有しないように切り出し、更に切断面表面を冨士島工機社製「FK−4N」パンスライサーにて仕上げ、25mm×25mm×25mmの立方体状の試験片を5つ作製した。
得られた試験片の外寸を、ミツトヨ社製「デジマチックキャリパ」ノギスを用いて、1/100mmまで測定し、見掛け体積(cm)を求めた。
次に東京サイエンス社製「1000型」空気比較式比重計を用いて、1−1/2−1気圧法により試験片の体積(cm)を求めた。
下記式により連続気泡率(%)を計算し、5つの試験片の連続気泡率の平均値を求めた。試験片は予め、JIS K7100:1999 記号23/50、2級の環境下で16時間保管した後、同環境下において測定を実施した。
なお、空気比較式比重計は、標準球(大28.96cm 小8.58cm)にて補正を行った。
連続気泡率(%)=
(見掛け体積−空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積×100(%)
[樹脂発泡粒子の平均気泡壁厚]
樹脂発泡粒子の平均気泡壁厚としては次の通りに算出した。上記測定方法により得られた樹脂発泡粒子の平均気泡径及び見掛け倍数を用いて下記式より算出した。
平均気泡壁厚(μm)=
平均気泡径C(μm)×(1/(1−(1/見掛け倍数))(1/3)−1)
[樹脂発泡成形体の平均気泡壁厚]
樹脂発泡成形体の平均気泡壁厚としては次の通りに算出した。上記測定方法により得られた樹脂発泡成形体の平均気泡径及び見掛け倍数を用いて下記式より算出した。
平均気泡壁厚(μm)=
平均気泡径C(μm)×(1/(1−(1/見掛け倍数))(1/3)−1)
まず、以下のような2種類のポリカーボネート樹脂を用意した。
(ポリカーボネート樹脂)
PC_1:
実質的にビスフェノールAに由来の繰り返し単位のみで構成された分子構造を有する分岐状ポリカーボネート樹脂(中間点ガラス転移温度(Tmg):約149℃)。
PC_2:
ビスフェノールAに由来の繰り返し単位と、ビスフェノールTMCに由来の繰り返し単位とで構成された共重合体ポリカーボネート樹脂(中間点ガラス転移温度(Tmg):200℃超)。
(実施例1)
PC_1(Tmg≒149℃)とPC_2:(Tmg200℃超)とをそれぞれ120℃の温度で4時間加熱して乾燥を行った後に85:15の質量比率(PC_1:PC_2)でブレンドし、シリンダー口径が40mmの単軸押出機に10kg/hの割合で供給し、該単軸押出機で約300℃の温度で溶融混練し、該単軸押出機の先端に装着したダイスのダイス孔(直径1.5mm)から溶融混練物を押出ながら切断し、切断した粒状物を10℃の冷却水で冷却して平均粒子径が約1.4mmの樹脂粒子を作製した。
該樹脂粒子を構成しているポリカーボネート系樹脂組成物のガラス転移温度(Tig,Tmg,Teg)を測定したところ、以下の通りであった。
補外ガラス転移開始温度(Tig):150.5℃
中間点ガラス転移温度(Tmg):155.2℃
補外ガラス転移終了温度(Teg):160.7℃
補外ガラス転移終了温度(Teg)と補外ガラス転移開始温度(Tig)との温度差(ΔT=Teg−Tig):10.2℃
該ポリカーボネート系樹脂組成物の中間点ガラス転移温度(Tmg:155.2℃)よりも50℃高い温度での位相角を測定したところ43°であることが確認された。
前記樹脂粒子を圧力容器に入れて該圧力容器の内部の空気を炭酸ガスで置換した後に容器内に炭酸ガスを圧入し、圧力容器内の圧力が1MPaとなるようにして樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させた。
該圧力容器を20℃の環境下で24時間静置した後に容器内の圧力を約5分間かけて大気圧に戻し、容器内の樹脂粒子(発泡性樹脂粒子)を取り出した。
この発泡性樹脂粒子に含まれている発泡剤(炭酸ガス)の含有量を炭酸ガス含浸前後の樹脂粒子の質量変化により求めたところ、発泡性樹脂粒子における炭酸ガスの含有量は、4.1質量%であった。
該発泡性樹脂粒子を攪拌しながら過熱水蒸気(水蒸気圧0.34MPa)で71秒間加熱して発泡させ、樹脂発泡粒子を作製した。
得られた樹脂発泡粒子は、嵩密度が180kg/mで、嵩倍数6.5倍であった。
また、樹脂発泡粒子は、連続気泡率が0.35%であった。
前記樹脂発泡粒子を1日間室温(23℃)で保管した後に再び圧力容器に収容し、該圧力容器の内部の空気を窒素ガスで置換した後に容器内に炭酸ガスを圧入し、圧力容器内の圧力が0.5MPa(ゲージ圧)となるようにして樹脂発泡粒子に炭酸ガスを含浸させた。
該圧力容器を20℃の環境下で24時間静置した後に容器内の樹脂発泡粒子を取り出した。
縦300mm×横400mm×厚さ30mmの直方体形状の成形空間を有する成形型に樹脂発泡粒子を充填し、過熱水蒸気(水蒸気圧0.65MPa)で40秒間加熱して樹脂発泡粒子どうしが熱融着した樹脂発泡成形体を作製した。
樹脂発泡成形体による最高面圧が0.05MPaに低下するまで冷却して樹脂発泡成形体を成形型より取り出したところ、目立った熱収縮等の見られない良好な発泡状態の樹脂発泡成形体を得ることができた。
樹脂発泡成形体の収縮性については以下のようにして収縮率を測定することにより評価した。
(収縮率の計算)
得られた樹脂発泡成形体を55℃のオーブンにて24時間乾燥させた後、JIS K7100:1999の記号23/50、2級環境下で16時間状態調節した。
状態調整後の樹脂発泡成形体の「縦寸法」、「横寸法」を測定し、収縮率を下記の式から算出した。

収縮率=〔1−縦寸法(mm)×横寸法(mm)/(300×400)〕×100(%)

尚、試料の寸法測定には、(株)ミツトヨ製「DIGIMATIC」CD−15タイプを用いた。
(実施例2〜7、比較例1)
用いる樹脂の種類やブレンド比、製造条件等を下記表に示す通りに変更した以外は実施例1と同様に樹脂発泡粒子や樹脂発泡成形体を作製し、実施例1と同様の評価を実施した。
結果を、下記表に併せて示す。
Figure 2021155609
上記のことからも本発明によれば良好な発泡性を発揮するポリカーボネート系樹脂組成物が提供され、耐熱性と軽量性とに優れた樹脂発泡粒子や樹脂発泡成形体が得られることがわかる。
10:樹脂発泡粒子、100:樹脂発泡成形体

Claims (12)

  1. 1又は複数のポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート系樹脂組成物で構成された樹脂発泡粒子であって、
    1.00×10個/cm以上1.50×1010個/cm未満の気泡密度を有し、
    前記ポリカーボネート系樹脂組成物の中間点ガラス転移温度(Tmg)が152℃以上である樹脂発泡粒子。
  2. 前記ポリカーボネート系樹脂組成物には、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を分子構造中に有するポリカーボネート樹脂が含まれている請求項1記載の樹脂発泡粒子。
    Figure 2021155609
    (式(1)中の「X」、「X」はそれぞれ独立して、置換フェニレン基、又は、非置換フェニレン基の何れかであり、「Y」が、下記式(2)に示す構造を有する2価基である。)
    Figure 2021155609
    (式(2)におけるR〜R10は、水素原子、又は、炭素数が1〜4個のアルキル基であり、R〜R10は、互いに共通していても異なっていてもよい。)
  3. 前記式(1)中の「X」、「X」がそれぞれ非置換フェニレン基であり、前記式(2)が下記式(2a)で示す構造を有している請求項2記載の樹脂発泡粒子。
    Figure 2021155609
  4. 前記ポリカーボネート樹脂が、下記式(5a)で表される共重合体である請求項3記載の樹脂発泡粒子。
    Figure 2021155609
  5. 前記ポリカーボネート系樹脂組成物には、分岐構造を有し且つ主鎖及び側鎖が何れも下記(3”)に示す繰り返し単位で構成された第1のポリカーボネート樹脂と、前記式(5a)で表される共重合体である第2のポリカーボネート樹脂とを含む複数のポリカーボネート樹脂が含まれている請求項4記載の樹脂発泡粒子。
    Figure 2021155609
  6. 20kg/m以上640kg/m以下の見掛け密度を有する請求項1乃至5の何れか1項に記載の樹脂発泡粒子。
  7. 平均気泡径が5μm以上200μm以下であり、前記ポリカーボネート系樹脂組成物に含まれる少なくとも1つの前記ポリカーボネート樹脂の密度が1.0×10kg/m以上1.4×10kg/m以下である請求項1乃至6の何れか1項に記載の発泡粒子。
  8. 互いに接着されている複数の樹脂発泡粒子で構成された樹脂発泡成形体であって、
    前記樹脂発泡粒子が、1又は複数のポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート系樹脂組成物で構成され、
    前記樹脂発泡粒子が、1.00×10個/cm以上1.50×1010個/cm未満の気泡密度を有し、
    前記ポリカーボネート系樹脂組成物の中間点ガラス転移温度(Tmg)が152℃以上である樹脂発泡成形体。
  9. 前記ポリカーボネート系樹脂組成物には、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を分子構造中に有するポリカーボネート樹脂が含まれている請求項8記載の樹脂発泡成形体。
    Figure 2021155609
    (式(1)中の「X」、「X」はそれぞれ独立して、置換フェニレン基、又は、非置換フェニレン基の何れかであり、「Y」が、下記式(2)に示す構造を有する2価基である。)
    Figure 2021155609
    (式(2)におけるR〜R10は、水素原子、又は、炭素数が1〜4個のアルキル基であり、R〜R10は、互いに共通していても異なっていてもよい。)
  10. 前記式(1)中の「X」、「X」がそれぞれ非置換フェニレン基であり、前記式(2)が下記式(2a)で示す構造を有している請求項9記載の樹脂発泡成形体。
    Figure 2021155609
  11. 前記ポリカーボネート樹脂が、下記式(5a)で表される共重合体である請求項10記載の樹脂発泡成形体。
    Figure 2021155609
  12. 前記ポリカーボネート系樹脂組成物には、分岐構造を有し且つ主鎖及び側鎖が何れも下記(3”)に示す繰り返し単位で構成された第1のポリカーボネート樹脂と、前記式(5a)で表される共重合体である第2のポリカーボネート樹脂とを含む複数のポリカーボネート樹脂が含まれている請求項11記載の樹脂発泡成形体。
    Figure 2021155609
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WO2023189316A1 (ja) * 2022-03-30 2023-10-05 株式会社カネカ ポリカーボネート系発泡粒子およびその製造方法

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