[第1実施形態]
以下、図1〜図7を参照して、第1実施形態に係る締結工具1Aについて説明する。
図1に示す締結工具1Aは、周知のファスナの一例であるブラインドリベット(以下、単にリベットという)(図2参照)を使用して作業材を締結するように構成されており、リベッタとも称される。まず、締結工具1Aの概略構成について説明する。
図1に示すように、締結工具1Aの外郭は、主に、ハウジング20と、ノーズ5A(詳細には、アンビル50A)と、容器6とによって形成されている。
ハウジング20は、側面視略T字状に形成された中空体であって、駆動機構収容部21と、把持部23と、コントローラ収容部25とを含む。駆動機構収容部21は、矩形箱状に形成された部分であって、所定の駆動軸A1に沿って延在する。駆動機構収容部21は、モータ31および駆動機構4を収容する。把持部23は、使用者によって把持される長尺筒状の部分であって、駆動機構収容部21の長軸方向における略中央部から、駆動軸A1に交差する方向(詳細には、概ね直交する方向)に突出している。把持部23には、使用者による押圧操作(引き捜査)が可能なトリガ231が設けられている。コントローラ収容部25は、矩形箱状に形成された部分であって、把持部23の突出端に接続している。コントローラ収容部25は、コントローラ36を収容する。また、コントローラ収容部25には、充電式のバッテリ28を着脱可能である。
ノーズ5Aは、駆動機構収容部21の長軸方向(駆動軸A1の延在方向)における一端部から、駆動軸A1に沿って突出している。ノーズ5Aの先端部には、リベットを係合可能である。容器6は、駆動軸A1の延在方向において、駆動機構収容部21のノーズ5Aと反対側の端部に取り外し可能に連結されている。容器6は、締結作業でリベットから分離されるピンの一部を収容可能に構成されている。
使用者がリベットをノーズ5Aの先端部に係合させ、トリガ231を引き操作すると、モータ31および駆動機構4が駆動され、リベットによって作業材が締結される。
ここでまず、図2を参照して、締結工具1Aで使用可能なリベットについて、リベット9を例に挙げて説明する。図2に示すように、リベット9は、一体的に形成されたピン91とスリーブ95とで構成されている。
スリーブ95は、全体としては円筒状の筒状体である。スリーブ95は、軸方向における一端部から径方向外側に突出するフランジ953を有する。
ピン91は、スリーブ95を貫通し、スリーブ95の両端から突出する棒状体である。ピン91は、軸部911と、軸部911の一端部に形成されたヘッド915とを含む。ヘッド915は、スリーブ95の内径よりも大径に形成され、フランジ953とは反対側のスリーブ95の端部から突出するように配置されている。軸部911は、スリーブ95を貫通して、フランジ953側の端部から軸方向に突出している。軸部911のうち、スリーブ95内に配置された部分には、破断用の小径部912が形成されている。小径部912は、他の部分よりも比較的強度の弱い部分であり、ピン91が軸方向に引っ張られると、最初に破断するように構成されている。軸部911のうち、小径部912に対してヘッド915とは反対側の部分を、ピンテール913という。ピンテール913は、軸部911が破断した場合に、ピン91(リベット9)から分離される部分である。
なお、締結工具1Aでは、図2で例示されたリベット9のほか、ピン91およびスリーブ95の軸方向の長さや径、小径部912の位置等が異なる複数種類のリベットが使用可能である。以下の説明では、便宜上、リベット9を例に挙げるが、以下の説明は、他のリベットにも適用される。
以下、締結工具1Aの詳細構成について説明する。なお、以下では、締結工具1Aの方向に関して、説明の便宜上、駆動軸A1(または駆動機構収容部21の長軸)の延在方向を前後方向と規定する。前後方向において、ノーズ5Aが配置されている側を前側、反対側(つまり、容器6が配置されている側)を後側と定義する。また、駆動軸A1に直交し、把持部23の長軸の延在方向に対応する方向を上下方向と規定する。上下方向において、把持部23の突出端側(コントローラ収容部25側)を下側、把持部23の基端部側(駆動機構収容部21側)を上側と定義する。また、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と定義する。
まず、駆動機構収容部21の内部構造について説明する。図3に示すように、駆動機構収容部21には、主に、モータ31と、モータ31によって駆動される駆動機構4が収容されている。
モータ31は、駆動機構収容部21の後端部の下部に収容されている。本実施形態では、モータ31として、ブラシレス直流(DC)モータが採用されている。モータ31は、モータシャフト32の回転軸が、駆動軸A1の下側で駆動軸A1と平行に(つまり、前後方向に)延在するように配置されている。モータシャフト32の後端部には、モータ31冷却用のファン35が固定されている。
駆動機構4は、モータ31の動力によって、後述するジョーアセンブリ58(図4および図5参照)を、駆動軸A1に沿って、ハウジング20およびアンビル50A(図4および図5参照)に対して前後方向に移動させるように構成されている。本実施形態では、駆動機構4は、遊星減速機41と、中間シャフト42と、ボールネジ機構43とを含む。以下、これらの構成について、順に説明する。
遊星減速機41は、モータ31の前側に、モータ31と同軸状に配置されている。遊星減速機41は、遊星歯車機構を用いた減速機であって、モータシャフト32から入力されるトルクを増大させ、中間シャフト42に出力するように構成されている。なお、遊星歯車機構の構成自体は周知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
中間シャフト42は、遊星減速機41の最終出力シャフトに同軸状に連結され、遊星減速機41から前方に延在している。中間シャフト42の前端部には、駆動ギヤ421が固定されている。
ボールネジ機構43は、ナット44と、ネジシャフト45とを主体として構成されている。本実施形態では、ボールネジ機構43は、ナット44の回転運動をネジシャフト45の直線運動に変換して、ジョーアセンブリ58を直線状に移動させるように構成されている。
ナット44は、前後方向の移動が規制され、且つ、駆動軸A1周りに回転可能な状態で、駆動機構収容部21に支持されている。ナット44は、被動ギヤ441を有する。被動ギヤ441は、ナット44の外周部に一体的に設けられ、中間シャフト42の駆動ギヤ421に噛合している。なお、駆動ギヤ421と被動ギヤ441は、減速ギヤ機構として構成されている。
ネジシャフト45は、駆動軸A1周りの回転が規制され、且つ、駆動軸A1に沿って前後方向に移動可能な状態でナット44に係合している。より詳細には、ネジシャフト45は、長尺体として構成され、駆動軸A1に沿って延在するように、ナット44に挿通されている。詳細な図示は省略するが、ナット44の内周面に形成された螺旋溝とネジシャフト45の外周面に形成された螺旋溝によって規定される軌道内には、多数のボールが転動可能に配置されている。ネジシャフト45は、これらのボールを介してナット44に係合している。
このような構成により、モータ31の駆動に伴ってナット44が駆動軸A1周りに回転されると、ネジシャフト45は、駆動軸A1周りの回転が規制された状態で、ナット44およびハウジング20に対して前後方向に直線状に移動する。なお、詳細は後述するが、ネジシャフト45の前端部には、ジョーアセンブリ58が連結されている。
また、ネジシャフト45の後端部には、延設シャフト451が同軸状に連結固定され、ネジシャフト45に一体化されている。以下、一体化されたネジシャフト45と延設シャフト451を総称して、駆動シャフト450ともいう。駆動シャフト450は、駆動軸A1に沿って駆動シャフト450を貫通する貫通孔を有する。
更に、ハウジング20(詳細には、駆動機構収容部21)の後壁には、ハウジング20の内部と外部とを連通する開口211が形成されている。開口211は、駆動軸A1上に配置されている。開口211には、円筒状のガイドスリーブ212が嵌めこまれている。ガイドスリーブ212内には、駆動シャフト450の後端部が配置されている。ガイドスリーブ212は、駆動シャフト450の後端部を駆動軸A1に沿って摺動案内するように構成されている。
なお、図1に示すように、ハウジング20(詳細には、駆動機構収容部21)の後端部には、開口211を取り巻くように構成された筒状の容器連結部22が設けられている。容器連結部22には、有底円筒状の容器6が取り外し可能に連結されている。容器6の内部空間は、後述する通路201に通じている。締結作業でリベット9から分離されたピンテール913は、通路201を通って容器6内に至り、容器6内に収容される。
以下、把持部23およびコントローラ収容部25の内部構造について説明する。
図1に示すように、把持部23の上端部の前側には、トリガ231が設けられている。把持部23の内部には、スイッチ233が収容されている。スイッチ233は、常時にはオフ状態で維持されており、トリガ231の押圧操作に応じてオン状態とされる。スイッチ233は、電線(図示略)によって、コントローラ36に接続されており、オン・オフ状態を示す信号をコントローラ36に出力するように構成されている。
また、コントローラ収容部25には、コントローラ36が収容されている。コントローラ36は、締結工具1Aの動作を制御するように構成された制御装置である。コントローラ36は、スイッチ233から出力される信号等に基づき、モータ31の駆動を制御するように構成されている。
コントローラ収容部25の下端部には、バッテリ装着部27が設けられている。バッテリ装着部27は、バッテリ28を着脱可能に構成されている。バッテリ28は、コントローラ36、モータ31を含む締結工具1Aの各部へ電力を供給するための、繰り返し充電が可能な電源であって、バッテリパックとも称される。周知の構成であるため詳細な説明は省略するが、バッテリ装着部27は、バッテリ28をスライド係合可能なレールと、バッテリ28の端子と電気的に接続可能な端子とを備えている。
以下、ノーズ5Aについて説明する。図4および図5に示すように、ノーズ5Aは、筒状のアンビル50Aと、アンビル50A内に同軸状に保持されたジョーアセンブリ58とを主体として構成されている。
アンビル50Aは、駆動軸A1に沿って延在するように、ハウジング20の前端部に連結固定されている。アンビル50Aは、スリーブ(ノーズハウジングともいう)51Aと、ノーズピース(ノーズチップともいう)52Aとを含む。
スリーブ51Aは、長尺の筒状部材であって、駆動軸A1に沿って前後方向に延在するように配置され、筒状の固定部材501を介して駆動機構収容部21の前端部に連結固定されている。
より詳細には、図4〜図7に示すように、スリーブ51Aは、略均一の外径を有する円筒状に形成されている。スリーブ51Aの前端部の外周部は、雄ネジ部511として構成されている。スリーブ51Aの後部には、径方向外側に突出する環状のフランジ512が設けられている。スリーブ51Aのうち、フランジ512よりも後側の部分は、駆動機構収容部21の前端部に設けられた筒状部213に嵌め込まれている。
固定部材501の前端部には、径方向内側に突出する環状のストッパ部502が設けられている。固定部材501は、スリーブ51Aの径方向外側に前方から嵌め込まれ、駆動機構収容部21の筒状部213の外周部に螺合される。これにより、スリーブ51Aは、ハウジング20に連結される。スリーブ51Aのフランジ512が、固定部材501のストッパ部502の後端面と、駆動機構収容部21の筒状部213の前端面との間に挟持されることで、スリーブ51Aは、前後方向に位置決めされている。
ノーズピース52Aは、スリーブ51Aとは別個の部材であって、スリーブ51Aの前端部に取り外し可能に連結されている。ノーズピース52Aは、駆動軸A1に沿ってノーズピース52Aを貫通し、リベット9(図2参照)のピン91(詳細には、ピンテール913)を受け入れ可能な受入れ孔520というを有する。また、ノーズピース52Aは、後述するジョー583を前後方向において位置決めするように構成されている。ノーズピース52Aの構成の詳細については後述する。
なお、上述のように、締結工具1Aでは、ピン91の径が異なる複数種類のリベットを使用可能である。詳細な図示は省略するが、これに対応して、スリーブ51Aには、例示するノーズピース52Aとは受入れ孔520の径が異なるが、同様の構成を有する複数種類のノーズピースを取り付け可能である。
図4および図5に示すように、ジョーアセンブリ58は、ジョーケース581と、複数のジョー583と、押圧部材585と、付勢バネ587とを主体として構成されている。
ジョーケース581は、円筒状に形成され、アンビル50Aのスリーブ51A内を駆動軸A1に沿って摺動可能に保持されている。ジョーケース581の前端部は、前方へ向けて内径が小さくなるテーパ部582として構成されている。ジョーケース581の後端部は、ネジシャフト45の前端部に螺合された円筒状の連結部材589に螺合されている。つまり、ジョーケース581は、連結部材589を介してネジシャフト45に連結されている。これにより、ジョーケース581は、ネジシャフト45(駆動シャフト450)と一体的に、ハウジング20およびアンビル50Aに対して前後方向に移動する。
複数のジョー583は、ジョーケース581のテーパ部582内に、駆動軸A1周りに等間隔に配置されている。複数のジョー583は、夫々、テーパ部582の内周面(テーパ面)に整合する外周面(テーパ面)を有し、テーパ部582内を摺動可能である。複数のジョー583の中心部(駆動軸A1周りの領域)には、ノーズピース52Aの受入れ孔520に連通し、ピンテール913を受け入れ可能な空隙が設けられている。また、複数のジョー583の内周面には、ピンテール913の把持を容易とするための複数の溝が形成されている。
押圧部材585は、円筒状に形成され、連結部材589内に摺動可能に配置されている。押圧部材585は、複数のジョー583の後側に配置されており、押圧部材585の前端部は、ジョー583の後端部に当接している。付勢バネ587は、押圧部材585の後側で、押圧部材585と連結部材589の間に配置されている。ジョー583は、付勢バネ587の付勢力によって、押圧部材585を介して前方へ(つまり、ノーズピース52A側へ)付勢されている。
以上のような構成により、図3に示すように、ノーズ5Aの先端からハウジング20の開口211まで、駆動軸A1に沿ってハウジング20内を前後方向に延在する通路201が形成される。より詳細には、通路201は、ノーズピース52A、ジョーアセンブリ58、駆動シャフト450、およびガイドスリーブ212の内部を延在する空間である。通路201は、リベット9から分離されたピンテール913が通過可能に構成されており、通路201の後端は、容器6の内部空間に通じている。
また、以上のような構成により、ジョーアセンブリ58が駆動軸A1に沿って前後方向に移動するのに伴って、ジョー583は、テーパ部582内で、径方向に互いに近づく方向または互いから離れる方向に摺動することとなる。
具体的には、ジョーアセンブリ58がアンビル50Aに対して後方へ移動すると、前方に付勢されたジョー583に対し、ジョーケース581は後方に移動する。ジョー583のテーパ面とジョーケース581のテーパ面との作用で、複数のジョー583は、径方向に互いに近接するように移動する。これにより、ジョー583によるピンテール913の把持力が増大し、ピンテール913は強固に把持され、ジョー583の後方への移動に伴って後方に引っ張られる。
反対に、ジョーアセンブリ58が駆動軸A1に沿って前方に戻されると、ジョー583がノーズピース52Aの後端に当接した後、ジョーケース581はジョー583に対して前方に移動する。複数のジョー583は、径方向に互いに離間可能となる。これにより、ジョー583によるピンテール913の把持力が低下し、ピンテール913は、外力が付与されるとジョー583から離脱可能となる。
なお、本実施形態では、コントローラ36は、トリガ231が押圧され、スイッチ233がオン状態とされると、モータ31を正転駆動し、駆動シャフト450およびジョーアセンブリ58を後方に移動させる。コントローラ36は、駆動シャフト450およびジョーアセンブリ58が所定の停止位置に到達すると、モータ31の正転駆動を停止する。この過程で、ピン91が引っ張られることで変形したリベット9によって作業材が締結され、ピン91が小径部912で破断する。更に、コントローラ36は、トリガ231の押圧が解除され、スイッチ233がオフ状態とされると、モータ31を逆転駆動し、駆動シャフト450およびジョーアセンブリ58を前方に移動させる。コントローラ36は、駆動シャフト450およびジョーアセンブリ58が所定の初期位置に到達すると、モータ31の逆転駆動を停止する。
以下、ノーズピース52Aの詳細構成について説明する。図4〜図7に示すように、
本実施形態では、ノーズピース52Aは、単一の部材であって、一体的に形成された当接部53Aと、位置決め部54と、連結部55とを含む。
当接部53Aは、リベット9(図2参照)のスリーブ95(詳細には、フランジ953)に当接可能な部分であって、ノーズピース52Aの前端部を構成する。本実施形態では、当接部53Aは、円盤状に形成されており、スリーブ51Aの外部に(より詳細には、スリーブ51Aの前端に当接するように)配置されている。詳細な図示は省略するが、締結作業時には、当接部53Aの前端面の中央部がリベット9のフランジ953に後方から当接する。当接部53Aの外径は、スリーブ51Aの外径よりも大きい。
位置決め部54は、複数のジョー583に当接可能な部分である。位置決め部54は、円筒状に形成されて、スリーブ51Aの内部に配置されている。本実施形態では、位置決め部54は、当接部53Aの後端面の中央部から後方に突出している。なお、位置決め部54の外径は、ジョーケース581のテーパ部582の内径よりも小さく設定されており、位置決め部54は、テーパ部582内に挿入可能である。位置決め部54は、前方に付勢されるジョー583の前端部に当接することで、ジョー583の最前方位置を規定するように構成されている。このため、位置決め部54の後端面は、ジョー583の前端面に概ね整合するように構成されている。受入れ孔520は、駆動軸A1に沿って、当接部53Aと位置決め部54を貫通しており、ジョー583の中心部の空隙と通じている。
連結部55は、スリーブ51Aの前端部に着脱可能に構成されている。本実施形態では、連結部55は、筒状に形成されて、当接部53Aの周縁部から後方に突出している。連結部55の内周部は、雌ネジ部551として構成されており、スリーブ51Aの雄ネジ部511に螺合可能である。ノーズピース52Aは、連結部55の雌ネジ部551とスリーブ51Aの雄ネジ部511との螺合により、スリーブ51Aに取り付けられている。
なお、駆動シャフト450およびジョーアセンブリ58が初期位置(図4に示す位置)に配置されているときには、ジョー583は、前方に付勢され、前端面がノーズピース52Aの位置決め部54の後端面に当接する最前方位置に配置される。上述のように、複数のジョー583の径方向の位置、ひいてはジョー583の把持力は、ジョーケース581に対するジョー583の前後方向(駆動軸方向)の位置に応じて定まる。そこで、位置決め部54の長さは、複数のジョー583が最前方位置に配置されているときに、ジョー583の内部にピンテール913を挿入可能、且つ、リベット9が自重でノーズ5Aから脱落しない程度の把持力で、ジョー583がピンテール913を緩く把持できるように設定されている。
以上のような構成により、本実施形態のノーズピース52Aは、一般的な従来のノーズピースよりも、軸方向に短尺化されている。例えば、特開2013―248643号公報に開示されているように、従来の一般的なノーズピースでは、リベットに当接可能な前端部(当接部)と、ジョーに当接可能な後端部(位置決め部)との間に、雄ネジ部が設けられている。この雄ネジ部が、アンビルのスリーブ(ノーズハウジング)の前端部に設けられた雌ネジ部に螺合されることで、ノーズピースがスリーブに連結される。雄ネジ部はネジ山を有するため、ある程度の長さを要する。また、位置決め部の長さ設定には、上述のような制約がある。よって、当接部、雄ネジ部、位置決め部が軸方向に並ぶノーズピースは、軸方向に長尺化しやすい。このため、例えば、ピンの軸方向の長さが比較的短いリベットが使用されると、ピンテールがジョーに対して適切な位置まで挿入しきれず、リベットが抜け落ちやすくなる。
一方、本実施形態のノーズピース52Aでは、当接部53Aと位置決め部54のみが軸方向に並び、連結部55は、位置決め部54の径方向外側に配置されている。よって、ノーズピース52Aの軸方向の長さは、上述のような従来のノーズピースに比べて、雄ネジ部に対応する長さ分、短くなりうる。これにより、より短いピンを、ジョー583の適切な位置まで挿入することが可能となり、リベット9の抜け落ちの可能性を低減することができる。また、本実施形態では、連結部55が、位置決め部54の径方向外側でスリーブ51Aに連結されるため、スリーブ51Aの長さも最小限とすることができる。
また、本実施形態では、連結部55の雌ネジ部551は、スリーブ51Aの前端部に設けられた雄ネジ部511に螺合可能である。更に、ノーズピース52Aは、当接部53A、位置決め部54および連結部55が一体化された単一の部材である。このような構成によって、スリーブ51Aに対する着脱が特に容易なノーズピース52Aが実現されている。
[第2実施形態]
以下、図8〜図11を参照して、第2実施形態に係る締結工具1Bについて説明する。なお、本実施形態の締結工具1Bは、第1実施形態のノーズ5Aと構成の一部が異なるノーズ5Bを備えるものの、ノーズ5B以外については、締結工具1Aと実質的に同一(形状が若干異なる場合を含む)の構成を有する。よって、以下では、締結工具1Bのうち、締結工具1Aと実質的に同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略または簡略化し、ノーズ5Bについて、主に説明する。
図8および図9に示すように、本実施形態のノーズ5Bは、第1実施形態とは異なる構成を有するアンビル50Bと、第1実施形態と同一構成を有するジョーアセンブリ58とを主体として構成されている。
アンビル50Bは、駆動軸A1に沿って延在するように、ハウジング20の前端部に連結固定されている。図8〜図11に示すように、アンビル50Bは、スリーブ51Bと、ノーズピース52Bとを含む。
スリーブ51Bは、長尺の円筒状部材であって、第1実施形態のスリーブ51Aと同様、フランジ512によって位置決めされた状態で、固定部材501を介して駆動機構収容部21の前端部に連結固定されている。本実施形態では、スリーブ51Bの前端部は、他の部分よりも若干小径の小径部515として構成されている。小径部515は、後述するノーズピース52Bの当接部53Bに係合可能、且つ、連結部55を着脱可能に構成されている。より詳細には、小径部515の後端部には、径方向内側に突出する環状のストッパ部517が設けられている。小径部515の外周部は、雄ネジ部516として構成されている。
ノーズピース52Bは、スリーブ51Bとは別個の部材であって、スリーブ51Bの前端部に取り外し可能に連結されている。ノーズピース52Bは、第1実施形態のノーズピース52Aとは異なり、第1部材521および第2部材522の2つの別個の部材によって構成されている。
第1部材521は、一体的に形成された当接部53Bおよび位置決め部54を含む。
当接部53Bは、リベット9(図2参照)のスリーブ95(詳細には、フランジ953)に当接可能な部分であって、ノーズピース52Bの前端部を構成する。本実施形態では、当接部53Bは、全体としては円筒状に形成されているが、当接部53Bの前後方向における略中央部には、径方向外側に突出する一対の係止突起533が設けられている。当接部53Bは、係止突起533の後端面が、スリーブ51Bのストッパ部517に前方から当接するように、小径部515内に嵌め込まれている。
円筒状の位置決め部54は、第1実施形態と同様、当接部53Bの後端面の中央部から後方に突出して、ジョーケース581のテーパ部582内に挿入されており、ジョー583の前端部に当接することで、ジョー583の最前方位置を規定する。受入れ孔520は、駆動軸A1に沿って、当接部53Bと位置決め部54を貫通しており、ジョー583の中心部の空隙と通じている。
第2部材522は、スリーブ51Bの前端部に着脱可能に構成されている。第2部材522は、一体的に形成された連結部55と押え部56とを含む。
押え部56は、当接部53Bの前端部の径方向外側に配置される環状の部分である。押え部56の外径は、スリーブ51Bの小径部515の外径よりも大きい。また、押え部56の内径は、後述のピン573(図9参照)の移動を許容するために、当接部53Bの外径よりも大きく設定されている。本実施形態では、円筒状の連結部55は、押え部56の周縁部から後方に突出している。連結部55の雌ネジ部551は、小径部515の雄ネジ部516に螺合可能である。
本実施形態では、第1部材521は、第2部材522を介してスリーブ51Bに連結されている。より詳細には、第1部材521がスリーブ51Bの前端部に嵌め込まれた状態で、第2部材522が小径部515の径方向外側に前方から嵌め込まれる。押え部56の後端面が、当接部53Bの係止突起533の前端面および小径部515の前端面に当接する位置まで、雌ネジ部551が雄ネジ部516に螺合される。これにより、第1部材521および第2部材522は、スリーブ51Bに連結される。
更に、本実施形態では、ノーズピース52Bには、リベット9の抜け止め部57が設けられている。抜け止め部57は、ピン573と、環状の弾性部材(いわゆるOリング)575とを含む。
図9に示すように、ピン573は、当接部53Bに設けられた保持孔571内に挿入されている。保持孔571は、当接部53Bの外周面(係止突起533のない部分)から、前方へ向かうにつれて駆動軸A1に近づく方向に延び、受入れ孔520に通じている。ピン573は、保持孔571内を摺動可能である。弾性部材575は、保持孔571にピン573が挿入された状態で、当接部53Bの外周部に設けられた環状の溝に装着されている。
このような構成により、受入れ孔520にリベット9(図2参照)のピンテール913が挿入されていないときには、ピン573は、受入れ孔520の内部に最大限突出する位置で保持される。一方、ピンテール913が受入れ孔520に挿入されると、ピン573は、ピンテール913によって、受入れ孔520から離れる方向に移動されるが、弾性部材575の付勢力によってピンテール913に当接して抵抗を与える。これにより、ピンテール913が受入れ孔520から抜けることが防止される。
以上のような構成により、第1実施形態のノーズピース52Aと同様、本実施形態のノーズピース52Bでも、当接部53Bと位置決め部54のみが軸方向に並び、連結部55は、当接部53Bの径方向外側に配置されている。よって、ノーズピース52Bの軸方向の長さは、当接部、雄ネジ部、位置決め部が軸方向に並ぶ従来のノーズピースに比べて、雄ネジ部に対応する長さ分、短くなりうる。これにより、リベット9の抜け落ちの可能性を低減することができる。これに加えて、ノーズピース52Bは、抜け止め部57を備えているため、リベット9の抜け落ちの可能性を更に低減することができる。
また、本実施形態では、当接部53Bと位置決め部54を含む第1部材521と、連結部55を含む第2部材522とは、別個の部材であり、これらが組み合わせられることで、ノーズピース52Bが形成される。よって、第1部材521および第2部材522の夫々を、製造しやすいよりシンプルな形状とし、製造コストを抑えることが可能となる。また、当接部53Bに、抜け止め部7を容易に設けることができる。また、ノーズピース52Bのハウジング20への取り付けは、第1部材521をスリーブ51Bに嵌め込んだ後、第2部材522をスリーブ51Bに螺合するだけでよいため、着脱が容易である。
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る締結工具は、例示された締結工具1Aおよび締結工具1Bに限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうち何れか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示す締結工具1A、締結工具1B、あるいは請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
例えば、ノーズ5A、5Bには、以下に示す変更を加えることができる。
例えば、第1実施形態のアンビル50Aのノーズピース52A(図5参照)に、第2実施形態のノーズピース52B(図9参照)の抜け止め部57に相当する、リベット9の抜け止めのための構成が設けられてもよい。反対に、第2実施形態のアンビル50Bのノーズピース52Bには、抜け止め部57が設けられなくてもよい。また、第2実施形態のスリーブ51Bおよびノーズピース52Bの第2部材522は、連結部55が、位置決め部54の径方向外側でスリーブ51Bの外周部に螺合されるように変更されてもよい。また、連結部55は、スリーブ51A、51Bの内周部に螺合可能であってもよい。例えば、スリーブ51Aの前端部に雌ネジ部が設けられる一方、ノーズピース52Aの当接部53Aの径方向外側に、雄ネジ部として構成された連結部が設けられうる。
更に、ノーズピース52Aは、連結部55の螺合以外の方法でスリーブ51Aに連結されていてもよい。例えば、ノーズピース52Aは、スリーブ51Aの前端部に嵌め込まれ、ノーズピース52Aとは別体のネジによって、スリーブ51Aに固定されてもよい。ノーズピース52Bについても同様である。
また、ジョーアセンブリ58の構成も、適宜、変更されうる。具体的には、ジョーアセンブリ58は、アンビル50A、50Bに対する前後方向の相対移動に連動して、ジョー583が前後方向および径方向に移動することで、ピン91に対する把持力が変化するように構成されていればよく、例えば、ジョーケース581やジョー583の形状、ジョー583の数、ネジシャフト45との連結構造等は、適宜、変更されてよい。また、例えば、複数の別個のジョー583に代えて、径方向に開閉可能な複数の突出片(把持爪)を有する単一のピン把持部が採用されてもよい。
また、締結工具1Aは、ブラインドリベットではなく、いわゆる複数部材加締め式のファスナ(multi-piece swage type fastener)に適合するように構成されてもよい。複数部材加締め式のファスナでは、ピンと、ピンが挿通された筒状部(カラーとも称される)は、元々は互いに別体として形成されている。複数部材加締め式のファスナは、ピンのヘッドと、ピンの軸部に加締められた筒状部とで作業材を挟持するタイプのファスナである。複数部材加締め式のファスナには、ブラインドリベットと同様、ピンが破断するタイプのファスナがある。複数部材加締め式のファスナを用いた作業材の締結でも、締結作業前には、ジョー583、またはジョー583に相当するピン把持部によって、ピンの一端部が一時的に把持される。よって、このようなファスナを用いる締結工具においても、上記実施形態で例示されたノーズ5A、5Bが好適に採用されうる。
ハウジング20、モータ31、駆動機構4等の構成および配置は、適宜、変更されうる。例えば、モータ31は、ブラシを有するモータであってもよい。ボールネジ機構43に代えて、内周部に雌ネジが形成されたナットと、外周部に雄ネジが形成され、ナットに直接螺合されたネジシャフトとを備えた送りネジ機構が採用されてもよい。
また、締結工具1A、1Bは、バッテリ装着部27に装着されたバッテリ28ではなく、外部の商用電源から供給される電力で動作するように構成されていてもよい。この場合、締結工具1A、1Bには、商用電源に接続可能な電源コードが設けられる。あるいは、締結工具1A、1Bは、電動式ではなく、圧縮空気によって駆動される駆動機構を備えた空圧式の締結工具に変更されてもよい。
上記実施形態および変形例の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。
締結工具1A、1Bの各々は、「締結工具」の一例である。ブラインドリベット9、ピン91、スリーブ95は、夫々、「ファスナ」、「ピン」、「筒状部」の一例である。ハウジング20は、「ハウジング」の一例である。スリーブ51A、51Bの各々は、「保持部材」の一例である。駆動軸A1は、「駆動軸」の一例である。ノーズピース52A、52Bの各々は、「ピン受け入れ部」の一例である。受入れ孔520は、「貫通孔」の一例である。ジョー583は、「ピン把持部」の一例である。駆動機構4は、「駆動機構」の一例である。位置決め部54は、「位置決め部」の一例である。当接部53A、53Bの各々は、「ファスナ当接部」の一例である。連結部55は、「連結部」の一例である。抜け止め部57は、「抜け止め部」の一例である。モータ31は、「モータ」の一例である。
更に、本発明および上記実施形態とその変形例の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様は、独立して、あるいは、実施形態に示す締結工具1A、1B、上記変形例、別の態様、または各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記保持部材の前記前端部、および前記連結部のうち一方は、雄ネジ部を有し、前記保持部材の前記前端部、および前記連結部のうち他方は、前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部を有する。
[態様2]
前記ファスナ当接部は、前記駆動軸を中心とする円盤状に形成され、
前記位置決め部は、円筒状に形成されて、前記ファスナ当接部の中央部から前記駆動軸に沿って突出し、
前記連結部は、円筒状に形成されて、前記ファスナ当接部の周縁部から、前記位置決め部と同じ方向に突出している。
[態様3]
前記ピン受け入れ部は、互いに別個に形成された第1部材および第2部材を備え、
前記第1部材は、前記位置決め部と前記ファスナ当接部とを含み、
前記第2部材は、前記連結部を含む。
第1部材521、第2部材522は、夫々、「第1部材」、「第2部材」の一例である。
[態様4]
前記抜け止め部は、前記ファスナ当接部に設けられている。