JP2021153065A - 電池用包装材料、その製造方法、及び電池 - Google Patents

電池用包装材料、その製造方法、及び電池 Download PDF

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Abstract

【課題】突刺し強さが高く、耐電解液性にも優れた電池用包装材料を提供する。【解決手段】少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、前記ステンレス鋼箔の少なくとも前記熱融着性樹脂層側に、耐酸性皮膜層が形成されており、前記耐酸性皮膜層は、前記ステンレス鋼箔の表面1m2当たり、リン化合物をリン換算で100mg以上含んでいる、電池用包装材料。【選択図】なし

Description

本発明は、電池用包装材料、その製造方法、及び電池に関する。
従来、様々なタイプの電池が開発されているが、あらゆる電池において、電極や電解質等の電池素子を封止するために包装材料が不可欠な部材になっている。従来、電池用包装として金属製の包装材料が多用されていたが、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、電池には、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の電池用包装材料では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材層/バリア層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような電池用包装材料においては、一般的に、冷間成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの電池素子を配し、熱融着性樹脂層同士を熱溶着させることにより、電池用包装材料の内部に電池素子が収容された電池が得られる。
電池用包装材料の成形性に優れるなどの観点から、このようなフィルム状の積層体においては、バリア層としてアルミニウム箔が広く使用されている。
特開2008−287971号公報
近年、電池のエネルギー密度をより高めて、電池をより一層小型化するために、電池用包装材料のより一層の薄型化が求められている。一方、電池製造時、電池が搭載された製品の輸送時、使用時などにおいては、製品に大きな衝撃が加わることがある。この際、電池素子を収容している電池用包装材料に対しても、内側または外側から大きな外力が加わることがある。
このように、電池用包装材料の薄型化の要求と共に、バリア層についても薄型化が検討されているが、アルミニウムは成形性に優れる反面、剛性が低く、電池用包装材料の内側または外側から大きな外力が加わった場合に、アルミニウムに穴があき、電池素子が外部に露出する虞がある。
このような状況下、アルミニウムの代わりに、ステンレス鋼やチタン鋼などの剛性の高い金属を使用することが考えられる。しかしながら、一般に、ステンレス鋼は剛性(突刺し強さ)が大きい反面、耐電解液性については、殆ど検討されていないのが現状である。
本発明は、積層体にステンレス鋼箔が積層されているにもかかわらず、突刺し強さが高く、耐電解液性にも優れた電池用包装材料を提供することを主な目的とする。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、ステンレス鋼箔の少なくとも熱融着性樹脂層側に、耐酸性皮膜層が形成されており、耐酸性皮膜層は、ステンレス鋼箔の表面1m2当たり、リン化合物をリン換算で100mg以上含んでいることにより、突刺し強さが高く、耐電解液性にも優れた電池用包装材料となることを見出した。
さらに、本発明者等は、ステンレス鋼箔としてオーステナイト系のステンレス鋼箔を用いた電池用包装材料、基材層側を黒色にした電池用包装材料、熱融着性樹脂層のMFRの上限値を設定した電池用包装材料は、突刺し強さ、成形性、耐電解液性に優れた効果が発揮されることや、ステンレス鋼箔を用いることによって生じやすいヒートシール後のヒートシール面の位置ズレなどによる気密性の悪化やシール強度の低下を効果的に抑制できることを見出した。
本発明は、以上のような知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記ステンレス鋼箔の少なくとも前記熱融着性樹脂層側に、耐酸性皮膜層が形成されており、
前記耐酸性皮膜層は、前記ステンレス鋼箔の表面1m2当たり、リン化合物をリン換算で100mg以上含んでいる、電池用包装材料。
項2. 前記ステンレス鋼箔が、オーステナイト系のステンレス鋼である、項1に記載の電池用包装材料。
項3. 前記ステンレス鋼箔が、SUS304である、項1または2に記載の電池用包装材料。
項4. 前記耐酸性皮膜層が、樹脂を含んでいる、項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
項5. 前記樹脂が、フェノール樹脂である、項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
項6. 前記ステンレス鋼箔と前記熱融着性樹脂層との間に、接着層をさらに有する、項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
項7. 前記ステンレス鋼箔の厚みが、40μm以下である、項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
項8. 前記積層体の総厚みが、110μm以下である、項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
項9. 前記積層体の総厚みをT(μm)、前記ステンレス鋼箔の厚みをTS(μm)、JIS Z 1707:1997の規定に準拠した測定方法により測定される前記積層体の突刺し強さをF(N)とした場合に、
前記突刺し強さF(N)を、前記積層体の総厚みT(μm)で除した値が、0.3(N/μm)以上であり、
前記突刺し強さF(N)を、前記ステンレス鋼箔の厚みTS(μm)で除した値が、0.7(N/μm)以上である、項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料。
項10. 少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記ステンレス鋼箔として、少なくとも前記熱融着性樹脂層側に、耐酸性皮膜層が形成されており、前記耐酸性皮膜層が、前記ステンレス鋼箔の表面1m2当たり、リン化合物をリン換算で100mg以上含んでいるものを用いる、電池用包装材料の製造方法。
項11. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項1〜9のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
本発明によれば、少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、ステンレス鋼箔の少なくとも熱融着性樹脂層側に、耐酸性皮膜層が形成されており、耐酸性皮膜層は、ステンレス鋼箔の表面1m2当たり、リン化合物をリン換算で100mg以上含んでいることにより、突刺し強さが高く、耐電解液性にも優れた電池用包装材料を提供することができる。
また、ステンレス鋼箔を用いることによって生じやすいヒートシール後のヒートシール面の位置ズレなどによる気密性の悪化やシール強度の低下を効果的に抑制できる。
本発明の電池用包装材料の略図的断面図である。 本発明の電池用包装材料の略図的断面図である。
本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、ステンレス鋼箔の少なくとも熱融着性樹脂層側に、耐酸性皮膜層が形成されており、耐酸性皮膜層は、ステンレス鋼箔の表面1m2当たり、リン化合物をリン換算で100mg以上含んでいることを特徴とする。
以下、本発明の電池用包装材料について詳述する。なお、本明細書において、数値範囲については、「以上」、「以下」と明記している箇所を除き、「〜」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2〜15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
1.電池用包装材料の積層構造
本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層1、ステンレス鋼箔3、耐酸性皮膜層3b、及び熱融着性樹脂層4をこの順に有する積層体からなる。電池用包装材料が電池に使用される際には、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4が最内層(電池素子側)になる。電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士を接面させて熱溶着することにより電池素子が密封され、電池素子が封止される。図1に示すように、本発明の電池用包装材料は、基材層1とステンレス鋼箔3との間に接着剤層2を有していてもよい。また、図2に示すように、本発明の電池用包装材料は、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4との間に接着層5を有していてもよい。
また、本発明の電池用包装材料は、ステンレス鋼箔3の基材層1側の表面に耐酸性皮膜層3aを有していてもよい。なお、図1,図2においては、ステンレス鋼箔3の基材層1側の表面に耐酸性皮膜層3aが積層されており、ステンレス鋼箔3の熱融着性樹脂層4側の表面に耐酸性皮膜層3bが積層されている。
2.電池用包装材料を形成する各層の組成
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は最外層側に位置する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層1の形成素材として好適に使用される。
また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層1の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層1の形成素材として好適に使用される。
基材層1は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層1として好適に使用される。また、基材層1は、上記の素材をステンレス鋼箔3上にコーティングして形成されていてもよい。
これらの中でも、基材層1を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ナイロンが挙げられる。
基材層1は、耐ピンホール性及び電池の包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルム及びコーティングの少なくとも一方を積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層1を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドイッチラミネート法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。また、接着剤を介して接着させる場合、使用する接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、電子線硬化型や紫外線硬化型等のいずれであってもよい。接着剤の成分としてポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。
基材層1は、成形性を向上させるために低摩擦化させておいてもよい。基材層1を低摩擦化させる場合、その表面の摩擦係数については特に制限されないが、例えば1.0以下が挙げられる。基材層1を低摩擦化するには、例えば、マット処理、スリップ剤の薄膜層の形成、これらの組み合わせ等が挙げられる。また樹脂層を形成して付与してもよい。これらの樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂が上げられる。
基材層1には、必要に応じて架橋剤や硬化剤の使用を併用してもよい。これらを使用することにより、基材層1の低摩擦化だけでなく電解液が付着しても室温で5時間以上耐性を持たせる保護層;電解液により溶解し電解液が付着したことが判別する層を持たせることで容易に製造装置のメンテナンスの必要性を判断できるようにする層;ヒートシールした場合にヒートシール部が目視で判別できる様にする層;製造装置の接触により剥がれることで接触部位をなくしメンテナンスしやすくする層等として基材層1を機能させることができる。
マット処理としては、予め基材層1にマット化剤を添加し表面に凹凸を形成したり、エンボスロールによる加熱や加圧による転写法や、表面を乾式又は湿式ブラスト法やヤスリで機械的に荒らす方法が挙げられる。また、マット化剤としては、例えば、粒径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、はタルク,シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのマット化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはりシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、マット化剤には、表麺に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
スリップ剤の薄膜層は、基材層1上にスリップ剤をブリードアウトにより表面に析出させて薄層を形成させる方法や、基材層1にスリップ剤を積層することで形成できる。スリップ剤としては、特に制限されないが、例えば、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドやエチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪酸アマイド、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ樹脂、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン、パラフィン等が挙げられる。これらのスリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
後述のとおり、電池用包装材料のヒートシール時の熱をステンレス鋼箔から効果的に放熱させる観点からは、基材層1は黒色を有していてもよい。基材層1を黒色にする方法としては、後述の通りである。
基材層1の厚みは、例えば、3〜75μm、好ましくは5〜50μmが挙げられる。
[接着剤層2]
本発明の電池用包装材料において、接着剤層2は、基材層1とステンレス鋼箔3との接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて設けられる層である。基材層1とステンレス鋼箔3とは直接積層されていてもよい。
接着剤層2は、基材層1とステンレス鋼箔3とを接着可能である接着樹脂によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着樹脂は、2液硬化型接着樹脂であってもよく、また1液硬化型接着樹脂であってもよい。更に、接着剤層2の形成に使用される接着樹脂の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着剤層2の形成に使用できる接着樹脂の樹脂成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂;フッ化エチレンプロピレン共重合体等が挙げられる。これらの接着樹脂成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着樹脂成分の組み合わせ態様については、特に制限されないが、例えば、その接着樹脂成分として、ポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、展延性、高湿度環境における耐久性や黄変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層1とステンレス鋼箔3との間のラミネート強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着樹脂;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
また、接着剤層2は異なる接着樹脂成分で多層化してもよい。接着剤層2を異なる接着樹脂成分で多層化する場合、基材層1とステンレス鋼箔3とのラミネート強度を向上させるという観点から、基材層1側に配される接着樹脂成分として基材層1との接着性に優れる樹脂を選択し、ステンレス鋼箔3側に配される接着樹脂成分としてステンレス鋼箔3との接着性に優れる接着樹脂成分を選択することが好ましい。接着剤層2は異なる接着樹脂成分で多層化する場合、具体的には、ステンレス鋼箔3側に配置される接着樹脂成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂等が挙げられる。
電池用包装材料のヒートシール時の熱をステンレス鋼箔から効果的に放熱させることが望ましい。ステンレス鋼はアルミニウムに比べ熱容量が2〜3倍大きいためヒートシールや加熱処理した後の冷却速度が遅い。また、ヤング率(ばね定数)もアルミニウムに比べステンレス鋼は2〜3倍大きい。そのため、ステンレス鋼は、アルミニウムに比べ冷えにくく、また応力が除去された後に、元の形状に戻ろうとする力が大きい。熱融着性樹脂層をヒートシールした後、シールした部分の樹脂が冷えにくく、さらにステンレス鋼箔の形状がヒートシール前の形状に戻ろうとする力によって、シールした部分の熱融着性樹脂層同士の位置がずれやすくなる傾向が高い。冷却中にシール面の位置がずれた場合、シール時に発生する所謂「ポリ溜まり」の形状が不均一となる。このため、電池にした場合のガスの発生や温度上昇で内圧が高くなった時、不均一な部分からガスや内容物の漏れが発生する可能性がある。また、位置ズレを生じながら熱融着性樹脂層が硬化するため、熱融着性樹脂層に応力が残りやすい。このため、シール強度の均一性が低くなり、これもガスや内容物の漏れの原因となる可能性がある。
以上のようなことから、ステンレス鋼箔を用いた場合、ヒートシール後になるべく早く冷却させることが重要となる。冷却を早くする方法として、ヒートシール後、冷却板を接触させる方法、空冷ノズルでエアーを吹き付ける方法等で行うことも可能である。また、電池用包装材料のステンレス鋼箔よりも外側に、冷却効果を高める層を設けることも有効である。これらの中でも、電池用包装材料のヒートシール時の熱をステンレス鋼箔から効果的に放熱させる方法として、比較的効果が高い方法としては、電池用包装材料のステンレス鋼箔よりも外側を黒く着色する方法が挙げられる。その他の方法としては、冷却効果が高くなる層構成とする方法も挙げられる。たとえば、ステンレス鋼箔よりも外側の層に、放熱効果が高いシリカ、アルミナ、カーボン等の微粒子や多孔質微粒子、炭素繊維などの繊維、アルミニウムや銅やニッケルなどの金属フィラーを添加する方法などが挙げられる。
電池用包装材料のヒートシール時の熱をステンレス鋼箔3から効果的に放熱させる好ましい構成としては、例えば以下の態様が挙げられる。
(1)基材層1の外面(ステンレス鋼箔3とは反対側の表面)に黒色の印刷層を設ける態様。当該態様においては、後述の黒色着色材を含むインキを用いて、基材層1の外面に黒色の印刷層を設ける。
(2)基材層1を黒色に着色する態様。当該態様においては、基材層を構成する樹脂に後述の黒色着色材を含ませて、基材層1を黒色に着色する。
(3)基材層1の内面(ステンレス鋼箔3の表面)に黒色の印刷層を設ける態様。当該態様においては、後述の黒色着色材を含むインキを用いて、基材層1の内面に黒色の印刷層を設ける。
(4)接着剤層2を黒色に着色する態様。当該態様においては、接着剤層2を構成する樹脂に後述の黒色着色材を含ませて、接着剤層2を黒色に着色する。
(5)接着剤層2とステンレス鋼箔との間に黒色の着色層を設ける態様。当該態様においては、後述の黒色着色材を含む樹脂を用いて、ステンレス鋼箔3の接着剤層2側の表面に黒色の着色層を設ける。
黒色着色材としては、カーボンブラックのような炭素系黒色顔料、鉄酸化物(例えばマグネタイト型四酸化三鉄)や、銅とクロムからなる複合酸化物、銅、クロム、亜鉛からなる複合体、チタン系酸化物などの酸化物系黒色顔料、黒色染料などが挙げられる。さらに効果を高めるために、シリカ、アルミナ、バリウム等の微粒子や多孔質微粒子、アルミニウムや銅やニッケルなどの金属フィラーを添加する方法などもよい。また、着色した層を外面に形成する場合は、前述のような低摩擦化や、種々の機能を付与することができる。
接着剤層2の厚みについては、例えば、0.5〜50μm、好ましくは2〜25μmが挙げられる。
[ステンレス鋼箔3]
本発明の電池用包装材料において、ステンレス鋼箔3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。
本発明において、ステンレス鋼箔3は、オーステナイト系のステンレス鋼であることが好ましい。これにより、より一層突刺し強さが高く、耐電解液性及び成形性にも優れた電池用包装材料となる。
ステンレス鋼箔3を構成するオーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、突刺し強さが高く、耐電解液性及び成形性にも優れた電池用包装材料とする観点からは、SUS304が特に好ましい。
ステンレス鋼箔3の厚みについては、特に制限されないが、電池用包装材料をより一層薄型化しつつ、突刺し強さが高く、耐電解液性及び成形性にも優れた電池用包装材料とする観点からは、好ましくは40μm以下、より好ましくは10〜30μm程度、さらに好ましくは15〜25μm程度が挙げられる。
また、ステンレス鋼箔は、特に、冷間圧延処理されることで延展性が向上し、成形性が良化する。さらに冷間圧延した後、熱処理を施し、焼きなましをすることで流れ方向と幅方向のバランスがよくなり成形性が向上する。また、後述する化成処理の効果を安定化するために圧延処理後、あるいは熱処理後、表面の洗浄工程を入れることが重要である。洗浄方法は、アルカリや酸を用いた洗浄、さらにはアルカリ電解脱脂洗浄などが挙げられる。また、超音波処理やプラズマ処理などを併用することも可能である。好ましくは、アルカリ脱脂洗浄やアルカリ電解脱脂が好ましい。これらにより表面の濡れ性が向上して、化成処理が均一化でき、耐内容物性が安定化する。濡れ性は、水との接触角が好ましくは50°以下、より好ましくは30°以下、さらに好ましくは15°以下である。
[耐酸性皮膜層3a,3b]
本発明の電池用包装材料においては、ステンレス鋼箔3の少なくとも熱融着性樹脂層4側に、耐酸性皮膜層が形成されており、当該耐酸性皮膜層は、ステンレス鋼箔3の表面1m2当たり、リン化合物をリン換算で100mg以上含んでいる。これにより、突刺し強さが高く、耐電解液性にも優れた電池用包装材料となっている。
電池用包装材料の突刺し強さ、耐電解液性をさらに向上させる観点から、耐酸性皮膜層には、リン化合物がリン換算で100〜400mg含まれていることが好ましい。
ここで、耐酸性皮膜層とは、具体的には、ステンレス鋼箔3の表面に形成された層であって、フッ素化合物などの酸に対する耐性を備える皮膜により構成された層である。耐酸性皮膜層を形成するための化成処理としては、リン化合物が上記の含有量で含まれるものであれば、特に制限されないが、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのうち少なくとも1種のクロム酸化合物と、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのうち少なくとも1種のリン酸化合物とを用いた、リン酸クロメート処理が挙げられる。
また、化成処理としては、前記クロム酸化合物と前記リン酸化合物に加えて、さらに樹脂を含んだリン酸クロメート処理なども挙げられる。当該化成処理により、形成される耐酸性皮膜層には、樹脂が含まれ、突刺し強さ、耐電解液性を向上させ得る。さらに、樹脂の中でも、フェノール樹脂が好ましい。
フェノール樹脂としては、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体が挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
Figure 2021153065
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Figure 2021153065
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一般式(1)〜(4)中、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2は、同一又は異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1、R2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1、R2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、及び、ヒドロキシアルキル基のいずれかであることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、約500〜約100万、好ましくは約1000〜約2万が挙げられる。
また、他の化成処理として、リン酸中に、酸化アルミ(アルミナ処理)、酸化チタン、酸化セリウム(セリウム処理)、酸化スズ等の金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものやトリアジチンチオールをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、ステンレス鋼箔3の表面に耐酸性皮膜層を形成してもよい。
耐酸性皮膜層の形成には、1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。更に、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。
耐酸性皮膜層は、これらの中でも、クロム酸化合物、リン酸化合物、及びフェノール樹脂(好ましくは上記のアミノ化フェノール重合体)を組み合わせたリン酸クロメート処理により形成されたものであることが特に好ましい。ステンレス鋼箔は、表面に不動態膜を形成している。そのため、化成処理を施す場合は、不動態膜の一部を酸処理で活性化あるいは除去した後、クロムと金属の混合層を形成させる必要がある。一般の6価のクロム酸処理では、クロム酸の濃度を上げる必要があり環境に対する負荷が大きい。リン酸クロメート処理では、リン酸の濃度を上げることで対応が可能となり、6価のクロム酸処理に比べて環境負荷を低減できる。また上記組み合わせにより、ステンレス鋼箔表面には耐酸性皮膜層にフェノール樹脂層が形成される。樹脂層の形成により、表面の電気抵抗が高くなる。そのため、電池形成した場合、内部の絶縁性が高くなり、短絡や異物付着による腐食、腐食に起因する内容物の漏洩が起こりにくくなる。
ステンレス鋼箔3の表面に存在する耐酸性皮膜層の量については、特に制限されないが、電池用包装材料の突刺し強さ、耐電解液性をさらに向上させる観点から、例えばクロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせてリン酸クロメート処理を行う場合であれば、ステンレス鋼箔3の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で0.5〜50mg程度、好ましくは1.0〜40mg程度、リン化合物がリン換算で100mg以上、好ましくは100〜400mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が1〜200mg程度、好ましくは5.0〜150mg程度含まれていることが望ましい。
化成処理は、通常、耐酸性皮膜層の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等によって、ステンレス鋼箔3の表面に塗布した後に、ステンレス鋼箔3の温度が70〜300℃程度になるように加熱することにより行われる。また、ステンレス鋼箔3に化成処理を施す前に、予めステンレス鋼箔3を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法等による脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、ステンレス鋼箔3の表面の不動態膜を活性化あるいは除去することができ、化成処理を一層効率的に行うことが可能になる。
また、本発明においては、ステンレス鋼箔と隣接する層との間の接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために、必要に応じて、ステンレス鋼箔3の基材層1側の表面にも耐酸性皮膜層を有していてもよい。本発明においては、ステンレス鋼箔の両表面に耐酸性皮膜層が積層されていることがさらに好ましい。前述の通り、図1,図2においては、ステンレス鋼箔3の基材層1側の表面に耐酸性皮膜層3aが積層されており、ステンレス鋼箔3の熱融着性樹脂層4側の表面に耐酸性皮膜層3bが積層されている。
なお、ステンレス鋼箔3の基材層1側の表面の耐酸性皮膜層3aには、リン化合物がリン換算で100mg以上含まれていなくてもよいが、電池用包装材料の突刺し強さ、耐電解液性をさらに向上させる観点から、リン化合物がリン換算で100mg以上含まれていることが好ましく、100〜400mg含まれていることがより好ましい。
さらに、耐酸性皮膜層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。これらのカチオン性ポリマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
[熱融着性樹脂層4]
本発明の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層4同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。熱融着性樹脂層4は、複数の層により形成されていてもよい。
熱融着性樹脂層4は、後述する接着層5を有しない場合、ステンレス鋼箔3上の耐酸性皮膜層と接着可能であり、さらに熱融着性樹脂層4同士が熱溶着可能な樹脂により形成されている。また、熱融着性樹脂層4は、後述する接着層5を有する場合には、接着層5と接着可能であり、さらに熱融着性樹脂層4同士が熱溶着可能な樹脂により形成されている。熱融着性樹脂層4を形成する樹脂としては、このような特性を有するものであれば、特に制限されないが、例えば、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。また、後述する接着層5を有する場合、これらに加え、ポリオレフィン樹脂が挙げられる。熱融着性樹脂層4を形成する樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の形成に使用される酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸でグラフト重合すること等により変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、耐熱性の点で、好ましくは、少なくともプロピレンを構成モノマーとして有するポリオレフィン、更に好ましくは、エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー、及びプロピレン−エチレンのランダムコポリマーが挙げられる。変性に使用される不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸の中でも、好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸が挙げられる。これらの酸変性ポリオレフィンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の形成に使用されるポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の形成に使用されるフッ素系樹脂の具体例としては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ素系ポリオール等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5を有しない場合、熱融着性樹脂層4は、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、またはフッ素系樹脂のみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4に酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、またはフッ素系樹脂以外の樹脂成分を含有させる場合、熱融着性樹脂層4中の酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、またはフッ素系樹脂の含有量については、本発明の効果を妨げない限り特に制限されないが、例えば10〜95質量%、好ましくは30〜90質量%、更に50〜80質量%が挙げられる。
熱融着性樹脂層4において、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、またはフッ素系樹脂以外に、必要に応じて含有できる樹脂成分としては、例えば、ポリオレフィンが挙げられる。
ポリオレフィンは、非環状又は環状のいずれの構造であってもよい。非環状のポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。また、環状のポリオレフィンとは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのポリオレフィンの中でも、エラストマーとしての特性を備えるもの(即ち、ポリオレフィン系エラストマー)、とりわけプロピレン系エラストマーは、ヒートシール後の接着強度の向上、ヒートシール後の層間剥離の防止等の観点から、好ましい。プロピレン系エラストマーとしては、プロピレンと、1種又は2種以上の炭素数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)を構成モノマーとして含む重合体が挙げられ、プロピレン系エラストマーを構成する炭素数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)としては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのエチレン系エラストマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4に、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、またはフッ素系樹脂以外の樹脂成分を含有させる場合、当該樹脂成分の含有量については、本発明の目的を妨げない範囲で適宜設定される。例えば、熱融着性樹脂層4にプロピレン系エラストマーを含有させる場合、熱融着性樹脂層4中のプロピレン系エラストマーの含有量としては、通常5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは20〜50質量%が挙げられる。
ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4との間に、後述の接着層5を有する場合、熱融着性樹脂層4を形成する樹脂としては、上記の酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂などに加えて、ポリオレフィン、変性環状ポリオレフィンなども挙げられる。これらの樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5を有する場合、熱融着性樹脂層4を形成するポリオレフィンとしては、上記で例示したものが挙げられる。変性環状ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンを不飽和カルボン酸でグラフト重合したものである。変性される環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体である。このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。変性に使用される不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸の中でも、好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸が挙げられる。これらの変性環状ポリオレフィンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5を有する場合、熱融着性樹脂層4は、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン、または変性環状ポリオレフィンのみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4にこれら以外の樹脂成分を含有させる場合、熱融着性樹脂層4中のこれらの樹脂の含有量については、本発明の効果を妨げない限り特に制限されないが、例えば10〜95質量%、好ましくは30〜90質量%、更に50〜80質量%が挙げられる。必要に応じて含有できる樹脂成分としては、例えば、上記のエラストマーとしての特性を備えるものが挙げられる。また、必要に応じて含有できる樹脂成分の含有量については、本発明の目的を妨げない範囲で適宜設定される。例えば、熱融着性樹脂層4にプロピレン系エラストマーを含有させる場合、熱融着性樹脂層4中のプロピレン系エラストマーの含有量としては、通常5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは20〜50質量%が挙げられる。
本発明の電池用包装材料のヒートシール後において、ヒートシール面の位置ズレなどを効果的に抑制する観点から、熱融着性樹脂層4の融点Tm1としては、好ましくは90〜245℃、より好ましくは100〜220℃が挙げられる。また、同様の観点から、熱融着性樹脂層4の軟化点Ts1としては、好ましくは70〜180℃、より好ましくは80〜150℃が挙げられる。同様の観点から、熱融着性樹脂層4の230℃におけるメルトマスフローレート(MFR)は、好ましくは1〜25g/10分程度、より好ましくは2〜15g/10分が挙げられる。
ここで、熱融着性樹脂層4の融点Tm1は、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂成分の融点をJIS K7121:2012に準拠しDSC法により測定される値である。また、熱融着性樹脂層4が、複数の樹脂成分を含むブレンド樹脂で形成されている場合には、その融点Tm1は、それぞれの樹脂の融点を上記のようにして求め、これらを質量比で加重平均して算出することができる。
また、熱融着性樹脂層4の軟化点Ts1は、熱機械的分析法(TMA:Thermo-Mechanical Analyzer)により測定される値である。また、熱融着性樹脂層4が、複数の樹脂成分を含むブレンド樹脂で形成されている場合には、その軟化点Ts1は、それぞれの樹脂の軟化点を上記のようにして求め、これらを質量比で加重平均して算出することができる。
熱融着性樹脂層4のメルトマスフローレートは、JIS K7210−1:2014に準拠し、メルトマスフローレート測定器により測定される値である。
熱融着性樹脂層4の厚みとしては、例えば、10〜120μm、好ましくは10〜80μm、更に好ましくは20〜60μmが挙げられる。
熱融着性樹脂層4は、単層であってもよいし、多層であってもよい。また、熱融着性樹脂層4は、必要に応じてスリップ剤などを含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4がスリップ剤を含む場合、電池用包装材料の成形性を高め得る。さらに、本発明においては、熱融着性樹脂層4がスリップ剤を含むことにより、電池用包装材料の成形性だけでなく、絶縁性をも高め得る。熱融着性樹脂層4がスリップ剤を含むことによって電池用包装材料の絶縁性が高められる詳細な機序は必ずしも明らかではないが、例えば次のように考えることができる。すなわち、熱融着性樹脂層4がスリップ剤を含む場合、熱融着性樹脂層4に外力が加わった際に、熱融着性樹脂層4内において樹脂の分子鎖が動きやすくなり、クラックが生じにくくなると考えられる。特に、熱融着性樹脂層4が複数種類の樹脂により形成される場合には、これらの樹脂の間に存在する界面において、クラックが生じやすいが、スリップ剤がこのような界面に存在することにより、界面において樹脂が動きやすくなることで、外力が加わった際にクラックに至ることを効果的に抑制できるものと考えられる。このような機序により、熱融着性樹脂層にクラックが生じることによる絶縁性の低下が抑制されると考えられる。
スリップ剤としては、特に制限されず、公知のスリップ剤を用いることができ、例えば、上記の基材層1で例示したものなどが挙げられる。スリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱融着性樹脂層4におけるスリップ剤の含有量としては、特に制限されず、電子包装用材料の成形性及び絶縁性を高める観点からは、好ましくは0.01〜0.2質量%程度、より好ましくは0.05〜0.15質量%程度が挙げられる。
[接着層5]
本発明の電池用包装材料においては、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4とを強固に接着させることなどを目的として、図2に示されるように、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4との間に接着層5をさらに設けてもよい。接着層5は、1層により形成されていてもよいし、複数層により形成されていてもよい。
接着層5は、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4とを接着可能な樹脂によって形成される。接着層5を形成する樹脂としては、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4とを接着可能な樹脂であれば特に制限されないが、好ましくは上記の酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂等が挙げられる。接着層5を形成する樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5は、これらの樹脂の少なくとも1種のみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよい。接着層5にこれら以外の樹脂成分を含有させる場合、接着層5中の酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、及びシリコン系樹脂の含有量については、本発明の効果を妨げない限り特に制限されないが、例えば10〜95質量%、好ましくは30〜90質量%、更に50〜80質量%が挙げられる。
また、接着層5は、上記の樹脂に加えて、さらに硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。接着層5を形成する樹脂組成物が硬化剤を含むことにより、接着層5の機械的強度が高められ、電池用包装材料の絶縁性を効果的に高めることができる。硬化剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
硬化剤は、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、またはシリコン系樹脂を硬化させるものであれば、特に限定されない。硬化剤としては、例えば、多官能イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されない。カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基を少なくとも2つ以上有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。特に好ましいカルボジイミド化合物の具体例としては、下記一般式(5):
Figure 2021153065
[一般式(5)において、nは2以上の整数である。]
で表される繰り返し単位を有するポリカルボジイミド化合物、
下記一般式(6):
Figure 2021153065
[一般式(6)において、nは2以上の整数である。]
で表される繰り返し単位を有するポリカルボジイミド化合物、
及び下記一般式(7):
Figure 2021153065
[一般式(7)において、nは2以上の整数である。]
で表されるポリカルボジイミド化合物が挙げられる。一般式(4)〜(7)において、nは、通常30以下の整数であり、好ましくは3〜20の整数である。
エポキシ化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。
オキサゾリン化合物は、オキサゾリン骨格を有する化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン化合物としては、具体的には、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
接着層5の機械的強度を高めるなどの観点から、硬化剤は、2種類以上の化合物により構成されていてもよい。
接着層5において、硬化剤の含有量は、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、またはシリコン系樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜50質量部の範囲にあることが好ましく、0.1質量部〜30質量部の範囲にあることがより好ましい。また、接着層5において、硬化剤の含有量は、酸変性ポリオレフィンなどの各樹脂中のカルボキシル基1当量に対して、硬化剤中の反応基として1当量〜30当量の範囲にあることが好ましく、1当量〜20当量の範囲にあることがより好ましい。これにより、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高め得る。
接着層5が硬化剤を含む場合、接着層5は、2液硬化型接着樹脂により形成してもよいし、1液硬化型接着樹脂により形成してもよい。さらに、接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、UVやEBなどの電子線硬化型等のいずれであってもよい。
接着層5の融点Tm2としては、好ましくは90〜245℃、より好ましくは100〜230℃が挙げられる。また、同様の観点から、接着層5の軟化点Ts2としては、好ましくは70〜180℃、より好ましくは80〜150℃が挙げられる。
なお、接着層5の融点Tm2、軟化点Ts2の算出方法は、熱融着性樹脂層4の場合と同様である。
接着層5の厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05〜20μmが挙げられる。なお、接着層5の厚みが0.01μm未満であると、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4との間を安定して接着させることが困難になる場合がある。
本発明の電池用包装材料において、以上のような各層を備える積層体の総厚みとしては、特に制限されないが、電池用包装材料の薄型化と、高い突刺し強さ、優れた耐電解液性及び成形性などを好適に発揮する観点からは、好ましくは110μm以下、より好ましくは42〜85μm程度、さらに好ましくは45〜70μm程度が挙げられる。
本発明の電池用包装材料は、JIS Z 1707:1997の規定に準拠した測定方法により測定される前記積層体の突刺し強さが、好ましくは18N以上、より好ましくは20N以上である。
さらに、電池用包装材料の薄型化と、高い突刺し強さ、優れた耐電解液性及び成形性などを好適に発揮する観点からは、積層体の総厚みをT(μm)、ステンレス鋼箔の厚みをTS(μm)、JIS Z 1707:1997の規定に準拠した測定方法により測定される前記積層体の突刺し強さをF(N)とした場合に、突刺し強さF(N)を、積層体の総厚みT(μm)で除した値が、0.3(N/μm)以上であり、かつ、突刺し強さF(N)を、ステンレス鋼箔の厚みTS(μm)で除した値が、0.7(N/μm)以上であることが好ましい。
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されないが、例えば、少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、ステンレス鋼箔として、少なくとも熱融着性樹脂層側に、耐酸性皮膜層が形成されており、当該耐酸性皮膜層が、ステンレス鋼箔の表面1m2当たり、リン化合物をリン換算で100mg以上含んでいるものを用いる方法が挙げられる。より具体的には、以下の方法が例示される。
まず、基材層1、必要に応じて接着剤層2、及び表面に耐酸性皮膜層を備えるステンレス鋼箔3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。接着剤層2を有する場合の積層体Aの形成は、具体的には、基材層1、接着剤層2、及び耐酸性皮膜層を備えるステンレス鋼箔3をサーマルラミネート法、サンドイッチラミネート法、ドライラミネート法、溶融押出し法、共押出し法又はこれらの組み合わせ等によって積層させることにより行われる。なお、積層体Aの形成において、エージング処理、加水処理、加熱処理、電子線処理、紫外線処理等を行うことにより、接着剤層2による基材層1とステンレス鋼箔3との接着の安定性が高め得る。また、ステンレス鋼箔3の上に直接基材層1を積層して積層体Aを形成する方法としては、サーマルラミネート法、溶液コーティング法、溶融押出し法、共押出し法又はこれらの組み合わせ等によって積層させる方法が挙げられる。この際、エージング処理、加水処理、加熱処理、電子線処理、紫外線処理等を行うことにより、基材層1とステンレス鋼箔3との接着の安定性を高め得る。
ドライラミネート法による積層体Aの形成においては、例えば、接着剤層2を構成する樹脂を水または有機溶剤に溶解または分散させ、当該溶解液または分散液を基材層1の上にコーティングし、水または有機溶剤を乾燥させることにより、基材層1に上に接着剤層2を形成した後、ステンレス鋼箔3を加熱圧着して行うことができる。
サーマルラミネート法による積層体Aの形成は、例えば、基材層1と接着剤層2とが積層された多層フィルムを予め用意し、加熱ロールにより、基材層1とステンレス鋼箔3で接着剤層2を挟持しながら熱圧着することにより行うことができる。また、サーマルラミネート法による積層体Aの形成は、ステンレス鋼箔3と接着剤層2とが積層された多層フィルムを予め用意し、加熱したステンレス鋼箔3と接着剤層2に基材層1を重ね合わせて基材層1とステンレス鋼箔3で接着剤層2を挟持しながら熱圧着することにより行ってもよい。
なお、サーマルラミネート法において予め用意する基材層1と接着剤層2とが積層された多層フィルムは、基材層1を構成する樹脂フィルムに接着剤層2を構成する接着剤を溶融押し出し又は溶液コーティング(液状塗工)により積層して乾燥させた後、接着剤層2を構成する接着剤の融点以上の温度で焼付けて形成する。焼付けを行うことにより、ステンレス鋼箔3と接着剤層2との接着強度が向上する。また、サーマルラミネート法において予め用意するステンレス鋼箔3と接着剤層2とが積層された多層フィルムについても、同様にステンレス鋼箔3を構成する金属箔に接着剤層2を構成する接着剤を溶融押し出し又は溶液コーティングにより積層して乾燥させた後、接着剤層2を構成する接着剤の融点以上の温度で焼付けることにより形成される。
また、サンドイッチラミネート法による積層体Aの形成は、例えば、接着剤層2を構成する接着剤をステンレス鋼箔3の上面に溶融押し出しして基材層1を構成する樹脂フィルムをステンレス鋼箔に貼り合わせることにより行うことができる。このとき、樹脂フィルムを貼り合わせて仮接着した後、再度加熱して本接着を行うことが望ましい。なお、サンドイッチラミネート法においても接着剤層2を異なる樹脂種で多層化してもよい。この場合、基材層1と接着剤層2とが積層された多層フィルムを予め用意し、ステンレス鋼箔3の上面に接着剤層2を構成する接着剤を溶融押出して多層の樹脂フィルムとサーマルラミネート法により積層すればよい。これにより、多層フィルムを構成する接着剤層2と、ステンレス鋼箔3の上面に積層された接着剤層2とが接着して2層の接着剤層2が形成される。接着剤層2を異なる樹脂種で多層化する場合には、ステンレス鋼箔3と接着剤層2とが積層された多層フィルムを予め用意し、基材層1上に接着剤層2を構成する接着剤を溶融押出して、これをステンレス鋼箔3上の接着剤層2と積層してもよい。これにより、多層の樹脂フィルと基材層1との間に2層の異なる接着剤で構成される接着剤層2が形成される。
次いで、積層体Aのステンレス鋼箔3上に、熱融着性樹脂層4を積層させる。積層体Aのステンレス鋼箔3上への熱融着性樹脂層4の積層は、共押出し法、サーマルラミネート法、サンドイッチラミネート法、コーティング法、又はこれらの組み合わせ等によって行うことができる。例えば、接着層5を設けない場合、熱融着性樹脂層4は、ステンレス鋼箔3の上に熱融着性樹脂層4を溶融押出し法、サーマルラミネート法、コーティング法などにより形成することができる。また、接着層5を設ける場合、ステンレス鋼箔3の上に接着層5を溶融押出し法、サーマルラミネート法、コーティング法などにより形成した後、同様の方法で熱融着性樹脂層4を形成することができる。また、ステンレス鋼箔3の上に、接着層5と熱融着性樹脂層4とを同時に溶融押出しする共押出し法を行ってもよい。また、ステンレス鋼箔3上に接着層5を溶融押出しすると共に、フィルム状の熱融着性樹脂層4を貼り合わせるサンドイッチラミネート法を行うこともできる。熱融着性樹脂層4が2層により形成されている場合、例えば、ステンレス鋼箔3上に接着層5と熱融着性樹脂層4の1層を共押出しした後、熱融着性樹脂層4の他の1層をサーマルラミネート法で貼り付ける方法が挙げられる。また、ステンレス鋼箔3上に接着層5と熱融着性樹脂層4の1層を共押出しすると共に、フィルム状の熱融着性樹脂層4の他の1層を貼り合わせる方法なども挙げられる。なお、熱融着性樹脂層4を3層以上にする場合、さらに溶融押出し法、サーマルラミネート法、コーティング法などによって熱融着性樹脂層4を形成することができる。
上記のようにして、基材層1/必要に応じて形成される接着剤層2/耐酸性皮膜層を備えるステンレス鋼箔3/必要に応じて形成される接着層5/熱融着性樹脂層4からなる積層体が形成される。接着剤層2の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触、熱風、近又は遠赤外線照射、誘電加熱、熱抵抗加熱等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150〜250℃で1〜10時間が挙げられる。
また、本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を包装する際には、2枚の電池用包装材料は、同一のものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。異なる2枚の電池用包装材料を用いて電池素子を包装する場合の各電池用包装材料の積層構造の具体例としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
一方の電池用包装材料:基材層1(ナイロン層)/接着剤層2(2液硬化型ポリエステル樹脂層)/耐酸性皮膜層を備えるステンレス鋼箔3/接着層5(酸変性ポリプロピレン層)/熱融着性樹脂層4(ポリプロピレン層)他方の電池用包装材料:基材層1(アクリル−ウレタンコート層)/耐酸性皮膜層を備えるステンレス鋼箔3/接着層5(フッ素系樹脂層)/熱融着性樹脂層4(ポリプロピレン)
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層4同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料の熱融着性樹脂層4が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
なお、上述の通り、本発明の電池用包装材料を2つ用意し、熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で熱融着性樹脂層4を熱溶着させることによって、2つの空間を併せた空間に電子素子を収容してもよい。また、本発明の電池用包装材料と、上記のようなシート状の積層体とを用意し、熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で熱融着性樹脂層4を熱溶着させることによって、1つの空間に電子素子を収容してもよい。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
本発明において、さらに、ステンレス鋼箔3の基材層1側に位置する層のうち、少なくとも一層が黒色であることが好ましい。このような構成を備えていることにより、ステンレス鋼箔3の放熱性が向上し、ヒートシール時に加熱されたステンレス鋼箔3が長期間に亘って高温に維持されることが抑制され、ヒートシール後において、ヒートシール面が動いて位置ズレが生じることを効果的に抑制することができる。
ステンレス鋼は、アルミニウムに比して単位体積当たりの熱容量が大きいため、温度が変動しにくい。また、ステンレス鋼はアルミニウムに比べヤング率(バネ定数)が大きく、ヒートシール時の圧力を開放した後、反発し、常態に戻ろうとする。このため、従来汎用されていたアルミニウム箔をバリア層に使用する場合に比して、ステンレス鋼箔を用いる場合には、ヒートシール時に加熱されたステンレス鋼箔が長期間に亘って高温に維持され、かつその状態で剥がれようとする力が働きやすい。よって、ステンレス鋼箔を用いる場合には、ヒートシール後に熱融着性樹脂層4が冷却されにくく、流動性の高い状態が維持されることがあり、ヒートシール面が動いて位置ズレが生じ易いという問題がある。冷却中にシール面の位置がずれた場合、シール時に発生する所謂「ポリ溜まり」の形状が不均一となる。このため、電池にした場合のガスの発生や温度上昇で内圧が高くなった時、不均一な部分からガスや内容物の漏れが発生する可能性がある。また、位置ズレを生じながら熱融着性樹脂層が硬化するため、熱融着性樹脂層に応力が残りやすい。このため、シール強度の均一性が低くなり、これもガスや内容物の漏れの原因となる可能性がある。
これに対して、ステンレス鋼箔3の基材層1側に位置する層のうち、少なくとも一層が黒色とすることで、放熱性に優れており、ステンレス鋼箔が冷却されやすい。このため、熱融着性樹脂層4の流動性の高い状態が維持されにくくなり、ヒートシール後のヒートシール面の位置ズレが効果的に抑制される。
ステンレス鋼箔3の基材層1側に位置する層のうち、少なくとも一層が黒色であればよい。
電池用包装材料のヒートシール時の熱をステンレス鋼箔3から効果的に放熱させる好ましい構成としては、例えば以下の態様が挙げられる。
(1)基材層1の外面(ステンレス鋼箔3とは反対側の表面)に黒色の印刷層を設ける態様。当該態様においては、後述の黒色着色材を含むインキを用いて、基材層1の外面に黒色の印刷層を設ける。
(2)基材層1を黒色に着色する態様。当該態様においては、基材層を構成する樹脂に後述の黒色着色材を含ませて、基材層1を黒色に着色する。
(3)基材層1の内面(ステンレス鋼箔3の表面)に黒色の印刷層を設ける態様。当該態様においては、後述の黒色着色材を含むインキを用いて、基材層1の内面に黒色の印刷層を設ける。
(4)接着剤層2を黒色に着色する態様。当該態様においては、接着剤層2を構成する樹脂に後述の黒色着色材を含ませて、接着剤層2を黒色に着色する。
(5)接着剤層2とステンレス鋼箔との間に黒色の着色層を設ける態様。当該態様においては、後述の黒色着色材を含む樹脂を用いて、ステンレス鋼箔3の接着剤層2側の表面に黒色の着色層を設ける。
これらの中でも、異物の発生を抑制する観点から、上記の(3)、(4)、及び(5)の態様が特に好ましい。
基材層1、接着剤層2、印刷層、着色層などの層を黒色にする方法としては、特に制限されず、例えば、各層を構成する樹脂またはインキに黒色着色材などを配合すればよい。黒色着色材としては、特に制限されないが、好ましくは、カーボンブラックのような炭素系黒色顔料、鉄酸化物(例えばマグネタイト型四酸化三鉄)や、銅とクロムからなる複合酸化物、銅、クロム、亜鉛からなる複合体、チタン系酸化物などの酸化物系黒色顔料、黒色染料などが挙げられる。黒色顔料の粒子径としては、特に制限されないが、好ましくは1nm〜20μm程度が上げられる。なお、黒色顔料の粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定した値を意味する。また、さらに効果を高めるためにシリカ、アルミナ、バリウム等の微粒子、多孔質微粒子、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属フィラーを添加してもよい。また、(1)の態様のように印刷層を外面に形成する場合は、前述のような低摩擦化や、種々の機能を付与できる。
(1)、(3)及び(5)の態様に使用する樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。必要に応じて架橋剤や硬化剤を併用することが望ましい。
各層における黒色着色材の配合割合としては、層が黒色になれば特に制限されないが、例えば、5〜50質量%程度、より好ましくは8〜20質量%程度が挙げられる。
ステンレス鋼箔3の基材層1側に位置する層のうち、少なくとも一層が黒色とする態様と、熱融着性樹脂層4の230℃におけるメルトマスフローレートを15g/10分以下とする態様とを併用することにより、ヒートシール後において、熱融着性樹脂層4のヒートシール面が動いて位置ズレが生じることを、より一層効果的に抑制することができる。
本発明において、さらに、熱融着性樹脂層4の230℃におけるメルトマスフローレートが、15g/10分以下であることが好ましい。このような構成を備えていることにより、熱融着性樹脂層4の流動性が低く、ヒートシール時に加熱されたステンレス鋼箔が長期間に亘って高温に維持された場合にも、熱融着性樹脂層4のヒートシール面が動いて位置ズレが生じることが効果的に抑制されている。
熱融着性樹脂層4の230℃におけるメルトマスフローレートとしては、好ましくは1〜15g/10分程度、より好ましくは2〜15g/10分が挙げられる。
熱融着性樹脂層4の当該メルトマスフローレートを上記の値に設定する方法としては、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂の組成を適宜設定すればよい。特に、ポリプロピレンを用いる場合、MFRが低い方がヒートシール後の加熱状態でシーラントが動きにくい。また、ヒートシール時の所謂「ポリ溜まり」の形成も安定化する。そのためヒートシールでの密封性が安定化する。メルトマスフローレートが高いと、ポリ溜まりの形成が小さく、シール位置にズレが生じた場合、ポリ溜まりの形成が小さいため、不均一なポリ溜まりとなり易い。電池内部でのガスの発生は、温度上昇により内圧が高くなった場合、不均一な部位から破袋する可能性がある。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜6及び比較例1〜5]
基材層としてのポリエチレンテレフタレート(PET、厚み9μm)に、主剤がポリエステル樹脂、硬化剤がTDI系イソシアネートからなる接着剤をコーティングし(乾燥後の厚みが3μm)、乾燥後、表1に記載のリン化合物の含有量の耐酸性皮膜層(後述のリン酸クロメート処理で形成)を設けたバリア層(厚み20μm)を積層し、80℃で3日間エージング処理を行った。その後、もう片面に、酸変性したプロピレンとエチレン共重合体と低密度ポリエチレンがブレンドされた接着層(酸変性PP、厚み14μm)とランダムポリプロピレンからなる熱融着性樹脂層を共押出し法にて積層(厚み10μm)した。さらに接着力を上げるために、酸変性PPの軟化点以上の180℃で30秒加熱して、電池用包装材料を製造した。
(リン酸クロメート処理)
アミノ化フェノール重合体、三価クロム化合物、及びリン化合物を含む処理液を、耐酸性皮膜層に含まれるリン化合物の含有量(リン換算)が表1に示す量となるように、ロールコート法によりステンレス鋼箔またはアルミニウム箔の表面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。なお、耐酸性皮膜層に含まれるリン化合物(リン換算)の含有量は、島津製作所社製蛍光X線分析装置XRF−1800によって測定した値であり、表1には、5箇所(N=5)について測定した最大値と最小値を示す。なお、リン化合物の含有量(リン換算)(mg/m2)の実測値は、リン化合物の含有量が既知の耐酸性皮膜層について、蛍光X線分析装置でリン化合物の強度を測定して、質量と強度との関係について検量線を作成し、当該検量線から算出することができる。
(耐電解液性の評価)
上記で得られた各電池用包装材料を、15mm×80mmの長方形に裁断して試験片を作製した。次に、電解液(1M LiPF6 となるようにしたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート(1:1:1))80mlを入れたガラス瓶の中に、各試験片を投入し、85℃のオーブン内で所定時間(それぞれ、表1に記載の時間)放置した。次に、試験片を電解液から取りだし、オートグラフ(SHIMAZU AUTOGRAPH AG−X Plus)を用いて、バリア層とシーラント層とを剥離して、引張強度を測定した。なお、引張強度の測定条件は、引張方向:180°、引張速度:50mm/分、測定雰囲気:室温とした。結果を表1に示す。
(突刺し試験)
上記で得られた各電池用包装材料を裁断し、120mm×80mmの短冊片を作製して、これを試験サンプルとした。突刺し試験機(イマダ社製のMX2-500N)を用い、JIS Z 1707:1997に準拠した方法により、各試験サンプルの突刺し強さを測定した。結果を表1に示す。
Figure 2021153065
1 基材層
2 接着剤層
3 ステンレス鋼箔
3a,3b 耐酸性皮膜層
4 熱融着性樹脂層
5 接着層

Claims (1)

  1. 少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
    前記ステンレス鋼箔の少なくとも前記熱融着性樹脂層側に、耐酸性皮膜層が形成されており、
    前記耐酸性皮膜層は、前記ステンレス鋼箔の表面1m2当たり、リン化合物をリン換算で100mg以上含んでいる、電池用包装材料。
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