JP2021151768A - 積層体、及び積層体の製造方法 - Google Patents

積層体、及び積層体の製造方法 Download PDF

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卓也 植松
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Abstract

【課題】粒子脱落の不具合を抑制しつつ、撥液性を向上させることが可能な積層体を提供する。【解決手段】積層体10は、基材11と、基材11の少なくとも一方の面11Aにこの順に設けられる樹脂層12及びカバー層13を有し、樹脂層12が、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成され、カバー層13が、少なくとも表面にフッ素系化合物を有し、基材11の一方の面11A側における積層体の最表面が凹凸を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、表面に凹凸を有する積層体、及びその製造方法に関する。
医薬品、食料品、化学品等の分野では、内容物に応じた包装材料が開発されている。とりわけ、近年、ケチャップ、マヨネーズ等の調味料を入れる容器や、ヨーグルト、プリン等の蓋材などの包装材には、内容物が付着するのを防止することが求められている。
この種の包装材として、例えば特許文献1には、基材層とその下に形成せられたヒートシール材層とを備えた蓋材において、ヒートシール材層がワックス成分を40〜70%含有するとともに、ヒートシール材層の平均表面粗さ(Ra)が0.05〜5μmで、かつ最大表面粗さ(Rmax)が10μm以下であることを特徴とする内容物付着防止用蓋材が開示されている。
かかる蓋材は、ヒートシール材層がワックス成分を40〜70%含有することでヒートシール材層の表面の摩擦係数が低くなり、ヨーグルト等の柔らかい内容物が蓋のヒートシール材層面に付着し難くなる。さらに、ヒートシール材層の平均表面粗さが0.05〜5μmで、かつ、最大表面粗さが10μm以下であることにより、シール材層の表面が平滑になり内容物が蓋のヒートシール材層面に付着し難く、仮に一旦付着したとしても自然に流れ落ちやすくなるという効果を奏することが示されている。
また、特許文献2には、基材と、耐有機溶剤性シーラントフィルム層と、付着防止層とをこの順に備え、前記付着防止層が、熱可塑性樹脂、撥水性微粒子および前記撥水性微粒子よりも平均粒子径の大きいビーズ粒子を含むことを特徴とする、撥水性積層体について開示されている。
かかる積層体は、付着防止層が大きさの異なる2種類の粒子を含んでなるため、表面に特有の凹凸構造が形成され、粘性を有する内容物の付着防止性及び撥水性を顕著に向上させることができることが示されている。
さらに、特許文献3には、内容物に接する内側層がポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであるプラスチック容器において、該ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーにシラン系モノマーガスをプラズマ化することにより薄膜で被覆したことを特徴とする薄膜層を有するプラスチック容器について開示されている。
かかるプラスチック容器は、内容物に接する内側のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー表面に薬品の透過を防止する酸化珪素の被膜を形成することで、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの物理的撥水性を恒常的に利用でき内容物の付着防止機能を向上させることができる。
特開2007−153385号公報 特開2017−226199号公報 特開2003−145679号公報
上記の通り特許文献1〜3では、様々な手法を用いて撥液性を向上させることで、内容物の付着を低減する試みがなされている。
しかし、特許文献1の手法では、内容物の付着が低減されてはいるものの、さらなる改善が必要であった。
また、特許文献2の手法では、粒子脱落の不具合が生じることがあった。
さらに、特許文献3の手法では、対象物はブロー成型や射出成型などで成形される内側層がポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであるプラスチック容器に限定されていた。
そこで、本発明は、粒子脱落の不具合を抑制しつつ、撥液性を向上させることが可能な積層体を提供することを課題とする。
本発明の要旨は、以下の[1]〜[15]に示すとおりである。
[1]基材と、前記基材の少なくとも一方の面にこの順に設けられる樹脂層及びカバー層と、を備える積層体であって、
前記樹脂層が、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成され、
前記カバー層が、少なくとも表面にフッ素系化合物を有し、
前記基材の前記一方の面側における前記積層体の最表面が凹凸を有する積層体。
[2]前記樹脂層が、ウレタン結合を有する樹脂を含有する上記[1]に記載の積層体。
[3]純水との接触角が100°以上である、上記[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]前記樹脂層の厚み(tb)が0.1μm以上15μm以下である上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の積層体。
[5]前記カバー層の厚み(ta)が10nm以上250nm以下である上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の積層体。
[6]前記樹脂層の厚み(tb、単位:μm)に対する前記カバー層の厚み(ta、単位:nm)の比(ta/tb)が0.1以上3500以下である上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の積層体。
[7]前記カバー層が、無機物含有層である上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の積層体。
[8]前記基材が、樹脂フィルムである、上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の積層体。
[9]前記樹脂フィルムが、ポリエステルフィルムである上記[8]に記載の積層体。
[10]液体包装用である、上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の積層体。
[11]基材の少なくとも一方の面に熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層前駆体を形成する工程と、
半硬化又は未硬化の前記樹脂層前駆体に対してさらにドライプロセスによる表面処理を行い、前記基材の一方の面側の表面に凹凸を形成する工程と、を備え、
前記ドライプロセスにより前記基材の一方の面側にカバー層が成膜され、又は前記表面処理を行った前記基材の一方の面側にカバー層を成膜し、
前記カバー層が、表面にフッ素系化合物を有する
積層体の製造方法。
[12]前記ドライプロセスによる表面処理が、化学的気相蒸着、物理的気相蒸着、及びプラズマ処理のいずれかである上記[11]に記載の積層体の製造方法。
[13]前記塗布により形成した樹脂層前駆体を半硬化させる工程を備え、
前記表面処理を前記半硬化させた樹脂層前駆体に対して行う上記[11]又は[12]に記載の積層体の製造方法。
[14]前記カバー層の表面をフッ化処理する工程をさらに備える、上記[11]〜[13]のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
[15]前記フッ化処理が、化学的気相蒸着、物理的気相蒸着、プラズマ処理、及びウェット処理のいずれかで行う上記[14]に記載の積層体の製造方法。
本発明では、粒子脱落の不具合を抑制しつつ、撥液性を向上させることが可能な積層体を提供できる。
本発明の積層体が有する凹凸を示す概略図である。 本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。 本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。 実施例3における凹凸構造を示した画像である。 実施例4における凹凸構造を示した画像である。 実施例5における凹凸構造を示した画像である。 比較例1における凹凸構造を示した画像である。 比較例3における凹凸構造を示した画像である。
次に、本発明の実施形態に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明が次に説明する実施形態に何ら限定されるものではない。
本発明の一実施形態に係る積層体は、基材と、基材の少なくとも一方の面にこの順に設けられる樹脂層及びカバー層とを有する。カバー層は、少なくとも表面にフッ素化合物を含有する。
<最表面の凹凸>
積層体は、基材の上記一方の面側における積層体の最表面に凹凸を有する。本実施形態の積層体は、樹脂層の上に、少なくとも表面にフッ素化合物を有するカバー層が設けられ、かつ最表面に凹凸が形成されることで、撥液性を良好にできる。そのため、例えば、包装材料用途においては積層体の表面に内容物が付着しにくくなる。
上記最表面の凹凸は、リンクル(wrinkle)構造を有することが好ましい。ここでリンクル構造とは、樹脂層が座屈することで生じるしわ形状であり、粒子により形成される凹凸形状のように、点状の突起が多数ある凹凸形状とは異なる形状である。本実施形態では、樹脂層自体の座屈により凹凸を形成することで、粒子脱落のおそれがない凹凸表面を形成できる。また、このリンクル構造は自発的に形成されるため、転写シートのような型は不要である。
図1に、リンクル構造の概略図を示す。リンクル構造は、複数のうねりcで構成されており、当該複数のうねりcは、それぞれ突条部aと、溝部bとを有する。突条部a及び溝部bは、それぞれ直線、曲線又はこれらを組み合わせた形状を有する。突条部aは、不規則に形成される。突条部aは、連続的に形成されてもよいし、不連続に形成されてもよい。
凹凸がリンクル構造を含むことで撥液性がより優れたものとなる。その原理は定かではないが、凹凸がリンクル構造を含むと、その凹凸間に多くの空気が介在することになり、それにより、水などの各種液体に接触したときでも、液体に対する接触面積が小さくなることで、優れた撥液性を発現するものと推察される。
リンクル構造は、後述するように、樹脂層に面方向に沿う圧縮応力が作用されたことに伴い形成される。ここで、圧縮応力は、面方向に沿う多数の方向に沿って作用され、それにより、突条部a及び溝部bが不規則に形成されると推定される。
リンクル構造の有無は、積層体の最表面を、走査電子顕微鏡(SEM)などの顕微鏡により、例えば1000〜10万倍程度の倍率で確認できる。なお、リンクル構造を有する場合には、突条部aと溝部bがうねりcを形成するように現れる。うねりcは、一辺が例えば3〜500μm、好ましくは4〜100μm程度の方形又は矩形の観察画像のいずれかにおいて観察されるとよい。
なお、リンクル構造を形成する突条部aは、不規則であり、また上記うねりcもマイクロメーターオーダーの周期で現れる。そのため、突条部a及び溝部bにより形成されるうねりcは、上記観察画像において縦方向、横方向、及び斜め方向などの多方向(例えば、3方向)に沿って見ても、突条部aの頂部と溝部bの底部とがそれぞれ複数回(例えば、5回以上)現れる。なお、うねりcの周期は、典型的には一定ではなく、したがって、突条部aの頂部間の距離、溝部bの底部間の距離なども一定ではない。
なお、「うねりcの周期」とは、図1に示すように、突条部aの頂点と、該突条部aに隣接する溝部bに隣接する突条部aの頂点との距離dをいう。
積層体の最表面の凹凸が自発的に形成されたリンクル構造を有していることは、例えばSsk(スキューネス)の値に現れる。
Sskは、表面の凹凸の偏り度を示すパラメータである。この偏り度Sskは、二乗平均平方根高さSqの三乗によって無次元化した基準面において、Z(x,y)の三乗平均を表したもので、歪度(わいど)を意味し、平均面を中心とした山部と谷部の対称性を表す数値である。そのため、偏り度Ssk<0の場合は平均線に対して下側に偏っている、つまり凸の山部よりも凹の谷部が多く存在することを意味する。他方、Ssk>0の場合は平均線に対して上側に偏っている、つまり凹の谷部よりも凸の山部が多く存在することを意味する。そして偏り度Ssk=0の場合は、平均線に対して対称(正規分布)な状態を意味する。
本発明の積層体の最表面が有するリンクル構造は、樹脂層が座屈することで生じるしわ形状である。そのため、粒子により形成される凹凸形状に比べて、凸の山部と凹の谷部の対称性が高い。よって、本発明の積層体が有するリンクル構造のSskは、粒子により形成される凹凸形状のSskよりも0に近い値となると考えられる。
このような観点から、積層体の最表面のSskの絶対値が5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、1以下であることがさらに好ましく、0.8以下であることがよりさらに好ましい。さらにその中でも、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。
なお、SskはISO25178に基づいたパラメータであり、例えば以下の方法で算出できる。
三次元非接触表面形状計測機((株)菱化システム製のVertScan2.0 R5200G)を使用し、装置CCDカメラ SONY HR−50 1/3インチ(対物レンズ10倍、波長フィルタ530nm white)で測定モード;Wave、測定面積:469.17μm×351.89μmでの測定を行い、付属の解析ソフト(VS−Viewer Version5.1.3)により撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いで補間処理(高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理)を行うことで算出できる。
積層体の上記した最表面は、その比表面積(S/A)が1.005以上であることが好ましい。比表面積を1.005以上とすることで、最表面の凹凸が十分に大きくなったことを意味する。そのため、撥液性が向上し、例えば包装材料用途では、内容物が包装材料に付着することなどを防止しやすくなる。これら観点から比表面積(S/A)は、1.01以上がより好ましく、1.03以上がさらに好ましい。
また、比表面積(S/A)は、特に限定されないが、凹凸が大きくなりすぎることで構造的強度が低下することを防止するために、2以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.3以下がよりさらに好ましい。
なお、比表面積(S/A)は、上記最表面において、測定対象エリアの面積をA、測定対象エリアの表面積をSとすると、S/Aにより算出できる。
積層体の上記最表面のSa(算術平均粗さ)は、特に限定されないが、例えば50nm以上である。Saを50nm以上とすることで、十分に凹凸が形成されたことを意味し、積層体の撥液性がより向上し、例えば包装材料用途では内容物が積層体に付着することを防止しやすくなる。これら観点から、Sa(算術平均粗さ)は、好ましくは100nm以上、より好ましくは300nm以上である。
また、Sa(算術平均粗さ)は、特に限定されないが、凹凸構造の物理的強度を保つ観点から、好ましくは3000nm以下、より好ましくは2000nm以下、さらに好ましくは1800nm以下、よりさらに好ましくは1600nm以下、中でも好ましくは1500nm以下である。
積層体の上記最表面のSz(最大高さ)は、特に限定されないが、好ましくは1000nm以上、より好ましくは2000nm以上、さらに好ましくは3000nm以上である。Szがこれら下限値以上であると、十分な座屈が進み、十分な凹凸が形成されたことを意味する。したがって、積層体の撥液性が向上しやすく、例えば包装材料用途では内容物が積層体に付着することを防止しやすくなる。
Sz(最大高さ)は、特に限定されないが、凹凸が大きくなりすぎることで構造的強度が低下することを防止する観点から、好ましくは20000nm以下、より好ましくは15000nm以下、さらに好ましくは13000nm以下、よりさらに好ましくは12000nm以下である。
なお、Sa及びSzは、後述する実施例に示す方法で測定することができる。
また、積層体は、純水との接触角が100°以上であることが好ましい。接触角を100°以上とすることで、撥液性をより高くして、例えば、包装材料用途においては積層体の表面に内容物が付着しにくくなる。なお、積層体の接触角は、積層体の樹脂層、及びカバー層が設けられる一方の面において測定するとよい。
純水との接触角は、撥液性の観点から、115°以上がより好ましく、125°以上がさらに好ましく、130°以上がよりさらに好ましい。
純水との接触角は、上限に関しては特に限定されないが、例えば150°以下である。
<基材>
本発明の積層体に用いられる基材は、特に限定されず、材料としては樹脂などの有機物、金属や金属酸化物などの無機物、有機無機複合体などが挙げられる。基材の形状としてはシートやフィルム、基板、容器や管を含む立体形状品などが挙げられる。本発明の基材は、樹脂からなることが好ましく、樹脂フィルム又はプラスチック容器がより好ましい。本発明の積層体は、後述する製造方法によると、複雑な形状を有する基材や、容器の内側などにも容易に凹凸を形成できる。
[樹脂フィルム]
基材として用いられる樹脂フィルムは、必要十分な剛性を備えたフィルムであれば、材質及び構成を限定するものではない。樹脂フィルムは、単層構成であっても、多層構成であってもよい。樹脂フィルムが多層構成の場合、2層、3層構成以外にも本発明の効果を阻害しない限り、4層又はそれ以上の多層であってもよい。
樹脂フィルムに使用する樹脂としては、ポリエステル、ポリアリレート類、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステル系液晶ポリマー、トリアセチルセルロース、セルロース誘導体、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリイミド、ポリシクロオレフィン類等を例示することができる。これら樹脂は、樹脂フィルムにおいて1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、樹脂フィルムが多層である場合、各層を構成する樹脂は互いに異なる種類であってもよいし、互いに同じ種類であってもよい。また、樹脂フィルムは、上記各樹脂を2種以上組み合わせて各層を構成して、単層又は多層としてもよい。
樹脂フィルムが単層構成であっても多層構成であっても、各層の主成分樹脂がポリエステルであるポリエステルフィルムであることが好ましい。
この際、「主成分樹脂」とは、ポリエステルフィルムを構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂を意味し、例えばポリエステルフィルムを構成する樹脂のうち50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂である。
樹脂フィルムの各層は、ポリエステルを主成分樹脂として含有すれば、ポリエステル以外の樹脂或いは樹脂以外の成分を含有していてもよい。
上記ポリエステルは、ホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。前記脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
他方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、セバシン酸等の1種又は2種以上を挙げることができ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種又は2種以上を挙げることができる。
ポリエステルの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が例示される。これらのなかでは、PET、PENが好ましく、より好ましくはPETである。
樹脂フィルムは、フィルム表面に微細な凹凸構造を形成して各種機能を付与する目的及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を含有してもよい。
当該粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではない。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、ポリエステルなどの樹脂成分を製造する工程で、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
上記粒子の形状は、特に限定されるわけではない。例えば球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれであってもよい。また、上記粒子の硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
上記粒子の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは0.01μm以上3μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上2.5μm以下である。5μm以下とすることで、樹脂フィルムの表面粗度が粗くなるのを防止し、樹脂層、カバー層を形成させる際に不具合が生じにくくする。
粒子の含有量は、樹脂フィルム100質量%に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.0003質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上2質量%以下である。粒子含有量をこのような範囲とすることで、フィルムの滑り性と透明性との両立が可能となる。
樹脂フィルムに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、樹脂成分を製造する過程において添加することができる。例えば、ポリエステルフィルムの場合には、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができる。好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのがよい。
樹脂フィルムには、必要に応じて、従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等を添加することができる。
樹脂フィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは12μm以上250μm以下、より好ましくは25μm以上250μm以下、さらに好ましくは50μm以上200μm以下である。
樹脂フィルムは、例えば樹脂組成物を溶融製膜方法や溶液製膜方法によりフィルム形状にすることにより形成することができる。多層構造の場合は、共押出してもよい。また、一軸延伸又は二軸延伸したものであってもよく、剛性の点から、二軸延伸フィルムが好ましい。
[プラスチック容器]
本発明において基材として用いられるプラスチック容器には特に制限はなく、有底円筒形状の容器であってもよく、底部が丸みを帯びた断面楕円形状の容器であってもよい。また、胴部に対して口部が縮径された断面略長方形状の容器であってもよい。容器の口径が縮径されたものであってもよい。
プラスチック容器を構成するプラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレート系共重合樹脂(ポリエステルのアルコール成分にエチレングリコールの代わりに、シクロヘキサンジメタノール等をコモノマーとして使用した共重合樹脂等)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合体)、アイオノマー樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスルホン樹脂、四フッ化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等が挙げられ、これらの中でも、汎用性の面でポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)やポリカーボネート樹脂(PC)が好ましい。
[樹脂以外の基材]
樹脂以外の基材としては、後述する樹脂層が基材上に定着できる限り特に限定されないが、金属、半金属、セラミックス、複合材料などが挙げられる。
金属としては、アルミニウム、銅、銀、金、鉄、ニッケルなどが挙げられ、これらの金属を単体あるいは合金で用いてもよく、好ましくはアルミニウム、銅、鉄鋼系材料のSUSなどが挙げられる。
半金属としては、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられ、これらの半金属を単体あるいは合金で用いてもよい。
セラミックスとしては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物などの無機固体材料が挙げられ、好ましくはガラス、陶磁器などが挙げられる。
複合材料は、樹脂、金属、半金属及びセラミックなどからなる2種以上の異なる材料を一体的に組み合わせた材料であり、ガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、ナノコンポジット材料などが挙げられる。
これら樹脂以外の基材としては、金属容器、ガラス容器などが好適である。
<樹脂層>
樹脂層は、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、単に「硬化性樹脂組成物」ということがある)から形成される。樹脂層は、硬化性樹脂組成物が硬化することで形成される硬化物である。硬化性樹脂組成物は硬化することで、基材、カバー層などに対して容易に接着できる。また、樹脂層は、後述するように半硬化状態などでドライプロセスによる表面処理を行うと、面方向に沿って作用される圧縮応力に追従して座屈しリンクル構造を形成できる。
[熱硬化性樹脂組成物]
硬化性樹脂組成物が、熱硬化性樹脂組成物である場合、当該熱硬化性樹脂組成物はバインダー樹脂を含有することが好ましく、バインダー樹脂と硬化剤を含むことがより好ましい。熱硬化性樹脂組成物は、バインダー樹脂と硬化剤を含むことで、基材、カバー層などに対する接着性を確保しつつ、圧縮応力が作用されると座屈しやすくなり、リンクル構造を形成しやすい。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、加熱することで硬化することが可能な熱硬化性樹脂であり、熱硬化性樹脂組成物が硬化剤を含む場合には、硬化剤の存在下に硬化する樹脂である。
バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂、アルコキシ基含有樹脂、変性スチレン樹脂及び変性シリコーン樹脂等を挙げることができ、これらを単独或いは2種以上組み合わせて使用することができる。バインダー樹脂は、バインダー樹脂同士を反応させて樹脂層を形成してもよい。
中でも、基材又は基材及びカバー層との密着性、及び耐熱水性の点から、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ基含有樹脂、及びアルコキシ基含有樹脂から選ばれる少なくとも1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
また、バインダー樹脂は、ウレタン硬化やエポキシ硬化などの熱架橋が可能であればよく、後述する硬化剤として使用されるイソシアネート化合物との反応性の観点から、一分子中に水酸基を2つ以上有するポリオールであることが好ましく、中でもアクリルポリオールが好ましい。
アクリル樹脂としては、例えば(メタ)アクリル系モノマーを含む重合性モノマーを重合した(メタ)アクリル系重合体が挙げられる。(メタ)アクリル系重合体は、単独重合体であってもよいし共重合体であってもよいし、さらには(メタ)アクリル系モノマー以外の重合性モノマーとの共重合体のいずれでもよい。
(メタ)アクリル系モノマーとは、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーである。また、(メタ)アクリル系モノマー以外の重合性モノマーは、重合性官能基を有するモノマーであり、重合性官能基としては、ビニル基などの(メタ)アクリロイル基以外の炭素−炭素不飽和結合を含む官能基が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基という表現を用いた場合、「アクリロイル基」と「メタクリロイル基」の一方又は両方を意味するものとし、他の類似する用語も同様である。
重合性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの環状アルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する(メタ)アクリレートなどの重合性官能基以外の部分が炭化水素からなる炭化水素系(メタ)アクリレートが例示できる。
これらの中では、アルキル(メタ)アクリレート又は環状アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系重合体において、炭化水素系(メタ)アクリレート由来の構成単位は、例えば20質量%以上90質量%以下、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
重合性モノマーとしては、炭化水素系(メタ)アクリレート以外のモノマー成分を使用してもよく、具体的には水酸基含有モノマーを使用することが好ましい。水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、水酸基含有モノマーにおける水酸基は、芳香族環に直接結合しない水酸基である。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
水酸基含有モノマーは、上記炭化水素系(メタ)アクリレートと併用することが好ましく、したがって、アクリル樹脂は、炭化水素系(メタ)アクリレートと水酸基含有モノマーを共重合した(メタ)アクリル系共重合体、又は炭化水素系(メタ)アクリレートと水酸基含有モノマーとこれら以外のモノマー成分(その他のモノマー成分)を共重合した(メタ)アクリル系共重合体が好ましい。これにより、(メタ)アクリル系共重合体を、複数の水酸基を含有するアクリルポリオールとすることができる。
(メタ)アクリル系重合体において、水酸基含有モノマー由来の構成単位は、例えば0.5質量%以上80質量%以下が好ましく、1質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
重合性モノマーとしては、炭化水素系(メタ)アクリレート及び水酸基含有モノマー以外のモノマー成分(その他のモノマー成分)を使用してもよく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のようなカルボキシル基含有モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)メタクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグルシジル(メタ)アクリレート、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマー;エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのアクリルアミド系化合物;(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンなどのスチレン誘導体;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニルなどが挙げられる。
また、重合性モノマーは、樹脂層の耐光性などを向上させる観点から、紫外線吸収機能を有する官能基を有するモノマーを使用してもよい。具体的には、ベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、ヒンダードアミン骨格などの紫外線吸収性官能基と、(メタ)アクリロイル基などの重合性官能基を有するモノマーが挙げられる。
その他のモノマー成分(炭化水素系(メタ)アクリレート及び水酸基含有モノマー以外のモノマー成分)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル系重合体において、例えば50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。下限に関しては特に限定されず、0質量%以上であればよい。
なお、上記各モノマー成分(炭化水素系(メタ)アクリレート、水酸基含有モノマー、その他のモノマー成分)は、上記で例示したように、分子中に重合性官能基を1つ有する単官能モノマーであることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で重合性官能基を2つ以上有する多官能モノマーを適宜含んでもよい。
(硬化剤)
硬化剤としては、上記バインダー樹脂に反応して硬化できる化合物を使用すればよいが、バインダー樹脂との硬化性の観点から好ましくはイソシアネート化合物を使用する。イソシアネート化合物を使用する場合には、バインダー樹脂はイソシアネート基と反応可能な官能基を有するとよく、官能基としては水酸基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられ、イソシアネート基との反応性の観点から、水酸基が好ましい。
したがって、硬化剤としてイソシアネート化合物、バインダー樹脂としてポリオールを使用することが好ましく、アクリル樹脂を使用する場合には、アクリル樹脂は上記のとおり1分子中に水酸基を複数含有するアクリルポリオールであることが好ましい。
イソシアネート化合物は、芳香族又は脂肪族ジイソシアネート或いは3価以上のポリイソシアネートが好ましい。イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、又はこれらの三量体を使用することができる。
また、これらイソシアネート化合物の過剰量と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、ビウレット、シアヌル酸、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物、又は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリアミド等の活性水素高分子化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物を使用してもよい。
(各成分の配合比)
熱硬化性樹脂組成物において、バインダー樹脂と硬化剤の配合比は、バインダー樹脂の水酸基の数と硬化剤のイソシアネート基の数の比を調整して混合すればよく、(イソシアネート基の数)/(水酸基の数)は0.05以上30以下が好ましく、0.1以上20以下がより好ましく、0.2以上15以下がさらに好ましい。
(熱硬化性樹脂組成物の好ましい形態)
樹脂層が熱硬化性樹脂組成物から形成される場合、当該樹脂層はウレタン結合を有する樹脂を含有することが好ましい。ウレタン結合を有する樹脂を使用することで柔軟性が確保され、ドライプロセスにより表面処理がされた際に発生する圧縮応力により座屈しやすくなる。
ウレタン結合は、上記バインダー樹脂同士の反応、及びバインダー樹脂と硬化剤との反応の少なくともいずれかにより形成されることが好ましく、中でもバインダー樹脂と硬化剤との反応により形成されることがより好ましい。これら反応によりウレタン結合を形成すると、樹脂層の基材、カバー層などに対する密着性を良好にしやすくなる。
本発明ではバインダー樹脂との硬化性促進及び上記密着性の観点から、硬化剤としてイソシアネート化合物を用いるのが好ましい。
[活性エネルギー線硬化性樹脂組成物]
(光重合性化合物)
硬化性樹脂組成物が、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である場合、当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は光重合性化合物を含有する。光重合性化合物は、活性エネルギー線が照射されることで重合することが可能な化合物である。なお、活性エネルギー線の詳細は、後述する製造方法で述べる通りである。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物により形成される樹脂層の樹脂成分は、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートなどのプレポリマーと光重合性モノマーとを混合したもの、あるいは光重合性モノマー単独で用いることができる。
光重合性モノマーは、ラジカル重合性基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、多官能の光重合性モノマーが挙げられる。多官能の光重合性モノマーにおいて一分子中に含まれるラジカル重合性基の数は特に限定されず、2以上であればよい。
ラジカル重合性基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの炭素−炭素不飽和結合を含む官能基が挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
光重合性モノマーとして、芳香環を有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環、フェナレン環などを有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく、これらの中ではフルオレン環を有するフルオレン系多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
フルオレン系多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシポリ(エチレンオキシ))フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシポリ(プロピレンオキシ))−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシポリ(エチレンオキシ))−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどが挙げられる。
また、光重合性モノマーとしては、芳香環を有する多官能(メタ)アクリレート以外にも様々な多官能(メタ)アクリレートを使用可能であり、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどの脂肪族多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記した光重合性モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記した中では、芳香環を有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく、芳香環を有する多官能(メタ)アクリレートは他の光重合性化合物と併用してもよい。
光重合性モノマーは、単独で使用してもよいし、後述する単官能の光重合性化合物と併用してもよい。
光重合性モノマーは、多官能に限定されず、単官能の光重合性モノマーでもよい。単官能の光重合性モノマーは、単独で使用してもよいが、上記のとおり多官能の光重合性モノマーと併用してもよい。
単官能の光重合性モノマーは、アルキル(メタ)アクリレート、環状アルキル(メタ)アクリレート、芳香環を有する(メタ)アクリレート、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリロニトリル、スチレン誘導体、ハロゲン化ビニルなどが挙げられる。これらの具体的な化合物としては、上記した(メタ)アクリル系重合体において例示したものが適宜使用できる。
(光重合開始剤)
硬化性樹脂組成物は、光重合性化合物を含む場合、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤を含有することで、後述するように樹脂層前駆体に活性エネルギー線を照射することで樹脂層前駆体を容易に硬化させることができる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノンやその誘導体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−ヒドロキシアセトフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類、オキシムエステル化合物などが挙げられる。中でも、α−ヒドロキシアルキルフェノン類は硬化時に黄変を起こしにくく、透明な硬化物が得られるので好ましい。
光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以下の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.2質量部以上3質量部以下の範囲である。光重合開始剤の含有量が0.05質量部以上であることで、所望する開始効果が得られ、また、光開始剤の含有量が5質量部以下であることで、活性エネルギー線の照射より、硬化性樹脂組成物が硬化されすぎず、半硬化状態に留めやすくなる。
なお、以上の説明では、硬化性樹脂組成物は、熱硬化性又は活性エネルギー線硬化性のいずれかを有する態様について説明したが、熱及び活性エネルギー線の両方により硬化可能な熱及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であってもよい。この場合には、硬化性樹脂組成物は、バインダー樹脂及び光重合性化合物の両方を含むとよい。
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の主旨を損なわない範囲で、内消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料、無機粒子及び有機粒子等を含有してもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
[樹脂層の厚み]
樹脂層の厚み(tb)は、0.1μm以上15μm以下であることが好ましい。15μm以下であれば、樹脂層自体の内部応力によって基材から剥離することなどを防止できる。0.1μm以上の厚みであれば、樹脂層の厚みを均一に保つことができ、凹凸により一定以上の粗さを確保できる。かかる観点から、樹脂層の厚み(tb)は、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、よりさらに好ましくは2μm以上であり、また、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下である。
なお、樹脂層、及び後述するカバー層の厚みは、微細形状測定機を使用した段差測定、あるいは走査電子顕微鏡(SEM)及び/又は透過電子顕微鏡(TEM)を使用した断面観察により、最大厚み(凸の山部)と最小厚み(凹の谷部)を測定し、これらの平均値により求めることができる。
<カバー層>
本発明においては、上記のとおり、樹脂層の上にカバー層を有し、そのカバー層は、少なくとも表面にフッ素系化合物を有する。積層体は、表面にフッ素系化合物を有するカバー層を備えることで、上記のとおり、撥液性が向上する。また、カバー層によりバリア性を確保させることもでき、例えば基材が容器である場合には内容物の溶出を防止できる。
カバー層の表面には、カバー層を形成する材料自体にフッ素化合物を含有させることでフッ素系化合物を含有させてもよいし、カバー層の表面をフッ化処理することでフッ素系化合物を含有させてもよい。
カバー層は、具体的には、無機物含有層、カバー樹脂層などが挙げられる。これらの中では、撥液性をより向上させる観点から、無機物含有層が好ましい。
[無機物含有層]
無機物含有層は、無機物により形成され、無機物を主成分として含有する層である。なお、無機物を主成分として含有するとは、無機物含有層の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上、中でも100質量%を無機物が占めるということを意味する。無機物含有層は、樹脂層との密着性が良好な無機物により形成するとよい。また、無機物含有層は、ドライプロセスにより樹脂層の上に容易に成膜できる材料を使用して形成することが好ましい。
無機物含有層は、無機物として、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、又はこれらの複合物から選ばれる少なくとも一種から形成されることが好ましい。これら無機物は、さらにフッ化カルシウムなどのフッ化物を含有してもよいし、後述するようにフッ素を含有するものを使用してもよい。無機物含有層は、フッ化物を使用したり、フッ素を含有させたりすることで、無機物含有層の表面をフッ化処理することなく、カバー層の表面にフッ素系化合物を含有させることができる。
なお、ここでいう金属には、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウムなどのいわゆる半金属も含まれる。
無機物含有層において、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、又はこれらの複合物を構成する金属としては、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、チタン、ニオブ、金、銀、銅、インジウム、スズ、ニッケルなどが挙げられ、中でも撥液性の観点からケイ素が好ましい。
無機物含有層に使用される無機物の好適な具体的としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、炭化ケイ素などのケイ素系化合物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウムなどのアルミニウム系化合物、酸化ニオブなどのニオブ系化合物、酸化亜鉛などの亜鉛系化合物、酸化チタンなどのチタン系化合物、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、及び、ITO、IZOなどの導電性酸化物などが挙げられる。また、フッ素を含有する無機物の好適な具体例としては、フッ素含有酸化ケイ素、フッ素含有炭化ケイ素などのフッ素含有ケイ素系化合物、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン(フッ素含有DLC)などが挙げられる。
無機物含有層に使用される無機物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機物含有層は、積層体の硬度を高くでき、積層体の耐久性を良好にできる観点、及び撥液性の観点から、上記した中でも、DLC、酸化ケイ素、酸化炭化ケイ素、炭化ケイ素、フッ素含有炭化ケイ素(フッ素含有SiC)、フッ素含有DLCを少なくとも含む層がより好ましい。また、これらの中でも炭化ケイ素により形成された炭化ケイ素層、DLCにより形成されたDLC層,フッ素含有DLCにより形成されたフッ素含有DLC層がより好ましい。
炭化ケイ素、DLC又はフッ素含有DLCを使用することで、無機物含有層成膜時に発生する膜応力が大きくなりやすく、リンクル構造を形成しやすくなり、撥液性も向上させやすくなる。また、フッ素含有DLCを使用することで、カバー層の表面に対してフッ化処理をしなくても、表面にフッ素系化合物を含有させることができる。
なお、カバー層の表面にフッ素系化合物を含有するか否かは、XPS(X線光電子分光法)、TOF―SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)などの表面化学分析により判断することが可能である。
[カバー樹脂層]
カバー樹脂層は、後述するドライプロセスにより樹脂層の上に成膜することが好ましい。カバー樹脂層は、樹脂成分により形成され、樹脂成分を主成分として含有する層である。ここで、樹脂成分を主成分として含有するとは、カバー樹脂層の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上、中でも100質量%を樹脂成分が占めるということを意味する。
カバー樹脂層に使用される樹脂成分としては、ドライプロセスにより樹脂層の上に成膜できる樹脂成分を好ましく使用できる。具体的な樹脂成分としては、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレンなどが挙げられ、中でもフッ素系樹脂により形成されたフッ素系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂を使用することで、ドライプロセスにより容易に樹脂層の上にカバー樹脂層を成膜できる。また、フッ素系樹脂を使用することで、表面処理をしなくても、カバー層の表面にフッ素系化合物を含有させることができ、撥液性を付与できる。また、積層体に耐薬品性を付与しやすくなる。
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などが挙げられる。
[カバー層の形成]
なお、カバー層は、後述するようにドライプロセスにより形成されることが好ましいが、必ずしもドライプロセスにより形成される必要はない。カバー層をドライプロセスにより形成しない場合には、予め別のドライプロセスにより樹脂層にリンクル構造を含む凹凸を形成し、その後にカバー層を成膜すればよい。
このようにドライプロセス以外によりカバー層を形成する場合には、無機物含有層、カバー樹脂層に使用される無機物、樹脂成分には上記以外のものも使用できる。具体的には、上記した樹脂成分以外にも、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などを使用してもよい。
[カバー層の厚み(ta)]
カバー層の厚み(ta)は、10nm以上250nm以下が好ましい。カバー層の厚み(ta)を上記範囲内にすることで、ドライプロセスにより成膜した際に適度に膜応力が発生し、樹脂層に対して適度に圧縮応力を作用させ、所望の粗さ及び構造を有する凹凸を形成しやすくなる。積層体の最表面に所望の凹凸を形成しやすくする観点から、カバー層の厚み(ta)は、15nm以上200nm以下がより好ましく、20nm以上150nm以下がさらに好ましい。
また、カバー層を厚めに成膜するとバリア性を付与することができる。バリア性を高くする観点からは、カバー層の厚み(ta)は100nm以上600nm以下が好ましい。600nmを超えるとカバー層に膜応力が残って脆くなる場合がある。
[カバー層と樹脂層との厚み比率(ta/tb)]
本発明において、樹脂層の厚み(tb、単位:μm)に対するカバー層の厚み(ta、単位:nm)の比(ta/tb)は、0.1以上3500以下が好ましい。厚み比を上記範囲内とすることで、後述のとおりドライプロセスによりカバー層を成膜した際に、該ドライプロセスにより所望の粗さ及び形状を有する凹凸を形成しやすくなる。また、カバー層成膜前に予め凹凸を樹脂層表面に形成している場合には、カバー層による凹凸の平滑化が防止できる。
積層体の最表面に所望の凹凸を形成しやすくする観点から、上記厚み比は、1以上500以下がより好ましく、2以上250以下がさらに好ましく、3以上200以下がよりさらに好ましい。
カバー層は多層であってもよく、例えば互いに組成が異なる無機物含有層により形成される第1及び第2のカバー層が設けられてもよい。また、例えば互いに組成が異なるカバー樹脂層により形成される第1及び第2のカバー層が設けられてもよい。さらに、無機物含有層とカバー樹脂層との積層体であってもよい。ただし、本明細書において、カバー層の最表面に形成され、かつ後述するフッ素系化合物により形成される層は、後述する「フッ素系化合物層」という。
また、カバー層は、上記した樹脂層に直接接触するように形成されることが好ましい。直接接触するように形成することで、簡略化した製造方法によって、凹凸を形成しつつカバー層を形成できる。
[フッ化処理]
上記カバー層の表面は、上記のとおり、フッ化処理がされることで、フッ素系化合物を含有するとよい。フッ化処理を行うことで、フッ素系化合物によりフッ素系化合物層がカバー層の表面に形成されてもよいが、カバー層の表面にフッ素系化合物が付着していれば、フッ素系化合物層を形成する必要はない。
フッ素系化合物層は、例えばフッ素系化合物単独で形成されてもよいが、フッ素系化合物と、フッ素系化合物以外の化合物で形成されていてもよい。フッ素系化合物層は、フッ素化合物を主成分として含有するとよい。フッ素化合物を主成分として含有するとは、フッ素系化合物層の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上、中でも100質量%をフッ素化合物が占めるということを意味する。
フッ素系化合物層の厚みは、樹脂層によって形成されたリンクル構造の凹凸が最表面において現れる限り特に限定されないが、1nm以上200nm以下が好ましく、3nm以上100nm以下がより好ましく、5nm以上50nm以下がさらに好ましい。
フッ化処理は、後述する通り、例えば、カバー層の表面の官能基と反応可能な反応性基を有するフッ素系化合物(以下、「反応性基含有フッ素系化合物」ともいう)を、カバー層の表面に付着させることで行うとよい。反応性基含有フッ素系化合物は、フッ素系シランカップリング剤が好ましい。反応性基含有フッ素系化合物は、PVD,ウェット処理などによりカバー層の表面に付着させるとよい。
フッ素系シランカップリング剤は、フッ素を含有するシランカップリング剤であれば特に限定されないが、反応性基としてSiに直接結合したアルコキシ基(Si−OR)を有する化合物であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。また、アルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜2のアルコキシ基であり、反応速度の観点からメトキシ基がより好ましい。フッ素系シランカップリング剤は、上記アルコキシ基を2以上含有することが好ましく、2種以上のアルコキシ基を含有させてもよい。また、Siに直接結合したアルコキシ基(Si−OR)は環境中の水分と反応してシラノール基(Si−OH)を生じることがあり、シラノール基を含んでいてもよい。フッ素系シランカップリング剤は、Siに直接結合したアルコキシ基を含有することで、カバー層の表面に容易に結合できる。
また、フッ素系シランカップリング剤は、パーフルオロアルキル基を含有することが好ましく、中でもパーフルオロアルキルエーテル基を含有することがより好ましい。パーフルオロアルキルエーテル基は、−ORf(Rfがパーフルオロアルキル基)で表される官能基である。
パーフルオロアルキルエーテル基は、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、ビニル結合、及びジメチルシリレン基等のジオルガノシリレン基からなる群より選ばれる1種又は2種以上の構造を含んでよい非置換、又は置換の炭素数2〜12の2価の有機基、好ましくは炭素数2〜12の2価の炭化水素基を介してSiに結合されるとよい。
フッ素系シランカップリング剤としては、好ましくはパーフルオロアルキルエーテル基を有するトリアルコキシシラン、ジアルコキシシランなどが挙げられ、より好ましくはパーフルオロアルキルエーテル基を有するトリメトキシシシランが挙げられる。
フッ素系シランカップリング剤としては、パーフルオロアルキルエーテル基を含有しないフッ素系シランカップリング剤を使用してもよく、例えばトリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリエトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシル)シラン、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシル)シラン、トリメトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン、トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン、トリメトキシ−1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルシラン、トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルシラン、トリメトキシ[5,5,6,6,7,7,7−ヘプタフルオロ−4,4−ビス(トリフルオロメチル)へプチル]シラン、トリエトキシ[5,5,6,6,7,7,7−ヘプタフルオロ−4,4−ビス(トリフルオロメチル)へプチル]シラン等が挙げられる。
また、フッ素系シランカップリング剤としては、ケイ素原子(Si)を2以上有してもよく、シロキサン構造を有してもよい。
反応性基含有フッ素系化合物により表面処理をする場合、カバー層の表面は、上記反応性基と反応する水酸基などの官能基を有するとよい。フッ素系シランカップリング剤などの反応性基含有フッ素系化合物によりフッ化処理を行う場合、カバー層は無機物含有層であることが好ましく、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、炭化ケイ素、DLC、酸化アルミニウム、酸化ニオブなどを含有する無機物含有層であることが好ましい。
フッ化処理は、例えば、CVD又はウェット処理などにより、フッ素系樹脂をカバー層の表面に付着させることにより行ってもよい。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体などが挙げられる。
フッ素系樹脂を使用する場合、フッ素系化合物により、フッ素系化合物層が形成されるとよい。フッ素系化合物層は、フッ素系化合物単独で形成されてもよいが、他の化合物を含有してもよく、例えば、ウェット処理を行う場合などには、フッ素系樹脂に加えて、バインダー樹脂などを含有してもよい。
フッ化処理は、上記カバー層の表面にフッ素原子を導入できる限り、上記以外でもよく、例えば、プラズマ処理などによりフッ素原子をカバー層の表面に導入してもよい。使用するガスの種類は、例えば、CF、SF、NF、BF、XeFなどのフッ素系ガスが挙げられ、これらのガスの1種のみを用いてもよく、2種類以上のガスを混合して用いてもよい。これらのフッ素系ガスにアルゴン又はヘリウムのような希ガスを混合して用いてもよい。
図2、3は、積層体の好ましい実施形態を示す。図2に示す実施形態では、積層体10は、基板11の一方の面11A上に樹脂層12が設けられ、その樹脂層12の上にカバー層13が積層される。本実施形態の積層体10において、カバー層13の表面13Aにはフッ素系化合物が付着され、それにより、カバー層13の表面13Aはフッ素化合物を含有する。カバー層13の表面13Aは、積層体10の最表面を構成し、その最表面が凹凸を有する。
ただし、本実施形態では、本発明の効果を損なわない限り、カバー層13の表面13A上に後述するフッ素系化合物層14以外の他の層が設けられてもよい。
また、図3に示す実施形態において、積層体10は、基板11の一方の面11A上に樹脂層12が設けられ、その樹脂層12の上にカバー層13が積層される。また、カバー層13の上には、フッ素系化合物層14が積層され、それにより、カバー層13の表面13Aが、フッ素系化合物を含有する。フッ素系化合物層14の表面14Aは、積層体10の最表面を構成し、その最表面が凹凸を有する。
図3に示す実施形態でも、本発明の効果を損なわない限り、フッ素系化合物層14の上にフッ素系化合物層14以外の他の層が設けられてもよい。
また、上記各実施形態においては、本発明の効果を損なわない限り、カバー層13と樹脂層12の間に他の層が設けられてもよい。さらに、樹脂層12は、基材11の上に直接接触するように形成されてもよいが、基材11との間に接着層などの層が適宜設けられてもよい。
<積層体の製造方法>
本発明の積層体はいかなる製造方法で製造してもよいが、本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法は、以下の工程1〜工程3を備える。
工程1:基材の少なくとも一方の面に硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層前駆体を形成する工程
工程2:工程1で形成した樹脂層前駆体を半硬化させる工程
工程3:工程2で半硬化させた樹脂層前駆体に対してさらにドライプロセスによる表面処理を行い、基材の一方の面側の表面に凹凸を形成する工程
ただし、工程2は、後述するように省略してもよく、したがって、工程3では未硬化の樹脂層前駆体に対して表面処理を行ってもよい。
本製造方法は、上記工程3のドライプロセスにより、カバー層を成膜してもよい。ただし、ドライプロセスにより必ずしもカバー層を成膜する必要はなく、ドライプロセスによる表面処理を行った基材の一方の面側に、さらに上記カバー層を成膜する工程4を備えてもよい。
さらに、本製造方法ではカバー層の表面にフッ素系化合物を含有させるが、例えば、カバー層を形成する材料にフッ素系化合物を含めることで、カバー層の表面にフッ素系化合物を含有させるとよい。また、本製造方法は、工程3又は工程4にて形成されたカバー層の表面に対して、フッ化処理を行う工程5を備え、工程5のフッ化処理により、カバー層の表面にフッ素系化合物を含有させてもよい。
以下、各工程についてより詳細に説明する。
[工程1]
工程1では、基材の少なくとも一方の面に硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層前駆体を形成する。
工程1で使用される硬化性樹脂組成物の詳細は上記で説明したとおりである。硬化性樹脂組成物は、必要に応じて水、有機溶剤などの溶媒により希釈されていてもよい。なお、水、有機溶剤などの溶媒により希釈される場合、上記で述べた硬化性樹脂組成物における各成分の含有量は、固形分基準で示す。
使用する有機溶剤としては特に限定されず、硬化性樹脂組成物の組成に応じて溶解性や分散性の観点から選べばよく、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、ジメチルグリコール、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート系溶媒、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、各種アルカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。硬化性樹脂組成物を構成する成分は、溶媒に溶解していてもよいし、溶媒中に分散していてもよい。
硬化性樹脂組成物は、水、有機溶剤などにより希釈される場合には、固形分濃度が例えば0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは3質量%以上40質量%以下程度となるように調整することが好ましい。
硬化性樹脂組成物を基材上に塗布する方法としてはリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、スピンコート等の従来公知の塗工方式を用いることができる。
また、基材が樹脂フィルムの場合には、硬化性樹脂組成物をインラインコーティングによって塗布してもよい。インラインコーティングとは、樹脂フィルムを形成した製造ライン上で硬化性樹脂組成物を塗布することをいう。
塗布後の溶剤の乾燥は、オーブンによる加熱乾燥や減圧乾燥機による無加熱の乾燥を用いることができる。
なお、硬化性樹脂組成物を塗布する基材表面には、予めコロナ処理、プラズマ処理、UVオゾン処理等の表面処理を施してもよい。
[工程2]
工程2では、上記工程1で形成した樹脂層前駆体中の硬化性樹脂組成物を半硬化状態とする。ここでいう半硬化とは、硬化性樹脂組成物を完全に硬化させていない状態をいい、さらに熱を照射させ、又はエネルギー線を照射すると、硬化性樹脂組成物の硬化がさらに進行する状態をいう。
硬化性樹脂組成物が半硬化であるか否かは、例えば、溶剤を浸した綿棒で樹脂層前駆体の表面を軽く50回擦り、基材の表面が露出するか否かで確認できる。硬化性樹脂組成物が完全に硬化していれば、樹脂層前駆体の表面を擦っても基材の表面が露出しない。半硬化の度合いは、樹脂層前駆体の表面が膜減り始める擦り回数や基材の表面が露出するまでの擦り回数などから判断できる。なお、綿棒を浸す溶剤は、硬化性樹脂組成物を希釈した溶媒と同じものを用いることが好ましい。
半硬化とする目的は、工程1で得た樹脂層前駆体を工程3の真空ドライプロセスに持ち込む前にハンドリングしやすい性状とすること、及び、工程3で形成するリンクル構造を制御することにある。
よって例えば、工程1で得た樹脂層前駆体のタックが強くて取り扱いが難しい場合は半硬化処理を行うことが好ましいが、取り扱い上問題がなければ本工程2は必須ではなく、加熱やエネルギー線照射を行わなくてもよい。
また、硬化性樹脂組成物を半硬化状態とすることで、工程3におけるドライプロセスによる表面処理により樹脂層前駆体が座屈しやすくなり、凹凸を形成しやすくなる。
硬化性樹脂組成物が熱硬化性を有する場合、本工程2では、上記工程1で形成した樹脂層前駆体を加熱により半硬化させる。樹脂層前駆体を半硬化させる方法は、自然乾燥などのように常温で行ってもよいが、実用上の観点から、加熱乾燥などのように加熱により行うことが好ましい。なお、工程1の溶剤の乾燥を加熱乾燥で行う場合は、当該溶剤の乾燥が本工程2を兼ねていてもよい。
また、硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性を有する場合、本工程2では、工程1で形成した樹脂層前駆体に活性エネルギー線を照射することで樹脂層前駆体を半硬化させる。ただし、樹脂層成分として熱及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる場合などには、加熱のみ、あるいは活性エネルギー線の照射のみで樹脂層前駆体を半硬化させてもよいし、加熱と活性エネルギー照射を併用して樹脂層前駆体を半硬化させてもよい。
樹脂層前駆体を加熱により半硬化させる場合、その加熱温度及び加熱時間は、硬化性樹脂組成物に含まれる成分に応じて設定すればよいが、例えば50℃以上200℃以下、好ましくは70℃以上150℃以下の温度で、例えば3秒以上30分以下、好ましくは30秒以上10分以下、より好ましくは40秒以上5分以下の時間で樹脂層前駆体を加熱する。
また、活性エネルギー線を照射することで樹脂層前駆体を半硬化させる場合、使用される活性エネルギー線としては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。
紫外線照射により樹脂層前駆体を半硬化させる場合には、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LEDランプ等を用いればよい。また、紫外線は、樹脂層前駆体が半硬化する程度に照射すればよく、その照射量は特に限定されないが、例えば0.5〜5000mJ/cm、好ましくは1〜2000mJ/cm程度の積算光量で紫外線を照射すればよい。
[工程3]
工程3は、工程2で半硬化させた樹脂層前駆体、又は未硬化の樹脂層前駆体に対してさらにドライプロセスによる表面処理を行い、基材の一方の面側の表面に凹凸を形成する工程である。凹凸は、上記の通りリンクル構造であるとよい。また、工程3ではドライプロセスによってカバー層を形成してもよいが、カバー層を形成せず、成膜を伴わないドライプロセス処理を行ってもよい。
なお、ドライプロセスは、半硬化させた樹脂層前駆体、又は未硬化の樹脂層前駆体に減圧下又は真空中で表面処理を行う手法である。
本実施形態において、ドライプロセスによる表面処理でリンクル構造を含む凹凸が形成される原理は定かではないが、以下のように推定される。
半硬化又は未硬化の樹脂層前駆体に対してドライプロセスによってカバー層を形成すると、樹脂層前駆体がドライプロセス処理によるエネルギー(プラズマからの光、輻射熱、電子やイオン、あるいは、入射粒子から受けるエネルギー)を受けて硬化が進むと考えられる。その際、ドライプロセス処理によるエネルギーを受けた樹脂層前駆体が昇温しながら硬化収縮し流動性を失っていく過程と、カバー層が成長するときに膜応力を生成する過程が同時に進行する。その中で、樹脂層前駆体の面方向に沿う圧縮応力が大きくなり、樹脂層前駆体がその圧縮応力に対して抵抗できなくなった時点で座屈が起こり、リンクル構造が形成されると推定される。
また、カバー層を形成せず、成膜を伴わないドライプロセスであっても、同様にドライプロセス処理によるエネルギーにより樹脂層前駆体に面方向に沿う圧縮応力が生成し、樹脂層前駆体がその圧縮応力に対して抵抗できなくなった時点で座屈が起こりリンクル構造が形成されると推定される。
なお、リンクル構造におけるうねりの大きさ(すなわち、表面粗さ(Sa、Sz)、比表面積S/Aなど)は、樹脂層及びカバー層の厚み、樹脂層前駆体の半硬化又は未硬化状態における硬さ、樹脂流動性のバランスで変化すると推定される。したがって、うねりの大きさは、樹脂層及びカバー層の厚み、樹脂層及びカバー層に含有される成分、及び硬化条件などを適宜変更することで調整できる。
また、ドライプロセスによる表面処理は、上記のとおり樹脂層前駆体の硬化を進行させるものであり、工程3では例えば樹脂層を全硬化させてもよい。なお、全硬化とは、樹脂層を加熱し、又は活性エネルギー線を照射させても、硬化が実質的に進行しない状態を意味する。
本製造方法では、ドライプロセスによる表面処理によってカバー層を形成することが好ましい。ドライプロセスによる表面処理によってカバー層を形成すると、上記のとおり膜応力が生じて、リンクル構造を形成しやすくなり、撥液性も向上させやすくなる。また、ドライプロセスによる表面処理に伴いカバー層を形成することで、工程3において、凹凸を形成しつつカバー層も形成できるので工程を簡略化できる。
なお、ドライプロセス処理を行ったか否かは、断面をSEM及び/又はTEMで観察することによって判断できる。例えば、カバー層が結晶性材料からなる場合、カバー層の厚み方向で結晶粒径が変化していれば、ドライプロセス処理を行っていると判断できる。ドライプロセスによる成膜が進行するにつれて樹脂層表面に生成した結晶核が成長し、徐々に粒径が拡大していくため、カバー層表面の結晶粒径が最も大きくなり、樹脂層に近づくにしたがって結晶粒径が小さくなる傾向がある。
一方で、溶剤を塗布するウェット処理を行っている場合はこのような結晶粒径の変化は見られない。ウェット処理の場合は、塗膜を乾燥させる過程で溶剤が蒸発するため、カバー層の厚み方向全体にわたって微小なボイドが生じやすく低密度な膜となりやすい。
ドライプロセスによる表面処理によってカバー層を形成する場合、当該ドライプロセスによる表面処理は、例えば、化学的気相蒸着(CVD)、物理的気相蒸着(PVD)などが挙げられる。
ドライプロセスは、真空又は減圧下で行われる処理であることが好ましい。真空又は減圧下で表面処理が行われると、半硬化又は未硬化の樹脂層前駆体は酸素が少ない雰囲気下に置かれることになり、ドライプロセスにより硬化が進行しやすくなる。そのため、真空又は減圧下でドライプロセスを行うと、リンクル構造を形成しやすい。特に、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の場合は、ラジカル重合を妨げる酸素阻害が抑制されることから架橋が進みやすくなる。
真空又は減圧下で行われるドライプロセスにおける圧力は、ドライプロセスの手法にもよるが、例えば15Pa以下、好ましくは10Pa以下、より好ましくは1Pa以下である。また、ドライプロセスにおける圧力の下限は、特に限定されないが、各装置の性能限界を考慮すると、例えば、1×10−7Paである。
CVDは、特に限定されず、プラズマCVD、熱CVD、cat−CVD(触媒化学気相成長法)などがあるが、プラズマCVDが好ましい。プラズマCVDを使用することで、リンクル構造を形成しやすくなる。CVDは、リンクル構造を形成しやすくする観点から減圧下で行うことが好ましく、カバー層を形成する際の圧力は、成膜速度と凹凸構造形成性との観点から、好ましくは15Pa以下、より好ましくは1×10−2Pa以上10Pa以下、さらに好ましくは1×10−1Pa以上1Pa以下である。
カバー層を形成する際の出力条件は、カバー層に必要十分な膜応力を発生させる観点から、好ましくは100W以上1500W以下、より好ましくは300W以上1200W以下、さらに好ましくは400W以上1000W以下である。
カバー層の膜厚調整は、公知の方法で行うことができ、例えば、プラズマCVDを使用する場合、出力、原料ガスの圧力、原料ガスの濃度、プラズマ発生時間等を調節することなどによりできる。
CVDにより表面処理を行う場合、カバー層には耐水性、耐久性向上のため、必要に応じて、電子線照射による架橋処理を施してもよい。
CVDは、例えば、無機物含有層、カバー樹脂層を形成する際に使用することが好ましく、特にDLC又はフッ素含有DLCを無機物として含む無機物含有層、炭化ケイ素及び/又は酸化ケイ素を無機物として含む無機物含有層、フッ素系樹脂などを樹脂成分として含むフッ素系樹脂層などを形成する際に好適に使用できる。
PVDとしては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどが挙げられ、これらの中では、真空蒸着、スパッタリングが好ましい。PVDは、例えば、無機物含有層に含有させる無機物として、金属、酸化ニオブ、酸化ケイ素などの金属酸化物、金属窒化物などを使用する場合に好適である。
また、真空蒸着は、無機物含有層に含有される無機物として金、銀、銅、アルミニウムなどの金属、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、フッ化カルシウムなどのフッ化物を使用する場合に好適であり、また、スパッタリングは、無機物含有層に含有される無機物として金、銀、銅、アルミニウムなどの金属、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、ITO、IZOなどの金属酸化物を使用する場合に好適である。
PVDによりカバー層を形成する際の圧力は、凹凸構造形成性と真空排気能力などの観点から、好ましくは1×10−7Pa以上20Pa以下、より好ましくは1×10−6Pa以上10Pa以下、さらに好ましくは1×10−4Pa以上5Pa以下である。
ドライプロセスによる表面処理によりカバー層を形成する場合には、カバー層を形成するための原料を適宜選択して、ドライプロセスを行うとよい。
例えば、無機物としてDLCを含む無機物含有層をCVDにより形成する場合には、原料として炭化水素などを使用するとよい。具体的には、式C4n+64n+12で(nは1以上の整数)表される脂環式炭化水素、例えば、アダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ペンタマンタン、テトラマンタン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセチレン、エチレン、プロピレン、メタン、エタン、プロパン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。これら原料は、各化合物を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。また、原料ガスをアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の希ガスで希釈して使用してもよい。
また、無機物としてフッ素含有DLCを含む無機物含有層をCVDにより形成する場合には、原料としてフッ素系ガスなどを使用するとよい。フッ素系ガスCF、C、C、C8、C、Cなどのフルオロカーボンなどが挙げられる。これら原料は、各物質を単独で用いてもよく、2種以上のガスを混合して用いても良い。更に、上記した炭化水素を混合して用いるとよい。また、原料ガスをアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の希ガスで希釈して使用してもよい。
また、DLC又はフッ素含有DLCを含む無機物含有層は、PVDにより形成してもよい。
また、例えば無機物として炭化ケイ素を含む無機物含有層をCVDにより形成する場合には、原料としてテトラメチルシラン、ヘキサメチルジシランなどのオルガノシランを使用するとよい。また、シラン、ジシランなどのケイ素成分と、炭素原子数1〜6のアルカンなどの炭素成分の混合ガスに適宜水素ガスも混入させてもよい。ただし、炭化ケイ素を形成できる限り、他の原料を使用してもよい。
さらに、例えば、フッ素系樹脂層をCVDにより形成する場合には、原料として、CF、C、C、C8、C、Cなどのフッ素系ガスを使用すればよい。
さらに、例えば無機物として炭化酸化ケイ素を含む無機物含有層をCVDにより形成する場合には、原料としてのケイ素化合物(以下、「ケイ素化合物原料」ともいう)を使用すればよい。ケイ素化合物原料は、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても使用できる。気体の場合にはそのまま反応器内部(例えば、放電空間)に導入することもできる。液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用することができる。また、溶媒希釈してから使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒を使用することができる。
上記ケイ素化合物原料としては、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、メチルシリケート(例えば、コルコート株式会社製「メチルシリケート51」)等を挙げることができる。
工程3におけるドライプロセスによる表面処理において、カバー層が形成されなくてもよい。カバー層が形成されない場合の表面処理は、表面処理により樹脂層前駆体が座屈してリンクル構造を含む凹凸を形成できる限り特に限定されないが、プラズマ処理などが挙げられる。
プラズマ処理としては、特に限定されないが、真空又は減圧プラズマ処理などの方法で行うとよいが、これらの中では真空プラズマ処理が好ましい。また、プラズマ処理は、ガスをプラズマ化してプラズマ処理を行えばよい。使用するガスの種類は、例えば、酸素ガス、水素ガス、窒素ガス、又はアルゴンやヘリウムのような希ガスが挙げられる。ガスは、これらのガスの1種のみを用いてもよく、2種類以上のガスを混合して用いてもよい。これらの中ではアルゴンが好ましい。
本実施形態では、上記したように硬化が十分に進んでいない樹脂層前駆体に対してドライプロセスによる表面処理を行う。したがって、リンクル構造を安定的に形成するために、樹脂層前駆体を半硬化させた(工程2)後、ドライプロセスによる表面処理(工程3)に移るまでの時間や保存温度を調整することが好ましい。
工程2と工程3の間のインターバル(すなわち、加熱及び/又は活性エネルギー線照射が終了してから、ドライプロセスによる表面処理を開始するまでの時間)は、表面処理を開始させる際に樹脂層前駆体が所望の半硬化状態になる限り特に限定されないが、例えば24時間以下、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下である。当該インターバルの下限に関しては特に限定されず、0分以上であればよい。
また、工程2と工程3の間のインターバルでは、特に限定されないが、樹脂層前駆体が形成された基材を例えば0℃以上40℃以下、好ましくは5℃以上30℃以下の温度で放置すればよい。
また、インターバル時間が長い場合には、工程2と工程3の間で硬化が進行することも考慮して、工程2における加熱条件、活性エネルギー線の照射条件などを適宜選択すればよい。
本製造方法においては、以上の工程1〜工程3、又は工程1及び工程3を経ることで、基材の上に樹脂層、又は樹脂層及びカバー層が形成されるとともに、樹脂層の表面又はカバー層の表面にリンクル構造を含む凹凸を形成することができる。
[工程4]
本製造方法では、工程1〜3の後、又は工程1及び工程3の後に、上記したとおりカバー層を成膜する工程4をさらに備えてもよい。
本製造方法は、工程4を備えることで、例えば工程3のドライプロセスによりカバー層が形成されない場合に、上記した表面処理が施された樹脂層の上に、カバー層を形成できる。また、工程3においてカバー層を形成した場合でも、工程4を実施することで多層のカバー層を得ることができる。また、工程4は繰り返し行ってもよく、この場合にもカバー層は多層となる。
工程4において、カバー層は、工程3においてカバー層を形成する方法と同様の方法で形成することができ、すなわち、ドライプロセスによる表面処理により形成するとよい。これら各層の形成方法の具体的な説明は、工程3において説明したとおりであるので、その説明は省略する。
[工程5]
本製造方法は、上記の通り工程3又は工程4にて形成されたカバー層の表面に対して、フッ化処理を行ってもよい(工程5)。工程5のフッ化処理により、カバー層の表面にフッ素系化合物が付着され、又はフッ素系化合層が形成される。工程5を行うことで、カバー層自体が、フッ素系化合物を含有しなくても、カバー層の表面にフッ素系化合物を含有させることが可能になる。
フッ化処理は、化学的気相蒸着(CVD)、物理的気相蒸着(PVD)、プラズマ処理、及びウェット処理のいずれかで行うとよい。これらの中では、CVD、PVD,又はウェット処理が好ましい。
CVDは、特に限定されず、プラズマCVD、熱CVD、cat−CVD(触媒化学気相成長法)などがあるが、プラズマCVDが好ましい。CVDは、フッ素系化合物層として、例えばフッ素系樹脂層を形成する際に使用することが好ましい。フッ素系樹脂層は、CVDにより形成する場合には、原料として、CF、C、C、C8、C、Cなどのフッ素系ガスを使用すればよい。
フッ化処理として行うPVDは、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどが挙げられ、これらの中では、真空蒸着、スパッタリングが好ましい。真空蒸着は、フッ素系シランカップリング剤などの反応性基含有フッ素系化合物をカバー層の表面に付着させる際に好適である。
なお、フッ化処理として行うCVD、PVDの詳細は、工程3において説明した内容と同様であるのでその詳細は省略する。
フッ化処理として行うプラズマ処理は、大気圧プラズマ処理で行うこともできる。また、プラズマ処理は、ガスをプラズマ化してプラズマ処理を行えばよい。使用するガスは、フッ素系ガスを含有するガスを使用すればよく、例えば、CF、SFなどのフッ素系ガスを含有するガスなどを使用することが好ましい。また、使用するガスは、フッ素系ガスと、フッ素系ガス以外のガスとを併用するとよい。フッ素系ガス以外のガスとしては、窒素、アルゴンなどを使用するとよい。
フッ化処理として行うウェット処理は、フッ素系化合物を溶媒に希釈して得た処理液を、カバー層の表面に塗布して加熱、乾燥などすることで、フッ素系化合物をカバー層の表面に付着させるとよい。ウェット処理に使用するフッ素系化合物としては、反応性基含有フッ素系化合物が挙げられ、フッ素系シランカップリング剤が好ましい。
また、フッ化処理として行うウェット処理は、フッ素系化合物としてフッ素系樹脂を使用する場合にも使用できる。ウェット処理は、フッ素系樹脂を含む処理液をカバー層の表面に塗布して加熱、乾燥などすることで、フッ素系化合物をカバー層の表面に付着させてもよく、この際、フッ素系化合物層を形成するとよい。また、処理液には、適宜、フッ素系樹脂以外の樹脂成分をバインダー樹脂として配合させてもよい。
ウェット処理に使用する溶媒としては、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物に使用するものとして例示した有機溶剤などが挙げられる。
処理液をカバー層の表面に塗布する方法としてはリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、スピンコート等の従来公知の塗工方式を用いることができる。
<積層体の用途>
本発明の積層体は、食品包装用、日用品包装用、工業品、医薬品の包装用などに使用できる。具体的には、食品、化粧品、シャンプー、リンス等の日用品、医薬品、各種工業品などのボトル容器、パウチ容器などの各種容器や、フィルムなどの包装材料として使用できる。本発明の積層体は、これらの中でも食品包装用、日用品包装用に好適に使用できる。また、本発明の積層体は、内容物が液体を含む液体包装用に好適である。包装材料では、撥液性を付与することで、内容物の付着防止のための構成部材として好適に使用できる。
<語句の説明>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
本発明で用いた測定法及び評価方法は次のとおりである。
(1)樹脂層の厚みの測定方法
樹脂層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片を再度RuO染色し、樹脂層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7650」、加速電圧100kV)を用いて測定した。
なお、厚みは、最大厚みと最小厚みの平均値を用いた。
(2)カバー層及びフッ素系化合物層の厚みの測定方法
エポキシ樹脂包埋超薄切片法で試料を調整し、断面TEM装置(日本電子株式会社製「JEM−1200EXII」)により加速電圧120kVの条件で測定した。
(3)Sa(算術平均粗さ)、Sz(最大高さ)及び比表面積(S/A)
三次元非接触表面形状計測機((株)菱化システムのVertScan2.0 R5200G)を用いて積層体における最表面のSa,Sz、及び比表面積(S/A)を測定した。測定は10倍対物レンズで496.17μm×351.89μmの範囲で行った。
なお、比表面積(S/A)において、Aは測定対象エリアの面積、Sは測定対象エリアの表面積、S/Aは測定対象エリアの比表面積を表す。
(4)偏り度の測定
ISO25178に基づき、明細書記載の方法で、得られた積層体における最表面の偏り度Sskを測定した。
(5)純水との接触角
接触角計(協和界面科学株式会社製、「DropMaster 500」)を用いて、水滴に対する接触角を測定した。
(6)凹凸構造
基材の一方の面側における積層体の最表面を、走査型顕微鏡を用いて5千倍で撮影して、60μm×40μmの観察画像の観察画像を得た。各観察画像において、不規則なしわのような凹凸(リンクル構造の凹凸)が見られた場合をA(good)、見られない場合をB(poor)で評価した。
実施例1
(熱硬化性樹脂組成物(AC1)の調製)
バインダー樹脂としてのアクリルポリオール(株式会社日本触媒製、製品名「UV−G301」)2.00質量部と、硬化剤としてのイソシアネート系化合物(三井化学株式会社製、製品名「タケネートD−165N」、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物)2.46質量部と、溶剤としての酢酸エチル10.70質量部とを混合して、固形分濃度21.83質量%の熱硬化性樹脂組成物(AC1)の希釈液を用意した。
(樹脂層前駆体の形成)
得られた熱硬化性樹脂組成物(AC1)の希釈液を、基材としてのPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製、製品名「T100タイプ」、厚み188μm)の一方の面上に、積層体における厚みが表1に記載される通りになるように塗布して、80℃で1分間加熱することで、乾燥かつ硬化して、半硬化の樹脂層前駆体を形成した。その後、室温(23℃)で3時間放置した後、直ちに以下に示すCVD処理を開始した。
(カバー層の形成)
プラズマCVD装置(ユーテック株式会社製)を使用して、アセチレンガスを導入して、分圧を1Paとし、1Paの真空下にて電力500WでCVDを行い、半硬化の樹脂層前駆体上に、カバー層として厚み90nmの無機物含有層(DLC層)を形成した。
(フッ化処理)
パーフルオロアルキルエーテル基を有するトリメトキシシランであるシランカップリング剤(キャノンオプトロン(株)社製、商品名「SURFCLEAR100」。以下「SC」とも表記する)を使用して、10nmの膜厚で真空蒸着を行い、カバー層の表面をフッ化処理して、カバー層の表面にフッ素系化合物を含有させた。これにより、基材/樹脂層/カバー層の積層構造を有し、かつカバー層の表面がフッ素系化合物を有する積層体を得た。
実施例2、3
得られた積層体における厚みが表1に記載となるよう樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に実施した。実施例3の積層体の最表面の5千倍の観察画像を図4に示す。
実施例4
実施例3と同様に基材の上に樹脂層、及びカバー層を形成した後、以下のフッ化処理を行って、フッ素系化合物層を形成した。これにより、基材/樹脂層/カバー層/フッ素系化合物層の積層構造を有する積層体を得た。基材の一方の面側における積層体の最表面の5千倍の観察画像を図5に示す。
(フッ化処理)
プラズマCVD装置(神港精機(株))を使用して、オクタフルオロプロパン(C)を10sccm導入して、5Paの真空下にてCVDを行い、カバー層の上に厚み10nmのフッ素系化合物層(フッ素系樹脂層)を形成した。
実施例5
基材としてPETボトル(日本メデカルサイエンス社製のPET広口瓶、容量100ml、側壁面厚み800μm)を使用し、PETボトルの側壁面の内面(一方の面)に熱硬化性樹脂組成物(AC1)の希釈液を塗布して半硬化の樹脂層前駆体を形成した以外は、実施例4と同様に実施して、積層体を得た。基材の一方の面側における積層体の最表面の5千倍の観察画像を図6に示す。
比較例1
PETフィルム(三菱ケミカル株式会社製、製品名「T100タイプ」、厚み188μm)からなる基材単体を比較例1の積層体とした。基材の一方の面側における積層体の最表面の5千倍の観察画像を図7に示す。
比較例2
樹脂層前駆体の形成、及びフッ化処理を省略して、基材/カバー層の積層構造を有する積層体を得た点を除いて実施例1と同様に実施した。
比較例3
カバー層の表面をフッ化処理しなかった点を除いて、実施例3と同様に実施した。基材の一方の面側における積層体の最表面の5千倍の観察画像を図8に示す。
比較例4
樹脂層前駆体及びカバー層の形成を省略して、基材/フッ素系樹脂層の積層構造を有する積層体を得た点を除いて実施例4と同様に実施した。
参考例1
テフロン(登録商標)板(PTFE板、アズワン株式会社製、製品名「3−3282−01」、厚み1000μm)からなる基材単体を参考例1の積層体とした。
Figure 2021151768
表1に示すように、各実施例では、樹脂層前駆体上にドライプロセスによりカバー層を形成することで、積層体の最表面に凹凸を形成でき、表面粗さ(Sa,Sz)及び比表面積をいずれも大きくすることができた。そのため、カバー層の表面にフッ素系化合物を含有させることも相まって、水に対する接触角が大きくなり、良好な撥液性を発揮することができた。
それに対して、比較例1、2では、樹脂層が設けられず、ドライプロセスにより凹凸を形成しなかったため、積層体の最表面に凹凸を形成できず、表面粗さ(Sa,Sz)及び比表面積をいずれも大きくすることができなかった。そのため、水に対する接触角が小さく、良好な撥液性を得られなかった。
また、比較例3では、樹脂層前駆体に対してドライプロセスによりカバー層を形成することで、積層体の最表面に凹凸を形成できたが、カバー層の表面がフッ素系化合物を有しないため、水に対する接触角が小さくなり、良好な撥液性を得られなかった。
比較例4では、積層体の最表面にフッ素系化合物を有するが、凹凸を有しないため、実施例1〜5に比べて水に対する接触角が小さかった。
さらに、参考例1より、実施例1〜5の積層体は一般的なテフロン板よりも水に対する接触角が大きいことが確認できた。
10 積層体
11 基材
11A 基材の一方の面
12 樹脂層
13 カバー層
13A カバー層の表面
14 フッ素系化合物層
14A フッ素系化合物層の表面

Claims (15)

  1. 基材と、前記基材の少なくとも一方の面にこの順に設けられる樹脂層及びカバー層と、を備える積層体であって、
    前記樹脂層が、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成され、
    前記カバー層が、少なくとも表面にフッ素系化合物を有し、
    前記基材の前記一方の面側における前記積層体の最表面が凹凸を有する積層体。
  2. 前記樹脂層が、ウレタン結合を有する樹脂を含有する請求項1に記載の積層体。
  3. 純水との接触角が100°以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記樹脂層の厚み(tb)が0.1μm以上15μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記カバー層の厚み(ta)が10nm以上250nm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記樹脂層の厚み(tb、単位:μm)に対する前記カバー層の厚み(ta、単位:nm)の比(ta/tb)が0.1以上3500以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 前記カバー層が、無機物含有層である請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 前記基材が、樹脂フィルムである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体。
  9. 前記樹脂フィルムが、ポリエステルフィルムである請求項8に記載の積層体。
  10. 液体包装用である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層体。
  11. 基材の少なくとも一方の面に熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層前駆体を形成する工程と、
    半硬化又は未硬化の前記樹脂層前駆体に対してさらにドライプロセスによる表面処理を行い、前記基材の一方の面側の表面に凹凸を形成する工程と、を備え、
    前記ドライプロセスにより前記基材の一方の面側にカバー層が成膜され、又は前記表面処理を行った前記基材の一方の面側にカバー層を成膜し、
    前記カバー層が、表面にフッ素系化合物を有する
    積層体の製造方法。
  12. 前記ドライプロセスによる表面処理が、化学的気相蒸着、物理的気相蒸着、及びプラズマ処理のいずれかである請求項11に記載の積層体の製造方法。
  13. 前記塗布により形成した樹脂層前駆体を半硬化させる工程を備え、
    前記表面処理を前記半硬化させた樹脂層前駆体に対して行う請求項11又は12に記載の積層体の製造方法。
  14. 前記カバー層の表面をフッ化処理する工程をさらに備える、請求項11〜13のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  15. 前記フッ化処理が、化学的気相蒸着、物理的気相蒸着、プラズマ処理、及びウェット処理のいずれかで行う請求項14に記載の積層体の製造方法。
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