JP2021126898A - 積層体、及び積層体の製造方法 - Google Patents

積層体、及び積層体の製造方法 Download PDF

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卓也 植松
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英人 柳原
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香 谷山
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Abstract

【課題】表面凹凸形状が制御可能で、粒子脱落のおそれがない表面凹凸を有する積層体を提供する。【解決手段】積層体10は、基材11と、基材11の少なくとも一方の面11Aに設けられる樹脂層12とを有し、樹脂層12が、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成され、基材11の一方の面11A側における積層体10の最表面10Aが、リンクル構造を含む凹凸を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、表面に凹凸を有する積層体、及びその製造方法に関する。
従来、各種材料に対して、表面に微細な凹凸を形成する技術が開発されている。
例えば、包装材料では、蓋材や容器内周面に内容物が付着することを防止するために、凹凸を形成することが知られている。また、例えば光学材料に微細な凹凸を形成して曇り性を高くして透過を抑制したり、表面反射を抑制したりする技術なども知られている。
これら各用途に対しては、それぞれ最適な表面凹凸構造があり、凹凸構造を制御して形成されている。
特許文献1には、基材と、耐有機溶剤性シーラントフィルム層と、付着防止層とをこの順に備え、前記付着防止層が、熱可塑性樹脂、撥水性微粒子および前記撥水性微粒子よりも平均粒子径の大きいビーズ粒子を含むことを特徴とする、撥水性積層体について開示されている。
かかる積層体は、付着防止層が大きさの異なる2種類の粒子を含んでなるため、表面に特有の凹凸構造が形成され、粘性を有する内容物の付着防止性及び撥水性を顕著に向上させることができることが示されている。
特開2017−226199号公報
しかしながら、特許文献1に開示されるように、粒子により凹凸を形成すると、表面付近に存在する粒子の脱落を無くすことはできず、例えば包装材料に使用する場合には、内容物に対する異物混入を起こしやすく、蓋材以外への適用は困難であった。
また、特許文献1には凹凸構造制御の方法について具体的に開示されておらず、凹凸構造を制御するためにはさらなる改良が求められていた。
そこで、本発明は、表面凹凸形状が制御可能で、粒子脱落のおそれがない表面凹凸を有する積層体を提供することを課題とする。
本発明の要旨は、以下の[1]〜[17]に示すとおりである。
[1]基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けられる樹脂層とを備える積層体であって、
前記樹脂層が、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成され、
前記基材の前記一方の面側における前記積層体の最表面が、リンクル構造を含む凹凸を有する積層体。
[2]前記最表面の比表面積(S/A)が、1.005以上である上記[1]に記載の積層体。
[3]前記最表面のSa(算術平均粗さ)が50nm以上であり、かつ前記最表面のSz(最大高さ)が4000nm以上である上記[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]前記リンクル構造が一次リンクル構造と、前記一次リンクル構造よりもうねりの周期が小さい二次リンクル構造とを含む上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の積層体。
[5]前記樹脂層上にさらにカバー層を備える上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の積層体。
[6]前記カバー層が、無機物含有層及びカバー樹脂層のいずれかである上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の積層体。
[7]前記無機物含有層が、ダイヤモンドライクカーボン、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及びこれらの複合物からなる群から選ばれる少なくとも一種から形成される上記[6]に記載の積層体。
[8]前記カバー樹脂層が、フッ素系樹脂により形成される上記[6]に記載の積層体。
[9]前記カバー層上に、さらにオーバーカバー層を備える上記[5]〜[8]のいずれか1項に記載の積層体。
[10]前記カバー層の厚み(ta)は、5nm以上300nm以下である上記[6]〜[9]のいずれか1項に記載の積層体。
[11]前記樹脂層の厚み(tb、単位:μm)に対するカバー層の厚み(ta、単位:nm)の比(ta/tb)は、0.1以上3500以下である上記[6]〜[10]のいずれか1項に記載の積層体。
[12]前記樹脂層の厚み(tb)が0.1μm以上15μm以下である上記[1]〜[11]のいずれか1項に記載の積層体。
[13]基材の少なくとも一方の面に熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層前駆体を形成する工程と、
半硬化又は未硬化の前記樹脂層前駆体に対してさらにドライプロセスによる表面処理を行い、前記基材の一方の面側の表面においてリンクル構造を含む凹凸を形成する工程と
を備える積層体の製造方法。
[14]前記ドライプロセスにより、カバー層を形成する上記[13]に記載の積層体の製造方法。
[15]前記表面処理を行った前記基材の一方の面側にカバー層を形成し、又は前記表面処理により形成されたカバー層の上にさらにオーバーカバー層を形成する工程をさらに備える上記[13]又は[14]に記載の積層体の製造方法。
[16]前記表面処理が、化学的気相蒸着、物理的気相蒸着、及びプラズマ処理のいずれかである上記[13]〜[15]のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
[17]前記塗布により形成した樹脂層前駆体を半硬化させる工程を備え、
前記表面処理を前記半硬化させた樹脂層前駆体に対して行う上記[13]〜[16]のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
本発明では、積層体の最表面にリンクル(wrinkle)構造の凹凸を形成することで、表面凹凸形状が制御可能で、粒子脱落のおそれがない表面凹凸を有する積層体を提供できる。
本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。 本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。 本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。 本発明の積層体の一例を示す概略図である。 本発明の積層体の一例を示す概略図である。 実施例1における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5千倍に拡大して観察した観察画像である。 実施例1における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5万倍に拡大して観察した観察画像である。 実施例3における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5千倍に拡大して観察した観察画像である。 実施例3における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5万倍に拡大して観察した観察画像である。 実施例5における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5千倍に拡大して観察した観察画像である。 実施例5における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5万倍に拡大して観察した観察画像である。 実施例9における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5千倍に拡大して観察した観察画像である。 実施例9における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5万倍に拡大して観察した観察画像である。 実施例13における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5千倍に拡大して観察した観察画像である。 実施例13における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5万倍に拡大して観察した観察画像である。 実施例17における凹凸を有する積層体の最表面を、実体顕微鏡により観察した観察画像である。 実施例17における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5千倍に拡大して観察した観察画像である。 実施例17における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5万倍に拡大して観察した観察画像である。 比較例1における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5千倍に拡大して観察した観察画像である。 比較例1における凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5万倍に拡大して観察した観察画像である。
次に、本発明の実施形態に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明が次に説明する実施形態に何ら限定されるものではない。
本発明の一実施形態に係る積層体10は、例えば、図1〜3に示すように、基材11と、基材11の少なくとも一方の面11Aに設けられる樹脂層12とを有し、樹脂層12が、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成される。
積層体10においては、樹脂層12上に他の層が設けられず、図1に示すように、樹脂層12が、基材11の一方の面11A側における積層体10の最表面10Aとなってもよい。また、積層体10は、図2、3に示すように、樹脂層12の上にカバー層13が設けられることが好ましく、また、図3に示すように、カバー層13の上にさらにオーバーカバー層14が設けられてもよい。
カバー層13が設けられ、かつカバー層13の上にオーバーカバー層14が設けられない場合には、図2に示すように、カバー層13が積層体10の最表面10Aを構成する。
また、カバー層13の上にさらにオーバーカバー層14が設けられる場合には、図3に示すように、オーバーカバー層14が積層体10の最表面10Aを構成する。
なお、積層体10において、樹脂層12は、基材11の上に直接接触するように形成されてもよいが、基材11との間に接着層などの層が適宜設けられてもよい。
以下、本発明の積層体についてより詳細に説明する。
<リンクル構造を含む凹凸>
積層体10では、基材11の一方の面11A側における積層体10の最表面10Aが、リンクル構造を含む凹凸を有する。
積層体10は、リンクル構造を含む凹凸を有することで、表面の微細な凹凸を活用する各種用途(付着防止、光透過性など)に適用可能である。
例えば、積層体10の最表面10Aを構成する層として撥液性の材料を選択すれば、積層体の表面に内容物が付着しにくくなり包装材料への適用ができる。
また、凹凸構造を制御することで、細胞、細菌などの付着性を低減できれば、衛生材料への適用もできる。
さらには、リンクル構造を含む凹凸を有することで、良好な曇り性も発現でき、例えば積層体のヘイズや光透過性を制御できる。
ここで、リンクル構造とは、樹脂層12が座屈することで生じるしわ形状であり、粒子により形成される凹凸形状のように、点状の突起が多数ある凹凸形状とは異なる形状である。本実施形態では、樹脂層自体の座屈により凹凸を形成することで、粒子脱落のおそれがない凹凸表面を形成できる。また、このリンクル構造は自発的に形成されるため、転写シートのような型は不要である。
図4に、リンクル構造の概略図を示す。リンクル構造は、複数のうねりcで構成されており、当該複数のうねりcは、それぞれ突条部aと、溝部bとを有する。突条部a及び溝部bは、それぞれ直線、曲線又はこれらを組み合わせた形状を有する。突条部aは、不規則に形成される。突条部aは、連続的に形成されてもよいし、不連続に形成されてもよい。
リンクル構造は、後述するように、樹脂層12に面方向に沿う圧縮応力が作用されたことに伴い形成される。ここで、圧縮応力は、面方向に沿う多数の方向に沿って作用され、それにより、突条部a及び溝部bが不規則に形成されると推定される。
リンクル構造の有無は、積層体の最表面を、走査電子顕微鏡(SEM)などの顕微鏡により、例えば1000〜10万倍程度の倍率で確認できる(図6〜12、図14及び図16〜18参照)。なお、リンクル構造を有する場合には、突条部aと溝部bがうねりcを形成するように現れる。うねりcは、一辺が例えば3〜500μm、好ましくは4〜100μm程度の方形又は矩形の観察画像のいずれかにおいて観察されるとよい。
なお、リンクル構造を形成する突条部aは、不規則であり、また上記うねりcもマイクロメーターオーダーの周期で現れる。そのため、図6〜12、図14及び図16〜18に示すとおり、突条部a及び溝部bにより形成されるうねりcは、上記観察画像において縦方向、横方向、及び斜め方向などの多方向(例えば、3方向)に沿って見ても、突条部aの頂部と溝部bの底部とがそれぞれ複数回(例えば、5回以上)現れる。なお、うねりcの周期は、典型的には一定ではなく、したがって、突条部aの頂部間の距離、溝部bの底部間の距離なども一定ではない。
なお、「うねりcの周期」とは、図4に示すように、突条部aの頂点と、該突条部aに隣接する溝部bに隣接する突条部aの頂点との距離dをいう。
また、リンクル構造は、互いにうねりの周期が異なる2以上のリンクル構造(以下、「高次リンクル構造」ともいう)を有する態様であってもよい。
例えば、リンクル構造は、一次リンクル構造と、一次リンクル構造よりもうねりの周期が小さい二次リンクル構造を含んでもよい。
図5に、一次リンクル構造と二次リンクル構造を含む場合の概略図を示す。図5において、一次リンクル構造は複数のうねりcで構成され、二次リンクル構造は、当該複数のうねりcを構成する突条部a及び溝部bのそれぞれにおいて、うねりcよりも周期が小さい複数のうねりc’で構成される。
すなわち、リンクル構造は、一次リンクル構造と、一次リンクル構造を形成する比較的大きな突条部a及び溝部bそれぞれにおいて、より微細な突条部a’と溝部b’により形成される二次リンクル構造とを有するとよい。このように、一次リンクル構造に加えて二次リンクル構造を有すると、疑似フラクタル表面を形成することが可能である。
なお、一次及び二次リンクル構造を有するか否かは、異なる倍率で観察した2つの観察画像の両方にうねりが現れるか否かにより判断できる。例えば一方の観察画像の倍率(X)に対する他方の観察画像の倍率(Y)の比(Y/X)が、10以上(Y>Xとする)であっても、両方の観察画像において上記うねりが観察されると、一次及び二次リンクル構造があると判断できる。
また、リンクル構造は、一次リンクル構造と、一次リンクル構造よりもうねりの周期が小さい二次リンクル構造に加えて、一次リンクル構造よりもうねりの周期が大きい三次リンクル構造を含んでもよい。
なお、一次、二次及び三次リンクル構造を有するか否かは、異なる倍率で観察した3つの観察画像全てにうねりが現れるか否かにより判断できる。例えば、第一の観察画像の倍率(X)と、第二の観察画像の倍率(Y)と、第三の観察画像の倍率(Z)が、10X≦Y、かつ、10Y≦Zであっても、全ての観察画像において上記うねりが観察されると、一次、二次及び三次リンクル構造があると判断できる。
積層体10の最表面10Aの凹凸が自発的に形成されたリンクル構造を有していることは、例えばSsk(スキューネス)の値に現れる。
Sskは、表面の凹凸の偏り度を示すパラメータである。この偏り度Sskは、二乗平均平方根高さSqの三乗によって無次元化した基準面において、Z(x,y)の三乗平均を表したもので、歪度(わいど)を意味し、平均面を中心とした山部と谷部の対称性を表す数値である。そのため、偏り度Ssk<0の場合は平均線に対して下側に偏っている、つまり凸の山部よりも凹の谷部が多く存在することを意味する。他方、Ssk>0の場合は平均線に対して上側に偏っている、つまり凹の谷部よりも凸の山部が多く存在することを意味する。そして偏り度Ssk=0の場合は、平均線に対して対称(正規分布)な状態を意味する。
本発明の積層体10の最表面10Aが有するリンクル構造は、樹脂層12が座屈することで生じるしわ形状である。そのため、粒子により形成される凹凸形状に比べて、凸の山部と凹の谷部の対称性が高い。よって、本発明の積層体10が有するリンクル構造のSskは、粒子により形成される凹凸形状のSskよりも0に近い値となると考えられる。
このような観点から、積層体10の最表面10AのSskの絶対値が5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、1以下であることがさらに好ましく、0.8以下であることがよりさらに好ましい。さらにその中でも、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。
なお、SskはISO25178に基づいたパラメータであり、例えば以下の方法で算出できる。
三次元非接触表面形状計測機((株)菱化システム製のVertScan2.0 R5200G)を使用し、装置CCDカメラ SONY HR−50 1/3インチ(対物レンズ10倍、波長フィルタ530nm white)で測定モード;Wave、測定面積:469.17μm×351.89μmでの測定を行い、付属の解析ソフト(VS−Viewer Version5.1.3)により撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いで補間処理(高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理)を行うことで算出できる。
積層体の最表面10Aは、その比表面積(S/A)が1.005以上であることが好ましい。比表面積を1.005以上とすることで、リンクル構造により十分に表面積が大きくなったことを意味する。そのため、光学用途においては曇り性も発現しやすくなり、比表面積を調整することで積層体のヘイズ値を調整できる。
これら観点から比表面積(S/A)は、1.01以上がより好ましく、1.05以上がさらに好ましく、1.1以上がよりさらに好ましい。
また、比表面積(S/A)は、特に限定されないが、リンクル構造の突条が高くなりすぎて構造的強度が低下することを防止するために、2以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。
なお、比表面積(S/A)は、最表面10Aにおいて、測定対象エリアの面積をA、測定対象エリアの表面積をSとすると、S/Aにより算出できる。より詳細には、後述する実施例に示す方法で求めることができる。
積層体の最表面10AのSa(算術平均粗さ)は、特に限定されないが、例えば50nm以上である。Saを50nm以上とすることで、リンクル構造により十分に凹凸が形成されたことを意味し、例えば光学材料に適用すれば曇り性の調整を行える。これら観点から、Sa(算術平均粗さ)は、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上、さらに好ましくは300nm以上である。
また、Sa(算術平均粗さ)は、特に限定されないが、リンクル構造の物理的強度を保つ観点から、好ましくは3000nm以下、より好ましくは2000nm以下、さらに好ましくは1800nm以下、よりさらに好ましくは1600nm以下、中でも好ましくは1300nm以下である。
積層体の最表面10AのSz(最大高さ)は、特に限定されないが、好ましくは4000nm以上、より好ましくは5000nm以上、さらに好ましくは6000nm以上である。Szがこれら下限値以上であると、十分な座屈が進み、突条の高いリンクル構造が形成されたことを意味する。したがって、例えば光学材料に適用すれば曇り性の調整を行える。
Sz(最大高さ)は、特に限定されないが、リンクル構造の物理的強度を保つ観点から、好ましくは20000nm以下、より好ましくは15000nm以下、さらに好ましくは13000nm以下、よりさらに好ましくは10000nm以下である。
なお、Sa及びSzは、後述する実施例に示す方法で測定することができる。
<基材>
本発明の積層体に用いられる基材は、特に限定されず、材料としては樹脂などの有機物、金属や金属酸化物などの無機物、有機無機複合体などが挙げられる。基材の形状としてはシートやフィルム、基板、容器や管を含む立体形状品などが挙げられる。本発明の基材は、樹脂からなることが好ましく、樹脂フィルム又はプラスチック容器がより好ましい。本発明の積層体は、後述する製造方法によると、複雑な形状を有する基材や、容器の内側などにも容易に凹凸を形成できる。
[樹脂フィルム]
基材として用いられる樹脂フィルムは、必要十分な剛性を備えたフィルムであれば、材質及び構成を限定するものではない。樹脂フィルムは、単層構成であっても、多層構成であってもよい。樹脂フィルムが多層構成の場合、2層、3層構成以外にも本発明の効果を阻害しない限り、4層又はそれ以上の多層であってもよい。
樹脂フィルムに使用する樹脂としては、ポリエステル、ポリアリレート類、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステル系液晶ポリマー、トリアセチルセルロース、セルロース誘導体、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリイミド、ポリシクロオレフィン類等を例示することができる。これら樹脂は、樹脂フィルムにおいて1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、樹脂フィルムが多層である場合、各層を構成する樹脂は互いに異なる種類であってもよいし、互いに同じ種類であってもよい。また、樹脂フィルムは、上記各樹脂を2種以上組み合わせて各層を構成して、単層又は多層としてもよい。
樹脂フィルムが単層構成であっても多層構成であっても、各層の主成分樹脂がポリエステルであるポリエステルフィルムであることが好ましい。
この際、「主成分樹脂」とは、ポリエステルフィルムを構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂を意味し、例えばポリエステルフィルムを構成する樹脂のうち50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂である。
樹脂フィルムの各層は、ポリエステルを主成分樹脂として含有すれば、ポリエステル以外の樹脂或いは樹脂以外の成分を含有していてもよい。
上記ポリエステルは、ホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。前記脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
他方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、セバシン酸等の1種又は2種以上を挙げることができ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種又は2種以上を挙げることができる。
ポリエステルの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が例示される。これらのなかでは、PET、PENが好ましく、より好ましくはPETである。
樹脂フィルムは、フィルム表面に微細な凹凸構造を形成して各種機能を付与する目的及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を含有してもよい。
当該粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではない。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、ポリエステルなどの樹脂成分を製造する工程で、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
上記粒子の形状は、特に限定されるわけではない。例えば球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれであってもよい。また、上記粒子の硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
上記粒子の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは0.01μm以上3μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上2.5μm以下である。5μm以下とすることで、樹脂フィルムの表面粗度が粗くなるのを防止し、樹脂層、カバー層を形成させる際に不具合が生じにくくする。
粒子の含有量は、樹脂フィルム100質量%に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.0003質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上2質量%以下である。粒子含有量をこのような範囲とすることで、フィルムの滑り性と透明性との両立が可能となる。
樹脂フィルムに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、樹脂成分を製造する過程において添加することができる。例えば、ポリエステルフィルムの場合には、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができる。好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのがよい。
樹脂フィルムには、必要に応じて、従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等を添加することができる。
樹脂フィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは12μm以上250μm以下、より好ましくは25μm以上250μm以下、さらに好ましくは50μm以上200μm以下である。
樹脂フィルムは、例えば樹脂組成物を溶融製膜方法や溶液製膜方法によりフィルム形状にすることにより形成することができる。多層構造の場合は、共押出してもよい。また、一軸延伸又は二軸延伸したものであってもよく、剛性の点から、二軸延伸フィルムが好ましい。
[プラスチック容器]
本発明において基材として用いられるプラスチック容器には特に制限はなく、有底円筒形状の容器であってもよく、底部が丸みを帯びた断面楕円形状の容器であってもよい。また、胴部に対して口部が縮径された断面略長方形状の容器であってもよい。容器の口径が縮径されたものであってもよい。
プラスチック容器を構成するプラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレート系共重合樹脂(ポリエステルのアルコール成分にエチレングリコールの代わりに、シクロヘキサンジメタノール等をコモノマーとして使用した共重合樹脂等)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合体)、アイオノマー樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスルホン樹脂、四フッ化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等が挙げられ、これらの中でも、汎用性の面でポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)やポリカーボネート樹脂(PC)が好ましい。
[樹脂以外の基材]
樹脂以外の基材としては、後述する樹脂層が基材上に定着できる限り特に限定されないが、金属、半金属、セラミックス、複合材料などが挙げられる。
金属としては、アルミニウム、銅、銀、金、鉄、ニッケルなどが挙げられ、これらの金属を単体あるいは合金で用いてもよく、好ましくはアルミニウム、銅、鉄鋼系材料のSUSなどが挙げられる。
半金属としては、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられ、これらの半金属を単体あるいは合金で用いてもよい。
セラミックスとしては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物などの無機固体材料が挙げられ、好ましくはガラス、陶磁器などが挙げられる。
複合材料は、樹脂、金属、半金属及びセラミックなどからなる2種以上の異なる材料を一体的に組み合わせた材料であり、ガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、ナノコンポジット材料などが挙げられる。
これら樹脂以外の基材としては、金属容器、ガラス容器などが好適である。
<樹脂層>
樹脂層は、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、単に「硬化性樹脂組成物」ということがある)から形成される。樹脂層は、硬化性樹脂組成物が硬化することで形成される硬化物である。硬化性樹脂組成物は硬化することで、基材、カバー層などに対して容易に接着できる。また、後述するように半硬化状態などでドライプロセスによる表面処理を行うと、面方向に沿って作用される圧縮応力に追従して座屈しリンクル構造を形成できる。
[熱硬化性樹脂組成物]
硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物である場合、当該熱硬化性樹脂組成物はバインダー樹脂を含有することが好ましく、バインダー樹脂と硬化剤を含むことがより好ましい。熱硬化性樹脂組成物は、バインダー樹脂と硬化剤を含むことで、基材、カバー層などに対する接着性を確保しつつ、圧縮応力が作用されると座屈しやすくなり、リンクル構造を形成しやすい。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、加熱することで硬化することが可能な熱硬化性樹脂であり、熱硬化性樹脂組成物が硬化剤を含む場合には、硬化剤の存在下に硬化する樹脂である。
バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂、アルコキシル基含有樹脂、変性スチレン樹脂及び変性シリコーン樹脂等を挙げることができ、これらを単独或いは2種以上組み合わせて使用することができる。バインダー樹脂は、バインダー樹脂同士を反応させて樹脂層を形成してもよい。
中でも、基材又は基材及びカバー層との密着性、及び耐熱水性の点から、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ基含有樹脂、及びアルコキシル基含有樹脂から選ばれる少なくとも1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
また、バインダー樹脂は、ウレタン硬化やエポキシ硬化などの熱架橋が可能な樹脂であればよく、後述する硬化剤として使用されるイソシアネート化合物との反応性の観点から、一分子中に水酸基を2つ以上有するポリオールであることが好ましく、中でもアクリルポリオールが好ましい。
アクリル樹脂としては、例えば(メタ)アクリル系モノマーを含む重合性モノマーを重合した(メタ)アクリル系重合体が挙げられる。(メタ)アクリル系重合体は、単独重合体であってもよいし共重合体であってもよいし、さらには(メタ)アクリル系モノマー以外の重合性モノマーとの共重合体のいずれでもよい。
(メタ)アクリル系モノマーとは、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーである。また、(メタ)アクリル系モノマー以外の重合性モノマーは、重合性官能基を有するモノマーであり、重合性官能基としては、ビニル基などの(メタ)アクリロイル基以外の炭素−炭素不飽和結合を含む官能基が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基という表現を用いた場合、「アクリロイル基」と「メタクリロイル基」の一方又は両方を意味するものとし、他の類似する用語も同様である。
重合性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの環状アルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する(メタ)アクリレートなどの重合性官能基以外の部分が炭化水素からなる炭化水素系(メタ)アクリレートが例示できる。
これらの中では、アルキル(メタ)アクリレート又は環状アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系重合体において、炭化水素系(メタ)アクリレート由来の構成単位は、例えば20質量%以上90質量%以下、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
重合性モノマーとしては、炭化水素系(メタ)アクリレート以外のモノマー成分を使用してもよく、具体的には水酸基含有モノマーを使用することが好ましい。水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、水酸基含有モノマーでいう水酸基は、芳香族環に直接結合しない水酸基である。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
水酸基含有モノマーは、上記炭化水素系(メタ)アクリレートと併用することが好ましく、したがって、アクリル樹脂は、炭化水素系(メタ)アクリレートと水酸基含有モノマーを共重合した(メタ)アクリル系共重合体、又は炭化水素系(メタ)アクリレートと水酸基含有モノマーとこれら以外のモノマー成分(その他のモノマー成分)を共重合した(メタ)アクリル系共重合体が好ましい。これにより、(メタ)アクリル系共重合体を、複数の水酸基を含有するアクリルポリオールとすることができる。
(メタ)アクリル系重合体において、水酸基含有モノマー由来の構成単位は、例えば0.5質量%以上80質量%以下が好ましく、1質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
重合性モノマーとしては、炭化水素系(メタ)アクリレート及び水酸基含有モノマー以外のモノマー成分(その他のモノマー成分)を使用してもよく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のようなカルボキシル基含有モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)メタクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグルシジル(メタ)アクリレート、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマー;エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのアクリルアミド系化合物;(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンなどのスチレン誘導体;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニルなどが挙げられる。
また、重合性モノマーは、樹脂層の耐光性などを向上させる観点から、紫外線吸収機能を有する官能基を有するモノマーを使用してもよい。具体的には、ベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、ヒンダードアミン骨格などの紫外線吸収性官能基と、(メタ)アクリロイル基などの重合性官能基を有するモノマーが挙げられる。
その他のモノマー成分(炭化水素系(メタ)アクリレート及び水酸基含有モノマー以外のモノマー成分)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル系重合体において、例えば50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。下限は特に限定されず、0質量%以上であればよい。
なお、上記各モノマー成分(炭化水素系(メタ)アクリレート、水酸基含有モノマー、その他のモノマー成分)は、上記で例示したように、分子中に重合性官能基を1つ有する単官能モノマーであることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で重合性官能基を2つ以上有する多官能モノマーを適宜含んでもよい。
(硬化剤)
硬化剤としては、上記バインダー樹脂に反応して硬化できる化合物を使用すればよいが、バインダー樹脂との硬化性の観点から好ましくはイソシアネート化合物を使用する。イソシアネート化合物を使用する場合には、バインダー樹脂はイソシアネート基と反応可能な官能基を有するとよく、官能基としては水酸基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられ、イソシアネート基との反応性の観点から、水酸基が好ましい。
したがって、硬化剤としてイソシアネート化合物、バインダー樹脂としてポリオールを使用することが好ましく、アクリル樹脂を使用する場合には、アクリル樹脂は上記のとおり1分子中に水酸基を複数含有するアクリルポリオールであることが好ましい。
イソシアネート化合物は、芳香族又は脂肪族ジイソシアネート或いは3価以上のポリイソシアネートが好ましい。イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、又はこれらの三量体を使用することができる。
また、これらイソシアネート化合物の過剰量と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、ビウレット、シアヌル酸、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物、又は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリアミド等の活性水素高分子化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物を使用してもよい。
(各成分の配合比)
熱硬化性樹脂組成物において、バインダー樹脂と硬化剤の配合比は、バインダー樹脂の水酸基の数と硬化剤のイソシアネート基の数の比を調整して混合すればよく、(イソシアネート基の数)/(水酸基の数)は0.05以上30以下が好ましく、0.1以上20以下がより好ましく、0.2以上15以下がさらに好ましい。
(熱硬化性樹脂組成物の好ましい形態)
樹脂層が熱硬化性樹脂組成物から形成される場合、当該樹脂層はウレタン結合を有する樹脂を含有することが好ましい。ウレタン結合を有する樹脂を使用することで柔軟性が確保され、ドライプロセスにより表面処理がされた際に発生する圧縮応力により座屈しやすくなる。
ウレタン結合は、上記バインダー樹脂同士の反応、及びバインダー樹脂と硬化剤との反応の少なくともいずれかにより形成されることが好ましく、中でもバインダー樹脂と硬化剤との反応により形成されることがより好ましい。これら反応によりウレタン結合を形成すると、樹脂層のカバー層、基材などに対する密着性を良好にしやすくなる。
また、バインダー樹脂との硬化性促進及び上記密着性の観点から、硬化剤としてイソシアネート化合物を用いるのが好ましい。
[活性エネルギー線硬化性樹脂組成物]
(光重合性化合物)
硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である場合、当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は光重合性化合物を含有する。光重合性化合物は、活性エネルギー線が照射されることで重合することが可能な化合物である。なお、活性エネルギー線の詳細は、後述する製造方法で述べる通りである。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物により形成される樹脂層の樹脂成分は、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートなどのプレポリマーと光重合性モノマーとを混合したもの、あるいは光重合性モノマーを単独で用いることができる。
光重合性モノマーは、ラジカル重合性基を有する化合物であれば特に限定されないが、多官能の光重合性モノマーが挙げられる。多官能の光重合性モノマーにおいて一分子中に含まれるラジカル重合性基の数は特に限定されず、2以上であればよい。
ラジカル重合性基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの炭素−炭素不飽和結合を含む官能基が挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
光重合性モノマーとして、芳香環を有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環、フェナレン環などを有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく、これらの中ではフルオレン環を有するフルオレン系多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
フルオレン系多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシポリ(エチレンオキシ))フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシポリ(プロピレンオキシ))−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシポリ(エチレンオキシ))−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどが挙げられる。
また、光重合性モノマーとしては、芳香環を有する多官能(メタ)アクリレート以外にも様々な多官能(メタ)アクリレートを使用可能であり、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどの脂肪族多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記した光重合性モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記した中では、芳香環を有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく、芳香環を有する多官能(メタ)アクリレートは他の光重合性化合物と併用してもよい。
光重合性モノマーは、単独で使用してもよいし、後述する単官能の光重合性化合物と併用してもよい。
光重合性モノマーは、多官能に限定されず、単官能光重合性モノマーでもよい。単官能の光重合性モノマーは、単独で使用してもよいが、上記のとおり多官能の光重合性モノマーと併用してもよい。
単官能光重合性モノマーは、アルキル(メタ)アクリレート、環状アルキル(メタ)アクリレート、芳香環を有する(メタ)アクリレート、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリロニトリル、スチレン誘導体、ハロゲン化ビニルなどが挙げられる。これらの具体的な化合物としては、上記した(メタ)アクリル系重合体において例示したものが適宜使用できる。
(光重合開始剤)
硬化性樹脂組成物は、光重合性化合物を含む場合、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤を含有することで、後述するように樹脂層前駆体に活性エネルギー線を照射することで樹脂層前駆体を容易に硬化させることができる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノンやその誘導体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−ヒドロキシアセトフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類、オキシムエステル化合物などが挙げられる。中でも、α−ヒドロキシアルキルフェノン類は硬化時に黄変を起こしにくく、透明な硬化物が得られるので好ましい。
光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以下の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.2質量部以上3質量部以下の範囲である。光重合開始剤の含有量が0.05質量部以上であることで、所望する開始効果が得られ、また、光開始剤の含有量が5質量部以下であることで、活性エネルギー線の照射より、硬化性樹脂組成物が硬化されすぎず、半硬化状態に留めやすくなる。
なお、以上の説明では、硬化性樹脂組成物は、熱硬化性又は活性エネルギー線硬化性のいずれかを有する態様について説明したが、熱及び活性エネルギー線の両方により硬化可能な熱及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であってもよい。この場合には、硬化性樹脂組成物は、バインダー樹脂及び光重合性化合物の両方を含むとよい。
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の主旨を損なわない範囲で、内消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料、無機粒子及び有機粒子等を含有してもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
[樹脂層の厚み]
樹脂層の厚み(tb)は、形成したい凹凸の段差や用途に応じて調整すればよく制約はないが、0.1μm以上15μm以下であることが好ましい。15μm以下であれば、樹脂層自体の内部応力によって基材から剥離することなどを防止できる。0.1μm以上の厚みであれば、樹脂層の厚みを均一に保つことができ、リンクル構造により一定以上の粗さを確保できる。かかる観点から、樹脂層の厚み(tb)は、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、よりさらに好ましくは2μm以上であり、また、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下である。
なお、樹脂層、並びに後述するカバー層及びオーバーカバー層の厚みは、微細形状測定機を使用した段差測定、あるいは走査電子顕微鏡(SEM)及び/又は透過電子顕微鏡(TEM)を使用した断面観察により、最大厚み(凸の山部)と最小厚み(凹の谷部)を測定し、これらの平均値により求めることができる。
<カバー層>
本発明においては、上記のとおり、樹脂層の上にカバー層を形成することが好ましい。カバー層は、樹脂層の上に直接接触する層として形成すればよい。カバー層は、具体的には、無機物含有層、カバー樹脂層などが挙げられる。これらの中では、無機物含有層が好ましい。
なお、以下の説明においては、後述するオーバーカバー層を構成する無機物含有層と区別するために、カバー層を構成する無機物含有層を無機物含有層(1)ということがある。
[無機物含有層(1)]
無機物含有層(1)は、無機物により形成され、無機物を主成分として含有する層である。なお、無機物を主成分として含有するとは、無機物含有層の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上、中でも100質量%を無機物が占めるということを意味する。無機物含有層(1)は、樹脂層との密着性が良好な無機物により形成するとよい。また、無機物含有層(1)は、ドライプロセスにより樹脂層の上に容易に成膜できる材料を使用して形成することが好ましい。
無機物含有層(1)は、無機物として、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、又はこれらの複合物から選ばれる少なくとも一種から形成されることが好ましい。なお、ここでいう金属には、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウムなどのいわゆる半金属も含まれる。
無機物含有層(1)において、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、又はこれらの複合物を構成する金属としては、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、チタン、ニオブ、金、銀、銅、インジウム、スズ、ニッケルなどが挙げられ、中でもケイ素、ニオブが好ましく、より好ましくはケイ素である。
無機物含有層(1)に使用される無機物は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、炭化ケイ素、フッ素含有酸化ケイ素、フッ素含有炭化ケイ素などのケイ素系化合物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウムなどのアルミニウム系化合物、酸化ニオブなどのニオブ系化合物、酸化亜鉛などの亜鉛系化合物、酸化チタンなどのチタン系化合物、ダイヤモンドライクカーボン、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン及び、ITO、IZOなどの導電性酸化物から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
無機物含有層(1)は、積層体の硬度を高くでき、積層体の耐久性を良好にできる観点から、上記した中でも、無機物としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化炭化ケイ素、及び炭化ケイ素の少なくともいずれかを含む層であることが好ましく、DLC、酸化ケイ素及び酸化ニオブの少なくともいずれかを含む層であることがより好ましい。これらの中でも、無機物含有層は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)により形成されたDLC層がより好ましい。DLCを使用することで、無機物含有層(1)成膜時に発生する膜応力が大きくなりやすく、上記した高次リンクル構造を形成しやすくなる。
[カバー樹脂層]
カバー樹脂層は、後述するドライプロセスにより樹脂層の上に成膜することが好ましい。カバー樹脂層は、樹脂成分により形成され、樹脂成分を主成分として含有する層である。ここで、樹脂成分を主成分として含有するとは、カバー樹脂層の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上、中でも100質量%が樹脂成分が占めるということを意味する。
カバー樹脂層に使用される樹脂成分としては、ドライプロセスにより樹脂層の上に成膜できる樹脂成分を好ましく使用できる。具体的な樹脂成分としては、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレンなどが挙げられ、中でもフッ素系樹脂により形成されたフッ素系樹脂層が好ましい。フッ素系樹脂を使用することで、ドライプロセスにより容易に樹脂層の上にカバー樹脂層を成膜できる。また、フッ素系樹脂を使用することで、カバー樹脂層が最表面となる場合には、積層体に耐薬品性、滑り性又は撥液性を付与しやすくなる。
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などが挙げられる。
[カバー層の形成]
なお、カバー層は、後述するようにドライプロセスにより形成されることが好ましいが、必ずしもドライプロセスにより形成される必要はない。カバー層をドライプロセスにより形成しない場合には、実施例13に示すように予め別のドライプロセスにより樹脂層にリンクル構造を含む凹凸を形成し、その後にカバー層を成膜すればよい。
このようにドライプロセス以外にカバー層を形成する場合には、無機物含有層、カバー樹脂層に使用される無機物、樹脂成分には上記以外のものも使用できる。具体的には、上記した樹脂成分以外にも、後述するオーバーカバー層に使用できる樹脂成分として例示したものを使用してもよい。
[カバー層の厚み]
カバー層の厚み(ta)は、5nm以上300nm以下が好ましい。カバー層の厚み(ta)を上記範囲内にすることで、ドライプロセスにより成膜した際に適度に膜応力が発生し、樹脂層に対して適度に圧縮応力を作用させ、所望の粗さのリンクル構造を形成しやすくなる。積層体の最表面に所望の凹凸を形成しやすくする観点から、カバー層の厚み(ta)は、10nm以上250nm以下がより好ましく、20nm以上200nm以下がさらに好ましい。
[カバー層と樹脂層との厚み比率(ta/tb)]
本発明において、樹脂層の厚み(tb、単位:μm)に対するカバー層の厚み(ta、単位:nm)の比(ta/tb)は、0.1以上3500以下が好ましい。厚み比を上記範囲内とすることで、ドライプロセスによりカバー層を成膜した際に、該ドライプロセスにより所望の粗さのリンクル構造の凹凸を形成しやすくなる。また、カバー層成膜前に予めリンクル構造を含む凹凸を樹脂層表面に形成している場合には、カバー層による凹凸の平滑化が防止できる。積層体の最表面に所望の凹凸を形成しやすくする観点から、上記厚み比は、1以上500以下がより好ましく、2以上400以下がさらに好ましく、5以上250以下がよりさらに好ましい。
<オーバーカバー層>
オーバーカバー層は、カバー層の上にさらに設けられる層である。オーバーカバー層としては、無機物含有層、オーバーカバー樹脂層などが挙げられる。オーバーカバー層は、材料を適宜変更することで様々な機能を積層体の最表面に付与することができる。オーバーカバー層は、1層単層からなるものでもよいし、2層以上が積層されてもよい。2層以上のオーバーカバー層が設けられる場合、例えば、1層以上の無機物含有層と、1層以上のオーバーカバー樹脂層の組み合わせでもよい。
なお、以下の説明においては、上記したカバー層を構成する無機物含有層(1)と区別するためにオーバーカバー層を構成する無機物含有層を無機物含有層(2)ということがある。
[無機物含有層(2)]
無機物含有層(2)は、無機物により形成され、無機物を主成分として含有する層である。無機物含有層(2)は、カバー層が無機物含有層(1)である場合には、無機物含有層(1)と組成が異なるとよく、例えば無機物含有層(1)に含有される無機物と異なる無機物を含むとよい。
無機物含有層(2)は、カバー層との密着性が良好な無機物により形成するとよい。また、無機物含有層(2)は、ドライプロセスによりカバー層の上に成膜できる材料がよいが、ドライプロセス以外の方法によりカバー層の上に成膜できる材料でもよい。
無機物含有層(2)は、無機物として、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、金属、金属酸化物及び金属窒化物、金属炭化物、又はこれらの複合物から選ばれる少なくとも一種を含む薄膜から形成されることが好ましい。
無機物含有層(2)において、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、又はこれらの複合物を構成する金属としては、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、チタン、ニオブ、金、銀、銅、インジウム、スズ、ニッケルなどが挙げられ、中でもケイ素、ニオブが好ましく、より好ましくはケイ素である。
無機物含有層(2)に使用される無機物は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、炭化ケイ素、フッ素含有酸化ケイ素、フッ素含有炭化ケイ素などのケイ素系化合物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウムなどのアルミニウム系化合物、酸化ニオブなどのニオブ系化合物、酸化亜鉛などの亜鉛系化合物、酸化チタンなどのチタン系化合物、ダイヤモンドライクカーボン、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン及び、ITO、IZOなどの導電性酸化物からなる選択される少なくとも一種であることが好ましい。
無機物含有層(2)は、上記した中でも、無機物として炭化ケイ素を含む層であることが好ましく、すなわち、無機物含有層は、無機物として炭化ケイ素を使用した炭化ケイ素層であることが好ましい。炭素ケイ素を使用することで、積層体の最表面の硬度を高くでき、積層体の耐熱性、耐久性なども良好にできる。
[オーバーカバー樹脂層]
オーバーカバー樹脂層は、樹脂成分により形成され、樹脂成分を主成分として含有する層である。オーバーカバー樹脂層は、カバー層がカバー樹脂層である場合には、カバー層と組成が異なるとよく、例えばカバー樹脂層に含有される樹脂成分と異なる樹脂成分を含むとよい。
オーバーカバー樹脂層に使用できる樹脂成分としては、カバーコート層に接着できる限り特に限定されず、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
上記した中では、フッ素系樹脂を使用したフッ素系樹脂層が好ましい。フッ素樹脂層を使用することで、積層体に耐薬品性、滑り性又は撥液性を付与しやすくなる。また、フッ素系樹脂の具体的な化合物は、上記カバー層で述べたとおりである。これら樹脂を使用することで、オーバーカバー樹脂層をドライプロセスにより形成可能である。
[オーバーカバー層の厚み]
オーバーカバー層の厚みは、樹脂層によって形成されたリンクル構造の凹凸が最表面において現れる限り特に限定されないが、5nm以上300nm以下が好ましく、10nm以上250nm以下がより好ましく、20nm以上200nm以下がさらに好ましい。
<積層体の製造方法>
本発明の積層体はいかなる製造方法で製造してもよいが、本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法は、以下の工程1〜工程3を備える。
工程1:基材の少なくとも一方の面に硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層前駆体を形成する工程
工程2:工程1で形成した樹脂層前駆体を半硬化させる工程
工程3:工程2で半硬化させた樹脂層前駆体に対してさらにドライプロセスによる表面処理を行い、基材の一方の面側の表面においてリンクル構造を含む凹凸を形成する工程
ただし、工程2は、後述するように省略してもよく、したがって、工程3では未硬化の樹脂層前駆体に対して表面処理を行ってもよい。
以下、各工程についてより詳細に説明する。
[工程1]
工程1では、基材の少なくとも一方の面に硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層前駆体を形成する。
工程1で使用される硬化性樹脂組成物の詳細は上記で説明したとおりである。硬化性樹脂組成物は、必要に応じて水、有機溶剤などの溶媒により希釈されていてもよい。なお、水、有機溶剤などの溶媒により希釈される場合、上記で述べた硬化性樹脂組成物の量(質量部など)、及び組成物を構成する各成分の量は、固形分基準を意味する。
使用する有機溶剤としては特に限定されず、硬化性樹脂組成物の組成に応じて溶解性や分散性などの観点から選べばよく、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、ジメチルグリコール、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート系溶媒、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、各種アルカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。硬化性樹脂組成物を構成する成分は、溶媒に溶解していてもよいし、溶媒中に分散していてもよい。
硬化性樹脂組成物は、水、有機溶剤などにより希釈される場合には、固形分濃度が例えば0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは3質量%以上40質量%以下程度となるように調整することが好ましい。
硬化性樹脂組成物を基材上に塗布する方法としてはリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、スピンコート等の従来公知の塗工方式を用いることができる。
また、基材が樹脂フィルムの場合には、硬化性樹脂組成物をインラインコーティングによって塗布してもよい。インラインコーティングとは、樹脂フィルムを形成した製造ライン上で硬化性樹脂組成物を塗布することをいう。
塗布後の溶剤の乾燥は、オーブンによる加熱乾燥や減圧乾燥機による無加熱の乾燥を用いることができる。
なお、硬化性樹脂組成物を塗布する基材表面には、予めコロナ処理、プラズマ処理、UVオゾン処理等の表面処理を施してもよい。
[工程2]
工程2では、上記工程1で形成した樹脂層前駆体中の硬化性樹脂組成物を半硬化状態とする。ここでいう半硬化とは、硬化性樹脂組成物を完全に硬化させていない状態をいい、さらに熱を照射させ、又はエネルギー線を照射すると、硬化性樹脂組成物の硬化が更に進行する状態をいう。
硬化性樹脂組成物が半硬化であるか否かは、例えば、溶剤を浸した綿棒で樹脂層前駆体の表面を軽く50回擦り、基材の表面が露出するか否かで確認できる。硬化性樹脂組成物が完全に硬化していれば、樹脂層前駆体の表面を擦っても基材の表面が露出しない。半硬化の度合いは、樹脂層前駆体の表面が膜減り始める擦り回数や基材の表面が露出するまでの擦り回数などから判断できる。なお、綿棒を浸す溶剤は、硬化性樹脂組成物を希釈した溶媒と同じものを用いることが好ましい。
半硬化とする目的は、工程1で得た樹脂層前駆体を工程3の真空ドライプロセスに持ち込む前にハンドリングしやすい性状とすること、及び、工程3で形成するリンクル構造を制御することにある。
よって例えば、工程1で得た樹脂層前駆体のタックが強くて取り扱いが難しい場合は半硬化処理を行うことが好ましいが、取り扱い上問題がなければ本工程2は必須ではなく、加熱やエネルギー線照射を行わなくてもよい。
また、硬化性樹脂組成物を半硬化状態とすることで、工程3におけるドライプロセスによる表面処理により樹脂層前駆体が座屈しやすくなり、リンクル構造を含む凹凸を形成しやすくなる。
硬化性樹脂組成物が熱硬化性を有する場合、本工程2では、上記工程1で形成した樹脂層前駆体を加熱により半硬化させる。樹脂層前駆体を半硬化させる方法は、自然乾燥などのように常温で行ってもよいが、実用上の観点から、加熱乾燥などのように加熱により行うことが好ましい。なお、工程1の溶剤の乾燥を加熱乾燥で行う場合は、当該溶剤の乾燥が本工程2を兼ねていてもよい。
また、硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性を有する場合、本工程2では、工程1で形成した樹脂層前駆体に活性エネルギー線を照射することで樹脂層前駆体を半硬化させる。ただし、樹脂層成分として熱及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる場合などには、加熱のみ、あるいは活性エネルギー線の照射のみで樹脂層前駆体を半硬化させてもよいし、加熱と活性エネルギー照射を併用して樹脂層前駆体を半硬化させてもよい。
樹脂層前駆体を加熱により半硬化させる場合、その加熱温度及び加熱時間は、硬化性樹脂組成物に含まれる成分に応じて設定すればよいが、例えば50℃以上200℃以下、好ましくは70℃以上150℃以下の温度で、例えば3秒以上30分以下、好ましくは30秒以上10分以下、より好ましくは40秒以上5分以下の時間で樹脂層前駆体を加熱する。
また、活性エネルギー線を照射することで樹脂層前駆体を半硬化させる場合、使用される活性エネルギー線としては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。
紫外線照射により樹脂層前駆体を半硬化させる場合には、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LEDランプ等を用いればよい。また、紫外線は、樹脂層前駆体が半硬化する程度に照射すればよく、その照射量は特に限定されないが、例えば0.5〜5000mJ/cm、好ましくは1〜2000mJ/cm程度の積算光量で紫外線を照射すればよい。
[工程3]
工程3は、工程2で半硬化させた樹脂層前駆体、又は未硬化の樹脂層前駆体に対してさらにドライプロセスによる表面処理を行い、基材の一方の面側の表面にリンクル構造を含む凹凸を形成する工程である。工程3ではドライプロセスによってカバー層を形成してもよいが、カバー層を形成せず、成膜を伴わないドライプロセス処理を行ってもよい。
また、リンクル構造は、上記のとおり高次リンクル構造を有することがあるが、高次リンクル構造は、工程3において形成されるとよい。
なお、ドライプロセスは、半硬化させた樹脂層前駆体、又は未硬化の樹脂層前駆体に減圧下又は真空中で表面処理を行う手法である。
本実施形態において、ドライプロセスによる表面処理でリンクル構造を含む凹凸が形成される原理、及び高次リンクル構造が形成される原理は定かではないが、以下のように推定される。
半硬化又は未硬化の樹脂層前駆体に対してドライプロセスによってカバー層を形成すると、樹脂層前駆体がドライプロセス処理によるエネルギー(プラズマからの光、輻射熱、電子やイオン、あるいは、入射粒子から受けるエネルギー)を受けて硬化が進むと考えられる。その際、ドライプロセス処理によるエネルギーを受けた樹脂層前駆体が昇温しながら硬化収縮し流動性を失っていく過程と、カバー層が成長するときに膜応力を生成する過程が同時に進行する。その中で、樹脂層前駆体の面方向に沿う圧縮応力が大きくなり、樹脂層前駆体がその圧縮応力に対して抵抗できなくなった時点で座屈が起こり、リンクル構造が形成されると推定される。
また、カバー層を形成せず、成膜を伴わないドライプロセスであっても、同様にドライプロセス処理によるエネルギーにより樹脂層前駆体に面方向に沿う圧縮応力が生成し、樹脂層前駆体がその圧縮応力に対して抵抗できなくなった時点で座屈が起こりリンクル構造が形成されると推定される。
なお、カバー層を形成する際に、カバー層成膜時に発生する膜応力が大きい場合には、早い段階で1度目の座屈が起こって大きなうねり(一次リンクル構造)が生成し、その後、樹脂流動性が少し下がった段階で2度目の座屈が起こると小さなうねり(二次リンクル構造)が生成すると考えられる。
なお、リンクル構造におけるうねりの大きさ(すなわち、表面粗さ(Sa、Sz)、比表面積S/Aなど)は、樹脂層及びカバー層の厚み、樹脂層前駆体の半硬化又は未硬化状態における硬さ、樹脂流動性のバランスで変化すると推定される。したがって、うねりの大きさは、樹脂層及びカバー層の厚み、樹脂層及びカバー層に含有される成分、及び硬化条件などを適宜変更することで調整できる。
また、ドライプロセスによる表面処理は、上記のとおり樹脂層前駆体の硬化を進行させるものであり、工程3では例えば樹脂層を全硬化させてもよい。なお、全硬化とは、樹脂層を加熱し、又は活性エネルギー線を照射させても、硬化が実質的に進行しない状態を意味する。
本製造方法では、ドライプロセスによる表面処理によってカバー層を形成することが好ましい。ドライプロセスによる表面処理によってカバー層を形成すると、上記のとおり膜応力が生じて、リンクル構造を形成しやすくなり、さらには高次リンクル構造も形成可能となる。また、ドライプロセスによる表面処理によってカバー層を形成することで、工程3において、リンクル構造を含む凹凸を形成しつつ、カバー層も形成できるので工程を簡略化できる。
なお、ドライプロセス処理を行ったか否かは、断面をSEM及び/又はTEMで観察することによって判断できる。例えば、カバー層が結晶性材料からなる場合、カバー層の厚み方向で結晶粒径が変化していれば、ドライプロセス処理を行っていると判断できる。ドライプロセスによる成膜が進行するにつれて樹脂層表面に生成した結晶核が成長し、徐々に粒径が拡大していくため、カバー層表面の結晶粒径が最も大きくなり、樹脂層に近づくにしたがって結晶粒径が小さくなる傾向がある。
一方で、溶剤を塗布するウェット処理を行っている場合はこのような結晶粒径の変化は見られない。ウェット処理の場合は、塗膜を乾燥させる過程で溶剤が蒸発するため、カバー層の厚み方向全体にわたって微小なボイドが生じやすく低密度な膜となりやすい。
ドライプロセスによる表面処理によってカバー層を形成する場合、当該ドライプロセスによる表面処理は、例えば、化学的気相蒸着(CVD)、物理的気相蒸着(PVD)などが挙げられる。
ドライプロセスは、真空又は減圧下で行われる処理であることが好ましい。真空又は減圧下で表面処理が行われると、半硬化又は未硬化の樹脂層前駆体は酸素が少ない雰囲気下に置かれることになり、ドライプロセスにより硬化が進行しやすくなる。そのため、真空又は減圧下でドライプロセスを行うと、リンクル構造を形成しやすい。特に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の場合は、ラジカル重合を妨げる酸素阻害が抑制されることから架橋が進みやすくなる。
真空又は減圧下で行われるドライプロセスにおける圧力は、ドライプロセスの手法にもよるが、例えば15Pa以下、好ましくは10Pa以下、より好ましくは1Pa以下である。また、ドライプロセスにおける圧力の下限は、特に限定されないが、各装置の性能限界を考慮すると、例えば、1×10−7Paである。
CVDは、特に限定されず、プラズマCVD、熱CVD、cat−CVD(触媒化学気相成長法)などがあるが、プラズマCVDが好ましい。プラズマCVDを使用することで、リンクル構造を形成しやすくなる。CVDは、リンクル構造を形成しやすくする観点から減圧下で行うことが好ましく、カバー層を形成する際の圧力は、成膜速度と凹凸構造形成性との観点から、好ましくは15Pa以下、より好ましくは1×10−2Pa以上10Pa以下、更に好ましくは1×10−1Pa以上1Pa以下である。
カバー層を形成する際の出力条件は、カバー層に必要十分な膜応力を発生させる観点から、好ましくは100W以上1500W以下、より好ましくは300W以上1200W以下、更に好ましくは400W以上1000W以下である。
カバー層の膜厚調整は、公知の方法で行うことができ、例えば、プラズマCVDを使用する場合、出力、原料ガスの圧力、原料ガスの濃度、プラズマ発生時間等を調節することなどによりできる。
CVDにより表面処理を行う場合、カバー層には耐水性、耐久性向上のため、必要に応じて、電子線照射による架橋処理を施してもよい。
CVDは、例えば、無機物含有層(1)、カバー樹脂層を形成する際に使用することが好ましく、特にDLCを無機物として含む無機物含有層、炭化ケイ素及び/又は酸化ケイ素を無機物として含む無機物含有層、フッ素系樹脂などを樹脂成分として含むフッ素系樹脂層などを形成する際に好適に使用できる。
PVDとしては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどが挙げられ、これらの中では、真空蒸着、スパッタリングが好ましい。PVDは、例えば、無機物含有層(1)に含有させる無機物として、金属、酸化ニオブ、酸化ケイ素などの金属酸化物、金属窒化物などを使用する場合に好適である。
また、真空蒸着は、無機物含有層(1)に含有される無機物が金、銀、銅、アルミニウムなどの金属、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、フッ化カルシウムなどのフッ化物を使用する場合に好適であり、また、スパッタリングは、無機物含有層(1)に含有される無機物が金、銀、銅、アルミニウムなどの金属、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、ITO、IZOなどの金属酸化物を使用する場合に好適である。
PVDによりカバー層を形成する際の圧力は、凹凸構造形成性と真空排気能力などの観点から、好ましくは1×10−7Pa以上20Pa以下、より好ましくは1×10−6Pa以上10Pa以下、更に好ましくは1×10−4Pa以上5Pa以下である。
ドライプロセスによる表面処理によりカバー層を形成する場合には、カバー層を形成するための原料を適宜選択して、ドライプロセスを行うとよい。
例えば、無機物としてDLCを含む無機物含有層をCVDにより形成する場合には、原料として炭化水素などを使用するとよい。具体的には、式C4n+64n+12で(nは1以上の整数)表される脂環式炭化水素、例えば、アダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ペンタマンタン、テトラマンタン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセチレン、エチレン、プロピレン、メタン、エタン、プロパン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。これら原料は、各化合物を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。また、原料ガスをアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の希ガスで希釈して使用してもよい。
もちろん、DLCを含む無機物含有層(1)は、PVDにより形成してもよい。
また、例えば無機物として炭化ケイ素を含む無機物含有層をCVDにより形成する場合には、原料としてテトラメチルシラン、ヘキサメチルジシランなどのオルガノシランを使用するとよい。また、シラン、ジシランなどのケイ素成分と、炭素原子数1〜6のアルカンなどの炭素成分の混合ガスに適宜水素ガスも混入させてもよい。ただし、炭化ケイ素を形成できる限り、他の原料を使用してもよい。
さらに、例えば、フッ素樹脂層をCVDにより形成する場合には、原料として、CF、C、C、C、C、Cなどのフッ素系ガスを使用すればよい。
さらに、例えば無機物として炭化酸化ケイ素を含む無機物含有層をCVDにより形成する場合には、原料としてのケイ素化合物(以下、「ケイ素化合物原料」ともいう)を使用すればよい。ケイ素化合物原料は、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても使用できる。気体の場合にはそのまま反応器内部(例えば、放電空間)に導入することもできる。液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用することができる。また、溶媒希釈してから使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒を使用することができる。
上記ケイ素化合物原料としては、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、メチルシリケート(例えば、コルコート株式会社製「メチルシリケート51」)等を挙げることができる。
工程3におけるドライプロセスによる表面処理において、カバー層が形成されなくてもよい。カバー層が形成されない場合の表面処理は、表面処理により樹脂層前駆体が座屈してリンクル構造を含む凹凸を形成できる限り特に限定されないが、プラズマ処理などが挙げられる。
プラズマ処理としては、特に限定されないが、真空又は減圧プラズマ処理などの方法で行うとよいが、これらの中では真空プラズマ処理が好ましい。また、プラズマ処理は、ガスをプラズマ化してプラズマ処理を行えばよい。使用するガスの種類は、例えば、酸素ガス、水素ガス、窒素ガス、又はアルゴンやヘリウムのような希ガスが挙げられる。ガスは、これらのガスの1種のみを用いてもよく、2種類以上のガスを混合して用いてもよい。これらの中ではアルゴンが好ましい。
本実施形態では、上記したように硬化が十分に進んでいない樹脂層前駆体に対してドライプロセスによる表面処理を行う。したがって、リンクル構造を安定的に形成するために、樹脂層前駆体を半硬化させた後(工程2)、ドライプロセスによる表面処理(工程3)に移るまでの時間や保存温度を調整することが好ましい。
工程2と工程3の間のインターバル(すなわち、加熱及び/又は活性エネルギー線照射が終了してから、ドライプロセスによる表面処理を開始するまでの時間)は、表面処理を開始させる際に樹脂層前駆体が所望の半硬化状態になる限り特に限定されないが、例えば24時間以下、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下である。当該インターバルの下限は特に限定されず、0分以上であればよい。
また、工程2と工程3の間のインターバルでは、特に限定されないが、樹脂層前駆体が形成された基材を例えば0℃以上40℃以下、好ましくは5℃以上30℃以下の温度で放置すればよい。
また、インターバル時間が長い場合には、工程2と工程3の間で硬化が進行することも考慮して、工程2における加熱条件、活性エネルギー線の照射条件などを適宜選択すればよい。
本製造方法においては、以上の工程1〜工程3、又は工程1及び工程3を経ることで、基材の上に樹脂層、又は樹脂層及びカバー層が形成されるとともに、樹脂層表面又はカバー層表面にリンクル構造を含む凹凸を形成することができる。
[工程4]
本製造方法では、上記工程1〜工程3、又は工程1及び工程3の後に以下の工程4をさらに備えてもよい。
工程4:工程3で表面処理を行った基材の一方の面側にカバー層を形成し、又は表面処理により形成されたカバー層の上にオーバーカバー層を形成する工程
本製造方法は、工程4を備えることで、上記した表面処理が施された樹脂層の上にカバー層、又は既にカバー層がある場合にはオーバーカバー層を形成できる。
工程4において、カバー層又はオーバーカバー層は、工程3において無機物含有層、樹脂層を形成する方法と同様の方法で形成することができ、すなわち、無機物含有層、樹脂層は、ドライプロセスによる表面処理により形成するとよい。これら各層の形成方法の具体的な説明は、工程3において説明したとおりであるので、その説明は省略する。
また、工程4においてカバー層又はオーバーカバー層は、ドライプロセス以外の方法によっても形成でき、例えば、無機物、樹脂成分、又は無機物及び樹脂成分を含む塗布液を、基材の一方の面側に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を必要に応じて乾燥、硬化などすることで形成してもよい。
<積層体の用途>
本発明の積層体は、食品包装用、日用品包装用、工業品、医薬品の包装用などに好適に使用できる。具体的には、食品、化粧品、シャンプー、リンス等の日用品、医薬品、各種工業品などのボトル容器、パウチ容器などの各種容器や、フィルムなどの包装材料として使用できる。包装材料では、撥水性、撥油性を付与することで、内容物の付着防止のための構成部材として好適に使用できる。
また、積層体は、光学材料にも使用できる。光学材料としては、窓ガラス、レンズ、基板などが挙げられる。光学材料では、リンクル構造の凹凸により曇り性を付与することで、光学材料のヘイズ、光透過性を制御することができる。
本発明の積層体は、本発明の効果を損なわない程度において、用途に応じて、当該積層体の最表面となる樹脂層、カバー層又はオーバーカバー層の上にコート層を設けてもよい。例えば、付着防止用途においては、撥液効果を有するコート層を設けることによって、積層体の表面に付着防止性を付与できる。
<語句の説明>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
本発明で用いた測定法及び評価方法は次のとおりである。
(1)樹脂層の厚みの測定方法
樹脂層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片を再度RuO染色し、樹脂層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7650」、加速電圧100kV)を用いて測定した。
なお、厚みは、最大厚みと最小厚みの平均値を用いた。
(2)カバー層及びオーバーカバー層の厚みの測定方法
エポキシ樹脂包埋超薄切片法で試料を調整し、断面TEM装置(日本電子株式会社製「JEM−1200EXII」)により加速電圧120kVの条件で測定した。
(3)Sa(算術平均粗さ)、Sz(最大高さ)及び比表面積(S/A)
三次元非接触表面形状計測機((株)菱化システムのVertScan2.0 R5200G)を用いて積層体における最表面のSa,Sz、及び比表面積(S/A)を測定した。測定は10倍対物レンズで496.17μm×351.89μmの範囲で行った。
なお、比表面積(S/A)において、Aは測定対象エリアの面積、Sは測定対象エリアの表面積、S/Aは測定対象エリアの比表面積を表す。
(4)偏り度の測定
ISO25178に基づき、明細書記載の方法で得られた積層体における最表面の偏り度Sskを測定した。
(5)表面観察
基材の一方の面側における積層体の最表面を、走査型顕微鏡を用いて5千倍、5万倍で撮影して、60μm×40μmの観察画像、及び6μm×4μmの観察画像を得た。各観察画像のいずれかにおいて、不規則なしわのような凹凸(リンクル構造の凹凸)が見られた場合にA(good)と評価し、いずれの観察画像においてもリンクル構造の凹凸が見られなかった場合にB(poor)と評価した。
また、高次リンクル構造の有無については、60μm×40μmの観察画像と6μm×4μmの観察画像の両方でリンクル構造の凹凸が見られた場合にAと評価し、いずれか一方又は両方の観察画像においてリンクル構造の凹凸が見られなかった場合にBと評価した。さらに、実体顕微鏡(ライカマイクロシステムズ(株)のLEICA S9i)を用いて1倍で観察した、5.2mm×6.9mmの観察画像においてもリンクル構造の凹凸が見られた場合には、Sと評価した。
実施例1
(熱硬化性樹脂組成物(AC1)の調製)
バインダー樹脂としてのアクリルポリオール(株式会社日本触媒製、製品名「UV−G301」)2.00質量部と、硬化剤としてのイソシアネート系化合物(三井化学株式会社製、製品名「タケネートD−165N」、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物)2.46質量部と、溶剤としての酢酸エチル10.70質量部とを混合して、固形分濃度21.83質量%の熱硬化性樹脂組成物(AC1)の希釈液を用意した。
(樹脂層前駆体の形成)
得られた熱硬化性樹脂組成物(AC1)の希釈液を、基材としてのPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製、製品名「T100タイプ」、厚み188μm)の一方の面上に、硬化後の厚みが表1に記載される通りになるように塗布して、80℃で1分間加熱することで、乾燥かつ硬化して、半硬化の樹脂層前駆体を形成した。その後、室温(23℃)で3時間放置した後、直ちに以下に示すCVD処理を開始した。
(カバー層の形成)
プラズマCVD装置(ユーテック株式会社製)を使用して、アセチレンガスを導入して、分圧を1Paとし、1Paの真空下にて電力500WでCVDを行い、半硬化の樹脂層前駆体上に厚み90nmの無機物含有層(1)(DLC層)を形成し、基材/樹脂層/カバー層の積層構造を有する積層体を得た。
(表面観察)
実施例1の積層体の最表面を5千倍、5万倍で撮影した画像を図6、7に示す。図6、7に示すように、各観察画像において、不規則な突条が現れており、リンクル構造が見られた。また、倍率比が10倍である両観察画像でリンクル構造が見られたことから、最表面に現れた凹凸は、一次及び二次リンクル構造を有することが理解できる。
実施例2〜5
樹脂層の厚みを表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。なお、代表的に実施例3の5千倍、5万倍の観察画像を図8、9、実施例5の5千倍、5万倍の観察画像を図10、11に示す。
実施例6
カバー層を形成した後に、以下に示す方法でカバー層の上にオーバーカバー層を形成した以外は実施例4と同様に実施し、基材/樹脂層/カバー層/オーバーカバー層の積層構造を有する積層体を得た。
(オーバーカバー層の形成)
プラズマCVD装置(神港精機(株)製)を用いて、原料ガスとしてテトラメチルシランを20sccmで導入し、さらにアルゴンを50sccmで導入して、0.15Paの減圧下にて電力500WでCVDを行い、カバー層の上に、厚み20nmの炭化ケイ素(SiC)層を形成した。
実施例7、8
無機物含有層(1)(DLC層)の厚みが表1に記載されるとおりになるようにDLC層を形成した以外は、実施例4と同様に実施した。
実施例9
カバー層の形成を以下の方法で実施して、カバー層を酸化ニオブ(NbOx)層とした以外は、実施例4と同様に実施した。基材の一方の面側における積層体の最表面の5千倍、5万倍の観察画像を図12、13に示す。
(カバー層の形成)
スパッタリング装置((株)エイコー製)を使用して、ニオブをターゲット材料として用い、アルゴン4sccmと酸素6sccmを導入して、0.8Paの減圧下にて電力100Wの条件下で、反応性スパッタリングを行い、半硬化の樹脂層前駆体上に厚み90nmの無機物含有層(1)(酸化ニオブ層)を形成した。
実施例10
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(AC2)の調製)
光重合性化合物としてのフルオレン系2官能アクリレート(大阪ガスケミカル社製、製品名「オグソールEA−0250P」)99.5質量部と、光重合開始剤(IGM Resins B.V.社製品名「Omnirad184」、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)0.5質量部を、溶剤であるメチルイソブチルケトン(MIBK)に固形分濃度が10質量%となるように添加し溶解させて、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の希釈液を得た。
(半硬化の樹脂層前駆体の形成)
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(AC2)の希釈液を、基材としてのPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製、製品名「T100タイプ」、厚み188μm)の一方の面上に、乾燥後の厚みが表1に記載される通りになるように塗布して、80℃で1分間加熱することで乾燥させ、その後、紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製)を使用して、高圧水銀ランプの紫外線を積算光量427mJ/cm照射して硬化して、半硬化の樹脂層前駆体を形成した。その後、室温(23℃)で3時間放置した後に、以下に示すCVD処理を開始した。
(カバー層の形成)
その後、無機物含有層(1)(DLC層)の厚みが表1に記載されるとおりになるように、DLC層を形成した以外は、実施例1と同様にカバー層を形成した。
実施例11
カバー層の形成を以下の方法で実施して、カバー層を酸化ケイ素(SiOx)層とした以外は、実施例10と同様に実施した。
(カバー層の形成)
真空蒸着装置((株)アルバック製)を使用して、酸化ケイ素を蒸着源として、真空蒸着を行い、半硬化の樹脂層前駆体上に厚み50nmの無機物含有層(1)(酸化ケイ素層)を形成した。
実施例12
基材としてPETボトル(日本メデカルサイエンス社製のPET広口瓶、容量100ml、側壁面厚み800μm)を使用し、PETボトルの側壁面の内面(一方の面)に熱硬化性樹脂組成物(AC1)の希釈液を塗布して半硬化の樹脂層前駆体を形成し、炭化ケイ素層(オーバーカバー層)の厚みを表2に記載のとおりに変更した以外は、実施例6と同様に実施して、積層体を得た。
実施例13
半硬化の樹脂層前駆体上にカバー層を形成する代わりに、プラズマCVD装置(ユーテック(株)製)においてアルゴンガスのみ(100sccm)を使用し、半硬化の樹脂層前駆体の表面を電力500Wでプラズマ処理した以外は、実施例4と同様に実施し、基材/樹脂層の積層構造を有する積層体を得た。基材の一方の面側における積層体の最表面の5千倍、5万倍の観察画像を図14、15に示す。
実施例14
基材としてガラス板(松浪硝子工業(株)製、製品名「白スライドガラス」、厚み800μm)を使用した以外は実施例4と同様に実施して、ガラス板の一方の面に樹脂層、DLC層がこの順に設けられた積層体を得た。
実施例15
基材としてアルミニウム板(製品名「アルミ平板」、厚み800μm)を使用した以外は実施例4と同様に実施して、アルミニウム板の一方の面に樹脂層、DLC層がこの順に設けられた積層体を得た。
実施例16
カバー層の形成を以下の方法で実施して、カバー層をフッ素系樹脂層とした以外は、実施例4と同様に実施した。
(カバー層の形成)
プラズマCVD装置(神港精機(株)製)を使用して、フッ素系樹脂成分としてパーフルオロエチレン10sccmを導入して、5Paの真空下にてCVDを行い、半硬化の樹脂層前駆体上に厚み10nmのカバー樹脂層(1)(フッ素系樹脂層)を形成した。
実施例17
オーバーカバー層の形成を以下の方法で実施して、オーバーカバー層をフッ素系樹脂(C)層とした以外は、実施例12と同様に実施した。基材の一方の面側における積層体の最表面の1倍、5千倍、5万倍の観察画像を図16〜18に示す。
(オーバーカバー層の形成)
プラズマCVD装置(神港精機(株))を使用して、オクタフルオロプロパン(C)を10sccm導入して、5Paの真空下にてCVDを行い、カバー層の上に厚み10nmのフッ素系樹脂(C)層を形成した。
比較例1
PETフィルム(三菱ケミカル株式会社製、製品名「T100タイプ」、厚み188μm)からなる基材単体を比較例1の積層体とした。PETフィルム表面の5千倍、5万倍の観察画像を図19、20に示す。
比較例2
半硬化の樹脂層前駆体の形成を省略して、基材/カバー層の積層構造を有する積層体を得た点を除いて実施例1と同様に実施した。
比較例3
カバー層の形成を省略して、基材/樹脂層の積層構造を有する積層体を得た点を除いて実施例4と同様に実施した。
Figure 2021126898

Figure 2021126898

表1、2に示すように、各実施例では、半硬化した樹脂層前駆体にドライプロセスによる表面処理を施すことで、積層体の最表面にリンクル構造を含む凹凸を形成できた。実施例1から実施例5より、樹脂層の厚さを変えることで凹凸段差の制御が容易に実施可能なことがわかる。また、例えば実施例3と実施例9より、ドライプロセス処理の変更で、単純なリンクル構造と複雑なリンクル構造(一次リンクル構造と二次リンクルの一括形成)の作り分けが可能なことがわかる。さらに、実施例12及び実施例17より、容器内面のような立体形状にも適用可能なことがわかる。そのため、表面の微細な凹凸を活用する各種用途(付着防止、光透過性など)に対して、最適な凹凸構造が形成可能となる。
それに対して、各比較例の積層体は、最表面にリンクル構造を含む凹凸を有していない。
また、本発明では、特許文献1に開示された技術のように、凹凸形成に粒子を使っていないので粒子脱落の懸念はなく、より広い用途へ活用可能となる。
10 積層体
10A 積層体の最表面
11 基材
11A 基材の一方の面
12 樹脂層
13 カバー層
14 オーバーカバー層

Claims (17)

  1. 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けられる樹脂層とを備える積層体であって、
    前記樹脂層が、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成され、
    前記基材の前記一方の面側における前記積層体の最表面が、リンクル構造を含む凹凸を有する積層体。
  2. 前記最表面の比表面積(S/A)が、1.005以上である請求項1に記載の積層体。
  3. 前記最表面のSa(算術平均粗さ)が50nm以上であり、かつ前記最表面のSz(最大高さ)が4000nm以上である請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記リンクル構造が一次リンクル構造と、前記一次リンクル構造よりもうねりの周期が小さい二次リンクル構造とを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記樹脂層上にさらにカバー層を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記カバー層が、無機物含有層及びカバー樹脂層のいずれかである請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 前記無機物含有層が、ダイヤモンドライクカーボン、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及びこれらの複合物からなる群から選ばれる少なくとも一種から形成される請求項6に記載の積層体。
  8. 前記カバー樹脂層が、フッ素系樹脂により形成される請求項6に記載の積層体。
  9. 前記カバー層上に、さらにオーバーカバー層を備える請求項5〜8のいずれか1項に記載の積層体。
  10. 前記カバー層の厚み(ta)は、5nm以上300nm以下である請求項6〜9のいずれか1項に記載の積層体。
  11. 前記樹脂層の厚み(tb、単位:μm)に対するカバー層の厚み(ta、単位:nm)の比(ta/tb)は、0.1以上3500以下である請求項6〜10のいずれか1項に記載の積層体。
  12. 前記樹脂層の厚み(tb)が0.1μm以上15μm以下である請求項1〜11のいずれか1項に記載の積層体。
  13. 基材の少なくとも一方の面に熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層前駆体を形成する工程と、
    半硬化又は未硬化の前記樹脂層前駆体に対してさらにドライプロセスによる表面処理を行い、前記基材の一方の面側の表面においてリンクル構造を含む凹凸を形成する工程と
    を備える積層体の製造方法。
  14. 前記ドライプロセスにより、カバー層を形成する請求項13に記載の積層体の製造方法。
  15. 前記表面処理を行った前記基材の一方の面側にカバー層を形成し、又は前記表面処理により形成されたカバー層の上にさらにオーバーカバー層を形成する工程をさらに備える請求項13又は14に記載の積層体の製造方法。
  16. 前記表面処理が、化学的気相蒸着、物理的気相蒸着、及びプラズマ処理のいずれかである請求項13〜15のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  17. 前記塗布により形成した樹脂層前駆体を半硬化させる工程を備え、
    前記表面処理を前記半硬化させた樹脂層前駆体に対して行う請求項13〜16のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。

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