JP2021147496A - エポキシ樹脂組成物、並びにこれを用いたプリプレグ及び繊維強化プラスチック - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、並びにこれを用いたプリプレグ及び繊維強化プラスチック Download PDF

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拓也 寺西
Takuya Teranishi
拓也 寺西
正洋 市野
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正洋 市野
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Abstract

【課題】プリプレグに用いて硬化した繊維強化プラスチックの物性低下や外観不良が抑制可能なエポキシ樹脂組成物と、該樹脂組成物を用いたプリプレグ、さらには物性低下や外観不良が抑制された繊維強化プラスチックを提供する。【解決手段】エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記エポキシ樹脂が25℃において液状のエポキシ樹脂及び25℃において固形のエポキシ樹脂を含み、前記硬化剤が粒子であり、体積累積分布径D90が3.0μm以下である、エポキシ樹脂組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物およびエポキシ樹脂組成物、並びにこれを用いたプリプレグ及び繊維強化プラスチックに関するものであり、スポーツ・レジャー用途、一般産業用途、自動車用途、航空機用材料用途等に好適に使用されるものである。
繊維強化プラスチックは、軽量で、高強度、高剛性であるため、スポーツ・レジャー用途から、自動車や航空機等の産業用途まで、幅広く用いられている。繊維強化プラスチックは、強化繊維などの連続繊維からなる補強材にマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグを使用して得ることができる。また、プリプレグを複数枚積層、加熱硬化することにより、成形品を得ることができる。多くの分野において軽量化のニーズから、強度弾性率の観点から強化繊維として炭素繊維が、炭素繊維との接着性の観点からマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂が多く用いられている。エポキシ樹脂の硬化剤は貯蔵安定性の観点から粉体の硬化剤が使用されることが多い。特許文献1には、小粒径化した粉体の硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物を用いることで、高速自動化製造システムに関連する需要を満たすことが開示されている。
特表2018−532014号公報
マトリクス樹脂を強化繊維に含浸させるプリプレグ作製工程においては、粉体の硬化剤が強化繊維束内部に進入せず、強化繊維束表面付近に残ることがあった。強化繊維束表面付近に硬化剤が溜まることで、樹脂が含浸しにくくなる。さらには、プリプレグ中で樹脂が繊維束を押しのけることによって、樹脂が局所的に集中して存在する樹脂溜まり部分ができる。粉体の硬化剤を単純に微粒化するだけでは再凝集した粒子及び体積平均径より大きい粒子が繊維束表面に残ることを抑制できず、該樹脂溜まり部分は硬化後も残り、機械物性の低下や外観の低下を引き起こすといった課題があった。本発明は、プリプレグに用いて硬化した繊維強化プラスチックの物性低下や外観不良が抑制可能なエポキシ樹脂組成物と、該樹脂組成物を用いたプリプレグ、さらには物性低下や外観不良が抑制された繊維強化プラスチックを提供するものである。
本発明の要旨は、以下の[1]〜[13]に存する。
[1]エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記エポキシ樹脂が25℃において液状のエポキシ樹脂及び25℃において固形のエポキシ樹脂を含み、前記硬化剤が粒子であり、レーザー回析・散乱法で測定される前記硬化剤の体積累積分布径D90が3.0μm以下である、エポキシ樹脂組成物。
[2]前記硬化剤がジシアンジアミドである、[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[3]前記硬化剤の体積平均粒子径が2.0μm以下である、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[4]前記硬化剤の体積累積分布径D90が2.9μm以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[5]前記硬化剤のレーザー回析・散乱法で測定される体積粒度分布幅の指標Aが下記式(1)を満たす、[1]〜[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
0.3≦A≦2 …(1)
(但し、A=(D84−D16)/2であり、D84は体積粒度分布累積カーブが84%となる点の粒径(μm)を表し、D16は体積粒度分布累積カーブが16%となる点の粒径(μm)を表す。)
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグ。
[7][6]に記載のプリプレグからなる繊維強化プラスチック。
[8]エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記硬化剤が粒子であり、レーザー回析・散乱法で測定される前記硬化剤の体積平均径が2.5μm以下であり、前記硬化剤の体積粒度分布幅の指標Aが下記式(1)を満たす、エポキシ樹脂組成物。
0.3≦A≦2 …(1)
(但し、A=(D84−D16)/2であり、D84は体積粒度分布累積カーブが84%となる点の粒径(μm)を表し、D16は体積粒度分布累積カーブが16%となる点の粒径(μm)を表す。)
[9]前記硬化剤がジシアンジアミドである、請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物。
[10]前記硬化剤の体積累積分布径D90が3.0μm以下である、[8]または[9]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[11]前記エポキシ樹脂が25℃において液状のエポキシ樹脂及び固形のエポキシ樹脂を含む、[8]〜[10]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[12][8]〜[11]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維からなるプリプレグ。
[13]エポキシ樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物の製造方法であって、レーザー回析・散乱法で測定される体積平均径が2.5μm以下、体積粒度分布幅の指標Aが下記式(1)を満たす硬化剤の粒子を前記エポキシ樹脂と混合する工程を含む、エポキシ樹脂組成物の製造方法。
0.3≦A≦2 …(1)
(但し、A=(D84−D16)/2であり、D84は体積粒度分布累積カーブが84%となる点の粒径(μm)を表し、D16は体積粒度分布累積カーブが16%となる点の粒径(μm)を表す。)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、強化繊維へマトリクス樹脂含浸時に樹脂が多い部分がプリプレグ中に出来ないエポキシ樹脂組成物、当該エポキシ樹脂組成物と強化繊維からなるプリプレグおよびこのプリプレグを用いて成型された成型体は外観および物性に優れる繊維強化プラスチックが得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「エポキシ樹脂」とは、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味し、「エポキシ樹脂組成物」とは、エポキシ樹脂と、熱可塑性樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、添加剤等とを含む樹脂組成物を意味する。本発明において、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物を「樹脂硬化物」と称することがある。
〔エポキシ樹脂組成物〕
本発明のエポキシ樹脂組成物の態様の一つは、エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記エポキシ樹脂が25℃において液状のエポキシ樹脂及び25℃において固形のエポキシ樹脂を含み、前記硬化剤が粒子であり、レーザー回析・散乱法で測定される前記硬化剤の体積累積分布径D90が3.0μm以下であるエポキシ樹脂組成物である。また別の態様は、エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記硬化剤が粒子であり、レーザー回析・散乱法で測定される前記硬化剤の体積平均径が2.5μm以下であり、前記硬化剤の体積粒度分布幅の指標Aが下記式(1)を満たす、エポキシ樹脂組成物である。
0.3≦A≦2 …(1)
(但し、A=(D84−D16)/2であり、D84は体積粒度分布累積カーブが84%となる点の粒径(μm)を表し、D16は体積粒度分布累積カーブが16%となる点の粒径(μm)を表す。)
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環骨格を有するエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノキシエタノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環骨格を有するエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンから選ばれる1種以上のエポキシ樹脂が好ましい。後述する液状および固形のエポキシ樹脂を併用することができる。エポキシ樹脂を複数種組み合わせることで、優れた取り扱い性を有するプリプレグ、および機械特性や耐熱性に優れる炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
<液状のエポキシ樹脂>
液状のエポキシ樹脂は、25℃で液状のエポキシ樹脂である。液状のエポキシ樹脂は主に、熱可塑性樹脂の溶解性向上と本エポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物の強度や弾性率、耐熱性の向上に寄与する。尚、ここで「液状」とは、エポキシ樹脂が流動性を有することを示す。25℃で液状のエポキシ樹脂の粘度は、25℃において500Pa・s以下であることが好ましく、300Pa・s以下であることがより好ましい。また、0.1Pa・s以上であることが好ましい。粘度をこの範囲にすると、エポキシ樹脂組成物の作業性を良好なものとすることができる。粘度の測定は回転式レオメーターで試料に周期的な変形(歪み)を与え、それによって生じる応力と位相差を検出することで測定できる。ビスフェノール型エポキシ樹脂であることが好ましい。
液状のエポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂100質量部に対して20質量部以上80質量部以下含むことが好ましい。液状のエポキシ樹脂の含有量の下限は、より好ましくは25質量部以上であり、さらに好ましくは28質量部以上である。また、液状のエポキシ樹脂の含有量の上限は、より好ましくは75質量部以下であり、さらに好ましくは70質量部以下であり、特に好ましくは50部以下である。エポキシ樹脂組成物中、液状のエポキシ樹脂の含有量が下限値以上であれば、熱可塑性樹脂を溶解しやすく、強度、弾性率に優れた樹脂硬化物を得ることができる。一方、液状のエポキシ樹脂の含有量が上限値以下であれば、靱性に優れた樹脂硬化物を得ることができる。
液状のエポキシ樹脂は、市販品を用いてもよい。市販品として入手可能な、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(液状のエポキシ樹脂)としては、これらに限定されないが、jER827(エポキシ当量185g/eq)、jER828(エポキシ当量189g/eq)(以上、三菱ケミカル株式会社製)、YD−127(エポキシ当量185g/eq)、YD−128(エポキシ当量189g/eq)(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、EPICLON840(エポキシ当量185g/eq)、EPICLON850(エポキシ当量189g/eq)(以上、DIC株式会社製)、D.E.R331(エポキシ当量187/eq)、D.E.R332(エポキシ当量173g/eq)(THE DOW CHEMICAL COMPANY社製)等が挙げられる。市販品として入手可能な、25℃で液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂(液状のエポキシ樹脂)としては、これらに限定されないが、jER806(エポキシ当量165g/eq)、jER807(エポキシ当量170g/eq)(以上、三菱ケミカル株式会社製)、YDF−170(エポキシ当量170g/eq)(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、EPICLON830(エポキシ当量170g/eq)、EPICLON835(エポキシ当量172g/eq)(以上、DIC株式会社製)、D.E.R354(エポキシ当量170g/eq)(以上、THE DOW CHEMICAL COMPANY社製)等が挙げられる。これらの中から1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
<固形のエポキシ樹脂>
固形のエポキシ樹脂は、軟化点70℃以上のエポキシ樹脂である。ビスフェノール型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環骨格を有するエポキシ樹脂、および硬化剤とあらかじめ予備反応したエポキシ樹脂が好ましい。軟化点は、樹脂硬化物が優れた靱性を有することから、好ましくは72℃以上、より好ましくは75℃以上である。一方、樹脂硬化物の耐熱性が適正に保たれ、ドレープ性(型形状追従性)に優れたプリプレグを得ることができるとともに、ボイドの無い繊維強化複合材料を得ることができることから、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下である。固形のエポキシ樹脂を含有することで、室温の粘度が上がり、タック等のプリプレグの取り扱いが改善される。
固形のエポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂100質量部に対して10質量部以上80質量部以下含むことが好ましい。固形のエポキシ樹脂の含有量の下限は、より好ましくは13質量部以上であり、さらに好ましくは15質量部以上である。また、固形のエポキシ樹脂の含有量の上限は、より好ましくは70質量部以下であり、さらに好ましくは60質量部以下である。エポキシ樹脂組成物中、固形のエポキシ樹脂の含有量が下限値以上であれば、タック性の良い靱性に優れた樹脂硬化物を得ることができる。一方、固形のエポキシ樹脂の含有量が上限値以下であれば、樹脂硬化物の耐熱性が適正に保たれ、ドレープ性(型形状追従性(しなやかさ))に優れたプリプレグを得ることができるとともに、ボイドの無い繊維強化複合材料を得ることができる。
固形のエポキシ樹脂は、市販品を用いてもよい。市販品として入手可能な、軟化点70℃以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、これらに限定されないが、jER1055、jER1004、jER1007、jER1009(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製)やEPICLON2050、EPICLON3050、EPICLON4050、EPICLON7050、EPICLON HM−091、EPICLON HM−101(いずれも商品名、DIC株式会社製)やYD−902、YD−903N、YD−904、YD−907、YD−7910、YD−6020(いずれも商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等が挙げられる。また、市販品として入手可能な、軟化点70℃以上のビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、これらに限定されないが、jER4004P、jER4005P、jER4007P、jER4010P(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製)やYDF2004、YDF−2005RD(いずれも商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等が挙げられる。市販品として入手可能な軟化点70℃以上のオキサゾリドン環状構造を有するエポキシ樹脂としては、AER4152、AER4151、LSA3301、LSA2102(いずれも商品名、旭化成イーマテリアルズ株式会社製)やACR1348(商品名、株式会社ADEKA社製)、DER852、DER858(商品名、THE DOW CHEMICAL COMPANY社製)、TSR−400(商品名、DIC社製)などがあげられ、いずれも本発明に好ましく用いられるが、AER4152やTSR−400が特に好ましい。固形のエポキシ樹脂として、これらの中から1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
<その他のエポキシ樹脂>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、前述した液状のエポキシ樹脂及び固形のエポキシ樹脂以外のその他のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。その他のエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノール型やノボラック型のエポキシ樹脂がエポキシ樹脂硬化物の機械物性が良好なため好ましい。これらの中でも耐熱性が高いことからノボラック型エポキシ樹脂がさらに好ましい。市販品として入手可能な、液状のエポキシ樹脂、固形のエポキシ樹脂以外のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、これらに限定されないが、jER834(商品名、三菱ケミカル株式会社製)やEPICLON860(商品名、DIC株式会社製)やYD−134(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等が挙げられる。市販品として入手可能な、液状のエポキシ樹脂、固形のエポキシ樹脂以外のノボラック型エポキシ樹脂としては、これらに限定されないが、EPICLON N−740(商品名、DIC株式会社製)やYDPN−638(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等が挙げられる。固形のエポキシ樹脂として、これらの中から1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
<熱可塑性樹脂>
本発明のエポキシ樹脂組成物には熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテル、ポリオレフィン、液晶ポリマー、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリルスチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、AES(アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体)、ASA(アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体)、ポリ塩化ビニル、ポリビニルホルマール樹脂、フェノキシ樹脂、ブロックポリマー等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、強化繊維への樹脂フロー制御性に優れることから、ポリエーテルスルホン、ポリビニルホルマール樹脂、フェノキシ樹脂がより好ましい。配合量が少量でも樹脂フロー制御性に優れることからポリビニルホルマール樹脂がさらに好ましい。熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂の含有量としては、本樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下含むことが好ましく、2質量部以上10質量部以下含むことがより好ましく、3質量部以上6質量部以下含むことがさらに好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が1質量部以上であれば、樹脂フロー制御が良好に発揮される傾向にあるため好ましい。一方、熱可塑性樹脂の含有量が30質量部以下であれば、樹脂含浸時の粘度上昇が少なくなるため好ましい。
<硬化剤>
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化可能な粒子であることが好ましい。レーザー回析・散乱法で測定される硬化剤の粒子の体積平均粒子径は2.5μm以下であることが好ましい。体積平均粒子径は、粉体をある粒子径で2つに分けたとき、その粒子径より大きい側の粒子の総体積と、小さい側の粒子の総体積が等しくなる粒子径と定義される。測定方法は、レーザー回析・散乱法による粒子径分布測定である。レーザー光が粒子に当たると前方微小角に光が散乱して回析現象が起き、この散乱(回析)パターンから計算をして粒子径分布を算出するものである。測定は乾式分散式にて、空気の供給口と真空口の間を試料が通過する間にレーザー回析・散乱法で粒子径分布測定を行う。例えば、日機装社製の製品名:AEOTRAC SPR Model:7340等の粒度計で粒度分布を測定することで得られる。強化繊維にマトリクス樹脂が含浸する際に、粒子が強化繊維束内部に進入せず、強化繊維束表面付近に残ることを抑制し、プリプレグ中の樹脂溜まり部を減らすことができるため体積平均粒子径は2.0μm以下であることがより好ましい。さらに好ましくは体積平均粒子径が1.9μm以下である。組成物中での再凝集を防ぐ観点から体積平均粒子径が0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。
レーザー回析・散乱法で測定される硬化剤の粒子の体積累積分布径D90は3.0μm以下であることが好ましい。体積累積分布径D90は、全粒子の粒子体積の合計を100%として、粒子体積の合計が全体の90%となる粒子径を指す。つまり、体積粒度分布累積カーブが90%となる点の粒子径(μm)である。例えば、日機装社製の製品名:AEOTRAC SPR Model:7340等の粒度計で粒度分布を測定することで得られる。強化繊維にマトリクス樹脂が含浸する際に、粒子が強化繊維束内部に進入せず、強化繊維束表面付近に残ることを抑制し、プリプレグ中の樹脂溜まり部を減らすことができるため体積累積分布径D90は2.9μm以下であることがより好ましい。組成物中での再凝集を防ぐ観点から体積平均粒子径が1.0μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましい。繊維束への均等分散の観点から、体積粒度分布幅の指標A(μm)が下記式(1)を満たすことが好ましい。
0.3≦A≦2 …(1)
(但し、A=(D84−D16)/2であり、D84は体積粒度分布累積カーブが84%となる点の粒径(μm)を表し、D16は体積粒度分布累積カーブが16%となる点の粒径(μm)を表す。)
プリプレグの樹脂溜まりを抑制する観点から、より好ましくは0.4≦A≦1であり、さらに好ましくは0.5≦A≦0.8である。
樹脂組成物またはプリプレグから、樹脂のみ溶解する溶媒を用いて取り出した硬化剤粒子の粒度分布を測定することもできる。複数種の硬化剤を含む場合には、全硬化剤粒子の粒度分布が前述の範囲であることが、樹脂溜まりを抑制する観点から好ましい。また、硬化剤がジシアンジアミド粒子とその他の種の粒子を含む場合には、ジシアンジアミド粒子が特にその他の種の粒子と比べて、エポキシ樹脂に対する溶解性が高くなく、硬化途中でも粒子として溶け残りやすいことから、ジシアンジアミド粒子の粒度分布が前述の範囲であることが好ましい。その際の粒度分布は、遠心分離等の手法により比重の差を利用して融解しない温度領域でジシアンジアミド粒子を分離したものを測定することにより得られる。
硬化剤は市販品を用いても、市販品を粉砕して目的の粒径まで粉砕してもよい。粉砕方法は一般に利用できる方法であれば限定されないが、例えば、ジェットミル、ボールミル、振動ボールミル、遊星ミル、回転ミル、ロールミル、ハンマーミル、ピンミル、ビーズミル、アトライターなどを用いた粉砕が挙げられる。収率と作業性の観点から、ジェットミルあるいはボールミルを用いることがより好ましい。粉砕時に粉砕助剤を使用することで再凝集を防止することができる。粉砕助剤としては、シリカ、ステアリン酸エステル、アルコール等が挙げられる。その中でも、シャープな粒度分布となることから、シリカまたはステアリン酸エステルが好ましい。例えば、シリカまたはステアリン酸エステルを粉砕助剤として用いて粉砕することにより前述の粒度分布を達成できる。
硬化剤の種類としては、特に限定されないが、ジシアンジアミド、ウレア類、イミダゾール類、芳香族アミン類、その他アミン系硬化剤、酸無水物、塩化ホウ素アミン錯体等が挙げられる。特にジシアンジアミド、ウレア類、イミダゾール類、芳香族アミン類の中から選ばれる少なくとも1種の硬化剤を用いることが好ましい。全硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
ジシアンジアミドは融点が高く、低温領域でエポキシ樹脂との相溶が抑えられるため、硬化剤として用いると、ポットライフが優れるエポキシ樹脂組成物が得られる傾向にあるので好ましい。また、エポキシ樹脂組成物が硬化剤としてジシアンジアミドを含むことで、樹脂硬化物の機械物性が向上する傾向にあり好ましい。ジシアンジアミドの市販品としては、例えばDICY7、DICY15(以上、三菱ケミカル社製)、DICYANEX1400F(EVONIC社製)などが挙げられる。
ジシアンジアミドの含有量は、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下とするのが好ましい。1質量部以上とすることにより、耐熱性が良好で、強度や弾性率が良好な硬化物が得られる傾向にある。また、15質量部以下とすることにより、機械物性塑性変形能力や耐衝撃性に優れた硬化物が得られる傾向にある。さらに、1.5質量部以上10質量部以下とすることによって、樹脂硬化物の耐熱性がより優れる傾向にあるため、より好ましい。さらに好ましくは2質量部以上8質量部以下であり、この範囲にすることによって強度や弾性率がより優れる硬化物が得られる傾向にある。
硬化剤として用いられるウレア類は、分子内にジメチルウレイド基を有し、高温で加熱することによりイソシアネート基とジメチルアミンを生成し、これらがエポキシ基と化学反応するものであれば、特に制限されないが、例えばジメチルウレイド基が芳香環に結合した芳香族ジメチルウレア、ジメチルウレイド基が脂肪族化合物に結合した脂肪族ジメチルウレア等をあげることができる。これらの中でも、硬化速度が速くなり、硬化物の耐熱性および曲げ強度が高くなる傾向にある点で、芳香族ジメチルウレアが好ましい。
芳香族ジメチルウレアとしては、例えばフェニルジメチルウレア、メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、およびトリレンビス(ジメチルウレア)などが好適に用いられる。具体例としては、4,4’−メチレンビス(フェニルジメチルウレア)(MBPDMU)、3−フェニル−1,1−ジメチルウレア(PDMU)、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチルウレア、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエン(TBDMU)、m−キシリレンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチルウレアなどが挙げられる。これらの中でも、硬化促進能力や樹脂硬化物への耐熱性付与といった点から、DCMU、MBPDMU、TBDMU、PDMUがより好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ジシアンジアミドと併用してもよい。
脂肪族ジメチルウレアとしては、例えばイソホロンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチルウレア、ヘキサメチレンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチルウレアなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ジシアンジアミドと併用してもよい。
ウレア類の含有量は、本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂100質量部に対し、1質量部以上15質量部以下が好ましく、2質量部以上10質量部以下がより好ましい。ウレア類の含有量が1質量部以上であれば、エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂を十分に硬化、硬化促進し、機械物性や耐熱性を高くすることができる傾向にある。一方、ウレア類の含有量が15質量部以下であれば、樹脂硬化物の靱性を高く保持できる傾向にある。
硬化剤として用いられるイミダゾール類としては、イミダゾール、イミダゾールアダクト、包接イミダゾール、マイクロカプセル型イミダゾール、安定化剤を配位させたイミダゾール化合物等を用いることもできる。これらは、その構造の中に非共有電子対を有する窒素原子を有し、これがエポキシ基を活性化さることができ、硬化を促進することができる。イミダゾールの具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アダクト処理、異分子による包接処理、マイクロカプセル処理、あるいは安定化剤を配位させたイミダゾールは、前記のイミダゾールを修飾したものである。これらはイミダゾールにアダクト処理、異分子による包接処理、マイクロカプセル処理により、あるいは安定化剤を配位させることで活性を落とすことにより、低温領域で優れたポットライフを発現しつつも硬化や硬化促進能力が高い。また、ジシアンジアミドと併用してもよい。
イミダゾール類の含有量は、本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂100質量部に対し、1質量部以上15質量部以下が好ましく、2質量部以上10質量部以下がより好ましい。イミダゾール類の含有量が1質量部以上であれば、エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂の硬化や硬化促進作用、耐熱性が充分に得られる傾向にある。一方、イミダゾール類の含有量が15質量部以下であれば、機械的特性により優れた樹脂硬化物が得られる傾向にある。
<硬化性を有する添加剤>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、体積平均粒子径が前記範囲外である硬化性を有する添加剤を添加してもよい。硬化剤としてジシアンジアミドを使用する場合は、脂肪族アミン類、イミダゾール類、芳香族アミン類、ウレア類などが硬化性を有する添加剤として使用することができる。イミダゾール類、ウレア類が貯蔵安定性の点からより好ましく、具体例としては前述した化合物を使用することができる。
<任意成分>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、公知の様々な添加剤を含有してもよい。添加剤としては、難燃剤(例えばリン含有エポキシ樹脂や赤燐、ホスファゼン化合物、リン酸塩類、リン酸エステル類等)、湿潤分散剤、消泡剤、脱泡剤、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド、エステル類、パラフィン類等の離型剤、結晶質シリカ、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム等の粉体や金属酸化物、金属水酸化物、ガラス繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン等の無機フィラー、炭素繊維、セルロースナノファイバー等の有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シランカップリング剤、導電材等公知の添加剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
<エポキシ樹脂組成物の粘性>
60℃における本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度は、プリプレグ製造時の含浸性の観点から、粘度の下限値は50Pa・s以上が好ましく、70Pa・s以上がより好ましく、80Pa・s以上がさらに好ましい。また、粘度の上限値は300Pa・s以下が好ましく、270Pa・s以下がより好ましく、250Pa・s以下がさらに好ましい。
<エポキシ樹脂組成物の製造方法及び用途>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、これに限定されないが、例えば、上述した各成分を混合することにより得られる。各成分の混合方法としては、三本ロールミル、プラネタリミキサー、ニーダー、ホモジナイザー、ホモディスパー等の混合機を用いる方法が挙げられる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、後述するように、強化繊維集合体に含浸させてプリプレグの製造に用いることができる。他にも、本発明のエポキシ樹脂組成物を離型紙等に塗布して硬化することで、フィルムを得ることができる。
<エポキシ樹脂組成物からなるフィルム>
成形品の実施形態の一つに、フィルムとしての使用がある。フィルムはプリプレグを製造するための中間材料として、また、基材に貼り付けた後、硬化させることによって、表面保護フィルム又は、接着フィルムとしても有用である。また、その使用方法は、これに限定されないが、本発明のエポキシ樹脂組成物を離型紙等の基材の表面に塗布することが好ましい。得られた塗布層は、未硬化のまま別の基材に張り付けて硬化させることで、フィルムとして使用してもよく、前記塗布層自体を硬化させることで、フィルムとして使用してもよい。
〔プリプレグ〕
本発明のプリプレグは、エポキシ樹脂組成物と強化繊維からなる。本発明のエポキシ樹脂組成物が強化繊維集合体に含浸したものであることが好ましい。樹脂組成物を強化繊維集合体に含浸させる方法としては、公知の方法でよく、例えば、樹脂組成物をメチルエチルケトン、メタノール等の溶媒に溶解して、低粘度化してから含浸させるウェット法と、加熱により低粘度化してから含浸させる、ホットメルト法(ドライ法)等をあげることができるが、これらに限定されない。
ウェット法は、強化繊維を樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法である。一方でホットメルト法には、加熱により低粘度化した樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法と、一旦樹脂組成物を離型紙等の上にコーティングしたフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の両側または片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維に樹脂を含浸させる方法がある。ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上存在しないため好ましい。
本発明のプリプレグのエポキシ樹脂組成物の含有量(以下、「樹脂含有量」という)は、本発明のプリプレグの全質量を100%としたとき、15〜50質量%であることが好ましく、20〜45質量%であることがより好ましく、25〜40質量%であることがさらに好ましい。樹脂含有量が、15質量%以上であれば、強化繊維集合体とエポキシ樹脂組成物との接着性を十分確保することができ、50質量%以下であれば機械物性を高く保持できる。
強化繊維集合体を構成する強化繊維としては特に限定されず、繊維強化複合材料を構成する強化繊維として公知のものから用途等に応じて適宜選択すればよい。具体例として例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、高強度ポリエステル繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維等の各種の無機繊維または有機繊維を用いることができる。これらの中でも、比強度、比弾性の観点から、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維が好ましく、機械物性や軽量化の観点から炭素繊維が特に好ましい。強化繊維として炭素繊維を用いる場合、金属による表面処理を施してもよい。これらの強化繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
本発明のプリプレグを硬化して得られる繊維強化複合材料の剛性の観点から、炭素繊維のストランド引張強度は、1〜9GPaが好ましく、1.5〜9GPaがより好ましく、炭素繊維のストランド引張弾性率は150〜1,000GPaが好ましく、200〜1,000GPaがより好ましい。炭素繊維のストランド引張強度及びストランド引張弾性率は、JIS R7601:1986に準拠して測定される値である。
強化繊維集合体の形態としては特に制限されず、通常のプリプレグの基材として使用される形態を採用でき、例えば、強化繊維が一方向に引き揃えられたもの(UD:UniDirection)であってもよく、織物や不織布、またはノンクリンプファブリック(Non−Crimp Fabric)でもよい。本発明のプリプレグは、本発明のエポキシ樹脂組成物を強化繊維集合体に含浸させることで、機械物性に優れた繊維強化プラスチックの原材料とすることができる。
〔繊維強化プラスチック〕
繊維強化プラスチックは、エポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維とからなる。例えば、上述した本発明のプリプレグを積層した後、積層体に圧力を付与しながら、硬化性樹脂を加熱硬化させる方法等により成形して得られる。本発明の繊維強化プラスチックは、機械特性、難燃性、耐熱性、電磁波遮蔽性等に優れることから、強化繊維として炭素繊維を含むことが好ましい。
繊維強化プラスチックの成形方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法、シートラップ成形法や、強化繊維のフィラメントやプリフォームにエポキシ樹脂組成物を含浸させて硬化し成形品を得るRTM(Resin Transfer Molding)、VaRTM(Vacuum assistedResin Transfer Molding:真空樹脂含浸製造法)、フィラメントワインディング、RFI(Resin Film Infusion)等が挙げられるが、これらの成形方法に限られるものではない。
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物をマトリックス樹脂として用いた繊維強化プラスチックは、スポーツ用途、一般産業用途及び航空宇宙用途に好適に用いられる。より具体的には、スポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスやバドミントンのラケット用途、ホッケー等のスティック用途、及びスキーポール用途に好適に用いられる。更に一般産業用途では、自動車、船舶、及び鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、及び補修補強材料等に好適に用いられる。
<構造体>
上述した本発明の繊維強化プラスチックから構造体を得ることができる。この構造体は、本発明の繊維強化プラスチックのみからなるものであってもよいし、本発明の繊維強化プラスチックと他の材料(例えば金属、インジェクション成形された熱可塑性樹脂製部材等)とから構成されるものであってもよい。
この構造体は、本発明の繊維強化プラスチックで一部または全部が構成されているので、難燃性、及び耐熱性に優れる。この構造体は、例えば航空機や自動車の内装部材、電気・電子機器用筐体等にも適用できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例、及び比較例で使用した原料を以下に示す。なお、軟化点、エポキシ当量は、以下の条件で測定した。
1)軟化点:JIS−K7234:2008(環球法)に準拠して測定された値である。2)エポキシ当量:JIS−K7236:2001に準拠して測定された値である。
「原料」
<液状のエポキシ樹脂>
jER828:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量189g/eq、三菱ケミカル株式会社製、品名「jER828」)。
<固形のエポキシ樹脂>
jER1002:固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量675g/eq、三菱ケミカル株式会社製、品名「jER1002」、軟化点78℃)。
YD−952:固形オキサゾリドン型エポキシ樹脂(エポキシ当量340g/eq、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、品名「エポトートYD−952」、軟化点79℃)。
樹脂A:エポキシ樹脂と4,4’−ジアミノジフェニルスルフォンとの反応物
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名「jER 828」、三菱化学株式会社製)と4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン(商品名:セイカキュアーS、和歌山精化工業(株)製)とを質量比100:9で室温にて混合した後、150℃にて混合加熱して得た反応物であって、エポキシ樹脂と分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するアミン化合物との反応生成物を主成分とする混合物(エポキシ当量266g/eq、粘度(90℃)1.3Pa・s)。
<その他のエポキシ樹脂>
N−740:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量180g/eq、DIC株式会社製、品名「EPICLON N−740」)。
<熱可塑性樹脂>
ビニレックE:ポリビニルホルマール樹脂(JNC株式会社製、品名「ビニレックE」)。
<硬化剤>
粉砕ジシアンジアミド:Dicyanex 1400Fのジェットミル粉砕品
Dicyanex 1400Fを粉砕助剤としてシリカを用いてジェットミルで粉砕し、分級することで得られた。体積平均粒子径が1.8μm、累積分布径D90が2.8μmであった。体積粒度分布幅の指標Aは0.68μmであった。
Dicy15:ジシアンジアミド(三菱ケミカル株式会社製、品名「Dicy15」、体積平均粒子径 4μm、体積粒度分布幅の指標Aは3.73μm)
Dicy7:ジシアンジアミド(三菱ケミカル株式会社製、品名「Dicy7」、体積平均粒子径 3μm、体積粒度分布幅の指標Aは2.79μm)
Dicyanex 1400F:ジシアンジアミド(EVONIC製、品名「Dicy15」、体積平均粒子径 3μm、体積粒度分布幅の指標Aは2.40μm)
<硬化性を有する添加剤>
DCMU:3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(保土ヶ谷化学工業社製、品名「DCMU−99」)
PDMU:フェニルジメチルウレア(CVCサーモセットスペシャリティーズ社製、品名「Omicure U−405」)
TBDMU:トルエンビスジメチルウレア(CVCサーモセットスペシャリティーズ社製、品名「Omicure U−24M」)
2MZA−PW:2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、微粉末(四国化成工業株式会社製、品名「キュアゾール2MZA−PW」)
「体積平均粒子径と累積分布径D90の測定」
日機装社製の粒度計AEOTRAC SPR Model:7340を使用して粒度分布を測定する。体積平均粒子径は、粉体をある粒子径で2つに分けたとき、その粒子径より大きい側の粒子の総体積と、小さい側の粒子の総体積が等しくなる粒子径、累積分布径D90は、全粒子の粒子体積の合計を100%とした時に、粒子体積の合計が小粒径側から累積して全体の90%となる粒子径である。
装置:AEOTRAC SPR Model:7340
焦点距離:100mm
測定方法:乾式測定、オートスタート平均
測定回数:100回
測定間隔:0.6ms
バックグラウンド取り込み間隔:2s
(実施例1)
液状のエポキシ樹脂としてjER828を40質量部、固形のエポキシ樹脂としてjER1002を30質量部、YD−952を20質量部、熱可塑性樹脂としてビニレックEを4質量部計量し、150℃で3時間加熱攪拌することで熱可塑溶解エポキシ樹脂を得た。jER828を10質量部、粉砕ジシアンジアミドを4質量部、DCMUを4質量部計量し、三本ロールで分散させ、硬化剤マスターバッチを得た。得られた熱可塑性エポキシ樹脂と硬化剤マスターバッチを混錬し、樹脂組成物1を得た。
「プリプレグの作製」
樹脂組成物1を、コンマコーター(株式会社ヒラノテクシード製、「M−500」)でフィルム状にし、離型紙上に樹脂目付け53.6g/mの樹脂フィルムを作製し、離型紙の載っていない面に厚み17μmポリエチレン製の保護フィルムを貼りつけた。この樹脂フィルムを、炭素繊維(三菱ケミカル株式会社製、品名「パイロフィルTR50S15L」)を引き揃えて得られた、繊維目付250g/mの炭素繊維シートの両面に張り合わせ、加熱ロールで含浸させて、プリプレグ目付357g/m、樹脂含有量30質量%の未硬化の一方向プリプレグを得た。
「繊維強化プラスチック板の作成」
上記で得られた未硬化の一方向プリプレグを120mm×120mmにカットし、繊維方向を揃えて10枚重ねて積層体を得た。この積層体をプレス機で圧力4.0MPa下で140℃、15分保持して加熱硬化させて、厚さ2.0mmの繊維強化プラスチック板を得た。
「樹脂だまり箇所測定」
得られた繊維強化プラスチックを繊維軸方向と直交する方向で切断し、その破断面を湿式研磨して、以下の条件で断面観察した。
装置:マイクロスコープ(KEYENCE社製、「VHX−5000」)、
測定倍率:1000倍
樹脂だまり箇所測定は、以下の条件で行った。
2mm×2mmの範囲を断面観察し、その中に20μm(縦)×20μm(横)の範囲で樹脂しか存在しない箇所を数え、樹脂だまり箇所測定とした。
Figure 2021147496
(実施例2〜4、比較例1〜4)
表1に示すように、樹脂組成物を変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、評価を行った。その評価結果を表1に示す。
表1に示すように、各実施例は、比較例と比較して、樹脂だまり箇所が少なくなっており、外観および物性に優れる繊維強化プラスチックが得られると考えられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いることにより、外観や機械物性に優れた繊維強化プラスチックを得ることができる。よって、本発明によれば、外観や機械物性に優れた繊維強化プラスチック成形体、例えばスポーツ・レジャー用途成形体から自動車、航空機等の産業用途の成形体まで、幅広く提供することができる。

Claims (13)

  1. エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記エポキシ樹脂が25℃において液状のエポキシ樹脂及び25℃において固形のエポキシ樹脂を含み、前記硬化剤が粒子であり、レーザー回析・散乱法で測定される前記硬化剤の体積累積分布径D90が3.0μm以下である、エポキシ樹脂組成物。
  2. 前記硬化剤がジシアンジアミドである、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 前記硬化剤の体積平均粒子径が2.0μm以下である、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記硬化剤の体積累積分布径D90が2.9μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 前記硬化剤のレーザー回析・散乱法で測定される体積粒度分布幅の指標Aが下記式(1)を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
    0.3≦A≦2 …(1)
    (但し、A=(D84−D16)/2であり、D84は体積粒度分布累積カーブが84%となる点の粒径(μm)を表し、D16は体積粒度分布累積カーブが16%となる点の粒径(μm)を表す。)
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグ。
  7. 請求項6に記載のプリプレグからなる繊維強化プラスチック。
  8. エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記硬化剤が粒子であり、レーザー回析・散乱法で測定される前記硬化剤の体積平均径が2.5μm以下であり、前記硬化剤の体積粒度分布幅の指標Aが下記式(1)を満たす、エポキシ樹脂組成物。
    0.3≦A≦2 …(1)
    (但し、A=(D84−D16)/2であり、D84は体積粒度分布累積カーブが84%となる点の粒径(μm)を表し、D16は体積粒度分布累積カーブが16%となる点の粒径(μm)を表す。)
  9. 前記硬化剤がジシアンジアミドである、請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物。
  10. 前記硬化剤の体積累積分布径D90が3.0μm以下である、請求項8または9に記載のエポキシ樹脂組成物。
  11. 前記エポキシ樹脂が25℃において液状のエポキシ樹脂及び固形のエポキシ樹脂を含む、請求項8〜10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  12. 請求項8〜11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維からなるプリプレグ。
  13. エポキシ樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物の製造方法であって、レーザー回析・散乱法で測定される体積平均径が2.5μm以下、体積粒度分布幅の指標Aが下記式(1)を満たす硬化剤の粒子を前記エポキシ樹脂と混合する工程を含む、エポキシ樹脂組成物の製造方法。
    0.3≦A≦2 …(1)
    (但し、A=(D84−D16)/2であり、D84は体積粒度分布累積カーブが84%となる点の粒径(μm)を表し、D16は体積粒度分布累積カーブが16%となる点の粒径(μm)を表す。)
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