JP2021147314A - 遷移金属複合水酸化物粒子、遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法、リチウムイオン二次電池用正極活物質、及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

遷移金属複合水酸化物粒子、遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法、リチウムイオン二次電池用正極活物質、及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】正極活物質としてリチウムイオン二次電池に適用した場合に、出力特性の高い遷移金属複合水酸化物粒子を提供する。【解決手段】ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、コバルト(Co)と、元素A(A)とを、物質量の比で、Ni:Mn:Co:A=x:y:z:t(x+y+z=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0<t≦0.1、前記元素Aは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、La、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の元素)の割合で含有し、一次粒子を含む中心部と、前記中心部の外側に配置され、かつ前記中心部よりも一次粒子が密に配置された外殻部とを有し、前記中心部における前記元素Aの存在割合(th)が、前記外殻部における前記元素Aの存在割合(ts)よりも小さい遷移金属複合水酸化物粒子を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、遷移金属複合水酸化物粒子、遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法、リチウムイオン二次電池用正極活物質、及びリチウムイオン二次電池に関するものである。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な二次電池の開発が強く望まれている。また、ハイブリット電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電池式電気自動車などの電気自動車用の電源として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極、正極、電解質などで構成され、負極および正極の材料として用いられる活物質には、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が使用される。
リチウムイオン二次電池のうち、層状またはスピネル型のリチウム遷移金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電池として、現在、研究開発が盛んに行われており、一部では実用化も進んでいる。
リチウムイオン二次電池の正極材料として、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.52)などのリチウム遷移金属複合酸化物が提案されている。
ところで、出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を得るためには、正極活物質の比表面積を大きくする方法が一般的である。これは、正極活物質として用いた場合に電解質との反応面積を十分に確保することができるためである。
正極活物質の比表面積を大きくする方法として、例えば中空構造による高比表面積のリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
しかしながら、特に電気自動車等に求められる出力特性は以前にも増して高まっており、さらなる性能向上が求められていた。
そこで、リチウムイオン二次電池に適用した場合の高出力化に必要な低抵抗化への実現の手段として、正極活物質への異種元素の添加が検討されており、特にMo,Nb,W,Taなどの高価数を取ることのできる遷移金属の添加が検討されている。
例えば特許文献3では、一次粒子の表面部分のLi及びMo,W、Nb、Ta、及びReから選ばれる1種以上の添加元素以外の金属元素の合計に対する該添加元素の合計の原子比が粒子全体の該原子比の5倍以上であるリチウム遷移金属系化合物粉体が開示されている。
また、特許文献4ではリチウム金属複合酸化物粉末に所定の割合のタングステン化合物を溶解させたアルカリ溶液を添加、混合することにより、リチウム金属複合酸化物粉末の表面もしくは該粉末の一次粒子の表面にWを分散させる第1工程と、混合したタングステン化合物を溶解させたアルカリ水溶液とリチウム金属複合酸化物粉末を100〜800℃の範囲で熱処理することによりLiWO、LiWO、Liのいずれかで表せられるタングステン酸リチウムを含む微粒子を、リチウム金属複合酸化物粉末の表面もしくは該粉末の一次粒子の表面に形成する第2工程を有する非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法が開示されている。
特許文献5では、一次粒子および前記一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなり、電解液が浸透可能な空隙を二次粒子の表面近傍および内部に有すると共に、前記リチウム金属複合酸化物の表面又は粒界に、タングステンが濃縮されたリチウムを含む所定の層厚の化合物層を有する非水系電解質二次電池用正極活物質が開示されている。
また、特許文献6では、所定の複合水酸化物粒子を、少なくともタングステン化合物を含む水溶液と混合してスラリー化し、スラリーのpH値を制御することにより、タングステンおよび添加元素の金属酸化物もしくは金属水酸化物を含む被覆物を該複合水酸化物粒子の表面に形成する被覆工程を備えることを特徴とする遷移金属複合水酸化物の製造方法が開示されている。
特開2012−246199号公報 特開2013−147416号公報 特開2008−305777号公報 特開2013−125732号公報 特開2014−197556号公報 特開2012−252844号公報
しかしながら、既述の様に近年ではさらなる出力特性の向上が求められている。そして、正極活物質としてリチウムイオン二次電池に適用した場合に、出力特性を高くすることができる遷移金属複合水酸化物粒子が求められていた。
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一態様では、正極活物質としてリチウムイオン二次電池に適用した場合に、出力特性の高い遷移金属複合水酸化物粒子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、コバルト(Co)と、元素A(A)とを、物質量の比で、Ni:Mn:Co:A=x:y:z:t(x+y+z=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0<t≦0.1、前記元素Aは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、La、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の元素)の割合で含有し、
一次粒子を含む中心部と、前記中心部の外側に配置され、かつ前記中心部よりも一次粒子が密に配置された外殻部とを有し、
前記中心部における前記元素Aの存在割合(t)が、前記外殻部における前記元素Aの存在割合(t)よりも小さい遷移金属複合水酸化物粒子を提供する。
本発明の一態様によれば、正極活物質としてリチウムイオン二次電池に適用した場合に、出力特性の高い遷移金属複合水酸化物粒子を提供することができる。
図1は、本開示の一態様に係る遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法のフロー図である。 図2は、本開示の一態様に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法のフロー図である。 図3は、本開示の一態様に係るリチウムイオン二次電池の断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
以下に、(1)遷移金属複合水酸化物粒子、(2)遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法、(3)リチウムイオン二次電池用正極活物質、(4)リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法、(5)リチウムイオン二次電池の順に説明する。
(1)遷移金属複合水酸化物粒子
(1−1)組成
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子(以下、単に「複合水酸化物粒子」とも記載する)は、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、コバルト(Co)と、元素A(A)とを、物質量の比で、Ni:Mn:Co:A=x:y:z:tの割合で含有できる。
上記x、y、z、tは、x+y+z=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0<t≦0.1の関係を満たすことが好ましい。また、元素Aは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、La、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の元素とすることができる。
本実施形態の複合水酸化物粒子は、例えば一般式(A):NiMnCo(OH)2+aで表記することができる。上記一般式(A)中のx、y、z、t、及び元素Aについては既に説明したため、ここでは説明を省略する。上記一般式(A)中のaは、例えば0≦a≦0.5とすることができる。
上記組成を有する複合水酸化物粒子を前駆体とすることで、後述する組成の正極活物質を容易に得ることができ、より高い電池性能を実現することができる。
なお、上記複合水酸化物粒子が含有する、ニッケル、マンガン、コバルトおよび元素Aの好適な含有範囲は、後述するリチウムイオン二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」とも記載する)と同様となる。このため、これらの各元素の好適な含有範囲は、正極活物質の項でまとめて説明する。
(1−2)粒子構造
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子は、一次粒子を含む中心部と、中心部の外側に配置され、かつ中心部よりも一次粒子が密に配置された外殻部とを有することができる。
外殻部は、上述のように中心部よりも一次粒子が密に、すなわち一次粒子を高密度に配置した密な構造を有することができる。中心部は、外殻部よりも一次粒子の密度が低い、疎な構造を有することができる。中心部と外殻部とは直接接するように配置できる。
なお、上述のように中心部と、外殻部とは、配置された一次粒子の密度が異なるため、例えば粒子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)等で観察することで、容易に特定できる。
外殻部は、例えば複数の板状の一次粒子を含むことができる。中心部は、例えば外殻部の板状の一次粒子よりも小さな一次粒子が凝集して形成できる。複合水酸化物粒子は、上述のように一次粒子が凝集して形成された二次粒子とすることができる。
また、複合水酸化物粒子は、中心部における元素Aの存在割合(t)が、外殻部における元素Aの存在割合(t)よりも小さいことが好ましい。すなわち、t>tであることが好ましい。ここでいう中心部における元素Aの存在割合(t)とは、複合水酸化物粒子が含有する元素Aのうち、中心部に含まれる元素Aの割合を意味する。また、外殻部における元素Aの存在割合(t)とは、複合水酸化物粒子が含有する元素Aのうち、外殻部に含まれる元素Aの割合を意味する。このため、tと、tを合計すると100%となる。なお、中心部、及び外殻部はいずれも元素Aを含有することが好ましい。このため、t>t>0を充足することが好ましい。
後述するように、正極活物質は、複合水酸化物とリチウム化合物との混合物を焼成することで得られる。
本実施形態の複合水酸化物は上述のように元素Aを含むことができ、係る複合水酸化物と、リチウム化合物との混合物を焼成した正極活物質は、一部に例えば元素Aとリチウムとを含む化合物を含有する。係る元素Aとリチウムとを含む化合物は、リチウムイオン伝導度が高いため、該正極活物質をリチウムイオン二次電池に用いた場合に、反応抵抗(正極抵抗)を抑制し、出力特性の向上に大きく寄与する。
本発明の発明者の検討によれば、元素Aを含む本実施形態の複合水酸化物粒子を用いて、正極活物質を調製した場合、上記元素Aとリチウムとを含む化合物は、正極活物質が含有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子の表層や、粒界に形成される。リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子の表層や、粒界は、電解質と接触する部分であるため、係る部分に元素Aとリチウムとを含む化合物が配置されることで、リチウムイオンの伝導度を高めることができ、該正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の出力特性を特に向上できる。
特に、上述のようにt>tとなるように元素Aを配置することで、本実施形態の複合水酸化物粒子を用いて調製した正極活物質の中空部の表面等の電解質と接する部分に、上記元素Aとリチウムとを含む化合物を十分に配置できる。このため、該正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の出力特性を特に向上できるため好ましい。
なお、本明細書において粒界とは、二つ以上の小さな結晶粒子の間に存在する界面粒子間境界を意味する。また、表層とは、粒子の表面、具体的には粒子の空洞内部の電解質と接触可能な内表面や、粒子の外表面を意味する。
本発明の発明者の検討によれば、リチウムとタングステンとを含む化合物は、リチウムイオン伝導度が特に優れている。このため、既述の元素Aはタングステンを含むことが好ましく、タングステンであることがより好ましい。
これは、元素Aがタングステンを含むことで、該複合水酸化物を用いて作製した正極活物質をリチウムイオン二次電池に適用した場合に、該リチウムイオン二次電池の出力特性を特に向上させることができるからである。
後述する複合水酸化物粒子の製造方法の粒子成長工程のうち、第一晶析工程により中心部を、第二晶析工程により外殻部の内周側を、第三晶析工程により外殻部の外周側を形成できる。このため、例えば第一晶析工程の間に供給した元素Aの物質量と、第三晶析工程の間に供給した元素Aの物質量との比を上記中心部における元素Aの存在割合(t)と、外殻部における元素Aの存在割合(t)の比とすることができる。
また、例えば複合水酸化物粒子の断面において、中心部、外殻部の元素Aの濃度をEDX(Energy dispersive X−ray spectroscopy)により測定、算出し、各領域の面積(面積比)を掛けることで、上記中心部における元素Aの存在割合(t)と、外殻部における元素Aの存在割合(t)とを算出し、比較することもできる。
中心部内、外殻部内で元素Aの濃度が変化する場合には、複合水酸化物粒子の断面において、該粒子の径方向に沿って複数箇所でEDXにより元素Aの濃度を測定し、中心部、外殻部の平均濃度を算出できる。測定する箇所は特に限定されないが、例えば中心部内で中心部を粒子の径方向に等間隔に複数の領域に分割できる2点で、外殻部内で外殻部を粒子の径方向に等間隔に複数の領域に分割できる2点で、それぞれ元素Aの濃度を測定し、各領域の元素Aの平均濃度を算出できる。そして、各領域の平均濃度に、各領域の面積(面積比)を掛けることで、上記中心部における元素Aの存在割合と、外殻部における元素Aの存在割合とを算出し、比較することもできる。
外殻部の中でも、外殻部の外周部における元素Aの存在割合が高いことが好ましい。すなわち、外殻部の外周部における元素Aの存在割合(ts')が、外殻部における元素Aの存在割合(t)よりも大きいことが好ましく、ts'>tの関係にあることが好ましい。外殻部の外周部における元素Aの存在割合(ts')を、外殻部における元素Aの存在割合(t)よりも大きくすることで、該複合水酸化物粒子を用いて調製した正極活物質において、該正極活物質の粒子の外表面側に元素Aとリチウムとを含む化合物を特に高濃度に配置できる。正極活物質の外表面は電解質と特に接触する部分であるため、係る部分にリチウムイオン伝導度が高い元素Aとリチウムとを含む化合物を高濃度に配置することで、反応抵抗を特に下げ、出力特性を特に向上できるからである。
既述の様に、元素Aはタングステンを含有することが好ましい。
この場合、本実施形態の複合水酸化物粒子の中心部のタングステンの濃度は、0.1質量%以上9.0質量%以下であることが好ましい。これは中心部のタングステンの濃度を上記範囲とすることで、該複合水酸化物粒子を用いて調製した正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の出力特性を特に向上させることができるからである。
複合水酸化物の中心部のタングステンの濃度は、例えば製造過程で、後述する第1晶析工程終了後の粒子を回収し、ICP(Inductively Coupled Plasma)等により評価できる。また、例えばEDXにより評価を行うこともできる。
また、元素Aがタングステンを含有する場合、本実施形態の複合水酸化物粒子は、外殻部の外表面に10nm以上100nm以下のタングステン濃縮層を有することが好ましい。ここでいうタングステン濃縮層とは、他の部分よりもタングステン濃度が局所的に高い層を意味する。複合水酸化物粒子の外殻部の外表面、すなわち粒子の外表面にタングステン濃縮層が配置されていることで、該複合水酸化物を前駆体として製造した正極活物質において、該正極活物質の粒子の外表面にリチウム−タングステン化合物を特に高濃度に配置できる。そして、既述の様にリチウム−タングステン化合物は特にリチウムイオン伝導度に優れるため、係る正極活物質の出力特性を特に高めることができるからである。
上記タングステン濃縮層は、粒子の空洞内部の電解質と接触可能な内表面にも設けられていることがより好ましい。すなわち、上記タングステン濃縮層は、複合水酸化物粒子の外殻部の表層に配置されていることがより好ましい。
タングステン濃縮層の厚さは、例えばSEM−EDXにより評価できる。
(1−3)平均粒径
本実施形態の複合水酸化物粒子の平均粒径は特に限定されないが、平均粒径は例えば4.0μm以上9.0μm以下であることが好ましい。
本実施形態の複合水酸化物粒子の平均粒径を上記範囲とすることで、該複合水酸化物粒子を前駆体として製造した正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池において、単位容積あたりの電池容量を増加させることができる。また、熱安定性や出力特性を特に向上することができる。
具体的には、平均粒径を4.0μm以上とすることで、該複合水酸化物粒子を前駆体として製造した正極活物質を用いて正極を作製する際の充填性が向上し、単位容積あたりの電池容量を増加させることができる。
一方、平均粒径を9.0μm以下とすることで、該複合水酸化物粒子を前駆体として製造した正極活物質について、電解質との反応面積を向上させることができ、リチウムイオン二次電池とした場合に出力特性を特に高めることができる。
なお、平均粒径とは、累積中位径(メジアン径)を意味し、例えばレーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
(1−4)粒度分布
本実施形態の複合水酸化物粒子の、粒度分布の広がりを示す分布指数は特に限定されないが、0.60以下であることが好ましい。
分布指数は、以下の式(1)により算出できる。
(分布指数)=〔(d90−d10)/平均粒径〕・・・(1)
正極活物質の粉体特性は、前駆体である複合水酸化物粒子の粉体特性の影響を強く受ける。このため、分布指数が上記範囲にある複合水酸化物粒子を前駆体として製造した正極活物質は、その粒度分布の幅を狭くすることができる。すなわち、微細粒子や粗大粒子の割合が少ない正極活物質とすることができる。
例えば微細粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を作製した場合、微細粒子の局所的な反応に起因して、発熱する場合がある。このため、熱安定性が低下したり、微細粒子が選択的に劣化したりしてリチウムイオン二次電池の容量が低下、すなわちサイクル特性が低下する場合がある。また、粗大粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を作製した場合、電解質と正極活物質の反応面積を十分に確保することができず、出力特性が劣ったものとなる。
これに対して、上述のように、粒度分布が狭く、微細粒子や粗大粒子の割合が少ない正極活物質とすることで、サイクル特性や、出力特性、熱安定性を特に向上させることができる。
ただし、分布指数が過度に小さいものを用いることは、生産性の観点で現実的ではない。したがって、複合水酸化物粒子の分布指数は、例えば0.25以上であることが好ましい。
なお、式(1)中におけるd10は、各粒径における粒子数を粒径が小さいほうから累積したときに、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径を意味している。また、d90は、各粒径における粒子数を粒径が小さいほうから累積したときに、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を意味している。平均粒径や、d90、d10を求める方法は特に限定されないが、たとえば、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。平均粒径としては既述の様にメジアン径、すなわちd50を用いることができる。d50としては、d90の場合と同様に累積体積が全粒子体積の50%となる粒径を用いればよい。
(2)遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法は以下の工程を有することができる。
酸化性雰囲気であり、かつ粒子成長のための核を含む反応水溶液が収容された反応槽の、反応水溶液に対して、少なくともニッケル及びマンガンを含む原料水溶液と、元素Aを含む添加水溶液と、錯化剤と、塩基性水溶液とを供給する第一晶析工程。
反応槽内の雰囲気を非酸化性雰囲気に切り替える第二晶析工程。
反応槽内に、少なくともニッケル及びマンガンを含む原料水溶液と、元素Aを含む添加水溶液と、錯化剤と、塩基性水溶液とを供給する第三晶析工程。
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法によれば、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、コバルト(Co)と、元素A(A)とを、物質量の比で、Ni:Mn:Co:A=x:y:z:tの割合で含有する遷移金属複合水酸化物粒子を製造できる。なお、上記x、y、z、tは、x+y+z=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0<t≦0.1を満たしていることが好ましい。また、元素Aは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、La、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の元素とすることができる。
以下、本実施形態の複合水酸化物粒子の製造方法の各工程について説明する。本実施形態の複合水酸化物粒子の製造方法は、既述の複合水酸化物粒子を製造できる限り制限されることはないが、既述の組成を有する複合水酸化物粒子に対して、好適に適用することができる。なお、本実施形態の複合水酸化物の製造方法により、既述の複合水酸化物を製造できる。このため、既に説明した事項の一部は説明を省略する。
本実施形態の複合水酸化物粒子の製造方法は、晶析反応によって、正極活物質の前駆体となる複合水酸化物粒子を製造する方法である。図1に本実施形態の複合水酸化物粒子の製造方法のフロー10を示す。図1中、(A)が核生成工程、(B)が粒子成長工程である。
本実施形態の複合水酸化物粒子の製造方法では、晶析反応を、主として核生成を行う核生成工程と、主として粒子成長を行う粒子成長工程の2段階に明確に分離するとともに、各工程における晶析条件を調整することにより行うことができる。これにより所定の構造を有する複合水酸化物粒子を得ることを可能とする。また、粒子成長工程において、所定のタイミングで元素Aを含む添加水溶液を供給、停止することによって、粒子内での元素Aの動径方向の分布を制御することができる。
なお、粒子成長工程に供する核を含む反応水溶液を予め用意できている場合には、核生成工程を実施せずに、粒子成長工程から開始できる。
(2−1)各工程について
以下に各工程の操作について説明する。各工程で供給する原料水溶液等の水溶液や、pH値、アンモニウムイオン濃度、温度等の好適な条件は後述する。
(2−1−1)核生成工程(S11)
核生成工程では、第一晶析工程に供給する粒子成長のための核を含む反応水溶液を調製できる。
核生成工程を開始する前に、反応槽内には、反応前水溶液を調製しておくことが好ましい。このため、まず反応前水溶液を調製する反応前水溶液調製工程について説明する。
(反応前水溶液調製工程)
反応前水溶液は、例えば塩基性水溶液と、錯化剤とを供給および混合することで調製できる。なお、反応前水溶液には必要に応じて水を添加しておくこともできる。
反応前水溶液は、液温25℃基準で測定するpH値が12.0以上14.0以下、アンモニウムイオン濃度が3g/L以上25g/L以下となるように調製することが好ましい。
核生成工程は、酸化性雰囲気とすることが好ましい。このため、反応前水溶液調製工程についても、反応槽内の反応雰囲気を酸化性雰囲気に制御することが好ましい。
ここで、酸化性雰囲気とは反応雰囲気中における酸素濃度が十分に高い雰囲気を意味し、具体的には例えば酸素濃度が5容量%より高いことが好ましい。酸化性雰囲気の場合、酸素のみの雰囲気とすることもできるため、酸素濃度の上限値は100容量%以下とすることができる。
酸化性雰囲気においては、酸素以外の成分としては希ガスや、窒素ガス等の不活性ガスであることが好ましい。この場合、酸化性雰囲気中の酸素濃度は不活性ガスとの混合雰囲気を制御することによって調整できる。
反応前水溶液や、後述する反応水溶液のpH値はpH計により、アンモニウムイオン濃度はイオンメータにより測定できる。
(核生成工程)
核生成工程では、反応槽に、原料水溶液や、必要に応じて塩基性水溶液、錯化剤を供給、混合できる。
核生成工程では、反応前水溶液調製工程で調製した、反応前水溶液を撹拌しながら、該反応前水溶液に原料水溶液を供給できる。これにより、反応槽内には、核生成工程における反応水溶液である核生成用水溶液が形成される。
核生成用水溶液のpH値は12.0以上14.0以下であることが好ましい。pH値を係る範囲とすることで、核生成工程では、核はほとんど成長することなく、核生成が優先的に起こる。
核生成工程では核生成に伴い、核生成用水溶液のpH値およびアンモニウムイオンの濃度が変化する。このため、塩基性水溶液および錯化剤を適時供給できる。これにより、反応槽内の核生成用水溶液のpH値を液温25℃基準でpH12.0以上14.0以下の範囲に、アンモニウムイオンの濃度を3g/L以上25g/L以下の範囲に維持するように制御することが好ましい。
核生成工程では、核生成用水溶液に、原料水溶液、塩基性水溶液、および錯化剤を供給することにより、連続して新しい核の生成が継続される。核生成工程は、核生成用水溶液中に、所定量の核が生成した時点で終了する。核の生成量は、核生成用水溶液に供給した原料水溶液に含まれる金属化合物の量から判断できる。
(2−1−2)粒子成長工程
粒子成長工程は以下の第一晶析工程から第三晶析工程を有することができる。
(第一晶析工程(S12))
第一晶析工程では、酸化性雰囲気であり、かつ粒子成長のための核を含む反応水溶液が収容された反応槽の、反応水溶液に対して、少なくともニッケル及びマンガンを含む原料水溶液と、元素Aを含む添加水溶液と、錯化剤と、塩基性水溶液とを供給できる。
粒子成長工程の間、粒子成長用水溶液のpH値は液温25℃基準で10.5以上12.0以下に調整されていることが好ましい。このため、第一晶析工程を開始する際、粒子成長のための核を含む反応水溶液のpH値が上記範囲に調整されていることが好ましい。
そこで、例えば既述の核生成工程で得られた核生成用水溶液のpH値を調整して、反応水溶液である粒子成長用水溶液としてから第一晶析工程を開始できる。核生成用水溶液のpH値の調整は、核生成用水溶液への酸の添加や、核生成工程で添加していた塩基性水溶液の供給を停止することで実施できる。核生成用水溶液に酸を添加して、反応水溶液のpH値を調整する場合、不純物の混入を抑制する観点から、酸として原料水溶液を調製する際に用いた、金属化合物を構成する酸と同種の無機酸を用いることが好ましい。例えば原料水溶液を調製する際に硫酸塩を用いた場合、反応水溶液のpH値を調整する酸として硫酸を用いることが好ましい。
核生成用水溶液のpH値を調整する場合、核生成工程で核生成用水溶液に添加していた全ての水溶液の供給を停止して、pH値を調整して粒子成長用水溶液としてから粒子成長工程を開始することが好ましい。pHを調整する際に全ての水溶液の供給を一旦停止することで、得られる複合水酸化物粒子の粒径の均一性を高めることができるために好ましい。
なお、既述の様に、粒子成長工程に供する核を含む反応水溶液を予め用意できている場合には、核生成工程を実施しなくても良く、係る核を含む反応水溶液のpH値を所定の範囲に調整し、第一晶析工程に供することができる。
本実施形態の複合水酸化物の製造方法により得られる複合水酸化物は、中心部における元素Aの存在割合が、外殻部における元素Aの存在割合よりも低いことが好ましい。
ただし、中心部においても一定割合の元素Aが含まれていることが好ましく、通常、中心部のサイズは、外殻部のサイズよりも小さくなることから、中心部において元素Aは高濃度に含まれていることが好ましい。中心部に元素Aを高濃度に含有させるためには、粒子成長工程の第一晶析工程において元素Aを含有する溶液を添加する必要がある。添加する溶液の量を増すことによって、疎な中心部の添加元素の量を増すことができる。
(第二晶析工程(S13))
第二晶析工程では、反応槽内の雰囲気を非酸化性雰囲気に切り替えることができる。
複合水酸化物粒子が有する、一次粒子の密度が疎な中心部と密な外殻部とは、粒子成長工程における反応槽内のpH、アンモニア濃度および雰囲気制御などにより形成される。簡易には、次のような工程により疎な中心部と密な外殻部が形成される。例えば、酸化性雰囲気の粒子成長工程の第一晶析工程では微細な一次粒子により形成された空隙が多い低密度の粒子の領域が形成される。一方、弱酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気にした第二晶析工程以降の粒子成長工程では、一次粒子が大きく緻密で高密度の粒子の領域が形成される。すなわち、核生成工程と粒子成長工程の初期の一部を酸化性雰囲気とすることで、微細一次粒子を含む中心部が形成される。その後に粒子成長工程を酸化性雰囲気から切り替えて弱酸化性から非酸化性の範囲の雰囲気とすることで、中心部の外側に微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子を含む外殻部を有する粒子構造を形成できる。なお、中心部は上記微細一次粒子から構成されていても良く、外殻部は上記板状一次粒子から構成されていても良い。
ここで、非酸化性雰囲気とは、反応雰囲気中における酸素濃度が十分に低い雰囲気と意味し、具体的には例えば酸素濃度が5容量%以下であることが好ましく、2容量%以下であることがさらに好ましく、1容量%以下であることがさらに好ましい。
非酸化性雰囲気においては、酸素以外の成分としては希ガスや、窒素ガス等の不活性ガスであることが好ましい。この場合、非酸化性雰囲気中の酸素濃度は不活性ガスの混合雰囲気を制御することによって調整できる。第二晶析工程、及び後述する第三晶析工程における反応槽内の雰囲気を非酸化性雰囲気とすることで、晶析物の不要な酸化を抑制しつつ、核生成工程で生成した核を一定の範囲まで成長させることができるため、外殻部を粒度分布が狭い板状一次粒子が凝集した構造とすることができる。
なお、第二晶析工程において、反応槽内の雰囲気を非酸化性雰囲気に切り替えた後、反応槽内の反応水溶液に少なくともニッケル及びマンガンを含む原料水溶液を供給することもできる。粒子成長用水溶液に原料水溶液を添加する場合、粒子成長用水溶液のpH値や、アンモニア濃度も変化することから、粒子成長用水溶液に、あわせて錯化剤と、塩基性水溶液とを添加することもできる。
ただし、第二晶析工程においては、元素Aを含む水溶液を添加しないことが好ましい。このように第二晶析工程で原料水溶液を供給し、元素Aを含む水溶液を添加しないことで、外殻部の内周側の元素Aの存在割合を抑制し、外周部における元素Aの存在割合を、外殻部における元素Aの存在割合よりも大きくできる。
元素Aを含む水溶液は、主に複合水酸化物粒子の中心部を形成する既述の第一晶析工程や、複合水酸化物粒子の外殻部の外側を形成する第三晶析工程において添加することが好ましい。このため、粒子成長工程全体で添加する原料水溶液のうちの多くを、第二晶析工程で添加すると、複合水酸化物粒子内に十分に元素Aを取り込むことができなくなる恐れがある。このため、第一晶析工程で供給する原料水溶液中の金属の物質量の合計をM1、第二晶析工程で供給する原料水溶液中の金属の物質量の合計をM2、第三晶析工程で供給する原料水溶液の金属の物質量の合計をM3とした場合、以下の式(2)の関係を満たすことが好ましい。
0≦M2/(M1+M2+M3)≦0.90 ・・・(2)
すなわち、粒子成長工程の間に供給する原料水溶液中の金属、例えばニッケル、マンガン、場合によってはさらにコバルトの物質量の合計のうち、第二晶析工程で供給する原料水溶液中の金属の物質量の合計の占める割合は90%以下であることが好ましい。粒子成長工程の間に供給する原料水溶液中の金属の物質量の合計のうち、第二晶析工程で供給する原料水溶液中の金属の物質量の合計の占める割合を90%以下とすることで、複合水酸化物粒子内に、添加した元素Aのほぼ全てを取り込むことができる。
第二晶析工程では原料水溶液を添加しなくても良いことから、上記M2/(M1+M2+M3)は0以上とすることができる。
(第三晶析工程(S14))
第三晶析工程では、反応槽内に、少なくともニッケル及びマンガンを含む原料水溶液と、元素Aを含む添加水溶液と、錯化剤と、塩基性水溶液とを供給することができる。
第三晶析工程は、第二晶析工程に引き続いて、反応槽内の雰囲気を非酸化性雰囲気として実施できる。第三晶析工程を実施することで、金属水酸化物粒子の外殻部を形成できる。
第三晶析工程において予め決められた原料水溶液と元素Aを含む添加水溶液を供給した時点で、全ての水溶液の供給を停止し、粒子成長工程を終了できる。
(2−2)供給する水溶液について
上述の核生成工程、粒子成長工程で供給できる各水溶液について説明する。なお、各水溶液について、工程ごとに以下に説明する範囲内で組成等が異なる水溶液を用いることもできるが、生産性や、不純物の混入を抑制する観点から同じ水溶液を用いることが好ましい。
(原料水溶液)
原料水溶液中の金属元素の比率は、得られる複合水酸化物粒子の組成比とほぼ同じになる。このため、原料水溶液は、目的とする複合水酸化物粒子の組成に応じて、各金属元素の含有量を適宜調整することが好ましい。
例えば、既述の組成を有する複合水酸化物粒子を得ようとする場合、原料水溶液中の金属元素の物質量の比が、Ni:Mn:Co=x:y:zとなるように調整することが好ましい。なお、上述の場合、x、y、zは、既述の様にx+y+z=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4を満たす。
原料水溶液は、例えば水に金属化合物を添加することで調製できる。原料水溶液を調製するための、金属化合物の種類は特に制限されないが、取扱いの容易性から、水溶性の硝酸塩、硫酸塩、および塩酸塩等から選択された1種類以上を用いることが好ましい。コストやハロゲンの混入を防止する観点から、金属化合物としては硫酸塩を好適に用いることが特に好ましい。
原料水溶液の濃度は、金属化合物の合計で、0.5mol/L以上2.0mol/L以下であることが好ましく、1.0mol/L以上1.5mol/L以下であることがより好ましい。
原料水溶液の濃度を0.5mol/L以上とすることで、反応槽当たりの晶析物量を十分に高め、生産性を向上させることができる。一方、原料水溶液の濃度を2.0mol/L以下とすることで、各金属化合物の結晶が再析出することを防止し、配管などが閉塞することをより確実に防止できる。
原料水溶液は、上述のように少なくともニッケルとマンガンを含有できるが、1つの原料水溶液とする必要はない。例えば、複数の金属化合物を混合することで、特定の金属化合物同士が反応して不要な化合物が生成される場合には、金属化合物の種類ごとに原料水溶液を調製することができる。そして、反応前水溶液や、反応水溶液に、調製した個々の原料水溶液を、所定の割合で同時に添加してもよい。この場合には、個別に添加した原料水溶液中の合計の金属化合物の濃度が、上述した原料水溶液の濃度の範囲内となるように、調整、添加することが好ましい。
粒子成長工程の間の原料水溶液の供給量は特に限定されないが、粒子成長工程の終了時点において、粒子成長用水溶液中の生成物の濃度が、好ましくは30g/L以上200g/L以下、より好ましくは80g/L以上150g/L以下となるように供給できる。生成物の濃度を30g/L以上とすることで、一次粒子の凝集を十分に促進し、目的とする構造を備えた複合水酸化物粒子を歩留まり良く得られる。また生成物の濃度を200g/L以下とすることで、反応槽内に原料水溶液を十分に拡散し、特に均一に粒子成長を促進できる。
(元素Aを含む添加水溶液)
複合水酸化物粒子は、既述の様に元素Aを含むことができる。このため、粒子成長工程において、元素Aを含む添加水溶液を反応水溶液に添加できる。
既述の様に、元素Aとしては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、La、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上が挙げられる。このため、元素Aを含む水溶液を調製するための金属化合物としては、添加する元素Aを含む水溶性の化合物を好ましく用いることができる。
元素Aを含む水溶性の化合物としては例えば、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、硫酸ハフニウム、タンタル酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウムなどを好適に用いることができる。
元素Aを含む添加水溶液は、特にその濃度が高いことが好ましい。これは、元素Aの濃度を高くすることで、既述の第一晶析工程や、第三晶析工程で元素Aを含む水溶液を添加した場合に、反応水溶液内で元素Aが短時間で析出し、粒子の所望の領域に元素Aを配置し易くなるからである。このため、元素Aを含む水溶液は、元素Aの濃度が例えば該元素Aの溶解度近傍であることが好ましい。ただし、元素Aを含む水溶液内に析出しないように、元素Aの濃度は該元素Aの溶解度以下であることが好ましい。
元素Aがタングステンの場合、例えばタングステンの濃度は、室温(25℃)でのタングステンの溶解度である1.37mol/L以下であることが好ましく、例えば0.5mol/L以上1.0mol/L以下であることが好ましい。
元素Aを含む添加水溶液は、既述の原料水溶液と混合しておくこともできるが、既述の様に例えば第二晶析工程では元素Aを含む水溶液を添加しないことが好ましい。このため、原料水溶液とは別の水溶液としておき、反応槽に供給することが好ましい。
なお、元素Aとしては、タングステンであることが好ましい。元素Aがタングステンの場合、元素Aを含む水溶性の化合物としては、上述のように例えばタングステン酸ナトリウムや、タングステン酸アンモニウムを用いることができるが、タングステン酸ナトリウムであることが好ましい。
元素Aがタングステンの場合において、第一晶析工程において供給する添加水溶液に含まれるタングステンの合計の物質量をW1とし、第三晶析工程において供給する添加水溶液に含まれるタングステンの合計の物質量をW3とする。
そして、第一晶析工程から第三晶析工程までの間に、反応水溶液に供給する添加水溶液に含まれるタングステンの合計の物質量をWとした場合に、以下の式(3)、及び式(4)の関係を満たすことが好ましい。
0.05≦W1/W<0.5・・・(3)、0.5≦W3/W<0.95・・・(4)
これは、式(3)、及び式(4)の関係を満たすことで、得られる複合水酸化物粒子について、外殻部の外周に配置されるタングステンの割合を高くでき、該複合水酸化物粒子を用いて得られる正極活物質をリチウムイオン二次電池に用いた場合に、その出力特性を特に高められるからである。
(塩基性水溶液)
反応水溶液中のpH値を調整する塩基性水溶液は、特に制限されることはなく各種塩基性水溶液を用いることができるが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の一般的なアルカリ金属水酸化物から選択された1種類以上を含む水溶液を用いることができる。なお、アルカリ金属水酸化物を、直接、反応水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。
塩基性水溶液としてアルカリ金属水酸化物水溶液を用いる場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度を、20質量%以上50質量%以下とすることが好ましく、20質量%以上30質量%以下とすることがより好ましい。
アルカリ金属水溶液の濃度を上記範囲とすることにより、反応槽に供給する溶媒量(水量)を抑制しつつ、添加位置で局所的にpH値が高くなることを防止することができる。これにより粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を効率的に得ることができる。
なお、塩基性水溶液の供給方法は、反応水溶液のpH値が局所的に高くならず、かつ所定の範囲に維持される限り、特に制限されることはない。例えば、反応水溶液を十分に撹拌しながら、定量ポンプなどの流量制御が可能なポンプにより供給できる。
(錯化剤)
錯化剤も特に限定されないが、例えばアンモニウムイオン供給体を含む水溶液を好ましく用いることができる。
アンモニウムイオン供給体を含む水溶液としては、例えばアンモニア水、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウム等から選択された1種類以上を含む水溶液を使用することができる。
アンモニウムイオン供給体を含む水溶液として、アンモニア水を使用する場合、そのアンモニア濃度は特に限定されないが、20質量%以上30質量%以下であることが好ましく、22質量%以上28質量%以下であることがより好ましい。アンモニア水の濃度をこのような範囲とすることにより、揮発などによるアンモニアの損失を最小限に抑制することができる。
なお、錯化剤の供給方法も特に限定されないが、例えば塩基性水溶液と同様に、流量制御が可能なポンプにより供給することができる。
(2−3)反応水溶液のpH値について
本実施形態の複合水酸化物粒子の製造方法の核生成工程、粒子成長工程における反応水溶液のpH値は特に限定されず、各工程の反応に応じて任意に選択できる。
液温25℃基準におけるpH値を、核生成工程においては例えば12.0以上14.0以下の範囲にすることが好ましい。粒子成長工程においては10.5以上12.0以下の範囲に制御することが好ましい。
なお、いずれの工程においても、晶析反応中のpH値の変動幅は小さいことが好ましく、例えば±0.2以内とすることが好ましい。pH値の変動幅を上記範囲内とすることで、核生成量と粒子成長の割合の変動を抑制し、特に粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を得ることができる。以下、各工程の好適なpH値について詳述する。
(核生成工程)
核生成工程においては、反応水溶液(核生成用水溶液)のpH値を、液温25℃基準で、12.0以上14.0以下とすることが好ましく、12.3以上13.5以下とすることがより好ましく、12.5以上13.3以下とすることがさらに好ましい。
反応水溶液のpH値を上記範囲とすることで、核の成長を抑制し、核生成を優先させることができ、核生成工程で生成する核を特に均質かつ粒度分布の狭いものとすることができる。
具体的には、pH値を12.0以上とすることで、核(粒子)の成長の進行を特に抑制できる。このため、得られる複合水酸化物粒子の粒径を特に均一にでき、粒度分布を特に狭くできる。また、pH値を14.0以下とすることで、生成する核が過度に微細になったり、核生成用水溶液がゲル化することを特に防止できる。
(粒子成長工程)
粒子成長工程においては、反応水溶液(粒子成長用水溶液)のpH値を、液温25℃基準で、10.5以上12.0以下とすることが好ましく、11.0以上12.0以下とすることがより好ましく、11.5以上12.0以下とすることがさらに好ましい。
反応水溶液のpH値を上記範囲とすることで、新たな核の生成が抑制し、粒子成長を優先させることができ、得られる複合水酸化物粒子を特に均質かつ粒度分布が狭いものとすることができる。
具体的には、pH値を10.5以上とすることで、アンモニウムイオン濃度を抑制し、金属イオンの溶解度を抑制できるため、晶析反応の速度を十分に促進できる。さらに、反応水溶液中に残存する金属イオン量を抑制し、生産性を高められる。また、pH値を12.0以下とすることで、粒子成長工程中の核生成量を抑制し、得られる複合水酸化物粒子の粒径を均一にできるため、粒度分布を特に狭くできる。
なお、pH値が12.0の場合は、核生成と核成長の境界条件であるため、反応水溶液中に存在する核の有無により、核生成工程または粒子成長工程のいずれかの条件とすることができる。すなわち、核生成工程のpH値を12.0より高くして多量に核生成させた後、粒子成長工程のpH値を12.0とすると、反応水溶液中に多量の核が存在するため、粒子成長が優先して起こり、粒度分布が狭い複合水酸化物粒子を得ることができる。一方、核生成工程のpH値を12.0とすると、反応水溶液中に成長する核が存在しないため、核生成が優先して起こり、粒子成長工程のpH値を12.0より小さくすることで、生成した核が成長して良好な複合水酸化物粒子を得ることができる。いずれの場合においても、粒子成長工程のpH値を核生成工程のpH値より低い値で制御すればよく、核生成と粒子成長を明確に分離するためには、粒子成長工程のpH値を核生成工程のpH値より0.5以上低くすることが好ましく、1.0以上低くすることがより好ましい。
(2−4)アンモニウムイオン濃度
反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度は、特に限定されないが、核生成工程、粒子成長工程、いずれの工程においても、3g/L以上25g/L以下であることが好ましく、5g/L以上20g/L以下であることが好ましい。アンモニウムイオン濃度は上記範囲内で変動を抑制していることが好ましく、一定値に保持することがより好ましい。
反応水溶液中においてアンモニウムイオンは錯化剤として機能するため、アンモニウムイオン濃度を3g/L以上とすることで、金属イオンの溶解度を一定に保持することができる。また、反応水溶液がゲル化することを抑制し、形状や粒径の整った複合水酸化物粒子を得ることができる。
一方、アンモニウムイオン濃度を25g/L以下とすることで、金属イオンの溶解度が過度に高くなることを抑制し、反応水溶液中に残存する金属イオン量を抑制できるため、より確実に目的組成の複合水酸化物粒子を得ることができる。
なお、上述のように晶析反応中のアンモニウムイオン濃度は変動が抑制され、一定値に保持されていることが好ましい。アンモニウムイオン濃度の変動を抑制することで、金属イオンの溶解度の変動を抑制でき、組成等が特に均一な複合水酸化物粒子を形成できる。このため、核生成工程と粒子成長工程を通じて、アンモニウムイオン濃度の変動幅を一定の範囲に制御することが好ましく、具体的には、±5g/L以内の変動幅に制御することが好ましい。
(2−5)反応水溶液の温度
反応水溶液の温度(反応温度)は、核生成工程と粒子成長工程を通じて、20℃以上に制御されていることが好ましく、20℃以上60℃以下の範囲に制御されていることがより好ましい。
反応温度を20℃以上とすることで、反応水溶液の溶解度を高め、核生成が過度に生じることを抑制できる。このため、得られる複合水酸化物粒子について、容易に平均粒径や粒度分布を制御できる。
なお、反応温度の上限は特に制限されることはないが、60℃以下とすることでアンモニアの揮発を抑制し、反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度を制御するために供給するアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の量を抑制できるため好ましい。
(2−6)製造装置
複合水酸化物粒子の製造方法では、反応が完了するまで生成物を回収しない方式の装置、たとえば、バッチ反応槽を用いることが好ましい。このような装置であれば、オーバーフロー方式によって生成物を回収する連続晶析装置のように、成長中の粒子がオーバーフロー液と同時に回収されることがないため、粒度分布が狭い複合水酸化物粒子を容易に得ることができる。
また、晶析反応中の反応雰囲気を制御することが必要であるため、密閉式の装置などの雰囲気制御可能な装置を使用することが好ましい。このような装置であれば、核生成工程や粒子成長工程における反応雰囲気を適切に制御することができるため、上述した粒子構造を有し、かつ、粒度分布が狭い複合水酸化物粒子を容易に得ることができる。
(3)リチウムイオン二次電池用正極活物質
本実施形態の正極活物質は、リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、コバルト(Co)と、元素A(A)とを、物質量の比で、Li:Ni:Mn:Co:A=1+u:x:y:z:tの割合で含有することができる。
本実施形態の正極活物質は、六方晶系のリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子を含むことができる。
本実施形態の正極活物質は、上記リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子から構成することもできる。
なお、u、x、y、z、tは、−0.05≦u≦0.50、x+y+z=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0<t≦0.1の関係を満たすことが好ましい。また、元素Aは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、La、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の元素とすることができる。
なお、本実施形態の正極活物質は、遷移金属複合水酸化物粒子とリチウム化合物との混合焼成物とすることができる。
(3−1)粒子構造
本実施形態の正極活物質が含有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子(以下、単に「複合酸化物粒子」ともいう)は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子を含むことができる。二次粒子は、電気的に導通する一次粒子の凝集部と、一次粒子が存在しない中空部が、分散して存在できる。係る複合酸化物粒子において、中空部は、部分的に形成される必要はなく、中心部と外殻部との間の全体に形成されていてもよい。また、凝集部は、例えば板状一次粒子が凝集して二次粒子が複数連結した状態であってもよい。なお、本実施形態において、「電気的に導通する」とは、複合酸化物粒子の高密度部同士が、直接的に、構造的に接続され、電気的に導通可能な状態であることを意味する。
このような粒子構造を有する複合酸化物粒子では、一次粒子間の粒界または中空部を介して、二次粒子の内部に電解質が侵入する。このため、二次粒子の外表面ばかりでなく、二次粒子の内部においても、リチウムの脱離および挿入が可能となる。加えて、この複合酸化物粒子では、二次粒子の内部に電気的に導通可能な経路を多数有するため、粒子内部の抵抗を十分に小さなものとすることができる。したがって、係る複合酸化物粒子を含む本実施形態の正極活物質を用いて二次電池を構成した場合、容量特性やサイクル特性を損なうことなく、出力特性を大幅に向上させることが可能となる。
また、複合酸化物粒子は、粒子の表層及び粒界から選択された部分に、元素A及びリチウムを含む化合物が配置されていることが好ましい。
一般的に、正極活物質の表層が異種化合物により完全に被覆されてしまうと、リチウムイオンの移動(インターカレーション)が大きく制限される。結果的に複合酸化物の持つ高容量という長所が消されてしまうことが一般的である。これに対して本実施形態においては、複合金属酸化物粒子の表層及び粒界から選択された1箇所以上にリチウム伝導性を有する元素A及びリチウムを含む化合物が配置されている。このため、電解質との界面で、リチウムの伝導パスを形成できる。このため、活物質の反応抵抗を低減して出力特性を向上させることができる。特に、中空構造の内側に元素A及びリチウム含んだ化合物が形成される場合、より出力特性を向上させることが可能になる。
既述の様に元素Aは、タングステンを含むことが好ましく、タングステンであることがより好ましい。すなわち、複合酸化物粒子は、粒子の表層及び粒界から選択された部分に、タングステン及びリチウムを含む化合物が配置されていることが好ましい。
タングステン及びリチウム含んだ化合物はリチウムイオンの伝導性が高いためリチウムイオンの移動を促す効果も有している。このため、活物質の反応抵抗を特に低減して、出力特性を向上することができるからである。タングステン及びリチウム含んだ化合物は特に限定されないが、例えばLiWO、LiWO、Liなどが挙げられいずれの化合物でもよい。
(3−2)組成
本実施形態の正極活物質は、既述の様にリチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、コバルト(Co)と、元素A(A)とを、物質量の比で、Li:Ni:Mn:Co:A=1+u:x:y:z:tの割合で含有することができる。
本実施形態の正極活物質は例えば、一般式(B):Li1+uNiMnCo2+Bと表記できる。u、x、y、z、t、及び元素Aは既に説明したため、ここでは説明を省略する。Bは、例えば−0.05≦B≦0.25とすることができる。
リチウム(Li)の過剰量を示すuの値は、好ましくは−0.05以上0.50以下、より好ましく0以上0.50以下、さらに好ましくは0以上0.35以下である。uの値を上記範囲に調整することにより、この正極活物質を正極材料として用いた二次電池の出力特性および容量特性を向上させることができる。uの値を−0.05以上とすることで、二次電池の正極抵抗を抑制し、出力特性を向上させることができる。一方、uの値を0.50以下とすることで、初期放電容量を高め、正極抵抗を抑制できる。
ニッケル(Ni)は、二次電池の高電位化及び高容量化に寄与する元素であり、その含有量を示すxの値は、好ましくは0.30以上0.95以下、より好ましくは0.30以上0.90以下である。xの値を0.30以上とすることで、該正極活物質を用いた二次電の容量特性を向上させることができる。一方、xの値を0.95以下とすることで、他の元素の含有量を十分に確保し、他の元素を添加することによる効果も得ることができる。
マンガン(Mn)は、熱安定性の向上に寄与する元素であり、その含有量を示すyの値は、好ましくは0.05以上0.55以下、より好ましくは0.10以上0.40以下である。yの値を0.05以上とすることで、該正極活物質を用いた二次電池の熱安定性を向上させることができる。一方、yの値が0.55以下とすることで、高温作動時においても正極活物質からMnが溶出することを抑制し、充放電サイクル特性を高めることができる。
コバルト(Co)は、充放電サイクル特性の向上に寄与する元素であり、その含有量を示すzの値は、好ましくは0以上0.4以下、より好ましくは0.10以上0.35以下である。zの値を0.4以下とすることで、該正極活物質を用いた二次電池の初期放電容量を向上させることができる。
本実施形態における正極活物質では、二次電池の耐久性や出力特性をさらに改善するため、上述した金属元素に加えて、元素Aを含有してもよい。このような元素Aとしては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)から選択される1種類以上を用いることができる。
元素Aの含有量を示すtの値は、好ましくは0より大きく0.1以下、より好ましくは0.001以上0.05以下である。tの値を0.1以下とすることで、酸化還元反応(Redox反応)に貢献する金属元素を十分に確保し、電池容量を高めることができる。
なお、上記に示した正極活物質の組成は一例であって、上述した構造を有している場合に、正極活物質の組成を制限するものではない。
(3−3)格子定数
本実施形態の正極活物質はX線回折により得られた、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の格子定数aが2.585981Å以上2.860002Å以下であることが好ましい。
係る格子定数aは、正極活物質について測定した粉末X線回折パターンから、リートベルト法等により算出できる。
(4)リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
本実施形態における正極活物質の製造方法は、以下の2工程を含むことができる。
遷移金属複合化合物とリチウム化合物とを混合してリチウム混合物を形成する混合工程。
混合工程で形成されたリチウム混合物を焼成する焼成工程。
なお、混合工程に供する遷移金属複合化合物としては、既述の遷移金属複合水酸化物粒子を用いることもできるが、係る遷移金属複合水酸化物粒子を熱処理工程で熱処理してから用いることもできる。係る熱処理工程を行う場合、本実施形態の正極活物質の製造方法は、熱処理工程を含めて3工程を含むことができる。図2に、正極活物質の製造方法が、3工程を含む場合のフロー20を示す。
本実施形態の正極活物質の製造方法によれば、上述した正極活物質、特に、一般式(B)で表される正極活物質を容易に得ることができる。
以下に各工程について説明する。
(熱処理工程(S21))
本実施形態の正極活物質の製造方法においては、任意的に、混合工程の前に熱処理工程を設けて、複合水酸化物粒子を「熱処理粒子」としてからリチウム化合物と混合してもよい。ここで、熱処理粒子には、熱処理工程において余剰水分を除去された複合水酸化物粒子のみならず、熱処理工程により、酸化物に転換された遷移金属複合酸化物粒子、またはこれらの混合物も含まれる。
熱処理工程は、複合水酸化物粒子を105℃以上750℃以下に加熱して熱処理することにより、複合水酸化物粒子に含有される余剰水分を除去する工程である。このように混合工程の前に熱処理を行っておくことで、得られる正極活物質の組成のばらつきを抑制することができる。
熱処理工程における熱処理温度は特に限定されないが、例えば105℃以上750℃以下とすることができる。熱処理温度を105℃以上とすることで、複合水酸化物粒子中の余剰水分を十分に除去し、正極活物質の組成のばらつきを十分に抑制できる。一方、加熱温度が750℃を超えても、余剰水分の除去が促進することはない。このため、生産性の観点から750℃以下であることが好ましい。
なお、熱処理工程では、正極活物質中の各金属成分の原子数や、Liの原子数の割合にばらつきが生じない程度に水分が除去できればよい。従って、必ずしも全ての複合水酸化物粒子に含まれる水酸化物を酸化物に転換する必要はない。しかしながら、各金属成分の原子数やLiの原子数の割合のばらつきをより少ないものとするためには、400℃以上に加熱して、複合水酸化物粒子に含まれる全ての水酸化物を、酸化物に転換することが好ましい。
熱処理工程における雰囲気は特に制限されるものではない。非還元性雰囲気であればよいが、簡易的に空気気流中で行うことでもよい。
また、熱処理時間は、特に制限されないが、複合水酸化物粒子中の余剰水分を十分に除去する観点から、少なくとも1時間以上とすることが好ましく、5時間以上15時間以下とすることがより好ましい。
(混合工程(S22))
混合工程は、複合水酸化物粒子または熱処理粒子である遷移金属複合化合物と、リチウム化合物とを混合して、リチウム混合物を得る工程である。
混合工程では、リチウム混合物中のリチウム以外の金属原子、具体的にはニッケル、コバルト、マンガン、および添加元素Aとの物質量の和(Me)と、リチウムの物質量(Li)との比(Li/Me)が、0.95以上1.5以下であることが好ましく、1.0以上1.5以下であることがより好ましく、1.0以上1.35以下であることがさらに好ましく、1.0以上1.2以下であることが特に好ましい。係るLi/Meとなるように、遷移金属複合化合物とリチウム化合物とを混合することが好ましい。
これは、焼成工程の前後ではLi/Meはほとんど変化しないので、混合工程におけるLi/Meが、目的とする正極活物質のLi/Meとなるように、複合水酸化物粒子または熱処理粒子とリチウム化合物を混合することが好ましいからである。
混合工程で使用するリチウム化合物は、特に制限されることはないが、入手の容易性から、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。特に、取り扱いの容易さや品質の安定性を考慮すると、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムを用いることが好ましい。
遷移金属複合化合物とリチウム化合物は、微粉が生じない程度に十分に混合することが好ましい。混合が不十分であると、個々の粒子間でLi/Meにばらつきが生じ、十分な電池特性を得ることができない場合がある。なお、混合には、一般的な混合機を使用することができる。たとえば、シェーカーミキサ、レーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いることができる。
(焼成工程(S23))
焼成工程は、混合工程で得られたリチウム混合物を所定条件の下で焼成し、遷移金属複合化合物中にリチウムを拡散させて、リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子を得る工程である。
遷移金属複合化合物の、空隙が多い低密度な部分に主に含まれる微細一次粒子は、高密度な部分に主に含まれる板状一次粒子よりも低温から焼結を開始する。板状一次粒子を含む高密度な部分と比べて、微細一次粒子を含む低密度な部分の収縮量は大きなものとなる。このため、低密度部を構成する微細一次粒子は、焼結の進行が遅い外殻部の高密度な部分側に収縮し、適度な大きさの中空部が形成されることになる。
ただし、複合水酸化物粒子の組成や焼成条件などによって中心部の構造は変化することがある。そのため、予備試験を行った上で、中心部が所望の構造となるように、各条件を適宜制御することが好ましい。
なお、焼成工程に用いられる炉は、特に制限されることはなく、大気ないしは酸素気流中でリチウム混合物を加熱できるものであればよい。ただし、炉内の雰囲気を均一に保つ観点から、ガス発生がない電気炉が好ましく、バッチ式あるいは連続式の電気炉のいずれも好適に用いることができる。なお、この点については、熱処理工程および後述する仮焼工程に用いる炉についても同様である。
焼成工程におけるリチウム混合物の焼成温度は特に限定されないが、例えば650℃以上980℃以下とすることが好ましい。焼成温度を650℃以上とすることで、遷移金属複合化合物中にリチウムを十分に拡散させ、余剰のリチウムや未反応の遷移金属複合化合物が残存することを抑制できる。また、得られるリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子の結晶性を高められる。
一方、焼成温度を980℃以下とすることで、得られるリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子間の焼結を抑制し、異常粒子成長の発生や、それに伴う不定形な粗大粒子の発生を抑制できる。
なお、既述の組成の正極活物質を得ようとする場合には、焼成温度を650℃以上950℃以下とすることが好ましい。
また、焼成工程における昇温速度は特に限定されないが、例えば2℃/分以上10℃/分以下とすることが好ましく、2.5℃/分以上10℃/分以下とすることがより好ましい。焼成工程中、リチウム化合物の融点付近の温度で保持することが好ましく、例えば1時間以上5時間以下保持することが好ましく、2時間以上5時間以下保持することがより好ましい。リチウム化合物の融点付近の温度で保持することにより、遷移金属複合化合物とリチウム化合物とを、より均一に反応させることができる。
焼成工程において、上述した焼成温度での保持時間は特に限定されないが、2時間以上とすることが好ましく、4時間以上24時間以下とすることがより好ましい。上記焼成温度における保持時間を2時間以上とすることで、遷移金属複合化合物中にリチウムを十分に拡散させ、余剰のリチウムや未反応の遷移金属複合化合物が残存することを抑制できる。また、得られるリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子の結晶性を特に高めることができる。
なお、保持時間終了後、焼成温度から少なくとも200℃までの冷却速度は、2℃/分以上10℃/分以下とすることが好ましく、3℃/分以上7℃/分以下とすることがより好ましい。冷却速度をこのような範囲に制御することにより、生産性を確保しつつ、匣鉢などの設備が、急冷により破損することを防止することができる。
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18容量%以上100容量%以下の雰囲気とすることがより好ましい。焼成時の雰囲気は、上記酸素濃度の酸素と不活性ガスの混合雰囲気とすることが好ましい。
焼成は、例えば大気ないしは酸素気流中で行うことが好ましい。酸素濃度を18容量%以上とすることで、リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子の結晶性を特に高めることができる。
本実施形態の正極活物質の製造方法は、さらに任意の工程を有することもできる。
(仮焼工程)
リチウム化合物として、水酸化リチウムや炭酸リチウムを使用する場合には、混合工程後、焼成工程の前に、リチウム混合物を、後述する焼成温度よりも低温、かつ350℃以上800℃以下で仮焼する仮焼工程をさらに有することもできる。仮焼工程の仮焼温度は、450℃以上780℃以下であることがより好ましい。
仮焼工程を実施することで、遷移金属複合化合物中に、リチウムを十分に拡散させることができ、より均一なリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子を得ることができる。
なお、上記仮焼温度での保持時間は特に限定されないが、1時間以上10時間以下とすることが好ましく、3時間以上6時間以下とすることが好ましい。
仮焼工程における雰囲気は、既述の焼成工程と同様に、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18容量%以上100容量%以下の雰囲気とすることがより好ましい。
(解砕工程)
焼成工程によって得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子は、凝集または軽度の焼結が生じている場合がある。このような場合、リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子の凝集体または焼結体を解砕することが好ましい。これによって、得られる正極活物質の平均粒径や粒度分布を好適な範囲に調整することができる。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギーを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく分離させて、凝集体をほぐす操作を意味する。
解砕の方法としては、公知の手段を用いることができ、たとえば、ピンミルやハンマーミルなどを使用することができる。なお、この際、二次粒子を破壊しないように解砕力を適切な範囲に調整することが好ましい。
(5)リチウムイオン二次電池
本実施形態のリチウムイオン二次電池(以下、「二次電池」ともいう。)は、既述の正極活物質を含む正極を有することができる。
以下、本実施形態の二次電池の一構成例について、構成要素ごとにそれぞれ説明する。本実施形態の二次電池は、例えば正極、負極及び非水系電解質を含み、一般のリチウムイオン二次電池と同様の構成要素から構成される。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、下記実施形態をはじめとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
(正極)
本実施形態の二次電池が有する正極は、既述の正極活物質を含むことができる。
以下に正極の製造方法の一例を説明する。まず、既述の正極活物質(粉末状)、導電材および結着剤(バインダー)を混合して正極合材とし、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製することができる。
正極合材中のそれぞれの材料の混合比は、リチウムイオン二次電池の性能を決定する要素となるため、用途に応じて、調整することができる。材料の混合比は、公知のリチウムイオン二次電池の正極と同様とすることができ、例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量%とした場合、正極活物質を60質量%以上95質量%以下、導電材を1質量%以上20質量%以下、結着剤を1質量%以上20質量%以下の割合で含有することができる。
得られた正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して溶剤を飛散させ、シート状の正極が作製される。必要に応じ、電極密度を高めるべくロールプレス等により加圧することもできる。このようにして得られたシート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等し、電池の作製に供することができる。
導電材としては、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛など)や、アセチレンブラックやケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラック系材料などを用いることができる。
結着剤(バインダー)としては、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂およびポリアクリル酸等から選択された1種類以上を用いることができる。
必要に応じ、正極活物質、導電材等を分散させて、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加することもできる。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することもできる。
正極の作製方法は、上述した例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。例えば正極合材をプレス成形した後、真空雰囲気下で乾燥することで製造することもできる。
(負極)
負極は、金属リチウム、リチウム合金等を用いることができる。また、負極は、リチウムイオンを吸蔵・脱離できる負極活物質に結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを用いてもよい。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛およびフェノール樹脂などの有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
(セパレータ)
正極と負極との間には、必要に応じてセパレータを挟み込んで配置することができる。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微小な孔を多数有する膜を用いることができる。
(非水系電解質)
非水系電解質としては、例えば非水系電解液を用いることができる。
非水系電解液としては、例えば支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものを用いることができる。また、非水系電解液として、イオン液体にリチウム塩が溶解したものを用いてもよい。なお、イオン液体とは、リチウムイオン以外のカチオンおよびアニオンから構成され、常温でも液体状の塩をいう。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネートや、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらにテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルなどのリン化合物等から選ばれる1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることもできる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、およびそれらの複合塩などを用いることができる。さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
また、非水系電解質としては、固体電解質を用いてもよい。固体電解質は、高電圧に耐えうる性質を有する。固体電解質としては、無機固体電解質、有機固体電解質が挙げられる。
無機固体電解質としては、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等が挙げられる。
酸化物系固体電解質としては、特に限定されず、例えば酸素(O)を含有し、かつリチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものを好適に用いることができる。酸化物系固体電解質としては、例えば、リン酸リチウム(LiPO)、LiPO、LiBO、LiNbO、LiTaO、LiSiO、LiSiO−LiPO、LiSiO−LiVO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiO−B−ZnO、Li1+XAlTi2−X(PO(0≦X≦1)、Li1+XAlGe2−X(PO(0≦X≦1)、LiTi(PO、Li3XLa2/3−XTiO(0≦X≦2/3)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、Li3.6Si0.60.4等から選択された1種類以上を用いることができる。
硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、例えば硫黄(S)を含有し、かつリチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものを好適に用いることができる。硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−B、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P等から選択された1種類以上を用いることができる。
なお、無機固体電解質としては、上記以外のものを用いてよく、例えば、LiN、LiI、LiN−LiI−LiOH等を用いてもよい。
有機固体電解質としては、イオン伝導性を示す高分子化合物であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの共重合体などを用いることができる。また、有機固体電解質は、支持塩(リチウム塩)を含んでいてもよい。
(二次電池の形状、構成)
以上のように説明してきた本実施形態のリチウムイオン二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、本実施形態の二次電池が非水系電解質として非水系電解液を用いる場合であれば、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉した構造とすることができる。
なお、既述の様に本実施形態の二次電池は非水系電解質として非水系電解液を用いた形態に限定されるものではなく、例えば固体の非水系電解質を用いた二次電池、すなわち全固体電池とすることもできる。全固体電池とする場合、正極活物質以外の構成は必要に応じて変更することができる。
以下、本発明の実施例について、比較例との対比により、より具体的に説明をおこなうが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、特に断りがない限り、複合水酸化物粒子および正極活物質の作製には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。また、核生成工程および粒子成長工程を通じて、反応水溶液のpH値は、pH計(東亜DKK製、HM−30P)により測定した。この測定値に基づき、pHコントローラ(日伸理化製、NPM−690D)を用いて塩基性水溶液である水酸化ナトリウム水溶液の供給量を調整することで、各工程における反応水溶液のpH値の変動幅を±0.2の範囲に制御した。反応水溶液のアンモニウムイオン濃度は、イオンメータ(サーモフィッシャーサイエンティフィック製、Orion Star A324)を用いて測定した。この測定値に基づき、錯化剤であるアンモニア水の供給量を調整することで、各工程における反応水溶液のアンモニウムイオン濃度の変動幅を±5g/L以内に制御した。
(実施例1)
(a)複合水酸化物粒子の製造
[反応前水溶液調製工程]
はじめに、反応槽内に、水を14L入れた反応槽内を300rpmで撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。この際、反応槽内に、酸素ガスを導入し、30分間流通させ、反応雰囲気を、酸素濃度が5容量%より高い酸化性雰囲気とした。なお、第一晶析工程が終わるまで、反応槽内は酸化性雰囲気とした。続いて、反応槽内に塩基性水溶液である25質量%水酸化ナトリウム水溶液と、錯化剤である25質量%アンモニア水を適量供給し、pH値が、液温25℃基準で12.5、アンモニウムイオン濃度が10g/Lとなるように調整することで反応前水溶液を形成した。
また、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、硫酸コバルトを、各金属元素の物質量の比がNi:Mn:Co=40:30:30となるように水に溶解し、2mol/Lの原料水溶液を調製した。
[核生成工程]
次に、上記原料水溶液を、反応前水溶液に10mL/分の速度で供給することで、核生成用水溶液を形成し、1分間の核生成を行った。この際、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液と25質量%のアンモニア水を適時供給し、核生成用水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度を上述した値に維持した。
[粒子成長工程]
(第一晶析工程)
核生成終了後、全ての水溶液の供給を一旦停止するとともに、反応水溶液に硫酸を加えて、pH値が、液温25℃基準で11.2となるように調整することで、粒子成長用水溶液を形成した。pH値が所定の値になったことを確認した後、原料水溶液に加えて元素Aを含む添加水溶液であるタングステン化合物水溶液を供給し、核生成工程で生成した核(粒子)を成長させた。なお、タングステン化合物としてはタングステン酸ナトリウムを用いた。
(第二晶析工程)
第一晶析工程終了後、反応槽内を非酸化性雰囲気とするために、一度原料水溶液および添加水溶液の供給を停止した。そして、酸素ガスから窒素ガスに切り替えて導入し、反応雰囲気を、酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とした。なお、第三晶析工程を終えるまで、反応槽内を非酸化性雰囲気とした。
(第三晶析工程)
第二晶析工程終了後、原料水溶液、及び添加水溶液の供給を再開した。第三晶析工程において所定量の原料水溶液と添加水溶液を供給した時点で、全ての水溶液の供給を停止し、粒子成長工程を終了した。
ここで、第一晶析工程で供給する原料水溶液中の金属の物質量の合計をM1、第二晶析工程で供給する原料水溶液中の金属の物質量の合計をM2、第三晶析工程で供給する原料水溶液の金属の物質量の合計をM3とする。この場合、実施例1では、各晶析工程での原料水溶液の供給割合が以下の式を充足するように、各工程で原料水溶液を供給した。
M1/(M1+M2+M3)=0.04
M2/(M1+M2+M3)=0
M3/(M1+M2+M3)=0.96
また、第一晶析工程で供給する添加水溶液中の元素Aであるタングステンの物質量の合計をW1、第二晶析工程で供給する添加水溶液中のタングステンの物質量の合計をW2、第三晶析工程で供給する添加水溶液のタングステンの物質量の合計をW3とする。この場合、実施例1では、各晶析工程での添加水溶液の供給割合が以下の式を充足するように、各工程で添加水溶液を供給した。
なお、第一晶析工程から第三晶析工程までの間に、反応水溶液に供給する添加水溶液に含まれるタングステンの合計の物質量をWとする場合、W=W1+W2+W3となる。
W1/(W1+W2+W3)=0.09
W2/(W1+W2+W3)=0
W3/(W1+W2+W3)=0.91
第三晶析工程終了後、得られた生成物を、水洗、ろ過および乾燥させることにより、粉末状の複合水酸化物粒子を得た。なお、第一晶析工程により複合水酸化物粒子の中心部が形成され、第二晶析工程により複合水酸化物粒子の外殻部の内側が、第三晶析工程により外殻部の外側が形成される。このため、上記割合で添加水溶液を供給することで、中心部におけるタングステンの存在割合(t)が第一晶析工程で添加した割合に対応した9%、外殻部におけるタングステンの存在割合(t)が第二晶析工程、第三晶析工程で添加した割合に対応した91%となる。
なお、以下の他の実施例、比較例についても同様のことがいえる。
例えば実施例2で得られた複合水酸化物では、中心部におけるタングステンの存在割合(t)が第一晶析工程で添加した割合に対応した27%、外殻部におけるタングステンの存在割合(t)が第二晶析工程、第三晶析工程で添加した割合に対応した73%となる。
実施例3で得られた複合水酸化物では、中心部におけるタングステンの存在割合(t)が第一晶析工程で添加した割合に対応した45%、外殻部におけるタングステンの存在割合(t)が第二晶析工程、第三晶析工程で添加した割合に対応した55%となる。
実施例4〜実施例6は、実施例1の場合と同様の結果になる。
上記式で算出される各晶析工程での原料水溶液の供給割合、各晶析工程での添加水溶液の供給割合の値を、表1に示す。
なお、粒子成長工程の間、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液と25質量%のアンモニア水を適時供給し、粒子成長用水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度を上述した値に維持した。
(b)複合水酸化物粒子の評価
(b−1)断面構造
得られた複合水酸化物粒子を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工により該粒子の断面観察が可能な状態としてから、SEMにより観察を行った。
その結果、複合水酸化物粒子の中心部は微細な一次粒子から構成され、該中心部の外側に配置された外殻部は、中心部よりも大きな板状の一次粒子から構成され、該一次粒子が密に配置されていることを確認できた。なお、以下の実施例2〜実施例6で得られた複合水酸化物粒子についても同様の構造を有することを確認できた。
(b−2)組成分析
ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPE−9000ICPE−9000)を用いた分析により、この複合水酸化物粒子は、一般式:Ni0.40Mn0.30Co0.300.006(OH)で表されるものであることが確認された。結果を表2に示す。
(b−3)分布指数
レーザー光回折散乱式粒度分析計を用いて、得られた粒度分布から、複合水酸化物粒子の平均粒径、d10、d90を算出し、粒度分布の広がりを示す指標である分布指数を既述の式(1)を用いて算出した。結果を表2の「(D90−D10)/平均粒径」の欄に示す。
(b−4)タングステン濃度
EDXを装着した走査型透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製HD−2300A)を用いた分析した。疎な中心部に含まれるタングステンの濃度は1.2質量%、密な外殻部に含まれるタングステンの濃度は1.23質量%であることが確認できた。評価結果を表3に示す。
(c)正極活物質の作製
(混合工程)
上述のようにして得られた複合水酸化物粒子をLi/Meが1.10となるように、シェーカーミキサ装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて炭酸リチウムと十分に混合し、リチウム混合物を得た。
(焼成工程)
このリチウム混合物を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中、昇温速度を2.5℃/分として950℃まで昇温し、この温度で4時間保持することにより焼成し、冷却速度を約4℃/分として室温まで冷却した。
(解砕工程)
焼成工程後に得られた正極活物質は、凝集または軽度の焼結が生じていた。このため、この正極活物質を解砕し、平均粒径および粒度分布を調整した。
(d)正極活物質の評価
(組成分析)
ICP発光分光分析装置を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:Li1.1Ni0.40Mn0.30Co0.300.006で表されるものであることが確認された。
(格子定数)
得られた正極活物質について、粉末X線回折測定を行った。測定は放射線としてCuKα線(波長1.54059Å)を使用したX線回折装置(スペクトリス製X' Pert PRO)を用いて行った。X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流40mAに設定して測定を行った。また、測定は5°/minの走査速度で行い10°から100°(2θ)の角度範囲で記録した。
得られたX線回折パターンから、正極活物質が含有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、立方晶であることが確認できた。リチウムニッケルマンガン複合酸化物のa軸長の格子定数を算出したところ、2.86002Åであった。結果を表4に示す。
(e)リチウムイオン二次電池の作製
得られた正極活物質を用いて、図3に示したCR2032(IEC/JIS規格)、すなわち2032型コイン電池であるリチウムイオン二次電池30を作製した。
リチウムイオン二次電池30は、ケース31と、このケース31内に収容された電極32とから構成されている。
ケース31は、中空かつ一端が開口された正極缶311と、この正極缶311の開口部に配置される負極缶312とを有しており、負極缶312を正極缶311の開口部に配置すると、負極缶312と正極缶311との間に電極32を収容する空間が形成されるように構成されている。
電極32は、正極321、セパレータ322および負極323からなり、この順で並ぶように積層されており、正極321が正極缶311の内面に接触し、負極323が負極缶312の内面に接触するようにケース31に収容されている。
なお、ケース31は、ガスケット313を備えており、このガスケット313によって、正極缶311と負極缶312との間が非接触の状態、すなわち電気的に絶縁状態を維持するように相対的な移動を規制し、固定されている。また、ガスケット313は、正極缶311と負極缶312との隙間を密封して、ケース31内と外部との間を気密液密に遮断する機能も有している。
このリチウムイオン二次電池30を、以下のようにして作製した。まず、得られた正極活物質:52.5mgと、アセチレンブラック:15mgと、PTEE:7.5mgとを混合し、100MPaの圧力で、直径11mm、厚さ100μmにプレス成形した後、真空乾燥機中、120℃で12時間乾燥することにより、正極321を作製した。
この正極321、負極323、セパレータ322および電解液を用いて、リチウムイオン二次電池30を、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
負極323には、直径17mm、厚さ1mmのリチウム金属を用いた。電解液には、1MのLiClOを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
セパレータ322には、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。
(f)電池評価
[反応抵抗]
組み立てたコイン電池を用いてSOC80%における交流インピーダンス法による抵抗値を測定した。SOCとは電池の充電率(State of Charge)を指し、SOC80%はフル充電容量を100%とした時に、80%分を充電した状態を示す。
そして、後述する比較例1で作製したリチウムイオン二次電池のSOC20%の抵抗値を参照基準(Ref.)、すなわち1として、実施例1で評価した及びSOC80%の指標値を算出した。
SOC80%における反応抵抗の指標値は0.85であった。結果を表5に示す。
(実施例2〜実施例6)
粒子成長工程の各晶析工程での原料水溶液の供給割合、各晶析工程での添加水溶液の供給割合の値を表1に示した値とした点以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質、リチウムイオン二次電池を作製し、評価を行った。結果を表2〜表5に示す。
具体的には、実施例2〜実施例3では、実施例1の場合と比較して、第一晶析工程及び第三晶析工程における添加水溶液の供給割合を変更した。
また、実施例4〜実施例6では、実施例1の場合と比較して第二晶析工程及び第三晶析工程における原料水溶液の供給割合を変更した。
なお、実施例4〜実施例6では、外殻部の内側を形成する第二晶析工程で原料水溶液を供給している。このため、外殻部のうち内側にはタングステンをほとんど含んでいない領域を含むことになる。従って、外殻部のうち、第三晶析工程で形成される外殻部の外周部におけるタングステンの存在割合が、外殻部全体におけるタングステンの割合よりも大きくなっている。
(比較例1、比較例2)
粒子成長工程の各晶析工程での原料水溶液の供給割合、各晶析工程での添加水溶液の供給割合の値を表1に示した値とした点以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質、リチウムイオン二次電池を作製し、評価を行った。結果を表2〜表5に示す。
Figure 2021147314
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表5の結果から、所定の粒子構造を有し、中心部における元素Aの存在割合(t)が、外殻部における元素Aの存在割合(t)よりも小さい複合水酸化物粒子を前駆体として製造した正極活物質を適用したリチウムイオン二次電池において、反応抵抗を抑制できることを確認できた。すなわち出力特性を向上できることを確認できた。

Claims (12)

  1. ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、コバルト(Co)と、元素A(A)とを、物質量の比で、Ni:Mn:Co:A=x:y:z:t(x+y+z=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0<t≦0.1、前記元素Aは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、La、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の元素)の割合で含有し、
    一次粒子を含む中心部と、前記中心部の外側に配置され、かつ前記中心部よりも一次粒子が密に配置された外殻部とを有し、
    前記中心部における前記元素Aの存在割合(t)が、前記外殻部における前記元素Aの存在割合(t)よりも小さい遷移金属複合水酸化物粒子。
  2. 前記外殻部のうち、外周部における前記元素Aの存在割合(ts')が、前記外殻部における前記元素Aの存在割合(t)よりも大きい請求項1に記載の遷移金属複合水酸化物粒子。
  3. 以下の式(1)により求められる粒度分布の広がりを示す、分布指数が0.60以下である請求項1または請求項2に記載の遷移金属複合水酸化物粒子。
    (分布指数)=〔(d90−d10)/平均粒径〕・・・(1)
  4. 前記元素Aはタングステンである請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の遷移金属複合水酸化物粒子。
  5. 前記中心部のタングステン濃度が0.1質量%以上9.0質量%以下である請求項4に記載の遷移金属複合水酸化物粒子。
  6. 前記外殻部の外表面に10nm以上100nm以下のタングステン濃縮層が形成されている請求項4または請求項5に記載の遷移金属複合水酸化物粒子。
  7. 遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法であって、
    前記遷移金属複合水酸化物粒子は、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、コバルト(Co)と、元素A(A)とを、物質量の比で、Ni:Mn:Co:A=x:y:z:t(x+y+z=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0<t≦0.1、元素Aは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、La、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の元素)の割合で含有しており、
    酸化性雰囲気であり、かつ粒子成長のための核を含む反応水溶液が収容された反応槽の、前記反応水溶液に対して、少なくともニッケル及びマンガンを含む原料水溶液と、前記元素Aを含む添加水溶液と、錯化剤と、塩基性水溶液とを供給する第一晶析工程と、
    前記反応槽内の雰囲気を非酸化性雰囲気に切り替える第二晶析工程と、
    前記反応槽内に、少なくともニッケル及びマンガンを含む原料水溶液と、前記元素Aを含む添加水溶液と、錯化剤と、塩基性水溶液とを供給する第三晶析工程と、を有する遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法。
  8. 前記元素Aはタングステンであり、
    前記第一晶析工程において供給する前記添加水溶液に含まれるタングステンの物質量の合計をW1とし、
    前記第三晶析工程において供給する前記添加水溶液に含まれるタングステンの物質量の合計をW3とし、
    前記第一晶析工程から前記第三晶析工程までの間に、前記反応水溶液に供給する前記添加水溶液に含まれるタングステンの合計の物質量をWとした場合に、
    0.05≦W1/W<0.5、及び0.5≦W3/W<0.95である請求項7に記載の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法。
  9. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の遷移金属複合水酸化物粒子とリチウム化合物との混合焼成物であり、
    リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、コバルト(Co)と、元素A(A)とを、物質量の比で、Li:Ni:Mn:Co:A=1+u:x:y:z:t(−0.05≦u≦0.50、x+y+z=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0<t≦0.1、前記元素Aは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、La、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の元素)の割合で含有し、
    六方晶系のリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子を含むリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  10. X線回折により得られた、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物の格子定数aが2.585981Å以上2.860002Å以下である請求項9に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  11. 粒子の表層及び粒界から選択された部分に、タングステン及びリチウムを含む化合物が配置されている請求項9または請求項10に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  12. 請求項9から請求項11のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含有する正極を備えたリチウムイオン二次電池。
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