JP2021146912A - パワーステアリング制御装置、パワーステアリングの制御方法、プログラム、および自動操舵システム - Google Patents

パワーステアリング制御装置、パワーステアリングの制御方法、プログラム、および自動操舵システム Download PDF

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Abstract

【課題】運転手がステアリングホイールを操作している場合の入力トルクを高速かつ正確に推定できるようにする。【解決手段】車両のステアリングホイールにかかる操舵トルクを車両のパワーステアリングから取得するトルク取得部と、ステアリングホイールの操舵角をパワーステアリングから取得する操舵角取得部と、観測ノイズおよびシステムノイズに基づくイノベーションゲインを含み、ステアリングホイールの運動方程式から変換された状態方程式に操舵トルクおよび操舵角を適用した方程式を算出する方程式算出部と、算出された方程式を解くことにより、ステアリングホイールに加わったドライバ入力トルクの推定値を算出する推定値算出部と、算出されたドライバ入力トルクの推定値に基づいて、ハンズオン状態とハンズオフ状態とを検知する検知部とを備える、パワーステアリング制御装置。【選択図】図2

Description

本発明は、パワーステアリング制御装置、パワーステアリングの制御方法、プログラム、および自動操舵システムに関する。
従来、パワーステアリング装置および自動操舵システムが搭載されている車両が知られている。自動操舵システムにおいては、運転手がハンドルを操作しているハンズオン状態であるか否かを判定することが知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、パワーステアリング装置においては、運転手が操作している場合の入力トルクを推定する装置等が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
特開2017−114324号公報 特開2002−154450号公報
自動操舵システムは、運転手がステアリングホイールに力を付与した場合に、自動操舵を手動操舵に適切に切り換えられることが望ましく、より正確に運転手の入力トルクを推定できることが望ましい。また、自動操舵システムは、運転手がステアリングホイールの良好な操舵フィーリングを得られるように、正確な運転手の入力トルクをより高速に推定して、高速にフィードバック制御できることが望ましい。
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、運転手がステアリングホイールを操作している場合の入力トルクを高速かつ正確に推定できるようにすることを目的とする。
本発明の第1の態様においては、車両のステアリングホイールにかかる操舵トルクを前記車両のパワーステアリングから取得するトルク取得部と、前記ステアリングホイールの操舵角を前記パワーステアリングから取得する操舵角取得部と、観測ノイズおよびシステムノイズに基づくイノベーションゲインを含み、前記ステアリングホイールの運動方程式から変換された状態方程式に前記操舵トルクおよび前記操舵角を適用した方程式を算出する方程式算出部と、算出された前記方程式を解くことにより、前記ステアリングホイールに加わったドライバ入力トルクの推定値を算出する推定値算出部と、算出された前記ドライバ入力トルクの前記推定値に基づいて、ハンズオン状態とハンズオフ状態とを検知する検知部とを備える、パワーステアリング制御装置を提供する。
前記パワーステアリング制御装置は、算出された前記ドライバ入力トルクの前記推定値に基づいて、フィードバック信号を生成するフィードバック部と、前記フィードバック信号と前記ステアリングホイールの目標操舵角とに基づき、前記パワーステアリングのモータを制御する制御部とを更に備えてもよい。
前記フィードバック部は、前記検知部の検知結果に対応する前記フィードバック信号を生成する信号生成部を有してもよい。
前記フィードバック信号は、前記目標操舵角の修正値、前記パワーステアリングの自動操舵の停止信号、および前記パワーステアリングの自動操舵の開始信号を含んでもよい。
前記方程式算出部は、前記運動方程式から前記操舵トルクおよび前記操舵角のサンプリング時間毎に離散化した前記状態方程式を算出し、前記推定値算出部は、サンプリング時間毎に前記ドライバ入力トルクの前記推定値を算出してもよい。
前記推定値算出部は、前記操舵トルクおよび前記操舵角のサンプリング時間毎に前記方程式算出部が算出した前記方程式を離散化し、サンプリング時間毎に前記ドライバ入力トルクの前記推定値を算出してもよい。
本発明の第2の態様においては、車両のステアリングホイールにかかる操舵トルクを前記車両のパワーステアリングから取得するステップと、前記ステアリングホイールの操舵角を前記パワーステアリングから取得するステップと、観測ノイズおよびシステムノイズに基づくイノベーションゲインを含み、前記ステアリングホイールの運動方程式から変換された状態方程式に前記操舵トルクおよび前記操舵角を適用した方程式を算出するステップと、前記方程式を解くことにより、前記ステアリングホイールに加わったドライバ入力トルクの推定値を算出するステップと、算出された前記ドライバ入力トルクの前記推定値に基づいて、ハンズオン状態とハンズオフ状態とを検知するステップとを有する、コンピュータが実行する前記パワーステアリングの制御方法を提供する。
本発明の第3の態様においては、コンピュータにより実行されると、前記コンピュータを第1の態様の前記パワーステアリング制御装置として機能させる、プログラムを提供する。
本発明の第4の態様においては、車両のステアリングホイールと、前記ステアリングホイールにかかる操舵トルクを検出する第1検出器と、前記ステアリングホイールの操舵角を検出する第2検出器とを有し、前記車両に搭載されているパワーステアリングと、前記パワーステアリングを制御する、第1の態様の前記パワーステアリング制御装置とを備える、自動操舵システムを提供する。
本発明によれば、運転手がステアリングホイールを操作している場合の入力トルクを高速かつ正確に推定できるという効果を奏する。
本実施形態に係る自動操舵システム10の構成例を示す。 本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100の構成例を示す。 本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100の動作フローの一例を示す。 ドライバがステアリングホイール21に付与した入力トルクを示す。 本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100によるドライバ入力トルクの推定結果の一例を示す。 比較対象の装置によるドライバ入力トルクの推定結果の一例を示す。
<自動操舵システム10の構成例>
図1は、本実施形態に係る自動操舵システム10の構成例を示す。自動操舵システム10は、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるシステムである。自動操舵システム10は、車両のパワーステアリング20と、パワーステアリング制御装置100とを備える。
パワーステアリング20は、運転手がステアリングホイールをスムーズに操舵できるように、ステアリングホイールの回転動作を補助する。これにより、運転手は、より小さい入力トルクでステアリングホイールを操舵することができる。パワーステアリング20は、ステアリングホイール21、モータ22、ウォーム23、ウォームホイール24、第1トーションバー25、第2トーションバー26、アクチュエータ27、車輪28、第1検出器31、および第2検出器32を有する。
運転手は、環状のステアリングホイール21を操作することにより車両の進行方向を調整する。ここで、ステアリングホイール21の角度を操舵角とする。また、運転手がステアリングホイール21を操作している状態をハンズオン状態とし、ステアリングホイール21を操作していない状態をハンズオフ状態とする。
モータ22は、入力する駆動信号に応じてステアリングホイール21を駆動する。駆動信号は、例えば、モータ22に流す電流値を指定する信号である。モータ22は、ウォーム23を回転させ、ウォーム23とかみ合うウォームホイール24を回転させる。ウォームホイール24の軸の一方の端部は、第1トーションバー25を介してステアリングホイール21に接続されている。
ウォームホイール24の軸の一方の端部とは反対側の端部は、第2トーションバー26を介してアクチュエータ27に接続されている。アクチュエータ27は、ウォームホイール24から伝わる力に応じて、車輪28の角度を変更する。アクチュエータ27は、一例として、油圧アクチュエータである。
第1検出器31は、ステアリングホイール21にかかる操舵トルクを検出する。第1検出器31は、例えば、第1トーションバー25に設けられており、第1トーションバー25の復元力を操舵トルクとして検出する。本実施形態において、第1検出器31が検出する操舵トルクをTとする。
第2検出器32は、ステアリングホイール21の操舵角を検出する。第2検出器32は、例えば、ステアリングホイール21に設けられており、車両を直進させるステアリングホイール21の操舵角を基準とした角度を操舵角として検出する。一例として、基準の角度は0度である。これに代えて、第2検出器32は、モータ22に設けられていてもよい。この場合、第2検出器32は、例えば、モータ22がウォーム23を回転させている角度を検出し、検出された角度に対応するステアリングホイール21の角度を操舵角として出力する。本実施形態において、第2検出器32が検出する操舵角をθとする。
パワーステアリング制御装置100は、以上のようなパワーステアリング20を制御する。パワーステアリング制御装置100は、入力する目標操舵角と、パワーステアリング20から取得する操舵トルクおよび操舵角とに基づき、モータ22を駆動させるための駆動信号をモータ22に供給する。パワーステアリング制御装置100は、例えば、車両に搭載されているECU(Engine Control Unit)等から目標操舵角の情報を取得する。以上のようなパワーステアリング制御装置100について、次に説明する。
<パワーステアリング制御装置100の構成例>
図2は、本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100の構成例を示す。パワーステアリング制御装置100は、運転手がハンズオン状態において、運転手によるステアリングホイール21の操作を補助するようにパワーステアリング20を制御する。また、パワーステアリング制御装置100は、運転手がハンズオフ状態において、ステアリングホイール21の操舵角が入力する目標操舵角となるようにパワーステアリング20を制御する。パワーステアリング制御装置100は、トルク取得部110と、操舵角取得部120と、記憶部130と、方程式算出部140と、推定値算出部150と、フィードバック部160と、制御部170とを備える。
トルク取得部110は、車両のステアリングホイール21にかかる操舵トルクを車両のパワーステアリング20から取得する。トルク取得部110は、例えば、第1検出器31から操舵トルクを取得する。また、トルク取得部110は、第1検出器31が検出してデータベース等に記憶した操舵トルクを、当該データベースから取得してもよい。この場合、トルク取得部110は、ネットワークを介して操舵トルクの情報を取得してもよい。
操舵角取得部120は、ステアリングホイール21の操舵角をパワーステアリング20から取得する。操舵角取得部120は、例えば、第2検出器32から操舵角を取得する。また、操舵角取得部120は、第2検出器32が検出してデータベース等に記憶した操舵角を、当該データベースから取得してもよい。この場合、操舵角取得部120は、ネットワークを介して操舵角の情報を取得してもよい。
記憶部130は、取得した操舵トルクおよび操舵角の情報を記憶する。また、記憶部130は、パワーステアリング制御装置100が動作の過程で生成する(または利用する)中間データ、算出結果、閾値、およびパラメータ等を記憶する。記憶部130は、例えば、操舵トルクおよび操舵角の値を、取得した時刻に対応付けて記憶する。また、記憶部130は、目標操舵角に対応付けて操舵トルクおよび操舵角の値を記憶してもよい。記憶部130は、パワーステアリング制御装置100内の各部の要求に応じて、記憶したデータを要求元に供給してもよい。
記憶部130は、コンピュータがパワーステアリング制御装置100として動作する場合、パワーステアリング制御装置100として機能するOS(Operating System)、およびプログラムの情報を格納してもよい。また、記憶部130は、当該プログラムの実行時に参照されるデータベースを含む種々の情報を格納してもよい。例えば、コンピュータは、記憶部130に記憶されたプログラムを実行することによって、パワーステアリング制御装置100として機能する。
記憶部130は、例えば、コンピュータ等のBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)、および作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含む。また、記憶部130は、HDD(Hard Disk Drive)および/またはSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置を含んでもよい。また、コンピュータは、GPU(Graphics Processing Unit)等を更に備えてもよい。
方程式算出部140は、ステアリングホイール21の運動方程式から変換された状態方程式に操舵トルクおよび操舵角を適用した微分方程式を算出する。ステアリングホイール21の運動方程式は、一例として、次式のように示される。
Figure 2021146912
ここで、ドライバ入力トルクをT、時間をtとした。また、(数1)式の左辺第1項は慣性項であり、Iを慣性係数とした。(数1)式の左辺第2項は粘性項であり、Cを粘性係数とした。(数1)式の左辺には、更に重力項等が加わってもよい。また、Tの符号が正負反転する場合がある。
(数1)式に示すような運動方程式は、次式で示す状態方程式に変換することができる。ここで、Xは、Xの転置行列である。ただし、ドライバ入力トルクは定常値と仮定する。
Figure 2021146912
なお、(数2)式において、wは観測ノイズを示し、vはシステムノイズを示す。観測ノイズおよびシステムノイズは、例えば、白色雑音等の時変の値として仮定される。もしくはイノベーションゲインM導出の設計要素として一定値としてもかまわない。
(数2)式に示す状態方程式は、観測ノイズおよびシステムノイズに基づくイノベーションゲインMを含む状態方程式として次式のように表現できる。
Figure 2021146912
方程式算出部140は、(数3)式のようにイノベーションゲインMを含む状態方程式に、車両を運転中に観測された操舵トルクおよび操舵角を代入した方程式を算出する。方程式算出部140は、例えば、次式のリカッチ微分方程式を用いてイノベーションゲインMを算出する。
Figure 2021146912
ここで、Qは観測ノイズwの共分散行列であり、Rはシステムノイズvの共分散行列である。また、Pは誤差の共分散行列である。Pが収束するのであれば、(A,D)が可制御、(A,C)が可観測、wおよびvが正定となり、方程式算出部140は、次式を用いてPを算出することができ、結果として、次式のようにイノベーションゲインMを算出できる。本実施の形態ではQとRをイノベーションゲインM導出の設計要素として、あらかじめ設計者が調整するパラメータとして扱う。
Figure 2021146912
そして、方程式算出部140は、算出したイノベーションゲインMを(数3)式に代入して、状態xに対する方程式を算出する。
推定値算出部150は、算出された方程式を解くことにより、ステアリングホイール21に加わったドライバ入力トルクの推定値を算出する。推定値算出部150は、例えば、オイラー法等の数値計算により、微分方程式の解を算出する。この場合、推定値算出部150は、操舵トルクおよび操舵角のサンプリング時間毎に微分方程式を離散化し、サンプリング時間毎にドライバ入力トルクの推定値を算出することが望ましい。推定値算出部150は、状態xの解に含まれているドライバ入力トルクTの値を、ドライバ入力トルクの推定値として出力する。
フィードバック部160は、算出されたドライバ入力トルクの推定値に基づいて、フィードバック信号を生成する。フィードバック部160は、例えば、ドライバがハンズオン状態か否かを検出し、検出結果に応じたフィードバック信号を生成する。フィードバック部160は、検知部161と、信号生成部162とを有する。
検知部161は、ドライバ入力トルクの推定値に基づいて、車両のドライバがステアリングホイール21を操作しているハンズオン状態であるか否かを検知する。検知部161は、例えば、ドライバ入力トルクの推定値が閾値を超えたことに応じて、ドライバがハンズオン状態であることを検知する。また、検知部161は、ドライバ入力トルクの推定値が閾値を超えた状態が予め定められた時間以上継続したことに応じて、ドライバがハンズオン状態であることを検知してもよい。なお、図2において、フィードバック部160が検知部161を有する例を示したが、フィードバック部160と検知部161とはパワーステアリング制御装置100において独立に設けられていてもよい。
信号生成部162は、検知部161の検知結果に対応するフィードバック信号を生成する。信号生成部162は、例えば、検知部161によってドライバのハンズオン状態が検知されたことに応じて、フィードバック信号を生成する。信号生成部162は、例えば、ドライバ入力トルクの推定値に応じたフィードバック信号を生成する。また、信号生成部162は、検知部161がハンズオン状態からハンズオフ状態への切り換え、またはハンズオフ状態からハンズオン状態への切り換えを検知したことに応じて、フィードバック信号を生成してもよい。フィードバック信号は、例えば、目標操舵角の修正値、パワーステアリング20の自動操舵の停止信号、およびパワーステアリング20の自動操舵の開始信号を含む。
制御部170は、フィードバック信号とステアリングホイール21の目標操舵角とに基づき、パワーステアリング20のモータ22を制御する。制御部170は、例えば、入力する目標操舵角に対応する駆動信号を生成してモータ22に供給する。制御部170には、パワーステアリング20から取得した操舵トルクおよび操舵角の値がフィードバックされることが望ましい。この場合、制御部170は、目標操舵角、操舵トルク、および操舵角に基づいて、モータ22を駆動する駆動信号を生成する。本実施形態において、このような制御部170の制御動作を自動操舵とする。
また、制御部170は、フィードバック信号に基づき、このような自動操舵を開始、継続、または停止する。制御部170は、自動操舵を停止した場合、フィードバック信号に基づいて目標操舵角を修正する。この場合、制御部170は、修正された目標操舵角に対応する駆動信号を生成してモータ22に供給する。制御部170は、修正された目標操舵角と、フィードバックされた操舵トルクおよび操舵角とに基づいて、モータ22を駆動する駆動信号を生成することが望ましい。本実施形態において、このような制御部170の制御動作を手動操舵とする。以上の本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100の制御動作について、次に説明する。
<パワーステアリング制御装置100の動作フローの一例>
図3は、本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100の動作フローの一例を示す。パワーステアリング制御装置100は、図3のS300からS430の動作を実行することにより、パワーステアリング20を制御して、ステアリングホイール21を適切に操舵する。
まず、制御部170は、目標操舵角を取得する(S300)。制御部170は、例えば、ECUから供給される目標操舵角を取得する。次に、制御部170は、目標操舵角に応じたモータ22の駆動信号を生成して、パワーステアリング20に供給する(S310)。制御部170は、操舵トルクおよび操舵角のフィードバックがある場合は、目標操舵角、操舵トルク、および操舵角に基づく駆動信号を生成してもよい。
次に、トルク取得部110は、車両のステアリングホイール21にかかる操舵トルクを車両のパワーステアリング20から取得する(S320)。トルク取得部110は、パワーステアリング20に設けられている第1検出器31から操舵トルクの検出結果を取得する。次に、操舵角取得部120は、ステアリングホイール21の操舵角をパワーステアリング20から取得する(S330)。操舵角取得部120は、パワーステアリング20に設けられている第2検出器32から操舵角の検出結果を取得する。操舵トルクおよび操舵角のサンプリングタイミングおよびサンプリング時間は、略同一であることが望ましい。
次に、方程式算出部140は、操舵トルクおよび操舵角を適用した方程式を算出する(S340)。方程式算出部140は、上述のように、(数3)式の微分方程式を算出する。次に、推定値算出部150は、微分方程式の解を算出することにより、ドライバ入力トルクの推定値を算出する(S350)。
次に、検知部161は、ドライバ入力トルクの推定値に基づき、ドライバがハンズオン状態であるか否かを検知する(S360)。例えば、ドライバ入力トルクの推定値が第1閾値以下の場合、または、第1閾値を超えた状態が予め定められた第1時間以上継続しない場合(S360:No)、検知部161は、ドライバがハンズオン状態ではないと判定する。
そして、検知部161は、ドライバ入力トルクの推定値に応じて、ドライバがハンズオフ状態か否かを検知する(S370)。例えば、検知部161は、ドライバ入力トルクの推定値が第2閾値以下の状態を予め定められた第2時間以上継続している場合(S370:Yes)、ドライバがハンズオフ状態であることを検知する。ここで、第2閾値は、第1閾値よりも小さいか同じ値である。また、第2時間は、第1時間と同じ時間でもよく、異なる時間であってもよい。また、検知部161は、ドライバ入力トルクの推定値が第2閾値以下の状態を第2時間以上継続していない場合(S370:No)、前回検知したドライバの状態を保持する(S380)。
例えば、パワーステアリング制御装置100が動作を開始した後に運転手がステアリングホイール21を第2時間以上操作しなかった場合、検知部161は、ハンズオフ状態を検知する(S370:Yes)。また、前回のドライバの状態がハンズオフ状態であり、運転手がステアリングホイール21を操作しなかった時間が第2時間を経過していない場合(S370:No)、検知部161は、ハンズオフ状態を検知する(S380:Yes)。
検知部161がハンズオフ状態を検知した場合、信号生成部162は、自動操舵のフィードバック信号を生成する(S390)。信号生成部162は、例えば、自動操舵の開始を指示する開始信号をフィードバック信号として生成する。また、信号生成部162は、前回のフィードバック信号が自動操舵の開始信号だった場合、自動操舵の継続を指示する継続信号をフィードバック信号として生成してもよい。信号生成部162は、生成したフィードバック信号を制御部170に供給する。
制御部170は、自動操舵の開始信号または継続信号を受け取ったことに応じて、パワーステアリング20を制御してステアリングホイール21を自動操舵する(S400)。制御部170は、例えば、目標操舵角と検出された操舵角との角度偏差に基づいて、ステアリングホイール21の操舵角を変更する変更角度を算出する。この場合、制御部170は、一例として、PID制御を実行して変更角度を算出する。そして、制御部170は、変更角度と操舵角とに基づいて、モータ22がステアリングホイール21を変更角度だけ回転させるための駆動信号を生成する。制御部170は、パワーステアリング20に、生成した駆動信号を供給する。
そして、制御部170は、次の目標操舵角を取得して(S410)、S320に戻る。以上のように、本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100は、運転手がステアリングホイール21に力を付与しない場合、S320からS410の動作を繰り返し、目標操舵角に応じた自動操舵を継続する。
一方、検知部161は、ドライバ入力トルクの推定値が第1閾値を超えている状態が第1時間以上継続した場合(S360:Yes)、ドライバのハンズオン状態を検知する。また、前回のドライバの状態がハンズオン状態であり、運転手がステアリングホイール21を操作しなかった時間が第2時間を経過していない場合(S370:No)、検知部161は、ハンズオン状態を検知する(S380:No)。
検知部161がハンズオン状態を検知した場合、信号生成部162は、手動操舵のフィードバック信号を生成する(S420)。信号生成部162は、例えば、自動操舵の停止を指示する停止信号をフィードバック信号として生成する。また、信号生成部162は、前回のフィードバック信号が自動操舵の停止信号だった場合、手動操舵の継続を指示する継続信号をフィードバック信号として生成してもよい。
そして、信号生成部162は、ドライバ入力トルクの推定値に対応する目標操舵角の修正値をフィードバック信号として生成する。例えば、記憶部130には、ドライバ入力トルクの推定値と目標操舵角の修正値との対応テーブルが記憶されていてよく、信号生成部162は、このような対応テーブルを読み出して対応する目標操舵角の修正値をフィードバック信号とする。これに代えて、信号生成部162は、予め算出された関数等にドライバ入力トルクの推定値を代入して、目標操舵角の修正値を算出してもよい。信号生成部162は、生成したフィードバック信号を制御部170に供給する。なお、ドライバ入力トルクでなく操舵トルクの値から目標操舵角の修正値を算出してもよい。
制御部170は、自動操舵の停止信号または手動操舵の継続信号を受け取ったことに応じて、フィードバック信号を用いてパワーステアリング20を制御してステアリングホイール21を手動操舵する(S430)。制御部170は、例えば、目標操舵角を修正値だけ修正し、修正された目標操舵角と検出された操舵角との角度偏差に基づいて、ステアリングホイール21の操舵角を変更する変更角度を算出する。そして、制御部170は、変更角度と操舵角とに基づいて、モータ22がステアリングホイール21を変更角度だけ回転させるための駆動信号を生成する。制御部170は、パワーステアリング20に、生成した駆動信号を供給する。
そして、制御部170は、次の目標操舵角を取得して(S410)、S320に戻る。以上のように、本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100は、運転手がステアリングホイール21に力を付与した場合、目標操舵角とドライバ入力トルクの推定値とに応じた手動操舵を実行する。
以上の本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100は、運転手のハンズオン状態およびハンズオフ状態を検出することにより、パワーステアリング20の自動操舵および手動操舵を切り換える。ここで、パワーステアリング制御装置100は、観測ノイズおよびシステムノイズの影響を考慮した状態方程式を用いるので、運転手がパワーステアリング20に付与したドライバ入力トルクを精度よく推定できる。したがって、パワーステアリング制御装置100は、運転手のハンズオン状態およびハンズオフ状態を精度よく検出することができ、パワーステアリング20の自動操舵および手動操舵を適切に切り換えることができる。
また、パワーステアリング制御装置100は、観測ノイズおよびシステムノイズの影響を低減させたドライバ入力トルクの推定値を算出できるので、このようなノイズを低減させるためのローパスフィルタ等を用いなくてもよい。これにより、ローパスフィルタによって発生する遅延を低減できるので、パワーステアリング制御装置100は、より高速に運転手のハンズオン状態およびハンズオフ状態を検出できる。したがって、パワーステアリング制御装置100は、運転手が感じるステアリングホイール21の操舵フィーリングの劣化を抑制することができ、また、走行中の車両の目標車線の逸脱等を低減できる。
<パワーステアリング制御装置100によるドライバ入力トルクの推定結果例>
以上の本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100によるドライバ入力トルクの推定結果について、図4から図6を用いて説明する。図4は、ドライバがステアリングホイール21に付与した入力トルクを示す。図4の横軸は時間を示し、縦軸は入力トルクの大きさを示す。なお、縦軸および横軸は、正規化した値に対応する目盛りを付している。図4は、一の時刻において運転手がステアリングホイール21に略一定の大きさのトルクを加えた例を示す。パワーステアリング制御装置100は、このようなドライバ入力トルクを推定する。
図5は、本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100によるドライバ入力トルクの推定結果の一例を示す。また、図6は、比較対象の装置によるドライバ入力トルクの推定結果の一例を示す。比較対象の装置は、特許文献1に記載されているような状態オブザーバである。図5および図6の横軸は時間を、縦軸はトルクの大きさを、それぞれ図4と同様のスケールで示す。言い換えると、図4から図6の縦軸および横軸の数値の範囲と目盛の間隔とは、共通である。
図4と図5とを比較することにより、パワーステアリング制御装置100は、ドライバ入力トルクを精度よく推定できていることがわかる。また、図5と図6とを比較することにより、パワーステアリング制御装置100は、従来の状態オブザーバよりも雑音成分を低減できていることがわかる。このように、パワーステアリング制御装置100は、ローパスフィルタを有さない構成であるにもかかわらず、ローパスフィルタを有する状態オブザーバよりも雑音成分を低減できることがわかる。したがって、パワーステアリング制御装置100は、遅延量を低減させつつ精度よく推定結果を出力できることがわかる。
<パワーステアリング制御装置100の他の例>
以上の本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100は、イノベーションゲインMを(数5)式のリカッチ代数方程式から算出して、定常的な値として取り扱う例を説明したが、これに限定されることはない。方程式算出部140は、(数4)式のリカッチ微分方程式の解をサンプリング時間毎に算出して、イノベーションゲインMを非定常的な値として算出してもよい。このように、誤差のある観測値を用いて、動的なシステムの状態をリカッチ代数方程式またはリカッチ微分方程式を用いて推定する手法は、定常カルマンフィルタ、非定常カルマンフィルタの範囲の技術であり、より詳細な計算処理については記載を省略する。
また、以上の本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100において、(数1)式の左辺に重力トルクや摩擦トルク等の非線形な摩擦トルク損が存在する場合、(数3)式で計算した推定値から非線形な摩擦トルク損を加算もしくは減算した値をドライバ入力トルクの推定結果としてもよい。
また、以上の本実施形態に係るパワーステアリング制御装置100は、方程式算出部140がイノベーションゲインMを含む連続時間の微分方程式を算出してから、推定値算出部150が微分方程式を離散化して数値計算する例を説明したが、これに限定されることはない。例えば、方程式算出部140が離散時間の状態方程式を算出してから、推定値算出部150が離散化された方程式の解を数値計算で算出してもよい。このようなパワーステアリング制御装置100の例について、次に説明する。
方程式算出部140は、例えば、運動方程式から操舵トルクおよび操舵角のサンプリング時間毎に離散化した状態方程式を算出する。連続時間の状態方程式は、Zoh法、Tustin法等の既知の方法により、離散時間の状態方程式に変換できる。(数2)式に示す状態方程式を離散化した状態方程式に変換した例を次式に示す。
Figure 2021146912
(数6)式に示す状態方程式は、観測ノイズおよびシステムノイズに基づくイノベーションゲインMを含む状態方程式として次式のように表現できる。ここで、P[k]は、状態x[k]の誤差分散を示す。方程式算出部140は、イノベーションゲインMを含む状態方程式に、運転手が車両を運転中に観測された操舵トルクおよび操舵角を代入する。上記の連続時間の微分方程式からイノベーションゲインMを導出した例ではQとRをイノベーションゲインM導出の設計要素として、あらかじめ設計者が調整するパラメータとして扱ったが、次式の離散時間を用いた例ではQとRをあらかじめ設計者が調整するパラメータとしてもよいし、白色雑音等の時変するパラメータとして扱ってもよい。
Figure 2021146912
推定値算出部150は、算出された方程式を解くことにより、ステアリングホイール21に加わったドライバ入力トルクの推定値を算出する。推定値算出部150は、1サンプリング後の状態予測値x[k+1]および予測誤差P[k+1]を、次式を用いて算出する。
Figure 2021146912
推定値算出部150は、状態予測値x[k+1]に含まれているドライバ入力トルクTの値を、ドライバ入力トルクの推定値として出力する。このようにして、推定値算出部150は、サンプリング時間毎にドライバ入力トルクの推定値を算出できる。以上のように、パワーステアリング制御装置100は、運動方程式を離散時間の状態方程式に変換しても、ドライバ入力トルクを推定することができるので、この場合においても、上述したように、パワーステアリング20を適切に制御できる。
また、上記の離散時間の状態方程式を使用した例ではイノベーションゲインMをサンプル時間ごとに逐次更新したが、A、B、C、Dが一定で過渡応答を無視してもよい場合にはイノベーションゲインMを一定値としてもよく、P=PおよびP[k+1]=P[k]と置き換え、(数6)式の離散型リカッチ方程式の解としてイノベーションゲインをあらかじめ導出してもよい。
Figure 2021146912
また、上記のパワーステアリング制御装置100は、ステアリングホイール21と車輪28とが機械的に接続されないステアバイワイヤ方式の車両にも適用可能である。
また、上記のパワーステアリング制御装置100は、ハンズオン状態を検知した場合に自動操舵システム10を停止してもよい。システム停止の例として、例えば、ハンズオン状態を検知した場合にモータへの指令値を0にする方法が挙げられる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
10 自動操舵システム
20 パワーステアリング
21 ステアリングホイール
22 モータ
23 ウォーム
24 ウォームホイール
25 第1トーションバー
26 第2トーションバー
27 アクチュエータ
28 車輪
31 第1検出器
32 第2検出器
100 パワーステアリング制御装置
110 トルク取得部
120 操舵角取得部
130 記憶部
140 方程式算出部
150 推定値算出部
160 フィードバック部
161 検知部
162 信号生成部
170 制御部

Claims (9)

  1. 車両のステアリングホイールにかかる操舵トルクを前記車両のパワーステアリングから取得するトルク取得部と、
    前記ステアリングホイールの操舵角を前記パワーステアリングから取得する操舵角取得部と、
    観測ノイズおよびシステムノイズに基づくイノベーションゲインを含み、前記ステアリングホイールの運動方程式から変換された状態方程式に前記操舵トルクおよび前記操舵角を適用した方程式を算出する方程式算出部と、
    算出された前記方程式を解くことにより、前記ステアリングホイールに加わったドライバ入力トルクの推定値を算出する推定値算出部と、
    算出された前記ドライバ入力トルクの前記推定値に基づいて、ハンズオン状態とハンズオフ状態とを検知する検知部と
    を備える、パワーステアリング制御装置。
  2. 算出された前記ドライバ入力トルクの前記推定値に基づいて、フィードバック信号を生成するフィードバック部と、
    前記フィードバック信号と前記ステアリングホイールの目標操舵角とに基づき、前記パワーステアリングのモータを制御する制御部と
    を更に備える、請求項1に記載のパワーステアリング制御装置。
  3. 前記フィードバック部は、前記検知部の検知結果に対応する前記フィードバック信号を生成する信号生成部を有する、請求項2に記載のパワーステアリング制御装置。
  4. 前記フィードバック信号は、前記目標操舵角の修正値、前記パワーステアリングの自動操舵の停止信号、および前記パワーステアリングの自動操舵の開始信号を含む、請求項3に記載のパワーステアリング制御装置。
  5. 前記方程式算出部は、前記運動方程式から前記操舵トルクおよび前記操舵角のサンプリング時間毎に離散化した前記状態方程式を算出し、
    前記推定値算出部は、サンプリング時間毎に前記ドライバ入力トルクの前記推定値を算出する、
    請求項1から4のいずれか一項に記載のパワーステアリング制御装置。
  6. 前記推定値算出部は、前記操舵トルクおよび前記操舵角のサンプリング時間毎に前記方程式算出部が算出した前記方程式を離散化し、サンプリング時間毎に前記ドライバ入力トルクの前記推定値を算出する、請求項1から4のいずれか一項に記載のパワーステアリング制御装置。
  7. 車両のステアリングホイールにかかる操舵トルクを前記車両のパワーステアリングから取得するステップと、
    前記ステアリングホイールの操舵角を前記パワーステアリングから取得するステップと、
    観測ノイズおよびシステムノイズに基づくイノベーションゲインを含み、前記ステアリングホイールの運動方程式から変換された状態方程式に前記操舵トルクおよび前記操舵角を適用した方程式を算出するステップと、
    前記方程式を解くことにより、前記ステアリングホイールに加わったドライバ入力トルクの推定値を算出するステップと、
    算出された前記ドライバ入力トルクの前記推定値に基づいて、ハンズオン状態とハンズオフ状態とを検知するステップと
    を有する、コンピュータが実行する前記パワーステアリングの制御方法。
  8. コンピュータにより実行されると、前記コンピュータを請求項1から6のいずれか一項に記載の前記パワーステアリング制御装置として機能させる、プログラム。
  9. 車両のステアリングホイールと、前記ステアリングホイールにかかる操舵トルクを検出する第1検出器と、前記ステアリングホイールの操舵角を検出する第2検出器とを有し、前記車両に搭載されているパワーステアリングと、
    前記パワーステアリングを制御する、請求項1から6のいずれか一項に記載の前記パワーステアリング制御装置と
    を備える、自動操舵システム。
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