JP2021146728A - 先塗り液、記録方法、及び記録装置 - Google Patents

先塗り液、記録方法、及び記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 インクにより形成される画像において、濃度ムラと滲みが生じる課題、及び耐擦過性が不十分である課題がある。また、インクが付与される前に、記録媒体に先塗り液を付与する場合、先塗り液の乾燥性が不十分である課題がある。【解決手段】 水、樹脂、凝集剤、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有することを特徴とする先塗り液。【選択図】なし

Description

本発明は、先塗り液、記録方法、及び記録装置に関する。
インクジェット記録装置は、低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有しており、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。また、近年では、家庭用のみならず商業用途や産業用途にもインクジェット技術が利用されてきている。
商業用途や産業用途では、従来から使用されている普通紙に加え、コート紙やアート紙等の塗工紙、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の樹脂フィルムからなる軟包装基材など、様々な種類の基材が用いられることがあり、これら基材を用いた場合であっても、インクジェット記録方法により、高い画像品質の印刷物を作製できることが求められている。これら基材を用いて印刷物を作製する場合に求められる特性としては、例えば、カラーブリードの抑制、印刷むらの抑制、耐擦過性の向上などが挙げられる。
特許文献1には、カラーブリードの抑制を目的として、少なくとも着色剤を含んでなる記録液と、記録液中の少なくとも1方の反応性成分と反応しうる他方の反応性成分を含有する処理液とを転写体上で混合する行程と、該混合物を被記録材に転写する行程とを有する画像形成方法に用いる記録液が開示されている。
特許文献2には、印刷むらの抑制を目的として、撥水性を有する面にインクジェット方式により水性顔料インクを付着させてインクジェット画像を形成する前に、該面にインクジェット方式により塗布される水性プレコート液であって、金属塩及び非イオン性界面活性剤を含有し且つ該非イオン性界面活性剤のグリフィンの式により求められるHLB値と含有量(重量%)との積が0.2以上であり、且つ表面張力が25mN/m以下であることを特徴とする水性プレコート液が開示されている。
特許文献3には、耐擦過性の向上を目的として、水性顔料インクジェットインキ印刷用の前処理液であって、前記前処理液が、ポリオレフィン樹脂粒子(A)と、凝集剤(B)と、水とを含み、前記ポリオレフィン樹脂粒子(A)が、軟化温度が50〜100℃であり、前記凝集剤(B)が、金属塩またはカチオン性高分子化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含有する、前処理液が開示されている。
特許文献4には、同様に耐擦過性の向上を目的として、前処理液と、1種類以上の水性インキとを含む、非浸透性基材に対するインクジェット印刷方式で用いる水性記録液セットであって、前記前処理液が、ウレタン樹脂(A)と、水溶性有機溶剤(B−1)と、水とを含み、前記ウレタン樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が−100〜35℃であり、前記水溶性有機溶剤(B−1)が、分子構造中に水酸基を1個以上含み、前記水性インキが、顔料と、顔料分散用樹脂と、水溶性有機溶剤(B−2)と、水とを含み、前記顔料分散用樹脂が、芳香環構造を含み、前記水溶性有機溶剤(B−2)中に含まれる1気圧下の沸点が280℃以上の水溶性有機溶剤の量が、水性インキ全量に対し10質量%以下である、水性記録液セットが開示されている。
しかしながら、インクにより形成される画像において、濃度ムラと滲みが生じる課題、及び耐擦過性が不十分である課題がある。また、インクが付与される前に、記録媒体に先塗り液を付与する場合、先塗り液の乾燥性が不十分である課題がある。
請求項1に係る発明は、水、樹脂、凝集剤、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有することを特徴とする先塗り液である。
本発明の先塗り液は、先塗り液を付与された後に付与されるインクにより形成される画像において、濃度ムラと滲みが抑制され、耐擦過性が向上し、先塗り液の乾燥性が向上する優れた効果を奏する。
図1は、記録装置の一例を示す模式図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
<<先塗り液>>
本実施形態の先塗り液は、水、樹脂、凝集剤、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有し、必要に応じて、有機溶剤、界面活性剤、その他添加剤を含有してもよい。
先塗り液は、色材を含有するインクが付与される前に、記録媒体に対して付与される液体である。すなわち、インクは、先塗り液が付与された領域と接触するように後から付与される。なお、先塗り液は、導電性のローラやプラズマによりコロナ処理を事前に施された記録媒体に対して付与されてもよい。
<ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油>
先塗り液は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含む。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は界面活性剤として用いられることが好ましい。先塗り液がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含むことで、先塗り液の記録媒体に対する濡れ均一性が向上する。また、インク中に含まれる色材を凝集させる凝集剤が記録媒体表面に均一に分布しやすくなり、後から付与されるインクにより形成される画像における濃度ムラ及び滲みが抑制される。従って、本実施形態の先塗り液は、濡れ均一性が低く、濃度ムラ及び滲みが発生しやすい記録媒体を用いる場合に効果的である。このような記録媒体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の樹脂フィルムからなる軟包装基材が挙げられる。また、軟包装基材は、食品包装用途などの直接皮膚に触れ得る用途に用いられることが多いため、食品安全性の観点からもポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることが好ましい。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。先塗り液が下記一般式(1)で表される化合物を含むことで、先塗り液の記録媒体に対する濡れ均一性がより向上し、結果として、インクにより形成される画像における濃度ムラ及び滲みがより抑制される。
Figure 2021146728
一般式(1)におけるl、m、n、x、y、及びzは、それぞれ独立して整数を表す。また、一般式(1)におけるl、m、n、x、y、及びzの合計は、10以上60以下であることが好ましく、10以上50以下であることがより好ましく、10以上40以下であることが更に好ましく、15以上35以下であることがより更に好ましく、20以上30以下であることが特に好ましい。
一般式(1)で表される化合物等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のHLB値は、10.0以上12.0以下であることが好ましい。HLB値が10.0以上12.0以下であることで、後述する先塗り液中の樹脂が記録媒体上に均一に広がって樹脂皮膜を形成し、結果として、インクにより形成される画像における濃度ムラ及び滲みがより抑制され、更に、耐擦過性もより向上する。
一般式(1)で表される化合物に含まれる市販品としては、例えば、HCO−10、HCO−20、HCO−30、HCO−40、HCO−60、HCO−80(いずれも日光ケミカルズ株式会社製)、及びEMALEX HC−20、HC−40、HC−60(いずれも日本エマルジョン株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、HCO−20(HLB値:11.0)、HCO−30(HLB値:11.0)、HC−30(HLB値:11.0)、及びHC−40(HLB値:12.0)が好ましく、HCO−20、及びHCO−30がより好ましい。なお、HCO−20におけるl、m、n、x、y、及びzの合計は平均値が20となる分布を有し、HCO−30におけるl、m、n、x、y、及びzの合計は平均値が30となる分布を有する。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量は、先塗り液の質量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下であることが更に好ましい。0.1質量%以上5.0質量%以下であることで、先塗り液の記録媒体に対する濡れ均一性がより向上し、結果として、インクにより形成される画像における濃度ムラ及び滲みがより抑制される。
<凝集剤>
先塗り液は、凝集剤を含む。凝集剤とは、先塗り液が付与された領域に接触したインクにおいて、インク中に含まれる色材を凝集させる機能を有する成分である。凝集剤の作用としては、例えば、インク中の色材との電荷的な作用によって会合し、色材の凝集体を形成させて色材を液相から分離させ、色材の記録媒体に対する定着を促進させる場合が挙げられる。これにより、インクにより形成される画像における濃度ムラ及び滲みが抑制される。従って、本実施形態の先塗り液は、インクの吸収性が低く、濃度ムラ及び滲みが発生しやすい記録媒体を用いる場合に効果的である。このような記録媒体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の樹脂フィルムからなる軟包装基材が挙げられる。
凝集剤としては、インク中に含まれる色材を凝集させる機能を有する限り特に限定されないが、例えば、金属塩、カチオンポリマー等が挙げられるが、金属塩であることが好ましい。
金属塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン化合物、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物、ニッケル化合物等の塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、顔料などの色材を効果的に凝集させることができる点から、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、ニッケル化合物の塩が好ましく、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩がより好ましい。
なお、金属塩はイオン性のものが好ましい。特に、上記金属塩がカルシウム塩及びマグネシウム塩から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
上記マグネシウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、珪酸マグネシムなどが挙げられる。
上記カルシウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウムなどが挙げられる。
上記バリウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸バリウムなどが挙げられる。
上記亜鉛化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫化亜鉛、炭酸亜鉛などが挙げられる。
上記アルミニウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが
でき、例えば、珪酸アルミニウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
また、金属塩の含有量は、先塗り液の質量に対して1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることが更に好ましい。1.0質量%以上20.0質量%以下であることで、インクにより形成される画像における濃度ムラ及び滲みがより抑制される。
<樹脂>
先塗り液は、樹脂を含む。先塗り液が樹脂を含むことで、樹脂が記録媒体上に均一に広がって樹脂皮膜を形成し、結果として、インクにより形成される画像における耐擦過性が向上する。
樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、及び塩化ビニル系樹脂等を挙げることができ、これらの中でも、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂が好ましく、ウレタン樹脂がより好ましい。ウレタン樹脂は、引張強度に優れるため、記録媒体として、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の樹脂フィルムからなる軟包装基材を用いる場合であっても、これら基材の伸縮に対して余裕度が高い画像を形成することができる。また、ウレタン樹脂の中でも、ポリカーボネート系ウレタン樹脂が好ましい。ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、好適な粘弾性を得やすく、耐擦過性により優れるためである。
樹脂の形態としては、樹脂粒子を用いることが好ましい。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、他の材料と混合して先塗り液を得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
ウレタン樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、タケラックW−4000、タケラックW−6010、タケラックW−6110(いずれも三井化学株式会社製のポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、サイマック(東亜合成株式会社製)、ボンコート(DIC株式会社製)、アクアブリッド(株式会社ダイセル製)などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐擦過性及び保存安定性の点から、先塗り液の質量に対して、1.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下がより好ましい。
<水>
先塗り液は、水を含む。先塗り液における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、先塗り液の乾燥性の点から、先塗り液の質量に対して10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
<有機溶剤>
先塗り液は、有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤を含有させることで先塗り液の乾燥性が向上する。
有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
先塗り液中の有機溶剤としては、プロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、及びプロピレングリコール−n−プロピルエーテルから選ばれる少なくとも1つが含有されることが好ましく、プロピレングリコールが含有されることがより好ましく、プロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、及びプロピレングリコール−n−プロピルエーテルが含有されることが更に好ましい。先塗り液がこれら有機溶剤を含むことで、先塗り液の乾燥性がより向上する。また、先塗り液中の樹脂が記録媒体上に均一に広がって樹脂皮膜を形成し、結果としてインクにより形成される画像における濃度ムラ及び滲みがより抑制され、更に、耐擦過性もより向上する。
有機溶剤の先塗り液中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、先塗り液の質量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
<界面活性剤>
先塗り液は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
先塗り液中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
<その他添加剤>
先塗り液は、必要に応じて、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
<<インク>>
インクは、色材を含有し、必要に応じて、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、その他添加剤を含有してもよい。なお、インクに含まれてもよい有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、その他添加剤は、先塗り液に含まれるものと同様のものを用いることができるため、説明を省略する。
但し、インクに含まれる有機溶剤は、1,2−アルカンジオールであることが好ましい。具体的には、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、及び1,2−ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。インクに含まれる有機溶剤が1,2−アルカンジオールであることで、インク中の顔料や樹脂粒子の分散性が向上し、画像における濃度むらや滲みを抑制できる。
また、インクは、1,2−アルカンジオールを含んだ上で、更に、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを含むことが好ましい。3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールは、1,2−アルカンジオールとの親和性が高いためインクの保存安定性が向上する。また、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールは低沸点であるため、インクの乾燥性が向上し、形成直後の画像における耐擦過性が向上する。
また、インクは、界面活性剤及び樹脂粒子を含んだ上で、更に、色材としてC.I.ピグメントレッド269が含まれることが好ましい。色材としてC.I.ピグメントレッド269が選択された場合、樹脂フィルム等の透明な記録媒体に対して画像を形成する場合において目的とする色調を得やすいためである。
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、混晶を使用してもよい。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性のよいものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
更に、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、269、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。竹本油脂社製RT−100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
<<インクセット>>
先塗り液は、上記インクと組み合わせたインクセットとして用いてもよい。
<<記録媒体>>
記録媒体としては、特に制限なく用いることができ、普通紙、光沢紙、特殊紙、ダンボール、布帛、樹脂フィルム等を用いることもできる。これらの中でも、上記の通り、樹脂フィルムを用いることが好ましい。また、樹脂フィルムを軟包装基材として用いることがより好ましい。
樹脂フィルムとしては、例えば、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリカーボネートなどの各種樹脂のフィルムを好適に用いることができるが、ポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンのフィルムであることが好ましく、ポリプロピレンのフィルムであることがより好ましい。
ポリプロピレンフィルムとしては、例えば、東洋紡製のP−2002、P−2161、P−4166、SUNTOX製のPA−20、PA−30、PA−20W、フタムラ化学製のFOA、FOS、FORなどが挙げられる。
ポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、例えば、東洋紡製のE−5100、E−5102、東レ製のP60、P375、帝人デュポンフィルム製のG2、G2P2、K、SLなどが挙げられる。
軟包装基材とは、ロール等で巻き取り可能な可とう性を有する基材であることが好ましい。軟包装基材は、有機高分子樹脂からなり、溶融押出し後、長手方向及び/又は幅方向に延伸され、さらに熱固定、冷却を施された二軸延伸フィルム、又は溶融押出し後、延伸無しで熱固定、冷却を施された無延伸フィルム等である。
<<記録方法>>
記録方法は、上記の先塗り液を記録媒体に対して付与する工程と、記録媒体の先塗り液が付与された領域にインクを付与する工程と、を有することが好ましい。
<先塗り液を付与する工程>
先塗り液を記録媒体に対して付与する方法としては、例えば、液体吐出方式、塗布方式などが挙げられる。
液体吐出方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧電素子アクチュエータを用いる方式、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータを用いる方式、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドを用いる方式などが挙げられる。
塗布方法としては、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、ワイヤーバー塗布法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。これらの中でも、ワイヤーバー塗布法、ローラ塗布法が特に好ましい。
先塗り液を付与された記録媒体に対しては、必要に応じて、記録媒体を加熱して先塗り液を乾燥させる加熱工程が行われてもよいが、加熱工程を行わなくてもよい。
なお、加熱工程は、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風などの公知の加熱手段により記録媒体を加熱して記録媒体に付与された先塗り液を乾燥させる工程である。
<インクを付与する工程>
インクは、記録媒体の先塗り液が付与された領域に対して付与されることが好ましい。
インクを記録媒体に対して付与する方法としては、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられるが、インクジェット法が好ましい。
<<記録装置>>
記録装置は、先塗り液が収容された収容容器と、収容された先塗り液を記録媒体に対して付与する付与手段と、先塗り液が付与された領域にインクを付与する付与手段と、を有することが好ましい。
図1を用いて、記録装置の一実施形態について説明する。図1は、記録装置の一例を示す模式図である。
図1に示す記録装置101は、インク付与手段の一例であって、インクを吐出するヘッドを集積した複数のヘッドユニット110K、110C、110M、110Yと、それぞれのヘッドユニットに対応し、ヘッドのメンテナンスを行う複数のメンテナンスユニット111K、111C、111M、111Yと、インク収容手段の一例であって、インクを収容し且つ供給する複数のインクカートリッジ107K、107C、107M、107Yと、インクカートリッジから供給されるインクの一部を貯蔵し、ヘッドに適切な圧力でインクを供給する複数のサブインクタンク108K、108C、108M、108Yと、を有する。
また、記録装置101は、記録媒体114を吸引ファン120によって吸着し搬送する搬送ベルト113と、搬送ベルト113を支える搬送ローラ119、121と、搬送ベルト113が適切な張力を保つようにコントロールするテンションローラ115と、搬送ベルト113が適切な平面性を保つためのプラテン124、及びプラテンローラー118と、記録媒体114を吸着するための静電帯電を与える帯電ローラ116と、記録媒体114を押さえる排紙コロ117と、排紙した記録媒体114をストックしておく排紙トレイ104を有する排紙機構と、記録媒体114をストックする給紙トレイ103と、給紙トレイより一枚ずつ記録媒体114を送り出す分離パッド112、122と、送られてきた記録媒体114を帯電ベルトに確実に吸着させるカウンターローラ123と、手差しにて給紙した場合に用いられる手差しトレイ105と、を有する。
また、記録装置101は、メンテナンス後に排出される廃液を回収する廃液タンク109と、装置を操作し装置状態を表示することができる操作パネル106と、有する。
ヘッドユニット110K、110C、110M、110Yのノズル列は、記録媒体114の搬送方向に直行するように配列されており、記録領域以上の長さのノズル列を形成している。
記録媒体114は、給紙トレイから分離コロにより一枚に分離され、加圧コロにて搬送ベルトに密着されることで搬送ベルト上に固定され、ヘッドユニット下を通過する際に液滴を吐出されることで、液滴により形成されるドットの集合体である画像を形成され、分離爪にて搬送ベルトから分離され、排紙ローラと排紙コロに支えられて排紙トレイに排出される。
更に、図1に示す記録装置101は、先塗り液で記録媒体表面を処理する機構として塗布機構を有しており、ローラ塗布機構を採用している。先塗り液は、先塗り液収容容器の一例である先塗り液収容タンク135に収容され、汲み上げローラ137でローラ表面に汲み上げられ、膜圧制御ローラ138に転写される。続いて、先塗り液付与手段の一例である塗布ローラ136に転写された先塗り液は、塗布用カウンターローラ139との間に通す記録媒体114に転写され、塗布される。
塗布ローラ136に転写される先塗り液の塗布量は、塗布ローラ136とのニップ厚を制御することにより行う。先塗り液を塗布したくない時は、塗布ローラ136に先塗り液が残らないように、可動ブレード134を塗布ローラ136に押し付け、塗布ローラ表面の先塗り液を掻き取ることができる。これにより、先塗り液が塗布ローラ136に残留することで発生する乾燥による増粘や、塗布用カウンターローラ139との固着、塗布ムラなどの機能障害を未然に防ぐことができる。
また、図1のように、給紙部を上下で1つずつ設け、先塗り液を塗布する場合には下の給紙部を、先塗り液を塗布しない場合には上の給紙部を使用するといった方式にしても良い。
上記ローラ塗布以外に、先塗り液を吐出方式でスプレー塗布することも可能である。例えば、110Kと同様のヘッドに先塗り液を充填し、インクと同様に記録媒体114へ吐出させることができ、吐出量や吐出位置の制御を高精度でかつ容易に行うことができる。また、ローラ塗布方式とスプレー塗布方式を併用しても良い。
何れの方式を用いても先塗り液を任意の位置に任意の量だけ塗布することができる。
また、熱風送風ファン150により、先塗り液及びインクが付着した記録媒体を加熱することによって、乾燥促進により定着性を向上させることができる。なお、本実施形態では、加熱処理を印刷後の記録媒体に対して熱風ファンにて行っているが、画像形成前または画像形成後のいずれの記録媒体に対して行ってもよいし、その方式も熱風ファンだけではなく、加熱ローラなどの手段によって行ってもよい。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
<ブラック顔料分散体の調整例>
Cabot Corporation社製のカーボンブラック(Black Pearls 1000)100gと竹本油脂(株)製のナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物(パイオニンA−45−PN)15gとイオン交換水280gの混合物をプレミックスした後、ダイノーミル(シンマルエンタープライゼス社製)で直径0.3mmジルコニアビーズを用いて、回転速度10m/秒、液温10℃の条件で30分間分散し顔料分散体を得た。次いで、得られた顔料分散液とジルコニアビーズを分離し、0.8μmメンブレンフィルター(セルロースアセテートタイプ)で濾過した。その後、固形分濃度が20%になるように水分量を調整し、固形分濃度20%の分散剤分散型のブラック顔料分散体を得た。
<マゼンタ顔料分散体の調整例>
−ピグメントレッド269の合成−
35%HCl水溶液12.5質量部を氷水187.5質量部中に加え攪拌し、温度を5℃以下に調節した。これに、3−アミノ−4−メトキシベンズアニライド8質量部加えて攪拌して、3−アミノ−4−メトキシベンズアニライドの溶解と、3−アミノ−4−メトキシベンズアニライドの塩酸塩の析出を確認し、30分間5℃以下で攪拌した。
その後、30%亜硝酸ナトリウム水溶液7.8質量部を加えて60分間5℃以下で攪拌し、スルファミン酸0.3質量部を加えて亜硝酸を消去した。さらに、酢酸ナトリウム8質量部、90%酢酸12質量部を添加し、ジアゾニウム塩冷却溶液とした。
また、別にN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボキシアミド(ナフトールAS−CA)12質量部を秤量し、純水150質量部、水酸化ナトリウム4質量部を加え、攪拌しながら90℃まで加熱して、溶解した。さらにこれを攪拌しながら、5℃まで冷却してナフトール冷却溶液とした。
そして、ジアゾニウム塩冷却溶液を0.5mmのシリンジを搭載したシリンジポンプに入れ、10℃以下で攪拌されているナフトール冷却溶液中に15質量部/分の割合でインジェクションし、5℃以下で1時間1200rpmにて高速攪拌した。
その後、90℃まで加熱して、そのまま1時間1200rpmにて高速攪拌した。さらに、1N塩酸、あるいは、1N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.0に調整し、濾過、水洗をして、80℃にて10時間乾燥し、粉砕して、C.I.ピグメントレッド269を得た。
−マゼンタ顔料分散体の調整−
各材料を以下の割合でプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール使用)で7時間循環分散してマゼンタ顔料分散体(顔料固形分濃度:15質量%)を得た。
・C.I.ピグメントレッド269:15.0質量部
・アニオン性界面活性剤(パイオニンA−51−B、竹本油脂株式会社製):2.0質量部
・イオン交換水:83.0質量部
<インクの調整例>
−インク1の調整−
各材料を以下の割合で混合し、分散機で十分に撹拌した後、0.8μmメンブレンフィルター(セルロースアセテートタイプ)で濾過し、インク1を得た。
・1,2−ブタンジオール:30.0質量%
・サーフィノール440(日信化学工業株式会社製):0.5質量%
・ブラック顔料分散体:20.0質量%
・タケラックW−6110(ウレタン樹脂粒子、三井化学株式会社製):20.0質量%
・純水:29.5質量%
−インク2〜6の調整−
インク1の調整において、下記表1に示す材料を用いた以外は同様にして、インク2〜6を得た。なお、表1における割合を示す各数字の単位は「質量%」である。
Figure 2021146728
<先塗り液の調整例>
−先塗り液1〜9の調整−
(実施例1〜6、比較例1〜3)
下記表2の通り、各材料を所定の割合で混合し先塗り液1〜9(実施例1〜6、比較例1〜3)を得た。なお、表2における割合を示す各数字の単位は「質量%」である。
Figure 2021146728
なお、表2中における各材料は以下のものを表す。
・HCO−20:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、HLB値:11.0、日光ケミカルズ株式会社製
・HCO−60:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、HLB値:14.0、日光ケミカルズ株式会社製
・HCO−10:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、HLB値:6.0、日光ケミカルズ株式会社製
・サーフィノール440:アセチレングリコール系界面活性剤、日清化学工業社製
・Wet−270:シリコーン系界面活性剤、エボニック社製
・タケラックW−6110:ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子、三井化学株式会社製
・ボンコート400:アクリル樹脂粒子、DIC社製
得られた先塗り液及びインクを用いて、以下のようにして、先塗り液及びインクにより形成される画像における「濃度ムラ」、「滲み」、及び「耐擦過性」、並びに先塗り液の「乾燥性」を評価した。先塗り液及びインクの組み合わせ及び評価結果を表3に示す。
[濃度ムラ]
作製した先塗り液及びインクを図1に示す記録装置に充填し、軟包装基材1(二軸延伸ポリプロピレンフィルム、商品名:パイレンP−2161、東洋紡製)及び軟包装基材2(二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名:E−5100、東洋紡製)に対し、先塗り液を塗布し、先塗り液を乾燥させた後、先塗り液が塗布された領域に対してインクを吐出して3cm四方のベタ画像を印刷し、70℃のエアオーブンで十分乾燥させた。
次に、ベタ画像を目視で観察し、下記評価基準に基づいて濃度ムラを評価した。
(評価基準)
A:濃度ムラは観察されない
B:やや濃度ムラが観察されるが、実使用上は問題ない
C:濃度ムラが観察されるが、実使用上は問題ない
D:明らかに濃度ムラが観察され、実使用上の問題が生じる
E:激しい濃度ムラが観察され、実使用上の問題が生じる
[滲み]
作製した先塗り液及びインクを図1に示す記録装置に充填し、軟包装基材1(二軸延伸ポリプロピレンフィルム、商品名:パイレンP−2161、東洋紡製)及び軟包装基材2(二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名:E−5100、東洋紡製)に対し、先塗り液を塗布し、先塗り液を乾燥させた後、先塗り液が塗布された領域に対してインクを吐出して8ポイントから24ポイントまでの文字を印刷し、70℃のエアオーブンで十分乾燥させた。
次に、文字の周囲を目視で観察し、下記評価基準に基づいて滲みを評価した。
(評価基準)
A:滲みは観察されない
B:やや滲みが観察されるが、実使用上は問題ない
C:滲みが観察されるが、実使用上は問題ない
D:明らかに滲みが観察され、実使用上の問題が生じる
E:激しい滲みが観察され、実使用上の問題が生じる
[乾燥性]
作製した先塗り液を軟包装基材1(二軸延伸ポリプロピレンフィルム、商品名:パイレンP−2161、東洋紡製)及び軟包装基材2(二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名:E−5100、東洋紡製)に対して塗布し、塗布後速やかに70℃のエアオーブンに投入した。エアオーブン投入後1分経過するごとに軟包装基材をエアオーブンから取り出し、表面を指で擦ることで先塗り液の乾燥性を下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:エアオーブン投入後1分経過時において指で擦っても先塗り液が付着しない
B:エアオーブン投入後1分経過時において指で擦ると先塗り液が付着するが、2分経過時は付着しない
C:エアオーブン投入後2分経過時において指で擦ると先塗り液が付着するが、3分経過時は付着しない
D:エアオーブン投入後3分経過時において指で擦ると先塗り液が付着するが、4分経過時は付着しない
D:エアオーブン投入後4分経過時においても指で擦ると先塗り液が付着する
[耐擦過性]
作製した先塗り液及びインクを図1に示す記録装置に充填し、軟包装基材1(二軸延伸ポリプロピレンフィルム、商品名:パイレンP−2161、東洋紡製)及び軟包装基材2(二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名:E−5100、東洋紡製)に対し、先塗り液を塗布し、先塗り液を乾燥させた後、先塗り液が塗布された領域に対してインクを吐出して3cm四方のベタ画像を印刷し、70℃のエアオーブンで十分乾燥させた。
次に、乾いた綿布(カナキン3号)を用い、400gの加重をかけてベタ画像を擦過した。擦過後のベタ画像を目視で観察し、下記評価基準に基づいて耐擦過性を評価した。
(評価基準)
A:50回以上擦っても傷が観察されない
B:50回擦るとやや傷が観察されるが、画像明度には影響せず実使用上は問題ない
C:50回擦ると傷が観察されるが、画像明度には影響せず実使用上は問題ない
D:20回以上50回未満擦ると傷が観察され、画像明度が低下して実使用上の問題が生じる
E:20回未満擦ると傷が観察され、画像明度が低下して実使用上の問題が生じる
Figure 2021146728
101 記録装置
107K、107C、107M、107Y インクカートリッジ
110K、110C、110M、110Y ヘッドユニット
114 記録媒体
135 先塗り液収容タンク
136 塗布ローラ
特開2003−82265号公報 特開2004−74432号公報 特開2018−122588号公報 特開2019−094377号公報

Claims (13)

  1. 水、樹脂、凝集剤、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有することを特徴とする先塗り液。
  2. 前記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1に記載の先塗り液。
    Figure 2021146728

    (上記一般式(1)中、l、m、n、x、y、及びzの合計は、10以上60以下である。)
  3. 前記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のHLB値は、10.0以上12.0以下である請求項1又は2に記載の先塗り液。
  4. 更に、有機溶剤を含有する請求項1から3のいずれか一項に記載の先塗り液。
  5. 前記有機溶剤は、プロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、及びプロピレングリコール−n−プロピルエーテルから選ばれる少なくとも1つである請求項4に記載の先塗り液。
  6. 前記樹脂は、ウレタン樹脂である請求項1から5のいずれか一項に記載の先塗り液。
  7. 記録媒体に対して請求項1から6のいずれか一項に記載の先塗り液を付与する工程と、
    前記先塗り液が付与された領域に対してインクを付与する工程と、を有することを特徴とする記録方法。
  8. 前記記録媒体は、樹脂フィルムである請求項7に記載の記録方法。
  9. 前記記録媒体は、ポリプロピレンフィルムである請求項7に記載の記録方法。
  10. 前記インクは、水、色材、及び有機溶剤を含有し、
    前記有機溶剤は、1,2−アルカンジオールを含有する請求項7から9のいずれか一項に記載の記録方法。
  11. 前記インクは、更に、界面活性剤及び樹脂粒子を含有し、
    前記色材は、C.I.ピグメントレッド269を含有する請求項10に記載の記録方法。
  12. 前記有機溶剤は、更に、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを含有する請求項10又は11に記載の記録方法。
  13. 記録媒体に対して請求項1から6のいずれか一項に記載の先塗り液を付与する手段と、
    前記先塗り液が付与された領域に対してインクを付与する手段と、を有することを特徴とする記録装置。
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