JP2021145481A - 回転電機用ステータ製造方法 - Google Patents

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英晴 牛田
Hideharu Ushida
英晴 牛田
弘行 大野
Hiroyuki Ono
弘行 大野
圭 江野畑
Kei Enohata
圭 江野畑
飛 湯
Fei Tang
飛 湯
哲也 杉本
Tetsuya Sugimoto
哲也 杉本
将也 中村
Masaya Nakamura
将也 中村
将成 西田
Masanari Nishida
将成 西田
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Abstract

【課題】ボイドが形成される可能性を低減する。【解決手段】回転電機(1)のステータコイル(24)を形成するための一のコイル片(52)と他の一のコイル片(52)の先端部(40)同士を当接させる工程と、当接させた先端部に係る溶接対象箇所にレーザビーム(110)を照射する溶接工程とを含み、溶接工程において、レーザ出力は、最小出力が0よりも大きい出力範囲(W2〜W1)内で振動される、回転電機用ステータ製造方法が開示される。【選択図】図14

Description

本開示は、回転電機用ステータ製造方法に関する。
回転電機のステータコイルを形成するための一のコイル片と他の一のコイル片の先端部同士を当接させ、当接させた先端部に係る溶接対象箇所に、ループ状に照射位置が移動する態様でレーザビームを照射するステータの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2018−20340号公報
しかしながら、従来技術では、レーザ出力の変化のさせ方が不適切であると、キーホールが埋まりきらずにボイド(空孔)が形成される場合があり、必要な溶接品質を確保することが難しい。
そこで、1つの側面では、本発明は、ボイドが形成される可能性を低減することを目的とする。
1つの側面では、回転電機のステータコイルを形成するための一のコイル片と他の一のコイル片の先端部同士を当接させる工程と、
当接させた前記先端部に係る溶接対象箇所にレーザビームを照射する溶接工程とを含み、
前記溶接工程において、レーザ出力は、最小出力が0よりも大きい出力範囲内で振動される、回転電機用ステータ製造方法が提供される。
1つの側面では、本発明によれば、ボイドが形成される可能性を低減することが可能となる。
一実施例によるモータの断面構造を概略的に示す断面図である。 ステータコアの単品状態の平面図である。 ステータコアに組み付けられる1対のコイル片を模式的に示す図である。 ステータのコイルエンド周辺の斜視図である。 同相のコイル片の一部を抜き出して示す斜視図である。 一のコイル片の概略正面図である。 互いに接合されたコイル片の先端部及びその近傍を示す図である。 溶接対象箇所を通る図7のラインA−Aに沿った断面図である。 レーザ波長と各種材料の個体に対するレーザ吸収率との関係を示す図である。 溶接中の吸収率の変化態様の説明図である。 グリーンレーザを用いた場合のキーホール等のイメージ図である。 赤外レーザを用いた場合のキーホール等のイメージ図である。 グリーンレーザの場合におけるレーザ出力と溶接深さとの関係を示す図である。 グリーンレーザの場合におけるレーザ出力と溶接深さとの関係を示す図である。 本実施例によるグリーンレーザによる溶接方法の説明図である。 本実施例によるレーザ出力のプロフィールを概略的に示す説明図である。 パスごとの照射位置の変化態様の説明図である。 第1比較例によるレーザ出力のプロフィールを概略的に示す説明図である。 第2比較例によるレーザ出力のプロフィールを概略的に示す説明図である。 本実施例によるレーザ出力のプロフィールに基づいて溶接を実現した場合の溶接部の断面を示す図である。 第1比較例によるレーザ出力のプロフィールに基づいて溶接を実現した場合の溶接部の断面を示す図である。 第2比較例によるレーザ出力のプロフィールに基づいて溶接を実現した場合の溶接部の断面を示す図である。 出力振動区間におけるキーホール等のイメージ図である。 溶接方向(照射位置の変化方向)が同一である2つのパスにより溶接が実現される場合の説明図である。 溶接方向(照射位置の変化方向)が対向する2つのパスにより溶接が実現される場合の説明図である。 ステータの製造の流れを概略的に示すフローチャートである。 グリーンレーザによる溶接時の温度履歴の測定結果を示す図である。 異物耐性を検証するための試験の説明図である。
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、本明細書において、「所定」とは、「予め規定された」という意味で用いられている。
図1は、一実施例によるモータ1(回転電機の一例)の断面構造を概略的に示す断面図である。
図1には、モータ1の回転軸12が図示されている。以下の説明において、軸方向とは、モータ1の回転軸(回転中心)12が延在する方向を指し、径方向とは、回転軸12を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸12から離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸12に向かう側を指す。また、周方向とは、回転軸12まわりの回転方向に対応する。
モータ1は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、モータ1は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
モータ1は、インナロータタイプであり、ステータ21がロータ30の径方向外側を囲繞するように設けられる。ステータ21は、径方向外側がモータハウジング10に固定される。
ロータ30は、ステータ21の径方向内側に配置される。ロータ30は、ロータコア32と、ロータシャフト34とを備える。ロータコア32は、ロータシャフト34の径方向外側に固定され、ロータシャフト34と一体となって回転する。ロータシャフト34は、モータハウジング10にベアリング14a、14bを介して回転可能に支持される。なお、ロータシャフト34は、モータ1の回転軸12を画成する。
ロータコア32は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板から形成される。ロータコア32の内部には、永久磁石321が挿入される。永久磁石321の数や配列等は任意である。変形例では、ロータコア32は、磁性粉末が圧縮して固められた圧粉体により形成されてもよい。
ロータコア32の軸方向の両側には、エンドプレート35A、35Bが取り付けられる。エンドプレート35A、35Bは、ロータコア32を支持する支持機能の他、ロータ30のアンバランスの調整機能(切削等されることでアンバランスを無くす機能)を有してよい。
ロータシャフト34は、図1に示すように、中空部34Aを有する。中空部34Aは、ロータシャフト34の軸方向の全長にわたり延在する。中空部34Aは、油路として機能してもよい。例えば、中空部34Aには、図1にて矢印R1で示すように、軸方向の一端側から油が供給され、ロータシャフト34の径方向内側の表面を伝って油が流れることで、ロータコア32を径方向内側から冷却できる。また、ロータシャフト34の径方向内側の表面を伝う油は、ロータシャフト34の両端部に形成される油穴341、342を通って径方向外側へと噴出され(矢印R5、R6)、コイルエンド220A、220Bの冷却に供されてもよい。
なお、図1では、特定の構造のモータ1が示されるが、モータ1の構造は、溶接により接合されるステータコイル24(後述)を有する限り、任意である。従って、例えば、ロータシャフト34は、中空部34Aを有さなくてもよいし、中空部34Aよりも有意に内径の小さい中空部を有してもよい。また、図1では、特定の冷却方法が開示されているが、モータ1の冷却方法は任意である。従って、例えば、中空部34A内に挿入される油導入管が設けられてもよいし、モータハウジング10内の油路から径方向外側からコイルエンド220A、220Bに向けて油が滴下されてもよい。
また、図1では、ロータ30がステータ21の内側に配されたインナーロータ型のモータ1であるが、他の形態のモータに適用されてもよい。例えば、ステータ21の外側にロータ30が同心に配されたアウターロータ型のモータや、ステータ21の外側および内側の双方にロータ30が配されたデュアルロータ型のモータ等に適用されてもよい。
次に、図2以降を参照して、ステータ21に関する構成を詳説する。
図2は、ステータコア22の単品状態の平面図である。図3は、ステータコア22に組み付けられる1対のコイル片52を模式的に示す図である。図3では、ステータコア22の径方向内側を展開した状態で、1対のコイル片52とスロット220との関係が示される。また、図3では、ステータコア22が点線で示され、スロット220の一部については図示が省略されている。図4は、ステータ21のコイルエンド220A周辺の斜視図である。図5は、同相のコイル片の一部を抜き出して示す斜視図である。
ステータ21は、ステータコア22と、ステータコイル24とを含む。
ステータコア22は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなるが、変形例では、ステータコア22は、磁性粉末が圧縮して固められた圧粉体により形成されてもよい。なお、ステータコア22は、周方向で分割される分割コアにより形成されてもよいし、周方向で分割されない形態であってもよい。ステータコア22の径方向内側には、ステータコイル24が巻回される複数のスロット220が形成される。具体的には、ステータコア22は、図2に示すように、円環状のバックヨーク22Aと、バックヨーク22Aから径方向内側に向かって延びる複数のティース22Bとを含み、周方向で複数のティース22B間にスロット220が形成される。スロット220の数は任意であるが、本実施例では、一例として、48個である。
ステータコイル24は、U相コイル、V相コイル、及びW相コイル(以下、U、V、Wを区別しない場合は「相コイル」と称する)を含む。各相コイルの基端は、入力端子(図示せず)に接続されており、各相コイルの末端は、他の相コイルの末端に接続されてモータ1の中性点を形成する。すなわち、ステータコイル24は、スター結線される。ただし、ステータコイル24の結線態様は、必要とするモータ特性等に応じて、適宜、変更してもよく、例えば、ステータコイル24は、スター結線に代えて、デルタ結線されてもよい。
各相コイルは、複数のコイル片52を接合して構成される。図6は、一のコイル片52の概略正面図である。コイル片52は、相コイルを、組み付けやすい単位(例えば2つのスロット220に挿入される単位)で分割したセグメントコイルの形態である。コイル片52は、断面略矩形の線状導体(平角線)60を、絶縁被膜62で被覆してなる。本実施例では、線状導体60は、一例として、銅により形成される。ただし、変形例では、線状導体60は、鉄のような他の導体材料により形成されてもよい。
コイル片52は、ステータコア22に組み付ける前の段階では、一対の直進部50と、当該一対の直進部50を連結する連結部54と、を有した略U字状に成形されてよい。コイル片52をステータコア22に組み付ける際、一対の直進部50は、それぞれ、スロット220に挿入される(図3参照)。これにより、連結部54は、図3に示すように、ステータコア22の軸方向他端側において、複数のティース22B(及びそれに伴い複数のスロット220)を跨ぐように周方向に延びる。連結部54が跨ぐスロット220の数は、任意であるが、図3では3つである。また、直進部50は、スロット220に挿入された後は、図6において、二点鎖線で示すように、その途中で周方向に屈曲される。これにより、直進部50は、スロット220内において軸方向に延びる脚部56と、ステータコア22の軸方向一端側において周方向に延びる渡り部58と、になる。
なお、図6では、一対の直進部50は、互いに離れる方向に屈曲するが、これに限られない。例えば、一対の直進部50は、互いに近づく方向に屈曲されてもよい。また、ステータコイル24は、3相の相コイルの末端同士を連結して中性点を形成するための中性点用コイル片等も有することがある。
一つのスロット220には、図6に示すコイル片52の脚部56が複数、径方向に並んで挿入される。従って、ステータコア22の軸方向一端側には、周方向に延びる渡り部58が複数、径方向に並ぶ。図3及び図5に示すように、一つのスロット220から飛び出て周方向第1側(例えば時計回りの向き)に延びる一のコイル片52の渡り部58は、他のスロット220から飛び出て周方向第2側(例えば反時計回りの向き)に延びる他の一のコイル片52の渡り部58に接合される。
本実施例では、一例として、1つのスロット220に6つのコイル片52が組み付けられる。以下では、径方向で最も外側のコイル片52から順に、第1ターン、第2ターン、第3ターンとも称する。この場合、第1ターンのコイル片52と第2ターンのコイル片52とは、後述の接合工程により先端部40同士が接合され、第3ターンのコイル片52と第4ターンのコイル片52とは、後述の接合工程により先端部40同士が接合され、第5ターンのコイル片52と第6ターンのコイル片52とは、後述の接合工程により先端部40同士が接合される。
ここで、コイル片52は、上述した通り、絶縁被膜62で被覆されているが、先端部40だけは、当該絶縁被膜62が除去される。これは、先端部40にて他のコイル片52との電気的接続を確保するためである。また、図5及び図6に示すように、コイル片52の先端部40のうち、最終的に軸方向外側端面42、すなわち、コイル片52の幅方向一端面を、軸方向外側に凸の円弧面としている。
図7は、互いに接合されたコイル片52の先端部40及びその近傍を示す図である。なお、図7には、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1が模式的に示される。図8は、溶接対象箇所90を通る図7のラインA−Aに沿った断面図である。
コイル片52の先端部40を接合する際には、互いに接合される2つの先端部40を、それぞれの円弧面(軸方向外側端面42)の中心軸Oが一致するように、その厚み方向に重ねて接合されてよい。このように中心軸を合わせて重ねることで、屈曲角度αが比較的大きい場合や小さい場合でも、互いに接合される2つの先端部40の軸方向外側のラインが一致し、適切に、重ね合わせることができる。
ここで、本実施例では、コイル片52の先端部40を接合する際の接合方法としては、溶接が利用される。そして、本実施例では、溶接方法としては、TIG溶接に代表されるアーク溶接ではなく、レーザビーム源を熱源とするレーザ溶接が採用される。TIG溶接に代えて、レーザ溶接を用いることで、コイルエンド220A、220Bの軸方向の長さを低減できる。すなわち、TIG溶接の場合は、当接させるコイル片の先端部同士を軸方向外側に屈曲させて軸方向に延在させる必要があるのに対して、レーザ溶接の場合は、かかる屈曲の必要性がなく、図7に示すように、当接させるコイル片52の先端部40同士を周方向に延在させた状態で溶接を実現できる。これにより、当接させるコイル片52の先端部40同士を軸方向外側に屈曲させて軸方向に延在させる場合に比べて、コイルエンド220A、220Bの軸方向の長さを低減できる。
レーザ溶接では、図5に模式的に示すように、当接された2つの先端部40における溶接対象箇所90に溶接用のレーザビーム110を当てる。なお、レーザビーム110の照射方向(伝搬方向)は、軸方向に略平行であり、当接された2つの先端部40の軸方向外側端面42に、軸方向外側から向かう方向である。レーザ溶接の場合は、局所的に加熱できるため、先端部40及びその近傍のみを加熱することができ、絶縁被膜62の損傷(炭化)等を効果的に低減できる。その結果、適切な絶縁性能を維持したまま、複数のコイル片52を電気的に接続できる。
溶接対象箇所90の周方向の範囲D1は、図7に示すように、2つのコイル片52の先端部40同士の当接部分における軸方向外側端面42の周方向の全範囲D0のうちの、両端を除く部分である。両端は、軸方向外側端面42の凸の円弧面に起因して、十分な溶接深さ(図7の寸法L1参照)を確保し難いためである。溶接対象箇所90の周方向の範囲D1は、コイル片52間での必要な接合面積や必要な溶接強度等が確保されるように適合されてよい。
溶接対象箇所90の径方向の範囲D2は、図8に示すように、2つのコイル片52の先端部40同士の当接面401を中心とする。溶接対象箇所90の径方向の範囲D2は、レーザビーム110の径(ビーム径)に対応してよい。すなわち、レーザビーム110は、照射位置が径方向に実質的に変化することなく周方向に沿って直線的に変化する態様で、照射される。更に換言すると、レーザビーム110は、照射位置が当接面401に対して平行な直線状に変化するように移動される。
図9は、レーザ波長と各種材料の個体に対するレーザ吸収率(以下、単に「吸収率」とも称する)との関係を示す図である。図9では、横軸に波長を取り、縦軸に吸収率を取り、銅(Cu)、アルミ(Al)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、及び鉄(Fe)の各種材料の個体に係る特性が示される。
ところで、レーザ溶接で一般的に用いられる赤外レーザ(波長が1064nmのレーザ)は、図9に示すように、コイル片52の線状導体60の材料である銅に対して吸収率が約10%と低い。すなわち、赤外レーザの場合、レーザビーム110の大部分は、コイル片52で反射してしまい、吸収されない。このため、接合対象のコイル片52間での必要な接合面積を得るためには比較的大きい入熱量が必要となり、熱影響が大きく、溶接が不安定となるおそれがある。
この点を鑑み、本実施例では、赤外レーザに代えて、グリーンレーザを利用する。なお、グリーンレーザとは、波長が532nmのレーザ、すなわちSHG(Second Harmonic Generation:第2高調波)レーザのみならず、532nmに近い波長のレーザをも含む概念である。なお、変形例では、グリーンレーザの範疇に属さない0.6μm以下の波長のレーザが利用されてもよい。グリーンレーザに係る波長は、例えばYAGレーザやYVO4レーザで生み出された基本波長を酸化物単結晶(例えば、LBO:リチウムトリボレート)に通して変換することで得られる。
グリーンレーザの場合、図9に示すように、コイル片52の線状導体60の材料である銅に対して吸収率が約50%と高い。従って、本実施例によれば、赤外レーザを利用する場合に比べて、少ない入熱量で、コイル片52間での必要な接合面積を確保することが可能となる。
なお、赤外レーザに比べてグリーンレーザの方が吸収率が高くなるという特性は、図9に示すように、銅の場合において顕著であるが、銅のみならず、他の金属材料の多くにおいて確認できる。従って、コイル片52の線状導体60の材料が銅以外の場合でもグリーンレーザによる溶接が実現されてもよい。
図10は、溶接中の吸収率の変化態様の説明図である。図10では、横軸にレーザパワー密度を取り、縦軸に銅のレーザ吸収率を取り、グリーンレーザの場合の特性100Gと、赤外レーザの場合の特性100Rとが示される。
図10では、グリーンレーザの場合と赤外レーザの場合における銅の溶融が開始するポイントP1、P2が示されるとともに、キーホールが形成されるポイントP3が示される。図10にポイントP1、P2にて示すように、赤外レーザに比べてグリーンレーザの方が、小さいレーザパワー密度で銅の溶融を開始させることができることが分かる。また、上述した吸収率の相違に起因して、赤外レーザに比べてグリーンレーザの方が、キーホールが形成されるポイントP3での吸収率と照射開始時の吸収率(すなわちレーザパワー密度が0のときの吸収率)との差が小さいことが分かる。具体的には、赤外レーザの場合、溶接中の吸収率の変化が約80%であるのに対して、グリーンレーザの場合、溶接中の吸収率の変化が約40%となり、約半分である。
このように、赤外レーザの場合、溶接中の吸収率の変化(落差)が約80%と比較的大きいため、キーホールが不安定となり溶接深さや溶接幅のバラツキや溶融部の乱れ(例えば、スパッタ等)が生じやすい。これに対して、グリーンレーザの場合、溶接中の吸収率の変化(落差)が約40%と比較的小さいため、キーホールが不安定となり難く、また、溶接深さや溶接幅のバラツキや溶融部の乱れ(例えばスパッタ等)が生じ難い。なお、スパッタとは、レーザ等を照射することにより飛散する金属粒等である。
なお、赤外レーザの場合、上述のように吸収率が低いため、ビーム径を比較的小さくする(例えばφ0.075mm)ことで、吸収率の低さを補うことが一般的である。この点も、キーホールが不安定となる要因となる。なお、図11Bは、赤外レーザを用いた場合のキーホール等のイメージ図であり、1100は、溶接ビードを示し、1102は、溶融池を示し、1104は、キーホールを示す。また、矢印R1116は、ガス抜けの態様を模式的に示す。また、矢印R110は、ビーム径が小さいことに起因して赤外レーザの照射位置が移動される様子を模式的に示す。
他方、グリーンレーザの場合、上述のように吸収率が比較的高いため、ビーム径を比較的大きくする(例えばφ0.1mm以上)ことが可能であり、キーホールを大きくして安定化することができる。これにより、ガス抜けが良好となり、スパッタ等の発生を効果的に低減できる。なお、図11Aは、グリーンレーザを用いた場合のキーホール等のイメージ図であり、符号の意義は図11Bを参照して上述したとおりである。グリーンレーザの場合、図11Aから、ビーム径の拡大に起因してキーホールが安定化しガス抜けが良好となる様子がイメージとして容易に理解できる。
図12A及び図12Bは、グリーンレーザの場合におけるレーザ出力と溶接深さとの関係を示す図である。図12Aには、横軸に溶接速度を取り、縦軸に溶接深さを取り、各種のレーザ出力(ここでは、1.0kW、2.5kW、3.0kW、3.5kW)の場合の各特性が示される。図12Bには、横軸に入熱量(「溶接入熱」と表記)を取り、縦軸に溶接深さを取り、各種のレーザ出力(ここでは、1.0kW、2.5kW、3.0kW、3.5kW)の場合の各特性が示される。
図12A及び図12Bからは、溶接深さ(溶け込み深さ)に対しては、レーザ出力の影響が大きいことが分かる。他方、溶接速度を低減させると溶接入熱が増加するが、溶接深さ(溶け込み深さ)に対する影響は比較的小さい。例えば、図12Bに示すように、レーザ出力3.0kWで溶接速度が約35mm/sのときのプロット点PL1は、溶接入熱が約90J/mmと比較的大きいにもかかわらず、レーザ出力3.5kWで溶接速度が約150mm/sのときのプロット点PL2と比較しても、溶接深さは略同等である(矢印Q1参照)。このことから、レーザ出力が高いほど入熱効率の高い溶接が実現できることが分かる。
図13は、本実施例によるグリーンレーザによる溶接方法の説明図である。図13では、横軸に時間を取り、縦軸にレーザ出力を取り、溶接の際のレーザ出力の時系列波形を模式的に示す。
本実施例では、図13に示すように、レーザ出力3.8kWでグリーンレーザのパルス照射により溶接を実現する。図13では、10msecだけレーザ出力3.8kWとなるように発振器のパルス発振が実現され、インターバル100msec後に、再び、10msecだけレーザ出力3.8kWとなるように発振器のパルス発振が実現される。以下では、このようにして一回のパルス発振により可能なパルス照射(10msecのパルス照射)の1回分を、「1パス」とも称する。なお、図13では、1パス目から3パス目の照射がパルス波形130Gで示される。また、図13には、比較用として、赤外レーザの場合のパルス照射に係るパルス波形130Rが併せて示される。
ここで、グリーンレーザの場合、発振器の出力が低く(例えば連続的な照射時は最大で400W)、深い溶け込みを確保するために必要な高出力(例えばレーザ出力3.0kW以上の高出力)を得ることが難しい。すなわち、グリーンレーザは、上述のように酸化物単結晶のような波長変換結晶を通して生成されるので、波長変換結晶を通る際に出力が低下する。このため、グリーンレーザのレーザビームを連続的に照射しようとすると、深い溶け込みを確保するために必要な高出力を得ることができない。
この点、本実施例では、上述のように、深い溶け込みを確保するために必要な高出力(例えばレーザ出力3.0kW以上の高出力)を、グリーンレーザのパルス照射により確保する。これは、連続的な照射の場合は例えば最大で400Wしか出力できない場合でも、パルス照射であれば、例えば3.0kW以上の高出力が可能となるためである。具体的には、本実施例では、一の溶接対象箇所に対して、複数回のパルス発振で発生させるグリーンレーザのビームを照射する。すなわち、本実施例では、一の溶接対象箇所に対して、比較的高いレーザ出力(例えばレーザ出力3.0kW以上)による1パス以上の照射(例えば2パスの照射)が実行される。これにより、上述の溶接対象箇所90の周方向の範囲D1が比較的広い場合でも、溶接対象箇所90の全体にわたり深い溶け込みを確保しやすくなり、高い品質の溶接を実現できる。
なお、図13では、インターバルが特定の値100msecであるが、インターバルは、任意であり、必要な高出力が確保される範囲内で最小化されてよい。また、図13では、レーザ出力は特定の値3.8kWであるが、レーザ出力は、必要な溶接深さが確保される範囲内で適宜変更されてよい。
図13では、赤外レーザの場合として、レーザ出力2.3kWで、比較的長い時間である130msec間、連続的に照射される際のパルス波形130Rが併せて示される。赤外レーザの場合は、グリーンレーザとは異なり、比較的高いレーザ出力(2.3kW)で連続的な照射が可能である。この場合、入熱量は、約312Jであり、図13に示すグリーンレーザの場合の入熱量である約80J(2パスの場合)に対して、有意に大きくなる。
このようにして、本実施例によれば、グリーンレーザを利用することで、赤外レーザを利用する場合に比べて、コイル片52の線状導体60の材料(本例では銅)に対して高い吸収率を有するレーザビームによる溶接が可能となる。この結果、比較的少ない入熱量で、コイル片52間での必要な接合面積を確保することが可能となる。
また、一の溶接対象箇所に対して2パス以上のグリーンレーザの照射を実行する場合は、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1が比較的広い場合でも、溶接対象箇所90の全体にわたり深い溶け込みを確保しやすくなり、高い品質の溶接を実現できる。
次に、図14から図23を参照して、グリーンレーザによるレーザ照射の好ましい例について説明する。
図14は、本実施例によるレーザ出力のプロフィール(一のパスに係るレーザ出力が、照射位置に応じて変化する態様)を示す概略図である。図14には、照射位置に応じたレーザ出力の変化特性150Pが概略的に示される。図15は、パスごとの照射位置の変化態様の説明図である。
本実施例では、一例として、一のパスにおいて、照射位置の変化速度、すなわち溶接速度は、図15に示すように、一定であるものとする。ここでは、約10msecのパスにおいて、照射位置の変化量(レーザビーム110の移動量)は約1.75mm〜2.0mmであるものとする。そして、本実施例では、一例として、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1の長さは、約2.9mmであるものとする。なお、これらの特定の数値はあくまで一例であり、適宜、変更されてよい。なお、1パルスあたりの最大の照射時間(本例では、約10msec)は、実質的には、1パルスあたりのグリーンレーザの照射エネルギから決まるので、溶接速度が同じである条件下で、1パルスあたりの照射エネルギが大きくなれば、1パルスあたりのレーザビーム110の移動量は、より大きくすることができる。
具体的には、図14に示すように、一のパスは、位置P10から開始される。すなわち、位置P10から一のパルス発振が開始される。この場合、位置P10でレーザ出力が所定値W1(本例では、一例として3.8kW)まで立ち上がる(矢印R140参照)。そして、照射位置が位置P10から位置P16へと直線状に一定速度で変化される。照射位置が位置P10から位置P11に至るまで、レーザ出力は所定値W1(本例では、一例として3.8kW)で維持される(矢印R141参照)。以下では、照射位置が位置P10から位置P11に至るまでの区間を、「出力一定区間」とも称する。
照射位置が位置P11に達すると(すなわち出力一定区間が終了すると)、照射位置が位置P12に至るまで、レーザ出力が所定の出力範囲内で振動する(矢印R142参照)。以下では、照射位置が位置P11から位置P12に至るまでの区間を、「出力振動区間」とも称する。
本実施例では、一例として、所定の出力範囲は、上限値が所定値W1(本例では、一例として3.8kW)と同一であり、下限値が、0よりも大きく所定値W1よりも小さい値W2(以下、「下限値W2」とも称する)である。下限値W2は、例えば、所定値W1の半分以上であり、例えば2.3kW程度であってよい。
出力振動区間において、レーザ出力の振幅は、一定であってもよいし、変化してもよい。例えば、図14に示す例では、レーザ出力の振幅は、初期的には比較的小さく、その後、略一定である。また、出力振動区間において、レーザ出力の振動周期(周波数)は、一定であってもよいし、変化してもよい。例えば、レーザ出力の周波数は、10kHz程度であってよい。
また、図14に示す例では、出力振動区間において、レーザ出力の各振動の最大値は、所定値W1であるが、レーザ出力の各振動の最大値は、変化してもよい。例えば、レーザ出力の各振動の最大値は、所定値W1から徐々に低下してもよい。ただし、この場合は、レーザ出力の各振動の最大値は、後述の中間値W3よりも有意に大きい範囲内で、変化されることが望ましい。また、同様に、出力振動区間において、レーザ出力の各振動の最小値は、下限値W2で保たれなくてもよい。
出力振動区間の長さは、0よりも大きい限り、任意であるが、例えば出力一定区間の長さ以下であってよい。本実施例では、出力一定区間の長さが約1.05mm程度であるのに対して、出力振動区間の長さは、約0.4mm程度である。
照射位置が位置P12に達すると(すなわち出力振動区間が終了すると)、照射位置が位置P15に至るまで、レーザ出力が徐々に低下される(矢印R143参照)。以下では、照射位置が位置P12から位置P15に至るまでの区間を、「出力低下区間」とも称する。
出力低下区間において、レーザ出力の低下幅は、0よりも有意に大きくかつ所定値W1よりも有意に小さい範囲内で任意である。例えば、図14に示す例では、レーザ出力は、位置P12での所定値W1から値W3(以下、「中間値W3」とも称する)へと徐々に低下され、中間値W3は、下限値W2よりも大きい。この場合、中間値W3は、所定値W1の70%程度又はそれ以下であることが望ましい。なお、変形例では、中間値W3は、下限値W2と略同一であってもよいし、下限値W2より小さくてもよい。
出力低下区間の長さは、0よりも大きい限り、任意であるが、例えば出力一定区間の長さよりも有意に短く設定されてよい。本実施例では、出力低下区間の長さは、出力振動区間の長さと略同一であり、約0.45mm程度である。
照射位置が位置P15に達すると(すなわち出力低下区間が終了すると)、レーザ出力は中間値W3から0へと立ち下げられる(矢印R144参照)。すなわち、一のパルス発振が終了される。なお、照射位置が位置P15に達しても、照射位置は、更に距離Δ1(図15参照)だけ離れた位置P16に移動するまで変化されてよい。この間、残留するレーザ出力に起因して僅かな入熱量が発生する。ただし、変形例では、照射位置が位置P15又はその直前の位置(図示せず)に達した際に、照射位置の変化(一定速度での変化)が終了されてもよい。
ここで、図16及び図17に示す比較例を説明してから、当該比較例との対比で本実施例の効果について説明する。
図16は、第1比較例によるレーザ出力のプロフィール(一のパスに係るレーザ出力が、照射位置に応じて変化する態様)を示す概略図である。図16には、照射位置に応じたレーザ出力の変化特性160Pが概略的に示される。
なお、第1比較例では、本実施例と同様、一のパスにおいて、照射位置の変化速度、すなわち溶接速度は、前出の図15に示したように、一定であるものとする。
第1比較例では、図16に示すように、一のパスは、位置P10から開始される。すなわち、位置P10から一のパルス発振が開始される。この場合、位置P10でレーザ出力が所定値W1(本例では、一例として3.8kW)まで立ち上がる(矢印R160参照)。そして、照射位置が位置P10から位置P12へと直線状に一定速度で変化される。この間、レーザ出力は所定値W1(本例では、一例として3.8kW)で維持される(矢印R161参照)。照射位置が位置P12に達すると、レーザ出力は所定値W1(本例では、一例として3.8kW)から0へと立ち下げられる(矢印R162参照)。
このような第1比較例によるレーザ出力のプロフィールでは、一のパスの終了時点で、レーザ出力が0まで瞬時的に低下される。以下、このようなレーザ出力が0まで瞬時的に立ち下げられるレーザ出力のプロフィールを、後述する別の照射態様と区別するために、「ダウンスロープなしの出力プロフィール」とも称する。
図17は、第2比較例によるレーザ出力のプロフィール(一のパスに係るレーザ出力が、照射位置に応じて変化する態様)を示す概略図である。図17には、照射位置に応じたレーザ出力の変化特性170Pが概略的に示される。
なお、第2比較例(後述の第2比較例も同様)では、本実施例と同様、一のパスにおいて、照射位置の変化速度、すなわち溶接速度は、前出の図15に示したように、一定であるが、第1比較例よりも若干速く設定される。
第2比較例では、図17に示すように、一のパスは、位置P10から開始される。すなわち、位置P10から一のパルス発振が開始される。この場合、位置P10でレーザ出力が所定値W1(本例では、一例として3.8kW)まで立ち上がる(矢印R170参照)。そして、照射位置が位置P10から位置P18へと直線状に一定速度で変化される。照射位置が位置P10から位置P12に至るまでの区間、レーザ出力は所定値W1(本例では、一例として3.8kW)で維持される(矢印R171参照)。照射位置が位置P12に達すると、レーザ出力は所定値W1(本例では、一例として3.8kW)から0へと段階的に立ち下げられる(矢印R173参照)。具体的には、照射位置が位置P15に達すると、レーザ出力は一段階だけ下げられ、照射位置が位置P17に達すると、レーザ出力は更に一段階だけ下げられ、照射位置が位置P18に達すると、レーザ出力は0へと立ち下げられる。
このような第2比較例によるレーザ出力のプロフィールでは、一のパスの終了時点で、レーザ出力が0まで段階的に低下される。以下、このようなレーザ出力が0まで段階的に立ち下げられるレーザ出力のプロフィールを、「ダウンスロープ有りの出力プロフィール」とも称する。
図18は、本実施例によるレーザ出力のプロフィールに基づいて溶接を実現した場合の溶接部の断面を示す図である。図19は、第1比較例によるレーザ出力のプロフィールに基づいて溶接を実現した場合の溶接部の断面を示す図である。図20は、第2比較例によるレーザ出力のプロフィールに基づいて溶接を実現した場合の溶接部の断面を示す図である。図18〜図20には、当接された2つの先端部40のうちの一方が図示されており、点線で囲まれた領域2000が溶接部である。また、図18〜図20には、照射位置の変化方向(すなわち溶接方向)が矢印R18〜R20で示されている。
図18(本実施例)及び図20(第2比較例)では、溶接速度は175mm/sであり、レーザ出力のピーク出力である所定値W1は3.8kWであり、レーザスポット径はφ0.3mmであり、レーザフォーカス位置はジャストフォーカスとされた。図19(第1比較例)では、溶接速度は145mm/sであり、他は本実施例と同じとされた。
第1比較例によるレーザ出力のプロフィールに基づいて溶接を実現した場合、図19に示すように、一のパスの終了部においてボイド(空孔)1904が形成されている。これは、第1比較例では、溶接の終了時にレーザ出力が急激に低減されるので、一のパスの終了時の直前まで形成されていたキーホールが埋まりきらずに、ボイド(空孔)が形成されやすくなるためである。
同様に、第2比較例によるレーザ出力のプロフィールに基づいて溶接を実現した場合、発生頻度は第1比較例によりも低減されるものの、一のパスの終了部においてボイド(空孔)1904が形成されやすいことがわかった(図20参照)。同様に、第2比較例では、一のパスの終了時にレーザ出力が段階的に低減されるものの、段階的な低減の開始直前まで形成されていたキーホールが埋まりきらずに、ボイド(空孔)が形成されやすい傾向が確認された。
これに対して、本実施例によれば、図18に示すように、ボイド(空孔)が形成されない高品質の溶接部が実現されることが確認された。
ここで、前出の図11A及び図21を参照して、ボイド(空孔)を低減できる原理について説明する。図21は、出力振動区間におけるキーホール等のイメージ図である。なお、図11Aは、出力一定区間におけるキーホール等のイメージ図に対応する。
本実施例では、一のパスの終了の直前において、上述したように、出力振動区間によってレーザ出力は比較的高い値(本実施例では、所定値W1)が維持される。従って、本実施例では、出力振動区間においても、出力一定区間において実現されているキーホールの形成状態を維持できる。他方、出力振動区間においては、出力一定区間においてよりも、入熱量が低減される。このため、キーホールのサイズが、出力一定区間で形成されるキーホールのサイズよりも小さくなる傾向がある。すなわち、出力一定区間では、図11Aに示したような比較的大きいキーホール1104が形成されるのに対して、出力振動区間では、入熱量が低下することで、図21に示すように、キーホール1104のサイズが低減される。このようにして、本実施例によれば、出力振動区間を設けることで、一のパスの終了の直前において、キーホール1104を維持しつつ、キーホール1104のサイズを低減できる。
そして、本実施例では、一のパスの終了時において、上述したように、出力低下区間によってレーザ出力は比較的低い中間値W3まで徐々に低下される。すなわち、本実施例では、出力振動区間によってキーホール1104のサイズを低減してから、出力低下区間によってキーホール1104が埋められる。従って、出力低下区間においてキーホール1104が埋まりきらない可能性が低減され、その結果、ボイド(空孔)が形成される可能性を低減できる。
このようにして、本実施例によれば、出力振動区間を設けることで、キーホール1104を維持しつつ、キーホール1104のサイズを低減できる。これにより、ボイド(空孔)が形成される可能性を低減できる。
また、本実施例によれば、出力振動区間に後続して出力低下区間を設けることで、キーホール1104が埋まりきらない可能性を効果的に低減し、ボイド(空孔)が形成される可能性を効果的に低減できる。
なお、変形例では、出力低下区間では、レーザ出力の連続的な低下態様に代えて、レーザ出力の段階的な低下態様(すなわち、上述した第2比較例によるダウンスロープ有りの出力プロフィールのような低下態様)が実現されてもよい。また、更なる変形例では、出力低下区間では、レーザ出力の連続的な低下態様に代えて、レーザ出力の瞬間的な0への低下態様(すなわち、上述した第1比較例によるダウンスロープなしの出力プロフィールのような低下態様)が実現されてもよい。すなわち、出力低下区間は省略されてもよい。この場合、出力低下区間を設ける場合に比べてボイド(空孔)が形成される可能性が増加するものの、出力振動区間に起因した効果を依然として得ることができる。
また、本実施例によれば、図18に示すように、軸方向外側端面42や溶接底部が滑らかであり、第1比較例や第2比較例で生じるような凹凸を低減できる。このようにして、本実施例によれば、ボイド(空孔)が形成され難い高品質の溶接を実現できる。
また、本実施例によれば、上述したように、出力振動区間においても、キーホールの形成状態を維持できるので、溶接対象箇所90のうちの、出力振動区間によって照射される部位においても、必要な溶接深さが確保できる。これにより、必要な溶接深さが確保できる範囲(1パスあたりの範囲)が、出力振動区間を設けることで低減されてしまう、という不都合は生じず、製品機能上必要な溶接断面積を効率的に確保できる。
ところで、上述したように、グリーンレーザの場合は、発振器の出力が低く(例えば連続的な照射時は最大で400W)、深い溶け込みを確保するために必要な高出力(例えばレーザ出力3.0kW以上の高出力)を得ることが難しい。このため、本実施例では、上述したように、一の溶接対象箇所に対して、複数回のパルス発振で発生させるグリーンレーザのビームを照射することで、製品機能上必要な溶接断面積を確保している。
この点、本実施例によれば、一のパルス発振中に上述した出力振動区間を設定するので、出力振動区間における入熱量(照射エネルギ)を効果的に低減し、その分を、出力低下区間における入熱量に割り当てることができる。すなわち、本実施例によれば、一のパルス発振中に上述した出力振動区間を設定することで、製品機能上必要な溶接断面積が確保される区間(出力一定区間及び出力振動区間を合わせた区間)の長さを、有意に低減することなく、出力低下区間を設定できる。この点で、出力振動区間を設定する構成は、特にグリーンレーザを利用する場合に好適となる。
次に、図22及び図23を参照して、一の溶接対象箇所に対して2つのパスのレーザ照射が実現される場合に関して、当該2つのパスに係る照射態様の組み合わせ例について説明する。
図22は、溶接方向(照射位置の変化方向)が同一である2つのパスにより溶接が実現される場合の説明図であり、照射位置に応じたレーザ出力の変化特性を概略的に示す。また、矢印R140や、矢印R141、矢印R142等の意味は、図14で説明したとおりである。図22には、説明上、X方向と、X方向(レーザビーム110の照射位置の移動方向)に沿ったX1側及びX2側が定義されている。また、図22では、溶接方向が矢印R171、R172で示される。矢印R171は、1パス目の溶接方向であり、矢印R172は、2パス目の溶接方向である。
図22に示す例では、1パス目及び2パス目は、本実施例によるレーザ出力のプロフィールに基づいて実現される。また、1パス目及び2パス目は、矢印R171、R172で示すように、溶接方向(照射位置の変化方向)が互いに同一であり、X方向に沿ってX1側からX2側へと照射位置が変化する方向である。
図22に示す例では、1パス目は、第1範囲D11にレーザビーム110を照射する一のパルス発振(第1パルス発振の一例)により実現され、2パス目は、第2範囲D12にレーザビーム110を照射する次の一のパルス発振(第2パルス発振の一例)により実現される。1パス目による溶接と2パス目による溶接は、協動して、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1の全体をカバーする。
また、第1範囲D11及び第2範囲D12は、図22に示すように、互いに対して部分的に重なる。具体的には、第1範囲D11及び第2範囲D12は、X方向で重複する態様で設定される。すなわち、2パス目が開始される位置(図14の位置P10に対応する位置)は、1パス目に係る出力振動区間が実質的に終了される位置(図14の位置P12に対応する位置)と一致する。これにより、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1のうちの、2つのパスでカバーできる範囲(すなわち第1範囲と第2範囲とを組み合わせた範囲)において、製品機能上必要な溶接断面積を確保できる。
なお、図22に示す例では、1パス目及び2パス目は、ともに上述した本実施例によるレーザ出力のプロフィールに基づき実現されているが、いずれか一方又は双方が、上述したダウンスロープなしの出力プロフィール又はダウンスロープ有りの出力プロフィールに基づいて実現されてもよい。
また、図22に示す例では、2パス目が開始される位置(図14の位置P10に対応する位置)は、1パス目に係る出力振動区間が実質的に終了される位置(図14の位置P12に対応する位置)と一致するが、これに限られない。例えば、2パス目が開始される位置が、1パス目に係る出力振動区間が実質的に終了される位置に対してわずかにX1側に設定されてもよい。
図23は、溶接方向(照射位置の変化方向)が対向する2つのパスにより溶接が実現される場合の説明図であり、照射位置に応じたレーザ出力の変化特性を概略的に示す。矢印R171、R172の意味は、図22と同様である。また、矢印R140や、矢印R141、矢印R142等の意味は、図14で説明したとおりである。
図23に示す例では、図22に示す例と同様、1パス目は、第1範囲D11にレーザビーム110を照射する一のパルス発振(第1パルス発振の一例)により実現され、2パス目は、第2範囲D12にレーザビーム110を照射する次の一のパルス発振(第2パルス発振の一例)により実現される。1パス目による溶接と2パス目による溶接は、協動して、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1の全体をカバーする。
また、図23に示す例では、図22に示す例と同様、1パス目及び2パス目は、本実施例によるレーザ出力のプロフィールに基づいて実現される。
ただし、図23に示す例では、図22に示す例に対して、1パス目と2パス目とで溶接方向(照射位置の変化方向)が異なる。具体的には、1パス目は、第1範囲D11におけるレーザビーム110の照射位置をX方向に沿ってX1側からX2側へと直線状に変化させる方向であるのに対して、2パス目は、第2範囲D12におけるレーザビーム110の照射位置をX方向に沿ってX2側からX1側へと直線状に変化させる方向である。すなわち、1パス目及び2パス目は、ともに、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1の中心に向かって外側から照射が開始される。
また、図23に示す例では、図22に示す例と同様、第1範囲D11及び第2範囲D12は、互いに対して部分的に重なる。具体的には、第1範囲D11及び第2範囲D12は、X方向で重複する態様で設定される。すなわち、2パス目に係る出力振動区間が終了される位置(図14の位置P12に対応する位置)は、1パス目に係る出力振動区間が実質的に終了される位置(図14の位置P12に対応する位置)と一致する。これにより、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1のうちの、2つのパスでカバーできる範囲(すなわち第1範囲と第2範囲とを組み合わせた範囲)において、製品機能上必要な溶接断面積を確保できる。
ここで、図23に示す例では、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1のうちの両端部(X1側とX2側の端部)において、実際のレーザ出力が所定値W1よりも小さくなる。なお、図22に示す例では、対照的に、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1のうちの、X1側の端部のみにおいて、実際のレーザ出力が所定値W1よりも小さくなる。より具体的には、図23に示す例では、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1のうちの、X1側の端部では、X2側に向かうにつれて入熱量が徐々に増加し、かつ、X2側の端部では、X1側に向かうにつれて入熱量が徐々に増加する特性となる。このような特性は、溶接対象箇所90のX方向の両端部において、溶接対象物(個体)の溶接深さ方向の寸法が小さくなる構成に好適である。これは、溶接対象物(個体)における溶接深さ方向の寸法が不十分な部位に対して、入熱量が比較的大きくなると、キーホールが貫通する等により溶接の品質が損なわれやすいためである。
この点、本実施例では、図7に示したように、溶接対象箇所90を形成する2つの先端部40は、先細りの形態(軸方向外側端面42が湾曲する形態)である。従って、当接される先端部40同士の重なる範囲の溶接深さ方向の寸法(すなわち径方向に視たときの重なる範囲における、レーザビーム110の照射方向に沿った寸法)は、溶接対象箇所90のX方向の両端部の寸法L1の方が、溶接対象箇所90のX方向の中央部の同寸法L0よりも有意に小さい。このため、当接させた先端部40同士の重なる範囲の寸法であってレーザビーム110の照射方向の寸法は、第1範囲D11におけるX1側において、第1範囲D11におけるX2側よりも小さく、かつ、第2範囲D12におけるX2側において、第2範囲D12におけるX1側よりも小さい。
従って、図23に示す例によれば、溶接方向(照射位置の変化方向)が異なる2つのパスであって、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1の中心に向かって外側から照射が開始される2つのパスによって、軸方向外側端面42が湾曲する形態の先端部40における溶接対象箇所90に対しても高い品質の溶接部を形成できる。
なお、図23に示す例では、1パス目及び2パス目は、ともに上述した本実施例によるレーザ出力のプロフィールに基づき実現されているが、いずれか一方又は双方が、上述したダウンスロープなしの出力プロフィール又はダウンスロープ有りの出力プロフィールに基づいて実現されてもよい。
また、図23に示す例(図22に示す例についても同様)では、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1の全体を、2つのパスでカバーしているが、3つ以上のパスでカバーしてもよい。3つ以上のパスを利用する場合、そのうちの少なくとも2つのパスが図23に示す関係(図22に示す例についても関係)であってよい。
また、図23に示す例では、2パス目に係る出力振動区間が終了される位置(図14の位置P12に対応する位置)は、1パス目に係る出力振動区間が実質的に終了される位置(図14の位置P12に対応する位置)と一致するが、これに限られない。例えば、2パス目に係る出力振動区間が終了される位置は、1パス目に係る出力振動区間が実質的に終了される位置に対してわずかにX1側に設定されてもよい。
次に、図24を参照してステータ21の製造の流れについて概説する。図24は、ステータ21の製造の流れを概略的に示すフローチャートである。
ステータ21の製造方法は、まず、ステータコア22を準備し、かつ、ステータコイル24を形成するための、真っ直ぐなコイル片52(成形前のコイル片52)を準備する工程(S12)を含む。
続いて、ステータ21の製造方法は、コイル片52の先端部40(始端および終端)の絶縁被膜62を除去する除去工程(S14)を含む。この絶縁被膜62の除去方法としては、任意であるが、例えば、絶縁被膜62は、刃具を用いて機械的に除去されてもよいし、エッチング等により化学的に除去されてもよい。また、絶縁被膜62は、レーザを用いて熱的に除去されてもよい。
なお、コイル片52同士を接合するためには、少なくとも、先端部40のうち実際に接合される面の絶縁被膜62のみが除去されていればよく、その他の面(裏面または表面の他方の面、および、側面)の絶縁被膜62は、残っていてもよい。
続いて、ステータ21の製造方法は、除去工程後に、真っ直ぐなコイル片52を、金型等を用いて屈曲させ、成形する成形工程(S16)を含む。例えば、コイル片52を、図6に示したような、一対の直進部50と、一対の直進部50を連結する連結部54と、を有した略U字状に成形する。なお、ステップS16及びステップS14の順番は入れ替わっていてもよい。
続いて、ステータ21の製造方法は、成形工程後に、コイル片52を、ステータコア22のスロット220に挿入する装着工程(S18)を含む。挿入工程は、全てのコイル片52の挿入が完了した段階で完了する。
続いて、ステータ21の製造方法は、挿入工程後に、直進部50のうち、各スロット220から突出している部分を、専用の治具を用いて、周方向に倒す変形工程(S20)を含む。これにより、直進部50は、スロット220内において軸方向に延びる脚部56と、軸方向一端側において周方向に延びる渡り部58とになる。
続いて、ステータ21の製造方法は、変形工程後に、周方向第1側(例えば時計回りの向き)に延びる一のコイル片52の渡り部58の先端部40と、周方向第2側(例えば反時計回りの向き)に延びる他の一のコイル片52の渡り部58の先端部40と、を当接させる工程(S22)を含む。この場合、例えば、治具(図示せず)を用いて複数組の先端部40同士を当接させた状態に維持する。
続いて、複数組の先端部40同士を当接させた状態で、複数の溶接対象箇所のそれぞれにレーザビーム110を順次照射することで、複数組の先端部40同士を接合する接合工程(S24)を含む。本実施例では、上述のように、各2つの先端部40は、溶接により接合される。接合工程(レーザ溶接による接合工程)の詳細は、上述のとおりである。2つの先端部40ごとに溶接が実行され、すべての組の2つの先端部40が溶接されると、接合工程が終了する。
続いて、ステータ21の製造方法は、接合工程後に、仕上げ工程(S26)を含む。仕上げ工程は、例えば上述のようにコイル片52を組み付けることで形成されるコイルエンド220A、220Bに対して絶縁処理を行う工程等を含んでよい。なお、絶縁処理は、コイルエンド220A、220Bの全体を封止する態様で樹脂をモールドする処理であってよいし、ワニス等を塗布する処理であってもよい。
次に、図25を参照してグリーンレーザによる溶接熱の影響について説明する。
図25は、グリーンレーザによる溶接時の温度履歴の測定結果を示す図である。図25では、横軸に時間を取り、縦軸に温度を取り、グリーンレーザによる溶接時の温度履歴が示される。図25に示す温度履歴は、軸方向外側端面42の溶接対象箇所90の近傍の温度を熱電対で測定した結果に基づく。なお、図25において、時点t1は、照射開始時点を表す。
ところで、一般的に溶接時には熱が発生するので、溶接により発生した熱によって、コイル片52の絶縁被膜62が損傷(炭化)する場合がある。ここで、損傷(炭化)した絶縁被膜62上には、絶縁材料(例えば樹脂や、ワニス等)を付与するのが困難になるため、溶接後におけるステータコイル24の絶縁性能が悪化する可能性がある。
この点、本実施例によれば、図25に示すように、溶接時の最高温度は約99℃に留まる。これは、グリーンレーザを用いることで、上述のように入熱量が有意に低減されるためである。なお、約99℃は、エナメルの炭化が生じる温度である180℃よりも有意に低い。このように、本実施例によれば、グリーンレーザを用いることで、コイル片52の絶縁被膜62の損傷が生じ難くすることができる。従って、本実施例によれば、絶縁被膜62を除去する除去工程(S14)(図24参照)において、先端部40のうちの接合される面の絶縁被膜62のみを除去し、その他の面の絶縁被膜62を残存させることが可能となりうる。
次に、図26を参照して、グリーンレーザによる溶接に係る異物耐性について説明する。
図26は、異物耐性を検証するための試験の説明図である。ここでは、図26に示すように、当接される先端部40同士の重なる範囲を6分割し、分割して得られる6つの領域A1からA6のいずれかに、絶縁被膜62を形成するエナメル被膜の小片を挟み込み(径方向で先端部40間に挟み込み)、グリーンレーザによる溶接を行った。そして、小片の挟み込み領域や小片のサイズを変更させてグリーンレーザによる溶接を行い、異物耐性を評価した。その結果、例えば、領域A1や領域A3においては、サイズ0.7mm×0.7mmの小片を挟み込んだ場合でも、溶接ビードの表面に穴空き等の欠陥が生じなかった。同様に、領域A2においては、サイズ1.0mm×1.0mmの小片を挟み込んだ場合でも、溶接ビードの表面に穴空き等の欠陥が生じなかった。その他も領域についても同様であった。これに対して、赤外レーザによる溶接の場合、サイズ0.2mm×0.2mmの小片を挟み込んだ場合に、溶接ビードの表面に穴空きが生じ、グリーンレーザによる溶接の異物耐性の高さを確認できた。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、上述した実施例は、一のパスに係る出力振動区間は、当該一のパスに係る後半部に設定されるが、これに限られない。例えば、一のパスに係る出力振動区間は、当該一のパスに係る前半部の全部又は一部(例えば出力一定区間の全部又は一部)に設定されてもよい。
また、上述した実施例は、上述したように、グリーンレーザによる溶接の場合に好適なレーザ出力のプロフィールに関するものであるが、これに限られない。例えば、上述した本実施例によるレーザ出力のプロフィールは、赤外レーザによる溶接に適用されてもよい。なお、赤外レーザの場合、上述のように、連続的な照射が可能であるので、上述した本実施例による出力振動区間及びその後の出力低下区間は、連続的な照射の際の一部の区間(例えば、同様に、連続的な照射の後半部)を構成してもよい。この場合も、出力低下区間は、省略されてもよい。
<付記>
以上の実施例に関し、更に以下を開示する。なお、以下で記載する効果のうちの、一の形態に対する追加的な各形態に係る効果は、当該追加的な各形態に起因した付加的な効果である。
(1)一の形態は、回転電機(1)のステータコイル(24)を形成するための一のコイル片(52)と他の一のコイル片(52)の先端部(40)同士を当接させる工程(S22)と、
当接させた前記先端部に係る溶接対象箇所にレーザビーム(110)を照射する溶接工程(S24)とを含み、
前記溶接工程において、レーザ出力は、最小出力が0よりも大きい出力範囲(W2〜W1)内で振動される、回転電機用ステータ製造方法である。
本形態によれば、溶接工程においてレーザ出力が振動されるので、キーホールの形成状態を維持しつつキーホールのサイズを低減できる。これにより、レーザ出力が振動された後のキーホールは適切に埋まりやすくなり、ボイドが形成される可能性を低減できる。
(2)また、本形態においては、好ましくは、前記溶接工程において、レーザ出力は、所定値(W1)で維持され、その後、前記出力範囲内で振動される。
この場合、レーザ出力が所定値で維持された後にレーザ出力が振動されるので、レーザ出力が所定値で維持されていた際に形成されたキーホールは、レーザ出力が振動される際に、そのサイズが低減される。これにより、レーザ出力が振動された後のキーホールは適切に埋まりやすくなり、ボイドが形成される可能性を低減できる。
(3)また、本形態においては、好ましくは、前記溶接工程において、レーザ出力は、0よりも大きい所定値(W1)で維持され、その後、前記出力範囲内で振動され、その後、徐々に低下される。
この場合、キーホールのサイズを低減した後にレーザ出力を徐々に低下できるので、当該低下の際にキーホールが適切に埋まりやすくなり、ボイドが形成される可能性を低減できる。
(4)また、本形態においては、好ましくは、前記出力範囲の最大出力は、前記所定値に対応する。
この場合、レーザ出力が所定値で維持されている場合に比べて、入熱量を低減しつつ、キーホールの形成状態を維持しかつキーホールのサイズを低減できる。なお、「出力範囲の最大出力が所定値に対応する」とは、出力範囲の最大出力が所定値に一致する態様を意味するが、誤差等に起因して、出力範囲の最大出力が所定値に対してわずかなズレを有する態様を除外するものではない。
(5)また、本形態においては、好ましくは、前記溶接工程において、レーザ出力は、前記出力範囲内で振動され、その後、徐々に低下される。
この場合、キーホールのサイズが比較的小さい状態でレーザ出力を徐々に低下することができるので、当該低下の際にキーホールが適切に埋まりやすくなり、ボイドが形成される可能性を低減できる。
(6)また、本形態においては、好ましくは、前記レーザビームは、0.6μm以下の波長を有する。
この場合、0.6μm以下の波長のレーザビーム(例えばグリーンレーザ)が利用されるので、赤外レーザを用いる場合に比べて、比較的少ない入熱量で、コイル片間での必要な接合面積を確保できる。
(7)また、本形態においては、好ましくは、前記溶接工程において、前記レーザビームは、レーザ発振器におけるパルス発振ごとに発生され、
前記出力範囲内でのレーザ出力の振動は、一のパルス発振中の後半部において実現される。
この場合、連続的な照射ではなく、パルス発振によるパルス照射を行うことで、連続的な照射の場合に出力できるレーザ出力よりも高いレーザ出力を実現できる。これにより、必要な溶け込み深さが得られるレーザ出力を確保できる。また、出力範囲内でのレーザ出力の振動が一のパルス発振中の後半部において実現されるので、当該一のパルス発振の終了の際に形成されうるボイドを効果的に抑制できる。
(8)また、本形態においては、好ましくは、前記一のパルス発振中に、前記レーザビームは、照射位置が直線状に変化するように移動される。
この場合、一のパルス発振中に照射位置が固定される場合に比べて、溶接対象箇所に対して効率的な溶接を実現できる。また、一のパルス発振中に照射位置が固定される場合に比べて、溶接底部の凹凸等を効果的に低減できる。
(9)また、本形態においては、好ましくは、前記溶接工程において、一の前記溶接対象箇所に対して、2回以上のパルス発振により前記レーザビームが照射され、
前記一のパルス発振は、前記2回以上のパルス発振の一部又は全部を構成する。
この場合、2回以上のパルス発振を組み合わせ、かつ、2回以上のパルス発振の一部又は全部を、上記のような特性の一のパルス発振とすることで、溶接対象箇所の長さが比較的長い場合でもボイドが形成される可能性を低減できる。
(10)また、本形態においては、好ましくは、前記一のパルス発振は、前記2回以上のパルス発振のうちの、前記溶接対象箇所の第1範囲(D11)に前記レーザビームを照射するための第1パルス発振と、前記溶接対象箇所の第2範囲(D12)に前記レーザビームを照射するための第2パルス発振とを構成し、
前記第1範囲と前記第2範囲は、部分的に重なる。
この場合、第1パルス発振による溶接箇所と第2パルス発振による溶接箇所との間の継ぎ目部分においても、製品機能上必要な溶接断面積を適切に確保できる。
1 モータ
10 モータハウジング
12 回転軸(回転中心)
14a ベアリング
14b ベアリング
21 ステータ
22 ステータコア
22A バックヨーク
220A コイルエンド
22B ティース
220B コイルエンド
24 ステータコイル
30 ロータ
32 ロータコア
34 ロータシャフト
34A 中空部
35A エンドプレート
35B エンドプレート
40 先端部
42 軸方向外側端面
50 直進部
52 コイル片
54 連結部
56 脚部
58 渡り部
60 線状導体(平角線)
62 絶縁被膜
90 溶接対象箇所

Claims (10)

  1. 回転電機のステータコイルを形成するための一のコイル片と他の一のコイル片の先端部同士を当接させる工程と、
    当接させた前記先端部に係る溶接対象箇所にレーザビームを照射する溶接工程とを含み、
    前記溶接工程において、レーザ出力は、最小出力が0よりも大きい出力範囲内で振動される、回転電機用ステータ製造方法。
  2. 前記溶接工程において、レーザ出力は、所定値で維持され、その後、前記出力範囲内で振動される、請求項1に記載の回転電機用ステータ製造方法。
  3. 前記溶接工程において、レーザ出力は、0よりも大きい所定値で維持され、その後、前記出力範囲内で振動され、その後、徐々に低下される、請求項1に記載の回転電機用ステータ製造方法。
  4. 前記出力範囲の最大出力は、前記所定値に対応する、請求項2又は3に記載の回転電機用ステータ製造方法。
  5. 前記溶接工程において、レーザ出力は、前記出力範囲内で振動され、その後、徐々に低下される、請求項1に記載の回転電機用ステータ製造方法。
  6. 前記レーザビームは、0.6μm以下の波長を有する、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の回転電機用ステータ製造方法。
  7. 前記溶接工程において、前記レーザビームは、レーザ発振器におけるパルス発振ごとに発生され、
    前記出力範囲内でのレーザ出力の振動は、一のパルス発振中の後半部において実現される、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の回転電機用ステータ製造方法。
  8. 前記一のパルス発振中に、前記レーザビームは、照射位置が直線状に変化するように移動される、請求項7に記載の回転電機用ステータ製造方法。
  9. 前記溶接工程において、一の前記溶接対象箇所に対して、2回以上のパルス発振により前記レーザビームが照射され、
    前記一のパルス発振は、前記2回以上のパルス発振の一部又は全部を構成する、請求項8に記載の回転電機用ステータ製造方法。
  10. 前記一のパルス発振は、前記2回以上のパルス発振のうちの、前記溶接対象箇所の第1範囲に前記レーザビームを照射するための第1パルス発振と、前記溶接対象箇所の第2範囲に前記レーザビームを照射するための第2パルス発振とを構成し、
    前記第1範囲と前記第2範囲は、部分的に重なる、請求項9に記載の回転電機用ステータ製造方法。
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