JP2012205446A - ロータコアとその製造方法およびモータ - Google Patents

ロータコアとその製造方法およびモータ Download PDF

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能成 浅野
Nobuyuki Kifuji
敦之 木藤
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Abstract

【課題】薄板の厚さ誤差とレーザの位置決め誤差が従来と変わらない場合でも、回転軸方向に隣接する薄板にレーザ溶け込み部が及ばず、回転軸方向に隣接する薄板との電気絶縁性が維持されるロータコアを提供する。
【解決手段】ロータコア10は、薄板12a、12b、12c、12d、...が、回転軸11方向に積層され、周方向に結合されてなる。薄板は、外周または内周に、レーザ溶接部15、16と、レーザ焦点外れによる非溶接部17、18を備える。回転軸11方向に隣接する薄板は、レーザ溶接部15、16と非溶接部17、18を、回転軸11方向に交互に備える。
【選択図】図1

Description

本発明はモータ(回転電動機)に用いられるロータコアとその製造方法、およびそのロータコアを用いたモータに関する。
図10は、PMモータに用いられる、従来の第1例のロータコア100である(例えば特許文献1、2)。図10(a)はロータコア100の平面図、図10(b)はロータコア100の正面図である。ロータコア100は、強磁性体からなる、円板が周方向に複数(図では4個)に分割された扇形の薄板102が、回転軸101方向に積層され、周方向に結合されてなる。薄板102の内部には、磁石106を挿入するための孔103が設けられる。ロータコア100においては、1個の磁石106が、薄板102が積層されてなる1個のブロックに収められる。そのため、ロータコア100は、極間(N極とS極の間)で分割されている。
通常、周方向に隣接する薄板102は、薄板102の外周の分割境界のレーザ溶接部104をレーザ溶接される。薄板102の表面は薄い絶縁膜で覆われているため、積層された薄板102どうしは、レーザ溶接部104を除き、電気的に絶縁されている。
ロータコア100は、厚さ0.3mm〜0.5mm程度の薄板102が、200枚〜300枚程度積層されたものである。そのため、ロータコア100全体では、各薄板102の僅かな厚さの誤差が累積され、厚さ方向の累積誤差が一枚の薄板102の厚さを超えることがある。さらに、レーザの位置決め誤差もある。
薄板102の厚さ誤差とレーザの位置決め誤差が重なると、図10(b)に示すように、レーザ溶け込み部105の位置は回転軸101方向にばらつくおそれがある。レーザ溶け込み部105の位置が回転軸101方向にばらつくと、図10(b)に示すように、レーザ溶け込み部105は回転軸101方向に隣接する薄板102に及ぶことがある。この場合、レーザ溶け込み部105により、回転軸101方向に隣接する薄板102が電気的に導通する。これは渦電流を考慮すると望ましくない。従って、レーザ溶け込み部105が回転軸方向に隣接する薄板102に及ばないようにする必要がある。特に、ロータコア100外周は、エアギャップを介してステータコアと対向しているため、磁束の変化が激しい。そのため、レーザ溶け込み部105により、回転軸101方向に隣接する薄板102が電気的に導通した場合、渦電流の影響が大きくなる。
図11は、PMモータに用いられる、従来の第2例のロータコア110である。図11(a)はロータコア110の平面図、図11(b)はロータコア110の正面図である。ロータコア110は、強磁性体からなる、円板が周方向に複数(図では6個)に分割された扇形の薄板112が、回転軸111方向に積層され、周方向に結合されてなる。薄板112の内部には、磁石116を挿入するための孔113が設けられる。ロータコア110においては、2個の磁石116が、薄板112が積層されてなる隣り合う2個のブロックに、極をそろえて収められる。そのため、ロータコア110は、極内(N極内およびS極内)で分割されている。
従来のロータコア100の場合と同様、薄板112の厚さ誤差とレーザの位置決め誤差が重なると、図11(b)に示すように、レーザ溶け込み部115の位置は回転軸方向にばらつくおそれがある。その場合、レーザ溶け込み部115は回転軸方向に隣接する薄板112に及び、回転軸方向に隣接する薄板112が電気的に導通することがある。これは渦電流を考慮すると望ましくない。
特許文献1、2に記載されたロータコアでは、積層された薄板の外周の一部を、回転軸方向に連続的にレーザ溶接する。従って、レーザ溶け込み部は回転軸方向に隣接する薄板に及び、薄板は回転軸方向に電気的に導通すると推測される。特許文献1、2では、回転軸方向の導通を抑えるような特別な方策は、採られていないようである。そのため特許文献1、2に記載されたロータコアには、渦電流による性能低下のおそれがある。
特開2003−304670号公報 特開2002−209345号公報
従来のロータコア100、110では、薄板102、112の厚さ誤差とレーザの位置決め誤差が累積して、レーザ溶け込み部105、115の位置が回転軸方向にばらつき、回転軸方向に隣接する薄板102、112に、レーザ溶け込み部105、115が及ぶことがある。この場合、回転軸方向に隣接する薄板102、112が電気的に導通するおそれがある。これは渦電流を考慮すると望ましくない。
本発明の目的は、薄板の厚さ誤差とレーザの位置決め誤差が従来と変わらない場合でも、回転軸方向に隣接する薄板にレーザ溶け込み部が及ばず、回転軸方向に隣接する薄板との電気絶縁性が維持されるロータコアを実現することである。
(1)本発明は、円板を周方向に複数に分割してなる薄板が、回転軸方向に積層され、周方向に結合されてなるロータコアである。薄板は、外周または内周の分割部にレーザ溶接部を備える。薄板は、外周または内周の非分割部に、外周または内周から、後退または突出した非溶接部を備える。レーザ溶接部と非溶接部は、回転軸方向に交互に配置される。
(2)本発明のロータコアでは、各薄板内において、レーザ溶接の溶け込み部は非溶接部に及ばない。
(3)本発明のロータコアでは、レーザ溶接部が、積層された各薄板へのスポット溶接により形成される。
(4)本発明のロータコアでは、レーザ溶接部が、回転軸方向の連続溶接により形成される。
(5)本発明のロータコアでは、レーザ溶接部が直線状または回転軸を中心とする円弧状であり、非溶接部が、レーザ溶接部より曲率半径の小さい凹形状である。
(6)本発明のロータコアでは、レーザ溶接部付近を除き、積層された薄板の分割境界面が、回転軸方向に同一面をなす。
(7)本発明のロータコアは、レーザ溶接部を極中心部に有する。
(8)本発明のロータコアは、レーザ溶接部を、極中心部と、回転方向反対側の極間部との間に有する。
(9)本発明のロータコアは、レーザ溶接部と磁石孔の間に溶接熱遮断空隙を有する。
(10)本発明のロータコアは、レーザ溶接部を極間部に有する。
(11)本発明のロータコアは、ロータ外周近傍の磁石孔端部に、溶接熱遮断空隙を有する。
(12)本発明のロータコアは、さらにレーザ溶接により回転軸と締結される。
(13)本発明のロータコアでは、レーザ溶接によりロータコア端部が回転軸と締結される。
(14)本発明のロータコアでは、ロータコア分割部のレーザ溶接と、ロータコア端部と回転軸のレーザ溶接が兼用される。
(15)本発明のモータは、上記のロータコアを備える。
(16)本発明のロータコアの製造方法は、
外周または内周の分割部にレーザ溶接部を有し、外周または内周の非分割部に、外周または内周から、後退または突出した非溶接部を有する、円板を周方向に複数に分割してなる薄板を準備するステップと、
前記レーザ溶接部と非溶接部が、回転軸方向に交互に配置されるように、前記薄板を積層するステップと、
積層された前記薄板を周方向に結合するステップと、
前記レーザ溶接部をスポット溶接するステップを含む。
(17)本発明のロータコアの製造方法は、
外周または内周の分割部にレーザ溶接部を有し、外周または内周の非分割部に、外周または内周から、後退または突出した非溶接部を有する、円板を周方向に複数に分割してなる薄板を準備するステップと、
前記レーザ溶接部と非溶接部が、回転軸方向に交互に配置されるように、前記薄板を積層するステップと、
積層された前記薄板を周方向に結合するステップと、
前記レーザ溶接部を連続溶接するステップを含む。
本発明により、薄板の厚さ誤差とレーザの位置決め誤差が従来と変わらない場合でも、回転軸方向に隣接する薄板にレーザ溶け込み部が及ばず、回転軸方向の隣接する薄板との電気絶縁性が維持されたロータコアが実現される。
(a)本発明のロータコアの平面図、(b)本発明のロータコアの正面図 (a)スポットレーザ溶接後の本発明のロータコアの平面図、(b)スポットレーザ溶接後の本発明のロータコアの正面図 (a)連続レーザ溶接後の本発明のロータコアの平面図、(b)連続レーザ溶接後の本発明のロータコアの正面図 (a)本発明のロータコアの平面図、(b)本発明のロータコアの正面図 (a)溶接熱遮断空隙を有する本発明のロータコアの平面図、(b)溶接熱遮断空隙を有する本発明のロータコアの正面図 (a)本発明のロータコアの平面図、(b)本発明のロータコアの正面図 (a)本発明のロータコアの平面図、(b)本発明のロータコアの正面図 (a)本発明のロータコアの平面図、(b)本発明のロータコアの断面図 (a)本発明のロータコアの平面図、(b)本発明のロータコアの断面図、(c)本発明のロータコアの正面図 (a)スポットレーザ溶接後の従来のロータコアの平面図、(b)スポットレーザ溶接後の従来のロータコアの正面図 (a)スポットレーザ溶接後の従来のロータコアの平面図、(b)スポットレーザ溶接後の従来のロータコアの正面図
本発明のロータコアは、円板を周方向に複数に分割してなる薄板が、回転軸方向に積層され、周方向に結合されてなる。薄板は、外周または内周の分割部にレーザ溶接部を備える。薄板は、外周または内周の非分割部に、外周または内周から、後退または突出した非溶接部を備える。レーザ溶接部と非溶接部は、回転軸方向に交互に配置される。
本発明のロータコアにおいては、レーザ照射位置が回転軸方向にばらついても、レーザ溶け込み部は隣接する回転軸方向の薄板に及ばない。例えば、第1層のレーザ照射位置が下方にずれた場合、第2層の薄板も同時にレーザ照射される。第1層の薄板のレーザ溶接部には、レーザの焦点が合っているため、溶融してレーザ溶け込み部が形成される。しかし、第2層の薄板のレーザ照射部分は、ロータコアの外周または内周から後退した凹形状(または突出した凸形状)の非溶接部であるため、レーザの焦点が合わない。このため、第2層の非溶接部はレーザが照射されても溶融しない。従って、レーザ照射位置が下方にずれても、レーザ溶け込み部は第1層の薄板のみに形成される。その結果、第1層の薄板と第2層の薄板の電気的絶縁が維持される。
レーザ溶接部の形状は、ロータコアの外周(回転軸を中心とする円弧状)または内周(回転軸を中心とする円弧状)、あるいはロータコアの外周の接線(直線状)または内周の接線(直線状)が適当である。非溶接部は、レーザの焦点が合わなければよいので、ロータコアの外周あるいは内周から後退した凹形状でもよいし、ロータコアの内周から突出した凸形状でもよい。非溶接部の形状には、円弧状、矩形状などがあり、特に限定はされない。非溶接部が円弧状(円弧に近い形状も含む)の場合、その円弧の曲率半径は、レーザ溶接部の曲率半径より小さいことが望ましい。
図1は、本発明の第1例のロータコア10である。図1(a)はロータコア10の平面図、図1(b)はロータコア10の正面図である。本発明のロータコア10は、強磁性体からなる、円板が周方向に複数(図では6個)に分割された扇形の薄板12が、回転軸11方向に積層され、周方向に結合されてなる。薄板12の内部には、磁石14を挿入するための孔13が設けられる。ロータコア10においては、2個の磁石14が、積層された薄板12の隣り合う2個のブロックに、極をそろえて収められる。そのため、ロータコア10は極内(N極内およびS極内)で分割されている。
図1(a)では、ロータコア10の分割線は複数の直線の組合せ(折れ線)であるが、分割線は適当な曲線でもよい。薄板12の表面は薄い絶縁膜で覆われているため、回転軸方向に隣接する薄板12どうしは、電気的に絶縁されている。
第1層の薄板12aと第2層の薄板12bは、分割部すなわちレーザ溶接部15、16付近の形状が異なる。第3層の薄板12cは、第1層の薄板12aと同じ形状であり、第4層の薄板12dは、第2層の薄板12bと同じ形状である。第5層以後も、奇数層は第1層の薄板12aと同じ形状であり、偶数層は第2層の薄板12bと同じ形状である。
第1層の薄板12aは、レーザ溶接部15と非溶接部17を備える。第2層の薄板12bは、レーザ溶接部16と非溶接部18を備える。第3層以降の薄板12c、12d、...も、奇数層はレーザ溶接部15と非溶接部17を備え、偶数層はレーザ溶接部16と非溶接部18を備える。
非溶接部17、18は、ロータコア10の外周から後退した凹形状である。非溶接部17の凹み量h1および非溶接部18の凹み量h2は、凹みによりレーザの焦点が外れ、凹み内部がレーザに照射されても、溶融しないように設定される。
非溶接部17の凹み量h1および非溶接部18の凹み量h2は、望ましくは、同じ値に設定される。これにより、奇数層の薄板12a、12c、...と、偶数層の薄板12b、12d、...は線対称形となる。従って、同一形状の薄板12を、表、裏、表、裏、...と積層して、ロータコア10を形成することができる。このようにすると薄板の打ち抜き金型が1種類で済む。
第1層の薄板12aのレーザ溶接部15の中心と、第2層の薄板12bの非溶接部18の中心は、回転軸11方向に一致する。第1層の薄板12aの非溶接部17の中心と、第2層の薄板12bのレーザ溶接部16の中心は、回転軸11方向に一致する。この関係は、第3層以降の薄板12c、12d、...についても同様である。
薄板12のレーザ溶接部15、16がレーザ溶接される。図1は、レーザ溶接部15、16がレーザ溶接される前の図である。
第1層の薄板12a、第2層の薄板12b、第3層の薄板12c、第4層の薄板12d、...の回転軸11側の分割境界19は、積層されたとき、回転軸方向に一つの面をなすように設定される。これにより、ロータコア10の分割面の精度向上が図れる。また、ロータコア10の分割箇所が異なることにより薄板の積層方向に流れる磁束(垂直磁束)の低減が実現される。
図2は、本発明のロータコア10のレーザ溶接後の図である。図2(a)は、ロータコア10の平面図、図2(b)は、ロータコア10の正面図である。図2はスポット溶接の場合である。
ロータコア10は、厚さ0.3mm〜0.5mm程度の薄板12a、12b、12c、12d、...が、200枚〜300枚程度積層されて形成される。そのため、ロータコア10全体では、薄板12a、12b、12c、12d、...の僅かな厚さの誤差が累積され、厚さ方向の累積誤差が一枚の薄板の厚さを超えることもある。さらに、レーザの位置決め誤差もある。
薄板12a、12b、12c、12d、...の厚さ誤差とレーザの位置決め誤差が重なると、図2(b)に示すように、レーザ溶け込み部20、21の位置は回転軸方向にばらつくことがある。しかし図2(b)に示すように、本発明のロータコア10においては、レーザ溶け込み部20、21の位置が回転軸方向にばらついても、レーザ溶け込み部20、21は回転軸方向に隣接する薄板には及ばない。
図2(b)では、第1層の薄板12aのレーザ溶け込み部20は下方にずれている。その原因はレーザ照射位置が下方にずれているためである。そのため第1層の薄板12aと第2層の薄板12bは、同時にレーザ照射される。第1層の薄板12aのレーザ溶接部15には、レーザの焦点が合っているため、溶融してレーザ溶け込み部20が形成される。しかし、第2層の薄板12bのレーザ照射部分は、ロータコア10の外周から後退した凹形状の非溶接部18であるため、レーザの焦点が合わない。このため、第2層の薄板12bの非溶接部18はレーザが照射されても溶融しない。従って、レーザ照射位置は下方にずれているが、レーザ溶け込み部20は第2層の薄板12bには形成されない。その結果、第1層の薄板12aと第2層の薄板12bの電気的絶縁が維持される。
同様に、レーザ照射位置が回転軸方向にずれても、第2層の薄板12bのレーザ溶け込み部21は、第1層の薄板12aおよび第3層の薄板12cに及ばない。従って、第2層の薄板12bのレーザ照射により、第2層の薄板12bと、第1層の薄板12aおよび第3層の薄板12cとの間の電気的絶縁が破壊されることはない。
同様のことが、ロータコア10を形成する全ての薄板12a、12b、12c、12d、...について言える。従って、レーザ照射位置が回転軸方向にずれても、全ての薄板12a、12b、12c、12d、...間の回転軸11方向の絶縁は維持される。
1枚の薄板(例えば薄板12a)の中で、レーザ溶け込み部20が非溶接部17に達すると、非溶接部17が溶融して、回転軸方向に隣接する薄板との絶縁が失われるおそれがある。そのため、レーザ溶け込み部20が非溶接部17に及ばない距離まで、レーザ溶接部15と非溶接部17は離される。同様に、レーザ溶け込み部21が非溶接部18に及ばない距離まで、レーザ溶接部16と非溶接部18は離される。
薄板12a、12b、12c、12d、...を積層してなるブロックは、回転軸11とレーザ溶接部24により溶接固定されてもよい。レーザ溶接部24は、望ましくは、ロータコア10の端部(図2(b)での上端、下端)に設けられる。ロータコア10の分割部のレーザ溶接と、ロータコア10の端部とのレーザ溶接を兼用することもできる。このとき、回転軸11周辺までは磁束の変化が及ばないので、溶接部と非溶接部を設ける必要は無い。ロータコア10の外周が溶接されていることを前提として、ロータコア10の端部の1枚の薄板のみを、回転軸11と溶接すれば十分である。
レーザ照射位置が回転軸方向にずれても、回転軸方向に隣接する薄板の絶縁が維持される原理を利用すると、レーザはスポット照射ではなく、回転軸方向の連続照射でもよい。連続照射の方がスポット照射より制御が容易である。
図3は、本発明のロータコア10において、回転軸方向に連続的にレーザ溶接した場合の図である。図3(a)はロータコア10の平面図、図3(b)はロータコア10の正面図である。図2のスポット溶接の場合とは異なり、レーザを回転軸方向に移動させるとき、レーザの強度は一定でもよい。
レーザが回転軸方向(図3(b)では下方)に移動しながら、第1層の薄板12aのレーザ溶接部15を照射すると、レーザ溶接部15にレーザの焦点が合うため、レーザ溶接部15は溶融し、レーザ溶け込み部22が形成される。次にレーザが第2層の薄板12bに移動すると、レーザ照射部分は、ロータコア10の外周から後退した凹形状の非溶接部18であるため、レーザの焦点が合わない。このため、非溶接部18はレーザが照射されても溶融しない。従って、レーザが第2層の薄板12bを下方に移動しながら照射しても、第2層の薄板12bにはレーザ溶け込み部が形成されない。
次にレーザが回転軸方向に移動しながら、第3層の薄板12cのレーザ溶接部15を照射すると、レーザ溶接部15に焦点が合うため、レーザ溶接部15は溶融し、レーザ溶け込み部22が形成される。
レーザが第4層の薄板12dに移動すると、レーザ照射部分は、凹形状の非溶接部18であるため、レーザの焦点が合わない。このため、レーザが第4層の薄板12cを下方に移動しながら照射しても、第4層の薄板12dにはレーザ溶け込み部が形成されない。
このようにして、第1層の薄板12aのレーザ溶接部15、第3層の薄板12cのレーザ溶接部15など、奇数層の薄板12a、12c、...のレーザ溶接部15にはレーザ溶け込み部22が形成される。しかし偶数層の薄板12b、12d、...にはレーザ溶け込み部が形成されない。
次にレーザの照射ラインを、第2層の薄板12bのレーザ溶接部16に移動させて、レーザを回転軸方向(図3(b)では下方)に移動させる。上記と同様にして、第2層の薄板12bのレーザ溶接部16にはレーザ溶け込み部23が形成される。第1層の薄板12a、第3層の薄板12cにはレーザ溶け込み部が形成されない。これを繰り返して、第2層の薄板12bのレーザ溶接部16、第4層の薄板12dのレーザ溶接部16など、偶数層の薄板12b、12d、...のレーザ溶接部16のレーザ溶け込み部23が形成される。しかし奇数層の薄板12a、12c、...にはレーザ溶け込み部が形成されない。
1枚の薄板(例えば薄板12a)の中で、レーザ溶け込み部22が非溶接部17に達すると、非溶接部17が溶融して、回転軸方向に隣接する薄板12a、12b、12c、12d、...の絶縁が失われるおそれがある。そのため、レーザ溶け込み部22が非溶接部17に及ばない距離に、レーザ溶接部15と非溶接部17は離される。同様に、レーザ溶け込み部23が非溶接部18に及ばない距離に、レーザ溶接部16と非溶接部18は離される。
図4は、本発明の第2例のロータコア30である。図4(a)はロータコア30の平面図、図4(b)はロータコア30の正面図である。ロータコア30は、強磁性体からなる、円板を周方向に複数(図では6個)に分割してなる扇形の薄板31が、回転軸11方向に積層され、周方向に結合されてなる。薄板31の内部には、磁石32を挿入するための孔33が設けられる。ロータコア30においては、2個の磁石32が、積層された薄板31の隣り合う2個のブロックに、極をそろえて収められる。そのため、ロータコア30は極内(N極内およびS極内)で分割されている。
ロータコア30の特徴は、極中心部34(磁束密度の高い部分)を避けて、ロータコア30を分割していることである。これにより、ロータコア30の磁束利用効率が高くなる。このため、レーザ溶接部35、36、および非溶接部37、38は、極中心部34と、回転方向39反対側の極間部40との間に設けられる。永久磁石をロータコア内部に埋設した埋め込み磁石モータにおいては、ロータコア表面付近において、磁石の磁束が回転方向に集中するからである。なお、図4(a)では、ロータコア30の分割線は複数の直線の組合せ(折れ線)であるが、分割線は適当な曲線でもよい。
図5(a)は、本発明のロータコア10に溶接熱遮断空隙25を設けた場合の平面図である。図5(b)は、本発明のロータコア30に溶接熱遮断空隙41を設けた場合の平面図である。図5(a)のように、ロータコア10の、レーザ溶接部15、16と、磁石14の孔13との間に、溶接熱遮断空隙25を設けると、レーザ溶接の熱が磁石14に伝わり難くなり、熱による磁石14の劣化が抑えられる。また、図5(b)のように、ロータコア30の、レーザ溶接部35、36と、磁石32の孔33との間に、溶接熱遮断空隙41を設けると、レーザ溶接の熱が磁石32に伝わり難くなり、熱による磁石32の劣化が抑えられる。
図6は、本発明の第3例のロータコア50である。図6(a)はロータコア50の平面図、図6(b)はロータコア50の正面図である。ロータコア50は、強磁性体からなる、円板が周方向に複数(図では4個)に分割された扇形の薄板51が、回転軸11方向に積層され、周方向に結合されてなる。薄板51の内部には、磁石52を挿入するための孔53が設けられる。ロータコア50においては、1個の磁石52が、薄板51が積層されてなる1個のブロックに収められる。そのため、ロータコア50は、極間(N極とS極の間)で分割されている。この構成においては、磁石埋設用の孔53が分割されないので、磁石52を遠心力に対して保持する強度が大きくなる。
ロータコア50の分割部の周近傍に、レーザ溶接部54、55と、非溶接部56、57が設けられる。ロータコア50においては、ロータコア50外周近傍の、磁石52の孔53の端部に、孔53の延長として、溶接熱遮断空隙58が設けられる。溶接熱遮断空隙58により、レーザ溶接の熱が磁石52に伝わり難くなり、熱による磁石52の劣化が抑えられる。溶接熱遮断空隙58には、磁石52の磁束が、磁石52の端部において短絡するのを防止する機能もある。
図7は、本発明の第4例のロータコア60である。図7(a)はロータコア60の平面図、図7(b)はロータコア60の正面図である。ロータコア10、30、50はインナーロータであったが、ロータコア60はアウターロータである。ロータコア60は、強磁性体からなる、ドーナツ形の円板が周方向に複数(図では10個)に分割された薄板61が、回転軸11方向に積層され、周方向に結合されてなる。薄板61の内部には、磁石62を挿入するための孔63が設けられる。ロータコア60においては、1個の磁石62が、薄板61が積層されてなる1個のブロックに収められる。そのため、ロータコア60は、極間(N極とS極の間)で分割されている。ロータコア60の外周の分割部分に、レーザ溶接部64、65と非溶接部66、67が設けられる。
レーザを回転軸11方向に移動させながら、スポット溶接あるいは連続溶接したとき、レーザ溶接部64、65にはレーザ溶け込み部が形成される。非溶接部66、67にはレーザが照射されても、レーザ溶け込み部が形成されない。
図8は、本発明の第5例のロータコア70である。図8(a)はロータコア70の平面図、図8(b)はロータコア70のA−A断面図である。ロータコア70はアウターロータである。ロータコア70は、強磁性体からなる、ドーナツ形の円板が周方向に複数(図では10個)に分割された薄板71が、回転軸11方向に積層され、周方向に結合されてなる。薄板71の内部には、磁石72を挿入するための孔73が設けられる。ロータコア70においては、1個の磁石72が、薄板71が積層されてなる2個のブロックに半分ずつ収められる。そのため、ロータコア70は、極内(N極またはS極の内部)で分割されている。ロータコア70の内周の分割部分に、レーザ溶接部74、75と非溶接部76、77が設けられる。
レーザを回転軸11方向に移動させながら、スポット溶接あるいは連続溶接したとき、レーザ溶接部74、75にはレーザ溶け込み部が形成される。非溶接部76、77にはレーザが照射されても、レーザ溶け込み部が形成されない。
図9は、本発明の第6例のロータコア80である。図9(a)はロータコア80の平面図、図9(b)はロータコア80のA−A断面図、図9(c)はロータコア80の正面図である。ロータコア80はアウターロータである。ロータコア80は、強磁性体からなる、ドーナツ形の円板が周方向に複数(図では10個)に分割された薄板81が、回転軸11方向に積層され、周方向に結合されてなる。薄板81の内部には、磁石82を挿入するための孔83が設けられる。ロータコア80においては、1個の磁石82が、薄板81が積層されてなる2個のブロックに半分ずつ収められる。そのため、ロータコア80は、極内(N極またはS極の内部)で分割されている。ロータコア80の内周の分割部分に、レーザ溶接部84、85と非溶接部86、87が設けられる。ロータコア80の外周の分割部分に、レーザ溶接部88、89と非溶接部90、91が設けられる。
レーザを回転軸11方向に移動させながら、スポット溶接あるいは連続溶接したとき、レーザ溶接部84、85、88、89にはレーザ溶け込み部が形成される。非溶接部86、87、90、91にはレーザが照射されても、レーザ溶け込み部が形成されない。
本発明のロータコアは、PMモータ、シンクロナスリラクタンスモータ、スイッチドリラクタンスモータに好適に用いられる。
10 ロータコア
11 回転軸
12 薄板
12a、12b、12c、12d 薄板
13 孔
14 磁石
15、16 レーザ溶接部
17、18 非溶接部
19 分割境界
20、21、22、23 レーザ溶け込み部
24 レーザ溶接部
25 溶接熱遮断空隙
30 ロータコア
31 薄板
32 磁石
33 孔
34 極中心部
35、36 レーザ溶接部
37、38 非溶接部
39 回転方向
40 極間部
41 溶接熱遮断空隙
50 ロータコア
51 薄板
52 磁石
53 孔
54、55 レーザ溶接部
56、57 非溶接部
58 溶接熱遮断空隙
60 ロータコア
61 薄板
62 磁石
63 孔
64、65 レーザ溶接部
66、67 非溶接部
70 ロータコア
71 薄板
72 磁石
73 孔
74、75 レーザ溶接部
76、77 非溶接部
80 ロータコア
81 薄板
82 磁石
83 孔
84、85 レーザ溶接部
86、87 非溶接部
88、89 レーザ溶接部
90、91 非溶接部
100 ロータコア
101 回転軸
102 薄板
103 孔
104 レーザ溶接部
105 レーザ溶け込み部
106 磁石
110 ロータコア
111 回転軸
112 薄板
113 孔
115 レーザ溶け込み部
116 磁石

Claims (17)

  1. 円板を周方向に複数に分割してなる薄板が、回転軸方向に積層され、周方向に結合されてなるロータコアであって、
    前記薄板の外周または内周の分割部に備えられたレーザ溶接部と、
    前記薄板の外周または内周の非分割部に、外周または内周から、後退または突出した非溶接部を備え、
    前記レーザ溶接部と前記非溶接部は、前記回転軸方向に交互に配置されたロータコア。
  2. 前記各薄板内において、前記レーザ溶接の溶け込み部は前記非溶接部に及ばない、請求項1に記載されたロータコア。
  3. 前記レーザ溶接部が、積層された各薄板へのスポット溶接により形成された、請求項1または2に記載されたロータコア。
  4. 前記レーザ溶接部が、前記回転軸方向の連続溶接により形成された、請求項1または2に記載されたロータコア。
  5. 前記レーザ溶接部が直線状または前記回転軸を中心とする円弧状であり、前記非溶接部が、前記レーザ溶接部より曲率半径の小さい凹形状である、請求項1から4のいずれかに記載されたロータコア。
  6. 前記レーザ溶接部付近を除き、積層された前記薄板の分割境界面が、回転軸方向に同一面をなす、請求項1から5のいずれかに記載されたロータコア。
  7. 前記レーザ溶接部を極中心部に有する、請求項1から6のいずれかに記載されたロータコア。
  8. 前記レーザ溶接部を、極中心部と、回転方向反対側の極間部との間に有する、請求項1から6のいずれかに記載されたロータコア。
  9. 前記レーザ溶接部と磁石孔の間に溶接熱遮断空隙を有する、請求項1から8のいずれかに記載されたロータコア。
  10. 前記レーザ溶接部を極間部に有する、請求項1から6のいずれか、または請求項9に記載されたロータコア。
  11. ロータ外周近傍の磁石孔端部に、溶接熱遮断空隙を有する、請求項10に記載されたロータコア。
  12. さらにレーザ溶接により前記回転軸と締結された、請求項1から11のいずれかに記載されたロータコア。
  13. レーザ溶接によりロータコア端部が前記回転軸と締結された、請求項12に記載されたロータコア。
  14. ロータコア分割部のレーザ溶接と、ロータコア端部と回転軸のレーザ溶接が兼用された、請求項13に記載されたロータコア。
  15. 請求項1から14のいずれかに記載されたロータコアを備えたモータ。
  16. 外周または内周の分割部にレーザ溶接部を有し、外周または内周の非分割部に、外周または内周から、後退または突出した非溶接部を有する、円板を周方向に複数に分割してなる薄板を準備するステップと、
    前記レーザ溶接部と非溶接部が、回転軸方向に交互に配置されるように、前記薄板を積層するステップと、
    積層された前記薄板を周方向に結合するステップと、
    前記レーザ溶接部をスポット溶接するステップを含むロータコアの製造方法。
  17. 外周または内周の分割部にレーザ溶接部を有し、外周または内周の非分割部に、外周または内周から、後退または突出した非溶接部を有する、円板を周方向に複数に分割してなる薄板を準備するステップと、
    前記レーザ溶接部と非溶接部が、回転軸方向に交互に配置されるように、前記薄板を積層するステップと、
    積層された前記薄板を周方向に結合するステップと、
    前記レーザ溶接部を前記回転軸方向に連続溶接するステップを含むロータコアの製造方法。
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