JP2021141827A - フライ食品 - Google Patents

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裕亮 多田
伸季 薮野
Nobuki Yabuno
伸季 薮野
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Abstract

【課題】コロッケ、クリームコロッケ、メンチカツ、揚げ餃子、揚げシュウマイ、揚げワンタン、揚げ饅頭、揚げパン、ドーナツ、パイ、天麩羅、フリッター等のフライ食品において、衣の破裂を防止する等の保形性に優れ、食感にも優れるフライ食品の提供。【解決手段】セルロースナノファイバー、好ましくはカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含有させたフライ食品。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースナノファイバーを含むフライ食品に関する。
コロッケやクリームコロッケのようなフライ食品は油ちょうする際に衣の破裂が生じることがある。
クリームコロッケの食感を損なうことなく、衣の破裂を防止するために、ホワイトソース具材中にヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び/またはヒドロキシプロピルセルロースを含有させることが提案されている(特許文献1)。また、フライ食品の中種中にローカストビーンガム、グアーガム、キサンタンガムを含有させることが提案されている(特許文献2)。
特開2008−154578号公報 WO2013/108910号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2の方法においては、フライ食品の衣の破裂を防止が不十分であり、また、食感が低下することがあった。
そこで、本発明は、衣の破裂を防止し、かつ食感に優れたフライ食品を提供することを目的とする。
本発明者は、かかる目的を達成するため鋭意検討した結果、セルロースナノファイバー(CNF)を配合することが有効であることを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下を提供する。
(1) セルロースナノファイバーを含むフライ食品。
(2) セルロースナノファイバーがアニオン変性セルロースナノファイバーである(1)に記載のフライ食品。
(3) アニオン変性セルロースナノファイバーがカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーまたはカルボキシアルキル基を有するセルロースナノファイバーである(1)ないし(2)に記載のフライ食品。
(4) アニオン変性セルロースナノファイバーがカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50の範囲内であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーである(3)に記載のフライ食品。
(5) さらにカルボキシメチル化セルロースを含有する(1)〜(4)のいずれかに記載のフライ食品。
(6) 前記フライ食品が、コロッケ、クリームコロッケ、メンチカツ、揚げ餃子、揚げシュウマイ、揚げワンタン、揚げ饅頭、揚げパン、ドーナツ、パイ、天麩羅、フリッターからなる群より選ばれた1種である、(1)〜(5)のいずれかに記載のフライ食品。
本発明によれば、衣の破裂を防止する等の保形性に優れ、食感にも優れるフライ食品を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「〜」は端値を含む。すなわち「X〜Y」はその両端の値XおよびYを含む。
本発明のフライ食品とは、衣材、すなわちフライ食品用バッター液を用いて製造されるものである。バッター液は、通常、小麦粉、片栗粉、澱粉などの粉体、あるいは市販のバッターミックスと水を含み、フライ食品の種類に応じて、パン粉、卵、調味料等を使用することができる。フライ食品としては、例えば、コロッケ、クリームコロッケ、メンチカツ、揚げ餃子、揚げシュウマイ、揚げワンタン、揚げ饅頭、揚げパン、ドーナツ、パイ、天麩羅、フリッター等を挙げることができる。
フライ食品は、通常、フライの種類に応じた中種と、該中種の外面に適用される衣材から構成される。本発明のセルロースナノファイバーは、フライ食品の中種に含まれていてもよいし、衣材に含まれていてもよいし、中種及び衣材の双方に含まれていてもよい。油ちょう中の破裂を防止できることからは、中種に含まれることが好ましい。また、フライ食品がクリームコロッケである場合、口どけ感が向上するので、本発明のセルロースナノファイバーは、中種に含有させることが好ましい。本発明のセルロースナノファイバーを含有するフライ食品は、良好な保形性を有し得る。
本発明のフライ食品は、本発明のセルロースナノファイバーを任意の含有量で含有させることができるが、セルロースナノファイバーの有効量を考慮して含有させることが好ましい。食品に対するセルロースナノファイバーの添加量は、好ましくは0.001〜2質量%である。添加量は、フライ食品の種類、目的とする品質及び物性に応じて、適宜調整できる。例えば、製造する加工食品がフライ食品のクリームコロッケである場合は0.05〜1.5質量%の範囲が挙げられる。上記添加量の下限よりセルロースナノファイバーの添加量が少ないと、衣材の破裂防止に対して十分な効果を与えることができないおそれがある。また、上記添加量の上限を超えると、食感が重くなる等の不都合が生じるおそれがある。
次に、本発明のフライ食品は中種として、コロッケ、クリームコロッケ、メンチかつ、揚げ饅頭、揚げパン、ドーナツ、パイなどに従来から用いられている中種を用いることができる。具体的にはコロッケやメンチかつなどの場合は、馬鈴薯、甘薯、玉葱、挽き肉、肉類、魚肉、ハム、ソーセージ、すり身等を混合したものや、これらの食材を用いたカレーなどが挙げられる。パンやパイなどの場合は、クリーム、スープ、さらにはカスタードクリームやジャム、餡などが挙げられる。
本発明のフライ食品の製造方法としては、通常の中種を製造する方法をそのまま使用することができる。例えば、中種を調製する際、セルロースナノファイバーを中種構成材料に添加・混合する、あるいはセルロースナノファイバーを予め水等の媒体に溶解し、その溶解物を中種構成材料に添加・混合し、中種を調製する。このようにして調製した中種をそのまま、あるいは所望により任意の形に成形した後、小麦粉、卵、パン粉、パン生地、パイ生地、バッター、春巻の皮等の皮膜をつけ、常法にてフライ、焼成あるいは電子レンジなどにより加熱調理することでフライ食品を得ることができる。
フライ食品としてクリームコロッケの場合、通常ホワイトソース具材に使用される原料、例えば、乳原料、油脂、澱粉、乳化剤、糖類、増粘多糖類・ゲル化剤などを使用することができる。
例えば、乳原料として、生乳、牛乳、特別牛乳、脱脂乳、加工乳、乳飲料、生クリーム、コンパウンドクリーム、濃縮調整乳、バター、脱脂粉乳、全脂粉乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、脱脂乳濃縮乳、発酵乳等などを挙げることができる。
油脂は、食用に使用できるものであれば特に制限されず、植物油脂、動物油脂あるいはこれらの分別油脂、硬化油脂、エステル交換油脂の中から一種、あるいは二種以上を併用して用いることができる。植物油脂の例としては、コーン油、綿実油、ヤシ油、パーム油、大豆油、ゴマ油、こめ油、サフラワー油、落花生油、菜種油、ひまわり油、カカオ脂、オリーブ油及びパーム核油、植物性ステロール、植物性スタノール、ステロールエステル、中鎖脂肪酸、動物油脂として、乳脂、豚脂、牛脂、魚油、獣脂等を挙げることができる。
澱粉としても特に制限はなく、小麦粉等の小麦由来の澱粉、ワキシーコーンスターチやコーンスターチ等のトウモロコシ由来の澱粉、タピオカ澱粉、サツマイモ由来の澱粉、ジャガイモ由来の澱粉、サゴヤシ由来の澱粉等やそれらの加工澱粉や澱粉加水分解物、還元澱粉分解物などを適宜選択して用いることができる。
乳化剤として、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸塩、ユッカ抽出物、サポニン、レシチン、ポリソルベート等を挙げることができる。
糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)等を挙げることができる。また、甘味料として、スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アリテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料等を使用することもできる。
増粘多糖類・ゲル化剤としては、例えば、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カードラン、アラビアガム、カラヤガム、ガティガム、サイリウムシードガム、ネイティブ型ジェランガム、タラガム、プルラン、ラムザンガム、マクロホモプシスガム、大豆多糖類(水溶性ヘミセルロース)、水溶性セルロースエーテル(メチルセルロースなど)やゼラチンなどを挙げることができる。
更には、必要に応じて、膨張剤、調味料、香料、色素、蛋白質、酸化防止剤、日持ち向
上剤、保存料その他の添加剤を添加しても構わない。
本発明のクリームコロッケは、セルロースナノファイバーを含有するホワイトソース具材を使用する以外は、常法により調製することができる。例えば、ホワイトソース具材の調製方法として、水に乳原料、小麦粉等の澱粉、調味料などの粉体混合物を加え攪拌溶解した後、攪拌しながら油脂及びセルロースナノファイバー、必要に応じて乳清タンパク質及び/又は脱アシル型ジェランガム及びカルシウム塩を加えて、攪拌しながら加温し、70〜90℃程度まで加温した後、全量補正したものを冷却して具材を調製する方法を挙げることができる。この具材を適量に分けて成型し、小麦粉、バッター、パン粉の順に適量塗布して、必要に応じて冷凍保存した後、油調して、クリームコロッケを調製する方法を例示することができるが、コロッケを調製できる方法であれば、特に限定されない。
(セルロースナノファイバー)
本発明において、セルロースナノファイバー(以下、CNFということがある。)は、セルロース系原料であるパルプなどがナノメートルレベルまで微細化されたもので、繊維幅が1〜500nm程度の微細繊維である。セルロースナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長は、原子間力顕微鏡(AFM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察した結果から得られる繊維径および繊維長を平均することによって得ることができる。まあ、セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は、通常50以上である。上限は特に限定されないが、通常は1000以下である。平均アスペクト比は、下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
セルロースナノファイバーは、パルプに機械的な力を加えて微細化することで得られ、未変性のセルロース、あるいは、カルボキシル化したセルロース(酸化セルロースとも呼ぶ)、カルボキシメチル化したセルロース、リン酸エステル基を導入したセルロースのようなアニオン変性セルロース、カチオン化したセルロースなどの変性セルロースを解繊することによって得ることができる。微細繊維の平均繊維長と平均繊維径は、酸化処理、解繊処理により調整することができる。本発明においては、カルボキシメチル化処理を行って得られたカルボキシメチル化セルロースを解繊して得られたカルボキシメチル化(CM化)セルロースナノファイバーを用いることが好ましい。
(セルロース原料)
本発明に用いるセルロースナノファイバーを製造するためのセルロース原料としては、例えば、植物性材料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ)、動物性材料(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))産生物等を起源とするものが挙げられる。パルプとしては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等が挙げられる。これらのすべてが使用できるが、植物または微生物由来のセルロース繊維が好ましく、植物由来のセルロース繊維がより好ましい。
(カルボキシメチル化)
本発明において、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを用いる場合、カルボキシメチル化したセルロースは、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシメチル化することにより得てもよいし、市販品を用いてもよい。いずれの場合も、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は0.01〜0.50であることが好ましい。そのようなカルボキシメチル化したセルロースを製造する方法の一例として次のような方法を挙げることができる。セルロースを発底原料にし、溶媒として3〜20質量倍の水または低級アルコールを使用する。具体的には水、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等を単独、あるいは2種以上を併用して使用できる。水と低級アルコールの混合溶媒を用いる場合、低級アルコールの混合割合は5〜95質量%程度である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0〜70℃、好ましくは10〜60℃で、反応時間を15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間としてマーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10.0倍モル添加し、反応温度30〜90℃、好ましくは40〜80℃で、反応時間を30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間としてエーテル化反応を行う。
<カルボキシメチル化セルロースナノファイバー>
本発明のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものである。すなわち、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの水分散体を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができるものである。また、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーをX線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができるものである。
<セルロースI型の結晶化度>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーにおけるセルロースの結晶化度は、結晶I型が40%以上であり、好ましくは50%以上である。セルロースI型の結晶化度が40%以上と高いと、水等の溶媒中で溶解せずに結晶構造を維持するセルロースの割合が高いため、チキソ性が高くなり(チキソトロピー)、増粘剤等の粘度調整用途に適するようになる。また、例えば、これに限定されないが、ゲル状の物質(例えば、食品や化粧品など)に添加した際に、優れた保形性を付与できるという利点が得られる。セルロースの結晶性は、マーセル化剤の濃度と処理時の温度、並びにカルボキシメチル化の度合によって制御できる。マーセル化及びカルボキシメチル化においては高濃度のアルカリが使用されるために、セルロースのI型結晶がII型に変換されやすいが、アルカリ(マーセル化剤)の使用量を調整するなどして変性の度合いを調整することによって、所望の結晶性を維持させることができる。セルロースI型の結晶化度の上限は特に限定されない。現実的には90%程度が上限となると考えられる。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのセルロースI型の結晶化度の測定方法は、以下の通りである:
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD−6000、島津製作所製)を用いて測定する。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10°〜30°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する。
Xc=(I002c―Ia)/I002c×100
Xc=セルロースI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6°、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5°、アモルファス部分の回折強度。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーにおけるI型結晶の割合は、ナノファイバーとする前のカルボキシメチル化セルロースにおけるものと、通常、同じである。
<カルボキシメチル置換度>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が、0.50以下である。カルボキシメチル置換度が0.50を超えると水へ溶解し、繊維形状を維持できなくなると考えられる。操業性を考慮すると当該置換度は0.01〜0.50であることが好ましく、0.02〜0.50であることがさらに好ましく、0.05〜0.40であることがさらに好ましく、0.10〜0.40であることがさらに好ましい。セルロースにカルボキシメチル基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発するため、ナノファイバーへと解繊することができるようになるが、無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01より小さいと、解繊が不十分となり、透明性の高いセルロースナノファイバーが得られない場合がある。なお、従来の水媒法では、カルボキシメチル置換度が0.20〜0.40の範囲では、セルロースI型の結晶化度が50%以上であるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーを得ることは困難であったが、本発明者らは、例えば後述する方法により、カルボキシメチル置換度が0.20〜0.40の範囲であり、セルロースI型の結晶化度が50%以上であるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーを製造できることを見出した。カルボキシメチル置換度は、反応させるカルボキシメチル化剤の添加量、マーセル化剤の量、水と有機溶媒の組成比率をコントロールすること等によって調整することができる。
本発明において無水グルコース単位とは、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味する。また、カルボキシメチル置換度(エーテル化度ともいう。)とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基のうちカルボキシメチルエーテル基に置換されているものの割合(1つのグルコース残基当たりのカルボキシメチルエーテル基の数)を示す。なお、カルボキシメチル置換度はDSと略すことがある。
カルボキシメチル置換度の測定方法は以下の通りである:
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振盪して、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの塩(CMC)をH−CMC(水素型カルボキシメチル化セルロースナノファイバー)に変換する。その絶乾H−CMCを1.5〜2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLでH−CMCを湿潤し、0.1N−NaOHを100mL加え、室温で3時間振盪する。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−HSOで過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってカルボキシメチル置換度(DS値)を算出する。
A=[(100×F’−0.1N−HSO(mL)×F)×0.1]/(H−CMC
の絶乾質量(g))
カルボキシメチル置換度=0.162×A/(1−0.058×A)
F’:0.1N−HSOのファクター
F:0.1N−NaOHのファクター。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーにおけるカルボキシメチル置換度は、ナノファイバーとする前のカルボキシメチル化セルロースにおけるカルボキシメチル置換度と、通常、同じである。
<繊維径、アスペクト比>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、ナノスケールの繊維径を有するものである。平均繊維径は、好ましくは3nm〜500nm、さらに好ましくは3nm〜150nm、さらに好ましくは3nm〜20nm、さらに好ましくは5nm〜19nm、さらに好ましくは5nm〜15nmである。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのアスペクト比は、特に限定されないが、350以下であることが好ましく、300以下であることがさらに好ましく、200以下であることがさらに好ましく、120以下であることがさらに好ましく、100以下であることがさらに好ましく、80以下であることがさらに好ましい。アスペクト比が350以下であると、繊維が過度に長すぎず、繊維同士の絡まり合いが少なくなり、セルロースナノファイバーの塊(ダマ)の発生を低減することができ、添加剤として使用するのに適する。また、流動性が高いので、高濃度でも使用しやすくなり、高固形分が要求される用途においても使いやすくなるという利点が得られる。アスペクト比の下限は、特に限定されないが、好ましくは25以上であり、さらに好ましくは30以上である。アスペクト比が25以上であると、その繊維状の形状から、チキソ性の向上といった効果が得られる。カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのアスペクト比は、カルボキシメチル化時の溶媒と水の混合比、薬品添加量、及びカルボキシメチル化の度合によって制御でき、また、例えば、後述する製法により製造することができる。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長は、径が20nm以下の場合は原子間力顕微鏡(AFM)、20nm以上の場合は電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析し、平均を算出することにより、測定することができる。また、アスペクト比は下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
(解繊)
セルロース原料の解繊は、セルロース原料に変性処理を施す前に行ってもよいし、後に行ってもよい。また、解繊は、一度に行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回の場合それぞれの解繊の時期はいつでもよい。
解繊に用いる装置は特に限定されないが、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧又は超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーがより好ましい。装置は、セルロース原料又は変性セルロース(通常は分散液)に強力なせん断力を印加できることが好ましい。装置が印加できる圧力は、50MPa以上が好ましく、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。装置は、セルロース原料又は変性セルロース(通常は分散液)に上記圧力を印加することができ、かつ強力なせん断力を印加できる、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーが好ましい。これにより、解繊を効率的に行うことができる。
セルロース原料の分散体に対して解繊を行う場合、分散体中のセルロース原料の固形分濃度は、通常は0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。これにより、セルロース繊維原料の量に対する液量が適量となり効率的である。上限は通常10質量%以下、好ましくは6質量%以下である。これにより流動性を保持することができる。
解繊(好ましくは高圧ホモジナイザーでの解繊)、又は必要に応じて解繊前に行う分散処理に先立ち、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理は、高速せん断ミキサーなどの混合、撹拌、乳化、分散装置を用いて行えばよい。
(乾燥)
本発明に用いるセルロースナノファイバーは、解繊後に得られる分散液の状態で使用することも可能であるが、必要に応じて乾燥し、また水に再分散して使用することもできる。乾燥方法は何ら限定されないが、例えば凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、ガラス板等に薄く伸展し乾燥する方法、流動床乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、起熱ファン式減圧乾燥法などの既知の方法を使用できる。乾燥後に必要に応じて、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等で粉砕しても良い。また、水への再分散の方法も特に限定されず、既知の分散装置を使用することができる。
本発明に用いるセルロースナノファイバーの形態は、分散液の状態であっても良いし、粉末状であっても良いが、フライ食品の製造時の作業性に優れる観点から、分散液の状態で用いることが好ましい。
本発明のセルロースナノファイバーは、必要に応じて、他の成分を含んでいてもよい。例えば、粉末を製造する際、乾燥前に、セルロースナノファイバーの分散体に水溶性高分子を共存させると、再分散性が向上するので、好ましい。
<水溶性高分子>
水溶性高分子としては、例えば、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース)、キサンタンガム、キシログルカン、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、澱粉、かたくり粉、クズ粉、コーンスターチ、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ポリデキストロース、ペクチン、キチン、水溶性キチン、キトサン、カゼイン、アルブミン、大豆蛋白溶解物、ペプトン、タマリンドガム、グァーガム、等が挙げられる。この中でも、セルロース誘導体は、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーとの親和性の点から好ましく、カルボキシメチルセルロース及びその塩は特に好ましい。カルボキシメチルセルロース及びその塩のような水溶性高分子は、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー同士の間に入りこみ、ナノファイバー間の距離を広げることで、再分散性を向上させると考えられる。また、水溶性のデキストリンはママコの抑制効果が高いため好ましい。
水溶性高分子として、カルボキシメチルセルロース又はその塩を用いる場合には、無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.55〜1.6のカルボキシメチルセルロースを用いることが好ましく、0.55〜1.1のものがより好ましく、0.65〜1.1のものがさらに好ましい。また、分子が長い(粘度が高い)ものの方が、ナノファイバー間の距離を広げる効果が高いので好ましい。また、カルボキシメチルセルロースの1質量%水溶液における25℃、60rpmでのB型粘度は、3mPa・s〜14000mPa・sが好ましく、7mPa・s〜14000mPa・sがより好ましく、1000mPa・s〜8000mPa・sがさらに好ましい。なお、ここでいう水溶性高分子としての「カルボキシメチルセルロース又はその塩」とは、水に完全に溶解するものであることから、上述の水中で繊維形状を確認することができるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーとは区別される。
水溶性高分子の配合量は、セルロースナノファイバー(絶乾固形分)に対して、5質量%〜300質量%であることが好ましく、20質量%〜300%質量がさらに好ましく、25質量%〜200質量%がさらに好ましく、25質量%〜60質量%がさらに好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(カルボキシメチル置換度の測定方法)
1)カルボキシメチル化セルロース繊維(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。
2)硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースにする。
3)水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。
4)80%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。
5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。
6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’−(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型CM化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型CM化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのH2SO4のファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
(平均繊維径、アスペクト比の測定方法)
CNFの平均繊維径および平均繊維長は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いてランダムに選んだ200本の繊維について解析した。アスペクト比は下記の式により算出した。
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
[実施例1]
(カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの調製)
回転数を100rpmに調節した5L容の二軸ニーダーに、イソプロパノール(IPA)1089部と、水酸化ナトリウム31部を水121部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量で200部仕込んだ。30℃で60分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつモノクロロ酢酸ナトリウム117部を添加し、30℃で30分間撹拌した後、30分かけて70℃に昇温し、70℃で60分間カルボキシメチル化反応をさせた。マーセル化反応時及びカルボキシメチル化反応時の反応媒中の水の割合は、10質量%である。反応終了後、中和し、65%含水メタノールで洗浄し、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度0.27、セルロースI型の結晶化度64%のカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。なお、カルボキシメチル置換度及びセルロースI型の結晶化度の測定方法は、先述の通りである。
得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を水に分散し、1%(w/v)水分散体とした。これを、150MPaの高圧ホモジナイザーで3回処理し、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの分散体を得た。得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、平均繊維径が3.2nm、アスペクト比が40であった。
得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを水で固形分0.7質量%の分散体とし、カルボキシメチルセルロース(日本製紙(株)製、商品名:F350HC−4、粘度(1質量%、25℃、60rpm)約3000mPa・s、カルボキシメチル置換度約0.90)を、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーに対して40質量%(すなわち、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの固形分を100質量部としたときにカルボキシメチルセルロースの固形分が40質量部となるように)添加し、TKホモミキサー(12,000rpm)で60分間攪拌した。
この分散体に、水酸化ナトリウム水溶液0.5質量%を加え、pHを9に調整した後、ドラム乾燥機D0405(カツラギ工業社製)のドラム表面に塗布し、140℃で1分間乾燥した。得られた乾燥物を掻き取り、次いで、衝撃式ミルを用いて1時間あたり10kgの速さで乾燥物を粉砕し、水分量5質量%の乾燥粉砕物を得た。得られた粉砕物を、30メッシュを用いて分級し、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー及びカルボキシメチルセルロースを含む粉体(CNF粉体1)を得た。
(クリームコロッケの製造)
TKホモミクサー(特殊機化工業社製)を用いて、水を10000rpmで撹拌しているところに、上記で得られたCNF粉体1を投入し、30分間撹拌することにより、1.5重量%のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの水分散液を得た。小麦粉6部、脱脂粉乳5.4部、サラダ油3部、マーガリン2部、ゼラチン1部、食塩0.5部、ホワイトペッパー0.1部、牛乳30部、上記で得られた1.5質量%CM化セルロースナノファイバー水分散液を33.3部(固形分0.5部)、水37部をステンレスビーカーに入れ、約85℃に加温し、TKホモミキサーを用いて5000rpmで撹拌してホワイトソース具材を調整した。
続いて、上記ホワイトソース具材を20gに小分けし、小麦粉、パン粉を適量塗布して、成形し、−40℃で一晩急速凍結保存した。
上記の凍結保存処理物を180℃で、4分間油ちょうしてクリームコロッケを製造した。
[実施例2]
実施例1で得られたCNF粉体1を3部、デキストリン(松谷化学製、商品名:TK−16、分子量約1020)7部を混合し、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、カルボキシメチルセルロース及びデキストリンを含む粉体(CNF粉体2)を得た。
上記で得られたCNF粉体2を5.6部(カルボキシメチル化セルロースナノファイバーとして0.5部)添加した以外は、実施例1と同様にしてホワイトソース具材を製造した。さらに、実施例1と同様にしてクリームコロッケを製造した。
[比較例1]
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの水分散液に代えて、ステンレスビーカーに水33.3部を入れた以外は、実施例1と同様にしてホワイトソース具材を製造した。さらに、実施例1と同様にしてクリームコロッケを製造した。
実施例1〜2、比較例1で製造したクリームコロッケについて、衣の破裂の状態を目視し、口どけについては試食して下記の評価を行い、結果を表1に示した。
<衣の破裂>
クリームコロッケを10個ずつ油ちょうし、油ちょう中に衣が破裂する個数を計測した。
<口どけ>
10人のパネラーにクリームコロッケを試食させ、食感のよさを1〜10点で評価し、平均値で評価した。
◎:8〜10点、△:4〜7点、×:1〜3
Figure 2021141827
表1に示す通り、実施例1、2のセルロースナノファイバーを含むクリームコロッケは、セルロースナノファイバーを含まない比較例1に比較して、衣が破裂した個数が少なく、口どけにも優れていた。

Claims (6)

  1. セルロースナノファイバーを含むフライ食品。
  2. セルロースナノファイバーがアニオン変性セルロースナノファイバーである請求項1記載のフライ食品。
  3. アニオン変性セルロースナノファイバーがカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーまたはカルボキシアルキル基を有するセルロースナノファイバーである請求項1ないし2記載のフライ食品。
  4. アニオン変性セルロースナノファイバーがカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50の範囲内であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーである請求項3に記載のフライ食品。
  5. さらにカルボキシメチル化セルロースを含有する請求項1〜4のいずれかに記載のフライ食品。
  6. フライ食品が、コロッケ、クリームコロッケ、メンチカツ、揚げ餃子、揚げシュウマイ、揚げワンタン、揚げ饅頭、揚げパン、ドーナツ、パイ、天麩羅、フリッターからなる群より選ばれた1種である、請求項1〜5のいずれかに記載のフライ食品。
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