以下、本発明に係る運動案内装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の実施形態に係る運動案内装置の斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る運動案内装置の分解図であり、図3は、本発明の実施形態に係る運動案内装置の転動体及び歯車を取り付けた保持器の斜視図であり、図4は、本発明の実施形態に係る運動案内装置の保持器の斜視図であり、図5は、本発明の実施形態に係る運動案内装置の歯車の取付状態を説明するための拡大図であり、図6は、歯車の回転軸を保持器本体に組み付ける方法を説明するための図であり、図7は、本実施形態に係る運動案内装置の歯車の取付状態の変形例を説明するための拡大図であり、図8は、転動体を保持する脱落防止手段の構造を説明するための図であり、図9は、転動体を保持する脱落防止手段の第1の変形例を説明するための図であり、図10は、転動体を保持する脱落防止手段の第2の変形例を説明するための図である。
図1に示すように、本実施形態に係る運動案内装置1は、長手方向に沿って互いに相対移動可能な一対の軌道部材10,10を備えた、所謂クロスローラガイドである。運動案内装置1は、軌道部材10に形成された固定孔14にボルトなどの締結手段によって相手部材に固定される。なお、軌道部材10は、互いに同一の形状の軌道部材10を上下を反転させることで組み合わされている。このように互いに同一形状の軌道部材10を用いることで、部品点数を低減してコスト抑制を図ることができる。
図2に示すように、本実施形態に係る運動案内装置1は、長手方向に沿って延びる転走面11が形成された軌道部材10と、転走面11に沿って配列される複数の転動体20と、該転動体20を所定の間隔で保持する保持器21とを備えている。転走面11は、略90°に形成されたV字状の溝として形成されており、該転走面11に転動体20が転走可能に配列されている。
軌道部材10の転走面11の軌道部材10が互いに対向する面のうち、転走面11以外の面には、ラック部12が軌道部材10と一体に形成されている。本実施形態に係る運動案内装置1では、転走面11と並列して形成されたラック取付面にラック部12をインサート成形などの一体化手段によって取り付けている。ラック部12は、後述する歯車22に噛み合うラック歯13が形成されている。また、ラック部12は、軌道部材10とは異なる材質で構成されており、例えば、軌道部材10が金属で構成され、ラック部12が、例えば、POM(ポリアセタール)などの合成樹脂で構成することができる。
軌道部材10の長手方向の両端には図示しないストッパ取付部が形成されており、当該ストッパ取付部には、転走面11を転走する転動体20の脱落を防止するストッパ15が取り付けられている。
図3に示すように、転動体20は、円筒状のローラであり、隣り合う転動体20を交互に直交させて組み込まれている。このように隣り合う転動体20を互いに直交するように配列することで、運動案内装置1にかかる様々な方向の荷重を負荷することができる。さらに、転動体20は、保持器21によって所定の間隔に保持されている。
保持器21は、合成樹脂や金属で構成され、転動体20の間に介在する間座部25及び、間座部25を長手方向に沿って連結する連結帯24を備えている。間座部25は、転動体20が保持器21から脱落しないように後述する脱落防止手段が形成されており、転走面11の間を円滑に移動することができるように、長手方向の直交断面形状が転走面11に対応した形状となっている。また、連結帯24は、ラック部12に形成された逃げ溝と干渉しないように、軌道部材10の間に介在している。
このように、本実施形態に係る運動案内装置1は、軌道部材10の相対移動に伴って転動体20が転走面11を転走することで、荷重を負荷することができる。また、転動体20は転走面11間を直線的に往復動する所謂有限軌道を構成しており、転走面11の両端に転動体20が至った場合にストッパ15と当接することで軌道部材10のストローク範囲を規制している。
また、保持器21は、歯車22が回転自在に取り付けられる歯車保持孔31を有する。歯車22は、転動体20と同様に脱落防止手段を介して保持器21に取り付けられている。また、歯車22は、ラック部12に形成されたラック歯13と噛み合っている。このラック部12と歯車22の噛み合いによって、軌道部材10が相対移動した場合に、転動体20のすべりなどから生じる軌道部材10の位置ずれを防止する位置ずれ防止機構を構成している。
なお、歯車22は、回転軸23を保持器21の歯車保持孔31に挿入することによって回転自在に配置されており、回転軸23は、軌道部材10の対向する方向と略平行に配置されており、円板状の歯車22が軌道部材10の間に介在するように配置されている。このように歯車22の回転軸23を軌道部材10の対向する方向と略平行に配置することで、運動案内装置1の小型化を図ることができる。
次に、本実施形態に係る運動案内装置1の転動体20及び歯車22の脱落防止手段について説明を行う。図4に示すように、保持器21の間座部25には、歯車22の回転軸23が回転可能に取り付けられる歯車保持孔31と、転動体20が回転可能に取り付けられる転動体保持孔32が形成されている。
歯車保持孔31は、保持器21の長手方向の略中央部分に形成されており、連結帯24を分断するように形成した歯車回転部33の内部に位置する間座部25を長手方向と直交する方向に形成した有底溝として形成されている。歯車保持孔31は、相対する間座部25にそれぞれ形成されており、一対の歯車保持孔31に回転軸23の両端を保持させることで、図3に示すように歯車22を長手方向に保持している。
また、図5に示すように、歯車保持孔31は、回転軸23の径方向の一方に開口した有底溝状に形成されており、回転軸23が回転可能に保持されている。また、歯車保持孔31の内壁には、脱落防止手段としての回転軸保持突起34が相対して形成されている。回転軸保持突起34は、回転軸23の側面に接触可能に形成されており、回転軸23を歯車保持孔31の底まで組み付けると、回転軸23を係止して回転軸23が歯車保持孔31から脱落することを防止する。
図6に示すように、歯車保持孔31への歯車22の取付方法は、歯車保持孔31の開口から回転軸23を歯車保持孔31の延設方向に沿って回転軸保持突起34に当接するまで挿入する。その後、回転軸23をさらに押し込むと、回転軸保持突起34が弾性変形することにより、回転軸23は、歯車保持孔31の底部まで押し込まれる。回転軸23が歯車保持孔31の底部まで押し込まれた後、回転軸保持突起34は、弾性変形によって元の形状に復元することで、回転軸23の側面と当接可能となる。
また、回転軸23の保持方法は、図6に示すように回転軸保持突起34を歯車保持孔31内で相対するように形成する場合に限らず、例えば、図7に示すように、歯車保持孔31内に回転軸23の軸方向に沿って延びる回転軸保持突起34´を形成しても構わない。この場合も、上述した図6における回転軸保持突起34への取付方法と同様に、回転軸保持突起34´を弾性変形させて回転軸23を歯車保持孔31内に保持するように取り付けることができる。
次に、図4及び図8を参照して転動体保持孔32に形成された脱落防止手段について説明を行う。図4に示すように、転動体保持孔32は、転動体20の軸方向の端部の一端を保持する端面保持部35と転動体20を径方向に挿入可能な挿入開口36が形成されている。端面保持部35は、転動体20の回転軸に対して点対称の位置に形成されており、図4に示すように、手前側の端面保持部35aは、転動体20の端面の下端を保持し、奥側の端面保持部35bは、転動体20の端面の上端を保持している。この一対の端面保持部35によって、転動体20は、軸方向に保持されている。
図8に示すように、転動体保持孔32の内壁には、転動体20の径方向に突出する転動体保持突起37が互いに相対するように形成されている。この転動体保持突起37は、上述した回転軸保持突起34と同様に弾性変形することで挿入開口36から挿入された転動体20を回転可能に保持している。なお、挿入開口36の反対側は、図4に示すように転動体20の径方向寸法よりも短い転走面開口38が形成されているため、転動体20は、転走面開口38及び転動体保持突起37によって径方向に保持されている。
このように本実施形態に係る運動案内装置1は、保持器21に保持される歯車22の回転軸23及び転動体20の側面に当接する脱落防止手段としての回転軸保持突起34及び転動体保持突起37を備えているので、回転軸23及び転動体20を径方向に脱落しないように保持している。また、回転軸23は一対の歯車保持孔31の内壁によって軸方向に保持され、転動体20は、一対の端面保持部35によって軸方向の両端を保持しているので、軸方向への脱落も防止されている。
このように回転軸23及び転動体20が脱落防止手段によって保持されているので、保持器21に転動体20や歯車22を容易に組付けることができると共に、運動案内装置1を装置に取り付けるためなどで分解した場合であっても保持器21から転動体20や歯車22が脱落することを防止することができる。
なお、上述した実施形態では、転動体20の脱落防止手段として転動体保持孔32の内壁に転動体保持突起37を形成した場合について説明を行ったが、図9に示すように、突起を形成せずに、端面保持部35と連続するように転動体20を保持する側面保持壁41を形成しても構わない。側面保持壁41は、転動体20の軸方向に沿って徐々に開口面積が広がる形状となっている。また、側面保持壁41の下端には一対の側面保持壁41を連絡する連絡壁42が形成されて転動体20の周方向に接している。
この場合の転動体20の転動体保持孔32aへの取付方向は、転動体20を転動体保持孔32aに転動体20が取り付けられた場合の回転軸方向に対して交差する方向Sから転動体20を斜めに挿入し、転動体20を転動体保持孔32aに挿入後、転動体20の回転軸を転動体保持孔32aに転動体20が取り付けられた場合の回転軸と一致するように転動体20を回転させて取り付けを行う。
また、図10に示すように、連絡壁42を設けずに端面保持壁43を転動体20の軸方向に対して傾斜した傾斜面を有する形状として転動体保持孔32bを形成しても構わない。
なお、上述した実施形態においては、回転軸23を軌道部材10の対向する方向と略平行に配置した歯車22によって位置ずれ防止機構を構成した場合について説明を行ったが、ラック部12を略V字状の転走面11の底部にラック取付面を形成し、該転走面11の底部に取り付けたラック部12に回転軸を軌道部材10の対向する方向と略直交する方向に配置した歯車を噛み合わせて位置ずれ防止機構を構成しても構わない。
また、ストッパ15を削減することで、更なる部品点数を抑制しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。