JP2021139039A - 装飾部材、装飾部材の製造方法および装飾部材を含む時計 - Google Patents

装飾部材、装飾部材の製造方法および装飾部材を含む時計 Download PDF

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Abstract

【課題】硬さおよび抗菌性に優れるとともに、装飾性に優れる白色を示す装飾部材を提供すること。【解決手段】装飾部材は、基材および上記基材上に設けられた白色被膜を有し、上記白色被膜が、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の金属M1と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2と、炭素とを含み、上記白色被膜中、炭素が4.58at%以上77.29at%以下の量で含まれる。上記金属M1がTiであり、上記金属M2がCuまたはNiであり、上記白色被膜中、上記金属M2が1.91at%以上31.35at%以下の量で含まれることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、装飾部材、装飾部材の製造方法および装飾部材を含む時計に関する。
特許文献1には、デバイスの表面上に抗菌性合金コーティングをめっきするためにデバイスの表面に塗布する抗菌性合金コーティング組成物が記載されている。上記抗菌性合金コーティング組成物は、具体的には、銅、銀およびその混合物からなる群から選択され、その抗菌材料の原子含有割合が全含量の1.7%〜26.8%である抗菌材料と、少なくとも4つ以上の金属元素および少なくとも1つの非金属元素からなり、これらの金属元素が、鉄、コバルト、クロム、ニッケル、アルミニウム、バナジウムおよびチタンからなる群から選択され、その非金属元素が、ホウ素、酸素および窒素からなる群から選択される合金とを含む。
特開2010−156035号公報
しかしながら、特許文献1の抗菌性合金コーティング組成物から得られる抗菌性合金コーティングは、装飾性に優れる白色を示さない。
そこで、本発明の目的は、硬さおよび抗菌性に優れるとともに、装飾性に優れる白色を示す装飾部材を提供することにある。
本発明の装飾部材は、基材および上記基材上に設けられた白色被膜を有し、上記白色被膜が、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の金属M1と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2と、炭素とを含み、上記白色被膜中、炭素が4.58at%以上77.29at%以下の量で含まれる。
また、本発明の装飾部材は、基材および上記基材上に設けられた白色被膜を有し、上記白色被膜が、Cr、Nb、MoおよびTaから選ばれる少なくとも1種の金属M1’と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2’と、窒素とを含み、上記白色被膜中、窒素が13.95at%以上84.86at%以下の量で含まれる。
本発明の装飾部材は、硬さおよび抗菌性に優れるとともに、装飾性に優れる白色を示す。
図1は、実施形態1の装飾部材を説明するための図である。 図2は、実施形態1の装飾部材の変形例を具体的に説明するための図である。 図3は、実施形態1の装飾部材の変形例を具体的に説明するための図である。 図4は、実施形態1の装飾部材の変形例を具体的に説明するための図である。 図5は、実施形態2の装飾部材を説明するための図である。 図6は、実施形態2の装飾部材の変形例を具体的に説明するための図である。 図7は、実施形態2の装飾部材の変形例を具体的に説明するための図である。 図8は、実施形態2の装飾部材の変形例を具体的に説明するための図である。 図9は、無加工試験片について、黄色ブドウ球菌による抗菌性試験後の写真である。 図10は、無加工試験片について、大腸菌による抗菌性試験後の写真である。 図11は、抗菌加工試験片について、黄色ブドウ球菌による抗菌性試験後の写真である。 図12は、抗菌加工試験片について、大腸菌による抗菌性試験後の写真である。 図13は、実施例1−2で作製した装飾部材(Ti80Cu20C)についてX線回折を実施し、結晶構造を測定した結果を示す図である。 図14は、Cuの含有比率を変更した場合の結晶構造の比較を示す図である。 図15は、実施例2−2で作製した装飾部材(Ti80Ag20C)についてX線回折を実施し、結晶構造を測定した結果を示す図である。 図16は、Agの含有比率を変更した場合の結晶構造の比較を示す図である。
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[実施形態1]
<装飾部材>
図1は、実施形態1の装飾部材を説明するための図である。図1の断面模式図に示すように、装飾部材100は、基材10および基材10上に設けられた白色被膜20を有する。
基材10は、金属、セラミックスまたはプラスチックから形成される基材である。金属(合金を含む)としては、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、銅、銅合金、タングステン、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)などが挙げられる。これらの金属は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記基材の形状については限定されない。
白色被膜20は、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の金属M1と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2と、非金属元素として炭素とを含む。また、白色被膜中、炭素が4.58at%以上77.29at%以下の量で含まれる。なお、白色被膜中、残部は、金属M1および金属M2である。実施形態1の装飾部材は、白色被膜が金属M2を含んでいるため、抗菌性に優れる。また、金属M2および炭素を含み、かつ炭素を特定の量で含んでいるため、装飾性に優れる白色を示すとともに、充分な硬さを有し、耐傷性、耐摩耗性に優れる。
一方、特許文献1には、抗菌性合金コーティングの記載はあるが、色調についての記載はない。このように、従来の技術では、傷つきにくく、装飾性が高く、しかも抗菌性を有するような硬質装飾部材を提供できないという問題があった。これに対して、上述のように、実施形態1の装飾部材は、特定の白色被膜を有するため、これらの問題を解決できる。
実施形態1の装飾部材では、具体的には、主原料として金属M1を用い、金属M1中に抗菌性能を有する金属M2を含有させた合金を使用して、たとえば、基材上に金属M1および炭素の反応化合物(炭化物)と金属M2とを含む膜を形成することにより、従来の金属M1の反応化合物からなる膜特性にさらに抗菌性が付与されている。
なお、白色被膜は、たとえば、金属M1と炭素との反応化合物とともに合金化しない金属M2が混在して構成されている。その他、白色被膜は、金属M1、M2の合金と炭素との反応化合物を含んでいてもよい。すなわち、金属M1と炭素との反応化合物および/または金属M1、M2の合金と炭素との反応化合物とともに、合金化しない金属M2が混在して構成されている場合などが考えられる。白色被膜の構成については、たとえば、X線回折で確認可能である。
金属M1、M2の具体的な組み合わせとしては、M1=Ti、M2=Cu;M1=Ti、M2=Ag;M1=Ti、M2=Ni;M1=Cr、M2=Cu;M1=Cr、M2=Ag;M1=Cr、M2=Ni;M1=MoおよびNb、M2=Cu;M1=MoおよびNb、M2=Ag;M1=MoおよびNb、M2=Niなどが挙げられる。
これらのうちで、金属M1がTiであり、金属M2がCuである場合は、抗菌性および耐食性を示す組成範囲が広く、量産安定性の観点から好ましい。いいかえると、生産において、被膜の組成に誤差やばらつきが生じても、望む特性の被膜を得ることができるため好ましい。また、金属M1がTiであり、金属M2がAgである場合は、少量のAg量で抗菌性が発現する点と、Cuよりも硬度が上昇する観点から好ましい。コストおよび量産性の観点からCuを抗菌性材料として選択した方が好ましい。
また金属M1がCrの場合、Tiの場合と比較し明度(L*)が高いことから白色になりやすい点から好ましく、また炭化物、窒化物、炭窒化物でも白色を示す事から、選択の範囲が広い点からも好ましい。
金属M1がTiであり、金属M2がCuまたはNiであるとき、白色被膜中、金属M2が1.91at%より多く31.35at%以下の量で含まれることが好ましい。なお、残部は、金属M1および炭素である。金属M2が2.97at%以上の量で含まれていると、抗菌性により優れる。金属M2が31.35at%を超える量で含まれていると、炭化物が形成され難くなる、いいかえると、膜が形成され難くなる場合や、耐食性が低下する場合がある。
また、金属M1がTiであり、金属M2がCuまたはNiである場合は、白色被膜中、炭素が18.51at%以上70.81at%以下の量で含まれることが好ましい。なお、残部は、金属M1および金属M2である。炭素が18.51at%以上の量で含まれていると、充分な硬さが得られる。炭素が70.81at%を超える量で含まれていると、色が黒色に近づく傾向にある。また、硬度が低下する場合がある。
より具体的には、金属M1がTiであり、金属M2がCuまたはNiである場合は、白色被膜中、金属M1が23.06at%以上68.09at%以下の量で、金属M2が2.97at%以上31.35at%以下の量で、炭素が18.51at%以上70.81at%以下の量で含まれていることが好ましい。このような装飾部材は、硬さ、抗菌性および装飾性により優れる。
なお、金属M1がZrまたはHfであり、金属M2がCuまたはNiである場合も、金属M1がTiである場合と同様に、白色被膜中、炭素が18.51at%以上70.81at%以下の量で含まれることが好ましい。
金属M1がTiであり、金属M2がAgであるとき、白色被膜中、金属M2が1.00at%以上9.55at%以下の量で含まれることが好ましい。なお、残部は、金属M1および炭素である。金属M2が1.00at%以上の量で含まれていると、抗菌性により優れる。金属M2が9.55at%を超える量で含まれていると、炭化物が形成され難くなる、いいかえると、膜が形成され難くなる場合や、耐食性が低下する場合がある。また、金属M2が8.59at%以下の量で含まれていると、耐食性が向上するため、より好ましい。
また、金属M1がTiであり、金属M2がAgである場合は、白色被膜中、炭素が16.70at%以上76.85at%以下の量で含まれることが好ましい。なお、残部は、金属M1および金属M2である。炭素が16.70at%以上の量で含まれていると、充分な硬さが得られる。炭素が76.85at%を超える量で含まれていると、色が黒色に近づく傾向にある。また、硬度が低下する場合がある。
より具体的には、金属M1がTiであり、金属M2がAgである場合は、白色被膜中、金属M1が22.11at%以上80.93at%以下の量で、金属M2が1.00at%以上9.55at%以下の量で、炭素が16.70at%以上76.85at%以下の量で含まれていることが好ましい。このような装飾部材は、硬さ、抗菌性および装飾性により優れる。
なお、金属M1がZrまたはHfであり、金属M2がAgである場合も、金属M1がTiである場合と同様に、白色被膜中、炭素が16.70at%以上76.85at%以下の量で含まれることが好ましい。
金属M1がCrであり、金属M2がCu、AgまたはNiであるとき、白色被膜中、金属M2が4.91at%以上9.77at%以下の量で含まれることが好ましい。なお、残部は、金属M1および炭素である。
また、金属M1がCrであり、金属M2がCu、AgまたはNiである場合は、上述のように、白色被膜中、炭素が4.58at%以上77.29at%以下の量で含まれることが好ましい。なお、残部は、金属M1および金属M2である。炭素が4.58at%以上の量で含まれていると、充分な硬さが得られる。炭素が77.29at%を超える量で含まれていると、色が黒色に近づく傾向にある。また、硬度が低下する場合がある。
より具体的には、金属M1がCrであり、金属M2がCu、AgまたはNiである場合は、白色被膜中、金属M1が17.80at%以上85.65at%以下の量で、金属M2が4.91at%以上9.77at%以下の量で、炭素が4.58at%以上77.29at%以下の量で含まれていることが好ましい。このような装飾部材は、硬さ、抗菌性および装飾性により優れる。
なお、金属M1がNb、Mo、TaまたはWであり、金属M2がCu、AgまたはNiである場合も、金属M1がCrである場合と同様に、白色被膜中、炭素が4.58at%以上77.29at%以下の量で含まれることが好ましい。
ここで、白色被膜における金属M1、M2および炭素の量はESCA(X線光電子分光法)、EDX(エネルギー分散型X線分光法)、またはEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)により求めることができる。これらのうちで、EDX(エネルギー分散型X線分光法)により求めることが好ましい。
白色被膜の厚さは、抗菌性、耐傷性および装飾性の観点から、0.3μm以上3.0μm以下であることが好ましい。厚さが0.3μm未満の場合、十分な硬度が得られず耐傷性が劣る。また3.0μmより厚い場合、耐傷性は著しく向上するが、材料の使用量の増加、製造コストの増加などの様々な問題が懸念される。
実施形態1の装飾部材は、「JIS Z 2801:2012 抗菌加工−抗菌性試験方法・抗菌効果」に準拠した抗菌性試験において、通常抗菌活性値が2.0以上である。このように、実施形態1の装飾部材は、優れた抗菌性を示す。
また、実施形態1の装飾部材は、CIE Lab色空間表示において、通常a*が−3.0以上3.0以下であり、b*が−5.0以上5.0以下である。さらに、実施形態1の装飾部材は、CIE Lab色空間表示において、L*が50.0以上であることが好ましく、60.0以上であることがより好ましく、L*は高ければ高いほどより白色に近づく。このように、実施形態1の装飾部材は、装飾性に優れる白色を示す。
さらに、実施形態1の装飾部材は、好ましくは膜硬度がHV1000以上である。このように、実施形態1の装飾部材は、充分な硬さを有し、耐傷性、耐摩耗性に優れる。
ここで、本明細書において、L*、a*、b*および膜硬度は、基材上に形成した白色被膜について測定した値をいう。
実施形態1の装飾部材は、基材と白色被膜との間に、さらに中間層が設けられていてもよい。中間層としては、密着層、傾斜密着層、硬化層が挙げられる。すなわち、実施形態1の装飾部材の変形例として、これらのうちの少なくとも1つがさらに設けられている装飾部材が挙げられる。図2、図3および図4は、実施形態1の装飾部材の変形例を具体的に説明するための図である。なお、図2、図3および図4は、変形例の断面模式図を示している。
図2では、装飾部材100は、基材10と白色被膜20との間に、さらに密着層11が設けられている。密着層11を設けると、基材10と密着層11の上に形成される層との密着度が高まり、厚い被膜の形成も可能となる。結果として装飾部材の耐傷性の向上に寄与できる。密着層11としては、Ti被膜、Cr被膜が挙げられる。基材10を構成する金属または密着層11の上に形成される層を構成する金属と同じ金属を含む密着層11は、高い密着度が得られることや製造しやすい点からも好ましい。たとえば、基材10が、Tiを含む場合は、Ti被膜が好適に用いられる。また、基材10が、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)を含む場合は、Cr被膜が好適に用いられる。また、密着層11は、TiまたはCrを含んでいればよく、Ti以外の金属を含んでいてもよい。さらに、密着層11がTi以外に少なくとも炭素および窒素のいずれか1つの元素を含む場合には、基材10上に形成された被膜を簡便に除去することができる。すなわち、たとえば硝酸、希硝酸またはフッ硝酸など、基材10の表面を荒らさない溶液に装飾部材100を所定の時間浸漬することで、密着層11が溶解し、密着層11の上に形成される層がリフトオフされる。このため、基材10の表面を荒らすことなく、基材10の上に形成された被膜を除去することができる。
図3では、装飾部材100は、基材10と白色被膜20との間に、さらに密着層11および傾斜密着層12がこの順で設けられている。密着層11については、上述したとおりである。傾斜密着層12を設けると、基材10と白色被膜20との間に発生する応力歪みを緩和でき、基材10と白色被膜20との間の密着度が高くなりクラックの発生や剥離が抑えられる。結果として装飾部材の耐傷性の向上に寄与できる。傾斜密着層12は、たとえば、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の金属M1と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2と、非金属元素として炭素とを含む。また、通常、傾斜密着層12中の炭素の量は、基材10において白色被膜20を設ける面に垂直な方向に、基材10から離れるにしたがって増加している。また、傾斜密着層12の上に形成される層を構成する金属と同じ金属を含む傾斜密着層12は、高い密着度が得られることや製造しやすいことからも好ましい。
図4では、装飾部材100は、基材10と白色被膜20との間に、さらに密着層11、傾斜密着層12および硬化層13がこの順で設けられている。密着層11および傾斜密着層12については、上述したとおりである。硬化層13は、白色被膜20よりも高い硬度を有する。耐傷性能はおおよそ被膜の厚さ、被膜の密着度および被膜の硬度の積により決まる。硬化層を設けると、被膜全体の硬度が高まり、厚い被膜の形成も可能となる。結果として装飾部材の耐傷性の向上に寄与できる。硬化層13としては、白色被膜20よりも高い硬度(たとえば2000HV)を有していれば特に限定されない。たとえば、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の金属M1と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2と、非金属元素として炭素とを含み、外観色および被膜の使用環境によって適宜選択される。また、硬化層13の上に形成される層を構成する金属と同じ金属を含む硬化層13は、高い密着度が得られることや製造しやすいことからも好ましい。
実施形態1の装飾部材やその変形例の白色被膜20では、色調をより好ましくするために、白色被膜20中の炭素の量を、基材10において白色被膜20を設ける面に垂直な方向に、基材10から離れるにしたがって変化させてもよい。もちろん、変化させなくてもよい。白色被膜20全体において、金属M1、M2の量または炭素の量が、白色被膜20全体として上述した好ましい範囲にあることが望ましい。
いずれの装飾部材も、上述した白色被膜を有するため、抗菌性に優れる。また、装飾性に優れる白色を示すとともに、充分な硬さを有し、耐傷性、耐摩耗性に優れる。
<装飾部材の製造方法>
実施形態1の装飾部材の製造方法は、上記装飾部材の製造方法である。すなわち、実施形態1の装飾部材の製造方法は、基材上に、白色被膜を設ける工程(白色被膜形成工程)を含む。ここで、白色被膜は、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の金属M1と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2と、炭素とを含む。また、上記白色被膜中、炭素が4.58at%以上77.29at%以下の量で含まれる。
白色被膜形成工程は、具体的には、反応性スパッタリング法により行う。スパッタリング法は、真空に排気されたチャンバー内に不活性ガスを導入しながら、基材と被膜の構成原子からなるターゲット間に直流または交流の高電圧を印加し、イオン化したAr等をターゲットに衝突させて、はじき飛ばされたターゲット物質を基材に形成させる方法である。反応性スパッタリング法では、不活性ガスとともに微量の反応ガスを導入し、ターゲット構成原子と反応ガスを構成する非金属元素との反応化合物被膜を基材上に形成させることができる。
白色被膜形成工程では、ターゲット(原料金属)は、たとえば、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の金属M1と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2とを含む焼結体である。
反応ガスとしては、メタンガス、アセチレンガス等の炭素原子含有ガスが挙げられる。不活性ガスとしては、Arガス、Krガス、Xeガスが挙げられる。
白色被膜形成工程においては、製造装置および使用するターゲット組成によってその条件は一様ではないが、たとえば、不活性ガスが100〜200sccmの条件下において、炭素原子含有ガスのみを5〜150sccm導入して炭化物膜を形成する。ガス量が上記範囲にあると、白色被膜中の炭素の量を好ましい範囲に調整できる。
また、炭素の量が基材から離れるにしたがって変化している白色被膜の場合は、反応ガスの量を適宜変化させて、白色被膜形成工程を行えばよい。なお、ガス量の調整は自動制御されたマスフローコントローラーによって行うことができる。
反応性スパッタリング法は、膜質や膜厚の制御性が高く自動化も容易である。またスパッタリングされた原子のエネルギーが高いことから、密着性を向上させるための基材加熱が必要なく、融点の低いプラスチックのような基材でも被膜形成が可能となる。また、はじき飛ばされたターゲット物質を基材に形成させる方法であることから高融点材料でも成膜が可能であり、材料の選択が自由である。
さらに、ターゲット構成原子の種類およびその割合、反応ガスの選択および量、スパッタリング時間を調整することで、白色被膜中の金属元素の種類およびその量、炭素の量、白色被膜の厚さをコントロールできる。また、装飾部材における密着性、膜硬度、色調もコントロールできる。
装飾部材は、上述のように、中間層をさらに含んでいてもよい。これらの層も上述した白色被膜形成工程に準じて積層させることができる。ターゲット構成原子の種類およびその割合、反応ガスの選択および量などを調整することで、中間層中の金属元素の種類およびその量、炭素の量などを適宜調整できる。
[実施形態2]
<装飾部材>
図5は、実施形態2の装飾部材を説明するための図である。図5の断面模式図に示すように、装飾部材200は、基材210および基材210上に設けられた白色被膜220を有する。
基材210は、金属、セラミックスまたはプラスチックから形成される基材である。金属(合金を含む)としては、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、銅、銅合金、タングステン、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)などが挙げられる。これらの金属は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記基材の形状については限定されない。
白色被膜220は、Cr、Nb、MoおよびTaから選ばれる少なくとも1種の金属M1’と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2’と、非金属元素として窒素とを含む。また、白色被膜中、窒素が13.95at%以上84.86at%以下の量で含まれる。なお、白色被膜中、残部は、金属M1’および金属M2’である。実施形態2の装飾部材は、白色被膜が金属M2’を含んでいるため、抗菌性に優れる。また、金属M2’および窒素を含み、かつ窒素を特定の量で含んでいるため、装飾性に優れる白色を示すとともに、充分な硬さを有し、耐傷性、耐摩耗性に優れる。
一方、特許文献1には、抗菌性合金コーティングの記載はあるが、色調についての記載はない。このように、従来の技術では、傷つきにくく、装飾性が高く、しかも抗菌性を有するような硬質装飾部材を提供できないという問題があった。これに対して、上述のように、実施形態2の装飾部材は、特定の白色被膜を有するため、これらの問題を解決できる。
実施形態2の装飾部材では、具体的には、主原料として金属M1’を用い、金属M1’中に抗菌性能を有する金属M2’を含有させた合金を使用して、たとえば、基材上に金属M1’および窒素の反応化合物(窒化物)と金属M2’とを含む膜を形成することにより、従来の金属M1’の反応化合物からなる膜特性にさらに抗菌性が付与されている。
なお、白色被膜は、たとえば、金属M1’と窒素との反応化合物とともに合金化しない金属M2’が混在して構成されている。その他、白色被膜は、金属M1’、M2’の合金と窒素との反応化合物を含んでいてもよい。すなわち、金属M1’と窒素との反応化合物および/または金属M1’、M2’の合金と窒素との反応化合物とともに、合金化しない金属M2’が混在して構成されている場合などが考えられる。白色被膜の構成については、たとえば、X線回折で確認可能である。
金属M1’、M2’の具体的な組み合わせとしては、M1’=Cr、M2’=Cu;M1’=Cr、M2’=Ag;M1’=Cr、M2’=Ni;M1’=Nb、M2’=Cu;M1’=Nb、M2’=Ag;M1’=Nb、M2’=Ni;M1’=Mo、M2’=Cu;M1’=Mo、M2’=Ag;M1’=Mo、M2’=Ni;M1’=Ta、M2’=Cu;M1’=Ta、M2’=Ag;M1’=Ta、M2’=Niなどが挙げられる。これらのうちで、金属M1’がCrであり、金属M2’がCuである場合が好ましい。
金属M1’がCrであり、金属M2’がCu、AgまたはNiであるとき、白色被膜中、金属M2’が4.15at%以上9.20at%以下の量で含まれることが好ましい。なお、残部は、金属M1’および窒素である。金属M2’が4.15at%以上の量で含まれていると、抗菌性により優れる。金属M2’が9.20at%を超える量で含まれていると、窒化物が形成され難くなる、いいかえると、膜が形成され難くなる場合や、耐食性が低下する場合がある。
より具体的には、金属M1’がCrであり、金属M2’がCu、AgまたはNiである場合は、白色被膜中、金属M1’が10.99at%以上76.85at%以下の量で、金属M2’が4.15at%以上9.20at%以下の量で、窒素が13.95at%以上84.86at%以下の量で含まれていることが好ましい。このような装飾部材は、硬さ、抗菌性および装飾性により優れる。
ここで、白色被膜における金属M1’、M2’および窒素の量はESCA(X線光電子分光法)、EDX(エネルギー分散型X線分光法)、またはEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)により求めることができる。これらのうちで、EDX(エネルギー分散型X線分光法)により求めることが好ましい。
白色被膜の厚さは、抗菌性、耐傷性および装飾性の観点から、0.3μm以上3.0μm以下であることが好ましい。厚さが0.3μm未満の場合、十分な硬度が得られず耐傷性が劣る。また3.0μmより厚い場合、耐傷性は著しく向上するが、材料の使用量の増加、製造コストの増加などの様々な問題が懸念される。
実施形態2の装飾部材は、「JIS Z 2801:2012 抗菌加工−抗菌性試験方法・抗菌効果」に準拠した抗菌性試験において、通常抗菌活性値が2.0以上である。このように、実施形態2の装飾部材は、優れた抗菌性を示す。
また、実施形態2の装飾部材は、CIE Lab色空間表示において、通常a*が−3.0以上3.0以下であり、b*が−5.0以上5.0以下である。さらに、実施形態2の装飾部材は、CIE Lab色空間表示において、L*が50.0以上であることが好ましく、60.0以上であることがより好ましく、L*は高ければ高いほどより白色に近づく。このように、実施形態2の装飾部材は、装飾性に優れる白色を示す。
さらに、実施形態2の装飾部材は、好ましくは膜硬度がHV1000以上である。このように、実施形態2の装飾部材は、充分な硬さを有し、耐傷性、耐摩耗性に優れる。
ここで、本明細書において、L*、a*、b*および膜硬度は、基材上に形成した白色被膜について測定した値をいう。
実施形態2の装飾部材は、基材と白色被膜との間に、さらに中間層が設けられていてもよい。中間層としては、密着層、傾斜密着層、硬化層が挙げられる。すなわち、実施形態2の装飾部材の変形例として、これらのうちの少なくとも1つがさらに設けられている装飾部材が挙げられる。図6、図7および図8は、実施形態2の装飾部材の変形例を具体的に説明するための図である。なお、図6、図7および図8は、変形例の断面模式図を示している。
図6では、装飾部材200は、基材210と白色被膜220との間に、さらに密着層211が設けられている。密着層211を設けると、基材210と密着層211の上に形成される層との密着度が高まり、厚い被膜の形成も可能となる。結果として装飾部材の耐傷性の向上に寄与できる。密着層211としては、Ti被膜、Cr被膜が挙げられる。基材210を構成する金属または密着層211の上に形成される層を構成する金属と同じ金属を含む密着層211は、高い密着度が得られることや製造しやすい点からも好ましい。たとえば、基材10が、Tiを含む場合は、Ti被膜が好適に用いられる。また、基材10が、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)を含む場合は、Cr被膜が好適に用いられる。また、密着層211は、TiまたはCrを含んでいればよく、Cr以外の金属を含んでいてもよい。さらに、密着層211がCr以外に少なくとも炭素および窒素のいずれか1つの元素を含む場合には、基材210上に形成された被膜を簡便に除去することができる。すなわち、たとえば硝酸、希硝酸またはフッ硝酸など、基材210の表面を荒らさない溶液に装飾部材200を所定の時間浸漬することで、密着層211が溶解し、密着層211の上に形成される層がリフトオフされる。このため、基材210の表面を荒らすことなく、基材210の上に形成された被膜を除去することができる。
図7では、装飾部材200は、基材210と白色被膜220との間に、さらに密着層211および傾斜密着層212がこの順で設けられている。密着層211については、上述したとおりである。傾斜密着層212を設けると、基材210と白色被膜220との間に発生する応力歪みを緩和でき、基材210と白色被膜220との間の密着度が高くなりクラックの発生や剥離が抑えられる。結果として装飾部材の耐傷性の向上に寄与できる。傾斜密着層212は、たとえば、Cr、Nb、MoおよびTaから選ばれる少なくとも1種の金属M1’と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2’と、非金属元素として窒素とを含む。また、通常、傾斜密着層212中の窒素の量は、基材210において白色被膜220を設ける面に垂直な方向に、基材210から離れるにしたがって増加している。また、傾斜密着層212の上に形成される層を構成する金属と同じ金属を含む傾斜密着層212は、高い密着度が得られることや製造しやすいことからも好ましい。
図8では、装飾部材200は、基材210と白色被膜220との間に、さらに密着層211、傾斜密着層212および硬化層213がこの順で設けられている。密着層211および傾斜密着層212については、上述したとおりである。硬化層213は、白色被膜220よりも高い硬度を有する。耐傷性能はおおよそ被膜の厚さ、被膜の密着度および被膜の硬度の積により決まる。硬化層を設けると、被膜全体の硬度が高まり、厚い被膜の形成も可能となる。結果として装飾部材の耐傷性の向上に寄与できる。硬化層213としては、白色被膜220よりも高い硬度(たとえば2000HV)を有していれば特に限定されない。たとえば、Cr、Nb、MoおよびTaから選ばれる少なくとも1種の金属M1’と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2’と、非金属元素として窒素とを含み、外観色および被膜の使用環境によって適宜選択される。また、硬化層213の上に形成される層を構成する金属と同じ金属を含む硬化層213は、高い密着度が得られることや製造しやすいことからも好ましい。
実施形態2の装飾部材やその変形例の白色被膜220では、色調をより好ましくするために、白色被膜220中の窒素の量を、基材210において白色被膜220を設ける面に垂直な方向に、基材210から離れるにしたがって変化させてもよい。もちろん、変化させなくてもよい。白色被膜220全体において、金属M1’、M2’の量または窒素の量が、白色被膜220全体として上述した好ましい範囲にあることが望ましい。
いずれの装飾部材も、上述した白色被膜を有するため、抗菌性に優れる。また、装飾性に優れる白色を示すとともに、充分な硬さを有し、耐傷性、耐摩耗性に優れる。
<装飾部材の製造方法>
実施形態2の装飾部材の製造方法は、上記装飾部材の製造方法である。すなわち、実施形態2の装飾部材の製造方法は、基材上に、白色被膜を設ける工程(白色被膜形成工程)を含む。ここで、白色被膜は、Cr、Nb、MoおよびTaから選ばれる少なくとも1種の金属M1’と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2’と、窒素とを含む。また、上記白色被膜中、窒素が13.95at%以上84.86at%以下の量で含まれる。
白色被膜形成工程は、具体的には、反応性スパッタリング法により行う。スパッタリング法は、真空に排気されたチャンバー内に不活性ガスを導入しながら、基材と被膜の構成原子からなるターゲット間に直流または交流の高電圧を印加し、イオン化したAr等をターゲットに衝突させて、はじき飛ばされたターゲット物質を基材に形成させる方法である。反応性スパッタリング法では、不活性ガスとともに微量の反応ガスを導入し、ターゲット構成原子と反応ガスを構成する非金属元素との反応化合物被膜を基材上に形成させることができる。
白色被膜形成工程では、ターゲット(原料金属)は、たとえば、Cr、Nb、MoおよびTaから選ばれる少なくとも1種の金属M1’と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2’とを含む焼結体である。
反応ガスとしては、窒素ガス等の窒素原子含有ガスが挙げられる。不活性ガスとしては、Arガス、Krガス、Xeガスが挙げられる。
白色被膜形成工程においては、製造装置および使用するターゲット組成によってその条件は一様ではないが、たとえば、不活性ガスが100〜200sccmの条件下において、窒素原子含有ガスのみを5〜150sccm導入して窒化物膜を形成する。ガス量が上記範囲にあると、白色被膜中の窒素の量を好ましい範囲に調整できる。
また、窒素の量が基材から離れるにしたがって変化している白色被膜の場合は、反応ガスの量を適宜変化させて、白色被膜形成工程を行えばよい。なお、ガス量の調整は自動制御されたマスフローコントローラーによって行うことができる。
反応性スパッタリング法は、膜質や膜厚の制御性が高く自動化も容易である。またスパッタリングされた原子のエネルギーが高いことから、密着性を向上させるための基材加熱が必要なく、融点の低いプラスチックのような基材でも被膜形成が可能となる。また、はじき飛ばされたターゲット物質を基材に形成させる方法であることから高融点材料でも成膜が可能であり、材料の選択が自由である。
さらに、ターゲット構成原子の種類およびその割合、反応ガスの選択および量、スパッタリング時間を調整することで、白色被膜中の金属元素の種類およびその量、窒素の量、白色被膜の厚さをコントロールできる。また、装飾部材における密着性、膜硬度、色調もコントロールできる。
装飾部材は、上述のように、中間層をさらに含んでいてもよい。これらの層も上述した白色被膜形成工程に準じて積層させることができる。ターゲット構成原子の種類およびその割合、反応ガスの選択および量などを調整することで、中間層中の金属元素の種類およびその量、窒素の量などを適宜調整できる。
[実施形態の時計]
実施形態の時計は、上記装飾部材(実施形態1、2の装飾部材)を含む。装飾部材は、時計の構成部品であれば特に限定されず、ケース、裏蓋、バンド、中留などが挙げられる。また、実施形態の時計は、光発電時計、熱発電時計、電波受信型自己修正時計、機械式時計、一般の電子式時計のいずれであってもよく、腕時計、掛け時計、置時計のいずれであってもよい。このような時計は、上記装飾部材を用いて公知の方法により製造される。いずれの時計も、上述した白色被膜を有するため、抗菌性に優れる。また、装飾性に優れる白色を示すとともに、充分な硬さを有し、耐傷性、耐摩耗性に優れる。
なお、実施形態1、2の装飾部材は、時計以外に適用されてもよい。実施形態1、2の装飾部材は、たとえば、ビールサーバー等の日用品、眼鏡、アクセサリー、スポーツ用品などの製品に含まれていてもよい。いずれの製品も、上述した白色被膜を有するため、抗菌性に優れる。また、装飾性に優れる白色を示すとともに、充分な硬さを有し、耐傷性、耐摩耗性に優れる。
以上より、本発明は以下に関する。
[1] 基材および上記基材上に設けられた白色被膜を有し、上記白色被膜が、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の金属M1と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2と、炭素とを含み、上記白色被膜中、炭素が4.58at%以上77.29at%以下の量で含まれる、装飾部材。
上記[1]の装飾部材は、硬さおよび抗菌性に優れるとともに、装飾性に優れる白色を示す。
[2] 上記金属M1がTiであり、上記金属M2がCuまたはNiであり、上記白色被膜中、上記金属M2が1.91at%より多く31.35at%以下の量で含まれる、[1]に記載の装飾部材。
[3] 上記金属M1がTiであり、上記金属M2がAgであり、上記白色被膜中、上記金属M2が1.00at%以上9.55at%以下の量で含まれる、[1]に記載の装飾部材。
上記[2]または[3]の装飾部材は、抗菌性により優れる。
[4] 上記白色被膜は、Lab色空間表示において、L*が50.0以上であり、a*が−3.0以上3.0以下であり、b*が−5.0以上5.0以下である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の装飾部材。
上記[4]の装飾部材は、装飾性により優れる白色を示す。
[5] 上記基材と上記白色被膜との間に、さらに中間層が設けられている、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の装飾部材。
上記[5]の装飾部材は、耐傷性などにより優れる。
[6] [1]〜[5]のいずれか1つに記載の装飾部材を含む、時計。
上記[6]の時計は、抗菌性に優れるとともに、装飾性に優れる白色を示す。
[7] 基材上に、白色被膜を設ける工程を含み、上記白色被膜が、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の金属M1と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2と、炭素とを含み、上記白色被膜中、炭素が4.58at%以上77.29at%以下の量で含まれる、装飾部材の製造方法。
上記[7]の装飾部材の製造方法によれば、抗菌性に優れるとともに、装飾性に優れる白色を示す装飾部材が得られる。
[8] 基材および上記基材上に設けられた白色被膜を有し、上記白色被膜が、Cr、Nb、MoおよびTaから選ばれる少なくとも1種の金属M1’と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2’と、窒素とを含み、上記白色被膜中、窒素が13.95at%以上84.86at%以下の量で含まれる、装飾部材。
上記[8]の装飾部材は、硬さおよび抗菌性に優れるとともに、装飾性に優れる白色を示す。
[実施例]
以下実施例に基づいて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
[実施例1−1]
図1に示す装飾部材100を作製した。スパッタリングターゲットとして、Ti50質量%Cu50質量%の組成を有する焼結体を使用した。基材10としてTiからなる基材を用いた。基材10上にスパッタリング法でアルゴンガス105sccmにメタンガスを16sccm導入して、金属M1としてTiと金属M2としてCuと炭素とを含む白色被膜20(厚さ1.0μm)を形成し、装飾部材100を得た(表1−1)。
[実施例1−2〜1−6]
実施例1−2〜1−6では、表1−1に示すように、TiおよびCuの含有量が異なるスパッタリングターゲットを用いたこと、メタンガス量を変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして、装飾部材100を得た。
[比較例1−1]
比較例1−1では、表1−1に示すように、TiおよびCuの含有量が異なるスパッタリングターゲットを用いたこと、メタンガスを用いなかったこと以外は、実施例1−1と同様にして、装飾部材を得た。
[比較例1−2]
比較例1−2では、表1−1に示すように、TiおよびCuの含有量が異なるスパッタリングターゲットを用いたこと、メタンガス量を変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして、装飾部材を得た。
表1−1には、上記で得られた装飾部材について、膜中の金属元素および炭素の量、抗菌性、色調、硬度ならびに耐食性の評価結果を示す。その結果、比較例1−1のようにメタンガスを導入せず、炭素の量が0at%である場合には、硬度がHV1000に達せず、著しく劣り、また比較例1−2のように、白色被膜中にCuが含まれていないと抗菌性を示さないことが分った。また、白色被膜中に含まれるCuの含有量が31.35at%までは耐食性は合格であった。Cuの含有量が31.35at%を超えると、耐食性が劣り、膜としても成立しにくい傾向にあることが分かった。
実施例1−1〜1−6の装飾部材について、色調は、いずれもL*≧50.0、−3≦a*≦3.0、−5≦b*≦5を満たしており、金属色調(白色調)を示した。なお、a*が3を超えると赤色味を呈し、a*が−3未満になると緑色味を呈する。また、b*が5を超えると黄色味を呈し、b*が−5未満になると青色味を呈する。TiにCuを入れることによる色調変化および硬度変化はTiCと比較してほぼ無いことが分った。なお、L*≧60.0の場合は、さらに装飾性に優れる。
Figure 2021139039
[実施例1−7]
図1に示す装飾部材100を作製した。スパッタリングターゲットとして、Ti85質量%Cu15質量%の組成を有する焼結体を使用した。基材10としてTiからなる基材を用いた。基材10上にスパッタリング法でアルゴンガス105sccmにメタンガスを10sccm導入して、金属M1としてTiと金属M2としてCuと炭素とを含む白色被膜20(厚さ1.0μm)を形成し、装飾部材100を得た(表1−2)。
[実施例1−8〜1−12]
実施例1−8〜1−12では、表1−2に示すように、メタンガス量を変更したこと以外は、実施例1−7と同様にして、装飾部材100を得た。
[比較例1−3]
比較例1−3では、表1−2に示すように、メタンガスを用いなかったこと以外は、実施例1−7と同様にして、装飾部材を得た。
[比較例1−4]
比較例1−4では、表1−2に示すように、メタンガス量を変更したこと以外は、実施例1−7と同様にして、装飾部材を得た。
表1−2には、上記で得られた装飾部材について、膜中の金属元素および炭素の量、抗菌性、色調ならびに硬度の評価結果を示す。比較例1−3のようにメタンガスを導入せず炭素の量が0at%であると、硬度は、HV1000より著しく劣り、メタンガスの導入量を増やすにしたがい硬度は上昇し、30sccmで最高硬度を示した。膜中の炭素の量が18.5at%以上79.31at%未満の場合に、HV1000以上を示した。膜中の炭素の量を増やしすぎると、膜の色は白色(金属色)から黒色に近づくと共に明度が低下する。比較例1−4においては、炭素の量が多すぎるため、L*<50.0となり、明度が低下し、また硬度もHV1000に達していなかった。膜中の炭素の量が増えるにしたがい、Cuの量も低下しているが、比較例1−4のように、Cuの量が1.91at%でも抗菌性が得られた。このことから、Cuの量の下限値は1.91at%と考えられる。よって、比較例1−4において、Cuの量を1.91at%より多くし、Cの量を低下させ、Tiの量を増加させれば、色調も白色を示し、硬度も向上すると考えられ、充分に本発明の効果が得られる装飾部材を得ることができる。
Figure 2021139039
なお、本実施例ではスパッタリングターゲットとして、TiおよびCuを含む焼結体を用いたが、これに代えて、TiおよびNiを含む焼結体を用いて装飾部材100を作成した場合も、TiおよびCuを含む焼結体を用いた場合と同様の評価結果が得られた。
また、本実施例ではスパッタリングターゲットとして、TiおよびCuを含む焼結体を用いたが、これに代えて、ZrまたはHfとCuまたはNiとを含む焼結体を用いて装飾部材100を作成した場合も、TiおよびCuを含む焼結体を用いた場合と同様の評価結果が得られた。
<実施例2>
[実施例2−1]
図1に示す装飾部材100を作製した。スパッタリングターゲットとして、Ti75質量%Ag25質量%の組成を有する焼結体を使用した。基材10としてTiからなる基材を用いた。基材10上にスパッタリング法でアルゴンガス105sccmにメタンガスを12sccm導入して、金属M1としてTiと金属M2としてAgと炭素とを含む白色被膜20(厚さ1.0μm)を形成し、装飾部材100を得た(表2−1)。なお、人工汗試験で軽微な変色が見られたが、本実施例で得た装飾部材100は、硬さおよび抗菌性に優れるとともに、装飾性に優れる白色を示す装飾部材であった。
[実施例2−2〜2−5]
表2−1に示すように、実施例2−2〜2−5では、TiおよびAgの含有量が異なるスパッタリングターゲットを用いたこと以外は、実施例2−1と同様にして、装飾部材100を得た。
[比較例2−1]
表2−1に示すように、比較例2−1では、TiおよびAgの含有量が異なるスパッタリングターゲットを用いたこと、メタンガス量を変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、装飾部材を得た。比較例2−1で示されるようにAgを含有しないと抗菌性を有しないことが明らかである。
表2−1には、上記で得られた装飾部材について、膜中の金属元素および炭素の量、抗菌性、色調、硬度ならびに耐食性の評価結果を示す。
Figure 2021139039
[実施例2−6]
図1に示す装飾部材100を作製した。スパッタリングターゲットとして、Ti95質量%Ag5質量%の組成を有する焼結体を使用した。基材10としてTiからなる基材を用いた。基材10上にスパッタリング法でアルゴンガス105sccmにメタンガスを10sccm導入して、金属M1としてTiと金属M2としてAgと炭素とを含む白色被膜20(厚さ1.0μm)を形成し、装飾部材100を得た(表2−2)。
[実施例2−7〜2−9]
実施例2−7〜2−9では、表2−2に示すように、メタンガス量を変更したこと以外は、実施例2−6と同様にして、装飾部材100を得た。
[比較例2−2]
比較例2−2では、表2−2に示すように、メタンガスを用いなかったこと以外は、実施例2−6と同様にして、装飾部材を得た。比較例の2−2で得た装飾部材は、膜硬度がHV1000未満であった。
表2−2には、上記で得られた装飾部材について、膜中の金属元素および炭素の量、抗菌性、色調、硬度ならびに耐食性の評価結果を示す。膜中の炭素の量が増えるにしたがい、Agの量も低下しているが、実施例2−9のように、Agの量が1.00at%でも抗菌性が得られた。
Figure 2021139039
また、本実施例ではスパッタリングターゲットとして、TiおよびAgを含む焼結体を用いたが、これに代えて、ZrまたはHfとAgとを含む焼結体を用いて装飾部材100を作成した場合も、TiおよびAgを含む焼結体を用いた場合と同様の評価結果が得られた。
<実施例3>
[実施例3−1]
図1に示す装飾部材100を作製した。スパッタリングターゲットとして、Cr86質量%Cu14質量%の組成を有する焼結体を使用した。基材10としてSUJ2からなる基材を用いた。基材10上にスパッタリング法でアルゴンガス105sccmにメタンガスを5sccm導入して、金属M1としてCrと金属M2としてCuと炭素とを含む白色被膜20(厚さ1.0μm)を形成し、装飾部材100を得た(表3)。
[実施例3−2〜3−10]
表3に示すように、実施例3−2〜3−10では、メタンガス量を変更したこと以外は、実施例3−1と同様にして、装飾部材100を得た。
[比較例3−1]
表3に示すように、比較例3−1では、メタンガスを用いなかったこと以外は、実施例3−1と同様にして、装飾部材を得た。比較例3−1で得た装飾部材は、膜硬度がHV1000未満であった。
[比較例3−2]
表3に示すように、比較例3−2では、メタンガス量を変更したこと以外は、実施例3−1と同様にして、装飾部材を得た。比較例3−2で得た装飾部材は、膜硬度がHV1000未満であり、L*<50.0であった。
表3には、上記で得られた装飾部材について、膜中の金属元素および炭素の量、抗菌性、色調、硬度ならびに耐食性の評価結果を示す。
なお、本実施例ではスパッタリングターゲットとして、CrおよびCuを含む焼結体を用いたが、これに代えて、CrとAgまたはNiとを含む焼結体を用いて装飾部材100を作成した場合も、CrおよびCuを含む焼結体を用いた場合と同様の評価結果が得られた。
また、本実施例ではスパッタリングターゲットとして、CrおよびCuを含む焼結体を用いたが、これに代えて、Nb、Mo、TaまたはWとCu、AgまたはNiとを含む焼結体を用いて装飾部材100を作成した場合も、CrおよびCuを含む焼結体を用いた場合と同様の評価結果が得られた。
Figure 2021139039
<実施例4>
[実施例4−1]
図5に示す装飾部材200を作製した。スパッタリングターゲットとして、Cr86質量%Cu14質量%の組成を有する焼結体を使用した。基材210としてSUJ2からなる基材を用いた。基材210上にスパッタリング法でアルゴンガス105sccmに窒素ガスを7sccm導入して、金属M1’としてCrと金属M2’としてCuと窒素とを含む白色被膜20(厚さ1.0μm)を形成し、装飾部材200を得た(表4)。
[実施例4−2〜4−9]
表4に示すように、実施例4−2〜4−9では、窒素ガス量を変更したこと以外は、実施例4−1と同様にして、装飾部材200を得た。
[比較例4−1]
表4に示すように、比較例4−1では、窒素ガスを用いなかったこと以外は、実施例4−1と同様にして、装飾部材を得た。比較例4−1で得た装飾部材は、膜硬度がHV1000未満であった。
表4には、上記で得られた装飾部材について、膜中の金属元素および窒素の量、抗菌性、色調、硬度ならびに耐食性の評価結果を示す。
なお、本実施例ではスパッタリングターゲットとして、CrおよびCuを含む焼結体を用いたが、これに代えて、CrとAgまたはNiとを含む焼結体を用いて装飾部材200を作成した場合も、CrおよびCuを含む焼結体を用いた場合と同様の評価結果が得られた。
また、本実施例ではスパッタリングターゲットとして、CrおよびCuを含む焼結体を用いたが、これに代えて、Nb、MoまたはTaとCu、AgまたはNiとを含む焼結体を用いて装飾部材200を作成した場合も、CrおよびCuを含む焼結体を用いた場合と同様の評価結果が得られた。
Figure 2021139039
<測定方法>
〔元素量〕
白色被膜中の各元素量は、EDX(エネルギー分散型X線分光法)により測定した。なお、入射電子の加速電圧を15.0kV以上50.0kV以下とし、試料から放出された特性X線を半導体検出器で検出してエネルギー分光し、得られたスペクトルのエネルギー値から試料の定量分析を行った。また、各元素量の定量値を得るにあたり、試料による入射電子の散乱や、試料から放出されたX線の試料内での吸収や蛍光励起が、標準試料と未知試料とで異なることを考慮して補正を行った(ZAF補正法)。
〔抗菌性〕
抗菌性試験は「JIS Z 801:2012 抗菌加工−抗菌性試験方法・抗菌効果」に準じて行った。
1)試験片の準備
抗菌加工試験片(試料、すなわち、実施例および比較例で作製した装飾部材)はエタノール洗浄にて清浄化を行ない、十分風乾させた後、試験に用いた。被覆フィルムおよび無加工試験片はポリエチレンフィルムを裁断しEOG滅菌して用いた。
2)試験菌液の調製
試験菌(黄色ぶどう球菌(NBRC12732)および大腸菌(NBRC3972))は、保存菌を普通寒天培地に接種して培養し、翌日継代してから約18〜20時間後に1/500の普通ブイヨン液に懸濁して調製した。
3)試験菌の接種および培養
試験片に試験菌液0.2mLを接種し、フィルム(20×40mmの長方形)で覆った後、35℃、相対湿度90%以上で24時間培養した。
4)試験菌の洗い出しと生菌数の測定
試験菌液を接種した直後の無加工試験片について、SCDLP培地(抗菌剤不活化培地)10mLを注いで菌を洗い出し、寒天平板培養法で生菌数を調べた。また、24時間培養後の無加工試験片および抗菌加工試験片についても同様に生菌数を測定した。生菌数の測定は寒天平板培養法(寒天平板混釈法)で行った。洗い出し液およびその10倍希釈系列希釈液をシャーレに分注し、標準寒天培地を加えて混合した。寒天が固まった後、シャーレを倒置し、35℃で40〜48時間培養した。培養後、生菌数(コロニー)を計測し、菌数の算出を行なった。
ここで、図9は、無加工試験片について、黄色ブドウ球菌による抗菌性試験後の写真である。図10は、無加工試験片について、大腸菌による抗菌性試験後の写真である。一方、図11は、抗菌加工試験片について、黄色ブドウ球菌による抗菌性試験後の写真である。図12は、抗菌加工試験片について、大腸菌による抗菌性試験後の写真である。これらは、具体的には、生菌数(コロニー)を計測する際のシャーレを示している。なお、図11、図12は、具体的には、実施例1−2の抗菌加工試験片を用いた試験後の写真である。
5)試験成立条件の判定
1.無加工試験片の接種直後の生菌数の対数値について、次式が成立する。
(Lmax−Lmin)/Lmean≦0.2
Lmax:生菌数対数値の最大値
Lmin:生菌数対数値の最小値
Lmean:3個の試験片の生菌数対数値の平均値
2.無加工試験片の接種直後の生菌数平均は6.2×103〜2.5×104個/cm2の範囲内である。
3.無加工試験片にフィルムを用いた場合は、24時間後の生菌数の3個の値がいずれも6.2×102個/cm2以上である。
上記判定を行ったところ、試験成立条件を満たしていた。
6)抗菌活性値の計算および判定
抗菌活性値:R=(Ut−U0)−(At−U0)=Ut−At
U0:無加工試験片の接種直後の生菌数の対数値の平均値
Ut:無加工試験片の24時間後の生菌数の対数値の平均値
At:抗菌加工試験片の24時間後の生菌数の対数値の平均値
「抗菌効果を有する」とは、製品上の24時間後の試験菌の生菌数が無加工製品上の生菌数の1%以下(抗菌活性値2.0以上)となることと定義されている。判定基準は、抗菌活性値2.0以上の場合を○とし、抗菌活性値2.0未満の場合を×とする。
〔膜厚〕
白色被膜の簡易的な膜厚測定は、マスクを施したSiウエハーを基材と共に成膜装置内に導入し、成膜後にマスクを除去して、マスクされていた部分とマスクされていない部分での段差を測定することにより膜厚を測定した。
〔色調〕
装飾部材の色調は、KONICA MINOLTA製のSpectra Magic NX(光源D65)を用いてL***色度図によるL***を測定して評価した。
〔硬度〕
膜硬度は、微小押込み硬さ試験機(FISCHER製H100)を用いて行った。測定子にはビッカース圧子を使用し、5mN荷重で10秒間保持した後に除荷を行い、挿入されたビッカース圧子の深さから膜硬度を算出した。
〔耐食性〕
装飾部材の耐食性は、CASS試験および人工汗試験により評価した。CASS試験はJIS−H 8502に準拠して、酢酸酸性の塩化ナトリウム溶液に塩化第二銅を添加した溶液を噴霧した雰囲気に48時間設置し、白色被膜の剥離および変色を観察し耐食性の評価とした。剥離および変色が見られなかった場合を〇とし、剥離または変色が見られた場合を×とした。
人工汗試験はISO12870に準拠して、塩化ナトリウムと乳酸を混ぜた液(人工汗)を55℃で48時間曝気させた雰囲気に設置し、白色被膜の変色を観察し耐食性の評価とした。変色が見られなかった場合を〇とし、軽微な変色が見られた場合を△とし、変色が見られた場合を×とした。
<結晶構造>
図13は、実施例1−2で作製した装飾部材(Ti80Cu20C)についてX線回折を実施し、結晶構造を測定した結果を示す図である。上記装飾部材の結晶構造はTiCの結晶とCuの結晶とが混合した結晶構造を示す事がわかった。TiとCuとから構成される合金結晶は観測されなかった。2θが42度付近の結晶ピークが一番分りやすいが、[200]面に由来するTiCの結晶と、[111]面に由来するCuの結晶とが混在しているため、TiC[200]面の結晶ピークがブロードになり高角度側(Cu由来の[111]面方向)へシフトしている事が分る。
図14は、Cuの含有比率を変更した場合の結晶構造の比較を示す図である。Cu量を増やすに従い、TiC結晶構造に由来する[111]面および[200]面の結晶ピークの幅はCuの結晶と混ざってよりブロードになっていく事が分った。Cu量を増やすに従い、耐食性が低下していく理由としては、TiとCuとから構成される合金結晶が生成されず、TiCとCuとが混合層を形成しているためと考えられた。
また、図15は、実施例2−2で作製した装飾部材(Ti80Ag20C)についてX線回折を実施し、結晶構造を測定した結果を示す図である。上記装飾部材の結晶構造はTiCの結晶とAgの結晶とが混合した結晶構造を示す事がわかった。TiとAgとから構成される合金結晶構造は観測されなかった。TiCに由来する[111]面および[200]面に由来する結晶ピークが、Agに由来する[111]面および[200]面の結晶ピークと混合する事で、結晶ピークが高角度側へシフトすると共に、混合層を形成していることで、ピーク幅がブロードになっていることが分った。
図16は、Agの含有比率を変更した場合の結晶構造の比較を示す図である。Ag量を増やすに従い、TiC結晶構造に由来する[111]面および[200]面の結晶ピークの幅はAgの結晶と混ざってよりブロードになっていく事が分った。Ag量を増やすに従い、耐食性が低下していく理由としては、TiとAgとから構成される合金結晶が生成されず、TiCとAgとが混合層を形成しているためと考えられた。
<測定方法>
〔結晶構造〕
結晶性測定は、X線回折装置(RIGAKU製、製品名SmartLab)を用いて行った。測定は以下の条件で行った。
全体定性分析条件 X線出力:40kV、30mA、スキャン軸:2θ/θ、スキャン範囲:5〜120°、0.02ステップ、ソーラースリット:5deg、長手制限スリット:15mm。
微小部定性分析条件 X線出力:40kV、30mA、スキャン軸:2θ/θ、スキャン範囲:5〜120°、0.02ステップ、ソーラースリット:2.5deg、長手制限スリット:15mm。
100、200 装飾部材
10、210 基材
11、211 密着層
12、212 傾斜密着層
13、213 硬化層
20、220 白色被膜

Claims (8)

  1. 基材および前記基材上に設けられた白色被膜を有し、
    前記白色被膜が、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の金属M1と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2と、炭素とを含み、
    前記白色被膜中、炭素が4.58at%以上77.29at%以下の量で含まれる、
    装飾部材。
  2. 前記金属M1がTiであり、前記金属M2がCuまたはNiであり、前記白色被膜中、前記金属M2が1.91at%より多く31.35at%以下の量で含まれる、
    請求項1に記載の装飾部材。
  3. 前記金属M1がTiであり、前記金属M2がAgであり、前記白色被膜中、前記金属M2が1.00at%以上9.55at%以下の量で含まれる、
    請求項1に記載の装飾部材。
  4. 前記白色被膜は、Lab色空間表示において、L*が50.0以上であり、a*が−3.0以上3.0以下であり、b*が−5.0以上5.0以下である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の装飾部材。
  5. 前記基材と前記白色被膜との間に、さらに中間層が設けられている、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の装飾部材。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の装飾部材を含む、
    時計。
  7. 基材上に、白色被膜を設ける工程を含み、
    前記白色被膜が、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の金属M1と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2と、炭素とを含み、前記白色被膜中、炭素が4.58at%以上77.29at%以下の量で含まれる、
    装飾部材の製造方法。
  8. 基材および前記基材上に設けられた白色被膜を有し、
    前記白色被膜が、Cr、Nb、MoおよびTaから選ばれる少なくとも1種の金属M1’と、Cu、AgおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属M2’と、窒素とを含み、
    前記白色被膜中、窒素が13.95at%以上84.86at%以下の量で含まれる、
    装飾部材。
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