JP2021138938A - 蛍光標識剤、及びフタロシアニン - Google Patents

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Abstract

【課題】650nm以上の波長領域における蛍光標識剤に適した蛍光強度、耐光性、耐久性に優れた特性を有するフタロシアニンを提供する。【解決手段】下式で表されるフタロシアニンを含むことを特徴とする蛍光標識剤。X1〜X17の少なくとも1つは−R1−Z;R1は直接結合、−O−、−OP(=O)R2−等を表す。【選択図】図1

Description

本発明は、蛍光標識剤と、それに用いられるフタロシアニンに関する。
バイオイメージングは、タンパク質や細胞、組織などを可視化する技術であり、生体内分子・細胞機能の解明や創薬の研究等、生物学、医学の研究領域で幅広く活用されている。
中でも蛍光バイオイメージング法は、現象の動的な観察、多色観察、高感度観察が可能なイメージング法である。さらに、近年では、蛍光バイオイメージング法は非侵襲的に診断可能なイメージング法として注目されており、患者への負担が少ない画像診断や手術中のリアルタイム診断など臨床現場における応用が期待されている。
蛍光バイオイメージング法は、主に標的部位に吸着、あるいは、標的部位でのみ発光する蛍光色素を用い、その蛍光色素に紫外〜近赤外領域の光を照射した際に色素が発する蛍光を検出することにより、標的を可視化する方法である。
蛍光バイオイメージング用の色素(蛍光標識剤)の多くは、可視光領域に吸収を有するものであるが、可視光はエネルギーが強いため、光の照射によって色素が劣化し易いという問題があった。また、可視光領域に吸収や蛍光を示す色素は、色素に由来する蛍光だけではなく、生体の内在物質からの蛍光(自家蛍光)も検出されてしまうため、良好な画質が得られないという問題があった。加えて、可視光はヘモグロビンなどの身体を構成する物質によっても吸収されてしまうため、体内の深部まで光が到達せず、生体が生きている状態で血管や臓器を観察することは困難であるという問題があった。
これに対して、650〜1800nmの波長領域は、生体の窓と呼ばれる生体透過性の高い領域と言われている。現在は、生体の第1光学窓と言われる波長650〜900nmに蛍光を発するインドシアニングリーンやIRdye800が、蛍光バイオイメージングの蛍光標識剤として用いられている。しかし、インドシアニングリーンやIRdye800のようなシアニン色素を用いた蛍光標識剤は、耐光性や耐久性が低いため、光の照射によって蛍光標識剤が劣化し易く、長時間の観察ができないという問題があった(非特許文献1、2)。
一方、フタロシアニン色素は、優れた光学特性、高い蛍光強度、高い耐光性を有する色素として知られている。例えば、特許文献1には、フタロシアニン色素を含む蛍光標識剤が開示されている。しかし、蛍光標識剤として用いるには蛍光強度が低いといった課題があった。
国際公開第2004/038378号
会澤英樹、外3名、「診断試薬用シリカナノ粒子の開発」、古河電工時報、古河電気工業株式会社、平成20年3月、第121号、p.17 BIOINDUSTRY 第34巻、第1号、通算394号、2017年1月12日発行 シーエムシー出版、p.29
本発明が解決しようとする課題は、650nm以上の波長領域において、蛍光標識剤に適した蛍光強度、耐光性、耐久性に優れた特性を有するフタロシアニンを提供することである。
本発明者らは、前記諸問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、上記課題を解決するための優れた特性を有するフタロシアニンを見出し、本発明をなしたものである。
すなわち、本発明は、一般式(1)で表されるフタロシアニンを含むことを特徴とする蛍光標識剤に関する。

一般式(1):
Figure 2021138938


〜X16は、それぞれ独立に、−R−Z、水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、複素環基、−AB、−SO、または−COOMを表す。Aは、16族元素を表す。Bは、水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、または複素環基を表す。M、Mはそれぞれ独立に、水素原子または1価のカチオンを表す。
〜X16は、隣接する置換基同士が互いに連結して、環を形成してもよい。
17は、−R−Z、水酸基、ハロゲン元素、アルコキシ基、アリールオキシ基、−OP(=O)X1819、−OC(=O)X20、−OS(=O)21、または−OSiX222324を表す。X18及びX19は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または複素環基を表す。X20は、水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。X21は、水酸基、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。X22〜X24は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
Yは、2価〜5価の金属原子を表し、Yが2価の金属原子である場合はkは0であり、Yが3価の金属原子である場合はkは1であり、Yが4価または5価の金属原子である場合はkは2である。
ただし、X〜X17の少なくとも1つは−R−Zであり,
は、直接結合、−O−、−OP(=O)R−、−OC(=O)−、−OS(=O)−、−OSiR−、−C(=O)−、または−C(=O)NH−を表す。
Zは、−(L)−(W)または−(L)−(Q)を表し、(L)はリンカー、(W)は標的物質を認識する物質とフタロシアニンとを結合させるための反応性基、(Q)は標的物質を認識する物質を表す。
は、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または複素環基を表す。
、Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
また、本発明は、標的物質の標識方法が抗原抗体反応である、前記蛍光標識剤に関する。
また、本発明は、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物に関する。
一般式(1):
Figure 2021138938

〜X16は、それぞれ独立に、−R−Z、水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、複素環基、−AB、−SO、または−COOMを表す。Aは、16族元素を表す。Bは、水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、または複素環基を表す。M、Mはそれぞれ独立に、水素原子または1価のカチオンを表す。
〜X16は、隣接する置換基同士が互いに連結して、環を形成してもよい。
17は、−R−Z、水酸基、ハロゲン元素、アルコキシ基、アリールオキシ基、−OP(=O)X1819、−OC(=O)X20、−OS(=O)21、または−OSiX222324を表す。X18及びX19は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または複素環基を表す。X20は、水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。X21は、水酸基、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。X22〜X24は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
Yは、2価〜5価の金属原子を表し、Yが2価の金属原子である場合はkは0であり、Yが3価の金属原子である場合はkは1であり、Yが4価または5価の金属原子である場合はkは2である。
ただし、X〜X17の少なくとも1つは−R−Zであり,
は、直接結合、−O−、−OP(=O)R−、−OC(=O)−、−OS(=O)−、−OSiR−、−C(=O)−、または−C(=O)NH−を表す。
Zは、−(L)−(W)または−(L)−(Q)を表し、(L)はリンカー、(W)は標的物質を認識する物質とフタロシアニンとを結合させるための反応性基、(Q)は標的物質を認識する物質を表す。
は、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または複素環基を表す。
、Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
本発明によって、650nm以上の長波長の波長領域において、蛍光標識剤に適した蛍光強度、耐光性、耐久性に優れた特性を有するフタロシアニンを提供することが可能となった。
図1は、蛍光標識剤1の蛍光強度評価での蛍光スペクトルである。 図2は、蛍光標識剤2の蛍光強度評価での蛍光スペクトルである。 図3は、蛍光標識剤10の蛍光強度評価での蛍光スペクトルである。 図4は、蛍光標識剤22の蛍光強度評価での蛍光スペクトルである。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の蛍光標識剤に用いられるフタロシアニンは、一般式(1)で表される構造を有する。
アルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、2−エチルヘキシル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基等を挙げることができる。アルキル基の炭素数は1〜30の範囲内であることが好ましい。
アルキル基は置換基を有する置換アルキル基または無置換のアルキル基であってよく、置換基としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基等の他、上述したアルキル基、後述するアリール基、シクロアルキル基、複素環基が挙げられる。また、構造の一部が、アミド結合(−NHCO−)やエステル結合(−COO−)、エーテル結合(−O−)で置換されている場合、その置換部分も「置換基」として含めるものとする。
したがって、置換アルキル基としては、上記の置換基で置換されたアルキル基を意味する。一つ又は二つ以上の置換基で置換されたものであっても良い。例えば、ハロゲン原子で置換されたアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、トリクロロメチル基2,2−ジブロモエチル基等を挙げることができる。
また、アミド結合で置換されたアルキル基の具体例としては、−CH−CH−CH−NHCO−CH−CH−、−CH−CH(−CH)−CH−NHCO−CH−CH−、−CH−CH−CH−NHCO−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−NHCO−CH−CH(CH−CH)−CH−CH−CH−CH−、−(CH−NHCO−(CH11−CH、−CH−CH−CH−C(−NHCO−CH−CH−等を挙げることができる。アミド結
合で置換されたアルキル基の炭素数は、2〜30の範囲内であることが好ましい。
また、エステル結合で置換されたアルキル基の具体例としては、−CH−CH−CH−COO−CH−CH、−CH−CH(−CH)−CH−COO−CH−CH、−CH−CH−CH−OCO−CH−CH、−CH−CH−CH−CH−COO−CH−CH(CH−CH)−CH−CH−CH−CH、−(CH−COO−(CH11−CH、−CH−CH−CH−CH−(COO−CH−CH等を挙げることができる。エステル結合で置換されたア
ルキル基の炭素数は、2〜30の範囲内であることが好ましい。
また、エーテル結合で置換されたアルキル基の具体例としては、−CH−O−CH、−CH−CH−O−CH−CH、−CH−CH−CH−O−CH−CH、−(CH−CH−O)−CH(ここでnは1から8の整数である)、−(CH−CH−CH−O)−CH(ここでmは1から5の整数である)、−CH−CH(CH)−O−CH−CH−、−CH−CH−(OCH等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。エーテル結合で置換されたアルキル基の炭素数は、2〜30の範囲内であることが好ましい。
また、アミド結合(−NHCO−)、エステル結合(−COO−)、およびエーテル結合(−O−)のうち2種以上の置換基で置換されたアルキル基の具体例としては、−CH−CH−NHCO−CH−CH−O−CH−CH(CH−CH)−CH−CH−CH−CH、−CH−CH−COO−CH−CH−O−CH−CH−NHCO−CH−CH(CH−CH)−CH−CH−CH−CHを挙げることができる。アミド結合(−NHCO−)、エステル結合(−COO−)、およびエーテル結合(−O−)のうち2種以上の置換基で置換されたアルキル基の炭素数は、3〜30の範囲内であることが好ましい。
シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基、2,5−ジメチルシクロペンチル基、4−tert−プチルシクロヘキシル基等が挙げられる。また、シクロアルキル基の炭素数は5〜12の範囲内であることが好ましい。シクロアルキル基は置換シクロアルキル基であってもよく、置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。
アルケニル基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基が挙げられる。アルケニル基はその構造中に一つの二重結合を一般的に指すが、本明細書においては複数の二重結合を有するものもアルケニル基に含めるものとする。具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、1,3−ブタジエニル基等を挙げることができる。アルケニル基の炭素数は2〜18の範囲内であることが好ましい。アルケニル基は置換アルケニル基であってもよく、置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。
アリール基としては、単環または縮合多環のアリール基が挙げられる。例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、p−ビフェニル基、m−ビフェニル基、2−アントリル基、9−アントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、9−フェナントリル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、9−フルオレニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、3−ペリレニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−メチルビフェニル基、ターフェニル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−tert−ブチル−1−ナフチル基、4−ナフチル−1−ナフチル基、6−フェニル−2−ナフチル基、10−フェニル−9−アントリル基、スピロフルオレニル基、2−ベンゾシクロブテニル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は6〜18の範囲内であることが好ましい。
アリール基は置換アリール基であってもよく、の置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。
複素環基としては、脂肪族複素環基や芳香族複素環基が挙げられる。具体例としては、ピリジル基、ピラジル基、ピペリジノ基、ピラニル基、モルホリノ基、アクリジニル基等が挙げられる。また、下記構造式で表される基も挙げられる。複素環基の炭素数は、4〜12であることが好ましい。環員数は、5〜13であることが好ましい。
Figure 2021138938

複素環基は置換複素環基であってもよく、置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。例えば、複素環基3−メチルピリジル基、N−メチルピペリジル基、N−メチルピローリル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシル基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3−ジメチル−3−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、ステアリルオキシ基、2−エチルへキシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシル基の炭素数は1〜6の範囲内であることが好ましい。アルコキシ基は置換アルコキシル基であってもよく、置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。
置換アルコキシ基の置換基の具体例としては、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロポキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−ブトキシエトキシ基、2−ニトロプロポキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、単環または縮合多環のアリールオキシ基が挙げられる。具体例としては、フェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、アンスリルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基は、単環のアリールオキシ基が好ましい。また、炭素数6〜12のアリールオキシ基が好ましい。
アリールオキシ基は置換アリールオキシ基であってもよく、置換基としては、上述したアリール基における置換基と同じ置換基が挙げられる。例えば、p−ニトロフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、2,4−ジクロロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、2−メチル−4−クロロフェノキシ基等が挙げられる。
アルキレン基としては、アルキル基から一つの水素原子を除いた二価の基が挙げられる。
アルキレン基は置換もしくは無置換のアルキレン基であってよく、その具体例としては、−CH−CH−、−CH−CH−CH−NHCO−CH−CH−、−CH−CH−CH−OCO−CH−CH−、−CH−CH−CH−O−CH−CH−等が挙げられる。
アリーレン基としては、アリール基から一つの水素原子を除いた二価の基が挙げられる。アリーレン基は置換もしくは無置換のアリーレン基であってよく、その具体例としては、下記構造式で表される基が挙げられる。
Figure 2021138938


第16族元素としては、酸素、硫黄、セレン、テルル等が挙げられる。この内、酸素、硫黄、セレンが好ましく、合成の容易さや安全性の点で酸素、硫黄がより好ましい。
〜X16は、隣接する置換基同士が互いに連結して、環を形成してもよく、好ましい具体例としてはナフタロシアニン構造等が挙げられる。
Yの2価の金属としてはMg、Cu、Zn等が挙げられる。3価の金属原子としては、Al、Ga、In等が挙げられる。4価の金属原子としては、Si、Mn、Sn、Cr、Zr等が挙げられる。5価の金属原子としては、P等が挙げられる。耐光性の観点からは、Al、Siが好ましく、蛍光強度の観点から、Alがより好ましい。
、Mの1価のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。
(蛍光標識剤)
本発明の蛍光標識剤は、生化学研究から医療診断までの幅広い分野におけるバイオイメージング用蛍光標識として応用可能であり、例えば、遺伝子診断分野、免疫診断分野、医療開発分野、再生医療分野、環境試験分野、バイオテクノロジー分野、蛍光検査等における蛍光標識等として使用することができる。
本発明の蛍光標識剤の用途は特に限定されないが、例えば、細胞、タンパク質や生体内の低分子化合物を蛍光ラベルすることで、生体内での挙動を可視化することが挙げられる。また、本発明の好ましい形態として、抗原抗体反応により標的物質を標識するための蛍光標識剤が挙げられる。
フタロシアニンに−R−Zを導入することで、上記用途に好適な蛍光標識剤を得ることができる。また、−R−Z以外のX〜X17を導入することにより、650nm以上の波長領域において、蛍光標識剤に適した蛍光強度、耐光性、耐久性に優れた特性を得ることが可能となる。
抗原抗体反応により標的物質を標識する場合、本発明のフタロシアニンに対して標的物質と結合する物質をラベル化することが好ましく、すなわち、−R−Zにおいて、Zが−(L)−(Q)であることが好ましい。
標的物質を認識する物質(Q)とフタロシアニンとを結合するリンカー(L)は、直接結合、またはC、N、P、O、およびSの中から選択される1〜60の原子を有する直鎖または分岐、環式または複素環式、飽和または不飽和である分子鎖が挙げられるが、これに限定されるものではない。
標的物質を認識する物質とフタロシアニンとを結合させるための反応性基(W)としては、反応性アミノ基、反応性チオール基、NHSエステル等の活性化エステル、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アルキル、無水物、カルボン酸、カルボジイミド、カルボナート、カルバメート、ハロアセトアミド(例えばヨードアセトアミド)、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、スルホン酸エステルおよびチオシアナートなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
標的物質(標的生体物質)を認識する物質(Q)としては、タンパク質等を特異的に認識しうる抗体(がん抗体を含む)、ペプチド、タンパク質受容体や当該タンパク質に結合しうる低分子化合物等を挙げることができる 。例えば、標的生体物質が癌等の疾患部位、または細胞において特異的に発現する種々のタンパク質またはペプチドである場合、標的生体物質を認識する物質としては、これらに対する抗体(セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、トラスツズマブ等のがん抗体、内皮細胞マーカー抗体、組織特異的抗体、リン酸化タンパク抗体など)またはその親和性物質、ビオチン、葉酸、トランスフェリン、トランスフェリン結合型ペプチドなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
標的生体物質を認識する物質とフタロシアニンを連結する方法としては、反応性官能基を介した共有結合の形成が挙げられるがこれに限定されない。標的生体物質にチオール、ヒドロキシル、カルボキシル、またはアミノ基がある場合、フタロシアニンに導入する反応性官能基としては、反応性アミノ基、反応性チオール基、NHSエステル等の活性化エステル、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アルキル、無水物、カルボン酸、カルボジイミド、カルボナート、カルバメート、ハロアセトアミド(例えばヨードアセトアミド)、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、スルホン酸エステルおよびチオシアナートなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の蛍光標識剤をリン脂質に集積させることで、細胞膜やエクソソーム、リポソームを蛍光ラベル化することができる。このような用途の場合、本発明のフタロシアニンの軸置換基がリン脂質への集積性に優れるためであると考えられる。
本発明のフタロシアニンの濃度は特に限定されないが、例えば、細胞を扱う場合、細胞の機能障害や増殖阻害等への影響を考量すると、濃度は低い方が好ましく、本発明のフタロシアニンの濃度は100μM以下であることが好ましい。
本発明における蛍光標識剤は、本発明のフタロシアニンを含有していれば、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、水や有機溶剤、両親媒性物質等が挙げられる。
本発明のフタロシアニンの合成方法としては特に限定されないが、例えば、フタロニトリル誘導体を原料として公知の方法で金属フタロシアニンを合成した後、対応する軸成分とジメチルスルホキシド溶媒中で加熱撹拌することで得ることができる。
原料であるフタロニトリル誘導体が非対称の構造である場合、得られるフタロシアニンは置換基の位置が異なる異性体の混合物として得られる。本明細書においては、異性体の構造のうち一例を示す。
本発明のフタロシアニンの具体例としては、以下のフタロシアニンが挙げられるが、本発明のフタロシアニンはこれらに限定されない。以下、Etとはエチル基を示す。
Figure 2021138938
Figure 2021138938
Figure 2021138938
本発明のフタロシアニンは、近赤外吸収材として保護眼鏡、近赤外線吸収フィルター、農業用フィルム、光ガード等の近赤外吸収材料に使用することができる。また、着色材として印刷インキ、IJインキ、プラスチック、塗料、繊維、文具、筆記具、化粧品等の着色に使用することができる。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは、「質量部」を表す。
<フタロシアニンA−1の製造方法>
キノリン50部および無水塩化アルミニウム1部の溶液にアンモニアガスを導入し、3−エトキシフタロニトリルを5部添加した。180℃で7時間反応させた。これを室温まで冷却した後、メタノール200部と10%塩酸水溶液200部を加え、析出した固体をろ取し、水200部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率88.4%で4.7部の表2に示すフタロシアニンA−1を得た。
<フタロシアニンA−2〜A−9の製造方法>
フタロシアニンA−1の製造方法で使用した3−エトキシフタロニトリルを表2に示すフ
タロニトリル誘導体に変更した以外は、フタロシアニンA−1の製造と同様にして、表2
に示すフタロシアニンA−2〜A−9をそれぞれ製造した。尚、フタロニトリル誘導体は、フタロシアニンA−1の製造における3−エトキシフタロニトリルと同モル量使用した。
Figure 2021138938
Figure 2021138938
<フタロシアニンB−1の製造方法>
フタロシアニンA−1を3部N−メチル−2−ピロリドン(NMP)10部に溶解させ、水酸化カリウム0.45部を水1部に溶解させた水溶液を全量添加した。110℃で7時間反応させた。これを室温まで冷却した後、水100部を加え、析出した固体をろ取し、水100部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率99.2%で2.9部の表3に示すフタロシアニンB−1を得た。
<フタロシアニンB−2〜B−4の製造方法>
フタロシアニンB−1の製造方法で使用したフタロシアニンA−1を表3に示すフタロシアニンAに変更した以外は、フタロシアニンB−1の製造と同様にして、表3に示すフタロシアニンB−2〜B−4をそれぞれ製造した。尚、フタロシアニンAは、フタロシアニンB−1の製造におけるフタロシアニンA−1と同モル量使用した。
Figure 2021138938
<フタロシアニンC−1の製造方法>
フタロシアニンB−1を1部と3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン0.6部をピ
リジンに溶解させ、115℃で3時間還流した。エバポレーターでピリジンを除去した後、エタノール10部と水50部の混合溶液を加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率33.7%で0.39部の表4に示すフタロシアニンC−1を得た。
<フタロシアニンC−2〜C−4の製造方法>
フタロシアニンC−1の製造方法で使用したフタロシアニンB−1を表4に示すフタロシアニンBに変更した以外は、フタロシアニンC−1の製造と同様にして、表4に示すフタロシアニンC−2〜C−4をそれぞれ製造した。尚、フタロシアニンBは、フタロシアニンC−1の製造におけるフタロシアニンB−1と同モル量使用した。
Figure 2021138938
<フタロシアニンC−5の製造方法>
フタロシアニンA−1を0.7部と4−(3−アミノプロピル)ベンゼンスルホン酸0.
4部をジメチルスルホキシド50部に溶解させ、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン0.3部を添加した後、90℃で5時間反応させた。これを室温まで冷却した後、水100部と食塩10部を加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率41.6%で0.36部の表5に示すフタロシアニンC−5を得た。
<フタロシアニンC−6〜C−8の製造方法>
フタロシアニンC−5の製造方法で使用したフタロシアニンA−1を表5に示すフタロシアニンAに変更した以外は、フタロシアニンC−5の製造と同様にして、表5に示すフタロシアニンC−6〜C−8をそれぞれ製造した。尚、フタロシアニンAは、フタロシアニンC−5の製造におけるフタロシアニンA−1と同モル量使用した。
Figure 2021138938
<フタロシアニンD−1の製造方法>
フタロシアニンC−1を0.06部と無水コハク酸0.007部をN−メチル−2−ピロ
リドン(NMP)5部に溶解させ、90℃で4時間反応させた。遠心エバポレーターでNMPを除去した後、水5部を加え、析出した固体をろ取し、水5部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率61.1%で0.041部の表1に示すフタロシアニンD−1を得た。質量分析装置(TOF−MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=949.37(理論値948.06)に分子イオンピークが検出され、表1に示すフタロシアニンD−1の構造を有することが同定された。
<フタロシアニンD−2〜D−9の製造方法>
フタロシアニンD−1の製造方法で使用したフタロシアニンC−1と無水コハク酸を表6に示すフタロシアニンCと無水コハク酸誘導体に変更した以外は、フタロシアニンD−1の製造と同様にして、表1に示すフタロシアニンD−2〜D−9をそれぞれ製造した。尚、フタロシアニンCおよび無水コハク酸誘導体は、フタロシアニンD−1の製造におけるフタロシアニンC−1および無水コハク酸と同モル量使用した。得られたフタロシアニンD−2〜D−9の構造は、質量分析装置(TOF−MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)によって同定し、表1に示した構造を有することが確認された。表8に示した構造を有することが確認された。表9にマススペクトルの分析結果を示す。
Figure 2021138938
<フタロシアニンD−10の製造方法>
フタロシアニンA−1を0.5部と(2−カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸0.
29部をジメチルスルホキシド20部に溶解させ、80℃で8時間反応させた。これを室温まで冷却した後、水50部と食塩10部を加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率74.4%で0.46部の表1に示すフタロシアニンD−10を得た。質量分析装置(TOF−MS:ブルカー・ダルトニクス社製 aut
oflexII)により分析した結果m/z=929.98(理論値928.88)に分子イオンピークが検出され、表8に示すフタロシアニンD−10の構造を有することが同
定された。
<フタロシアニンD−11〜D−14の製造方法>
フタロシアニンD−10の製造方法で使用した(2−カルボキシエチル)フェニルホスフ
ィン酸を表7に示すXに変更した以外は、フタロシアニンD−10の製造と同様にして、表1に示すフタロシアニンD−11〜D−14をそれぞれ製造した。尚、Xは、フタロシアニンD−10の製造における(2−カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸と同モル量使用した。得られたフタロシアニンD−11〜D−14の構造は、質量分析装置(TOF−MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)によって同定し、表8に示した構造を有することが確認された。表9にマススペクトルの分析結果を示す。
<フタロシアニンD−15の製造方法>
フタロシアニンA−1を1部とテレフタル酸0.4部をジメチルスルホキシド50部に溶
解させ、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン0.4部を添加した後、90℃で5時間反応させた。これを室温まで冷却した後、水100部と食塩10部を加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率44.4%で0.52部の表1に示すフタロシアニンD−15を得た。質量分析装置(TOF−MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=881.45(理論値880.85)に分子イオンピークが検出され、表8に示すフタロシアニンD−15の構造を有することが同定された。
<フタロシアニンD−16〜D−18の製造方法>
フタロシアニンD−15の製造方法で使用したフタロシアニンA−1とテレフタル酸を表7に示すフタロシアニンAとXに変更した以外は、フタロシアニンD−15の製造と同様にして、表1に示すフタロシアニンD−16〜D−18をそれぞれ製造した。尚、フタロシアニンAおよびXは、フタロシアニンD−15の製造におけるフタロシアニンA−1およびテレフタル酸と同モル量使用した。得られたフタロシアニンD−16〜D−18の構造は、質量分析装置(TOF−MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)によって同定し、表8に示した構造を有することが確認された。表9にマススペクトルの分析結果を示す。
Figure 2021138938
Figure 2021138938
Figure 2021138938
Figure 2021138938
<フタロシアニンE−1の製造方法>
キノリン50部および無水塩化アルミニウム1部の溶液にアンモニアガスを導入し、6−tert−アミルナフタレン−2,3−ジカルボニトリルを5.6部と4―フルオロフタロニトリルを1.1部添加した。180℃で7時間反応させた。これを室温まで冷却した後、メタノール200部と10%塩酸水溶液200部を加え、析出した固体をろ取し、水200部で洗浄を行った。粗製物を中圧分取液体クロマトグラフ(山善製Smart Flash AKROS)を用いて精製した。80℃で乾燥させ、収率30.5%で表10に示す化合物E−1を得た。
<フタロシアニンE−2の製造方法>
フタロシアニンE−1の製造方法で使用した6−tert−アミルナフタレン−2,3−ジカルボニトリルを表10に示す3−エトキシフタロニトリルに変更した以外は、フタロシアニンE−1の製造と同様にして、表10に示すフタロシアニンE−2を製造した。尚、3−エトキシフタロニトリルは、フタロシアニンE−1の製造における6−tert−アミルナフタレン−2,3−ジカルボニトリルと同モル量使用した。
Figure 2021138938
<フタロシアニンF−1の製造方法>
フタロシアニンE−1を1.0部とアジピン酸0.6部をジメチルスルホキシド50部に溶解させ、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン0.4部を添加した後、90℃で8時間反応させた。これを室温まで冷却した後、水100部を加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。粗製物を中圧分取液体クロマトグラフ(山善製Smart Flash AKROS)を用いて精製した後、80℃で乾燥させ、収率55.0%で表1に示すフタロシアニンF−1を得た。質量分析装置(TOF−MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=1079.52(理論値1079.68)に分子イオンピークが検出され、表11に示すフタロシアニンF−1の構造を有することが同定された。
Figure 2021138938
<フタロシアニンG−1の製造方法>
フタロシアニンE−2を1.0部とエタノールアミン0.5部をジメチルスルホキシド50部に溶解させ、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン0.3部を添加した後、90℃で8時間反応させた。これを室温まで冷却した後、水100部を加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。粗製物を中圧分取液体クロマトグラフ(山善製Smart Flash AKROS)を用いて精製した後、80℃で乾燥させ、収率64.2%で表12に示すフタロシアニンG−1を得た。
<フタロシアニンG−2の製造方法>
フタロシアニンG−1を1部と無水コハク酸0.26部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)50部に溶解させ、90℃で4時間反応させた。遠心エバポレーターでNMPを除去した後、水5部を加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率65.9%で表12に示すフタロシアニンG−2を得た。質量分析装置(TOF−MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=867.16(理論値866.27)に分子イオンピークが検出され、表12に示すフタロシアニンG−2の構造を有することが同定された。
Figure 2021138938
<フタロシアニンH−1の製造方法>
スルホラン200部、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)15.7部に4−エチルチオ−1,3−ジイミノイソインドリン5部および四塩化ケイ素8.8部を加え、160〜170℃で8時間加熱撹拌後、室温(25℃)まで冷却した。メタノール200部を加え、析出した沈澱を濾別して、メタノール:水(質量比4:1)混合溶液で洗浄後、乾燥して、収率71.4%で表13に示すフタロシアニンH−1を得た。
<フタロシアニンH−2の製造方法>
フタロシアニンH−1を1部と3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン0.2部をピ
リジンに溶解させ、115℃で3時間還流した。エバポレーターでピリジンを除去した後、エタノール10部と水50部の混合溶液を加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率50.6%で表13に示すフタロシアニンH−2を得た。
<フタロシアニンH−3の製造方法>
フタロシアニンH−2を1部と無水コハク酸0.26部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)50部に溶解させ、90℃で4時間反応させた。遠心エバポレーターでNMPを除去した後、水5部を加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率65.9%で表13に示すフタロシアニンH−3を得た。質量分析装置(TOF−MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=1031.19(理論値1030.42)に分子イオンピークが検出され、表13に示すフタロシアニンH−3の構造を有することが同定された。
Figure 2021138938

[実施例1]
<色素溶液1の作製>
ジメチルスルホキシド1000部にフタロシアニンD−1を1.896部溶解した。0
.2μmナイロン製メンブレンフィルターでろ過してフタロシアニンD−1の色素溶液1を作製した。
[実施例2〜21]
<色素溶液2〜21の作製>
色素溶液1の作製で使用したフタロシアニンD−1のかわりに、表14に示すフタロシアニンに変更した以外は、色素溶液1の作製と同様にして、色素溶液2〜21をそれぞれ作製した。ただし、各フタロシアニンは、フタロシアニンD−1と同モル量使用した。
[比較例1〜3]
<色素溶液22の作製>
色素溶液1の作製で使用したフタロシアニンD−1のかわりに、インドシアニングリーン(東京化成)に変更した以外は、色素溶液1の作製と同様にして、色素溶液22を作製した。ただし、各色素は、フタロシアニンD−1と同モル量使用した。
<蛍光強度評価>
各々の色素溶液について、蛍光光度計(日本分光株式会社製、FP−6500)を用いて蛍光スペクトルを測定し、蛍光波長780〜840nmの範囲内での蛍光強度積分値を求めた。また、この時の励起光は色素の最も長波長側の吸収極大波長に相当する波長を用いた。比較例1の色素溶液21の蛍光強度積分値を1とした時の、各々の蛍光標識剤の蛍光強度積分値の相対値を算出し、下記の基準に基づいて評価した。評価が3以上である場合、各フタロシアニンは蛍光標識剤として用いた場合の特性が良好であるといえる。(実用レベルは3以上)

4:蛍光強度積分値 2.5以上
3:蛍光強度積分値 2以上、2.5未満
2:蛍光強度積分値 1.5以上、2未満
1:蛍光強度積分値 1.5未満
<耐光性評価>
各々の色素溶液について、色素の最も長波長側の吸収極大波長に相当する波長を、蛍光分光光度計(日本分光社製FP―6500、励起波長のスリット幅20nm)で2時間照射した際の吸収スペクトルの変化を分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100)を用いてそれぞれ測定した。光照射前の最大吸収波長の吸光度をI、光照射後の最大吸収波長の吸光度をIを記録し、I/I値を耐光性の指標とした。評価基準は以下の通りである。(実用レベルは3以上)

4:相対強度 90%以上
3:相対強度 85%以上、90%未満
2:相対強度 80%以上、85%未満
1:相対強度 80%未満
<耐久性評価>
各々の色素溶液について、40℃で7日間保存した際の吸収スペクトルの変化を分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100)を用いてそれぞれ測定した。光照射前の最大吸収波長の吸光度をI、光照射後の最大吸収波長の吸光度をIを記録し、I/I値を耐光性の指標とした。
評価基準は以下の通りである。(実用レベルは3以上)

4:相対強度 90%以上
3:相対強度 85%以上、90%未満
2:相対強度 80%以上、85%未満
1:相対強度 80%未満
以下、評価結果を表14に示す。図に色素溶液1、2、10、22の蛍光スペクトルを示す。
Figure 2021138938
[実施例22]
<フタロシアニンI−1の製造方法>
フタロシアニンD−1を1部とN−ヒドロキシスクシイミド0.12部をN,N−ジメチルスルホキシド20部に溶解させた。そこに、ジシクロヘキシルカルボジイミド0.22部をジメチルスルホキシド15部に溶解させた溶液を滴下した後、25℃で12時間反応させた。遠心エバポレーターを用いてジメチルスルホキシドを除去した後、ジエチルエーテル50部で洗浄することで表1に示すフタロシアニンI−1を得た。質量分析装置(TOF−MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=1046.35(理論値1045.13)に分子イオンピークが検出され、表1に示すフタロシアニンI−1の構造を有することが同定された。
[実施例23〜42]
<フタロシアニンI−2〜I−21の製造方法>
フタロシアニンI−1の製造方法で使用したフタロシアニンD−1を表15に示すフタロシアニンに変更した以外は、フタロシアニンI−1の製造と同様にして、表1に示すフタロシアニンI−2〜I−21をそれぞれ製造した。尚、フタロシアニンは、フタロシアニンI−1の製造におけるフタロシアニンD−1と同モル量使用した。得られたフタロシアニンI−2〜I−21の構造は、質量分析装置(TOF−MS:ブルカー・ダルトニクス社製autoflexII)によって同定し、表1に示した構造を有することが確認された。表15にマススペクトルの分析結果を示す。
Figure 2021138938



フタロシアニンD−1〜D−18およびF−1、G−2、H−3は、抗体との反応可能な置換基を導入することが可能であった。このことから、本発明のフタロシアニンは抗原抗体反応を用いた標的物質の蛍光標識に利用することができる。
本発明のフタロシアニンを用いて作製した色素溶液1〜21(実施例22〜42
)は、色素溶液22(比較例1)よりも蛍光強度、耐光性、耐久性が良好であった。このことから、本発明のフタロシアニンは、優れた蛍光標識剤としての性能を有することが明らかになった。
[実施例43]
<pan−I−1の合成>
パニツムマブ(1mg、6.8nmol)を0.1mol/L NaHPO水溶液(pH 8.5)に溶解させた。フタロシアニンI−1(35.7 μg、34.2 nmol)を150μLのDMSO溶液に溶解させた後に、上記で調製したパニツムマブ水溶液に添加し、室温で1時間インキュベートした。反応混合物をセファデックスG50カラム(PD−10、Cytiba)で精製した後に、溶出液をPBS溶液(GIBCO)でpH7.4に調整し、pan−I−1を得た。タンパク質濃度はクーマシープラスタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific Inc.)を使用し、プレートリーダー(TECAN社製、SPARK)を用いて595nmにおける吸光度を測定することにより算出した。またフタロシアニンI−1の濃度は、プレートリーダー(TECAN社製、SPARK)を用いて極大吸収波長である715nmにおける吸光度を測定することにより算出した。算出したタンパク質濃度とフタロシアニンI−1の濃度比からパニツムマブに結合したフタロシアニンI−1の数を決定した。
[実施例44〜63]
<pan−I−2〜I−7、cet−I−8〜I−14、tra−I−15〜I−21の合成>
pan−I−1の製造方法で使用したフタロシアニンI−1及びパニツムマブを表16に示すフタロシアニンと抗体に変更した以外は、pan−I−1の製造と同様にして、表16に示すpan−I−2〜I−7、cet−I−8〜I−14、tra−I−15〜I−21をそれぞれ製造した。尚、フタロシアニンI及び抗体は、pan−I−1の製造におけるフタロシアニンI−1及びパニツムマブと同モル量使用した。
[比較例2〜7]
<IR Dye 700及びIR Dye 800の抗体導入体の合成>
pan−I−1の製造方法で使用したフタロシアニンI−1をIR Dye 700またはIR Dye 800(いずれもLI−COR社)に、パニツムマブを表16に示す抗体に変更した以外は、pan−I−1の製造と同様にして、表16に示すpan−IR Dye 700、pan−IR Dye 800、cet−IR Dye 700、cet−IR Dye 800、tra−IR Dye 700、tra−IR Dye 800をそれぞれ製造した。尚、色素及び抗体は、pan−I−1の製造におけるフタロシアニンI−1及びパニツムマブと同モル量使用した。
Figure 2021138938
[実施例64]
<pan−I−1の細胞染色>
ヒト類上皮がん細胞A431細胞を96ウェルプレートに播種(1×104cells/well)し、10%Fetal Bovine Serum(FBS)および1%ペニシリン―ストレプトマイシンを含ませたRPMI1640培地を用いて、インキュベーター(37℃、5%CO2含有Air、加湿環境)内で24時間培養した。その後、培地を取り除き、10μg/mlのpan−F−1を添加し、インキュベーター内で6時間静置した。色素をRPMI1640培地で洗浄し、プレートリーダー(TECAN社製、SPARK)を用いて、励起波長715±10nm、蛍光波長790±10nmの範囲で蛍光強度測定を行った。
[実施例65〜84、比較例8〜13]
<pan−I−1の細胞染色>で使用したpan−I−1及びA431細胞を表17に示す抗体導入色素と細胞種(ヒト乳腺がん由来細胞MDA−MB−468、ヒト気管支上皮がん由来細胞Calu−3)に変更した以外は、<pan−I−1の細胞染色>と同様にして細胞染色を行った。尚、抗体導入色素は<pan−I−1の細胞染色>におけるpan−I−1と同モル量使用した。染色後、プレートリーダー(TECAN社製、SPARK)を用いて、励起波長715±10nm、蛍光波長790±10nmの範囲で蛍光強度測定を行い、下記の基準に基づいて評価した。

4:蛍光強度が2000以上
3:蛍光強度が1000以上〜2000未満
2:蛍光強度が200以上〜1000未満
1:蛍光強度が200未満
Figure 2021138938
以上の結果より、本発明のフタロシアニンは抗体への修飾が可能であることを確認した。また、抗体を導入した色素を使用することで、抗原抗体反応を用いた細胞染色が可能であり、比較例よりも高い蛍光強度で染色できることを確認した。本発明の蛍光標識剤を用いることで、高感度に生体組織を染色することが可能となる。

Claims (3)

  1. 一般式(1)で表されるフタロシアニンを含むことを特徴とする蛍光標識剤。

    一般式(1):
    Figure 2021138938



    〜X16は、それぞれ独立に、−R−Z、水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、複素環基、−AB、−SO、または−COOMを表す。Aは、16族元素を表す。Bは、水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、または複素環基を表す。M、Mはそれぞれ独立に、水素原子または1価のカチオンを表す。
    〜X16は、隣接する置換基同士が互いに連結して、環を形成してもよい。
    17は、−R−Z、水酸基、ハロゲン元素、アルコキシ基、アリールオキシ基、−OP(=O)X1819、−OC(=O)X20、−OS(=O)21、または−OSiX222324を表す。X18及びX19は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または複素環基を表す。X20は、水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。X21は、水酸基、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。X22〜X24は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
    Yは、2価〜5価の金属原子を表し、Yが2価の金属原子である場合はkは0であり、Yが3価の金属原子である場合はkは1であり、Yが4価または5価の金属原子である場合はkは2である。
    ただし、X〜X17の少なくとも1つは−R−Zであり,
    は、直接結合、−O−、−OP(=O)R−、−OC(=O)−、−OS(=O)−、−OSiR−、−C(=O)−、または−C(=O)NH−を表す。
    Zは、−(L)−(W)または−(L)−(Q)を表し、(L)はリンカー、(W)は標的物質を認識する物質とフタロシアニンとを結合させるための反応性基、(Q)は標的物質を認識する物質を表す。
    は、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または複素環基を表す。
    、Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
  2. 標的物質の標識方法が抗原抗体反応である、請求項1記載の蛍光標識剤。
  3. 一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物。

    一般式(1):
    Figure 2021138938

    〜X16は、それぞれ独立に、−R−Z、水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、複素環基、−AB、−SO、または−COOMを表す。Aは、16族元素を表す。Bは、水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、または複素環基を表す。M、Mはそれぞれ独立に、水素原子または1価のカチオンを表す。
    〜X16は、隣接する置換基同士が互いに連結して、環を形成してもよい。
    17は、−R−Z、水酸基、ハロゲン元素、アルコキシ基、アリールオキシ基、−OP(=O)X1819、−OC(=O)X20、−OS(=O)21、または−OSiX222324を表す。X18及びX19は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または複素環基を表す。X20は、水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。X21は、水酸基、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。X22〜X24は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
    Yは、2価〜5価の金属原子を表し、Yが2価の金属原子である場合はkは0であり、Yが3価の金属原子である場合はkは1であり、Yが4価または5価の金属原子である場合はkは2である。
    ただし、X〜X17の少なくとも1つは−R−Zであり,
    は、直接結合、−O−、−OP(=O)R−、−OC(=O)−、−OS(=O)−、−OSiR−、−C(=O)−、または−C(=O)NH−を表す。
    Zは、−(L)−(W)または−(L)−(Q)を表し、(L)はリンカー、(W)は標的物質を認識する物質とフタロシアニンとを結合させるための反応性基、(Q)は標的物質を認識する物質を表す。
    は、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または複素環基を表す。
    、Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
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WO2023098309A1 (zh) * 2021-11-30 2023-06-08 厦门大学 一种以空壳酞菁为分子探针测定锂离子的荧光分析法

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