<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1に係る電力需給計画作成装置の概略構成図である。図1に示すように、電力需給計画作成装置100は、演算に必要なデータを取得するデータ取得部11と、演算に必要なデータ及び演算結果を格納するデータ格納部12と、電気事業の損益を表す目的関数の最適化問題を解くことにより発電機運転計画とスポット市場(電力)及び需給調整市場(調整力)での取引計画とを作成する計画作成部16と、計画作成部16で作成された発電機運転計画及び取引計画を出力する計画出力部17とを備える。
ここで電気事業の損益は、発電コストと、電力の取引による収益と、調整力の取引による収益と、調整力の発動による発電コストとを合わせた収支である。具体的には、電気事業の損益は、電気事業の損失(コスト)から電気事業の収益を引いて得られた値であり、電気事業の損益の正の値は全体として損失であることを表し、当該損益の負の値は全体として収益であることを表す。なお本実施の形態1では、発電コストは、計画期間に亘って、計画の対象となるすべての発電機が発電するのに必要なコストの総額を意味する。
取得部であるデータ取得部11は、スポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、及び、燃料価格データ115を取得し、各データをデータ格納部12に格納する。
スポット価格シナリオデータ121は、図2に示すように、スポット市場で取り引きされると想定される将来の電力の約定価格を時系列で表すデータである。スポット価格シナリオデータ121は、市場で公開されている最新の約定価格の実績値を元に設定されてもよいし、ユーザ自身が入札履歴などを参考にして求めた想定値を元に設定されてもよい。
調整力価格シナリオデータ122は、需給調整市場で取り引きされると想定される将来の調整力の約定価格を時系列で表すデータである。調整力価格シナリオデータ122は、市場で公開されている最新の約定価格の実績値を元に設定されてもよいし、ユーザ自身が入札履歴などを参考にして求めた想定値を元に設定されてもよい。
調整力発動割合シナリオデータ123は、想定される将来の調整力の発動割合(発電割合)を時系列で表すデータである。調整力発動割合シナリオデータ123は、市場で公開されている最新の約定量及び発動量の実績値を元に設定されてもよいし、ユーザ自身が入札履歴及び発動実績などを参考にして求めた想定値を元に設定されてもよい。
発電機データ114は、電力及び調整力を生成する発電機の仕様を表すデータである。発電機データ114は、例えば発電機の出力上下限値、出力変化速度、燃料種別、起動費、最小運転時刻、最小停止時刻、燃料消費の特性、燃料消費量曲線係数、起動停止回数上限値、故障発生モデルパラメータなどを含む。
燃料価格データ115は、発電機の想定される将来の単位量あたりの燃料価格ひいてはその変動を時系列で表すデータである。燃料価格データ115は、例えば過去の燃料価格の推移に基づいて算出される。燃料は、例えば石炭、LNG、石油などを含む。
図3は、本実施の形態1に係る電力需給計画作成装置100のデータフローを示す概略構成図である。
計画作成部16は、データ取得部11で取得されたスポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、及び、燃料価格データ115に基づいて、電気事業の損益を表す目的関数及びその制約条件を定式化する。そして、計画作成部16は、目的関数が表す損益を最小化する最適化問題を解くことで発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。
発電機運転計画は起動停止計画データ124及び発電量計画データ125として算出され、電力の取引計画は電力取引計画データ126として算出され、調整力の取引計画は調整力取引計画データ127として算出される。
起動停止計画データ124は、計画期間における発電機の起動または停止の状態を時系列で表すデータである。また発電量計画データ125は、計画期間における発電機で発電される発電量を時系列で表すデータである。電力取引計画データ126及び調整力取引計画データ127は、計画期間における入札価格を時系列で表すデータである。
次に、計画作成部16による、発電機運転計画、並びに、電力及び調整力の取引計画の最適化問題の演算の一例について説明する。
計画作成部16は、目的関数が表す損益を最小化する最適化問題を解く。具体的には、「計画期間の各時刻において発電機の出力の合計を電力の取引量に一致させる制約条件」、及び「発電機の出力の余力の合計を調整力の取引量以上とする制約条件」の下で、目的関数が表す損益を最小化する最適化問題を解く。これにより、電気事業全体としての損失が最小化され、電気事業全体としての収益が最大化される。計画作成部16は、電気事業の損益が最小化されたときの起動停止計画データ124、発電量計画データ125、電力取引計画データ126、及び、調整力取引計画データ127を求める。
計画作成部16は、このような最適化問題を、例えば混合整数二次計画問題として定式化して、分枝限定法などによって解く。この解法は、特許文献1に開示されるなど公知であるため、この解法の具体的な説明は省略する。最適化問題の定式化の一例を式(1)〜式(4)に示す。式(1)は、目的関数が表す損益を最小化する最適化問題を示す。式(2)〜式(4)のそれぞれは、目的関数の制約条件を示す。
ここで、Fは電気事業の損益、tは時刻、gは発電機番号である。∀は「全ての」を表す記号である。Qkwh(t)は時刻tにおける電力の取引量を示す変数であり、最適化問題を解くことによって求めるべき数である。Vkwh(t)は時刻tにおける電力の価格を示す変数であり、スポット価格シナリオデータ121に含まれる。QΔkw(t)は時刻tにおける調整力の取引量を示す変数であり、最適化問題を解くことによって求めるべき数である。VΔkw(t)は時刻tにおける調整力のΔkw価格を示す変数であり、調整力価格シナリオデータ122に含まれる。RusedΔkw(t)は時刻tにおける調整力の発動割合を示す変数であり、調整力発動割合シナリオデータ123に含まれる。VusedΔkw(t)は時刻tにおける調整力のkwh価格を示す変数であり、調整力価格シナリオデータ122に含まれる。
Eは時刻tにおける発電機番号gの発電機の発電コストの関数である。x(g,t)は時刻tにおける発電機番号gの発電機の発電量を示す変数であり、最適化問題を解くことによって求めるべき数である。u(g,t)は時刻tにおける発電機番号gの発電機の起動停止状態を示す変数であり、最適化問題を解くことによって求めるべき数である。u(g,t)として、停止が「0」、起動が「1」で表される。y(g,t)は時刻tにおける発電機番号gの発電機の余力であり、発電機データ114に含まれる。
式(2)の右辺に示すように、損益は、第1項の発電コストから第2項の電力の取引による収益と第3項の調整力の取引による収益とを引き、調整力の発動による第4項の発電コストを足したものになる。つまり本実施の形態1では、電気事業の損益は、計画期間に亘って必要とする発電コストと、計画期間に亘って行われるスポット市場での電力の取引、及び、計画期間に亘って行われる需給調整市場での調整力の取引による売電金額とを合わせた収支を含む。
ここで、式(2)の右辺の時刻tにおける発電機番号gの発電機の発電コストの関数Eは、例えば式(5)のように表される。
fuel(g,t)は時刻tにおける発電機番号gの発電機の燃料価格であり、燃料価格データ115に含まれる。a(g)、b(g)、c(g)は、発電機番号gの発電機の燃料消費の特性を示す係数であり、発電機データ114に含まれる。d(g)は発電機番号gの発電機の起動費であり、発電機データ114に含まれる。
式(5)に示すように、ある時刻における各発電機の発電コストは、例えば、燃料価格と発電量との積に、各発電機の起動費を加算した値として表される。なお、式(5)において発電量を二次関数で表す例を示したが、これに限らず線形の式であってもよい。
式(3)は、各時刻において、全ての発電機が発電する発電量を電力の取引量と調整力の発動量との和に等しくする制約条件を示す。
式(4)は、各時刻において、全ての発電機の余力を調整力の取引量以上にする制約条件を示す。調整力の取引には上げ調整力商品の取引と下げ調整力商品の取引とがある。上げ調整力商品について取引する場合は、発電機の余力yは上げ余力であり、発電機の出力上限と発電機出力との差として計算できる。また、下げ調整力商品について取引する場合は、発電機の余力yは下げ余力であり、発電機出力と発電機の出力下限との差として計算できる。
計画作成部16は、上記式以外に制約条件を追加してもよい。例えば、最小運転時刻制約、最小停止時刻制約、変化速度制約、燃料消費量制約、潮流制約などの制約条件を追加してもよい。また計画の対象となる発電機に起動停止を素早く変更できない発電機がある場合には、当該発電機が起動停止となるように制約条件を追加してもよい。また、上げ調整力商品と下げ調整力商品とを共に取引してもよいし、異なる種類の上げ調整力商品または下げ調整力商品を取引してもよい。この場合、それぞれの商品を異なる変数として定義し、上げ余力が上げ調整力の取引量の総和以上となる制約条件と、下げ余力が下げ調整力の取引量の総和以上となる制約条件とを追加し、各商品の取引及び調整力の発動による利益を目的関数に含めればよい。
このように計画作成部16は、最適化問題を解くことにより、電気事業の損益が最小となるときの起動停止計画データ124、発電量計画データ125、電力取引計画データ126、調整力取引計画データ127を、u(g,t)、x(g,t)、Qkwh(t)、QΔkw(t)としてそれぞれ得ることができる。
起動停止計画データ124、発電量計画データ125、電力取引計画データ126、調整力取引計画データ127は、計画出力部17に出力され、例えばグラフや表として表示される。
図4は、本実施の形態1に係る電力需給計画作成装置100の発電機運転計画を説明するための説明図である。横軸は時刻、縦軸は発電量を示す。発電機運転計画では、例えば、発電機番号g1、g2、・・・、g6の発電機が発電する発電量の推移が示される。
図5は、本実施の形態1に係る電力需給計画作成装置100の電力の取引計画と調整力の取引計画とを説明するための説明図である。横軸は時刻、縦軸は取引量を示す。これらの取引計画では、例えば、発電機番号g1、g2、・・・、g6の発電機の運転により得られる電力及び調整力の取引量の推移が示される。
図6は、本実施の形態1に係る電力需給計画作成装置100の電力の取引計画と調整力の取引計画との関係を説明するための説明図である。ここでは、図5の発電機番号g3の発電機の一部の期間での取引分を例示している。発電機の出力を電力として取引し、電力の取引により生まれた発電機の余力の一部または全部を調整力として取引する。具体的には、発電機の出力と出力上限との差の一部または全部、及び、発電機の出力と出力下限との差の一部または全部を、それぞれ上げ調整力及び下げ調整力として取引する。
図7は、本実施の形態1に係る電力需給計画作成装置100のハードウェアを示す概略構成図である。電力需給計画作成装置100は、例えばPC(Personal Computer)10を用いて構成される。PC10は、CPU(Central Processing Unit)1、主記憶装置2、補助記憶装置3、外部記憶装置4、入力装置5及び出力装置6を備える。なお、外部記憶装置4は、ネットワーク7を介して接続されていてもよい。
主記憶装置2は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメモリ装置である。補助記憶装置3は、例えば磁気ディスクである。外部記憶装置4は、CD(Compact Disc)−R、DVD(Digital Versatile Disc)−Rなどの光学ディスク、またはUSB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カードなどのフラッシュメモリ記憶装置などである。入力装置5は、例えばマウス、キーボードである。出力装置6は、例えばディスプレイ、プリンタである。ネットワーク7は、例えば光通信機器で構成される。
次に、本実施の形態1に係る電力需給計画作成装置100を用いた電力需給計画作成方法について説明する。
図8は、本実施の形態1に係る電力需給計画作成装置100の処理手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS100では、データ取得部11は、スポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、燃料価格データ115を取得し、各データをデータ格納部12に格納する。
ステップS104では、計画作成部16は、データ格納部12に格納されたスポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、燃料価格データ115に基づいて、発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。
具体的には、計画作成部16は、スポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、燃料価格データ115に基づいて、電気事業の損益を表す目的関数及びその制約条件を定式化する。そして、計画作成部16は、目的関数が表す損益を最小化する最適化問題を解くことで発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。なお、発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画の、より具体的な説明については、後で別のフローチャートを用いて説明する。
計画作成部16は、発電機運転計画として得られた起動停止計画データ124及び発電量計画データ125と、電力の取引計画として得られた電力取引計画データ126と、調整力の取引計画として得られた調整力取引計画データ127とをデータ格納部12に格納する。
ステップS105では、計画出力部17は、起動停止計画データ124、発電量計画データ125、電力取引計画データ126、調整力取引計画データ127をデータ格納部12から取得し、発電機運転計画、電力の取引計画、及び、調整力の取引計画として出力装置6に出力する。出力装置6は、例えば、これら計画をプリントまたはディスプレイに表示してユーザに示す。
図9は、本実施の形態1における電力需給計画作成装置100のステップS104の最適化処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS1041では、計画作成部16は、損益を最小化することを式(1)に示すように定式化する。
ステップS1042では、計画作成部16は、最適化問題の制約条件を式(2)〜式(4)に示すように定式化する。また、式(2)について各発電機の発電コストを式(5)のように定式化する。
そして、計画作成部16は、データ格納部12から、スポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、燃料価格データ115を取得し、式(2)〜式(5)のパラメータとして設定する。例えば、計画作成部16は、発電機データ114の起動費及び燃料消費の特性と、燃料価格データ115の燃料価格とを、式(5)のパラメータとして設定する。また、計画作成部16は、スポット価格シナリオデータ121のスポット価格と、調整力価格シナリオデータ122のΔkW価格及びkWh価格と、調整力発動割合シナリオデータ123の発動割合とを、式(2)のパラメータとして設定する。
ステップS1403では、計画作成部16は、制約条件を満たすように、目的関数が表す損益を最小化する最適化問題を解く。式(3)により、電力の取引のための電力が確保され、式(4)により調整力の取引のための調整力が確保される。そして、計画作成部16は、損益が最小となったときの変数u(g,t)、x(g,t)、Qkwh(t)、QΔkw(t)を、起動停止計画データ124、発電量計画データ125、電力取引計画データ126、調整力取引計画データ127としてそれぞれデータ格納部12に格納する。
<実施の形態1のまとめ>
上述のとおり、本実施の形態1に係る電力需給計画作成装置及び電力需給計画作成方法では、損益を最小化する最適化問題を解くことで、発電機運転計画及び電力の取引計画に加えて調整力の取引計画を作成できる。このため、発電事業者の収益の評価の改善に寄与できる。
例えば、ある時刻における1台の発電機の計画を考える。ここでは、発電機の最大出力が500[MWh]、発電機の発電単価が9[円/kWh]、電力の価格が10[円/kWh]、上げ調整力の価格が5[円/kW]、上げ調整力の発動に対する価格が8[円/kWh]、調整力の発動割合が40%である場合を想定する。
このとき、取引の計画について、電力しか考慮しない場合は、発電単価9[円/kWh]よりも電力の価格10[円/kWh]が高いため、可能な限り発電することが得である。この場合、電力の取引の収支が5000000円(=500[MWh]×10[円/kWh])となり、発電コストが4500000円(=500[MWh]×9[円/kWh])となるため、500000円の黒字となる。
一方、電力に加えて調整力の取引を考慮する場合として、上記500[MWh]のうち例えば電力を100[MWh]で、調整力を400[MW]で取引する場合を想定する。この場合、電力の取引の収支が1000000円(=100[MWh]×10[円/kWh])、調整力の取引の収支が3280000円(=400[MW]×5[円/kW]+400[MW]×40[%]×8[円/kWh])となる。そして、発電コストが2340000円(=(電力の取引量(100[MWh])+調整力の発動量(400[MW]×40[%]))×9[円/kWh])となる。このため、1940000円の黒字となり、電力のみの取引と比較して収益が1440000円改善する。
なお、ここでは取引量を仮定した例について説明した。本実施の形態1では、取引量の制約を考慮するだけでなく、発電機の運転制約も考慮した上で、電気事業全体としての損失が最小となるように(電気事業全体としての利益が最大となるように)、電力及び調整力の取引量を決定することができる。
<実施の形態2>
図10は、本実施の形態2に係る電力需給計画作成装置100の概略構成図である。以下では、実施の形態1と同様である点の説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
図10の電力需給計画作成装置100の構成は、図1の電力需給計画作成装置100の構成に、スポット価格予測部13、調整力価格予測部14、及び、調整力発動割合予測部15を取得部として加えた構成と同様である。
スポット価格予測部13は、スポット市場で取り引きされる電力の約定価格の実績値を時系列で表すスポット市場取引実績データ111に基づいて、それぞれが当該電力の約定価格のシナリオを表す複数のスポット価格シナリオデータ121を予測する。調整力価格予測部14は、需給調整市場で取り引きされる調整力の約定価格の実績値を時系列で表す需給調整市場取引実績データ112に基づいて、それぞれが当該調整力の約定価格のシナリオを表す複数の調整力価格シナリオデータ122を予測する。調整力発動割合予測部15は、需給調整市場取引実績データ112と、上記調整力の発動量の実績値を時系列で表す調整力発動量実績データ113とに基づいて、それぞれが発動割合のシナリオを表す複数の調整力発動割合シナリオデータ123を予測する。
なお、複数のスポット価格シナリオデータ121のそれぞれは、実施の形態1で説明したスポット価格シナリオデータ121と同様である。複数の調整力価格シナリオデータ122のそれぞれは、実施の形態1で説明した調整力価格シナリオデータ122と同様である。複数の調整力発動割合シナリオデータ123のそれぞれは、実施の形態1で説明した調整力発動割合シナリオデータ123と同様である。
本実施の形態2における電気事業の損益は、実施の形態1と同様に、発電コストと、電力の取引による収益と、調整力の取引による収益と、調整力の発動による発電コストとを合わせた収支である。発電コストは、計画期間に亘って、計画の対象となるすべての発電機が発電するのに必要なコストの総額を意味する。
取得部であるデータ取得部11は、スポット市場取引実績データ111、需給調整市場取引実績データ112、調整力発動量実績データ113、発電機データ114、燃料価格データ115、及び、信頼水準データ116を取得し、各データをデータ格納部12に格納する。
スポット市場取引実績データ111は、スポット市場で取り引きされる電力の約定価格の実績値を時系列で表すデータである。スポット市場取引実績データ111は、市場で公開されている約定価格の実績値を元に設定されてもよいし、ユーザ自身が入札履歴などを参考にして求めた想定値を元に設定されてもよい。
需給調整市場取引実績データ112は、需給調整市場で取り引きされる調整力の約定価格の実績値と総約定量の実績値とを時系列で表すデータである。調整力の約定価格は、調整力の確保に対する価格であるΔkW価格と、調整力の発動に対する価格であるkWh価格とを含む。需給調整市場取引実績データ112は、市場で公開されている約定価格の実績値と総約定量を元に設定されてもよいし、ユーザ自身が入札履歴などを参考にして求めた想定値を元に設定されてもよい。
調整力発動量実績データ113は、調整力の発動量の実績値を時系列で表すデータである。調整力発動量実績データ113は、市場で公開されている発動量の実績値を元に設定されてもよいし、ユーザ自身が発動量の履歴などを参考にして求めた想定値を元に設定されてもよい。発電機データ114及び燃料価格データ115は、実施の形態1で説明した発電機データ114及び燃料価格データ115と同様である。
信頼水準データ116は、電力需給計画作成装置100で作成される計画で発生し得る電気事業の損益のリスクに対して、ユーザがリスクを許容できない度合い、つまりユーザがリスクを避けたい度合いを反映した値であり、0〜100%の値が設定される。換言すれば、信頼水準データ116は、電気事業の損益に関するリスク指標の信頼水準を表す。本実施の形態2において、信頼水準データ116が表すリスク指標は、VaR(Value at Risk)である。ここでVaRとは、一定の確率、すなわち一定の信頼水準で発生し得る最大の損益(損失)である。ユーザのリスクに対する許容度が大きくなれば、リスクを避けたい度合いを反映する信頼水準は小さい値に設定され、ユーザのリスクに対する許容度が小さくなれば、信頼水準は大きい値に設定される。
図11は、本実施の形態2に係る電力需給計画作成装置100で用いるVaRを説明するための説明図である。図11において、横軸は電気事業の損益、縦軸は発電コストの度数を示す。複数のスポット価格シナリオデータ121が表す複数のスポット価格シナリオと、複数の調整力価格シナリオデータ122が表す複数の調整力価格シナリオと、複数の調整力発動割合シナリオデータ123が表す調整量発動割合シナリオとの全組合せに対してそれぞれ損益を算出した場合、発電コストは、図11に示すような頻度分布で表される。
VaRは、頻度分布において小さい発電コストから累積された度数の全度数に対する比率がα%となる発電コスト区間で発生し得る最大の発電コストである。換言すれば、VaRは、信頼水準αのパーセント点に対応する発電コストである。例えば、信頼水準90%のVaRが1億円とすると、発電コストは90%の確率で1億円以内に収まることを意味する。ユーザは、電力需給計画作成装置100の各種予測に基づいて作成される発電機運転計画の発電コストが頻度分布をもつことを想定して予め信頼水準を電力需給計画作成装置100に入力する。
図12は、本実施の形態2に係る電力需給計画作成装置のデータフローを示す概略構成図である。
スポット価格予測部13は、スポット市場取引実績データ111に基づいて、複数のスポット価格シナリオデータ121を作成する。スポット価格シナリオデータ121は、想定される将来の電力の約定価格を時系列で表すデータである。図13は、本実施の形態2に係る電力需給計画作成装置100の複数のスポット価格シナリオデータ121、つまり複数の電力需要のシナリオを説明するための説明図である。
スポット価格予測部13は、例えば最尤推定により時系列モデルのモデルパラメータを算出した後、当該モデルパラメータにモンテカルロ法を用いて、モンテカルロ法の試行回数分のスポット価格シナリオデータ121−1〜121−nを作成する。時系列モデルは自己回帰和分移動平均またはベクトル自己回帰モデルを用いてもよいし、その他のモデルを用いてもよい。また、スポット価格予測部13は、例えばスポット市場取引実績データ111を曜日や季節でクラスタリングしてスポット価格シナリオデータ121を作成してもよい。
調整力価格予測部14は、需給調整市場取引実績データ112に基づいて、複数の調整力価格シナリオデータ122を作成する。調整力価格シナリオデータ122は、想定される将来の調整力の約定価格を時系列で表すデータである。調整力の約定価格は、ΔkW価格とkWh価格とを含む。調整力価格予測部14は、スポット価格予測部13と同様に、例えばモンテカルロ法やクラスタリングにより調整力価格シナリオデータ122を作成する。
調整力発動割合予測部15は、需給調整市場取引実績データ112と調整力発動量実績データ113とに基づいて、複数の調整力発動割合シナリオデータ123を作成する。調整力発動割合シナリオデータ123は、想定される将来の調整力発動割合を時系列で表すデータである。調整力発動割合予測部15は、需給調整市場の総約定量に占める調整力の発動量の割合を算出した後、スポット価格予測部13と同様に、例えばモンテカルロ法やクラスタリングにより調整力発動割合シナリオデータ123を作成する。
計画作成部16は、スポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、燃料価格データ115、及び、信頼水準データ116に基づいて、目的関数及びその制約条件を定式化し、最適化問題を解くことで発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。
発電機運転計画は起動停止計画データ124及び発電量計画データ125として算出され、電力の取引計画は電力取引計画データ126として算出され、調整力の取引計画は調整力取引計画データ127として算出される。
起動停止計画データ124は、計画期間における発電機の起動または停止の状態を時系列で表すデータである。また発電量計画データ125は、計画期間における発電機で発電される発電量を時系列で表すデータである。これら起動停止計画データ124及び発電量計画データ125は、スポット価格シナリオ、調整力価格シナリオ、及び、調整力発動割合シナリオに依存する。ただし、発電機が起動停止を素早く変更できない場合などには、起動停止計画データ124は、スポット価格シナリオ、調整力価格シナリオ、及び、調整力発動割合シナリオの全てに依存しなくてもよい。
電力取引計画データ126及び調整力取引計画データ127は、計画期間における入札価格を時系列で表すデータであり、スポット価格シナリオ、調整力価格シナリオ、調整力発動割合シナリオそれぞれに依存する。
次に、計画作成部16が演算する発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画の最適化問題の一例について説明する。なお、本実施の形態2では、目的関数が表す損益が、各種予測への信頼水準αに基づく損益のVaRである場合について説明する。この場合、計画作成部16は、信頼水準αに基づく損益のVaRを表す目的関数の最適化問題として、VaRを最小化する最適化問題を解く。具体的には、「スポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、及び、調整力発動割合シナリオデータ123の各シナリオにおける発電コストがVaR以下となる比率を信頼水準データ116の信頼水準α以上にする制約条件」、「計画期間の各時刻において発電機の出力の合計を電力の取引量に一致させる制約条件」、及び「発電機の出力の余力の合計を調整力の取引量以上とする制約条件」の下で、目的関数が表す信頼水準αに基づく損益のVaRを最小化する最適化問題を解く。そして、計画作成部16は、VaRが最小化されたときの起動停止計画データ124、発電量計画データ125、電力取引計画データ126、調整力取引計画データ127を求める。
計画作成部16は、このような最適化問題を、例えば混合整数二次計画問題として定式化して、分枝限定法などによって解く。最適化問題の定式化の一例を式(6)〜式(10)に示す。式(6)は、目的関数が表す損益のVaRを最小化する最適化問題を示す。式(7)〜式(10)のそれぞれは、目的関数の制約条件を示す。
ここで、Fは電気事業の損益のVaR、tは時刻、sはシナリオ、gは発電機番号である。シナリオは、スポット価格シナリオ、調整力価格シナリオ、調整力発動割合シナリオの全ての組合せである。Mは非常に大きな数字であり、例えば信頼水準が100%であるときに最適化問題を解いたときのFが、ユーザが許容できる最大の損益となるように設定される。n(s)は補助変数であり、例えばバイナリ変数である。
Qkwh(t,s)は時刻t、シナリオsにおける電力の取引量を示す変数であり、最適化問題を解くことによって求めるべき数である。Vkwh(t,s)は時刻t、シナリオsにおける電力の価格を示す変数であり、スポット価格シナリオデータ121に含まれる。QΔkw(t,s)は時刻t、シナリオsにおける調整力の取引量を示す変数であり、最適化問題を解くことによって求めるべき数である。VΔkw(t,s)は時刻t、シナリオsにおける調整力のΔkw価格を示す変数であり、調整力価格シナリオデータ122に含まれる。RusedΔkw(t,s)は時刻t、シナリオsにおける調整力の発動割合を示す変数であり、調整力発動割合シナリオデータ123に含まれる。VusedΔkw(t,s)は時刻t、シナリオsにおける調整力のkwh価格を示す変数であり、調整力価格シナリオデータ122に含まれる。
Eは時刻t、シナリオsにおける発電機番号gの発電機の発電コストの関数である。x(g,t,s)は時刻t、シナリオsにおける発電機番号gの発電機の発電量を示す変数であり、最適化問題を解くことによって求めるべき数である。u(g,t,s)は時刻t、シナリオsにおける発電機番号gの発電機の起動停止状態を示す変数であり、最適化問題を解くことによって求めるべき数である。u(g,t,s)として、停止が「0」、起動が「1」で表される。αは信頼水準であり、|S|はシナリオの総数である。y(g,t,s)は時刻t、シナリオsにおける発電機番号gの発電機の余力であり、発電機データ114に含まれる。
式(7)の右辺に示すように、損益は、第1項の発電コストから第2項の電力の取引による収益と第3項の調整力の取引による収益とを引き、調整力の発動による第4項の発電コストを足したものになる。式(7)の補助変数n(s)により、各シナリオにおける損益がVaR以下となるか否かが判定される。補助変数n(s)が0であれば各シナリオにおける損益はVaRより小さく、補助変数n(s)が1であれば各シナリオにおける損益はVaRよりも大きいことを意味する。
ここで、式(7)の右辺の時刻t、シナリオsにおける発電機番号gの発電機の発電コストの関数Eは、例えば式(11)のように表される。
fuel(g,t)は時刻tにおける発電機番号gの発電機の燃料価格であり、燃料価格データ115に含まれる。a(g)、b(g)、c(g)は、発電機番号gの発電機の燃料消費の特性を示す係数であり、発電機データ114に含まれる。d(g)は発電機番号gの発電機の起動費であり、発電機データ114に含まれる。
式(11)に示すように、ある時刻における各発電機の発電コストは、例えば、燃料価格と発電量との積に、各発電機の起動費を加算した値として表される。なお、式(11)において発電量を二次関数で表す例を示したが、これに限らず線形の式であってもよい。
式(8)の左辺は、式(7)の補助変数n(s)の合計をシナリオの数で割った値を示す。式(8)は、電力需要の各シナリオにおける発電コストがVaR以下となる確率を信頼水準α以上にする制約条件を示す。
式(9)は、各時刻、各シナリオにおいて、全ての発電機が発電する発電量を電力の取引量と調整力の発動量との和に等しくする制約条件を示す。
式(10)は、各時刻、各シナリオにおいて、全ての発電機の余力を調整力の取引量以上にする制約条件を示す。調整力の取引には上げ調整力商品の取引と下げ調整力商品の取引とがある。上げ調整力商品について取引する場合は、発電機の余力yは上げ余力であり、発電機の出力上限と発電機出力との差として計算できる。また、下げ調整力商品について取引する場合は、発電機の余力yは下げ余力であり、発電機出力と発電機の出力下限との差として計算できる。
計画作成部16は、上記式以外に制約条件を追加してもよい。例えば、最小運転時刻制約、最小停止時刻制約、変化速度制約、燃料消費量制約、潮流制約などの制約条件を追加してもよい。また計画の対象となる発電機に起動停止を素早く変更できない発電機がある場合は、当該発電機に対して全シナリオでの起動停止が同一となるように制約条件を追加してもよい。また、上げ調整力商品と下げ調整力商品とを共に取引してもよいし、異なる種類の上げ調整力商品または下げ調整力商品を取引してもよい。この場合、それぞれの商品を異なる変数として定義し、上げ余力が上げ調整力の取引量の総和以上となる制約条件と、下げ余力が下げ調整力の取引量の総和以上となる制約条件とを追加し、各商品の取引及び調整力の発動による利益を目的関数に含めればよい。
このように計画作成部16は、最適化問題を解くことにより、信頼水準αに基づく損益のVaRが最小となるときの起動停止計画データ124、発電量計画データ125、電力取引計画データ126、調整力取引計画データ127を、u(g,t,s)、x(g,t,s)、Qkwh(t,s)、QΔkw(t,s)としてそれぞれ得ることができる。
起動停止計画データ124、発電量計画データ125、電力取引計画データ126、調整力取引計画データ127は、計画出力部17に出力され、例えばグラフや表として表示される。
図4は、本実施の形態2に係る電力需給計画作成装置100の発電機運転計画を説明するための説明図である。横軸は時刻、縦軸は発電量を示す。発電機運転計画では、例えば、発電機番号g1、g2、・・・、g6の発電機が発電する発電量の推移が示される。
図5は、本実施の形態2に係る電力需給計画作成装置100の電力の取引計画と調整力の取引計画とを説明するための説明図である。横軸は時刻、縦軸は取引量を示す。これらの取引計画では、例えば、発電機番号g1、g2、・・・、g6の発電機の運転により得られる電力及び調整力の取引量の推移が示される。
図6は、本実施の形態2に係る電力需給計画作成装置100の電力の取引計画と調整力の取引計画との関係を説明するための説明図である。ここでは、図5の発電機番号g3の発電機の一部の期間での取引分を例示している。発電機の出力を電力として取引し、電力の取引により生まれた発電機の余力の一部または全部を調整力として取引する。具体的には、発電機の出力と出力上限との差の一部または全部、及び、発電機の出力と出力下限との差の一部または全部を、それぞれ上げ調整力及び下げ調整力として取引する。
図7は、本実施の形態2に係る電力需給計画作成装置100の概略構成図である。電力需給計画作成装置100は、例えばPC10を用いて構成される。PC10は、CPU1、主記憶装置2、補助記憶装置3、外部記憶装置4、入力装置5及び出力装置6を備える。外部記憶装置4は、ネットワーク7を介して接続されていてもよい。
主記憶装置2は、例えばDRAMなどのメモリ装置である。補助記憶装置3は、例えば磁気ディスクである。外部記憶装置4は、CD−R、DVD−Rなどの光学ディスク、またはUSBメモリ、SDカードなどのフラッシュメモリ記憶装置などである。入力装置5は、例えばマウス、キーボードである。出力装置6は、例えばディスプレイ、プリンタである。ネットワーク7は、例えば光通信機器で構成される。
次に、本実施の形態2に係る電力需給計画作成装置100を用いた電力需給計画作成方法について説明する。
図14は、本実施の形態2に係る電力需給計画作成装置100の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図14の実施の形態2のフローチャートは、図8の実施の形態1のフローチャートに、ステップS101,S102,S103を追加したものとほぼ同様である。
ステップS100では、データ取得部11は、スポット市場取引実績データ111、需給調整市場取引実績データ112、調整力発動量実績データ113、発電機データ114、燃料価格データ115、信頼水準データ116を取得し、各データをデータ格納部12に格納する。データ取得部11は、入力装置5を介して各データを取得してもよいし、外部記憶装置4に記憶されたデータを、ネットワーク7を介して取得してもよい。また各データが予めデータ格納部12に格納されている場合は、本処理を省略してもよい。
ステップS101では、スポット価格予測部13は、データ格納部12からスポット市場取引実績データ111を取得し、そのスポット市場取引実績データ111に基づいて、電力の約定価格の変動を示すスポット価格シナリオデータ121を複数作成する。スポット価格予測部13は、作成された複数のスポット価格シナリオデータ121をデータ格納部12に格納する。
ステップS102では、調整力価格予測部14は、データ格納部12から需給調整市場取引実績データ112を取得し、その需給調整市場取引実績データ112に基づいて、調整力の約定価格の変動を示す調整力価格シナリオデータ122を複数作成する。調整力価格予測部14は、作成された複数の調整力価格シナリオデータ122をデータ格納部12に格納する。
ステップS103では、調整力発動割合予測部15は、データ格納部12から需給調整市場取引実績データ112及び調整力発動量実績データ113を取得し、その需給調整市場取引実績データ112及び調整力発動量実績データ113に基づいて、調整力の発動割合の変動を示す調整力発動割合シナリオデータ123を複数作成する。調整力発動割合予測部15は、作成された複数の調整力発動割合シナリオデータ123をデータ格納部12に格納する。
ステップS104では、計画作成部16は、データ格納部12に格納されたスポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、燃料価格データ115及び信頼水準データ116に基づいて、発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。
具体的には、計画作成部16は、スポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、燃料価格データ115及び信頼水準データ116に基づいて、損益のVaRを表す目的関数及びその制約条件を定式化する。そして、計画作成部16は、目的関数が表す損益のVaRを最小化する最適化問題を解くことで発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。なお、発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画の、より具体的な説明については、後で別のフローチャートを用いて説明する。
計画作成部16は、発電機運転計画として得られた起動停止計画データ124及び発電量計画データ125と、電力の取引計画として得られた電力取引計画データ126と、調整力の取引計画として得られた調整力取引計画データ127とをデータ格納部12に格納する。
ステップS105では、計画出力部17は、起動停止計画データ124、発電量計画データ125、電力取引計画データ126、調整力取引計画データ127をデータ格納部12から取得し、発電機運転計画、電力の取引計画、及び、調整力の取引計画として出力装置6に出力する。出力装置6は、例えば、これら計画をプリントまたはディスプレイに表示してユーザに示す。
図15は、本実施の形態2における電力需給計画作成装置100のステップS104の最適化処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS1046では、計画作成部16は、信頼水準αに基づく損益のVaRを最小化することを式(6)に示すように定式化する。
ステップS1041では、計画作成部16は、最適化問題の制約条件を式(7)〜式(10)に示すように定式化する。また、式(7)について各発電機の発電コストを式(11)のように定式化する。
計画作成部16は、データ格納部12から、スポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、燃料価格データ115及び信頼水準データ116を取得し、式(7)〜式(11)のパラメータとして設定する。例えば、計画作成部16は、発電機データ114の起動費及び燃料消費の特性と、燃料価格データ115の燃料価格とを、式(11)のパラメータとして設定する。また、計画作成部16は、スポット価格シナリオデータ121のスポット価格と、調整力価格シナリオデータ122のΔkW価格及びkWh価格と、調整力発動割合シナリオデータ123の発動割合とを、式(7)にパラメータとして設定する。
ステップS1402では、計画作成部16は、制約条件を満たすように、目的関数が表す損益のVaRを最小化する最適化問題を解く。式(7)により、電力の価格、調整力の価格、調整力の発動割合の各シナリオにおける損益が、損益のVaR以上であるか否かが判定され、各シナリオにおける損益が損益のVaR以下となる解が選択される。また、式(8)により、各シナリオにおける損益がVaR以下となる比率が信頼水準以上となる。また、式(9)により、電力の取引のための電力が確保され、式(10)により調整力の取引のための調整力が確保される。そして、計画作成部16は、VaRが最小となったときの変数u(g,t,s)、x(g,t,s)、Qkwh(t,s)、QΔkw(t,s)を、起動停止計画データ124、発電量計画データ125、電力取引計画データ126、調整力取引計画データ127としてそれぞれデータ格納部12に格納する。
<実施の形態2のまとめ>
上述のとおり、本実施の形態2に係る電力需給計画作成装置及び電力需給計画作成方法では、信頼水準データ116の信頼水準α%のパーセント点に対応する損益のVaRを目的関数として用いる。そして、電力の価格、調整力の価格、調整力の発動割合の各シナリオにおける損益がVaR以下となる比率が信頼水準α%以上となる制約条件下でVaRを最小化する最適化問題を解く。これにより、ユーザがリスクを許容できない度合いを反映しつつ、信頼水準α%で発生する最大の損益が最も小さくなるように最適化された計画を作成できる。
例えば、信頼水準を100%などの大きい値に設定してVaRが最小となる計画を作成した場合、電気事業全体の損失は大きいが、当該損失が想定損失以上となるのでリスクの小さい発電機運転計画、電力の取引計画、調整力の取引計画を作成することができる。言い換えると、電気事業全体の収益は小さいが、当該収益が想定収益以下となるのでリスクの小さい計画を作成することができる。
例えば、ある時刻における1台の発電機の計画を考える。ここでは説明を簡単にするため、電力価格のシナリオのみを考え、電力価格が6[円/kWh]となるシナリオが10ケース、10[円/kWh]となるシナリオが70ケース、14[円/kWh]となるシナリオが20ケースあるとする。また、信頼水準は80%であるとする。実施の形態1と同様に、発電機の最大出力が500[MWh]、発電機の発電単価が9[円/kWh]、上げ調整力の価格が5[円/kW]、上げ調整力の発動に対する価格が8[円/kWh]、調整力の発動割合が40%である場合を想定する。
このとき、例えば電力を100[MWh]で、調整力を400[MW]で取引するとすれば、実施の形態1と同様の計算により、収益は10ケースで1540000円、70ケースで1940000円、20ケースで2340000円となる。このとき、信頼水準80%に基づく損益のVaRは、損益(損失)が大きい方から数えて80%の値となるので、1940000円となる。
一方で、例えば電力を50[MWh]で取引し、調整力を500[MW]で取引するとすれば、実施の形態1と同様の計算により、収益は10ケースで1920000円、70ケースで2120000円、20ケースで2320000円となる。このとき、信頼水準80%に基づく損益のVaRは、2120000円となるため、電力を100[MWh]で、調整力を400[MW]で取引するケースに比べて収益を改善しつつ、リスクを回避する取引が実現される。
なお、ここでは取引量を仮定して例について説明した。本実施の形態2では、取引量の制約及び発電機の運転制約を考慮した上で、信頼水準α%のパーセント点に対応する損益のVaRが最小となるように、電力及び調整力の取引量を決定することができる。
また信頼水準を例えば10%などの小さな値を設定して損益のVaRが最小となる計画を作成した場合、損益が想定損益以上となるリスクは大きいが、損益の小さい発電機運転計画、電力の取引計画、調整力の取引計画を作成することができる。言い換えると、電気事業全体の収益が想定収益以下となるリスクは大きいが、当該収益の大きい計画を作成することができる。なお、仮に調整力よりも電力のほうが期待される価格が高いならば、電力の取引量を多くすればよい。
また信頼水準を50%と設定して損益のVaRが最小となる計画を作成した場合、リスク指標として期待値を用いた場合と比べて、確率の低い極端なシナリオや外れ値の影響を低減することができる。ここで本実施の形態2と異なり、リスク指標として期待値を用いる構成では、スポット価格の高騰を期待して発電量を増やすような計画が作成される可能性がある。このような場合には、損益が悪化する確率が大きくなり、ユーザのキャッシュフローに悪影響を与えてしまうことがある。これに対して、信頼水準50%の損益のVaRは、電力の価格、調整力の価格、調整力の発動割合のシナリオに基づいて想定される損益の確率分布の中央値である。中央値は、生起確率の低い極端なシナリオの影響を受けにくい。このため本実施の形態2によれば、リスク指標として期待値を用いた構成よりも、電気事業者のキャッシュフローに悪影響を与えにくい発電機運転計画、電力の取引計画、調整力の取引計画が得られる。
またスポット価格予測部13、調整力価格予測部14、及び、調整力発動割合予測部15が、想定される様々な電力の価格、調整力の価格、調整力の発動割合のシナリオを作成する。これにより、これらの変動に起因する損益の変動に対応した発電機運転計画、電力の取引計画、調整力の取引計画を作成できる。また、VaRは、信頼水準という単一のパラメータを用いて表される。このため、リスクと損益とのトレードオフ関係を有する複数の項目のそれぞれにパラメータを設定して重み付けする手法と比べ、ユーザの経験や試行錯誤による繰り返し計算を抑制でき、ユーザの意思決定を容易にする計画を作成することが可能になる。
<実施の形態3>
図16は、本実施の形態3に係る電力需給計画作成装置100の概略構成図である。以下では、実施の形態2と同様である点の説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
図16の電力需給計画作成装置100の構成は、図10の電力需給計画作成装置100の構成に、需要予測部18を加えた構成と同様である。本実施の形態3では、発電された電力量の一部を、取引所を介さずに小売事業者に相対取引で売却する場合を想定して、電気事業の損益のVaRが最小となるときの発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。本実施の形態3において、電気事業の損益は、発電コストと、電力取引による買電金額などの損失と、電力取引による売電金額の収益とを計画期間を通じて合わせた収支である。
データ取得部11は、スポット市場取引実績データ111、需給調整市場取引実績データ112、調整力発動量実績データ113、発電機データ114、燃料価格データ115、信頼水準データ116に加えて、相対取引データ117、需要実績データ118をさらに取得する。
図17は、本実施の形態3に係る電力需給計画作成装置100のデータフローを示す概略構成図である。相対取引データ117は、計画作成部16での演算に用いられる。需要実績データ118は、需要予測部18での需要シナリオデータ128の演算に用いられる。需要シナリオデータ128は、計画作成部16での演算に用いられる。
相対取引データ117は、小売事業者との相対契約についてのデータであり、小売事業者への売電価格である。
需要実績データ118は、小売事業者へ売った電力量(以下「需要」と記すこともある)の時系列データである。需要実績データ118は、過去の契約における需要を元に設定されてもよいし、でんき予報などから取得したエリア需要を元に設定されてもよい。
需要予測部18は、需要実績データ118に基づいて、複数の需要シナリオデータ128を作成する。需要シナリオデータ128は、想定される将来の需要を時系列で表すデータである。
需要予測部18は、例えば最尤推定により時系列モデルのモデルパラメータを算出した後、当該モデルパラメータにモンテカルロ法を用いて、モンテカルロ法の試行回数分の需要シナリオデータ128を作成する。時系列モデルは自己回帰和分移動平均またはベクトル自己回帰モデルを用いてもよいし、その他のモデルを用いてもよい。また、需要予測部18は、例えば需要実績データ118を曜日や季節でクラスタリングして需要シナリオデータ128を作成してもよい。
計画作成部16は、スポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、燃料価格データ115及び信頼水準データ116、相対取引データ117、及び、需要シナリオデータ128に基づいて、目的関数及びその制約条件を定式化し、最適化問題を解くことで発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。
次に、計画作成部16が演算する各種計画の最適化問題の一例ついて説明する。本実施の形態3では、計画作成部16は、実施の形態2の式(7)を式(12)に、式(9)を式(13)に変更した最適化問題を解く。
ここで、D(t,s)は時刻t、シナリオsにおける需要であり、需要シナリオデータ128に含まれる。Pは小売事業者への売電価格であり、相対取引データ117に含まれる。本実施の形態3が実施の形態2と異なる点は、発電事業者の損益に相対取引による収支が加わる点、及び、電力量のつりあいの式に需要が含まれる点である。
式(12)の右辺は損益であり、発電コストから電力の取引による収益と調整力の取引による収益と相対取引による収益とを引き、調整力の発動による収益を足したものになる。つまり、本実施の形態3における電気事業の損益は、計画期間に亘って必要とする発電コストと、計画期間に亘って行われるスポット市場での電力の取引、計画期間に亘って行われる需給調整市場での調整力の取引、及び、計画期間の電力の相対取引による売電金額とを合わせた収支を含む。
式(12)の補助変数n(s)により、各シナリオにおける損益がVaR以下となるか否かが判定される。補助変数n(s)が0であれば各シナリオにおける損益はVaRより小さく、補助変数n(s)が1であれば各シナリオにおける損益はVaRよりも大きいことを意味する。
式(13)は、各時刻、各シナリオにおいて、全ての発電機が発電する発電量を電力の取引量と調整力の発動量と需要との和に等しくする制約条件を示す。
次に、本実施の形態3に係る電力需給計画作成装置100を用いた電力需給計画作成方法について説明する。
図18は、本実施の形態3に係る電力需給計画作成装置100の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図18の実施の形態3のフローチャートは、以下で説明するように、図14の実施の形態2のフローチャートに対して、ステップS100、S106、S104が異なる。
データ取得ステップであるステップS100では、データ取得部11は、スポット市場取引実績データ111、需給調整市場取引実績データ112、調整力発動量実績データ113、発電機データ114、燃料価格データ115、信頼水準データ116に加えて、相対取引データ117、需要実績データ118をデータ格納部12に格納する。
需要予測ステップであるステップS106では、需要予測部18は、データ格納部12から需要実績データ118を取得し、その需要実績データ118に基づいて、需要の変動を示す需要シナリオデータ128を複数作成する。需要予測部18は、作成された複数の需要シナリオデータ128をデータ格納部12に格納する。
計画作成ステップであるステップS104では、計画作成部16は、データ格納部12に格納されたスポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、燃料価格データ115、信頼水準データ116、相対取引データ117、及び、需要シナリオデータ128に基づいて、発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。
<実施の形態3のまとめ>
上述のとおり、本実施の形態3に係る電力需給計画作成装置及び電力需給計画作成方法では、信頼水準データ116の信頼水準α%のパーセント点に対応する損益のVaRを目的関数として用いる。そして、電力の価格、調整力の価格、調整力の発動割合、需要の各シナリオにおける損益がVaR以下となる比率が信頼水準α%以上となる制約条件下でVaRを最小化する最適化問題を解く。これにより、ユーザがリスクを許容できない度合いを反映しつつ、信頼水準α%で発生する最大の損益が最も小さくなるように最適化された計画を作成できる。
また、需要予測部18が、想定される様々な需要のシナリオを作成するので、需要の変動に起因する損益の変動に対応した発電機運転計画、電力の取引計画、調整力の取引計画を作成できる。需要の変動は、例えば気温の上下に伴う冷暖房需要の変化などによって引き起こされる。このため、例えば、猛暑等により需要の増加が予想されるときは、信頼水準などの信頼区間を大きく設定することで、発電機の出力を増加させて下げ調整力を売るといったリスク回避可能な計画を作成できる。
<実施の形態4>
図19は、本実施の形態4に係る電力需給計画作成装置100の概略構成図である。以下では、実施の形態2と同様である点の説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
本実施の形態4では、発電された電力量の一部を先渡取引で売却する場合を想定して、電気事業の損益のVaRが最小となるときの発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。
データ取得部11は、スポット市場取引実績データ111、需給調整市場取引実績データ112、調整力発動量実績データ113、発電機データ114、燃料価格データ115、信頼水準データ116に加えて、先渡市場データ119をさらに取得する。
図20は、本実施の形態4に係る電力需給計画作成装置100のデータフローを示す概略構成図である。先渡市場データ119は、計画作成部16での演算に用いられる。
先渡市場データ119は、先渡市場の入札のうち、まだ約定していない買い入札のデータであり、入札価格及び入札量のデータを含む。先渡市場データ119は、先渡市場の板情報を元に設定されてもよいし、予想される買い入札のデータを元に設定されてもよい。
次に、計画作成部16が演算する各種計画の最適化問題の一例ついて説明する。本実施の形態4では、計画作成部16は、実施の形態2の式(7)を式(14)に、式(9)を式(15)に変更した最適化問題を解く。
ここで、Qforward(t,n)は、先渡市場でまだ約定していない買い入札に通し番号を付けたときのn番目の入札の時刻tでの入札量であり、先渡市場データ119に含まれる。Vforward(n)は、n番目の入札の入札価格であり、先渡市場データ119に含まれる。Bforward(n)は、最適化問題を解くことによって求めるべきバイナリ変数であり、n番目の買い入札に対して売り入札をするなら1、そうでないなら0となる。本実施の形態4が実施の形態2と異なる点は、発電事業者の損益に先渡取引による収支が加わる点、及び、電力量のつりあいの式に先渡契約が含まれる点である。
式(14)の右辺は損益であり、発電コストから電力の取引による収益と調整力の取引による収益と先渡取引による収益とを引き、調整力の発動による収益を足したものになる。つまり、本実施の形態4における電気事業の損益は、計画期間に亘って必要とする発電コストと、計画期間に亘って行われるスポット市場での電力の取引、計画期間に亘って行われる需給調整市場での調整力の取引、及び、計画期間の先渡市場での電力の取引による売電金額とを合わせた収支を含む。
式(14)の補助変数n(s)により、各シナリオにおける損益がVaR以下となるか否かが判定される。補助変数n(s)が0であれば各シナリオにおける損益はVaRより小さく、補助変数n(s)が1であれば各シナリオにおける損益はVaRよりも大きいことを意味する。
式(15)は、各時刻、各シナリオにおいて、全ての発電機が発電する発電量をスポット市場での取引量と調整力の発動量と先渡市場での取引量との和に等しくする制約条件を示す。
次に、本実施の形態4に係る電力需給計画作成装置100を用いた電力需給計画作成方法について説明する。
本実施の形態4の処理手順を示すフローチャートは実施の形態2のフローチャート(図14)とほぼ同様である。ただし、両者の間には、以下で説明するように、データ取得ステップであるステップS100、計画作成ステップであるステップS104で取得及び格納するデータに違いがある。
データ取得ステップであるステップS100では、データ取得部11は、スポット市場取引実績データ111、需給調整市場取引実績データ112、調整力発動量実績データ113、発電機データ114、燃料価格データ115、信頼水準データ116に加えて、先渡市場データ119をデータ格納部12に格納する。
計画作成ステップであるステップS104では、計画作成部16は、データ格納部12に格納されたスポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、燃料価格データ115、信頼水準データ116、及び、先渡市場データ119に基づいて、発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。
具体的には、計画作成部16は、最適化問題を解き、VaRが最小となったときの変数u(g,t,s)、x(g,t,s)、Qkwh(t,s)、QΔkw(t,s)、Bforward(n)を、起動停止計画データ124、発電量計画データ125、電力取引計画データ126、調整力取引計画データ127、先渡取引計画データ129としてそれぞれデータ格納部12に格納する。
<実施の形態4のまとめ>
上述のとおり、本実施の形態4に係る電力需給計画作成装置及び電力需給計画作成方法では、信頼水準データ116の信頼水準α%のパーセント点に対応する損益のVaRを目的関数として用いる。そして、電力の価格、調整力の価格、調整力の発動割合の各シナリオにおける損益がVaR以下となる比率が信頼水準α%以上となる制約条件下でVaRを最小化する最適化問題を解く。これにより、ユーザがリスクを許容できない度合いを反映しつつ、信頼水準α%で発生する最大の損益が最も小さくなるように最適化された計画を作成できる。
また、先渡市場データ119に基づいて、計画作成部16で取引を定式化し、計画を作成することにより、損益の変動を先渡市場での取引によって軽減する発電機運転計画、電力の取引計画、調整力の取引計画を作成できる。このため、例えば、スポット価格の予測の不確実さが大きい場合には、信頼水準などの信頼区間を大きく設定することで、先渡市場での取引を増やし、スポット市場での取引量を減らすといったリスク回避可能な計画を作成できる。
<実施の形態5>
図21は、本実施の形態5に係る電力需給計画作成装置100の概略構成図である。以下では、実施の形態2と同様である点の説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
本実施の形態5では、電気事業の損益のVaRが最小となるときの発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。金融派生商品である先物取引を運用することにより、電力取引により生じる損益のばらつきを抑えることを想定する。
データ取得部11は、スポット市場取引実績データ111、需給調整市場取引実績データ112、調整力発動量実績データ113、発電機データ114、燃料価格データ115、信頼水準データ116に加えて、先物市場データ120をさらに取得する。
図22は、本実施の形態5に係る電力需給計画作成装置100のデータフローを示す概略構成図である。先物市場データ120は、計画作成部16での演算に用いられる。
先物市場データ120は、先物市場の入札のうち、まだ約定していない買い入札のデータ及び最終決済価格のデータであり、入札価格及び入札量のデータと最終決済価格のデータとを含む。先物市場データ120は、先物市場の板情報を元に設定されてもよいし、予想される買い入札のデータを元に設定されてもよい。
なお、最終決済価格のデータは、差金決済の清算に用いられるデータである、先月のスポット取引市場の月間平均価格を元に設定されてもよいし、スポット価格の変動のトレンドを考慮して運用者が予測した値を元に設定されてもよい。
以下では、計画作成部16が演算する各種計画の最適化問題の一例ついて説明する。本実施の形態5では、計画作成部16は、実施の形態2の式(7)を式(16)に変更した最適化問題を解く。
ここで、Qfuture(m)は、先物市場でまだ約定していない買い入札に通し番号を付けたときのm番目の入札の入札量であり、先物市場データ120に含まれる。Vfuture(m)は、m番目の入札の入札価格であり、先物市場データ120に含まれる。Vfinalは最終決済価格であり、先物市場データ120に含まれる。Bfuture(m)は、最適化問題を解くことによって求めるべきバイナリ変数であり、m番目の買い入札に対して売り入札をするなら1、そうでないなら0となる。本実施の形態5が、実施の形態2と異なる点は、発電事業者の損益に先物取引による収支が加わる点である。
式(16)の右辺は損益であり、発電コストから電力の取引による収益と調整力の取引による収益と先物取引による収益とを引き、調整力の発動による収益を足したものになる。つまり、本実施の形態5における電気事業の損益は、計画期間に亘って必要とする発電コストと、計画期間に亘って行われるスポット市場での電力の取引、及び、計画期間に亘って行われる需給調整市場での調整力の取引による売電金額と、計画期間の先物市場での電力の取引による売電金額及び差金決済額とを合わせた収支を含む。
式(16)の補助変数n(s)により、各シナリオにおける損益がVaR以下となるか否かが判定される。補助変数n(s)が0であれば各シナリオにおける損益はVaRより小さく、補助変数n(s)が1であれば各シナリオにおける損益はVaRよりも大きいことを意味する。
次に、本実施の形態5に係る電力需給計画作成装置100を用いた電力需給計画作成方法について説明する。
本実施の形態5の処理手順を示すフローチャートは実施の形態2のフローチャート(図14)とほぼ同様である。ただし、両者の間には、以下で説明するように、データ取得ステップであるステップS100、計画作成ステップであるステップS104で取得及び格納するデータに違いがある。
データ取得ステップであるステップS100では、データ取得部11は、スポット市場取引実績データ111、需給調整市場取引実績データ112、調整力発動量実績データ113、発電機データ114、燃料価格データ115、信頼水準データ116に加えて、先物市場データ120をデータ格納部12に格納する。
計画作成ステップであるステップS104では、計画作成部16は、データ格納部12に格納されたスポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、燃料価格データ115、信頼水準データ116、及び、先物市場データ120に基づいて、発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。
具体的には、計画作成部16は、最適化問題を解き、VaRが最小となったときの変数u(g,t,s)、x(g,t,s)、Qkwh(t,s)、QΔkw(t,s)、Bfuture(m)を、起動停止計画データ124、発電量計画データ125、電力取引計画データ126、調整力取引計画データ127、先物取引計画データ130としてそれぞれデータ格納部12に格納する。
<実施の形態5のまとめ>
上述のとおり、本実施の形態5に係る電力需給計画作成装置及び電力需給計画作成方法では、信頼水準データ116の信頼水準α%のパーセント点に対応する損益のVaRを目的関数として用いる。そして、電力の価格、調整力の価格、調整力の発動割合の各シナリオにおける損益がVaR以下となる比率が信頼水準α%以上となる制約条件下でVaRを最小化する最適化問題を解く。これにより、ユーザがリスクを許容できない度合いを反映しつつ、信頼水準α%で発生する最大の損益が最も小さくなるように最適化された計画を作成できる。
また、先物市場データ120に基づいて、計画作成部16で取引を定式化し、計画を作成することにより、損益の変動を先物市場での取引によって軽減する発電機運転計画、電力の取引計画、調整力の取引計画を作成できる。このため、例えば、スポット価格の予測の不確実さが大きい場合には、信頼水準などの信頼区間を大きく設定することで、先物市場での取引を増やし、スポット市場での取引による価格の変動を相殺するといったリスク回避可能な計画を作成できる。
<実施の形態6>
図23は、本実施の形態6に係る電力需給計画作成装置100の概略構成図である。以下では、実施の形態2と同様である点の説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
図23の電力需給計画作成装置100の構成は、図10の電力需給計画作成装置100の構成に、燃料価格予測部19を加えた構成と同様である。本実施の形態6では、為替の変動などに伴う燃料価格の変動を想定して、電気事業の損益のVaRが最小となるときの発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。
データ取得部11は、スポット市場取引実績データ111、需給調整市場取引実績データ112、調整力発動量実績データ113、発電機データ114、信頼水準データ116を取得する。また、データ取得部11は、燃料価格データ115の代わりに燃料価格実績データ131を取得する。
図24は、本実施の形態6に係る電力需給計画作成装置100のデータフローを示す概略構成図である。燃料価格実績データ131は、燃料価格予測部19での燃料価格シナリオデータ132の演算に用いられる。燃料価格シナリオデータ132は計画作成部16での演算に用いられる。
燃料価格実績データ131は、燃料価格の実績値を時系列で表すデータである。燃料価格実績データ131は、過去の一定期間における燃料価格の平均値を元に設定されてもよいし、為替の変動を考慮した予測値を元に設定されてもよい。燃料価格実績データ131は、燃料種別ごと(石炭、石油、LNGなど)のデータであってもよいし、発電機別のデータであってもよい。
燃料価格シナリオデータ132は、燃料価格のシナリオを表すデータである。
燃料価格予測部19は、例えば最尤推定により時系列モデルのモデルパラメータを算出した後、当該モデルパラメータにモンテカルロ法を用いて、モンテカルロ法の試行回数分の燃料価格シナリオデータ132を作成する。時系列モデルは自己回帰和分移動平均またはベクトル自己回帰モデルを用いてもよいし、その他のモデルを用いてもよい。
次に、計画作成部16が演算する各種計画の最適化問題の一例ついて説明する。本実施の形態6では、計画作成部16は、実施の形態2の式(7)を式(17)に、式(11)を式(18)に変更した最適化問題を解く。
ここで、fuel(s,g,t)は、時刻t、シナリオsにおける発電機番号gの燃料価格であり、燃料価格シナリオデータ132に含まれる。実施の形態2と異なる点は、発電機のコスト(E)及び燃料価格(fuel)がシナリオs別になる点である。
次に、本実施の形態6に係る電力需給計画作成装置100を用いた電力需給計画作成方法について説明する。
図25は、本実施の形態6に係る電力需給計画作成装置100の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図25の実施の形態6のフローチャートは、以下で説明するように、図14の実施の形態2のフローチャートに対して、ステップS100、S107、S104が異なる。
データ取得ステップであるステップS100では、データ取得部11は、スポット市場取引実績データ111、需給調整市場取引実績データ112、調整力発動量実績データ113、発電機データ114、信頼水準データ116、及び、燃料価格実績データ131をデータ格納部12に格納する。
燃料価格予測ステップであるステップS107では、燃料価格予測部19は、データ格納部12から燃料価格実績データ131を取得し、その燃料価格実績データ131に基づいて、燃料価格の変動を示す燃料価格シナリオデータ132を複数作成する。燃料価格予測部19は、作成された複数の燃料価格シナリオデータ132をデータ格納部12に格納する。
計画作成ステップであるステップS104では、計画作成部16は、データ格納部12に格納されたスポット価格シナリオデータ121、調整力価格シナリオデータ122、調整力発動割合シナリオデータ123、発電機データ114、信頼水準データ116、及び、燃料価格シナリオデータ132に基づいて、発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成する。
<実施の形態6のまとめ>
上述のとおり、本実施の形態6に係る電力需給計画作成装置及び電力需給計画作成方法では、信頼水準データ116の信頼水準α%のパーセント点に対応する損益のVaRを目的関数として用いる。そして、電力の価格、調整力の価格、調整力の発動割合、燃料価格の各シナリオにおける損益がVaR以下となる比率が信頼水準α%以上となる制約条件下でVaRを最小化する最適化問題を解く。これにより、ユーザがリスクを許容できない度合いを反映しつつ、信頼水準α%で発生する最大の損益が最も小さくなるように最適化された計画を作成できる。
また、燃料価格シナリオデータ132に基づいて、計画作成部16で計画を作成することにより、燃料価格の変動に起因する発電コストの変動を考慮した発電機運転計画、電力の取引計画、調整力の取引計画を作成できる。このため、例えば、燃料価格の変動が大きい場合には、信頼水準などの信頼区間を大きく設定することで、スポット市場での電力の取引を減らし、需給調整市場での調整力の取引を増やすといったリスク回避可能な計画を作成できる。
<変形例>
以上の説明では、電気事業の損益は、電気事業の損失(コスト)から電気事業の収益を引いて得られた値であったが、電気事業の収益から電気事業の損失(コスト)を引いて得られた値であってもよい。この場合、計画作成部16は、計画作成部16は、目的関数が表す損益を最大化する最適化問題を解くことで発電機運転計画並びに電力及び調整力の取引計画を作成すればよい。
なお、各実施の形態及び各変形例を自由に組み合わせたり、各実施の形態及び各変形例を適宜、変形、省略したりすることが可能である。