JP2021133555A - インクジェット記録方法、水系インク組成物、及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録方法、水系インク組成物、及びインクジェット記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】インク低非吸収性記録媒体及びインク吸収性記録媒体の両者での画質を向上させ、かつ、インクの吐出安定性が良好であるインクジェット記録方法を提供すること。【解決手段】本発明に係るインクジェット記録方法は、水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させるインク付着工程を備え、前記水系インク組成物は、25℃での表面張力が30mN/m以下の1,2−アルカンジオールである有機溶剤Aと、標準沸点が250℃以下であり炭素数が3以上の両末端アルカンジオールである有機溶剤Bと、を含有し、前記インクジェットヘッドは、前記水系インク組成物を循環させる循環機構を備える。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法、水系インク組成物、及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で発展を遂げている。例えば、ラベル印刷では、上質紙等のインク吸収性記録媒体(以下、「吸収性記録媒体」ともいう。)だけではなく、フィルム等のインク低吸収性又は非吸収性の記録媒体(以下、「低非吸収性記録媒体」ともいう。)に対しても、画像を記録することのできるインクジェット記録方法が検討されている。
具体的には、溶剤として1,2−ヘキサンジオール及びプロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)を含有するインクを用いて、記録媒体の性状にかかわらず、安定した光学濃度(OD値)を有する記録物が得られる記録方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2016−60168号公報
しかしながら、低非吸収性記録媒体において、ぬれ広がり性の優れるインクを用いることにより、OD値が高く発色性に優れた画質が得られやすいが、吸収性記録媒体においては、インクが浸透しやすいため、OD値が得られにくく、発色性に優れた画質が得られ難かった。また、インクに含有される溶剤の保湿性能が劣る場合、ノズルでのインクの乾燥等により吐出安定性が損なわれる場合があった。このように、低非吸収性記録媒体及び吸収性記録媒体の両者での画質を向上させ、かつ、インクの吐出安定性を確保することを両立させる点では、未だ十分とは言えなかった。

本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
水系インク組成物を用いて記録媒体へ行うインクジェット記録方法であって、
前記水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して前記記録媒体に付着させるインク付着工程を備え、
前記水系インク組成物は、25℃での表面張力が30mN/m以下の1,2−アルカンジオールである有機溶剤Aと、標準沸点が250℃以下であり炭素数が3以上の両末端アルカンジオールである有機溶剤Bと、を含有し、
前記インクジェットヘッドは、前記水系インク組成物を循環させる循環機構を備える。
本発明に係る水系インクジェット組成物の一態様は、
前記インクジェット記録方法に用いるためのものである。
本発明に係るインクジェット記録装置の一態様は、
水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させるインク付着手段を備え、
前記水系インク組成物は、25℃での表面張力が30mN/m以下の1,2−アルカンジオールである有機溶剤Aと、標準沸点が250℃以下であり炭素数が3以上の両末端アルカンジオールである有機溶剤Bと、を含有し、
前記インクジェットヘッドは、前記水系インク組成物を循環させる循環機構を備える。
本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例の概略図。 本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例のキャリッジ周辺の概略斜視図。 本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例のブロック図。 インクジェット記録装置のインクジェットヘッドの断面の模式図。 インクジェットヘッドのうち循環液室の近傍の断面の模式図。 ライン型の記録装置の一部分を模式的に示す概略断面図。
以下に本発明の幾つかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.インクジェット記録方法
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、水系インク組成物を用いて記録媒体へ行うインクジェット記録方法であって、前記水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して前記記録媒体に付着させるインク付着工程を備え、前記水系インク組成物は、25℃での表面張力が30mN/m以下の1,2−アルカンジオールである有機溶剤Aと、標準沸点が250℃以下であり炭素数が3以上の両末端アルカンジオールである有機溶剤Bと、を含有し、前記インクジェットヘッドは、前記水系インク組成物を循環させる循環機構を備える。なお、本実施形態に係るインクジェット記録方法においては、1以上の水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体へ付着させるが、2以上のインク組成物があった場合、上記の水系インク組成物に該当するものは少なくとも1つあればよく、必ずしも全てのインク組成物が上記の水系インク組成物に該当しなくてもよい。
以下、本実施形態に係るインクジェット記録方法の各工程、使用され得る記録媒体、水系インク組成物、インクジェット記録装置の順に説明する。
1.1.各工程
1.1.1.インク付着工程
インク付着工程では、水系インク組成物を内部で循環させる循環機構を備えるインクジェットヘッドから、上述した水系インク組成物を吐出して記録媒体に付着させる。インクジェットヘッドが循環機構を備えることにより、ノズル近傍の水系インク組成物を循環させ、乾燥しかけた水系インク組成物を回復させ、ノズルでの吐出安定性を良好なものとすることができる。
インク付着工程においては、加熱された状態の記録媒体へ水系インク組成物を付着させてもよい。このような乾燥しやすい条件下においても、インクジェットヘッドが循環機構を備えることで、ノズルでの吐出安定性を良好なものとすることができる。また、予め加熱された状態の記録媒体へ水系インク組成物を付着させることで、水系インク組成物の乾燥速度がさらに速くなり、記録媒体の搬送速度を速くすることができる。
本工程は、シリアル型の記録装置を用いて行ってもよいし、ライン型の記録装置を用いて行ってもよい。
1.1.2.その他の工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、インク付着工程を複数含んでもよい。さらに、本実施形態に係るインクジェット記録方法は、記録媒体に付着した水系インク組成物を乾燥させる乾燥工程、記録媒体を加熱する工程、ラミネート工程等を備えてもよい。
1.1.2.1.乾燥工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、乾燥工程を有してもよい。本実施形態に係るインクジェット記録方法は、インク付着工程の前又はインク付着工程時に記録媒体を乾燥する乾燥工程を備えてもよい。乾燥工程は、記録を停止して放置する手段の他に、乾燥機構を用いて乾燥させる手段により行うことができる。
乾燥機構を用いて乾燥させる手段としては、記録媒体に対して常温の送風や温風の送風を行う手段(送風式)、及び、記録媒体に熱を発生する放射線(赤外線等)を照射する手段(放射式)、記録媒体に接して記録媒体に熱を伝える部材(伝導式)、並びに、これらの手段の2種以上の組み合わせが挙げられる。乾燥工程の中でも加熱を伴うものは、一次加熱工程ともいう。乾燥機構を用いた乾燥工程は、記録媒体に付着した水系インク組成物を直ちに乾燥促進するものである。乾燥工程を行う場合、記録媒体に付着した水系インク組成物の乾燥を促進し、水系インク組成物のブリードによる画像の劣化を低減できる。このような乾燥工程を一次乾燥工程ともいう。
一方、乾燥機構を用いた乾燥工程を行わないことも好ましい。本実施形態で使用される水系インク組成物は、標準沸点が250℃以下の有機溶剤Bを含有するので、乾燥速度が速い。このため、乾燥機構を用いた乾燥工程を行わない場合でも、記録媒体に付着した水系インク組成物がブリードして画像が劣化することを抑制できる。また、乾燥機構を用いた乾燥工程を行わないことで、ノズルでの吐出安定性がより優れ、インクのぬれ広がり性がよく画質がより優れる場合がある。
水系インク組成物の付着時の記録媒体の表面温度は45℃以下が好ましく、43℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましく、38℃以下がざらにより好ましく、35℃以下が特に好ましい。一方、下限は、20℃以上が好ましく、23℃以上がより好ましく、25℃以上がさらに好ましく、28℃以上が特に好ましく、30.0℃以上がさらに好ましく、32.0℃以上がより好ましい。さらには35.0℃以上が好ましく、37.0℃以上がより好ましい。
さらには、20℃以上45℃以下がより好ましい。また、27℃以上45℃以下が好ましく、28℃以上43℃以下がより好ましく、30℃以上40℃以下がさらに好ましく、32℃以上38℃以下が特に好ましい。該温度は付着工程における記録媒体の記録面の水系インク組成物の付着を受ける部分の表面温度であり、記録領域における付着工程の最高の温度である。記録中にインクジェットヘッドと対向する位置の記録媒体の表面温度である。表面温度が上記上限以下の場合、画像の劣化の抑制や、目詰まり低減や高光沢の点でより好ましい。上記下限以上の場合、堅牢性や、インクの広がりが良く画質が優れる点でより好ましい。
付着時の記録媒体の表面温度は、乾燥機構を用いた乾燥工程を行うことで比較的高くすることができ、行わないことで比較的低くすることができる。
乾燥工程が行われる場合は、上述のインク付着工程の1つ又は2つ以上と同時に行われることができる。乾燥工程が付着工程と同時に行われる場合においても、付着工程の記録媒体の表面温度は上記範囲とすることができ好ましい。乾燥工程をこのように行う場合には、この工程を第一加熱工程という場合がある。
1.1.2.2.加熱工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、インク付着工程の後に記録媒体を加熱する加熱工程を備えてもよい。加熱工程は、例えば、適宜の加熱手段を用いて行うことができる。インク付着工程後の加熱工程は、例えば、アフターヒーター(後述のインクジェット記録装置の例では加熱ヒーター5が相当する。)により行われる。なお、加熱手段は、インクジェット記録装置に備えられた加熱手段に限らず、他の加熱手段を用いてもよい。これにより得られる画像を乾燥させ、より十分に定着させることができるので、例えば、記録物を早期に使用できる状態にすることができる。加熱工程を二次加熱工程や後加熱工程とも言う。
この場合の記録媒体の温度は、特に限定されないが、例えば、記録物に含まれる樹脂粒子のTg等を鑑みて設定し得る。樹脂粒子のTgを考慮する場合には、樹脂粒子のTgよりも5℃以上、好ましくは10℃以上に設定するとよい。
加熱工程の加熱によって到達する記録媒体の表面温度は、好ましくは30℃以上120℃以下、特に好ましくは40℃以上100℃以下、より好ましくは50℃以上95℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上90℃以下である。特に好ましくは60℃以上である。記録媒体の温度がこの程度の範囲であれば、記録物中に含まれる樹脂粒子の皮膜化、平坦化を行うことができるとともに、得られる画像を乾燥させ、より十分に定着させることができる。
また、本実施形態に係るインクジェット記録方法では、後述の水系インク組成物を用いており乾燥の速度が速いので、より少ないエネルギーで画像を乾燥できる。
1.2.記録媒体
本実施形態に係るインクジェット記録方法に用いる記録媒体は、吸収性記録媒体を用いてもよく、低非吸収性記録媒体を用いてもよい。低非吸収性記録媒体(低吸収性記録媒体及び非吸収性記録媒体)とは、インクをほとんど吸収しない、少ししか吸収しない、又は全く吸収しない性質を有する記録媒体を指す。定量的には、本実施形態で使用する低非吸収性記録媒体とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を指す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。このような低非吸収性記録媒体としては、インク吸収性を備えるインク受容層を記録面に備えない記録媒体や、インク吸収性の小さいコート層を記録面に備える記録媒体が挙げられる。
非吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インク吸収層を有していないプラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックなどがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。プラスチックなどによるコーティングは、インク非吸収性のコーティングである。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
低吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、表面に塗工層が設けられた塗工紙が挙げられる。塗工層は、例えば、樹脂や無機微粒子などから構成され、インク低吸収性の層である。塗工紙としては、特に限定されないが、例えば、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。
吸収性記録媒体は、前述の「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m超である記録媒体」を指す。吸収性記録媒体としては、普通紙、インクジェット専用紙、などの紙や、布などが挙げられる。
本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、水系インク組成物が特に有機溶剤Aを含有することにより、低非吸収性記録媒体へのインクのぬれ広がり性が優れるため、OD値が高く発色性に優れた画質を得ることができる。また、本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、水系インク組成物が特に有機溶剤Bを含有することにより、吸収性記録媒体へのインクの浸透が抑制されるため、表面に色材が留まり、OD値が高く発色性に優れた画質を得ることができる。
なお、記録媒体は袋状になっていてもシート状になっていても、いずれでもよい。また、記録媒体にあらかじめコロナ処理、プライマー処理などの表面処理を行ってもよく、これら表面処理によって記録媒体からのインクの剥離性を改善することができる場合がある。
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、水系インク組成物を用いて低非吸収性記録媒体への記録と吸収性記録媒体への記録とを行うものであるインクジェット記録装置、を用いて行う記録方法であっても良い。また、インクジェット記録装置を用いて、低非吸収性記録媒体と吸収性記録媒体の何れかに行う記録方法であってもよい。例えば、インクジェット記録装置は、本実施形態の水系インク組成物を用いて、低非吸収性記録媒体への記録と、吸収性記録媒体への記録とが、何れも行えるように、記録条件が設定されている。これらの記録条件の設定から、低非吸収性記録媒体への記録、又は吸収性記録媒体への記録を選択して、選択された方の記録条件の設定を用いて記録を行う。記録の条件は、限るものではないが、例えば、インク付着量や、記録解像度や、乾燥工程の温度などである。
1.3.水系インク組成物
本実施形態に係るインクジェット記録方法で用い得る水系インク組成物は、25℃での表面張力が30mN/m以下の1,2−アルカンジオールである有機溶剤Aと、標準沸点が250℃以下であり炭素数が3以上の両末端アルカンジオールである有機溶剤Bと、を含有する。前記水系インク組成物は、有機溶剤A及び有機溶剤Bを含有することにより、低吸収性記録媒体への記録と、吸収性記録媒体への記録と、に用いることが可能となる。また、前記水系インク組成物は、内部でインクを循環させる循環機構を備えたインクジェットヘッドから吐出されて記録に用いられる。以下、前記水系インク組成物に含有される各成分について説明する。
1.3.1.有機溶剤A
前記水系インク組成物は、25℃での表面張力が30mN/m以下の1,2−アルカンジオールである有機溶剤Aを含有する。有機溶剤Aは、低非吸収性記録媒体へのぬれ広がり性を高める反面、吸収性記録媒体への浸透を促進させる作用を有する。これにより、低非吸収性記録媒体へのインクのぬれ広がり性が優れるため、低非吸収性記録媒体においてOD値が高く発色性に優れた画質を得ることができる。
有機溶剤Aの25℃での表面張力は、30mN/m以下であり、好ましくは29mN/m以下であり、より好ましくは28mN/m以下であり、特に好ましくは27mN/m以下である。また、有機溶剤Aの25℃での表面張力は、好ましくは10mN/m以上、より好ましくは15mN/m以上、特に好ましくは20mN/m以上である。25℃での表面張力が前記範囲にある1,2−アルカンジオールは、浸透溶剤として有用であり、低非吸収性記録媒体へのインクのぬれ広がり性を高めることができる。なお、表面張力の測定方法としては、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定する方法が例示できる。
このような有機溶剤Aとしては、炭素数5以上の1,2−アルカンジオールが好ましく、炭素数5〜7の1,2−アルカンジオールがより好ましい。有機溶剤Aの具体例としては、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオールなどが挙げられ、1,2−ペンタンジオール及び1,2−ヘキサンジオールの何れかが好ましく、1,2−ヘキサンジオールが特に好ましい。
有機溶剤Aの含有量の上限は、前記水系インク組成物の総質量に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、特に好ましくは7質量%以下である。有機溶剤Aの含有量の下限は、前記水系インク組成物の総質量に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらにより好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上である。有機溶剤Aの含有量が前記範囲にあると、低非吸収性記録媒体へのぬれ広がり性を十分に高めることができるので、低非吸収性記録媒体においてOD値が高く発色性に優れた画質が得られやすい。また、有機溶剤Aは、インクの動的表面張力を下げる働きがあり、インクのミストを発生させる場合があるが、有機溶剤Aの含有量が前記範囲にあればこのような弊害を防止することができる。
1.3.2.有機溶剤B
前記水系インク組成物は、標準沸点が250℃以下であり炭素数が3以上の両末端アルカンジオールである有機溶剤Bを含有する。有機溶剤Bは、有機溶剤Aによって促進された、インクの吸収性記録媒体への浸透を抑制する働きがある。これにより、吸収性記録媒体へのインクの浸透が抑制されるため、表面に色材が留まり、特に吸収性記録媒体においてOD値が高く発色性に優れた画質を得ることができる。
有機溶剤Bにこのような働きがある理由は、推測であるが、両末端に水酸基を有する構造が寄与していることや、これらの有機溶剤Bが、粘度がやや高い傾向があることが寄与していると考えられる。ただし理由はこれに限るものではない。
有機溶媒Bの標準沸点は、250℃以下であり、好ましくは245℃以下であり、特に好ましくは240℃以下である。有機溶剤Bの標準沸点が前記範囲内であれば、インクを低非吸収性記録媒体へ付着させて画像を形成する際に、有機溶剤Bを速やかに揮発させることができるので、低非吸収性記録媒体でのインクジェット記録方法に適したものとなる。また、乾燥性や画質などがより優れ好ましい。
一方、有機溶媒Bの標準沸点は、160℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましく、210℃以上が特に好ましく、220℃以上がさらに好ましく230℃以上が特に好ましい。標準沸点が上記範囲以上の場合、吐出信頼性などがより優れ好ましい。また、有機溶剤Aによって促進された、インクの吸収性記録媒体への浸透を抑制する働きがある有機溶剤Bは、標準沸点が上記範囲である傾向があると推測する。なお、本明細書における「標準沸点」とは、圧力1atmの下での沸点のことをいう。
このような有機溶剤Bとしては、炭素数3以上の両末端アルカンジオールが挙げられ、炭素数3〜7の両末端アルカンジオールが好ましい。有機溶剤Bの具体例としては、1,3−プロパンジオール(214℃)、1,4−ブタンジオール(228℃)、1,5−ペンタンジオール(239℃)、1,6−ヘキサンジオール(250℃)などが挙げられ、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールの何れかが好ましく、1,5−ペンタンジオールが特に好ましい。なお、括弧内の数字は、標準沸点を表す。
有機溶剤Bの含有量の上限は、前記水系インク組成物の総質量に対して、好ましくは30.0質量%以下であり、より好ましくは25.0質量%以下であり、特に好ましくは20.0質量%以下である。さらには、好ましくは17.0質量%以下、より好ましくは15.0質量%以下である。一方、有機溶剤Bの含有量の下限は、前記水系インク組成物の総質量に対して、好ましくは4.0質量%以上、より好ましくは6.0質量%以上、特に好ましくは7.0質量%以上である。さらには、10.0質量%以上が好ましく、14.0質量%以上がより好ましい。有機溶剤Bの含有量が前記範囲にあると、有機溶剤Aによって促進された、インクの吸収性記録媒体への浸透を十分に抑制することができるので、低非吸収性記録媒体においてOD値が高く発色性に優れた画質が得られやすい。
有機溶剤Aと有機溶剤Bの合計含有量の上限は、前記水系インク組成物の総質量に対して、好ましくは30.0質量%以下であり、より好ましくは25.0質量%以下であり、特に好ましくは20.0質量%以下である。有機溶剤Aと有機溶剤Bの合計含有量の下限は、前記水系インク組成物の総質量に対して、やや好ましくは3.0質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以上であり、より好ましくは7.0質量%以上であり、特に好ましくは10.0質量%以上である。さらには13.0質量%以上が好ましい。有機溶剤Aも有機溶剤Bも親水性有機溶剤であるため水への溶解性が高いが、有機溶剤Aと有機溶剤Bの合計含有量が前記範囲内にあれば、インクを低非吸収性記録媒体へ付着させた場合であっても、画質の劣化を低減することができる。
また、前記水系インク組成物において、前記有機溶剤Aの含有量(M)に対する前記有機溶剤Bの含有量(M)の質量比(M/M)の上限は、やや好ましくは20.0以下であり、好ましくは16.0以下であり、より好ましくは10.0以下であり、特に好ましくは6.0以下である。さらには、5.0以下が好ましい。一方、質量比(M/M)の下限は、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.5以上であり、特に好ましくは1以上である。さらには、2.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、4.0以上がより好ましい。質量比(M/M)が前記範囲内にあれば、有機溶剤Aと有機溶剤Bとの含有量のバランスが良好であるので、低非吸収性記録媒体及び吸収性記録媒体の両者での画質を向上させやすくなり、かつ、インクの吐出安定性を確保しやすくすることができる。
1.3.3.水
前記水系インク組成物は、水を含有する。本明細書において、「水系」とは、主要な溶媒成分の1つとして水を含有することをいう。水は主となる溶媒成分として含まれ、乾燥により蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、水系インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。水の含有量は、特に制限されないが、水系インク組成物の総質量に対して、好ましくは40.0質量%以上であり、より好ましくは50.0質量%以上であり、より好ましくは70.0質量%以上であり、さらにより好ましくは75.0質量%以上であり、さらにより好ましくは80.0質量%以上98.0質量%以下であり、特に好ましくは85.0質量%以上95.0質量%以下である。
前記水系インク組成物に含有される水及び各有機溶剤の各標準沸点と、前記水系インク組成物中における各含有量とを加重平均した値(以下、「溶剤組成沸点」ともいう。)は、好ましくは130℃以下であり、より好ましくは90〜120℃であり、特に好ましくは95〜115℃である。各有機溶剤は、有機溶剤A、B、及び含有する場合はその他の有機溶剤である。この溶剤組成沸点が前記範囲内にあると、特にインクを低非吸収記録媒体に付着させた場合に、インク中に含まれる溶剤を速やかに揮発させることができるため、粘稠な画像が形成され難く、OD値が高く発色性に優れた画質が得られやすい。
溶剤組成沸点は、各有機溶剤と水の各成分ごとに、該成分の標準沸点と、該成分のインク(インク100質量%)に対する含有量(質量%)とをかけた値を、各成分について総和を求め、総和を100で割った値である。各有機溶剤及び水の全体に対する、各成分の含有量の占める比だけでなく、インク全体に対する、各有機溶剤及び水の全体の占める比も加味された値である。
1.3.4.その他の成分
1.3.4.1.色材
前記水系インク組成物は、色材を含有してもよい。色材としては、顔料、染料のいずれも用いることができ、カーボンブラック、チタンホワイトを含む無機顔料、有機顔料、油溶染料、酸性染料、直接染料、反応性染料、塩基性染料、分散染料、昇華型染料等を用いることができる。前記水系インク組成物は、顔料を含んでいることが好ましく、該顔料が分散樹脂により分散されていてもよい。
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ等を用いることができる。
有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料又はアゾ系顔料等を例示できる。
前記水系インク組成物に用いられる有機顔料の具体例としては、下記のものが挙げられる。
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントブルー15:3、15:4、及び60からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202;C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、及び209、C.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、119、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、及び138からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
これ以外の色の顔料も使用可能である。例えば、オレンジ顔料、グリーン顔料などがあげられる。
上記例示した顔料は、好適な顔料の例であり、これらによって本発明が限定されるものではない。これらの顔料は一種又は二種以上の混合物として用いてもよいし、染料と併用しても構わない。
また、顔料は、水溶性樹脂、水分散性樹脂、界面活性剤等から選ばれる分散剤を用いて分散して用いてもよく、あるいはオゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、顔料表面を酸化、あるいはスルホン化して自己分散顔料として分散して用いてもよい。
前記水系インク組成物において、顔料を分散樹脂により分散させる場合には、顔料と分散樹脂との比率は10:1〜1:10が好ましく、4:1〜1:3がより好ましい。また、分散時の顔料の体積平均粒子径は、動的光散乱法で計測した場合の最大粒径が500nm未満かつ平均粒径が300nm以下であることが好ましく、平均粒径が200nm以下であることがより好ましい。
色材の含有量は、用途に応じて適宜調整することができるが、前記水系インク組成物の総質量に対して、好ましくは0.1質量%以上17.0質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上15.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下であり、特に好ましくは2.0質量%以上5.0質量%以下である。
色材に顔料を採用する場合の顔料粒子の体積平均粒子径は、好ましくは10〜200nm以下であり、より好ましくは30〜200nmであり、さらに好ましくは50〜150nmであり、特に好ましくは70〜120nmである。
1.3.4.2.樹脂粒子
前記水系インク組成物は、樹脂粒子を含有することが好ましい。前記水系インク組成物が樹脂粒子を含有することで、記録物の耐水性や耐擦性が向上する場合がある。
このような樹脂粒子としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂粒子は、エマルジョン形態で取り扱われることが多いが、粉体の性状であってもよい。また、樹脂粒子は1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂の総称である。ウレタン系樹脂としては、ウレタン結合以外に、主鎖にアクリル系骨格を含むウレタン−アクリル系樹脂、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂等を使用してもよい。ウレタン系樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、スーパーフレックス 210、460、460s、840、E−4000(商品名、第一工業製薬株式会社製)、レザミン D−1060、D−2020、D−4080、D−4200、D−6300、D−6455(商品名、大日精化工業株式会社製)、タケラック WS−6020、WS−6021、W−512−A−6(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、パーマリンUA−150(商品名、三洋化成工業社製)などの市販品の中から選択して用いてもよい。
アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体を1成分として重合して得られる重合体の総称であって、例えば、アクリル系単量体から得られる樹脂や、アクリル系単量体とこれ以外の単量体との共重合体などが挙げられる。例えばアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体であるアクリル−ビニル系樹脂などが挙げられる。さらに例えば、スチレンなどのビニル系単量体との共重合体が挙げられる。アクリル系単量体としては、アクリルアミド、アクリロニトリル等も使用可能である。なお、ウレタン−アクリル系樹脂は、上記のウレタン系樹脂に含まれるものとする。
アクリル系樹脂を原料とする樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えばFK−854、モビニール952B、718A(商品名、ジャパンコーティングレジン社製)、NipolLX852、LX874(商品名、日本ゼオン社製)、ポリゾールAT860(昭和電工株式会社製)、ボンコートAN−1190S、YG−651、AC−501、AN−1170、4001(商品名、DIC社製、アクリル系樹脂エマルジョン)等の中から選択して用いてもよい。
なお、本明細書において、アクリル系樹脂は、上述のようにスチレンアクリル系樹脂であってもよい。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」との表記は、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
スチレンアクリル系樹脂は、スチレン単量体とアクリル系単量体とから得られる共重合体であり、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。スチレンアクリル系樹脂には、市販品を用いても良く、例えば、ジョンクリル62J、7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC−1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX−7630A、352J、352D、PDX−7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(商品名、BASF社製)、モビニール966A、975N(商品名、ジャパンコーティングレジン社製)などが挙げられる。
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であってもよい。
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。オレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えばアローベースCB−1200、CD−1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等の中から選択して用いてもよい。
また、樹脂粒子は、エマルジョンの形態で供給されてもよく、そのような樹脂エマルジョンの市販品の例としては、マイクロジェルE−1002、E−5002(日本ペイント社製商品名、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコートAN−1190S、YG−651、AC−501、AN−1170、4001、5454(DIC社製商品名、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAM−710、AM−920、AM−2300、AP−4735、AT−860、PSASE−4210E(アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAP−7020(スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、ポリゾールSH−502(酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールAD−13、AD−2、AD−10、AD−96、AD−17、AD−70(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールPSASE−6010(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)(昭和電工社製商品名)、ポリゾールSAE1014(商品名、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン社製)、サイビノールSK−200(商品名、アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学社製)、AE−120A(JSR社製商品名、アクリル樹脂エマルジョン)、AE373D(イーテック社製商品名、カルボキシ変性スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、セイカダイン1900W(大日精化工業社製商品名、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2682(アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2886(酢酸ビニル・アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン5202(酢酸アクリル樹脂エマルジョン)(日信化学工業社製商品名)、ビニブラン700、2586(日信化学工業社製)、エリーテルKA−5071S、KT−8803、KT−9204、KT−8701、KT−8904、KT−0507(ユニチカ社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、ハイテックSN−2002(東邦化学社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、タケラックW−6020、W−635、W−6061、W−605、W−635、W−6021(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、620、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、パーマリンUA−150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、NeoRez R−9660、R−9637、R−940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、アデカボンタイター HUX−380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、モビニール966A、モビニール7320(ジャパンコーティングレジン社製)、ジョンクリル7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC−1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX−7630A、352J、352D、PDX−7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(以上、BASF社製)、NKバインダーR−5HN(新中村化学工業株式会社製)、ハイドランWLS−210(非架橋性ポリウレタン:DIC株式会社製)、ジョンクリル7610(BASF社製)等の中から選択して用いてもよい。
樹脂粒子の含有量の上限は、前記水系インク組成物の総質量に対して、固形分として、好ましくは17.0質量%以下、より好ましくは15.0質量%以下、特に好ましくは10.0質量%以下である。さらには7.0質量%以下が好ましい。樹脂粒子の含有量の下限は、前記水系インク組成物の総質量に対して、固形分として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上である。さらには3.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましい。樹脂粒子の含有量が前記範囲にあると、インクの吐出安定性の点でより良好となる場合がある。また、記録物の耐水性や耐擦性がより優れ好ましい。
色材と樹脂粒子との合計含有量は、前記水系インク組成物の総質量に対して、固形分として、好ましくは3.0質量%以上である。一方、好ましくは20.0質量以下である。より好ましくは3.0質量%以上20.0質量%以下であり、特に好ましくは4.0質量%以上15.0質量%以下である。色材と樹脂粒子との合計含有量が前記範囲内にあれば、固形分濃度が適切であるので、インク中の溶剤成分が揮発したときにインクの粘度が急激に上昇するという特性が得られる。これにより、吸収性記録媒体へのインクの浸透が抑制されるため、表面に色材が留まり、特に吸収性記録媒体においてOD値が高く発色性に優れた画質が得られる。
これらの樹脂粒子の中でも、記録媒体上で膜化しやすく、耐水性や耐擦性がより優れる点で、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、の何れかであることが好ましい。
樹脂粒子の樹脂のガラス転移温度は、記録媒体上で膜化しやすく、耐擦性がより優れる点で、70℃以下が好ましい。一方、硬さを有することで耐擦性がより優れる点や、耐ブロッキング裏写りがより優れる点で、−50℃以上が好ましい。さらには、−20℃以上が好ましく、−10℃以上がより好ましく、0℃以上がさらに好ましく、10℃以上が特に好ましく、20℃以上がより特に好ましい。一方、50℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましく、30℃以下が特に好ましい。
さらには、−20℃以上60℃以下が好ましく、−30℃以上50℃以下が好ましく、20℃以上50℃以下がさらに好ましく、25℃以上45℃以下がより好ましく、30℃以上40℃以下がより好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析(DSC)等を用いた定法により確認できる。
1.3.4.3.その他の有機溶剤
前記水系インク組成物は、前記有機溶剤A及び前記有機溶剤B以外の有機溶剤を含有してもよい。このような有機溶剤としては、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類、含窒素溶剤、多価アルコール類等が挙げられる。
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート等のグリコールモノアセテート類;エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート等のグリコールジエステル類が挙げられる。
アルキレングリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルが好ましく、アルキルエーテルがより好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
環状エステル類としては、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、β−ヘキサノラクトン、γ−ヘキサノラクトン、δ−ヘキサノラクトン、β−ヘプタノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、δ−ヘプタノラクトン、ε−ヘプタノラクトン、γ−オクタノラクトン、δ−オクタノラクトン、ε−オクタノラクトン、δ−ノナラクトン、ε−ノナラクトン、ε−デカノラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、及び、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1〜4のアルキル基によって置換された化合物が挙げられる。
含窒素溶剤としては、環状アミド類、非環状アミド類等が挙げられる。非環状アミド類としては、アルコキシアルキルアミド類等が挙げられる。環状アミドとしては、ピロリドン類等が挙げられる。ピロリドン類としては、2−ピロリドン、置換基を有するピロリドン等が挙げられる。
多価アルコール類は、分子中に2個以上の水酸基を有する有機溶剤である。多価アルコール類は、例えば、分子中の炭素数が1〜10であり、より好ましくは2〜6である。多価アルコール類は、分子中の水酸基数が1〜4が好ましい。また、多価アルコール類は、例えば、炭素数1〜7である、アルキル基やアルキレン基を構造中に有していてもよい。該基の炭素数は、2〜6が好ましく、2〜3がより好ましい。多価アルコール類の中でも、炭素数4以下のアルカンが水酸基を2個以上有するもの、炭素数4以下のアルカンのジオールが分子間で水酸基同士が縮合したもの、をポリオール類と呼ぶ。分子間で縮合したものは、縮合数として2〜4が好ましい。ポリオール類(有機溶剤Bではないもの)は保湿性がより優れる。反面、このようなポリオール類は、有機溶剤Bが備えるようなインクの吸収性記録媒体への浸透を抑制する働きは、有機溶剤Bほどは有さず、この点で、有機溶剤Bよりも劣る。
多価アルコール類としては、1,2−アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−オクタンジオール等のアルカンジオール類)、1,2−アルカンジオールを除く多価アルコール(例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等)等が挙げられる。
これらの有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。このような有機溶剤を含有することで、記録媒体に対する水系インク組成物のぬれ性を向上できる場合があり、また水系インク組成物の保湿性を向上させて吐出安定性を良好なものとすることができる場合がある。
その他の有機溶剤の含有量は、前記水系インク組成物の総質量に対して、好ましくは10.0質量%以下であり、より好ましくは8.0質量%以下であり、特に好ましくは5.0質量%以下である。その他の有機溶剤は0質量%以上であり、1.0質量%以上がより好ましい。
水系インク組成物は、標準沸点が280℃超のポリオール類の有機溶剤をインク中に4質量%を超えて含まないことが好ましく、1質量%を超えて含まないことがより好ましく、0.5質量%を超えて含まないことがさらに好ましい。超えて含まないとは、超えなければ含んでも良いし、含まなくてもよいことを意味する。
さらに、水系インク組成物は、標準沸点が280℃超の有機溶剤の含有量が上記範囲であることが好ましい。ここで有機溶剤は、前述の有機溶剤A、B及びその他の有機溶剤である。ここで後述のph調整剤は有機溶剤には含めないものとする。標準沸点が280℃超の有機溶剤、特にポリオール類は、保湿剤としての機能が大きいものの、記録媒体に付着後のインクの乾燥が遅くなる傾向があり、上記範囲とすることが、乾燥性や画質がより優れ好ましい。
水系インク組成物に含有する有機溶剤は、標準沸点が160〜280℃のものが好ましい。
1.3.4.4.界面活性剤
前記水系インク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、水系インク組成物の表面張力を低下させ記録媒体や下地とのぬれ性を向上させる機能を備える。界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、エア・プロダクツ&ケミカルズ社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
シリコン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−3440(ビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンS−241、S−242、S−243(以上商品名、AGCセイミケミカル社製)、フタージェント215M(ネオス社製)等が挙げられる。
前記水系インク組成物に界面活性剤を含有させる場合には、複数種を含有させてもよい。前記水系インク組成物に界面活性剤を含有させる場合の含有量は、前記水系インク組成物の総質量に対して、好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上1.5質量%以下であり、特に好ましくは0.3質量%以上1.0質量%以下である。
1.3.4.5.pH調整剤
前記水系インク組成物は、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤を含有することにより、例えば、インク流路を形成する部材からの不純物の溶出を抑制したり、促進したりすることができ、水系インク組成物の洗浄性を調節することができる。pH調整剤としては、例えば、尿素類、アミン類、モルホリン類、ピペラジン類、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類を例示できる。
1.3.4.6.その他の成分
前記水系インク組成物は、必要に応じて、ワックス、キレート剤、防錆剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤等の添加剤を含有してもよい。
ワックスとしては、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス、パラフィンワックス等が挙げられる。
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)や、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等が挙げられる。
1.3.5.水系インク組成物の製造方法
前記水系インク組成物の製造方法は特に制限されないが、例えば、上述の各インク成分を、任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより製造することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。
1.3.6.水系インク組成物の物性
前記水系インク組成物は、画像品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力が20mN/m以上40mN/mであることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、前記水系インク組成物の25℃における粘度は、4.5mPa・s以上であることが好ましい。一方、10.0mPa・s以下であることが好ましい。さらに、5.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることがより好ましい。前記水系インク組成物の25℃における粘度が前記範囲内であれば、吸収性記録媒体へのインクの浸透が抑制されやすくなるため、表面に色材が留まり、特に吸収性記録媒体においてOD値が高く発色性に優れた画質を得ることができる。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、25℃の環境下での粘度を測定することができる。
1.3.7.水系インク組成物の特性
本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、有機溶剤A及び有機溶剤Bを含有する水系インク組成物を用いることで、低吸収性記録媒体及び吸収性記録媒体の何れの記録媒体であっても、OD値が高く発色性に優れた画質を得ることができる。そのメカニズムについては、以下のように推測される。すなわち、有機溶剤Aは、低非吸収性記録媒体へのぬれ広がり性を高める反面、吸収性記録媒体への浸透を促進させる作用を有する。これにより、低非吸収性記録媒体へのインクのぬれ広がり性が優れるため、低非吸収性記録媒体においてOD値が高く発色性に優れた画質を得ることができる。一方、有機溶剤Bは、有機溶剤Aによって促進された、インクの吸収性記録媒体への浸透を抑制する働きがある。これにより、吸収性記録媒体へのインクの浸透が抑制されるため、表面に色材が留まり、吸収性記録媒体においてもOD値が高く発色性に優れた画質を得ることができる。
しかしながら、前記水系インク組成物に含有される有機溶剤A及び有機溶剤Bの何れも、保湿性能は必ずしも優れていない場合がある。そのため、前記水系インク組成物を用いるインクジェット記録方法では、ノズルでのインクの乾燥等により吐出安定性が損なわれる場合がある。そこで、本実施形態に係るインクジェット記録方法は、後述するような内部でインクを循環させる循環機構を備えたインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置を用いて行われることで、低非吸収性記録媒体及び吸収性記録媒体の両者での画質を向上させ、かつ、インクの吐出安定性を確保することを可能とするものである。続いて、本実施形態に係るインクジェット記録方法で用いられるインクジェット記録装置について説明する。
2.インクジェット記録装置
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させるインク付着手段を備え、前記水系インク組成物は、25℃での表面張力が30mN/m以下の1,2−アルカンジオールである有機溶剤Aと、標準沸点が250℃以下であり炭素数が3以上の両末端アルカンジオールである有機溶剤Bと、を含有し、前記インクジェットヘッドは、前記水系インク組成物を循環させる循環機構を備える。インク付着手段及び水系インク組成物については、上記と同様であるため説明を省略する。
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドが水系インク組成物を循環させるための循環機構を備える点に特徴がある。上記の水系インク組成物は、有機溶剤A及び有機溶剤Bを含有しているので保湿性能に優れているとはいえず、ノズルやノズル近傍でインクが乾燥すると吐出安定性が損なわれる場合がある。そこで、当該水系インク組成物を循環させるための循環機構を備えるインクジェットヘッドを用いることで、ノズル近傍のインクを循環させて、乾燥しかけたインクを回復させ、インクの吐出安定性を良好なものとすることができる。以下、本実施形態に係るインクジェット記録装置の概要について説明する。
2.1.インクジェット記録装置の概要
上述の水系インク組成物に好適なインクジェット記録装置の例について図面を参照しながら説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺や相対的な寸法を適宜変更している。
図1は、インクジェット記録装置1を模式的に示す概略断面図である。図2は、図1のインクジェット記録装置1のキャリッジ周辺の構成の一例を示す斜視図である。図1、2に示すように、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2と、IRヒーター3と、プラテンヒーター4と、加熱ヒーター5と、冷却ファン6と、プレヒーター7と、通気ファン8と、キャリッジ9と、プラテン11と、カートリッジ12と、キャリッジ移動機構13と、搬送手段14と、制御部CONTを備える。インクジェット記録装置1は、図2に示す制御部CONTにより、インクジェット記録装置1全体の動作が制御される。
インクジェットヘッド2は、水系インク組成物をインクジェットヘッド2のノズルから吐出して付着させることにより記録媒体Mに記録を行う構成である。この例では、インクジェットヘッド2は、シリアル式の記録ヘッドであり、記録媒体Mに対して相対的に主走査方向に複数回走査して水系インク組成物を記録媒体Mに付着させる。インクジェットヘッド2は図2に示すキャリッジ9に搭載される。インクジェットヘッド2は、キャリッジ9を記録媒体Mの媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構13の動作により、記録媒体Mに対して相対的に主走査方向に複数回走査される。媒体幅方向とは、インクジェットヘッド2の主走査方向である。主走査方向への走査を主走査ともいう。
ここで、主走査方向は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9の移動する方向である。図1においては、矢印SSで示す記録媒体Mの搬送方向である副走査方向に交差する方向である。図2においては、記録媒体Mの幅方向、つまりS1−S2で表される方向が主走査方向MSであり、T1→T2で表される方向が副走査方向SSである。なお、1回の走査で主走査方向、すなわち、矢印S1又は矢印S2の何れか一方の方向に走査が行われる。そして、インクジェットヘッド2の主走査と、記録媒体Mの搬送である副走査を複数回繰り返し行うことで、記録媒体Mに対して記録する。すなわち、インク付着工程は、インクジェットヘッド2が主走査方向に移動する複数回の主走査と、記録媒体Mが主走査方向に交差する副走査方向へ移動する複数回の副走査と、により行われる。
インクジェットヘッド2に水系インク組成物を供給するカートリッジ12は、独立した複数のカートリッジを含む。カートリッジ12は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9に対して着脱可能に装着される。複数のカートリッジのそれぞれには異なる種類の水系インク組成物やその他の組成物が充填されており、カートリッジ12から各ノズルに水系インク組成物やその他の組成物が供給される。なお、カートリッジ12はキャリッジ9に装着される例を示しているが、これに限定されず、キャリッジ9以外の場所に設けられ、図示せぬ供給管によって各ノズルに供給される形態でもよい。
インクジェットヘッド2の吐出には従来公知の方式を使用することができる。ここでは、圧電素子の振動を利用して液滴を吐出する方式、すなわち、電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成する吐出方式を使用する。
インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2からの水系インク組成物を吐出して記録媒体に付着する時に記録媒体Mを乾燥するための乾燥工程を行う乾燥機構を備えることができる。乾燥は、加熱や送風による乾燥を用いることができる。乾燥機構は、伝導式、送風式、放射式などを用いることができる。伝導式は記録媒体に接触する部材から熱を記録媒体に伝導する。例えばプラテンヒーターなどが挙げられる。送風式は常温風又は温風を記録媒体に送りインクを乾燥させる。例えば送風ファンがあげられる。放射式は熱を発生する放射線を記録媒体に放射して記録媒体を加熱する。例えばIR放射があげられる。これら乾燥機構は、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
例えば、乾燥機構として、IRヒーター3及びプラテンヒーター4を備える。乾燥工程で記録媒体Mを乾燥する際には、IRヒーター3、通気ファン8等を用いることができる。
なお、IRヒーター3を用いると、インクジェットヘッド2側から赤外線の輻射により放射式で記録媒体Mを加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2も同時に加熱されやすいが、プラテンヒーター4等の記録媒体Mの裏面から加熱される場合と比べて、記録媒体Mの厚さの影響を受けずに昇温することができる。また、温風又は環境と同じ温度の風を記録媒体Mにあてて記録媒体M上の水系インク組成物を乾燥させる各種のファン(例えば通気ファン8)を備えてもよい。
プラテンヒーター4は、インクジェットヘッド2によって吐出された水系インク組成物が記録媒体Mに付着された時点から早期に乾燥することができるように、インクジェットヘッド2に対向する位置において記録媒体Mを、プラテン11を介して加熱することができる。プラテンヒーター4は、記録媒体Mを伝導式で加熱可能なものであり、インクジェット記録方法では、必要に応じて用いられ、用いる場合には、記録媒体Mの表面温度が45.0℃以下となるように制御することが好ましい。なお後述するライン型のインクジェット記録装置においては、プラテンヒーター4は、アンダーヒーターに対応する。乾燥機構を用いた乾燥工程を行わない場合は、乾燥機構を備えなくてもよい。
なお、インク付着工程の、記録媒体Mの表面温度は、前述した範囲が好ましい。ここでまた記載すると、例えば、45.0℃以下であることが好ましく、40.0℃以下であることがより好ましく、38.0℃以下であることがさらにより好ましく、35.0℃以下であることが特に好ましい。また、記録媒体Mの表面温度の下限は、25.0℃以上であることが好ましく、28.0℃以上であることがより好ましく、30.0℃以上であることがさらに好ましく、32.0℃であることが特により好ましい。インク付着工程の記録媒体Mの表面温度がこれらの範囲である場合、インクジェットヘッド2内の水系インク組成物の乾燥及び組成変動を抑制でき、インクジェットヘッド2の内壁に対する水系インク組成物や樹脂の溶着が抑制される。また、記録媒体M上で水系インク組成物を早期に固定することができ、裏移りを抑制し、画質を向上させることができる。
インク付着工程後に、記録媒体を加熱して、インクを乾燥させ、定着させる後加熱工程を備えてもよい。後加熱を二次加熱ともいう。
後加熱工程に用いる加熱ヒーター5は、記録媒体Mに付着された水系インク組成物を乾燥及び固化させる、つまり、二次加熱又は二次乾燥用のヒーターである。加熱ヒーター5は、後加熱工程に用いることができる。加熱ヒーター5が、画像が記録された記録媒体Mを加熱することにより、水系インク組成物中に含まれる水分等がより速やかに蒸発飛散して、水系インク組成物中に含まれ得る樹脂等によってインク膜が形成される。このようにして、記録媒体M上においてインク膜が強固に定着又は接着して造膜性が優れたものとなり、優れた高画質な画像が短時間で得られる。
二次加熱における、記録媒体Mの表面温度は前述した範囲が好ましい。ここでまた記載するとすると、上限は、120.0℃以下であることが好ましく、100.0℃以下であることがより好ましく、90.0℃以下であることがさらに好ましい。また、記録媒体Mの表面温度の下限は、60.0℃以上であることが好ましく、70.0℃以上であることがより好ましく、80.0℃以上であることがさらに好ましい。記録媒体Mの表面温度が前記範囲にあることにより、高画質な画像が短時間で得られる。なお、後述するライン型のインクジェット記録装置においては、加熱ヒーター5は、アフターヒーターに対応し、カーボンヒーター等により構成される。
インクジェット記録装置1は、冷却ファン6を有していてもよい。記録媒体Mに記録された水系インク組成物を乾燥後、冷却ファン6により記録媒体M上のインクを冷却することにより、記録媒体M上に密着性よくインク塗膜を形成することができる。
また、インクジェット記録装置1は、記録媒体Mに対して水系インク組成物が付着される前に、記録媒体Mを予め加熱するプレヒーター7を備えていてもよい。さらに、インクジェット記録装置1は、記録媒体Mに付着した水系インク組成物がより効率的に乾燥するように通気ファン8を備えていてもよい。なお、後述するライン型のインクジェット記録装置においても、プレヒーター7を設けてもよい。
キャリッジ9の下方には、記録媒体Mを支持するプラテン11と、キャリッジ9を記録媒体Mに対して相対的に移動させるキャリッジ移動機構13と、記録媒体Mを副走査方向に搬送するローラーである搬送手段14とを備える。キャリッジ移動機構13と搬送手段14の動作は、制御部CONTにより制御される。
図3は、インクジェット記録装置1の機能ブロック図である。制御部CONTは、インクジェット記録装置1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部101(I/F)は、コンピューター130(COMP)とインクジェット記録装置1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU102は、インクジェット記録装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー103(MEM)は、CPU102のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU102は、ユニット制御回路104(UCTRL)により各ユニットを制御する。なお、インクジェット記録装置1内の状況を検出器群121(DS)が監視し、その検出結果に基づいて、制御部CONTは各ユニットを制御する。
搬送ユニット111(CONVU)は、インクジェット記録の副走査(搬送)を制御するものであり、具体的には、記録媒体Mの搬送方向及び搬送速度を制御する。具体的には、モーターによって駆動される搬送ローラーの回転方向及び回転速度を制御することによって記録媒体Mの搬送方向及び搬送速度を制御する。
キャリッジユニット112(CARU)は、インクジェット記録の主走査(パス)を制御するものであり、具体的には、インクジェットヘッド2を主走査方向に往復移動させるものである。キャリッジユニット112は、インクジェットヘッド2を搭載するキャリッジ9と、キャリッジ9を往復移動させるためのキャリッジ移動機構13とを備える。
ヘッドユニット113(HU)は、インクジェットヘッド2のノズルからの水系インク組成物の吐出量を制御するものである。例えば、インクジェットヘッド2のノズルが圧電素子により駆動されるものである場合、各ノズルにおける圧電素子の動作を制御する。ヘッドユニット113により各水系インク組成物の付着のタイミングやドットサイズ等が制御される。また、キャリッジユニット112及びヘッドユニット113の制御の組合せにより、1走査あたりの水系インク組成物の付着量が制御される。
乾燥ユニット114(DU)は、IRヒーター3、プレヒーター7、プラテンヒーター4、加熱ヒーター5等の各種ヒーターの温度を制御する。
上記のインクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2を搭載するキャリッジ9を主走査方向に移動させる動作と、搬送動作(副走査)とを交互に繰り返す。このとき、制御部CONTは、各パスを行う際に、キャリッジユニット112を制御して、インクジェットヘッド2を主走査方向に移動させるとともに、ヘッドユニット113を制御して、インクジェットヘッド2の所定のノズル孔から水系インク組成物の液滴を吐出させ、記録媒体Mに水系インク組成物の液滴を付着させる。また、制御部CONTは、搬送ユニット111を制御して、搬送動作の際に所定の搬送量(送り量)にて記録媒体Mを搬送方向に搬送させる。
インクジェット記録装置1では、主走査(パス)と副走査(搬送動作)が繰り返されることによって、複数の液滴を付着させた記録領域が徐々に搬送される。そして、加熱ヒーター5により、記録媒体Mに付着させた液滴を乾燥させて、画像が完成する。その後、完成した記録物は、巻き取り機構によりロール状に巻き取られたり、フラットベット機構で搬送されたりしてもよい。
2.2.循環機構を備えるインクジェットヘッド
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、少なくとも水系インク組成物を循環させる循環機構を備えるインクジェットヘッドにより吐出される。すなわち、少なくとも水系インク組成物が、循環機構によって循環される。循環機構は、水系インク組成物を、圧力室を通過させ当該圧力室に再び流入させる経路を有する。
本実施形態においては、インクジェットヘッド2は、水系インク組成物を循環させる循環機構を備える。水系インク組成物の循環機構により、水系インク組成物が乾燥した場合に、水系インク組成物の固形分の濃度が高まっても、濃度が高くなった水系インク組成物を上流側に戻して、新しい水系インク組成物と混合できるので、良好な吐出安定性を確保することができる。
図4は、記録媒体Mの搬送方向(副走査方向SS、図2参照)をY方向とし、これに垂直な断面におけるインクジェットヘッド2の断面の模式図である。図4において、記録媒体Mの表面に平行な平面をX−Y平面とし、X−Y平面に垂直な方向を以下ではZ方向と表記する。インクジェットヘッド2による水系インク組成物の吐出方向がZ方向に相当する。
インクジェットヘッド2の複数のノズルNはY方向に配列されて、ノズル列を構成する。インクジェットヘッド2においてY方向に平行な中心軸を通過するとともにZ方向に平行な平面、すなわち、Y−Z平面Oを以下の説明では「中心面」と表記する。
図4に示すように、インクジェットヘッド2は、第1列L1の各ノズルNに関連する要素と第2列L2の各ノズルNに関連する要素とが中心面Oを挟んで面対称に配置された構造である。すなわち、記録ヘッド2のうち中心面Oを挟んでX方向の正側の部分(以下、「第1部分」ともいう。)P1とX方向の負側の部分(以下、「第2部分」ともいう。)P2とで構造は実質的に共通する。第1列L1の複数のノズルNは第1部分P1に形成され、第2列L2の複数のノズルNは第2部分P2に形成される。中心面Oは、第1部分P1と第2部分P2との境界面に相当する。
ここで、図4における第2列L2の各ノズルN及び第1列L1の各ノズルNは、上述の水系インク組成物が充填されるノズル列(図示せず)を構成する。またここでは、水系インク組成物が吐出されるインクジェットヘッドの領域(上述の水系インク組成物が充填されるノズル列(図示せず))を説明しないが、同様に構成してもよい。
図4に示すように、インクジェットヘッド2は流路形成部30を備える。流路形成部30は、複数のノズルNに水系インク組成物を供給するための流路を形成する構造体である。本実施形態において、流路形成部30は、第1流路基板32と第2流路基板34との積層で構成される。第1流路基板32及び第2流路基板34の各々は、Y方向に長尺な板状部材である。第1流路基板32のうちZ方向の負側の表面Faに、例えば接着剤を利用して第2流路基板34が設置される。
図4に示すように、第1流路基板32の表面Faの面上には、第2流路基板34のほか、振動部42と圧電素子44と保護部材46と筐体部48とが設置される。他方、第1流路基板32のうちZ方向の正側、すなわち表面Faとは反対側の表面Fbには、ノズルプレート52と吸振体54とが設置される。インクジェットヘッド2の各要素は、概略的には第1流路基板32や第2流路基板34と同様にY方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤を利用して相互に接合される。第1流路基板32と第2流路基板34とが積層される方向や第1流路基板32とノズルプレート52とが積層される方向、あるいは板状の各要素の表面に垂直な方向を、Z方向として把握することも可能である。
ノズルプレート52は、複数のノズルNが形成された板状部材であり、例えば接着剤を利用して第1流路基板32の表面Fbに設置される。複数のノズルNの各々は、水系インク組成物を通過させる円形状の貫通孔である。ノズルプレート52には、第1列L1を構成する複数のノズルNと第2列L2を構成する複数のノズルNとが形成される。具体的には、ノズルプレート52のうち中心面OからみてX方向の正側の領域に、第1列L1の複数のノズルNがY方向に沿って形成され、X方向の負側の領域に、第2列L2の複数のノズルNがY方向に沿って形成される。ノズルプレート52は、第1列L1の複数のノズルNが形成された部分と第2列L2の複数のノズルNが形成された部分とにわたり連続する単体の板状部材である。ノズルプレート52は、半導体製造技術、例えばドライエッチングやウェットエッチング等の加工技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。ただし、ノズルプレート52の製造には公知の材料や製法が任意に採用され得る。
図4に示すように、第1流路基板32には、第1部分P1及び第2部分P2の各々について、空間Raと複数の供給路61と複数の連通路63とが形成される。空間Raは、平面視で、すなわちZ方向からみてY方向に沿う長尺状に形成された開口であり、供給路61及び連通路63はノズルN毎に形成された貫通孔である。複数の連通路63は平面視でY方向に配列し、複数の供給路61は、複数の連通路63の配列と空間Raとの間でY方向に配列する。複数の供給路61は、空間Raに共通に連通する。また、任意の1個の連通路63は、当該連通路63に対応するノズルNに平面視で重なる。具体的には、第1部分P1の任意の1個の連通路63は、第1列L1のうち当該連通路63に対応する1個のノズルNに連通する。同様に、第2部分P2の任意の1個の連通路63は、第2列L2のうち当該連通路63に対応する1個のノズルNに連通する。
図4に示すように、第2流路基板34は、第1部分P1及び第2部分P2の各々について複数の圧力室Cが形成された板状部材である。複数の圧力室CはY方向に配列する。各圧力室Cは、ノズルN毎に形成されて平面視でX方向に沿う長尺状の空間である。第1流路基板32及び第2流路基板34は、前述のノズルプレート52と同様に、例えば半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。ただし、第1流路基板32及び第2流路基板34の製造には公知の材料や製法が任意に採用され得る。以上の例示の通り、流路形成部30とノズルプレート52とはシリコンで形成された基板を包含する。したがって、例えば前述の例示のように半導体製造技術を利用することで、流路形成部30及びノズルプレート52に微細な流路を高精度に形成できるという利点がある。
図4に示すように、第2流路基板34のうち第1流路基板32とは反対側の表面には振動部42が設置される。振動部42は、弾性的に振動可能な板状部材である。なお、所定の板厚の板状部材のうち圧力室Cに対応する領域について板厚方向の一部を選択的に除去することで、第2流路基板34と振動部42とを一体に形成することも可能である。
図4に示すように、第1流路基板32の表面Faと振動部42とは、各圧力室Cの内側で相互に間隔をあけて対向する。圧力室Cは、第1流路基板32の表面Faと振動部42との間に位置する空間であり、当該空間に充填された水系インク組成物に圧力変化を発生させる。各圧力室Cは、例えばX方向を長手方向とする空間であり、ノズルN毎に個別に形成される。第1列L1及び第2列L2の各々について、複数の圧力室CがY方向に配列する。
図4に示すように、任意の1個の圧力室Cのうち中心面O側の端部は平面視で連通路63に重なり、中心面Oとは反対側の端部は平面視で供給路61に重なる。したがって、第1部分P1及び第2部分P2の各々において、圧力室Cは、連通路63を介してノズルNに連通するとともに、供給路61を介して空間Raに連通する。なお、流路幅が狭窄された絞り流路を圧力室Cに形成することで所定の流路抵抗を付加することも可能である。
図4に示すように、振動部42のうち圧力室Cとは反対側の面上には、第1部分P1及び第2部分P2の各々について、相異なるノズルNに対応する複数の圧電素子44が設置される。圧電素子44は、駆動信号の供給により変形する素子である。複数の圧電素子44は、各圧力室Cに対応するようにY方向に配列する。任意の1個の圧電素子44は、例えば相互に対向する2つの電極との間に圧電体層を介在させた積層体である。なお、駆動信号の供給により変形する部分、すなわち振動部42を振動させる能動部を圧電素子44として画定することも可能である。本実施形態において、圧電素子44の変形に連動して振動部42が振動すると、圧力室C内の圧力が変動することで、圧力室Cに充填された水系インク組成物が連通路63とノズルNとを通過して水系インク組成物が吐出される。
図4の保護部材46は、複数の圧電素子44を保護するための板状部材であり、振動部42の表面、又は第2流路基板34の表面に設置される。保護部材46の材料や製法は任意であるが、第1流路基板32や第2流路基板34と同様に、例えばシリコンの単結晶基板を半導体製造技術により加工することで保護部材46は形成され得る。保護部材46のうち振動部42側の表面に形成された凹部に図のY方向に並ぶ複数の圧電素子44が収容される。
振動部42のうち流路形成部30とは反対側の表面、又は流路形成部30の表面には配線基板28の端部が接合される。配線基板28は、制御ユニットとインクジェットヘッド2とを電気的に接続する複数の配線(図示せず)が形成された可撓性の実装部品である。配線基板28のうち、保護部材46に形成された開口部と筐体部48に形成された開口部とを通過して外部に延出した端部が制御ユニットに接続される。例えばFPC(フレキシブルプリント回路)やFFC(フレキシブルフラットケーブル)等の可撓性の配線基板28が好適に採用される。
筐体部48は、複数の圧力室C、さらには複数のノズルNに供給される水系インク組成物を貯留するためのケースである。筐体部48のうちZ方向の正側の表面が、例えば接着剤で第1流路基板32の表面Faに接合される。筐体部48の製造には、公知の技術や製法が任意に採用され得る。例えば樹脂材料の射出成形で筐体部48を形成することが可能である。
図4に示すように、筐体部48には、第1部分P1及び第2部分P2の各々について空間Rbが形成される。筐体部48の区間Rbと第1流路基板32の空間Raとは相互に連通する。空間Raと空間Rbとで構成される空間は、複数の圧力室Cに供給される水系インク組成物を貯留する液体貯留室Rとして機能する。液体貯留室Rは、複数のノズルNについて共用される共通液室である。第1部分P1及び第2部分P2の各々に液体貯留室Rが形成される。第1部分P1の液体貯留室Rは、中心面OからみてX方向の正側に位置し、第2部分P2の液体貯留室Rは、中心面OからみてX方向の負側に位置する。筐体部48のうち第1流路基板32とは反対側の表面には、カートリッジ12から供給される水系インク組成物を液体貯留室Rに導入するための導入口482が形成される。
図4に示すように、第1流路基板32の表面Fbには、第1部分P1及び第2部分P2の各々について吸振体54が設置される。吸振体54は、液体貯留室R内の水系インク組成物の圧力変動を吸収する可撓性のフィルム、すなわちコンプライアンス基板である。例えば、吸振体54は、第1流路基板32の空間Raと複数の供給路61とを閉塞するように第1流路基板32の表面Fbに設置されて液体貯留室Rの壁面、具体的には底面を構成する。
図4に示すように、第1流路基板32のうちノズルプレート52に対向する表面Fbには空間(以下、「循環液室」という。)65が形成される。循環液室65は、平面視でY方向に延在する長尺状の有底孔である。第1流路基板32の表面Fbに接合されたノズルプレート52により循環液室65の開口は閉塞される。循環液室65は、例えば、第1列L1及び第2列L2に沿って複数のノズルNにわたり連続する。具体的には、第1列L1の複数のノズルNの配列と第2列L2の複数のノズルNの配列との間に循環液室65が形成される。したがって、循環液室65は、第1部分P1の連通路63と第2部分P2の連通路63との間に位置する。このように、流路形成部30は、第1部分P1における圧力室C及び連通路63と、第2部分P2における圧力室C及び連通路63と、第1部分P1の連通路63と第2部分P2の連通路63との間に位置する循環液室65とが形成された構造体である。図4に示すように、流路形成部30は、循環液室65と各連通路63との間を仕切る壁状の部分(以下、「隔壁部」という。)69を含む。
なお、前述の通り、第1部分P1及び第2部分P2の各々において複数の圧力室C及び複数の圧電素子44がY方向に配列する。したがって、第1部分P1及び第2部分P2の各々における複数の圧力室C又は複数の圧電素子44にわたり連続するように、循環液室65がY方向に延在すると換言することも可能である。また、図4に示すように、循環液室65と液体貯留室Rとが相互に間隔をあけてY方向に延在し、当該間隔内に圧力室Cと連通路63とノズルNとが位置するということも可能である。
図5は、インクジェットヘッド2のうち循環液室65の近傍の部分を拡大した断面図である。図5に示すように、1個のノズルNは、第1区間n1と第2区間n2とを含む。第1区間n1と第2区間n2とは同軸に形成されて相互に連通する円筒状の空間である。第2区間n2は、第1区間n1からみて流路形成部30側に位置する。本実施形態において、各ノズルNの中心軸Qaは、連通路63の中心軸Qbからみて循環液室65とは反対側に位置する。第2区間n2の内径d2は第1区間n1の内径d1よりも大きい。以上のように各ノズルNを階段状に形成した構成によれば、各ノズルNの流路抵抗を所望の特性に設定し易いという利点がある。本実施形態において、各ノズルNの中心軸Qaは、連通路63の中心軸Qbからみて循環液室65とは反対側に位置する。
図5に示すように、ノズルプレート52のうち流路形成部30に対向する表面には、第1部分P1及び第2部分P2の各々について複数の排出路72が形成される。第1部分P1の複数の排出路72は、第1列L1の複数のノズルN、又は第1列L1に対応する複数の連通路63に1対1に対応する。また、第2部分P2の複数の排出路72は、第2列L2の複数のノズルN、又は第2列L2に対応する複数の連通路63に1対1に対応する。
インクジェットヘッドにおいて、インクを供給する流路と、インクを排出する流路と、を合わせて循環路とする。インクを排出する流路は、インクがインクジェットヘッドに供給されノズルから吐出するまでにインクが通過する経路に対し、インクが該経路から外れて該経路の外に出る流路である。インクを供給する流路は、インクを排出する流路により該経路の外に出たインクが、再び該経路に入る流路である。インクを供給する流路は、該経路の一部を構成するものであってもよい。つまり、該経路の外に出たインクを再び該経路に供給するものであればよい。
例えば、図4の例では、供給路61と排出路72とを少なくとも合わせたものを循環路とする。供給路61から、ノズルNから吐出されるべく供給された液体が、ノズルNから吐出されることなく、供給路61からノズルNまでの液体の経路から排出され、再び供給路61からノズルNまでの液体の経路に供給されることを可能とする流路である。
各排出路72は、X方向に延在する溝部、すなわち長尺状の有底孔であり、水系インク組成物を流通させる流路として機能する。排出路72は、ノズルNから離間した位置、具体的には、当該排出路72に対応するノズルNからみて循環液室65側に形成される。例えば、半導体製造技術、例えばドライエッチングやウェットエッチング等の加工技術により複数のノズルN、特に第2区間n2と複数の排出路72とが共通の工程で一括的に形成される。
図5に示すように、各排出路72は、ノズルNのうち第2区間n2の内径d2と同等の流路幅Waで直線状に形成される。また、排出路72のY方向の幅は、圧力室CのY方向の幅よりも小さい。したがって、排出路72の流路幅が圧力室Cの流路幅よりも大きい構成と比較して排出路72の流路抵抗を大きくすることが可能である。なお、流路幅が圧力室Cの流路幅よりも大きい構成としても差し支えない。他方、ノズルプレート52の表面に対する排出路72の深さDaは全長にわたり一定である。この例では、各排出路72はノズルNの第2区間n2と同等の深さに形成されている。排出路72と第2区間n2とを相異なる深さに形成する構成としてもよいが、このようにすることにより排出路72及び第2区間n2を形成し易いという利点がある。なお、流路の「深さ」とは、Z方向における流路の深さ、例えば流路の形成面と流路の底面との高低差を意味する。
第1部分P1における任意の1個の排出路72は、第1列L1のうち当該排出路72に対応するノズルNからみて循環液室65側に位置する。また、第2部分P2における任意の1個の排出路72は、第2列L2のうち当該排出路72に対応するノズルNからみて循環液室65側に位置する。そして、各排出路72のうち中心面Oとは反対側は、当該排出路72に対応する1個の連通路63に平面視で重なる。すなわち、排出路72は、連通路63に連通する。他方、各排出路72のうち中心面O側の端部は、循環液室65に平面視で重なる。すなわち、排出路72は循環液室65に連通する。このように、複数の連通路63の各々が排出路72を介して循環液室65に連通する。したがって、図5に破線の矢印で図示される通り、各連通路63内の水系インク組成物は排出路72を介して循環液室65に供給される。すなわち、本実施形態では、第1列L1に対応する複数の連通路63と第2列L2に対応する複数の連通路63とが1個の循環液室65に対して共通に連通する。
図5には、任意の1個の排出路72のうち循環液室65に重なる部分の流路長Laと、排出路72のうち連通路63に重なる部分の流路長、すなわちX方向の寸法Lbと、排出路72のうち流路形成部30の隔壁部69に重なる部分の流路長すなわちX方向の寸法Lcとが図示されている。流路長Lcは、隔壁部69の厚さに相当する。隔壁部69は、排出路72の絞り部分として機能する。したがって、隔壁部69の厚さに相当する流路長Lcが長いほど、排出路72の流路抵抗が増大する。流路長La及び流路長Lcの相対的な長さについては任意であるが、本例では、流路長Laが流路長Lbよりも長く、流路長Laが流路長Lcよりも長い、という関係が成立している。さらに、本例では、流路長Lbが流路長Lcよりも長いという関係が成立している。以上の構成によれば、流路長Laや流路長Lbが流路長Lcよりも短い構成と比較して、連通路63から排出路72を介して循環液室65に水系インク組成物が流入し易いという利点がある。
このように、インクジェットヘッド2では、圧力室Cが連通路63と排出路72とを介して間接的に循環液室65に連通する。すなわち、圧力室Cと循環液室65とは直接的には連通しない。以上の構成において、圧電素子44の動作により圧力室C内の圧力が変動すると、連通路63内を流動する水系インク組成物のうちの一部がノズルNから外部に噴射され、残りの一部が連通路63から排出路72を経由して循環液室65に流入する。そして、圧電素子44の1回の駆動により連通路63を流通する水系インク組成物のうち、ノズルNを介して噴射される水系インク組成物の噴射が、連通路63を流通する水系インク組成物のうち排出路72を介して循環液室65に流入する水系インク組成物の循環量を上回るように、連通路63とノズルNと排出路72とのイナータンスが選定される。全部の圧電素子44を一斉に駆動した場合を想定すると、複数のノズルNによる噴射量の合計よりも、複数の連通路63から循環液室65に流入する循環量の合計、例えば循環液室65内の単位時間内の流量の方が多い、と換言することも可能である。
具体的には、連通路63を流通する水系インク組成物のうち循環量の比率が70%以上となる、すなわち、水系インク組成物の噴射量の比率が30%以下となるように、連通路63とノズルと排出路72との各々の流路抵抗が決定される。以上の構成によれば、水系インク組成物の噴射量を確保しながら、ノズルの近傍の水系インク組成物を効果的に循環液室65に循環させることが可能である。概略的には、排出路72の流路抵抗が大きいほど、循環量が減少する一方で噴射量が増加し、排出路72の流路抵抗が小さいほど、循環量が増加する一方で噴射量が減少する、という傾向がある。
例えば、インクジェット記録装置1は循環機構を備える構成とする。循環機構は、循環液室65内の水系インク組成物を液体貯留室Rに再度供給、すなわち循環するための機構である。循環機構は、排出路72を少なくとも含む機構である。例えば、排出路72から、循環液室65を通り、インクジェットヘッドの外部にインクを排出し、外部に、水系インク組成物を吸引する吸引機構(例えばポンプ)、水系インク組成物に混在する気泡や異物を捕集するフィルター機構、水系インク組成物の乾燥・加熱により増粘を低減する加温機構などを必要に応じて備え、それらを介して、インクを再びインクジェットヘッドに供給する機構である、インクが循環する経路全体が循環機構である。外部において循環したインクと新しいインクを合流して再度インクジェットヘッドに供給しても良い。
循環機構により気泡や異物が除去されるとともに増粘が低減された水系インク組成物が、循環機構から導入口482を介して液体貯留室Rに供給される。これにより、例えば、液体貯留室R→供給路61→圧力室C→連通路63→排出路72→循環液室65→外部→液体貯留室Rという経路で水系インク組成物が循環する。換言すれば、循環機構は、水系インク組成物を、圧力室Cを通過させ当該圧力室Cに再び流入させる経路を有する。前述の循環路は循環機構の一部であるともいえる。
このように、連通路63と循環液室65とを連通させる排出路72がノズルプレート52に形成される場合には、ノズルNの近傍の水系インク組成物を効率的に循環液室65に循環させることが可能である。また、第1列L1に対応する連通路63と第2列L2に対応する連通路63とが両者間の循環液室65に共通に連通するため、第1列L1に対応する各排出路72が連通する循環液室と第2列L2に対応する各排出路72が連通する循環液室とを別個に設けた構成と比較して、液体噴射ヘッドの構成が簡素化される、ひいては小型化が実現されるという利点もある。
なお、排出路72とノズルNとが相互に離間した構成ではなく、排出路72とノズルNとが相互に連続する構成としてもよい。また、循環液室65のほか、第1部分P1及び第2部分P2の各々に対応する循環液室を形成する構成としてもよい。
また、循環機構を循環する水系インク組成物の流量(循環量や循環流量ともいう)を、記録方法におけるインクジェットヘッドから記録媒体に吐出する水系インク組成物の最大吐出量に対し、やや好ましくは0.1倍以上5.0倍以下、好ましくは0.2倍以上4.0倍以下、より好ましくは0.3倍以上3.0倍以下、さらに好ましくは0.5倍以上2.0倍以下、特に好ましくは0.7倍以上1.5倍以下、としてもよい。このようにすれば、水系インク組成物の吐出量と循環量のバランスが良好で、十分に記録媒体に付着させることができるとともに、水系インク組成物の増粘を効率よく抑制することができる。
水系インク組成物の最大吐出量は、記録において行う1吐出あたりの水系インク組成物の液滴が最大の吐出量で、記録において行う水系インク組成物の吐出の最大の吐出の周波数で、水系インク組成物のインクジェットヘッドの記録に用いる全ノズルから仮に吐出した場合に、水系インク組成物のインクジェットヘッドから吐出される吐出量である。
循環量は、インクジェットヘッドに備えられて該インクジェットヘッドの各ノズルと繋がっている各排出路に流通する水系インク組成物の流量の合計である。循環量、最大吐出量とも、単位時間当たりのインクの質量で示す。
循環量の単位は、質量/時間で表され、例えば、質量(g)/時間(秒)で表される。流量は上記同様に排出路の総排出量である。
循環量、最大吐出量とも、1つのインクジェットヘッド当たりの値である。循環量は、インクジェットヘッドあたり1.0(g/min)以上が好ましい。また、12.0(g/min)以下であることが好ましい。さらに、2.0(g/min)以上10.0(g/min)以下であることがより好ましく、3.0(g/min)以上7.0(g/min)以下であることがさらに好ましい。ここでインクジェットヘッドは、1つの導入口から導入した水系インク組成物が吐出する全てのノズルを合わせたものを1単位としたものをいう。1単位のインクジェットヘッドは、限るものではないが、例えばノズル数は、50〜1000個とすることができ、100〜700個とすることができ、150〜500個とすることができ、200〜400個とすることができる。
また、インクジェットヘッド2は、水系インク組成物に圧力を付与してノズルから吐出させる圧力室Cを備えているが、図4の例のように、循環路が圧力室Cを通過した水系インク組成物を循環することが好ましい。すなわち、圧力室Cを通過した水系インク組成物を循環して、当該圧力室に再び供給されるよう構成されることが好ましい。この場合において、排出路は、圧力室又は圧力室よりも下流側の位置に設けることができる。この場合、吐出安定性が特に優れ好ましい。
又は、循環路は、インクジェットヘッド内の圧力室よりも上流側の位置に排出路を設け、排出路により水系インク組成物を排出して循環させてもよい。そして、循環させ、再び該位置に水系インク組成物が供給されるようにしてもよい。この場合、圧力室を通過させる前のインクを循環させる。この場合も、圧力室よりも上流側に水系インク組成物の異物や増粘が達した場合に、これを解消し、吐出安定性を優れたものとすることができる。上流側の位置は、例えば液体貯留室Rが挙げられる。
循環流路は、排出路を経た水系インク組成物を、インクジェットヘッド内において循環させ、再び水系インク組成物経路に供給させてもよいし、排出路を経た水系インク組成物をインクジェットヘッド2の外に排出し、当該排出された水系インク組成物を、再度当該記録ヘッドに供給するように構成され、水系インク組成物を循環させてもよい。このうち、循環路の製造がし易いこの等の点で、前者が好ましい。
以上説明したような循環路を有するインクジェットヘッドを用いれば、水系インク組成物の乾燥によって固形分濃度が上昇した場合でも、水系インク組成物の吐出信頼性の低下を抑制することができる。
以上、シリアル型のインクジェットヘッドを搭載し、シリアル型の記録方法を行うシリアル型の記録装置について説明した。一方、インクジェットヘッド2は、ライン型ヘッドであってもよい。ライン型ヘッドであっても水系インク組成物を循環させることにより、水系インク組成物が乾燥して増粘することによる吐出信頼性の低下を抑制する効果が得られる。ライン型の記録装置のインクジェットヘッドは、記録媒体Mの記録幅以上の長さにノズルが配置されたヘッドであり、記録媒体Mに対して1回のパスで水系インク組成物の付着を行うことができる。
図6は、ライン型ヘッド(ライン型記録ヘッド)を搭載し、ライン型のインクジェット記録方法を行うライン型の記録装置の一部分を模式的に示す概略断面図である。記録装置の部分200は、水系インク組成物のインクジェットヘッド221を含む第1インク付着手段220、水系インク組成物のインクジェットヘッド231を含む第2インク付着手段230、記録媒体Mを搬送する搬送ローラー211を含む記録媒体搬送手段210、記録媒体に後加熱工程を行う後加熱手段240を備える。インクジェットヘッド231,221は、図の手前−奥方向である記録媒体Mの幅方向にノズル列が伸びているライン型記録ヘッドである。
ライン型の記録装置は、記録媒体Mを、図6の矢印方向である搬送方向に搬送させることで、記録ヘッド231,221と記録媒体Mの相対的な位置を移動させつつ、水系インク組成物等をインクジェットヘッドから吐出し記録媒体Mへ付着させる。これを走査という。走査を主走査やパスともいう。ライン型記録方法は、搬送される記録媒体Mへ、記録ヘッド231,221を用いて水系インク組成物を1回のパスで付着させ記録を行う1パス記録方法である。
ライン型の記録装置は、ライン型記録ヘッドを備えライン型の記録方法を行うこと以外は、前述のシリアル型のインクジェット記録装置1と同様の構成とすることができる。ライン型の記録装置は、乾燥工程を行う乾燥手段を備えていても良い。例えば、図1のインクジェットヘッド2の上方にある通気ファン8やIRヒーター3などの乾燥手段を、図6のインクジェットヘッド231,221の上方に備えさせ、図1のインクジェットヘッド2の下方にあるプラテンヒーター4に対応するアンダーヒーターなどの乾燥手段を、図6のインクジェットヘッド231,221の下方に備えさせてもよい。
3.実施例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。
3.1.水系インク組成物の調製
表1〜表3に示す材料組成にて、材料組成の異なるインク1〜インク23を調製した。各インクは、表1〜表3に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間撹拌混合した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表1〜表3中の各成分の数値は全て質量%を示し、水は組成物の全質量が100質量%となるように添加した。
なお、水系インク組成物の調製に用いた顔料(カーボンブラック)は、予め水溶性のスチレン−アクリル系樹脂である顔料分散剤(表中には記載していない)と2:1(顔料:顔料分散剤)の質量比で水に混合して、十分に攪拌して顔料分散液を調製し、これをインクの調製に用いた。なお、表1〜表3中の顔料分散液の欄には、顔料固形分濃度15質量%の顔料分散液の含有量(質量%)を記載した。また、表1〜表3中の樹脂分散液の欄には、固形分濃度30質量%のアクリル系樹脂エマルジョン(BASFジャパン社製、商品名「ジョンクリル537J」)の含有量(質量%)を記載した。
Figure 2021133555
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表1〜表3中で使用した各成分は以下の通りである。
<顔料分散液>
・カーボンブラック:上記で調製した顔料(カーボンブラック)分散液、固形分濃度15質量%
<樹脂分散液>
・アクリル系樹脂エマルジョン:BASFジャパン社製、商品名「ジョンクリル537J」、固形分濃度30質量%
<界面活性剤>
・シリコン系界面活性剤:BYK社製、商品名「BYK−348」
・フッ素系界面活性剤:DIC社製、商品名「メガファック F−444」
<有機溶剤A>
・1,2−ペンタンジオール:標準沸点=210℃、表面張力(25℃)=27.7mN/m
・1,2−ヘキサンジオール:標準沸点=223℃、、表面張力(25℃)=26.4mN/m
<有機溶剤B>
・1,5−ペンタンジオール:標準沸点=239℃
・1,6−ヘキサンジオール:標準沸点=250℃
・1,3−プロパンジオール:標準沸点=214℃
<その他の有機溶剤>
・1,2−ブタンジオール:標準沸点=194℃、表面張力(25℃)=31.6mN/m
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル:標準沸点=196℃
・グリセリン:標準沸点=290℃
・1,2−プロパンジオール:標準沸点=188℃
各インクの粘度は、25℃の環境下で、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて測定した。
3.2.評価方法
3.2.1.記録試験
インクジェット記録装置として、セイコーエプソン社製 SC−S80650を改造したもの(以下、「改造機」ともいう。)を使用した。ヘッドは、循環機構を備える循環ヘッドと循環機構を備えない通常ヘッドの2種類のヘッドを準備し、何れかのヘッドをインクジェット記録装置に装着した。上記で調製したインクをヘッドに充填した。記録媒体への記録中、プラテンヒーターを調整し、記録媒体の表面温度を40℃とした。ノズル列あたりのノズル密度は600npiとし、ノズル数を600個とした。記録解像度は、1200×1200dpiとした。インク付着後、アフターヒーターで、70℃で1分間乾燥した。インク付着量は7mg/inchとした。このインク付着量を、印字率100%とした。この記録試験では、低非吸収性記録媒体及び吸収性記録媒体の何れかの記録媒体に記録した。低非吸収性記録媒体には、トップコート+(王子製紙社製)を使用し、吸収性記録媒体には、上質紙55PW(リンテック社製)を使用した。
3.2.2.吐出信頼性評価
<間欠吐出性>
インクを循環させながら25℃の環境で、ノズル開放で放置した。放置後、ノズルチェックパターンを記録して不吐出ノズルの有無を確認し評価を行った。評価基準は下記の通りである。評価結果を表4〜表6中に併せて示した。ヘッドの循環量は、印字率100%で記録媒体の記録可能な領域に全て記録する場合の吐出量(最大吐出量)の1.0倍とした。
(評価基準)
S:6時間放置後に記録しても不吐出ノズルなし。
A:4時間放置後に記録しても不吐出ノズルなし。
B:2時間放置後に記録しても不吐出ノズルなし。
C:1時間放置後に記録すると不吐出ノズルが見られる。
<連続吐出安定性>
インクを循環させながら印刷した。インクの吐出は、駆動周波数30〜40kHzにて行った。30分間連続で印刷を行った。印刷後、ノズル検査を行った。評価基準は下記の通りである。評価結果を表4〜表6中に併せて示した。吐出乱れは、記録媒体への着弾位置が本来の位置から、隣接ノズル間距離の2分の1の距離以上ずれる場合を吐出乱れありとした。
(評価基準)
S:吐出乱れや不吐出は全く見られない。
A:5ノズル以下の吐出乱れ、不吐出がある。
B:10ノズル以下の吐出乱れ、不吐出がある。
C:11ノズル以上の吐出乱れ、不吐出がある。
3.2.3.画質評価
<白抜け>
記録媒体上に印字率100%のベタ印字を行い、印字物の白抜けの度合いを目視で確認した。評価基準は下記の通りである。評価結果を表4〜表6中に併せて示した。白抜けは、画像に、記録媒体の地がインクで埋まっておらず、記録媒体の地が見えることをいう。インクによる記録媒体の埋まりの評価である。
(評価基準)
S:インクが十分に広がり、目視で白抜けがない上に、濃度ムラがなく均一な画像が得られているもの。印字率を90%にしても目視で白抜けがない。
A:インクが程良く広がり、目視で白抜けがない上に、濃度ムラがなく良好な画像が得られているもの。印字率を95%にしても目視で白抜けがない。ただし印字率90%では目視で白抜けが発生した。
B:インクが程良く広がり、目視で白抜けがないもの。ただし印字率95%では目視で白抜けが発生した。
C:インクの広がりが不十分であり、目視で僅かに白抜けが発生しているもの。
<ビーディング>
記録媒体上に印字率100%の正方形のベタ印字を行い、印字物のビーディング度合いを目視で確認した。評価基準は下記の通りである。評価結果を表4〜表6中に併せて示した。
(評価基準)
S:色ムラがなく、非常に鮮明な画像である。
A:若干の色ムラが感じられるが、十分に鮮明な画像である。
B:若干の色ムラが見られ、画像の鮮明さがやや劣る。ベタ部の輪郭部分は直線になっていた
C:著しい色ムラが見られ、画像の鮮明さがない。ベタ部の輪郭部分も直線になっておらず輪郭が乱れていた
<色濃度>
記録媒体上に印字率100%のベタ印字を行い、分光測定器(X−rite社製、製品名「i1Pro2」)を用いて印字物のOD値を測定した。評価基準は下記の通りである。評価結果を表4〜表6中に併せて示した。色濃度は、記録媒体にインクで記録した場合の画像におけるインクの発色性の評価である。
(評価基準)
S:OD値が1.4以上。
A:OD値が1.2以上1.4未満。
B:OD値が1.0以上1.2未満。
C:OD値が0.8以上1.0未満。
D:OD値が0.8未満。
<乾燥性>
記録媒体上に印字率100%のベタ印字を行い、70℃エアーオーブンで各時間乾燥させた。その後、印字物の塗膜表面を指先で軽く擦り、指先にインクが付着するかどうかを目視で確認した。評価基準は下記の通りである。評価結果を表4〜表6中に併せて示した。
(評価基準)
S:1分間乾燥した後、指先へのインクの付着が見られない。
A:2分間乾燥した後、指先へのインクの付着が見られない。ただし1分間乾燥した後ではインクの付着が見られた。
B:3分間乾燥した後、指先へのインクの付着が見られない。ただし2分間乾燥した後ではインクの付着が見られた。
C:3分間乾燥した後、指先へのインクの付着が見られる。
3.3.評価結果
表4〜表6に、各実施例及び各比較例の記録試験条件、並びに評価結果を示す。
Figure 2021133555
Figure 2021133555
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本発明に係る実施例1〜14のインクジェット記録方法は、何れも、低非吸収性記録媒体での記録で白抜け評価が優れ、吸収性記録媒体での記録で色濃度の評価が優れ、吐出信頼性も優れていた。これに対して、本発明ではない比較例は、何れも、低非吸収性記録媒体での白抜け評価、吸収性記録媒体での色濃度の評価、吐出信頼性、の何れかが劣った。以下詳細を記す。
実施例11から、インクの粘度が高い方が、ビーディング評価や乾燥性がより優れていた。
実施例12、13から、インクの質量比(有機溶剤B/有機溶剤A)が、高い方が吐出信頼性や吸収性記録媒体での色濃度がより優れ、低い方が、低非吸収性記録媒体での白抜け評価やビーディング評価などがより優れていた。
実施例14から、インクの合計含有量(有機溶剤B+有機溶剤A)が少ない方が、低非吸収性記録媒体での乾燥性がより優れていた。
実施例10から、インクの標準沸点が280℃超の有機溶剤の含有量が少ない方が、低非吸収性記録媒体でのビーディング評価や乾燥性がより優れていた。
実施例2と4から、有機溶剤Bの含有量が多い方が、吸収性記録媒体での色濃度がより優れていた。
実施例3と6から、有機溶剤Aの含有量が多い方が、低非吸収性記録媒体での白抜け評価がより優れていた。
実施例1と8から、有機溶剤Aとして1,2−ヘキサンジオールを含む場合、低非吸収性記録媒体での白抜け評価がより優れていた。
実施例1、5、9から、有機溶剤Bとして1,5−ペンタンジオールを含む場合、吸収性記録媒体での色濃度や吐出信頼性がより優れていた。
有機溶剤Bを含有しないインクを使用した比較例1〜4は、インクが吸収性記録媒体の内部に浸透しやすく、吸収性記録媒体の表面に色材を留めておくことができないため、色濃度が劣り、濃度が薄い(OD値が低い)画質となった。
有機溶剤Aを含有しないインクを使用した比較例5〜8は、低非吸収性記録媒体での白抜け評価が劣り、さらにビーディングが劣っていた。なお、有機溶剤Aを含有しないインクを使用しているため、吸収性記録媒体内部へのインクの浸透性は低く、吸収性記録媒体での記録では比較的色濃度の濃い画質となった。
有機溶剤A及び有機溶剤Bの両者を含有しないインクを使用した比較例9は、低非吸収性記録媒体での記録ではインクの埋まりやビーディングが劣っていた。なお、インクが、有機溶剤Aを含有しないため、有機溶剤Bを含有していないにもかかわらず吸収性記録媒体内部へのインクの浸透性は低く、吸収性記録媒体での記録では比較的色濃度の濃い画質となった。
有機溶剤Bを含有しないインク17を使用し、かつ、インク循環機構のないヘッドを使用した比較例10は、インクが吸収性記録媒体の内部に浸透しやすく、吸収性記録媒体の表面に色材を留めておくことができないため、色濃度の薄い(OD値が低い)画質となった。一方、インク17は、グリセリンを含有しているので、乾燥性は低い。そのため、インク循環機構のないヘッドを使用しても、ノズル周辺でのインクの乾燥が起こり難く、吐出信頼性は比較的良好な結果となった。なお表中には記載しなかったが、インク15、18、19、21〜23を用いて比較例10と同様にして吐出信頼性評価を行ったところ、比較例10と同様の吐出信頼性となった。しかし、インク16、20を用いて比較例10と同様にして吐出信頼性評価を行ったところ、吐出信頼性が劣った。
有機溶剤A及び有機溶剤Bを含有するインク1を使用し、かつ、インク循環機構のないヘッドを使用した比較例11は、低非吸収性記録媒体での記録では白抜けがなく、吸収性記録媒体での記録では色濃度の濃い画質となった。一方、インク循環機構のないヘッドを使用したため、ノズル周辺でのインクの乾燥が起こりやすく、吐出信頼性が損なわれる結果となった。なお表中には記載しなかったが、インク2、4〜9、11〜14を用いて比較例11と同様にして吐出信頼性評価を行ったところ、比較例11と同様の吐出信頼性となった。しかし、インク3、10を用いて比較例11と同様にして吐出信頼性評価を行ったところ、吐出信頼性が良好であった。
また、表中には記載しなかったが、実施例6において、記録媒体への記録中、プラテンヒーターを調整し、記録媒体の表面温度を35℃としたこと以外は同様にして記録を行ったところ、実施例6と比較して、吐出信頼性がより向上し、低非吸収記録媒体のビーディングがやや低下した。このことから記録媒体表面温度が低い方が吐出信頼性がより優れ、高い方が画質がより優れていた。
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
インクジェット記録方法の一態様は、
水系インク組成物を用いて記録媒体へ行うインクジェット記録方法であって、
前記水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して前記記録媒体に付着させるインク付着工程を備え、
前記水系インク組成物は、25℃での表面張力が30mN/m以下の1,2−アルカンジオールである有機溶剤Aと、標準沸点が250℃以下であり炭素数が3以上の両末端アルカンジオールである有機溶剤Bと、を含有し、
前記インクジェットヘッドは、前記水系インク組成物を循環させる循環機構を備える。
このインクジェット記録方法によれば、低非吸収性記録媒体及び吸収性記録媒体の両者での画質を向上させ、かつ、インクの吐出安定性を確保することを両立させることができる。
前記インクジェット記録方法の一態様において、
前記有機溶剤Aと前記有機溶剤Bとの合計の含有量が、前記水系インク組成物の総質量に対し25質量%以下であってもよい。
有機溶剤Aも有機溶剤Bも親水性有機溶剤であるため水への溶解性が高いが、有機溶剤Aと有機溶剤Bの合計含有量が前記範囲内にあると、インクを低非吸収性記録媒体へ付着させた場合であっても、画質の劣化を低減することができる。
前記インクジェット記録方法の何れかの態様において、
前記水系インク組成物において、前記有機溶剤Aの含有量(M)に対する前記有機溶剤Bの含有量(M)の質量比(M/M)が1〜6であってもよい。
質量比(M/M)が前記範囲内にあれば、有機溶剤Aと有機溶剤Bとの含有量のバランスが良好であるので、低非吸収性記録媒体及び吸収性記録媒体の両者での画質を向上させやすくなり、かつ、インクの吐出安定性を確保しやすくすることができる。
前記インクジェット記録方法の何れかの態様において、
前記水系インク組成物の25℃における粘度が4.5mPa・s以上であってもよい。
前記水系インク組成物の25℃における粘度が前記範囲内であれば、吸収性記録媒体へのインクの浸透が抑制されやすくなるため、表面に色材が留まり、特に吸収性記録媒体においてOD値が高く発色性に優れた画質を得ることができる。
前記インクジェット記録方法の何れかの態様において、
前記水系インク組成物が色材と樹脂とをさらに含有し、
前記色材と前記樹脂との合計の含有量が、前記水系インク組成物の総質量に対し3質量%以上であってもよい。
色材と樹脂粒子との合計含有量が前記範囲内にあれば、固形分濃度が適切であるので、インク中の溶剤成分が揮発したときにインクの粘度が急激に上昇するという特性が得られる。これにより、吸収性記録媒体へのインクの浸透が抑制されるため、表面に色材が留まり、特に吸収性記録媒体においてOD値が高く発色性に優れた画質が得られる。
前記インクジェット記録方法の何れの態様において、
前記有機溶剤Aの含有量が、前記水系インク組成物の総質量に対し1〜10質量%であってもよい。
有機溶剤Aの含有量が前記範囲にあると、低非吸収性記録媒体へのぬれ広がり性を十分に高めることができるので、低非吸収性記録媒体においてOD値が高く発色性に優れた画質が得られやすい。また、有機溶剤Aは、インクの動的表面張力を下げる働きがあり、インクのミストを発生させる場合があるが、有機溶剤Aの含有量が前記範囲にあればこのような弊害を防止することができる。
前記インクジェット記録方法の何れかの態様において、
前記有機溶剤Bの含有量が、前記水系インク組成物の総質量に対し4〜30質量%であってもよい。
有機溶剤Bの含有量が前記範囲にあると、有機溶剤Aによって促進された、インクの吸収性記録媒体への浸透を十分に抑制することができるので、低非吸収性記録媒体においてOD値が高く発色性に優れた画質が得られやすい。
前記インクジェット記録方法の何れかの態様において、
前記水系インク組成物に含有される水及び各有機溶剤の各標準沸点と、前記水系インク組成物中における各含有量とを加重平均した値が、130℃以下であってもよい。
この値が前記範囲内にあると、特にインクを低非吸収記録媒体に付着させた場合に、インク中に含まれる溶剤を速やかに揮発させることができるため、粘稠な画像が形成され難く、OD値が高く発色性に優れた画質が得られやすい。
前記インクジェット記録方法の何れかの態様において、
前記有機溶剤Aが、1,2−ヘキサンジオール及び1,2−ペンタンジオールの何れかであってもよい。
前記インクジェット記録方法の何れかの態様において、
前記有機溶剤Bが、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールの何れかであってもよい。
前記インクジェット記録方法の何れかの態様は、
前記インクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置を用いて行われ、
前記インクジェット記録装置は、前記水系インク組成物を用いて、低非吸収性記録媒体への記録と、吸収性記録媒体への記録と、を行うものであり、
低非吸収性記録媒体と吸収性記録媒体の何れかに行うものである。
水系インク組成物の一態様は、
上述の何れかの態様のインクジェット記録方法に用いるためのものである。
前記一態様の水系インク組成物は、
低非吸収性記録媒体への記録と、吸収性記録媒体への記録と、に用いるものであってもよい。
この水系インク組成物によれば、有機溶剤Aを含有することにより、低非吸収性記録媒体へのインクのぬれ広がり性が優れるため、OD値が高く発色性に優れた画質を得ることができる。また、有機溶剤Bを含有することにより、吸収性記録媒体へのインクの浸透が抑制されるため、表面に色材が留まり、OD値が高く発色性に優れた画質を得ることができる。
インクジェット記録装置の一態様は、
水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させるインク付着手段を備え、
前記水系インク組成物は、25℃での表面張力が30mN/m以下の1,2−アルカンジオールである有機溶剤Aと、標準沸点が250℃以下であり炭素数が3以上の両末端アルカンジオールである有機溶剤Bと、を含有し、
前記インクジェットヘッドは、前記水系インク組成物を循環させる循環機構を備える。
このインクジェット記録装置によれば、低非吸収性記録媒体及び吸収性記録媒体の両者での画質を向上させ、かつ、インクの吐出安定性を確保することを両立させることができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…インクジェット記録装置、2…インクジェットヘッド、3…IRヒーター、4…プラテンヒーター、5…加熱ヒーター、6…冷却ファン、7…プレヒーター、8…通気ファン、9…キャリッジ、11…プラテン、12…カートリッジ、13…キャリッジ移動機構、14…搬送手段、28…配線基板、30…流路形成部、32…第1流路基板、34…第2流路基板、42…振動部、44…圧電素子、46…保護部材、48…筐体部、482…導入口、52…ノズルプレート、54…吸振体、61…供給路、63…連通路、65…循環液室、69…隔壁部、n1…第1区間、n2…第2区間、72…排出路、101…インターフェース部、102…CPU、103…メモリー、104…ユニット制御回路、111…搬送ユニット、112…キャリッジユニット、113…ヘッドユニット、114…乾燥ユニット、121…検出器群、130…コンピューター、200…ライン型記録装置の部分、210…記録媒体搬送手段、211…搬送ローラー、220…第1インク付着手段、221…インクジェットヘッド、230…第2インク付着手段、231…インクジェットヘッド、240…後加熱手段、CONT…制御部、MS…主走査方向、SS…副走査方向、M…記録媒体、N…ノズル

Claims (14)

  1. 水系インク組成物を用いて記録媒体へ行うインクジェット記録方法であって、
    前記水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して前記記録媒体に付着させるインク付着工程を備え、
    前記水系インク組成物は、25℃での表面張力が30mN/m以下の1,2−アルカンジオールである有機溶剤Aと、標準沸点が250℃以下であり炭素数が3以上の両末端アルカンジオールである有機溶剤Bと、を含有し、
    前記インクジェットヘッドは、前記水系インク組成物を循環させる循環機構を備える、インクジェット記録方法。
  2. 前記有機溶剤Aと前記有機溶剤Bとの合計の含有量が、前記水系インク組成物の総質量に対し25質量%以下である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記水系インク組成物において、前記有機溶剤Aの含有量(M)に対する前記有機溶剤Bの含有量(M)の質量比(M/M)が1〜6である、請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記水系インク組成物の25℃における粘度が4.5mPa・s以上である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記水系インク組成物が色材と樹脂とをさらに含有し、
    前記色材と前記樹脂との合計の含有量が、前記水系インク組成物の総質量に対し3質量%以上である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記有機溶剤Aの含有量が、前記水系インク組成物の総質量に対し1〜10質量%である、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記有機溶剤Bの含有量が、前記水系インク組成物の総質量に対し4〜30質量%である、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記水系インク組成物に含有される水及び各有機溶剤の各標準沸点と、前記水系インク組成物中における各含有量とを加重平均した値が、130℃以下である、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記有機溶剤Aが、1,2−ヘキサンジオール及び1,2−ペンタンジオールの何れかである、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記有機溶剤Bが、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールの何れかである、請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  11. 前記インクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置を用いて行われ、
    前記インクジェット記録装置は、前記水系インク組成物を用いて、低非吸収性記録媒体への記録と、吸収性記録媒体への記録と、を行うものであり、
    前記記録媒体が、前記低非吸収性記録媒体と前記吸収性記録媒体の何れかである、請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  12. 請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法に用いるための水系インク組成物。
  13. 低非吸収性記録媒体への記録と、吸収性記録媒体への記録と、に用いるものである、請求項12に記載の水系インク組成物。
  14. 水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させるインク付着手段を備え、
    前記水系インク組成物は、25℃での表面張力が30mN/m以下の1,2−アルカンジオールである有機溶剤Aと、標準沸点が250℃以下であり炭素数が3以上の両末端アルカンジオールである有機溶剤Bと、を含有し、
    前記インクジェットヘッドは、前記水系インク組成物を循環させる循環機構を備える、インクジェット記録装置。
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