JP2021132199A - 窒化物圧電体およびそれを用いたmemsデバイス - Google Patents

窒化物圧電体およびそれを用いたmemsデバイス Download PDF

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研二 平田
Kenji Hirata
研二 平田
浩志 山田
Hiroshi Yamada
浩志 山田
雅人 上原
Masahito Uehara
雅人 上原
スリ アユ アンガライニ
Sri Ayu Anggraini
スリ アユ アンガライニ
守人 秋山
Morihito Akiyama
守人 秋山
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Abstract

【課題】製造時の取扱いが容易で、高い性能指数(圧電定数(d33)、圧電応力定数(e33)、弾性定数(C33)、圧電出力定数(g33)および電気機械結合定数(k2)の少なくとも何れか1つ)の値を有する窒化物圧電体およびそれを用いたMEMSデバイスを提供する。【解決手段】化学式Al1-XMXNで表され、Xは0より大きく1より小さい範囲にあることを特徴とする窒化物圧電体であって、Mは、遷移金属元素の中から選ばれる、2つ以上の異なる元素を示す。【選択図】図3

Description

本発明は、2種類以上の遷移金属元素を添加した窒化物圧電体およびそれを用いたMEMSデバイスに関するものである。
圧電現象を利用するデバイスは、幅広い分野において用いられており、小型化および省電力化が強く求められている携帯電話機などの携帯用機器において、その使用が拡大している。その一例として、薄膜バルク音響波共振子(Film Bulk Acoustic Resonator;FBAR)を用いたFBARフィルタがある。
FBARフィルタは、圧電応答性を示す薄膜の厚み縦振動モードを用いた共振子によるフィルタであり、ギガヘルツ帯域における共振が可能であるという特性を有する。このような特性を有するFBARフィルタは、低損失であり、かつ広帯域で動作可能であることから、携帯用機器のさらなる高周波対応化、小型化および省電力化に寄与することが期待されている。
このようなFBARに用いられる圧電体薄膜の圧電体材料としては、例えばスカンジウムを添加した窒化アルミニウム(特許文献1参照)や、マグネシウムおよびタンタルを添加した窒化アルミニウム(特許文献2)等が挙げられる。特にスカンジウムを添加した窒化アルミニウムは、高い圧電定数を有し、次世代の高周波フィルタへの利用に期待されている。また、これらの圧電体材料は、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロセンサなどの物理センサ、アクチュエータ、マイクロフォン、指紋認証センサ、振動発電機等の様々なMEMS(micro electro mechanical system)デバイスへの利用に期待されている。
特開2009−10926号公報 特許第5904591号公報
しかしながら、スカンジウム(Sc)は高価な希土類元素であり、Scを添加した窒化アルミニウム(AlN)で構成された圧電体は他の物質で構成された圧電体と比較して、製造コストが高額になる傾向がある。これまで、AlNに添加する元素は、Alの原子価(+3)と同じ原子価を有する元素が選択されてきた。しかし、原子価が+3の金属元素の数は限られるため、最近では原子価が+2の典型金属元素(Mg,Zn,Ca,Sr)と、原子価が+4または+5の遷移金属元素とを組合せて添加(共添加)することで圧電特性の向上が図られている。しかしながら、マグネシウム(Mg)のような典型金属元素は活性が高く反応し易いという性質を有する。そのため、Mgおよびニオブ(Nb)のように典型元素金属が含まれる複数の金属を添加したAlNで構成された圧電体は、製造時の取扱いが難しいという問題点があった。
本発明は上述した事情に鑑み、製造時の取扱いが容易で、AlNよりも高い性能指数(圧電定数(d33)、圧電応力定数(e33)、弾性定数(C33)、圧電出力定数(g33)および電気機械結合定数(k)の少なくとも何れか1つ)の値を有する窒化物圧電体およびそれを用いたMEMSデバイスを提供することを目的とする。
後述するように、遷移金属元素同士の組み合わせは膨大であり、それらを指針もなく検討していては膨大な時間がかかってしまう。そこで、本発明の発明者は、上述した問題点に関して鋭意研究を続けた結果、後述する全く新しい考えの下、以下のような画期的な窒化物圧電体を見出した。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、化学式Al1-XNで表され、Xは0より大きく1より小さい範囲にあることを特徴とする窒化物圧電体(Mは、遷移金属元素の中から選ばれる、2つ以上の異なる元素を示す。)にある。なお、Mが複数の遷移金属元素で構成されている場合には、Xはその全遷移金属元素の濃度の合計を示す。
ここで、「遷移金属元素」とは、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)および金(Au)をいう。
かかる第1の態様では、製造時の取扱いが容易で、高い性能指数を有する窒化物圧電体を提供することができる。
本発明の第2の態様は、Mの平均Born有効電荷が、1.4〜3.2の範囲にあることを特徴とする第1の態様に記載の窒化物圧電体にある。
ここで、「平均Born有効電荷」とは、次式によって算出される各遷移金属元素ごとのBorn有効電荷(Z33)に、その遷移金属元素のモル数を乗じ、それらの合計値を、全体のモル数で除した(モル数で加重平均した)、1原子(遷移金属元素)当たりの有効電荷をいう。
Figure 2021132199
この式中、ΔPは特定のイオンをy方向にuだけ微小変位させた際に系に誘起されるx方向の分極を、Vは結晶格子の体積を、eは電気素量をそれぞれ示す。なお、ΔPおよびuは、後述する第1原理計算により算出される。
したがって、後述する第1原理計算を用いて、ΔPおよびuの数値を各遷移金属元素ごとに求める。次に、それらを上述した式に代入することによって、各遷移金属元素ごとのBorn有効電荷を求めることができる。そして、得られた各遷移金属元素ごとのBorn有効電荷をモル数で加重平均することによって、平均Born有効電荷を算出することができる。
かかる第2の態様では、製造時の取扱いが容易で、より高い性能指数を有する窒化物圧電体を提供することができる。
本発明の第3の態様は、化学式Al1-X-YM1M2Nで表され、X+Yが1より小さく、かつXは0より大きく1より小さく、Yは0より大きく1より小さい範囲にあることを特徴とする窒化物圧電体(M1は、遷移金属元素の中から選ばれる1つの元素を示し、M2は、M1以外の遷移金属元素の中から選ばれる1つの元素を示す。)にある。
かかる第3の態様では、製造時の取扱いが容易で、何の元素も添加されていないAlN(ノンドープAlN)よりも高い性能指数を有する窒化物圧電体を提供することができる。
本発明の第4の態様は、M1およびM2の平均Born有効電荷が、1.4〜2.7の範囲にあることを特徴とする第3の態様に記載の窒化物圧電体にある。
かかる第4の態様では、製造時の取扱いが容易で、より高い性能指数を有する窒化物圧電体を提供することができる。
本発明の第5の態様は、M1がHfであることを特徴とする第3または第4の態様に記載の窒化物圧電体にある。
かかる第5の態様では、製造時の取扱いが容易で、さらに高い性能指数を有する窒化物圧電体を提供することができる。
本発明の第6の態様は、M2が、Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Tc,Ru,Ag,W,Re,Os,Pt,Auの何れか1つであることを特徴とする第3〜第5の態様の何れか1つに記載の窒化物圧電体にある。
かかる第6の態様では、ノンドープAlNよりも高いg33を有する窒化物圧電体を提供することができる。
本発明の第7の態様は、M2が、Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Tc,Ru,W,Re,Osの何れか1つであることを特徴とする第3〜第5の態様の何れか1つに記載の窒化物圧電体にある。
かかる第7の態様では、ノンドープAlNよりも高いkを有する窒化物圧電体を提供することができる。
本発明の第8の態様は、M2が、V,Cr,Zr,Tc,Ru,Ta,Re,Osの何れか1つであることを特徴とする第3〜第5の態様の何れか1つに記載の窒化物圧電体にある。
かかる第8の態様では、ノンドープAlN、同濃度のScが添加された窒化アルミニウムおよび合計濃度が同濃度となるマグネシウム(Mg)とニオブ(Nb)とが添加された窒化アルミニウムよりも高いd33を有する窒化物圧電体を提供することができる。
本発明の第9の態様は、X+Yが0.5より小さく、かつXは0より大きく0.5より小さく、Yは0より大きく0.5より小さい範囲にあることを特徴とする第3〜第8の態様の何れか1つに記載の窒化物圧電体にある。
かかる第9の態様では、製造時の取扱いがより容易で、高い性能指数を有する窒化物圧電体を提供することができる。
本発明の第10の態様は、X+Yが0.375より小さく、かつXは0より大きく0.375より小さく、Yは0より大きく0.375より小さい範囲にあることを特徴とする第3〜第8の態様の何れか1つに記載の窒化物圧電体にある。
かかる第10の態様では、製造時の取扱いがさらに容易で、高い性能指数を有する窒化物圧電体を提供することができる。
本発明の第11の態様は、第1〜第10の態様の何れか1つに記載の窒化物圧電体を用いたMEMSデバイスにある。
ここで、「MEMSデバイス」とは、微小電気機械システムであれば特に限定されず、例えば、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロセンサなどの物理センサやアクチュエータ、マイクロフォン、指紋認証センサ、振動発電機等が挙げられる。
かかる第11の態様では、これらの高い性能指数を有する圧電体は、低損失であり、かつ広帯域で動作可能である。したがって、これらの圧電体を用いることにより、携帯用機器のさらなる高周波対応化、小型化および省電力化に寄与することができるMEMSデバイスを提供することができる。
図1は実施形態1に係るシミュレーションに用いたドープAlNの計算モデルの一例を示す図である。 図2は実施形態1における各ドープAlNの平均Born有効電荷を示すグラフである。 図3は実施形態1におけるノンドープAlN、ScのみをドープしたAlN、MgおよびNbをドープさせたAlN、並びに各ドープAlNと圧電定数d33との関係を示すグラフである。 図4は実施形態1におけるノンドープAlN、ScのみをドープしたAlN、MgおよびNbをドープさせたAlN、並びに各ドープAlNと圧電出力定数g33との関係を示すグラフである。 図5は実施形態1におけるノンドープAlN、ScのみをドープしたAlN、MgおよびNbをドープさせたAlN、並びに各ドープAlNと電気機械結合定数kとの関係を示すグラフである。 図6は実施形態2に係るシミュレーション(3つの異なる遷移金属をドープしたケース)に用いたドープAlNの計算モデルの一例を示す図である。 図7は実施形態2における各ドープAlNの平均Born有効電荷を示すグラフである。 図8はノンドープAlNおよび実施形態2における各ドープAlNと圧電定数d33との関係を示すグラフである。
以下に添付図面を参照して、本発明に係る窒化物圧電体の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
まず、発明者が、アルミニウム(Al)と窒素(N)のみからなる窒化アルミニウム(ノンドープAlN)に対して行ったシミュレーションについて説明する。シミュレーションには、第1原理計算(first−principles calculation)と呼ばれる計算方法を採用しているVASP(Vienna Ab initio Simulation Package)というソフトウェアを用いた。ここで、第1原理計算とは、フィッティングパラメータ等を使用しない電子状態計算方法の総称であり、単位格子あるいは分子等を構成する各原子の原子番号と座標だけで、電子状態を計算することができる手法である。
本実施形態のシミュレーションでは、2個のアルミニウム原子と2個の窒素原子とからなる単位格子を、a軸、b軸、及びc軸方向にそれぞれ2倍した16個のアルミニウム原子と16個の窒素原子とからなるスーパーセルのウルツ鉱型結晶構造のノンドープAlNをシミュレーションに用いた。そして、このウルツ鉱型結晶構造のAlNに対して、原子座標、セル体積およびセル形状の全てを同時に動かして第1原理計算を行い、安定構造のノンドープAlNの電子状態を計算した。
表1は、第1原理計算で求めた安定構造のAlNの電子状態から算出したa軸方向の格子定数、c軸方向の格子定数およびa軸方向の格子定数とc軸方向の格子定数との比(c/a)の値(計算値)である。また、実際にスパッタ法を用いてノンドープAlN膜を成膜して、このAlN膜に対してX線回折法を用いて測定した実験値についても表1に示す。
Figure 2021132199
この表に示すように、各計算値は、実験値とほぼ同じ数値となり、これらの相対誤差は1%以内に収まっている。この結果より、本実施形態におけるシミュレーションは、十分に信頼できることが分かった。
<遷移金属元素の選択方法>
次に、本発明の発明者が新たに考え出した、窒化アルミニウム(AlN)に、添加する2種類以上の遷移金属元素の選択方法について説明する。
従来の知見では、AlNに添加する元素は、原子価が3価をとる典型元素が望ましいと考えられてきた。これは、添加する元素(原子)は、Al原子を置換するものであることから、Al原子と同じ価数を持つものが好ましいと考えられてきたからある。
一方、遷移金属元素は、複数の原子価をとるので、AlNに添加した際に、原子価が3価をとらない(3価として振る舞わない)可能性がある。しかも、2種類以上の遷移金属元素をAlNに添加した場合には、それに含まれる遷移金属元素のそれぞれの価数を予測することは全くできない。したがって、2種類以上の遷移金属元素をAlNに添加した窒化物圧電体の性能指数を調べるには、具体的な組み合わせごとに実験または数値計算を行う必要がある。
しかしながら、遷移金属元素同士の組み合わせ数は膨大(2種類の組み合わせだけでなく、それ以上の組み合わせもある)である。したがって、それらの組み合わせの性能指数を数値計算により求めるにしても、膨大な計算時間がかかってしまうので、非現実的である。
そこで、本発明の発明者は、試行錯誤の末、次式に示される「Born有効電荷」に着目した。
Figure 2021132199
この式中、ΔPは特定のイオンをy方向にuだけ微小変位させた際に系に誘起されるx方向の分極を、Vは結晶格子の体積を、eは電気素量をそれぞれ示す。本実施形態では、ΔPおよびuは、上述したVASPにより自動的に算出される。
このBorn有効電荷(Z33)は、圧電現象(圧電効果)における実質的な原子価を示すと理解される。なお、AlのBorn有効電荷(Z33)は、2.7である。
したがって、本発明の発明者は、上述したシミュレーションにより、窒化物圧電体に含まれる各遷移金属元素の平均Born有効電荷(各遷移金属元素のBorn有効電荷(Z33)をモル数で加重平均したもの)を算出し、得られた「平均Born有効電荷」が2.7に近ければ、窒化物圧電体に含まれるAlの化学的な状態に似ているはずであり、AlN圧電体への添加元素として有効であるという考えに辿り着いたのである。
<本実施形態における窒化物圧電体>
上記の考えが成立することを示すために、AlNに、ハフニウム(Hf)と共にHf以外の遷移金属元素M2をドープさせたドープAlNに関し、シミュレーションを行った。図1は、本実施形態に係るシミュレーションに用いた、HfとHf以外の遷移金属元素M2とをドープさせたドープAlN(Al1-X-YHfM2N)の結晶構造の一例を示す図である。
この図に示すように、このドープAlNの結晶構造は、16個のAl原子と16個のN原子とからなる単位格子のうち、1個のAl原子をHf原子に置き換え、かつ1個のAl原子を遷移金属元素M2原子に置き換えたウルツ鉱型結晶構造となっている。ここで、Al原子数と、Hf原子数およびHf以外の遷移金属元素M2原子数との総数を1としたときの、Hf原子の個数をXとし、Hf以外の遷移金属元素M2原子の個数をYとする。すると、このシミュレーションに用いたドープAlNのHf原子の濃度XおよびHf以外の遷移金属元素M2の濃度Yはいずれも0.0625となる。なお、これらのドープAlN(Al0.875Hf0.0625M20.0625N)は、上述した非特許文献1に記載された製造方法で実際に作製することができる。
本実施形態では、Hf以外の遷移金属元素M2として、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)および金(Au)を用いた。
これらのドープAlN、ScのみをドープさせたAlN並びに、MgおよびNbをドープさせたAlNについても、ノンドープAlNの場合と同様に第1原理計算により安定構造の電子状態を計算することができる。
そして、安定構造のノンドープAlN、ScのみをドープさせたAlN、MgおよびNbをドープさせたAlN、並びに上述した各ドープAlNの結晶格子のそれぞれに微小変位uを強制的に加える。すると、その際の全エネルギーの微小変化から、ノンドープAlN、ScのみをドープさせたAlN、MgおよびNbをドープさせたAlN、並びに上述した各ドープAlNの、圧電応力定数e33、弾性定数C33および誘電率ε33をそれぞれ計算することができる。また、同時に、上述したΔPおよびVの数値も計算することができる。すなわち、第1原理計算を用いて、ノンドープAlN、ScのみをドープさせたAlN、MgおよびNbをドープさせたAlN、並びに上述した各ドープAlNの結晶格子それぞれのe33、C33、ε33、ΔPおよびVをそれぞれ計算することができる。
そして、ΔPおよびVの数値を、上述した数2にそれぞれ代入することによって、各ドープAlNにおける平均Born有効電荷を算出することができる。図2に、得られた各ドープAlNにおける平均Born有効電荷のグラフを示す。なお、このグラフの横軸は、ドープされた遷移金属元素の組み合わせを示す。
この図から、各遷移金属元素をドープさせたAlNの平均Born有効電荷は、1.4〜3.2の範囲にあることが分かった。
また、c軸方向の圧電応力定数e33、弾性定数C33および誘電率ε33と、電気機械結合定数kとの間には、次の数3の関係式が成り立つ。また、圧電定数d33と、圧電応力定数e33、弾性定数C33および圧電出力定数g33との間には、次の数4の関係式がそれぞれ成立する。
Figure 2021132199
Figure 2021132199
そこで、これらの関係式に、上記で算出されたノンドープAlN、ScのみをドープしたAlN、MgおよびNbをドープさせたAlN、並びに上述した各ドープAlNの圧電定数e33、弾性定数C33および誘電率ε33等をそれぞれ代入することによって、ノンドープAlN、ScのみをドープしたAlNおよび上述した各ドープAlNの電気機械結合定数k、圧電定数d33および圧電出力定数g33をそれぞれ算出することができる。なお、弾性定数C11、C12、C13や圧電応力定数e31は、圧電応力定数e33、弾性定数C33と同様にして算出することができる。
このようにして得られたノンドープAlN、ScのみをドープしたAlN、MgおよびNbをドープさせたAlN、並びに上述した各ドープAlNの圧電定数d33を図3に示す。このグラフの横軸は、ノンドープAlNおよびドープされた遷移金属元素の組み合わせを示す(例えば、AlNはノンドープAlNを示し、ScはScのみがドープされたAlNを示し、PdHfは、Al0.875Hf0.0625Pd0.0625Nを示す)。ここで、圧電定数d33は、大きい数値であればあるほど、高い性能指数であることを示す。
この図から分かるように、PdHfの組み合わせ以外の上記したドープAlNは、ノンドープAlNよりも高いd33の数値を有することが分かった。また、VHf、CrHf、ZrHf、TcHf、RuHf、TaHf、ReHfおよびOsHfの組み合わせのドープAlNは、MgおよびNbをドープさせたAlNよりも高いd33の数値を有することが分かった。
次に、得られた各ドープAlNの圧電出力定数g33を図4に示す。このグラフの横軸も、図3と同様に、ドープされた遷移金属元素の組み合わせを示す。ここで、圧電出力定数g33は、大きい数値であればあるほど、高い性能指数であることを示す。
この図から分かるように、FeHf、CoHf、NiHf、CuHf、MoHf、TcHf、RuHf、AgHf、WHf、ReHf、OsHf、PtHfおよびAuHfの組み合わせのドープAlNは、ノンドープAlNよりも高いg33の数値を有することが分かった。
また、得られた各ドープAlNの電気機械結合定数kを図5に示す。このグラフの横軸も、図3と同様に、ドープされた遷移金属元素の組み合わせを示す。ここで、電気機械結合定数kは、大きい数値であればあるほど、高い性能指数であることを示す。
この図から分かるように、FeHf、CoHf、NiHf、CuHf、MoHf、TcHf、RuHf、WHf、ReHfおよびOsHfの組み合わせのドープAlNは、ノンドープAlNよりも高いkの数値を有することが分かった。
なお、本実施形態では、化学式Al1-X-YHfM2Nで表された窒化物圧電体のうち、X=0.0625、Y=0.0625のものを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、X+Yが1より小さく、かつXは0より大きく1より小さく、Yは0より大きく1より小さい範囲あればよい。
そして、これらの変数X、Yは、X+Yが0.5以下で、かつXは0より大きく0.5より小さく、Yは0より大きく0.5より小さい範囲にあることが好ましく、X+Yが0.375以下で、かつXは0より大きく0.375より小さく、Yは0より大きく0.375より小さい範囲にあることがより好ましい。この範囲であれば窒化物圧電体を確実に製造することができる。
(実施形態2)
実施形態1では、2種類の異なる遷移金属元素(M1、M2)をドープしたAlN(Al1-X-YM1M2N)のうち、遷移金属元素M1をHfに固定したドープAlNについて、性能指数を算出したが、本発明はこれに限定されない。遷移金属元素M1をHf以外とし、遷移金属元素M2をその遷移金属元素M1以外の遷移金属元素で、かつHf以外のものとを組み合わせてドープAlNを構成してもよい。また、上述した平均Born有効電荷の考え方を活用し、3種類以上の異なる遷移金属元素を組み合わせてドープAlNを構成してもよい。
本実施形態では、Hfが含まれない2種類の異なる遷移金属元素(M1、M2)の組み合わせの一例として、TaIr、TaPt、TaAu、TiV、VCr、MnFe、FeCo、CoNi、NiCu、ZrNb、NbMo、RuRh、RhPd、PdAg、OsIr、IrPtおよびPtAuを用い、また3種類の異なる遷移金属元素の組み合わせの一例として、TiVCr、MnFeCo、NiCuZr、HfTaAgおよびHfTaWを用い、実施形態1と同様にして各ドープAlNにおける平均Born有効電荷を算出した。ここで、図6は、本実施形態に係るシミュレーションに用いたドープAlNの計算モデルの一例を示す図である。実際のシミュレーションでは、3種類の異なる遷移金属元素をドープさせたドープAlNとして、Al0.8125M10.0625M20.0625M30.0625Nを用いた(M1、M2およびM3は、それぞれ異なる遷移金属元素を示す)。なお、これらのドープAlNは、上述した非特許文献1に記載された製造方法で実際に作製することができる。
上記シミュレーションの結果を図7に示す。このグラフの横軸も、図2と同様に、ドープされた遷移金属元素の組み合わせを示す。この図から、各遷移金属元素をドープさせたAlNの平均Born有効電荷は、1.4〜3.2の範囲にあることが分かる。
次に、実施形態1と同様にして、各ドープAlNの圧電定数d33を算出した。その結果を図8に示す。このグラフの横軸も、図3と同様に、ノンドープAlNおよびドープされた遷移金属元素の組み合わせを示す。この図から分かるように、各ドープAlNは、ノンドープAlNよりも高いd33の数値を有することが分かった。なお、実施形態1と同様の計算を行うことによって、各ドープAlNのg33およびkを算出することもできる。
このように、Hf以外の2種類の異なる遷移金属元素をドープさせたドープAlNであっても、また、3種類の異なる遷移金属元素をドープさせたドープAlNであっても、実施形態1と同様の効果が得られることが分かった。
なお、本実施形態では、3種類の異なる遷移金属元素の組み合わせの一例として、化学式Al0.8125M10.0625M20.0625M30.0625Nについて説明したが、本発明はこれに限定されず、各遷移金属のモル濃度の合計値が1より小さく、かつ各遷移金属のモル濃度は0より大きく1より小さい範囲あればよい。
(他の実施形態)
上述した実施形態では、2種類または3種類以上の異なる遷移金属元素をドープさせたドープAlNについて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上述したドープAlNを用いたMEMSデバイスを構成してもよい。MEMSデバイスの構成は特に限定されず、公知の技術を用いることができる。
このように構成されたMEMSデバイスは、上述した高い性能指数を有するドープAlNを用いており、低損失であり、かつ広帯域で動作可能となるので、携帯用機器のさらなる高周波対応化、小型化および省電力化に寄与することができるものである。

Claims (11)

  1. 化学式Al1-XNで表され、Xは0より大きく1より小さい範囲にあることを特徴とする窒化物圧電体。
    (Mは、遷移金属元素の中から選ばれる、2つ以上の異なる元素を示す。)
  2. 前記Mの平均Born有効電荷が、1.4〜3.2の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の窒化物圧電体。
  3. 化学式Al1-X-YM1M2Nで表され、X+Yが1より小さく、かつXは0より大きく1より小さく、Yは0より大きく1より小さい範囲にあることを特徴とする窒化物圧電体。
    (M1は、遷移金属元素の中から選ばれる1つの元素を示し、M2は、M1以外の遷移金属元素の中から選ばれる1つの元素を示す。)
  4. 前記M1および前記M2の平均Born有効電荷が、1.4〜3.2の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の窒化物圧電体。
  5. 前記M1がHfであることを特徴とする請求項3または4に記載の窒化物圧電体。
  6. 前記M2が、Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Tc,Ru,Ag,W,Re,Os,Pt,Auの何れか1つであることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の窒化物圧電体。
  7. 前記M2が、Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Tc,Ru,W,Re,Osの何れか1つであることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の窒化物圧電体。
  8. 前記M2が、V,Cr,Zr,Tc,Ru,Ta,Re,Osの何れか1つであることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の窒化物圧電体。
  9. X+Yが0.5より小さく、かつXは0より大きく0.5より小さく、Yは0より大きく0.5より小さい範囲にあることを特徴とする請求項3〜8の何れか1項に記載の窒化物圧電体。
  10. X+Yが0.375より小さく、かつXは0より大きく0.375より小さく、Yは0より大きく0.375より小さい範囲にあることを特徴とする請求項3〜8の何れか1項に記載の窒化物圧電体。
  11. 請求項1〜10の何れか1項に記載の窒化物圧電体を用いたMEMSデバイス。

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