JP2021130798A - 繊維強化樹脂複合体成形用基材および繊維強化樹脂複合体 - Google Patents

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【課題】管理が簡便で、安定した品質を得ることが可能な繊維強化樹脂複合体成形用基材を提供する。【解決手段】アラミド繊維からなる布帛と半硬化状態の熱硬化性樹脂とからなり、次の(1)と(2)の両方を満たすことを特徴とする繊維強化樹脂複合体成形用基材。(1)繊維強化樹脂複合体成形用基材の、JISL10968.12に準じて測定した布目曲がり率が5%以下、(2)記繊維強化樹脂複合体成形用基材を用いて成形した繊維強化樹脂複合体の、JISK7017に準じて3点曲げ装置で10回測定した曲げ強度から算出される変動係数が0.05以下。【選択図】なし

Description

本発明は、アラミド繊維からなる布帛と半硬化状態の熱硬化性樹脂とからなる繊維強化樹脂複合体成形用基材、およびそれを成形してなる繊維強化樹脂複合体に関する。
強化繊維からなる布帛と熱硬化性樹脂とからなる繊維強化樹脂複合体は、軽量で優れた機械特性を有することから、航空機材、車両部品、電子部品、家電製品の各種ハウジング等幅広い分野に使用され、軽量、かつ高剛性、高強度、耐摩耗性等の特性が要求される分野において有効に用いられている。
繊維強化樹脂複合体は、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等の強化繊維からなる布帛に熱硬化性樹脂を含浸させ、半硬化状態としたシート状等の基材(プリプレグ)を用いて製造されている。また、繊維強化樹脂複合体を得る方法の多くは、その取扱い性および賦形性から、半硬化状態としたシート状の基材(プリプレグ)を複数積層しオートクレーブ等で加熱加圧することにより硬化させる方法である。
その一方で、使用する繊維強化樹脂複合体成形用基材では、該基材を構成する強化繊維からなる布帛に発生する布目曲がりが製品の品質に影響を及ぼす問題がある(特許文献1、特許文献2)。特に、有機繊維(例えばアラミド繊維)からなる布帛は、無機繊維からなる布帛と比べ、繊維の剛直性が低い(柔軟性が高い)ために、布目曲がりの影響をより受けやすく、複数積層する際に基材の向きを考慮して積層する必要があり、製造時の管理が煩雑になるという問題がある。
特開2004−124328号公報 特開2001−329466号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、製造時の管理が簡便で、安定した品質を得ることが可能な繊維強化樹脂複合体成形用基材を提供することを目的とする。
本発明者等は上記目的を達成すべく誠意検討した結果、特定の繊維強化樹脂複合体成形用基材を用いることで、ランダムに積層・成形した製品の品質ばらつきを小さく抑えることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、アラミド繊維からなる布帛と半硬化状態の熱硬化性樹脂とからなり、次の(1)と(2)の両方を満たすことを特徴とする繊維強化樹脂複合体成形用基材を提供する。
(1)繊維強化樹脂複合体成形用基材の、JIS L1096 8.12に準じて測定した布目曲がり率が5%以下
(2)繊維強化樹脂複合体成形用基材を用いて成形した繊維強化樹脂複合体の、JIS K7017に準じて3点曲げ装置で10回測定した曲げ強度から算出される変動係数が、0.05以下
本発明の繊維強化樹脂複合体成形用基材においては、前記アラミド繊維からなる布帛が長繊維からなる一方向性織物または二方向性織物であることが好ましく、二方向性織物である場合は、該織物を構成するタテ糸密度とヨコ糸密度が同一であることがより好ましい。また前記アラミド繊維がポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることがより好ましい。
また、本発明は、前記の繊維強化樹脂複合体成形用基材を成形してなる繊維強化樹脂複合体を提供する。
本発明によれば、製造時の管理が簡便であり、安定した品質を得ることが可能な繊維強化樹脂複合体成形用基材を提供することができる。
本発明に係る繊維強化樹脂複合体成形用基材は、アラミド繊維からなる布帛と半硬化状態の熱硬化性樹脂とからなり、次の(1)と(2)の両方を満たすことを特徴とするものである。
(1)前記繊維強化樹脂複合体成形用基材の、JIS L1096 8.12に準じて測定した布目曲がり率が5%以下
(2)前記繊維強化樹脂複合体成形用基材を用いて成形した繊維強化樹脂複合体の、JIS K7017に準じて3点曲げ装置で10回測定した曲げ強度から算出される変動係数が、0.05以下
本発明に用いられるアラミド繊維とは、繊維を形成するポリマーの繰り返し単位中に、通常置換されていても良い二価の芳香族基を少なくとも一個有する繊維であって、アミド結合を少なくとも一個有する繊維であれば特に限定はなく、全芳香族ポリアミド繊維、又はアラミド繊維と称されるものであって良い。「置換されていても良い二価の芳香族基」とは、同一又は異なる1以上の置換基を有していても良い二価の芳香族基を意味する。
アラミド繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維等を挙げることができるが、引張強さに優れているパラ系アラミド繊維が好ましい。このようなアラミド繊維は市販品として入手でき、その具体例としては、パラ系アラミド繊維として、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(米国デュポン社、東レ・デュポン(株)製、商品名「Kevlar」(登録商標))、コポリパラフェニレン−3,4´−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人(株)製、商品名「テクノーラ」(登録商標))等を挙げることができる。これらのパラ系アラミド繊維の中でも、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維が特に好ましい。
アラミド繊維の繊度(総繊度)は特に限定されないが、通常、50〜10,000dtex、好ましくは200〜6,500dtex、より好ましくは750〜3,500dtexのものが用いられる。繊度の小さいパラ系アラミド繊維を用いると比較的薄い布帛が得られやすくなり、繊度の大きいパラ系アラミド繊維を用いると比較的厚い布帛が得られやすくなる。
繊維強化樹脂複合体成形用基材に用いられる布帛としては、織物、編物、フェルト、紙、不織布等を用いることができ、短繊維または長繊維を公知の方法で加工したものを用いることができる。布帛の厚さは特に限定されないが、積層成形体の軽量化、低コスト化および性能向上を図る観点からの好ましい厚さは0.05mm〜1mmである。
織物としては、例えば、アラミド繊維束を一方向に配列させたトウシートや、アラミド繊維糸条を一方向または二方向に配列させた一方向性織物や二方向性織物、三方向に配列させた三軸織物等が挙げられる。編物としては、例えば、丸編機等のよこ編機、トリコット編機、ラッセル編機、ミラニーズ編機等のたて編機で製編したものが挙げられる。軽量性と耐衝撃性を両立させる観点からは、一方向性織物または二方向性織物が好ましい。織物密度(タテ糸およびヨコ糸密度)は、8〜40本/インチが好ましく、8〜30本/インチが好ましく、タテ糸密度とヨコ糸密度は同じであることが、品質ばらつきの点においてより好ましい。
引張強度の高い布帛を得るという点では、短繊維よりも長繊維(フィラメント糸)を用いた布帛が望ましく、かかる長繊維フィラメント糸にタスラン加工やインターレース加工等を施したエアー交絡糸;加撚−熱固定−解撚糸(捲縮糸);仮撚加工糸;押込加工糸等も用いることができる。
布帛の目付(単位面積当りの質量)は、20〜1,000g/mが好ましく、より好ましくは50〜600g/mの範囲内である。布帛の目付が小さすぎると任意の製品厚みを得るための積層数が多くなり作業性が悪化し、目付が大きすぎると樹脂の種類によっては樹脂との接着性に劣ることがあり、アラミド繊維がフィブリル化して成形後の外観を損ない、成形体の重量化に繋がったりする。
布帛の布目曲がり率(%)は、JIS L1096 8.12に従って測定した値が3%以下であることが、繊維強化樹脂複合体成形用基材の布目曲がり率を小さくする点において好ましく、2%以下であることがより好ましい。
本発明で用いられる、半硬化状態の熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂、シアネート系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂等が挙げられるが、耐熱性、力学特性およびアラミド繊維との接着性のバランスに優れていることから、エポキシ系樹脂を用いることが好ましい。
エポキシ系樹脂としては、特に限定されるものではなく、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジグリシジルアニリン誘導体等の中から1種以上を選択して用いることができる。
エポキシ系樹脂を繊維強化樹脂複合体成形用基材のマトリックス樹脂として用いる場合、エポキシ系樹脂の25℃における粘度は500Pa・s以上であることが好ましく、より好ましくは1000Pa・s以上である。ここで、粘度とは、動的粘弾性測定装置(レオメーターRDA2:レオメトリックス社製、または、レオメーターARES:TAインスツルメント社製)を用い、直径40mmのパラレルプレートを用い、周波数0.5Hz、Gap1mmで測定を行った複素粘性率η*のことを指す。25℃における粘度をかかる範囲にすることで繊維強化樹脂複合体成形用基材とした際に室温で樹脂が流動しにくくなり、強化繊維含有量のばらつきが抑制できることに加え、成形時の取り扱いに適切なタック性を有する繊維強化樹脂複合体成形用基材が得られる。
本発明のエポキシ系樹脂を繊維強化樹脂複合体成形用基材のマトリックス樹脂として用いる場合、繊維強化樹脂複合体成形用基材のタックやドレープの観点から、エポキシ系樹脂の80℃における初期粘度は0.5〜200Pa・sの範囲にあることが好ましい。80℃における初期粘度が0.5Pa・s以上であると繊維強化樹脂複合体の成形時に過剰な樹脂フローが生じにくくなり、強化繊維含有量のばらつきを抑制できる。一方、80℃における初期粘度が200Pa・s以下であると、繊維強化樹脂複合体成形用基材を製造する際に強化繊維にエポキシ系樹脂を充分に含浸でき、得られた繊維強化樹脂複合体にボイドが生じにくくなるため、繊維強化樹脂複合体の強度低下を抑制できる。エポキシ系樹脂の80℃における初期粘度は、繊維強化樹脂複合体成形用基材製造工程において、強化繊維にエポキシ系樹脂が含浸しやすく、高い繊維質量含有率の繊維強化樹脂複合体を製造するために1〜150Pa・sの範囲にあることがより好ましく、5〜100Pa・sの範囲にあることがさらに好ましい。
本発明の繊維強化樹脂複合体成形用基材は、アラミド繊維からなる布帛に半硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸してなるものであり、その含浸させる手段は特に限定されるものではなく、公知の製造方法を用いて製造することができる。例えば、半硬化状態の熱硬化性樹脂組成物をメチルエチルケトン、メタノール等の溶媒に溶解して低粘度化し、繊維強化樹脂複合体成形用基材に含浸させるウェット法、および、半硬化状態の熱硬化性樹脂組成物を加熱により低粘度化し、含浸させるホットメルト法(ドライ法)等を挙げることができる。ウェット法は、強化繊維からなる布帛を熱硬化性樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法である。ホットメルト法は、加熱により低粘度化した熱硬化性樹脂組成物を直接、強化繊維からなる布帛に含浸させる方法であり、半硬化状態の熱硬化性樹脂組成物を加熱加圧することにより、強化繊維からなる布帛に樹脂を含浸させる方法である。ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上皆無となるため好ましい。
なお、半硬化状態の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、例えば、カップリング剤、硬化促進剤、硬化剤、充填材等の公知の添加剤を配合したものを用いることができる。
本発明の繊維強化樹脂複合体成形用基材におけるアラミド繊維の占める割合(Vf)は、前記基材全体を100とした場合で10〜90体積%、好ましくは20〜80体積%、より好ましくは30〜70体積%である。前記基材全体に占める割合が、10体積%未満であると製品中にボイド(空隙)が生じ製品特性が悪化する恐れがあり、90体積%を超えると繊維による補強効果が十分に得られない恐れがある。
本発明の繊維強化樹脂複合体成形用基材の布目曲がり率は、JIS L1096に記載の方法で測定した布目曲がり率が5%以下であることが重要であり、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下である。布目曲がり率がこの範囲にあると、ランダムに積層した場合であっても成形後の品質ばらつきを抑えることができるため、工程・品質管理上有用である。
本発明の繊維強化樹脂複合体成形用基材を用いて繊維強化樹脂複合体を成形する場合、繊維強化樹脂複合体成形用基材は1枚、または複数枚が積層される。例えば、繊維強化樹脂複合体成形用基材が一定規則に従って積層されてもよいし、ランダムに配置されるように積層されてもよい。成形する方法に特に規定はなく、任意の成形方法(フィラメントワインディング、オートクレーブ、シートワインディング、プレス成形等)を採ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。また、以下の実施例等において、特に言及する場合を除き、「質量部」は「部」と略記する。なお、実施例中に記載の評価方法は以下の通りである。
[基材の布目曲がり率]
得られた繊維強化樹脂複合体成形用基材について、JIS L1096:2010 8.12に準じて測定を行った。測定は3ヵ所実施し、平均値を算出した。
[繊維体積率(Vf)]
得られた繊維強化樹脂複合体成形用基材について、使用したアラミド繊維布帛の目付(g/m)、単位面積当たりの重量、使用したアラミド繊維および熱硬化性樹脂の密度(g/cm)から、全体を100とした場合の繊維の占める体積比率を求めた。
[曲げ強度・曲げ弾性率 変動係数]
得られた繊維強化樹脂複合体成形体について、23℃、相対湿度50%環境下で1週間静置した後、JIS K7017に準じて、3点曲げ装置で曲げ強度および曲げ弾性率を10サンプル分測定し、10サンプルの物性値の変動係数(標準偏差/平均値)を算出した。
実験で使用したアラミド繊維布帛の詳細を表1に示す。
Figure 2021130798
(熱硬化性樹脂の調製)
三菱ケミカル社製jER828(ビスフェノールAグリシジルエーテル;エポキシ当量189g/eq)50質量%および三菱ケミカル社製jER1001(ビスフェノールAグリシジルエーテル;エポキシ当量475g/eq)50質量%とからなる主剤100部に対し、ジシアンジアミド5部、および3−(3、4−ジクロロフェニル)−1、1−ジメチル尿素5部を硬化剤として加えた後に均一に混合し、一液硬化エポキシ樹脂組成物を得た。得られた一液硬化エポキシ樹脂組成物の25℃における粘度は65,000Pa・sであり、80℃における粘度は18Pa・sであった。
(実施例1〜2、比較例1〜2)
表1のアラミド繊維布帛に、事前に調製したエポキシ樹脂を、ホットメルト法(ドライ法)にて含浸させ、繊維強化樹脂複合体成形用基材を得た。各水準の繊維体積率はすべて50体積%であった。得られた繊維強化樹脂複合体成形用基材を5枚、ランダムに積層しオートクレーブにて加圧・加熱(135℃×0.5MPa×2時間)を行い、繊維強化樹脂複合体を得た。各水準について、前記した測定方法で各種評価を行った結果を表2に示す。
Figure 2021130798
表2の結果から、比較例1および比較例2の繊維強化樹脂複合体成形用基材は、曲げ強度および曲げ弾性率の変動係数が大きく、繊維強化樹脂複合体の品質にばらつきが大きいことがわかる。一方、本発明の繊維強化樹脂複合体成形用基材(実施例1〜2)は、曲げ強度および曲げ弾性率の変動係数が小さく、成形時にランダムに積層した場合にもばらつきの少ない、高品質な繊維強化樹脂複合体を得られることがわかる。
本発明の繊維強化樹脂複合体成形用基材並びに繊維強化樹脂複合体は、管理が簡便でありながらその品質ばらつきが小さいことから、自動車、列車、航空機等の部品、カバン製品の部品やハウジング材、アタッシュケース、スーツケース等のカバンのボディ、インテリア剤、防護材、家具、楽器、家庭用品等、各種成形品に好適に利用することができる。

Claims (5)

  1. アラミド繊維からなる布帛と半硬化状態の熱硬化性樹脂とからなり、次の(1)と(2)の両方を満たすことを特徴とする繊維強化樹脂複合体成形用基材。
    (1)繊維強化樹脂複合体成形用基材の、JIS L1096 8.12に準じて測定した布目曲がり率が5%以下
    (2)繊維強化樹脂複合体成形用基材を用いて成形した繊維強化樹脂複合体の、JIS K7017に準じて3点曲げ装置で10回測定した曲げ強度から算出される変動係数が、0.05以下
  2. 前記アラミド繊維からなる布帛が、長繊維からなる一方向性織物または二方向性織物である、請求項1に記載の繊維強化樹脂複合体成形用基材。
  3. 前記二方向性織物を構成するタテ糸密度(本/インチ)とヨコ糸密度(本/インチ)が同一である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂複合体成形用基材。
  4. 前記アラミド繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である、請求項1〜3いずれかに記載の繊維強化樹脂複合体成形用基材。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の繊維強化樹脂複合体成形用基材を成形してなる繊維強化樹脂複合体。
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