JP2021123729A - 表面処理めっき鋼板およびそれに用いるめっき鋼板、ならびに表面処理めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

表面処理めっき鋼板およびそれに用いるめっき鋼板、ならびに表面処理めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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【課題】例えば成形加工時の化成処理皮膜の割れなどによって形成されるめっき層の露出部分における腐食を高度に抑制できる、表面処理めっき鋼板を提供すること。【解決手段】表面処理めっき鋼板は、鋼板と、前記鋼板上に配置され、亜鉛と、水酸化ジルコニウムまたはその水和物を含むジルコニウム化合物と、を含むめっき層と、前記めっき層上に配置され、可溶性リン酸化合物を含む化成処理皮膜とを有する。【選択図】図1

Description

本発明は、表面処理めっき鋼板およびそれに用いるめっき鋼板、ならびに表面処理めっき鋼板の製造方法に関する。
亜鉛系めっき鋼板は、自動車、電機機器、建築などの種々の用途に使用されている。亜鉛系めっき鋼板は、通常、溶融めっき法や電気めっき法で得られる。中でも、電気めっき法では、めっき液の温度を、溶融めっき法よりも低くすることができ、熱歪みによる鋼板の変形を生じにくい点、厚みが薄くても均一なめっき層を形成しやすい点などから、電気めっき法で亜鉛系めっき鋼板を得ることが望まれている。そして、上記用途に用いられる亜鉛系めっき鋼板には、耐食性や加工性などの向上が要求されている。
耐食性や加工性などを向上させるために添加される成分として、ジルコニウム(Zr)、および、水酸化ジルコニウムや酸化ジルコニウムなどのジルコニウム化合物(以下、Zr化合物ともいう)が知られている。
例えば、ジルコニウム源としてZrO粒子を、Al粒子やSiO粒子とともに分散させためっき液を用いて、電気Zn−Mnめっきを行う方法(分散めっき法)が知られている(例えば特許文献1参照)。それにより、これらの粒子が分散したZn−Mnめっき層が得られるとされている。
しかしながら、特許文献1に示されるような分散めっき法では、ZrO粒子は、密度が高く、水溶液中での分散に必要なイオン性や親水基を有しないため、沈降しやすい。そのため、所望のめっき層が得られないだけでなく、タンク内の低流速部での堆積、バルブの開閉の障害が発生するおそれがあった。
これに対し、電気めっき時にカソード(陰極)となる鋼板のめっき面での水素発生によりpHを上昇させ、そのpH上昇により、めっき液中に溶解しているZr4+などの金属イオンを水酸化物として析出させる方法が提案されている(例えば、特許文献2および3、非特許文献1を参照)。特許文献3および非特許文献1では、ジルコニウム源として硫酸ジルコニウム水和物(Zr(SO)・4HO)などの硫酸塩(可溶性金属塩)を添加しためっき液を用いて、めっき面近傍のpH上昇により、Zrを、ジルコニウムイオン(Zr4+)の状態から水酸化物として析出させることが記載されている。
このようにして得られるめっき鋼板には、通常、亜鉛の腐食による白錆の発生の防止や耐食性の向上の観点から、化成処理が施される。
化成処理は、通常、複数の無機化合物と有機化合物とを含む化成処理液を、めっき鋼板のめっき層上に、ロールコーターやスプレー、噴霧などで塗布するか、または化成処理液にめっき鋼板を浸せきして付与した後、乾燥させることによって行われる。
例えば、クロメート処理と呼ばれる化成処理は、クロム酸、硝酸などを水に溶解させた化成処理液に、亜鉛めっき鋼板を浸せきした後、乾燥させて、亜鉛めっき層上に、3価と6価のクロム酸化物の複合皮膜を形成することによって行われる。
一方で、6価クロムの規制により、クロメート処理に代わるものとして、例えばチタン系やジルコニウム系、バナジウム系、モリブデン系、シリカ系、リン酸塩系などの化合物を含む化成処理液による処理も行われている(例えば特許文献3および4参照)。例えば、亜鉛めっき鋼板の表面を、チタン系化合物、フッ素化合物、金属リン酸塩および有機酸を含む化成処理液を用いて化成処理した化成処理鋼板が知られている(例えば特許文献4参照)。
このような化成処理が施されためっき鋼板(表面処理めっき鋼板)は、通常、プレス加工や曲げ加工などの成形加工が施されて使用される。
特開平2−11799号公報 特開昭64−00298号公報 特開平1−272796号公報 特開2002−194558号公報
中野博昭ら、日本金属学会誌,80(2016),p.151-156
しかしながら、化成処理皮膜は、鋼板やめっき層と比べて、通常、ほとんど延性がないため、成形加工により割れやすい。具体的には、化成処理皮膜は、耐食性付与成分(Zr、Ti、W、Crなどの無機化合物)により延性がなくなっているため、有機樹脂を含むものであっても割れやすい。それにより、化成処理皮膜で覆われない欠陥部、すなわち、めっき層の露出部が形成されやすい。
また、成形加工を行う際、めっき鋼板の化成処理皮膜が、金型との摺動によって損傷し、化成処理皮膜の厚みの減少や、化成処理皮膜を貫通してめっき層に至る疵が生じることがある。また、成形条件によっては、めっき層の表層までが金型により剥ぎ取られるカジリが生じることもある。さらに、化成処理皮膜の形成条件によっては、ピンホールが生じることもある。これらの要因によっても、めっき層の露出部が発生しやすい。
このようなめっき層の露出部があると、その部分を起点として腐食が進みやすい。そのため、化成処理皮膜中に、鋼板に付着した水分(空気中の水蒸気や雨水など)に溶出可能な成分を含有させることで、めっき露出部の腐食を抑制することが検討されている。
例えば、特許文献4などでは、化成処理皮膜に、(チタンフッ化物とともに)可溶性の金属リン酸塩を含有させることで、めっきの露出部に存在する金属成分(亜鉛など)と、化成処理皮膜から溶出したリン酸系イオンとを反応させて、不溶性のリン酸塩を析出させること、それにより、自己修復作用を発現させることが示されている。しかしながら、これらの化成処理皮膜を、特許文献2や3、非特許文献1に示されるような方法で得られるめっき鋼板上に形成しても、めっき層の露出部の腐食を十分には抑制できなかった。
また、化成処理皮膜からの溶出成分が多いと、表面処理めっき鋼板をコイル状に巻き取った後、高湿下などで保管する際の、可溶成分が化成処理皮膜から溶出し、表面処理めっき鋼板の表面にシミ状の模様や変色が生じる原因となる。そのため、溶出成分の溶出量をできるだけ少なくすることが望まれている。そのため、溶出成分の溶出量が少なくても、めっき層の露出部の腐食を抑制できることが望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、例えば成形加工時の化成処理皮膜の割れなどによって形成されるめっき層の露出部における腐食を高度に抑制できる表面処理めっき鋼板およびそれに用いるめっき鋼板、ならびに表面処理めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の表面処理めっき鋼板およびそれに用いるめっき鋼板、ならびに表面処理めっき鋼板の製造方法に関する。
本発明の表面処理めっき鋼板は、鋼板と、前記鋼板上に配置され、亜鉛と、水酸化ジルコニウムまたはその水和物を含むジルコニウム化合物とを含むめっき層と、前記めっき層上に配置され、可溶性リン酸化合物を含む化成処理皮膜とを有する。
本発明のめっき鋼板は、鋼板と、前記鋼板上に配置され、亜鉛と、粒子状のジルコニウム化合物とを含むめっき層と、を有し、前記ジルコニウム化合物は、水酸化ジルコニウムまたはその水和物を含み、前記めっき層の断面を観察したときに、2×4μmの観察領域のうち70%以上の領域に前記粒子状のジルコニウム化合物が分散している。
本発明の表面処理めっき鋼板の製造方法は、亜鉛源と、塩基性炭酸ジルコニウムと、硫酸源と、水とを混合して、2以上のジルコニウム原子同士が水酸基を介して結合した重合体を含むコロイド粒子を含む第1めっき液を得る工程と、前記第1めっき液を用いて電気めっきを行うことにより、鋼板上にめっき層を形成する工程と、前記めっき層上に、可溶性リン酸化合物を含む化成処理皮膜を形成する工程とを有する。
本発明によれば、例えば成形加工時の化成処理皮膜の割れなどによって形成されるめっき層の露出部分における腐食を高度に抑制できる、表面処理めっき鋼板およびそれに用いるめっき鋼板、ならびに表面処理めっき鋼板の製造方法を提供することができる。
図1は、実施の形態1に係る表面処理めっき鋼板を示す断面図である。 図2AおよびBは、実施の形態1に係る表面処理めっき鋼板の防食作用を説明する断面図である。 図3は、実施の形態2に係る表面処理めっき鋼板を示す断面図である。
前述の通り、従来のめっき層を有する表面処理めっき鋼板と、可溶性リン酸化合物を含む化成処理皮膜とを組み合わせても、めっき層の露出部の腐食を十分には抑制できなかった。
これに対して本発明では、特定の方法で形成されためっき層を有するめっき鋼板と、可溶性リン酸化合物を含む化成処理皮膜とを組み合わせることで、めっき層の露出部の腐食を十分に抑制できることを見出した。この理由は明らかではないが、以下のように考えられる。
従来のように、ジルコニウム源として硫酸ジルコニウムなどの硫酸塩(可溶性金属塩)を用いためっき液を用いて得られる従来のめっき鋼板では、めっき層にジルコニウム化合物がほとんど含まれないか、または、(含まれていたとしても)均一に分散していない。そのため、めっき層の露出部に、化成処理皮膜からの溶出成分(リン酸系イオン)が水膜を介して供給されても、めっき層に含まれる亜鉛とは反応性が低いため、めっき層の露出部に溶出成分が留まるか、もしくは、水とともに流れ落ちるだけである。そのため、めっき層の露出部の表面に防食性の皮膜を十分には形成することができず、十分な防食効果が得られにくい。
これに対して、ジルコニウム源として塩基性炭酸ジルコニウムを用いためっき液を用いて得られる本発明のめっき鋼板では、めっき層に、亜鉛だけでなく、ジルコニウム化合物が含まれている(好ましくは均一に分散したジルコニウム化合物が含まれている)。ジルコニウム化合物は、亜鉛よりも化成処理皮膜からの溶出成分(リン酸系イオン)との反応性が高いため、めっき層の露出部に、化成処理皮膜からの溶出成分(リン酸系イオン)が水膜を介して供給されると、めっき層に含まれるジルコニウム化合物と、化成処理皮膜から溶出するリン酸系イオンとが反応して、防食性の皮膜を形成しやすい。その結果、化成処理皮膜からの溶出成分の溶出量を少なくしても、めっき層の露出部において十分な防食効果を得ることができる。以下、本発明の構成について説明する。
[実施の形態1]
1.表面処理めっき鋼板
図1は、本実施の形態に係る表面処理めっき鋼板の断面図である。
図1に示されるように、本実施の形態に係る表面処理めっき鋼板10は、鋼板11と、めっき層12と、化成処理皮膜13とを有する。
1−1.鋼板
鋼板の種類は、特に制限されないが、その例には、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)が含まれる。
鋼板の厚みは、用途に応じて適宜設定されうる。例えば、めっき鋼板が電気機器の材料として用いられる場合は、鋼板の厚みは、例えば0.2〜4.0mmであることが好ましく、軽量化の観点から、0.2〜2.0mmであることが好ましい。
1−2.めっき層
めっき層は、亜鉛と、ジルコニウム化合物とを含む。
ジルコニウム化合物は、少なくとも水酸化ジルコニウムまたはその水和物を含む。水酸化ジルコニウムまたはその水和物は、後述するように、化成処理皮膜から溶出するリン酸系イオンと反応し、リン酸系ジルコニウムを含む防食性の皮膜を形成しうる。
ジルコニウム化合物は、必要に応じて酸化ジルコニウムまたはその水和物をさらに含んでいてもよい。すなわち、めっき層に含まれる水酸化ジルコニウムの一部は、めっき後の乾燥時の温度上昇により、酸化ジルコニウムやその水和物に変化している可能性があるためである。
また、ジルコニウム化合物は、ハフニウム(Hf)を少量さらに含んでいてもよい。Hf濃度は、Hf/Zrのモル比で、通常、0.05以下でありうる。このように、ジルコニウム化合物にHfが含まれるのは、めっき液の原料にHfが含まれており、HfとZrとは化学的性質および電気化学的性質がほぼ同じであり、分離が難しいためである。
ジルコニウム化合物の形状は、特に制限されないが、粒子状であることが好ましい。また、粒子状のジルコニウム化合物は、めっき層中に均一に分散していることが好ましい。すなわち、めっき層は、亜鉛を主成分とする連続相と、(当該連続相に分散している)粒子状のジルコニウム化合物の分散相とを有することが好ましい。
このように、めっき層は、樹枝状組織(デンドライト)を実質的に有しないことが好ましい。樹枝状組織とは、鋼板の表面と繋がっており、かつめっき層の厚み方向に延びた組織であり、複数の枝別れ構造を有する。樹枝状組織を実質的に有しないとは、具体的には、めっき層の断面を透過電子顕微鏡により2×4μmの領域で観察したときに、観察領域全体に対する樹枝状組織の面積比が2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0%であることをいう。なお、本願において、めっき層の断面とは、めっき層の厚み方向に沿った断面をいう。
このように、ジルコニウム化合物が均一に分散しためっき層では、例えば成形加工により変形させた際に、ジルコニウム化合物以外の延性のある成分(亜鉛やその他金属)に変形が集中することによるめっき層の割れ(クラック)や剥離を抑制しうる。
粒子状のジルコニウム化合物の分布状態としては、具体的には、めっき層の断面を観察したときに、2×4μmの観察領域のうち70%以上、好ましくは80〜95%の領域に粒子状のジルコニウム化合物が分散している(存在している)ことが好ましい。上記比率は、存在比率ともいう。
また、粒子間の平均間隔は、めっき層のジルコニウムの含有量にもよるが、0.001〜1μmであることが好ましく、0.005〜0.5μmであることがより好ましい。このように、粒子間の平均間隔が1μm以下で、かつ均一に分散していると、めっき層の露出部に存在するジルコニウム化合物(具体的には水酸化ジルコニウムまたはその水和物)と、水膜を介して(化成処理皮膜から溶出した)リン酸系イオンとが反応して、めっき層の露出部の表面にリン酸系ジルコニウムが生成しやすく、防食性の皮膜が形成されやすい。
粒子状のジルコニウム化合物の平均粒子径は、特に制限されないが、成形加工時のめっき層の割れなどを抑制しやすくする観点では、小さいことが好ましい。具体的には、粒子状のジルコニウム化合物の平均粒子径は、例えば0.5〜500nmであることが好ましい。
粒子状のジルコニウム化合物の分布状態や平均間隔、平均粒子径は、めっき層の断面を電子顕微鏡(透過電子顕微鏡または走査電子顕微鏡)で観察することにより測定することができる。
例えば、分布状態(存在比率)については、めっき層の断面を電子顕微鏡により観察し、2×4μmの観察領域を32個の区画に分割したときに、粒子状のジルコニウム化合物が存在する区画数の、全区画数に対する割合を求める。この操作を、観察位置を変えて5箇所について行い、これらの平均値を「存在比率」とすることができる。ジルコニウム化合物の分布は、Zr特性X線像で確認することができる。
粒子状のジルコニウム化合物間の平均間隔については、上記観察領域において、任意の1つの粒子について最も近い位置にある粒子との距離を測定する操作を、任意の30個の粒子について繰り返し、それらの平均値として求めることができる。粒子状のジルコニウム化合物の平均粒子径については、めっき層の断面を電子顕微鏡により観察したときに、任意の30個のジルコニウム化合物の粒子径をそれぞれ測定し、それらの平均値を平均粒子径として求めることができる。粒子状のジルコニウム化合物の平均間隔や平均粒子径は、電子顕微鏡で確認することができる。
めっき層の、ジルコニウム化合物に由来するジルコニウム(ジルコニウム元素)の含有量は、特に制限されないが、化成処理皮膜からの溶出成分と、めっき層中のジルコニウム化合物との反応生成物であるリン酸系ジルコニウムの溶解度積は小さく、防食効果が持続しやすいことから、めっき層のジルコニウムの含有量は比較的少なくてもよい。具体的には、めっき層のジルコニウムの含有量は、めっき層に対して0.001〜2質量%であることが好ましい。具体的には、ジルコニウムの含有量が2質量%以下であると、めっき層が脆くなりにくいだけでなく、めっき層中にジルコニウム化合物を上記のような平均間隔で均一に分布させやすい。ジルコニウムの含有量が0.001質量%以上であると、めっき層の露出部に、化成処理皮膜からの溶出成分との反応による防食性の皮膜を形成しやすいため、耐食性を十分に高めやすく、めっき層の濃度管理も容易となる。めっき層のジルコニウムの含有量は、同様の観点から、0.005〜1.5質量%であることがより好ましい。
めっき層のジルコニウムの含有量は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)や一次線を電子線としたエネルギー分散型X線分光法、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により測定することができる。
めっき層は、上記以外の他の成分、例えば合金成分や導電助剤、塩基性炭酸ジルコニウムに由来する成分をさらに含んでもよい。そのような他の成分の例には、Al、Mg、Fe、Ni、Sn、Mn、Si、V、Cr、Ti、Na、BおよびWからなる群より選ばれる金属またはその化合物や;塩基性炭酸ジルコニウムに由来する不可避成分(炭素成分など)が含まれる。他の成分の合計含有量は、めっき層に対して好ましくは10質量%未満でありうる。
めっき層の付着量は、特に制限されないが、鋼板の表面全体を覆うことができる観点から、片面あたり0.5〜100g/mであることが好ましく、1〜60g/mであることがより好ましい。
1−3.化成処理皮膜
化成処理皮膜は、めっき層上に配置され、可溶性リン酸化合物を含む。
可溶性リン酸化合物とは、水に可溶なリン酸系塩である。水に可溶なリン酸系塩は、リン酸系イオンと、金属イオン、アンモニウムイオンまたは有機物との塩(化合物)である。
可溶性のリン酸系塩を構成するリン酸系イオンの例には、リン酸イオン(PO 3+)、リン酸水素イオン(HPO 2+)、リン酸二水素イオン(HPO )、ポリリン酸イオン(例えばピロリン酸イオン(P 4−)などの二リン酸イオン)、ポリリン酸水素イオン(例えばピロリン水素酸イオン(HP 3−)などの二リン酸水素イオン)、ポリリン酸二水素イオン(例えばピロリン酸二水素イオン(H 2−)などの二リン酸二水素イオン)が含まれる。有機分子とリン酸が結合した有機リン酸イオンもリン酸系イオンの例として挙げられる。
すなわち、可溶性のリン酸系塩の例には、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、ポリリン酸塩、ポリリン酸水素塩、ポリリン酸二水素塩、有機リン酸またはその塩が含まれる。リン酸塩の例には、リン酸カルシウムなどが含まれる。リン酸水素塩の例には、リン酸水素亜鉛、リン酸水素マンガン、リン酸水素マグネシウム、リン酸水素アルミニウム、リン酸水素アンモニウムなどが含まれる。リン酸二水素塩の例には、リン酸二水素亜鉛が含まれる。ポリリン酸塩の例には、二リン酸カリウム(ピロリン酸カリウム)、二リン酸水素カリウムなどの二リン酸塩(ピロリン酸塩)が含まれる。有機リン酸またはその塩の例には、エチドロン酸、ヒドロキシメタンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレン)トリス[ボスホン酸]およびそれらの塩が含まれる。中でも、めっき層に含まれるジルコニウム化合物との反応性が高く、防食性の皮膜を形成しやすい観点では、リン酸、リン酸カルシウム、リン酸二水素マンガン、リン酸水素マグネシウム、リン酸水素二アンモニウム、エチドロン酸が好ましい。
化成処理皮膜から溶出する(可溶性リン酸化合物に由来する)リン酸系イオンは、表面処理めっき鋼板を高湿下で保管した際の(化成処理皮膜からの溶出成分に起因する)シミや変色を抑制する観点では、少ないことが好ましい。具体的には、表面処理めっき鋼板を50℃の温水に2時間浸せきしたときのP溶出量は、0.1〜80mg/mであることが好ましく、0.1〜60mg/mであることがより好ましく、0.1〜30mg/mであることがさらに好ましい。
P溶出量は、表面処理めっき鋼板を、50℃の温水に2時間浸せきし、その前後のP付着量を測定し、その変化量からP溶出量を求めることができる。浸せき前後のP付着量は、蛍光X線分析装置で検量線法により測定することができる。
P溶出量は、化成処理皮膜における可溶性リン酸化合物の種類や、化成処理皮膜の形成時の化成処理液のpH、化成処理皮膜の乾燥温度、P付着量などによって調整することができる。例えば、P溶出量を少なくする観点では、乾燥温度は高いことが好ましく、P付着量は少ないことが好ましい。
化成処理皮膜は、必要に応じて上記以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分の例には、可溶性のリン酸系塩以外の他の無機化合物や有機樹脂が含まれる。
他の無機化合物の例には、皮膜の強化による防食性向上の観点から、Ti、V、Zr、Hf、Ta、Mo、WおよびNbからなる群より選ばれる金属またはその酸化物、水酸化物もしくはフッ化物(フッ化チタン酸塩、フッ化ジルコニウム酸塩、フッ化ハフニウム酸塩などのフルオロアシッド類)が含まれる。また、シリカなどの珪酸化合物も用いることができる。
有機樹脂の例には、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン(ポリエチレンなど)、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などが含まれる。また、化成処理皮膜の密着性を高める観点から、タンニン酸などの多価フェノール系の酸や、マロン酸、酒石酸などのカルボン酸が含まれていてもよい。
化成処理皮膜の付着量は、特に制限されないが、P付着量として1〜200mg/m、好ましくは5〜100mg/mとなるように設定されることが好ましい。P付着量は、前述と同様の方法で測定することができる。
1−4.作用
上記のように構成された表面処理めっき鋼板は、水酸化ジルコニウムまたはその水和物を含む粒子状のジルコニウム化合物が均一に分散しためっき層と、その上に配置された化成処理皮膜とを有する。それにより、成形加工時などにより形成されるめっき層の露出部を起点とした腐食を高度に抑制できる。
そのメカニズムは明らかではないが、以下のように推測される。図2AおよびBは、実施の形態1に係る表面処理めっき鋼板の防食作用を説明する断面図である。
表面処理めっき鋼板の表面(化成処理皮膜の表面)には、相対湿度が100%にならない場合でも、吸着や凝縮により薄い水膜が存在することがある。特に、相対湿度60%以上となると、化成処理皮膜の表面に、(腐食などの)反応に十分な水膜が表面にできることが知られている。また、大気の温度の変化に対して、部品や構造物となった鋼板の温度の変化が遅れるため、鋼板表面で相対湿度が100%を超え、結露する場合も多い。結露すると、表面に厚い水膜が形成される。
めっき層の露出部にこのような水膜が存在すると、化成処理皮膜から可溶性のリン酸系塩が溶出しやすい。可溶性のリン酸系塩は、成形加工などにより形成されるめっき層の露出部を覆うようになる。
このとき、従来の表面処理めっき鋼板では、めっき層に、水酸化ジルコニウムまたはその水和物を含むジルコニウム化合物がほとんど含まれないか、または均一に分散していない。そのため、めっき層の露出部に、水膜を介して化成処理皮膜から溶出したリン酸系イオンが供給されても、リン酸系イオンと反応はしないか、もしくは反応が遅い。そのため、めっき層の露出部は、防食性の皮膜で覆われないため、腐食を抑制することができない。
これに対して本発明の表面処理めっき鋼板10では、めっき層12中に、水酸化ジルコニウムまたはその水和物を含むジルコニウム化合物が含まれる(好ましくは均一に分散したジルコニウム化合物が含まれる)。めっき層12の露出部では、めっき層12中のジルコニウム化合物は水膜14への拡散や溶出はしない一方、めっき層12中の亜鉛は、水膜14に溶出しやすい。そのため、めっき層12の露出部に、当該ジルコニウム化合物が濃農化されて、高濃度で存在するため、水膜14を介して化成処理皮膜13から溶出するリン酸系イオン(PO 3−やHPO 2−、HPO など)と常温でも反応しやすく(図2A参照)、リン酸系ジルコニウムを含む防食性の皮膜15を形成しやすい(図2B参照)。
例えば、めっき層に含まれる水酸化ジルコニウム(Zr(OH))と、化成処理皮膜から溶出するリン酸水素亜鉛(ZnHPO)(可溶性のリン酸系塩)とは、以下の反応により、リン酸水素ジルコニウムを生成する。
Zr(OH)+2ZnHPO→Zr(HPO+2Zn(OH)・・(1)
また、めっき層に含まれる水酸化ジルコニウムと、化成処理皮膜から溶出するリン酸カルシウム(Ca(PO)(可溶性のリン酸系塩)とは、以下の反応により、リン酸ジルコニウムを生成する。
3Zr(OH)+2Ca(PO→Zr(PO+6Ca(OH)・・(2)
生成するリン酸系ジルコニウムは、安定かつ強固であり、酸性域でも溶解しない。また、リン酸系ジルコニウムの溶解度積(例えばZr(PO4では1×10−132)は、水酸化亜鉛(Zn(OH))の溶解度積(3×10−17)などと比べても、非常に小さい。このように、リン酸系ジルコニウムは溶解度積が非常に小さいため、多量に水が存在しても溶出しにくく、良好な防食作用が得られやすい。
なお、リン酸系ジルコニウムとは、リン酸(PO)、リン酸一水素(HPO)、リン酸二水素(HPO)、ポリリン酸、ポリリン酸水素またはポリリン酸二水素、有機リン酸と、ジルコニウムとの化合物であり、そこにさらに水酸基、酸素、他の金属、有機物が結合していてもよい。リン酸系ジルコニウムは、リン酸系ジルコニウムとリン酸系ジルコニウム水和物の両方をいう。
また、上記(1)および(2)の反応では、副生成物として、水酸化亜鉛、水酸化カルシウムが生成する。これらも難溶性であり、防食作用を有する。また、空気中の二酸化炭素と反応し、炭酸化物を生成すると、それらはさらに難溶性となり、防食作用をさらに高めうる。
このように、本実施の形態では、めっき層の露出部に存在する水酸化ジルコニウムは、極少量のリン酸系塩とでも反応し、防食性の皮膜を形成しうる。このように、化成処理皮膜の可溶性リン酸化合物の含有量が少なくても、高い防食効果が得られるため、可溶性リン酸系塩が、長い結露時間や雨により流出してその量が少なくなった場合でも、防食効果を持続させることができる。また、溶出速度が低い可溶リン酸系塩を用いることもできるため、防食効果の持続性を高めることもできる。また、可溶性リン酸系塩の含有量を少なくできるため、例えば表面処理めっき鋼板を巻き取った状態で、高湿下で保管する際にも、溶出した可溶性リン酸系塩によるシミや変色を生じにくくしうる。
2.表面処理めっき鋼板の製造方法
本実施の形態に係る表面処理めっき鋼板は、上記のように粒子状のジルコニウム化合物が均一に分散しためっき層を有するめっき鋼板を得る工程と、当該めっき鋼板のめっき層上に、化成処理皮膜を形成する工程とを経て得ることができる。
ジルコニウム化合物を含有するめっき層を形成する方法としては、前述の通り、ジルコニウム源として硫酸ジルコニウム塩(硫酸ジルコニウム、水和硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム)または硝酸ジルコニウム塩(オキシ硝酸ジルコニウム)を用いためっき液を用いてめっきを行い、めっき面の水素発生によるpH上昇を利用して、ジルコニウム化合物を亜鉛とともに析出させる方法が知られている(非特許文献1および特許文献3参照)。
しかしながら、この方法では、めっき層に十分な量のジルコニウム化合物を含有させることができない。また、電気めっき時の電流効率が低くなりやすい。これは、電気めっきするpH域であるpH0.5以上では、硫酸ジルコニウム塩または硝酸ジルコニウム塩は、めっき液では、主にオキシ硫酸ジルコニウムまたはオキシ硝酸ジルコニウムとして存在し、それらが亜鉛の析出を抑制し、水素発生を増加させるためであると推定される。それにより、めっき時間が長くなり、鋼板の連続めっきでは設備が大型化するだけでなく、所定の厚みのめっき層を形成するのに多くの電気量が必要となり、生産コストを上昇させる。
本発明では、ジルコニウム源として塩基性炭酸ジルコニウムを水に溶解させて得られるめっき液を用いて、電気めっきを行うことで、粒子状のジルコニウム化合物が均一に分散しためっき層を有するめっき鋼板を得ることができる。また、電流効率も高めることができる。
すなわち、本実施の形態に係る表面処理めっき鋼板の製造方法は、1)亜鉛源と、塩基性炭酸ジルコニウムと、硫酸源と、水とを混合して、所定のコロイド粒子を含むめっき液(第1めっき液)を得る工程と、2)得られためっき液を用いて電気めっきを行うことにより、鋼板上にめっき層を有するめっき鋼板を得る工程と、3)得られためっき鋼板上に、可溶性リン酸化合物を含む化成処理皮膜を形成する工程とを含む。
1)の工程(めっき液を得る工程)について
本工程は、亜鉛源と、塩基性炭酸ジルコニウムと、硫酸源と、水とを混合する工程を少なくとも含み、当該めっき液をエージングする工程をさらに含むことが好ましい。
混合工程について:
(亜鉛源)
亜鉛源は、めっき層の主成分となる亜鉛(金属亜鉛(Zn))または亜鉛化合物である。亜鉛化合物の例には、硫酸亜鉛(ZnSO・7HO、ZnSO、またはZnSO・nHO(n=1〜6))、酸化亜鉛(ZnO)、塩基性炭酸亜鉛(2ZnCO・3Zn(OH)・H0)、水酸化亜鉛(Zn(OH))、塩化亜鉛((ZnCl)、硝酸亜鉛(Zn(NOまたはZn(NO・6HO)が含まれる。中でも、硫酸源と兼用できるだけでなく、後述するモル比SO/Zrを所定の範囲に調整しやすく、塩基性炭酸ジルコニウムに由来するコロイド粒子を生成しやすくする観点から、亜鉛源は、硫酸亜鉛(ZnSO・7HO、ZnSO、またはZnSO・nHO(n=1〜6))を含むことが好ましい。
亜鉛源は、一種類であってもよいし、二種類以上であってもよい。例えば、硫酸亜鉛七水和物(ZnSO・7HO)に加えて、めっき層の表面粗度をさらに小さくする観点などから、亜鉛源は、少量の塩化亜鉛(ZnCl)や硝酸亜鉛(Zn(NO)をさらに含んでもよい。
(塩基性炭酸ジルコニウム)
塩基性炭酸ジルコニウムは、Zr原子にOHとCOとが配位した化合物、具体的には、2以上のZr原子が、配位したOHを介して結合した重合体(Zr−OH結合体)であって、当該重合体を構成するZr原子にCOやOHがさらに配位したものでありうる。塩基性炭酸ジルコニウムは、水和物であってもよい。
具体的には、塩基性炭酸ジルコニウムは、下記式(1)で表される組成を有しうる。
式(1):Zr(OH)(CO・zH
式(1)において、0<x≦6、0.1≦y≦4、0≦z≦10である。なお、x、yおよびzは、それぞれ小数であってもよいし、整数であってもよい。また、塩基性炭酸ジルコニウムは、ハフニウム(Hf)を少量さらに含んでいてもよい。
なお、塩基性炭酸ジルコニウムには、アンモニウム(NH)は配位していないこと、すなわち、炭酸ジルコニウムアンモニウムではないことが好ましい。アンモニウムが配位していると、ジルコニウム化合物が析出するpH域が過剰に高くなるため、めっき面で水素発生によりpHを上昇させても、ジルコニウム化合物が析出しにくくなるからである。
(硫酸源)
硫酸源は、水に添加すると、硫酸イオン(SO 2−)または硫酸水素イオン(HSO 2−)(以下、これらをまとめて「硫酸イオン」という)を生成する化合物である。硫酸源の例には、硫酸、硫酸塩(硫酸亜鉛、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸錫、硫酸鉄、硫酸バナジウムなど)が含まれる。これらの硫酸塩は、亜鉛源または導電助剤と兼用されうる。
硫酸源は、亜鉛源や導電助剤とは別に添加されてもよいし、亜鉛源や導電助剤を兼ねて添加されてもよい。中でも、pHを後述する範囲に調整しやすくする観点では、硫酸源は、硫酸を含むことが好ましい。
(他の成分)
また、必要に応じて、上記以外の他の成分をさらに添加してもよい。他の成分の例には、亜鉛と合金化する合金成分や、導電助剤が含まれる。
合金成分の例には、Mnまたはその化合物、Coまたはその化合物、Snまたはその化合物、Feまたはその化合物が含まれる。なお、耐食性の観点では、Niまたはその化合物を実質的に含まない(例えばめっき液中で0.01mol/L以下)ことが好ましい。
導電助剤は、電気めっき時の電圧を下げ、電気めっき電源設備の低コスト化、めっき電力を低減する観点で、添加されうる。導電助剤の種類は、特に制限されないが、その例には、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムが含まれる。中でも、硫酸源と兼用できる観点などから、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウムなどの硫酸塩が好ましい。
(混合)
そして、これらの亜鉛源、塩基性炭酸ジルコニウム、硫酸源、水および必要に応じて他の成分を混合する。それにより、2以上のジルコニウム原子同士が水酸基を介して結合した重合体を含むコロイド粒子(塩基性炭酸ジルコニウムに由来するコロイド粒子)を含むめっき液を得る。
硫酸イオンが存在する水溶液に塩基性炭酸ジルコニウムを添加すると、塩基性炭酸ジルコニウムのZr原子に配位しているCOは、硫酸イオンが存在する水溶液中、好ましくは硫酸イオンが存在するpH3.0以下の水溶液中では不安定になり、当該塩基性炭酸ジルコニウムから脱離して二酸化炭素ガスとして、系外へ排出される。
すなわち、塩基性炭酸ジルコニウムから、不安定化したCOが脱離する。そして、脱離したCOに代わって水溶液中の硫酸イオンがZr原子に配位(共有結合)するか、または、COの脱離によりイオン化した重合体(Zr−OH重合体)に静電気的に硫酸イオンが付加(イオン結合)するか、または、その両方により、重合体(Zr−OH重合体)である微小なコロイド粒子が安定化すると考えられる。このように、OHを介して2以上のZr原子が結合した重合体が、硫酸イオンによって安定化されたものを、水酸化硫酸Zrコロイド粒子(以下、単に「コロイド粒子」という)という。すなわち、コロイド粒子を構成する重合体は、水に添加する前の塩基性炭酸ジルコニウムを構成する重合体(2以上のZr原子が、配位したOHを介して結合した重合体)の構造を維持していると考えられる。
コロイド粒子を構成するZr−OH重合体が2量体である場合、例えば以下のような構造を有すると考えられる。
Figure 2021123729
このようにして生成したコロイド粒子は正に帯電するため、静電的な反発によりめっき液中で良好に分散しうる。また、正に帯電したコロイド粒子は、電気めっき中は、カソード(陰極)でマイナス電位になる鋼板のめっき面に吸着される。このとき、鋼板のめっき面近傍のめっき液のpHが水素発生により上昇していると、コロイド粒子の表面電荷が奪われるとともに硫酸イオンが脱離し、コロイド粒子を構成するZrがめっき層中に取り込まれる。コロイド粒子を構成するZrは、めっき層中に取り込まれる際に水素(H)が脱離すると、酸化Zrとしてめっき層中に取り込まれる。水素が脱離しない場合は水酸化Zrとしてめっき層に取り込まれる。これらにより、ジルコニウム化合物(水酸化ジルコニウムや酸化ジルコニウム)またはその水和物が、めっき層中に取り込まれるようになる。
そして、塩基性炭酸ジルコニウムのZr原子から脱離したCOは、COガスとして系外に排出されるとともに、塩基性炭酸ジルコニウムのZr原子に配位していたOHやHOは、ジルコニウム化合物の構成元素(OHもしくはO)としてめっき層に取り込まれる。したがって、めっき液中に不要な成分が蓄積しにくいため、めっき液の組成の変化を少なくすることができ、めっき液の組成が安定する。
得られるめっき液の組成は、以下を満たすことが好ましい。
すなわち、めっき液の亜鉛(Zn)濃度は、0.3〜1.9mol/Lであることが好ましい。Zn濃度が0.3mol/L以上であると、電気めっきする際に、十分な量のZnイオンをめっき面に供給しやすいため、電気めっきを安定して継続しうる。Zn濃度が1.9mol/L以下であると、めっき液を常温(25℃程度)で保管する場合に、亜鉛源の析出を抑制しやすい。めっき液のZn濃度は、同様の観点から、0.5〜1.6mol/Lであることが好ましい。
めっき液のジルコニウム(Zr)濃度は、0.02〜1.6mol/Lであることが好ましい。めっき液のZr濃度が0.02mol/L以上であると、コロイド粒子の平均粒子径を適度に大きくしやすく、得られるめっき層中に十分な量のZrを含有させやすい。めっき液中のZr濃度が1.6mol/L以下であると、めっき液のゲル化を避けることができるだけでなく、粒子の平均粒子径が大きくなりすぎないため、沈殿を生じにくくしうる。また、めっき液のSO/Zrのモル比を後述する範囲に調整しやすい。めっき液のZr濃度は、同様の観点から、0.1〜1.2mol/Lであることがより好ましい。
めっき液のZn濃度またはZr濃度は、イオン、非イオンに関係なく、添加した亜鉛源または塩基性炭酸ジルコニウムの量に対応するZnまたはZrの体積当たりのモル数である。めっき液中のZn濃度またはZr濃度は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)により測定することができる。
硫酸源は、めっき液のpHが所定の範囲内になるように添加される。すなわち、めっき液のpHは、生成するコロイド粒子が安定に分散状態で存在しうるとともに、鋼板やめっき層の溶出を抑制しうる範囲であればよい。例えば、めっき液のpHは、3.0以下、好ましくは0.1〜3.0である。めっき液のpHが0.1以上であると、鋼板からのFeの溶出を一層少なくしうるため、耐食性がより高いめっき層が得られやすい。pHが3.0以下であると、塩基性炭酸ジルコニウムを水へ溶解させやすく、コロイド粒子を生成させやすい。また、生成するコロイド粒子が凝集または沈降しにくく、めっき液中に安定に分散させやすい。めっき液のpHは、同様の観点から、0.5〜2.8であることがより好ましい。
めっき液のpHは、ガラス電極と比較電極を一体化した複合電極、または、さらに温度補償電極も一体化した複合電極で測定することができる。
めっき液のpHは、例えば硫酸源の添加量や、硫酸イオンを含む亜鉛源の添加量で調整することができる。
コロイド粒子を安定的にめっき液中に分散させるためには、めっき液のSOとZrのモル比(SO/Zr)が1.5以上となるようにすることが好ましい。SO/Zrが1.5以上であると、コロイド粒子の平均粒子径が過剰に大きくならないため、めっき液中で沈殿または沈降しにくく、めっきに寄与しないコロイド粒子の割合を少なくすることができる。SO/Zrは、同様の理由から、2.0以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましい。なお、SO/Zrの上限値は、例えば200としうる。
なお、SO/ZrにおけるSOは、イオン、非イオンに関係なく、めっき液中にSOとして存在するもの全てが含まれる。したがって、SO/ZrにおけるSOには、硫酸イオン(SO 2−)だけでなく、硫酸水素イオンHSO 2−や、解離していない硫酸亜鉛(ZnSO)などの硫酸塩中のSOも含まれる。
めっき液のSO/Zrは、めっき液のSO濃度とZr濃度から算出することができる。めっき液中のSO濃度は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)により測定することができる。
SO/Zrは、硫酸源の添加量や塩基性炭酸ジルコニウムの添加量によって調整することができる。
また、上記成分に加えて、導電助剤をさらに混合する場合、めっき液中の導電助剤の含有量は、その種類にもよるが、例えば硫酸塩を用いる場合、硫酸濃度で2.9mol/L以下であることが好ましい。硫酸濃度が2.9mol/L以下であると、常温(25℃程度)で保管しても、導電助剤が析出しにくく、めっき液を安定にしうる。硫酸濃度は、イオン、非イオンに関係なく、添加した硫酸塩に対応する硫酸の体積当たりのモル数であり、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)により硫酸塩のカチオンの濃度(硫酸ナトリウムであればナトリウムの濃度)を測定し、硫酸塩の化学式によりアニオンとなる硫酸の濃度を求めることができる。
このように、本工程では、コロイド粒子が良好に分散した水溶液(めっき液)を得ることができる。めっき液中のコロイド粒子をより安定に分散させ、めっき層中にZr成分をより安定に含有させる観点では、エージング工程をさらに行うことが好ましい。
エージング工程について:
得られためっき液を、さらにエージングさせる。
エージングは、上記混合工程で生成したコロイド粒子の粒径が、適度に小さくなるように行うことが好ましい。具体的には、コロイド粒子は、配位したOHを介して2以上のZr原子が結合した重合体で構成されるが、時間の経過とともに当該重合体のジルコニウム原子間のOHが脱離してSOと置換して、低分子量化する。その結果、生成直後よりもコロイド粒子が小粒径化するため、より高分散したコロイド粒子を含むめっき液を得ることができる。
エージング後のめっき液中のコロイド粒子の平均粒子径は、めっき液中でより安定に分散させることができ、かつめっき層に安定にZr成分を含有させうる程度であればよく、特に制限されない。そのような観点から、動的光散乱法で測定されるコロイド粒子のキュムラント平均粒子径は、例えば0.5〜500nmであることが好ましい。コロイド粒子のキュムラント平均粒子径が0.5nm以上であると、コロイド粒子がめっき層に取り込まれやすく、500nm以下であると、めっき液を流動させなくても、コロイド粒子が沈殿しにくい。コロイド粒子のキュムラント平均粒子径は、同様の観点から、0.7〜350nmであることがより好ましい。
コロイド粒子のキュムラント平均粒子径は、JIS Z 8828:2019(ISO 22412:2017)に準拠する動的光散乱法により25℃においてキュムラント平均粒子径として測定することができる。なお、JIS Z 8828:2019は、ISO22412:2017に対応する。
コロイド粒子の平均粒子径は、混合工程における塩基性炭酸ジルコニウムの添加量や、エージング工程におけるエージング条件(温度、時間)により調整することができる。コロイド粒子の平均粒子径を小さくするためには、例えば混合工程における塩基性炭酸ジルコニウムの添加量を少なくしたり、エージング工程におけるエージング温度を高くしたり、エージング時間を長くしたりすることが好ましい。
エージングは、室温下で行ってもよいし、加温下で行ってもよい。短時間でコロイド粒子を所望の平均粒子径とする観点では、エージングは、加温下で行うことが好ましい。
具体的には、エージング条件(温度および時間)は、生成したコロイド粒子の平均粒子径が所定の範囲内となるように設定されればよく、特に制限されない。エージング温度は、例えば40〜100℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。また、エージング時間は、例えば40℃でエージングを行う場合は、10〜200時間とし、50〜70℃でエージングを行う場合は0.3〜20時間としうる。
2)の工程(めっき鋼板を得る工程)について
次いで、得られためっき液を用いて電気めっきを行い、めっき層を有するめっき鋼板を得る。
アノードとしては、例えば酸化イリジウムをコーティングしたチタン電極が用いられる。
電気めっきは、鋼板(カソード)を固定して行ってもよいし(バッチ式)、鋼板(カソード)を搬送しながら行ってもよい(連続式)。また、電気めっきは、鋼板(カソード)とアノードとの間にめっき液を連続的に供給しながら行ってもよいし、供給せずに行ってもよい。さらに、電気めっきのセル構造は、横型(水平型)であってもよいし、縦型であってもよいし、ラジアル型であってもよい。
電気めっきは、めっき液を流動させることなく行ってもよいし、流動させながら行ってもよい。特にバッチ方式で電気めっきを行う場合、消費されるZnイオン、コロイド粒子、その他成分を鋼板のめっき面近傍に連続的に供給しやすくする観点では、めっき液を流動させることが好ましい。
具体的には、めっき液の鋼板に対する流速(相対速度)は、0.1〜10m/sであることが好ましい。めっき液の相対速度が10m/s以下であると、めっき面近傍への水素イオンの供給速度が過剰になりにくいため、めっき面近傍のめっき液のpHを下げにくく、ジルコニウム化合物の析出が阻害されにくい。また、相対流速が0.1m/s以上であると、めっき成分などをめっき面に安定に供給しうる。なお、鋼板とアノードとの間にめっき液が供給されるようなめっき装置では、電気めっき時に消費されるZn、コロイド粒子、その他成分はめっき面に連続的に供給されるため、めっき液と鋼板の相対速度はゼロでもよい。
めっき液の温度は、鋼板のめっき面にめっき層を安定に形成できる温度であればよく、特に制限されないが、20〜80℃であることが好ましい。めっき液の温度が20℃以上であると、Znイオンやコロイド粒子などのめっき成分のめっき面への拡散が低下しにくく、これらが十分に供給されやすいため、電気めっきを安定に継続しやすい。めっき液の温度が80℃以下であると、めっき液からの水の蒸発が過剰になりにくいため、めっき成分の濃化によるめっき液の組成変化が生じにくく、めっきの品質が安定しやすい。めっき液の温度は、同様の理由から、40〜70℃であることがより好ましい。
電流密度は、特に制限されないが、電気めっき時の鋼板のめっき面のpHをZnと同時にジルコニウム化合物を析出させやすくする観点、すなわち、水素発生によりめっき面のpHを上昇させやすくする観点では、10A/dm以上であることが好ましい。電流密度が10A/dm以上であると、鋼板のめっき面での水素の発生量が十分に増えるため、実質的にめっき面の直上でpHが適度に上昇しやすい。電流密度の上限は、pH上昇が大きくなりすぎることによる水酸化Znの発生、めっき層中への水酸化Znの混入、およびそれによる外観悪化を抑制する観点から、例えば500A/dm以下としうる。
このようなめっき液を用いた電気めっきでは、めっき液に含まれる微小なコロイド粒子が鋼板の表面に付着し、その後、亜鉛(Zn)の析出とともにさらに微細になり、めっき層にジルコニウム化合物として取り込まれる。それにより、粒子状のジルコニウム化合物が均一に分散しためっき層を形成することができる。
それにより、従来のめっき液(硫酸ジルコニウム塩や硝酸ジルコニウム塩を含むめっき液)のように、オキシ硫酸ジルコニウムやオキシ硝酸ジルコニウムが存在しないか、(存在したとしても)極少量であるため、亜鉛などのめっき金属の析出を抑制することもなく、電流効率も高くすることができる。
なお、電流効率(%)とは、「金属イオンから金属となった実際の析出量」/「めっき時の電気量の全てが金属イオンから金属析出のみに消費されると仮定した場合の析出量」×100を意味する。めっき液に電気めっきされるZn2+以外の金属イオンが含まれる場合には、析出量は、Znとそれらの金属の析出量の合計となる。
3)の工程(化成処理皮膜の形成工程)について
そして、得られためっき鋼板のめっき層の表面に、可溶性リン酸化合物を含む溶液(化成処理液)を付与した後、乾燥させて、化成処理皮膜を形成する。
化成処理液は、前述の通り、可溶性リン酸化合物を含む溶液である。溶液は、水溶液であってもよいし、有機溶媒の溶液であってもよく、水と有機溶媒の混合溶液であってもよい。
化成処理液は、必要に応じて可溶性リン酸化合物以外の他の成分(前述の他の無機化合物や有機樹脂、酸成分など)をさらに含んでもよい。化成処理液の組成は、固形分の組成が前述の組成となるように調整される。
化成処理液のP濃度は、特に制限されないが、化成処理皮膜のP溶出量を少なくする観点では、例えば0.01〜1mol/Lとしうる。
化成処理液のpHは、特に制限されないが、P溶出量を少なくする観点では低いことが好ましい。例えば、化成処理液のpHは、1〜9であることが好ましく、2〜8であることがより好ましい。化成処理液のpHは、前述と同様の方法で、25℃で測定することができる。
化成処理液の塗布は、ロールコート、スプレーコート、ダイコート、カーテンコート、噴霧、浸せき、インクジェットコートなどにより行われる。
塗布した化成処理液の乾燥は、加熱または自然乾燥により行うことができる。中でも、短時間で乾燥でき、P溶出量などを調整しやすい観点では、乾燥は、加熱により行うことが好ましい。加熱は、対流加熱(温・熱風加熱)、誘導加熱、輻射加熱、バーナー加熱、通電加熱、赤外線加熱などにより行われる。
加熱温度は、特に制限されないが、例えば50〜200℃としうる。化成処理液の乾燥温度を適度に低くすることで、化成処理皮膜の形成過程で、可溶性リン酸化合物が、めっき層中のジルコニウム化合物と反応してめっき層の表面に固定される割合を少なくできるため、P溶出量が極端に減るのを抑制しうる。
[実施の形態2]
1.表面処理めっき鋼板
図3は、本実施の形態に係る表面処理めっき鋼板10の断面図である。
図3に示されるように、本実施の形態に係る表面処理めっき鋼板10は、めっき層12上に配置された、水酸化ジルコニウムまたはその水和物を含むジルコニウム化合物と亜鉛とを含む粒子(以下、単にジルコニウム化合物含有粒子16という)をさらに有する以外は、実施の形態1に係る表面処理めっき鋼板10と同様に構成されうる。
(ジルコニウム化合物含有粒子)
ジルコニウム化合物含有粒子は、めっき層と化成処理皮膜との間に配置されている(好ましくはめっき層の表面に固着している)。ジルコニウム化合物含有粒子は、ジルコニウム化合物を高濃度で含む。
ジルコニウム化合物含有粒子のジルコニウムの含有量は、めっき層のジルコニウムの含有量よりも多い。具体的には、ジルコニウム化合物含有粒子のジルコニウムの含有量は、10〜75質量%であることが好ましい。ジルコニウム含有量が10質量%以上であると、めっき層の露出部の耐食性を高めやすい。一方、ジルコニウム含有量が75質量%以下であると、反応性の低い酸化ジルコニウムの含有比率の増加によって、反応性の高い水酸化ジルコニウムの反応が損なわれにくいため、耐食性付与効果も損なわれにくい。ジルコニウム化合物含有粒子のジルコニウムの含有量は、同様の観点から、15〜65質量%であることがより好ましく、20〜65質量%であることがさらに好ましい。
ジルコニウム化合物含有粒子のジルコニウムの含有量は、一次線を収束した電子線としたエネルギー分散型X線分光法により測定することができる。
ジルコニウム化合物含有粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、めっき層の厚みより小さいことが好ましい。具体的には、ジルコニウム化合物含有粒子の平均粒子径は、0.1〜10μmであることが好ましい。
ジルコニウム化合物含有粒子の平均粒子径は、めっき層の断面を電子顕微鏡により観察したときに、任意の30個のジルコニウム化合物含有粒子の粒子径をそれぞれ測定し、それらの平均値を平均粒子径として求めることができる。
ジルコニウム化合物含有粒子は、めっき層の表面に点在または分散されていること、すなわち、当該粒子間が繋がって1つの層を形成していないことが好ましい。ジルコニウム化合物含有粒子で形成される層は延性がないため、成形加工時に、めっき層が変形しても、ジルコニウム化合物含有粒子の層は変形しにくいため、ジルコニウム化合物含有粒子の層にクラックが入りやすい。それにより、化成処理されていない、めっき層の露出部が過剰に形成されるおそれがあるからである。
具体的には、ジルコニウム化合物含有粒子の付着量は、特に制限されないが、例えば0.01〜3g/mであることが好ましい。ジルコニウム化合物含有粒子の付着量が一定以上であると、十分な耐食性が得られやすく、一定以下であると、めっき鋼板または表面処理めっき鋼板を成形加工した際に、めっき層のクラックを抑制しやすい。ジルコニウム化合物含有粒子の付着量は、同様の観点から、0.05〜2g/mであることがより好ましい。
ジルコニウム化合物含有粒子の付着量は、走査電子顕微鏡による表面と断面の2000〜5000倍の観察によりジルコニウム化合物粒子の観察範囲の総体積を求め、ジルコニウム化合物粒子の密度を3000kg/m(3g/cm)として求めることができる。
2.表面処理めっき鋼板の製造方法
このような表面処理めっき鋼板は、上記2)の工程と3)の工程との間に、以下の4)工程を行う以外は実施の形態1と同様にして得ることができる。
4)の工程(ジルコニウム化合物含有粒子の形成工程)
上記2)の工程で得られためっき鋼板のめっき層上に、ジルコニウム化合物含有粒子を形成する。
ジルコニウム化合物含有粒子の形成方法は、特に制限されないが、電気めっき終了後のめっき鋼板を、前述のコロイド粒子を含むめっき液(第2めっき液)の液膜と接触させる方法により行うことができる。
接触させるめっき液(第2めっき液)は、少なくとも上記コロイド粒子を含む水溶液であればよく、その組成は、電気めっきに使用しためっき液(第1めっき液)と同じであってもよいし、異なってもよい。例えば、接触させるめっき液(第2めっき液)は、電気めっきに使用しためっき液(第1めっき液)よりもpHが高いめっき液であってもよい。あるいは、電気めっきに使用しためっき液(第1めっき液)を接触させた後、アルカリを添加してpHを高くしてもよい。
めっき液(第2めっき液)との接触は、電気めっき終了後の鋼板のめっき層の表面に、電気めっきに使用しためっき液(第1めっき液)の液膜を残存させて行ってもよいし、当該めっき液(第1めっき液)とは別に準備しためっき液(第2めっき液)を塗布または噴霧して行ってもよい。
このとき、めっき液の液膜は、めっき層の表面に薄く付着する状態であることが好ましい。それにより、めっき層の極表層から亜鉛が溶解して、めっき液の液膜のpHが上昇し、ジルコニウム化合物が析出しやすい状態となる。したがって、めっき層の表面に付着させるめっき液(第2めっき液)の液膜の厚み(付着量)は、亜鉛の溶出によりpHが上昇するような厚みであればよく、500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
めっき液との接触時間は、めっき層やめっき液の組成にもよるが、例えば0.05〜5秒であってよく、好ましくは0.1〜4秒である。接触時間が一定以上であると、めっき液のpHが十分に上昇しやすいため、析出しやすく、一定以下であると、めっき層の溶解が進むことによる外観不良を一層抑制しうる。
そして、めっき液と接触させためっき鋼板を、水洗または湯洗により洗浄した後、乾燥させる。
水洗または湯洗した瞬間または初期にめっき表面のpHが急上昇して、ジルコニウム化合物粒子が析出する。なお、水洗や湯洗は、析出した粒子が流されにくくする観点では、浸漬により行うことが好ましい。
このように、めっき鋼板のめっき層をめっき液と接触させることで、めっき層から亜鉛が溶出し、それに伴い水素イオンが消費される。そのため、めっき層と接触しているめっき液(第2めっき液)のpHが上昇する。亜鉛が溶出する場合は、以下のような反応が進む。
Zn+2H→Zn2++H
めっき液のpHは、めっき層との接触界面で上昇しやすい。特に、付着しためっき液の液膜の厚みが薄い場合は、そのpHが高くなりやすい。そして、pH上昇が大きい場合は、めっき層との界面で、めっき液に分散しているコロイド粒子からジルコニウム化合物の一部がめっき表面に析出する。そして、水洗または湯洗した瞬間に、pHが急上昇し、ジルコニウム化合物が析出する。これらにより、ジルコニウム化合物含有粒子が固着する。
3)の工程(化成処理皮膜の形成工程)
そして、ジルコニウム化合物含有粒子が固着しためっき層上に、化成処理液を付与した後、乾燥させて、化成処理皮膜を形成する。このような化成処理液の塗布(付着)時、および乾燥時に、ジルコニウム化合物含有粒子中のジルコニウム化合物(水酸化ジルコニウムまたはその水和物)は、化成処理液から溶出したリン酸系イオンと反応し、表面にリン酸系ジルコニウムが生成する。それにより、単に化成処理皮膜が被覆されている場合に比べて耐食性がさらに高まる。
3.作用
本実施の形態では、実施の形態1における効果に加えて、以下の効果が得られる。すなわち、めっき層上にジルコニウム化合物含有粒子がさらに存在することで、化成処理皮膜からの溶出成分との反応性をさらに高めることができる。それにより、めっき層の露出部の腐食をより高度に抑制することができる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
1.めっき液の作製
<めっき液Z1〜6の作製>
以下の成分を、室温(25℃)で混合した。
硫酸亜鉛七水和物(ZnSO・7HO)(Zn源):1.5mol/L
塩基性炭酸ジルコニウム(Zr(OH)x(CO)y・zHO、x=3.0、y=0.4、z=7.0、Zr(Hf)O換算濃度39.8質量%)(Zr源):表1に示される量(mol/L)
硫酸ナトリウム無水物(NaSO)(導電助剤):0.6mol/L
イオン交換水
上記混合により水溶液のpHは高くなるため、硫酸を用いてpHを調整した。pHの調整時の温度は、めっき時の温度と同じ50℃とした。その後、得られた水溶液を、60℃で16時間エージングさせて、めっき液Z1〜6を得た。めっき前には、再度50℃でpHを確認し、目標のpHからずれている場合には硫酸または水酸化ナトリウムで調整した。
なお、pHの測定は、ガラス電極、比較電極および温度補償電極の3つを一体化した複合電極を用いて、50℃で行った。
また、得られためっき液のコロイド粒子の平均粒子径(キュムラント平均粒子径)を、動的散乱法(JIS Z 8828)で測定したところ、5〜15nmであった。測定は25℃で行った。
<めっき液Z7の作製>
以下の成分を、室温(25℃)で混合した。
硫酸亜鉛七水和物(ZnSO・7HO)(Zn源):1.5mol/L
硫酸ジルコニウム四水和物(Zr(SO・4HO)(Zr源):0.2mol/L
硫酸ナトリウム無水物(NaSO)(導電助剤):0.26mol/L
イオン交換水
上記混合により水溶液のpHは低くなるため、水酸化ナトリウム(pH調整剤)を用いてpHを調整した。pHの調整時の温度は、めっき時の温度と同じ50℃とした。この水酸化ナトリウムの添加により硫酸Naがめっき液中に生成する。なお、めっき液中の硫酸ナトリウム量を同じにするため、生成する硫酸ナトリウムと、添加した硫酸ナトリウムの合計が0.6mol/Lとなるようにした。
<めっき液Z8の作製>
以下の成分を、室温(25℃)で混合した。
硫酸亜鉛七水和物(ZnSO・7HO)(Zn源):1.5mol/L
硫酸ナトリウム無水物(NaSO)(導電助剤):0.6mol/L
イオン交換水
上記混合により水溶液のpHは高くなるため、硫酸を用いてpHを調整した。pHの調整時の温度は、めっき時の温度と同じ50℃とした。
<めっき液Z9の作製>
硫酸ジルコニウム四水和物(Zr(SO・4HO)を、オキシ硫酸ジルコニウム(ZrOSO)に変更した以外はめっき液Z7と同様にしてめっき液Z9を得た。
2.表面処理めっき鋼板の作製および評価(1)
(1)めっき鋼板の作製
<めっき鋼板101の作製>
(前処理)
めっきの原板となる鋼板として、板厚0.8mmの焼鈍済みの冷延鋼板(低炭素アルミキルド鋼)を準備した。これを、2.5質量%、60℃の水酸化ナトリウム水溶液中で電解脱脂した後、5質量%、室温の硫酸水溶液中で酸洗した。
(電気めっき)
めっき装置として、矩形管を縦方向に配置し、その中にアノードとそれに対向するように鋼板をセット可能なタイプの縦型のめっき装置を準備した。そして、上記調製した4.5Lのめっき液Z1を、上記めっき装置の矩形の管内に循環(投入および流動)させた。そして、当該めっき液中に、上記酸洗した鋼板を浸漬させた。アノード電極を、鋼板に対向するように10mmの間隔をおいて配置した。アノード電極としては、チタンに酸化イリジウムをコーティングしたものを用いた。そして、以下の条件で、電気めっきを行った。
(めっき条件)
電流密度:50A/m
流速:0.6m/秒
めっき液温度:50℃
めっき付着量:20g/m
めっき終了後、めっき鋼板をめっき液から取り出すと同時に、多量の水をシャワーでかけて、水洗した。その後、60℃の温風を当てて乾燥させて、めっき鋼板101を得た。
<めっき鋼板102〜109の作製>
めっき液の種類を表1に示されるように変更した以外はめっき鋼板101と同様にしてめっき鋼板102〜109を得た。
(評価)
得られためっき層のZr含有量やジルコニウム化合物の分布状態を、以下の方法で測定した。
(Zr含有量)
得られためっき鋼板を、水平に対して30°傾けて樹脂中に埋め込み、研磨した。そして、研磨して得られためっき層の断面に15keVの電子線を照射し、エネルギー分散型X線分光法により、めっき層のZr含有量を測定した。
(ジルコニウム化合物の分布)
めっき層中のジルコニウム化合物の分布状態は、走査電子顕微鏡による15kVの電子線を用いたジルコニウム特性X像および反射電子像により観察した。
(電流効率)
電流効率は、「金属イオンから金属となった実際の析出量」/「めっき時の電気量の全てが金属イオンから金属析出のみに消費されると仮定した場合の析出量」×100(%)として求めた。
めっき鋼板101〜109の評価結果を、表1に示す。
Figure 2021123729
ジルコニウム源として、塩基性炭酸Zrを使用しためっき液(めっき液Z1〜6)を用いためっき鋼板101〜106(実施例)では、ジルコニウム化合物を含むめっき層が形成されることがわかる。また、電流効率も90%前後と高いことがわかる。
これに対し、ジルコニウム源として、硫酸Zrを使用しためっき液(めっき液Z7)を用いためっき鋼板107(比較例)やオキシ硫酸Zrを使用しためっき液(めっき液Z9)を用いためっき鋼板109(比較例)では、めっき層にジルコニウム化合物が含まれないことがわかる。これは、めっき液Z7中では、主として存在するオキシ硫酸ジルコニウムや少量存在する硫酸ジルコニウムからジルコニウム化合物が析出するために必要なpHにめっき面で到達しないためと推定される。また、電流効率が大幅に低下することがわかる。これは、めっき液Z7では、液が流動するとオキシ硫酸ジルコニウムおよび硫酸ジルコニウムが、亜鉛の析出を妨げるためと推定される。
(2)化成処理液の調製
<化成処理液AおよびBの調製>
リン酸(HPO)水溶液(濃度:85質量%)をイオン交換水と混合し、化成処理液中のP濃度とpHを表2に示されるように調製して、化成処理液AおよびBを得た。pHは、水酸化Naで調整した。
<化成処理液CおよびDの調製>
リン酸二水素マンガン(Mn(HPO)・4HO、固体(塊状))をイオン交換水に添加し、P濃度とpHが表2に示される値となるように調製して、化成処理液CおよびDを得た。化成処理液CのpHは硝酸で調整し、化成処理液DのpHは水酸化ナトリウムで調整した。
化成処理液A〜Dの物性を、表2に示す。
Figure 2021123729
(3)表面処理めっき鋼板の作製
<表面処理めっき鋼板201の作製>
化成処理皮膜が損傷してめっき層が露出した状態を模擬するため、上記作製しためっき鋼板103のめっき層の表面の一部に、1×20mmのテープを貼り付けた。そして、めっき鋼板103のテープ貼り付け面に、上記調製した化成処理液Aをバーコーターで塗布した後、熱風オーブンで150℃に加熱して乾燥させて、化成処理皮膜を形成し、表面処理めっき鋼板201を得た。
<表面処理めっき鋼板202〜221の作製>
めっき鋼板と化成処理液の組み合わせを表3に示されるように変更した以外は表面処理めっき鋼板201と同様にして表面処理めっき鋼板202〜221を得た。
<評価>
得られた表面処理めっき鋼板201〜221のP付着量、P溶出量、めっき層の露出部の状態、および耐食性を、以下の方法で評価した。
(P付着量)
化成処理皮膜としてめっき鋼板の表面に付与したP付着量は、蛍光X線分析装置で検量線法により測定した。
(P溶出量)
表面処理めっき鋼板を、50℃の温水に2時間浸せきし、その前後のP付着量を測定し、その変化量からP溶出量(可溶性リン酸量)を求めた。
(耐食性)
表面処理めっき鋼板を65×120mmに切り出し、貼り付けていたテープを剥がして、化成処理皮膜がない、めっき層の露出部を有する表面処理めっき鋼板のサンプルを準備した。
上記作製したサンプルの周囲および裏面を、樹脂テープでシールした後、以下の低濃度塩水を使用した複合サイクル腐食試験(JIS G 0594)を行った。この複合サイクル腐食試験は、1)塩水噴霧(1時間)、2)乾燥下(4時間)および3)湿潤下(3時間)の合計8時間を1サイクルとしている。そして、50サイクル後の化成処理がない部分の赤錆の発生状態を調べた。
1)塩水噴霧(1時間)
塩化ナトリウム濃度:1g/L、pH:6〜7、温度:35℃、噴霧量:80cm当り1.5ml/h
2)乾燥下(4時間)
温度:50℃、湿度:30%以下
3)湿潤下(3時間)
温度:40℃、湿度:90%
試験片の配置角度:鉛直から20°
そして、以下の基準で、耐食性を評価した。
◎:赤錆発生なし、
○:面積率5%未満の微少の赤錆がある
△:面積率5〜20%の赤錆がある
×:面積率20%超の赤錆がある
○以上であれば、許容範囲とした。
表面処理めっき鋼板201〜221の評価結果を、表3に示す。
Figure 2021123729
いずれの化成処理皮膜も、可溶性リン酸を含むことがわかる。具体的には、化成処理液AおよびBから得られる皮膜には、可溶性リン酸塩としてリン酸二水素Znまたはリン酸水素Znが含まれると推定される。また、化成処理液CおよびDから得られる皮膜には、可溶性リン酸塩としてリン酸二水素Mn、リン酸水素Mn、リン酸二水素Zn、またはリン酸水素Znと推定される。
表3に示されるように、まず、表面処理めっき鋼板201〜208(本発明)は、表面処理めっき鋼板209〜212(比較例)よりも、可溶性リン酸量(P溶出量)が少ないことがわかる。そして、表面処理めっき鋼板201〜208(本発明)は、表面処理めっき鋼板209〜212(比較例)よりも、化成処理皮膜がない、めっき層の露出部分の耐食性が高いことがわかる。これは、本発明の表面処理めっき鋼板のほうが、比較例の表面処理めっき鋼板よりも、化成処理皮膜中から溶け出したリン酸の一部が、リン酸系ジルコニウムとしてめっき層の表面に固定されやすいためと推定される。
さらに、表面処理めっき鋼板の一部について、3T曲げ試験を行った。
(3T曲げ試験)
めっき鋼板を同じ板厚の鋼板を3枚挟んで180°折り曲げた。そして、曲げ部の表側のめっき層の割れの有無を走査電子顕微鏡により観察した。
評価結果を表4に示す。
Figure 2021123729
3.表面処理めっき鋼板の作製および評価(2)
<表面処理めっき鋼板222>
(1)めっき鋼板の準備
めっき液Z3を用いて、上記同様の条件でめっきを行った。
(2)接触処理
めっき終了後、めっき鋼板をめっき液から取り出して、液膜の厚みが200μm以下のめっき液を付着した状態で2秒間大気中で保持した後、水槽内の水に浸漬して、水洗した。その後、めっき鋼板の表面に60℃の温風を当てて乾燥させて、めっき鋼板110を得た。
得られためっき鋼板の表面を走査電子顕微鏡により観察したところ、めっき層の表面に、ジルコニウム化合物含有粒子が固着していた。具体的には、ジルコニウム化合物含有粒子の付着量は、めっき層の表面100×100μmあたり30〜150個(約0.2g/m)であることがわかった。また、ジルコニウム化合物含有粒子の平均粒子径は、0.1〜10μmであり、当該粒子のジルコニウムの含有量は、15〜60質量%であった。
(3)化成処理皮膜の形成
そして、めっき鋼板のめっき層上(ジルコニウム化合物含有粒子が固着しためっき層の表面上)に、表面処理めっき鋼板201の製造方法と同様にして、化成処理液Cを塗布後、乾燥させて、化成処理皮膜を形成した。それにより、表面処理めっき鋼板222を得た。
<表面処理めっき鋼板223>
(1)めっき鋼板の準備
めっき液Z7を用いて、上記同様の条件でめっきを行った。
(2)接触処理
めっき終了後、めっき鋼板をめっき槽から取り出して、液膜の厚みが200μm以下のめっき液を付着した状態で2秒間大気中で保持した後、水槽内の水に浸漬して、水洗した。その後、めっき鋼板の表面に60℃の温風を当てて乾燥させて、めっき鋼板111を得た。得られためっき鋼板の表面を走査電子顕微鏡により観察したところ、めっき層の表面に、ジルコニウム化合物含有粒子は固着していなかった。
(3)化成処理
そして、得られためっき鋼板のめっき層上に、上記表面処理めっき鋼板201の製造方法と同様にして、化成処理液Cを塗布後、乾燥させて、化成処理皮膜を形成した。それにより、表面処理めっき鋼板223を得た。
<表面処理めっき鋼板224>
(1)めっき鋼板の準備
めっき液Z9を用いて、上記同様の条件でめっきを行った。
(2)接触処理
めっき終了後、めっき鋼板をめっき槽から取り出して、液膜の厚みが200μm以下のめっき液を付着した状態で2秒間大気中で保持した後、水槽内の水に浸漬して、水洗した。その後、めっき鋼板の表面に60℃の温風を当てて乾燥させて、めっき鋼板111を得た。得られためっき鋼板の表面を走査電子顕微鏡により観察したところ、めっき層の表面に、ジルコニウム化合物含有粒子は固着していなかった。
(3)化成処理
そして、得られためっき鋼板のめっき層上に、上記表面処理めっき鋼板201の製造方法と同様にして、化成処理液Cを塗布後、乾燥させて、化成処理皮膜を形成した。それにより、表面処理めっき鋼板224を得た。
<評価>
得られた表面処理めっき鋼板222〜224について、上記と同様に、耐久性を評価した。この結果を、表5に示す。
なお、対比のため、表面処理めっき鋼板203、211、221および215の耐久性の評価結果も併せて示す。
Figure 2021123729
表5に示されるように、(めっき層上に、ジルコニウム化合物含有粒子が固着した)表面処理めっき鋼板222は、(めっき層上に、ジルコニウム化合物含有粒子が固着していない)表面処理めっき鋼板201よりも、白錆が発生するまでのサイクル数が13と長いことがわかった。このことから、めっき後の浸漬を行うことにより(Zr化合物含有粒子を固着させることにより)、耐食性がさらに向上することがわかる。
一方、めっき後に、硫酸Zrを含むめっき液Z7やオキシ硫酸Zrを含むめっき液Z9中に、(無電解状態で)短時間浸漬させた後、水洗して得られためっき鋼板では、めっき層の表面に、上記のようなジルコニウム化合物含有粒子は固着していないことがわかる。そして、めっき後の浸漬を行っても、耐食性は向上しないことがわかる(表面処理めっき鋼板211および223の対比、表面処理めっき鋼板221および224の対比)。
本発明によれば、例えば成形加工時の化成処理皮膜の割れなどによって形成されるめっき層の露出部分における腐食を高度に抑制できる、表面処理めっき鋼板およびそれを構成するめっき鋼板、表面処理めっき鋼板の製造方法を提供することができる。
10 表面処理めっき鋼板
11 鋼板
12 めっき層
13 化成処理皮膜
14 水膜
15 防食性の皮膜
16 ジルコニウム化合物含有粒子

Claims (14)

  1. 鋼板と、
    前記鋼板上に配置され、亜鉛と、水酸化ジルコニウムまたはその水和物を含むジルコニウム化合物とを含むめっき層と、
    前記めっき層上に配置され、可溶性リン酸化合物を含む化成処理皮膜と
    を有する、
    表面処理めっき鋼板。
  2. 前記めっき層のジルコニウムの含有量が、0.001〜2質量%である、
    請求項1に記載の表面処理めっき鋼板。
  3. 前記ジルコニウム化合物は、粒子状である、
    請求項1または2に記載の表面処理めっき鋼板。
  4. 前記めっき層の断面を観察したときに、
    2×4μmの観察領域のうち70%以上の領域に前記粒子状のジルコニウム化合物が分散している、
    請求項3に記載の表面処理めっき鋼板。
  5. 前記めっき層と前記化成処理皮膜との間に配置され、水酸化ジルコニウムまたはその水和物を含むジルコニウム化合物と亜鉛とを含むジルコニウム化合物含有粒子をさらに有し、
    前記ジルコニウム化合物含有粒子のジルコニウムの含有量は、前記めっき層のジルコニウムの含有量よりも多い、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面処理めっき鋼板。
  6. 前記ジルコニウム化合物含有粒子のジルコニウムの含有量は、10〜75質量%である、
    請求項5に記載の表面処理めっき鋼板。
  7. 前記表面処理めっき鋼板を、50℃の温水に2時間浸せきしたときの前記可溶性リン酸化合物に由来するP溶出量は、0.1〜80mg/mである、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の表面処理めっき鋼板。
  8. 鋼板と、
    前記鋼板上に配置され、亜鉛と、粒子状のジルコニウム化合物とを含むめっき層と、
    を有し、
    前記ジルコニウム化合物は、水酸化ジルコニウムまたはその水和物を含み、
    前記めっき層の断面を観察したときに、
    2×4μmの観察領域のうち70%以上の領域に前記粒子状のジルコニウム化合物が分散している、
    めっき鋼板。
  9. 前記めっき層のジルコニウムの含有量が、0.001〜2質量%である、
    請求項8に記載のめっき鋼板。
  10. 前記めっき層上に配置され、水酸化ジルコニウムまたはその水和物と亜鉛とを含むジルコニウム化合物含有粒子をさらに有し、
    前記ジルコニウム化合物含有粒子のジルコニウムの含有量は、前記めっき層のジルコニウムの含有量よりも多い、
    請求項8または9に記載のめっき鋼板。
  11. 前記ジルコニウム化合物含有粒子のジルコニウムの含有量は、10〜75質量%である、
    請求項10に記載のめっき鋼板。
  12. 亜鉛源と、塩基性炭酸ジルコニウムと、硫酸源と、水とを混合して、2以上のジルコニウム原子同士が水酸基を介して結合した重合体を含むコロイド粒子を含む第1めっき液を得る工程と、
    前記第1めっき液を用いて電気めっきを行うことにより、鋼板上にめっき層を形成する工程と、
    前記めっき層上に、可溶性リン酸化合物を含む化成処理皮膜を形成する工程と
    を有する、
    表面処理めっき鋼板の製造方法。
  13. 前記めっき層を形成する工程と前記化成処理皮膜を形成する工程との間に、
    前記めっき層と、2以上のジルコニウム原子同士が水酸基を介して結合した重合体を含むコロイド粒子を含む第2めっき液の液膜とを接触させて、前記めっき層の表面に、水酸化ジルコニウムまたはその水和物を含むジルコニウム化合物と亜鉛とを含むジルコニウム化合物含有粒子を析出させる工程をさらに含む、
    請求項12に記載の表面処理めっき鋼板の製造方法。
  14. 前記液膜の厚みは、500μm以下である、
    請求項13に記載の表面処理めっき鋼板の製造方法。
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