以下に、本開示に係る同時2軸延伸装置のクリップリンク機構の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
(第1の実施形態)
[同時2軸延伸装置の概略構成の説明]
まず、図1を用いて第1の実施形態における同時2軸延伸装置10の全体構成について説明する。図1は、実施形態に係るクリップリンク機構が適用される同時2軸延伸装置の全体概要図である。
同時2軸延伸装置10は、平面視で、左右両側に、シート状部材Sを把持する多数のクリップ20を有する無端ループ10Rと無端ループ10Lとを左右対称に有する。延伸対象のシート状部材Sは、入口1aから送り込まれて、延伸した状態で出口1bから排出される。なお、延伸対象のシート・フィルムの入口1a側から見て右側の無端ループを右側無端ループ10R、左側の無端ループを左側無端ループ10Lと呼ぶことにする。なお、シート状部材Sは、例えば、熱可塑性を有する樹脂フィルム等である。
クリップ20は、各々、長方形状のクリップ担持部材30の長手方向の一端部(入口1aと出口1bとの間で、互いに向かい合う位置)に取り付けられる。すなわち、向かい合う一対のクリップ20が、延伸対象物であるシート状部材Sの幅方向の両端に配置されて、延伸対象物を把持する把持装置として機能する。
クリップ担持部材30は、基準レール100に案内されてループ状に巡回移動する。なお、基準レール100は、本開示における第1のレールの一例である。右側無端ループ10Rは時計廻り方向に巡回移動し、左側無端ループ10Lは反時計廻り方向に巡回移動する。具体的には、クリップ担持部材30が備える駆動ローラ28(図4参照)が、駆動用スプロケット11、12に選択的に係合し、各クリップ担持部材30を巡回経路に沿って走行させる。つまり、駆動用スプロケット11、12は、各クリップ担持部材30の駆動ローラ28と選択的に係合し、電動モータによって回転駆動されて、各クリップ担持部材30を巡回経路に沿って走行させる力をクリップ担持部材30に与える。具体的には、駆動用スプロケット12は、非図示の減速機によって減速された、電動モータ14の回転駆動力によって駆動される。2個の駆動用スプロケット11は、非図示の2台の減速機で、それぞれ逆方向に減速された、非図示の電動モータの回転駆動力によって、それぞれ駆動される。
右側無端ループ10Rの基準レール100と、左側無端ループ10Lの基準レール100との間隔が大きくなると、シート状部材Sは横方向(X軸方向)に延伸される。
隣接するクリップ担持部材30同士は、複数のリンクで構成されたクリップリンク機構90aによって接続される。クリップリンク機構90aは、ピッチ設定レール120に案内されて、クリップ担持部材30を連れ添ってループ状に巡回移動する。なお、ピッチ設定レール120は、本開示における第2のレールの一例である。
クリップリンク機構90aは、基準レール100とピッチ設定レール120との間隔に応じて、隣接するクリップ担持部材30の間隔(以下、クリップピッチと呼ぶ)を設定する。クリップピッチが大きくなるほど、シート状部材Sは、幅方向と直交する方向、すなわち、クリップ担持部材30の移動方向である縦方向(Y軸方向)に延伸される。なお、図1は、入口1aから送り込まれたシート状部材Sが、縦横2軸方向に延伸される様子を示している。図面をわかり易くするため、シート状部材Sを不連続に描いているが、実際には、シート状部材Sは入口1aから出口1bに亘って連続している。
同時2軸延伸装置10は、シート状部材Sの入口1a側から出口1b側へ向けて、予熱ゾーンAと、延伸ゾーンBと、熱処理ゾーンCとを備える。
予熱ゾーンAでは、左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rの基準レール100の間隔(離間距離)が横延伸初期幅相当に設定されて、全域に亘って左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとが互いに平行に配置される。なお、左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rにおいて、基準レール100とピッチ設定レール120との間隔は、縦延伸初期ピッチ相当である。
延伸ゾーンBでは、予熱ゾーンAの側から熱処理ゾーンCに向かうに従って左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rの離間距離が徐々に拡大され、左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとが非平行に配置される。延伸ゾーンBにおける左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rの離間距離は、延伸開始端(予熱ゾーンAとの接続端)では横延伸初期幅相当になっており、延伸終了端(熱処理ゾーンCとの接続端)では横延伸最終幅相当に設定されている。すなわち、延伸ゾーンBでは、予熱ゾーンAの側から熱処理ゾーンCに向かうに従って、左側無端ループ10Lの基準レール100と、右側無端ループ10Rの基準レール100との間隔が徐々に拡大される。各基準レール100の間隔は、延伸開始端(予熱ゾーンAとの接続端)では横延伸の初期幅相当になっており、延伸終了端(熱処理ゾーンCとの接続端)では横延伸の最終幅相当になっている。
さらに、延伸ゾーンBでは、予熱ゾーンAの側から熱処理ゾーンCに向かうに従って、左側無端ループ10Lにおける基準レール100とピッチ設定レール120との間隔が徐々に縮小される。そして、右側無端ループ10Rにおける基準レール100とピッチ設定レール120との間隔も同様に、徐々に縮小される。基準レール100とピッチ設定レール120との間隔は、延伸開始端(予熱ゾーンAとの接続端)では縦延伸初期ピッチ相当になっており、延伸終了端(熱処理ゾーンCとの接続端)では縦延伸最終ピッチ相当になっている。すなわち、同時2軸延伸装置10は、延伸ゾーンBにおいて、シート状部材Sに対して、縦延伸と横延伸とを同時に行う。
熱処理ゾーンCでは、左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rの離間距離が横延伸最終幅相当に設定されて、全域に亘って左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとが互いに平行に配置される。また、基準レール100とピッチ設定レール120との間隔は、縦延伸最終ピッチ相当に設定されて、全域に亘って基準レール100とピッチ設定レール120とは互いに平行な配置になっている。
[クリップの構造の説明]
次に、図2を用いて、クリップ20の概略構造を説明する。図2は、実施形態に係る同時2軸延伸装置に用いるクリップの概略構造の一例を示す側面図である。左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rが備える複数のクリップ20は、各々、クリップ担持部材30の長手方向の一端部に取り付けられる。クリップ20は、シート状部材Sを係脱可能に把持するものであり、ヨーク形状のクリップ本体21と、クリップ本体21に固定装着された下側固定クリップ部材22と、ピン23によってクリップ本体21に回動可能に取り付けられた可動レバー24と、可動レバー24の下端にピン25によって揺動可能に取り付けられた上側可動クリップ部材26とを有し、下側固定クリップ部材22と上側可動クリップ部材26とで、シート状部材Sの側縁を挟み込み式に把持する。これにより、クリップ20は、シート状部材Sを挟んで支持したり、その支持状態を解放させたりすることが可能となる。
[クリップリンク機構の説明]
次に、図3、図4を用いて、第1の実施形態に係る同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90aの詳細構造について説明する。図3は、実施形態に係るクリップリンク機構の上面図である。図4は、実施形態に係るクリップリンク機構の側面図である。
図3は、2個のクリップ担持部材30と1個のリンク支持部材60とが、複数のリンクで接続されることによって、クリップリンク機構90aを形成した状態を示している。なお、説明を容易にするため、図3に示す座標系XYZを設定する。また、図3は、左側無端ループ10Lの一部を示しており、クリップ20は、Y軸に沿って、移動方向Dに移動するものとする。即ち、図3におけるY軸負側が移動方向上流側、Y軸正側が移動方向下流側である。また、以後の説明において、Z軸正側を上方、Z軸負側を下方と呼ぶ。
クリップリンク機構90aは、連接するクリップ担持部材30とリンク支持部材60とを接続する。そして、クリップリンク機構90aは、クリップ20が移動方向Dに移動する際に、クリップ担持部材30とリンク支持部材60とのY軸方向の間隔を、基準レール100とピッチ設定レール120との間隔Wに応じた値に設定する。さらに、クリップリンク機構90aは、クリップ20が移動方向Dに移動する際に、クリップ担持部材30とリンク支持部材60との向きを、X軸に沿う方向に保持させる。
クリップ担持部材30は、案内ローラ40と、案内ローラ41と、自重受ローラ42と、クリップ設置部31と、第1の長孔32とを備える。
案内ローラ40は、例えばベアリングである。案内ローラ40は、クリップ担持部材30を支持して、移動方向Dと上下に交差する方向、即ちZ軸方向に延びる第1の軸部材43に、Z軸周りに回転可能に設置される。案内ローラ40は、基準レール100のクリップ側の側面に沿って転動する。案内ローラ40は、図4に示すように、第1の軸部材43に設置された同じ大きさの2列のローラで構成される。これによって、案内ローラ40と基準レール100の側面との接触面積を増大させることによって、クリップ担持部材30を安定して走行させる。なお、案内ローラ40は、本開示における第1のローラ及び第1の案内ローラの一例である。
案内ローラ41は、例えばベアリングである。案内ローラ41は、クリップ担持部材30を軸支する第1の軸部材43と平行に延びる軸部材47に、Z軸周りに回転可能に設置される。案内ローラ41は、基準レール100を挟んで、案内ローラ40と対向する位置に設けられる。即ち、案内ローラ41を軸支する軸部材47と、案内ローラ40を軸支する第1の軸部材43とは、X軸に沿って設置される。そして、案内ローラ41は、基準レール100の反クリップ側の側面に沿って転動する。なお、案内ローラ41は、本開示における第1のローラ及び第2の案内ローラの一例である。
自重受ローラ42は、例えばベアリングである。自重受ローラ42は、図4に示すように、基準レール100の天面100aに、基準レール100に沿って当接する。自重受ローラ42は、クリップ担持部材30の自重を支えて、基準レール100に案内されて転動する。なお、自重受ローラ42は、本開示における第1のローラ及び第1の自重受ローラの一例である。
クリップ設置部31には、前記したクリップ20が設置される。クリップ設置部31は、クリップ担持部材30の、基準レール100(第1のレール)に対して、ピッチ設定レール120(第2のレール)とは反対側に設けられる。
第1の長孔32は、X軸に沿って移動方向Dと交差する方向に延びて、クリップ担持部材30をZ軸方向に貫通するように形成される。第1の長孔32の作用は後述する。
リンク支持部材60は、案内ローラ50と、案内ローラ51と、自重受ローラ52と、第2の長孔62とを備える。
案内ローラ50は、例えばベアリングである。案内ローラ50は、リンク支持部材60を支持して、移動方向Dと上下に交差する方向、即ちZ軸方向に延びる第2の軸部材53に、Z軸周りに回転可能に設置される。案内ローラ50は、ピッチ設定レール120の反クリップ側の側面に沿って転動する。案内ローラ50は、図4に示すように、第2の軸部材53に設置された同じ大きさの2列のローラで構成される。これによって、案内ローラ50とピッチ設定レール120の側面との接触面積を増大させることによって、リンク支持部材60を安定して走行させる。なお、案内ローラ50は、本開示における第2のローラ及び第3の案内ローラの一例である。
案内ローラ51は、例えばベアリングである。案内ローラ51は、リンク支持部材60を軸支する第2の軸部材53と平行に延びる軸部材48に、Z軸周りに回転可能に設置される。なお、案内ローラ51は、ピッチ設定レール120を挟んで、案内ローラ50と対向する位置に設けられる。即ち、案内ローラ51を軸支する軸部材48と、案内ローラ50を軸支する第2の軸部材53とは、X軸に沿って設置される。そして、案内ローラ51は、ピッチ設定レール120のクリップ側の側面に沿って転動する。なお、案内ローラ51は、本開示における第2のローラ及び第4の案内ローラの一例である。
自重受ローラ52は、例えばベアリングである。自重受ローラ52は、図4に示すように、ピッチ設定レール120の天面120aに、ピッチ設定レール120に沿って当接する。自重受ローラ52は、リンク支持部材60の自重を支えて、ピッチ設定レール120に案内されて転動する。なお、自重受ローラ52は、本開示における第2のローラ及び第2の自重受ローラの一例である。
第2の長孔62は、X軸に沿って移動方向Dと交差する方向に延びて、リンク支持部材60をZ軸方向に貫通するように形成される。第2の長孔62の作用は後述する。
[クリップリンク機構の浮き上がり防止機能の説明]
同時2軸延伸装置10は、クリップ20が移動中にクリップリンク機構90aの浮き上がりを防止する浮き上がり防止機構を備える。
即ち、図4に示すように、クリップ担持部材30は、クリップ20側に、X軸に沿う軸の周りに回転可能に設置された案内ローラ80を備える。そして、案内ローラ80の上縁は、基準レール100が形成された基台110の上端に設置された板状部材81によって、上方への移動を阻止される。なお、板状部材81は、本開示における浮き上がり防止部材の一例である。
また、図4に示すように、リンク支持部材60は、反クリップ側に、X軸に沿う軸の周りに回転可能に設置された案内ローラ82を備える。そして、案内ローラ82の上縁は、ピッチ設定レール120が形成された基台110に設置された板状部材83によって、上方への移動を阻止される。なお、板状部材83は、本開示における浮き上がり防止部材の一例である。
このように、板状部材81,83は、移動中のクリップリンク機構90aに、上方を向く力(Z軸正側を向く力)が発生した場合であっても、案内ローラ80,82の浮き上がりを阻止することによって、クリップリンク機構90aの浮き上がりを防止する。
なお、案内ローラ40の代わりに、案内ローラ40よりも大径の案内ローラ87を設置して、案内ローラ50の代わりに、案内ローラ50よりも大径の案内ローラ88を設置してもよい(図5参照)。この場合、隣接するクリップ担持部材30の間で大径の案内ローラ87が干渉して、隣接するリンク支持部材60の間で大径の案内ローラ88が干渉してしまうため、案内ローラ87,88の設置高さを、隣接するクリップ担持部材30の間、及び隣接するリンク支持部材60の間で互い違いに千鳥状に配置する。なお、案内ローラ87は、本開示における第1のローラ及び第1の案内ローラの一例である。また、案内ローラ88は、本開示における第2のローラ及び第3の案内ローラの一例である。
図5は、案内ローラの別の配置構造の一例を示す側面図である。隣接するクリップ担持部材30及び隣接するリンク支持部材60を最も近接した位置に移動したとき、即ち最小クリップピッチの状態にあるときには、図5に示すように、案内ローラ87及び案内ローラ88の外周部は、隣接するクリップ担持部材30及び隣接するリンク支持部材60の下方に入り込む。したがって、案内ローラ87,88のローラ径gを、最小クリップピッチpよりも大きく設定することができる。これによって、クリップリンク機構90aがクリップピッチを変更する場合に、基準レール100がクリップ担持部材30の位置を拘束する際、及びピッチ設定レール120がリンク支持部材60の位置を拘束する際の安定性を向上させることができる。なお、前記した案内ローラの千鳥状配置を、第2の案内ローラである案内ローラ41、及び第4の案内ローラである案内ローラ51に適用してもよい。
図3に戻り、クリップ担持部材30に設けられた第1の軸部材43には、第1のリンク部材70の1端側と、第1のリンク部材70と同じ長さの第2のリンク部材71の1端側とが、回動可能に接続される。また、リンク支持部材60に設けられた第2の軸部材53には、第1のリンク部材70の他端側と、前記クリップ担持部材30から移動方向Dの上流側に隣接する別のクリップ担持部材30の第1の軸部材43に接続された第2のリンク部材71の他端側とが、回動可能に接続される。
そして、リンク支持部材60側から見て、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との間には、第3のリンク部材72が架け渡される。第3のリンク部材72は、1端側を第1のリンク部材70に設置した、第1の軸部材43及び第2の軸部材53と平行、即ちZ軸方向に延びる第3の軸部材77に回動可能に接続される。また、第3のリンク部材72には、本開示の長孔の一例である第3の長孔79が形成されており、この第3の長孔79には、第2のリンク部材71に設置した、第1の軸部材43及び第2の軸部材53と平行、即ちZ軸方向に延びる第4の軸部材78が挿通される。なお、第3のリンク部材72の設置位置、即ち、第3の軸部材77と第4の軸部材78の設置位置については後述する。
第3のリンク部材72は、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θを、第4の軸部材78が第3の長孔79の両端の間でスライドする範囲に制限する。即ち、第1のリンク部材70は、第4の軸部材78が、第3の長孔79の、第3の軸部材77から遠方側の端部にスライドした状態において、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θを最大値に規制する。そして、このときの開き角度θが、本開示における所定角度の一例である。なお、第3のリンク部材72の作用については後述する。
[クリップ担持部材を支えるリンク機構の説明]
第1のリンク部材70を、第1の軸部材43との接続位置からクリップ側(X軸正側)に延長した位置には、第1の軸部材43と平行な第7の軸部材44が設けられる。また、第1のリンク部材70を、第1の軸部材43との接続した位置からクリップ側(X軸正側)に延長した位置には、第1の軸部材43と平行な第8の軸部材45が設けられる。
第7の軸部材44には、第4のリンク部材73の1端側が回動可能に接続される。また、第8の軸部材45には、第4のリンク部材73と同じ長さを有する第5のリンク部材74の1端側が回動可能に接続される。
第1のリンク部材70の他端側は、第1の軸部材43から移動方向Dの下流側に最も近いリンク支持部材60が備える第2の軸部材53と回動可能に接続される。また、第2のリンク部材71の他端側は、第1の軸部材43から移動方向Dの上流側に最も近いリンク支持部材60が備える第2の軸部材53と回動可能に接続される。
第4のリンク部材73の他端側、及び第5のリンク部材74の他端側は、第1の長孔32に挿通された第9の軸部材46に回動可能に接続される。
即ち、第1のリンク部材70と、第2のリンク部材71と、第4のリンク部材73と、第5のリンク部材74とは、第1の軸部材43と、第7の軸部材44と、第8の軸部材45と、第9の軸部材46とによって回動可能に接続されて、パンタグラフ状のリンク機構を構成する。
[リンク支持部材を支えるリンク機構の説明]
第1のリンク部材70を、第2の軸部材53との接続位置から反クリップ側(X軸負側)に延長した位置には、第2の軸部材53と平行な第10の軸部材54が設けられる。また、第2のリンク部材71を、第2の軸部材53との接続した位置から反クリップ側(X軸負側)に延長した位置には、第2の軸部材53と平行な第11の軸部材55が設けられる。
第10の軸部材54には、第6のリンク部材75の1端側が回動可能に接続される。また、第11の軸部材55には、第6のリンク部材75と同じ長さを有する第7のリンク部材76の1端側が回動可能に接続される。
第1のリンク部材70の他端側は、第2の軸部材53から移動方向Dの上流側に最も近いクリップ担持部材30が備える第1の軸部材43と回動可能に接続される。そして、第2のリンク部材71の他端側は、第2の軸部材53から移動方向Dの下流側に最も近いクリップ担持部材30が備える第1の軸部材43と回動可能に接続される。
第6のリンク部材75の他端側、及び第7のリンク部材76の他端側は、第2の長孔62に挿通された第12の軸部材56に回動可能に接続される。
即ち、第1のリンク部材70と、第2のリンク部材71と、第6のリンク部材75と、第7のリンク部材76とは、第2の軸部材53と、第10の軸部材54と、第11の軸部材55と、第12の軸部材56とによって回動可能に接続されて、パンタグラフ状のリンク機構を構成する。
同時2軸延伸装置10は、このようなクリップリンク機構90aを有することによって、基準レール100とピッチ設定レール120との間隔Wの変化に応じて、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θを変化させる。即ち、基準レール100とピッチ設定レール120との間隔Wが大きくなると、開き角度θは小さくなる。そして、隣接するクリップ20のY軸方向の間隔であるクリップピッチは小さくなる。一方、基準レール100とピッチ設定レール120との間隔Wが小さくなると、開き角度θは大きくなる。そして、隣接するクリップ20のY軸方向の間隔であるクリップピッチは大きくなる。
そして、開き角度θが変化した場合に、第1のリンク部材70と、第2のリンク部材71と、第4のリンク部材73と、第5のリンク部材74とは、第1の長孔32に沿ってパンタグラフ状に変形する。その際、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θの2等分線は、第1の長孔32が延びる方向と一致する。第1の長孔32は、移動方向Dと交差する方向に延びているため、クリップ担持部材30の向きは、開き角度θの変化によらず、常に移動方向Dと交差する方向に保持される。したがって、クリップ担持部材30に設置されたクリップ20の向きは、基準レール100とピッチ設定レール120との間隔Wの変化によらず一定となる。
また、開き角度θが変化した場合に、第1のリンク部材70と、第2のリンク部材71と、第6のリンク部材75と、第7のリンク部材76とは、第2の長孔62に沿ってパンタグラフ状に変形する。その際、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θの2等分線は、第2の長孔62が延びる方向と一致する。第2の長孔62は、移動方向Dと交差する方向に延びているため、リンク支持部材60の向きは、開き角度θの変化によらず、常に移動方向Dと交差する方向に保持される。
[第3のリンク部材の作用の説明]
次に、第3のリンク部材72の作用について、図6〜図9を用いて説明する。図6は、第1の実施形態に係るクリップリンク機構の第1の斜視図である。図7は、第1の実施形態に係るクリップリンク機構の第2の斜視図である。図8は、第1の実施形態に係るクリップリンク機構を折り畳んだ状態の一例を示す上面図である。図9は、第1の実施形態に係るクリップリンク機構を最も開いた状態の一例を示す上面図である。
図6、図7に示すように、第3のリンク部材72が、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θを最大値に制限した際に、連接する第1のリンク部材70と第2のリンク部材71とに、クリップリンク機構90aを移動方向Dに引っ張る引っ張り力が作用した場合を想定する。当該引っ張り力は、クリップリンク機構90aに対して、開き角度θを増大させる力を与える。このとき、連接する第1のリンク部材70と第2のリンク部材71とは、第3のリンク部材72によって開き角度θの増大が阻止されるため、連接する第1のリンク部材70と第2のリンク部材71とは、引っ張り力に対して、あたかも1つの剛体であるかのように振る舞う。これによって、クリップリンク機構90aが最大のクリップピッチに設定された状態で移動する際の安定性が向上する。
仮に、第3のリンク部材72が接続されない場合、クリップリンク機構90aを移動させる際に、当該クリップリンク機構90aには、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θをより大きくしようとする方向の力が作用する。このとき、案内ローラ40には、基準レール100に当接する方向の力が作用する。また、案内ローラ50には、ピッチ設定レール120に当接する方向の力が作用する。これによって、案内ローラ40、50と基準レール100とピッチ設定レール120には過大な負荷がかかるため、案内ローラ40、50と基準レール100とピッチ設定レール120の摩耗が進行することによって寿命が短くなる可能性がある。
これに対して、第3のリンク部材72を接続することによって、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θの最大値が制限されるため、クリップリンク機構90aが最大のクリップピッチに設定された状態で移動する際に、案内ローラ40、50と基準レール100とピッチ設定レール120に過大な負荷がかかるのを防止することができ、これによって、案内ローラ40、50と基準レール100とピッチ設定レール120の摩耗の進行を防止することができるため、寿命を延ばすことができる。
なお、クリップリンク機構90aにおいて、クリップ担持部材30とリンク支持部材60とを連結する各リンクは、上方(Z軸正側)から順に、第2のリンク部材71、第3のリンク部材72、第1のリンク部材70の順に接続される(図4参照)。そして、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71とを閉じて最小クリップピッチの状態にした場合、第4の軸部材78は、第3の長孔79に沿って、第3の軸部材77に最も近接した位置までスライドする。このとき、クリップリンク機構90aは、図8に示すように、第3のリンク部材72が、第2のリンク部材71の裏側に入り込んだ状態になる。即ち、第3のリンク部材72を設置した状態であっても、クリップピッチの最小値を、第3のリンク部材72を設置しない場合と同等にすることができる。
逆に、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71とを開いて最大クリップピッチの状態にした場合、第4の軸部材78は、第3の長孔79において、第3の軸部材77から遠方側にスライドする。このとき、クリップリンク機構90aは、図9に示す状態になる。
次に、図9を用いて、第3のリンク部材72の設置位置、即ち、第3の軸部材77と第4の軸部材78の設置位置について説明する。クリップリンク機構90aにおいて、第2の軸部材53と第3の軸部材77との軸間距離e1と、第2の軸部材53と第4の軸部材78との軸間距離e2とが、e1<e2となるように、第3の軸部材77と第4の軸部材78とが設置される。これによって、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θを、クリップピッチを小さくする方向に変更する場合、及びクリップピッチを大きくする方向に変更する場合に、第4の軸部材78を、より小さい力で第3の長孔79に沿ってスライドさせることができるため、開き角度θを容易に変更することができる。
なお、第3のリンク部材72は、クリップ担持部材30側から見て、前記したのと同じ条件を満たすように、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との間に設置してもよい。
以上説明したように、同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90aは、基準レール100(第1のレール)に案内される案内ローラ40,41(第1のローラ)と自重受ローラ42(第1のローラ)と、クリップ設置部31に設置されて移動経路に沿って移動方向Dに移動するクリップ20とが設置された、連接するクリップ担持部材30と、ピッチ設定レール120(第2のレール)に案内される案内ローラ50,51(第2のローラ)と自重受ローラ52(第2のローラ)を備える連接するリンク支持部材60とを、第1のリンク部材70と、第1のリンク部材70と同じ長さの第2のリンク部材71と、で交互に接続する。そして、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71は、クリップ担持部材30に移動方向Dと上下に交差する方向に設置された第1の軸部材43に回動可能に接続される。また、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71とは、リンク支持部材60に設置された、移動方向Dと上下に交差する方向に設置された第2の軸部材53に回動可能に接続される。第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との間には、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θを所定角度以下に制限する第3のリンク部材72が接続される。したがって、クリップリンク機構90aは、クリップピッチが最大であるときに、クリップリンク機構90aが移動する際の基準レール100及びピッチ設定レール120への負荷を低減することができる。
また、同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90aにおいて、第3のリンク部材72は、Z軸方向(上下方向)において第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との間に位置して、第3のリンク部材72の一端側は、第3の軸部材77によって、第1のリンク部材70又は第2のリンク部材71のいずれか一方に回動可能に接続されて、第1のリンク部材70又は第2のリンク部材71のいずれか他方に設けられた第4の軸部材78が、第3のリンク部材72の他端側に形成された当該第3のリンク部材72に沿う第3の長孔79に挿通して、当該第3の長孔79に沿ってスライドすることによって、第3のリンク部材72は、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θに応じて回動する。したがって、第1のリンク部材70及び第2のリンク部材71に余計な負荷を与えることなく、クリップピッチを、基準レール100とピッチ設定レール120との間隔Wに応じた値に設定することができる。
また、同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90aにおいて、第2の軸部材53と第3の軸部材77との軸間距離e1は、第2の軸部材53と第4の軸部材78との軸間距離e2よりも短い。したがって、第4の軸部材78を、より小さい力で第3の長孔79に沿ってスライドさせることができるため、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θを容易に変更することができる。
また、同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90aにおいて、隣接するクリップ担持部材30に設けられる案内ローラ87(第1の案内ローラ)は、互いの高さが千鳥状に配置されて、案内ローラ87のローラ径g(直径)は、クリップリンク機構90aの最小クリップピッチpよりも大きい。したがって、クリップリンク機構90aがクリップピッチを変更する際に、基準レール100がクリップ担持部材30の位置を拘束する際の安定性を向上させることができる。
また、同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90aにおいて、隣接するリンク支持部材60に設けられる案内ローラ88(第3の案内ローラ)は、互いの高さが千鳥状に配置されて、案内ローラ88のローラ径g(直径)は、クリップリンク機構90aの最小クリップピッチpよりも大きい。したがって、クリップリンク機構90aがクリップピッチを変更する際に、ピッチ設定レール120がリンク支持部材60の位置を拘束する際の安定性を向上させることができる。
また、同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90aは、当該クリップリンク機構90aが移動する際に、クリップリンク機構90aの浮き上がりを防止する板状部材81,83(浮き上がり防止部材)を、更に備える。したがって、クリップリンク機構90aを、より一層円滑に移動させることができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90bについて説明する。
クリップリンク機構90bは、短いリンク部材で、より大きいクリップピッチを設定することができるクリップリンク機構の例である。言い換えると、例えば、第1の実施形態のクリップリンク機構90aと比べて、リンク部材が同じ長さである場合に、縦方向の延伸倍率をより大きく設定することができるクリップリンク機構の例である。
図10を用いて、クリップリンク機構90bの概略構成を説明する。図10は、第2の実施形態に係るクリップリンク機構の概略構成を示す上面図である。
クリップリンク機構90bは、クリップ担持部材30とリンク支持部材60とを、第1の実施形態で説明した第1のリンク部材70(図3参照)に代わって、複数のリンク部材70a,70b,70c,70dで接続する。
リンク部材70aは、第2の軸部材53と、リンク部材70dの中間部に設けられた軸部材58aとに回動可能に接続される。なお、リンク部材70aは、本開示における第1のリンク部材の一例である。また、軸部材58aは、本開示における第5の軸部材の一例である。
リンク部材70dは、一端がクリップ担持部材30の第1の軸部材43に回動可能に接続されて、他端がクリップ担持部材30から移動方向Dの上流側に最も近いリンク支持部材60の第2の軸部材53に回動可能に接続される。なお、リンク部材70dは、本開示における第2のリンク部材の一例である。
クリップ担持部材30を移動方向Dと交差するX軸方向に延長して、リンク部材70a(第1のリンク部材)と交差した位置には、第1の軸部材43と平行な軸部材58bが設けられる。このとき、軸部材58bは、軸部材58aと第1の軸部材43との距離が、軸部材58aと軸部材58bとの距離と等しくなる位置に設けられる。そして、1端側を第1の軸部材43に接続したリンク部材70cの他端側と、1端側を軸部材58bに接続したリンク部材70bの他端側とが、軸部材58aと平行で、第1の軸部材43と軸部材58bとを結ぶ線分に関して対称な位置に設けられた軸部材58cに回動可能に接続される。また、軸部材58bは、本開示における第6の軸部材の一例である。
より具体的には、リンク部材70bとリンク部材70cとは同じ長さで、リンク部材70a,70b,70c,70dは、図10に示すようにパンタグラフ状のリンク機構を構成する。
クリップリンク機構90bにおいて、クリップピッチを最大、即ち縦倍率を最大に設定した場合、隣接するクリップ担持部材30とリンク支持部材60とのY軸方向の間隔は、ほぼ、リンク部材70aのリンク長と、第1の軸部材43と軸部材58aとの距離を足し合わせた値になる。これに対して、第1の実施形態で説明したクリップリンク機構90aでは、クリップピッチを最大、即ち縦倍率を最大に設定した場合、隣接するクリップ担持部材30とリンク支持部材60とのY軸方向の間隔は、ほぼ、第1のリンク部材70のリンク長になる。したがって、クリップリンク機構90bは、クリップリンク機構90aと比較して、短いリンク部材で、より大きいクリップピッチを設定することができる。
なお、第2の軸部材53に接続されたリンク部材70aとリンク部材70dとの間には、図10に示すように、第3のリンク部材72が回動可能に架け渡される。第3のリンク部材72は、第1の実施形態で説明したのと同様に、リンク部材70aとリンク部材70dとの開き角度θを所定角度以下に制限する。
以上説明したように、同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90bにおいて、リンク部材70a(第1のリンク部材)は、リンク部材70d(第2のリンク部材)の中間部に設けられた、第1の軸部材43と平行な軸部材58a(第5の軸部材)と回動可能に接続される。そして、クリップ担持部材30を移動経路と交差する方向(X軸方向)に延長してリンク部材70aと交差した位置に、軸部材58aと第1の軸部材43との距離と、軸部材58aと軸部材58b(第6の軸部材)との距離とが等しくなるように、第1の軸部材43と平行な軸部材58bを設ける。1端側を第1の軸部材43に接続したリンク部材70cの他端側と、1端側を軸部材58bに接続したリンク部材70bの他端側とは、軸部材58aと平行で、当該軸部材58aに対して、第1の軸部材43と軸部材58bとを結ぶ線分に関して対称な位置に設けた軸部材58cに回動可能に接続される。このようなパンタグラフ状のリンク機構を設けることによって、短いリンク部材70a(第1のリンク部材)で、より大きいクリップピッチを設定することができる。
(第3の実施形態)
次に、図11を用いて、第3の実施形態に係る同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90cについて説明する。図11は、第3の実施形態に係るクリップリンク機構の上面図及び側面図である。
クリップリンク機構90cは、前記したクリップ担持部材30を、走行ユニット97とリンク接続ユニット93とに分割した構造を有する。そして、走行ユニット97とリンク接続ユニット93とは、第1の軸部材43の周り(Z軸周り)に回転可能に設置される。また、クリップリンク機構90cは、前記したリンク支持部材60を、走行ユニット99とリンク接続ユニット98とに分割した構造を有する。そして、走行ユニット99とリンク接続ユニット98とは、第2の軸部材53の周り(Z軸周り)に回転可能に設置される。
走行ユニット97は、案内ローラ40,41と、自重受ローラ94とを備える。なお、案内ローラ40,41と自重受ローラ94とは、本開示における第1のローラの一例である。
案内ローラ40は、例えばベアリングである。案内ローラ40は、走行ユニット97の下方に、Z軸周りに回転可能に設置される。案内ローラ40は、基準レール100のクリップ側の側面に沿って転動する。
案内ローラ41は、例えばベアリングである。案内ローラ41は、走行ユニット97の下方に、案内ローラ40と対向する状態で、Z軸周りに回転可能に設置される。案内ローラ41は、基準レール100の反クリップ側の側面に沿って転動する。
自重受ローラ94は、例えばベアリングである。自重受ローラ94は、基準レール100の天面100aに、基準レール100に沿って当接する。自重受ローラ94は、走行ユニット97及びリンク接続ユニット93の自重を支えて、基準レール100に案内されて転動する。なお、図11の例では、自重受ローラ94は2個設置されているが、個数は2個に限定されるものではない。なお、自重受ローラ94は、本開示における第1の自重受ローラの一例である。
リンク接続ユニット93は、クリップ20が設置されるクリップ設置部31と、第1の長孔32を有する。第1の長孔32は、リンク接続ユニット93の上方の面にZ軸に沿って形成されて、クリップリンク機構90cの移動方向Dと交差する方向(X軸方向)に延びる。そして、リンク接続ユニット93には、第1の軸部材43において、第1のリンク部材70及び第2のリンク部材71が回動可能に接続される。
リンク接続ユニット93に接続された第1のリンク部材70及び第2のリンク部材71には、図3で説明したのと同様に、第3のリンク部材72の1端側と第4のリンク部材73の1端側とが接続される。そして、第3のリンク部材72の他端側と第4のリンク部材73の他端側とは、第1の長孔32に挿通する第9の軸部材46に接続される。
走行ユニット99は、案内ローラ50,51と、自重受ローラ95とを備える。なお、案内ローラ50,51と自重受ローラ95とは、本開示における第2のローラの一例である。
案内ローラ50は、例えばベアリングである。案内ローラ50は、走行ユニット99の下方に、Z軸周りに回転可能に設置される。案内ローラ50は、ピッチ設定レール120の反クリップ側の側面に沿って転動する。
案内ローラ51は、例えばベアリングである。案内ローラ51は、走行ユニット97の下方に、案内ローラ50と対向する状態で、Z軸周りに回転可能に設置される。案内ローラ51は、ピッチ設定レール120のクリップ側の側面に沿って転動する。
自重受ローラ95は、例えばベアリングである。自重受ローラ95は、ピッチ設定レール120の天面120aに、ピッチ設定レール120に沿って当接する。自重受ローラ95は、走行ユニット99及びリンク接続ユニット98の自重を支えて、ピッチ設定レール120に案内されて転動する。なお、図11の例では、自重受ローラ95は2個設置されているが、個数は2個に限定されるものではない。なお、自重受ローラ95は、本開示における第2の自重受ローラの一例である。
リンク接続ユニット98は、第2の長孔62を有する。第2の長孔62は、リンク接続ユニット98の上方の面にZ軸に沿って形成されて、クリップリンク機構90cの移動方向Dと交差する方向(X軸方向)に延びる。そして、リンク接続ユニット98には、第2の軸部材53において、第1のリンク部材70及び第2のリンク部材71が回動可能に接続される。
リンク接続ユニット98に接続された第1のリンク部材70及び第2のリンク部材71には、第5のリンク部材74の1端側と第6のリンク部材75の1端側とが接続される。そして、第5のリンク部材74の他端側と第6のリンク部材75の他端側とは、第2の長孔62に挿通する第12の軸部材56に接続される。
このような構造を有するクリップリンク機構90cにおいて、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θ(図3参照)を変更することによってクリップピッチを変更すると、リンク接続ユニット93の上方に、第1のリンク部材70と、第2のリンク部材71と、第3のリンク部材72と、第4のリンク部材73とで形成されるパンタグラフ状のリンク機構が、第1の長孔32に沿って変形する。その際、第1の長孔32は、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θによらずに、常にクリップリンク機構90cの移動方向Dと交差する方向を保持する。即ち、リンク接続ユニット93に設置されるクリップ20の方向は、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θ、即ちクリップピッチによらずに、常に開き角度θの2等分線の方向に保持される。
なお、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との間には、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した第3のリンク部材72が架け渡される。第3のリンク部材72は、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明したのと同様に作用して、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θを所定角度以下に制限する。
走行ユニット97が備える案内ローラ40と、案内ローラ41と、自重受ローラ94とは、それぞれ基準レール100と線接触する。そして、その接触位置は、X軸に沿って整列する。したがって、クリップリンク機構90cが移動した際に、走行ユニット97のクリップ側と反クリップ側、即ち基準レール100を挟む両側で走行ユニット97に対して、走行方向(Y軸方向、即ち移動方向D)に作用する力の差が生じた場合、走行ユニット97には、当該走行ユニット97をZ軸周りに回転させる力(モーメント)が働く。そのため、走行ユニット97は、基準レール100に沿って移動しながら、移動方向Dと交差する方向から向きを変えようとする。しかし、走行ユニット97は、基準レール100を案内ローラ40と案内ローラ41とで挟み込んでいるため、向きは変わらない。さらに、リンク接続ユニット93は、前記したように、クリップピッチによらずに、移動方向Dと交差する方向に向きを保持する。
また、クリップリンク機構90cにおいてクリップピッチを変更すると、第1のリンク部材70と、第2のリンク部材71と、第5のリンク部材74と、第6のリンク部材75とで形成されるパンタグラフ状のリンク機構が、第2の長孔62に沿って変形する。その際、第2の長孔62は、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θによらずに、常にクリップリンク機構90cの移動方向Dと交差する方向を保持する。即ち、リンク接続ユニット98の方向は、第1のリンク部材70と第2のリンク部材71との開き角度θ、即ちクリップピッチによらずに、常に開き角度θの2等分線の方向に保持される。
走行ユニット99が備える案内ローラ50と、案内ローラ51と、自重受ローラ95とは、それぞれピッチ設定レール120と線接触する。そして、その接触位置は、X軸に沿って整列する。したがって、クリップリンク機構90cが移動した際に、走行ユニット99のクリップ側と反クリップ側、即ちピッチ設定レール120を挟む両側で走行ユニット99に対して、走行方向(Y軸方向、即ち移動方向D)に作用する力の差が生じた場合、走行ユニット99には、当該走行ユニット99をZ軸周りに回転させる力(モーメント)が働く。そのため、走行ユニット99は、ピッチ設定レール120に沿って移動しながら、移動方向Dと交差する方向から向きを変えようとする。しかし、走行ユニット99は、ピッチ設定レール120を案内ローラ50と案内ローラ51とで挟み込んでいるため、向きは変わらない。さらに、リンク接続ユニット98は、前記したように、クリップピッチによらずに、移動方向Dと交差する方向に向きを保持する。
以上説明したように、同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90cにおいて、クリップ担持部材30は、案内ローラ40,41及び自重受ローラ94(第1のローラ)を有する走行ユニット97と、クリップ設置部31を有して、第1のリンク部材70及び第2のリンク部材71が接続されるリンク接続ユニット93とを備える。そして、走行ユニット97とリンク接続ユニット93とは、第1の軸部材43の周りに回転可能に設置される。したがって、リンク接続ユニット93に設置されたクリップ20を、移動方向Dと交差する向きに安定して保持することができる。
また、同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90cは、第1の軸部材43と同軸上に設けられて、基準レール100(第1のレール)に案内される案内ローラ40(第1の案内ローラ)と、基準レール100を挟んで、案内ローラ40と対向する位置に設けられて、基準レール100に案内される案内ローラ41(第2の案内ローラ)と、基準レール100の天面100aに、移動方向Dに沿って当接して、クリップ担持部材30の自重を支えて移動する自重受ローラ94(第1の自重受ローラ)とを備える。したがって、走行ユニット97が備える第1のローラ(案内ローラ40,41及び自重受ローラ94)を一列構成としても、リンク接続ユニット93の向きを移動方向Dと交差する方向、即ちX軸方向に規制することができる。これによって、走行ユニット97を小型化することができるとともに、クリップリンク機構90cを、基準レール100に沿って円滑に移動させることができる。
また、同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90cにおいて、リンク支持部材60は、案内ローラ50,51及び自重受ローラ95(第2のローラ)を有する走行ユニット99と、第1のリンク部材70及び第2のリンク部材71が接続されるリンク接続ユニット98とを備える。そして、走行ユニット99とリンク接続ユニット98とは、第2の軸部材53の周りに回転可能に設置される。したがって、リンク接続ユニット98を、移動方向Dと交差する向きに安定して保持することができる。
また、同時2軸延伸装置10のクリップリンク機構90cは、第2の軸部材53と同軸上に設けられて、ピッチ設定レール120(第2のレール)に案内される案内ローラ50(第3の案内ローラ)と、ピッチ設定レール120を挟んで、案内ローラ50と対向する位置に設けられて、ピッチ設定レール120に案内される案内ローラ51(第4の案内ローラ)と、ピッチ設定レール120の天面120aに、移動方向Dに沿って当接して、リンク支持部材60の自重を支えて移動する自重受ローラ52(第2の自重受ローラ)とを備える。したがって、走行ユニット99が備える第2のローラ(案内ローラ50,51及び自重受ローラ95)を一列構成としても、リンク接続ユニット98の向きを移動方向Dと交差する方向、即ちX軸方向に規制することができる。これによって、走行ユニット99を小型化することができるとともに、クリップリンク機構90cを、ピッチ設定レール120に沿って円滑に移動させることができる。