JP2021119210A - セルロースファイバーボールおよびこれを含有する紙 - Google Patents

セルロースファイバーボールおよびこれを含有する紙 Download PDF

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咲子 中田
雅人 高山
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雅人 高山
浩由 鈴木
Hiroyoshi Suzuki
浩由 鈴木
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Abstract

【課題】比較的高い含水率においてもパウダー(粉体)として存在するカルボキシメチル化セルロースファイバーボールを提供する。【解決手段】下記(1)および(2)を満たす、カルボキシメチル化された微細セルロース繊維が絡まりあって形成されるセルロースファイバーボール。(1)レーザー回折式粒度計を用いた湿式測定による平均粒子径(D50)が50μm〜2mm。(2)含水率50重量%における安息角が45°超58°未満【選択図】図1

Description

本発明はセルロースファイバーボールおよびこれを含有する紙に関する。
セルロース繊維は主に木材を原料とする繊維であり製紙用途等で使用されているが、高機能化すること等により製紙以外の種々の分野での応用が期待されている。一般的に、製紙用途で使用されるパルプはセルロース繊維からなり、叩解などの機械的な処理により繊維表面の微細繊維化(フィブリル化)を促進させてから使用される。フィブリルは紙をはじめとする基材中での水素結合点を増やすことにより基材に強度を付与する。水酸基を多く有するセルロース繊維は水との親和性が高いため水中で繊維が広がりやすく保水性が高いが、一方で水持ちが良すぎることで搬送や反応に供する際の仕込み等において取扱性が必ずしも良いとはいえなかった。
また、近年新素材としてセルロースナノファイバーが注目されている。セルロースナノファイバーはその製造方法によって機械的に微細化したものと、微細化の効率向上や機能性付与のために化学的な変性を行った上で機械的に微細化したものに大別される。微細化効率や機能性の観点から、アニオンやカチオン性の置換基をパルプに導入した化学変性パルプを原料とするセルロースナノファイバーに期待が集まっており、様々な検討がなされている。しかし化学変性パルプは通常のパルプと比較して親水性が非常に高く、さらに微細化が進むほど繊維表面の親水性基量が増加するため、含水状態での取扱性が困難であるとの課題があった。
ところでセルロースを原料とする素材として、セルロースを粉砕したセルロースパウダーやセルロースをビーズ状にして酵素等の固定化剤として使用することが知られている。例えば特許文献1にはセルロースビーズの表面を酸化して機能性を付与したセルロースビーズが提案されている。また、特許文献2にはセルロースナノファイバーが複数結合し、平均円形度が0.7以上1.0未満の形状で、少なくとも一つの機能性材料を含有した粒子状セルロース複合体が開示されている。
特開2009−209218号公報 特開2018−87256号公報
発明者らは、複数の微細セルロース繊維を毛玉のように絡み合せて粒子とすることができれば、取扱性に優れたセルロース系材料を得ることができるとの着想を得た。特に、カルボキシメチル化された微細セルロース繊維を毛玉のように絡み合せて粒子とできれば、食品、化粧品、医薬品の分野への応用が期待できる。特許文献1に記載されたセルロースビーズはビーズ状のセルロースであり、セルロース繊維が集合してなる粒子ではない。また、特許文献2に記載の粒子状セルロース複合体は、含水率が高くなるとスラリーまたはゲル状となり、パウダー(粉体)ではなくなる。かかる事情を鑑み、本発明は比較的高い含水率においてもパウダー(粉体)として存在するカルボキシメチル化セルロースファイバーボールを提供することを課題とする。
前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]下記(1)および(2)を満たす、カルボキシメチル化された微細セルロース繊維が絡まりあって形成されるセルロースファイバーボール。
(1)レーザー回折式粒度計を用いた湿式測定による平均粒子径(D50)が50μm〜2mm
(2)含水率50重量%における安息角が45°超58°未満
[2]前記カルボキシメチル化された微細セルロース繊維のグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が、0.01以上0.5未満である、[1]に記載のセルロースファイバーボール。
[3]下記(3)を満たす、[1]または[2]に記載のセルロースファイバーボール。
(3)含水率10重量%における安息角が42°超55°未満
[4]前記平均粒子径(D50)が50μm〜1mmである、[1]〜[3]いずれかに記載のセルロースファイバーボール。
[5]平均アスペクト比(L/D)が10以下である、[1]〜[4]いずれかに記載のセルロースファイバーボール。
[6]前記[1]〜[5]いずれかに記載のセルロースファイバーボールを含む、パウダー。
[7]前記[1]〜[5]いずれかに記載のセルロースファイバーボールを含む、紙。
[8]前記[1]〜[5]いずれかに記載のセルロースファイバーボールの製造方法であって、
(A1)原料パルプをカルボキシメチル化する工程、
(A2)前記工程で得られたカルボキシメチル化パルプと水を含み、固形分濃度が15重量%以上である混合物を機械的処理して、セルロースファイバーボールを形成する工程、
を含む製造方法。
本発明によって比較的高い含水率においてもパウダーとして存在するカルボキシメチル化セルロースファイバーボールを提供できる。
カルボキシメチル化セルロースファイバーボールのレーザー顕微鏡による観察像。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X〜Y」はその端値であるXとYを含む。
1.カルボキシメチル化セルロースファイバーボール
カルボキシメチル化セルロースファイバーボールとは、カルボキシメチル化された微細セルロース繊維が毛玉のように絡み合って形成された略球状(球体または楕円体)の材料(集合体)である(図1)。1つのカルボキシメチル化セルロースファイバーボールは1本のカルボキシメチル化微細セルロース繊維から形成されうるが、好ましくは複数のカルボキシメチル化微細セルロース繊維から形成される。以下、カルボキシメチルを「CM」、カルボキシメチル化を「CM−」、カルボキシメチル化セルロースファイバーボールを「CM−CFB」とも表記する。カルボキシメチル化された微細セルロース繊維は、カルボキシメチル化セルロース繊維またはその塩(CMC)を解繊して得ることができる。1つのCM−CFBは絡み合っていないCM−微細セルロース繊維を含んでいてもよい。
(1)平均粒子径
CM−CFBのレーザー回折式粒度計を用いた湿式測定による平均粒子径(D50)は50μm〜2mmである。後述するとおりCM−CFBからミクロフィブレイテッドセルロースファイバーを製造できる。しかしながら前記平均粒子径が上限値を超えるとミクロフィブレイテッドセルロースファイバーの製造が困難になりうる。また平均粒子径が下限値未満であると、製造工程においてCM−CFBを単離する際に取扱性が困難となる場合がある。この観点からCM−CFBの湿式測定による平均粒子径(D50)は50μm〜1.5mmであることが好ましく、50μm〜1mmであることがより好ましい。また、CM−CFBが水等の分散媒に分散している場合、その平均粒子径はpH等によって変動する。よって、本発明における平均粒子径や後述するアスペクト比は、pH6以下の酸性の分散液を用いて測定される。
(2)含水率50重量%における安息角
従来知られているセルロースのパウダーは、含水率が30重量%程度を超える高い領域ではダマになりパウダーテスターでは測定できない。特にCM−セルロースのパウダーは水に溶解または膨潤しやすい。しかし本発明のCM−CFBは含水率が30%重量を超える高い領域においてもパウダーテスターで測定可能なパウダーとして取扱いができる。当該CFBは含水率50重量%において45°を超え58°未満の安息角を呈する。この理由は限定されないが、含水率が高い場合でも、水の大部分が個々のCM−CFBの内部に存在するのでパウダーとしての性能が失われないためであると推察される。また、CM−CFBは広範な含水率において比較的高い安息角を呈する。CM−CFBは、好ましくは含水率10重量%において、42°を超え55°未満の安息角を呈する。比較的高い安息角を呈することにより、CM−CFBの取扱性が向上する。例えば、供給機からCM−CFBを排出する際、供給機出口からCM−CFBが勝手に流れ出す、想定以上に流れ出てしまうといった現象が起こりづらくなり、供給量の管理が容易になる。
CM−CFBの含水率は公知の乾燥方法で調整できる。含水率が35重量%を超える高い領域では、個々のCM−CFBが帯電しにくいので、粉立ちしにくいという特徴を備える。よって、一態様において、前記含水率の上限は、好ましくは85重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは75重量%以下であり、下限は好ましくは40重量%以上、より好ましくは45重量%以上である。一方、前記含水率が低いと、風送および袋詰等による搬送時の搬送効率が向上する。よって、別態様において、前記含水率の上限は、好ましくは35重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下であり、その下限は0重量%でもよく、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上である。含水率はJIS P 8203に従い、例えば熱風循環式定温乾燥機(東京硝子器械株式会社製)を用いて測定される。
CM−CFBの安息角は、パウダーテスター(PT−X型、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて、以下の方法によって測定される。1)金属製漏斗の孔(直径φ5mm)からサンプルを一定面積の水平板の上に一定形状となるまで落下堆積させ、円錐状の検体を形成する。2)Peak Operationモードによって、当該円錐状の検体の頂点と底辺との角度の値を測定し、安息角を求める。CM−CFBは含水率50重量%において58°未満の安息角を呈する。安息角が58.0°以上である場合、パウダーとしての取扱が困難となり固体としての取扱性が悪化する。CM−CFBはパウダーとしての取扱容易性を有するため、前記安息角の下限値は特に限定されないが、好ましくは42°超であり、より好ましくは45°以上であり、さらに好ましくは48°以上である。
(3)アスペクト比(L/D)
CM−CFBのアスペクト比(L/D)は10以下であり、好ましくは8以下である。L/Dの下限は限定されないが、好ましくは1以上である。L/Dは任意の顕微鏡、例えばバルメット株式会社製フラクショネータやデジタルマイクロスコープ(ニコン社製)、レーザー顕微鏡(オリンパス社製)で、CM−CFBが水に分散した分散液(pH6以下)中のCM−CFBを観察することにより測定できる。L(粒子の長軸の長さ)およびD(粒子の短軸の長さ)を目視によって判断し、画像解析ソフトを用いてそれぞれの長さを測定することで算出する。長軸は、粒子の長手方向において最大長さを示す軸として決定され、短軸は長軸に直交し、かつ当該方向において最大長さ(幅)示す軸として決定される。
(4)他の特性
CM−CFBは特定の条件下において、自己を形成しているCM−微細セルロース繊維(好ましくは後述するCM−MFC)にほぐれるという崩壊性を有する。具体的に、CM−CFBは、2重量%の酸性水懸濁液とした後に当該懸濁液のpHを中性〜アルカリ性とすると水中で崩壊し、微細セルロース繊維が水中に分散した分散液を生成する。酸性水懸濁液のpHは2以上6未満程度であることが好ましい。また当該懸濁液を中性〜アルカリ性にする場合、pHは6以上であることが好ましい。
微細セルロース繊維とは、平均繊維径が500nm未満のセルロースナノファイバー(以下「CNF」ともいう)および500nm以上のミクロフィブリレイテッドセルロース(以下「MFC」ともいう)を総称した繊維をいう。CM−CFBが崩壊して得られたCM−微細セルロース繊維は好ましくはCM−MFCである。MFC、CNFについては後述する。
このようにして得られた分散液におけるCM−微細セルロース繊維の繊維長分布は、0.6mm以下の繊維の割合が15%以上であることが好ましい。当該割合が15%未満であると叩解による繊維の微細化が不十分であり、CM−微細セルロースとしての機能を十分に発揮しないからである。前記割合の上限は限定されず100%以下であることが好ましい。CM−CFBを直接分析して繊維長分布を測定することはできないので、このようにして測定された繊維長分布を、CM−CFBを構成しているCM−微細セルロース繊維の繊維長分布とみなしてよい。
前記懸濁液のpHが酸性(好ましくはpH=4.5)であるときの電荷密度の大きさをa(meq./g)、中性〜アルカリ性(好ましくはpH=7.5)であるときの電荷密度の大きさをb(meq./g)としたとき、b−aは0.05(meq./g)以上であることが好ましい。当該差がこの範囲であると、CM−セルロースのCM基のうち乖離型の割合が十分に高くCM−セルロース同士が電気的に反発するため、CM−CFBが崩壊しやすい。b−aの上限は限定されないが1(meq./g)以下であることが好ましい。電荷密度とは所定量のセルロース繊維当たりの電荷の密度であり、例えば粒子表面電荷量測定装置(MUTEK製、Particle Chargedetector, PCD03)を用いてカチオン要求量を測定し、アニオン電荷密度を算出することで測定される。
(5)他の成分
CM−CFBは微細セルロース繊維以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、化学繊維などの各種有機繊維、各種無機顔料、澱粉やラテックス等の各種接着剤成分、カチオン系、ノニオン系、アニオン系などの各種凝集剤、染料、顔料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。CM−CFBは形成過程においては接着剤などを要しないという特徴を有するため、上記各種添加成分はCM−CFBの用途に合わせて必要な性能を付与するために添加される。これらの成分は、一態様においてCM−CFBの内部に取り込まれており、別態様においてCM−CFB表面に付着する等して存在する。
(6)CM−CFBの用途
CM−CFBは分散媒を含む分散液として取扱うことができ、あるいは分散媒を除去してパウダーとして取り扱うこともできるので、取扱性に優れ、かつ輸送に便利であるという利点を有する。また、前述のとおり、各種機能性を付与するための成分を添加して製造することで、機能性を有するCM−CFBを得ることができる。さらに、後述するとおり、CM−CFBはCM−MFCまたはCM−CNF等のCM−微細セルロース繊維の原料となる。さらにまた、CM−CFBの分散液およびパウダーは一般的に添加剤が用いられる様々な分野において、増粘剤、ゲル化剤、糊剤、食品添加剤、賦形剤、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、研磨剤、ゴム・プラスチック用配合材料、保水材、保形剤、泥水調整剤、ろ過助剤、溢泥防止剤、混和剤等として使用することができる。当該分野としては、食品、飲料、化粧品、医薬、製紙、各種化学用品、塗料、スプレー、農薬、土木、建築、電子材料、難燃剤、家庭雑貨、接着剤、洗浄剤、芳香剤、および潤滑用組成物等が挙げられる。当該分野としては、食品、飲料、化粧品、医薬、および製紙分野が特に好ましい。
本発明のCM−CFBは他の粒子(例えば、非セルロース繊維集合体等)と混合してCM−CFBを含むパウダーとしても使用できる。当該パウダー中、他の粒子の含有量は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは8重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下である。またその下限値は限定されないが、好ましくは0重量%超、より好ましくは0.5重量%以上である。
(7)CM−MFC、CM−CNF
CM−微細セルロース繊維とは、平均繊維径が500nm未満のCM−セルロースナノファイバー(CNF)および500nm以上のCM−ミクロフィブリレイテッドセルロース(MFC)を総称した繊維をいう。当該平均繊維径は長さ加重平均繊維径であり、例えばバルメット株式会社製フラクショネータや光学顕微鏡、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて前記微細セルロース繊維を観察することにより測定できる。CM−MFCとCM−CNFでは平均繊維径の測定方法が異なる。そこで、まず、得られたCM−微細セルロース繊維の平均繊維径を、ABB株式会社製ファイバーテスターやバルメット株式会社製フラクショネータ等の画像解析に供して、CM−MFCとCM−CNFのいずれであるかを決定する。そして、得られたCM−微細セルロース繊維がCM−MFCである場合、前記フラクショネータで測定して平均繊維径を求める。また、CM−微細セルロース繊維がCM−CNFである場合はAFMを用いて平均繊維径を測定できる。
CM−MFCの平均繊維径の下限は好ましくは500nm以上であり、より好ましくは1μm以上であり、さらに好ましくは5μm以上であり、上限は、好ましくは60μm以下であり、より好ましくは40μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。当該MFCの平均繊維長は5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。その上限は3000μm以下が好ましく、1500μm以下程度がより好ましく、1100μm以下がさらに好ましい。本発明において平均繊維長は長さ加重平均繊維長である。
CM−CNFの平均繊維径は好ましくは500nm未満であり、より好ましくは150nm以下であり、さらに好ましくは20nm以下、19nm以下、または15nm以下である。その下限は好ましくは1nm以上であり、より好ましくは2nm以上であり、さらに好ましくは3nm以上である。当該CNFの平均繊維長は好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下である。当該CNFの平均繊維長は好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下である。平均繊維長の下限は0.1μm以上程度である。アスペクト比は好ましくは20以上であり、さらに好ましくは40以上である。アスペクト比の上限は特に限定されないが、500以下程度、好ましくは400未満である。平均繊維長および繊維径は、前述のとおり得られたCM−微細セルロース繊維がCM−CNFであることを確認した上で、径が20nm未満の場合は原子間力顕微鏡(AFM)、20nm以上の場合は、電解法出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について、解析し、平均を算出することにより測定することができる。また、このようにして得られた値を用いて、下記の式によりアスペクトを算出すことができる。 アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
CM−MFCと原料であるCM−セルロース繊維とは機械的処理の度合いが異なる。機械的処理の度合いは繊維を直接観察することによって確認できる。また、機械的処理の度合いを定量化することは一般に容易ではないが、機械処理後の濾水度や保水度の変化量や表面積(例えばBET)の変化量で定量化することも可能である。一例として、CM−セルロースの場合を説明する。この場合、CM−MFCの解繊前のCM−パルプの濾水度(F)が10mL以上変化する程度に機械的処理、特に叩解して得たものであることが好ましい。すなわち、処理後の濾水度をFとすると、濾水度の差ΔF=|F−F|は10mL以上であることが好ましく、20mL以上であることがより好ましく、30mL以上であることがさらに好ましい。パルプの濾水度は変性の度合いによって異なるが、機械的処理前のパルプの濾水度を基準とするため、前記定義によって化学変性の度合いに因らず機械的処理の度合いを特定できる。Fは変性の度合いによって異なるため、ΔFの上限を一義に定めることは困難であるが、処理後の濾水度FはFよりも小さくなるか、もしくはパルプが機械的処理によって非常に微細になることで、Fよりも大きくなる(叩解後パルプが水と一緒にメッシュを抜ける)。このようにして得たCM−MFCのバルメット株式会社製フラクショネータによって求めたフィブリル化率は1.0%以上であることが好ましく、1.2%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることがさらに好ましい。パルプの種類によってフィブリル化率が異なるが、上記範囲であれば、十分に機械的処理が行われていると考えられる。
CM−MFCは、機械的処理を行う前のCM−パルプのフィブリル化率(f)が0.05ポイント以上向上する程度に機械的処理を行って得られたものであることが好ましい。すなわち、処理後のフィブリル化率をfとすると、フィブリル化率の差Δf=f−fは0を超えていればよく、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.1ポイント以上、さらに好ましくは0.2ポイント以上である。
前記機械的処理の度合いは、前述の指標以外にスラリーとしたときの吸光度、粘度特性(たとえば回転数−粘度の関係)、比表面積、保水能等によっても評価できる。
CM−MFCおよびCM−CNFのセルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、好ましくは0.50未満である。当該置換度が0.50以上であると水への溶解が起こりやすくなり、繊維形態を維持できなくなる。操業性を考慮すると当該置換度は0.02以上0.50未満であることがより好ましく、0.05以上0.50未満であることがさらに好ましく、0.10以上0.40以下であることがよりさらに好ましく、0.20以上0.40以下であることが特に好ましい。セルロースにカルボキシメチル基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発するため、微細セルロース繊維へと解繊することができるようになるが、前記置換度が0.02より小さいと、ナノファイバーへの解繊が十分にできない場合がある。カルボキシメチル置換度は、反応させるカルボキシメチル化剤の添加量、マーセル化剤の量、水と有機溶媒の組成比率をコントロールすること等によって調整することができる。
本発明において無水グルコース単位とは、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味する。また、カルボキシメチル置換度(エーテル化度ともいう。)とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基のうちカルボキシメチルエーテル基に置換されているものの割合(1つのグルコース残基当たりのカルボキシメチルエーテル基の数)である。カルボキシメチル置換度をDSと略すことがある。
カルボキシメチル置換度の測定方法は以下のとおりである。
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えて液を調製する。前記三角フラスコにこの液100mLを加え、3時間振盪して、試料(カルボキシメチル化セルロースの塩(CMC)等)をH型(H−CMC(水素型カルボキシメチル化セルロース)など)に変換する。その絶乾H−CMCを1.5〜2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLでH−CMCを湿潤し、0.1N−NaOHを100mL加え、室温で3時間振盪する。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−HSOで過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってカルボキシメチル置換度(DS値)を算出する。
A=[(100×F'−0.1N−HSO(mL)×F)×0.1]/(H−CMCの絶乾質量(g))
カルボキシメチル置換度=0.162×A/(1−0.058×A)
F':0.1N−HSOのファクター
F:0.1N−NaOHのファクター。
CM−MFCおよびCM−CNFにおけるセルロースの結晶化度は、結晶I型が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。結晶性を上記範囲に調整すると解繊により得られるセルロースナノファイバー分散体の透明度が向上する。セルロースの結晶性は、マーセル化剤の濃度と処理時の温度、ならびにカルボキシメチル化の度合によって制御できる。マーセル化およびカルボキシメチル化においては高濃度のアルカリが使用されるために、セルロースのI型結晶がII型に変換されやすいが、アルカリ(マーセル化剤)の使用量を調整するなどして変性の度合いを調整することによって、所望の結晶性を維持させることができる。
セルロースI型の結晶化度の測定方法は、以下のとおりである。
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD−6000、島津製作所製)を用いて測定する。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10°〜30°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する。
Xc=(I002c―Ia)/I002c×100
Xc=セルロースのI型の結晶化度(%)
002c:2θ=22.6°、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5°、アモルファス部分の回折強度。
結晶化度測定用試料として、次の1)〜9)の手順で調製した凍結乾燥サンプルを、タブレット状に成型して使用する。
1)CM−MFCまたはCM−CNFの約2重量%水分散体を、固形分が約0.1gとなるように取り分け遠心分離の容器に入れ、100mLのエタノールを加える。
2)撹拌子を入れ、500rpmで30分以上撹拌する。
3)撹拌子を取り出し、遠心分離機で、7000G、30分、30℃の条件でCM−MFCまたはCM−CNFを沈降させる。
4)CM−MFCまたはCM−CNFをできるだけ除去しないようにしながら、上澄みを除去する。
5)100mLのエタノールを加え、撹拌子を加え、2)の条件で撹拌、3)の条件で遠心分離、4)の条件で上澄み除去をし、これを3回繰り返す。
6)前記5)の溶媒をエタノールからt−ブタノールに変更し、t−ブタノールの融点以上の室温下で、5)と同様にして撹拌、遠心分離、上澄み除去を3回繰り返す。
7)最後の溶媒除去後、t−ブタノールを30mL加え、軽く混ぜた後、内容物をナスフラスコに移し、氷浴を用いて凍結させる。
8)冷凍庫で30分以上冷却する。
9)前記冷蔵庫に凍結乾燥機を取り付け、3日間凍結乾燥する。
2.CM−CFBの製造方法
CM−CFBは、以下の工程を備える方法によって製造されることが好ましい。
(A1)原料パルプをカルボキシメチル化する工程。
(A2)前記工程で得たカルボキシメチル化パルプ(CM−パルプ)と水を含み、固形分濃度が15重量%以上である混合物を機械的処理して、CM−CFBを形成する工程。
(1)工程(A1)
[原料パルプ]
本工程では原料パルプを化学変性して化学変性パルプを得る。原料パルプとしては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹未漂白サルファイトパルプ(LUSP)、広葉樹漂白サルファイトパルプ(LBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、加圧砕木パルプ(PGW)、リファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、アルカリ過酸化水素メカニカルパルプ(APMP)、アルカリ過酸化水素サーモメカニカルパルプ(APTMP)、リンター、ジュート、麻、コウゾ、ミツマタ、ケナフ等の草本由来のパルプ、竹由来のパルプ、再生パルプ、古紙パルプ、再生セルロース繊維、合成繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。
[カルボキシメチル化]
カルボキシメチル化とはパルプにカルボキシメチル基を導入することであり、エーテル化ともいう。カルボキシメチル化は公知の方法(例えば、水媒法または溶媒法)に従って実施できる。水媒法は、セルロース原料にモノクロロ酢酸などのエーテル化剤と触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加え、水が主成分の媒体下で反応させる方法である。溶媒法は、セルロース原料にモノクロロ酢酸などのエーテル化剤と触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加え、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の低級アルコールが主成分の媒体下で反応させる方法である。水媒法は、解繊前に乾燥工程を必要としないことから好ましい。
カルボキシメチル化反応におけるセルロース原料の濃度は、特に限定されないが、モノクロロ酢酸の有効利用率を高める観点から、好ましくは10%(w/v)以上、より好ましくは20%(w/v)以上、さらに好ましくは30%(w/v)以上である。
セルロース原料を、0.5〜3cm角の大きさにすると、カルボキシメチル化を均一に進行させやすいので好ましい。これ以上大きいと、薬液とセルロース原料との均一混合が難しくなる傾向がある。また、これより小さいと、得られるCM−セルロース繊維の粘度が低くなる、あるいは洗浄が困難となる傾向がある。
反応の際には、薬液とセルロース原料とを均一に混合できる撹拌装置を用いることが好ましい。例えば、2本の軸が原料と薬液を撹拌混合するようなバッチ型撹拌装置は、均一混合性と生産性の両者から好ましい。また、薬液をスプレー等の装置を用いてセルロース原料に添加すると、均一に混合されやすいので好ましい。
本発明では、セルロースのグルコース単位当たりのDSを0.01以上0.5未満とすることが好ましい。セルロースにCM基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発するので容易にナノオーダーの繊維径にまで解繊することができる。前記置換度が0.01より小さいと十分に解繊することができず、一方で、DSが0.50以上であると膨潤または溶解するため繊維形態を維持できなくなる場合がある。前記DSは、水媒法、溶媒法ともに、反応させるエーテル化剤の添加量、触媒であるアルカリ量、水や低級アルコールなどの溶媒の組成比率によって調整できる。
セルロースの結晶性は、アルカリ金属の濃度と処理時の温度、およびカルボキシメチル化の度合によって制御できる。カルボキシメチル化においては高濃度のアルカリが使用されるために、セルロースのI型結晶がII型に変換されやすいが、アルカリの使用量を調整するなどして変性の度合いを調整することによって、所望の結晶性を維持させることができる。水媒法を用いると、溶媒法に比べて、I型とII型が共存した状態のCM−セルロース原料を製造しやすい。
(2)工程(A1’)
本発明のCM−CFBの製造方法は、前記工程で得たCM−パルプを酸処理する工程(A1’)を備えてもよい。CM−パルプのカルボキシメチル基の末端が乖離している、すなわち乖離型である場合は、パルプの親水性が高くなり、工程(A2)に供する際にパルプの濃度を高くすることが難しくなることがある。このため工程(A1)と工程(A2)工程の間に酸処理する工程(A1’)を設けることが好ましい。本工程で使用する酸は限定されないが、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸が好ましい。処理方法も限定されないが、水等の分散媒にCM−パルプを分散し、当該分散液に酸を添加することで実施できる。この際、分散液のpHは好ましくは2〜6、より好ましくは4〜5に調整される。また、分散液の固形分濃度は0.5〜10重量%が好ましい。酸処理されたCM−パルプは乖離型ではなく酸型のカルボキシメチル基を多く有する。具体的には、−O−COOM(Mは金属イオン)ではなく−O−COOHを有する。
(3)工程(A2)
本工程ではCM−パルプに機械的処理を施す。本発明において機械的処理とは、繊維に機械的剪断力を与え、フィブリル化または繊維の微細化を行う処理をいい、叩解、解繊、分散、混錬等を含む。微細化は繊維長、繊維幅等が小さくなることいい、フィブリル化は繊維の毛羽立ちが多くなることをいう。
本工程では高濃度化が可能なCM−パルプを用いることが好ましく、一態様として工程(A1’)の酸処理工程を経てCM基を酸型としたCM−パルプを使用することが好ましい。酸型としたCM−パルプを本工程に供する場合、酸型を保つために、機械的処理は酸性条件下(好ましくはpH5以下)で行うことが好ましい。機械的処理はCM−パルプと分散媒の混合物を用いて実施されるが、その際の混合物の固形分濃度は15重量%以上である。固形分濃度とは、機械的処理に供される前記混合物における固形分の濃度であり、通常はCM−パルプの濃度である。分散媒は本発明のCM−CFBを形成することができれば限定されず、有機溶媒や水を用いることができるが、好ましくは水である。当該濃度が15重量%未満である場合、パルプにかかる剪断力が不足するためCM−CFBが形成されない可能性がある。本工程での機械的処理は叩解であることが好ましい。当該処理に用いる装置は特に限定されないが、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧または超高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー、高速離解機、トップファイナーなど回転軸を中心として金属または刃物とパルプ繊維を作用させるもの、あるいはパルプ繊維同士の摩擦によるものを使用することができる。機械的処理は1回以上実施されるが、所望のCM−CFB粒子径を達成するためにその回数は適宜調整される。また後述するようにCM−CFBを原料としてCM−MFCやCM−CNFを製造できるが、その際に所望のフィブリル化率を達成するためにも処理回数は調整される。
固形分濃度が15重量%以上と高い前記混合物に機械的処理を施すことで、繊維が絡み合い、CM−CFBが形成される。このメカニズムは限定されないが、繊維同士がこすりあわされることにより剪断力を受けるので、繊維が叩解されるとともに繊維同士が絡み合って集合し、CM−CFBを形成するためと考えられる。この場合、酸処理されたCM−パルプを用いると、より効率よくCM−CFBを形成できる。このメカニズムは限定されないが次のように推察される。CM−パルプの叩解は、通常、当該パルプと水の混合物を用いて実施される。しかしカルボキシメチル基が塩型(Na塩)などの乖離型になっていると水により膨潤しやすくゲルを形成しやすいので、機械的に脱水してパルプ濃度を高くすること(高濃度化)が困難となる。そのため、パルプの濃度が低い条件で叩解処理を行う必要がある。この場合、繊維同士の絡み合いが少ないため叩解処理によってフィブリル化は進むが複数の繊維が絡み合ったCM−CFBは形成されにくい。一方、CM基が乖離型でなく酸型になっていると分散液がゲル化しにくいので固形分濃度を高くすることができる。この状態で叩解処理を施すと、前述のとおり繊維同士がこすりあわされることにより剪断力を受けるので、繊維が叩解されるとともに繊維同士が絡み合って集合し、CM−CFBを形成すると考えられる。この際に、分散液に後述する他の成分を存在させておくと、CM−CFB中に当該成分を取り込むことができる。
CM−CFB形成のし易さの観点から、前記混合物の固形分濃度は15重量%以上であるが、17%重量以上が好ましく、19重量%以上がより好ましく、21重量%以上がさらに好ましい。固形分濃度が過度に高いと処理効率が低下するので、固形分濃度の上限は70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、50重量%以下がさらに好ましい。固形分中のCM−パルプ以外の成分については後述する。本発明においては、機械的処理開始時の固形分濃度を当該処理における固形分濃度という。
3.CM−MFCの製造方法
CM−CFBからCM−MFCを製造することができる。具体的に当該方法は以下の工程を備えることが好ましい。
(B1)CM−CFBを準備する工程。
(B2)CM−CFBをアルカリ処理する工程。
(1)工程(B1)
当該工程は前述のとおりに実施できる。
(2)工程(B2)
本工程ではCM−CFBをアルカリ処理する。当該処理によって、CM−セルロース繊維が絡み合って形成されていた集合体がほぐれてCM−MFCが得られる。当該処理の方法は限定されないが、水等の分散媒にCM−CFBを分散させ、当該分散液にアルカリを添加することで実施できる。この際、アルカリ添加後の分散液のpHは好ましくは6〜14、より好ましくは7〜9に調整される。また、分散液の固形分濃度は0.5〜10重量%が好ましい。
当該方法においては、CM−MFCを製造できる範囲において、工程B1およびB2に加えて、追加的な処理を行ってもよい。例えば、B2の工程の後に、追加的に機械的処理を施すことができる。当該追加的な機械的処理として、具体的には前述の機械的処理を行うことができる。
本工程によってCM−MFCが得られるメカニズムは限定されないが次のように推察される。CM−CFBを構成しているCM−セルロース繊維のCM基がアルカリによってNa塩等の乖離型に変換される。するとCM−セルロース繊維のCM基が電離し、負電荷同士の反発が起きるため、繊維がほぐれてCM−MFCが形成されると考えられる。2価以上のイオンは架橋により繊維の分散を抑制する可能性があるため、この観点から、本工程で使用するアルカリは1価のイオンを含むことが好ましい。当該アルカリとしては、KOH、NaOH等が挙げられる。
4.CM−CNFの製造方法
前記のとおりにして得たCM−MFCに機械的処理を施すことでCM−CNFを製造できる。具体的に当該方法は以下の工程を備えることが好ましい。
(C1)CM−CFBを準備する工程。
(C2)CM−CFBをアルカリ処理してCM−MFCを得る工程。
(C3)CM−MFCに機械的処理を施す工程。
(1)工程(C1)、(C2)
これらの工程は前述のとおりに実施できる。
(2)工程(C3)
ここでの機械的処理はCM−MFCに強いせん断力を印加しナノ化してCM−CNFとする処理をいい、具体的には解繊処理であることが好ましい。当該処理に用いる装置は限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式、あるいはキャビテーションや水流または水圧によってパルプ繊維を解繊する方式などの装置が挙げられる。中でも、キャビテーションを用いる装置もしくは高圧または超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の、高圧または超高圧ホモジナイザーがより好ましい。これらの装置は、変性セルロースに強力なせん断力を印加することができるからである。せん断速度は1000sec−1以上が好ましい。これにより、凝集構造が少なく、均一にナノファイバー化することができる。化学変性セルロースに印加する圧力は、好ましくは50MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。
ここでの機械的処理は、通常、CM−MFCが分散媒中に分散した分散体を用いて実施される。分散媒は、通常、水等の水系分散媒が好ましい。分散に先立ち、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理としては、例えば、混合、撹拌、乳化が挙げられ、公知の装置(例えば、高速せん断ミキサー)を用いて行えばよい。分散体中のCM−MFCの固形分濃度の下限は、通常は0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上である。この濃度であると原料に対する液量が適量となり効率的な解繊を行うことができる。当該濃度の上限は、通常10重量%以下であり、好ましくは6重量%以下である。この濃度であると分散体の流動性を保持することができる。
このようにして得られたCM−MFCおよびCM−CNFは、カルボキシメチル化により置換基が導入されているため、機械的解繊によってのみ微細化された化学変性されていない微細セルロース繊維と比較して、機能性や保水性等の各種特性に優れる。このため、CM−MFCおよびCNFは保水性を求められる用途に幅広く使用することができる。当該MFCおよびCNFは、CM−CFBと同様に一般的に添加剤が用いられる様々な分野において、増粘剤、ゲル化剤、糊剤、食品添加剤、賦形剤、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、研磨剤、ゴム・プラスチック用配合材料、保水材、保形剤、泥水調整剤、ろ過助剤、溢泥防止剤、混和剤等として使用することができる。当該分野としては、食品、飲料、化粧品、医薬、製紙、各種化学用品、塗料、スプレー、農薬、土木、建築、電子材料、難燃剤、家庭雑貨、接着剤、洗浄剤、芳香剤、潤滑用組成物等が挙げられる。
5.紙
本発明の紙はCM−CFBを含む。CM−CFBによって、紙に紙力強度向上等の機能を付与することができる。CM−CFBは紙に内添されてもよいし、外添されてもよい。内添による場合は原紙層にCM−CFBを含む紙となり、外添による場合は原紙層上にCM−CFBを含む層(好ましくは塗工層)を有する紙となる。これらの紙は、印刷用紙や情報用紙、産業用紙、家庭紙、包装材料等として好適である。原紙層中、CM−CFBの含有量は0.01〜20重量%であることが好ましい。また、前記塗工層中、CM−CFBの含有量は0.01〜20重量%であることが好ましい。
6.紙の製造方法
CM−CFBが内添された紙は、以下の工程を経て製造されることが好ましい。
(D1)CM−CFBとパルプを含むスラリーを調製する工程。
(D2)前記スラリーを抄紙する工程。
[工程D1]
CM−CFBは前述のとおりに調製される。パルプとしては、前述の「原料パルプ」と同じものを使用できる。例えば、本工程は、予め調製されたパルプスラリーとCM−CFBと水の混合物を混合することによって実施できる。混合は、公知のとおりに行うことができる。例えば、公知のミキサー等を用いて両者を混合してスラリーを調製できる。
前記スラリーにおけるCM−CFBの濃度は、パルプとCM−CFBを合わせた固形分に対して、0.01〜20重量%であることが好ましい。上限がこの値を超えると、CM−CFBの分散が不十分になり、分散体中に未分散物が発生したり、分散体の粘度が高くなりすぎたりして取扱い性が低下する可能性がある。この観点から、前記濃度の上限はより好ましくは10重量%以下であり、下限は好ましくは0.1重量%以上である。スラリーのB型粘度(25℃、60rpm)は、通常の製紙工程で使用される配管やポンプで移送できる範囲であればよく、600mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましい。当該スラリーには、通常、製紙に使用される填料や添加剤を添加することができる。
[工程D2]
本工程では前記スラリーを抄紙して紙を得る。抄紙は公知のとおりに実施でき、例えば、長網型湿式抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ヤンキー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機等、公知の抄紙機を用いて実施できる。また手抄きによって抄紙してもよい。CFBは、通常、略球状の状態で原紙層に存在する。
[他の工程]
前記製造方法は、原紙の上に公知のクリア塗工層または顔料塗工層を設ける塗工工程を備えていてもよいし、紙を表面処理する工程を備えていてもよい。これらの方法は、公知のとおりに実施できる。また、前記原紙の上に、後述するように、CM−CFBを含む塗工液を塗工することもできる。
CM−CFBが外添された紙は、以下の工程を経て製造されることが好ましい。
(E1)原紙を準備する工程。
(E2)CM−CFBを含む塗工液を調製して、前記原紙上に塗工する工程。
[工程E1]
本工程は、公知のとおりに実施できる。
[工程E2]
CM−CFBを含む塗工液は、CM−CFBを水等の分散媒に分散させて調製できる。塗工液は、バインダー成分、顔料等を含んでいてもよい。塗工液中のCM−CFBの濃度は、塗工可能な範囲であれば限定されないが、例えば固形分中、0.01〜20重量%であることが好ましい。塗工機としては、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター、カーテンコーター等を使用できる。あるいは、原紙に前記塗工液を含浸させてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。以下「部」は、「重量部」を意味する。
[実施例1]
<CM−パルプの調整>
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水130部と、水酸化ナトリウム17部を水100部に溶解したものを全量加え、さらに広葉樹パルプ(日本製紙株式会社製、LBKP)を100部仕込んだ。広葉樹パルプの前記重量は、100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量である。二軸ニーダーにて、30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。さらに撹拌しつつイソプロパノール(IPA)230部と、モノクロロ酢酸ナトリウム50部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応を行った。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、50重量%であった。反応終了後、中和、脱液、乾燥して、カルボキシメチル置換度0.21、セルロースI型の結晶化度72%のCM化パルプを得た。DSおよびセルロースI型の結晶化度は前述の方法で、カルボキシメチル化剤の有効利用率は定法にて求めた。
<酸性下での叩解>
得られたCM−パルプに水および塩酸を添加して濃度30重量%とし、14インチラボリファイナー(相川鉄工株式会社製))にて叩解処理を行い、CM−CFBを得た。リファイナー処理条件は、パルプ濃度30重量%、処理回数7回(7パス)であった。叩解処理物をフラクショネーター(バルメット株式会社製)のCCDカメラを用いて観察し、CM−CFBが形成されていることを確認した。
当該CFBの平均粒子径(D50)をレーザー回折式粒度計(Malvern Panalytical社製)を用いた湿式測定によって求めたところ、1026μmであった。当該CFBのアスペクト比は1〜8であった。
CFBの含水率をJIS P 8203に従い、熱風循環式定温乾燥機(東京硝子器械株式会社製)を用いて測定した。含水率は50重量%であった。
当該CFBについて以下のように帯電性試験を行い、帯電しにくく取扱い性が良好であることを確認した。
[帯電試験]
1gのCM−CFBを量り取り、縦120mm×横85mm、厚さ0.04mmのポリエチレン製チャック付き袋に入れた。袋を上下に20回振った後、袋を手でもんで10回こすり合わせた。その後もう一度上下に10回降った。その後、袋へのパウダーの付着の程度を目視にて確認した。
以下のようにして前記CFBの安息角を測定した。
パウダーテスター(PT−X型、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて、金属製漏斗の孔(直径φ5mm)からサンプルを一定面積の水平板の上に一定形状となるまで落下堆積させ、円錐状の検体を形成した。Peak Operationモードによって、当該円錐状の検体の頂点と底辺との角度の値を測定し、安息角を求めた。
[実施例2]
実施例1と同様にして得られたCM−CFBを、風乾により乾燥し、評価した。含水率は9.6重量%であった。
[比較例1、2]
市販のセルロース粉末(日本製紙株式会社製 KCフロック W−50、含水率7重量%時の湿式粒径D50=42.8μm、平均アスペクト比6.1)に水を加えて、含水量を調製した。含水率を表2に示した。これらのセルロース粉末について、実施例1と同様に物性を評価した。含水率を35重量%および50重量%としたセルロース粉末は、ダマ状にセルロース粉末同士が結着しパウダーテスターを通過しなかったため、安息角を測定することができなかった。これらの結果を表に示す。
Figure 2021119210
Figure 2021119210
表に示すとおり、本発明のCM−CFBは、高い含水率を有しながらもパウダーとして取り扱うことができる。一般にセルロース粉末において、安息角は粒径が小さいほど、また含水率が小さいほど小さくなる。実施例1および2で得たCM−CFBは、含水率50重量%において58°未満の安息角を呈することが明らかである。比較例のセルロース粉末は、本発明で得られたCFBと比較して粒径が小さいので安息角を測定しやすいはずであるが、含水率が35%以上の領域ではパウダーテスターを通過することができず、安息角を測定できなかった。つまり、本発明で得られたCM−CFBは粒径が大きく、かつ含水率が高い状態でも安息角の測定が可能である。一方、従来の粉末は高含水率であると安息角の測定ができない。よって、本発明のCM−CFBは、従来の粉末とは異なる物性を有することが明らかである。

Claims (8)

  1. 下記(1)および(2)を満たす、カルボキシメチル化された微細セルロース繊維が絡まりあって形成されるセルロースファイバーボール。
    (1)レーザー回折式粒度計を用いた湿式測定による平均粒子径(D50)が50μm〜2mm
    (2)含水率50重量%における安息角が45°超58°未満
  2. 前記カルボキシメチル化された微細セルロース繊維のグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が、0.01以上0.5未満である、請求項1に記載のセルロースファイバーボール。
  3. 下記(3)を満たす、請求項1または2に記載のセルロースファイバーボール。
    (3)含水率10重量%における安息角が42°超55°未満
  4. 前記平均粒子径(D50)が50μm〜1mmである、請求項1〜3いずれかに記載のセルロースファイバーボール。
  5. 平均アスペクト比(L/D)が10以下である、請求項1〜4いずれかに記載のセルロースファイバーボール。
  6. 請求項1〜5いずれかに記載のセルロースファイバーボールを含む、パウダー。
  7. 請求項1〜5いずれかに記載のセルロースファイバーボールを含む、紙。
  8. 請求項1〜5いずれかに記載のセルロースファイバーボールの製造方法であって、
    (A1)原料パルプをカルボキシメチル化する工程、
    (A2)前記工程で得られたカルボキシメチル化パルプと水を含み、固形分濃度が15重量%以上である混合物を機械的処理して、セルロースファイバーボールを形成する工程、
    を含む製造方法。
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