JP2021118060A - 液式鉛蓄電池 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1には、充電時に発生する気体による電解液の攪拌作用をより有効に利用して、成層化を抑制するために、極板群を収容する収容空間とは別に、収容空間の上部及び下部に連通する連通流路を設けることが記載されている。これにより、充電時に、極板群により発生する気体の上昇に伴う電解液の上方向への流れが収容空間内で発生し、これに対応する下方向への流れが連通流路内で発生するため、電槽内で電解液の対流が効果的に発生することで、電解液の攪拌作用を高めて成層化を抑制することができると記載されている。
しかし、特許文献1および2には、充放電時の極板の電位分布と電解液の攪拌作用との関係についての記載はない。
(1)負極集電体と負極合剤とを有する負極板を備えた液式鉛蓄電池である。負極集電体は、長方形の格子状基板と前記格子状基板に連続する耳とを有し、格子状基板に負極合剤が保持されている。格子状基板は、格子状基板を成す長方形の一辺に沿う上部骨と、上部骨に接続されて上部骨より下方に存在する複数本の中骨と、を有する。耳は、上部骨の一辺の中心から一方にずれた位置から上側に突出する。
なお、上述の「直線に近似でき」とは、複数のプロットを最小二乗法で直線回帰した場合の相関係数ρの絶対値|ρ|が0.90以上であることを意味する。また、「傾きが異なる二本の直線」とは、二本の直線の傾きa1,a2(a1>a2)の比(a1/a2)が1.3以上であることを意味する。
[第一実施形態および第二実施形態の液式鉛蓄電池の構成]
第一実施形態および第二実施形態の液式鉛蓄電池は、モノブロックタイプの電槽と、蓋と、六個の極板群とを有する。電槽は、隔壁により六個のセル室に区画されている。六個のセル室は電槽の長手方向に沿って配列されている。各セル室に一つの極板群が配置されている。各セル室に電解液が注入されている。
各極板群は、交互に配置された複数枚の正極板および負極板と、正極板および負極板との間に配置されたセパレータと、からなる積層体を有する。
また、本発明においては、負極合剤に平均粒子径が15μm以上の黒鉛を、負極合剤中の鉛粉に対して0.2質量%以上2.5質量%以下含むことを特徴とする。複数枚の正極板および負極板は、セパレータを介して交互に配置されている。
積層体を構成する負極板の枚数Mnは正極板の枚数Mpよりも一枚多い。なお、負極板の枚数Mnは正極板の枚数Mpよりも一枚少なくてもよいし、同枚数としてもよい。
また、各極板群は、積層体を構成する複数の正極板および負極板をそれぞれ幅方向の別の位置で連結する正極ストラップおよび負極ストラップと、正極ストラップおよび負極ストラップからそれぞれ立ち上がる正極中間極柱および負極中間極柱と、外部端子となる正極極柱および負極極柱を有する。
正極ストラップおよび負極ストラップは、複数の正極板および負極板の耳部をそれぞれ連結して固定している。隣接するセル室の正極中間極柱同士および負極中間極柱同士が抵抗溶接されて、隣接するセル間が電気的に直列に接続されている。
正極極柱および負極極柱は、セル配列方向の両端のセル室に配置された正極ストラップおよび負極ストラップに、小片部を介して形成されている。
図1に示すように、第一実施形態の負極集電体1は、長方形の格子状基板11と格子状基板11に連続する耳12とを有し、格子状基板11に負極合剤が保持されている。格子状基板11は、格子状基板11を成す長方形の一辺に沿う上部骨111と、上部骨111に接続されて上部骨111より下方に存在する複数本の中骨112と、を有する。耳12は、上部骨111の一辺の中心から一方(図1の右側)にずれた位置から上側に突出している。
負極集電体1は、打ち抜き法、エキスパンド法、重力鋳造法などの通常の方法で得ることができる。
図3に示すように、第二実施形態の負極集電体1Aは、長方形の格子状基板11Aと格子状基板11Aに連続する耳12とを有し、格子状基板11Aに負極合剤が保持されている。格子状基板11Aは、格子状基板11Aを成す長方形の一辺に沿う上部骨111と、上部骨111に接続されて上部骨111より下方に存在する複数本の中骨と、を有する。中骨の太さは上下方向の中間位置で変化し、中間位置よりも上側(上部骨111側)の中骨112aは、中間位置よりも下側の中骨112bの太さよりも細い。
負極集電体1Aを、格子状基板11Aを成す長方形の右側(一方の側)の角を通る対角線Tに沿って切断して生じる分割体のうち、耳が存在する分割体を、図4に示す。この分割体2Aは、耳12の上部骨111との境界線L上の中心点Pを通り上部骨111に垂直な基準線Kにより、第一の部分21Aと第二の部分22Aに区分され、第一の部分21Aは第二の部分22Aよりも面積が大きい。
負極集電体1Aは、打ち抜き法、エキスパンド法、重力鋳造法などの通常の方法で得ることができる。
液式鉛蓄電池が有する負極集電体の比A/Bが小さいほど、充電時に負極板の下部が上部よりも分極しやすくなるため、下部からのガス発生が促進されることで、部分充電状態であっても電解液の攪拌作用が得られる。しかし、比A/Bが0.40未満の場合、負極集電体の下部から耳に至る経路の抵抗値が上部から耳に至る経路の抵抗値よりも著しく大きいため、負極板の下部での充放電反応が進行しにくくなる。よって、下部から発生するガスの量が、部分充電状態での電解液攪拌作用を得るためには不十分となる。
負極集電体の比A/Bが0.60よりも大きい液式鉛蓄電池では、負極板全体で充放電反応が進行しにくくなるため、ガスの発生量が部分充電状態での電解液攪拌作用を得るためには不十分となる。
本発明の第二態様としては、液式鉛蓄電池の負極板(化成後)を構成する負極集電体の設計方法が挙げられる。この設計方法は下記の構成(a)〜(c)を有する。
(a)負極集電体は、長方形の格子状基板と格子状基板に連続する耳とを有し、格子状基板に負極合剤が保持され、格子状基板は、長方形の一辺に沿う上部骨と、上部骨に接続されて前記上部骨より下方に存在する複数本の中骨と、を有し、耳は、上部骨の一辺の中心から一方にずれた位置から上側に突出する。
(b)負極集電体を長方形の一方の側の角を通る対角線に沿って切断して生じる分割体のうち耳が存在する分割体を、耳の上部骨との境界線上の中心点Pを通り上部骨に垂直な基準線により、第一の部分と第二の部分に区分する。
(c)x軸およびy軸が共に線形目盛である座標平面に、第二の部分よりも面積が大きい第一の部分における、複数本の中骨の各切断面Cnと中心点Pとの間の各抵抗値Rnをy座標、各切断面Cnの中心点と中心点Pとの各距離Xnをx座標としてなされる全てのプロットが、x=Hを交点として傾きが異なる二本の直線に近似でき、x<Hとなる各距離Xnでの各抵抗値Rnの平均値Aと、x≧Hとなる各距離Xnでの各抵抗値Rnの平均値Bと、による比A/Bが、0.40以上0.60以下となるようにする。
実施形態の鉛蓄電池と同じ構造の鉛蓄電池として、サンプルNo.1〜No.7の鉛蓄電池を作製した。
サンプルNo.1〜No.7の鉛蓄電池はD23型のアイドリングストップ用液式鉛蓄電池であって、負極集電体の格子状基板の構成が異なるものであり、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
<サンプルNo.1>
サンプルNo.1の鉛蓄電池は、図1に示す形状の負極集電体1を有し、寸法S1=114.0mm、寸法S2=108.0mm、寸法S3=100.0mm、寸法S4=45.0mm、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.75mmである。
先ず、帯状の鉛合金シート(複数枚の負極集電体1に対応する大きさ)に対する打ち抜き加工工程、格子状基板11への負極活物質ペーストの充填工程、予熱乾燥工程、熟成乾燥工程、および切断工程を行うことにより、図1の負極集電体1を有する化成前の負極板を作製した。各工程は通常の方法で行った。
なお、上記負極活物質ペースト作製において、鉛粉、硫酸、水及び添加剤を混練する際に、平均粒子径が15μmの鱗片状黒鉛を、鉛粉に対し0.2質量%を混合し負極合剤とした。
この極板群を六個用意し、電槽の各セル室に入れて、隣接するセル室間の中間極柱の抵抗溶接、電槽と蓋の熱溶着、注液孔から各セル室内への電解液の注入、および注液孔を塞ぐことなどの通常の工程を行うことにより、D23型のアイドリングストップ用液式鉛蓄電池を組み立てた。その後、通常の方法で電槽化成を行うことで、電槽化成後の比重を1.285(20℃換算値)とした。このようにしてNo.1の鉛蓄電池を得た。
サンプルNo.2の鉛蓄電池は、図1に示す形状の負極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.70mmであり、それ以外の点はサンプルNo.1と同じである。サンプルNo.2の負極集電体1を用いた以外はサンプルNo.1と同じ方法で、D23型のアイドリングストップ用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、No.2の鉛蓄電池を得た。
<サンプルNo.3>
サンプルNo.3の鉛蓄電池は、図1に示す形状の負極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.65mmであり、それ以外の点はサンプルNo.1と同じである。サンプルNo.3の負極集電体1を用いた以外はサンプルNo.1と同じ方法で、D23型のアイドリングストップ用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、No.3の鉛蓄電池を得た。
サンプルNo.4の鉛蓄電池は、図1に示す形状の負極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.60mmであり、それ以外の点はサンプルNo.1と同じである。サンプルNo.4の負極集電体1を用いた以外はサンプルNo.1と同じ方法で、D23型のアイドリングストップ用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、No.4の鉛蓄電池を得た。
<サンプルNo.5>
サンプルNo.5の鉛蓄電池は、図1に示す形状の負極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.55mmであり、それ以外の点はサンプルNo.1と同じである。サンプルNo.5の負極集電体1を用いた以外はサンプルNo.1と同じ方法で、D23型のアイドリングストップ用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、No.5の鉛蓄電池を得た。
サンプルNo.6の鉛蓄電池は、図1に示す形状の負極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.45mmであり、それ以外の点はサンプルNo.1と同じである。サンプルNo.6の負極集電体1を用いた以外はサンプルNo.1と同じ方法で、D23型のアイドリングストップ用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、No.6の鉛蓄電池を得た。
<サンプルNo.7>
サンプルNo.7の鉛蓄電池は、図3に示す形状の負極集電体1Aを有し、寸法S1=114.0mm、寸法S2=108.0mm、寸法S3=100.0mm、寸法S4=45.0mm、中骨112aの太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.50mm、中骨112bの太さが0.90mmである。サンプルNo.7の負極集電体1Aを用いた以外はサンプルNo.1と同じ方法で、D23型のアイドリングストップ用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、No.7の鉛蓄電池を得た。
先ず、得られたサンプルNo.1〜No.7の鉛蓄電池を分解して、負極板を取り出し、負極板から負極活物質を除去して洗浄することにより、No.1〜No.7の各負極集電体1,1Aを得た。次に、負極集電体1,1Aを、それぞれ図1および図3に示す対角線Tに沿って鋏で切断することにより、図2および図4に示す、耳が存在する分割体2,2Aを得た。耳が存在する分割体2において、基準線Kにより区分された第一の部分21は、中骨112の切断面を13個有する。耳が存在する分割体2Aにおいて、基準線Kにより区分された第一の部分21Aは、中骨112a,112bの切断面を合計で13個有する。
次に、耳12の中心点Pと各中骨の切断面C1〜C13との間の各抵抗値Rn(R1〜R13)を、抵抗計(HIOKI社製 3554 BATTERY HiTESTER)を用いて三回ずつ測定し、平均値を算出した。また、中心点Pと各切断面C1〜C13の中心点との各距離Xn(X1〜X13)を、定規で測定した。これらの測定結果(各抵抗値Rnは三回測定の平均値)を表1〜表7に示す。
図5に示すように、サンプルNo.1では、全てのプロットが、x=H(X8とX9との間の値)を交点として傾きが異なる二本の直線T1,T2に近似できた。次に、x<Hとなる各距離X1〜X8での各抵抗値(三回測定の平均値)R1〜R8の平均値Aと、x≧Hとなる各距離X9〜X13での各抵抗値(三回測定の平均値)Rnの平均値Bを算出し、これらの算出値から比A/Bを算出した。その結果を表8に示す。
また、図6〜図10に示すように、サンプルNo.2〜No.6では、それぞれ全てのプロットが、x=H(X9とX10との間の値)を交点として傾きが異なる二本の直線T1,T2に近似できた。次に、x<Hとなる各距離X1〜X9での各抵抗値(三回測定の平均値)R1〜R9の平均値Aと、x≧Hとなる各距離X10〜X13での各抵抗値(三回測定の平均値)Rnの平均値Bを算出し、これらの算出値から比A/Bを算出した。その結果を表9〜表13に示す。
さらに図11に示すように、サンプルNo.7では、全てのプロットが、x=H(X10の値)を交点として傾きが異なる二本の直線T1,T2に近似できた。次に、x<Hとなる各距離X1〜X9での各抵抗値(三回測定の平均値)R1〜R9の平均値Aと、x≧Hとなる各距離X10〜X13での各抵抗値(三回測定の平均値)Rnの平均値Bを算出し、これらの算出値から比A/Bを算出した。その結果を表14に示す。
[試験および評価]
得られたNo.1〜No.7の鉛蓄電池について、EUCARパワーアシストプロファイルによる寿命試験を実施した。この試験の1サイクルの充放電パターンを図12に示す。C2は2時間率容量である。この充放電パターンでは部分充電状態での深い放電がある。
また、この寿命試験を100サイクル行った後に、電解液の比重を電槽の上部と下部で光学比重計を用いて測定し、これらの測定値から上下の比重差を算出した。
これらの結果を各サンプルの格子状基板の構成とともに表15に示す。
1A 負極集電体
11 格子状基板
11A 格子状基板
12 耳
111 上部骨
112 中骨
112a 中骨
112b 中骨
2 耳が存在する分割体
2A 耳が存在する分割体
21 第一の部分
21A 第一の部分
22 第二の部分
22A 第二の部分
Claims (1)
- 負極集電体と負極合剤とを有する負極板を備えた液式鉛蓄電池であって、
前記負極集電体は、長方形の格子状基板と前記格子状基板に連続する耳とを有し、
前記格子状基板に前記負極合剤が保持され、
前記格子状基板は、前記長方形の一辺に沿う上部骨と、前記上部骨に接続されて前記上部骨より下方に存在する複数本の中骨と、を有し、
前記耳は、前記上部骨の前記一辺の中心から一方にずれた位置から上側に突出し、
前記負極集電体を前記長方形の前記一方の側の角を通る対角線に沿って切断して生じる分割体のうち前記耳が存在する分割体は、前記耳の前記上部骨との境界線上の中心点Pを通り前記上部骨に垂直な基準線により、第一の部分と第二の部分に区分され、前記第一の部分は前記第二の部分よりも面積が大きく、
x軸およびy軸が共に線形目盛である座標平面に、前記第一の部分における、前記複数本の中骨の各切断面Cnと前記中心点Pとの間の各抵抗値Rnをy座標、前記各切断面Cnの中心点と前記中心点Pとの各距離Xnをx座標としてなされた全てのプロットが、x=Hを交点として傾きが異なる二本の直線に近似でき、
x<Hとなる各距離Xnでの各抵抗値Rnの平均値Aと、x≧Hとなる各距離Xnでの各抵抗値Rnの平均値Bと、による比A/Bが、0.40以上0.60以下であり、
前記負極合剤に、平均粒子径が15μm以上の黒鉛が、負極合剤中の鉛粉に対し0.2質量%以上2.5質量%以下含まれることを特徴とする液式鉛蓄電池。
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