以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るソリューション選定支援装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
本実施形態に係るソリューション選定支援装置は、重要目標達成指標(KGI:Key Goal Indicator)及び重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)に基づいて各種ビジネスに関する経営方針等を判断するユーザ(例えば、経営者または経営コンサルタント等)によって用いられる。
なお、重要目標達成指標(以下、KGIと表記)は、ビジネスにおいて組織やプロジェクトが達成すべき目標を指し示す定量的な指標である。また、重要業績評価指標(以下、KPIと表記)は、KGIが指し示す目標を達成するための施策が適切に実施されているか(当該施策がどの程度達成されているか)を指し示す定量的な指標である。
具体的には、例えば小売店(量販店等)を経営するビジネスを想定した場合、KGIとしては人時売上高(従業員1人の1時間当たりの売上高)を設定することができる。このようなKGIは、小売店の経営(営業)において人時売上高を向上させることを目標としていることを意味している。なお、KGIとしては利益率等の他の指標が設定されてもよい。一方、上記したようにKGIとして人事売上高を設定した場合、KPIとしては例えば小売店の総売上高や従業員の総労働時間等を設定することができる。
なお、上記したKGIに対しては複数のKPIが設定され、当該KGIは当該複数のKPIの値に基づいて算出することができるという関係性を有する。具体的には、KGIが人時売上高であり、複数のKPIが総売上高(以下、KPI1と表記)及び総労働時間(以下、KPI2と表記)である場合、KGIは、「KPI1/KPI2」という定義式(算出式)に従って算出することができる。
また、上記したKPIの下位に更にKPIを設定することも可能である。具体的には、上記したKPI1(総売上高)の下位には、例えば客単価(以下、KPI1−1と表記)及び来客数(以下、KPI1−2と表記)を設定することができる。このKPI1とKPI1−1及びKPI1−2とは、上記したKGIとKPI1及びKPI2と同様の関係性を有する。具体的には、KPI1(総売上高)は、「KPI1−1(客単価)*KPI1−2(来客数)」という定義式に従って算出することができる。
更に、上記したKPI(例えば、KPI1−1及びKPI1−2等)の下位には当該KPIに影響を与える要因が設定される。上記したようにKPI1−1が客単価である場合、当該KPI1−1に影響を与える要因としては、例えば品切件数、商品種類及び商品価格等が設定される。なお、要因は定量的な数値によって表されるが、当該要因の上位に位置するKPIを当該要因の値から算出することはできない。
要因の下位には当該要因を改善するためのソリューションが設定される。例えば要因が品切件数である場合、ソリューションとしては、品出人員増員及び欠品監視システムの導入等が設定される。また、例えば要因が商品種類である場合、ソリューションとしては増加及び減少等が設定される。また、例えば要因が商品価格である場合、ソリューションとしては値下げ及び値上げ等が設定される。
ここで、一般的に、経営者等は、上記したように設定されたKGI、KPI及び要因に基づいてビジネスの現状を把握(認識)することによって、KGI(例えば、人時売上高)を改善するための当該ビジネスにおける課題を分析し、当該課題を解決するためのソリューションを選定する(または当該ソリューションによる効果を予測する)必要がある。
しかしながら、例えばKGIが人時売上高である場合、当該KGIの下位に位置するKPI1及びKPI2として総売上高及び総労働時間が設定されているが、KPI1及びKPI2のいずれを改善すればより効果的にKGIを改善することができるかを即座に判断することは困難である。KPI1及びKPI2の下位に位置するKPIや要因についても同様である。
すなわち、ビジネスにおける課題を解決するためのソリューションを選定するためには当該ビジネス分野(対象ドメイン)における専門的な知識と経験が必要であり、当該知識及び経験が乏しい経営者等は迅速に適切なソリューションを選定することができない。
そこで、本実施形態に係るソリューション選定支援装置においては、上記したように知識及び経験が乏しいユーザ(経営者等)であっても適切なソリューションを選定することができるように支援する機能(以下、ソリューション選定支援機能と表記)を有する。
なお、ここではビジネスとして小売店を経営する場合を一例として説明したが、当該小売店は例えば飲食店または服飾店等であってもよいし、本実施形態は、物流業や卸売業に適用されても構わない。
図1に示すように、本実施形態に係るソリューション選定支援装置10は、上記したソリューション選定支援機能を実現するための機能部として、ツリー構造情報格納部11、KPI実績格納部12、KPI改善実績格納部13、要因実績格納部14、要因改善実績格納部15、取得部16、UI(ユーザインタフェース)部17、KPI抽出部18及び要因抽出部19を含む。
ツリー構造情報格納部11は、上記したKGI、KPI、要因及びソリューションの関係性をツリー形式でユーザに提示(表示)するための情報(以下、ツリー構造情報と表記)が予め格納されている。このツリー構造情報においては、KGI(ノード)を最上位として、KGI(ノード)、KPI(ノード)、要因(ノード)及びソリューション(ノード)の順で上位から下位となるようなツリー構造(階層構造)が定義されている。
なお、ツリー構造情報において定義されているKGI、KPI及び要因ノードは当該ノードを定量的に数値で表現できる概念を保持しており、ツリー構造情報には、上記したようにKPI(の値)からKGI(の値)を算出するための定義式及び下位に位置するKPI(の値)から上位に位置するKPI(の値)を算出するための定義式等が含まれている。
更に、ソリューションノードは、ソリューション(サービス)の詳細を表す情報としてBPMN(Business Process Model Notation)記述や当該ソリューションを実現するための人員または機材等の情報を保持していてもよい。
また、ツリー構造情報においては、上下関係(親子関係)を有する2つのノードが直接的に作用すること(主作用)がツリー構造として定義されるが、例えば並列関係を有する少なくとも2つのノードが間接的に作用する(副次的に影響を受ける)こと(副作用)が更に定義されていてもよい。具体的には、上記したKPI1−1(客単価)の下位に位置する要因としては例えば品切件数、商品種類及び商品価格等が設定されるが、商品種類が増加すると1つの商品当たりの仕入れ数が減少し、当該仕入れ数に応じて商品価格が変動する可能性がある。このような場合には、並列関係にある2つの要因(商品種類及び商品価格)が互いに副次的に影響を受けることを、ツリー構造情報において定義しておいてもよい。
KPI実績格納部12には、KPIの過去の実績値を示すKPI実績データ(第1実績データ)が予め格納されている。このKPI実績データには、例えば日付に対応づけて、当該日付におけるKPIの実績値等が含まれる。KPI実績格納部12には、このようなKPI実績データがツリー構造情報において定義されているKPI毎に多数蓄積されているものとする。
KPI改善実績格納部13には、例えばソリューションを変更すること等によって過去にKPIの値が改善した実績(KPIの過去の改善実績)を示すKPI改善実績データ(第2実績データ)が予め格納されている。このKPI改善実績データには、例えばソリューションの変更に応じた改善前後のKPIの実績値等が含まれていればよい。KPI改善実績格納部13には、このようなKPI改善実績データがツリー構造情報において定義されているKPI毎に多数蓄積されているものとする。
要因実績格納部14には、要因の過去の実績値を示す要因実績データ(第3実績データ)が予め格納されている。この要因実績データには、例えば日付に対応づけて、当該日付における要因の実績値等が含まれる。要因実績格納部14には、このような要因実績データがツリー構造情報において定義されている要因毎に多数蓄積されているものとする。
要因改善実績格納部15には、例えばソリューションを変更すること等によって過去に要因の値が改善した実績(要因の過去の改善実績)を示す要因改善実績データ(第4実績データ)が予め格納されている。この要因改善実績データには、例えばソリューションの変更に応じた改善前後の要因の実績値等が含まれていればよい。要因改善実績格納部15には、このような要因改善実績データがツリー構造情報において定義されている要因毎に多数蓄積されているものとする。
なお、図1においてはソリューション選定支援装置10がKPI実績格納部12及びKPI改善実績格納部13の各々を含むものとして説明したが、ソリューション選定支援装置10はKPI実績データ及びKPI改善実績データを格納する1つの格納部を含むように構成されていてもよいし、例えばKPI改善実績データはKPI実績格納部12に格納されているKPI実績データ等から生成されてもよい。ここではKPI実績格納部12及びKPI改善実績格納部13について説明したが、要因実績格納部14及び要因改善実績格納部15についても同様である。
また、本実施形態において、KPI実績格納部12、KPI改善実績格納部13、要因実績格納部14及び要因改善実績格納部15に格納されているデータは、例えば各種店舗等に設置されているPOS(Point Of Sale)レジから収集されることを想定しているが、他の管理システム等から収集されたデータであっても構わない。また、上記したPOSレジ等から新たなデータが収集された場合、当該データは、KPI実績格納部12、KPI改善実績格納部13、要因実績格納部14及び要因改善実績格納部15に追加される。すなわち、KPI実績格納部12、KPI改善実績格納部13、要因実績格納部14及び要因改善実績格納部15は定期的に更新されるように構成されていてもよい。
取得部16は、ユーザのビジネスにおけるKGI、KPI及び要因の現状値(最新値)を取得する。なお、KGI、KPI及び要因の現状値は、例えば当該現状値を管理する外部システムから取得することが可能である。この外部システムには、例えばデータサーバ及びビジネスインテリジェンス(BI)ツール等が含まれる。なお、KPI及び要因の現状値は、例えばKPI実績格納部12に格納されている直近(最新)のKPI実績データ及び要因実績格納部14に格納されている直近(最新)の要因実績データから取得されてもよい。
UI部17は、ユーザによる適切なソリューションの選定を支援するためのユーザインタフェース(UI)を提供する。具体的には、UI部17は、ツリー構造情報に格納されているツリー構造情報及び取得部16によって取得されたKGI、KPI及び要因の現状値を表示(提示)する表示部としての機能を有する。また、UI部17は、ソリューション選定支援装置10に対するユーザの操作を入力する(受け付ける)入力部としての機能を有する。
KPI抽出部18は、KPI実績格納部12に格納されているKPI実績データ、KPI改善実績格納部13に格納されているKPI改善実績データ及び取得部16によって取得されたKPIの現状値に基づいて、上記したツリー構造情報において定義されている複数のKPIの中から、KGIを改善するために重要であると推定されるKPIの候補(以下、重要KPI候補と表記)を抽出する。
要因抽出部19は、要因実績格納部14に格納されている要因実績データ、要因改善実績格納部15に格納されている要因改善実績データ及び取得部16によって取得された要因の現状値に基づいて、上記したツリー構造情報において定義されている複数の要因の中から、例えば重要KPI候補(及びKGI)を改善するために重要であると推定される要因の候補(以下、重要要因候補と表記)を抽出する。
なお、KPI抽出部18によって抽出された重要KPI候補及び要因抽出部19によって抽出された重要要因候補は、UI部17によってユーザに提示(表示)される。
図2は、ソリューション選定支援装置10のシステム構成(ハードウェア構成)の一例を示す。図2に示すように、ソリューション選定支援装置10は、CPU101、不揮発性メモリ102、主メモリ103、BIOS−ROM104、システムコントローラ105、入力デバイス106、表示デバイス107、通信デバイス108及びEC109等を備える。
CPU101は、ソリューション選定支援装置10内の各コンポーネントの動作を制御するプロセッサである。CPU101は、ストレージデバイスである不揮発性メモリ102から主メモリ103にロードされる様々なプログラムを実行する。このプログラムには、オペレーティングシステム(OS)及び上記したソリューション選定支援機能を実現するためのアプリケーションプログラム(以下、ソリューション選定支援プログラムと表記)等が含まれる。
CPU101は、BIOS−ROM104に格納された基本入出力システム(BIOS)も実行する。BIOSは、ハードウェア制御のためのプログラムである。
システムコントローラ105は、CPU101のローカルバスと各種コンポーネントとの間を接続するデバイスである。
入力デバイス106は、例えばキーボード及びマウス等を含む。表示デバイス107は、例えば液晶表示装置のようなディスプレイ等を含む。なお、入力デバイス106及び表示デバイス107は、例えばタッチスクリーンディスプレイのように一体として構成されていてもよい。通信デバイス108は、外部装置等と有線または無線による通信を実行するように構成されたデバイスである。EC109は、電力管理のためのエンベデッドコントローラを含むワンチップマイクロコンピュータである。
なお、図2においては、CPU101、不揮発性メモリ102、主メモリ103、BIOS−ROM104、システムコントローラ105、入力デバイス106、表示デバイス107、通信デバイス108及びEC109のみが示されているが、ソリューション選定支援装置10は、これらのうちの一部が省略された構成であってもよいし、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)のような他の記憶装置等を更に備えていてもよい。
また、本実施形態において、上記した図1に示すツリー構造情報格納部11、KPI実績格納部12、KPI改善実績格納部13、要因実績格納部14及び要因改善実績格納部15は、例えば図2に示す不揮発性メモリ102または他の記憶装置等によって実現される。
更に、本実施形態において、図1に示す取得部16、UI部17、KPI抽出部18及び要因抽出部19の一部または全ては、図2に示すCPU101(つまり、ソリューション選定支援装置10のコンピュータ)に上記したソリューション選定支援プログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。なお、ソリューション選定支援プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に予め格納して頒布されてもよいし、ネットワークを介してソリューション選定支援装置10にダウンロードされてもよい。
ここでは、各部16〜19の一部または全てがソフトウェアによって実現されるものとして説明したが、当該各部16〜19の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係るソリューション選定支援装置10の処理手順の一例について説明する。なお、図3に示す処理は、例えばソリューション選定支援装置10を使用するユーザからの指示等に応じて実行される。
まず、UI部17は、ツリー構造情報格納部11に格納されているツリー構造情報を取得する(ステップS1)。
ここで、図4は、ツリー構造情報を概念的に説明するための図である。図4に示すように、ツリー構造情報においては、KGI、KPI、要因及びソリューションの各々を表すノードがツリー構造を形成するように定義(設定)されている。なお、図4は上記したようにユーザがビジネスとして小売店を経営する場合におけるツリー構造情報を示している。
具体的には、図4に示すツリー構造情報においては、KGIを表すノードとしてKGI「人時売上高」が定義されている。また、図4に示すツリー構造情報においては、KPIを表すノードとしてKPI1「総売上高」、KPI1−1「客単価」、KPI1−2「来客数」及びKPI2「総労働時間」が定義されている。更に、図4に示すツリー構造情報においては、要因を表すノードとして要因1「品切件数」、要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」が定義されている。
なお、KPI1「総売上高」及びKPI2「総労働時間」は、KGI「人時売上高」の下位に位置している。また、KPI1−1「客単価」及びKPI1−2「来客数」は、KPI1の下位に位置している。更に、要因1「品切件数」、要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」は、KPI1−1の下位に位置している。
また、要因1「品切件数」、要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」の各々の下位には、当該要因を改善するためのソリューション1〜6が位置している。なお、要因1「品切件数」の下位に位置しているソリューション1及び2は、例えば「品出人員増員」及び「欠品監視システムの導入」等である。また、要因2「商品種類」の下位に位置しているソリューション3及び4は、例えば商品種類の「増加」及び「減少」等である。また、要因3「商品価格」の下位に位置しているソリューション5及び6は、例えば商品価格の「値下げ」及び「値上げ」等である。
本実施形態におけるツリー構造情報には、上記したKGI、KPI、要因及びソリューション(ノード)によって形成されるツリー構造が定義されている。
なお、図4においては省略されているが、KPI1−2「来客数」の下位には更に要因及びソリューションがツリー構造を形成するように定義されている。同様に、KPI2「総労働時間」の下位には、更にKPI、要因及びソリューションがツリー構造を形成するように定義されている。
また、図4に示すツリー構造情報は一例であり、当該ツリー構造情報において定義されているツリー構造(KGI、KPI、要因及びソリューションの数等)は図4において説明したものと異なっていてもよい。
再び図3に戻ると、取得部16は、ステップS1において取得されたツリー構造情報において定義されているKGI、KPI及び要因の各々の現状値を取得する(ステップS2)。
ステップS2の処理が実行されると、UI部17は、ステップS1において取得されたツリー構造情報(において定義されているツリー構造)とステップS2において取得されたKGI、KPI及び要因の各々の現状値とを含む表示画面(以下、ツリー構造表示画面)を表示デバイス107(ディスプレイ)に表示する(ステップS3)。
ここで、図5は、ステップS3において表示されたツリー構造表示画面の一例を示す。図5に示すツリー構造表示画面200には、ツリー構造情報において定義されているKGI、KPI、要因及びソリューション(ノード)がツリー形式で表示されるとともに、KGI、KPI及び要因の各々の現状値が当該KGI、KPI及び要因の各々(のノード)に対応づけて表示される。
図5に示す例では、例えばKGI「人時売上高」の現状値が7200円/時であり、KPI1「総売上高」の現状値が720000円であり、KPI2「総労働時間」が100時間であることが示されている。
ここではKGI、KPI1及びKPI2の現状値についてのみ説明したが、他のKPI(KPI1−1及びKPI1−2等)及び要因(要因1〜3)についても同様である。なお、図5に示すように要因2「商品種類」の現状値が80種である場合、要因3「商品価格」の現状値は、例えば当該80種の商品の各々の価格(つまり、商品価格)の平均値等である。
また、KGI「人時売上高」の現状値(7200円/時)は、KPI1「総売上高」の現状値(720000円)/KPI2「総労働時間」の現状値(100時間)の定義式によって算出される。また、KPI1「総売上高」の現状値(720000円)は、KPI1−1「客単価」の現状値(9000円)*KPI1−2「来客数」の現状値(80人)の定義式によって算出される。これらの定義式は、上記したようにツリー構造情報に含まれていればよい。
ここで、本実施形態においては、上記したようにKGI、KPI及び要因の現状値をツリー構造に対応づけて(つまり、ツリー形式で)表示することによって多くの専門的な知見をユーザに対して提供することができるが、当該知見に基づいて適切なソリューションを選定するためには、専門的な知識及び経験を要する。
そこで、本実施形態においては、KGIを改善するためのソリューションの選定を支援するために、KGIを改善することができる複数のKPIの中から重要KPI候補を抽出する処理(以下、重要KPI候補抽出処理と表記)が実行される(ステップS4)。
この重要KPI候補抽出処理においては、KGIを効率的に改善することができる(つまり、KGIの改善効果が大きい)か否かという観点に基づいて重要KPI候補が抽出される。すなわち、重要KPI候補抽出処理においては、例えば既に現状値がよいKPI(つまり、改善の余地が少ないKPI)を更に改善することは困難であること、または、例えばユーザ(組織やプロジェクト)の事情により改善することが困難なKPIが存在する(過去にもKPIの改善に失敗している)こと等を考慮して重要KPI候補を抽出するものとする。
なお、重要KPI候補抽出処理(図3に示すステップS4の処理)の詳細については後述する。
ステップS4の処理が実行されると、UI部17は、当該ステップS4において抽出された重要KPI候補をユーザに対して提示(表示)する(ステップS5)。この場合、UI部17は、例えばステップS3において表示されたツリー構造表示画面において、重要KPI候補として抽出されたKPIを表すノードを強調表示する。
ここで、特定のKPI(例えば、重要KPI候補)に影響を与える要因は複数存在する。このため、本実施形態においては、重要KPI候補(またはKGI)を改善するための適切なソリューションの選定を支援するために、当該重要KPI候補に影響を与える複数の要因の中から重要要因候補を抽出する処理(以下、重要要因候補抽出処理と表記)が実行される(ステップS6)。
なお、この重要要因候補抽出処理においては要因の改善によって重要KPI候補の改善効果があるか否かという観点に基づいて重要要因候補が抽出されるが、例えば当該重要KPI候補の過去の改善実績が高いソリューションであっても、現状を悪化させている要因に対応したソリューションでなければ当該重要KPI候補の改善効果は望めない。具体的には、例えば上記した図4に示すツリー構造情報において定義されているソリューション1によるKPI1−1「客単価」の改善実績が高い場合であっても、要因1「品切件数」の現状値が0である場合には当該ソリューション1によって客単価を改善する余地はない。このような場合は例えば要因3「商品価格」を改善するソリューション3または4等が効果的なソリューションとなり得る。このため、重要要因候補抽出処理においては、現在の状況(現状値)に基づいて、重要KPI候補を実質的に改善することができる実現性を考慮した重要要因候補を抽出する。
更に、上記した要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」のように、1つのKPIに影響を与える複数の要因の中には互いに影響を受ける(作用し合う)ものが存在する。このような場合には、重要KPI候補を最大にする複数の要因の値の組み合わせ(つまり、要因の相互関係)をも考慮して重要要因候補を抽出することが好ましい。
なお、重要要因候補抽出処理(図3に示すステップS6の処理)の詳細については後述する。
ステップS6の処理が実行されると、UI部17は、当該ステップS6において抽出された重要要因候補をユーザに対して提示(表示)する(ステップS7)。この場合、UI部17は、例えば上記したステップS5において重要KPI候補として抽出されたKPI(を表すノード)が強調表示されたツリー構造表示画面において、重要要因候補として抽出された要因を表すノードを強調表示する。
上記した図3に示す処理によれば、ツリー構造表示画面において重要KPI候補及び重要要因候補がユーザに対して提示されるため、当該ユーザは、当該重要KPI候補及び重要要因候補を改善するソリューションの中から適切なソリューションを選定することができる。
次に、図6のフローチャートを参照して、上記した重要KPI候補抽出処理(図3に示すステップS4の処理)の処理手順の一例について説明する。なお、図6に示す重要KPI候補抽出処理は、KPI抽出部18によって実行される。
まず、KPI抽出部18は、上記したツリー構造情報において定義されているKPIの各々に対してステップS11〜S14の処理を実行する。以下、この処理の対象となるKPIを対象KPIと称する。
この場合、KPI抽出部18は、KPI実績格納部12を参照して、対象KPIの値域を抽出する(ステップS11)。
ここで、KPI実績格納部12には、対象KPIの過去の実績値を示すKPI実績データが格納されている。KPI抽出部18は、このようなKPI実績データから、対象KPIが取り得る値の範囲として対象KPIの過去の実績値の最高値及び最低値を含む対象KPIの値域を抽出する。本実施形態において、最高値とは、対象KPIが取り得る値(の範囲)のうち、KGI(の値)または上位に位置するKPI(の値)を最も改善することができる値をいう。一方、最低値とは、対象KPIが取り得る値(の範囲)のうち、KGI(の値)または上位に位置するKPI(の値)を最も改善することができない(つまり、悪化させる)値をいう。なお、最高値は、対象KPIが取り得る値のうちの最大値である場合が多いが、当該値のうちの最小値であってもよいし、他の値であってもよい。同様に、最低値は、対象KPIが取り得る値のうちの最小値である場合が多いが、当該値のうちの最大値であってもよいし、他の値であってもよい。
なお、ステップS11において対象KPIの値域を抽出するために用いられるKPI実績データは、例えばユーザのビジネス(つまり、自組織)において収集された対象KPIの過去の実績値を示すデータであるが、他のユーザのビジネス(つまり、他組織)において収集された対象KPIの過去の実績値を示すデータ(以下、他組織のKPI実績データと表記)であってもよい。この場合には、規模や業種等の観点において自組織と類似している他組織のKPI実績データを用いるものとする。
また、ここではKPI実績データを用いて対象KPIの値域を抽出するものとして説明したが、当該対象KPIの値域は、例えば標準的な値域が予め定義されたデータ(標準値域データセット)から抽出されてもよい。
なお、ステップS11において抽出される対象KPIの値域には、対象KPIの過去の実績値の平均値等が含まれていても構わない。
ここで、KGIの値はKPIの値から算出されるところ、KGIを改善するためには、対象KPIの値をステップS11において抽出された対象KPIの値域に含まれる最高値に近づける必要がある。しかしながら、対象KPIの値は例えばユーザによって選定されたソリューションに応じて改善されるため、当該ソリューションによっては当該対象KPIの値が必ずしも最高値(目標値)まで改善するとは限らない。
このため、本実施形態において、KPI抽出部18は、KPI改善実績格納部13に格納されているKPI改善実績データ(対象KPIの過去の改善実績)を学習することによって生成(導出)される目標達成率算出モデル(第1統計モデル)を用いて、対象KPIの目標達成率を算出する(ステップS12)。この目標達成率算出モデルの生成に用いられるKPI改善実績データは、上記したKPI実績データと同様に、自組織において収集されたデータであってもよいし、当該自組織と類似する他組織において収集されたデータであってもよい。また、目標達成率算出モデルは、例えば対象KPIに対する過去の改善予測等に基づいて生成されてもよい。
ここで、ステップS12において用いられる目標達成率算出モデルは、対象KPIの現状値及び当該対象KPIの値域を入力とした場合に、過去の改善実績(統計)に基づいて推定される当該対象KPIの改善後の値に応じた目標達成率を出力(算出)するように構築されている。
すなわち、ステップS12において算出される目標達成率とは、ステップS11において抽出された対象KPIの値域に基づく対象KPIの目標値(最高値)に対して、対象KPIの現状値が実質的に達することができる割合に相当する。なお、本実施形態における目標達成率算出モデルによれば、例えば対象KPIの現状値が対象KPIの値域に基づく目標値に遠いほど高い目標達成率が算出され、対象KPIの現状値が対象KPIの値域に基づく目標値に近いほど低い目標達成率が算出されるものとする。
上記した目標達成率算出モデルは、例えばニューラルネットワークまたはランダムフォレスト等の既知の様々な機械学習のアルゴリズムを適用して生成することができるものとする。また、目標達成率算出モデルは、例えば図6に示す重要KPI候補抽出処理(または図3に示す処理)が実行される前に予め生成されていてもよいし、ステップS12の処理が実行される際に生成されてもよい。また、目標達成率算出モデルが予め生成されている場合、当該目標達成率モデルは、上記したようにKPI改善実績格納部13に追加された新たなデータ(KPI改善実績データ)に基づいて定期的に更新されてもよい。なお、以下に説明する他の統計モデルについても同様である。
ステップS12の処理が実行されると、KPI抽出部18は、ステップS11において算出された対象KPIの値域及びステップS12において算出された目標達成率に基づいて、対象KPIの改善期待値を算出する(ステップS13)。ステップS13において、改善期待値は、対象KPIの値域に含まれる最高値(目標値)と当該対象KPIの現状値との差分に対して目標達成率を乗算することによって算出される。なお、ステップS13において算出される改善期待値は、対象KPIの現状値から実質的に改善する(つまり、目標値に近づく)ことができる値に相当する。
次に、KPI抽出部18は、ツリー構造情報に含まれている定義式(対象KPIからKGIを算出するための定義式)及びステップS13において算出された対象KPIの改善期待値に基づいて当該対象KPIが改善した際のKGIの予測値(以下、改善予測値と表記)を算出する(ステップS14)。
ここで、上記した図4に示すツリー構造情報の場合、KGI「人時売上高」はKPI1「総売上高」/KPI2「総労働時間」という定義式に従って算出され、KPI1はKPI1−1「客単価」*KPI1−2「来客数」という定義式に従って算出される。この場合において、対象KPIがKPI1−1「客単価」であるものとすると、KPI抽出部18は、ステップS13において算出されたKPI1−1「客単価」(対象KPI)の改善期待値を当該KPI1−1「客単価」の現状値に加算することによって得られる値(KPI1−1「客単価」の改善予測値)及び図3に示すステップS2において取得されたKPI1−2「来客数」の現状値をKPI1−1「客単価」*KPI1−2「来客数」の定義式に適用することによって、KPI1「総売上高」の改善予測値を算出する。次に、KPI抽出部18は、算出されたKPI1「総売上高」の改善予測値及び図3に示すステップS2において取得されたKPI2「総労働時間」の現状値をKPI1「総売上高」/KPI2「総労働時間」の定義式に適用することによって、KGI「人時売上高」の改善予測値を算出することができる。
ステップS14の処理が実行されると、ツリー構造情報において定義されている全てのKPIについて上記したステップS11〜S14の処理が実行されたか否かが判定される(ステップS15)。
全てのKPIについて処理が実行されていないと判定された場合(ステップS15のNO)、ステップS11に戻って処理が繰り返される。この場合、ステップS11〜S14の処理が実行されていないKPIを対象KPIとして処理が実行される。
一方、全てのKPIについて処理が実行されたと判定された場合(ステップS15のYES)、KPI抽出部18は、上記したようにKPI毎に繰り返されるステップS14において算出されたKGIの改善予測値(KPI毎に算出された改善予測値)に基づいて重要KPI候補を抽出する(ステップS16)。このステップS16においては、改善予測値が上位のKPIが重要KPI候補として抽出されるが、例えば改善予測値が予め定められた値以上のKPIが重要KPI候補として抽出されてもよい。なお、ステップS16において抽出される重要KPI候補の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
上記した図6に示す重要KPI候補抽出処理によれば、KGIを改善するために重要であると推定されるKPI(重要KPI候補)が抽出され、当該重要KPI候補を上記した図3において説明したようにユーザに対して提示することができる。
なお、本実施形態においては目標達成率算出モデルがKPIの過去の改善実績を示すKPI改善実績データを学習することによって生成されるものとして説明したが、当該目標達成率算出モデルは、対象KPIの過去の実績値の平均値等を考慮して生成されてもよい。これによれば、例えばKPIの現状値が過去の実績値の平均値よりも目標値(最高値)に近い場合にはより低い目標達成率を出力し、KPIの現状値が過去の実績値の平均値よりも目標値(最高値)から遠い場合にはより高い目標達成率を出力するような目標達成率算出モデルを生成することができる。
ここで、図7を参照して、上記した重要KPI候補抽出処理の具体例について説明する。ここでは、図4に示すツリー構造情報において定義されている複数のKPIの中から重要KPI候補を抽出する場合について説明する。
まず、図4に示すツリー構造情報において定義されている複数のKPIのうちのKPI1−1「客単価」が対象KPIである場合を想定する。
この場合、KPI抽出部18は、KPI実績格納部12を参照して、KPI1−1「客単価」の値域を抽出する。ここでは、KPI1−1「客単価」の値域として、最高値「15000円」及び最低値「5000円」が抽出されたものとする。
この場合、KPI1−1「客単価」の現状値を当該KPI1−1「客単価」の値域に含まれる最高値(目標値)に近づけることによって、KGI「人時売上高」を改善することができる。なお、図7に示す例では、KPI1−1「客単価」の現状値が9000円であるため、当該現状値を当該KPI1−1「客単価」の値域(5000円から15000円までの範囲)の60%に相当する6000円増加させる(つまり、KPI1−1「客単価」の値を15000円にする)ことによって、KGI「人時売上高」に対する改善効果が最大となる。
KPI抽出部18は、KPI1−1「客単価」の現状値及び値域を目標達成率算出モデルに入力することによって、KPI1−1「客単価」の目標達成率を算出する。ここでは、KPI1−1「客単価」の目標達成率として、70%が算出されたものとする。
次に、KPI抽出部18は、KPI1−1「客単価」の値域及び目標達成率に基づいて、当該KPI1−1「客単価」の改善期待値を算出する。
ここで、KPI1−1「客単価」の値域に含まれる最高値(目標値)は15000円であり、当該KPI1−1「客単価」の現状値は9000円であり、当該KPI1−1「客単価」の目標達成率は70%である。この場合、KPI抽出部18は、KPI1−1「客単価」の値域に含まれる最高値である15000円と当該KPI1−1「客単価」の現状値である9000円との差分である6000円に70%(目標達成率)を乗算することによって、改善期待値として4200円(KPI1−1「客単価」の値域の42%)を算出することができる。この場合、KPI抽出部18は、改善期待値として算出された4200円をKPI1−1「客単価」の現状値である9000円に加算した13200円を、当該KPI1−1「客単価」の改善予測値とする。
次に、KPI抽出部18は、ツリー構造情報に含まれている定義式に従って、KPI1−1「客単価」の改善予測値及び他のKPIの現状値から、当該KPI1−1「客単価」が改善した際のKGI「人時売上高」の改善予測値を算出する。
この場合、まず、KPI1「総売上高」の改善予測値(期待値)が算出される。具体的には、KPI1−1「客単価」の改善予測値が上記したように13200円であり、KPI1−2「来客数」の現状値が80人であるものとすると、KPI1「総売上高」の改善予測値は、KPI1−1「客単価」(の改善予測値)*KPI1−2「来客数」(の現状値)=1056000円となる。
ここで、KPI2「総労働時間」の現状値が100時間であるものとすると、KGI「人時売上高」の改善予測値は、KPI1「総売上高」(の改善予測値)/KPI2「総労働時間」(の現状値)=10560円/時となる。
次に、図4に示すツリー構造情報において定義されている複数のKPIのうちのKPI1−2「来客数」が対象KPIである場合を想定する。
この場合、KPI抽出部18は、KPI実績格納部12を参照して、KPI1−2「来客数」の値域を抽出する。ここでは、KPI1−2「来客数」の値域として、最高値「150人」及び最低値「50人」が抽出されたものとする。
この場合、KPI1−2「来客数」の現状値を当該KPI1−2「来客数」の値域に含まれる最高値(目標値)に近づけることによって、KGI「人時売上高」を改善することができる。なお、図7に示す例では、KPI1−2「来客数」の現状値が80人であるため、当該現状値を当該KPI1−2「来客数」の値域(50人から150人までの範囲)の70%に相当する70人増加させる(つまり、KPI1−2「来客数」の値を150人にする)ことによって、KGI「人時売上高」に対する改善効果が最大となる。
KPI抽出部18は、KPI1−2「来客数」の現状値及び値域を目標達成率算出モデルに入力することによって、KPI1−2「来客数」の目標達成率を算出する。
ここで、図7に示す例では、上記したように過去の実績値の平均値を考慮して生成された目標達成率算出モデルが用いられているものとする。このような目標達成率算出モデルによれば、上記したように現状値が平均値よりも目標値から遠い場合には高い目標達成率が算出され、現状値が平均値よりも目標値に近い場合には低い目標達成率が算出される。
具体的には、図7に示す例では、KPI1−1「客単価」の現状値(9000円)は当該KPI1−1「客単価」の過去の実績値の平均値(11000円)よりも低いが、KPI1−2「来客数」の現状値(80人)は当該KPI1−2「来客数」の過去の実績値の平均値(70人)よりも高い。このため、図7に示す例では、KPI1−1「来客数」の目標達成率としては70%が算出されているのに対して、KPI1−2「来客数」の目標達成率としては当該KPI1−1「来客数」の目標達成率よりも低い40%が算出されている。
次に、KPI抽出部18は、KPI1−2「来客数」の値域及び目標達成率に基づいて、当該KPI1−2「来客数」の改善期待値を算出する。
ここで、KPI1−2「来客数」の値域に含まれる最高値(目標値)は150人であり、当該KPI1−2「来客数」の現状値は80人であり、当該KPI1−2「来客数」の目標達成率は40%である。この場合、KPI抽出部18は、KPI1−2「来客数」の値域に含まれる最高値である150人と当該KPI1−2「来客数」の現状値である80人との差分である70人に40%(目標達成率)を乗算することによって、改善期待値として28人(KPI1−2「来客数」の値域の28%)を算出することができる。この場合、KPI抽出部18は、改善期待値として算出された28人をKPI1−2「来客数」の現状値である80人に加算した108人を、当該KPI1−2「来客数」の改善予測値とする。
次に、KPI抽出部18は、ツリー構造情報に含まれている定義式に従って、KPI1−2「来客数」の改善予測値及び他のKPIの現状値から、当該KPI1−2「来客数」が改善した際のKGI「人時売上高」の改善予測値を算出する。
この場合、まず、KPI1「総売上高」の改善予測値を算出する。具体的には、KPI1−1「客単価」の現状値が9000円であり、KPI1−2「来客数」の改善予測値が上記したように108人であるものとすると、KPI1「総売上高」の改善予測値は、KPI1−1「客単価」(の現状値)*KPI1−2「来客数」(の改善予測値)=972000円となる。
また、KPI2「総労働時間」の現状値が100時間であるものとすると、KGI「人時売上高」の改善予測値は、KPI1「総売上高」(の改善予測値)/KPI2「総労働時間」(の現状値)=9720円/時となる。
次に、図4に示すツリー構造情報において定義されている複数のKPIのうちのKPI2「総労働時間」が対象KPIである場合を想定する。
この場合、KPI抽出部18は、KPI実績格納部12を参照して、KPI2「総労働時間」の値域を抽出する。ここでは、KPI2「総労働時間」の値域として、最高値「90時間」及び最低値「100時間」が抽出されたものとする。なお、KPI2「総労働時間」については、値が小さい方がKGI「人時売上高」を改善することができるため、過去の実績値の最小値が最高値、最大値が最低値となっている。
この場合、KPI2「総労働時間」の現状値を当該KPI2「総労働時間」の値域に含まれる最高値(目標値)に近づけることによって、当該KGI「人時売上高」を改善することができる。なお、図7に示す例では、KPI2「総労働時間」の現状値が100時間(最低値)であるため、当該現状値を当該KPI2「総労働時間」の値域(100時間から90時間までの範囲)の100%に相当する10時間減少させる(つまり、KPI2「総労働時間」の値を90時間にする)ことによって、KGI「人時売上高」に対する改善効果が最大となる。
KPI抽出部18は、KPI2「総労働時間」の現状値及び値域を目標達成率算出モデルに入力することによって、KPI2「総労働時間」の目標達成率を算出する。本実施形態において、目標達成率は、上記したように対象KPIの現状値が対象KPIの値域に基づく目標値に遠いほど高く算出されるため、現状値が最低値であるKPI2「総労働時間」の場合、目標達成率として90%が算出されている。
次に、KPI抽出部18は、KPI2「総労働時間」の値域及び目標達成率に基づいて、当該KPI2「総労働時間」の改善期待値を算出する。
ここで、KPI2「総労働時間」の値域に含まれる最高値(目標値)は90時間であり、当該KPI2「総労働時間」の現状値は100時間であり、当該KPI2「総労働時間」の目標達成率は90%である。この場合、KPI抽出部18は、KPI2「総労働時間」の値域に含まれる最高値である90時間と当該KPI2「総労働時間」の現状値である100時間との差分である10時間に90%(目標達成率)を乗算することによって、改善期待値として9時間(KPI2「総労働時間」の値域の90%)を算出することができる。この場合、KPI抽出部18は、改善期待値として算出された9時間をKPI2「総労働時間」の現状値である100時間から減算した91時間を、当該KPI2「総労働時間」の改善予測値とする。
次に、KPI抽出部18は、ツリー構造情報に含まれている定義式に従って、KPI2「総労働時間」の改善予測値及び他のKPIの現状値から、当該KPI2「総労働時間」が改善した際のKGI「人時売上高」の改善予測値を算出する。
この場合、KPI1「総売上高」の現状値が720000円であり、KPI2「総労働時間」の改善予測値が上記したように91時間であるものとすると、KGI「人時売上高」の改善予測値は、KPI1「総売上高」(の現状値)/KPI2「総労働時間」(の改善予測値)=7912円/時となる。
上記したようにKPI1−1「客単価」、KPI1−2「来客数」及びKPI2「総労働時間」の各々についてKGI「人時売上高」の改善予測値が算出された場合、KPI抽出部18は、当該改善予測値に基づいて重要KPI候補を抽出する。
具体的には、例えば重要KPI候補としてKGI「人時売上高」の改善予測値が上位1つ(つまり、最上位)のKPIが抽出される場合には、KPI抽出部18は、KPI1−1「客単価」を重要KPI候補として抽出する。一方、例えば重要KPI候補としてKGI「人時売上高」の改善予測値が上位2つのKPIが抽出される場合には、KPI抽出部18は、KPI1−1「客単価」及びKPI1−2「来客数」を重要KPI候補として抽出する。
なお、上記した図7に示す例において単に各KPIの目標達成率のみに着目するとKPI「総労働時間」の目標達成率が最も高いが、上記した重要KPI候補抽出処理によれば、当該KPIの改善に応じたKGIの改善予測値(改善効果)に基づいて重要KPIを抽出することができる。
次に、図8のフローチャートを参照して、上記した重要要因候補抽出処理(図3に示すステップS6の処理)の処理手順の一例について説明する。なお、図8に示す重要要因候補抽出処理は、要因抽出部19によって実行される。
まず、要因抽出部19は、重要KPI候補抽出処理によって抽出された重要KPI候補に影響を与える要因(つまり、ツリー構造において重要KPI候補の下位に位置する要因)の各々に対してステップS21〜S25の処理を実行する。以下、この処理の対象となる要因を対象要因と称する。
この場合、要因抽出部19は、要因実績格納部14を参照して、対象要因の値域を抽出する(ステップS21)。
ここで、要因実績格納部14には、対象要因の過去の実績値を示す要因実績データが格納されている。要因抽出部19は、このような要因実績データから、対象要因が取り得る値の範囲として対象要因の過去の実績値の最大値及び最小値を含む対象要因の値域を抽出する。
なお、ステップS21において対象要因の値域を抽出するために用いられる要因実績データは、例えばユーザのビジネス(つまり、自組織)において収集された対象要因の過去の実績値を示すデータであるが、他のユーザのビジネス(つまり、他組織)において収集された対象要因の過去の実績値を示すデータ(以下、他組織の要因実績データと表記)であってもよい。この場合には、規模や業種等の観点において自組織と類似している他組織の要因実績データを用いるものとする。
また、ここでは要因実績データを用いて対象要因の値域を抽出するものとして説明したが、当該対象要因の値域は、例えば標準的な値域が予め定義されたデータ(標準値域データセット)から抽出されてもよい。
ここで、例えば上記した図4に示すツリー構造情報において定義されている要因2「商品価格」が対象要因である場合を想定すると、商品価格が高い方がKPI1−1「客単価」を改善することができるように考えられるが、当該商品価格が高すぎると商品の販売数が減少すると推測される。このため、必ずしも対象要因の値域に含まれる最大値が重要KPI候補を最も改善することができる最適値であるとは限らない。
そこで、本実施形態において、要因抽出部19は、KPI実績格納部12に格納されているKPI実績データ及び要因実績格納部14に格納されている要因実績データを学習することによって生成(導出)される要因最適値算出モデル(第2統計モデル)を用いて、対象要因の最適値を算出する(ステップS22)。なお、要因最適値算出モデルは、KPI改善実績格納部13に格納されているKPI改善実績データ(KPIの過去の改善実績)または要因改善実績格納部15に格納されている要因改善実績データ(要因の過去の改善実績)等に基づいて生成されていてもよい。
ここで、ステップS22において用いられる要因最適値算出モデルは、上記した対象要因の値域を入力した場合に、KPI及び要因の過去の実績値(統計)に基づいて推定される対象要因の最適値を出力(算出)するように構築されている。
なお、ステップS22において算出される対象要因の最適値とは、対象要因が影響を与えるKPI(つまり、重要KPI候補)の値を最大にすることができると推定される当該対象要因の値に相当する。
ステップS22の処理が実行されると、要因抽出部19は、図3に示すステップS2において取得された対象要因の現状値と当該ステップS22において算出された対象要因の最適値との差分を算出する(ステップS23)。
ここで、KGIの値はKPIの値から算出されるところ、当該KPIの値は、対象要因の値に応じて改善される。しかしながら、対象要因の値は例えばユーザによって選定されたソリューションに応じて改善されるため、当該ソリューションによっては当該対象要因の値が必ずしも最適値(目標値)まで改善するとは限らない。
このため、本実施形態において、要因抽出部19は、要因改善実績格納部15に格納されている要因改善実績データ(対象要因の過去の改善実績)を学習することによって生成(導出)される目標達成率算出モデル(第3統計モデル)を用いて、対象要因の目標達成率を算出する(ステップS24)。この目標達成率算出モデルの生成に用いられる要因改善実績データは、上記した要因実績データと同様に、自組織において収集されたデータであってもよいし、当該自組織と類似する他組織において収集されたデータであってもよい。
ここで、ステップS24において用いられる目標達成率算出モデルは、対象要因の現状値、当該対象要因の値域及び当該対象要因の最適値を入力とした場合に、過去の改善実績(統計)に基づいて推定される当該対象要因の改善後の値に応じた目標達成率を出力(算出)するように構築されている。
なお、入力される値が異なる点以外は、ステップS24において用いられる目標達成率算出モデルは図6に示すステップS12において用いられる目標達成率算出モデルと同様であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
ステップS24の処理が実行されると、要因抽出部19は、ステップS23において算出された差分及びステップS24において算出された目標達成率に基づいて、対象要因の改善期待値を算出する(ステップS25)。
ここで、上記したようにKGIの値はKPIの値から算出することができるため、重要KPI候補抽出処理においては、当該KGIの改善予測値を用いて重要KPI候補を抽出することが可能である。しかしながら、重要KPI候補の値は要因から算出することはできないため、当該重要KPI候補の値を用いて重要要因候補を抽出することはできない。また、各要因はそれぞれ概念が異なる(つまり、値の単位が異なる)ため、当該要因の値同士を比較することもできない。
そこで、本実施形態においては、ステップS23において算出された差分(現状値と最適値との差分)がステップS21において抽出された対象要因の値域に対して占める比率を用いて対象要因の改善期待値を算出するものとする。具体的には、ステップS25において、改善期待値は、ステップS23において算出された差分がステップS21において抽出された対象要因の値域に対して占める比率に対して目標達成率を乗算することによって算出される。なお、ステップS25において算出される改善期待値は、対象要因が取り得る値の範囲(つまり、値域)に対して、対象要因の現状値から実質的に改善する(つまり、最適値に近づく)ことができる値(の範囲)が占める割合に相当する。
ステップS25の処理が実行されると、重要KPI候補抽出処理によって抽出された重要KPI候補に影響を与える全ての要因について上記したステップS21〜S25の処理が実行されたか否かが判定される(ステップS26)。
全ての要因について処理が実行されていないと判定された場合(ステップS26のNO)、ステップS21に戻って処理が繰り返される。この場合、ステップS21〜S25の処理が実行されていない要因を対象要因として処理が実行される。
一方、全ての要因について処理が実行されたと判定された場合(ステップS26のYES)、要因抽出部19は、上記したように要因毎に繰り返されるステップS25において算出された改善期待値(要因毎に算出された改善期待値)に基づいて重要要因候補を抽出する(ステップS27)。このステップS27においては、改善期待値が上位の要因が重要要因候補として抽出されるが、例えば改善期待値が予め定められた値以上の要因が重要要因候補として抽出されてもよい。なお、ステップS27において抽出される重要要因候補の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
上記した図8に示す重要要因候補抽出処理によれば、KGI及び重要KPI候補を改善するために重要であると推定される要因(重要要因候補)が抽出され、当該重要要因候補を上記した図3において説明したようにユーザに対して提示することができる。
なお、本実施形態において、上記した重要KPI候補抽出処理及び重要要因候補抽出処理は重要なノードを抽出する点で同様の観点に基づく処理であるが、重要要因候補抽出処理は、対象要因の値域から算出される最適値を目標値として用いる点及び対象要因の現状値と最適値との差分が当該対象要因の値域に対して占める比率に対して目標達成率を乗算することによって算出される対象要因の改善期待値に基づいて重要要因候補を抽出する点で、重要KPI候補抽出処理と異なる。
また、重要要因候補抽出処理においては重要KPI候補に影響を与える複数の要因の各々に対してステップS21〜S22の処理が実行されるものとして説明したが、当該複数の要因の中に互いに影響を受ける(つまり、作用し合う)要因が含まれている場合には、当該影響(副次的な影響)を考慮して重要要因候補抽出処理を実行することが好ましい。
以下、図9を参照して、上記した重要要因候補抽出処理の具体例について説明する。ここでは、図4に示すツリー構造情報において定義されているKPI1−1「客単価」が重要KPI候補であり、当該KPI1−1「客単価」に影響を与える複数の要因の中から重要要因候補を抽出する場合について説明する。
まず、図4に示すツリー構造情報においてKPI1−1「客単価」に影響を与える複数の要因のうちの要因1「品切件数」が対象要因である場合を想定する。
この場合、要因抽出部19は、要因実績格納部14を参照して、要因1「品切件数」の値域を抽出する。ここでは、要因1「品切件数」の値域として、最大値「50件/日」及び最小値「0件/日」が抽出されたものとする。
次に、要因抽出部19は、要因1「品切件数」の値域を要因最適値算出モデルに入力することによって、要因1「品切件数」の最適値を算出する。ここでは、要因1「品切件数」の最適値として、0件/日が算出されたものとする。
更に、要因抽出部19は、要因1「品切件数」の現状値と最適値との差分を算出する。ここでは、要因1「品切件数」の現状値が20件/日であり、当該要因1「品切件数」の最適値が0件/日であるため、要因1「品切件数」の現状値と最適値との差分としては20件/日が算出される。
また、要因抽出部19は、要因1「品切件数」の現状値、値域及び最適値を目標達成率算出モデルに入力することによって、要因1「品切件数」の目標達成率を算出する。ここでは、要因1「品切件数」の目標達成率として、40%が算出されたものとする。
次に、要因抽出部19は、要因1「品切件数」の現状値と最適値との差分が当該要因1「品切件数」の値域に占める比率及び当該要因1「品切件数」の目標達成率に基づいて、当該要因1「品切件数」の改善期待値を算出する。
ここで、要因1「品切件数」の現状値と最適値との差分は20件/日であり、当該要因1「品切件数」の値域の最大値及び最小値はそれぞれ50件/日及び0件/日であり、当該要因1「品切件数」の目標達成率は40%である。この場合、要因抽出部19は、要因1「品切件数」の現状値と最適値との差分が当該要因1「品切件数」の値域(つまり、最大値−最小値)に占める比率として40%(=20/50)を算出し、当該比率に40%(目標達成率)を乗算することによって改善期待値として16%を算出する。なお、この要因1「品切件数」の改善期待値として算出された16%は、当該要因1「品切件数」の値としては8件(つまり、要因1「品切件数」の現状値と最適値との差分に目標達成率を乗算した値)に相当する。
次に、図4に示すツリー構造においてKPI1−1「客単価」に影響を与える複数の要因のうちの要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」について説明する。ここで、上記したように商品種類が増加すると1つの商品当たりの仕入れ数が減少し、当該仕入れ数に応じて商品価格が変動する可能性があるため、要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」は互いに影響を受けるものとして例えばツリー構造情報において予め定義されているものとする。この場合には、要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」を対象要因として処理が実行される。
具体的には、要因抽出部19は、要因実績格納部14を参照して、要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」の各々の値域を抽出する。ここでは、要因2「商品種類」の値域として最大値「100種」及び最小値「50種」が抽出され、要因3「商品価格」の値域として最大値「1500円」及び最小値「1000円」が抽出されたものとする。
ここで、上記したように要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」が互いに影響を受ける場合、要因抽出部19は、要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」の各々の値域を要因最適値算出モデルに入力することによって、当該要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」の最適値の組み合わせ(セット)を算出する。この場合、要因最適値算出モデルは、要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」の値に応じて変化(改善)するKPI1−1「客単価」の実績値(または改善実績)等に基づいて生成されており、KPI1−1「客単価」の値を最大にすることができると推定される要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」の値の組み合わせを出力(算出)するように構成されている。
図10は、上記した要因最適値算出モデルを用いて算出される要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」の最適値の組み合わせの一例を示している。図10に示す例では、KPI1−1「客単価」が最も高くなる最適値の組み合わせとして、要因2「商品種類」の最適値「70種」及び当該要因3「商品価格」の最適値「1200円」の組み合わせが算出されている。
上記したように要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」の最適値の組み合わせが算出された場合、当該組み合わせにおける要因2「商品種類」の最適値を用いて、当該要因2「商品種類」の改善期待値を算出する。
具体的には、要因抽出部19は、要因2「商品種類」の現状値と最適値との差分を算出する。ここでは、要因2「商品種類」の現状値が80種であり、当該要因2「商品種類」の最適値が70種であるため、要因2「商品種類」の現状値と最適値との差分としては10種が算出される。
また、要因抽出部19は、要因2「商品種類」の現状値、値域及び最適値を目標達成率算出モデルに入力することによって、要因2「商品種類」の目標達成率を算出する。ここでは、要因2「商品種類」の目標達成率として、80%が算出されたものとする。
次に、要因抽出部19は、要因2「商品種類」の現状値と最適値との差分が当該要因2「商品種類」の値域に占める比率及び当該要因2「商品種類」の目標達成率に基づいて、当該要因2「商品種類」の改善期待値を算出する。
ここで、要因2「商品種類」の現状値と最適値との差分は10種であり、当該要因2「商品種類」の値域の最大値及び最小値は100種及び50種であり、当該要因2「商品種類」の目標達成率は80%である。この場合、要因抽出部19は、要因2「商品種類」の現状値と最適値との差分が当該要因2「商品種類」の値域(最大値−最小値)に占める比率として20%(=10/50)を算出し、当該比率に80%(目標達成率)を乗算することによって改善期待値として16%を算出する。なお、この要因2「商品種類」の改善期待値として算出された16%は、要因2「商品種類」の値としては8種(つまり、要因2「商品種類」の現状値と最適値との差分に目標達成率を乗算した値)に相当する。
また、上記したように要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」の最適値の組み合わせが算出された場合、当該組み合わせにおける要因3「商品価格」の最適値を用いて、要因3「商品価格」の改善期待値を算出する。
具体的には、要因抽出部19は、要因3「商品価格」の現状値と最適値との差分を算出する。ここでは、要因3「商品種類」の現状値が1500円であり、当該要因3「商品種類」の最適値が1200円であるため、要因3「商品価格」の現状値と最適値との差分としては300円が算出される。
また、要因抽出部19は、要因3「商品価格」の現状値、値域及び最適値を目標達成率算出モデルに入力することによって、要因3「商品価格」の目標達成率を算出する。ここでは、要因3「商品価格」の目標達成率として、70%が算出されたものとする。
次に、要因抽出部19は、要因3「商品価格」の現状値と最適との差分が当該要因3「商品価格」の値域に占める比率及び当該要因3「商品価格」の目標達成率に基づいて、当該要因3「商品価格」の改善期待値を算出する。
ここで、要因3「商品価格」の現状値と最適値との差分は300円であり、当該要因3「商品価格」の値域の最大値及び最小値は1500円及び1000円であり、当該要因3「商品価格」の目標達成率は70%である。この場合、要因抽出部19は、要因3「商品価格」の現状値と最適値との差分が当該要因3「商品価格」の値域(最大値−最小値)に占める比率として60%(=300/500)を算出し、当該比率に70%(目標達成率)を乗算することによって改善期待値として42%を算出する。なお、この要因3「商品価格」の改善期待値として算出された42%は、要因3「商品価格」の値としては210円(つまり、要因3「商品価格」の現状値と最適値との差分に目標達成率を乗算した値)に相当する。
上記したように要因1「品切件数」、要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」の各々について改善期待値が算出された場合、要因抽出部19は、当該改善期待値に基づいて重要要因候補を抽出する。具体的には、例えば重要要因候補として改善予測値が上位1つ(つまり、最上位)の要因が抽出される場合には、要因抽出部19は、要因3「商品価格」を重要要因候補として抽出する。
なお、図9においては、要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」が互いに影響を受けるものとして説明したが、例えば予算等の都合上、商品種類を増やしすぎれば各商品の在庫数が減少し、品切件数が増えるという観点に基づいて当該要因1「品切件数」及び要因2「商品種類」が互いに影響を受けるものとして予め定義されているような場合には、当該要因1「品切件数」及び要因2「商品種類」の最適値の組み合わせを算出して、重要要因候補を抽出するようにしてもよい。
上記したように本実施形態においては、ソリューションを変更することによって過去にKPIの値が改善した実績を示すKPI改善実績データ(第2実績データ)に基づいて生成された目標達成率算出モデル(第1統計モデル)に、KPIの現状値及び当該KPIの過去の実績値を示すKPI実績データ(第1実績データ)に基づいて抽出されたKPIの値域を入力することによって、KPIの値域に基づく目標値に対して当該KPIの現状値が達することができる割合(第1割合)を目標達成率として算出する。また、本実施形態においては、KPIの現状値、当該KPIの値域に基づく目標値及び目標達成率に基づいて算出される当該KPIの改善期待値(改善予測値)からKGIの改善予測値を算出し、当該KGIの改善予測値に基づいて当該KPIを重要KPI候補(KGIを改善するために重要であると推定されるKPIの候補)としてユーザに提示する。
本実施形態においては、このような構成により、専門的な知識及び経験を有していないユーザや現状を把握していないユーザであっても、当該現状に対して改善効果及び改善実現性の高いKPIを容易に把握し、当該KPIを改善するためのソリューションを選定することが可能となる。
具体的には、KPIはKGI(ビジネスにおける目的)を達成するための手段の一つであるが、当該KPIが上昇(改善)したとしてもKGIの上昇(改善)への寄与度が低い場合があり、このようなKPIは重要であるとは言えない。すなわち、KPIの値のみに着目することは原因分析が不十分であることを意味し、このような場合には、KPIは向上するがKGIの向上には寄与しない可能性が高くなる。これに対して、本実施形態においては、KPIの改善予測値(改善期待値)だけではなく、KGIの改善予測値に基づいて重要KPI候補を抽出するため、KGIを改善するためのより適切なKPIをユーザに対して提示することができる。これにより、本実施形態においては、ビジネスにおける適切なソリューションの選定を支援することができる。
なお、本実施形態において、上記したKGIの改善予測値はツリー構造情報において定義されているKPI毎に算出され、当該KPI毎に算出されたKGIの改善予測値が上位のKPIが重要KPI候補としてユーザに提示される。本実施形態においては、このような構成により、ツリー構造情報において多数のKPIが定義されているような場合であっても、当該多数のKPIの中から適切な重要KPI候補を自動的に抽出することが可能となる。
また、本実施形態においては、過去の改善実績に基づいて生成される目標達成率算出モデルを用いて目標達成率が算出されるが、当該目標達成率は、KPIの現状値が当該KPIの値域に基づく目標値に遠いほど高く算出され、KPIの現状値が当該KPIの値域に基づく目標値に近いほど低く算出される。本実施形態においては、このような構成により、より改善する可能性(実現可能性)の高いKPIを重要KPI候補として抽出することが可能となる。なお、上記したKPIの値域に基づく目標値は、当該KPIの値域のうちKGIの値を最も改善することができる値(最高値)であり、例えば当該KPIの値域の最大値(または最小値)等である。
更に、本実施形態においては、要因の過去の実績値を示す要因実績データ(第3実績データ)に基づいて当該要因の値域を抽出し、KPI実績データ及び要因実績データに基づいて生成された要因最適値算出モデル(第2統計モデル)に当該要因の値域を入力することによって、KPIの値を最大にする当該要因の最適値を算出する。また、本実施形態においては、ソリューションを変更することによって過去に要因の値が改善した実績を示す要因改善実績データ(第4実績データ)に基づいて生成された目標達成率算出モデル(第3統計モデル)に要因の現状値、値域及び最適値を入力することによって、当該要因の最適値に対して当該要因の現状値が達することができる割合(第2割合)を目標達成率として算出する。更に、本実施形態においては、要因の現状値と当該要因の最適値との差分が当該要因の値域に占める比率及び目標達成率から算出された当該要因の改善期待値に基づいて、当該要因を重要要因候補(KGIを改善するために重要であると推定される要因の候補)としてユーザに提示する。
本実施形態においては、このような構成により、要因の最適値を算出する要因最適値算出モデルを利用し、当該要因の現状値を最適値とすることでKPIが最も改善される(上昇する)と推定される要因を、現状に最も影響を与えている要因として自動的に抽出することが可能となる。これにより、本実施形態においては、専門的な知識及び経験を有していないユーザや現状を把握していないユーザであっても、当該現状に対して改善効果及び改善実現性の高い要因を容易に把握し、当該要因を改善するためのソリューションを選定することが可能となる。
なお、本実施形態において、上記した要因の改善期待値は例えば重要KPI候補として抽出されたKPIに影響を与える要因毎に算出され、当該要因毎に算出された改善予測値が上位の要因が重要要因候補としてユーザに提示される。本実施形態においては、このような構成により、ツリー構造情報において多数の要因が定義されているような場合であっても、当該多数の要因の中から適切な重要要因候補を自動的に抽出することが可能となる。
また、本実施形態において、重要KPI候補として抽出されたKPIに影響を与える複数の要因の中に互いに影響を受ける複数(例えば、2つ)の要因が含まれている場合には、当該KPIの値を最大にする当該2つの要因の最適値の組み合わせを算出する。本実施形態においては、このような組み合わせとして算出された最適値を用いて重要要因候補を抽出することにより、要因間における副次的な影響を考慮した適切な要因をユーザに対して提示することができる。
ここで、本実施形態においては例えば図5に示すようなツリー構造表示画面が表示され、当該ツリー構造表示画面上で重要KPI候補及び重要要因候補が提示(強調表示)されるものとして説明したが、ソリューション選定支援装置10に表示される画面は図5に示すツリー構造表示画面と異なっていてもよい。
以下、上記した図3に示す処理が実行される場合におけるソリューション選定支援装置10に表示される画面(GUI)の他の例について説明する。なお、ツリー構造情報には上記した図4において説明したツリー構造が定義されているものとする。
まず、図11は、図3に示すステップS1〜S3の処理が実行された後にソリューション選定支援装置10に表示される画面(以下、第1ツリー構造表示画面と表記)の一例である。
図11に示す例では、第1ツリー構造表示画面301には、KGI「人時売上高」、KPII1「総売上高」、KPI1−1「客単価」、KPI1−2「来客数」、KPI2「総労働時間」がツリー形式で表示されている。図4及び図5においては省略されていたが、ここでは、KPI2「総労働時間」の下位に位置するKPIとして、KPI2−1「開店準備時総労働時間」、KPI2−2「営業時総労働時間」及びKPI2−3「閉店準備時総労働時間」が表示(定義)している。なお、図11においては、KGI及びKPI等の表記は省略されている。
また、第1ツリー構造表示画面301においては、KGI及びKPIの近傍に当該KGI及びKPIの現状値が表示されている。
なお、ステップS1〜S3処理が実行された時点では、図11に示すようにツリー構造情報において定義されている要因については表示されないものとする。
ここで、ツリー構造情報においては多数のKGI及びKPI等が定義されている場合があるが、このような場合においては、例えば図12に示す画面(以下、条件指定画面と表記)301aを介して第1ツリー構造表示画面301に表示するツリー構造の範囲を指定可能な構成としてもよい。
具体的には、条件指定画面301a中の対象KGI/KPIの欄には、例えば第1ツリー構造表示画面301に表示するKGI(対象KGI)またはKPI(対象KPI)の名称等を入力することができる。これによれば、対象KGI/KPIの欄において名称が入力されたKGIまたはKPIに関する範囲(部分)のツリー構造のみを第1ツリー構造表示画面301に表示させることができる。
また、条件指定画面301a中の条件の欄には、例えば第1ツリー構造表示画面301に表示するKGIまたはKPIの現状値に関する条件を入力することができる。これによれば、現状値が条件の欄において入力された条件を満たすKGIまたはKPIに関する範囲(部分)のみを第1ツリー構造表示画面301に表示させることができる。
次に、図3に示すステップS4及びS5の処理が実行された場合、上記した図11に示す第1ツリー構造表示画面301は、図13に示す画面(以下、第2ツリー構造表示画面と表記)302に遷移する。
ここで、図3に示すステップS3において重要KPI候補としてKPI1−1「客単価」及びKPI2−1「開店準備時総労働時間」が抽出されたものとすると、図13に示す第2ツリー構造表示画面302においては、当該KPI1−1「客単価」及びKPI2−1「開店準備時総労働時間」が他のKPIと区別可能な態様で表示される。図13においては、例えばKPI1−1「客単価」及びKPI2−1「開店準備時総労働時間」の現状値が強調表示される例が示されているが、当該KPI1−1「客単価」(ノード)及びKPI2−1「開店準備時総労働時間」(ノード)を他のKPIよりも大きく表示する(つまり、枠を拡大する)ようにしてもよい。
また、上記したように図3に示すステップS3の重要KPI候補抽出処理においては、KGI「人時売上高」の改善予測値が上位のKPIが重要KPI候補として抽出されるが、第2ツリー構造表示画面302においては、当該改善予測値に基づく優先順位が更に表示されてもよい。具体的には、重要KPI候補としてKPI1−1「客単価」及びKPI2−1「開店準備時総労働時間」が抽出されている場合においてKPI2−1「開店準備時総労働時間」よりもKPI1−1「客単価」の方がKGIの改善予測値が高い場合には、例えば図14に示すような第2ツリー構造表示画面302を表示してもよい。
なお、図13及び図14においてはKGI「人時売上高」の下位に位置する全てのKPIが表示されているが、例えば上記した条件指定画面301a中の条件の欄に改善予測値に関する条件が指定されている場合には、KGI「人時売上高」(または各KPI)の改善予測値が当該条件を満たすKPIのみが第2ツリー構造表示画面302に表示されるようにしてもよい。
ここで、上記した第2ツリー構造表示画面302が表示された場合、ユーザは、当該第2ツリー構造表示画面302上で、重要要因候補を抽出する対象となるKPIを重要KPIとして選択することができるものとする。この場合、図13(または図14)に示す第2ツリー構造表示画面302は、図15に示す画面(以下、第3ツリー構造表示画面と表記)303に遷移する。なお、図15は、KPI1−1「客単価」が重要KPIとして選択された場合に表示される第3ツリー構造表示画面303を示している。
図15に示すようにKPI1−1「客単価」が重要KPIとして選択された場合、第3ツリー構造表示画面303中の当該KPI1−1「客単価」の近傍には、当該KPI1−1「客単価」の改善予測値が表示されるものとする。同様に、KGI「人時売上高」及びKPI1「総売上高」の近傍には、当該KGI「人時売上高」及びKPI1−1「客単価」の改善予測値がそれぞれ表示されている。なお、これらの改善予測値については上記した図6において説明した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
また、第3ツリー構造表示画面303には、ユーザによって重要KPIとして選択されたKPI1−1「客単価」に対応づけて、当該KPI1−1「客単価」に関する分析情報を表示する領域(以下、第1分析情報表示領域と表記)303aが設けられている。この第1分析情報表示領域303aには、例えばKPI1−1「客単価」の現状値、実績値(KPI実績データ)、値域及び改善予測値(改善期待値)等のうちの少なくとも1つが分析情報として表示されればよい。なお、図15に示す例では、第1分析情報表示領域303aには、直近(例えば、6か月分)の月毎のKPI1−1「客単価」の実績値、値域(最高値、最低値及び平均値)及び改善予測値等を含む分析情報がグラフ形式で表示されている。ユーザは、このような第1分析情報表示領域303aに表示された分析情報を参照しながら重要KPIを選択することができる。
なお、上記した第1分析情報表示領域303aに分析情報として表示される現状値、値域及び改善予測値等は、ステップS4の処理(重要KPI候補抽出処理)が実行された際にソリューション選定支援装置10の内部に保持されていればよい。
ここでは図15においては重要KPI候補として抽出されたKPI1−1「客単価」をユーザが重要KPIとして選択する例について説明したが、図16に示す第3ツリー構造表示画面303のように、ユーザは重要KPI候補として抽出されていないKPI2−3「閉店準備時総労働時間」等を重要KPIとして選択しても構わない。
上記したようにユーザによってKPI1−1「客単価」が重要KPIとして選択された場合、当該重要KPIに影響を与える複数の要因を対象として図3に示すステップS6及びS7に示す処理が実行される。この場合、図15に示す第3ツリー構造表示画面303は、図17に示す画面(以下、第4ツリー構造表示画面と表記)304に遷移する。
上記したようにKPI1−1「客単価」が重要KPIとして選択された場合、第4ツリー構造表示画面304には、上記したKGI及びKPIに加えて、当該KPI1−1「客単価」に影響を与える要因1「品切件数」、要因2「商品種類」及び要因3「商品価格(平均商品価格)」が表示される。
ここで、図3に示すステップS6において重要要因候補として要因3「商品価格」が抽出されたものとすると、図17に示す第4ツリー構造表示画面304には、当該要因3「商品価格」が他の要因と区別可能な態様で表示される。図17においては、例えば要因3「商品価格」の現状値が強調表示される例が示されているが、当該要因3「商品価格」(ノード)を他の要因よりも大きく表示するようにしてもよい。
また、第4ツリー構造表示画面304には、重要要因候補として抽出された要因3「商品価格」に対応づけて、当該要因3「商品価格」に関する分析情報を表示する領域(以下、第2分析情報表示領域と表記)304aが設けられている。この第2分析情報表示領域304aには、例えば要因3「商品価格」の最適値等が分析情報として表示されればよい。図17に示す例では、第2分析情報表示領域304aには、上記した図10に示すような要因2「商品種類」及び要因3「商品価格」の最適値の組み合わせを表す情報が表示されている。
なお、上記した第2分析情報表示領域304aに分析情報として表示される最適値等は、ステップS6の処理(重要要因候補抽出処理)が実行された際にソリューション選定支援装置10の内部に保持されていればよい。
ここで、上記した第4ツリー構造表示画面304が表示された場合、ユーザは、第2分析情報表示領域304aに表示された分析情報を参照して、ソリューションを選定する対象となる要因を重要要因として選択することができるものとする。重要要因候補として抽出された要因3「商品価格」がユーザによって選択されたものとすると、図17に示す第4ツリー構造表示画面304は、図18に示す画面(以下、第5ツリー構造表示画面と表記)305に遷移する。
図18に示すように、第5ツリー構造表示画面305においては、ユーザによって重要要因として選択された要因3「商品価格」を改善するためのソリューション(図4及び図5に示すソリューション5及び6)として例えば「値下げ」及び「値上げ」が表示される。
本実施形態においては、上記したような第1〜第5ツリー構造表示画面301〜305が順次表示されることによって、ユーザは、ソリューション選定支援装置10によって抽出された重要KPI候補及び重要要因候補を参考にして、KGI「人時売上高」を改善するための適切なソリューションを選定することができる。
すなわち、本実施形態においては、KGI「人時売上高」を改善するためのソリューションをワンステップで選定せず、重要KPIの抽出(現状分析)、重要要因の抽出(原因分析)及びソリューションの選定の順で段階的な分析(効果予測)を行うことにより、最終的に選定するソリューションの妥当性を向上させることができる。
また、本実施形態においては、KGI、KPI及び要因の関係性をツリー形式で可視化する構成であるため、ソリューションの選定に関してユーザは直観的に現状等を把握することが可能となる。
更に、本実施形態においては、上記したように重要KPI候補または重要要因候補に関する分析情報が表示されるため、ユーザは、当該分析情報に基づいて適切な重要KPIまたは重要要因を選択することができる。
なお、ユーザによる適切なソリューションの選定を支援することができるのであれば、ソリューション選定支援装置10に表示される画面は、本実施形態において説明したツリー構造表示画面以外であってもよい。
更に、本実施形態においては図3に示すように重要KPI候補抽出処理及び重要要因候補抽出処理が順次実行されるものとして説明したが、本実施形態に係るソリューション選定支援装置10は、当該重要KPI候補抽出処理及び重要要因候補抽出処理のうちの一方のみを実行する構成であっても構わない。なお、重要KPI候補抽出処理のみが実行される構成の場合には、ユーザは、重要KPI候補抽出処理において抽出された重要KPI候補を参考にして、当該重要KPI候補に影響を与える要因及び当該要因を改善するためのソリューションを選定すればよい。一方、重要要因候補抽出処理のみが実行される構成の場合には、ユーザは、例えば当該ユーザによって選定されたKPIに影響を与える複数の要因のうち重要要因候補抽出処理において抽出された重要要因候補を参考にして、当該重要要因候補を改善するためのソリューションを選定すればよい。
なお、本実施形態においてはソリューション選定支援装置10が1つの装置であるものとして説明したが、本実施形態に係るソリューション選定支援装置10は、例えば図1に示す各部11〜19が分散して配置された複数の装置によって実現されても構わない。
また、ソリューション選定支援装置10に含まれている各格納部11〜15は、当該ソリューション選定支援装置10の外部のサーバ装置(例えば、クラウドサーバ)等に設けられていてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。