(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態による販売価格決定システムの全体構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態の販売価格決定システム1は、販売価格決定装置100、票券管理システム200およびチケット販売システム300を備えて構成される。本実施形態の販売価格決定システム1は、複数の座席が行方向および列方向に並べて設置された施設について、座席の利用チケット(票券)を販売する際の販売価格を決定するものである。
チケット販売システム300は、映画、スポーツ、コンサート等のイベントのチケットを販売するウェブサイトを提供するサーバまたはサーバ群であり、複数の消費者にチケットを販売するための処理を実行する。消費者は、それぞれが使用する端末(以下、消費者端末400という)を用いてチケット販売システム300のウェブサイトにアクセスし、所望の座席の利用チケットを購入することが可能である。
なお、消費者端末400は、例えばスマートフォン、デスクトップ型PC(Personal Computer)、ノート型PC、タブレット型端末、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、ウェアラブルデバイス(Wearable Device)等の情報処理装置である。消費者端末400とチケット販売システム300との間は、インターネット、携帯電話網などの通信ネットワークを介して接続される。
消費者端末400は、消費者による操作に従ってチケット販売システム300のウェブサイトにアクセスし、チケットの購入要求を送信する。この購入要求には、消費者が購入を希望する1以上の座席の位置を示す座席位置情報が含まれる。チケット販売システム300は、消費者端末400から受信したチケットの購入要求に応じて、希望の座席が空席か否かなどの所定の確認およびその他の必要な処理を行った上で、当該チケットを販売する処理を行う。
チケット販売システム300は、票券管理システム200と通信ネットワークを介して接続されており、消費者に対してチケットを販売した結果を販売実績情報として票券管理システム200に都度通知する。これにより票券管理システム200は、座席の最新の取得/空席状況を把握し、座席状況情報として保持することができる。すなわち、票券管理システム200は、販売実績情報が票券管理システム200から通知される都度、その販売実績情報に基づいて座席状況情報を更新する。
チケット販売システム300は、票券管理システム200から座席状況情報をリアルタイムに取得することにより、票券管理システム200と座席の在庫に関する情報を常に同期する。そして、チケット販売システム300は、座席状況情報に基づいて、座席の最新の取得/空席状況をチケット販売用のウェブサイトを通じて消費者端末400に提供する。このときチケット販売システム300は、各座席の販売価格も提示する。詳細を後述するように、本実施形態では、販売価格決定装置100により座席ごとに販売価格が決定され、座席ごとに販売価格が異なり得る。消費者は、座席の最新の取得/空席状況および販売価格を確認することにより、所望の空席を選んで消費者端末400からチケット販売システム300に購入要求を送信するようにすることが可能である。
票券管理システム200は、映画、スポーツ、コンサート等のイベントごとに、会場となる施設が有する座席の利用チケットの販売を管理するサーバまたはサーバ群である。この票券管理システム200は、インターネット、携帯電話網などの通信ネットワークを介して、イベントでサービスを提供するサービス提供者が使用する端末(以下、サービス提供者端末500という)と接続される。サービス提供者端末500は、例えばスマートフォン、デスクトップ型PC、ノート型PC、タブレット型端末、携帯電話機、PDA、ウェアラブルデバイス等の情報処理装置である。
サービス提供者は、サービス提供者端末500を用いて票券管理システム200にアクセスし、票券管理システム200により提供される管理画面を介して、イベント(提供するサービス)の内容、会場の施設、施設が有する座席、チケットの販売価格などの情報(以下、これらを総じてイベント関連情報という)を提供する。イベントの内容に関する情報は、サービス提供者、イベントの種別、イベントの名称、イベントの開催期間、チケットの販売期間などの情報を含む。施設が有する座席に関する情報は、施設内の座席数、席種、座席の配置情報(列数、各列の配置、列内座席数などの情報を含む)を含む。また、販売価格に関する情報は、規定価格である定価および最低価格などの情報を含む。
票券管理システム200は、サービス提供者端末500から入力したイベント関連情報を、内部に記憶して保持するとともに、販売価格決定装置100およびチケット販売システム300に提供する。チケット販売システム300は、このイベント関連情報を用いてチケット販売用のウェブサイトを生成し、消費者端末400に提供する。また、上述したように、票券管理システム200は、チケット販売システム300からチケットの販売実績情報を受信して、その情報に基づいて座席状況情報を更新する。票券管理システム200およびチケット販売システム300は、イベント関連情報および座席状況情報を常に同期して保持する。なお、これらの情報をクラウド上のストレージに保管して、票券管理システム200およびチケット販売システム300がお互いに更新する構成としてもよい。
票券管理システム200は、LAN(Local Area Network)あるいはインターネット等の通信ネットワークを介して販売価格決定装置100と接続されており、座席状況情報に変化が起きたタイミングで、当該座席状況情報を販売価格決定装置100に送信する。これにより、票券管理システム200と販売価格決定装置100との間においても、最新の座席状況情報が常に同期している状態とする。なお、販売価格決定装置100が座席の販売価格を決定する処理を実行するタイミングで、現在の座席状況情報を票券管理システム200に問い合わせることにより、販売価格の算出に必要な座席状況情報を取得する構成としてもよい。
販売価格決定装置100は、票券管理システム200から取得される座席状況情報に基づいて、複数の座席が行方向および列方向に並べて設置された施設について、座席の利用チケットを販売する際の販売価格を決定する。そして、決定した販売価格を票券管理システム200に通知する。票券管理システム200は、販売価格決定装置100から通知された販売価格をチケット販売システム300に通知する。このように、販売価格決定装置100、票券管理システム200およびチケット販売システム300は、座席ごとのチケット販売価格の情報を同期して保持する。
なお、票券管理システム200から販売価格決定装置100に座席状況情報を提供する構成に代えて、販売実績情報を提供する構成としてもよい。この場合、販売価格決定装置100がイベント関連情報および販売実績情報に基づいて座席状況情報を生成し、この生成した座席状況情報に基づいて、チケットの販売価格を決定する。
図2は、第1の実施形態による販売価格決定装置100の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、第1の実施形態による販売価格決定装置100は、機能構成として、イベント関連情報取得部11、座席状況情報取得部12、空席状況検出部13、販売価格決定部14および販売価格通知部15を備えている。また、販売価格決定装置100は、記憶媒体として、イベント関連情報記憶部101、座席状況情報記憶部102、関数記憶部103および販売価格記憶部104を備えている。
上記各機能ブロック11〜15は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11〜15は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
イベント関連情報取得部11は、票券管理システム200から送られてくるイベント関連情報を受信し、イベント関連情報記憶部101に記憶させる。上述したように、票券管理システム200は、サービス提供者端末500からイベント関連情報を受信すると、これを販売価格決定装置100およびチケット販売システム300に送信する。販売価格決定装置100のイベント関連情報取得部11は、票券管理システム200からイベント関連情報を受信すると、これをイベント関連情報記憶部101に記憶させる。
上述したように、イベント関連情報取得部11がイベント関連情報記憶部101に記憶させるイベント関連情報の中には、座席の利用チケットを販売可能な最低価格および定価を示す情報が含まれている。よって、イベント関連情報取得部11は、チケットの最低価格および定価をイベント関連情報記憶部101に記憶させることによってこれを販売価格決定装置100に設定する規定価格設定部として機能する。
座席状況情報取得部12は、票券管理システム200から送られてくる座席状況情報を受信し、座席状況情報記憶部102に記憶させる。上述したように、票券管理システム200は、チケット販売システム300から販売実績情報を受信する都度、座席の最新の取得/空席状況を示す座席状況情報を更新し、販売価格決定装置100およびチケット販売システム300に送信する。販売価格決定装置100の座席状況情報取得部12は、票券管理システム200から座席状況情報を受信する都度、座席状況情報記憶部102に記憶している座席状況情報を更新する。
空席状況検出部13は、座席状況情報記憶部102に記憶された座席状況情報に基づいて、施設内に含まれる複数の座席のうち空席となっている座席の位置を検出するとともに、それぞれの空席の位置において行方向における横並びの連続空席数を列ごとに検出する。例えば、正面に舞台があって、その舞台に向かって複数の座席が行方向および列方向にアレイ状に配置されている施設において、列方向とは、舞台に近い方から順に座席が1列目、2列目、・・・となるように、舞台からの遠近を表す方向(縦方向)である。行方向とは、同じ列内で座席が横に並んだ方向(横方向)である。
横並びの連続空席数とは、行方向に並んでいる横並びの複数の座席のうち、連続して空席となっている座席の数をいう。列方向に延在する通路がある場合、通路によって横並びの連続性は断たれているものとし、通路に挟まれた横並びの区域が1つの列であるものとする。すなわち、空席状況検出部13は、列ごとに、通路に挟まれた区域内で、空席となっている座席の位置を検出するとともに、それぞれの空席の位置において横並びの連続空席数をそれぞれ検出する。
以下に、具体例に沿って説明する。ここでは一例として、図3に示すように、座席総数が360席である施設においてイベントを開催するものとし、その座席の利用チケットを販売するものとする。ここで、S席として横並び12席×10列の合計120席が用意され、A席として横並び12席×20列の合計240席が用意されるものとする。この場合、かかるイベントの座席在庫数、言い換えれば、販売されるチケットの合計枚数は360枚であり、S席用およびA席用として2種類の定価が設定される。なお、図3では行方向と列方向とが垂直に交わるように座席が配置されている例を示しているが、必ずしも垂直である必要はない。また、全ての列が横並び12席の例を示しているが、横並びの座席数が異なる列があってもよい。
この場合における施設内の座席数、S席とA席の席種、席種ごとの座席の配置(列数、各列の配置、列内座席数など)、席種ごとの定価などの情報は、サービス提供者端末500に対するサービス提供者の操作により入力されて票券管理システム200に提供され、販売価格決定装置100に送信されてイベント関連情報記憶部101に記憶されている。なお、ここでは詳述しないが、その他のイベント関連情報もイベント関連情報記憶部101に記憶されている。
図4は、座席状況情報記憶部102に記憶される座席状況情報を模式的に示す図であり、S席の一部(12席×5列)の座席の取得/空席状況を示している。図4において、矩形形状の各セルの1つ1つが座席を表しており、網掛けされたセルは何れかの消費者によって取得された販売済みの座席であり、網掛けがないセルは未販売の空席(在庫)である。空席状況検出部13は、5つの列ごとに、通路に挟まれた区域内で横並びの12席のうち、空席となっている座席の位置と、連続して空席となっている連続空席数とをそれぞれ検出する。
図4に示す例の場合、空席状況検出部13は、1列目の座席に関して、1〜3行目に連続空席数が3個となっている空席があり、10〜12行目に同じく連続空席数が3個となっている空席があることを検出する。また、空席状況検出部13は、2列目の座席に関して、1〜4行目に連続空席数が4個となっている空席があり、11〜12行目に連続空席数が2個となっている空席があることを検出する。
また、空席状況検出部13は、3列目の座席に関して、2〜10行目に連続空席数が9個となっている空席があることを検出する。また、空席状況検出部13は、4列目の座席に関して、1〜12行目に連続空席数が12個となっている空席があることを検出する。また、空席状況検出部13は、5列目の座席に関して、4,6,8行目のそれぞれに連続空席数が1個となっている空席があることを検出する。
販売価格決定部14は、空席状況検出部13により検出された空席のそれぞれについて、その空席に該当する連続空席数に基づいて、座席の利用チケットの販売価格を決定し、決定した販売価格を販売価格記憶部104に記憶させる。すなわち、販売価格決定部14は、連続空席数に応じて販売価格が変動するように設定された関数に従って、空席のチケット販売価格を決定する。このとき使用する関数は、関数記憶部103に記憶されている。この関数は任意に定めることが可能であるが、例えば、連続空席数が大きいほど販売価格が安くなり、連続空席数が小さいほど販売価格が高くなるような関数とすることが可能である。
一例として、販売価格決定部14は、列ごとに、行方向に連続して並んでいる座席の総数(以下、連続座席総数という)に対する連続空席数の割合に基づいて、空席のチケット販売価格を決定するようにしてもよい。図4に示す例の場合、連続座席総数は12個である。そして、1列目の1〜3行目の3個の空席および10〜12行目の空席は、連続空席数が3個であるから、何れも連続空席数の割合は3/12である。販売価格決定部14は、この1列目の6個の空席について、割合を説明変数として有する関数に対して3/12という割合の値を代入することにより、販売価格を決定する。
同様に、2列目については、1〜4行目の空席に関しては連続座席総数に対する連続空席数の割合が4/12となり、11〜12行目の空席に関しては連続空席数の割合が2/12となる。販売価格決定部14は、この2列目の6個の空席(4個の空席と2個の空席)について、割合を説明変数として有する関数に対して4/12,2/12という割合の値を代入することにより、それぞれの販売価格を決定する。3列目以降の空席についても同様にして販売価格を決定する。
また、販売価格決定部14は、イベント関連情報の一部としてイベント関連情報記憶部101に設定された最低価格を下回ることがなく、かつ、定価を基準として連続空席数(の割合)に基づいて販売価格が変動するように設定された関数に従って、空席の利用チケットの販売価格を決定するようにしてもよい。次に示す式(1)はそのような関数の一例である。式(1)において、Nは連続座席総数、nは連続空席数、Pnは連続空席数nに応じた販売価格、Pは定価、Plowは最低価格をそれぞれ示している。
Pn=P−(P−Plow)×n/N ・・・(1)
例えば、座席の定価Pを5000円、最低価格Plowを4000円と設定した場合、図4に示す複数の空席についてそれぞれ式(1)に示す関数に従って販売価格を計算すると、図5に示す通りとなる。例えば、1列目の1〜3行目の3個の空席および10〜12行目の3個の空席の販売価格は何れも、Pn=5000−(5000−4000)×3/12=4750円となる。同様に、2列目の1〜4行目の4個の空席の販売価格はPn=5000−(5000−4000)×4/12=4660円(1円単位は切り捨て)、11〜12行目の2個の空席の販売価格はPn=5000−(5000−4000)×2/12=4830円(1円単位は切り捨て)となる。
ここでは、列ごとに、連続座席総数に対する連続空席数の割合に基づいて空席のチケット販売価格を決定する例を説明したが、これに限定されない。例えば、販売価格決定部14は、行方向に連続して並んでいる座席を1列として複数の列(例えば、S席とA席の席種で区画したブロック、または当該ブロックより小さいサブブロックに含まれる複数の列)のそれぞれの空席数の平均値に対する連続空席数の割合に基づいて、空席の利用チケットの販売価格を決定するようにしてもよい。このようにすると、算出される販売価格が最低価格Plowを下回ることもある。
販売価格決定部14は、空席のチケット販売価格を任意のタイミングで決定するようにしてよい。例えば、販売価格決定部14は、空席状況検出部13により検出された連続空席数が所定の閾値を超えて変動したタイミングで、チケットの販売価格を決定するようにすることが可能である。ここで、所定の閾値を最小単位とすることも可能である。すなわち、どこかの空席で連続空席数に変動が生じるたび、言い換えると、座席状況情報記憶部102に記憶される座席状況情報が更新されるたびに、各空席の販売価格を算出して決定するようにしてもよい。別の例として、空席が連続している座席群の数が所定の閾値を超えて変動したタイミングでチケット販売価格を決定するようにしてもよい。
販売価格通知部15は、販売価格決定部14により決定された販売価格を票券管理システム200に通知する。票券管理システム200は、販売価格決定装置100から通知された販売価格をチケット販売システム300に通知する。上述したように、チケット販売システム300は、チケット販売用のウェブサイトを通じて、座席の最新の取得/空席状況および販売価格決定部14により決定された各空席の販売価格を消費者端末400に提供する。
このときチケット販売システム300は、イベント関連情報に基づいて、施設に設置されている複数の座席の位置を表した座席表を表示する座席表表示部の機能を備え、当該座席表を、販売価格決定部14により決定された販売価格に応じた態様で各座席が描画されるようにしてもよい。例えば、図5に示したように各座席のレイアウトを表した座席表上に販売価格を記載したものを消費者端末400に表示させるようにすることが考えられる。また、販売価格を複数段階のランクに分けて、ランクに応じて色分けした座席表を表示させるようにしてもよい。このようにすることにより、消費者が所望の空席を選んでチケットを購入する際に、どの空席がどのような販売価格で販売されているのかが分かりやすくなり、価格設定の透明性を高め、消費者の納得感を得やすくすることができる。
図6は、以上のように構成した販売価格決定装置100の動作例を示すフローチャートである。ここでは、販売価格決定装置100が票券管理システム200から座席状況情報を受信したときに、空席のチケット販売価格を決定する際の動作例を示している。また、図6は、ある1つのイベントに関するチケットの販売価格を決定する際の動作例を示している。実際には、図6に示すフローチャートの処理がイベントごとに実行される。
座席状況情報取得部12は、票券管理システム200から座席状況情報を取得したか否かを判定する(ステップS1)。座席状況情報取得部12が座席状況情報を取得していない場合は、ステップS1の判定を継続する。座席状況情報取得部12が座席状況情報を取得した場合、座席状況情報取得部12は、取得した座席状況情報を座席状況情報記憶部102に記憶させ、最新情報に更新する(ステップS2)。
次いで、空席状況検出部13は、座席状況情報記憶部102に記憶された座席状況情報に基づいて、空席の位置を検出するとともに、それぞれの空席の位置における横並びの連続空席数を検出する(ステップS3)。さらに、販売価格決定部14は、空席状況検出部13により検出された空席のそれぞれについて、その空席に該当する連続空席数に基づいて、各空席のチケット販売価格を決定し、決定した販売価格を販売価格記憶部104に記憶させる(ステップS4)。
そして、販売価格通知部15は、販売価格決定部14により決定された販売価格を票券管理システム200に通知する(ステップS5)。その後、販売価格決定装置100は、販売価格決定処理を終了する状況であるか否かを判定する(ステップS6)。販売価格決定処理を終了する状況とは、例えば、チケットを完売した場合、チケットの販売期間が満了した場合などである。販売価格決定処理を終了する状況になっていない場合、処理はステップS1に戻る。一方、販売価格決定処理を終了する状況になった場合、図6に示すフローチャートの処理は終了する。
以上詳しく説明したように、第1の実施形態では、座席の取得/空席状況を表す座席状況情報に基づいて、空席の位置を検出するとともに、それぞれの空席の位置における横並びの連続空席数を検出し、空席のそれぞれについて、連続空席数に基づいてチケットの販売価格を決定するようにしている。このように構成した第1の実施形態によれば、施設内に存在する単なる空席数ではなく、横並びで連続して存在する空席数に応じて販売価格を動的に調整することができる。
すなわち、図4に示したように、各列内における行方向の連続空席数は、先行して購入する消費者がどの座席の利用チケットを購入するかによって動的に変動し、どの列にどの程度の連続空席数が存在するかは先行購入者による購入状況次第となる。このため、単に施設全体としての空席数が多いほど、どの空席についても一律に販売価格が安くなるといった従来の仕組みとは異なり、単純に購入時期が遅くなれば販売価格が安くなるということはなく、座席ごとにその連続空席数に応じた販売価格が設定されることとなる。
式(1)に例示した関数に従って空席の販売価格を決定すると、図5に例示したように、連続空席数nが大きいほど販売価格Pnが安くなって最低価格Plowに近づく一方、連続空席数nが小さいほど販売価格Pnが高くなって定価Pに近づく。これは、在庫数が多いときには販売価格Pnが比較的安くなるが、販売が進んで空席数が減り、残りの座席の購入困難性が増して価値が高まってくると販売価格Pnが高くなることを意味している。また、空席数が単純に減ったかどうかではなく、どの程度連続して空席となっているかによって販売価格Pnが変わるので、個々の列ごとおよび個々の座席ごとに異なる価値を反映した販売価格Pnを設定することができる。
これにより、第1の実施形態によれば、価格調整による販促効果によってできるだけ空席を減らして販売者(チケット販売システム300の運営者)の収益性向上に貢献することができる。それに加えて、購入するタイミングを遅らせるほど販売価格が一律に安くなるということもないため、消費者間の公平性を担保することができ、また、チケットが無暗に安売りされることに対するサービス提供者の抵抗感も和らげることができる。このように、第1の実施形態によれば、販売者の収益性向上に貢献しつつ、消費者の心理およびサービス提供者の心理のいずれからも納得感が得られやすい販売価格を決定することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。第2の実施形態は、上述した第1の実施形態の構成に対して、連続空席数に応じた販売価格の決定処理(以下、動的価格決定処理という)を開始するタイミングを決定するための構成を付加したものである。すなわち、第2の実施形態では、チケットの販売開始当初は定価で販売し、その後、所定の条件を満たしたタイミングから動的価格決定処理を実行する。
図7は、第2の実施形態の第1例に係る販売価格決定装置100Aの機能構成例を示すブロック図である。なお、この図7において、図2に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図7に示すように、第2の実施形態の第1例に係る販売価格決定装置100Aは、機能構成として、販売価格決定部14に代えて販売価格決定部14Aを備えている。
販売価格決定部14Aは、座席状況情報記憶部102に記憶されている座席状況情報に基づいて、動的価格決定処理の開始タイミングを決定する。販売価格決定部14Aは、動的価格決定処理の開始前は利用チケットの販売価格を定価とし、動的価格決定処理の開始後は利用チケットの販売価格を連続空席数に応じた価格とする。連続空席数に応じた価格の計算方法は、第1の実施形態で説明した通りである。
一例として、販売価格決定部14Aは、イベント関連情報記憶部101に記憶されているイベント関連情報に含まれるチケットの販売期間のうち所定の割合(例えば、2割)が過ぎた時点で、座席状況情報記憶部102に記憶されている座席状況情報に基づいて、チケットの全販売数に対する実販売数の割合を計算し、それが所定の割合未満(例えば、2割未満=在庫数が8割以上)であったときに動的価格決定処理を開始して、連続空席数に応じた価格の計算を開始する。ここで、座席状況情報は、チケットの販売状況または在庫状況を示す情報であるから、座席状況情報取得部12は特許請求の範囲の販売関連情報取得部に相当する。
なお、座席状況情報取得部12とは別に、チケットの販売状況または在庫状況に関する販売関連情報を取得する販売関連情報取得部を更に備えるようにしてもよい。例えば、販売価格決定装置100Aが販売関連情報取得部を更に備え、票券管理システム200から販売実績情報を販売関連情報として取得するようにして、この販売実績情報に基づいて動的価格決定処理の開始タイミングを決定するようにしてもよい。
ここでは、チケットの全販売数に対する実販売数の割合を算出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、S席、A席という席種単位で実販売数の割合を算出し、何れかの席種で実販売数の割合が所定の割合未満であったときに、その割合未満の席種について、あるいは両方の席種について、動的価格決定処理を開始するようにしてもよい。また、席種単位に代えて、複数の列を含むように任意に区切ったブロック単位で実販売数の割合を算出するようにしてもよい。
また、ここでは販売期間の所定割合が過ぎた時点で動的価格決定処理を開始するか否かを判定しているが、判定タイミングを複数回設けるようにしてもよい。例えば、販売期間の2割が過ぎた時点で判定した結果、定価を維持することとした後、販売期間の4割が過ぎた時点で再度判定した結果(このときは、実販売数の割合が1回目より大きい値、例えば5割未満か否かを判定するようにしてもよい)、実販売数の割合が5割未満であったときに動的価格決定処理を開始するといったようにすることも可能である。
また、販売価格決定部14Aは、動的価格決定処理を開始した後、所定の条件を満たしたタイミングから動的価格決定処理を停止するようにしてもよい。例えば、動的価格決定処理を開始してから所定期間が経過した時点で、当該動的価格決定処理を停止して販売価格を固定化するようにしてもよい。あるいは、動的価格決定処理を開始してから所定期間が経過した時点で、座席状況情報記憶部102に記憶されている座席状況情報に基づいて、チケットの実販売数の割合を計算し、それが5割以上であったときに、動的価格決定処理を停止するようにしてもよい。固定化する販売価格は、固定化する時点で設定されている販売価格を維持するようにしてもよいし、定価に戻すようにしてもよいし、あらかじめ決めておいた固定価格とするようにしてもよい。
このように構成することにより、販売価格が動的に変動する期間と、販売価格が静的に固定化される期間とを組み合わせてチケットを販売することができる。また、チケットの販売開始直後は動的価格決定処理が実行されず、チケットが定価で販売されることから、自身のプライドのためにダイナミックな価格変動を嫌うアーティスト等のサービス提供者の意向を販売価格に反映することができる。そして、売れ行きが好調であれば定価での販売期間を長引かせることができ、売れ行きが良くない場合は販売価格を定価より低くして連続空席数に連動した価格とすることができる。このように、第2の実施形態によれば、販売者およびサービス提供者のニーズに沿った、より柔軟な対応で販売価格を決定することができる。
なお、サービス提供者がサービス提供者端末500を操作することにより、販売価格決定装置100Aによる動的価格決定処理の開始を任意のタイミングで指定できるようにしてもよい。同様に、サービス提供者がサービス提供者端末500を操作することにより、販売価格決定装置100Aによる動的価格決定処理の停止を任意のタイミングで指定できるようにしてもよい。
図8は、第2の実施形態の第2例に係る販売価格決定システムの全体構成例を示す図である。図8に示すように、第2の実施形態の第2例に係る販売価格決定システム1Bは、図1に示した販売価格決定装置100および票券管理システム200に代えて販売価格決定装置100Bおよび票券管理システム200Bを備えている。票券管理システム200Bは、イベント関連情報および座席状況情報に加え、集客度関連情報(詳細は後述する)を更に販売価格決定装置100Bに提供する。
上述した第1例では、動的価格決定処理の開始タイミングをチケットの販売実績に基づいて決定した。これに対し、以下に述べる第2例では、売価格決定装置100Bは、集客度関連情報を用いてチケットの販売予測(集客予測)を行い、その予測の結果に基づいて動的価格決定処理の開始タイミングを決定する。
図9は、第2の実施形態の第2例に係る販売価格決定装置100Bの機能構成例を示すブロック図である。なお、この図9において、図2に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図9に示すように、第2の実施形態の第2例に係る販売価格決定装置100Bは、機能構成として、集客度関連情報取得部16および集客度予測部17を更に備えるとともに、販売価格決定部14に代えて販売価格決定部14Bを備えている。また、第2例に係る販売価格決定装置100Bは、記憶媒体として、集客度関連情報記憶部105を更に備えている。
集客度関連情報取得部16は、集客度関連情報(提供者関連情報および施設関連情報の少なくとも一方)を票券管理システム200または他のサーバから取得し、集客度関連情報記憶部105に記憶させる。提供者関連情報は、施設においてサービスを提供するサービス提供者に関する情報で、サービス提供者に起因して集客度に影響を与え得る情報である。例えば、提供者関連情報は、票券管理システム200において取り扱った過去のサービス(イベント)における集客実績、他のサーバが提供するウェブサイト等から収集したサービス提供者の直近の評判などの情報を含む。ここでいう集客実績は、今回のイベントでサービスを提供するサービス提供者本人に関する過去の集客状況を示す情報である。
施設関連情報は、サービスを提供する施設におけるサービス提供時状況に関する情報で、当該サービス提供時の状況に起因して集客度に影響を与え得る情報である。例えば、施設関連情報は、今回のイベントを開催する施設に関して票券管理システム200において取り扱った過去のサービスにおける集客実績、サービス提供日において予想される天気などの情報を含む。ここでいう集客実績は、サービスの種別、サービスを提供した季節・時間・曜日・天気などとの関連における集客状況を示す情報である。
ここで、過去のサービスにおける集客実績の情報は、票券管理システム200から取得することが可能である。この集客実績の情報には、サービス提供者、施設、サービスの種別、サービスを提供した季節・時間・曜日、実販売数、購入希望数などの情報が含まれる。サービス提供者の評判情報は、例えばウェブサイトの口コミ情報、各種ランキング情報、SNSのフォロア数情報、ニュース情報などによって取得することが可能である。また、事前にサービス提供者が付与した5段階評価などの情報を用いてもよい。また、サービス提供日において予想される天気は、例えば気象情報を提供しているウェブサイトから取得することが可能である。
集客度予測部17は、集客度関連情報記憶部105に記憶された集客度関連情報(提供者関連情報および施設関連情報の少なくとも一方)に基づいて、サービスの提供日における集客度(チケット発売枚数に対する購入希望数の割合)を予測する。例えば、集客度予測部17は、提供者関連情報に基づいて、サービスの提供日における集客度を百分率の数値として予測する。同様に、集客度予測部17は、施設関連情報に基づいて、サービスの提供日における集客度を百分率の数値として予測する。
例えば、提供者関連情報に起因する集客度は、サービス提供者が過去に行った複数のイベント(今回のイベントを実施する施設以外で実施したものも含む)での集客度の実績値の平均値とすることができる。例えば、チケット発売枚数に対する購入希望数が平均2倍のサービス提供者の場合、集客度は200%とする。また、サービス提供者に関する話題が直近(例えば、チケット販売開始日より前の所定日以内)のニュースやSNS等で所定数以上検知された場合、過去の実績に基づいて計算された集客度に所定の係数(例えば1.5)を乗じるなどして集客度を補正するようにしてもよい。
また、施設関連情報に起因する集客度は、例えば、今回のサービスを提供する施設において過去に行われた各種イベント(今回のサービス提供者以外が提供したものも含む)での実績集客度の平均値に対して、今回提供するサービスにおいて、サービスの種別、サービスを提供する季節、時間、曜日、天気などによって集客度がどの程度上がるかを表す向上率とすることができる。例えば、施設関連情報に起因する集客度は、当該施設において過去に行われた全イベントでの実績集客度の平均値と、当該施設において今回行うイベントの種別、季節、時間、曜日、天気の何れか1つまたは複数と同じ状況下で過去に行われたイベントでの実績集客度の平均値との比率とすることが可能である。
また、集客度予測部17は、例えば天気以外が同一の条件となる2つの過去の販売実績をサンプルとして、過去に行われた全イベントでの実績集客度の平均値と、天気が晴れの場合のイベントの実績集客度の平均値とを比較して、天気が晴れの場合の集客度を算出するようにすることも可能である。これと同様にして、集客度予測部17は、イベントの種別、イベントが行われた季節、時間、曜日の何れか1つに関連する集客度を算出することが可能である。また、イベントの種別、季節、時間、曜日、天気の任意の組み合わせに関連する集客度についても同様に算出することが可能である。
以上のことを具体例に沿って説明する。例えば、今回のイベントで使用する施設が、過去に行われた全イベントでの実績集客度の平均値が60%の施設であるとする。また、今回行うイベントに関する種別(同一価格帯の音楽ライブ)、曜日(日曜日)、時間帯(15時開演)と同じ状況下で過去に行われたイベントでの集客度の平均値が140%であるとする。この場合、施設関連情報のうちイベントの種別、曜日、時間帯に起因する集客度は、84%(=0.6×1.4×100)となる。
また、天気に関しては、例えば「晴れ」「曇り」「雨」「嵐」の4種に分け、当該施設に関して蓄積された過去の集客実績の全情報から、天気の種類によらない平均集客度と、天気ごとの平均集客度との比率を統計的に計算することができる。例えば、全天気の平均集客度に対する「晴れ」の場合の平均集客度の比率が120%、「雨」の場合の平均集客度の比率が80%などとなる。今回のサービスの提供日の予報が「雨」である場合、当該施設において更に天気「雨」を加味した施設関連情報に起因する集客度は、67%(=0.6×1.4×0.8×100)となる。
以上のようにして計算される提供者関連情報に起因する集客度と、施設関連情報に起因する集客度との何れか一方のみを用いるようにしてもよいし、両方を用いるようにしてもよい。両方を用いる場合、例えば両方の集客度の掛け算により最終的な集客度を算出することができる。例えば、提供者関連情報に起因する集客度が120%、施設関連情報に起因する集客度が67%のサービスの場合、最終的な集客度は80%(=1.2×0.67×100)となる。
なお、以上に説明した集客度の算出手法は一例であり、これ以外の手法を用いて集客度を算出するようにしてもよい。例えば、集客度予測部17は、イベントの種別、季節、時間、曜日、天気の何れか1つまたは任意の複数の組み合わせを説明変数とし、集客度を目的変数とする機械学習モデルを生成し、これによって集客度を算出するようにしてもよい。
販売価格決定部14Bは、集客度予測部17により予測される集客度に基づいて動的価格決定処理の開始タイミングを決定し、当該動的価格決定処理の開始前は利用チケットの販売価格を定価とし、当該動的価格決定処理の開始後は利用チケットの販売価格を連続空席数に応じた価格とする。連続空席数に応じた価格の計算方法は、第1の実施形態で説明した通りである。
例えば、集客度予測部17により予測される集客度が100%未満の場合は、販売開始から比較的早いタイミングで動的価格決定処理を開始するようにする。一方、集客度予測部17により予測される集客度が100%以上の場合は、販売開始から比較的遅いタイミングで動的価格決定処理を開始するようにする。動的価格決定処理の開始タイミングをどの程度早くするか、または遅くするかは、予測される集客度が100%からどの程度乖離しているかに応じて定まるように設定された関数に従って決定するようにすることが可能である。
以上、販売価格決定装置100Bを第2例のように構成することにより、チケットの販売を実際に開始した後の販売実績に基づいて事後的に動的価格決定処理の開始タイミングを決定する第1例とは異なり、販売を開始する前から、予測した集客度にもとづいてあらかじめ動的価格決定処理の開始タイミングを決定することができる。また、この第2例に対して第1例を組み合わせて適用するようにすることも可能である。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図面に基づいて説明する。上記第1および第2の実施形態では、チケットの販売価格を算出するための関数があらかじめ決められていた。これに対し、第3の実施形態では、チケットの販売価格を算出するための関数を、予測した集客度に応じて設定する。特に以下では、上述した式(1)の最低価格Plowを集客度に応じて設定する例について説明する。
図10は、第3の実施形態の第1例に係る販売価格決定装置100Cの機能構成例を示すブロック図である。なお、この図10において、図9に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図10に示すように、第3の実施形態の第1例に係る販売価格決定装置100Cは、機能構成として、最低価格設定部18を更に備えるとともに、販売価格決定部14Bに代えて販売価格決定部14Cを備えている。
最低価格設定部18は、集客度予測部17により予測される集客度に基づいて、式(1)の最低価格Plowを設定する。例えば、最低価格設定部18は、集客度予測部17により算出された集客度を定価Pに乗じた値を最低価格Plowとして設定する(Plow=P×集客度)。
例えば、第2の実施形態で説明したように、今回のイベントで使用する施設の集客度の平均値が60%であり、その施設における同一価格帯の音楽ライブ、日曜日、15時開演と同じ状況下で過去に行われたイベントでの集客度の平均値が140%である場合、集客度予測部17により施設関連情報に起因する集客度が84%と予想される。また、チケットの定価が5000円であるとする。この場合、最低価格設定部18は、最低価格Plowを4200円(=5000×0.84)に設定する。
なお、最低価格Plowの計算法は上記の例に限定されない。例えば、チケットの販売を開始した後、所定のタイミングにおいて、票券管理システム200から提供される販売実績情報に基づいて、最低価格Plowを再設定するようにしてもよい。一例として、売上目標額とそれまでの売上との差額を空席数で割った額を算出し、これを最低価格Plowとして再設定するようにしてもよい。あるいは、売れ行き動向を考慮して、サービス提供者がサービス提供者端末500を操作して最低価格Plowを任意に設定できるようにしてもよい。
販売価格決定部14Cは、最低価格設定部18により設定された最低価格Plowを用いた式(1)に示す関数に従って、空席のチケット販売価格を決定する。販売価格の決定方法および動的価格決定処理の開始タイミングは、第1の実施形態または第2の実施形態で説明した通りである。
次に、最低価格Plowの設定に関する第2例を説明する。第2例は、チケットの販売開始後に最低価格Plowを再設定する場合に、その再設定のタイミングを決めるための手法を提供するものである。
図11は、第3の実施形態の第2例に係る販売価格決定システムの全体構成例を示す図である。図11に示すように、第3の実施形態の第2例に係る販売価格決定システム1Dは、販売価格決定装置100D、票券管理システム200およびチケット販売システム300を備えて構成される。販売価格決定装置100Dおよび票券管理システム200Dには、通信ネットワークを介して広告配信サーバ600が接続されている。なお、広告配信サーバ600を販売価格決定システム1Dが備えてもよく、また、広告配信サーバ600の機能を販売価格決定装置100Dが備えるようにしてもよい。
票券管理システム200Dは、イベント関連情報および座席状況情報に加え、集客度関連情報を更に販売価格決定装置100Dに提供する。また、票券管理システム200Dは、販売実績情報(一例によっては更にイベント関連情報)を広告配信サーバ600に提供する。
図12は、第3の実施形態の第2例に係る販売価格決定装置100Dの機能構成例を示すブロック図である。なお、この図12において、図11に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図12に示すように、第3の実施形態の第2例に係る販売価格決定装置100Dは、機能構成として、座席フィード情報生成部19、反応情報取得部20および反応度合算出部21を更に備えるとともに、最低価格設定部18に代えて最低価格設定部18Dを備えている。
座席フィード情報生成部19は、イベント関連情報記憶部101に記憶されているイベント関連情報、座席状況情報記憶部102に記憶されている座席状況情報および販売価格記憶部104に記憶されているチケットの販売価格に基づいて、座席フィード情報を生成する。座席フィード情報は、例えば、広告対象とされている空席の座席ID、広告情報の生成に用いるイベント画像ファイルURL、クリックした際のランディングページとなる詳細ページURL、販売価格決定部14により決定された販売価格、定価、提供するサービスの種別などの情報を含む。販売価格は、販売価格決定部14によりあらたな価格が決定される都度、更新される。座席フィード情報生成部19は、生成した座席フィード情報を広告配信サーバ600に逐次提供する。
広告配信サーバ600は、機能構成として、広告配信部61および反応検出部62を備えている。広告配信部61は、販売価格決定装置100Dから提供される座席フィード情報に基づいて、販売価格決定部14により決定された販売価格を含む座席の利用チケットの広告情報を生成し、複数の消費者端末400に配信する。例えば、広告配信部61は、チケットの販売を開始してから所定期間が経過したタイミングで、あらかじめ決められた最低価格Plowに基づいて式(1)に従って販売価格決定部14により決定された販売価格を含む広告情報を複数の消費者端末400に配信する。
広告配信部61がどの消費者に対して広告情報を配信するかについては任意に決めることが可能である。例えば、公知のターゲティング方法により選別した消費者に対して広告情報を配信するようにすることが可能である。一例として、広告配信部61は、票券管理システム200Dに記憶されている販売実績情報に基づいて、過去にチケットを購入した消費者の属性を抽出し、当該属性が同じまたは類似している消費者に対して広告情報を配信するといったことが可能である。また、広告配信部61は、イベント開催地に近い地域に住む消費者に対して広告情報を配信するようにしてもよい。あるいは、チケット販売システム300のウェブサイトに対するアクセスログを解析し、特定の情報にアクセスした消費者に対してリターゲティング広告を配信するようにしてもよい。
反応検出部62は、広告配信部61により配信された広告情報に対する消費者の反応を検出する。例えば、反応検出部62は、広告配信部61により配信された広告情報に含まれているイベント画像ファイルURLや詳細ページURLに対するクリック数、商品購入などの所定の成果に至った消費者の数を示すコンバージョン数などを、広告情報に対する消費者の反応として検出する。コンバージョン数は、票券管理システム200Dから提供される販売実績情報に基づいて検出することが可能である。反応検出部62は、このようにした検出した消費者の反応を示す消費者反応情報(クリック数、コンバージョン数など)を販売価格決定装置100Dに提供する。
販売価格決定装置100Dの反応情報取得部20は、広告配信サーバ600から提供された消費者反応情報を取得する。反応度合算出部21は、特許請求の範囲の反応度合取得部に相当するものであり、反応情報取得部20により取得された消費者反応情報に基づいて、広告情報を配信した後の消費者の反応度合を算出する。
例えば、広告配信部61が広告情報を複数回にわたって配信するようにし、反応情報取得部20により取得された消費者反応情報に基づいて反応度合算出部21がクリック数の変化を検出する。または、反応度合算出部21は、反応情報取得部20により取得されたコンバージョン数に基づいて、広告情報を配信した後の購入率または販売速度(一定期間中に販売されるチケットの数)の変化を算出するようにしてもよい。なお、購入率または販売速度の変化は、販売価格決定装置100Dから逐次提供される座席フィード情報に含まれる座席IDの数(=空席の数)の変化に基づいて算出するようにしてもよい。
最低価格設定部18Dは、反応度合算出部21により算出された消費者の反応度合に基づいて、式(1)の最低価格Plowを再設定するタイミングを決定する。例えば、広告情報の配信後、販売速度が加速したことが反応度合算出部21による算出結果から検出された場合、最低価格Plowを再設定するタイミングを所定のタイミングよりも遅らせる。一方、販売速度が加速していないことが反応度合算出部21による算出結果から検出された場合、最低価格Plowを再設定するタイミングを所定のタイミングのままとする。あるいは、所定のタイミングよりも早くするようにしてもよい。
別の例として、最低価格設定部18Dは、前回の広告配信時に比べてクリック数が増加していないことが反応度合算出部21による算出結果から検出された場合、最低価格Plowの再設定タイミングを所定のタイミングよりも早くするようにしてもよい。例えば、前回の広告配信時に比べてクリック数が増加していないことが反応度合算出部21による算出結果から検出された時点で、即時に最低価格Plowを下げるようにしてもよい。最低価格Plowの再設定タイミングを所定のタイミングよりも早める場合、最低価格Plowの再設定と同時に広告情報を再配信するようにしてもよい。
再設定する最低価格Plowの値は、第3の実施形態の第1例で説明した方法によって決定することが可能である。
ここでは、広告配信サーバ600(反応検出部62)において消費者の反応を検出し、その検出結果である消費者反応情報に基づいて販売価格決定装置100D(反応度合算出部21)が消費者の反応度合に関する情報を取得する例について説明したが、これに限定されない。例えば、広告配信サーバ600においてクリック数の変化またはコンバージョン数の変化(購入率または販売速度の変化)を検出し、その検出結果である反応度合情報を販売価格決定装置100D(反応情報取得部20)が取得する構成としてもよい。この場合、販売価格決定装置100Dにおいて反応度合算出部21が省略され、反応情報取得部20が特許請求の範囲の反応度合取得部に相当する。
以上詳しく説明したように、第3の実施形態では、連続空席数に応じて販売価格を動的に変えることに加えて、販売価格を算出する際に用いる関数を販売実績または予測した集客度に応じて動的に変えるようにしている。これにより、状況に合わせて、より柔軟な販売価格の設定を行うことができる。
なお、上記第1〜第3の実施形態では、映画、スポーツ、コンサート、ライブイベント等のイベントに係る座席の利用チケットを販売するケースを例に挙げて説明したが、適用可能なサービスはこれに限定されない。例えば、舞台公演、ミュージカル、野外フェスティバルなどのチケット販売サービスや、交通機関(例えば飛行機や電車)のチケット販売サービス、レストランの予約サービスなどにも適用することが可能である。すなわち、サービスの提供に当たり座席数の上限が設定されるサービスであり、空席を消費者に提供するような態様のサービスであれば、あらゆるサービスに適用可能である。
また、上記第1〜第3の実施形態では、チケット販売システム300が提供するチケット販売用のウェブサイトを介して、販売価格決定部14により決定した販売価格を提示する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、消費者端末400にインストールされた専用のアプリケーションを介して、販売価格決定部14により決定した販売価格でチケットを販売するプラットフォームを販売価格決定装置100,100A〜100Dが提供するようにしてもよい。また、チケット販売のプラットフォームは、販売価格決定装置100,100A〜100Dが提供するのではなく、サービス提供者が用意するサーバ装置等によって提供するようにしてもよい。
また、上記第1〜第3の実施形態では、式(1)に例示したような関数を用いたルールベースに従ってチケットの販売価格を決定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、イベント関連情報、販売実績情報、座席状況情報、集客度関連情報の一部または全部と、空席状況検出部13により検出される連続空席数とを説明変数とし、販売価格を目的変数とする機械学習モデルを生成し、これによって連続空席数に応じた販売価格を決定するようにしてもよい。
その他、上記記第1〜第3の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
例えば、図示した各システムや各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各システムや各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。また、各記憶部101〜105に記憶される情報は、通信ネットワークを介して、外部に備えられた所定の記憶装置に記憶されてもよい。