以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
<本発明の実施の形態の概要>
本発明の実施の形態では、少なくとも2つのアレイセンサを用いて異常温度を検知する。ここで、アレイセンサは、短波長側の出力が取れないという課題をもつ。この課題を解消するために、2つのアレイセンサの各々の波長帯域を広く設ける。そして、温度によって変化するそれぞれの波長帯域の信号量を結んで得られる直線の「傾き」を導出する。この傾きは温度に特有のものであるため、監視環境における異常温度の値を算出できる。
本発明の実施の形態では、短波長側(0.8μm〜5μm)を利用した2つのアレイセンサを用いた異常温度の検知を行う。また、他の実施の形態として、長波長側(6μm〜13μm)を利用した2つのアレイセンサを用いた異常温度の検知を行ったり、CO2の共鳴放射帯を中心に短波長側(0.8μm〜2μm)を利用した1つのアレイセンサと長波長側(6μm〜13μm)を利用した1つのアレイセンサとを用いた異常温度の検知を行う。
[第1の実施の形態]
<システム構成>
以下、本発明の第1の実施の形態に係る光学監視装置について説明する。なお、光学監視装置は、光学監視装置の一例である。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る光学監視装置10は、炎が発する炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光を検出する第1センサ12と、略0.8μmから略5.0μmまでの範囲の短波長側である略0.8μmから略2.9μmまでの帯域の赤外光を検出する第2センサ14と、略0.8μmから略5.0μmまでの範囲の長波長側である略2.9μmから略5.0μmまでの帯域の赤外光を検出する第3センサ16とを備えている。また、光学監視装置10は、第1センサ12からの信号を増幅する増幅部18と、第2センサ14からの信号を増幅する増幅部20と、第3センサ16からの信号を増幅する増幅部22と、増幅部18、20、22からの信号を切り替えるスイッチ24と、スイッチ24からの信号をディジタル値に変換するAD変換部26とを備えている。また、光学監視装置10は、炎検知のための前処理や外部出力部32を制御する第1の演算処理部28と、炎を検知する処理を行う第2の演算処理部30と、外部出力部32とを備えている。
第1センサ12は、炎が発する炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光を透過するフィルター12Aと、フィルター12Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子を2次元状に配列させたアレイセンサ12Bと、フィルター12Aの前に配置された光学レンズ12Cとを備えている。
第2センサ14は、略0.8μmから略2.9μmまでの帯域の赤外光を透過させるフィルター14Aと、フィルター14Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子を2次元状に配列させたアレイセンサ14Bと、フィルター14Aの前に配置された光学レンズ14Cとを備えている。フィルター14Aは、例えば、図2に示すような、略0.8μmから略2.9μmまでの帯域の透過率が高い透過特性2Aを有する。
第3センサ16は、略2.9μmから略5.0μmまでの帯域の赤外光を透過させるフィルター16Aと、フィルター16Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子を2次元状に配列させたアレイセンサ16Bと、フィルター16Aの前に配置された光学レンズ16Cとを備えている。フィルター14Bは、例えば、図2に示すような、略2.9μmから略5.0μmまでの帯域の透過率が高い透過特性2Bを有する。
アレイセンサ12Bの各検出素子は、アレイセンサ14Bの各検出素子及びアレイセンサ16Bの各検出素子と対応するように配置されている。
また、アレイセンサ12B、14B、16Bは、予め定められた監視角度(例えば、90度)で、赤外光を検出しており、対応するアレイセンサ12Bの検出素子、アレイセンサ14Bの検出素子、及びアレイセンサ16Bの検出素子は、予め定められた同じ領域からの赤外光を検出している。
また、光学レンズ12C、14C、16Cは、各々1枚以上のレンズで構成されている。なお、光学レンズ12C、14C、16Cは、各々2枚以上のレンズで構成されていることが望ましい。これは、アレイセンサ12Bの検出素子、アレイセンサ14Bの検出素子、及びアレイセンサ16Bの検出素子の広い監視角度に対して、フラットな面にできる限り焦点を結ばせるためである。また、レンズの反射によりロスを少なくする為に、レンズに反射防止膜(ARコート)を蒸着することにより、検出素子の感度を増加させることも可能である。レンズ材料は、カルコゲナイドガラス、シリコン、ゲルマニウムなどである。
なお、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm 近傍の帯域の赤外光を検出する弱い電気信号を確実に捉えるために、第1センサ12と同じセンサを更に設けてもよい。
アレイセンサ12B、14B、16Bの検出素子は、サーモパイルで構成されているが、InAsSb素子など、他の光起電力タイプの素子や、抵抗変化を利用したマイクロボロメータ素子、PbSeなどの光導電タイプの素子で構成することもある。なお、サーモパイルやマイクロボロメータと比較して、他の素子は、赤外線検出速度が極めて速い。このため、回路構成は同じでも、AD変換速度を速くする事で、極めて高速に炎を検出することが出来る光学監視装置を構成することが可能となる。
増幅部18、20、22は、第1センサ12の各検出素子の電気信号、第2センサ14の各検出素子の電気信号、及び第3センサ16の各検出素子の電気信号をそれぞれ独立して増幅する。
スイッチ24は、増幅部18、20、22によって個別に増幅された電気信号を、一定の時間で順次切り替えて一つの電気信号に集約するスイッチ部(図示省略)を含み、当該スイッチ部により一つに集約された電気信号を出力する。なお、スイッチ24を設けずに、増幅部18、20、22のそれぞれに対して、AD変換部を設けて、増幅された電気信号をディジタル値に個別に変換して第1の演算処理部28に出力するようにしてもよい。
第1の演算処理部28及び第2の演算処理部30は、それぞれCPUで構成されている。第1の演算処理部28及び第2の演算処理部30を、機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、図3に示すように、第1の演算処理部28は、信号取得部40、補正係数設定部42、補正部44、及び警報表示部46Aを備えている。また、第2の演算処理部30は、平均算出部50、変化量算出部52、異常条件判定部54、異常位置算出部56、距離情報取得部58、補正係数取得部60、変化量修正部62、異常規模判定部64、反映判定部66、異常再判定部68、回数判定部70、警報制御部72、異常出力部76、及び警報出力部46Bを備えている。
信号取得部40は、AD変換部26から出力された信号から、第1センサ12の各検出素子からの電気信号の値、第2センサ14の各検出素子からの電気信号の値、第3センサ16の各検出素子からの電気信号の値を取得する。
補正係数設定部42は、第1センサ12の各検出素子、第2センサ14の各検出素子、及び第3センサ16の各検出素子に対して、センサ間の感度のばらつきを均等化するための補正係数、光学監視装置10の個体間の感度のばらつきを均等化するための補正係数、及びオフセット補正を行うための補正係数を事前に設定する。なお、各補正係数は、黒体炉などの基準光源から赤外光の基準光を照射したときに、信号取得部40によって取得された電気信号の各々の値に基づいて設定される。
補正部44は、信号取得部40によって取得された、第1センサ12の各検出素子からの電気信号の値、第2センサ14の各検出素子からの電気信号の値、及び第3センサ16の各検出素子からの電気信号の値に対して、補正係数設定部42によって設定された補正係数を用いて補正を行い、第2の演算処理部30へ出力する。
平均算出部50は、第1センサ12の各検出素子に対し、補正部44によって補正された当該検出素子からの電気信号の値の移動平均値(例えば過去100秒間の平均値)を、第1センサ12の当該検出素子の信号の監視環境信号値として算出する。また、平均算出部50は、同様に、第2センサ14の各検出素子に対し、補正部44によって補正された当該検出素子からの電気信号の値の移動平均値を、第2センサ14の当該検出素子の信号の監視環境信号値として算出する。また、平均算出部50は、同様に、第3センサ16の各検出素子に対し、補正部44によって補正された当該検出素子からの電気信号の値の移動平均値を、第3センサ16の当該検出素子の信号の監視環境信号値として算出する。
変化量算出部52は、第1センサ12の各検出素子に対し、補正部44によって補正された当該検出素子からの電気信号のライブ値と、平均算出部50によって算出された当該検出素子の信号の監視環境信号値との差を、第一変化量として算出する。また、変化量算出部52は、同様に、第2センサ14の各検出素子に対し、補正部44によって補正された当該検出素子からの電気信号のライブ値と、平均算出部50によって算出された当該検出素子の信号の監視環境信号値との差を、第二変化量として算出する。また、変化量算出部52は、同様に、第3センサ16の各検出素子に対し、補正部44によって補正された当該検出素子からの電気信号のライブ値と、平均算出部50によって算出された当該検出素子の信号の監視環境信号値との差を、第三変化量として算出する。
ここで、異常温度を検知する原理について説明する。
本実施の形態では、図4に示すように、0.8μm〜5μmの範囲を半分に分け、第2センサ14で検出する光の波長帯域を0.8μm〜2.9μmとし、第3センサ16で検出する光の波長帯域を2.9μm〜5μmとする。信号値の傾きを求めるための波長は、それぞれの波長帯域の中心とすると、1.85μm(0.8μm〜2.9μmの中心)と、3.95μm(2.9μm〜5μmの中心)とである。
また、プランクの法則式による0.8μ〜2.9μの範囲における放射発散度の積分は、以下の式で表される。
ここで、式中のiは波長、c1はプランクの第一定数、c2はプランクの第二定数、Tは温度である。
温度Tを、80℃、100℃、200℃、300℃、400℃の各々として、放射発散度の積分値を計算する。算出された積分値を波長範囲の幅である2.1μmで除算し、波長1.85μmに相当する各温度Tの放射発散度を求める。
温度Tの放射発散度=E(0.8〜2.9)/2.1 (2)
上記(2)式と同様に波長帯域2.9〜5μmにおいても、波長3.95μmに相当する各温度Tの放射発散度(=E(2.9〜5)/2.1)を求める。求めた、1.85μmと3.95μmの放射発散度をプロットすると図5(A)の通りとなる。なお、図5(B)は、図5(A)のグラフのうち、80℃と100℃の放射発散度について拡大して表示したものである。
求めた2点の値より、近似直線の傾きを算出する。傾きの算出式は次のとおりである。
ここで、xが波長、yがエネルギーである。x1が1.85、x2が3.95、y1がE1.85、y2がE3.95であるとすると、以下の(4)式が得られる。
100℃、200℃、300℃、400℃の各温度より算出された傾きを図6に示す。図6に示すように、放射される温度により傾きの値が変化するため、傾きの値をパラメータとして温度を検出することが可能である。なお、低温ほど検出される信号が小さいため他の温度と比べて傾きの値が小さくなる。ただし、温度異常は殆どが80℃以上の事象となるため、見分けることが可能である。
アレイセンサのような受光素子面積が小さいものは、欲しい波長において検出される信号が小さくなる問題がある。これに対し、本実施の形態では、広い波長帯の信号を検出することで、上記の問題を解決する。
なお、波長帯域(2.9μm〜5μm)は、CO2の共鳴放射帯を含むが、CO2の共鳴放射帯による影響は当該波長帯域(2.9μm〜5μm)全体から見れば微々たるものであるため、当該波長帯域(2.9μm〜5μm)の信号をそのまま温度検出に用いる。
また、一例として異常温度の赤外放射を受光したとすると異常温度判定は以下の(1)〜(2)のステップで行われる。
(1)波長0.8μm〜2.9μmの帯域の変化量と波長2.9μm〜5μmの帯域の変化量とを用いた近似直線の傾きを算出する。
(2)求めた変化量の傾きから、温度を推定し、温度に関する閾値を用いて、異常温度判定を行う。
以上説明した原理にしたがって、本実施の形態では、異常条件判定部54は、アレイセンサ12Bの各検出素子に対し、異常温度を検知したか否かを判定する。具体的には、異常条件判定部54は、変化量算出部52によって算出された当該検出素子に対応するアレイセンサ14Bの検出素子の第二変化量(0.8μm〜2.9μmの帯域)の値、及び当該検出素子に対応するアレイセンサ16Bの検出素子の第三変化量(2.9μm〜5μm)の値から近似直線の傾きを求め、求められた傾きから、当該傾きと温度との関係を用いて、温度を検知する。温度が閾値以上である場合に、異常温度を検知したと判定する。
また、異常条件判定部54は、アレイセンサ12Aの各検出素子に対し、炎を検知したか否かを判定する。具体的には、異常条件判定部54は、変化量算出部52によって算出された当該検出素子の第一変化量(4.5μm近傍)の値が閾値E以上である場合に、炎を検知したと判定する。
異常位置算出部56は、アレイセンサ12Bの検出素子のうち、異常温度を検知したと判定された検出素子に対して予め定められた位置を、異常温度位置として判定する。
異常位置算出部56は、アレイセンサ12Aの検出素子のうち、炎を検知したと判定された検出素子に対して予め定められた位置を、火災位置として判定する。
検出素子に対して予め定められる位置を求める手法として、光学監視装置10を設置するときに、位置計測器を用いて、検出素子毎に実空間上の検出位置を計測する手法や、2台の光学監視装置及び監視対象の位置関係を基に、三角測量にて算出する手法がある。
距離情報取得部58は、異常温度を検知したと判定された検出素子に対して予め定められた距離を、異常温度位置までの距離として取得する。
距離情報取得部58は、炎を検知したと判定された検出素子に対して予め定められた距離を、火災位置までの距離として取得する。
補正係数取得部60は、距離情報取得部58によって取得された距離に基づいて、当該距離に対応する補正係数を取得する。
具体的には、以下の式により、補正係数dを計算する。
d=(D/D0)2
ただし、Dは、距離情報取得部58によって取得される、光学監視装置10と異常温度位置又は火災位置との間の距離である。D0は、基準規模の定義で用いられる距離であり、例えば、60mである。
変化量修正部62は、異常温度を検知したと判定された検出素子の第二変化量(0.8μm〜2.9μmの帯域)の値を、取得した補正係数dを用いて修正する。具体的には、異常温度を検知したと判定された検出素子の第二変化量の値に、補正係数dを乗算する。
また、変化量修正部62は、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量(4.5μm近傍)の値を、取得した補正係数dを用いて修正する。具体的には、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量の値に、補正係数dを乗算する。
異常規模判定部64は、変化量修正部62により得られた、異常温度を検知したと判定された検出素子の第二変化量の値vに、補正係数dを乗算した結果と、予め求められた基準規模であるときの第二変化量の値v0とに基づいて、異常温度の空間的な大きさである規模Wを判定する。
具体的には、以下の式に従って、規模Wを計算する。
W=v・d/v0
ここで、v0は、基準規模の異常温度箇所との間の距離が所定距離(基準規模の定義で用いられる距離)であるときに検出素子で得られる第二変化量(0.8μm〜2.9μmの帯域)である。
また、異常規模判定部64は、変化量修正部62により得られた、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量の値vに、補正係数dを乗算した結果と、予め求められた基準規模であるときの第一変化量の値v0とに基づいて、炎の空間的な大きさである規模Wを判定する。
ここで規模については、炎及び異常温度でそれぞれ以下の通り定義する。
<炎の規模>
「火災報知設備の感知器および発信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年 自治省令第17号)」第17条の八にて規定される炎(33[cm]×33[cm]の角形火皿にてn−ヘプタンを燃焼させた場合の炎)を60m離れた位置で検出した際の炎の規模(本光学監視装置10で得られる信号の大きさ)を1と定義する。
<異常温度の規模>
監視対象によって異なり、表1に一例を示す。実際の運用では、監視対象、監視場所等に応じて設定値の調整等を行う。
以上より、上記定義を基に、信号量の大きさから炎又は温度異常の規模を算出することが可能である。規模が定量的に示されることにより、規模の大きさ別で対処方法を分ける等の対応が可能となる。例えば、規模が1より小さい場合は消火設備を選択的に起動したり、放射する薬剤量を制限したりする一方、1より大きくなる場合は全エリアの消火設備を起動したり、より多量の消火剤を放射する等の場合分けができる。
なおここで用いられる消火設備は、水系消火設備だけでなく、粉末系、ガス系、泡系等の種々の消火設備も適用可能である。
反映判定部66は、距離情報取得部58によって取得された異常温度位置又は火災位置までの距離が、所定範囲(例えば、5[m]〜60[m]の範囲)内である場合には、補正係数を、異常温度位置又は炎を検知したと判定された検出素子の第二変化量又は第一変化量の値vに乗算しないと判定する。一方、反映判定部66は、距離情報取得部58によって取得された異常温度位置又は火災位置までの距離が、所定範囲外である場合には、補正係数を、異常温度又は炎を検知したと判定された検出素子の第二変化量又は第一変化量の値vに乗算すると判定する。
異常再判定部68は、反映判定部66によって、補正係数を、異常温度又は炎を検知したと判定された検出素子の第二変化量又は第一変化量の値vに乗算しないと判定された場合に、異常温度又は炎を検知したと判定された検出素子の第二変化量又は第一変化量の値vを、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、異常温度又は炎を検知したと判定する。
また、異常再判定部68は、反映判定部66によって、補正係数を、異常温度又は炎を検知したと判定された検出素子の第二変化量又は第一変化量の値vに乗算すると判定された場合に、異常温度又は炎を検知したと判定された検出素子の第二変化量又は第一変化量の値vに補正係数dを乗算した値を、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、異常温度又は炎を検知したと判定する。
このように、異常温度又は炎を検知したと判定された検出素子の第二変化量又は第一変化量の値vに、補正係数dを乗算して再判定を行うことにより、異常温度検知又は炎検知の確実性を高め、また誤検知を防ぐことが可能となる。
上述した異常条件判定部54による判定、及び異常再判定部68により判定は、一定周期で繰り返し実行される。
回数判定部70は、アレイセンサ12B又は12Aの各検出素子に対し、以下の処理を行う。
回数判定部70は、異常条件判定部54により一定の時間内に異常温度又は炎を検知したと判定された回数が予め定められた累積回数以上の場合に、移動平均値を固定値とするとともに、異常温度信号又は火災信号を出力し、更に、当該検出素子に対して予め定められた位置を、異常温度位置又は火災位置として出力する。なお、異常温度位置又は火災位置が複数ある場合には、複数の異常温度位置又は火災位置を出力する。
本実施の形態では、雑音量及び/又は第一変化量と雑音量の差分に応じて、異常温度信号又は火災信号を出力するまでの判定速度を変化させるように回数に関する閾値を変更する。例えば、雑音量が大きいほど、又は第一変化量と雑音量の差分が大きいほど、異常温度信号又は火災信号を出力するまでの判定速度を速くするように回数に関する閾値を小さく変更する。
警報制御部72は、回数判定部70から異常温度信号又は火災信号が出力された場合、異常温度位置又は火災位置を報知するように警報表示部46A及び警報出力部46Bを制御する。例えば、警報表示部46Aは赤色LEDを点灯させ、警報出力部46Bはフォトカプラを導通状態にさせ、外部出力部32を構成する接点出力を作動させる。
異常出力部76は、火災位置、火災距離、火災規模を、消火装置制御部80へ出力する。消火装置制御部80では、出力された火災位置、火災距離、火災規模を用いて、ピンポイント消火を行う。この際、複数の火災位置が存在する場合には、優先順位をつけてピンポイント消火を行うようにしてもよい。例えば、火災規模が大きい順に、ピンポイント消火を行うようにしてもよい。
<光学監視装置の作用>
次に、本発明の第1の実施の形態に係る光学監視装置10の作用について説明する。
まず、設置前の光学監視装置10に対して、事前に補正係数を設定する。具体的には、黒体炉などの基準光源から、第1センサ12、第2センサ14、及び第3センサ16に対して赤外光の基準光を照射しているときに、光学監視装置10の補正係数設定部42が、第1センサ12の各検出素子、第2センサ14の各検出素子、及び第3センサ16の各検出素子に対して、補正係数を設定する。
補正係数が設定された光学監視装置10が、異常温度判定及び火災判定を行うべき場所に設置される。そして、光学監視装置10の第1センサ12の各検出素子、第2センサ14の各検出素子、及び第3センサ16の各検出素子から電気信号が出力され、増幅部18、20、22、スイッチ24、AD変換部26を介して各信号の値が、第1の演算処理部28に入力されているときに、光学監視装置10の第1の演算処理部28及び第2の演算処理部30によって、図7、図8に示す異常判定処理ルーチンが一定の周期毎に繰り返し実行される。なお、異常判定処理ルーチンは、第1センサ12の検出素子毎に実行される。
ステップS100では、信号取得部40が、AD変換部26から出力された信号から、第1センサ12の対象の検出素子からの電気信号の値、第2センサ14の、対応する検出素子からの電気信号の値、及び第3センサ16の、対応する検出素子からの電気信号の値を取得する。
次のステップS102では、補正部44が、上記ステップS100で取得した第1センサ12の対象の検出素子からの電気信号の値、第2センサ14の、対応する検出素子からの電気信号の値、及び第3センサ16の、対応する検出素子からの電気信号の値に対して、事前に設定された補正係数を用いて補正を行う。
そして、ステップS104では、平均算出部50は、第1センサ12の対象の検出素子からの電気信号の値、第2センサ14の、対応する検出素子からの電気信号の値、及び第3センサ16の、対応する検出素子からの電気信号の値の各々に対して、上記ステップS102で補正されたセンサ値と、過去に上記ステップS102で補正されたセンサ値とに基づいて、移動平均値を算出する。
ステップS106では、変化量算出部52は、第1センサ12の、対象の検出素子からの電気信号の値、第2センサ14の、対応する検出素子からの電気信号の値、及び第3センサ16の、対応する検出素子からの電気信号の値の各々に対して、上記ステップS102で補正されたセンサ値と、上記ステップS104で算出された移動平均値とに基づいて、第一変化量、第二変化量、及び第三変化量を算出する
そして、ステップS108では、異常条件判定部54は、上記ステップS106で算出された第二変化量及び第三変化量から、近似直線の傾きを算出し、当該傾きと温度との関係を参照して、温度を推定する。
そして、ステップS122では、異常条件判定部54は、上記ステップS106で算出された第二変化量及び第三変化量から近似直線を導出し、導出した近似直線を用いて、第一変化量に対応する計算値を、雑音量として算出する。
そして、ステップS125では、異常条件判定部54は、上記ステップS122で算出された雑音量、及び/又は第一変化量と雑音量との差分に応じて、連続回数に関する閾値N及び累積回数に関する閾値Mを設定する。
次のステップS126では、異常条件判定部54は、上記ステップ108で推定された温度が、温度に関する閾値以上であるか否かを判定する。推定された温度が、温度に関する閾値以上である場合には、異常温度を検知したと判定し、ステップS130へ移行する。一方、推定された温度が、温度に関する閾値未満である場合には、異常温度を検知しないと判定する。
また、異常条件判定部54は、上記ステップS106で算出された第一変化量が、閾値以上であるか否かを判定する。第一変化量が、閾値以上である場合には、炎を検知したと判定し、ステップS130へ移行する。一方、第一変化量が、閾値未満である場合には、炎を検知しないと判定する。異常温度及び炎の何れも検知しない場合には、異常判定処理ルーチンを終了する。
ステップS130において、第1センサ12の、対象の検出素子に対して予め定められた位置を、異常温度位置又は火災位置として判定する。
ステップS132では、距離情報取得部58は、第1センサ12の、対象の検出素子に対して予め定められた距離を、異常温度位置又は火災位置までの距離として取得する。
ステップS134では、補正係数取得部60は、距離情報取得部58によって取得された距離に基づいて、当該距離に対応する補正係数を取得する。
ステップS136では、変化量修正部62は、第1センサ12の、対象の検出素子の第一変化量(4.5μm近傍)の値、又は第2センサ14の、対応する検出素子の第二変化量(0.8μm〜2.9μmの帯域)の値を、取得した補正係数を用いて修正する。
ステップS138では、異常規模判定部64は、変化量修正部62により得られた、第1センサ12の、対象の検出素子の第一変化量の値の修正結果と、予め求められた基準規模であるときの第一変化量の値とに基づいて、炎の空間的な大きさである規模を判定する。あるいは、異常規模判定部64は、変化量修正部62により得られた、第2センサ14の、対応する検出素子の第二変化量の値の修正結果と、予め求められた基準規模であるときの第二変化量の値とに基づいて、異常温度の空間的な大きさである規模を判定する
ステップS140では、反映判定部66は、距離情報取得部58によって取得された異常温度位置又は火災位置までの距離が、所定範囲内である場合には、感度補正しないと判定し、ステップS142へ移行する。
一方、反映判定部66は、距離情報取得部58によって取得された異常温度位置又は火災位置までの距離が、所定範囲外である場合には、感度補正すると判定し、ステップS144へ移行する。
ステップS142では、異常再判定部68は、第1センサ12の、対象の検出素子の第一変化量の値、又は第2センサ14の、対応する検出素子の第二変化量の値を、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、炎又は異常温度を検知したと判定する。
ステップS144では、異常再判定部68は、第1センサ12の、対象の検出素子の第一変化量の値に補正係数を乗算した値、又は第2センサ14の、対応する検出素子の第二変化量の値に補正係数を乗算した値を、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、異常温度又は炎を検知したと判定する。
ステップS146では、上記ステップS142又はステップS144で、異常温度又は炎を検知したと判定されたか否かを判定する。上記ステップS142又はステップS144で、異常温度又は炎を検知したと判定されなかった場合には、異常判定処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップS142又はステップS144で、異常温度又は炎を検知したと判定された場合には、ステップS148へ移行する。
ステップS148では、回数判定部70は、上記ステップS142又はステップS144の判定結果と、過去の上記ステップS142又はステップS144の判定結果と、上記ステップS125で設定された連続回数に関する閾値Nとに基づいて、連続で異常温度又は炎を検知したと判定された回数が予め定められた連続回数N以上であるか否かを判定する。連続で異常温度又は炎を検知したと判定された回数が連続回数N以上である場合には、異常温度又は火災が発生したと判断し、ステップS154へ移行する。一方、連続で異常温度又は炎を検知したと判定された回数が連続回数N未満である場合には、ステップS150へ移行する。
ステップS150では、回数判定部70は、上記ステップS142又はステップS144の判定結果と、過去の上記ステップS142又はステップS144の判定結果と、上記ステップS125で設定された累積回数に関する閾値Mとに基づいて、一定の時間内に異常温度又は炎を検知したと判定された回数が予め定められた累積回数M以上であるか否かを判定する。一定の時間内に異常温度又は炎を検知したと判定された回数が累積回数M以上である場合には、異常温度又は火災が発生したと判断し、ステップS154へ移行する。一方、連続で異常温度又は炎を検知したと判定された回数が累積回数M未満である場合には、ステップS152へ移行し、注意出力モードへ移行して、異常判定処理ルーチンを終了する。
ステップS154では、回数判定部70は、第1センサ12の対象の検出素子からの電気信号の値、第2センサ14からの対応する検出素子の電気信号の値、第3センサ16の対応する検出素子からの電気信号の値の各々に対する移動平均値を、現時点の移動平均値に固定するように設定する。そして、ステップS156において、警報制御部72及び異常出力部76は、異常モードへ移行して、異常温度信号と、異常温度規模と、異常温度位置としての、対象の検出素子に対して予め定められた位置及び距離とを、警報表示部46A、及び警報出力部46Bに対して出力する。あるいは、警報制御部72及び異常出力部76は、火災信号と、火災規模と、火災位置としての、対象の検出素子に対して予め定められた位置及び距離とを、警報表示部46A、警報出力部46B、及び消火装置制御部80に対して出力し、異常判定処理ルーチンを終了する。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る光学監視装置によれば、3つのアレイセンサによって、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光、0.8μm〜2.9μmの帯域の赤外光、2.9μm〜5μmの帯域の赤外光の各々を検出して電気信号に変換する。光学監視装置は、それぞれの電気信号の、移動平均値からの変化量である第一変化量、第二変化量、及び第三変化量を算出し、第二変化量、及び第三変化量に基づいて、異常温度を検知したか否かを判定する。これにより、長距離又は広範囲の異常温度を検知することができる。
また、異常温度又は炎を検知したと判定された検出素子によって検出された電気信号の値と、異常温度又は炎の空間的な大きさである基準となる規模に対応する予め求められた電気信号の値とに基づいて、異常温度又は炎の空間的な大きさである規模を判定することにより、精度よく異常温度又は炎の規模を推定することができる。
また、異常温度又は炎を検知した検出素子に関し、当該検出素子の変化量に対して、検知された距離に応じた補正係数を乗算し、異常温度又は炎の検知の再判定を行うことにより、異常検知の確実性を高めることができる。
また、検出素子毎に、あらかじめ検出位置までの距離を設定しておくことにより、高価な機材(レーザー距離計等)を必要とせず、異常個所から光学監視装置までの距離を取得可能となる。これにより、低価格かつ安全度の高い監視環境を実現できる。
また、異常個所までの距離が特定されることにより、当該箇所に該当する検出素子で測定された第一変化量に対して、検知された距離に応じた補正係数を乗算して修正が可能となる。これにより、光学監視装置に対して極めて近い距離に存在する小さな炎(ライターやローソク炎等)に対する誤検知を防ぐことができる。逆に、光学監視装置から遠く離れた位置(例えば60m)での炎に対して、検知の確実性を高めることができる。
また、判定された規模、位置、及び距離情報を基に、最適な消火(ピンポイント消火、最小限の水損)が実現できる
また、赤外光の各々を検出して直流成分の電気信号に変換するサーモパイルを用いるため、周波数分解処理が不要であり、早期検知が可能である。
また、光学監視装置として、2種類以上の波長の赤外光の赤外線放射量を利用して炎や監視対象物の温度を検出する場合、それぞれの波長帯域幅は狭い程、またそれぞれの波長の間隔が広い程、測定温度の精度は向上する。
しかし、当該光学監視装置の場合は、測定温度精度は20℃〜30℃程度の精度があれば十分であり、一般的な温度測定器の様に0.1℃〜1℃の様な精度は必要ない。66m以上の監視距離が必要な光学監視装置にとって重要なことは温度精度よりもフィルターを通して得られる赤外線放射量を大きくする事である。そこで、本実施の形態では、検出する赤外光の帯域幅を広くすることにより、長距離又は広範囲の異常温度を検知することができるようにする。
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、上記の実施の形態では、光学監視装置は、各検出素子毎に、異常温度又は火災の判定を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。光学監視装置は、アレイセンサのブロック毎に、異常温度又は火災の判定を行うようにしてもよい。この場合には、光学監視装置は、アレイセンサ12Bの各ブロックに対し、当該ブロックに含まれるアレイセンサ12Bの検出素子の各々によって検出された電気信号の値、当該ブロックに対応するアレイセンサ14Bのブロックの検出素子の各々によって検出された電気信号の値、及び当該ブロックに対応するアレイセンサ16Bのブロックの検出素子の各々によって検出された電気信号の値に基づいて、異常温度又は炎を検知したか否かを判定すると共に、異常温度又は炎を検知したと判定されたブロックに対して予め定められた領域を、異常温度又は炎が検知された位置として判定すればよい。具体的には、光学監視装置は、ブロック毎に、当該ブロックに含まれる各検出素子によって検出された電気信号の値の平均値を、ブロックの値とする。平均算出部50は、アレイセンサ12Bの各ブロックに対し、当該ブロックの値についての移動平均値を算出し、アレイセンサ14Bの各ブロックに対し、当該ブロックの値についての移動平均値を算出し、アレイセンサ16Bの各ブロックに対し、当該ブロックの値についての移動平均値を算出する。また、変化量算出部52は、第1センサ12の各ブロックに対し、当該ブロックのライブ値と、当該ブロックの移動平均値との差を、第一変化量として算出する。また、変化量算出部52は、同様に、第2センサ14の各ブロックに対し、当該ブロックのライブ値と、平均算出部50によって算出された当該ブロックの移動平均値との差を、第二変化量として算出する。また、変化量算出部52は、同様に、第3センサ16の各ブロックに対し、当該ブロックのライブ値と、平均算出部50によって算出された当該ブロックの移動平均値との差を、第三変化量として算出する。
また、光学監視装置は、上記の実施の形態と同様に、各検出素子毎に、第一変化量、第二変化量、第三変化量を算出して、アレイセンサのブロック毎に、異常温度又は火災の判定を行うようにしてもよい。この場合には、光学監視装置は、各検出素子毎に、第一変化量、第二変化量、第三変化量に基づいて、異常温度又は炎を検知したか否かを判定し、ブロック毎に、当該ブロックに含まれる検出素子のうち、異常温度又は炎を検知したと判定された検出素子の数が、閾値以上であれば、当該ブロックで異常温度又は炎を検知したと判定すればよい。
また、光学監視装置は、アレイセンサの検出素子毎に、異常温度又は火災の判定を行うと共に、アレイセンサのブロック毎に、異常温度又は火災の判定を行うようにしてもよい。
また、上記の実施の形態では、光学監視装置は、異常条件判定部54により連続で異常温度若しくは炎を検知したと判定された回数が予め定められた連続回数以上の場合、又は異常条件判定部54により一定の時間内に異常温度もしくは炎を検知したと判定された回数が予め定められた累積回数以上の場合に、異常温度信号又は火災信号を出力する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。光学監視装置は、異常条件判定部54により連続で異常温度又は炎を検知したと判定された回数が予め定められた連続回数以上の場合であって、かつ、異常条件判定部54により一定の時間内に異常温度又は炎を検知したと判定された回数が予め定められた累積回数以上の場合に、異常温度信号又は火災信号を出力するようにしてもよい。
また、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域以外に、0.8μm〜2.9μmの帯域の赤外線および2.9μm〜5μmの帯域の赤外線を検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域以外として、0.8μm〜5μmの範囲内の帯域であって少なくとも0.2μm以上の帯域幅を持つ短波長側の帯域のフィルターを用いて当該帯域の赤外線を検出する共に、0.8μm〜0.5μmの範囲内の帯域であって少なくとも0.2μm以上の帯域幅を持つ長波長側の帯域のフィルターを用いて当該帯域の赤外線を検出してもよい。
一般的には、フィルターを通して得られる赤外線放射量はフィルターの帯域幅が大きい程、大きな赤外線放射量が得られる。光学監視装置に使用する場合として検討すると、光学監視装置として異常状態を監視する場合は、その監視距離が重要なファクターになる。これは、監視距離が長くなればなる程、フィルターを通して得られる赤外線放射量の値は、距離の2乗に反比例して小さくなってしまうからである。
例えば、監視距離が10m程度の短い距離であれば、フィルターの帯域は0.2μmの帯域幅でもよいが、監視距離が30m、60m、100mと長くなる場合には、フィルターを通して得られる赤外線放射量の値が小さくなる。具体的には、0.2μmの帯域幅で得られる赤外線放射量を1とすると30m、60m、100mの監視距離の場合に得られる赤外線放射量は、それぞれ1/9、1/36、1/100になってしまう。従って、当然フィルターの帯域幅が、0.2μmでは、必要な赤外線放射量は得られず、帯域幅を1μm帯域幅や、2μm帯域幅にする必要があり、最大で2.1μmの帯域幅にすることが出来る。
0.2μm帯域幅で得られる赤外線放射量を1とすると、1μm帯域幅では約5倍、2.1μ帯域幅では約10倍の赤外線放射量を得ることが可能となり、長距離監視に対応可能となる。
すなわち、第2センサ14で検出する光の波長帯域を、0.8μm〜5μmの範囲内の短波長側の帯域であって、1.0μm以上の帯域幅を持つ帯域とすることが好ましく、2.1μmの帯域幅を持つ帯域とすることがより好ましい。また、第3センサ16で検出する光の波長帯域を、0.8μm〜5μmの範囲内の長波長側の帯域であって、1.0μm以上の帯域幅を持つ帯域とすることが好ましく、2.1μmの帯域幅を持つ帯域とすることがより好ましい。
また、平均算出部50は、各センサからの電気信号の値の移動平均値を、各センサの信号の監視環境信号値として算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。光学監視装置は、各センサからの電気信号の値の加重平均値を、各センサの信号の監視環境信号値として算出するようにしてもよい。
また、第1センサ12、第2センサ14、及び第3センサ16の全てにおいて、アレイセンサを用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。第1センサ12、第2センサ14、及び第3センサ16の少なくとも一つにおいて、アレイセンサを用いるようにしてもよい。例えば、第2センサ14を、アレイセンサ14Bを用いて構成し、第1センサ12、及び第3センサ16では、アレイセンサではなく、1つの検出素子を用いて構成してもよい。この場合には、アレイセンサ14Bの各検出素子毎に、第一変化量、第二変化量、第三変化量を算出して、火災判定を行う際に、第一変化量として、第1センサ12の1つの検出素子について算出されるものを共通して使用し、第三変化量として、第3センサ16の1つの検出素子について算出されるものを共通して使用するようにすればよい。
また、アレイセンサの各検出素子に対して、検出位置までの距離を予め設定しておく場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、2台以上の光学監視装置により、三角測量の原理を用いて異常個所から光学監視装置までの距離を算出するようにしてもよい。この場合には、異常温度又は炎を検知したと判定された検出素子に対応する位置と、他の光学監視装置において異常温度又は炎を検知したと判定された検出素子に対応する位置とに基づいて、異常個所から光学監視装置までの距離を算出する。詳細な算出方法については後述する。
[第2の実施の形態]
<システム構成>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る光学監視装置について説明する。なお、第1の実施の形態に係る光学監視装置と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
本発明の第2の実施の形態に係る光学監視装置10は、炎が発する炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光を検出する第1センサ12と、略6.0μmから略13.0μmまでの範囲の短波長側である略6.0μmから略9.5μmまでの帯域の赤外光を検出する第2センサ14と、略6.0μmから略13.0μmまでの範囲の長波長側である略9.5μmから略13.0μmまでの帯域の赤外光を検出する第3センサ16とを備えている。また、光学監視装置10は、増幅部18と、増幅部20と、増幅部22と、スイッチ24と、AD変換部26と、第1の演算処理部28と、第2の演算処理部30と、外部出力部32とを備えている。
第2センサ14は、略6.0μmから略9.5μmまでの帯域の赤外光を透過させるフィルター14Aと、フィルター14Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子を2次元状に配列させたアレイセンサ14Bと、フィルター14Aの前に配置された光学レンズ14Cとを備えている。フィルター14Aは、例えば、図9に示すような、略6.0μmから略9.5μmまでの帯域の透過率が高い透過特性9Aを有する。
第3センサ16は、略9.5μmから略13.0μmまでの帯域の赤外光を透過させるフィルター16Aと、フィルター16Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子を2次元状に配列させたアレイセンサ16Bと、フィルター16Aの前に配置された光学レンズ16Cとを備えている。フィルター14Bは、例えば、図9に示すような、略9.5μmから略13.0μmまでの帯域の透過率が高い透過特性9Bを有する。
ここで、異常温度を検知する原理について説明する。
本実施の形態では、図10に示すように、6μm〜13μmの範囲を半分に分け、第2センサ14で検出する光の波長帯域を6.0μm〜9.5μmとし、第3センサ16で検出する光の波長帯域を9.5μm〜13μmとする。信号値の近似直線の傾きを求めるための波長は、それぞれの波長帯域の中心とすると、7.75μm(6.0μm〜9.5μmの中心)と、11.25μm(9.5μm〜13μmの中心)とである。
また、温度Tを、80℃、100℃、200℃、300℃、400℃とし、プランクの法則式による6.0μm〜9.5μmの範囲における放射発散度の積分値を計算する。算出された積分値から波長範囲の幅である3.5μmを除算し、波長7.75μmに相当する各温度Tの放射発散度を求める。
温度Tの放射発散度=E(6.0〜9.5)/3.5 (5)
同様に波長帯域9.5μm〜13μmにおいても、波長11.25μmに相当する各温度の放射発散度(=E(9.5〜13)/3.5)を求める。求めた、7.75μmと11.25μmの放射発散度をプロットすると図11(A)の通りとなる。なお、図11(B)は、図11(A)のグラフのうち、80℃と100℃の放射発散度について拡大して表示したものである。
上記(3)式で、x1が7.75、x2が11.25、y1が、E7.75、y2が、E11.25であるとし、100℃、200℃、300℃、400℃の各温度について算出した傾きを図12に示す。図12に示すように、放射される温度により傾きの値が変化するため、傾きの値をパラメータとして温度を検出することが可能である。なお、低温ほど検出される信号が小さいため他の温度と比べて傾きの値が小さくなる。ただし、温度異常は殆どが80℃以上の事象となるため、見分けることが可能である。
このように、本実施の形態では、アレイセンサのような受光素子面積が小さいものであっても、広い波長帯の信号を検出することで、欲しい波長において検出される信号が小さくなる問題を解決することができる。また、上記第1の実施の形態より長波長側を用いるため、信号をより多く検出できる。
以上説明した原理にしたがって、本実施の形態では、異常条件判定部54は、アレイセンサ12Bの各検出素子に対し、異常温度を検知したか否かを判定する。具体的には、異常条件判定部54は、変化量算出部52によって算出された当該検出素子に対応するアレイセンサ14Bの検出素子の第二変化量(6.0μm〜9.5μmの帯域)の値、及び当該検出素子に対応するアレイセンサ16Bの検出素子の第三変化量(9.5μm〜13μm)の値から求められる傾きから、当該傾きと温度との関係を用いて、温度を検知する。温度が閾値以上である場合に、異常温度を検知したと判定する。
なお、第2の実施の形態に係る光学監視装置10の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る光学監視装置によれば、3つのアレイセンサによって、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光、6.0μm〜9.5μmの帯域の赤外光、9.5μm〜13μmの帯域の赤外光の各々を検出して電気信号に変換する。光学監視装置は、それぞれの電気信号の、移動平均値からの変化量である第一変化量、第二変化量、及び第三変化量を算出し、第二変化量、及び第三変化量に基づいて、異常温度を検知したか否かを判定する。これにより、長距離又は広範囲の異常温度を検知することができる。
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域以外に、6.0μm〜9.5μmの帯域の赤外線および9.5μm〜13μmの帯域の赤外線を検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域以外として、6μm〜13μmの範囲内の帯域であって少なくとも0.2μm以上の帯域幅を持つ短波長側の帯域のフィルターを用いて当該帯域の赤外線を検出する共に、6μm〜13μmの範囲内の帯域であって少なくとも0.2μm以上の帯域幅を持つ長波長側の帯域のフィルターを用いて当該帯域の赤外線を検出してもよい。
ここで、0.2μm帯域幅で得られる赤外線放射量を1とすると、1μm帯域幅では約5倍、2μ帯域幅では約10倍、最大3.5μmの帯域幅にした場合は、約17倍の赤外線放射量を得ることが可能となり、長距離監視に対応可能となる。
すなわち、第2センサ14で検出する光の波長帯域を、6μm〜13μmの範囲内の短波長側の帯域であって、1.0μm以上の帯域幅を持つ帯域とすることが好ましく、2.0μmの帯域幅を持つ帯域とすることがより好ましく、3.5μmの帯域幅を持つ帯域とすることが最も好ましい。また、第3センサ16で検出する光の波長帯域を、6μm〜13μmの範囲内の長波長側の帯域であって、1.0μm以上の帯域幅を持つ帯域とすることが好ましく、2μmの帯域幅を持つ帯域とすることがより好ましく、3.5μmの帯域幅を持つ帯域とすることが最も好ましい。
[第3の実施の形態]
<システム構成>
以下、本発明の第3の実施の形態に係る光学監視装置について説明する。なお、第1の実施の形態に係る光学監視装置と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
本発明の第3の実施の形態に係る光学監視装置10は、炎が発する炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光を検出する第1センサ12と、略0.8μmから略2.0μmまでの帯域の赤外光を検出する第2センサ14と、略6.0μmから略13.0μmまでの帯域の赤外光を検出する第3センサ16とを備えている。また、光学監視装置10は、増幅部18と、増幅部20と、増幅部22と、スイッチ24と、AD変換部26と、第1の演算処理部28と、第2の演算処理部30と、外部出力部32とを備えている。
第2センサ14は、略0.8μmから略2.0μmまでの帯域の赤外光を透過させるフィルター14Aと、フィルター14Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子を2次元状に配列させたアレイセンサ14Bと、フィルター14Aの前に配置された光学レンズ14Cとを備えている。フィルター14Aは、例えば、図13に示すような、略0.8μmから略2.0μmまでの帯域の透過率が高い透過特性13Aを有する。
第3センサ16は、略6.0μmから略13.0μmまでの帯域の赤外光を透過させるフィルター16Aと、フィルター16Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子を2次元状に配列させたアレイセンサ16Bと、フィルター16Aの前に配置された光学レンズ16Cとを備えている。フィルター14Bは、例えば、図13に示すような、略6.0μmから略13.0μmまでの帯域の透過率が高い透過特性13Bを有する。
ここで、異常温度を検知する原理について説明する。
本実施の形態では、図14に示すように、第2センサ14で検出する光の波長帯域を0.8μm〜2μmとし、第3センサ16で検出する光の波長帯域を6μm〜13μmとする。信号値の近似直線の傾きを求めるための波長は、それぞれの波長帯域の中心とすると、1.4μm(0.8μm〜2μmの中心)と、9.5μm(6μm〜13μmの中心)とである。
また、温度Tを、80℃、100℃、200℃、300℃、400℃とし、プランクの法則式による(0.8μm〜2μmの範囲における放射発散度の積分値を計算する。算出された積分値から波長範囲の幅である1.2μmを除算し、波長1.4μmに相当する各温度Tの放射発散度を求める。
温度Tの放射発散度=E(0.8〜2.0)/1.2
同様に波長帯域6μm〜13μmにおいても、波長9.5μmに相当する各温度の放射発散度(=E(6〜13)/7)を求める。求めた、1.4μmと9.5μmの放射発散度をプロットすると図15(A)の通りとなる。なお、図15(B)は、図15(A)のグラフのうち、80℃と100℃の放射発散度について拡大して表示したものである。
上記(3)式で、x1が1.4、x2が9.5、y1が、E1.4、y2が、E9.5であるとし、100℃、200℃、300℃、400℃の各温度について算出した傾きを図16に示す。図16に示すように、放射される温度により傾きの値が変化するため、傾きの値をパラメータとして温度を検出することが可能である。なお、低温ほど検出される信号が小さいため他の温度と比べて傾きの値が小さくなる。ただし、温度異常は殆どが80℃以上の事象となるため、見分けることが可能である。
以上説明した原理にしたがって、本実施の形態では、異常条件判定部54は、アレイセンサ12Bの各検出素子に対し、異常温度を検知したか否かを判定する。具体的には、異常条件判定部54は、変化量算出部52によって算出された当該検出素子に対応するアレイセンサ14Bの検出素子の第二変化量(0.8μm〜2μmの帯域)の値、及び当該検出素子に対応するアレイセンサ16Bの検出素子の第三変化量(6μm〜13μm)の値から求められる傾きから、当該傾きと温度との関係を用いて、温度を検知する。温度が閾値以上である場合に、異常温度を検知したと判定する。
なお、第3の実施の形態に係る異常検知装置10の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態に係る光学監視装置によれば、3つのアレイセンサによって、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光、0.8μm〜2μmの帯域の赤外光、6μm〜13μmの帯域の赤外光の各々を検出して電気信号に変換する。光学監視装置は、それぞれの電気信号の、移動平均値からの変化量である第一変化量、第二変化量、及び第三変化量を算出し、第二変化量、及び第三変化量に基づいて、異常温度を検知したか否かを判定する。これにより、長距離又は広範囲の異常温度を検知することができる。
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域以外に、0.8μm〜2μmの帯域の赤外線および6μm〜13μmの帯域の赤外線を検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域以外として、0.8μm〜5μmの範囲内の帯域であって0.2μm以上2.0μm以下の帯域幅を持つ帯域のフィルターを用いて当該帯域の赤外線を検出する共に、6μm〜13μmの範囲内の帯域であって少なくとも0.2μm以上の帯域幅を持つ帯域のフィルターを用いて当該の赤外線を検出してもよい。
例えば、図17に示すように、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域以外に、3μm〜5μmの帯域の赤外線および6μm〜13μmの帯域の赤外線を検出するようにしてもよい。この場合、信号値の近似直線の傾きを求めるための波長は、それぞれの波長帯域の中心とすると、4μm(3μm〜5μmの中心)と、9.5μm(6μm〜13μmの中心)とである。また、上記(3)式で、x1が4、x2が9.5、y1が、E4、y2が、E9.5であるとし、100℃、200℃、300℃、400℃の各温度について算出した傾きを図18に示す。図18に示すように、放射される温度により傾きの値が変化するため、傾きの値をパラメータとして温度を検出することが可能である。
ここで、0.2μm帯域幅で得られる赤外線放射量を1とすると、1μm帯域幅では約5倍、2μ帯域幅では約10倍、7μ帯域幅では約35倍にすることが可能である。
すなわち、第2センサ14で検出する光の波長帯域を、0.8μm〜5μmの範囲内の帯域であって、1.0μm以上2.0μm以下の帯域幅を持つ帯域とすることが好ましい。また、第3センサ16で検出する光の波長帯域を、6μm〜13μmの範囲内の帯域であって、1.0μm以上の帯域幅を持つ帯域とすることが好ましく、2μmの帯域幅を持つ帯域とすることがより好ましく、7μmの帯域幅を持つ帯域とすることが最も好ましい。
ここで、第2センサ14で検出する光の波長帯域の帯域幅を2.0μm以下とするのは、第2センサ14で検出する光の波長帯域の帯域幅を2.0μmより大きくすると、傾きの値をパラメータとして温度を検出することが難しくなるからである。例えば、図19に示すように、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域以外に、0.8μm〜5μmの帯域の赤外線および6μm〜13μmの帯域の赤外線を検出する場合、信号値の近似直線の傾きを求めるための波長は、それぞれの波長帯域の中心とすると、2.9μm(0.8μm〜5μmの中心)と、9.5μm(6μm〜13μmの中心)とである。また、上記(3)式で、x1が2.9、x2が9.5、y1が、E2.9、y2が、E9.5であるとし、100℃、200℃、300℃、400℃の各温度について算出した傾きを図20に示す。図20に示すように、ピーク前後で同じ傾きの値が生じてしまうため、傾きの値をパラメータとして温度を検出することが難しくなる。
[第4の実施の形態]
<システム構成>
以下、本発明の第4の実施の形態に係る光学監視装置について説明する。
図21に示すように、本発明の第4の実施の形態に係る光学監視装置210は、炎が発する炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光を検出する第1センサ212と、略0.8μmから略5.0μmまでの範囲の短波長側である略0.8μmから略2.9μmまでの帯域の赤外光を検出する第2センサ214と、略0.8μmから略5.0μmまでの範囲の長波長側である略2.9μmから略5.0μmまでの帯域の赤外光を検出する第3センサ216と、略0.8μmから略5.0μmまでの帯域の赤外光を検出する第4センサ217とを備えている。光学監視装置210は、第1センサ212からの信号を増幅する増幅部18と、第2センサ214からの信号を増幅する増幅部20と、第3センサ216からの信号を増幅する増幅部22と、第4センサ217からの信号を増幅する増幅部223と、増幅部18、20、22、223からの信号を切り替えるスイッチ24と、AD変換部26とを備えている。光学監視装置210は、第1の演算処理部28と、第2の演算処理部30と、外部出力部32とを備えている。
第1センサ212は、炎が発する炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光を透過するフィルター212Aと、フィルター212Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子212Bとを備えている。
第2センサ214は、略0.8μmから略5.0μmまでの範囲の短波長側である略0.8μmから略2.9μmまでの帯域の赤外光を透過させるフィルター214Aと、フィルター214Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子214Bとを備えている。
第3センサ216は、略0.8μmから略5.0μmまでの範囲の長波長側である略2.9μmから略5.0μmまでの帯域の赤外光を透過させるフィルター216Aと、フィルター216Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子216Bとを備えている。
第4センサ217は、略0.8μmから略5.0μmまでの帯域の赤外光を透過させるフィルター217Aと、フィルター217Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子を2次元状に配列させたアレイセンサ217Bと、フィルター217Aの前に配置された光学レンズ217Cとを備えている。
また、アレイセンサ217Bは、予め定められた監視角度(例えば、90度)で、赤外光を検出しており、アレイセンサ217Bの検出素子は、予め定められた領域からの赤外光を検出している。
また、光学レンズ217Cは、1枚以上のレンズで構成されている。なお、光学レンズ217Cは、アレイセンサ217Bの広い監視角度に対して、フラットな面にできる限り焦点を結ばせるためには、2枚以上のレンズで構成されていることが望ましい。また、レンズの反射によりロスを少なくする為に、レンズに反射防止膜(ARコート)を蒸着することにより、検出素子の感度を増加させることも可能である。レンズ材料は、サファイア、カルコゲナイドガラス、シリコン、ゲルマニウムなどである。
検出素子212B、214B、216B、及びアレイセンサ217Bの検出素子は、サーモパイルで構成されているが、InAsSb素子、マイクロボロメータなど、他の光起電力タイプの素子や、抵抗変化を利用したマイクロボロメータ素子、PbSeなどの光導電タイプの素子で構成することもある。なお、サーモパイルやマイクロボロメータと比較して、他の素子は、赤外線検出速度が極めて速い。このため、回路構成は同じでも、AD変換速度を速くする事で、極めて高速に炎を検出することが出来る光学監視装置を構成することが可能となる。
増幅部18、20、22、223は、第1センサ212の検出素子212Bの電気信号、第2センサ214の検出素子214Bの電気信号、第3センサ216の検出素子216Bの電気信号、及び第4センサ217の各検出素子の電気信号をそれぞれ独立して増幅する。
スイッチ24は、増幅部18、20、22、223によって個別に増幅された電気信号を、一定の時間で順次切り替えて一つの電気信号に集約するスイッチ部(図示省略)を含み、当該スイッチ部により一つに集約された電気信号を、当該電気信号の強さに応じて選択的に増幅する。
信号取得部40は、AD変換部26から出力された信号から、第1センサ212の検出素子212Bからの電気信号の値、第2センサ214の検出素子214Bからの電気信号の値、第3センサ216の検出素子216Bからの電気信号の値、及び第4センサ217の各検出素子からの電気信号の値を取得する。
補正係数設定部42は、第1センサ212の検出素子212B、第2センサ214の検出素子214B、及び第3センサ216の検出素子216Bに対して、センサ間の感度のばらつきを均等化するための補正係数、光学監視装置210の個体間の感度のばらつきを均等化するための補正係数、及びオフセット補正を行うための補正係数を事前に設定する。
補正部44は、信号取得部40によって取得された、第1センサ212の検出素子212Bからの電気信号の値、第2センサ214の検出素子214Bからの電気信号の値、及び第3センサ216の検出素子216Bからの電気信号の値に対して、補正係数設定部42によって設定された補正係数を用いて補正を行い、第2の演算処理部30へ出力する。
平均算出部50は、第1センサ212の検出素子212Bに対し、補正部244によって補正された当該検出素子212Bからの電気信号の値の移動平均値を、当該検出素子212Bの信号の監視環境信号値として算出する。また、平均算出部50は、同様に、第2センサ214の検出素子214Bに対し、補正部244によって補正された当該検出素子214Bからの電気信号の値の移動平均値を、当該検出素子214Bの信号の監視環境信号値として算出する。また、平均算出部50は、同様に、第3センサ216の検出素子216Bに対し、補正部244によって補正された当該検出素子216Bからの電気信号の値の移動平均値を、当該検出素子216Bの信号の監視環境信号値として算出する。
変化量算出部52は、第1センサ212の検出素子212Bに対し、補正部44によって補正された当該検出素子212Bからの電気信号のライブ値と、平均算出部50によって算出された当該検出素子212Bの信号の監視環境信号値との差を、第一変化量として算出する。また、変化量算出部52は、同様に、第2センサ214の検出素子214Bに対し、補正部44によって補正された当該検出素子214Bからの電気信号のライブ値と、平均算出部50によって算出された当該検出素子214Bの信号の監視環境信号値との差を、第二変化量として算出する。また、変化量算出部52は、同様に、第3センサ216の検出素子216Bに対し、補正部44によって補正された当該検出素子216Bからの電気信号のライブ値と、平均算出部50によって算出された当該検出素子216Bの信号の監視環境信号値との差を、第三変化量として算出する。
異常条件判定部54は、変化量算出部52によって算出された検出素子214Bの第二変化量(0.8μm〜2.9μmの帯域)の値、及び検出素子216Bの第三変化量(2.9μm〜5μm)の値に基づいて、異常温度を検知したか否かを判定する。具体的には、異常条件判定部54は、変化量算出部52によって算出された検出素子214Bの第二変化量(0.8μm〜2.9μmの帯域)の値、及び検出素子216Bの第三変化量(2.9μm〜5μm)の値から近似直線の傾きを求め、求められた傾きから、当該傾きと温度との関係を用いて、温度を検知する。温度が閾値以上である場合に、異常温度を検知したと判定する。
また、異常条件判定部54は、変化量算出部52によって算出された検出素子212Bの第一変化量(4.5μm近傍)の値が閾値E以上である場合に、炎を検知したと判定する。
異常位置算出部56は、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値に基づいて、電気信号の値が最大となる検出素子に対して予め定められた位置を、異常温度位置又は火災位置として判定する。
検出素子に対して予め定められる位置は、光学監視装置210を設置するときに、位置計測器を用いて、検出素子毎に実空間上の検出位置を計測して設定しておけばよい。
なお、第4の実施の形態に係る光学監視装置210の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、上記の実施の形態では、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値に基づいて、異常温度位置又は火災位置を判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。平均算出部50が、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値についても、第1センサ212の検出素子212Bからの電気信号の値、第2センサ214の検出素子214Bからの電気信号の値、第3センサ216の検出素子216Bからの電気信号の値と同様に、移動平均値を算出してもよい。また、変化量算出部52が、アレイセンサ217Bの各検出素子に対し、移動平均値に対するライブ値の変化量を算出し、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値に対する変化量に基づいて、異常温度位置又は火災位置を判定するようにしてもよい。この場合には、変化量が最大値となる検出素子に対して予め定められた位置を、異常温度位置又は火災位置として判定すればよい。
また、上記の実施の形態では、光学監視装置は、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値に基づいて、異常温度位置又は火災位置を判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。光学監視装置は、アレイセンサ217Bのブロック毎の電気信号の値に基づいて、異常温度位置又は火災位置を判定するようにしてもよい。この場合には、アレイセンサ217Bの各ブロックに対し、当該ブロックに含まれる検出素子の各々によって検出された電気信号の値の平均値を、当該ブロックの値とする。そして、光学監視装置は、ブロックの値が最大値となるブロックに対して予め定められた領域を、異常温度位置又は火災位置として判定すればよい。
また、光学監視装置は、アレイセンサの検出素子毎に、異常温度位置又は火災位置の判定を行うと共に、アレイセンサのブロック毎に、異常温度位置又は火災位置の判定を行うようにしてもよい。
また、第2センサ214が、略6.0μmから略13.0μmまでの範囲の短波長側である略6.0μmから略9.5μmまでの帯域の赤外光を検出し、第3センサ216が、略6.0μmから略13.0μmまでの範囲の長波長側である略9.5μmから略13.0μmまでの帯域の赤外光を検出し、第4センサ217が、略6.0μmから略13.0μmまでの帯域の赤外光を検出するようにしてもよい。
この場合、第2センサ214のフィルター214Aは、略6.0μmから略13.0μmまでの範囲の短波長側である略6.0μmから略9.5μmまでの帯域の赤外光を透過させる。第3センサ216のフィルター216Aは、略6.0μmから略13.0μmまでの範囲の長波長側である略9.5μmから略13.0μmまでの帯域の赤外光を透過させる。第4センサ217のフィルター217Aは、略6.0μmから略13.0μmまでの帯域の赤外光を透過させる。また、異常条件判定部54は、変化量算出部52によって算出された検出素子214Bの第二変化量(6.0μm〜9.5μmの帯域)の値、及び検出素子216Bの第三変化量(9.5μm〜13.0μm)の値から近似直線の傾きを求め、求められた傾きから、当該傾きと温度との関係を用いて、温度を検知する。温度が閾値以上である場合に、異常温度を検知したと判定する。
また、第2センサ214が、略0.8μmから略2.0μmまでの帯域の赤外光を検出し、第3センサ216が、略6.0μmから略13.0μmまでの帯域の赤外光を検出し、第4センサ217が、略0.8μmから略13.0μmまでの帯域の赤外光を検出するようにしてもよい。
この場合、第2センサ214のフィルター214Aは、略0.8μmから略2.0μmまでの帯域の赤外光を透過させる。第3センサ216のフィルター216Aは、略6.0μmから略13.0μmまでの帯域の赤外光を透過させる。第4センサ217のフィルター217Aは、略0.8μmから略13.0μmまでの帯域の赤外光を透過させる。また、異常条件判定部54は、変化量算出部52によって算出された検出素子214Bの第二変化量(0.8μm〜2.0μmの帯域)の値、及び検出素子216Bの第三変化量(6.0μm〜13.0μm)の値から近似直線の傾きを求め、求められた傾きから、当該傾きと温度との関係を用いて、温度を検知する。温度が閾値以上である場合に、異常温度を検知したと判定する。
また、上記の実施の形態では、炎又は異常温度を検知したか否かの判定を行うと共に、炎又は異常温度が検知された位置を判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、温度の監視を行うと共に、温度が所定の条件を満たす検出素子に対して予め定められた位置を、温度が所定の条件を満たす位置として判定するようにしてもよい。