以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
<本発明の実施の形態の概要>
まず、炎を検知する原理について説明する。
ステファンボルツマンの法則より、黒体の波長別の放射エネルギーは図7のようになることが分かっている。この温度放射別のピークはWienの変位則に従うが、炭酸ガス共鳴放射帯付近では、波長とエネルギーとの関係は、直線で近似できることが分かる。
従って、4.0μm近傍と5.0μm近傍とを捉える帯域フィルター付き赤外センサの信号値から得られる近似直線で、黒煙などによる炭酸ガス共鳴放射帯での灰色放射量を求めることができる。この灰色放射量を雑音量として取り除けば、炭酸ガス共鳴放射による放射量だけ取り出すことができ、閾値と比較して、炎判定をすることができる。また、雑音量に応じて、検知感度を変更することにより、精度よく炎判定をすることができる。
また、検出素子が2次元状に配列されたアレイセンサを用いることにより、位置毎又はエリア毎に炎判定を行うことができ、炎が検知された位置又はエリアに応じて距離を取得し、距離に応じた補正係数を用いて、炎の規模を推定することができる。
また、検出素子が2次元状に配列されたアレイセンサを用いることにより、位置毎又はエリア毎に着水判定を行うことができ、放水の着水範囲を推定することができる。
[第1の実施の形態]
<システム構成>
以下、本発明の第1の実施の形態に係る消火システムについて説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る消火システム100は、異常検知器10と、放水銃による放水を行う消火装置80とを備えている。
<異常検知器の構成>
図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る異常検知器10は、炎が発する炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光を検出する第1センサ12と、炭酸ガス共鳴放射帯より短い波長の帯域の4.0μm近傍の帯域の赤外光を検出する第2センサ14と、炭酸ガス共鳴放射帯より長い波長の帯域の5.0μm近傍の帯域の赤外光を検出する第3センサ16とを備えている。また、異常検知器10は、第1センサ12からの信号を増幅する増幅部18と、第2センサ14からの信号を増幅する増幅部20と、第3センサ16からの信号を増幅する増幅部22と、増幅部18、20、22からの信号を切り替えるスイッチ24と、スイッチ24からの信号をディジタル値に変換するAD変換部26とを備えている。また、異常検知器10は、炎検知のための前処理や外部出力部32を制御する第1の演算処理部28と、炎を検知する処理を行う第2の演算処理部30と、外部出力部32とを備えている。
第1センサ12は、炎が発する炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光を透過するフィルター12Aと、フィルター12Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子を2次元状に配列させたアレイセンサ12Bと、フィルター12Aの前に配置された光学レンズ12Cとを備えている。
第2センサ14は、炭酸ガス共鳴放射帯より短い波長の帯域の4.0μm近傍の帯域の赤外光を透過させるフィルター14Aと、フィルター14Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子を2次元状に配列させたアレイセンサ14Bと、フィルター14Aの前に配置された光学レンズ14Cとを備えている。
第3センサ16は、炭酸ガス共鳴放射帯より長い波長の帯域の5.0μm近傍の帯域の赤外光を透過させるフィルター16Aと、フィルター16Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子を2次元状に配列させたアレイセンサ16Bと、フィルター16Aの前に配置された光学レンズ16Cとを備えている。
アレイセンサ12Bの各検出素子は、アレイセンサ14Bの各検出素子及びアレイセンサ16Bの各検出素子と対応するように配置されている。
また、アレイセンサ12B、14B、16Bは、予め定められた監視角度(例えば、90度)で、赤外光を検出しており、対応するアレイセンサ12Bの検出素子、アレイセンサ14Bの検出素子、及びアレイセンサ16Bの検出素子は、予め定められた同じ領域からの赤外光を検出している。
また、光学レンズ12C、14C、16Cは、各々1枚以上のレンズで構成されている。なお、光学レンズ12C、14C、16Cは、各々2枚以上のレンズで構成されていることが望ましい。これは、アレイセンサ12Bの検出素子、アレイセンサ14Bの検出素子、及びアレイセンサ16Bの検出素子の広い監視角度に対して、フラットな面にできる限り焦点を結ばせるためである。また、レンズの反射によりロスを少なくする為に、レンズに反射防止膜(ARコート)を蒸着することにより、検出素子の感度を増加させることも可能である。レンズ材料は、サファイア、カルコゲナイドガラス、シリコン、ゲルマニウムなどである。
なお、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm 近傍の帯域の赤外光を検出する弱い電気信号を確実に捉えるために、第1センサ12と同じセンサを更に設けてもよい。
アレイセンサ12B、14B、16Bの検出素子は、サーモパイルで構成されているが、InAsSb素子など、他の光起電力タイプの素子や、抵抗変化を利用したマイクロボロメータ素子、PbSeなどの光導電タイプの素子で構成することもある。なお、サーモパイルやマイクロボロメータと比較して、他の素子は、赤外線検出速度が極めて速い。このため、回路構成は同じでも、AD変換速度を速くする事で、極めて高速に炎を検出することが出来る異常検知器を構成することが可能となる。
増幅部18、20、22は、第1センサ12の各検出素子の電気信号、第2センサ14の各検出素子の電気信号、及び第3センサ16の各検出素子の電気信号をそれぞれ独立して増幅する。
スイッチ24は、増幅部18、20、22によって個別に増幅された電気信号を、一定の時間で順次切り替えて一つの電気信号に集約するスイッチ部(図示省略)を含み、当該スイッチ部により一つに集約された電気信号を出力する。なお、スイッチ24を設けずに、増幅部18、20、22のそれぞれに対して、AD変換部を設けて、増幅された電気信号をディジタル値に個別に変換して第1の演算処理部28に出力するようにしてもよい。
第1の演算処理部28及び第2の演算処理部30は、それぞれCPUで構成されている。第1の演算処理部28及び第2の演算処理部30を、機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、図3に示すように、第1の演算処理部28は、信号取得部40、補正係数設定部42、補正部44、及び警報表示部46Aを備えている。また、第2の演算処理部30は、平均算出部50、変化量算出部52、異常条件判定部54、異常位置算出部56、距離情報取得部58、補正係数取得部60、変化量修正部62、異常規模判定部64、反映判定部66、異常再判定部68、回数判定部70、警報制御部72、異常出力部76、及び警報出力部46Bを備えている。
信号取得部40は、AD変換部26から出力された信号から、第1センサ12の各検出素子からの電気信号の値、第2センサ14の各検出素子からの電気信号の値、第3センサ16の各検出素子からの電気信号の値を取得する。
補正係数設定部42は、第1センサ12の各検出素子、第2センサ14の各検出素子、及び第3センサ16の各検出素子に対して、センサ間の感度のばらつきを均等化するための補正係数、異常検知器10の個体間の感度のばらつきを均等化するための補正係数、及びオフセット補正を行うための補正係数を事前に設定する。なお、各補正係数は、黒体炉などの基準光源から赤外光の基準光を照射したときに、信号取得部40によって取得された電気信号の各々の値に基づいて設定される。
補正部44は、信号取得部40によって取得された、第1センサ12の各検出素子からの電気信号の値、第2センサ14の各検出素子からの電気信号の値、及び第3センサ16の各検出素子からの電気信号の値に対して、補正係数設定部42によって設定された補正係数を用いて補正を行い、第2の演算処理部30へ出力する。
平均算出部50は、第1センサ12の各検出素子に対し、補正部44によって補正された当該検出素子からの電気信号の値の移動平均値(例えば過去100秒間の平均値)を、第1センサ12の当該検出素子の信号の監視環境信号値として算出する(図4(A)参照)。また、平均算出部50は、同様に、第2センサ14の各検出素子に対し、補正部44によって補正された当該検出素子からの電気信号の値の移動平均値を、第2センサ14の当該検出素子の信号の監視環境信号値として算出する。また、平均算出部50は、同様に、第3センサ16の各検出素子に対し、補正部44によって補正された当該検出素子からの電気信号の値の移動平均値を、第3センサ16の当該検出素子の信号の監視環境信号値として算出する。
変化量算出部52は、第1センサ12の各検出素子に対し、補正部44によって補正された当該検出素子からの電気信号のライブ値と、平均算出部50によって算出された当該検出素子の信号の監視環境信号値との差を、第一変化量として算出する(図4(B)参照)。また、変化量算出部52は、同様に、第2センサ14の各検出素子に対し、補正部44によって補正された当該検出素子からの電気信号のライブ値と、平均算出部50によって算出された当該検出素子の信号の監視環境信号値との差を、第二変化量として算出する。また、変化量算出部52は、同様に、第3センサ16の各検出素子に対し、補正部44によって補正された当該検出素子からの電気信号のライブ値と、平均算出部50によって算出された当該検出素子の信号の監視環境信号値との差を、第三変化量として算出する。
ここで、炎を検知する原理について説明する。
一例として炎の赤外放射を受光したとすると火災判定は以下の(1)~(3)のステップで行われる。
(1)4.0μm近傍の帯域の変化量と波長5.0μm近傍の帯域の変化量とを用いた近似直線より、炭酸ガス共鳴放射を無視した波長4.5μm近傍の帯域にあたる計算値を雑音量として算出する。
(2)雑音量と波長4.5μm近傍の帯域の変化量との比を判定比として算出する。
(3)求めた雑音量を参照値として火災判定のための閾値を選択し、判定値をあてはめ火災判定を行う。
このように、雑音量を、閾値テーブルの参照値として扱うことにより、火災を検出しにくい環境や監視対象の変化に対応した火災判断が可能となり製品仕様をより確実にしている。
4.5μm近傍の帯域では、判定比が閾値以上であるという条件を満たした場合、炎を検知したと判断する。なお、閾値テーブルでは、雑音量毎に、第一変化量(4.5μm 近傍)についての判定比の閾値が定められている。
以上説明した原理にしたがって、本実施の形態では、異常条件判定部54は、アレイセンサ12Bの各検出素子に対し、炎を検知したか否かを判定する。具体的には、異常条件判定部54は、変化量算出部52によって算出された当該検出素子の第一変化量(4.5μm 近傍)の値、当該検出素子に対応するアレイセンサ14Bの検出素子の第二変化量(4.0μm近傍)の値、及び当該検出素子に対応するアレイセンサ16Bの検出素子の第三変化量(5.0μm 近傍)の値の少なくとも1つが閾値E以上であり、かつ、第二変化量の値及び第三変化量の値の近似直線から得られる4.5μm 近傍の計算値(雑音量)と、第一変化量との比について、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、炎を検知したと判定する。
ここで、異常条件判定部54は、第二変化量の値が、第三変化量の値より大きい場合、第一変化量の計算値を雑音量として、雑音量と第一変化量との比に対する閾値を、閾値テーブルから取得して、判定を行う。一方、異常条件判定部54は、第二変化量の値が前記第三変化量の値以下である場合、厳しく判定するための予め定められた比に対する閾値を用いて、判定を行う。厳しく判定するための比に対する閾値としては、例えば、雑音量が0の場合に対応する閾値を用いればよい。
異常位置算出部56は、アレイセンサ12Bの検出素子のうち、炎を検知したと判定された検出素子に対して予め定められた位置を、火災位置として判定する。
検出素子に対して予め定められる位置は、異常検知器10を設置するときに、位置計測器を用いて、検出素子毎に実空間上の検出位置を計測して設定しておけばよい。
距離情報取得部58は、炎を検知したと判定された検出素子に対して予め定められた距離を、火災位置までの距離として取得する。
検出素子に対して予め定められる距離は、異常検知器10を設置するときに、レーザー距離計等を用いて、検出素子毎に実空間上の検出位置までの距離を計測して設定しておけばよい。
補正係数取得部60は、距離情報取得部58によって取得された距離に基づいて、当該距離に対応する補正係数を取得する。
具体的には、以下の式により、補正係数dを計算する。
d=(D/D0)2
ただし、Dは、距離情報取得部58によって取得される、異常検知器10と火災位置との間の距離である。D0は、基準規模の定義で用いられる距離であり、例えば、60mである。
変化量修正部62は、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量(4.5μm 近傍)の値を、取得した補正係数dを用いて修正する。具体的には、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量の値に、補正係数dを乗算する。
異常規模判定部64は、変化量修正部62により得られた、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量の値vに、補正係数dを乗算した結果と、予め求められた基準規模であるときの第一変化量の値v0とに基づいて、炎の空間的な大きさである規模Wを判定する。
具体的には、以下の式に従って、規模Wを計算する。
W=v・d/v0
ここで、v0は、基準規模の炎との間の距離が所定距離(基準規模の定義で用いられる距離)であるときに検出素子で得られる第一変化量(4.5μm 近傍)である。
ここで規模については、炎及び異常温度でそれぞれ以下の通り定義する。
<炎の規模>
「火災報知設備の感知器および発信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年 自治省令第17号)」第17条の八にて規定される炎(33[cm]×33[cm]の角形火皿にてn-ヘプタンを燃焼させた場合の炎)を60m離れた位置で検出した際の炎の規模(本異常検知器10で得られる信号の大きさ)を1と定義する。
<異常温度の規模>
監視対象によって異なり、表1に一例を示す。実際の運用では、監視対象、監視場所等に応じて設定値の調整等を行う。
以上より、上記定義を基に、信号量の大きさから炎又は温度異常の規模を算出することが可能である。規模が定量的に示されることにより、規模の大きさ別で対処方法を分ける等の対応が可能となる。例えば、規模が1より小さい場合は消火設備を選択的に起動したり、放射する薬剤量を制限したりする一方、1より大きくなる場合は全エリアの消火設備を起動したり、より多量の消火剤を放射する等の場合分けができる。
なおここで用いられる消火設備は、水系消火設備だけでなく、粉末系、ガス系、泡系等の種々の消火設備も適用可能である。
反映判定部66は、距離情報取得部58によって取得された火災位置までの距離が、所定範囲(例えば、5[m]~60[m]の範囲)内である場合には、補正係数を、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量の値vに乗算しないと判定する。一方、反映判定部66は、距離情報取得部58によって取得された火災位置までの距離が、所定範囲外である場合には、補正係数を、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量の値vに乗算すると判定する。
異常再判定部68は、反映判定部66によって、補正係数を、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量の値vに乗算しないと判定された場合に、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量の値vを、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、炎を検知したと判定する。
また、異常再判定部68は、反映判定部66によって、補正係数を、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量の値vに乗算すると判定された場合に、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量の値vに補正係数dを乗算した値を、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、炎を検知したと判定する。
このように、炎を検知したと判定された検出素子の第一変化量の値vに、補正係数dを乗算して再判定を行うことにより、以下2点に記載の通り、炎検知の確実性を高め、また誤検知を防ぐことが可能となる。
まず第一に、異常検知器に極めて近い距離に存在する小さな炎(ライターやローソク等の炎)について、補正係数によって信号量を低下させ、誤検知を防ぐことができる(表2では、異常検知器から5mの範囲に限って補正係数を積算するが、環境に応じて任意に設定することも可能である)。
第二に、異常検知器から離れた距離(60[m]以上)に存在する炎について、補正係数によって信号量を増幅させ、検知の確実性を高める
上述した異常条件判定部54による判定、及び異常再判定部68により判定は、一定周期で繰り返し実行される。
回数判定部70は、アレイセンサ12Bの各検出素子に対し、以下の処理を行う。
回数判定部70は、異常条件判定部54により一定の時間内に炎を検知したと判定された回数が予め定められた累積回数以上の場合に、移動平均値を固定値とするとともに、火災信号を出力し、更に、当該検出素子に対して予め定められた位置を、火災位置として出力する。なお、火災位置が複数ある場合には、複数の火災位置を出力する。
本実施の形態では、雑音量及び/又は第一変化量と雑音量の差分に応じて、火災信号を出力するまでの火災判定速度を変化させるように回数に関する閾値を変更する。例えば、雑音量が大きいほど、又は第一変化量と雑音量の差分が大きいほど、火災信号を出力するまでの火災判定速度を速くするように回数に関する閾値を小さく変更する。
警報制御部72は、回数判定部70から火災信号が出力された場合、火災位置を報知するように警報表示部46A及び警報出力部46Bを制御する。例えば、警報表示部46Aは赤色LEDを点灯させ、警報出力部46Bはフォトカプラを導通状態にさせ、外部出力部32を構成する接点出力を作動させる。
異常出力部76は、火災位置、火災距離、火災規模を、消火装置80へ出力する。消火装置80では、出力された火災位置、火災距離、火災規模を用いて、ピンポイント消火を行う。この際、複数の火災位置が存在する場合には、優先順位をつけてピンポイント消火を行うようにしてもよい。例えば、火災規模が大きい順に、ピンポイント消火を行うようにしてもよい。
また、異常出力部76は、アレイセンサ12Bの各検出素子の第一変化量の値を、消火装置80へ逐次出力する。
<消火装置の構成>
上記図1に示すように、消火装置80は、放水銃制御部82、放水銃ドライバー84、及び放水銃86を備えている。
放水銃制御部82は、異常検知器10の出力に基づいて、放水銃86による放水を制御する。具体的には、異常検知器10から出力された火災位置と、火災距離と、火災規模とに基づいて、放水銃ドライバー84を介して、放水銃86による放水を制御する。例えば、火災位置及び火災距離に基づいて、放水銃86の仰角及び回転角を制御し、火災規模に応じて、放水銃86の放水量を制御する。
また、放水銃制御部82は、放水開始前のアレイセンサ12Bの各検出素子の第一変化量の値と、放水開始後のアレイセンサ12Bの各検出素子の第一変化量の値と、に基づいて、放水銃86による放水の着水範囲を検出する。
具体的には、アレイセンサ12Bの各検出素子に対し、放水開始前の当該検出素子の第一変化量の値から、放水開始後の当該検出素子の第一変化量の値を減算した値が、閾値以上である場合には、当該検出素子の位置が、放水の着水位置であると判定し、各検出素子に対する判定結果に基づいて、放水の着水位置であると判定された検出素子の位置からなる、放水銃86による放水の着水範囲を検出する。ここで、上記閾値について、着水による温度変化を起因とした場合の差分値に基づいて予め設定しておく。
放水銃制御部82は、火災位置を表す検出素子が、検出された放水の着水範囲に含まれるように、放水銃ドライバー84を介して、放水銃86による放水を制御する。具体的には、火災位置を表す検出素子が、検出された放水の着水範囲に含まれない場合には、着水範囲の中央位置と火災位置を表す検出素子の位置とのずれ量に応じて、放水銃86の仰角及び回転角を補正する。これにより、風の影響などにより、火災位置に着水しない場合であっても、着水位置を適切に補正することができる。
<消火システムの作用>
次に、本発明の第1の実施の形態に係る消火システム100の作用について説明する。まず、異常検知器10によって火災検知が行われ、火災が検知されると、消火装置80によって放水銃による放水が行われる。
従って、異常検知器10の作用、消火装置80の作用についてそれぞれ説明する。
<異常検知器の作用>
次に、本発明の第1の実施の形態に係る異常検知器10の作用について説明する。
まず、設置前の異常検知器10に対して、事前に補正係数を設定する。具体的には、黒体炉などの基準光源から、第1センサ12、第2センサ14、及び第3センサ16に対して赤外光の基準光を照射しているときに、異常検知器10の補正係数設定部42が、第1センサ12の各検出素子、第2センサ14の各検出素子、及び第3センサ16の各検出素子に対して、補正係数を設定する。
補正係数が設定された異常検知器10が、火災判定を行うべき場所に設置される。そして、異常検知器10の第1センサ12の各検出素子、第2センサ14の各検出素子、及び第3センサ16の各検出素子から電気信号が出力され、増幅部18、20、22、スイッチ24、AD変換部26を介して各信号の値が、第1の演算処理部28に入力されているときに、異常検知器10の第1の演算処理部28及び第2の演算処理部30によって、図5、図6に示す火災判定処理ルーチンが一定の周期毎に繰り返し実行される。なお、火災判定処理ルーチンは、第1センサ12の検出素子毎に実行される。
ステップS100では、信号取得部40が、AD変換部26から出力された信号から、第1センサ12の対象の検出素子からの電気信号の値、第2センサ14の、対応する検出素子からの電気信号の値、及び第3センサ16の、対応する検出素子からの電気信号の値を取得する。
次のステップS102では、補正部44が、上記ステップS100で取得した第1センサ12の対象の検出素子からの電気信号の値、第2センサ14の、対応する検出素子からの電気信号の値、及び第3センサ16の、対応する検出素子からの電気信号の値に対して、事前に設定された補正係数を用いて補正を行う。
そして、ステップS104では、平均算出部50は、第1センサ12の対象の検出素子からの電気信号の値、第2センサ14の、対応する検出素子からの電気信号の値、及び第3センサ16の、対応する検出素子からの電気信号の値の各々に対して、上記ステップS102で補正されたセンサ値と、過去に上記ステップS102で補正されたセンサ値とに基づいて、移動平均値を算出する。
ステップS106では、変化量算出部52は、第1センサ12の、対象の検出素子からの電気信号の値、第2センサ14の、対応する検出素子からの電気信号の値、及び第3センサ16の、対応する検出素子からの電気信号の値の各々に対して、上記ステップS102で補正されたセンサ値と、上記ステップS104で算出された移動平均値とに基づいて、第一変化量、第二変化量、及び第三変化量を算出する
そして、ステップS108では、異常条件判定部54は、上記ステップS106で算出された第一変化量、第二変化量、及び第三変化量と、過去に上記ステップS106で算出された第一変化量、第二変化量、及び第三変化量とに基づいて、移動平均値を所定値に下げるか否かを判定する。第一変化量、第二変化量、及び第三変化量のいずれかの値が、一定の時間、負の基準値以下となる状態を継続した場合には、移動平均値を下げると判定する。移動平均値を下げる場合には、ステップS110へ移行し、上記ステップS102で補正されたセンサ値を用いて、第1センサ12からの電気信号の値、第2センサ14からの電気信号の値、及び第3センサ16からの電気信号の値の各々に対して、移動平均値を所定値に下げる。
一方、移動平均値を所定値に下げない場合には、ステップS112へ移行する。
ステップS112では、異常条件判定部54は、上記ステップS106で算出された第一変化量、第二変化量、及び第三変化量の全てが、予め定められた閾値E未満であるか否かを判定する。第一変化量、第二変化量、及び第三変化量の全てが、予め定められた閾値E未満であると判定された場合には、ステップS114において、現時点で火災モード又は注意出力モードであれば、通常モードへ移行し、火災判定処理ルーチンを終了する。なお、現時点で通常モードであれば、そのまま通常モードを継続する。
第一変化量、第二変化量、及び第三変化量の少なくとも1つが、予め定められた閾値E以上であると判定された場合には、ステップS116において、異常条件判定部54は、第二変化量が第三変化量以下か否かを判定する。第二変化量が第三変化量以下である場合には、ステップS118において、熱風により炎を誤判定する可能性があることを示す疑惑フラグを成立させる。一方、第二変化量が第三変化量より大きい場合に、ステップS122へ移行する。
そして、ステップS122では、異常条件判定部54は、上記ステップS106で算出された第二変化量及び第三変化量から近似直線を導出し、導出した近似直線を用いて、第一変化量に対応する計算値を、雑音量として算出する。
ステップS124では、異常条件判定部54は、上記ステップS118で設定された疑惑フラグ、及び/又は上記ステップS122で算出された雑音量に応じて、第一変化量に関する判定比の閾値を取得する。
そして、ステップS125では、異常条件判定部54は、上記ステップS122で算出された雑音量、及び/又は第一変化量と雑音量との差分に応じて、連続回数に関する閾値N及び累積回数に関する閾値Mを設定する。
次のステップS126では、異常条件判定部54は、上記ステップS106で算出された第一変化量と、上記ステップS122で算出された雑音量とに基づいて、第一変化量に関する判定比を算出し、上記ステップS124で取得した閾値を用いて、第一変化量に関する判定比が、対応する閾値以上であるか否かを判定する。第一変化量に関する判定比が、対応する閾値未満である場合には、炎を検知しないと判定し、現時点のモードを継続したまま、火災判定処理ルーチンを終了する。
一方、第一変化量に関する判定比が、対応する閾値以上である場合には、炎を検知したと判定し、ステップS130へ移行する。
ステップS130において、第1センサ12の、対象の検出素子に対して予め定められた位置を、火災位置として判定する。
ステップS132では、距離情報取得部58は、第1センサ12の、対象の検出素子に対して予め定められた距離を、火災位置までの距離として取得する。
ステップS134では、補正係数取得部60は、距離情報取得部58によって取得された距離に基づいて、当該距離に対応する補正係数を取得する。
ステップS136では、変化量修正部62は、第1センサ12の、対象の検出素子の第一変化量(4.5μm 近傍)の値を、取得した補正係数を用いて修正する。
ステップS138では、異常規模判定部64は、変化量修正部62により得られた、第1センサ12の、対象の検出素子の第一変化量の値の修正結果と、予め求められた基準規模であるときの第一変化量の値とに基づいて、炎の空間的な大きさである規模を判定する。
ステップS140では、反映判定部66は、距離情報取得部58によって取得された火災位置までの距離が、所定範囲内である場合には、感度補正しないと判定し、ステップS142へ移行する。
一方、反映判定部66は、距離情報取得部58によって取得された火災位置までの距離が、所定範囲外である場合には、感度補正すると判定し、ステップS144へ移行する。
ステップS142では、異常再判定部68は、第1センサ12の、対象の検出素子の第一変化量の値を、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、炎を検知したと判定する。
ステップS144では、異常再判定部68は、第1センサ12の、対象の検出素子の第一変化量の値に補正係数を乗算した値を、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、炎を検知したと判定する。
ステップS146では、上記ステップS142又はステップS144で、炎を検知したと判定されたか否かを判定する。上記ステップS142又はステップS144で、炎を検知したと判定されなかった場合には、火災判定処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップS142又はステップS144で、炎を検知したと判定された場合には、ステップS148へ移行する。
ステップS148では、回数判定部70は、上記ステップS142又はステップS144の判定結果と、過去の上記ステップS142又はステップS144の判定結果と、上記ステップS125で設定された連続回数に関する閾値Nとに基づいて、連続で炎を検知したと判定された回数が予め定められた連続回数N以上であるか否かを判定する。連続で炎を検知したと判定された回数が連続回数N以上である場合には、火災が発生したと判断し、ステップS154へ移行する。一方、連続で炎を検知したと判定された回数が連続回数N未満である場合には、ステップS150へ移行する。
ステップS150では、回数判定部70は、上記ステップS142又はステップS144の判定結果と、過去の上記ステップS142又はステップS144の判定結果と、上記ステップS125で設定された累積回数に関する閾値Mとに基づいて、一定の時間内に炎を検知したと判定された回数が予め定められた累積回数M以上であるか否かを判定する。一定の時間内に炎を検知したと判定された回数が累積回数M以上である場合には、火災が発生したと判断し、ステップS154へ移行する。一方、連続で炎を検知したと判定された回数が累積回数M未満である場合には、ステップS152へ移行し、注意出力モードへ移行して、火災判定処理ルーチンを終了する。
ステップS154では、回数判定部70は、第1センサ12の対象の検出素子からの電気信号の値、第2センサ14からの対応する検出素子の電気信号の値、第3センサ16の対応する検出素子からの電気信号の値の各々に対する移動平均値を、現時点の移動平均値に固定するように設定する。そして、ステップS156において、警報制御部72及び異常出力部76は、火災モードへ移行して、火災信号と、火災規模と、火災位置としての、対象の検出素子に対して予め定められた位置及び距離とを、警報表示部46A、警報出力部46B、及び消火装置80に対して出力し、火災判定処理ルーチンを終了する。
そして、異常検知器10は、第1センサ12の各検出素子について算出された第一変化量の値を、逐次、消火装置80へ出力する。
<消火装置の作用>
次に、本発明の第1の実施の形態に係る消火装置80の作用について説明する。
異常検知器10の第1の演算処理部28及び第2の演算処理部30によって、上記火災判定処理ルーチンが一定の周期毎に繰り返し実行されているときに、消火装置80の放水銃制御部82によって、図8に示す消火制御処理ルーチンが実行される。
ステップS160では、異常検知器10によって火災が検知されたか否かを判定する。異常検知器10から火災信号が出力されると、火災が検知されたと判断し、ステップS162へ移行する。
ステップS162では、異常検知器10から、第1センサ12のうち、火災位置が検知された検出素子の位置Pa,bと、当該検出素子の位置Pa,bに対して予め定められた位置を取得する。
ステップS164では、異常検知器10から、火災位置が検知された検出素子の位置Pa,bに対して予め定められた距離Dを取得する。
ステップS166では、異常検知器10から、火災規模Wを取得する。
ステップS168では、上記ステップS162~S166で取得された、火災位置と、火災距離と、火災規模とに基づいて、放水銃86の制御情報Ca,b(放水銃86の仰角及び回転角、放水銃86の放水量)を取得する。
ステップS170では、放水銃ドライバー84により、放水銃86を起動し、制御情報Ca,bに基づいて放水銃86により放水させる。
ステップS172では、放水開始前のアレイセンサ12Bの各検出素子の第一変化量の値と、放水開始後のアレイセンサ12Bの各検出素子の第一変化量の値とを取得する。ステップS174では、放水開始前のアレイセンサ12Bの各検出素子の第一変化量の値と、放水開始後のアレイセンサ12Bの各検出素子の第一変化量の値と、に基づいて、放水銃86による放水の着水範囲Qa,bを検出する。
ステップS176では、火災位置を表す検出素子の位置Pa,bと、検出された放水の着水範囲Qa,bとを比較する。ステップS178では、火災位置を表す検出素子の位置Pa,bが、検出された放水の着水範囲Qa,bに含まれるか否かを判定する。火災位置を表す検出素子の位置Pa,bが、検出された放水の着水範囲Qa,bに含まれない場合には、ステップS180で、着水範囲Qa,bの中央位置と火災位置を表す検出素子の位置Pa,bとのずれ量に応じて、放水銃86の仰角及び回転角を補正し、ステップS170へ戻る。なお、上記ステップS176において、火災位置を表す検出素子の位置Pa,bが、検出された放水の着水範囲Qa,b内の、着水による効果が高くなる特定の範囲に含まれるか否かを判定するようにしてもよい。
上記ステップS178で、火災位置を表す検出素子の位置Pa,bが、検出された放水の着水範囲Qa,bに含まれると判定された場合には、ステップS182において、放水時間Tだけ放水銃86により放水するように設定すると共に、後述するステップS184での判定回数Nを設定する。
ステップS184では、異常検知器10によって火災が検知されているか否かを判定する。異常検知器10から火災信号が出力されると、まだ火災が検知されていると判断し、ステップS188へ移行する。一方、異常検知器10から火災信号が出力されない場合には、火災が検知されないと判断し、ステップS186へ移行する。
ステップS186では、火災規模Wが、規定値以下であるか否かを判定する。火災規模Wが、規定値より大きい場合には、火災が消火されていないと判断し、ステップS188へ移行する。一方、火災規模Wが、規定値以下である場合には、火災が消火されたと判断し、ステップS192で、放水銃86による放水を終了させ、消火制御処理ルーチンを終了する。
ステップS188では、ステップS184での判定回数Nが規定値に到達したか否かを判定する。ステップS184での判定回数Nが規定値に到達していない場合には、ステップS182へ戻り、放水時間Tだけ放水銃86により放水するように設定すると共に、ステップS184での判定回数Nを1だけインクリメントするように設定する。
ステップS184での判定回数Nが規定値に到達した場合には、ステップS190において、異常検知器10から、火災規模Wを取得し、ステップS170へ戻る。
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る消火システムの異常検知器によれば、3つのアレイセンサによって、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光、炭酸ガス共鳴放射帯より短い波長の帯域の4.0μm近傍の帯域の赤外光、及び炭酸ガス共鳴放射帯より長い波長の帯域の5.0μm近傍の帯域の赤外光の各々を検出して直流成分の電気信号に変換する。異常検知器は、それぞれの電気信号の、移動平均値からの変化量である第一変化量、第二変化量、及び第三変化量に基づいて、炎を検知したか否かを判定する。これにより、熱風による誤作動を解消し、位置毎に精度よく炎を検知することができる。
また、炎を検知したと判定された検出素子によって検出された電気信号の値と、炎の空間的な大きさである基準となる規模に対応する予め求められた電気信号の値とに基づいて、炎の空間的な大きさである規模を判定することにより、精度よく炎の規模を推定することができる。
また、異常状態の規模及び距離に応じて、最適な消火方法(消火剤の量、消火時間、消火エリア、放水銃であれば旋回俯仰角、放水圧力、放水形状等)を制御するための情報を取得することが可能となる。
また、炎を検知した検出素子に関し、当該検出素子の第一変化量に対して、検知された距離に応じた補正係数を乗算し、炎検知の再判定を行うことにより、異常検知の確実性を高めることができる。
また、検出素子毎に、あらかじめ検出位置までの距離を設定しておくことにより、高価な機材(レーザー距離計等)を必要とせず、異常個所から異常検知器までの距離を取得可能となる。これにより、低価格かつ安全度の高い監視環境を実現できる。
また、異常個所までの距離が特定されることにより、当該箇所に該当する検出素子で測定された第一変化量に対して、検知された距離に応じた補正係数を乗算して修正が可能となる。これにより、異常検知器に対して極めて近い距離に存在する小さな炎(ライターやローソク炎等)に対する誤検知を防ぐことができる。逆に、異常検知器から遠く離れた位置(例えば60m)での炎に対して、検知の確実性を高めることができる。
また、判定された規模、位置、及び距離情報を基に、最適な消火(ピンポイント消火、最小限の水損)が実現できる。
また、放水の着水範囲を精度よく推定することができるため、放水の着水範囲に、火災位置が含まれるように放水銃の角度を適切に補正することができる。
また、赤外光の各々を検出して直流成分の電気信号に変換するサーモパイルを用いるため、周波数分解処理が不要であり、早期検知が可能である。
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、上記の実施の形態では、異常検知器は、各検出素子毎に、火災判定を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。異常検知器は、アレイセンサのブロック毎に、火災判定を行うようにしてもよい。この場合には、異常検知器は、アレイセンサ12Bの各ブロックに対し、当該ブロックに含まれるアレイセンサ12Bの検出素子の各々によって検出された電気信号の値、当該ブロックに対応するアレイセンサ14Bのブロックの検出素子の各々によって検出された電気信号の値、及び当該ブロックに対応するアレイセンサ16Bのブロックの検出素子の各々によって検出された電気信号の値に基づいて、炎を検知したか否かを判定すると共に、炎を検知したと判定されたブロックに対して予め定められた領域を、炎が検知された位置として判定すればよい。具体的には、異常検知器は、ブロック毎に、当該ブロックに含まれる各検出素子によって検出された電気信号の値の平均値を、ブロックの値とする。平均算出部50は、アレイセンサ12Bの各ブロックに対し、当該ブロックの値についての移動平均値を算出し、アレイセンサ14Bの各ブロックに対し、当該ブロックの値についての移動平均値を算出し、アレイセンサ16Bの各ブロックに対し、当該ブロックの値についての移動平均値を算出する。また、変化量算出部52は、第1センサ12の各ブロックに対し、当該ブロックのライブ値と、当該ブロックの移動平均値との差を、第一変化量として算出する。また、変化量算出部52は、同様に、第2センサ14の各ブロックに対し、当該ブロックのライブ値と、平均算出部50によって算出された当該ブロックの移動平均値との差を、第二変化量として算出する。また、変化量算出部52は、同様に、第3センサ16の各ブロックに対し、当該ブロックのライブ値と、平均算出部50によって算出された当該ブロックの移動平均値との差を、第三変化量として算出する。
また、異常検知器は、上記の実施の形態と同様に、各検出素子毎に、第一変化量、第二変化量、第三変化量を算出して、アレイセンサのブロック毎に、火災判定を行うようにしてもよい。この場合には、異常検知器は、各検出素子毎に、第一変化量、第二変化量、第三変化量に基づいて、炎を検知したか否かを判定し、ブロック毎に、当該ブロックに含まれる検出素子のうち、炎を検知したと判定された検出素子の数が、閾値以上であれば、当該ブロックで炎を検知したと判定すればよい。
また、異常検知器は、アレイセンサの検出素子毎に、火災判定を行うと共に、アレイセンサのブロック毎に、火災判定を行うようにしてもよい。
また、上記の実施の形態では、異常検知器は、異常条件判定部54により連続で炎を検知したと判定された回数が予め定められた連続回数以上の場合、又は異常条件判定部54により一定の時間内に炎を検知したと判定された回数が予め定められた累積回数以上の場合に、火災信号を出力する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。異常検知器は、異常条件判定部54により連続で炎を検知したと判定された回数が予め定められた連続回数以上の場合であって、かつ、異常条件判定部54により一定の時間内に炎を検知したと判定された回数が予め定められた累積回数以上の場合に、火災信号を出力するようにしてもよい。
また、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域以外に、4.0μm近傍の帯域の赤外線および5.0μm近傍の帯域の赤外線を検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域以外として、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域とは異なる2つ以上の帯域の赤外線であれば、他の帯域の赤外線を検出してもよい。例えば、炭酸ガス共鳴放射帯より短い波長の2つ以上の帯域の赤外線を各々検出してもよい。
また、炭酸ガス共鳴放射帯より長い波長の2つ以上の帯域の赤外線を各々検出してもよい。この場合であっても、炭酸ガス共鳴放射帯より長い波長の2つの帯域(例えば、5.0μm近傍の帯域と6.0μm近傍の帯域)について第二変化量の値及び第三変化量の値を計算し、第二変化量の値及び第三変化量の値の近似直線から得られる4.5μm 近傍の計算値(雑音量)を計算すればよい。
また、平均算出部50は、各センサからの電気信号の値の移動平均値を、各センサの信号の監視環境信号値として算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。異常検知器は、各センサからの電気信号の値の加重平均値を、各センサの信号の監視環境信号値として算出するようにしてもよい。
また、上記の実施の形態において、閾値テーブルから、閾値を取得する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。閾値を求める関数を導出しておき、当該関数から、閾値を取得するようにしてもよい。
また、異常条件判定部54は、第一変化量と雑音量との判定比が、判定閾値以上であるか否かを判定して、炎を検知したか否かを判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、異常条件判定部54は、第一変化量と雑音量との差分が、判定閾値以上であるか否かを判定して、炎を検知したか否かを判定するようにしてもよい。また、例えば、異常条件判定部54は、第一変化量と雑音量との差分が、判定閾値以上であるか否か、及び第一変化量と雑音量との判定比が、判定閾値以上であるか否かを判定して、炎を検知したか否かを判定するようにしてもよい。
また、第1センサ12、第2センサ14、及び第3センサ16の全てにおいて、アレイセンサを用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。第1センサ12、第2センサ14、及び第3センサ16の少なくとも一つにおいて、アレイセンサを用いるようにしてもよい。例えば、第1センサ12を、アレイセンサ12Bを用いて構成し、第2センサ14、及び第3センサ16では、アレイセンサではなく、1つの検出素子を用いて構成してもよい。この場合には、アレイセンサ12Bの各検出素子毎に、第一変化量、第二変化量、第三変化量を算出して、火災判定を行う際に、第二変化量として、第2センサ14の1つの検出素子について算出されるものを共通して使用し、第三変化量として、第3センサ16の1つの検出素子について算出されるものを共通して使用するようにすればよい。
また、炎ではなく、異常温度を検知するようにしてもよい。この場合には、3つのアレイセンサによって、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光、炭酸ガス共鳴放射帯より短い波長の帯域の4.0μm近傍の帯域の赤外光、及び炭酸ガス共鳴放射帯より長い波長の帯域の5.0μm近傍の帯域の赤外光の各々を検出して直流成分の電気信号に変換する。異常検知器は、アレイセンサの各検出素子に対し、それぞれの電気信号の、移動平均値からの変化量である第一変化量、第二変化量、及び第三変化量のいずれか複数に基づいて、異常温度を検知したか否かを判定する。例えば、アレイセンサの各検出素子に対し、図9に示すよう、第二変化量及び第三変化量の比と温度との関係に基づいて、第二変化量及び第三変化量の比から温度を推定し、異常温度を検知したか否かを判定する。なお、第一変化量及び第二変化量の比に基づいて温度を推定し、異常温度を検知したか否かを判定してもよいし、第一変化量及び第三変化量の比に基づいて温度を推定し、異常温度を検知したか否かを判定してもよい。また、アレイセンサの各検出素子に対し、第一変化量、第二変化量、及び第三変化量に基づいて、炎を検知したか否かを判定すると共に、第一変化量、第二変化量、及び第三変化量のいずれか複数に基づいて、温度を推定し、異常温度を検知したか否かを判定してもよい。
また、アレイセンサの各検出素子に対して、検出位置までの距離を予め設定しておく場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、2台以上の異常検知器により、三角測量の原理を用いて異常個所から異常検知器までの距離を算出するようにしてもよい。この場合には、炎を検知したと判定された検出素子に対応する位置と、他の異常検知器において炎を検知したと判定された検出素子に対応する位置とに基づいて、異常個所から異常検知器までの距離を算出する。詳細な算出方法については後述する。
[第2の実施の形態]
<システム構成>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る消火システムについて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
上記図1に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る消火システム200は、異常検知器210と、消火装置80とを備えている。
<異常検知器の構成>
図10に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る異常検知器210は、炎が発する炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光を検出する第1センサ212と、炭酸ガス共鳴放射帯より短い波長の帯域の4.0μm近傍の帯域の赤外光を検出する第2センサ214と、炭酸ガス共鳴放射帯より長い波長の帯域の5.0μm近傍の帯域の赤外光を検出する第3センサ216と、2.0μm近傍から5.0μm近傍までの帯域の赤外光を検出する第4センサ217とを備えている。異常検知器210は、第1センサ212からの信号を増幅する増幅部218と、第2センサ214からの信号を増幅する増幅部220と、第3センサ216からの信号を増幅する増幅部222と、第4センサ217からの信号を増幅する増幅部223と、増幅部218、220、222、223からの信号を切り替えるスイッチ224と、スイッチ224からの信号をディジタル値に変換するAD変換部226とを備えている。異常検知器210は、炎検知のための前処理や外部出力部232を制御する第1の演算処理部228と、炎を検知する処理を行う第2の演算処理部230と、外部出力部232とを備えている。
第1センサ212は、炎が発する炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光を透過するフィルター212Aと、フィルター212Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子212Bとを備えている。
第2センサ214は、炭酸ガス共鳴放射帯より短い波長の帯域の4.0μm近傍の帯域の赤外光を透過させるフィルター214Aと、フィルター214Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子214Bとを備えている。
第3センサ216は、炭酸ガス共鳴放射帯より長い波長の帯域の5.0μm近傍の帯域の赤外光を透過させるフィルター216Aと、フィルター216Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子216Bとを備えている。
第4センサ217は、2.0μm近傍から5.0μm近傍までの帯域の赤外光を透過させるフィルター217Aと、フィルター217Aを透過した赤外光を検出して直流成分の電気信号に変換する検出素子を2次元状に配列させたアレイセンサ217Bと、フィルター217Aの前に配置された光学レンズ217Cとを備えている。
また、アレイセンサ217Bは、予め定められた監視角度(例えば、90度)で、赤外光を検出しており、アレイセンサ217Bの検出素子は、予め定められた領域からの赤外光を検出している。
また、光学レンズ217Cは、1枚以上のレンズで構成されている。なお、光学レンズ217Cは、アレイセンサ217Bの広い監視角度に対して、フラットな面にできる限り焦点を結ばせるためには、2枚以上のレンズで構成されていることが望ましい。また、レンズの反射によりロスを少なくする為に、レンズに反射防止膜(ARコート)を蒸着することにより、検出素子の感度を増加させることも可能である。レンズ材料は、サファイア、カルコゲナイドガラス、シリコン、ゲルマニウムなどである。
なお、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm 近傍の帯域の赤外光を検出する弱い電気信号を確実に捉えるために、第1センサ212と同じセンサを更に設けてもよい。また、フィルター212A、214A、216Aの前にも、光学レンズを配置してもよい。
検出素子212B、214B、216B、及びアレイセンサ217Bの検出素子は、サーモパイルで構成されているが、InAsSb素子、マイクロボロメータなど、他の光起電力タイプの素子や、抵抗変化を利用したマイクロボロメータ素子、PbSeなどの光導電タイプの素子で構成することもある。なお、サーモパイルやマイクロボロメータと比較して、他の素子は、赤外線検出速度が極めて速い。このため、回路構成は同じでも、AD変換速度を速くする事で、極めて高速に炎を検出することが出来る異常検知器を構成することが可能となる。
増幅部218、220、222、223は、第1センサ212の検出素子212Bの電気信号、第2センサ214の検出素子214Bの電気信号、第3センサ216の検出素子216Bの電気信号、及び第4センサ217の各検出素子の電気信号をそれぞれ独立して増幅する。
スイッチ224は、増幅部218、220、222、223によって個別に増幅された電気信号を、一定の時間で順次切り替えて一つの電気信号に集約するスイッチ部(図示省略)を含み、当該スイッチ部により一つに集約された電気信号を、当該電気信号の強さに応じて選択的に増幅する。例えば、信号が小さいときは高利得とし、信号が大きいときは低利得として増幅する。なお、スイッチ224を設けずに、増幅部218、220、222、223のそれぞれに対して、AD変換部を設けて、増幅された電気信号をディジタル値に個別に変換して第1の演算処理部228に出力するようにしてもよい。
第1の演算処理部228及び第2の演算処理部230は、それぞれCPUで構成されている。第1の演算処理部228及び第2の演算処理部230を、機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、図11に示すように、第1の演算処理部228は、信号取得部240、補正係数設定部242、補正部244、及び警報表示部246Aを備えている。また、第2の演算処理部230は、平均算出部250、変化量算出部252、異常条件判定部254、異常位置算出部256、距離情報取得部258、補正係数取得部260、変化量修正部262、異常規模判定部264、反映判定部266、異常再判定部268、回数判定部270、警報制御部272、異常出力部276、及び警報出力部246Bを備えている。
信号取得部240は、AD変換部226から出力された信号から、第1センサ212の検出素子212Bからの電気信号の値、第2センサ214の検出素子214Bからの電気信号の値、第3センサ216の検出素子216Bからの電気信号の値、及び第4センサ217の各検出素子からの電気信号の値を取得する。
補正係数設定部242は、第1センサ212の検出素子212B、第2センサ214の検出素子214B、及び第3センサ216の検出素子216Bに対して、センサ間の感度のばらつきを均等化するための補正係数、異常検知器210の個体間の感度のばらつきを均等化するための補正係数、及びオフセット補正を行うための補正係数を事前に設定する。各補正係数は、黒体炉などの基準光源から赤外光の基準光を照射したときに、信号取得部240によって取得された電気信号の各々の値に基づいて設定される。
補正部244は、信号取得部240によって取得された、第1センサ212の検出素子212Bからの電気信号の値、第2センサ214の検出素子214Bからの電気信号の値、及び第3センサ216の検出素子216Bからの電気信号の値に対して、補正係数設定部242によって設定された補正係数を用いて補正を行い、第2の演算処理部230へ出力する。
平均算出部250は、第1センサ212の検出素子212Bに対し、補正部244によって補正された当該検出素子212Bからの電気信号の値の移動平均値(例えば過去100秒間の平均値)を、当該検出素子212Bの信号の監視環境信号値として算出する(図4(A)参照)。また、平均算出部250は、同様に、第2センサ214の検出素子214Bに対し、補正部244によって補正された当該検出素子214Bからの電気信号の値の移動平均値を、当該検出素子214Bの信号の監視環境信号値として算出する。また、平均算出部250は、同様に、第3センサ216の検出素子216Bに対し、補正部244によって補正された当該検出素子216Bからの電気信号の値の移動平均値を、当該検出素子216Bの信号の監視環境信号値として算出する。
変化量算出部252は、第1センサ212の検出素子212Bに対し、補正部244によって補正された当該検出素子212Bからの電気信号のライブ値と、平均算出部250によって算出された当該検出素子212Bの信号の監視環境信号値との差を、第一変化量として算出する(図4(B)参照)。また、変化量算出部252は、同様に、第2センサ214の検出素子214Bに対し、補正部244によって補正された当該検出素子214Bからの電気信号のライブ値と、平均算出部250によって算出された当該検出素子214Bの信号の監視環境信号値との差を、第二変化量として算出する。また、変化量算出部252は、同様に、第3センサ216の検出素子216Bに対し、補正部244によって補正された当該検出素子216Bからの電気信号のライブ値と、平均算出部250によって算出された当該検出素子216Bの信号の監視環境信号値との差を、第三変化量として算出する。
異常条件判定部254は、変化量算出部252によって算出された検出素子212Bの第一変化量(4.5μm 近傍)の値、検出素子214Bの第二変化量(4.0μm近傍)の値、及び検出素子216Bの第三変化量(5.0μm 近傍)の値の少なくとも1つが閾値E以上であり、かつ、第二変化量の値及び第三変化量の値の近似直線から得られる4.5μm 近傍の計算値(雑音量)と、第一変化量との比について、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に炎を検知したと判定する。
ここで、異常条件判定部254は、第二変化量の値が、第三変化量の値より大きい場合、第一変化量の計算値を雑音量として、雑音量と第一変化量との比に対する閾値を、閾値テーブルから取得して、判定を行う。一方、異常条件判定部254は、第二変化量の値が前記第三変化量の値以下である場合、厳しく判定するための予め定められた比に対する閾値を用いて、判定を行う。厳しく判定するための比に対する閾値としては、例えば、雑音量が0の場合に対応する閾値を用いる。
異常位置算出部256は、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値に基づいて、電気信号の値が最大となる検出素子に対して予め定められた位置を、火災位置として判定する。
検出素子に対して予め定められる位置は、異常検知器210を設置するときに、位置計測器を用いて、検出素子毎に実空間上の検出位置を計測して設定しておけばよい。
距離情報取得部258は、アレイセンサ217Bの各検出素子のうち、電気信号の値が最大となる検出素子に対して予め定められた距離を、火災位置までの距離として取得する。
検出素子に対して予め定められる距離は、異常検知器210を設置するときに、レーザー距離計等を用いて、検出素子毎に実空間上の検出位置までの距離を計測して設定しておけばよい。
補正係数取得部260は、距離情報取得部258によって取得された距離に基づいて、当該距離に対応する補正係数を取得する。
具体的には、以下の式により、補正係数dを計算する。
d=(D/D0)2
ただし、Dは、距離情報取得部58によって取得される、異常検知器210と火災位置との間の距離である。D0は、基準規模の定義で用いられる距離であり、例えば、60mである。
変化量修正部262は、検出素子212Bの第一変化量(4.5μm 近傍)の値を、取得した補正係数dを用いて修正する。具体的には、検出素子212Bの第一変化量の値に、補正係数dを乗算する。
異常規模判定部264は、変化量修正部262により得られた、検出素子212Bの第一変化量の値vに、補正係数dを乗算した結果と、
予め求められた基準規模であるときの第一変化量の値v0とに基づいて、炎の空間的な大きさである規模Wを判定する。
具体的には、以下の式に従って、規模Wを計算する。
W=v・d/v0
ここで、v0は、基準規模の炎との間の距離が所定距離(基準規模の定義で用いられる距離)であるときに検出素子で得られる第一変化量(4.5μm 近傍)である。
反映判定部266は、距離情報取得部258によって取得された火災位置までの距離が、所定範囲(例えば、5[m]~60[m]の範囲)内である場合には、補正係数を、検出素子212Bの第一変化量の値vに乗算しないと判定する。一方、反映判定部266は、距離情報取得部258によって取得された火災位置までの距離が、所定範囲外である場合には、補正係数を、検出素子212Bの第一変化量の値vに乗算すると判定する。
異常再判定部268は、反映判定部266により、補正係数を、検出素子212Bの第一変化量の値vに乗算しないと判定された場合に、検出素子212Bの第一変化量の値vを、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、炎を検知したと判定する。
また、異常再判定部268は、反映判定部266により、補正係数を、検出素子212Bの第一変化量の値vに乗算すると判定された場合に、検出素子212Bの第一変化量の値vに補正係数dを乗算した値を、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、炎を検知したと判定する。
上述した異常条件判定部254による判定、及び異常再判定部268により判定は、一定周期で繰り返し実行される。
回数判定部270は、異常再判定部268により連続で炎を検知したと判定された回数が予め定められた連続回数以上の場合、又は異常再判定部268により一定の時間内に炎を検知したと判定された回数が予め定められた累積回数以上の場合に、移動平均値を固定値とするとともに、火災信号を出力する。
本実施の形態では、雑音量及び/又は第一変化量と雑音量の差分に応じて、火災信号を出力するまでの火災判定速度を変化させるように回数に関する閾値を変更する。例えば、雑音量が大きいほど、又は第一変化量と雑音量の差分が大きいほど、火災信号を出力するまでの火災判定速度を速くするように回数に関する閾値を小さく変更する。
警報制御部272は、回数判定部270から火災信号が出力された場合、火災位置を報知するように警報表示部246A及び警報出力部246Bを制御する。例えば、警報表示部246Aは赤色LEDを点灯させ、警報出力部246Bはフォトカプラを導通状態にさせ、外部出力部232を構成する接点出力を作動させる。
異常出力部276は、火災位置、火災距離、火災規模を、消火装置80へ出力する。消火装置80では、出力された火災位置、火災距離、火災規模を用いて、ピンポイント消火を行う。この際、複数の火災位置が存在する場合には、優先順位をつけてピンポイント消火を行うようにしてもよい。例えば、火災規模が大きい順に、ピンポイント消火を行うようにしてもよい。
また、異常出力部276は、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値を、消火装置80へ逐次出力する。
<消火装置の構成>
消火装置80の放水銃制御部82は、異常検知器210の出力に基づいて、放水銃86による放水を制御する。
また、放水銃制御部82は、放水開始前のアレイセンサ217Bの各検出素子の電気信号の値と、放水開始後のアレイセンサ217Bの各検出素子の電気信号の値と、に基づいて、放水銃86による放水の着水範囲を検出する。
具体的には、アレイセンサ217Bの各検出素子に対し、放水開始前の当該検出素子の電気信号の値から、放水開始後の当該検出素子の電気信号の値を減算した値が、閾値以上である場合には、当該検出素子の位置が、放水の着水位置であると判定し、各検出素子に対する判定結果に基づいて、放水の着水位置であると判定された検出素子の位置からなる、放水銃86による放水の着水範囲を検出する。ここで、上記閾値について、着水による温度変化を起因とした場合の差分値に基づいて予め設定しておく。
放水銃制御部82は、火災位置を表す検出素子が、検出された放水の着水範囲に含まれるように、放水銃ドライバー84を介して、放水銃86による放水を制御する。具体的には、火災位置を表す検出素子が、検出された放水の着水範囲に含まれない場合には、着水範囲の中央位置と火災位置を表す検出素子の位置とのずれ量に応じて、放水銃86の仰角及び回転角を補正する。これにより、風の影響などにより、火災位置に着水しない場合であっても、着水位置を適切に補正することができる。
<異常検知器の作用>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る異常検知器210の作用について説明する。
まず、設置前の異常検知器210に対して、事前に補正係数を設定する。具体的には、黒体炉などの基準光源から、第1センサ212、第2センサ214、及び第3センサ216に対して赤外光の基準光を照射しているときに、異常検知器210の補正係数設定部242が、第1センサ212の検出素子212B、第2センサ214の検出素子214B、及び第3センサ216の検出素子216Bに対して、補正係数を設定する。
補正係数が設定された異常検知器210が、火災判定を行うべき場所に設置される。そして、異常検知器210の第1センサ212の検出素子212B、第2センサ214の検出素子214B、第3センサ216の検出素子216B、及び第4センサ217の各検出素子から電気信号が出力され、増幅部218、220、222、223、スイッチ224、AD変換部226を介して各信号の値が、第1の演算処理部228に入力されているときに、異常検知器210の第1の演算処理部228及び第2の演算処理部230によって、図12、図13に示す火災判定処理ルーチンが一定の周期毎に繰り返し実行される。
ステップS200では、信号取得部240が、AD変換部226から出力された信号から、第1センサ212の検出素子212Bからの電気信号の値、第2センサ214の検出素子214Bからの電気信号の値、第3センサ216の検出素子216Bからの電気信号の値を取得する。
次のステップS202では、補正部244が、上記ステップS200で取得した第1センサ212の検出素子212Bからの電気信号の値、第2センサ214の検出素子214Bからの電気信号の値、第3センサ216の検出素子216Bからの電気信号の値に対して、事前に設定された補正係数を用いて補正を行う。
そして、ステップS204では、平均算出部250は、第1センサ212の検出素子212Bからの電気信号の値、第2センサ214の検出素子214Bからの電気信号の値、第3センサ216の検出素子216Bからの電気信号の値の各々に対して、上記ステップS202で補正されたセンサ値と、過去に上記ステップS202で補正されたセンサ値とに基づいて、移動平均値を算出する。
ステップS206では、変化量算出部252は、第1センサ212の検出素子212Bからの電気信号の値、第2センサ214の検出素子214Bからの電気信号の値、第3センサ216の検出素子216Bからの電気信号の値の各々に対して、上記ステップS202で補正されたセンサ値と、上記ステップS204で算出された移動平均値とに基づいて、第一変化量、第二変化量、第三変化量を算出する
そして、ステップS208では、異常条件判定部254は、上記ステップS206で算出された第一変化量、第二変化量、第三変化量と、過去に上記ステップS206で算出された第一変化量、第二変化量、第三変化量とに基づいて、移動平均値を所定値に下げるか否かを判定する。例えば、第一変化量、第二変化量、第三変化量のいずれかの値が、一定の時間、負の基準値以下となる状態を継続した場合に、移動平均値を所定値に下げると判定する。移動平均値を所定値に下げる場合には、ステップS210へ移行し、上記ステップS202で補正されたセンサ値を用いて、第1センサ212からの電気信号の値、第2センサ214からの電気信号の値、第3センサ216からの電気信号の値の各々に対して、移動平均値を所定値に下げる。
一方、移動平均値を所定値に下げない場合には、ステップS212へ移行する。
ステップS212では、異常条件判定部254は、上記ステップS206で算出された第一変化量、第二変化量、第三変化量の全てが、予め定められた閾値E未満であるか否かを判定する。第一変化量、第二変化量、第三変化量の全てが、予め定められた閾値E未満であると判定された場合には、ステップS214において、現時点で火災モード又は注意出力モードであれば、通常モードへ移行し、火災判定処理ルーチンを終了する。なお、現時点で通常モードであれば、そのまま通常モードを継続する。
第一変化量、第二変化量、第三変化量の少なくとも1つが、予め定められた閾値E以上であると判定された場合には、ステップS216において、異常条件判定部254は、第二変化量が第三変化量以下か否かを判定する。第二変化量が第三変化量以下である場合には、ステップS218において、熱風により炎を誤判定する可能性があることを示す疑惑フラグを成立させる。一方、第二変化量が第三変化量より大きい場合に、ステップS222へ移行する。
そして、ステップS222では、異常条件判定部254は、上記ステップS206で算出された第二変化量、第三変化量から近似直線を導出し、導出した近似直線を用いて、第一変化量に対応する計算値を、雑音量として算出する。
ステップS224では、異常条件判定部254は、上記ステップS218で設定された疑惑フラグ、及び/又は上記ステップS222で算出された雑音量に応じて、第一変化量に関する判定比の閾値を取得する。
そして、ステップS225では、異常条件判定部254は、上記ステップS222で算出された雑音量、及び/又は第一変化量と雑音量との差分に応じて、連続回数に関する閾値N及び累積回数に関する閾値Mを設定する。
次のステップS226では、異常条件判定部254は、上記ステップS206で算出された第一変化量と、上記ステップS222で算出された雑音量とに基づいて、第一変化量に関する判定比を算出し、上記ステップS224で取得した閾値を用いて、第一変化量に関する判定比が、対応する閾値以上であるか否かを判定する。第一変化量に関する判定比が、対応する閾値未満である場合には、炎を検知しないと判定し、現時点のモードを継続したまま、火災判定処理ルーチンを終了する。
一方、第一変化量に関する判定比が、対応する閾値以上である場合には、炎を検知したと判定し、ステップS228へ移行する。
ステップS228では、異常位置算出部256は、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値を取得する。
ステップS230において、異常位置算出部256は、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値に基づいて、電気信号の値が最大となる検出素子に対して予め定められた位置を、火災位置として判定する。
ステップS232において、距離情報取得部258は、アレイセンサ217Bの各検出素子のうち、電気信号の値が最大となる検出素子に対して予め定められた距離を、火災位置までの距離として取得する。
ステップS234では、補正係数取得部260は、距離情報取得部258によって取得された距離に基づいて、当該距離に対応する補正係数を取得する。
ステップS236では、変化量修正部262は、検出素子212Bの第一変化量(4.5μm 近傍)の値を、取得した補正係数を用いて修正する。
ステップS238では、異常規模判定部264は、変化量修正部262により得られた、検出素子212Bの第一変化量の値の修正結果と、予め求められた基準規模であるときの第一変化量の値とに基づいて、炎の空間的な大きさである規模Wを判定する。
ステップS240では、反映判定部266は、距離情報取得部258によって取得された火災位置までの距離が、所定範囲(例えば、5[m]~60[m]の範囲)内である場合には、感度補正しないと判定し、ステップS242へ移行する。
一方、反映判定部266は、距離情報取得部258によって取得された火災位置までの距離が、所定範囲外である場合には、感度補正すると判定し、ステップS244へ移行する。
ステップS242では、異常再判定部268は、検出素子212Bの第一変化量の値vを、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、炎を検知したと判定する。
ステップS244では、異常再判定部268は、検出素子212Bの第一変化量の値vに補正係数dを乗算した値を、閾値と比較した結果が、予め定められた条件を満たした場合に、炎を検知したと判定する。
ステップS246では、上記ステップS242又はステップS244で、炎を検知したと判定されたか否かを判定する。上記ステップS242又はステップS244で、炎を検知したと判定されなかった場合には、火災判定処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップS242又はステップS244で、炎を検知したと判定された場合には、ステップS248へ移行する。
ステップS248では、回数判定部270は、上記ステップS242又はステップS244の判定結果と、過去の上記ステップS242又はステップS244の判定結果と、上記ステップS225で設定された連続回数に関する閾値Nとに基づいて、連続で炎を検知したと判定された回数が予め定められた連続回数N以上であるか否かを判定する。連続で炎を検知したと判定された回数が連続回数N以上である場合には、火災が発生したと判断し、ステップS254へ移行する。一方、連続で炎を検知したと判定された回数が連続回数N未満である場合には、ステップS250へ移行する。
ステップS250では、回数判定部270は、上記ステップS242又はステップS244の判定結果と、過去の上記ステップS242又はステップS244の判定結果と、上記ステップS225で設定された累積回数に関する閾値Mとに基づいて、一定の時間内に炎を検知したと判定された回数が予め定められた累積回数M以上であるか否かを判定する。一定の時間内に炎を検知したと判定された回数が累積回数M以上である場合には、火災が発生したと判断し、ステップS254へ移行する。一方、連続で炎を検知したと判定された回数が累積回数M未満である場合には、ステップS252へ移行し、注意出力モードへ移行して、火災判定処理ルーチンを終了する。
ステップS254では、回数判定部270は、第1センサ212の検出素子212Bからの電気信号の値、第2センサ214の検出素子214Bからの電気信号の値、第3センサ216の検出素子216Bからの電気信号の値の各々に対する移動平均値を、現時点の移動平均値に固定するように設定する。そして、ステップS256において、警報制御部272及び異常出力部276は、火災モードへ移行して、火災信号と、火災規模と、火災位置としての、炎が検知された検出素子に対して予め定められた位置及び距離とを、警報表示部246A、警報出力部246B、及び消火装置80に対して出力し、火災判定処理ルーチンを終了する。
そして、異常検知器210は、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値を、逐次、消火装置80へ出力する。
<消火装置の作用>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る消火装置80の作用について説明する。
消火装置80の放水銃制御部82によって、上記図8に示す消火制御処理ルーチンと同様の処理ルーチンが実行される。
なお、上記図8に示す消火制御処理ルーチンと同様の処理ルーチンであるため、説明を省略する。
ただし、ステップS162では、異常検知器210から、アレイセンサ217Bの各検出素子のうち、電気信号の値が最も大きい検出素子Pa,bと、当該検出素子の位置Pa,bに対して予め定められた位置を取得する。
ステップS164では、異常検知器210から、電気信号の値が最も大きい検出素子Pa,bに対して予め定められた距離Dを取得する。
ステップS172では、放水開始前のアレイセンサ217Bの各検出素子の電気信号の値と、放水開始後のアレイセンサ217Bの各検出素子の電気信号の値とを取得する。ステップS174では、放水開始前のアレイセンサ217Bの各検出素子の電気信号の値と、放水開始後のアレイセンサ217Bの各検出素子の電気信号の値と、に基づいて、放水銃86による放水の着水範囲Qa,bを検出する。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る消火システムの異常検知器によれば、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光、炭酸ガス共鳴放射帯より短い波長の帯域の4.0μm近傍の帯域の赤外光、及び炭酸ガス共鳴放射帯より長い波長の帯域の5.0μm近傍の帯域の赤外光の各々を検出して直流成分の電気信号に変換する。異常検知器は、それぞれの電気信号の、移動平均値からの変化量である第一変化量、第二変化量、及び第三変化量に基づいて、炎を検知したか否かを判定する。これにより、熱風による誤作動を解消し、精度よく炎を検知することができる。また、アレイセンサの各検出素子によって検出された電気信号の値に基づいて、炎が検知された位置を判定することができる。
また、検出素子によって検出された電気信号の値の第一変化量と、炎の空間的な大きさである基準となる規模に対応する予め求められた第一変化量とに基づいて、炎の空間的な大きさである規模を判定することにより、精度よく炎の規模を推定することができる。
また、異常状態の規模及び距離に応じて、最適な消火方法(消火剤の量、消火時間、消火エリア、放水銃であれば旋回俯仰角、放水圧力、放水形状等)を制御するための情報を取得することが可能となる。
また、検出素子の第一変化量に対して、検知された距離に応じた補正係数を乗算し、炎検知の再判定を行うことにより、異常検知の確実性を高めることができる。
また、検出素子毎に、あらかじめ検出位置までの距離を設定しておくことにより、高価な機材(レーザー距離計等)を必要とせず、異常個所から異常検知器までの距離を取得可能となる。これにより、低価格かつ安全度の高い監視環境を実現できる。
また、異常個所までの距離が特定されることにより、検出素子の第一変化量に対して、検知された距離に応じた補正係数を乗算して修正が可能となる。これにより、異常検知器に対して極めて近い距離に存在する小さな炎(ライターやローソク炎等)に対する誤検知を防ぐことができる。逆に、異常検知器から遠く離れた位置(例えば60m)での炎に対して、検知の確実性を高めることができる。
また、判定された規模、位置、及び距離情報を基に、最適な消火(ピンポイント消火、最小限の水損)が実現できる
また、放水の着水範囲を精度よく推定することができるため、放水の着水範囲に、火災位置が含まれるように放水銃の角度を適切に補正することができる。
また、赤外光の各々を検出して直流成分の電気信号に変換するサーモパイルを用いるため、周波数分解処理が不要であり、早期検知が可能である。
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、上記の実施の形態では、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値に基づいて、火災位置を判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。平均算出部250が、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値についても、第1センサ212の検出素子212Bからの電気信号の値、第2センサ214の検出素子214Bからの電気信号の値、第3センサ216の検出素子216Bからの電気信号の値と同様に、移動平均値を算出してもよい。また、変化量算出部252が、アレイセンサ217Bの各検出素子に対し、移動平均値に対するライブ値の変化量を算出し、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値に対する変化量に基づいて、火災位置を判定するようにしてもよい。この場合には、変化量が最大値となる検出素子に対して予め定められた位置を、火災位置として判定すればよい。
また、上記の実施の形態では、異常検知器は、アレイセンサ217Bの各検出素子によって検出された電気信号の値に基づいて、火災位置を判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。異常検知器は、アレイセンサ217Bのブロック毎の電気信号の値に基づいて、火災位置を判定するようにしてもよい。この場合には、アレイセンサ217Bの各ブロックに対し、当該ブロックに含まれる検出素子の各々によって検出された電気信号の値の平均値を、当該ブロックの値とする。そして、異常検知器は、ブロックの値が最大値となるブロックに対して予め定められた領域を、火災位置として判定すればよい。
また、異常検知器は、アレイセンサの検出素子毎に、火災位置の判定を行うと共に、アレイセンサのブロック毎に、火災位置の判定を行うようにしてもよい。
また、上記の実施の形態では、異常条件判定部254により連続で炎を検知したと判定された回数が予め定められた連続回数以上の場合、又は異常条件判定部254により一定の時間内に炎を検知したと判定された回数が予め定められた累積回数以上の場合に、火災信号を出力する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。異常条件判定部254により連続で炎を検知したと判定された回数が予め定められた連続回数以上の場合であって、かつ、異常条件判定部54により一定の時間内に炎を検知したと判定された回数が予め定められた累積回数以上の場合に、火災信号を出力するようにしてもよい。
また、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域以外に、4.0μm近傍の帯域の赤外線および5.0μm近傍の帯域の赤外線を検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域以外として、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域とは異なる2つ以上の帯域の赤外線であれば、他の帯域の赤外線を検出してもよい。例えば、炭酸ガス共鳴放射帯より短い波長の2つ以上の帯域の赤外線を各々検出してもよい。
また、炭酸ガス共鳴放射帯より長い波長の2つ以上の帯域の赤外線を各々検出してもよい。この場合であっても、炭酸ガス共鳴放射帯より長い波長の2つの帯域(例えば、5.0μm近傍の帯域と6.0μm近傍の帯域)について第二変化量の値及び第三変化量の値を計算し、第二変化量の値及び第三変化量の値の近似直線から得られる4.5μm 近傍の計算値(雑音量)を計算すればよい。
また、平均算出部250は、各センサからの電気信号の値の移動平均値を、各センサの信号の監視環境信号値として算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。平均算出部250は、各センサからの電気信号の値の加重平均値を、各センサの信号の監視環境信号値として算出するようにしてもよい。
また、上記の実施の形態において、閾値テーブルから、閾値を取得する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。閾値を求める関数を導出しておき、当該関数から、閾値を取得するようにしてもよい。
また、異常条件判定部254は、第一変化量と雑音量との判定比が、判定閾値以上であるか否かを判定して、炎を検知したか否かを判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、異常条件判定部254は、第一変化量と雑音量との差分が、判定閾値以上であるか否かを判定して、炎を検知したか否かを判定するようにしてもよい。また、例えば、異常条件判定部254は、第一変化量と雑音量との差分が、判定閾値以上であるか否か、及び第一変化量と雑音量との判定比が、判定閾値以上であるか否かを判定して、炎を検知したか否かを判定するようにしてもよい。
アレイセンサ217Bに対応するフィルター217Aが、2.0μm近傍から5.0μm近傍までの帯域の赤外線を透過する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、2.0μm近傍から5.0μm近傍までの帯域の一部を透過するフィルターを用いてもよい。
また、炎ではなく、異常温度を検知するようにしてもよい。この場合には、炭酸ガス共鳴放射帯の4.5μm近傍の帯域の赤外光、炭酸ガス共鳴放射帯より短い波長の帯域の4.0μm近傍の帯域の赤外光、及び炭酸ガス共鳴放射帯より長い波長の帯域の5.0μm近傍の帯域の赤外光の各々を検出して直流成分の電気信号に変換する。異常検知器は、それぞれの電気信号の、移動平均値からの変化量である第一変化量、第二変化量、及び第三変化量のいずれか複数に基づいて、異常温度を検知したか否かを判定する。例えば、図9に示すような、第二変化量及び第三変化量の比と温度との関係に基づいて、第二変化量及び第三変化量の比から温度を推定し、異常温度を検知したか否かを判定する。なお、第一変化量及び第二変化量の比に基づいて温度を推定し、異常温度を検知したか否かを判定してもよいし、第一変化量及び第三変化量の比に基づいて温度を推定し、異常温度を検知したか否かを判定してもよい。また、第一変化量、第二変化量、及び第三変化量に基づいて、炎を検知したか否かを判定すると共に、第一変化量、第二変化量、及び第三変化量のいずれか複数に基づいて、温度を推定し、異常温度を検知したか否かを判定してもよい。
また、アレイセンサの各検出素子に対して、検出位置までの距離を予め設定しておく場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、2台以上の異常検知器により、三角測量の原理を用いて異常個所から異常検知器までの距離を算出するようにしてもよい。
この場合には、アレイセンサのうち、電気信号の値が最大となる検出素子に対応する位置と、他の異常検知器においてアレイセンサのうち、電気信号の値が最大となる検出素子に対応する位置とに基づいて、異常個所から異常検知器までの距離を算出する。
具体的には、図14に示すように、ほぼ同一の監視領域を監視する2台の異常検知器を用いて、予め求められた、異常検知器間の距離Lを用いて、以下の式によって、各検出素子に対応した検出位置までの距離aまたはbを計算する。
ここで、θ1、θ2、θ4は画角と画素数によって決まる定数である。
また、図15に示すように、消火システム300が、2台の異常検知器10又は210と、消火装置380とを含んで構成されていてもよい。この場合には、放水銃制御部382が、予め求められた、異常検知器間の距離Lを用いて、以下の式によって、放水銃86の位置Wから検出素子に対応した検出位置までの距離Dを計算する(図16参照)。
この場合には、消火装置380の放水銃制御部382によって、図17に示す消火制御処理ルーチンが実行される。
まず、ステップS300では、何れかの異常検知器10又は210によって火災が検知されたか否かを判定する。異常検知器10又は210から火災信号が出力されると、火災が検知されたと判断し、ステップS302へ移行する。
ステップS302では、それぞれの異常検知器10又は210から、火災が検知された検出素子の位置Pa,bと、当該検出素子の位置Pa,bに対して予め定められた位置を取得する。
ステップS304では、それぞれの異常検知器10又は210から、検出素子の位置Pa,bに対応する角度情報θ1、θ2を取得する。
ステップS306では、異常検知器10又は210間の距離Lと、角度情報θ1、θ2とから、放水銃86の位置Wから、火災が検知された検出素子に対応した検出位置までの距離Dを計算する。
ステップS308では、計算された距離Dに基づいて、当該距離Dに対応する補正係数dを取得する。
ステップS310では、火災が検知された検出素子の第一変化量(4.5μm 近傍)の値を、取得した補正係数を用いて修正し、第一変化量の値の修正結果と、予め求められた基準規模であるときの第一変化量の値とに基づいて、炎の空間的な大きさである規模を判定する。そして、上記図8に示す消火制御処理ルーチンのステップS168へ移行する。
また、異常検知器と消火装置とを別々の装置として構成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、一つの装置として構成してもよい。
また、異常検知器の一部の構成(例えば、異常位置算出部、距離情報取得部、補正係数取得部、変化量修正部、異常規模判定部、反映判定部、異常再判定部など)を、消火装置が備えるように構成してもよい。