JP2021113584A - 車両用動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】第1回転軸と第2回転軸とがスプライン嵌合されるスプライン嵌合部を有する車両用動力伝達装置において、そのスプライン嵌合部を通って軸受等に供給される潤滑油の油量を確保できる構造を提供する。【解決手段】入力軸22の外周部には、入力軸22の軸方向において、入力軸22を径方向に見たとき少なくとも一部がスプライン嵌合部79と重なる位置に、径方向外側に突き出すガイド部102が形成されているため、入力軸22とロータ軸54との間の隙間が小さくなり、入力軸22とロータ軸54との隙間を通る潤滑油の油量を低減できる。その結果、スプライン嵌合部79を通る潤滑油の油量を増大でき、スプライン嵌合部79を通って玉軸受58bおよびスラスト軸受98に供給される潤滑油の油量を確保することができる。【選択図】図2
Description
本発明は、車両用動力伝達装置に係り、特に、車両用動力伝達装置を構成する各ギヤや軸受に供給される潤滑油の油量を確保する技術に関する。
特許文献1には、ハイブリッド車両用動力伝達装置において、入力軸16(本明細書において第3回転軸)に形成された潤滑油の供給油路から放出された潤滑油が、第1モータジェネレータMG1のロータ軸RS(本明細書において第1回転軸)と遊星歯車装置18のサンギヤS(本明細書において第2回転軸)との間を相対回転不能に接続するスプライン嵌合部を通って、ロータ軸RSを支持する軸受およびサンギヤSを支持する軸受に供給される構造が開示されている。
ところで、特許文献1に開示されている構造では、入力軸16の供給油路から放出された潤滑油が、入力軸16の外周面とロータ軸RSの内周面との間に形成される隙間を通って軸方向に流れやすい構造となっており、ロータ軸RSとサンギヤSとの間のスプライン嵌合部を通ってロータ軸RS等を支持する軸受に供給される潤滑油の油量が不足する虞があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、第1回転軸と第2回転軸とがスプライン嵌合されるスプライン嵌合部を有する車両用動力伝達装置において、そのスプライン嵌合部を通って軸受等に供給される潤滑油の油量を確保できる構造を提供することにある。
第1発明の要旨とするところは、(a)円筒状の第1回転軸と、その第1回転軸にスプライン嵌合されてその第1回転軸に対して相対回転不能に接続されている円筒状の第2回転軸と、前記第1回転軸の内周および前記第2回転軸の内周に配置されている第3回転軸と、前記第1回転軸を支持する軸受および前記第2回転軸を支持する軸受の少なくとも一方の軸受と、を備え、前記第3回転軸には、前記第1回転軸および前記第2回転軸と前記第3回転軸との間の隙間に潤滑油を放出する供給油路が形成され、前記軸受には、前記第1回転軸と前記第2回転軸とのスプライン嵌合部を通って前記供給油路からの潤滑油が供給される車両用動力伝達装置であって、(b)前記第3回転軸の外周部には、径方向外側に突き出す拡径部が形成され、(c)前記拡径部は、前記第3回転軸の軸方向において、前記拡径部を径方向に見たとき少なくとも一部が前記スプライン嵌合部と重なる位置に形成されていることを特徴とする。
第1発明の車両用動力伝達装置によれば、第3回転軸の外周部には、径方向外側に突き出す拡径部が形成され、前記拡径部は、第3回転軸の軸方向において、第3回転軸を径方向に見たとき少なくとも一部が第1回転軸と第2回転軸とのスプライン嵌合部と重なる位置に形成されているため、第3回転軸とスプライン嵌合部を構成する第1回転軸および第2回転軸のうち内周側に位置する回転軸との間の隙間が小さくなり、第3回転軸と前記回転軸との隙間を通る潤滑油の油量を低減できる。その結果、スプライン嵌合部を通る潤滑油の油量を増大でき、スプライン嵌合部を通って軸受に供給される潤滑油の油量を確保することができる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用された車両用動力伝達装置10(以下、動力伝達装置10)の構成を概略的に示す骨子図である。動力伝達装置10は、エンジン12と左右一対の駆動輪14l、14r(区別しない場合には駆動輪14と記載)との間に設けられている。動力伝達装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)形式のハイブリッド車両に好適に用いられる。動力伝達装置10は、走行用駆動力源であるエンジン12および第2電動機MG2から出力される動力を、デファレンシャル装置28および左右一対の車軸30l、30r等を介して、左右一対の駆動輪14l、14rに伝達するハイブリッド形式の動力伝達装置である。なお、本明細書における動力は、トルクおよび駆動力と同義である。
図1に示すように、動力伝達装置10は、第1軸線CL1を中心にして回転可能に配置されている入力軸22と、第2軸線CL2を中心にして回転可能に配置されている動力伝達軸24と、第3軸線CL3を中心にして回転可能に配置されているカウンタ軸26と、第4軸線CL4を中心にして回転可能に配置されているデファレンシャル装置28および左右一対の車軸30l、30rと、を備えている。入力軸22の外周側には、遊星歯車装置32、第1電動機MG1、および出力歯車34が設けられている。動力伝達軸24には、リダクションギヤ36が設けられている。また、動力伝達軸24の軸方向の一端には、第2電動機MG2が動力伝達可能に接続されている。カウンタ軸26には、出力歯車34と噛み合うカウンタギヤ38およびデファレンシャル装置28のデフリングギヤ40と噛み合うデフドライブギヤ42が設けられている。これら各回転部材は、何れも非回転部材であるケース44の内部に収容されている。また、第1軸線CL1〜第4軸線CL4は、互いに平行に配置されている。
第1電動機MG1および第2電動機MG2は、電気エネルギから機械的な動力を発生させる発動機としての機能および機械的な動力から電気エネルギを発生させる発電機としての機能のうち少なくとも一方を備えた電動機であって、好適には、発動機または発電機として選択的に作動させられるモータジェネレータである。第1電動機MG1は、エンジン12の反力を受け持つための発電機(ジェネレータ)機能、および、運転停止中のエンジン12を回転駆動させる電動機(モータ)機能を備える。また、第2電動機MG2は、走行用の駆動力源として動力を出力する走行用電動機として機能するための電動機機能、および、駆動輪14側からの逆駆動力から回生により電気エネルギを発生させる発電機機能を備える。
第1軸線CL1を中心にして、入力軸22が回転可能に設けられている。入力軸22は、図示しないダンパ等を介してエンジン12のクランク軸12aに動力伝達可能に連結されている。また、入力軸22は、軸受46等を介してケース44によって回転可能に支持されている。入力軸22の外周側には、遊星歯車装置32、第1電動機MG1、および出力歯車34が設けられている。
遊星歯車装置32は、第1軸線CL1を中心にして配置され、サンギヤS、キャリヤCA、およびリングギヤRを有するシングルピニオン型の遊星歯車装置(差動機構)である。遊星歯車装置32は、エンジン12の動力を、第1電動機MG1および出力歯車34に分配する動力分配機構として機能する。遊星歯車装置32のサンギヤSが第1電動機MG1に動力伝達可能に連結され、キャリヤCAが入力軸22等を介してエンジン12に動力伝達可能に連結され、リングギヤRが出力歯車34に動力伝達可能に連結されている。
第1電動機MG1は、第1軸線CL1の方向において、ケース44の一部である隔壁48を隔てて遊星歯車装置32と隣り合う位置に配置されている。第1電動機MG1は、ケース44に回転不能に固定されている円環状のステータコア50と、ステータコア50の内周側に配置されている円環状のロータ52と、ロータ52の内周に連結されているロータ軸54とを、備えている。また、ステータコア50には、ステータコイル56が巻き掛けられている。ロータ軸54は、軸方向の両側に配置されている一対の軸受58a、58bを介して、ケース44によって回転可能に支持されている。
出力歯車34は、遊星歯車装置32のリングギヤRに連結され、カウンタ軸26に設けられているカウンタギヤ38に噛み合わされている。なお、リングギヤRおよび出力歯車34は、これらのギヤが一体成形された複合ギヤから構成されている。
第2軸線CL2を中心にして、動力伝達軸24が回転可能に設けられている。動力伝達軸24は、軸方向の両側に配置されている一対の軸受70a、70bを介して、ケース44によって回転可能に支持されている。動力伝達軸24には、リダクションギヤ36が設けられているとともに、動力伝達軸24の軸方向の一端には、第2電動機MG2が動力伝達可能に接続されている。第2電動機MG2とリダクションギヤ36とは、第2軸線CL2の方向で隔壁48を隔てて並んで配置されている。
第2電動機MG2は、ケース44に回転不能に固定されている円環状のステータコア60と、ステータコア60の内周側に配置されている円環状のロータ62と、ロータ52の内周に連結されているロータ軸64とを備えている。ステータコア60には、ステータコイル66が巻き掛けられている。ロータ軸64は、軸方向の両側に配置されている一対の軸受68a、68bを介して、ケース44によって回転可能に支持されている。
リダクションギヤ36は、動力伝達軸24に一体的に設けられ、カウンタ軸26に設けられているカウンタギヤ38に噛み合わされている。リダクションギヤ36の歯数が、カウンタギヤ38の歯数よりも少なく設定されることで、第2電動機MG2の回転が、リダクションギヤ36およびカウンタギヤ38を経由して、減速してカウンタ軸26に伝達される。
第3軸線CL3を中心にして、カウンタ軸26が回転可能に設けられている。カウンタ軸26は、軸方向の両側に配置されている一対の軸受73a、73bを介して、ケース44によって回転可能に支持されている。カウンタ軸26には、カウンタギヤ38およびデフドライブギヤ42が相対回転不能に設けられている。
カウンタギヤ38は、出力歯車34およびリダクションギヤ36に噛み合わされることで、エンジン12および第2電動機MG2から出力される動力が伝達される。デフドライブギヤ42は、デファレンシャル装置28のデフリングギヤ40に噛み合わされている。従って、出力歯車34およびリダクションギヤ36の少なくとも一方からカウンタギヤ38に動力が入力されると、カウンタ軸26およびデフドライブギヤ42を経由してデファレンシャル装置28に動力が伝達される。
第4軸線CL4を中心にして、デファレンシャル装置28および一対の車軸30l、30rが回転可能に配置されている。デファレンシャル装置28は、よく知られた差動機構から構成され、左右一対の車軸30l、30rの相対回転を許容しつつ、左右一対の車軸30l、30rに動力を伝達する。なお、デファレンシャル装置28は、公知の技術であるため、その説明を省略する。デファレンシャル装置28は、第4軸線CL4の方向の両側に配置されている一対の軸受75a、75bを介して、ケース44によって回転可能に支持されている。
上記のように構成される動力伝達装置10において、エンジン12の動力が、遊星歯車装置32、出力歯車34、カウンタギヤ38、カウンタ軸26、デフドライブギヤ42、デファレンシャル装置28、および車軸30l、30rを順次介して、左右の駆動輪14l、14rに伝達される。また、第2電動機MG2の動力が、ロータ軸64、動力伝達軸24、リダクションギヤ36、カウンタギヤ38、カウンタ軸26、デフドライブギヤ42、デファレンシャル装置28、および車軸30l、30rを順次介して、左右の駆動輪14l、14rに伝達される。
動力伝達装置10のケース44は、ハウジング44aと、アクスルケース44bと、ケースカバー44cと、から構成されている。アクスルケース44bは、第1軸線CL1の方向の両側が開口しており、アクスルケース44bの一方の開口がハウジング44aによって塞がれるとともに、アクスルケース44bの他方の開口がケースカバー44cによって塞がれている。アクスルケース44bとハウジング44aおよびケースカバー44cとは、互いにボルトで締結されている。
アクスルケース44bには、第1軸線CL1に対して垂直な隔壁48が形成されている。隔壁48によって、ケース44の内部が、ギヤ室49およびモータ室51の2つの空間に区画されている。ギヤ室49には、遊星歯車装置32、出力歯車34、カウンタギヤ38、リダクションギヤ36、およびデファレンシャル装置28等の各ギヤが収容されている。モータ室51には、第1電動機MG1および第2電動機MG2が収容されている。
デフリングギヤ40には、第1オイルポンプP1を回転駆動させるためのポンプ駆動ギヤ77が噛み合わされている。第1オイルポンプP1は、ポンプ駆動ギヤ77を介してデファレンシャル装置28のデフリングギヤ40に動力伝達可能に接続されている機械式オイルポンプである。第1オイルポンプP1は、デファレンシャル装置28のデフリングギヤ40が回転すると、そのデフリングギヤ40の回転に連動して回転駆動させられる。
また、第1軸線CL1上であって、入力軸22の軸方向でエンジン12と反対側の端部には、エンジン12によって駆動させられる機械式の第2オイルポンプP2が設けられている。入力軸22の軸端部には、第2オイルポンプP2を構成する図示しない駆動ギヤが接続されており、第2オイルポンプP2は、エンジン12の回転に連動して回転駆動させられる。従って、エンジン12が回転することで、第2オイルポンプP2が回転駆動させられる。
図2は、図1において遊星歯車装置32の周辺の構造を説明するための断面図である。図2に示すように、第1軸線CL1を中心にして入力軸22が回転可能に配置されている。入力軸22は、円筒状に形成されているサンギヤSおよび円筒状に形成されているロータ軸54の内周に配置されている。また、入力軸22の外周側には、遊星歯車装置32が配置されている。遊星歯車装置34は、第1軸線CL1の方向(第1軸線CL1方向)でアクスルケース44bの隔壁48とハウジング44aとの間に配置されている。
入力軸22は、第1軸線CL1方向で隔壁48側の一端が潤滑油供給パイプ71に接続されている。潤滑油供給パイプ71には、第2オイルポンプP2から吐出された潤滑油が供給されるように構成されている。入力軸22には、潤滑油供給パイプ71の油が供給される第1軸線CL1に平行な軸方向油路72が形成されている。さらに、入力軸22には、軸方向油路72と入力軸22の外周面との間を連通する第1径方向油路74および第2径方向油路76が形成されている。なお、入力軸22が、本発明の第3回転軸に対応し、軸方向油路72および第1径方向油路74が、本発明の供給油路に対応している。
遊星歯車装置32は、サンギヤSと、ピニオンギヤPと、ピニオンギヤPを自転可能に支持するキャリヤCAと、ピニオンギヤPを介してサンギヤSと噛み合うリングギヤRと、を有するシングルピニオン型の遊星歯車装置から構成されている。
サンギヤSは、円筒状に形成され、入力軸22の外周側に配置されている。サンギヤSの第1軸線CL1方向でハウジング44a側の外周部には、キャリヤCAによって支持されたピニオンギヤPの外周歯Ptと噛み合う外周歯Stが形成されている。また、サンギヤSの第1軸線CL1方向で隔壁48側の内周部には、第1電動機MG1のロータ軸54のスプライン歯54t(外周歯)とスプライン嵌合されるスプライン歯78(内周歯)が形成されている。サンギヤSとロータ軸54とは、第1軸線CL1方向で直列に配置され、サンギヤSのスプライン歯78とロータ軸54のスプライン歯54tとがスプライン嵌合されることで、サンギヤSとロータ軸54とを相対回転不能に接続するスプライン嵌合部79が構成される。なお、サンギヤSが、本発明の第2回転軸に対応し、ロータ軸54が、本発明の第1回転軸に対応している。
キャリヤCAは、第1軸線CL1に対して平行に配置されたキャリヤピン80の両端を保持するように設けられている。キャリヤCAの第1軸線CL1方向でハウジング側の内周部が、入力軸22から径方向に突き出す鍔部22aに溶接によって接続されている。従って、キャリヤCAは、第1軸線CL1を中心にして入力軸22と一体的に回転させられる。
キャリヤピン80の外周には、ピニオンギヤPが配置されている。ピニオンギヤPは、キャリヤピン80を中心にして自転可能に設けられている。ピニオンギヤPの外周部には、サンギヤSの外周歯StおよびリングギヤRの内周歯Rtと噛み合う外周歯Ptが形成されている。
リングギヤRは、円筒状に形成され、ピニオンギヤPの外周側に配置されている。リングギヤRの内周部には、ピニオンギヤPの外周歯Ptと噛み合う内周歯Rtが形成されている。また、リングギヤRの第1軸線CL1方向で両端の内周側には、一対の玉軸受82a、82bが配置されている。リングギヤRは、これら一対の玉軸受82a、82bを介して、隔壁48およびハウジング44aによって第1軸線CL1を中心にして回転可能に支持されている。なお、リングギヤRは、出力歯車34と一体形成されている。
入力軸22の第1軸線CL1方向で隔壁48側の外周面と、第1電動機MG1のロータ軸54の内周面との間には、ニードル軸受84が配置されている。また、入力軸22の第1軸線CL1方向でハウジング44a側の外周面と、ハウジング44aに形成された貫通穴86の内周面との間には、軸受46が配置されている。軸受46は、ニードル軸受(以下、ニードル軸受46)から構成されている。入力軸22は、これらニードル軸受46、88によって、回転可能に支持されている。さらに、入力軸22の第1軸線CL1方向でハウジング44a側の外周面と、ハウジング44aの貫通穴86の内周面との間には、シール部材90が設けられている。シール部材90によって、入力軸22とハウジング44aとの隙間からの潤滑油の漏れが阻止されている。
入力軸22の鍔部22aの第1軸線CL1方向の両側には、スラスト方向(第1軸線CL1方向)の荷重を受ける一対のスラスト軸受94、96が配置されている。スラスト軸受94は、第1軸線CL1方向でサンギヤSと鍔部22aとの間に介挿されている。スラスト軸受96は、第1軸線CL1方向で鍔部22aとハウジング44aとの間に介挿されている。また、第1軸線CL1方向でサンギヤSと隔壁48との間には、サンギヤSを支持するスラスト軸受98が配置されている。なお、スラスト軸受98が、本発明の第2回転軸を支持する軸受に対応している。
第1電動機MG1のロータ軸54の外周面と、隔壁48に形成されている貫通穴92の内周面との間には、ロータ軸54を支持する軸受58bが配置されている。軸受58bは、よく知られた玉軸受(以下、玉軸受58b)から構成されている。ロータ軸54は、玉軸受58bによって回転可能に支持されている。なお、玉軸受58bが、本発明の第1回転軸を支持する軸受に対応している。
上記のように構成される動力伝達装置10において、各ギヤの噛合部および各軸受には、第2オイルポンプP2から吐出された潤滑油が供給されるように構成されている。図2において、第2オイルポンプP2から吐出された潤滑油が潤滑油供給パイプ71に供給され、その潤滑油が入力軸22の軸方向油路72に供給される。また、軸方向油路72を流れる潤滑油は、第1径方向油路74および第2径方向油路76を通って入力軸22の外周側に放出される。
第1径方向油路74は、サンギヤSおよびロータ軸54と入力軸22との間の隙間Gに潤滑油を放出するために形成されている。すなわち、第1径方向油路74から放出された潤滑油は、サンギヤSおよびロータ軸54と入力軸22との間に形成される隙間Gを通って各ギヤの噛合部および各軸受に供給される。例えば、第1径方向油路74から放出された潤滑油の一部は、第1軸線CL1方向でハウジング44a側に移動することで、スラスト軸受94に供給されてスラスト軸受94を潤滑する。さらに、スラスト軸受94を通過した潤滑油は、遊星歯車装置32に供給され、例えば遊星歯車装置32のサンギヤSの外周歯StとピニオンギヤPの外周歯Ptとの噛合部を潤滑する。
また、第1径方向油路74から放出された潤滑油の一部は、実線の矢印で示すように、第1軸線CL1方向で隔壁48側に移動する。第1径方向油路74から放出されて隔壁48側に移動した潤滑油の一部は、破線の矢印で示すように、入力軸22の外周面とロータ軸54の内周面との間の隙間を通ってニードル軸受84に供給される。さらに、第1径方向油路74から放出されて第1軸線CL1方向で隔壁48側に移動した潤滑油の残部は、実線の矢印で示すように、サンギヤSとロータ軸54とのスプライン嵌合部79に形成される隙間を通って、玉軸受58bおよびスラスト軸受98に供給される。すなわち、玉軸受58bおよびスラスト軸受98には、スプライン嵌合部79を通って第1径方向油路74からの潤滑油が供給される。
第2径方向油路76から放出された潤滑油の一部は、第1軸線CL1方向でハウジング44a側に移動することで、ニードル軸受46に供給される。また、第2径方向油路76から放出された潤滑油の残部は、第1軸線CL1方向で隔壁48側に移動することで、スラスト軸受96に供給される。
上述した潤滑油の供給構造において、第1径方向油路74から放出されて第1軸線CL1方向で隔壁48側に移動した潤滑油は、入力軸22とロータ軸54との間の隙間Gに流れやすくなっており、サンギヤSとロータ軸54とのスプライン嵌合部79を通ってスラスト軸受98および玉軸受58bに供給される潤滑油の油量が少ないことが問題となっていた。
この問題を解消するため、入力軸22の外周部には、径方向外側に向かって突き出すガイド部102が形成されている。ガイド部102は、径方向外側に向かって突き出すことで、ガイド部102が形成されていない部位に比べて、入力軸22の外径が長くなっている。ガイド部102の外周面には、第1軸線CL1に対して平行なガイド面104が形成されている。また、ガイド部102の第1軸線CL1方向の両側には、所定の勾配を有する傾斜面106および傾斜面108が形成されている。なお、ガイド部102が、本発明の拡径部に対応している。
ガイド部102は、入力軸22の軸方向(第1軸線CL1方向)において、組付状態でガイド部102を径方向に見たとき少なくとも一部がスプライン嵌合部79と重なる位置に形成されている。具体的には、組付状態でガイド部102を径方向に見たとき、ガイド部102の傾斜面106が、スプライン嵌合部79と重なる位置に形成されている。また、ガイド部102の傾斜面108が形成される部位、すなわちガイド部102の第1軸線CL1方向でハウジング44a側の端部は、第1軸線CL1方向でロータ軸54の軸端よりもハウジング44a側に形成されている。すなわち、ガイド部102の傾斜面108を径方向に見たとき、傾斜面108が、スプライン嵌合部79と重ならない位置に形成されている。ガイド部102のガイド面104が形成されている部位の外径は、入力軸22のスラスト軸受94を支持する軸受支持部110の外径と同じ寸法とされている。さらに、ガイド部102のガイド面104が形成されている部位の外径は、入力軸22の組付過渡期において、サンギヤSの内周面に形成されるサンギヤ側ガイド面112と摺動可能な寸法とされている。
上記ガイド部102が形成されることで、第1径方向油路74から放出されて第1軸線CL1方向で隔壁48側に移動した潤滑油は、入力軸22の回転に伴ってガイド部102の傾斜面108に沿って径方向外側に飛ばされる。従って、スプライン嵌合部79側に供給される潤滑油の油量が増加する。
さらに、組付状態でガイド部102を径方向に見たとき、ガイド部102の傾斜面106がスプライン嵌合部79と重なる位置に形成されていることから、入力軸22の外周面とロータ軸54の内周面との間の隙間の寸法が、ガイド部102が形成されない場合に比べて小さくなっている。すなわち、入力軸22とロータ軸54との間に形成される潤滑油の流路断面積が小さくなるため、入力軸22とロータ軸54との隙間を流れる潤滑油の油量が低減される。言い換えれば、第1径方向油路74から放出されて第1軸線CL1方向で隔壁48側に向かって流れる潤滑油のうち、スプライン嵌合部79を通ってスラスト軸受98および玉軸受58bに供給される潤滑油の油量が増加する。
また、ガイド部102は、入力軸22の組付過渡期において入力軸22とサンギヤSとの径方向の相対位置を規定する位置決め部材として機能する。組付の際には、モータ室51に収容される第1電動機MG1および第2電動機MG2等が予め組み付けられ、さらに、遊星歯車装置32のサンギヤSが第1電動機MG1のロータ軸54にスプライン嵌合されるとともに、スラスト軸受94がサンギヤSの軸端部に組み付けられる。この状態で、入力軸22が一端が、サンギヤSの内周に嵌め入れられて潤滑油供給パイプ71に接続される。
ここで、入力軸22については、遊星歯車装置32のキャリヤCA、ピニオンギヤP等が予め組み付けられた状態で組み付けられる。入力軸22の組付過渡期には、入力軸22の一端がサンギヤSの内周に嵌め入れられるが、入力軸22とサンギヤSとの間に径方向の隙間があることから、入力軸22の組付過渡期における入力軸22とサンギヤSとの相対的な位置決めが困難となる。その結果、入力軸22の組付過渡期において、スラスト軸受94に、入力軸22に予め組み付けられた遊星歯車装置32のピニオンギヤP等のギヤが衝突し、スラスト軸受94を損傷する虞がある。
これに対して、入力軸22にガイド部102が形成されることで、ガイド部102によって、入力軸22の組付過渡期における入力軸22とサンギヤSとの相対的な位置が位置決めされ、スラスト軸受94にギヤが衝突することが回避される。以下、図3〜図6を用いて、入力軸22の組付工程について説明する。
図3〜図6は、入力軸22の組付過渡期の状態を時系列で説明する図である。組付過渡期には、図3、図4、図5、図6の順番で組付が進行する。図3〜図6について説明すると、紙面下側が、アクスルケース44b内に予め組み付けられている第1電動機MG1周辺の構造を示す断面図に対応している。また、紙面上側が、組付過渡期にアクスルケース44b側に向かって移動させられることによりアクスルケース44bに組み付けられる入力軸22の断面図に対応している。
図3〜図6の紙面下側に示すアクスルケース44bには、第1電動機MG1および第1電動機MG1を支持する玉軸受58b等が予め組み付けられている。また、第1電動機MG1のロータ軸54には、遊星歯車装置32のサンギヤSが予めスプライン嵌合され、さらに、サンギヤSの第1軸線CL1方向の端部にスラスト軸受94が予め組み付けられている。一方、図3〜図6の紙面上側に示す入力軸22には、遊星歯車装置32のキャリヤCA、キャリヤCAによって支持されるキャリヤピン80、およびキャリヤピン80によって自転可能に支持されているピニオンギヤPが予め組み付けられている。この状態で、入力軸22が矢印で示すようにアクスルケース44b側に向かって移動させられることで、入力軸22がアクスルケース44に組み付けられる。
図3は、入力軸22の組付初期の状態に対応している。図3に示すように、入力軸22がサンギヤSの内周側に嵌め入れられると、入力軸22に形成されるガイド部102のガイド面104がサンギヤSのサンギヤ側ガイド面112に摺接させられる。従って、ガイド部102のガイド面104およびサンギヤSのサンギヤ側ガイド面112によって、サンギヤSに対する入力軸22の相対位置が位置決めされ、組付過渡期におけるサンギヤSに対する入力軸22の偏心が抑制される。
図4は、図3に対して入力軸22がさらにアクスルケース44b側に移動した状態を示している。図4に示すように、入力軸22のガイド部102のガイド面104が、サンギヤSのサンギヤ側ガイド面112に摺接しながら移動するため、サンギヤSに対して入力軸22の偏心が抑制されている。その結果、入力軸22がサンギヤSに対して偏心することなく組み付けられることで、組付過渡期において遊星歯車装置32のギヤ等がスラスト軸受94と衝突することが回避される。
図5は、入力軸22のガイド部102のガイド面104が、サンギヤSのサンギヤ側ガイド面112を通過した直後の状態を示している。図5に示す状態において、入力軸22の先端の一部が、ロータ軸54に予め嵌め着けられているニードル軸受84に嵌め合わされている。従って、入力軸22のガイド部102がサンギヤSのサンギヤ側ガイド面112を通過した後は、入力軸22がニードル軸受84に嵌め合わされることで、入力軸22の位置が規定される。従って、入力軸22のガイド部102がサンギヤSのサンギヤ側ガイド面112を通過した後は、ニードル軸受84によって入力軸22が位置決めされ、組付過渡期における入力軸22の偏心が抑制される。
図6は、入力軸22の組付が完了した状態を示している。図6に示すように、入力軸22の鍔部22aがスラスト軸受94に当接する位置まで、入力軸22が移動することで組付が完了する。図6に示す組付が完了した状態では、ガイド部102を径方向に見たとき、ガイド部102の一部(傾斜面106)がスプライン嵌合部79と重なっている。従って、入力軸22とロータ軸54との間の隙間の寸法が小さくなり、入力軸22とロータ軸54との間の隙間を流れる潤滑油の油量が低減され、スプライン嵌合部79を通って玉軸受58bおよびスラスト軸受98に供給される作動油の油量が増加する。
上述のように、本実施例によれば、入力軸22の外周部には、入力軸22の軸方向において、入力軸22を径方向に見たとき少なくとも一部がスプライン嵌合部79と重なる位置に、径方向外側に突き出すガイド部102が形成されているため、入力軸22とロータ軸54との間の隙間が小さくなり、入力軸22とロータ軸54との隙間を通る潤滑油の油量を低減できる。その結果、スプライン嵌合部79を通る潤滑油の油量を増大でき、スプライン嵌合部79を通って玉軸受58bおよびスラスト軸受98に供給される潤滑油の油量を確保することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、ロータ軸54を支持する玉軸受58bとサンギヤSを支持するスラスト軸受98とを備え、これらの軸受58b、98には、スプライン嵌合部79を通って潤滑油が供給されるように構成されているが、玉軸受58bおよびスラスト軸受98の一方に、スプライン嵌合部79を通って潤滑油が供給されるように構成されていても構わない。
また、前述の実施例では、第1電動機MG1のロータ軸54とサンギヤSとがスプライン嵌合されることでスプライン嵌合部79が構成されているが、本発明は必ずしもこれに限定されない。円筒状の回転軸と同じく円筒状の回転軸とが互いにスプライン嵌合される構成であれば適宜適用され得る。
また、前述の実施例では、ロータ軸54およびサンギヤSの内周に入力軸22が配置されているが、本発明は必ずしも入力軸に限定されない。スプライン嵌合されている2つの回転軸の内周に配置され、径方向外側に向かって潤滑油を放出する供給油路が形成されている回転軸であれば適宜適用され得る。
また、前述の実施例では、動力伝達装置10は、第1電動機MG1および第2電動機MG2を備えるハイブリッド形式の車両用動力伝達装置であったが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、電動機を備えないエンジンのみを駆動力源とする動力伝達装置であっても構わない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両用動力伝達装置
22:入力軸(第3回転軸)
54:ロータ軸(第1回転軸)
58b:玉軸受(軸受)
74:第1径方向油路(供給油路)
79:スプライン嵌合部
98:スラスト軸受(軸受)
102:ガイド部(拡径部)
S:サンギヤ(第2回転軸)
G:隙間
22:入力軸(第3回転軸)
54:ロータ軸(第1回転軸)
58b:玉軸受(軸受)
74:第1径方向油路(供給油路)
79:スプライン嵌合部
98:スラスト軸受(軸受)
102:ガイド部(拡径部)
S:サンギヤ(第2回転軸)
G:隙間
Claims (1)
- 円筒状の第1回転軸と、該第1回転軸にスプライン嵌合されて該第1回転軸に対して相対回転不能に接続されている円筒状の第2回転軸と、前記第1回転軸の内周および前記第2回転軸の内周に配置されている第3回転軸と、前記第1回転軸を支持する軸受および前記第2回転軸を支持する軸受の少なくとも一方の軸受と、を備え、前記第3回転軸には、前記第1回転軸および前記第2回転軸と前記第3回転軸との間の隙間に潤滑油を放出する供給油路が形成され、前記軸受には、前記第1回転軸と前記第2回転軸とのスプライン嵌合部を通って前記供給油路からの潤滑油が供給される車両用動力伝達装置であって、
前記第3回転軸の外周部には、径方向外側に突き出す拡径部が形成され、
前記拡径部は、前記第3回転軸の軸方向において、前記拡径部を径方向に見たとき少なくとも一部が前記スプライン嵌合部と重なる位置に形成されている
ことを特徴とする車両用動力伝達装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020006363A JP2021113584A (ja) | 2020-01-17 | 2020-01-17 | 車両用動力伝達装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2020006363A JP2021113584A (ja) | 2020-01-17 | 2020-01-17 | 車両用動力伝達装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2021113584A true JP2021113584A (ja) | 2021-08-05 |
Family
ID=77076766
Family Applications (1)
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JP2020006363A Pending JP2021113584A (ja) | 2020-01-17 | 2020-01-17 | 車両用動力伝達装置 |
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Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015102193A (ja) * | 2013-11-26 | 2015-06-04 | アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 | 車両用駆動伝達装置 |
JP2016203909A (ja) * | 2015-04-27 | 2016-12-08 | トヨタ自動車株式会社 | 車両の動力伝達構造 |
JP2017075627A (ja) * | 2015-10-13 | 2017-04-20 | トヨタ自動車株式会社 | スプライン継手 |
JP2019077203A (ja) * | 2017-10-19 | 2019-05-23 | トヨタ自動車株式会社 | ハイブリッド車両用動力伝達装置 |
-
2020
- 2020-01-17 JP JP2020006363A patent/JP2021113584A/ja active Pending
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