JP2021109875A - 血小板溶解物の調製方法および雌性妊娠率を上げるための用途 - Google Patents
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Abstract
【目的】多血小板血漿の派生物質を調製する方法およびその用途を提供する。【解決手段】この方法は、分離ゲルを有する遠心管に、採取した全血を入れるステップと、全血および分離ゲルを有する遠心管に対して第1遠心プロセスを行い、全血を第1上層部、中間部、および下層部に分離するステップと、第1上層部と中間部を混合して、多血小板血漿部を得るステップと、多血小板血漿部を凝固させて、多血小板フィブリンゲルを得るステップと、多血小板フィブリンゲルを分離して、血小板溶解物を得るステップを含む。【選択図】図1
Description
本発明は、多血小板血漿(platelet-rich plasma, PRP)の派生物質を調製する方法およびその用途に関するものであり、特に、血小板溶解物(platelet lysate)の調製方法および雌性妊娠成功率を上げるための用途に関するものである。
多血小板血漿(platelet-rich plasma, PRP)は、ヒトまたは動物の全血を遠心することによって得られる高濃度の血小板を有する血漿であり、血小板溶解物は、多血小板血漿をさらに処理した派生物質で、再生に関わる多種の成長因子を含む。したがって、多血小板血漿および血小板溶解物は、再生医学に応用できることがわかっている。
現在知られている従来の血小板溶解物の調製方法は、PRPに活性因子を加えた後に、融解凍結の繰り返し、または超音波方式を使用して、血小板溶解物を得る方法である。しかし、上述した従来の方法には、以下の欠点:収集した全血量が多すぎる、分離不完全により赤血球が汚染される、抗凝血薬の作用により活性化作業を繰り返さなければならない、濃縮が難しい等の問題がある。これらの問題によって、収集した後の血小板溶解物の成長因子濃度が不足する。また、従来の血小板溶解物の調製方法では、PRPを遠心管から取り出して活性化を行う必要があるため、無菌性の効果に懸念があり、融解凍結または超音波振動方式により血小板溶解物を取得するのにかかる時間が長くなりすぎる。したがって、高濃度の成長因子を有する血小板溶解物をいかに迅速に調製するかが、現在、研究者が解決すべき課題となっている。
また、多くの要因によって雌性の不妊症が引き起こされることは既知であり、現在の不妊症の治療方法には、人工授精または生殖補助医療(assisted reproductive technology, ART)がある。しかしながら、既存の治療方法では、不妊症患者の妊娠率を高める効果が依然として良好ではない。
本発明は、無菌条件下で高濃度の成長因子を有する血小板溶解物を迅速に調製することのできる血小板溶解物の調製方法を提供する。
本発明は、雌性妊娠成功率を上げることのできる多血小板血漿および/または多血小板血漿の派生物質を含む医薬組成物を提供する。
本発明の実施形態は、以下のステップを含む血小板溶解物の調製方法を提供する:ステップa)分離ゲルを有する遠心管に、採取した全血を入れる。分離ゲルの比重は、1.030〜1.093である;ステップb)全血および分離ゲルを有する遠心管に対して第1遠心プロセスを行い、全血を第1上層部、中間部、および下層部に分離する。分離ゲルは、中間部と下層部の間に存在する;ステップc)第1上層部と中間部を混合して、多血小板血漿(platelet-rich plasma, PRP)部を得る;ステップd)多血小板血漿部を凝固させて、多血小板フィブリン(platelet-rich fibrin, PRF)ゲルを得る;およびステップe)多血小板フィブリンゲルを分離して、血小板溶解物(platelet lysate, PL)を得る。なお、ステップa)〜ステップe)において、抗凝血薬を添加しない。
本発明の1つの実施形態において、ステップc)を実行する前に、さらに、一部の第1上層部を除去して、第2上層部を得るステップを含んでもよい。第1上層部と第2上層部の体積比率は、1:0.01〜0.99である。
本発明の1つの実施形態において、上述した抗凝血薬は、抗凝血性クエン酸デキストロース溶液A(Anticoagulant Citrate Dextrose Solution, Solution A, ACD-A)、抗凝血性クエン酸デキストロース溶液B(Anticoagulant Citrate Dextrose Solution, Solution B, ACD-B)、抗凝血性クエン酸デキストロース溶液C(Anticoagulant Citrate Dextrose Solution, Solution C, ACD-C)、クエン酸リン酸デキストロース溶液(Citrate-phosphate-dextrose Solution, CPD)、エチレンジアミン四酢酸(Ethylenediaminetetraacetic acid, EDTA)、ヘパリン(Heparin)、クエン酸ナトリウム(Sodium Citrate)、またはその組み合わせを含むことができる。
本発明の1つの実施形態において、上述した分離ゲルの材料は、ケイ素含有ポリマー、アクリルポリマー、またはポリエステルポリマーを含むことができる。
本発明の1つの実施形態において、上述した第1遠心プロセスの遠心回転速度は、例えば、1000g〜4000gであり、遠心時間は、例えば、3分〜10分である。
本発明の1つの実施形態において、上述した第1上層部は、血小板を含む血漿層であり、中間部は、血小板および白血球を含むバフィコート(buffy coat)であり、下層部は、赤血球を含む赤血球層である。
本発明の1つの実施形態において、多血小板血漿部を凝固させるステップは、多血小板血漿部に対して第2遠心プロセスを行うステップを含む。
本発明の1つの実施形態において、上述した第2遠心プロセスの遠心回転速度は、例えば、1000g〜4000gであり、遠心時間は、例えば、3分〜10分である。
本発明の1つの実施形態において、多血小板フィブリンゲルを分離するステップは、多血小板フィブリンゲルに対して第3遠心プロセスを行うステップを含む。
本発明の1つの実施形態において、上述した第3遠心プロセスは、多血小板フィブリンゲルに対して遠心を1回行うステップを含む。遠心回転速度は、例えば、1000g〜4000gであり、遠心時間は、例えば、3分〜45分である。あるいは、多血小板フィブリンゲルに対して遠心を複数回行うステップを含む。遠心回転速度は、例えば、1000g〜4000gであり、毎回の遠心時間は、例えば、3分〜15分である。
本発明の1つの実施形態において、血小板溶解物を調製する全プロセス時間は、10分〜60分である。
本発明の1つの実施形態において、ステップe)の前に、さらに、多血小板フィブリンゲルに対して押下、押圧、濾過、超音波振動、または融解凍結循環を行い、血小板溶解物を多血小板フィブリンゲルから放出するステップを含む。
本発明の1つの実施形態において、上述した血小板溶解物は、TGF−β1、PDGF−BB、PDGF−AB、FGF2、EGF、VEGF、およびVEGFAから選ばれる少なくとも1つの成長因子を含むことができる。TGF−β1の濃度は、1ng/mL〜10000ng/mLであり、PDGF−BBの濃度は、10pg/mL〜500000pg/mLであり、PDGF−ABの濃度は、10pg/mL〜500000pg/mLであり、FGF2の濃度は、1pg/mL〜10000pg/mLであり、EGFの濃度は、1pg/mL〜10000pg/mLであり、VEGFの濃度は、1pg/mL〜10000pg/mLであり、VEGFAの濃度は、0.1pg/mL〜5000pg/mLである。
本発明は、雌性妊娠成功率を上げる薬物を調製するための医薬組成物の用途を提供する。前記医薬組成物は、多血小板血漿および/または多血小板血漿の派生物質を含む。
本発明の1つの実施形態において、上述した多血小板血漿の派生物質は、血小板溶解物を含むことができる。
本発明の1つの実施形態において、上述した医薬組成物は、注入により子宮腔内に投与することができる。
本発明の1つの実施形態において、上述した医薬組成物の投与量は、例えば、0.1mL〜2mLである。
本発明の1つの実施形態において、上述した医薬組成物の投与時間点は、月経周期(menstrual cycle)の卵胞期、排卵期または黄体期、またはホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy, HRT)で薬物を使用する8〜16日である。
本発明の1つの実施形態において、上述した医薬組成物の投与の周期は、2〜3日に1回、少なくとも1〜3回である。
本発明の1つの実施形態において、上述した雌性は、例えば、子宮要因または卵巣要因による不妊症の雌性である。
以上のように、本発明の血小板溶解物の調製方法は、全プロセスにおいていずれも抗凝血薬を添加しないため、血小板溶解物を遠心管から取り出して活性化作業を繰り返す別のステップがなく、それにより、プロセス時間を短縮することができる。また、本発明の血小板溶解物を調製する全プロセスは、いずれも同じ遠心管内で操作することができるため、汚染を防ぎ、無菌性を確保するという利点がある。
また、本発明の多血小板血漿および/または多血小板血漿の派生物質を含む医薬組成物は、雌性妊娠成功率を明らかに上げることができる。
本発明は、特定の操作条件で高濃度の成長因子を有する血小板溶解物を得ることのできる血小板溶解物の調製方法を提供する。この方法は、操作過程が簡易で、プロセス時間が短く、且つ全過程において抗凝血薬を添加する必要がない。また、本発明が提供する多血小板血漿および/または多血小板血漿の派生物質を含む医薬組成物は、雌性妊娠成功率を上げるために使用可能である。
本発明を完全に理解するため、以下、上述した血小板溶解物を調製するプロセスステップについて詳しく説明する。しかしながら、周知の組成またはプロセスステップについては、本発明に対する限定を避けるため、詳細において記述しない。本発明の好ましい実施形態について以下に詳細に記述するが、本発明はこれに限定されず、本発明は、その他の実施形態においても広範に実施することが可能であり、本発明の範囲は、制限を受けるものではなく、後の特許請求範囲が基準とされるべきである。
図1は、本発明の1つの実施形態に係る血小板溶解物の調製方法のフロー図である。本発明の血小板溶解物の調製方法は、以下のステップを含む。
まず、ステップa)を実行し、分離ゲル20を有する遠心管30に、採取した全血10を入れる。1つの実施形態において、全血10は、例えば、新鮮な哺乳類動物の全血である。本実施形態において、全血10は、例えば、新鮮なヒトの全血である。
本実施形態において、分離ゲル20の比重は、1.030〜1.093である。本実施形態において、分離ゲル20の材料は、例えば、ケイ素含有ポリマー、アクリルポリマー、またはポリエステルポリマーである。
続いて、ステップb)を実行し、全血10および分離ゲル20を有する遠心管30に対して第1遠心プロセスを行い、全血10を第1上層部12、中間部14、および下層部16に分離する。分離ゲル20は、中間部14と下層部16の間に存在する。本実施形態において、ステップb)の第1遠心プロセスの遠心回転速度は、例えば、1000g〜4000gである。1つの実施形態において、ステップb)の第1遠心プロセスの遠心回転速度は、例えば、1500g〜3000gである。本実施形態において、ステップb)の第1遠心プロセスの遠心時間は、例えば、3分〜10分である。1つの実施形態において、ステップb)の第1遠心プロセスの遠心時間は、例えば、4分〜8分である。1つの実施形態において、ステップb)の第1遠心プロセスの遠心回転速度は、例えば、1500gであり、遠心時間は、例えば、5分である。
本実施形態において、ステップb)を実行した後、全血10を三層に分離する。最上層(すなわち、第1上層部12)は、血小板を含む血漿層であり、中間層(すなわち、中間部14)は、血小板および白血球を含むバフィコート(buffy coat)であり、最下層(すなわち、下層部16)は、赤血球を含む赤血球層である。
本実施形態において、本発明の分離ゲル20は、赤血球と血小板を有効に隔離して、赤血球をほぼ下層部16のみに存在させ、血小板を第1上層部12および中間部14に存在させることができる。具体的に説明すると、第1上層部12および中間部14の血小板濃度は、全血および下層部16の血小板濃度よりも高い。
本実施形態において、ステップb)を実行した後、続いてステップc)を実行することができるが、本発明はこれに限定されない。別の実施形態において、ステップb)を実行した後、ステップc)を実行する前に、一部の第1上層部12を選択的にさらに除去して、第2上層部13を得てもよい。本実施形態において、第1上層部12と第2上層部13の体積比率は、例えば、1:0.01〜0.99である。1つの実施形態において、第1上層部12と第2上層部13の体積比率は、例えば、1:0.1〜0.8である。上述した体積比率の範囲内で、高濃度の血小板溶解物を得ることができる。本実施形態において、一部の第1上層部12を除去する方法は、例えば、注射針を遠心管30の第1上層部12に刺して、一部の第1上層部12を遠心管30の外部に吸い取る方法である。
本実施形態において、ステップb)を実行した後、ステップc)を実行する前に、一部の第1上層部12を除去することにより、比較的小さい体積の第2上層部13が得られるため、後続のプロセスにおいて、多血小板フィブリンゲルから分離した血小板溶解物を比較的小さい体積の溶液内に存在させることができ、それにより、濃縮の効果を達成することができる。
その後、ステップc)を実行し、第1上層部12(または第2上層部13)と中間部14を混合して、多血小板血漿(platelet-rich plasma, PRP)部15を得る。本実施形態において、第1上層部12(または第2上層部13)と中間部14を混合する方法は、例えば、遠心管30を均一に揺動させて、第1上層部12(または第2上層部13)と中間部14を混合する方法である。しかし、本発明はこれに限定されず、第1上層部12(または第2上層部13)と中間部14を均一に混合できる方法であれば、いずれもこのステップにおいて応用することができる。
その後、ステップd)を実行し、多血小板血漿部15を凝固させて、多血小板フィブリン(platelet-rich fibrin, PRF)ゲル17を得る。本実施形態において、多血小板血漿部15を凝固させる方法は、例えば、多血小板血漿部15に対して第2遠心プロセスを実行する方法である。本実施形態において、ステップd)の第2遠心プロセスの遠心回転速度は、例えば、1000g〜4000gである。1つの実施形態において、ステップd)の第2遠心プロセスの遠心回転速度は、例えば、1500g〜3000gである。本実施形態において、ステップd)の第2遠心プロセスの遠心時間は、例えば、3分〜10分である。1つの実施形態において、ステップd)の第2遠心プロセスの遠心時間は、例えば、4分〜8分である。1つの実施形態において、ステップd)の第2遠心プロセスの遠心回転速度は、例えば、1500gであり、遠心時間は、例えば、5分である。第2遠心プロセスを実行する過程において、多血小板血漿部15は、自身が凝固して、多血小板フィブリン(platelet-rich fibrin, PRF)ゲル17になる。
その後、ステップe)を実行し、多血小板フィブリンゲル17を分離して、血小板溶解物(platelet lysate, PL)18を得る。本実施形態において、多血小板フィブリンゲル17を分離する方法は、例えば、多血小板フィブリンゲル17に対して第3遠心プロセスを行う方法である。1つの実施形態において、第3遠心プロセスは、例えば、多血小板フィブリンゲル17に対して遠心を1回行うことであり、遠心回転速度は、1000g〜4000gであり、遠心時間は、3分〜45分である。別の実施形態において、第3遠心プロセスは、例えば、多血小板フィブリンゲル17に対して遠心を複数回行うことであり、遠心回転速度は、1000g〜4000gであり、毎回の遠心時間は、3分〜15分である。本実施形態において、遠心を複数回行う遠心回数は、例えば、5回〜15回であるが、本発明はこれに限定されず、必要に応じて遠心回数を調整してもよい。第3遠心プロセスを行う過程において、血小板溶解物18を多血小板フィブリンゲル17の中から放出し、同時に、多血小板フィブリンゲル17のゲル部19を遠心力により分離ゲル20の上に圧縮することにより、血小板溶解物18とゲル部19を分離する。
本実施形態において、ステップd)を実行した後、ステップe)を実行する前に、さらに、多血小板フィブリンゲル17に対して押下、押圧、濾過、超音波振動、または融解凍結循環を行い、血小板溶解物18を多血小板フィブリンゲル17から放出させることに役立てることができる。
1つの実施形態において、血小板溶解物18は、TGF−β1、PDGF−BB、PDGF−AB、FGF2、EGF、VEGF、およびVEGFAから選ばれる少なくとも1つの成長因子を含む。TGF−β1の濃度は、1ng/mL〜10000ng/mLであり、PDGF−BBの濃度は、10pg/mL〜500000pg/mLであり、PDGF−ABの濃度は、10pg/mL〜500000pg/mLであり、FGF2の濃度は、1pg/mL〜10000pg/mLであり、EGFの濃度は、1pg/mL〜10000pg/mLであり、VEGFの濃度は、1pg/mL〜10000pg/mLであり、VEGFAの濃度は、0.1pg/mL〜5000pg/mLである。
別の実施形態において、血小板溶解物18は、TGF−β1、PDGF−BB、PDGF−AB、FGF2、EGF、VEGF、およびVEGFAから選ばれる少なくとも1つの成長因子を含む。TGF−β1の濃度は、5ng/mL〜3000ng/mLであり、PDGF−BBの濃度は、50pg/mL〜50000pg/mLであり、PDGF−ABの濃度は、100pg/mL〜50000pg/mLであり、FGF2の濃度は、20pg/mL〜6000pg/mLであり、EGFの濃度は、1.5pg/mL〜2000pg/mLであり、VEGFの濃度は、15pg/mL〜6000pg/mLであり、VEGFAの濃度は、0.2pg/mL〜1500pg/mLである。
本実施形態において、血小板溶解物を調製する全過程において、いかなる抗凝血薬も添加しない。上述した抗凝血薬は、例えば、抗凝血性クエン酸デキストロース溶液A(Anticoagulant Citrate Dextrose Solution, Solution A, ACD-A)、抗凝血性クエン酸デキストロース溶液B(Anticoagulant Citrate Dextrose Solution, Solution B, ACD-B)、抗凝血性クエン酸デキストロース溶液C(Anticoagulant Citrate Dextrose Solution, Solution C, ACD-C)、クエン酸リン酸デキストロース溶液(Citrate-phosphate-dextrose Solution, CPD)、エチレンジアミン四酢酸(Ethylenediaminetetraacetic acid, EDTA)、ヘパリン(Heparin)、クエン酸ナトリウム(Sodium Citrate)、またはその組み合わせである。
本実施形態において、本発明の血小板溶解物を調製する全過程においていずれも抗凝血薬を添加しないため、血小板溶解物を遠心管から取り出して活性化作業を繰り返す別のステップがなく、それにより、プロセス時間を短縮することができる。本実施形態において、血小板溶解物を調製する全プロセス時間は、10分〜60分であるため、従来の血小板溶解物の調製方法よりも明らかに短い。また、本発明の血小板溶解物を調製する全プロセスは、いずれも同じ遠心管内で操作することができるため、汚染を防ぎ、無菌性を確保するという利点がある。
本発明は、雌性妊娠成功率を上げることのできる多血小板血漿および/または多血小板血漿の派生物質を含む医薬組成物を提供する。1つの実施形態において、多血小板血漿の派生物質は、例えば、血小板溶解物である。本実施形態において、多血小板血漿の派生物質は、例えば、上述した血小板溶解物の調製方法により調製された血小板溶解物である。
1つの実施形態において、医薬組成物は、さらに、薬学上受け入れ可能な塩類または担体を含んでもよい。
1つの実施形態において、血小板溶解物は、TGF−β1、PDGF−BB、PDGF−AB、FGF2、EGF、VEGF、およびVEGFAから選ばれる少なくとも1つの成長因子を含む。TGF−β1の濃度は、1ng/mL〜10000ng/mLであり、PDGF−BBの濃度は、10pg/mL〜500000pg/mLであり、PDGF−ABの濃度は、10pg/mL〜500000pg/mLであり、FGF2の濃度は、1pg/mL〜10000pg/mLであり、EGFの濃度は、1pg/mL〜10000pg/mLであり、VEGFの濃度は、1pg/mL〜10000pg/mLであり、VEGFAの濃度は、0.1pg/mL〜5000pg/mLである。
別の実施形態において、血小板溶解物は、TGF−β1、PDGF−BB、PDGF−AB、FGF2、EGF、VEGF、およびVEGFAから選ばれる少なくとも1つの成長因子を含む。TGF−β1の濃度は、5ng/mL〜3000ng/mLであり、PDGF−BBの濃度は、50pg/mL〜50000pg/mLであり、PDGF−ABの濃度は、100pg/mL〜50000pg/mLであり、FGF2の濃度は、20pg/mL〜6000pg/mLであり、EGFの濃度は、1.5pg/mL〜2000pg/mLであり、VEGFの濃度は、15pg/mL〜6000pg/mLであり、VEGFAの濃度は、0.2pg/mL〜1500pg/mLである。
本実施形態において、雌性は、例えば、子宮要因または卵巣要因による不妊症の雌性である。さらに具体的に説明すると、雌性は、例えば、子宮要因または卵巣要因による不妊症の雌性のヒトである。
本実施形態において、医薬組成物は無菌注射溶液に作製することができる。1つの実施形態において、医薬組成物は、例えば、注入により子宮腔内に投与する。1つの実施形態において、人工授精(Intrauterine insemination, IUI)管または胚移植(Embryo Transfer, ET)管を使用して、医薬組成物を注入により子宮腔内に投与することができる。本実施形態において、医薬組成物の投与量は、例えば、0.1mL〜2mLである。
本実施形態において、医薬組成物の投与時間点は、月経周期(menstrual cycle)の卵胞期、排卵期または黄体期、またはホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy, HRT)で薬物を使用する8〜16日であるが、本発明はこれに限定されない。1つの実施形態において、凍結胚移植であるか、新鮮胚移植であるかによって投与の時間点を決定することもできる。1つの実施形態において、ホルモン補充療法におけるホルモンは、例えば、エストラジオール(Estradiol)、プロゲステロン(Progesterone)、または両者を合併して使用する。本実施形態において、医薬組成物の投与の周期は、2〜3日に1回、少なくとも1〜3回である。
本発明の医薬組成物は、雌性妊娠成功率を上げるために使用される。具体的に説明すると、雌性生殖補助医療の成功率を上げるために使用される。1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、雌性の子宮内膜を厚くするのに役立つ。
以下、実験例により本発明を具体的に説明するが、実験例のパラメータとそのデータ結果は、単に本発明の効果を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
[血小板溶解物の調製]
実験例1
まず、被験者から静脈血液10mLを採取し、18Gの注射針で分離ゲルを有する遠心管に新鮮な全血を注入した。遠心管を遠心機の中に入れ、1500gの条件で5分間遠心して、全血を血漿層、バフィコート、赤血球層に分離した。ここで、血漿層は、少量の血小板血漿(Platelet-Poor Plasma, PPP)である。
続いて、18Gの注射針を利用して10mLの針筒に接続し、2mLの血漿層を除去した。遠心管を転倒混和させて、余った血漿層とバフィコートを均一になるまで混合し、多血小板血漿(platelet-rich plasma, PRP)を得た。
そして、同じ遠心管を遠心機の中に入れ、1500gの条件で5分間遠心して、多血小板フィブリン(platelet-rich fibrin, PRF)ゲルを得た。
その後、同じ遠心管を遠心機の中に入れ、1500gの条件で5分間遠心した。上述した遠心条件で遠心を10回繰り返すことによって、遠心管の最上層に位置する血小板溶解物を得た。
比較例1
まず、被験者から静脈血液10mLを採取し、18Gの注射針で抗凝血薬(ACD Solution A, ACD-A)を有する遠心管に新鮮な全血を注入した。遠心管を遠心機の中に入れ、1500gの条件で5分間遠心し、全血を血漿層、バフィコート、赤血球層に分離した。
続いて、血漿層およびバフィコートを取り出して、別の無菌容器内に移動し、塩化カルシウム溶液を加えて均一に混合した。このステップは、血小板を活性化させるためのものである。続いて、融解凍結循環を行い、活性化した溶液を室温で1時間放置し、続いて、-80℃の凍結庫に入れて凍結し、4時間後に取り出すと、成長因子を測定することができる。
[成長因子の測定]
本実施形態において、酵素結合免疫吸着検定法(Enzyme-linked Immuno-Sorbent Assay, ELISA)を使用し、実験例1の多血小板血漿、実験例1と比較例1の血小板溶解物における成長因子TGF−β1、PDGF−AB、PDGF−BB、VEGF、およびVEGFAの濃度を測定した。その結果を表1に記載する。表1の結果を全て<平均値±標準差>で表示し、各成長因子の実験例と比較例の間には、顕著な差があった(P<0.05)。
表1の内容からわかるように、従来の方法で調製した血小板溶解物(すなわち、比較例1)に対し、本発明の血小板溶解物の調製方法で調製した血小板溶解物(すなわち、実験例1)は、比較的高い濃度の成長因子を有する。また、本発明の血小板溶解物の調製方法は、全プロセスにおいていずれも抗凝血薬を添加しないため、血小板溶解物を遠心管から取り出して活性化を繰り返す別の操作がなく、それにより、調製時間を短縮することができる。また、本発明の血小板溶解物を調製する全プロセスは、いずれも同じ遠心管内で操作することができるため、汚染を防ぎ、無菌性を確保するという利点がある
[血小板溶解物の不妊症患者に対する効用]
実験例2
本実験例において、被験者は、平均40歳以上の不妊症の雌性患者10名であり、実験例1で調製した血小板溶解物を本実験例の医薬組成物として使用し、下記の方法で血小板溶解物の被験者妊娠成功率に対する評価を行った。
まず、月経周期10〜12日目に被験者の子宮内膜の初期の厚さを測定した。実験例1の血小板溶解物(0.5〜1mL)を有する注射器を人工授精(Intrauterine insemination, IUI)管に接続し、注入により被験者の子宮腔内に投与した。投与後、被験者は、30分間横になっていなければならない。投与48時間後、注入により2回目の投与を行った。2回目の投与48時間後、被験者の子宮内膜の厚さを測定した。被験者の子宮内膜の厚さが7mmに達すると、胚移植を行うことができる。
続いて、投与後の被験者に対して胚移植を行い、胚移植した後、ホルモン補充療法を組み合わせて、プロゲステロン(Progesterone)およびエストラジオール(Estradiol)を服用させた。服用時間は、2週間であった。その後、被験者の血液中のヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-HCG)数値を測定して、受精卵の着床状態を確認した。被験者の妊娠結果および子宮内膜の厚さは、それぞれ表2および表3に示した通りである。
表2からわかるように、血小板溶解物を注入により被験者の子宮腔内に投与した後、被験者の子宮内膜の厚さが増加した。
一般的に、生殖補助医療の成功率は、僅か30%であるが、年齢が増すにつれ、40歳以上の雌性の生殖補助医療の成功率は、たった7.7%のみになる。表3からわかるように、血小板溶解物を注入により被験者の子宮腔内に投与した後、被験者全体の妊娠成功率は、7.7%から50%に上昇した。
以上のように、本発明の血小板溶解物の調製方法は、全プロセスにおいていずれも抗凝血薬を添加しないため、血小板溶解物を遠心管から取り出して活性化を繰り返す別の操作がなく、それにより、調製時間を短縮することができる。また、本発明の血小板溶解物を調製する全プロセスは、いずれも同じ遠心管内で操作することができるため、汚染を防ぎ、無菌性を確保するという利点がある。
また、本発明の多血小板血漿および/または多血小板血漿の派生物質を含む医薬組成物は、雌性妊娠成功率を明らかに上げることができる。
本発明は、無菌条件下で高濃度の成長因子を有する血小板溶解物を迅速に調製することのできる血小板溶解物の調製方法を提供する。
10 全血
12 第1上層部
13 第2上層部
14 中間部
15 多血小板血漿部
16 下層部
17 多血小板フィブリンゲル
18 血小板溶解物
19 ゲル部
20 分離ゲル
30 遠心管
12 第1上層部
13 第2上層部
14 中間部
15 多血小板血漿部
16 下層部
17 多血小板フィブリンゲル
18 血小板溶解物
19 ゲル部
20 分離ゲル
30 遠心管
Claims (20)
- 分離ゲルを有する遠心管に、採取した全血を入れ、前記分離ゲルの比重が、1.030〜1.093であるステップa)と、
前記全血および前記分離ゲルを有する前記遠心管に対して第1遠心プロセスを行い、前記全血を第1上層部、中間部、および下層部に分離し、前記分離ゲルが、前記中間部と前記下層部の間に存在するステップb)と、
前記第1上層部と前記中間部を混合して、多血小板血漿(platelet-rich plasma, PRP)部を得るステップc)と、
前記多血小板血漿部を凝固させて、多血小板フィブリン(platelet-rich fibrin, PRF)ゲルを得るステップd)と、
前記多血小板フィブリンゲルを分離して、血小板溶解物(platelet lysate, PL)を得るステップe)と、
を含み、前記ステップa)〜前記ステップe)において、抗凝血薬を添加しない血小板溶解物の調製方法。 - 前記ステップc)を実行する前に、さらに、一部の前記第1上層部を除去して、第2上層部を得るステップを含み、前記第1上層部と前記第2上層部の体積比率が、1:0.01〜0.99である請求項1に記載の血小板溶解物の調製方法。
- 前記抗凝血薬が、抗凝血性クエン酸デキストロース溶液A(Anticoagulant Citrate Dextrose Solution, Solution A, ACD-A)、抗凝血性クエン酸デキストロース溶液B(Anticoagulant Citrate Dextrose Solution, Solution B, ACD-B)、抗凝血性クエン酸デキストロース溶液C(Anticoagulant Citrate Dextrose Solution, Solution C, ACD-C)、クエン酸リン酸デキストロース溶液(Citrate-phosphate-dextrose Solution, CPD)、エチレンジアミン四酢酸(Ethylenediaminetetraacetic acid, EDTA)、ヘパリン(Heparin)、クエン酸ナトリウム(Sodium Citrate)、またはその組み合わせを含む請求項1または2に記載の血小板溶解物の調製方法。
- 前記分離ゲルの材料が、ケイ素含有ポリマー、アクリルポリマー、またはポリエステルポリマーを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の血小板溶解物の調製方法。
- 前記第1遠心プロセスの遠心回転速度が、1000g〜4000gであり、遠心時間が、3分〜10分である請求項1〜4のいずれか1項に記載の血小板溶解物の調製方法。
- 前記第1上層部が、血小板を含む血漿層であり、前記中間部が、血小板および白血球を含むバフィコート(buffy coat)であり、前記下層部が、赤血球を含む赤血球層である請求項1〜5のいずれか1項に記載の血小板溶解物の調製方法。
- 前記多血小板血漿部を凝固させるステップが、前記多血小板血漿部に対して第2遠心プロセスを行うステップを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の血小板溶解物の調製方法。
- 前記第2遠心プロセスの遠心回転速度が、1000g〜4000gであり、前記遠心時間が、3分〜10分である請求項7に記載の血小板溶解物の調製方法。
- 前記多血小板フィブリンゲルを分離するステップが、前記多血小板フィブリンゲルに対して第3遠心プロセスを行うステップを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の血小板溶解物の調製方法。
- 前記第3遠心プロセスが、
前記多血小板フィブリンゲルに対して遠心を1回行い、遠心回転速度が、1000g〜4000gであり、遠心時間が、3分〜45分であるステップ、あるいは、
前記多血小板フィブリンゲルに対して遠心を複数回行い、遠心回転速度が、1000g〜4000gであり、毎回の遠心時間が、3分〜15分であるステップを含む請求項9に記載の血小板溶解物の調製方法。 - 前記血小板溶解物を調製する全プロセス時間が、10分〜60分である請求項1〜10のいずれか1項に記載の血小板溶解物の調製方法。
- 前記ステップe)の前に、さらに、前記多血小板フィブリンゲルに対して押下、押圧、濾過、超音波振動、または融解凍結循環を行い、前記血小板溶解物を前記多血小板フィブリンゲルから放出するステップを含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の血小板溶解物の調製方法。
- 前記血小板溶解物が、TGF−β1、PDGF−BB、PDGF−AB、FGF2、EGF、VEGF、およびVEGFAから選ばれる少なくとも1つの成長因子を含み、前記TGF−β1の濃度が、1ng/mL〜10000ng/mLであり、前記PDGF−BBの濃度が、10pg/mL〜500000pg/mLであり、前記PDGF−ABの濃度が、10pg/mL〜500000pg/mLであり、前記FGF2の濃度が、1pg/mL〜10000pg/mLであり、前記EGFの濃度が、1pg/mL〜10000pg/mLであり、前記VEGFの濃度が、1pg/mL〜10000pg/mLであり、前記VEGFAの濃度が、0.1pg/mL〜5000pg/mLである請求項1〜12のいずれか1項に記載の血小板溶解物の調製方法。
- 多血小板血漿および/または多血小板血漿の派生物質を含む雌性妊娠成功率を上げる薬物を調製するための医薬組成物の用途。
- 前記多血小板血漿の派生物質が、血小板溶解物を含む請求項14に記載の雌性妊娠成功率を上げる薬物を調製するための医薬組成物の用途。
- 前記医薬組成物は、注入により子宮腔内に投与するものである請求項14または15に記載の雌性妊娠成功率を上げる薬物を調製するための医薬組成物の用途。
- 前記医薬組成物の投与量が、0.1mL〜2mLである請求項14〜16のいずれか1項に記載の雌性妊娠成功率を上げる薬物を調製するための医薬組成物の用途。
- 前記医薬組成物の投与時間点が、月経周期(menstrual cycle)の卵胞期、排卵期、黄体期、またはホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy, HRT)で薬物を使用する8〜16日である請求項14〜17のいずれか1項に記載の雌性妊娠成功率を上げる薬物を調製するための医薬組成物の用途。
- 前記医薬組成物の投与の周期が、2〜3日に1回、少なくとも1〜3回である請求項14〜18のいずれか1項に記載の雌性妊娠成功率を上げる薬物を調製するための医薬組成物の用途。
- 前記雌性が、子宮要因または卵巣要因による不妊症の雌性である請求項14〜19のいずれか1項に記載の雌性妊娠成功率を上げる薬物を調製するための医薬組成物の用途。
Applications Claiming Priority (2)
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TW109100372 | 2020-01-06 | ||
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JP2021000115A Pending JP2021109875A (ja) | 2020-01-06 | 2021-01-04 | 血小板溶解物の調製方法および雌性妊娠率を上げるための用途 |
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