JP2021107575A - 軟磁性合金粉末、磁気コア、磁性部品および電子機器 - Google Patents

軟磁性合金粉末、磁気コア、磁性部品および電子機器 Download PDF

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暁斗 長谷川
Akito Hasegawa
暁斗 長谷川
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Kazuhiro Yoshitome
和宏 吉留
裕之 松元
Hiroyuki Matsumoto
裕之 松元
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Hironobu Kumaoka
広修 熊岡
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Abstract

【課題】粒径を大きく変化させずに透磁率を向上させた磁気コアを得ることができる軟磁性合金粉末の提供。【解決手段】組成式(Co(1−(α+β))X1αX2β)(1−(a+b+c+d+e+f))MaBbPcSidCreSf(原子数比)からなる主成分を有する軟磁性合金粉末であって、X1はFeおよびNiからなる群から選択される1つ以上、X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Bi,N,O,Cおよび希土類元素からなる群より選択される1つ以上、MはNb,Hf,Zr,Ta,Mo,W,TiおよびVからなる群から選択される1つ以上であり、a〜f、α、βが特定の範囲内であり、ガラス遷移点Tgおよび融点Tmを有し、900℃≦Tm≦1200℃である軟磁性合金粉末。【選択図】図1

Description

本発明は、軟磁性合金粉末、磁気コア、磁性部品および電子機器に関する。
近年、電子・情報・通信機器等、特に電子機器において低消費電力化および高効率化が求められている。さらに、低炭素化社会へ向け、上記の要求が一層強くなっている。そのため、電子・情報・通信機器等、特に電子機器の電源回路にも、エネルギー損失の低減や電源効率の向上が求められている。
ここで、エネルギー損失の低減や電源効率の向上のためには、軟磁気特性に優れ、かつ、磁気コアに用いる場合に充填率が向上させられる軟磁性合金粉末を得ることが求められている。
特許文献1には、ワーデルの球形度を改善した軟磁性金属粉末が記載されている。また、球形度を改善することで優れたパワーインダクタを製造できる旨、記載されている。
特許文献2には、Co系の非晶質合金薄帯が記載されている。そして、Sの含有量を30ppm以下かつAlの含有量を40ppm以下とすることで透磁率および角形比が向上する旨、記載されている。
特開2016−25352号公報 特開平3−173750号公報
本発明は、粒径を大きく変化させずに透磁率を向上させた磁気コアを得ることができる軟磁性合金粉末を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の軟磁性合金粉末は、
組成式(Co(1−(α+β))X1αX2β(1−(a+b+c+d+e+f))SiCr(原子数比)からなる主成分を有する軟磁性合金粉末であって、
X1はFeおよびNiからなる群から選択される1つ以上、
X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Bi,N,O,Cおよび希土類元素からなる群より選択される1つ以上、
MはNb,Hf,Zr,Ta,Mo,W,TiおよびVからなる群から選択される1つ以上であり、
0<a≦0.140
0.160<b≦0.250
0≦c≦0.200
0≦d≦0.250
0≦e≦0.030
0≦f≦0.010
0.160<b+c+d+e+f≦0.430
0.500<1−(a+b+c+d+e+f)<0.840
α≧0
β≧0
0≦α+β<0.50
であり、
前記軟磁性合金粉末はガラス遷移点Tgおよび融点Tmを有し、
900℃≦Tm≦1200℃である。
本発明に係る軟磁性合金粉末は、上記の組成を有し、ガラス遷移点および上記の融点を有することにより、軟磁性合金粉末自体の透磁率を好適にし、さらに、粉末粒子の球形度が高くなり異形粒子の割合が小さくなる。その結果、当該軟磁性合金粉末の粒径を変化させずに、当該軟磁性合金粉末を用いた磁気コアの透磁率を向上させることができる。
本発明に係る軟磁性合金粉末に含まれる粉末粒子の平均円形度が0.93以上であってもよく、前記粉末粒子の円形度が低いほうから0.50までの累積個数割合が2.0%以下であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金粉末に含まれる粉末粒子の平均円形度が0.95以上であってもよく、かつ、前記粉末粒子の円形度が低いほうから0.50までの累積個数割合が1.5%以下であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金粉末はCoの含有割合をBの含有割合で割った値が2.000より大きく5.000より小さくてもよい。
本発明に係る軟磁性合金粉末は非晶質を有してもよい。
本発明に係る軟磁性合金粉末はナノ結晶を有してもよい。
本発明に係る磁気コアは上記の軟磁性合金粉末を含む。
本発明に係る磁性部品は上記の軟磁性合金粉末を含む。
本発明に係る電子機器は上記の軟磁性合金粉末を含む。
球形度が高い粉末粒子のモフォロギG3による観察結果である。 球形度が低い粉末粒子のモフォロギG3による観察結果である。 円形度と累積個数割合との関係を示すグラフである。 図3の円形度0.4〜0.6の部分を示すグラフである。 融点Tmを示すグラフである。 ガラス遷移点Tgおよび結晶化開始点Txを示すグラフである。 図6の温度450℃〜600℃の部分を示すグラフである。 金属粉末製造装置の模式図である。 図8Aの要部拡大模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の軟磁性合金粉末は、組成式(Co(1−(α+β))X1αX2β(1−(a+b+c+d+e+f))SiCr(原子数比)からなる主成分を有する軟磁性合金粉末であって、
X1はFeおよびNiからなる群から選択される1つ以上、
X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Bi,N,O,Cおよび希土類元素からなる群より選択される1つ以上、
MはNb,Hf,Zr,Ta,Mo,W,TiおよびVからなる群から選択される1つ以上であり、
0<a≦0.140
0.160<b≦0.250
0≦c≦0.200
0≦d≦0.250
0≦e≦0.030
0≦f≦0.010
0.160<b+c+d+e+f≦0.430
0.500<1−(a+b+c+d+e+f)<0.840
α≧0
β≧0
0≦α+β<0.50
であり、
前記軟磁性合金粉末はガラス遷移点Tgおよび融点Tmを有し、
900℃≦Tm≦1200℃であることを特徴とする。
一般的に、Coを多く含む組成を有する軟磁性合金粉末は、Feを多く含む組成を有する軟磁性合金粉末と比較して比透磁率が高くなる。また、Coを多く含む組成を有する軟磁性合金粉末は、耐食性および電気抵抗が高くなりやすく、誘電損失が低くなりやすい。さらに、Coを多く含む組成を有する軟磁性合金粉末はFeを多く含む組成を有する軟磁性合金粉末よりも融点が低い。その結果、後述するガスアトマイズなどのアトマイズ法で軟磁性合金粉末を作製する場合にアトマイズ温度を低下させやすい。なお、アトマイズ前の軟磁性合金からなる溶湯の融点と、アトマイズにより得られる軟磁性合金粉末の融点とは、通常は同一である。
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、上記の組成を有し、ガラス遷移点および上記の融点を有することにより、粉末粒子の粒子形状を良好にすることができる。具体的には、上記の組成を有し、ガラス遷移点および上記の融点を有することにより、平均球形度の高い粉末粒子からなる軟磁性合金粉末を得ることができる。さらに、円形度が低い粒子形状の粉末粒子が少ない軟磁性合金粉末、すなわち、異形粒子の割合が小さい軟磁性合金粉末を得ることができる。
そして、本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、上記の粒子形状の粉末粒子からなることにより、当該軟磁性合金粉末を用いた磁気コア等の充填率を向上させることができ、磁気コア等の比透磁率等の各種特性を向上させることができる。以下、粉末粒子のことを単に粒子という場合がある。
また、本実施形態の軟磁性合金粉末を熱処理する場合には、結晶粒径が50nm以下のナノ結晶を析出しやすい。言いかえれば、本実施形態の軟磁性合金粉末は、ナノ結晶を析出させた軟磁性合金粉末の出発原料としやすい。ナノ結晶を含むか否か、および非晶質を含むか否かは、XRDにより確認することができる。
なお、本実施形態の軟磁性合金粉末がナノ結晶を含む場合には、個々の粒子ごとに多数のナノ結晶を含む。すなわち、後述する軟磁性合金粉末の粒子径とナノ結晶の結晶粒径とは異なる。
以下、本実施形態に係る軟磁性合金粉末の各成分について詳細に説明する。
MはNb,Hf,Zr,Ta,Mo,W,TiおよびVからなる群から選択される1つ以上である。
Mの含有量(a)は0<a≦0.140を満たす。0.001≦a≦0.140を満たしてもよい。さらに、0.003≦a≦0.140を満たしていてもよく、0.040≦a≦0.100を満たしていてもよい。Mを含まない場合には、軟磁性合金粉末がガラス遷移点Tgを有しにくくなる。その結果、粒子の円形度が低下しやすくなり、比透磁率が低下する。aが大きすぎる場合には、軟磁性合金粉末の融点Tmが低下しやすくなる。その結果、粒子の円形度が低下しやすくなり、軟磁性合金粉末における異形粒子の割合が増加し、比透磁率が低下する。さらに、飽和磁束密度が低下しやすくなる。なお、保磁力を低下させやすくする観点からは0.010≦a≦0.140であることが好ましい。
Bの含有量(b)は0.160<b≦0.250を満たす。0.180≦b≦0.250を満たしてもよい。bが小さすぎる場合には、軟磁性合金の融点Tmが高くなりすぎて溶湯を噴射できず軟磁性合金粉末が製造できなくなる場合がある。bが大きすぎる場合には、融点Tmが低くなりすぎ、軟磁性合金粉末における異形粒子の割合が多くなり、保磁力が増大し、比透磁率が低下する。
Pの含有量(c)は0≦c≦0.200を満たす。すなわち、Pを含有しなくてもよい。より好ましくは0≦c≦0.150を満たし、さらに好ましくは、0.010≦c≦0.050を満たす。cが大きすぎる場合には、軟磁性合金粉末の融点Tmが低くなりすぎ、軟磁性合金粉末における異形粒子の割合が多くなり、保磁力が増大し、比透磁率が低下する。
Siの含有量(d)は0≦d≦0.250を満たす。すなわち、Siは含有しなくてもよい。より好ましくは0≦d≦0.200を満たす。dが大きすぎる場合には、軟磁性合金粉末の融点Tmが低くなりすぎ、円形度が低下し、軟磁性合金粉末における異形粒子の割合が多くなり、保磁力が増大し、比透磁率が低下する。
Crの含有量(e)は0≦e≦0.030を満たす。すなわち、Crは含有しなくてもよい。より好まくは0.001≦e≦0.010を満たす。Crを含有することで軟磁性合金粉末の耐食性が増加しやすくなる。eが大きすぎる場合には、軟磁性合金粉末における異形粒子の割合が多くなり、保磁力が増大し、比透磁率が低下する。
Sの含有量(f)は0≦f≦0.010を満たす。すなわち、Sは含有しなくてもよい。fが大きいほど軟磁性合金粉末における異形粒子の割合が小さくなるが、fが大きすぎると保磁力が増大し、比透磁率が低下する。
また、本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、0.160<b+c+d+e+f≦0.430を満たす。0.190≦b+c+d+e+f≦0.430を満たしてもよい。b+c+d+e+fが大きすぎる場合には比透磁率の高い軟磁性合金粉末を得ることができない。
さらに、本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、0.500<1−(a+b+c+d+e+f)<0.840を満たす。0.550≦1−(a+b+c+d+e+f)≦0.800を満たしてもよい。1−(a+b+c+d+e+f)が小さすぎる場合にも大きすぎる場合にも比透磁率の高い軟磁性合金粉末を得ることができない。
また、本実施形態の軟磁性合金粉末においては、Coの一部をX1および/またはX2で置換してもよい。
X1はFeおよびNiからなる群から選択される1つ以上である。X1の含有量に関してはα=0でもよい。すなわち、X1は含有しなくてもよい。また、X1の原子数は組成全体の原子数を100at%として40at%以下であることが好ましい。すなわち、0≦α{1−(a+b+c+d+e+f)}≦0.400を満たすことが好ましい。また、0≦α{1−(a+b+c+d+e+f)}≦0.100を満たすことがさらに好ましい。また、Feを全く含まない場合よりFeをわずかに含む場合の方が、保磁力が低下しやすく、比透磁率が高くなりやすくなる。特にCo/Feが原子数比で5以上20以下である場合に保磁力が低下しやすく、比透磁率が高くなりやすくなる。
X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Bi,N,O,Cおよび希土類元素からなる群より選択される1つ以上である。X2の含有量に関してはβ=0でもよい。すなわち、X2は含有しなくてもよい。また、X2の原子数は組成全体の原子数を100at%として5.0at%以下であることが好ましい。すなわち、0≦β{1−(a+b+c+d+e+f+g)}≦0.050を満たすことが好ましい。
CoをX1および/またはX2に置換する置換量の範囲としては、原子数ベースでCoの半分未満とする。すなわち、0≦α+β<0.50とする。0≦α+β≦0.40であってもよい。α+βが大きすぎる場合、特にα+β≧0.50の場合には、軟磁性合金の融点が高くなりすぎて溶湯を噴射できず軟磁性合金粉末が製造できなくなる場合がある。
なお、軟磁性合金の融点が高い場合でもアトマイズ温度を上げることで溶湯を噴射させることは可能である。しかし、アトマイズ温度が高い場合には、軟磁性合金粉末の円形度が低下しやすく、軟磁性合金粉末における異形粒子の割合が増加しやすく、保磁力が上昇しやすく、比透磁率が低下しやすい。
また、Coの含有割合をBの含有割合で割った値(以下、Co/Bと記載する場合がある)が2.000より大きく5.250より小さくてもよく、2.000より大きく5.000より小さくてもよく、2.340以上4.000以下であってもよい。Co/Bが上記の範囲内であることにより、後述する軟磁性合金粉末の融点Tmが低くなりやすくなり、アトマイズ温度を低下させやすくなる。
なお、本実施形態の軟磁性合金粉末は、上記の主成分に含まれる元素以外の元素を不可避的不純物として比透磁率等の特性に大きな影響を与えない範囲で含んでいてもよい。例えば、軟磁性合金粉末100質量%に対して0.1質量%以下、含んでいてもよい。
以下、本実施形態の軟磁性合金粉末における粒子形状および粒子径の評価方法について説明する。
軟磁性合金粉末の球形度の評価は、軟磁性合金粉末の粒子形状を投影した図形の円形度を評価することにより行ってもよい。
本実施形態では、粒子形状についてモフォロギG3(マルバーン・パナティカル社)を用いて評価する。モフォロギG3はエアーにより粉末を分散させ、個々の粒子形状を投影し、評価することができる装置である。光学顕微鏡またはレーザ顕微鏡で粒子径が概ね0.5μm〜数mmの範囲内である粒子形状を評価することができる。具体的には、図1、図2に示す粒子形状測定結果1、2からもわかるように多数の粒子形状を一度に投影し評価することができる。しかし、実際には図1、図2に示す粒子形状測定結果1、2に記載されているよりもはるかに多数の粒子形状を一度に投影し評価することができる。なお、図1は粒子形状が良好であり球形度が高い粉末粒子の投影結果であり、図2は粒子形状が良好ではなく球形度が低い粉末粒子の投影結果である。
モフォロギG3は多数の粒子の投影図を一度に作製し評価することができるため、従来のSEM観察などでの評価方法と比べて短時間で多数の粒子の形状を評価することができる。例えば後述する実施例では20000個の粒子について投影図を作製し、個々の粒子の円形度を自動的に算出し、平均円形度を個数基準で算出している。これに対し、従来のSEM観察では、SEM画像を用いて1個1個の粒子について円形度を計算するため、短時間で多数の粒子の形状を評価することが難しい。
粒子の円形度は投影図における面積をS、投影図における周囲の長さをLとして、2(πS)1/2/Lで表される。円の円形度が1であり、粒子の円形度が1に近いほど、粒子の球形度が高くなる。
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、上記の組成を有することにより、平均円形度を高くすることができ、具体的には、0.93以上とすることができる。平均円形度は、好ましくは0.95以上である。
異形粒子の割合については、下記の方法で評価する。
円形度を測定した20000個の粒子について、円形度が低いほうからの累積個数割合(累積度数)を計算する。そして、円形度が低いほうから0.50までの累積個数割合が小さいほど、異形粒子の割合が小さいとする。
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、上記の組成を有することにより、融点Tmを900℃≦Tm≦1200℃の範囲にすることができ、異形粒子の割合を小さくすることができる。そして、円形度が低いほうから0.50までの累積個数割合を、具体的には、2.5%以下とすることができる。円形度が低いほうから0.50までの累積個数割合は、好ましくは1.5%以下である。なお、円形度が低いほうから0.50までの累積個数割合には特に下限はない。例えば0.05%以上であってもよい。
円形度を横軸とし、累積個数割合を縦軸としたグラフの例を図3および図4に示す。実線の場合には、円形度が小さいほうから0.50までの累積個数割合が1.5%以下である。これに対し、点線の場合には、円形度が低いほうから0.50までの累積個数割合が1.5%を上回り2.0%以下である。すなわち、実線の場合は点線の場合よりも異形粒子の割合が小さいと評価できる。
粒子径の評価方法について以下に示す。
本実施形態および後述する実施例では、体積基準で粒子径を評価する。体積基準での平均粒子径(D50)の測定方法には特に制限はない。例えば、レーザ回折式の粒度分布測定装置を用いて体積基準での平均粒子径(D50)を求めることができる。
本実施形態では、軟磁性金属粉末の平均粒子径には特に制限はない。例えば5μm以上50μm以下であってもよい。
以下、ガラス遷移点Tgおよび融点Tm等について図面を用いて説明する。
図5では、実線が本実施形態の軟磁性合金粉末における示差走査熱量計(DSC)による熱物性測定の結果(以下、単にDSC測定結果とも呼ぶ)の例であり、点線が非晶質からなるFe基軟磁性合金粉末におけるDSC測定結果の例である。昇温速度は一定である。一般的には、軟磁性合金が溶融を始める温度(図5ではTm1)を融点とする場合、および、溶融が完了する温度(図5ではTm2)を融点とする場合がある。本願では、溶融が完了する温度(図5ではTm2)を融点Tmとする。溶融が完了する温度のほうが、後述するガスアトマイズなどのアトマイズ法を実施する際のアトマイズ温度や溶融金属の温度に与える影響が大きく、アトマイズ法により得られる軟磁性合金粉末の特性に与える影響が大きいためである。
また、非晶質を含む本実施形態の軟磁性合金粉末の温度を上昇させていくと、特定の温度においてガラス遷移反応(吸熱反応)が起こる。この温度がガラス遷移点Tgである。さらに高温になると、ある温度で結晶化反応(発熱反応)が起こる。この温度が結晶化開始点Txである。この場合に、過冷却液体領域ΔTはTx−Tgで表される。
過冷却液体領域は非晶質の安定化に関係しており、過冷却液体領域が広くΔTが大きいほど、非晶質形成能が高い。これに対し、過冷却液体領域が狭いと、非晶質形成能が低い。ΔTは20℃以上であることが好ましい。
図6、図7では、実線が本実施形態の軟磁性合金粉末におけるDSCによる熱物性測定結果の例であり、点線が非晶質からなるFe基軟磁性合金粉末におけるDSC測定結果の例である。昇温速度は一定である。本実施形態の軟磁性合金粉末ではガラス遷移点Tgおよび結晶化開始点Txを有する。これに対し、非晶質からなるFe基軟磁性合金粉末はガラス遷移点Tgを有さない。なお、非晶質からなるFe基軟磁性合金粉末の結晶化開始点は図示していない。
本実施形態の軟磁性合金粉末は非晶質からなるFe基軟磁性合金粉末と比較してTmが低く、かつ、Tgを有するという特徴がある。これにより、アトマイズ温度を低くすることができる。そして、軟磁性合金粉末の保磁力を低下させ、軟磁性合金粉末自身の比透磁率を向上させ、軟磁性合金粉末の平均円形度を高くし、軟磁性合金粉末における異形粒子の割合を低くすることができる。そして、当該軟磁性合金粉末を用いた磁気コアの充填率を向上させ、比透磁率を向上させることができる。
以下、本実施形態の軟磁性合金粉末の製造方法について説明する。
本実施形態の軟磁性合金粉末の製造方法としては、例えばガスアトマイズ法が挙げられる。
以下、ガスアトマイズ法による軟磁性合金粉末の製造方法について記載する。
本発明者らは、アトマイズ装置として、図8Aおよび図8Bに示すアトマイズ装置を用いる場合には、粒子形状が良好な軟磁性金属粉末を得やすくなることを見出した。
図8Aに示すように、アトマイズ装置10は、溶融金属供給部20と、金属供給部20の鉛直方向の下方に配置してある冷却部30とを有する。図面において、鉛直方向は、Z軸に沿う方向である。
溶融金属供給部20は、溶融金属21を収容する耐熱性容器22を有する。耐熱性容器22において、最終的に得られる軟磁性合金粉末の組成となるように秤量された各金属元素の原料が、加熱用コイル24により溶解され、溶融金属21となる。溶解時の温度、すなわち溶融金属21の温度は、各金属元素の原料の融点や溶融金属21の融点(上記のTm)を考慮して決定すればよいが、たとえば1200〜1600℃とすることができる。
溶融金属21は、吐出口23から冷却部30に向けて、滴下溶融金属21aとして吐出される。吐出された滴下溶融金属21aに向けて、ガス噴射ノズル26から高圧ガスが噴射され、滴下溶融金属21aは、多数の溶滴となり、ガスの流れに沿って筒体32の内面に向けて運ばれる。
ガス噴射ノズル26から噴射されるガスとしては、不活性ガスまたは還元性ガスが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを用いることができる。還元性ガスとしては、例えば、アンモニア分解ガスなどを用いることができる。しかし、溶融金属21が酸化しにくい金属である場合には、ガス噴射ノズル26から噴射されるガスが空気であってもよい。
筒体32の内面に向けて運ばれた滴下溶融金属21aは、筒体32の内部で逆円錐状に形成してある冷却液流れ50に衝突し、さらに分断され微細化されるとともに冷却固化され、固体状の合金粉末となる。筒体32の軸心Oは、鉛直線Zに対して所定角度θ1で傾斜してある。所定角度θ1としては、特に限定されないが、好ましくは、0〜45度である。このような角度範囲とすることで、吐出口23からの滴下溶融金属21aを、筒体32の内部で逆円錐状に形成してある冷却液流れ50に向けて吐出させ易くなる。
筒体32の軸心Oに沿って下方には、排出部34が設けられ、冷却液流れ50に含まれる合金粉末を冷却液と共に、外部に排出可能になっている。冷却液と共に排出された合金粉末は、外部の貯留槽などで、冷却液と分離されて取り出される。なお、冷却液としては、特に限定されないが、冷却水が用いられる。
ここで、冷却水の水圧を調整することにより、最終的に得られる軟磁性合金粉末の平均円形度を調整することができる。水圧が低いほど最終的に得られる軟磁性合金粉末の平均円形度が高くなるが、水圧が低すぎると逆円錐状に形成してある冷却水流れ50が得られない。ただし、異形粒子の割合は水圧を変化させてもあまり変化しない。なお、水圧の調整方法には特に制限はない。冷却水の供給方法により適宜決定すればよい。例えば冷却水をポンプで供給する場合にはポンプ圧を調整することで冷却水の水圧を調整することができる。
本実施形態では、滴下溶融金属21aが逆円錐状に形成してある冷却液流れ50に衝突するので、冷却液流れが筒体32の内面33に沿っている場合に比べて、滴下溶融金属21aの溶滴の飛行時間が短縮される。飛行時間が短縮されると、急冷効果が促進され、得られる軟磁性合金粉末の非晶質化率Xが上昇する。さらに、平均円形度が高くなりやすくなる。また、飛行時間が短縮されると、滴下溶融金属21aの溶滴が酸化されにくいので、得られる軟磁性合金粉末の微細化も促進されると共に軟磁性合金粉末の品質も向上する。
本実施形態では、筒体32の内部で、冷却液流れを逆円錐状に形成するために、冷却液を筒体32の内部に導入するための冷却液導入部(冷却液導出部)36における冷却液の流れを制御している。図8Bに、冷却液導入部36の構成を示す。
図8Bに示すように、枠体38により、筒体32の径方向の外側に位置する外側部(外側空間部)44と、筒体32の径方向の内側に位置する内側部(内側空間部)46とが規定される。外側部44と内側部46とは、仕切部40で仕切られ、仕切部40の軸芯O方向の上部に形成してある通路部42で、外側部44と内側部46とは、連絡しており、冷却液が流通可能になっている。
外側部44には、単一または複数のノズル37が接続してあり、ノズル37から冷却液が外側部44に入り込むようになっている。また、内側部46の軸芯O方向の下方には、冷却液吐出部52が形成してあり、そこから内側部46内の冷却液が筒体32の内部に吐出(導出)されるようになっている。
枠体38の外周面は、内側部46内の冷却液の流れを案内する流路内周面38bとなっており、枠体38の下端38aには、枠体38の流路内周面38bから連続し、半径方向の外側に突出している外方凸部38a1が形成してある。したがって、外方凸部38a1の先端と筒体32の内面33との間のリング状の隙間が冷却液吐出部52となる。外方凸部38a1の流路側上面には、流路偏向面62が形成してある。
図8Bに示すように、外方凸部38a1により、冷却液吐出部52の径方向幅D1は、内側部46の主要部における径方向幅D2よりも狭くなっている。D1がD2よりも狭いことにより、内側部46の内部を流路内周面38bに沿って軸芯Oの下方に下る冷却液は、次に、枠体38の流路偏向面62に沿って流れて筒体32の内面33に衝突して反射する。その結果、図8Aに示すように、冷却液は、冷却液吐出部52から筒体32の内部に逆円錐状に吐出され、冷却液流れ50を形成する。なお、D1=D2である場合には、冷却液吐出部52から吐出される冷却液は、筒体32の内面33に沿って冷却液流れを形成する。
D1/D2は、好ましくは2/3以下であり、さらに好ましくは1/2以下であり、最も好ましくは1/10以上である。
なお、冷却液吐出部52から流出する冷却液流れ50は、冷却液吐出部52から軸芯Oに向けて直進する逆円錐流れであるが、渦巻き状の逆円錐流れであってもよい。
また、ガス噴射温度、ガス噴射圧、等は、目的とする軟磁性合金粉末の粒子径により適宜設定すればよい。ガス噴射温度は、例えば室温以上200℃以下であってもよい。ガス噴射圧は、例えば0.5MPa以上19MPa以下であってもよい。
以上の方法により、本実施形態に係る軟磁性合金粉末が得られる。粒子形状および粒子径を好適に制御するためには、軟磁性合金粉末が非晶質からなり結晶(ナノ結晶)を含まないことが好ましい。
上記のガスアトマイズ法により得られた非晶質からなる軟磁性合金粉末に対して熱処理を行うことが好ましい。例えば、350〜575℃で0.1〜2時間、熱処理を行うことで、各粉体同士が焼結し粉体が粗大化することを防ぎつつ元素の拡散を促し、熱力学的平衡状態に短時間で到達させることができ、歪や応力を除去することができる。なお、この時点でナノ結晶が析出してもよい。
本実施形態に係る軟磁性合金粉末の用途には特に制限はなく、高比透磁率が求められる用途に好適に用いられる。例えば、磁気コアが挙げられる。特にパワーインダクタ用の磁気コアとして好適に用いることができる。また、軟磁性合金粉末を用いた磁性部品、例えば薄膜インダクタ、磁気ヘッドにも好適に用いることができる。さらに、当該軟磁性合金粉末を用いた磁気コアや磁性部品は電子機器に好適に用いることができる。
なお、軟磁性合金粉末の平均粒子径が小さいほど、高周波における損失を低減させることができる。このため、平均粒子径が小さい軟磁性合金粉末は、特に高周波用の部品に好適に用いられる。また、軟磁性合金粉末の平均粒子径が大きいほど、磁気コアの透磁率を向上させやすい。このため、平均粒子径が大きい軟磁性合金粉末は高透磁率が求められる部品に好適に用いられる。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
(実験例1)
表1に示す組成の母合金が得られるように各種材料のインゴットを準備し、秤量した。そして、ガスアトマイズ装置内に配置されたルツボに収容した。
次に、アトマイズ装置10内に配置された耐熱性容器22に母合金を収容した。続いて、筒体32内を真空引きした後、耐熱性容器22外部に設けた加熱用コイル24を用いて、耐熱性容器22を高周波誘導により加熱し、耐熱性容器22中の原料金属を溶融、混合して溶融金属(溶湯)を得た。
得られた溶湯を冷却部30の筐体32内に表1に記載のアトマイズ温度で噴射して、アルゴンガスを噴射ガス圧7MPaで噴射することにより、多数の溶滴とした。溶滴は、ポンプ圧10MPaで供給された冷却水により形成された逆円錐状の冷却水流れに衝突して、微細な粉末となり、その後回収された。ただし、表1の試料No.3、4はアトマイズ温度が低すぎて溶湯を噴射することができなかった。
なお、図8A、図8Bに示すアトマイズ装置10において、筒体32の内面の内径は300mm、D1/D2は1/2、角度θ1は20度であった。
さらに、実験例1では、475℃で60分、熱処理を行った。また、母合金の組成と軟磁性合金粉末の組成とが概ね一致していることをICP分析により確認した。
得られた各軟磁性合金粉末が非晶質を含むのか、ナノ結晶を含むのかを確認した。XRDを用いてナノ結晶起因のピークの有無を確認した。非晶質を含む場合には微細構造欄に非晶質と記載し、非晶質およびナノ結晶を含む場合には、非晶質+ナノ結晶と記載した。結果を表1に示す。
得られた各軟磁性合金粉末における粉末粒子の形状を評価した。具体的には、20000個の粒子の円形度を測定し、個数基準での平均円形度および円形度が低いほうから0.50までの累積個数割合を算出した。結果を表1に示す。さらに、各実施例および比較例について、累積個数割合が2.0%以下である場合に異形粒子が少なく、累積個数割合が1.5%以下である場合に異形粒子が特に少ないとした。また各実施例および比較例について体積基準での平均粒子径(D50)が約25μmとなっていることをレーザ回折式の粒度分布測定装置(HELOS&RODOS(Sympatec社))を用いて確認した。
得られた各軟磁性合金粉末に対して(STA449F3(NETZSCH社))を用いてDSC測定を行い、Tgの有無を確認した。さらに、TmおよびΔTの測定を行った。結果を表1に示す。
得られた各軟磁性合金粉末の保磁力Hcを(K−HC1000型(東北特殊鋼社))を用いて測定した。結果を表1に示す。Hcには特に制限はない。Hcは0.50Oe以下であってもよい。Hcは0.20Oe以下であることが好ましい。
次に、各軟磁性合金粉末からトロイダルコアを作製した。具体的には、各軟磁性合金粉末に対して絶縁バインダとなるフェノール樹脂量が全体の3質量%になるよう混合し、攪拌機として一般的なプラネタリーミキサーを用いて500μm程度の造粒粉となるように造粒した。次に、得られた造粒粉を面圧4ton/cm(392MPa)で成形し、外形13mmφ、内径8mmφ、高さ6mmのトロイダル形状の成形体を作製した。得られた成形体を150℃で硬化させ、トロイダルコアを作製した。
そして、トロイダルコアにUEW線を巻き線し、4284A PRECISION LCR METER(ヒューレットパッカード)を用いて100kHzでμ(比透磁率)を測定した。結果を表1に示す。なお、比透磁率μは30以上である場合を良好とした。
Figure 2021107575
表1より、非晶質からなるFe基軟磁性合金である試料No.1〜4、1aはTmが高いため、噴射に必要なアトマイズ温度が1500℃以上と高かった。すなわち、軟磁性合金粉末を作製可能なアトマイズ温度の幅が狭かった。さらに、得られた軟磁性合金粉末がTgを有さなかった。そのため、軟磁性合金粉末の保磁力が高くなり、円形度が低くなり、異形粒子が多かった。さらに、軟磁性合金粉末を用いて作製したトロイダルコアの比透磁率μが低くなった。
これに対し、Coを多く含む組成である試料No.5〜8、5aはTmが低いため、噴射に必要なアトマイズ温度が低く、アトマイズ温度1300℃で噴射できた。すなわち、軟磁性合金粉末を作製可能なアトマイズ温度の幅が広かった。さらに、得られた軟磁性合金粉末がTgを有した。そのため、軟磁性合金粉末の保磁力が低くなり、円形度が高くなり、異形粒子が少なかった。さらに、軟磁性合金粉末を用いて作製したトロイダルコアの比透磁率μが高くなった。
(実験例2)
実験例2では、冷却水を供給するポンプ圧を試料No.1から変化させた点以外は実験例1に記載した条件で試料No.9、10の軟磁性合金粉末およびトロイダルコアを作製した。結果を表2に示す。
Figure 2021107575
表2より、ポンプ圧を低下させることで軟磁性合金粉末の粒子の平均円形度が向上した。しかし、累積個数割合の変化は小さく、異形粒子の割合の変化も小さかった。試料No.9、10は非晶質からなるFe基軟磁性合金であるため、Tmが高かった。さらに、得られた軟磁性合金粉末がTgを有さなかった。そのため、軟磁性合金粉末の保磁力が高くなり、異形粒子が多かった。さらに、軟磁性合金粉末を用いて作製したトロイダルコアの比透磁率μが低くなった。
(実験例3)
実験例3では、試料No.8からCoの一部をFeに置換させた点以外は実験例1に記載した条件で試料No.9〜16の軟磁性合金粉末およびトロイダルコアを作製した。結果を表3に示す。
さらに、組成を変化させた点以外は試料番号8と同条件で試料番号8a〜8eの軟磁性合金粉末およびトロイダルコアを作製した。結果を表3Aに示す。
Figure 2021107575
Figure 2021107575
表3より、所定の範囲内の組成を有する試料No.11〜14は粒子形状が良好であり、トロイダルコアの比透磁率μが良好であった。試料No.11〜14より、Fe量が増加するほど、Tmが上昇し、保磁力が増加し、比透磁率μが低下する傾向にあった。そして、α+β>0.500でありCoの含有割合が小さすぎる試料No.16は軟磁性合金の融点が高くなりすぎ、アトマイズ温度1300℃で溶湯を噴射することができなかった。ただし、Co/Feの原子数比が5以上20以下である試料No.11は上記の範囲外である試料No.8、12と比較して保磁力が低下し、比透磁率μが上昇した。
表3Aより、所定の範囲内の組成を有し、Tgを有し、Tmが所定の範囲内である各試料は、噴射に必要なアトマイズ温度が低く、アトマイズ温度1300℃で噴射できた。すなわち、軟磁性合金粉末を作製可能なアトマイズ温度の幅が広かった。さらに、得られた軟磁性合金粉末がTgを有した。そのため、軟磁性合金粉末の保磁力が低くなり、円形度が高くなり、異形粒子が少なかった。さらに、軟磁性合金粉末を用いて作製したトロイダルコアの比透磁率μが高くなった。また、試料No.8よりもCo/Bが高い場合には、Co/Bが高くなるほどTmが上昇し、平均円形度が小さくなり、保磁力が増加し、比透磁率μが低下する傾向にあった。
(実験例4)
実験例4では、主成分に含まれる各元素の含有量を変化させた点以外は実験例3、試料No.11と同条件で軟磁性合金粉末およびトロイダルコアを作製した。結果を表4〜表7に示す。
Figure 2021107575
Figure 2021107575
Figure 2021107575
Figure 2021107575
表4では、Co、FeおよびM(Nb)の含有量を変化させた実験例を示した。所定の範囲内の組成を有する試料No.18〜22はTgを有し、所定の範囲内のTmを有していた。そして、軟磁性合金粉末の平均円形度が高く、異形粒子が少なく、保磁力が低くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が高くなった。
これに対し、M(Nb)を含まない試料No.17はTgを有さなかった。その結果、軟磁性合金粉末の平均円形度が低く、異形粒子が多く、保磁力が高くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が高くなった。また、Mの含有量が多すぎる試料No.23は、Tmが低くなりすぎた。その結果、軟磁性合金粉末の平均円形度が低く、異形粒子が多く、保磁力が高くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が高くなった。
表5、試料No.24〜27は、試料No.11からCo、FeおよびBの含有量(b)を変化させた実験例である。所定の範囲内の組成を有する試料No.25、26はTgを有し、所定の範囲内のTmを有していた。そして、軟磁性合金粉末の平均円形度が高く、異形粒子が少なく、保磁力が低くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が高くなった。これに対し、Bの含有量が少なすぎる試料No.24は軟磁性合金の融点が高くなりすぎ、アトマイズ温度1300℃で溶湯を噴射することができなかった。Bの含有量が多すぎる試料No.27はTmが低くなりすぎた。その結果、軟磁性合金粉末の異形粒子が多く、保磁力が高くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が低くなった。
表5、試料No.28〜34は、試料No.11からCo、FeおよびPの含有量(c)を変化させた実験例である。所定の範囲内の組成を有する試料No.28〜33はTgを有し、所定の範囲内のTmを有していた。そして、軟磁性合金粉末の平均円形度が高く、異形粒子が少なく、保磁力が低くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が高くなった。これに対し、Pの含有量が多すぎる試料No.34は、Tmが低くなりすぎた。その結果、軟磁性合金粉末の平均円形度が低く、異形粒子が多く、保磁力が高くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が低くなった。
表5、試料No.35〜41は、試料No.11からCo、FeおよびSiの含有量(d)を変化させた実験例である。所定の範囲内の組成を有する試料No.35〜40はTgを有し、所定の範囲内のTmを有していた。そして、軟磁性合金粉末の平均円形度が高く、異形粒子が少なく、保磁力が低くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が高くなった。これに対し、Siの含有量が多すぎる試料No.41は、Tmが低くなりすぎた。その結果、軟磁性合金粉末の平均円形度が低く、異形粒子が多く、保磁力が高くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が低くなった。
表6、試料No.42〜46は、試料No.11からCo、FeおよびCrの含有量(e)を主に変化させた実験例である。所定の範囲内の組成を有する試料No.42〜45はTgを有し、所定の範囲内のTmを有していた。そして、軟磁性合金粉末の平均円形度が高く、異形粒子が少なく、保磁力が低くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が高くなった。これに対し、Crの含有量が多すぎる試料No.46は、軟磁性合金粉末の異形粒子が多く、保磁力が高くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が低くなった。
表7、試料No.47〜49は、試料No.11からCo、FeおよびSの含有量(f)を主に変化させた実験例である。所定の範囲内の組成を有する試料No.47、48はTgを有し、所定の範囲内のTmを有していた。そして、軟磁性合金粉末の平均円形度が高く、異形粒子が少なく、保磁力が低くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が高くなった。また、試料No.47、48はSを含有するために異形粒子の存在割合が試料No.11と比較して低下した。これに対し、Sの含有量が多すぎる試料No.49は、軟磁性合金粉末の保磁力が高くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が低くなった。
(実験例5)
実験例5では、試料No.8について、Coの一部をX1および/またはX2に置換した点以外は実験例1に記載した条件で軟磁性合金粉末およびトロイダルコアを作製した。結果を表8、表9に示す。
Figure 2021107575
Figure 2021107575
Coの一部をX1および/またはX2に置換しても所定の範囲内の組成を有する各試料はTgを有し、所定の範囲内のTmを有していた。そして、軟磁性合金粉末の平均円形度が高く、異形粒子が少なく、保磁力が低くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が高くなった。
(実験例6)
実験例6では、試料No.8について、Mの種類を変化させた点以外は実験例1に記載した条件で軟磁性合金粉末およびトロイダルコアを作製した。結果を表10に示す。
Figure 2021107575
Mの種類を変化させても所定の範囲内の組成を有する各試料はTgを有し、所定の範囲内のTmを有していた。そして、軟磁性合金粉末の平均円形度が高く、異形粒子が少なく、保磁力が低くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が高くなった。
(実験例7)
実験例7では、試料No.8について、熱処理条件を変化させた点以外は実験例1に記載した条件で軟磁性合金粉末およびトロイダルコアを作製した。具体的には、試料No.109では熱処理を行わなかった。試料No.110では、熱処理温度を575℃に上昇させた。結果を表11に示す。なお、表11には記載していないが、各試料はTgを有し、所定の範囲内のTmを有していた。そして、軟磁性合金粉末の平均円形度が高く、異形粒子が少なく、保磁力が低くなった。
Figure 2021107575
試料No.109の軟磁性合金粉末は、試料No.8の軟磁性合金粉末の製造工程中における熱処理前の軟磁性合金粉末であるといえる。475℃での熱処理の前後で比較すると、熱処理では結晶は生じず、歪や応力を除去することができたために比透磁率μが上昇したと考えられる。
試料No.110の軟磁性合金粉末は、575℃で熱処理を行ったため、ナノ結晶が生じ、ナノ結晶が非晶質中に含まれるナノヘテロ構造を有する。
(実験例8)
実験例8では、体積基準での平均粒子径を試料No.11から変化させた点以外は実験例3に記載した条件で試料No.111、112の軟磁性合金粉末およびトロイダルコアを作製した。さらに、Bの含有量(b)を低下させ、かつ、アトマイズ温度を1600℃とした点以外は試料No.11、111、112と同条件で試料No.113〜115の軟磁性合金粉末およびトロイダルコアを作製した。結果を表12に示す。
Figure 2021107575
表12より、平均粒子径が大きいほどトロイダルコアの比透磁率が上昇した。また、所定の範囲内の組成を有する試料No.11、111、112の各試料はTgを有し、所定の範囲内のTmを有していた。そして、軟磁性合金粉末の平均円形度が高く、異形粒子が少なく、保磁力が低くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が高くなった。
これに対し、Bの含有量(b)が小さすぎる試料No.113〜115の各試料はTgを有さず、Tmが高くなりすぎた。この結果、軟磁性合金粉末の平均円形度が低く、異形粒子が多く、保磁力が高くなった。さらに、トロイダルコアの比透磁率が低くなった。
1、2… 粒子形状測定結果
10…アトマイズ装置
20…溶融金属供給部
21…溶融金属
21a…滴下溶融金属
30…冷却部
36…冷却液導入部
38a1…外方凸部
50…冷却液流れ

Claims (9)

  1. 組成式(Co(1−(α+β))X1αX2β(1−(a+b+c+d+e+f))SiCr(原子数比)からなる主成分を有する軟磁性合金粉末であって、
    X1はFeおよびNiからなる群から選択される1つ以上、
    X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Bi,N,O,Cおよび希土類元素からなる群より選択される1つ以上、
    MはNb,Hf,Zr,Ta,Mo,W,TiおよびVからなる群から選択される1つ以上であり、
    0<a≦0.140
    0.160<b≦0.250
    0≦c≦0.200
    0≦d≦0.250
    0≦e≦0.030
    0≦f≦0.010
    0.160<b+c+d+e+f≦0.430
    0.500<1−(a+b+c+d+e+f)<0.840
    α≧0
    β≧0
    0≦α+β<0.50
    であり、
    前記軟磁性合金粉末はガラス遷移点Tgおよび融点Tmを有し、
    900℃≦Tm≦1200℃である軟磁性合金粉末。
  2. 前記軟磁性合金粉末に含まれる粉末粒子の平均円形度が0.93以上であり、かつ、前記粉末粒子の円形度が低いほうから0.50までの累積個数割合が2.0%以下である請求項1に記載の軟磁性合金粉末。
  3. 前記軟磁性合金粉末に含まれる粉末粒子の平均円形度が0.95以上であり、かつ、前記粉末粒子の円形度が低いほうから0.50までの累積個数割合が1.5%以下である請求項1に記載の軟磁性合金粉末。
  4. Coの含有割合をBの含有割合で割った値が2.000より大きく5.000より小さい請求項1〜3のいずれかに記載の軟磁性合金粉末。
  5. 非晶質を有する請求項1〜4のいずれかに記載の軟磁性合金粉末。
  6. ナノ結晶を有する請求項1〜4のいずれかに記載の軟磁性合金粉末。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の軟磁性合金粉末を含む磁気コア。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の軟磁性合金粉末を含む磁性部品。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の軟磁性合金粉末を含む電子機器。
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